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発明の名称 酸化物プロトン導電性膜及びそれを含む水素透過構造体
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−21416(P2007−21416A)
公開日 平成19年2月1日(2007.2.1)
出願番号 特願2005−209083(P2005−209083)
出願日 平成17年7月19日(2005.7.19)
代理人 【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
発明者 山川 晃 / 上村 卓 / 水野 修 / 飯島 昌彦
要約 課題
アルカリ土類金属及びCe、Zr等の金属を含み、ペロブスカイト型の結晶構造を有する酸化物からなり、高いプロトン導電性を有するとともに、水素透過性基材との密着力が高い酸化物プロトン導電性膜、及びこの酸化物プロトン導電性膜と水素透過性基材からなり、酸化物プロトン導電性膜と水素透過性基材との剥離が生じにくい水素透過構造体を提供する。

解決手段
化学式Ba(MはCe又はZrを表わし、Lは短周期型周期表3族の元素を表わし、0<z/(y+z)≦0.8である。)で表わされる酸化物よりなり、ペロブスカイト構造を有するプロトン導電性の膜であって、前記膜の一表面近傍においてxが0.9以上であることを特徴とする酸化物プロトン導電性膜、並びに、この酸化物プロトン導電性膜、及び前記一表面と貼合わされている水素透過性基材からなることを特徴とする水素透過構造体。
特許請求の範囲
【請求項1】
化学式Ba(MはCe又はZrを表わし、Lは短周期型周期表3族の元素を表わし、0<z/(y+z)≦0.8である。)で表わされる酸化物よりなり、ペロブスカイト構造を有するプロトン導電性の膜であって、前記膜の一表面近傍においてxが0.9以上であることを特徴とする酸化物プロトン導電性膜。
【請求項2】
前記膜の一表面近傍においてxが1.1以上でかつ1.6以下であることを特徴とする請求項1に記載の酸化物プロトン導電性膜。
【請求項3】
前記Lが、Ga、Al、Y、Yb、In、Nd及びScからなる群より選ばれ、かつ前記膜の一表面において0.05≦z/(y+z)≦0.2であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の酸化物プロトン導電性膜。
【請求項4】
膜厚が、0.1μm〜20μmであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の酸化物プロトン導電性膜。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の酸化物プロトン導電性膜、及び前記プロトン導電性膜の前記一表面と貼合わされている水素透過性基材からなることを特徴とする水素透過構造体。
【請求項6】
前記水素透過性基材が、Pd、又はPd並びにTi、Ta、Nb及びVから選ばれる1種以上の元素を含むことを特徴とする請求項5に記載の水素透過構造体。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、高いプロトン導電性をもち、かつ水素透過性基材との密着力に優れた酸化物プロトン導電性膜、並びに、この酸化物プロトン導電性膜及び水素透過性基材からなる水素透過構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ土類金属及びCe、Zr等の金属を含む酸化物からなる酸化物プロトン導電性膜は、優れたプロトン導電性を示すので、水素センサー、燃料電池用固体電解質膜、水素透過膜等に用いられている。例えばSOLID STATE IONICS、162−163(2003)、291−296頁には、このような酸化物プロトン導電性膜を水素透過性基材上に形成した燃料電池が記載されている。
【0003】
アルカリ土類金属及びCe、Zr等の金属を含む酸化物の中でも、ペロブスカイト型の結晶構造を有する酸化物はプロトン導電性が高い。特にアルカリ土類金属がBaである酸化物は高いプロトン導電性を有するものとして知られている。
【0004】
しかし一方、アルカリ土類金属がBaである酸化物は、一般に安定性が低く、特に水蒸気の共存下で分解が促進されやすいとの問題がある。この問題は、実用的には酸化物プロトン導電性膜と水素透過性基材との密着力の低下となって現れ、酸化物プロトン導電性膜が、使用中に水素透過性基材から剥離し、所定の性能が発揮できないとの問題を生じる。
