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発明の名称 歩容データの作成装置と作成方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−7791(P2007−7791A)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
出願番号 特願2005−193267(P2005−193267)
出願日 平成17年7月1日(2005.7.1)
代理人 【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
発明者 菅 敬介
要約 課題
体幹の高さ位置を適切に制限して脚式ロボットを歩行させる技術を提供する。

解決手段
脚式ロボットが歩行するために用いる歩容データを作成する装置は、脚リンク毎に、目標とする足先の位置と姿勢の経時的変化を記述している足先歩容データの記憶手段と、体幹の高さ位置を仮定して、その足先歩容データに追従して歩行することを可能とする体幹の位置と姿勢の経時的変化を記述している体幹歩容データを作成する作成手段と、その体幹歩容データが記述している体幹位置を高さ方向に移動したときに、脚リンクの両端間距離が所定距離となる高さ位置を、脚リンク毎に計算する計算手段と、その脚リンク毎に計算した高さ位置群のなかで最も低い第1高さ位置と、その第1高さ位置とその第1高さ位置に次いで低い第2高さ位置との高低差に基づいて、目標とする体幹の高さ位置を決定する決定手段とを備えている。
特許請求の範囲
【請求項1】
脚式ロボットが歩行するために用いる歩容データを作成する装置であって、
脚リンク毎に、目標とする足先の位置と姿勢の経時的変化を記述している足先歩容データの記憶手段と、
体幹の高さ位置を仮定して、その足先歩容データに追従して歩行することを可能とする体幹の位置と姿勢の経時的変化を記述している体幹歩容データを作成する作成手段と、
その体幹歩容データが記述している体幹位置を高さ方向に移動したときに、脚リンクの両端間距離が所定距離となる高さ位置を、脚リンク毎に計算する計算手段と、
その脚リンク毎に計算した高さ位置群のなかで最も低い第1高さ位置と、その第1高さ位置とその第1高さ位置に次いで低い第2高さ位置との高低差に基づいて、目標とする体幹の高さ位置を決定する決定手段と、
を備える歩容データの作成装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記高低差が所定値を上回るときには前記第1高さ位置を目標とする体幹の高さ位置とし、前記高低差が所定値を下回るときには前記第1高さ位置よりも下降させた位置を目標とする体幹高さ位置とすることを特徴とする請求項1の歩容データの作成装置。
【請求項3】
前記決定手段は、前記高低差と比較する前記所定値を、前記第1高さ位置を導出した脚リンクの足先位置と前記第2高さ位置を導出した脚リンクの足先位置との間の距離に応じて増減調節することを特徴とする請求項2の歩容データの作成装置。
【請求項4】
前記決定手段は、脚リンク毎に計算された高さ位置群に、指示された体幹の高さ位置に関する制限値を加えた高さ位置群から、前記第1高さ位置と第2高さ位置を設定することを特徴とする請求項1から3のいずれかの歩容データの作成装置。
【請求項5】
脚式ロボットが歩行するために用いる歩容データを作成する方法であって、
脚リンク毎に、目標とする足先の位置と姿勢の経時的変化を記述している足先歩容データを用意する工程と、
体幹の高さ位置を仮定して、その足先歩容データに追従して歩行することを可能とする体幹の位置と姿勢の経時的変化を記述している体幹歩容データを作成する作成工程と、
その体幹歩容データが記述している体幹位置を高さ方向に移動したときに、脚リンクの両端間距離が所定距離となる高さ位置を、脚リンク毎に計算する計算工程と、
その脚リンク毎に計算した高さ位置群のなかで最も低い第1高さ位置と、その第1高さ位置とその第1高さ位置に次いで低い第2高さ位置との高低差に基づいて、目標とする体幹の高さ位置を決定する決定工程と、
を備える歩容データの作成方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、体幹(胴部)に複数(典型的には2本)の脚リンクが揺動可能に連結されている機械(脚式ロボット)を歩行させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
体幹と脚リンク群の相対的姿勢を変化させることによって歩行する脚式ロボット(以下では単にロボットと記すことがある)が開発されている。脚式ロボットは、歩容データを用いて歩行する。
脚式ロボットが歩行するためには、各足先と体幹の運動を指示するデータを必要とする。そのうちの体幹の位置と姿勢は、各足先の位置と姿勢に対して適当な値である必要があり、その値が適当でなければロボットは転倒してしまう。
脚式ロボットが転倒しない体幹の位置と姿勢を得るためには、ロボットのダイナミクスを考慮に入れた複雑な計算を必要とする。以下に、二足歩行ロボットの場合の一例を説明する。
(1)ロボットの左足先と右足先の位置と姿勢を指示する経時的データを指定する。
(2)足先の位置と姿勢を考慮してロボットのZMPが存在しなければならない位置を指定する。ZMP(zero moment point)は、ロボットに作用する重力や床反力や慣性力の合力のモーメントがゼロになる床上の点をいう。ZMPが接地脚の足平内にあればロボットは転倒しない。逆にいうと、ロボットが転倒しないためには、ZMPが接地脚の足平内になければならない。そこで接地脚の足先の位置と姿勢を考慮し、下記の関係を満たす目標ZMPを指定する。即ち、一方の脚リンク(例えば左脚)が遊脚になっている間は接地脚(右脚)の足平内に存在し、その一方の脚(左脚)が接地して両足接地状態になった時に新たに接地した脚(左脚)の足平内に向けて移動開始し、それまでに接地していた脚(右脚)が遊脚となる前に新たに接地した脚(左脚)の足平内に移動し終えるZMPを指定する。このようにして指定されたZMPは、目標ZMPと呼ばれる。実際のZMPが目標ZMPのとおりに移動すれば、ロボットは転倒することなく歩行し続ける。
