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発明の名称 エンジンブロックの製造方法、及びエンジンブロック製造用中子
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−29954(P2007−29954A)
公開日 平成19年2月8日(2007.2.8)
出願番号 特願2005−212155(P2005−212155)
出願日 平成17年7月22日(2005.7.22)
代理人 【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
発明者 小林 日出夫 / 蟻沢 克彦 / 山下 芳雄 / 林 邦彦
要約 課題
エンジンブロック内に、所定量の潜熱蓄熱材を、不純物の混入なく、確実に封入し得るエンジンブロックの製造方法を提供する。また、当該製造方法に対して好適に用いられ得るエンジンブロック製造用中子を提供する。

解決手段
蓄熱材収容室形成用塩中子63は、無水酢酸ナトリウムから構成されている。蓄熱材収容室形成用塩中子63の内部には、空洞部63aが形成されている。蓄熱材収容室形成用塩中子63を支持するための支持中子66及び電極付き支持中子67が、空洞部63aにおける開口部63b及び63cに挿入される。キャビティ57に溶融金属を流し込んで冷却・固化させることで得られたシリンダヘッド成型品から、支持中子66のみを除去して空洞部63aに水を注入することによって、当該成型品内に酢酸ナトリウム3水和物からなる潜熱蓄熱材が収容される。
特許請求の範囲
【請求項1】
エンジンブロックの製造方法において、
水和物が潜熱蓄熱性を有する潜熱蓄熱材の無水物からなる塩中子を用いて、当該エンジンブロックを鋳造し、
前記塩中子が収容されている空間内に水を注入することで、前記潜熱蓄熱材を水和させる、
工程を含んでなる、エンジンブロックの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の、エンジンブロックの製造方法であって、
前記エンジンブロックを鋳造する工程は、
前記エンジンブロックにおける冷却水通路であるウォータージャケットを形成するためのウォータージャケット用中子を、前記塩中子と離隔するように配置することで、前記潜熱蓄熱材が収容される蓄熱材収容室を、前記ウォータージャケットと連通していない独立の空間として形成する工程であることを特徴とする、エンジンブロックの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の、エンジンブロックの製造方法であって、
前記エンジンブロックを鋳造する工程は、
前記エンジンブロックを構成する材料よりも融点が高い材質からなり、前記塩中子を支持するための支持中子を、前記塩中子に形成された穴に挿入する工程を含み、
前記潜熱蓄熱材を水和させる工程は、
前記塩中子に形成された前記穴に、前記水を注入する工程である、
エンジンブロックの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の、エンジンブロックの製造方法であって、
前記支持中子を挿入する工程は、
前記潜熱蓄熱材の水和物内にて電圧が印加される一対の電極を備えた前記支持中子を、前記電極が前記穴内に収容されるように、前記穴に挿入する工程である、
エンジンブロックの製造方法。
【請求項5】
エンジンブロックの内部に、液状又はゲル状の物体を収容可能な空洞部を形成するための、エンジンブロック製造用中子において、
水和物が潜熱蓄熱性を有する潜熱蓄熱材の無水物から構成されたことを特徴とする、エンジンブロック製造用中子。
【請求項6】
請求項5に記載の、エンジンブロック製造用中子であって、
当該エンジンブロック製造用中子には、前記潜熱蓄熱材の無水物を、所定の水和状態とするために必要な水の量に相当する体積の空洞部が形成されていて、
前記空洞部は、当該エンジンブロック製造用中子の外部に向かって開口する開口部を有することを特徴とする、エンジンブロック製造用中子。
【請求項7】
請求項6に記載の、エンジンブロック製造用中子において、
前記エンジンブロックを構成する材料よりも融点が高い材質からなり、前記潜熱蓄熱材の水和物内にて電圧が印加される一対の電極を備えた構成を有する支持中子を、さらに備え、
前記支持中子は、前記開口部を塞ぐように配置されていることを特徴とする、エンジンブロック製造用中子。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンブロックの製造方法に関する。また、本発明は、エンジンブロックの内部に、液状又はゲル状の物体を収容可能な空洞部を形成するために用いられるエンジンブロック製造用中子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、潜熱蓄熱材を用いてエンジンの暖機の進行を促進し得る構成が、広く知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の装置構成においては、シリンダブロックに蓄熱材収容室が形成されている。この蓄熱材収容室は、シリンダを囲むように形成されている。この蓄熱材収容室内に、例えば、酢酸ナトリウム3水和物(CH3COONa・3H2O)からなる潜熱蓄熱材が収容されている。この酢酸ナトリウム3水和物は、融点(58℃)を超える温度から融点以下の温度に冷却されてもゲル相から固相に相変化しない過冷却性を有していて、マイナス20℃〜マイナス30℃程度まで冷却されても潜熱を蓄えたまま過冷却状態を維持する特性を有している。また、蓄熱材収容室には、潜熱蓄熱材に電気的衝撃を与えるための一対の電極が配設されている。
