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発明の名称 金属製品の製造方法、シリンダヘッドの製造方法及びシリンダヘッド
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−29956(P2007−29956A)
公開日 平成19年2月8日(2007.2.8)
出願番号 特願2005−212208(P2005−212208)
出願日 平成17年7月22日(2005.7.22)
代理人 【識別番号】100075258
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 研二
発明者 瀬口 剛
要約 課題
ウオータジャケットを含むシリンダヘッドをアルミニウム合金鋳物によって製造する際の残留応力を抑制することである。

解決手段
シリンダヘッド鋳物体10を鋳造後切断することで、各切断面20,22にウオータジャケット部分が開口された部品12,14を得る。得られた各部品12,14をそれぞれ溶体化処理装置26において溶体化処理温度で保持した後、焼入れ水槽28で焼入れし溶体化処理を行う。溶体化処理後の各部品12,14の切断面の酸化膜を除去し、低融点金属薄膜30を挟んで組付け、時効接合処理装置34において、所定の時効処理条件の下で時効処理と、低融点金属薄膜30のアルミニウム合金内への溶融拡散による接合処理とを行う。
特許請求の範囲
【請求項1】
内部に中空部を有する金属製品を、溶体化処理及び人工時効処理を施すアルミニウム合金材料によって製造する方法であって、
金属製品を成形後切断し、あるいは金属製品を構成する複数の部品をそれぞれ分割して成形することで、内部の中空部が開口された複数の部品を得る工程と、
各部品をそれぞれ所定の温度で溶体化処理する溶体化処理工程と、
各部品の切断面あるいは分割面の酸化膜を除去し、所定の時効処理条件の下においてアルミニウム合金内に拡散される低融点金属薄膜を配置する工程と、
各部品を、それぞれ対応する切断面あるいは分割面を合わせて組み付ける工程と、
組み付けられた各部品を一体として、所定の時効処理条件の下で時効処理と、低融点金属薄膜のアルミニウム合金内への溶融拡散による接合処理とを行う時効接合工程と、
を含むことを特徴とする金属製品の製造方法。
【請求項2】
ウオータジャケットを含むシリンダヘッドをアルミニウム合金鋳物によって製造する方法であって、
シリンダヘッド鋳物体を鋳造後切断し、あるいは複数の部品にそれぞれ分割して鋳造することで、ウオータジャケット部分が開口された複数のシリンダヘッドを構成する部品を得る工程と、
各シリンダヘッド部品をそれぞれ所定の温度で溶体化処理する溶体化処理工程と、
各シリンダヘッド部品の切断面あるいは分割面の酸化膜を除去し、所定の時効処理条件の下においてアルミニウム合金内に拡散される低融点金属薄膜を配置する工程と、
各シリンダヘッド部品を、それぞれ対応する切断面あるいは分割面を合わせて組み付ける工程と、
組み付けられた各シリンダヘッドを構成する部品を一体として、所定の時効処理条件の下で時効処理と、低融点金属薄膜のアルミニウム合金内への溶融拡散による接合処理とを行う時効接合工程と、
を含むことを特徴とするシリンダヘッドの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のシリンダヘッドの製造方法において、
溶体化処理工程は、490℃以上540℃以下の温度で処理し、
時効接合工程は、不活性ガス雰囲気の下で140℃以上220℃以下の温度で処理することを特徴とするシリンダヘッドの製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載のシリンダヘッドの製造方法において、
