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発明の名称 レーザ加工装置およびレーザ加工方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−885(P2007−885A)
公開日 平成19年1月11日(2007.1.11)
出願番号 特願2005−181844(P2005−181844)
出願日 平成17年6月22日(2005.6.22)
代理人 【識別番号】100075258
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 研二
発明者 谷中 耕平
要約 課題
レーザ加工において、孔の加工中に溶融池が発生すること抑制し、より短い加工時間で所望の孔を加工する。

解決手段
レーザ加工装置10は、加工部材にレーザ光14を照射する照射部11と、レーザ光14の照射領域36にアシストガスを噴射する噴射部13と、アシストガスの種類を変更するアシストガス種制御部15とを備える。アシストガス種制御部15は、加工部材(ノズル12の穿孔部位22)に下孔が貫通した後は、それまでに比べて、より溶融物の発生し易い種類のアシストガスに変更する。加工部材に下孔が貫通した後に、供給するアシストガスの種類を変更することで、溶融物の発生量を加工経過に応じた最適なものとし、孔の内部に溶融池を生じることがなく、より短い加工時間で所望の孔を加工することができる。
特許請求の範囲
【請求項1】
レーザ光により、孔あけ加工するレーザ加工装置であって、
加工部材にレーザ光を照射する照射部と、
レーザ光の照射領域にアシストガスを噴射する噴射部と、
アシストガスの種類を変更するアシストガス種制御部と、
を備え、
アシストガス種制御部は、加工部材に孔が貫通した後は、貫通するまでに比べて、より溶融物の発生し易い種類のアシストガスに変更する、
レーザ加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工装置であって、
アシストガス種制御部は、
加工部材に孔が貫通した後は、貫通するまでに比べて、より酸素の割合が高いアシストガスに変更する、
レーザ加工装置。
【請求項3】
請求項1に記載のレーザ加工装置であって、
アシストガス種制御部は、
加工部材に孔が貫通するまでは、不活性ガスであったアシストガスを、孔が貫通した後は、酸素を含むガスに変更する、
レーザ加工装置。
【請求項4】
レーザ光により、孔あけ加工するレーザ加工装置であって、
加工部材にレーザ光を照射する照射部と、
レーザ光の照射領域にアシストガスを噴射する噴射部と、
アシストガスの種類を変更するアシストガス種制御部と、
加工部材に孔が貫通したことを検出する貫通検出部と、
を備え、
アシストガス種制御部は、加工部材に孔の貫通が検出された後は、貫通を検出するまでに比べて、より溶融物の発生し易い種類のアシストガスに変更する、
レーザ加工装置。
【請求項5】
加工部材にレーザ光を照射すると共にレーザ光の照射領域にアシストガスを供給して、孔あけ加工するレーザ加工方法であって、
孔が貫通するまで、第1のアシストガスを供給して加工する工程と、
孔の貫通後は、第1のアシストガスに比べて溶融物が発生し易いアシストガスを供給して、所望の孔径に加工する工程と、
を含む、
レーザ加工方法。
【請求項6】
加工部材にレーザ光を照射すると共にレーザ光の照射領域にアシストガスを噴射して、孔あけ加工するレーザ加工方法であって、
加工部材に孔が貫通したことを検出する貫通検出工程を有し、
孔の貫通を検出するまで、第1のアシストガスを供給して加工する工程と、
孔の貫通検出後は、第1のアシストガスに比べて溶融物が発生し易いアシストガスを供給して、所望の孔径に加工する工程と、
を含む、
レーザ加工方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を用いた加工装置及び加工方法に関し、特に、アシストガスを供給して孔あけ加工するレーザ加工装置及び加工方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を集光させ、加工対象となる部材(以下、加工部材と記す)に照射することで、加工部材を溶融又は蒸発させて、加工部材に孔あけ等の加工を施すレーザ加工が従来から知られている。レーザ加工には、加工部材に加工力を及ぼすことなく加工できることや、機械加工が困難な微細加工ができること、融点の高い部材を加工できる等の様々な利点がある。
