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水溶性中子の造型方法及び造形装置 - トヨタ自動車株式会社
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発明の名称 水溶性中子の造型方法及び造形装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−30028(P2007−30028A)
公開日 平成19年2月8日(2007.2.8)
出願番号 特願2005−220585(P2005−220585)
出願日 平成17年7月29日(2005.7.29)
代理人 【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
発明者 北沢 定男 / 冨重 博美 / 粟野 洋司
要約 課題
流動性、充填性に優れ、強度を向上させた水溶性中子を時間サイクルを短縮した造型方法と造型装置を提供する。

解決手段
鋳物砂に水溶性バインダーを混合してスラリー状とし、該スラリーを型内に充填し、その後該充填物を乾燥させて成型する鋳物砂中子の造型方法において、該スラリー状の鋳物砂を該型内に下方から加圧充填する工程(第1工程)と、該スラリー状の鋳物砂を充填した型を反転させ、該型内へ上方から加圧ブローして過剰な水分を抜く工程(第2工程)と、該鋳物砂を乾燥させて成型する工程(第3工程)とを有する。
特許請求の範囲
【請求項1】
鋳物砂に水溶性バインダーを混合してスラリー状とし、該スラリーを型内に充填し、その後該充填物を乾燥させて成型する鋳物砂中子の造型方法において、該スラリー状の鋳物砂を該型内に下方から加圧充填する工程(第1工程)と、該スラリー状の鋳物砂を充填した型を反転させ、該型内へ上方から加圧ブローして過剰な水分を抜く工程(第2工程)と、該鋳物砂を乾燥させて成型する工程(第3工程)とを有することを特徴とする鋳物砂中子の造型方法。
【請求項2】
前記第1工程の型内に下方から加圧充填、第2工程の型内へ上方から加圧ブロー、及び第3工程の鋳物砂を乾燥、の少なくとも1工程以上を、ブローヘッドに設けられ型と接続する導入管を介して行なうことを特徴とする請求項1に記載の鋳物砂中子の造型方法。
【請求項3】
前記第1工程の型内に下方から加圧充填、第2工程の型内へ上方から加圧ブロー、及び第3工程の鋳物砂を乾燥、の少なくとも1工程以上において、型内を反対側から吸引しながら行なうことを特徴とする請求項1または2に記載の鋳物砂中子の造型方法。
【請求項4】
前記第2工程の反転が略180度であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の鋳物砂中子の造型方法。
【請求項5】
前記鋳物砂に水溶性バインダーを混合したスラリーの粘度が、4〜12cpであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の鋳物砂中子の造型方法。
【請求項6】
前記水溶性バインダーが水溶性無機塩バインダーであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の鋳物砂中子の造型方法。
【請求項7】
前記鋳物砂と水溶性バインダーの重量比が1:0.1〜1:5であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の鋳物砂中子の造型方法。
【請求項8】
前記鋳物砂を乾燥させて成型する工程(第3工程)は、型内への乾燥用熱風の吹き込み及び/又は型の加熱によって行うことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の鋳物砂中子の造型方法。
【請求項9】
前記水溶性バインダーが、マグネシウムイオン(Mg2+)、ナトリウムイオン(Na)、カルシウムイオン(Ca2+)から選択されるカチオンと、SO2−、CO、HCO2−、Bから選択されるアニオンとの組合せからなる水溶性無機塩の1種以上から成る水溶性中子バインダーであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の鋳物砂中子の造型方法。