【非特許文献1】SOLID STATE IONICS、162−163(2003)、291−296頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、アルカリ土類金属及びCe、Zr等の金属を含み、ペロブスカイト型の結晶構造を有する酸化物からなり、高いプロトン導電性を有するとともに、水素透過性基材との密着力が高い酸化物プロトン導電性膜を提供することを課題とする。本発明は、又この酸化物プロトン導電性膜と水素透過性基材からなり、酸化物プロトン導電性膜と水素透過性基材との剥離が生じにくく、水素センサー、燃料電池、水素透過膜等に用いられた場合、高い信頼性を達成することができる水素透過構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討の結果、アルカリ土類金属及びCe、Zr等の金属を含むペロブスカイト型の酸化物において、アルカリ土類金属としてBaを用い、酸化物プロトン導電性膜の一表面近傍におけるBaの組成を特定の範囲とすることにより、高いプロトン導電性とともに、水素透過性基材との高い密着力が達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
本発明は、その請求項1において、化学式Ba(MはCe又はZrを表わし、Lは短周期型周期表3族の元素を表わし、0<z/(y+z)≦0.8である。)
で表わされる酸化物よりなり、ペロブスカイト構造を有するプロトン導電性の膜であって、前記膜の一表面近傍においてxが0.9以上であることを特徴とする酸化物プロトン導電性膜を提供する。
【0008】
本発明の酸化物プロトン導電性膜は、固体電解質であって、その中をプロトン(H、陽子)が伝播する性質を有する。この酸化物プロトン導電性膜を形成する酸化物は、ペロブスカイト構造を有し、化学式Baで表わされる酸化物を主体とする。すなわち、アルカリ土類金属としてBaが用いられており、その結果、高いプロトン導電性が得られる。なお、高いプロトン導電性との特徴が損なわれない範囲で、他の酸化物が少量含まれていてもよい。
【0009】
本発明の酸化物プロトン導電性膜は、その少なくとも一方の表面の近傍が、前記式で表わされ、かつxが0.9以上である酸化物から形成されていることを特徴とする。xが0.9以上の酸化物で表面の近傍を形成すると、この表面と貼り合わされた水素透過性基材との間の密着性が優れたものとなり、剥離が生じにくくなる。膜の表面の近傍とは、膜の表面及び表面近くの膜の密着性に影響を与える範囲を意味し、通常膜の表面より0.1μm程度の範囲である。
【0010】
膜の表面の近傍におけるxは好ましくは1.0以上であり、より好ましくは1.1〜1.6の範囲である。xをこれらの範囲とすることにより、さらに優れた密着力が得られる。請求項2は、このより好ましい態様に該当する。
【0011】
前記の化学式に示されるように本発明の酸化物プロトン導電性膜を形成する酸化物は、Ce又はZr(式中のM)を含有し、さらに短周期型周期表3族の元素(式中のL)を含有してもよい。Ceを含有する場合は、Zrを含有する場合より高いプロトンの導電性が得られるが、一方、二酸化炭素により反応分解しやすい点ではZrを含有する場合より劣る。
【0012】
Lで表わされる元素は、短周期型周期表3族、すなわち長周期型周期表の3族と13族の元素であり、ランタノイド系列の元素も含まれる。具体的には、Ga、Al、Y、Yb、In、Nd及びScが例示される。特に、Lで表わされる元素が、Ga、Al、Y、Yb、In、Nd及びScから選ばれ、Ce又はZrの1/20から1/5をLで表わされる元素により置換されている場合(すなわち0.05≦z/(y+z)≦0.2の場合)は、高いプロトン導電性とともに、より高い密着力が得られるので好ましい。請求項3は、この好ましい態様に該当する。
【0013】
本発明の酸化物プロトン導電性膜の厚みとしては、0.1μm〜20μmの範囲が好ましい。厚みが20μmを越えると、プロトンの透過性能が低下し所定の性能が発揮できない。例えば、燃料電池に用いた場合は電池の出力が低下する等の問題が生じる。
【0014】
一方、膜の厚みは薄いほどプロトン導電性は高いが、厚みが0.1μm未満では、膜欠陥(ピンホール)が多く、水素がイオン化(プロトン化)することなく透過しやすくなり、固体電解質として充分機能しない場合がある。従って、これらの観点から、厚みとしては、0.1μm〜20μmの範囲が好ましい。さらに、この範囲内で、水素透過性基材とのより高い密着力が達成される。請求項4は、この好ましい態様に該当する。