【0003】
このような利点を生かして、加工部材の孔あけする部位にレーザ光を照射して、内径が小さく且つ深さのある孔を形成する技術が、従来から知られている。例えば、下記の特許文献1には、金属製の板状材料であるノズルチップに対し、レーザ加工を施して、微細な噴孔を形成する技術が開示されている。
【0004】
このようなレーザ光による孔あけ加工においては、不活性ガスや酸素で構成されるアシストガスを、孔あけする部位に向けて供給することが多い。不活性ガスの割合が高いアシストガスを用いることにより、加工した孔の内壁面に、酸化物が生成されることを防ぐことができる。一方、酸素の割合が高いアシストガスを用いることで、その反応熱により加工部材の溶融を促進することが可能となる。
【0005】
また、アシストガスには、レーザ光による孔あけ加工中に、孔の内部で発生した加工部材の溶融物を、孔から排出させる効果がある。加工中の孔にアシストガスを噴射することで、下孔が貫通するまでは表孔(孔のレーザ入射側)から溶融物を排出させ、下孔が貫通した後は、裏孔(表孔の反対側)から溶融物を排出させることができる。
【0006】
【特許文献1】特開平5−200573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、孔あけ加工の初期段階からアシストガスの種類を、溶融物の発生し易いガス、例えば酸素の割合が高いガスとすると、下孔の貫通前において、表孔から排出される溶融物に比べて、発生する溶融物の量が多いため、孔の内部に、溶融池(溶融物が池状に溜まったもの)が発生することがあった。孔あけ加工中の孔の内部に、このような溶融池が形成されると、この溶融池にレーザ光のエネルギが吸収されて、下孔の貫通に要する時間が長くなるという問題があった。また、加工完了後の孔の内壁面に、上述の溶融池の痕跡が残るという問題も生じた。
【0008】
一方、アシストガスの種類を、溶融物の発生しにくいガス、例えば不活性ガスの割合が高いガスとすると、下孔の貫通前において、発生した溶融物は、孔の内部に溜まることなく表孔から排出され、下孔の貫通に要する時間は、酸素の割合が高いアシストガスを用いた場合に比べ短くて済む。しかし、下孔の貫通後においては、そもそも溶融物の発生しにくいアシストガスを用いているため、所望の孔径に加工が完了するまでに要する時間が長くなるという問題があった。
【0009】
そこで本発明は、孔の加工中に溶融池が発生することを抑制し、より短い加工時間で、所望の孔を加工するレーザ加工装置及び加工方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のレーザ加工装置は、加工部材にレーザ光を照射する照射部と、レーザ光の照射領域にアシストガスを噴射する噴射部と、アシストガスの種類を変更するアシストガス種制御部とを備え、アシストガス種制御部は、加工部材に孔(下孔)が貫通した後は、貫通するまでに比べてより溶融物の発生し易い種類のアシストガスに変更する。
【0011】
好ましくは、アシストガス種制御部は、加工部材に孔(下孔)が貫通した後は、貫通するまでに比べて、より酸素の割合が高いアシストガスに変更する。アシストガスにおける酸素の割合を高くすることで、加工部材におけるレーザ光照射領域の温度が、反応熱により高くなり、加工部材の溶融が促進される。
【0012】
また好ましくは、アシストガス種制御部は、加工部材に孔(下孔)が貫通するまでは、不活性ガスであったアシストガスを、孔(下孔)が貫通した後は、酸素を含むガスに変更する。
【0013】
また、本発明のレーザ加工装置は、加工部材にレーザ光を照射する照射部と、レーザ光の照射領域にアシストガスを噴射する噴射部と、アシストガスの種類を変更するアシストガス種制御部と、加工部材に孔(下孔)が貫通したことを検出する貫通検出部とを備え、アシストガス種制御部は、加工部材に孔(下孔)の貫通が検出された後は、貫通を検出するまでに比べて、より溶融物の発生し易い種類のアシストガスに変更する。