【0004】
かかる構成によれば、運転中のエンジンからの伝熱によって前記潜熱蓄熱材が融点以上に加熱されることで、当該潜熱蓄熱材がゲル状となる。その後、エンジンが停止され、前記潜熱蓄熱材の温度が融点以下に低下しても、当該潜熱蓄熱材はゲル相から固相に相変化せずに過冷却状態となる。これにより、当該潜熱蓄熱材に潜熱が保持される。
【0005】
そして、始動時に、前記一対の電極間に電圧が印加されることで、過冷却状態のゲル状の前記潜熱蓄熱材に電気的な刺激が与えられる。これにより、当該潜熱蓄熱材の固相への相変化が促進され、当該潜熱蓄熱材から潜熱が速やかに放出される。
【特許文献1】特開平11−182393号公報(段落0022〜0023、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1に記載の構成のように、前記潜熱蓄熱材を収容するための前記蓄熱材収容室をエンジンブロック(シリンダブロック)の内部に形成した構成においては、当該蓄熱材収容室内に前記潜熱蓄熱材を適切に収容させることが困難であった。
【0007】
すなわち、前記蓄熱材収容室は、通常、以下のようにして形成される。まず、当該蓄熱材収容室に相当する形状を有する砂中子を用いて、鋳造によりエンジンブロック(シリンダブロック)が成型される。次に、鋳造後のエンジンブロック内から砂中子が取り除かれることで、前記蓄熱材収容室が形成される。この砂中子の除去工程において、砂中子を構成する材料が前記蓄熱材収容室内に残留した場合、当該残留物は前記潜熱蓄熱材中の不純物となる。この不純物が前記潜熱蓄熱材中に残留することで、当該潜熱蓄熱材による潜熱の蓄熱作用及び放出作用が適切に行われないことがあり得る。
【0008】
また、前記蓄熱材収容室は、通常、複雑な形状に形成されるため、当該蓄熱材収容室内に前記潜熱蓄熱材を所定量封入する作業が困難となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、エンジンブロック内に、所定量の潜熱蓄熱材を、不純物の混入なく、確実に封入し得るエンジンブロックの製造方法を提供することにある。また、本発明の目的は、上述のエンジンブロックの製造方法に対して好適に用いられ得る、エンジンブロック製造用中子を提供することにある。
【0010】
(M1)かかる目的を達成するために、本発明のエンジンブロックの製造方法は、以下の工程を含む。(p1)水和物が潜熱蓄熱性を有する潜熱蓄熱材の無水物からなる塩中子を用いて、当該エンジンブロックを鋳造する。(p2)前記塩中子が収容されている空間内に水を注入することで、前記潜熱蓄熱材を水和させる。
【0011】
前記潜熱蓄熱材の無水物は、前記エンジンブロックを構成する材料(鉄鋼やアルミニウム合金等)よりも融点が高い。よって、当該無水物は、前記エンジンブロックを鋳造する際の塩中子として良好に機能し得る。したがって、前記エンジンブロックを鋳造する工程(p1)において、前記塩中子は、鋳造によって得られた当該エンジンブロックの成型品の内部にて所定の形状を保ったまま残留する。
【0012】
続いて、前記潜熱蓄熱材を水和させる工程(p2)において、当該成型品の内部における、前記塩中子が収容されている空間内に水が注入される。これにより、当該成型品の内部に残留していた塩中子が前記潜熱蓄熱材の水和物に変化し、当該水和物が収容されている空間(前記塩中子が収容されていた空間)によって蓄熱材収容室が形成される。
【0013】
この潜熱蓄熱材の水和物の融点は、エンジンの暖機運転が終了した後の冷却液(クーラント)の温度よりも低温である。よって、当該水和物が運転中のエンジンからの伝熱によって前記潜熱蓄熱材が融点以上に加熱されることで、次回のエンジン始動時のために当該水和物に潜熱が蓄熱され得る。
【0014】
このように、上述の方法においては、前記蓄熱材収容室を形成するための塩中子が、前記潜熱蓄熱材の無水物によって構成されている。そして、前記エンジンブロックの鋳造後に当該塩中子に水が加えられることで、前記潜熱蓄熱材の水和物が前記蓄熱材収容室内に収容される。よって、上述の方法によれば、前記潜熱蓄熱材を収容するための前記蓄熱材収容室が簡易な工程で確実に形成され得る。また、上述の方法によれば、当該蓄熱材収容室内に所定量の前記潜熱蓄熱材が確実に封入され得る。さらに、上述の方法によれば、砂中子の残留物等の不純物の、前記潜熱蓄熱材中への混入が防止され得る。
【0015】
なお、ここでいう「エンジンブロック」には、シリンダブロックやシリンダヘッド等が含まれる。すなわち、本方法は、例えば、シリンダブロックの製造方法や、シリンダヘッドの製造方法等として適用され得る。さらに、ここでいう「エンジンブロック」には、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の、あらゆる種類のエンジンのエンジンブロックが含まれる。
【0016】