(3)足先の位置と姿勢の変化とそれに追従して変化する目標ZMPが指定されると、体幹の位置と姿勢の経時的変化を仮定してロボットのダイナミクスを計算する。計算する時点で、足先の位置と姿勢の経時的変化が指定されているために、ロボットの体幹の位置と姿勢を仮定すると、ロボットの全身の姿勢が決まる。ロボットの全身の姿勢が決まると、その姿勢におけるZMPの位置を計算することが可能となる。ZMPの位置を計算するためには、静的な要素に加えて、ロボットに作用する慣性力の影響を織り込まなければならない。仮定した体幹の位置と姿勢の経時的変化を計算に含めることで、ロボットのダイナミクスまで考慮してZMPの位置を計算することが可能となる。体幹の位置と姿勢の経時的変化を仮定するとZMPの位置を計算することができることから、目標ZMPに一致するZMPを実現する体幹の位置と姿勢の経時的変化を探求することができる。
【0003】
上記によって探求された体幹の位置と姿勢の経時的変化を示すデータを体幹歩容データといい、もともと指定されている足先の位置と姿勢の経時的変化を示すデータを足先歩容データといい、両者を総称して歩容データという。歩容データに従ってロボットが歩行すれば、実際のZMPが目標ZMPに一致し、ロボットは転倒せずに歩行し続けることができる。
歩容データは、時間に対する位置および姿勢の経時的変化で与えられる。位置と速度と加速度は関連しており、そのうちの一つの量から他の量を計算することができることから、位置の代わりに速度または加速度の経時的変化を扱ってもよい。姿勢は座標軸に対する回転角度で表現されるが、角度と角速度と角加速度は関連しており、そのうちの一つの量から他の量を計算することができることから、角度の代わりに角速度または角加速度の経時的変化を扱ってもよい。
【0004】
目標ZMPに一致するZMPをもたらす体幹運動を算出する手法は、目標足先運動の変化に追従してロボットが歩行し続けることを可能とする目標体幹運動の経時的変化を算出する手法の典型例であり、それには限られない。一般的にいうと、脚式ロボットは、体幹と体幹に対して揺動可能に連結されている脚リンクを備えており、目標とする足先運動の経時的変化を記述する足先歩容データが指示されると、目標足先運動の変化に追従して歩行し続けることを可能とする目標体幹運動の経時的変化を記述する体幹歩容データを算出し、指示された足先歩容データと算出された体幹歩容データを用いて歩行する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
指示された足先歩容データに基づいて体幹歩容データを算出する際には、脚リンクを最大に伸展したときの両端間距離(以下、単に脚リンクの長さということがある)を考慮して、体幹の高さ位置に制限を加える必要がある。足先歩容データが記述している足先の位置と姿勢と、算出した体幹歩容データが記述している体幹の位置と姿勢が、脚リンクを最大に伸展させても実現できない位置関係にあれば、ロボットは歩容データが記述する動作を実現することができない。
一方において、体幹の高さ位置を低く制限してしまうと、ロボットは脚リンク(特に接地脚)を過剰に曲げて歩行することになる。脚リンクの関節等に作用する曲げモーメントが大きくなってしまい、アクチュエータ等に必要とされるトルクが増大してしまう。
脚式ロボットを歩行させるためには、体幹の高さ位置を適切に制限する必要があり、そのための歩容データを作成する技術が必要とされている。
本発明は、体幹の高さ位置を適切に制限した歩容データを作成する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、脚式ロボットが歩行するために用いる歩容データを作成する装置に具現化することができる。この歩容データの作成装置は、脚リンク毎に、目標とする足先の位置と姿勢の経時的変化を記述している足先歩容データの記憶手段と、体幹の高さ位置を仮定して、その足先歩容データに追従して歩行することを可能とする体幹の位置と姿勢の経時的変化を記述している体幹歩容データを作成する作成手段と、その体幹歩容データが記述している体幹位置を高さ方向に移動したときに、脚リンクの両端間距離が所定距離となる高さ位置を、脚リンク毎に計算する計算手段と、その脚リンク毎に計算した高さ位置群のなかで最も低い第1高さ位置と、その第1高さ位置とその第1高さ位置に次いで低い第2高さ位置との高低差に基づいて、目標とする体幹の高さ位置を決定する決定手段とを備える。
【0007】
この歩容データの作成装置は、記憶している足先歩容データに基づいて、脚式ロボットが歩行し続けることを可能とする体幹歩容データを、体幹の高さ位置を仮定して作成する。この体幹歩容データを作成する段階では、各脚リンクの長さを必ずしも考慮する必要はない。仮定した体幹の高さ位置によっては、脚リンクを最大に伸ばしても実現不可能なデータが作成されたり、脚リンクを過剰に曲げて歩行するデータが作成されたりするが、この段階ではそのことを許容する。
この装置では、作成した体幹歩容データが記述する体幹位置を高さ方向に移動したときに、脚リンクの両端間距離が所定距離となるときの高さ位置を、脚リンク毎に計算する。この計算に用いる所定距離は、脚リンクの長さを超えない範囲で、自由に設定することができる。例えば脚リンクを伸ばした歩行をロボットに実施させたい場合は、所定距離に脚リンクの長さを設定するとよい。あるいは、ロボットによる歩容データの補正を考慮して、脚リンクに伸展する余裕を残しておきたい場合には、所定距離を所望する伸展余裕に応じて設定するとよい。
【0008】
体幹歩容データが記述する体幹の高さ位置を、脚リンク毎に計算した高さ位置群のなかで最も低い第1高さ位置に修正すると、すべての脚リンクの長さに関して実現可能であるとともに、脚リンクが適当に屈曲する歩容データを得ることができる。
脚リンク毎に計算した高さ位置群のなかで最も低い第1高さ位置を導出する脚リンクは、各脚リンクが支持脚となったり遊脚となったりすることに連動して、経時的に順次切替る。脚リンク毎に計算した高さ位置群のなかで最も低い第1高さ位置は、その第1高さ位置を導出する脚リンクが切替る時点において、急激に変化することがある。体幹の高さ位置が急激に変化する歩容データでは、そのデータで記述される運動をロボットが実現することができず、場合によってはロボットが転倒してしまう可能性もある。