【0014】
また、本発明のレーザ加工方法は、孔(下孔)が貫通するまで、第1のアシストガスを供給して加工する工程と、孔(下孔)の貫通後は、第1のアシストガスに比べて溶融物が発生し易いアシストガスを供給して、所望の孔径に加工する工程とを含む。
【0015】
また、本発明のレーザ加工方法は、加工部材に孔(下孔)が貫通したことを検出する貫通検出工程を有しており、孔(下孔)の貫通を検出するまで、第1のアシストガスを供給して加工する工程と、孔(下孔)の貫通検出後は、第1のアシストガスに比べて溶融物が発生し易いアシストガスを供給して、所望の孔径に加工する工程とを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、加工中の孔から溶融物を効率よく排出させ、より短い加工時間で、所望の孔をレーザ加工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明に係る実施形態について、図面を用いて詳細を説明する。
【0018】
〔第1実施形態〕
本実施形態のレーザ加工装置の構成について、図1を用いて説明する。図1に、レーザ加工装置10の概略構成を示す。本実施形態のレーザ加工装置10は、加工部材に、所望の孔径を有する孔を加工するレーザ加工装置10であり、図1に示すように、レーザ光14を照射する照射部11と、レーザ光14の照射領域にアシストガスを噴射する噴射部13と、アシストガスの種類を変更するアシストガス種制御部15とを有している。これら各部について、以下に詳細を説明する。
【0019】
本実施形態において、加工部材(加工対象となる部材)は、ディーゼルエンジン等で用いられる筒内噴射用の燃料噴射弁の構成部品であるノズル12である。このノズル12は、クロムモリブデン鋼(例えばSCM420)で形成されており、レーザ光14により孔あけ加工される部位(以下、穿孔部位と記す)の厚みは、1.2mmとなっている。
【0020】
なお、加工部材は、マルチポイントインジェクション用の燃料噴射弁の構成部品であるオリフィスディスクであっても良いし、燃料噴射弁とは関係なく、他の金属部材であっても良い。また、加工部材は、金属部材に限定されるものではない。レーザ光により溶融することが可能な部材であれば、金属以外の他の部材であっても良い。
【0021】
照射部11は、レーザ光14を発振し出力するレーザ発振装置16と、レーザ光14を集光する集光レンズ20とを有している。レーザ発振装置16から出力されたレーザ光14は、アシストガスノズル18に配設された集光レンズ20により集光されて、ノズル12の穿孔部位22に向けて照射される。穿孔部位におけるレーザ光が照射された領域(以下、照射領域と記す)は、溶融又は蒸発する。
【0022】
本実施形態において、レーザ光14には、波長532nmのYAG−SHGレーザが用いられる。レーザ発振装置16からは、平均出力14W、1パルスあたりのエネルギ1.4mJ、パルス幅30nsecであるパルス光が、10kHzの周波数で出力されている。
【0023】
噴射部13は、アシストガスを充填した第1及び第2のガスボンベ26,27と、このガスボンベ26,27から流量調整器32にアシストガスを供給する供給管28,29と、流量調整器32からアシストガスノズル18に、アシストガスを供給する供給管30と、供給されたアシストガスを加工部材(ノズル12)に向けて噴射するアシストガスノズル18とを有している。
【0024】
第1及び第2のガスボンベ26,27には、それぞれ種類の異なるガスが、十分な圧力をもって充填されている。第1のガスボンベ26には、溶融物の発生しにくい第1のガスが充填されており、一方、第2のガスボンベ27には、第1のガスに比べて溶融物の発生し易い第2のガスが充填されている。
【0025】
第1及び第2のガスは、それぞれ供給管28,29を経て、後述する流量調整器32に流入し、ここで混合されてなるアシストガスは、供給管30を経て、アシストガスノズル18に流入する。アシストガスノズル18は、レーザ光の照射領域に向けて、先細(テーパ)形状を呈しており、供給管30から流入したアシストガスは、レーザ光の照射領域(ノズル12の穿孔部位22)に向けて噴射される。
【0026】