(M2)前記(M1)に記載の方法において、前記エンジンブロックを鋳造する工程(p1)は、前記エンジンブロックにおける冷却水(クーラント)の通路であるウォータージャケットを形成するためのウォータージャケット用中子を、前記塩中子と離隔するように配置することで、前記潜熱蓄熱材が収容される前記蓄熱材収容室を、前記ウォータージャケットと連通していない独立の空間として形成する工程であってもよい。
【0017】
かかる方法によれば、前記蓄熱材収容室内にて前記潜熱蓄熱材が前記クーラントと混合することが防止される。これにより、前記蓄熱材収容室内における前記潜熱蓄熱材の含水率が、前記クーラントとの混合によって変動することが抑制される。また、前記クーラントの流動によって前記蓄熱材収容室から前記潜熱蓄熱材が移動してしまうことが防止される。よって、本方法によれば、当該蓄熱材収容室内における安定的な潜熱の蓄熱・放出動作が行われ得る、好適な構成のエンジンブロックを、簡易な製造工程で製造することが可能になる。
【0018】
(M3)前記(M1)又は(M2)に記載の方法において、前記エンジンブロックを鋳造する工程(p1)が、前記塩中子に形成された穴に、当該塩中子を支持するための支持中子を挿入する工程(p11)を含んでいて、前記潜熱蓄熱材を水和させる工程(p2)が、前記塩中子に形成された前記穴に、前記水を注入する工程であってもよい。ここで、前記支持中子は、前記エンジンブロックを構成する材料よりも融点が高い材質からなる。
【0019】
かかる方法によれば、前記エンジンブロックを鋳造する工程(p1)において、前記水が注入される前記穴が前記支持中子によって塞がれることで、当該穴への溶湯の流入が抑制され得る。また、前記支持中子を除去した後に、前記穴に前記水が注入されることで、前記塩中子に対する前記水の添加が簡易な工程で確実に行われ得る。ここで、前記穴の寸法を適宜設定することにより、前記蓄熱材収容室内における前記潜熱蓄熱材の水和状態が、簡易な工程で最適に設定され得る。
【0020】
(M4)前記(M3)に記載の方法の、前記支持中子を挿入する工程(p11)において、前記支持中子として、前記潜熱蓄熱材の水和物内にて電圧が印加される一対の電極を備えたもの(以下、「電極付き支持中子」と称する)が用いられてもよい。すなわち、前記支持中子を挿入する工程(p11)は、前記電極付き支持中子を、前記電極が前記穴内に収容されるように、前記穴に挿入する工程であってもよい。
【0021】
ここで、例えば、前記(M3)に記載の方法にて前記塩中子を支持する複数の前記支持中子のうちの1つが、前記電極付き支持中子であればよい。この場合、前記潜熱蓄熱材を水和させる工程(p2)において、前記電極付き支持中子が前記穴に装着された状態のまま、当該電極付き支持中子以外の他の前記支持中子が前記穴から脱着され、当該支持中子が脱着された当該穴に前記水が注入される。
【0022】
かかる方法によれば、前記エンジンブロックを鋳造する工程(p1)において、前記水が注入される前記穴が前記電極付き支持中子によって塞がれることで、当該穴への溶湯の流入が抑制され得る。また、当該電極付き支持中子は、前記エンジンブロックを鋳造する工程(p1)によって前記エンジンブロックの成型品が得られた後において、前記蓄熱材収容室を構成する空間から前記潜熱蓄熱材が漏れ出さないようにするための栓としても機能する。
【0023】
以上の通り、本方法によれば、前記潜熱蓄熱材を前記蓄熱材収容室内に確実に収容させることができる。
【0024】
さらに、前記電極付き支持中子は、前記潜熱蓄熱材を水和させる工程(p2)の後において、過冷却状態の前記潜熱蓄熱材から潜熱を放出させるための電極を支持する電極ホルダとして機能する。よって、前記塩中子を支持する複数の前記支持中子のうちの1つが、前記電極付き支持中子である場合、本方法によれば、前記電極ホルダを前記エンジンブロックに対して簡略な工程で装着することができる。
【0025】
(Pd1)また、本発明のエンジンブロック製造用中子は、エンジンブロックの内部に、液状又はゲル状の物体を収容可能な空洞部を形成するためのエンジンブロック製造用中子であって、水和物が潜熱蓄熱性を有する潜熱蓄熱材の無水物から構成されたことを特徴としている。
【0026】
かかる構成を有する本発明のエンジンブロック製造用中子を用いて、エンジンブロックを鋳造することにより、当該鋳造によって得られたエンジンブロックの成型品の内部の所定の位置にて、当該エンジンブロック製造用中子が、所定の形状を保ったまま収容される。その後、当該エンジンブロック製造用中子が収容されている空間内に水が注入されることで、当該空間内の前記エンジンブロック製造用中子が、前記潜熱蓄熱材の水和物に変化し、当該水和物が収容されている空間(前記エンジンブロック製造用中子が収容されていた空間)によって蓄熱材収容室が形成される。
【0027】
このように、本発明のエンジンブロック製造用中子によれば、前記潜熱蓄熱材を収容するための蓄熱材収容室が簡易な工程で確実に形成され得る。また、本発明のエンジンブロック製造用中子によれば、当該蓄熱材収容室内に前記潜熱蓄熱材が確実に収容され得る。さらに、本発明のエンジンブロック製造用中子によれば、砂中子の残留物等の不純物の、前記潜熱蓄熱材中への混入が防止され得る。
【0028】
(Pd2)前記構成(Pd1)のエンジンブロック製造用中子には、前記潜熱蓄熱材の無水物を、所定の水和状態とするために必要な水の量に相当する体積の空洞部が形成されていてもよい。この空洞部は、当該中子の外部に向かって開口する開口部を有する。
【0029】