【0015】
本発明は、さらに、前記の本発明の酸化物プロトン導電性膜、及び前記プロトン導電性膜の前記一表面と貼合わされている水素透過性基材からなることを特徴とする水素透過構造体を提供する(請求項5)。前記一表面とは、xが0.9以上である酸化物からなる表面である。従って、酸化物プロトン導電性膜と水素透過性基材との密着力は高く、使用時に剥離しにくい。よって、剥離に伴う問題も生じにくく、水素センサー、燃料電池、水素透過膜等に用いられた場合、高い信頼性を達成することができる。
【0016】
水素透過性基材としては、水素を透過する材料であれば種類を問わず、例えば、水素透過性能を有する金属の膜(水素透過性金属膜)からなるもの、金属多孔体やセラミックス多孔体の表面に水素透過性金属膜を設けたもの、アモルファス材料等が挙げられる。基材上へのペロブスカイト膜の形成のためには、緻密質の水素透過性金属膜(金属箔)を用いることが好ましく、Pd、又はPd並びにTi、Ta、Nb及びVから選ばれる1種以上の元素を含む水素透過性金属膜が好ましく例示される。
【0017】
請求項6は、この好ましい態様に該当し、前記の水素透過構造体であって、水素透過性基材が、Pd、又はPd並びにTi、Ta、Nb及びVから選ばれる1種以上の元素を含むことを特徴とする水素透過構造体を提供するものである。
【0018】
より具体的には、水素透過性金属膜として、Pdの膜やPd−Ag、Pd−PtやPd−Cu等のPd合金の膜、すなわちPdを含んだ金属膜、V、Ta若しくはNbの膜の両面に、PdやPd合金を被覆したもの、又はV、Ta若しくはNbの合金の膜に、PdやPd合金を被覆したもの、すなわちV、Nb及びTaから選ばれるいずれかを含んだ金属膜の両面にPdを含んだ膜を成膜したもの等を挙げることができる。V、Ta若しくはNbの合金としては、Ni、Ti、Co、Cr等との合金が例示される。
【0019】
水素透過性金属膜の厚みは通常、10〜500μm程度が好ましい。10μm未満の場合は、膜の強度が不足し膜が破壊する場合がある。一方、500μmを越える場合は、膜の水素透過量が少なくなり、水素の透過が律速となって、充分なプロトン導電が得られない可能性がある。PdやPd合金の膜をV等の膜の両面に被覆したものを用いる場合、PdやPd合金の膜の厚みは0.05〜2μm程度が通常好ましい。0.05μm未満の場合は、V等の膜(下地)を充分被覆できず、V等が酸化して劣化する可能性がある。一方、2μmを超えると高価なPd使用量が増えコストアップが問題となる。
【0020】
前記のように、金属基材としては、水素透過性金属膜のみからなるものの他、金属多孔体基材の表面に水素透過性金属膜を設けたものも用いられる。ここで、金属多孔体基材とは、導電性の金属であって水素の透過が可能な孔を有するものであり、SUS等からなる多孔体基材が例示される。
【0021】
金属多孔体基材の表面に水素透過性金属膜を設ける方法としては、金属多孔体基材の表面上に、水素透過性金属膜を構成する金属を、スパッタ法、電子ビーム蒸着法、レーザーアブレーション法により積層する方法が挙げられる。メッキ法等ウェットプロセスによる方法も採用可能である。
【0022】
本発明の水素透過構造体は、前記の金属基材上に、酸化物プロトン導電性膜を形成(成膜)する方法により得ることができる。酸化物プロトン導電性膜の層を形成する方法としては、パルスレーザー蒸着法、スパッタ法、電子ビーム蒸着法、レーザーアブレーション法、CVD法等が挙げられ、又ゾルゲル法等ウェットプロセスによる方法(湿式法)も採用可能である。
【0023】
成膜は、400℃以上の温度で、酸化性雰囲気で行うことが好ましい。又は、400℃以下で成膜し、その後400℃以上の温度、非酸化性雰囲気での焼成を行う方法が好ましい。このような条件で成膜すると、ペロブスカイト構造となる。なお、金属基材の耐熱性を考慮して、成膜温度や焼成温度は、650℃以下が好ましい。
【0024】