低融点金属薄膜を構成する材料は、Al−91質量%以上のGa合金、Al−90質量%以上のLi合金、Al−In共晶合金、Mg−94質量%以上のGa合金、Mg−83質量%以上のLi合金、Li−17質量%以下のNa合金、Li−95質量%以上のNa合金、Li−49質量%以下のZn合金、Zn−89質量%以上89質量%以下のSn合金、Na−7質量%以下のSb合金、Ga−35質量%以下のZn合金、Ga−1%以下のSr合金、Ga−97質量%以下のSn合金、Ga−0.5質量%以下のSc合金、Ga−0.5質量%以下のSb合金、Ga−0.5質量%以下のLi合金、Ga−48質量%以下のLi合金、Ge−99質量%以上のGa合金、Ga−0.1質量%以上〜99.9質量%以下のIn合金の中のいずれか1つを含むことを特徴とするシリンダヘッドの製造方法。
【請求項5】
ウオータジャケットを含むシリンダヘッドであって、
アルミニウム合金鋳物で構成され、
ウオータジャケット部分が開口するように複数のシリンダヘッドを構成する部品に分割される接合面を有し、
接合面は、アルミニウム合金鋳物の溶体化処理の後の時効処理条件においてアルミニウム合金鋳物内に溶融拡散された低融点金属薄膜の接合層を含むことを特徴とするシリンダヘッド。

発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製品の製造方法、シリンダヘッドの製造方法及びシリンダヘッドに係り、特に溶体化処理と人工時効処理とを行うことで強度等を向上させるアルミニウム合金鋳物を用いる金属製品の製造方法、シリンダヘッドの製造方法及びシリンダヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム合金には熱処理によって強度を上げることができるものと、できないものとが知られ、例えば高力アルミニウム合金、耐熱アルミニウム合金とともに鋳物用アルミニウム合金は、熱処理強化型の合金である。これらの合金は、例えば500℃前後の温度に加熱した後焼入れすると、合金成分が下地金属の中に溶け込んで軟らかい状態が得られる。この熱処理は溶体化処理と呼ばれる。溶体化処理されたこれらの合金は、時間の経過とともに次第に硬くなり強度が大きくなる。これは時効硬化と呼ばれるが、例えば120℃から200℃程度に長期間加熱すると硬化が促進される。これを常温の時効効果と対比させて人工時効と呼ばれる。このように溶体化処理の後人工時効処理を行う処理は、JIS規格(日本工業標準規格)に定められるT6処理として知られている。
【0003】
アルミニウム合金を用いて金属製品を成形し、これにT6処理を施すことで、所定の強度を得ることができるが、その際に残留応力が発生することが知られている。例えば、特許文献1には、Al合金製部材であるシリンダヘッドにおいて、ウオータジャケットが迷路のように張り巡らされているために、T6処理の溶体化処理(焼入れ)時の各部位の冷却速度の差異によって、ウオータジャケット側に引張残留応力が、外側に圧縮残留応力がそれぞれ発生し、これらの残留応力はその後の時効処理によっても開放されないことが述べられている。その対策として、時効温度に保持した後の冷却時に、シリンダヘッドに形成された孔部から冷却水等の冷媒を内側に導入し、ウオータジャケット側を外側よりも低温で冷却しながら時効処理することが述べられている。
【0004】
また、特許文献2には、アルミニウム合金製シリンダヘッドを所定の焼入れ温度まで昇温させた後、冷媒で冷却することによって焼入れを施す熱処理方法において、シリンダヘッドの鋳造時または鋳造後に、シリンダヘッドの長手方向両端部と、両側部とに、ウオータジャケットとシリンダヘッド外部とを連通させる連通穴を設けておき、シリンダヘッドを昇温した上で容器内の冷媒に沈め、各連通穴によってウオータジャケット内への冷媒の流入を促進して冷却を均一化し、残留応力を低減させることが述べられている。
【0005】
【特許文献1】特開平4−235259号公報
【特許文献2】特開平6−108210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術においては、残留応力の低減のために、冷却速度をできるだけ各部位において均一となるように管理が行われる。これらの方法では、実際的に冷却速度、冷媒等の管理方法が容易でないことがあり、また、シリンダヘッドのウオータジャケット部は、ポートや外壁に拘束されるために、そのままの状態での水冷等の溶媒冷却では、確実な残留応力の除去が困難である。