アシストガス種制御部15は、供給管28,29と、供給管30との間に設けられ、アシストガスの流量を調整する流量調整器32と、流量調整器32に電気的に接続され、これを制御する流量制御装置34とを有している。
【0027】
流量調整器32は、供給管28から流入する第1のガスと、供給管29から流入する第2のガスとを、それぞれ流量を調整して混合することができる。流量調整器32から供給管30に送られるアシストガスは、第1及び第2のガスが所望の混合比で混合されており、かつ所望の流量に調整されている。なお、流量調整器32は、供給管30に送られるガスを、単に、第1のガス又は第2のガスのうち、いずれか一方に切り換える構成とすることもできる。
【0028】
一方、流量制御装置34には、加工経過時間に対する、第1及び第2のガスの混合比と、混合されたガスの流量の設定値が、予めプログラムされている。流量制御装置34は、この設定値に基づいて流量調整器32に制御信号を出力する。なお、流量制御装置34は、単に、第1のガスから第2のガスに切り換える制御信号を、流量調整器32に出力する構成とすることもできる。
【0029】
この流量制御装置34から入力される制御信号に基づき、流量調整器32は、第1のガスと第2のガスを所望の混合比と流量とを調整することや、第1のガスと第2のガスを切り換えることで、供給管30からアシストガスノズル18に送られるアシストガスの種類を変更することができる。なお、加工経過時間に対する、アシストガスの種類(混合比及び混合ガス流量の設定値を含む)は、実験等により加工部材に所望の形状の孔が最も早く加工できるような設定が求められている。
【0030】
次に、本実施形態のレーザ加工装置10の動作について、図2を用いて以下に説明する。図2は、加工の時系列的な孔の形成の様子を示す断面斜視図であり、図2(a)には、加工開始時を、図2(e)には加工完了時を、さらに図2(b)〜(c)には加工途中の状態が示されている。図2において、レーザ光14により溶融した溶融物が孔から排出される方向を矢印で示す。
【0031】
まず、レーザ発振装置16から、レーザ光14の出力が開始される。レーザ発振装置16から出力されたレーザ光14は、アシストガスノズル18に取り付けられた集光レンズ20で集光されて、図2(a)に示す、加工部材(ノズル12)の穿孔部位22に照射される。このレーザ光14が照射された領域(照射領域)36にある金属は、レーザ光14を吸収し、加熱されて溶融又は蒸発する。
【0032】
一方、この穿孔部位22に対するレーザ光14の照射開始と共に、照射領域36へのアシストガスの噴射が開始される。流量制御装置34は、流量調整器32から供給管30に給送するガスを第1のアシストガスに設定している。ガスボンベ26,27からは、第1及び第2のガスがそれぞれ流量調整器に供給されており、流量調整器32は、流量制御装置34からの制御信号に基づき、溶融物が発生しにくい第1のアシストガスを供給管30に給送する。給送された第1のアシストガスは、アシストガスノズル18から、穿孔部位22のレーザ光照射領域36に向けて噴射される。
【0033】
そして、図2(b)に示すように、レーザ光14により照射領域36にある加工部材が蒸発し、また、加工部材が溶融した溶融物が、第1のアシストガスにより吹き飛ばされて、加工初期の孔42が形成される。この加工初期の孔42は、加工部材を貫通しておらず、この時点では、ノズル12には未だ下孔44は貫通していない。なお、下孔44とは、加工部材を貫通して、裏孔40が形成されたものの、所望の内径に加工がなされていない状態の孔を意味する。加工初期の孔42のように孔が加工部材を貫通していない状態においては、レーザ光14により溶融した溶融物は、矢印Aで示すように、アシストガス(第1のガス)の圧力により表孔38から排出される。
【0034】
このように、加工部材に下孔が貫通するまでの工程において、アシストガスの種類を、溶融物の発生しにくい第1のガスとしたため、溶融物の発生量は、アシストガスの圧力により表孔38から排出可能な溶融物の量に比べて小さい。よって、孔の内部に溶融池が生じることはなく、溶融物を表孔38から排出することができる。
【0035】