かかる構成によれば、前記開口部から前記空洞部内に前記水が注入されることで、前記蓄熱材収容室内の前記潜熱蓄熱材が所定の水和状態となる。よって、前記空洞部の体積を適切に設定することで、当該蓄熱材収容室内の前記潜熱蓄熱材の水和状態が、簡易な工程で最適に設定され得る。
【0030】
(Pd3)前記構成(Pd2)のエンジンブロック製造用中子が、前記潜熱蓄熱材の水和物内にて電圧が印加される一対の電極を備えた構成を有する支持中子をさらに備えていて、当該支持中子が、前記開口部を塞ぐように配置されていてもよい。この支持中子は、前記エンジンブロックを構成する材料よりも融点が高い材質から構成されている。
【0031】
ここで、例えば、前記エンジンブロック製造用中子を支持するために当該エンジンブロック製造用中子に装着される複数の中子のうちの1つが、前記支持中子であればよい。
【0032】
かかる構成によれば、前記支持中子は、前記エンジンブロックを鋳造する際に、前記蓄熱材収容室を構成する空間内に溶湯が流入しないようにするための栓として機能する。また、前記支持中子は、鋳造によって前記エンジンブロックの成型品が得られた後において、前記蓄熱材収容室を構成する空間から前記潜熱蓄熱材が漏れ出さないようにするための栓として機能する。
【0033】
以上の通り、前記構成によれば、前記潜熱蓄熱材を前記蓄熱材収容室内に確実に収容させることができる。
【0034】
さらに、前記支持中子は、過冷却状態の前記潜熱蓄熱材から潜熱を放出させるための電極を支持する電極ホルダとして機能する。よって、前記構成によれば、前記エンジンブロック製造用中子を支持する複数の中子のうちの1つが、前記一対の電極を備えた前記支持中子である場合、前記電極ホルダを前記エンジンブロックに対して簡略な工程で装着することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、エンジンブロック内に、所定量の潜熱蓄熱材を、不純物の混入なく、確実に封入することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態(本願の出願時点において取り敢えず出願人が最良と考えている実施形態)について図面を参照しつつ説明する。
【0037】
<エンジンの概略構成>
図1は、本発明が適用され得るディーゼルエンジンの概略構成を示す側断面図である。また、図2は、当該エンジンの別の断面による側断面図である。図3は、当該エンジンが直列4気筒の構成を有している場合の、当該エンジンの平断面図である。ここで、図1におけるA−A断面図が図3に相当し、図3におけるB−B断面図が図1に相当し、図3におけるC−C断面図が図2に相当する。
【0038】
図1を参照すると、エンジン10は、シリンダブロック20と、シリンダヘッド30とから構成されている。シリンダブロック20の内部には、シリンダ21が形成されている。このシリンダ21を囲むように、シリンダブロック20には、冷却水(クーラント)の通路であるウォータージャケット22が形成されている。シリンダブロック20の上端面には、シリンダヘッド30が接合されている。シリンダヘッド30の、シリンダブロック20と対向する底面には、燃焼室CCを構成する凹部31が形成されている。この凹部31と連通するように、シリンダヘッド30には、ガス流路としての吸気ポート32と排気ポート33とが形成されている。
【0039】
吸気ポート32は、燃焼室CCに導入される吸入空気の流路であって、凹部31にて開口する吸気ポート開口32aを有している。排気ポート33は、燃焼室CCにて発生した燃焼ガスを排出するためのガス流路であって、凹部31にて開口する排気ポート開口33aを有している。吸気ポート開口32aと排気ポート開口33aとは、エンジン10の幅方向(図中左右方向:以下「エンジン幅方向」と略称する)について、シリンダ21の中心を挟んで略対象に形成されている。吸気ポート32は、吸気ポート開口32aからエンジン幅方向における一方(図中右方向)に向かって外側に延びるように形成されている。排気ポート33は、排気ポート開口33aからエンジン幅方向における他方(図中左方向)に向かって外側に延びるように形成されている。
【0040】
シリンダヘッド30における、吸気ポート32の下側には、潜熱蓄熱材を収容するための空間である蓄熱材収容室34が形成されている。この蓄熱材収容室34内には、酢酸ナトリウム3水和物(CH3COONa・3H2O:融点58℃)からなる潜熱蓄熱材が収容されている。この潜熱蓄熱材は、エンジン10の暖機運転終了時点の冷却水温(例えば82℃程度)よりも低い融点を有する材料である。また、この潜熱蓄熱材は、当該融点を超える温度に加熱されることで液相(ゲル相)となった後、融点以下の温度(マイナス20℃〜マイナス30℃程度まで)に冷却されても固相に相変化を起こさず潜熱を保持したまま液相(ゲル相)の状態を保つ特性(すなわち過冷却性)を有し、融点以下の温度にて外部からの刺激により過冷却状態が解除されることで潜熱を放出し得る材料である。
【0041】
シリンダヘッド30には、クーラントの通路であるウォータージャケット35が形成されている。このシリンダヘッド30における蓄熱材収容室34とウォータージャケット35とは、互いに独立した空間として(互いに連通しないように)形成されている。ウォータージャケット35は、排気ポート33の下方に形成された排気ポート下部ジャケット35aと、排気ポート33の上方に形成された排気ポート上部ジャケット35bと、吸気ポート32と排気ポート33との間に形成されたポート間ジャケット35cとからなる。これらの排気ポート下部ジャケット35a、排気ポート上部ジャケット35b、及びポート間ジャケット35cは、クーラントが通行可能なクーラント通路を介して互いに連通されている。