そのことから、この装置では、脚リンク毎に計算した高さ位置群に基づいて体幹の高さ位置を決定する際に、最も低い第1高さ位置に加えて、第1高さ位置とそれに次いで低い第2高さ位置との高低差を利用する。その高低差が大きければ、第1高さ位置を導出する脚リンクが切替る時点まで猶予があると判断することができる。その高低差が小さければ、第1高さ位置を導出する脚リンクがまもなく切替ると判断することができる。第1高さ位置と、第1高さ位置と第2高さ位置の高低差に基づいて体幹の高さ位置を決定することによって、脚リンクが適当に屈曲するとともに、体幹の高さ位置が連続的に変化する歩容データを作成することができる。
必要に応じて、決定した体幹の高さ位置を仮定する体幹の高さ位置とし、ZMPを考慮した体幹歩容データの作成を行い、再び体幹の高さ位置の決定処理を実行することもできる。
この装置によると、体幹の高さ位置を適切に制限した歩容データを作成することができる。
【0009】
決定手段は、第1高さ位置と第2高さ位置との高低差が所定値を上回るときには、第1高さ位置を目標とする体幹の高さ位置とし、その高低差が所定値を下回るときには第1高さ位置よりも下降させた位置を目標とする体幹高さ位置とすることが好ましい。
それにより、脚リンクに必要な伸展余裕を与えながら、体幹の高さ位置が連続的に変化する歩容データを作成することができる。
【0010】
前記決定手段は、第1高さ位置と第2高さ位置との高低差と比較する前記所定値を、第1高さ位置を導出した脚リンクの足先位置と第2高さ位置を導出した脚リンクの足先位置との間の距離に応じて増減調節することが好ましい。
第1高さ位置を導出した脚リンクの足先位置と、第2高さ位置を導出した脚リンクの足先位置との間の距離に応じて、第1高さ位置を導出する脚リンクが切替る時点において第1高さ位置が変動する挙動は変化する。
この装置によると、脚リンクを必要以上に屈曲させることなく、体幹の高さ位置が連続的に変化する歩容データを作成することができる。
【0011】
歩容データを作成する際に、体幹の高さ位置に関して制限値が指示される場合もある。この場合、決定手段は、脚リンク毎に計算された高さ位置群に体幹の高さ位置に関する制限値を加えた高さ位置群から、第1高さ位置と第2高さ位置を設定することが好ましい。
それにより、体幹の高さ位置を制限値以下に制限するとともに、体幹の高さ位置が連続的に変化する歩容データを作成することができる。
【0012】
本発明の技術は、脚式ロボットが歩行するために用いる歩容データを作成する方法に具現化することもできる。この方法は、脚リンク毎に、目標とする足先の位置と姿勢の経時的変化を記述している足先歩容データを用意する工程と、体幹の高さ位置を仮定して、その足先歩容データに追従して歩行することを可能とする体幹の位置と姿勢の経時的変化を記述している体幹歩容データを作成する作成工程と、その体幹歩容データが記述している体幹位置を高さ方向に移動したときに、脚リンクの両端間距離が所定距離となる高さ位置を、脚リンク毎に計算する計算工程と、その脚リンク毎に計算した高さ位置群のなかで最も低い第1高さ位置と、その第1高さ位置とその第1高さ位置に次いで低い第2高さ位置との高低差に基づいて、目標とする体幹の高さ位置を決定する決定工程とを備える。
この方法によると、脚リンクの屈伸状態を考慮して、体幹の高さ位置を適切に制限した歩容データを作成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、脚式ロボットに、体幹の高さ位置を適切に制限した歩行動作を実施させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
最初に、以下に説明する実施例の主要な特徴を列記する。
(形態1) ロボットは、歩行パターンデータを記憶している記憶手段を備えている。
(形態2) ロボットは、歩行パターンデータに基づいて、足先歩容データを作成して記憶する手段を備えている。
【実施例】
【0015】
図1に本実施例の二足歩行ロボット(以下、単にロボットと記す)6を示す。図1に示すように、ロボット6は、体幹12と、左腕リンク16と、右腕リンク18と、左脚リンク30と、右脚リンク40と、頭部20等を備えている。左腕リンク16と、右腕リンク18と、左脚リンク30と、右脚リンク40と、頭部20は、体幹12に揺動可能に連結されている。
図1に示すように、左脚リンク30は、左大腿リンク32と、左下腿リンク36と、左大腿リンク32と左下腿リンク36を連結している左膝関節34を備えている。左膝関節34は、1軸回りの自由度を持つ関節である。左脚リンク30の基端は、左股関節31を介して体幹12に連結されている。左脚リンク30の先端には、左足首関節37を介して左足平リンク(左足先)38が連結されている。左股関節31は3軸回りの自由度を持つ関節であり、左足首関節37は2軸回りの自由度を持つ関節である。
右脚リンク40は、左脚リンク30と鏡面対称の関係となるように構成されている。図1には、右脚リンク40に関して、右股関節41、右大腿リンク42、右膝関節44、右下腿リンク46、右足首関節47、右足平リンク(右足先)48が示されている。
【0016】
図1に示すように、ロボット6は、右足平リンク48が位置P2に接地している間に、右脚リンク40を支持脚とし、左脚リンク30を遊脚として、左足平リンク38を位置P1から位置P3まで軌道7によって移動させる。左足平リンク38が位置P3に接地すると、今度は左脚リンク30を支持脚とし、右脚リンク40を遊脚として、右足平リンク48を位置P2から位置P4まで軌道8によって移動させる。以下同様に、左足平リンク38を位置P3から位置P5まで軌道9のように移動させ、次に右足平リンク48を位置P4から位置P6まで軌道10のように移動させて歩行を続ける。各接地位置において、足平リンク38、48の踵から爪先へ伸びる方向を接地方向という。
【0017】
図1に示すように、本実施例では、ロボット6の外部の床に固定されている絶対座標系(x,y,z)が定義されている。絶対座標系(x,y,z)では、x軸方向とy軸方向が水平方向を向いており、z軸方向が鉛直方向を向いている。また、ロボット6の支持脚の基準点に固定されている相対座標系(x’,y’,z’)が定義されている。相対座標系(x’,y’,z’)は、ロボット6が右脚リンク40を支持脚としているときは基準点Rに固定されており、ロボット6が左脚リンク30を支持脚としているときは、基準点Lに固定されている。相対座標系(x’,y’,z’)では、足平リンク38、48に沿って踵から爪先へと伸びる方向をx’軸とし、足平リンク38、48に沿ってx’軸と直交する方向をy’軸とし、足平リンク38、48に垂直な方向をz’軸とする。通常は、x’軸はロボット6が歩行する方向に相当し、y’軸はロボット6の体側方向に相当し、z’軸はロボット6の高さ方向に相当する。