【0007】
本発明の目的は、溶体化処理及び人工時効処理を行う材料を用いて中空部を有する製品を製造する際の残留応力を抑制できる金属製品の製造方法、シリンダヘッドの製造方法を提供することである。また、残留応力を抑制できるシリンダヘッドを提供することである。以下の手段は、これらの目的の少なくとも1つに貢献する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る金属製品の製造方法は、内部に中空部を有する金属製品を、溶体化処理及び人工時効処理を施すアルミニウム合金材料によって製造する方法であって、金属製品を成形後切断し、あるいは金属製品を構成する複数の部品をそれぞれ分割して成形することで、内部の中空部が開口された複数の部品を得る工程と、各部品をそれぞれ所定の温度で溶体化処理する溶体化処理工程と、各部品の切断面あるいは分割面の酸化膜を除去し、所定の時効処理条件の下においてアルミニウム合金内に拡散される低融点金属薄膜を配置する工程と、各部品を、それぞれ対応する切断面あるいは分割面を合わせて組み付ける工程と、組み付けられた各部品を一体として、所定の時効処理条件の下で時効処理と、低融点金属薄膜のアルミニウム合金内への溶融拡散による接合処理とを行う時効接合工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るシリンダヘッドの製造方法は、ウオータジャケットを含むシリンダヘッドをアルミニウム合金鋳物によって製造する方法であって、シリンダヘッド鋳物体を鋳造後切断し、あるいは複数の部品にそれぞれ分割して鋳造することで、ウオータジャケット部分が開口された複数のシリンダヘッドを構成する部品を得る工程と、各シリンダヘッド部品をそれぞれ所定の温度で溶体化処理する溶体化処理工程と、各シリンダヘッド部品の切断面あるいは分割面の酸化膜を除去し、所定の時効処理条件の下においてアルミニウム合金内に拡散される低融点金属薄膜を配置する工程と、各シリンダヘッド部品を、それぞれ対応する切断面あるいは分割面を合わせて組み付ける工程と、組み付けられた各シリンダヘッドを構成する部品を一体として、所定の時効処理条件の下で時効処理と、低融点金属薄膜のアルミニウム合金内への溶融拡散による接合処理とを行う時効接合工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、溶体化処理工程は、490℃以上540℃以下の温度で処理し、時効接合工程は、不活性ガス雰囲気の下で140℃以上220℃以下の温度で処理することが好ましい。
【0011】
また、低融点金属薄膜を構成する材料は、Al−91質量%以上のGa合金、Al−90質量%以上のLi合金、Al−In共晶合金、Mg−94質量%以上のGa合金、Mg−83質量%以上のLi合金、Li−17質量%以下のNa合金、Li−95質量%以上のNa合金、Li−49質量%以下のZn合金、Zn−89質量%以上89質量%以下のSn合金、Na−7質量%以下のSb合金、Ga−35質量%以下のZn合金、Ga−1%以下のSr合金、Ga−97質量%以下のSn合金、Ga−0.5質量%以下のSc合金、Ga−0.5質量%以下のSb合金、Ga−0.5質量%以下のLi合金、Ga−48質量%以下のLi合金、Ge−99質量%以上のGa合金、Ga−0.1質量%以上99.9質量%以下のIn合金の中のいずれか1つを含むことが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るシリンダヘッドは、ウオータジャケットを含むシリンダヘッドであって、アルミニウム合金鋳物で構成され、ウオータジャケット部分が開口するように複数のシリンダヘッドを構成する部品に分割される接合面を有し、接合面は、アルミニウム合金鋳物の溶体化処理の後の時効処理条件においてアルミニウム合金鋳物内に溶融拡散された低融点金属薄膜の接合層を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記構成により、アルミニウム合金を用いて成形された製品をその後切断し、あるいは製品を構成する複数の部品に分割してそれぞれ成形することで、製品の内部の中空部を開口させた複数の部品とする。