【0042】
蓄熱材収容室34と、ポート間ジャケット35cとの間には、吸気ポート開口32aを開閉するための吸気バルブ41が介装されている。また、ポート間ジャケット35cと、排気ポート上部ジャケット35bとの間には、排気ポート開口33aを開閉するための排気バルブ42が介装されている。
【0043】
図2を参照すると、シリンダヘッド30には、貫通孔としての燃料噴射ノズル取付孔36が形成されている。この燃料噴射ノズル取付孔36は、燃焼室CC内にて開口する貫通孔として、蓄熱材収容室34と排気ポート下部ジャケット35aとの間に形成されている。
【0044】
図3を参照すると、蓄熱材収容室34、及び排気ポート下部ジャケット35aは、気筒配列方向(シリンダ21の配列方向、すなわち図中上下方向)に沿って、複数気筒に跨るように一体に形成されている。この蓄熱材収容室34の前記気筒配列方向における両端には、貫通孔34b及び34cが形成されている。貫通孔34bにはシール栓37が装着されていて、当該シール栓37によって貫通孔34bが液密的に閉塞されている。貫通孔34cには電極付きシール栓38が装着されていて、当該電極付きシール栓38によって貫通孔34cが液密的に閉塞されている。電極付きシール栓38には、蓄熱材収容室34内に収容された潜熱蓄熱材の過冷却状態を解除するための一対の発核用電極38a及び38bが装着されている。そして、当該一対の発核用電極38a及び38bが蓄熱材収容室34内に露出するように、当該電極付きシール栓38が貫通孔34cに装着されている。
【0045】
<シリンダヘッド鋳造用金型の構成>
図4は、図1ないし図3に示されているシリンダヘッド30を鋳造するための金型の構成を示す側断面図である。当該金型50は、固定盤51と、上部可動盤52と、一対の側盤53(吸気サイド側盤53a及び排気サイド側盤53b)と、インサート型54と、一対の側型55(吸気サイド側型55a及び排気サイド側型55b)と、上型56とを備えている。
【0046】
固定盤51は、平板状の部材であって、当該金型50の底部に配置されている。上部可動盤52は、固定盤51と平行な平板状の部材であって、当該固定盤51の上方に配置されている。一対の側盤53における、吸気ポート32(図1及び図3参照)が形成される側に位置する吸気サイド側盤53aと、排気ポート33(図1及び図3参照)が形成される側に位置する排気サイド側盤53bとの略中間位置には、燃焼室CC(図1参照)を形成するためのインサート型54が配置されている。このインサート型54は、固定盤51に形成された凹部51aに収容されることで、当該固定盤51によって支持されている。
【0047】
吸気サイド側盤53aの「内側」(当該金型50の内部に向かう側:以下同様)には、吸気サイド側型55aが配置されている。また、排気サイド側盤53bの内側には、排気サイド側型55bが配置されている。さらに、一対の側型55(吸気サイド側型55a及び排気サイド側型55b)の上端部には、上型56が支持されている。この上型56は、吸気サイド側型55aと排気サイド側型55bとの間で架け渡されるように配置されている。そして、固定盤51、インサート型54、吸気サイド側型55a、排気サイド側型55b、及び上型56によって囲まれる空間によって、シリンダヘッド30(図1ないし図3参照)を鋳造するためのキャビティ57が形成されている。
【0048】
キャビティ57内には、吸気ポート32(図1参照)を形成するための吸気ポート形成用砂中子61が配置されている。この吸気ポート形成用砂中子61の一端は、吸気サイド側型55aによって支持されている。また、吸気ポート形成用砂中子61の他端は、インサート型54によって支持されている。同様に、キャビティ57内には、排気ポート33(図1参照)を形成するための排気ポート形成用砂中子62が配置されている。
【0049】
キャビティ57内には、蓄熱材収容室34を形成するための蓄熱材収容室形成用塩中子63が配置されている。この蓄熱材収容室形成用塩中子63は、無水酢酸ナトリウム(CH3COONa)から構成されている。また、キャビティ57内には、ウォータージャケット35(図1ないし図3参照)を形成するためのウォータージャケット形成用砂中子64が配置されている。蓄熱材収容室形成用塩中子63と、ウォータージャケット形成用砂中子64とは、クーラントが通行可能なクーラント通路が形成されないように、互いに離隔して配置されている。
【0050】
吸気バルブ41が配置される貫通孔を形成するための吸気バルブガイド形成ピン71、及び排気バルブ42が配置される貫通孔を形成するための排気バルブガイド形成ピン72が、金型50における上部可動盤52及び上型56を貫通するように配置されている。
【0051】
<蓄熱材収容室形成用塩中子の周辺の構成>
図5は、図4に示されている蓄熱材収容室形成用塩中子63の構成を説明するために、キャビティ57の内部の構造を示す平断面図である。この図5は、図4におけるD−D断面図に相当する図である。
【0052】
図5に示されているように、燃料噴射ノズル取付孔形成用砂中子65が、各気筒に対応するように配置されている。