【0018】
ロボット6が歩行を続けるためには、足先の運動を記述する足先歩容データと、体幹12の運動を記述する体幹歩容データを備える歩容データが必要とされる。
足先歩容データは、ロボット6の足先の位置と姿勢の経時的変化を記述している。足先歩容データは、例えば左脚リンク30に関して、左足平リンク38の基準点Lの位置の経時的変化と、基準点Lから左足平リンク38の接地面の法線方向に伸びる姿勢ベクトルDLのオイラー角(ロール角、ピッチ角、ヨー角)の経時的変化を記述している。右脚リンク40に関しても同様に、右足平リンク48の基準点Rの位置の経時的変化と、基準点Rから右足平リンク48の接地面の法線方向に伸びる姿勢ベクトルDRのオイラー角(ロール角、ピッチ角、ヨー角)の経時的変化を記述している。
体幹歩容データは、体幹の位置と姿勢の経時的変化を表す。体幹歩容データは、体幹12の基準点Wの位置の経時的変化と、基準点Wからロボット6の前方に伸びるベクトルWのオイラー角の経時的変化を記述している。
足先や体幹の位置と姿勢の経時的変化を記述するために、歩容データは、例えば位置と姿勢の時系列データであってもよいし、位置と姿勢の変化速度の時系列データであってもよいし、位置と姿勢の変化加速度の時系列データであってもよい。本実施例では、歩容データに、位置と姿勢を時間Δt毎に記述するn個のデータを備える時系列データを用いている。
【0019】
ロボット6の動作を制御するために、ロボット6の体幹12にコンピュータ装置14が搭載されている。コンピュータ装置14は、CPU、ROM、RAM、ハードディスク等を有する。コンピュータ装置14のハードウェア構成は汎用のコンピュータと同じであり、説明は省略する。
図2に、コンピュータ装置14の機能的な構成を示す。コンピュータ装置14は、機能的に、歩行パターンデータ記憶装置102と、歩容データ作成装置104と、歩容データ補正装置106と、関節角群計算装置108と、アクチュエータ制御部110と、実際運動計算装置112等を備えている。
コンピュータ装置14は、全体が物理的に1つの装置に含まれていてもよいし、物理的に分離された装置ごとに分けて収容されていてもよい。またコンピュータ装置14の各要素は、必ずしもロボット6に搭載されていなくてもよい。ロボット6外に配備され、ロボット6に無線又は有線で指示するようにしてもよい。
【0020】
歩行パターンデータ記憶装置102は、歩行パターンデータを記憶している。歩行パターンデータは、ロボット6が実施する歩行動作を1歩毎に記述している。詳しくは、1歩毎に、接地する足平リンク(左足平リンク38と右足平リンク48のいずれが接地するのか)と、その接地位置と、その接地方向と、その接地時刻を順に記憶している。例えば図1に示す場合では、最初の1歩データが(左足平リンク38,接地位置P1、接地方向x,接地時刻t1)となり、次の1歩データが(右足平リンク48,接地位置P2,接地方向x,接地時刻t2)となり、その次の1歩データが(左足平リンク38,接地位置P3,接地方向x,接地時刻t3)となり、以下同様に1歩データが続くこととなる。接地位置や接地時刻は、絶対座標(x,y,z)と絶対時刻で記述してもよいし、1歩毎に相対座標(x’,y’,z’)と相対時刻(1歩時間)で記述することもできる。歩行パターンデータは、オペレータが予め用意して歩行パターンデータ記憶装置102に記憶させておくことができる。あるいは、ジョイスティック等の入力装置を用いて歩行動作中のロボット6に逐次教示し、歩行パターンデータ記憶装置102に記憶させてもよい。
【0021】
歩容データ作成装置104は、歩行パターンデータ記憶装置102に記憶されている歩行パターンデータに基づいて、足先歩容データと体幹歩容データを備える歩容データを作成する。歩容データ作成装置104については、後段において詳細に説明する。作成された歩容データは、歩容データ補正装置106に入力される。
歩容データ補正装置106は、歩容データ作成装置104で作成された歩容データを、ロボット6の実際運動に基づいて補正する。必要に応じて補正された歩容データは、関節角群計算装置108に入力される。
関節角群計算装置108は、入力された歩容データに基づいて、いわゆる逆キネマティクスを解くことでロボット6の各関節角を計算する。計算された関節角群データは、アクチュエータ制御部110に入力される。
アクチュエータ制御装置120は、入力した関節角群データに基づいて、ロボット6に搭載されているアクチュエータ群を制御する。アクチュエータ制御装置120がアクチュエータ群を制御することによって、ロボット6の機械系114が歩行動作を実施する。
【0022】
ロボット6が実際に行う歩行動作は、予期しない路面の凹凸や、ロボット6の構造上のたわみなどによる外乱力の影響を受ける。ロボット6が実際に行っている歩行動作は、ロボット6に搭載されているセンサ群116によって検出される。
実際運動計算装置112は、センサ群116の出力信号に基づいて、ロボット6の実際の運動を計算する。実際運動計算装置112は、例えば左脚リンク30の実際運動や、右脚リンク40の実際運動や、体幹12の実際運動を計算することができる。実際運動計算装置112で計算されたロボット6の実際運動は、歩容データ補正装置106に入力される。
先に説明したように、歩容データ補正装置106は、実際運動計算装置112で計算されたロボット6の実際運動に基づいて、歩容データ作成装置104から入力した歩容データを補正する。ロボット6の歩行動作は、ロボット6の実際運動に基づいてフィードバック制御される。
【0023】
図3を参照して、歩容データ作成装置104について詳細に説明する。図3に示すように、歩容データ作成装置104は、機能的に、足先歩容データ作成装置152と、体幹歩容データ作成装置154と、左体幹高さ計算装置161と、右体幹高さ計算装置162と、体幹高さ決定装置164と、体幹高さ修正装置156とを備えている。