【請求項10】
前記水溶性バインダーに、珪砂(珪粉)、アルミナ、チタン酸カリウム、炭化珪素、珪酸ジルコン、繊維状チタン酸カリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウムから選択される無機フィラーの1種以上が添加されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の鋳物砂中子の造型方法。
【請求項11】
前記鋳物砂と水溶性バインダーを混合する際に、鋳物砂粒子と水溶性バインダーに加えて、無機微粉末を配合・混練することを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の鋳物砂中子の造型方法。
【請求項12】
鋳物砂に水溶性バインダーを混合してスラリー状とし、該スラリーを型内に充填し、その後該充填物を乾燥させて成型する鋳物砂中子の造型方法に用いる造形装置であって、該スラリー状の鋳物砂を該型内に下方から加圧充填するための加圧機構(ブローヘッド)と、該スラリー状の鋳物砂を充填した型を反転させるための回転機構とを備えたことを特徴とする鋳物砂中子の造型装置。
【請求項13】
前記加圧機構(ブローヘッド)が前記型と接続する導入管を備えていることを特徴とする請求項12に記載の鋳物砂中子の造型装置。
【請求項14】
前記型がキャビティー内のエア抜き及び/又は乾燥時の熱風抜きのための排気ベントを1個以上備えていることを特徴とする請求項12または13に記載の鋳物砂中子の造型装置。
【請求項15】
前記型の加圧側と反対側に吸引機構を備えていることを特徴とする請求項12乃至14のいずれかに記載の鋳物砂中子の造型装置。
【請求項16】
請求項1乃至10のいずれかに記載の鋳物砂中子の造型方法によって造型された水溶性中子を用いたアルミ合金の鋳造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動性と充填性を低下させずに、強度を向上させた水溶性中子バインダーを用いた水溶性中子の造型方法に関する。また、水溶性中子を用いたアルミ合金の鋳造方法に関する。更に、本発明は、水溶性中子の造型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
型に溶湯を圧入し、急冷凝固させて鋳物を製造することが行なわれている。このような、精密鋳造技術においては、機械部品等の精密鋳造品の内部に空間を設けるために、中子が広く利用されている。例えば、アルミ合金を使ったシリンダの内部空間、エグゾースト内部の冷却媒体通路の作製に中子は不可欠なものである。
【0003】
中子の強度を増加させるためには、樹脂、無機塩等のバインダーが使用されている。特に、中子バインダーとして無機塩を用いることにより、鋳造時のガス発生量を低減させ、鋳造後は中子砂落しを水で行うことのできる水溶性中子が考えられている。しかしながら、実用化・量産化されたものはない。その理由は、バインダーの結合力がないため、必要な中子強度を得ることが困難なことによる。
【0004】
即ち、中子用鋳物砂に無機塩等のバインダーを添加する場合、
1)バインダー量を増加すれば、中子強度が向上する。
2)バインダーは、水に溶かして(飽和濃度にして)鋳物砂に添加する。よって、バインダー量の増加は、水の量の増加となる。
3)水の増加は、鋳物砂の流動性低下となり、中子型への鋳物砂の充填性を阻害する。
【0005】
このように、鋳物砂に、バインダーだけの添加だと、中子強度と鋳物砂の流動性を両立させることができない。そこで、バインダー量を増加させずに、中子強度を向上させる技術が必要となっている。
【0006】