そして、図2(c)に示すように、下孔44が貫通し、裏孔40が形成される。下孔44が貫通すると、それまで表孔38より排出されていた溶融物が、矢印Bで示すように、裏孔40からも排出され始める。
【0036】
この直後、流量制御装置34は、加工時間の経過に応じて、流量調整器32におけるアシストガスの種類を、それまでの第1のアシストガスから、より溶融物の発生し易い第2のアシストガスに設定を変更する。流量調整器32は、流量制御装置34からの制御信号に基づき、供給管30に給送するアシストガスを、第1のガスから第2のガスに切り換える。溶融物がより発生し易い第2のアシストガスが、穿孔部位22にあるレーザ光照射領域36に噴射される。
【0037】
アシストガスの種類が、溶融物がより発生し易い第2のアシストガスとなったため、孔の内部における溶融物の発生量が増加する。この溶融物は、図2(d)に示すように、アシストガス(第2のガス)の圧力により、主に裏孔40から排出される。そして、図2(e)に示すように、所望の孔径を有する孔、具体的には、内径60μmのノズル12の噴孔46が完成し、レーザ加工は完了する。
【0038】
このように、加工部材に下孔44が貫通した後の工程において、アシストガスの種類を、より溶融物の発生し易い第2のアシストガスとしたため、孔の内部における溶融物の発生量は、下孔44が貫通するまでの工程に比べて増大する。しかし、この溶融物は、主に、貫通した裏孔40からアシストガスが噴射される方向(矢印Dで示す)に排出されるため、溶融物の発生量が多くても、孔の内部に溶融池を生じさせることなく、裏孔40から効率よく排出させることができる。
【0039】
以上に説明したように、本実施形態のレーザ加工においては、加工部材に下孔44が貫通した後は、下孔44が貫通するまでに比べて、より溶融物の発生し易い種類のアシストガスに変更する構成としたため、下孔44が貫通するまでの工程と、下孔44が貫通した後の工程の双方において、孔の内部に溶融池が生じることがない。溶融池にレーザ光14のエネルギが吸収されることがないため、より短い加工時間で所望の孔を加工することができる。
【0040】
ここで、加工部材に下孔44が貫通した後に照射領域36に噴射するアシストガスとして、下孔44が貫通するまでに比べて、より酸素の割合が高いガスを用いることも好適である。この場合、ガスボンベ26には、酸素を含まないガスが充填されており、一方、ガスボンベ27には、酸素が充填されている。流量調整器32は、第1のガスと、第2のガス(酸素)を混合し、生成された第2のアシストガスを、アシストガスノズル18に給送する。これにより、酸素を含んで溶融物の発生し易い第2のアシストガスを、レーザ光照射領域36に噴射することができる。下孔44の貫通後における第2のアシストガスを、より酸素の割合が高いものとすることで、酸化反応熱により加工部材の溶融を促進し、溶融物の発生量を増大させることができる。これにより、下孔貫通後から加工完了までに要する時間を短縮することができる。
【0041】
さらに、下孔貫通後の第2のアシストガスに占める酸素の割合は、5〜20体積%(以下 vol%と記す)であることが好適である。酸素の割合を5 vol%以上とすることで、酸化反応熱により、照射領域にある加工部材の溶融を促進させる効果を期待できる。一方、酸素の割合を20 vol%以下とすることで,加工した孔の内壁面に酸化物が生成されてしまうことを、適度に抑制することができる。
【0042】
また、加工部材に下孔44が貫通するまでは、不活性ガスであったアシストガスを、下孔44が貫通した後は、酸素を含むアシストガスに変更することも好適である。下孔が貫通するまでの第1のアシストガスには、ヘリウム、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用い、一方、下孔貫通後の第2のアシストガスには、アルゴンと酸素の混合ガスや、窒素と酸素の混合ガスなど、第1のガスに酸素を加えたガスを用いる。
【0043】
例えば、アルゴンガスと、アルゴンと酸素の混合ガス(酸素の割合は5 vol%)とで、上述のレーザ加工に要する時間を比較すると、下孔が貫通するまでに要する時間は、図3に示すように、アルゴンガス(不活性ガス)の方が短い。一方、下孔貫通後から加工完了までに要する時間は、図4に示すように、アルゴンと酸素の混合ガスの方が短い。