足先歩容データ作成装置152は、歩行パターンデータ記憶装置102に記憶されている歩行パターンデータに基づいて、各足平リンク38、48の位置と姿勢の経時的変化を記述する足先歩容データを作成して記憶する。足先歩容データ作成装置152は、脚リンク30、40毎に、連続する2つの1歩データに基づいて、足平リンク38、48の位置と姿勢の経時的変化を計算する。このとき、連続する1歩データの標準的な相対変化量(位置、方向、時刻)に対して、基準となる足先歩容データを記憶させておくと、足先歩容データの作成処理を簡単化することができる。足先歩容データ作成装置152は、足先歩容データを、1歩毎に作成することもできるし、複数歩毎に作成することもできる。また、足先歩容データ作成装置152は、オペレータ等によって事前に準備された足先歩容データを記憶することもできる。足先歩容データは、各足平リンク38、48の位置と姿勢の経時的変化を、絶対座標(x,y,z)と絶対時刻で記述してもよいし、1歩毎に相対座標(x’,y’,z’)と相対時刻で記述してもよい。
【0024】
体幹歩容データ作成装置154は、足先歩容データ作成装置152が作成した足先歩容データに基づいて、ロボット6が歩行し続けることを可能とする体幹12の位置と姿勢の経時的変化を記述する体幹歩容データを作成して記憶する。体幹歩容データ作成装置154は、足先歩容データに基づいて目標ZMPの経時的変化を計算し、ロボット6の力学モデルに基づいて実際ZMPが目標ZMPに一致するように、目標とする体幹12の位置と姿勢の経時的変化を計算する。このとき体幹歩容データ作成装置154は、体幹12の高さ位置と姿勢を固定し、目標とする体幹12の位置を水平方向に探求する。なお、体幹歩容データ作成装置154は、オペレータ等によって事前に準備された足先歩容データを記憶することもできる。
【0025】
左体幹高さ計算装置161は、体幹歩容データが記述する体幹12の位置を高さ方向(z軸方向)に移動させたときに、左脚リンク30の両端間距離が所定の制限距離となる体幹12の高さ位置を計算する。この計算に用いる制限距離は、左脚リンク30の長さを超えない範囲で自由に設定することができる。ここでいう左脚リンク30の長さとは、膝関節44を最大に伸ばしたときに実現される左脚リンク30の両端間距離である。例えば制限距離に左脚リンク30の長さを設定すると、左脚リンク30が最大に伸びるときの体幹12の高さ位置を求めることができる。以下、左脚リンク30が最大に伸びるときの体幹12の高さ位置を、左脚リンク30に関する許容体幹高さ位置ということがある。
右体幹高さ計算装置162は、体幹歩容データが記述する体幹12の位置を高さ方向(z軸方向)に移動させたときに、右脚リンク40の両端間距離が所定の制限距離となる体幹12の高さ位置を計算する。この計算に用いる制限距離は、右脚リンク40の長さを超えない範囲で自由に設定することができる。ここで、左脚リンク30と同様に、右脚リンク40に関する許容体幹高さ位置を定義することができる。
図4に示すように、例えば右脚リンク40の両端間距離HRは、右足首関節47の位置と、右股関節41の位置との距離に相当する。右足首関節47の位置は、右足平リンク48の位置(基準点Rの位置)と姿勢(姿勢ベクトルDRの向き)から特定することができる。また、右股関節41の位置は、体幹12の位置(基準点Wの位置)と姿勢(姿勢ベクトルDWの向き)から特定することができる。
体幹高さ決定装置164は、左体幹高さ計算装置161が計算した体幹12の高さ位置と、右体幹高さ計算装置162が計算した体幹12の高さ位置の両者に基づいて、体幹12の高さ位置を決定する。体幹高さ決定装置164が決定した体幹12の高さ位置は、体幹歩容データ作成装置154に入力される。体幹歩容データ作成装置154は、記憶している体幹歩容データが記述している高さ位置を、体幹高さ決定装置164から入力した高さ位置に書き換える。
体幹高さ修正装置156は、体幹歩容データが記述している体幹12の高さ位置の経時的変化を修正し、体幹歩容データが記述している体幹12の高さ位置の経時的変化を平滑化する。体幹高さ修正装置156が修正した体幹12の高さ位置は、体幹歩容データ作成装置154に入力される。体幹歩容データ作成装置154は、記憶している体幹歩容データが記述している高さ位置を、体幹高さ修正装置156から入力した高さ位置に書き換える。
【0026】
図5は、歩容データ作成装置104が実行する処理の流れを示すフローチャートである。図5に示すフローに沿って、歩容データ作成装置104が歩容データを作成する処理手順について説明する。ここでは、ロボット6が脚リンク30、40を伸ばしながら歩行するための歩容データを作成する場合について説明する。
ステップS2では、歩容データ作成装置104の処理に先立って、オペレータ等から指示された歩行パターンデータが、歩行パターンデータ記憶装置102に記憶される。
ステップS4では、足先歩容データ作成装置152が、歩行パターンデータに基づいて、足先歩容データを作成して記憶する。なお、このステップS4では、事前に準備しておいた足先歩容データを、足先歩容データ作成装置152に記憶させてもよい。
ステップS6では、体幹歩容データ作成装置154が、足先歩容データ作成装置152に記憶されている足先歩容データに基づいて、ロボット6が歩行することを可能とする体幹歩容データを作成する。このとき体幹歩容データ作成装置154は、体幹12の高さ位置(z座標)と姿勢の経時的変化を仮定(固定)して、ロボット6が歩行することを可能とする体幹12の水平位置の経時的変化を計算する。仮定する体幹12の高さ位置と姿勢の経時的変化は、例えば経時的に変化しない固定値とすることもできる。なお、このステップS6では、事前に準備しておいた体幹歩容データを、体幹歩容データ作成装置154に記憶させてもよい。
【0027】
ステップS8では、脚リンク30、40毎に、脚リンクに関する許容体幹高さ位置が計算される。左体幹高さ計算装置161は、足先歩容データから足先の位置と姿勢を入力し、体幹歩容データから体幹の位置と姿勢を入力し、左脚リンク30の両端間の制限距離に左脚リンク30の長さを設定して、左脚リンク30に関する許容体幹高さ位置を計算する。同様に、右体幹高さ計算装置162は、足先歩容データから足先の位置と姿勢を入力し、体幹歩容データから体幹の位置と姿勢を入力し、右脚リンク40の両端間の制限距離に右脚リンク40の長さを設定して、右脚リンク40に関する許容体幹高さ位置を計算する。なお、各脚リンク30、40の両端間に関する制限距離を、各脚リンク30、40の長さよりも短く設定しておくと、脚リンク30、40の両端間距離が制限距離を越えて伸びることを禁止することができ、脚リンク30、40にさらに伸展できる余裕を与えておくことができる。この制限距離の設定によって、脚リンク30、40に所望の伸展余裕を与えることができる。