【0053】
蓄熱材収容室形成用塩中子63の内部には、空洞部63aが形成されている。この空洞部63aは、蓄熱材収容室形成用塩中子63の長手方向(前記気筒配列方向)に沿って形成された貫通孔から構成されている。また、当該空洞部63aは、蓄熱材収容室形成用塩中子63の前記長手方向における両端の開口部63b及び63cにて開口するように形成されている。
【0054】
蓄熱材収容室形成用塩中子63の前記長手方向における一端側に形成された開口部63bには、支持中子66が挿入されていて、他端側に形成された開口部63cには、電極付き支持中子67が挿入されている。すなわち、蓄熱材収容室形成用塩中子63は、開口部63b及び63cに挿入された支持中子66及び電極付き支持中子67によって、キャビティ57内にて支持されている。
【0055】
開口部63b及び63cに支持中子66及び電極付き支持中子67が装着された状態における空洞部63aの内部の容積が「所定の容積」となるように、当該空洞部63aの形状・寸法が設定されている。この「所定の容積」は、無水酢酸ナトリウム(CH3COONa)からなる当該蓄熱材収容室形成用塩中子63のほぼ全量が酢酸ナトリウム3水和物(CH3COONa・3H2O)となるために必要な常温(25℃)の水の体積に相当する容積に設定されている。
【0056】
電極付き支持中子67は、図3に示されている電極付きシール栓38に相当する部材であって、シリンダヘッド30(図1ないし図3参照)を構成する金属材料よりも融点の高い材質(例えばセラミックス)から構成されている。一対の電極67a及び67bは、上述の電極付きシール栓38における発核用電極38a及び38bに相当する部材であり、銀から構成されている。
【0057】
<エンジンの動作説明>
次に、上述の構成のエンジン10の動作について、図1ないし図3を参照しつつ説明する。
【0058】
暖機運転終了後は、ウォータージャケット22及び35内のクーラントが前記温度(82℃程度)よりも高温の状態となる。このとき、蓄熱材収容室34内に収容されている潜熱蓄熱材(酢酸ナトリウム3水和物:融点58℃)の全量が、融点よりも高温となる。これにより、当該潜熱蓄熱材はゲル相となる。その後、エンジンが停止され、当該潜熱蓄熱材が外気温程度にまで冷却されても、当該潜熱蓄熱材は、固相に相変化せずゲル相のまま過冷却状態となることで潜熱を保持する。
【0059】
その後、エンジンが再始動されて再び暖機運転が行われる際、電極付きシール栓38に設けられた発核用電極38aと発核用電極38bとの間に所定の電圧が印加される。これにより、当該潜熱蓄熱材の過冷却状態が局部的に解除され、微小な固相の核が生成する(発核動作)。この固相の核が、その周囲の過冷却状態の潜熱蓄熱材と接触することで、当該固相の核の周囲の潜熱蓄熱材の過冷却状態が順次解除され、潜熱蓄熱材に蓄熱された潜熱が放出される。この放出された潜熱が、シリンダヘッド30に伝わることで、冷間始動時における暖機運転の進行が促進され得る。
【0060】
<シリンダヘッドの製造方法>
図6は、図4及び図5に示されている構成の金型50を用いて、図1ないし図3に示されているシリンダヘッド30を鋳造する場合の、各工程を示した流れ図である。以下、図6、及び必要に応じてその他の図面を参照しつつ、当該シリンダヘッド30の製造方法について説明する。
【0061】
まず、ステップ(以下、「ステップ」を「S」と略称する)610において、図4及び図5に示されているように、金型50に形成されたキャビティ57内に中子がセットされる(中子セット工程)。すなわち、図5に示されているように、蓄熱材収容室形成用塩中子63の開口部63b及び63cに、支持中子66及び電極付き支持中子67を挿入することで、蓄熱材収容室形成用塩中子63がキャビティ57内の所定の位置にて支持される。また、図4及び図5に示されているように、蓄熱材収容室形成用塩中子63は、ウォータージャケット形成用砂中子64と離隔するように、当該キャビティ57内に配置される。
【0062】
次に、S620において、図4及び図5におけるキャビティ57内に、溶融した金属(溶湯)が流し込まれる(注型工程)。ここで、蓄熱材収容室形成用塩中子63は、当該溶湯よりも融点が高い無水酢酸ナトリウム(CH3COONa)から構成されている。また、電極付き支持中子67の本体部分も、当該溶湯よりも融点が高い材質(セラミックス等)から構成されている。よって、当該蓄熱材収容室形成用塩中子63は、注型工程S620において溶融されることなく、蓄熱材収容室34(図1ないし図3参照)の形状に相当する所定の形状を保持しつつ、当該蓄熱材収容室34が形成されるべき所定の位置に支持される。
【0063】
このとき、電極付き支持中子67に備えられた銀電極である一対の電極67a及び67bは、蓄熱材収容室形成用塩中子63の内部に形成された空間である空洞部63a内にて露出するように配置されている。すなわち、一対の電極67a及び67bのうちの、キャビティ57内に位置する部分は、溶湯よりも融点が高い電極付き支持中子67の本体部分及び蓄熱材収容室形成用塩中子63によって覆われている。よって、注型工程S620において当該電極67a及び67bが溶湯からの伝熱によって溶融・変形することが防止され得る。
【0064】