前記のように、水素透過性基材との密着力を高くするためには、水素透過性基材と接する表面近傍のBa組成が重要である。水素透過性基材と接する表面近傍のBa組成を、本発明の範囲内とし、他の部分は、他の目的を達成するため、表面近傍とは異なったBa組成とすることも可能である。表面近傍と他の部分とでBa組成の異なった酸化物プロトン導電性膜を形成する方法としては、組成比の異なる成膜原料を2種類(以上)用意して、順次成膜する方法等を挙げることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の酸化物プロトン導電性膜は、高いプロトン導電性を有するとともに、水素透過性基材との密着力が高いものである。従って、この酸化物プロトン導電性膜及び水素透過性基材を貼り合わせたものである本発明の水素透過構造体では、酸化物プロトン導電性膜と水素透過性基材の剥離が生じにくいので、高い信頼性を達成することができるので、この水素透過構造体は、水素センサー、燃料電池、水素透過膜等に好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次の本発明を実施するための形態を、実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこの実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0027】
実施例1〜13、比較例1〜4
BaCOの粉末と、CeOの粉末及びYの粉末を、所定の組成比になるように秤量し充分混合した。得られた混合物を金型に入れプレス成形により20mmφ×5mmtの円板を製造した。製造された円板を、1650℃で10時間焼結することにより焼結体円板(電解膜原料焼結体)を得た。BaCOの混合量を変えながら、同様な操作を繰返し、組成(Ba比)の異なる種々の電解膜原料焼結体を製造した。
【0028】
厚み0.1mmのPd(パラジウム)板からなる基材(水素透過性能を有する金属基材)を、レーザー透過用の合成石英ガラス窓を備えた真空チャンバー内部のホルダーにセットし、ホルダー部の温度を650℃に加熱した。酸素を、マスフローメータを通して導入し、酸素分圧1×10−2Torrにチャンバー内圧力を調整した。
【0029】
その状態で、前記の電解膜原料焼結体に、レーザー照射用窓を通してパルスレーザー(周波数20Hz)を照射して成膜を実施し、前記のPd板基材上にBaCe0.9.1の組成の酸化物プロトン導電性膜が形成された水素透過構造体を得た。実験によっては、組成の異なる電解膜原料焼結体を2種類用いて順次成膜を行い、厚み方向で組成の異なる酸化物プロトン導電性膜を形成した。
【0030】
形成された酸化物プロトン導電性膜について、Cuターゲットを用い、薄膜XRD測定を実施したところ、ペロブスカイト構造であることが確認された。膜の組成(BaとCe+Yの原子比)をICP(イオン結合プラズマ分光分析法)で調べた。又ガス分析で酸素含有量を求め、この酸素含有量と、ICP分析によるBaの原子比から、膜平均のx値(膜平均Ba比)を計算した。その結果を表1に示す。
【0031】
基材界面(酸化物プロトン導電性膜のPd板基材と接する側の表面近傍)のBa比は、AESで分析したBプロファイル(膜平均部分と界面付近の比)と、前記で求めた膜平均Ba比から算出した。膜厚は断面SEM写真から測定した。それらの結果を表1に示す。
【0032】
密着強度は、加湿大気気流中500℃で1時間保持後の室温剥離強度を以下に示す方法により求め、その結果を熱処理後密着強度(MPa)として表1に示す。
剥離強度測定方法: 径2mmの銅製ピンを、酸化物プロトン導電性膜の表面に接着して、引っ張り試験により剥離荷重を測定し、剥離強度を計算した。
【0033】
又、酸化物プロトン導電性膜を形成した水素透過構造体の片面に水素ガスを、反対の面に大気を供給し、水素面と大気面間の電流と電圧を測定して導電率を計算し、プロトン導電性を測定した。いずれの膜もプロトン導電性を示し、その導電率は500℃で10−4ジーメンス以上であった。
【0034】
【表1】


【0035】
比較例1及び実施例1〜3は、全て、膜厚2.0μm、膜平均Ba(x)比は0.9である。表1の結果より明らかなように、基材界面Ba比(x)が0.9未満の比較例1では、密着強度が不十分であるのに対し、0.9以上の実施例1〜3では優れた密着強度が得られている。中でも、基材界面Ba比(x)が1.1〜1.6の範囲内の実施例3では、特に優れた密着強度が得られている。
【0036】
同様に、膜厚2.0μm、膜平均Ba比(x)は1.0である、比較例2及び実施例4、5でも、基材界面Ba比(x)が0.9未満の比較例2では、密着強度が不十分であるのに対し、0.9以上の実施例4、5では優れた密着強度が得られている。又、膜厚2.0μm、膜平均Ba比(x)は1.2の実施例6、7、並びに、膜厚2.0μm、膜平均Ba比(x)は1.6の実施例8、9でも、基材界面Ba比(x)が0.9以上で優れた密着強度が得られ、基材界面Ba比(x)が1.1〜1.6の範囲内の実施例7及び実施例9では、特に優れた密着強度が得られている。
【0037】