【0044】
したがって、下孔が貫通するまでは不活性ガスを用い、下孔貫通後は、酸素を含んだアシストガスに変更することで、加工開始から加工完了までに要する時間を短縮することができる。
【0045】
また、下孔が貫通するまでの第1のアシストガス(不活性ガス)としては、ヘリウムガスを用いることも好適である。ヘリウムガスは、上述のレーザ光14が照射された場合、アルゴンガスや窒素ガスに比べてプラズマ化しにくい性質を有している。ヘリウムガスをアシストガスに用いた場合、アルゴンガスや窒素ガスを用いた場合に比べて、プラズマ化したヘリウムによるレーザ光14の拡散が生じにくく、レーザ光14の照射領域が狭くなると共に、照射領域におけるレーザ光14のエネルギ密度が増大することとなる。
【0046】
したがって、ヘリウムガスをアシストガスに用いた場合は、照射領域にある加工部材は蒸発(昇華)する割合が高くなり、かつ照射領域36も狭くなるため、溶融物の発生量を減少させることができる。この結果、下孔が貫通するまでの第1のアシストガスとしてヘリウムガスを用いた場合は、アルゴンガスを用いた場合に比べて、溶融物の発生を抑制しつつ、より短時間で下孔44を貫通させることができる。
【0047】
なお、アルゴンガスと窒素ガスを比較した場合は、窒素ガスの方がプラズマ化しにくい性質を有しており、下孔が貫通するまでの第1のアシストガスとして、窒素ガスを用いることも好適である。入手が容易な窒素ガスをアシストガスに用いることで、ヘリウムガスに比べて低コストで、上述のレーザ加工を行うことができる。
【0048】
また、下孔貫通後の第2のアシストガス(酸素を含むガス)としては、アルゴンと酸素の混合ガスを用いることも好適である。アルゴンガスは、上述のレーザ光14が照射された場合、窒素ガスに比べてプラズマ化し易い性質を有している。アシストガスとして、アルゴンと酸素の混合ガスを用いた場合には、プラズマ化したアルゴンによりレーザ光14が拡散されて、窒素ガスを用いた場合に比べてレーザ光14の照射領域36が拡がると共に、照射領域36におけるレーザ光14のエネルギ密度は低下することとなる。
【0049】
ここで、この低下したレーザ光14のエネルギ密度が、加工部材を溶融させるのに十分なものである場合は、レーザ光照射領域36の拡大により、溶融物の発生量を増加させることができる。この結果、下孔44が貫通した後の第2のアシストガスとしてアルゴンと酸素の混合ガスを用いた場合は、窒素と酸素の混合ガスを用いた場合に比べて、下孔貫通後、より短時間で所望の孔径に加工することができる。
【0050】
〔第2実施形態〕
本実施形態のレーザ加工装置の構成について説明する。図5は、本実施形態のレーザ加工装置50の概略を示す図である。本実施形態のレーザ加工装置は、加工部材に下孔44が貫通したことを検出する貫通検出部を備えており、アシストガス種制御部15は、貫通検出部の検出結果に応じて、アシストガスの種類を変更する点で、第1実施形態と異なり、以下に詳細を説明する。なお、第1実施形態のレーザ加工装置10と共通の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0051】
ここで、本実施形態のレーザ加工装置50の加工対象である加工部材について説明する。加工部材として、マルチポイント式燃料噴射装置等で用いられる燃料噴射弁の構成部品であるオリフィスディスク52が、冶具(図示せず)に固定されている。例えば、このオリフィスディスク52は、円盤形状を呈し、ステンレス鋼(例えばSUS304)等で成形されている。レーザ光14によりオリフィスディスク52に噴孔46が形成される部位の厚みは、約0.4mmである。
【0052】
本実施形態においては、貫通検出部として、パワーメータ54が設けられている。パワーメータ54は、オリフィスディスク52に下孔44が貫通したことを検出する機能を有している。パワーメータ54は、図5に示すように、オリフィスディスク52を挟んでレーザ光14が入射する側に対して反対側の、オリフィスディスク52の裏孔40に対応する位置に配置されている。パワーメータ54は、流量制御装置34と電気的に接続されており、レーザ光14の検出を示す検出信号を、流量制御装置34に出力する。
【0053】