図6は、左脚リンク30に関する許容体幹高さ位置の軌道Z1と、右脚リンク40に関する許容体幹高さ位置の軌道Z2の一例を経時的に示している。体幹歩容データ記憶手段154が記憶している体幹歩容データの高さ位置の軌道を、軌道Z1と軌道Z2の低い方を辿った軌道に書換えていくと、ロボット6が脚リンク30、40の少なくとも一方を伸ばした状態で歩行する歩容データを得ることができる。しかしながら、例えば図7に示すように、右脚リンク40が伸びている状態(a)から、両脚リンク30、40が伸びる状態(b)を経て、左脚リンク30が伸びている状態(c)へと遷移する際に、体幹12の高さ位置が急激に変化してしまう。なお、図7(b)に示す状態は、図6に図示する符号Bが指す時刻に対応する。本実施例の歩容データ作成装置104では、体幹12の急激な上下動を抑制するために、次に説明するステップS10の処理が実行される。
【0028】
図5のステップS10では、体幹高さ決定装置164が、左脚リンク30に関する許容体幹高さ位置と右脚リンク40に関する許容体幹高さ位置に基づいて、体幹12の高さ位置を決定する。ここで図8を参照して、図5のステップS10において体幹高さ決定装置164が実行する処理の流れを説明する。
図8のステップS102では、体幹12の高さ位置を決定する処理を実行する対象時刻tを設定する。
ステップS104では、ステップS102で設定した時刻tに対して、左体幹高さ計算装置161が計算した左脚リンク30に関する許容体幹高さ位置z1(t)と、右脚リンク40に関する許容体幹高さ位置z2(t)を入力する。
ステップS106では、入力した体幹高さ位置z1(t)と体幹高さ位置z2(t)の高低差dz(t)=|z1(t)−z2(t)|を計算する。図6、図7からも明らかなように、体幹高さ位置z1(t)と体幹高さ位置z2(t)の高低差dz(t)がゼロとなる時点において伸びている脚リンク30、40が切替り、その前後において体幹12の高さ位置が急激に変化する。また、その高低差dz(t)が小さいほど、伸びている脚リンク30、40が切替る時点との時間差が短いと推測することができる。このことは2本以上の脚リンクを備えるロボットにあてはまる。一般的にいえば、脚リンク毎に計算した許容体幹高さ位置のなかで、最も低い位置(第1位置)とそれに次いで低い位置(第2位置)との高低差に基づいて、伸びている脚リンクが切替る時点までの時間を推測することができる。
【0029】
ステップS108では、計算した高低差dz(t)が、高低差基準値λを超えているのか否かを判定する。高低差基準値λは、オペレータ等が適宜設定することのできるパラメータである。この判定でイエスとなればステップS110へ進み、ノーとなればステップS112に進む。
ステップS110では、高低差dz(t)が大きいことから、伸びている脚リンク30、40が切替る時点との時間差が長いと判断することができる。この場合、入力した体幹高さ位置z1(t)、z2(t)のなかで最も低い位置(第1高さ位置)を、体幹12の高さ位置z3(t)として決定する。即ち、
z3(t)=Min(z1(t),z2(t))
となる。
ステップS112では、高低差dz(t)が小さいことから、伸びている脚リンク30、40が切替る時点との時間差が短いと判断することができる。この場合、入力した体幹高さ位置z1(t)、z2(t)のなかで最も低い位置(第1高さ位置)から下降させた位置を、体幹12の高さ位置z3(t)として決定する。高さ位置z3(t)は、例えば、次式を用いて計算することができる。
z3(t)=Min(z1(t),z2(t))−(λ−dz)/4λ
=(z1(t)+z2(t))/2−(λ+dz(t))/4λ
上式に示すように、体幹高さ位置z1(t)、z2(t)のなかで最も低い位置Min(z1(t),z2(t))に対して、高低差dzが小さいときほど、決定する高さ位置z3(t)は大きく下降する。
図9に示すように、このステップS112で計算される高さ位置z3(t)は、左脚リンク30に関する許容体幹高さ位置の軌道Z1と、右脚リンク40に関する許容体幹高さ位置の軌道Z2から作成されるベジェ曲線軌道上に位置する。なお、上記した演算式は一例であり、軌道Z1と軌道Z2を平滑に接続する他の近似曲線式を用いてもよい。
【0030】
図8のステップS114では、決定された高さ位置z3(t)が体幹歩容データ作成装置154に入力される。体幹歩容データ作成装置154は、記憶している体幹歩容データの高さ位置を、入力した高さ位置に書換える。
ステップS116では、上記した処理がすべての時刻に対して実行されたのか否かを判定する。イエスであれば処理を終了して図5のフローに戻る。ノーであれば、ステップS102へ戻り、処理を実行する対象時刻tを新たに設定し、上記の処理を繰り返す。
体幹高さ決定装置164によって、図10に示す体幹12の高さ位置の軌道Z3が作成される。この軌道Z3によると、ロボット6は脚リンク30、40を自然に伸ばして歩行することができるとともに、伸びている脚リンク30、40が切替る時点(例えば図中のB)においても、体幹12の高さ位置が急激に変化することがない。それにより、アクチュエータ等に過大な負荷がかかることが抑制される。
【0031】
図11に示すように、体幹高さ決定装置164は、上述した処理に用いる高低差基準値λを、ロボット6の歩幅に応じて増減調節してもよい。この場合、図11(a)に示すように歩幅が大きい場合は、図11(b)に示すように大きな高低差基準値λ1を用いるとよい。図11(c)に示すように歩幅が小さい場合は、図11(d)に示すように小さな高低差基準値λ2を用いるとよい。それにより、体幹12の高さ位置を無用に低下させることなく、体幹12の高さ位置の急激な変化を抑制することができる。
上記した体幹高さ位置の決定処理は、二足歩行ロボットに限定されず、さらに多数の脚リンクを備えるロボットにも適用可能である。脚リンク毎に計算した高さ位置のなかで最も低い第1高さ位置と、第1高さ位置とその第1高さ位置に次いで低い第2高さ位置との高低差dzに基づいて、上記と同様に体幹高さ位置z3を決定することができる。
【0032】