下記特許文献1には、流動性、充填性、成形性の改善を目的として、無機粒子に黒鉛をバインダーで被覆してなる無機複合粒子であって、黒鉛の被覆量が無機粒子100重量部に対して0.1〜50重量部であり、かつ黒鉛に対するバインダーの重量比が0.002〜2である無機複合粒子からなる鋳物用砂の発明が開示されている。しかし、用いられているバインダーは、フェノール樹脂、フラン樹脂、ピッチであり、本発明のように、水溶性中子を得るものではない。
【0007】
ところで、従来水溶性無機中子砂による造型は余り報告されていない。これは、水溶性バインダーを混練した鋳物砂を型内にブローイングする際、非常に流動性が悪いため、十分に鋳物砂を充填した中子が造型できないことによるものである。
【0008】
本発明者らは、水溶性バインダーと鋳物砂をスラリー状態とし、型内に充填する方法を開発する過程で、スラリー中の水分を乾燥する工程に長時間を要することを技術課題として認識した。
【0009】
水溶性バインダーを含むスラリー砂で造型・乾燥する場合の問題点としては、下記の点が挙げられる。
(1)スラリーには多量の水分を含んでいるので、この水分を乾燥除去するには多くのエネルギーと時間がかかり、サイクルタイムが長くなるため、生産性が低い。これは、“スラリーを用いる方法”に起因する。
(2)スラリーを型内に充填するためのブローヘッド内の水分も型内にブローイングエアと一緒に入ることになるので、更にエネルギーと時間のロスが大きい。これは、スラリーを型内に充填する際の物理的構造による。先ず、ブローヘッド内には通常中子重量の2〜3倍程度スラリー砂がないと充填時砂不足となる。これはギリギリの量を100%型内に入れることが無理なことによる。次に、前記2〜3倍の砂には2〜3倍のスラリー中の水分がブローエアと一緒に型内に挿入されるため、砂充填を完了してもこの水分通過が完了するまで、ブローヘッドを外して乾燥ヘッドのセットに入れない。このためサイクルが長く、また型温度も水分に奪われ、エネルギーロスとなる。尚、水分通過が完了しスラリーから湿体砂レベルになる前にブローヘッドを外すと充填済のスラリーが落下してしまい、意図した中子を製造できない。
【0010】
【特許文献1】特開2002−263782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記問題に鑑み、本発明は、流動性、充填性に優れ、強度を向上させた水溶性中子の時間サイクルを短縮した造型方法を提供し、水溶性中子を実用性のあるものとすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋳物砂を従来の乾燥砂に代えて水溶性無機バインダーのスラリーとする際に、型を反転してエアブローすることで上記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
【0013】
即ち、第1に、本発明は、鋳物砂中子の造型方法の発明であり、鋳物砂に水溶性バインダーを混合してスラリー状とし、該スラリーを型内に充填し、その後該充填物を乾燥させて成型する鋳物砂中子の造型方法において、該スラリー状の鋳物砂を該型内に下方から加圧充填する工程(第1工程)と、該スラリー状の鋳物砂を充填した型を反転させ、該型内へ上方から加圧ブローして過剰な水分を抜く工程(第2工程)と、該鋳物砂を乾燥させて成型する工程(第3工程)とを有する。
【0014】
本発明においては、加圧充填や加圧エアブローにはブローヘッドを用いるのが好ましい。ここで、前記第1工程の型内に下方から加圧充填、第2工程の型内へ上方から加圧ブロー、及び第3工程の鋳物砂を乾燥、の少なくとも1工程以上を、ブローヘッドに設けられ型と接続する導入管を介して行なうことが好ましい。
【0015】
また、前記第1工程の型内に下方から加圧充填、第2工程の型内へ上方から加圧ブロー、及び第3工程の鋳物砂を乾燥、の少なくとも1工程以上において、型内を反対側から吸引しながら行なうことが好ましい。
【0016】
前記第2工程で反転を行なう際には、その回転角度は90度付近から360度まで広い範囲で行なうことができる。この中で、回転角度は略180度であることが好ましい。