そして、その後、各部品を溶体化処理する。したがって、溶体化処理の焼入れにおいて発生する可能性のある残留応力がこの開口により冷却速度が均一となるため、各部品における残留応力が抑制される。
【0014】
その後、切断面等に低融点金属薄膜が配置されて各部品が製品の形状に組み付けられ、時効処理が行われるが、低融点金属薄膜はこの時効処理条件の下で下地金属であるアルミニウム合金の内部に溶融拡散するものが用いられる。したがって、1つの熱処理によって、アルミニウム合金の人工時効処理と、各部品の拡散接合とを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下において、対象製品は、車両に用いられるシリンダヘッドで、ウオータジャケット付のものとするが、これ以外の製品であっても、内部に中空部を有して、熱処理によって残留応力が発生しやすい製品であってもよい。また、製品を構成する材料は、鋳物用アルミニウム合金として説明するが、それ以外のアルミニウム合金であって、溶体化処理及び人工時効処理が施されるものであれば、他のアルミニウム合金であってもよい。また、溶体化処理の前に複数の部品とする場合に、これを2つの部品に分割するとして説明するが、分割数はこれ以外の複数であればよい。また、分割の仕方は一平面の分割面で行うものとして説明するが、これより複雑な切断面形状で分割を行うものとしてもよい。
【0016】
図1は、ウオータジャケットを含むシリンダヘッドの残留応力を抑制する製造方法の手順を示すフローチャートで、図2は、製造方法の各手順の様子を模式的な形状を用いて示す図である。ここで、シリンダヘッドは自動車等の車両のエンジン部品であり、その冷却のために張り巡らされる流路を有するウオータジャケットを含んでいる。したがって、シリンダヘッドはその内部に複雑な形状の中空部を含んでいる。
【0017】
ウオータジャケットを含むシリンダヘッドの製造方法の最初は、2通りの方法のいずれかによって開始される。1つの方法は、シリンダヘッドを鋳物体で鋳造し(S10)、これを、内部の中空部が開口するような切断面で複数の部品に切断する(S12)。切断は機械加工、例えば、ワイヤカットや高圧の水を用いるウォータージェット等によって行われる。もう1つの方法は、シリンダヘッドを、内部の中空部が開口するように、予め複数の部品を設計し、これを別々に鋳造する(S14)。前者の方法は、1つの鋳物体を製造した後に複数の部品に分割し、分割のところに機械加工面が現れるのに対し、後者の方法は、組み合わせてシリンダヘッドを構成できる複数の部品をそれぞれ鋳造し、接合する面は、やはりフラットな面に加工する。
【0018】
S10及びS14における鋳造は、鋳物用アルミニウム合金材料を用い、周知の鋳造技術を用いて行うことができる。鋳物用アルミニウム合金材料は、JIS、DIN(ドイツ工業標準)、ASTM(米国試験材料協会規格)、ISO(国際標準機構)等に定められる規格の中から所望の性能に合わせて選択することができる。例えば、JISにおけるAC2B又はAC4C、及びこれらに対応するDINのENAC−2000、ISOのAl−Si7Mgを用いることができる。
【0019】
また、Siを5質量%以上7質量%以下、Cuを0.2質量%以上1.0質量%以下、Mgを0.2質量%以上0.5質量%以下、Mnを0.1%未満、Feを0.5%未満、残部Alの成分系のアルミニウム合金を用いることができる。ここでCuについて、高温強度と常温延性を両立できる範囲として、0.2質量%以上1.0質量%以下とした。また、Mgについて、延性を損なわず強度を確保できる範囲として、0.2質量%以上0.5質量%以下とした。Feについては、Mnと結合してできる針状金属化合物が延性を損なうことと、リサイクル性による低コスト化を考慮して0.5%未満とした。