その後(溶湯が固化・冷却された後)、S630において、金型50が開かれ、キャビティ57の形状に対応した形状を有する成型品が金型50から取り出される(型開き工程)。なお、この成型品が、図1ないし図3に示されているシリンダヘッド30となるまでには、研磨等の所定の機械加工がなされる必要がある。もっとも、当該成型品とシリンダヘッド30とは、基本的な形状において略同一である。そこで、以下の説明では、説明の簡略化のため、当該成型品を「シリンダヘッド30」と略称する。
【0065】
上述したように、シリンダヘッド30の鋳造工程(p1)は、中子セット工程S610、注型工程S620、及び型開き工程S630からなる。また、中子セット工程S610には、蓄熱材収容室形成用塩中子63に形成された開口部63b及び63cに、支持中子66及び電極付き支持中子67を挿入する工程(p11)を含む。
【0066】
続いて、S640において、当該成型品から、吸気ポート形成用砂中子61、排気ポート形成用砂中子62、及びウォータージャケット形成用砂中子64(図4参照)、並びに燃料噴射ノズル取付孔形成用砂中子65(図5参照)が除去される(砂中子除去工程)。
【0067】
続いて、S650において、当該成型品から支持中子66が脱着され、当該支持中子66が装着されていた開口部63bを介して、蓄熱材収容室形成用塩中子63に形成された空洞部63a内に水が注入される。すなわち、シリンダヘッド30に形成された貫通孔34b(図3参照)を介して、無水酢酸ナトリウムからなる蓄熱材収容室形成用塩中子63を収容している蓄熱材収容室34(図1ないし図3参照)内に、上述の「所定の容積」に相当する「所定量」の水が注入される。これにより、S650において、当該蓄熱材収容室34内に収容された無水酢酸ナトリウムのほぼ全量が、酢酸ナトリウム3水和物となる(潜熱蓄熱材調製工程)。その後、図3に示されているように、上述の貫通孔34bにシール栓37が装着される。これにより、図1ないし図3の蓄熱材収容室34内に、所定の水和状態の潜熱蓄熱材が液密的に収容される。
【0068】
上述したように、潜熱蓄熱材を水和させる工程(p2)は、潜熱蓄熱材調製工程S650からなる。
【0069】
<本実施形態の作用・効果>
本実施形態の蓄熱材収容室形成用塩中子63、支持中子66、電極付き支持中子67、及びこれらを用いたシリンダヘッド30の製造方法によれば、以下の通りの作用・効果を奏する。
【0070】
・本実施形態においては、蓄熱材収容室34を形成するための蓄熱材収容室形成用塩中子63が、溶湯よりも融点が高い無水酢酸ナトリウム(潜熱蓄熱材としての酢酸ナトリウム3水和物に対応する無水物)から構成されている。そして、シリンダヘッド30の鋳造後に当該蓄熱材収容室形成用塩中子63に水が加えられることで、潜熱蓄熱材(酢酸ナトリウム3水和物)が蓄熱材収容室34内に収容される。よって、本実施形態によれば、所定の形状の蓄熱材収容室34が、簡易な工程で確実に形成され得る。また、本実施形態によれば、蓄熱材収容室34内に所定量の潜熱蓄熱材が確実に封入され得る。さらに、本実施形態によれば、不純物(砂中子の残留物等)の、潜熱蓄熱材中への混入が防止され得る。
【0071】
・本実施形態においては、ウォータージャケット形成用砂中子64と蓄熱材収容室形成用塩中子63とが離隔するように配置されることで、蓄熱材収容室34が、ウォータージャケット35と連通していない独立の空間として形成される。よって、本実施形態によれば、蓄熱材収容室34内における潜熱蓄熱材とクーラントとの混合が抑制される。これにより、蓄熱材収容室34内における潜熱蓄熱材の含水率ないし水和状態の、クーラントとの混合による変動が抑制される。また、クーラントの流動によって蓄熱材収容室34から潜熱蓄熱材が流出してしまうことが防止される。
【0072】
・本実施形態においては、シリンダヘッド30を鋳造する工程のうちの、中子セット工程S610にて、蓄熱材収容室形成用塩中子63に形成された穴(空洞部63aにおける開口部63b及び63c)に、当該蓄熱材収容室形成用塩中子63を支持するための支持中子66及び電極付き支持中子67が挿入される。この支持中子66及び電極付き支持中子67は、シリンダブロック30を構成する材料よりも融点が高い材料から構成されている。その後、注型工程S620において、キャビティ57内に溶湯が注入される。よって、本実施形態によれば、注型工程S620において、蓄熱材収容室34を構成する空間内に溶湯が流入することが、支持中子66及び電極付き支持中子67によって抑制される。また、本実施形態によれば、シリンダヘッド30の成型後において、蓄熱材収容室34から潜熱蓄熱材の無水物が漏れ出すことが、支持中子66及び電極付き支持中子67によって抑制される。
【0073】
・本実施形態においては、蓄熱材収容室形成用塩中子63に形成された穴としての空洞部63aに、当該空洞部63aの容積に相当する「所定量」の水が注入された場合に、当該蓄熱材収容室形成用塩中子63を構成する無水酢酸ナトリウムのほぼ全量が酢酸ナトリウム3水和物となるように、当該空洞部63aの容積が設定されている。そして、注型・型開き後に、支持中子66のみが除去され、当該支持中子66が除去された開口部63bを介して、蓄熱材収容室形成用塩中子63に形成された空洞部63aに「所定量」の水が注入される。よって、本実施形態によれば、蓄熱材収容室形成用塩中子63に対する所定量の水の添加が簡易な工程で確実に行われ、蓄熱材収容室34内における潜熱蓄熱材の水和状態が簡易な工程で最適に設定され得る。
【0074】