【0017】
本発明において、前記鋳物砂に水溶性バインダーを混合したスラリーの粘度としては、4〜12cpが好ましい。
【0018】
水溶性バインダーとしては水溶性無機塩バインダーや有機バインダーを用い得ることができるが、加熱時に焦げ付きがないことから水溶性無機塩バインダーが好ましい。
【0019】
混練される鋳物砂及び水溶性バインダーの量の目安としては、鋳物砂と水溶性バインダーの重量比が1:0.1〜1:5であることが好ましく、1:0.5〜1:1であることがより好ましい。
【0020】
本発明では、前記鋳物砂を乾燥させて成型する工程(第3工程)は、(1)型内への乾燥用熱風の吹き込み、(2)型の加熱、(3)マイクロウェーブでの鋳物砂の加熱の1種又はこれらの併用によって行うことができる。この中で、型内への乾燥用熱風の吹き込みが好ましい。
【0021】
本発明の鋳物砂中子の造型方法に用いられる水溶性バインダーとしては無機、有機であり、特に限定されないが、マグネシウムイオン(Mg2+)、ナトリウムイオン(Na)、カルシウムイオン(Ca2+)から選択されるカチオンと、SO2−、CO2−、HCO2−、Bから選択されるアニオンとの組合せからなる水溶性無機塩の1種以上から成る水溶性中子バインダーが好ましく例示される。これら特定のカチオンとアニオンの組合せからなる無機塩は、バインダーとしての強度、可溶性、充填性等を満たす。より具体的には、硫酸マグネシウム(MgSO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、4ホウ酸ナトリウム(Na)、硫酸ナトリウム(NaSO)から選択される1種以上が挙げられる。
【0022】
本発明では、水溶性無機塩バインダーに、珪砂(珪粉)、アルミナ、チタン酸カリウム、炭化珪素、珪酸ジルコン、繊維状チタン酸カリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウムから選択される無機フィラーの1種以上が添加することができる。無機フィラーを添加することで水溶性中子の高温強度が更に向上し、造型された中子のハンドリングに優れるという実用性が生じる。
【0023】
本発明で用いられる特定の無機フィラーは、表面が無機塩バインダーで被覆された鋳物砂粒子の接点付近に存在して、鋳物砂粒子の結合力を高めるものである。その平均粒径は、数μm〜数10μm程度が鋳物砂の接点付近に存在するのに好ましい。
【0024】
更に、本発明では、表面が水溶性無機塩バインダーで被覆された鋳物用砂の隙間を無機微粉末が充填されていることが好ましい。ここで、無機微粉末は、表面が無機塩バインダーで被覆された鋳物砂粒子の隙間に充填されて、鋳物砂粒子の結合力を高めるものである。具体的には、カオリナイト、デッカイト、ハロサイト等のカオリン、タルクから選択される1種以上が好ましく例示される。その平均粒径は、数μm〜数10μm程度が鋳物砂の隙間に充填するのに好ましい。
【0025】
本発明で用いられる鋳物砂粒子は、従来知られたものを用いることができる。具体的には、SiC,アルミナ,ムライト,シリカ,ジルコンを用いることが好ましい。これらは,優れた強度,低熱膨張率を有するとともに入手が比較的容易であり、強度,寸法精度等に優れた水溶性中子を製造することができる。
【0026】
本発明で造型される水溶性中子は、鋳物砂粒子の表面が水溶性無機塩バインダーで被覆された水溶性中子であり、十分な中子強度と流動性(充填性)を兼ね備えている。
【0027】
第2に、本発明は、鋳物砂に水溶性バインダーを混合してスラリー状とし、該スラリーを型内に充填し、その後該充填物を乾燥させて成型する鋳物砂中子の造型方法に用いる造型装置の発明であり、該スラリー状の鋳物砂を該型内に下方から加圧充填するための加圧機構と、該スラリー状の鋳物砂を充填した型を反転させるための回転機構とを備えたことを特徴とする。
【0028】
本発明の鋳物砂中子の造型装置においては、加圧充填や加圧エアブローにはブローヘッドを用いるのが好ましい。また、前記加圧機構のブローヘッドが型と接続する導入管を備えていることが好ましい。