【0020】
いずれかの方法を用いて、組み合わせてシリンダヘッドを構成できる複数の部品が得られる(S20)。図2(a)、(b)はその様子を示す図で、ここでは上記のS10−S12の方法を用いるときの様子が示されている。図2(a)は、シリンダヘッド鋳物体10を鋳造したものを示す。ここで、シリンダヘッド鋳物体10の上下方向が判別できるように、シリンダヘッド鋳物体10の上面形状16を参考のため図示してある。図2(a)にはさらに、シリンダヘッド鋳物体10の図示されていない内部の中空部が開口するように2つの部品12,14に分割するための仮想切断面18が示される。図2(b)は、仮想切断面18で切断して得られた2つの部品12、14を、実際の切断面のところで開いた様子を示す図である。ここではシリンダヘッド鋳物体10の上面形状16が現れず、各部品12,14の実際の各切断面20、22に、内部のウオータジャケット中空部が現れているのが示される。
【0021】
得られた各部品12,14には、次に溶体化処理が施される(S22)。溶体化処理工程は、高温保持の段階と、その後水冷の焼入れの段階を含む。高温保持の段階におけるいわゆる溶体化温度は、析出強化元素であるCuやMgを十分固溶できる温度として、490℃以上540℃以下の温度とする。540℃を超えるとCu量が多いAC2BやAC4B系ではいわゆるバーニングを起こすため、上限を設定した。また、時効処理時の析出強化で強度を確保するために十分固溶できる温度として下限を490℃とした。高温保持の時間は、各部品12,14の具体的な材料組成、寸法、質量等で適宜設定される。焼入れ段階は、高温保持の後、あまり時間をおかずに焼入れ水槽の中に各部品12,14を入れることで行われる。水温は、一般的な溶体化処理で設定される50℃〜80℃で良い。
【0022】
図2(c)は、溶体化処理の様子を示す図で、分割された各部品12,14は、溶体化熱処理装置26において、所定の溶体化温度に保持され、その後、焼入れ水槽28に移される。各部品12,14は、溶体化熱処理装置26、焼入れ水槽28において、まとめて処理されてもよく、個別に処理されてもよい。ここで、各部品12,14は、中空部が切断面において開口しているので、表面積の拡大と、拘束部分がなくなり、焼入れ時の冷却において、各部分の冷却速度が均一となり、残留応力が生じにくくなる。したがって、中空部が切断面等によって開口されない場合に比べ、各部品12,14における残留応力が格段に少なくなる。
【0023】
溶体化処理が施された各部品12,14はその後、合わせ面の酸化膜が除去(S24)され、その清浄化した合わせ面に低融点金属薄膜が配置される(S26)。ここで合わせ面とは、S10−S12の方法をとった場合には各切断面20,22のことであり、S14の方法をとったときは、この仮想切断面18に対応する面のことで、各部品12,14を組み合わせてシリンダヘッド外形を構成できるときの相互に面と面とを合わせて組み合わせる面のことである。酸化膜除去は研削等の機械的方法、あるいはエッチング等の化学的方法を用いることができる。もちろん機械的方法と化学的方法とを併用してもよい。
【0024】
低融点金属薄膜は、これを各部品12,14の合わせ面に挟んで、所定の時効処理条件の下におくと、各部品12,14のアルミニウム合金内に熱拡散し、合わせ面において拡散接合を形成するような材料である。所定の時効処理条件は、各部品12,14を構成するアルミニウム合金材料の組成等で定められるので、これらの条件に合わせて適当な材料を選択することができる。具体的には、時効処理温度を140℃以上220℃以下として、この温度範囲で溶解でき、シリンダヘッド母材であるアルミニウム合金と共晶型あるいは固溶析出型となる金属元素、あるいはそれらの組み合わせ元素の成分系に限定した。このうち、NaやSr等の元素は、改良処理の効果も期待でき、組織微細化による接合部のさらなる強度向上にもつながる。低融点金属薄膜の厚さは、例えば50μm以上0.2mm以下、好ましくは0.1mm程度とすることができる。