図5のステップS12では、体幹高さ修正装置156が、体幹歩容データ作成装置154が記憶している体幹歩容データの高さ位置の軌道Z3を平滑化する処理を実行する。
図12は、図5のステップS12において体幹高さ修正装置156が実行する処理の流れを示している。体幹高さ修正装置156は、図12に示すフローに沿って、体幹歩容データ作成装置154が記憶している体幹歩容データの高さ位置を、順次修正していく。以下、図12に示すフローに沿って、図5のステップS12で実行される処理について説明する。また図13に、以下に説明する処理によって作成される体幹高さ位置の軌道を示す。図13中の軌道Z3は修正前の体幹高さ位置の軌道を示している。図13中の軌道Z4はステップS202からステップ216の処理による修正後の体幹高さ位置の軌道を示している。図13中の軌道Z5はステップS218からステップ232の処理による修正後の体幹高さ位置の軌道を示している。
【0033】
ステップS202では、処理を実行する時刻tの初期値にゼロを設定する。
ステップS204では、時刻t=0に対する修正後の体幹高さ位置z4(0)に、時刻t=0に対する修正前の体幹高さ位置z4(0)を設定する。即ち、時刻t=0に対する体幹高さ位置は修正されず、その値が保持される。
ステップS206では、体幹歩容データ作成装置154から、体幹歩容データが記述している時刻t+Δtに対する高さ位置z3(t+Δt)を入力する。
ステップS208では、時刻tに対する修正後の体幹高さ位置z4(t)から、時刻t+Δtに対する体幹高さ位置z3(t+Δt)への変化量Δz3(t)を計算する。この段階において、時刻tに対する体幹高さ位置が、既に修正済みであることに留意されたい。
【0034】
ステップS210では、ステップS208で計算した変化量Δz3(t)をゼロと比較する。変化量Δz3(t)がゼロを超えていれば、ステップS212へ進む。即ち、時刻tから時刻t+Δtの間で体幹高さ位置が上昇している場合は、ステップS212へ進むこととなる。一方、変化量Δz3(t)がゼロ以下であれば、ステップS214へ進む。即ち、時刻tから時刻Δtの間で体幹高さ位置が上昇していない場合は、ステップS214へ進むこととなる。
ステップS212では、体幹高さ位置z3(t+Δt)の修正処理が行われる。この処理では、時刻tから時刻t+Δtの間における体幹高さ位置の変化(上昇)量Δz3(t)を、所定の割合αだけ減少させるように、体幹高さ位置z3(t+Δt)の修正が行われる。修正後の体幹高さ位置z4(t+Δt)は、例えば次式によって計算することができる。
z4(t+Δt)=z3(t+Δt)−α・Δz3(t)
体幹高さ位置の変化量を減少させる係数αは、オペレータ等によって適宜設定することができる。修正後の体幹高さ位置z4(t+Δt)は体幹歩容データ作成装置154に入力され、記憶されている体幹高さ位置z3(t+Δt)が書換えられる。
【0035】
一方、ステップS214では、ステップS212とは異なる手法によって、体幹高さ位置z3(t+Δt)の修正処理が行われる。時刻tから時刻t+Δtの間において体幹高さ位置が下降している場合、ステップS212と同様に変化量Δz3(t)を減少させてしまうと、修正後の体幹高さ位置が、修正前の体幹高さ位置よりも高くなってしまう。この場合、修正後の体幹高さ位置が、脚リンク30、40を最大に伸ばしても届かない高さ位置となることがあり、ロボット6が実現できない歩容データが作成されてしまう。ロボット6のように、脚リンク30、40によって体幹12の高さ位置が制限される脚式ロボットでは、体幹12の高さ方向の軌道を平滑化する場合に、体幹高さ位置の許容高さを考慮する必要がある。
従って、このステップS214では、体幹高さ位置の変化量Δz3(t)を減少させる処理は実行しない。ただし、前回の処理サイクルにおいて時刻tに対する体幹高さ位置が修正されている場合には、その修正量α・Δz3(t−Δt)を用いて、修正後の体幹高さ位置z3(t+Δt)を、次式のように計算する。
z4(t+Δt)=z3(t+Δt)−α・Δz3(t−Δt)
上式は、時刻tに対する体幹高さ位置の修正量α・Δz3(t−Δt)を、所定の割合αだけ減少させた修正量α・Δz3(t−Δt)によって、時刻t+Δtに対する体幹高さ位置z3(t+Δt)を修正するものである。このように体幹高さ位置z(t+Δt)を修正することによって、時刻tまでの修正済みの体幹高さ位置の軌道を、時刻t+Δt以降の体幹高さ位置の軌道に、漸近させながら平滑に接続することができる。修正後の体幹高さ位置z4(t+Δt)は体幹歩容データ作成装置154に入力され、記憶されている体幹高さ位置z3(t+Δt)が書換えられる。
【0036】
ステップS216では、時刻t+Δtがn・Δtであるのか否かを判定することによって、歩容データが記述している体幹高さ位置を最終時刻n・Δtのデータまで修正したのか否かを判定する。最終時刻n・Δtのデータまで終了していればステップS218へ進む。終了していなければ、時刻tに歩容データの単位時間Δtを加算し、ステップS206へ戻り、上述の処理を繰り返す。
【0037】
ステップS218からステップS232までの処理は、上述したステップS202からステップS216までの処理と、略同一となっている。ただし、上述したステップS202からステップS216までの処理では、体幹歩容データが記述している高さ位置を、最先(時刻t=0)のデータから最終(時刻t=n・Δt)のデータへと、順に修正している。それに対して、ステップS218からステップS232までの処理では、同様の修正処理を、最終(時刻t=n・Δt)のデータから最先(時刻t=0)のデータへと、逆方向に再度実行する。同様の処理を逆方向に実行することにより、体幹高さ位置が低下していた区間を、体幹高さ位置が上昇する区間として扱うことが可能となり、体幹高さ位置の上昇量を抑制する処理を同様に実行することができる。
【0038】
具体的には、図12のステップS218において、処理を実行する時刻の初期値に、体幹歩容データの最終のデータに対応する時刻t・Δtを設定する。
S220では、時刻t=n・Δtに対する再修正後の体幹高さ位置z5(n・Δt)に、時刻t=n・Δtに対する体幹高さ位置z4(n・Δt)を設定する。即ち、時刻t=n・Δtに対する体幹高さ位置は再修正されず、その値が保持される。
ステップS222では、体幹歩容データ作成装置154から、時刻tから単位時間Δtだけ遡及する時刻t−Δtに対して体幹歩容データが記述している高さ位置z4(t−Δt)を入力する。