【0029】
本発明の鋳物砂中子造型装置では、前記型がキャビティー内のエア抜き及び/又は乾燥時の熱風抜きのための排気ベントを1個以上備えていることが好ましい。
【0030】
また、前記型の加圧側と反対側に吸引機構を備えていることが好ましい。
また、本発明の鋳物砂中子の造型装置では、前記スラリーを加圧して型内に充填する加圧機構が、充填物を乾燥させて成型する際に、熱風送風(エアブロー)機構に置換可能とすることができる。
【0031】
本発明の鋳物砂中子の造型装置では、スラリーに対する加圧及び/又は減圧を効率よく行うために、以下に示すように幾つかの配置が考えられる。
1.スラリーを加圧して型内に充填する加圧機構を、スラリーを型本体へ押し上げる方式とする。
2.型のキャビティー内の減圧機構を、スラリーを型本体へ吸い上げる方式とする。
【0032】
第3に、本発明は、上記の鋳物砂中子の造型方法によって造型された水溶性中子を用いたアルミ合金の鋳造方法である。水溶性中子を用いているため、鋳造後の砂落としが容易である。本発明により、例えば、アルミ合金シリンダ等の精密鋳造品を製造することが出来る。
【0033】
なお、本発明では、水溶性中子バインダーを砂落とし後に回収してリユースすることで、環境問題に対処することができる。鋳物砂と水溶性バインダーのスラリー状の混合物を用いて、該スラリーを型内に充填し、該スラリーを乾燥させて成型して鋳物砂中子を造型した後、鋳造工程、砂落とし工程を経た後、該水溶性バインダーを水溶液として回収し、得られた水溶液から水分を蒸発等で分離させて、水溶性バインダーを回収する。回収された水溶性バインダーは上記の鋳物砂中子の造型方法に再利用される。水溶性無機塩バインダーを繰り返し再利用することにより、環境負荷の少ない鋳物砂中子の造型方法となる。水溶性無機塩バインダーを水溶液として回収した後、イオン交換膜を用いた透析により該水溶性無機塩を濃縮することも可能である好ましい。
【0034】
水溶性中子バインダーの回収・再利用(リユース)方法により、従来大量の産業廃棄物として、水溶性中子バインダーを含む廃液の処置が困難であったものが、ほぼ全量回収することが可能となり、再度水溶性中子バインダーとして利用できることとなった。これにより、環境問題が解決されたのみならず、アルミ合金シリンダ等の製造コストを大幅に削減することが出来る。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、スラリー状の鋳物砂を充填した型を反転させ、該型内へ上方から加圧ブローして過剰な水分を抜く工程(第2工程)を設けることで、水分の多いスラリー状の場合に特に造型時間の短縮が図れる。また、ブローヘッドを反転させることにより、ブローヘッド内のスラリーを経由せずに導入管を介して吹き込むため、残留スラリーはそのまま放置して型内の砂水分を除去できる。
【0036】
更に、鋳物砂と水溶性バインダーのスラリー状の混合物を用いることの効果として、該スラリーを型内に充填し、該スラリーを乾燥させて成型して鋳物砂中子を造型するため、型への鋳物砂と水溶性バインダーのスラリーの浸透性が向上し、鋳物砂中子の温間強度を上げることができる。特に、水溶性無機塩から成る水溶性中子バインダーを用いることで、十分な中子強度と水溶性を併せ持つ水溶性中子を得ることができる。また、この水溶性中子を用いることで、鋳造時に型崩れせず、鋳造後の除去が容易な鋳造を行うことができる。
【0037】
即ち、本発明の効果を列挙すれば以下のようになる。
1.スラリー状の鋳物砂を充填した型を反転させ、該型内へ上方から加圧ブローして過剰な水分を抜くので、水分の多いスラリー状の場合に造型時間の短縮が図れる。スラリー状無機バインダーを用いた場合でも多量の水分を除去することが迅速にでき、ブローヘッドを外した時のスラリー落下飛散を防止できるので生産性を低下することなく造型可能である。