【0025】
このような低融点金属薄膜の材料としては、Al−91質量%以上のGa合金、Al−90質量%以上のLi合金、Al−In共晶合金、Mg−94質量%以上のGa合金、Mg−83質量%以上のLi合金、Li−17質量%以下のNa合金、Li−95質量%以上のNa合金、Li−49質量%以下のZn合金、Zn−89質量%以上89質量%以下のSn合金、Na−7質量%以下のSb合金、Ga−35質量%以下のZn合金、Ga−1%以下のSr合金、Ga−97質量%以下のSn合金、Ga−0.5質量%以下のSc合金、Ga−0.5質量%以下のSb合金、Ga−0.5質量%以下のLi合金、Ga−48質量%以下のLi合金、Ge−99質量%以上のGa合金、Ga−0.1質量%以上99.9質量%以下のIn合金の中の1つ、あるいはこれらの任意の組み合わせを用いることができる。
【0026】
低融点金属薄膜の厚さは、各部品12,14の大きさ、切断面形状等の複雑性によって適当に定めることができる。例えば50μm以上0.2mm以下、好ましくは0.1mm程度とすることができる。低融点金属薄膜の配置は、シート状のものを挟むことで行うことができる。
【0027】
図2(d)は、その様子を示す図で、部品12と部品14とが合わせ面における酸化膜除去のあと、合わせ面の少なくともいずれか一方側に低融点金属薄膜30を配置し、相互の合わせ面を向かい合わせたところを示す。ここでは合わせ面における中空部の開口が内部に隠されて現れず、上面形状16が示されるように、低融点金属薄膜30が配置されていることを除けば、図2(a)と外観上は同じである。
【0028】
次に、合わせ面の間に低融点金属薄膜が配置された各部品12,14に対し組付(S28)が行われる。組付は、合わせ面に低融点金属薄膜が配置された各部品12,14を正確にシリンダヘッドの外形となるように合わせ面の位置決めを行い、位置決めされた状態で加圧しつつ固定して行われる。2つの部品12,14に予め位置決め用の目合わせマークや、穴、ボス等を設けておくことが好ましい。加圧固定は、組付用の穴等が準備されているときはそれらを用いてボルト、ナット等の締結手段を用いることができる。あるいは、各部品12,14を位置決めした後、適当な挟み込み治具を用いて加圧固定することでもよい。
【0029】
組付のあと、時効加圧接合(S30)が行われる。この工程は、T6処理における人工時効工程であるが、その条件下において、低融点金属薄膜がアルミニウム合金内に拡散し、合わせ面において拡散接合を形成する工程でもある。人工時効処理の温度条件としては、上記のように、140℃以上220℃以下とした。ここで下限の140℃はシリンダヘッドの強度を確保するための最低温度であり、上限の220℃は、過時効軟化を抑制するための上限温度である。時効接合処理の時間は、所定の強度を確保できるように十分長く設定される。時効接合の雰囲気は、真空雰囲気あるいは不活性ガス雰囲気あるいは窒素雰囲気とする。時効接合後の冷却は、水冷でも空冷でもよい。
【0030】
図2(e)は、時効接合処理の様子を示す図である。合わせ面に低融点金属薄膜30が配置された各部品12,14は、組付加圧治具32によって加圧固定された状態で、時効接合処理装置34の中で酸化が生じない雰囲気の下で、所定の温度に保持される。
【0031】
図2(f)は、このようにして時効接合処理が終了したシリンダヘッド40の様子を示す図である。シリンダヘッド40は、接合面42を有する一体構造で、接合面42は、アルミニウム合金鋳物の溶体化処理の後の時効処理条件においてアルミニウム合金鋳物内に拡散された低融点金属の接合層44を含んでいる。また、この接合面42は、図2(a)における仮想切断面18、あるいは図2(b)の実際の切断面20,22に相当するので、仮にこのシリンダヘッド40を接合面42に沿って分解し、分解面で開いたとすれば、ウオータジャケット部分が開口するように現れる。また、接合層44の組成は、元々のアルミニウム合金材料の母材に、それを構成するものとは異なる金属元素が共晶型あるいは固溶析出型で存在する。したがって、公知の元素分析法を用いて深さ方向の元素分布を調べることで接合層44の組成及びその接合性能を評価することができる。