これらの結果より、基材界面Ba比(x)を0.9以上とすることにより、優れたプロトン導電性を保ちながら、優れた密着強度が得られることが示されている。
【0038】
なお、比較例1と2は、いずれも基材界面Ba比(x)は0.8であるが、膜平均Ba比は異なっている。しかし、両者間に密着強度の有意な差は見られない。同様に、実施例1、4、6及び8は、いずれも基材界面Ba比(x)は0.9であり、膜平均Ba比は異なっているが、これらの間に密着強度の有意な差は見られない。実施例2と5、実施例3と7の関係についても同様である。この結果より、密着強度は、膜平均Ba比からは大きな影響を受けず、基材界面Ba比の影響を大きく受けることが示されている。
【0039】
比較例3、実施例10〜13及び比較例4は、全て、膜厚2.0μm、膜平均Ba比は0.9、基材界面Ba比(x)は1.0で同一である。表1の結果より明らかなように、膜厚0.1μm未満の比較例3及び膜厚が20μmを越える比較例4では、不十分な密着強度しか得られていないのに対し、膜厚0.1〜20μmの範囲にある実施例10〜13では、優れた密着強度が得られている。
【0040】
実施例14〜16
BaCOの粉末と、ZrOの粉末及びYの粉末を、所定の組成比になるように秤量し充分混合した。得られた混合物を金型に入れプレス成形により20mmφ×5mmtの円板を製造した。製造された円板を、1650℃で10時間焼結することにより焼結体円板(電解膜原料焼結体)を得た。この操作をZrOとYの比を変えて行い、電解膜原料焼結体を3種製造した。
【0041】
厚み50μmのPd(パラジウム)板からなる基材(水素透過性能を有する金属基材)を、レーザー透過用の合成石英ガラス窓を備えた真空チャンバー内部のホルダーにセットし、ホルダー部の温度を650℃に加熱した。酸素を、マスフローメータを通して導入し、酸素分圧1×10−2Torrにチャンバー内圧力を調整した。
【0042】
その状態で、前記の電解膜原料焼結体に、レーザー照射用窓を通してパルスレーザー(周波数20Hz)を照射して成膜を実施し、前記のPd板基材上にBa1.2Zrの組成で膜厚2.0μmの酸化物プロトン導電性膜を形成し、水素透過構造体を得た。
【0043】
形成された酸化物プロトン導電性膜について、実施例1と同様にして、薄膜XRD測定を実施したところ、ペロブスカイト構造であることが確認された。又実施例1と同様にして、密着強度及びプロトン導電性の測定を行った。いずれの膜もプロトン導電性を示し、その導電率は500℃で10−4ジーメンス以上であった。膜の組成(y/(y+z))、密着強度の結果を表2に示す。なお、以下の実施例において、得られた膜の組成(yとzの値等)はICP(イオン結合プラズマ分光分析法)で調べた。
【0044】
【表2】


【0045】
表2の結果より明らかように、z/(y+z)が0.05〜0.2の範囲で、特に優れた密着強度が得られている。
【0046】
実施例17〜20
厚み50μmのPd(パラジウム)板からなる基材を、厚み50μmで、表3に示す材質からなる下地の両面に、Pdをそれぞれ厚み0.5μmで被覆した金属基材に変えた以外は、実施例15と同様にして水素透過構造体を得た。
【0047】
この水素透過構造体上に形成された酸化物プロトン導電性膜について、実施例1と同様にして、酸化物の構造、密着強度及びプロトン導電性の測定を行った。いずれの膜も、ペロブスカイト構造であり、プロトン導電性を示し、その導電率は500℃で10−4ジーメンス以上であった。膜の組成(y/(y+z))、密着強度の結果を表3に示す。
【0048】
【表3】


【0049】
表3の結果より明らかように、基材をPdより、V、Ti、Ta又はNbからなる下地にPdの薄膜を形成したものに変えても、優れた密着強度が得られている。
【0050】
実施例21〜23
の粉末の代りにYb、In、Ndを用いた以外は、実施例15と同様にして水素透過構造体を得た。この水素透過構造体上に形成された酸化物プロトン導電性膜について、実施例1と同様にして、酸化物の構造、密着強度及びプロトン導電性の測定を行った。いずれの膜も、ペロブスカイト構造であり、プロトン導電性を示し、その導電率は500℃で10−4ジーメンス以上であった。膜の組成(y/(y+z))、密着強度の結果を表4に示す。
【0051】
【表4】


【0052】
表4の結果より明らかように、置換元素をYからYb、In、Ndに変えても、優れた密着強度が得られている。




 

 


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