2.スラリー充填中に型を回転させることにより複雑な形状の型でも隅々まで充填できる。形状により90度〜270度回転等で充填しにくい部位に重力を有効に利用できる。
3.ブローヘッド内残留スラリーの水分を低下させることがないので、次サイクルに不足スラリーを補充するだけで造型可能となる(溶液の無駄大幅削減)。
4.180度反転後のブローは導入管に直接加圧できるので、ブロー圧が有効に充填に寄与でき、砂充填密度が向上できる(ブローヘッド残留砂通過抵抗分向上)。また、この時水分が抜け空間が生じた分は導入管内の鋳物砂が型内に入るので吹込口が空洞になる等の現象が生じない効果も発揮する。
5.第1工程の型内に下方から加圧充填時、及び第2工程の型内へ上方から加圧ブロー時に、型の反対側から真空吸引することにより、充填性の向上と水分除去時間の短縮が図れる。
【0038】
上記直接的効果に加えて、下記の効果も奏される。
6.無機バインダーを用いても複雑な形状の型も砂充填でき、型、中子の造型が可能となる。
7.スラリー状の砂の準備は所定の濃度のバインダーをスラリー状になるように砂に加えるだけでよく、乾燥の心配も少なく取扱いが簡単である。(余分なバインダーはエアとともに排出されるのでコントロール不要)
8.中子のバインダー量は液濃度、吸引圧/加圧条件でコントロールできるため、造型後の中子強度は広範囲に調整可能となる(高強度中子の作製が可能)。また過剰に注入しても粒子間隙間の残存量は一定にできるため、液量のコントロールはラフでも問題ない。
9.減圧により水の沸点が下がり、より低温で水が蒸発・硬化するので金型温度を低下できる。
10.中子内の温度差により、塩濃度の分布は金型面(中子では外側)が密となる。鋳物砂粒子間隙が塩で満たされることにより中子表面が平滑になり、鋳物表面粗度が向上する。
【0039】
11.スラリーの乾燥・硬化は加熱金型の熱伝導により促進されるため中子に温度差が生じる。この現象を利用して内部が硬化するまえにスラリーを排出することにより中空中子の作製が可能となる。
12.鋳物を水に浸すことにより硬化バインダーが溶解し中子が崩壊するから、砂分離(砂落とし)が可能である。この際バインダー溶液そのものを用いれば、取り出された鋳物砂は造型前に近い組成のスラリーとなる。本発明によれば少しの水を加えてバインダー濃度を調整するだけでそのままスラリー状鋳物砂とて扱えるので、いわゆる砂再生工程が不用となる。即ち、新砂相当にする必要もなく又焙焼や研磨等のあらゆる再生工程を省略できる。
13.所定比で混合された鋳物砂と水溶性バインダーのスラリーをブローイングするので、スラリーの取扱い、計量が容易で乾燥の心配も少なく、取扱いが容易である。
14.鋳物砂を工程内で再使用する場合、砂にバインダーが付着しているが、本発明によればそのまま事前混練砂として扱えるので、いわゆる砂再生工程が不用となる。新砂相当にするための、焙焼や研磨等も不用である。
【0040】
水溶性無機塩を用いることによって、中子の温間強度を上げることができることの作用原理は必ずしも解明されないが、鋳物砂の表面の水溶性無機塩の結晶が、滑らかに、均一に被覆されることにより、結晶強度を発揮させ、造型された中子の温間強度を上げるものと推定される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
図1に、本発明の鋳物砂中子の各造型工程を示す。
図1(a)は、スラリー砂充填工程であり、無機水溶性バインダー溶液でスラリー状にした鋳物砂1をブローヘッド2に入れた状態で、加圧充填エア3を吹き込む。該ブローヘッド2と型4は導入管5、吹き込みノズル6を介して連通かつ密着しているので、スラリー状鋳物砂1は型4内のキャビティー7に充填される。この時、型4の反キャビティー側ベント11から減圧吸引12を併用するとより確実な充填ができる。この際、スラリー状鋳物砂1は多量のバインダー溶液でスラリー状になっているので、液体に近い状態で隅々まで充填できる。(以上第1工程)
【0042】