ステップS224では、ステップS220で入力した高さ位置z3(t)から、ステップS222で入力した高さ位置z3(t−Δt)への変化量Δz4(t)を計算する。
ステップS226では、ステップS224で計算した変化量Δz4(t)をゼロと比較する。変化量Δz4(t)がゼロを超えていればステップS228へ進み、変化量Δz4(t)がゼロ以下であればステップS230へ進む。
【0039】
ステップS228では、先に説明したステップS212と同様に、体幹高さ位置z4(t−Δt)の再修正処理が行われる。この処理では、時刻tから時刻t−Δtへと時間を遡及したときの体幹高さ位置の変化(上昇)量Δz4(t)を、所定の割合αだけ減少させることによって、再修正後の体幹高さ位置z5(t−Δt)を計算する。再修正後の体幹高さ位置z5(t−Δt)は、例えば次式によって計算することができる。
z5(t−Δt)=z4(t−Δt)−α・Δz4(t)
再修正後の体幹高さ位置z5(t−Δt)は体幹歩容データ作成装置154に入力され、記憶されている体幹高さ位置z4(t−Δt)が書換えられる。
ステップS230では、先に説明したステップS214と同様に、体幹高さ位置z4(t−Δt)の再修正処理が行われる。即ち、再修正後の体幹高さ位置z5(t−Δt)は、例えば次式によって計算することができる。
z5(t−Δt)=z5(t−Δt)−α・Δz3(t−Δt)
修正後の体幹高さ位置z4(t+Δt)は体幹歩容データ作成装置154に入力され、記憶されている体幹高さ位置z3(t+Δt)が書換えられる。
【0040】
ステップS232では、時刻t−Δtがゼロであるのか否かを判定することによって、歩容データが記述している体幹高さ位置を、最先時刻ゼロのデータまで修正したのか否かを判定する。最先時刻ゼロのデータまで終了していれば、体幹高さ位置の平滑化処理を終了する。終了していなければ、時刻tから歩容データの単位時間Δtを減算し、ステップS222へ戻り、上述の処理を繰り返す。
図5のステップS12では、以上に説明した図12に示す処理フローが実行され、体幹歩容データ作成装置154が記憶している体幹歩容データの体幹高さ位置の軌道が、図13に示す軌道Z5のように平滑化される。図5のステップS12の処理が終了すると、歩容データ作成装置104による歩容データの作成処理が終了する。
【0041】
図5に示す処理フローでは、ステップS10の体幹高さ位置の決定処理や、ステップS12の体幹高さ位置の平滑化処理の後に、再度ステップS6の体幹歩容データの作成処理に戻ってもよい。ステップS10やステップS12の処理によって体幹12の高さ位置が変更されると、歩容データに従って歩行するときのロボット6の実際ZMPが、目標ZMPと偏差を持つようになる。そこでステップS6の処理に戻り、ステップS10やステップS12の処理で定めた体幹高さ位置を用いて、ロボット6が歩行することを可能とする体幹12の水平方向の位置を再度探索する。次いで、新たに探索した体幹12の水平位置を用いて、ステップS10の体幹高さ位置の決定処理やステップS12の体幹高さ位置の修正処理を再度行う。ステップS6からステップS8又はステップS10のサイクルを繰り返すことによって、ロボット6の実際ZMPが目標ZMPに略一致する歩容データを作成することが可能となる。
歩容データ作成装置104が作成する体幹歩容データによって、ロボット6は、脚リンク30、40を自然に伸ばして歩行するとともに、体幹12を鉛直方向に緩やかに上下させながら歩行することができる。アクチュエータ等に過大な負荷がかかることがなく、ロボット6は安定した歩行動作を実現することができる。
【0042】
本実施例のロボット6が備える歩容データ作成装置104は、図14に示すように、体幹12の高さ位置が所定高さzx以下に制限されている歩容データを作成することもできる。この場合、歩容データ作成装置104の体幹高さ位置決定装置164に、体幹12の高さ位置を所定の制限高さzxを事前に教示しておく。体幹高さ位置決定装置164は、図8に示す処理フローを、脚リンク30、40に関する許容体幹高さ位置に、教示された所定の制限高さzxを加えたなかで、最も低い位置(これを第1位置とする)と、それに次いで低い位置(これを第2位置とする)に対して実施すればよい。
【0043】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例1のロボットを模式的に示す図。
【図2】ロボットが搭載しているコンピュータ装置の機能的な構成を示す図。
【図3】歩容データ作成装置の機能的な構成を示す図。
【図4】脚リンクの両端間距離を説明する図。
【図5】歩容データ作成装置が実行する処理の流れを示すフローチャート。
【図6】許容体幹高さ位置の軌道を示す図。
【図7】好ましくない体幹の上下動を説明する図。
【図8】体幹高さ決定装置が実行する処理の流れを示すフローチャート。
【図9】ベジェ曲線に沿った体幹高さ位置の軌道の一例を示す図。
【図10】体幹高さ決定装置が作成する体幹高さ位置の軌道の一例を示す図。
【図11】歩幅と体幹高さ位置の高低差基準値λの関係を説明する図。
【図12】体幹高さ修正装置が実行する処理の流れを示すフローチャート。
【図13】体幹高さ修正装置が作成する体幹高さ位置の軌道の一例を示す図。
【図14】体幹高さ決定装置が作成する体幹高さ位置の軌道の別例を示す図。
【符号の説明】
【0045】
6:ロボット
12:体幹
14:コンピュータ装置
16:左腕リンク
18:右腕リンク
20:頭部
30:左脚リンク
31:左股関節
32:左大腿リンク
34:左膝関節
36:左下腿リンク
37:左足首関節
38:左足平リンク
40:右脚リンク
41:右股関節
42:右大腿リンク
44:右膝関節
46:右下腿リンク
47:右足首関節
102:歩行パターンデータ記憶装置
104:歩容データ作成装置
106:歩容データ補正装置
108:関節角群計算装置
110:アクチュエータ制御装置
112:実際運動計算装置
114:ロボットの機械系
116:各種センサ
152:足先歩容データ作成装置
154:体幹歩容データ作成装置
156:体幹高さ修正装置
161:左体幹高さ計算装置
162:右体幹高さ計算装置
164:体幹高さ決定装置




 

 


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