【実施例1】
【0032】
Siを7質量%、Cuを0.5質量%、Mgを0.35質量%、残部Alの成分系のアルミニウム合金を用いて、ウオータジャケットを含むシリンダヘッドを鋳造した。鋳造後、長手方向を含む1つの切断面で切断し、ウオータジャケット部分が開口された上下2つのシリンダヘッド部品を得た。この上下2つのシリンダヘッド部品のそれぞれを、530℃5時間の溶体化温度に保持した後、水冷で焼入れすることで溶体化処理を行った。その後機械加工により、合わせ面の酸化膜を除去し、Al−92質量%のGa合金の金属薄膜を合わせ面に挿入し、位置決め後組付治具で加圧固定、140℃4時間の時効接合処理を行った。冷却は空冷である。
【0033】
比較例1として、シリンダヘッドを鋳造したのち、従来の方法による溶体化処理及び人工時効処理を行った。アルミニウム合金の組成、溶体化処理条件は実施例と同じであり、人工時効処理条件は実施例の時効接合処理条件と同じである。
【0034】
比較例2として、比較例1において溶体化処理の焼入れ条件を水冷でなく空冷とした。その他の条件は比較例1と同様である。
【0035】
図3は、実施例、比較例1、比較例2によって得られたそれぞれのシリンダヘッドについて、残留応力と硬さの相対的な相違を示す図である。縦軸には、比較例1の残留応力の値、硬さの値をそれぞれ100としたときの、残留応力の値、硬さの値が取られる。残留応力の値は、例えば、シリンダヘッドの残留応力が発生し易い部位を一部切断し、そのときの歪等の変化を検出することで測定できる。硬さは、シリンダヘッドの残留応力が発生し易い部位を所定の硬度計で測定することで得られる。
【0036】
図3に示されるように、実施例のシリンダヘッドにおける残留応力の大きさは、比較例1、すなわち標準的な従来技術におけるシリンダヘッドにおける残留応力の大きさ1/10に低減する。その一方で、硬度は、比較例1と同じである。すなわち、強度を損なうことなく、残留応力の発生が大幅に抑制されることがわかる。比較例2は、焼入れを空冷とするもので、水冷焼入れの比較例1に比べ残留応力をやはり大幅に低下させることができるが、溶体化処理が不十分となるので、硬さに代表される強度が十分に確保できていないことがわかる。
【0037】
このように、シリンダヘッドのウオータジャケットが開放することで、表面積の拡大と拘束部分がなくなり、溶体化処理の水冷においてシリンダヘッド全体が均一冷却され、引張残留応力が大幅に除去される。これによって、強度及び延性を確保しつつ疲労強度が向上する。接合面も、そこに挿入されたインサート材である低融点金属薄膜により析出強化がなされるため、接合面において母材より強度が低下することがない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る実施の形態において、ウオータジャケットを含むシリンダヘッドの製造方法の手順を示すフローチャートである。
【図2】本発明に係る実施の形態において、製造方法の各手順の様子を模式的な形状を用いて示す図である。
【図3】実施例、比較例1、比較例2によって得られたそれぞれのシリンダヘッドについて、残留応力と硬さの相対的な相違を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
10 シリンダヘッド鋳物体、12,14 部品、16 上面形状、18 仮想切断面、20,22 切断面、26 溶体化熱処理装置、28 焼入れ水槽、30 低融点金属薄膜、32 組付加圧治具、34 時効接合処理装置、40 シリンダヘッド、42 接合面、44 接合層。




 

 


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