図1(b)は、回転・成型ブロー工程であり、型4にブローヘッド2を密着したまま、180度回転する。この時、ブローヘッド2内残留スラリーは重力により、ブローヘッド2内下方に溜まるので、導入管5に直接ブローエア3が入る。このため、ブローエア3は残留スラリー内を通らないので、水分を含むことなく型内に吹き込まれ、充填済のスラリー中の水分を飛ばす作用ができる。(以上第2工程)
【0043】
図1(c)は、乾燥・成型工程であり、ブローへッドを熱風ヘッド8に取替え、乾燥用熱風9を入れ、第2工程で低水分となったキャビティー内の鋳物砂を乾燥、成型させる。熱風ヘッドに取り替える際、ブローヘッド内に導入管があるので残留スラリー砂は外にこぼすことがない。尚、乾燥を熱風で行うが、型加熱も有効である。また、型加熱の変わりにマイクロウェーブで鋳物砂を加熱する方法もある。また、減圧吸引は第2、第3工程でも併用することは有効である。(以上第3工程)
【0044】
最後に、成型完了後型を開き、成型した中子型10を取り出す。
なお、図1において排気ベント11は1箇所設けられているが、所望により複数個設けても良い。また、排気ベント11の隙間を小さく、例えば0.1mm程度に、すると鋳物砂の詰まりが少なくなる。一方、該隙間が水溶性バインダーによって目詰まりした時は、本発明の操作後に水洗することで容易に流すことができる。
【0045】
以下、図1に準じて、本発明の実施例を説明する。
鋳物砂として乾燥したムライト系人工砂を用い、水溶性無機塩バインダーとして硫酸マグネシウム(MgSO)10g(10%)と炭酸ナトリウム(NaCO)10g(10%)を水100cc当たりに溶かした水溶液を用いた。これら鋳物砂と水溶性無機塩バインダー水溶液を1:0.5の割合で混合した。得られた無機水溶性バインダー溶液でスラリー状にした鋳物砂1をブローヘッド2に入れた状態から、加圧エア3を吹き込むと同時に減圧吸引12する。前記ブローヘッド2と型4は吹き込みスラリー中に開口部が達するようにした導入管5を介して連通かつ密着しているので鋳物砂1は鋳物型内のキャビティー7に充填される。この際、鋳物砂は多量のバインダー溶液でスラリー状になっているので、液体に近い状態で隅々まで充填する。(以上、第1工程:スラリー砂充填工程)
【0046】
次に、型4にブローヘッド2を密着したまま、上下に180度回転する。この時、ブローヘッド2内残留スラリーは重力により、ブローヘッド2内下方に溜まるので、導入管5に直接ブローエア3が入る。このため、ブローエア3は残留スラリー内を通らないので、水分を含むことなく型内に吹き込まむと同時に減圧吸引12する。これにより、充填済のスラリー中の水分を飛ばすことができる。(以上、第2工程:回転・成型ブロー工程)
【0047】
次に、ブローヘッドに代え、熱風挿入ヘッド8をセットし、所定の熱風待ち保持時間待機後、上部から乾燥用熱風9を入れ、型内で前記スラリー状態の鋳物砂を乾燥し成型する。乾燥を熱風で行う以外に型の加熱も有効であり、また型加熱の代わりにマイクロウェーブで鋳物砂を加熱する方法もある。最後に、成形完了後、型を開き、成形中子10を取り出す。(以上、第3工程:乾燥・成型工程)
【産業上の利用可能性】
【0048】
鋳物砂と水溶性バインダーのスラリー状の混合物を用いることによって、該スラリーを型内に充填し、該スラリーを乾燥させて成型して鋳物砂中子を造型することができる。これにより、水溶性中子バインダーを用いて十分な中子強度と水溶性を併せ持つ水溶性中子を得ることができる。また、水溶性バインダー及び鋳物砂は繰り返し再利用できる。これにより、本発明は水溶性中子を用いた鋳造の普及に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の鋳物砂中子の各造型工程を示す。
【符号の説明】
【0050】
1:スラリー状鋳物砂、2:ブローヘッド、3:加圧エア、4:型、5:導入管、6:ノズル、7:キャビティー、8:熱風ヘッド、9:熱風、10:成型中子、11:ベント、12:減圧吸引。




 

 


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