・本実施形態においては、蓄熱材収容室形成用塩中子63に形成された穴(空洞部63aにおける開口部63b及び63c)に挿入される、当該蓄熱材収容室形成用塩中子63を支持するための中子の一方に、電極付き支持中子67が用いられる。この電極付き支持中子67は、電極付きシール栓38として機能する。すなわち、本実施形態によれば、電極付きシール栓38が装着されたままの状態で、シリンダヘッド30の鋳造による成型、及び当該シリンダヘッド30内の蓄熱材収容室34内における潜熱蓄熱材の調製が行われる。
【0075】
<変形例の示唆>
なお、上述の実施形態は、上述した通り、出願人が取り敢えず本願の出願時点において最良であると考えた本発明の代表的な実施形態を単に例示したものにすぎない。よって、本発明はもとより上述の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において種々の変形を施すことができることは当然である。
【0076】
以下、先願主義の下で本願の出願の際に追記し得る程度(時間の許す限り)で、変形例について幾つか例示するが、変形例とてこれらに限定されるものではないことはいうまでもない。本願発明を、上述の実施形態の記載に基づき限定解釈すること(特に、本発明の課題を解決するための手段を構成する各要素における、作用・機能的に表現されている要素を、実施形態等の記載に基づき限定解釈すること)は、先願主義の下で出願を急ぐ出願人の利益を不当に害する反面、模倣者を不当に利するものであって、発明の保護及び利用を目的とする特許法の目的に反し、許されない。
【0077】
(i)本発明は、上述の実施形態のようなディーゼルエンジン用途に限定されず、ガソリンエンジン等にも適用され得る。ここで、本発明が、ガソリンエンジンにおけるシリンダヘッドに適用された場合、冷間始動直後に当該シリンダヘッドが急速に温められることで、吸気ポート内壁への燃料ガスの凝結が抑制される。よって、当該冷間始動直後における空燃比の変動が抑制され得る。また、本発明は、シリンダヘッドのみならず、シリンダブロックにも適用され得る。
【0078】
(ii)本発明は、直列4気筒その他の直列エンジンの他にも、単気筒エンジンや、バンク角度が0度を超え180度以下のV型エンジン、及び水平対向エンジンにも適用され得る。ここで、本発明が複数気筒のエンジンに適用される場合、気筒毎に蓄熱材収容室34(蓄熱材収容室形成用塩中子63)及び電極付きシール栓38(電極付き支持中子67)が独立して別個に設けられていてもよい。
【0079】
(iii)潜熱蓄熱材の材質としては、潜熱蓄熱作用を奏する任意の物質が用いられ得る。例えば、酢酸ナトリウム、シュウ酸、酢酸マグネシウム、酢酸マンガン、硫酸ニッケル、硫酸マグネシウム、硫酸銅、硫酸亜鉛、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、及びこれらの水和物や、ナフタレン、パルミチン酸、安息香酸、高純度パラフィン等、及びこれらの混合物等が採用可能である。
【0080】
(iv)図1を参照すると、蓄熱材収容室34は、排気ポート下部ジャケット35a、排気ポート上部ジャケット35b、及びポート間ジャケット35cの位置にも形成され得る。この場合、図1における蓄熱材収容室34が形成されている位置にはウォータージャケット35が形成され得る。その他、蓄熱材収容室34の形状や形成位置について、特に限定は無い。
【0081】
(v)本発明の製造方法も、図6に示されている工程流れ図に限定されない。
【0082】
(vi)その他、本発明の課題を解決するための手段を構成する各要素における、作用・機能的に表現されている要素は、上述の実施形態・実施例や変形例にて開示されている具体的構造の他、当該作用・機能を実現可能な、いかなる構造をも含む。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明が適用され得るディーゼルエンジンの概略構成を示す側断面図である。
【図2】図1に示したエンジンの別の断面による側断面図である。
【図3】図1に示したエンジンが直列4気筒の構成を有している場合の、当該エンジンの平断面図である。
【図4】図1ないし図3に示されているシリンダヘッドを鋳造するための金型の構成を示す側断面図である。
【図5】図4に示されている本発明の実施形態の蓄熱材収容室形成用塩中子の構成を示す平断面図である。
【図6】本発明の実施形態の方法を示す工程の流れ図である。
【符号の説明】
【0084】
10…エンジン、 20…シリンダブロック、 30…シリンダヘッド、
32…吸気ポート、 33…排気ポート、
34…蓄熱材収容室、 34b…貫通孔、 34c…貫通孔、
35…ウォータージャケット、37…シール栓、
38…電極付きシール栓、 38a…発核用電極、 38b…発核用電極、
50…金型、 51…固定盤、 52…上部可動盤、
53…側盤、 54…インサート型、 55…側型、
56…上型、 57…キャビティ、
61…吸気ポート形成用砂中子、 62…排気ポート形成用砂中子、
63…蓄熱材収容室形成用塩中子、
63a…空洞部、 63b…開口部、 63c…開口部、
64…ウォータージャケット形成用砂中子、66…支持中子、
67…電極付き支持中子、 67a…電極、 67b…電極




 

 


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