流量制御装置34は、パワーメータ54からの検出信号に基づいて、流量調整器32に制御信号を出力する。流量調整器32は、この制御信号に基づいて、ガスボンベ26,27から供給される第1及び第2のガスの混合比や流量を調整することや、単に、第1のガスと第2のガスとを切り換えることで、ガスノズル18に給送されるアシストガスの種類を変更する。
【0054】
以上に説明した本実施形態のレーザ加工装置50においては、貫通検出部(パワーメータ54)が、実際に加工部材に下孔44が貫通したことを検出できるため、より正確なタイミングで、下孔44の貫通後に適した溶融物の発生し易い種類の第2のアシストガスに変更することができる。
【0055】
したがって、下孔貫通後であるにかかわらず、溶融物の発生しにくい第1のアシストガスで加工されてしまうことや、下孔44が貫通する前であるにもかかわらず、溶融物の発生し易い第2のアシストガスで加工されてしまうことを、極力防止することができる。この結果、下孔44の貫通を検出しない場合に比べて、より効率よく加工部材を溶融し、生じた溶融物を孔から排出することができ、下孔貫通後から加工完了までに要する時間を短縮することができる。
【0056】
なお、本実施形態において、パワーメータ54は、加工部材を貫通したレーザ光14の有無を検出し、これに応じてアシストガスの種類を変更する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、加工部材を貫通したレーザ光14の強度を、パワーメータ54で検出することで、裏孔40の内径に応じてアシストガスの種類を変更することも好適であり、以下に詳細を説明する。
【0057】
加工部材を貫通してパワーメータ54に入射したレーザ光14強度(単位時間あたりのエネルギ)は、加工部材に形成された裏孔40の開口面積に略比例しており、裏孔40の開口面積は、裏孔40の内径の2乗に比例している。これにより、流量制御装置34は、パワーメータ54が検出したレーザ光14の強度から、加工部材に貫通した裏孔の内径を推定することができる。パワーメータ54は、流量制御装置34と電気的に接続されており、検出したレーザ光14強度に基づく出力信号を、流量制御装置34に出力する。
【0058】
流量制御装置34には、裏孔40の内径に応じた、第1及び第2のガスの混合比や流量が、予め設定されており、パワーメータ54からの出力信号に基づいて、流量制御装置34は、流量調整器32に制御信号を出力する。流量調整器32は、この制御信号に基づいて、第1及び第2のガスの混合比や流量を調整する。
【0059】
以上のようにして、裏孔40の内径、すなわち下孔貫通後における加工経過、に応じた種類のアシストガスを供給することができる。
【0060】
ここで、裏孔40が拡大するにつれて、より酸素の割合が高くなるようアシストガスを変更する構成とすることも好適である。裏孔40が拡大すると、溶融物を裏孔40から排出することが容易になり、その分、排出可能な溶融物の量も増加する。一方、アシストガスにおける酸素の割合を高くすると、酸化反応熱により、孔の内部で発生する溶融物の量を増加する。よって、裏孔40の拡大に応じて酸素の割合を増大させても、孔の内部で生じた溶融物は、裏孔40から良好に排出されて、孔の内部に溶融池が生じることがない。このようにアシストガスの種類を変更することで、裏孔40の拡大に応じて、溶融物の発生量を増加させることができ、この結果、下孔貫通後から加工完了までに要する時間を、より短縮することができる。
【0061】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、貫通検出部は、加工部材を貫通したレーザ光14強度を検出するパワーメータ54で構成されたがこれに限定されるものではなく、レーザ光14強度を検出できるものであれば良い。例えば、パワーメータ54に替えてフォトダイオードを用いることで、より安価な構成とすることもできる。
【0062】
また、アシストガス種制御部15は、加工部材を貫通したレーザ光14の強度に応じて、アシストガスの種類を変更するものとしたが、これに限定されるものではない。下孔44の貫通を検出した後に、単に、アシストガスの種類を第1のガスから第2のガスに切り換える構成とする場合、貫通検出部は、レーザ光14の強度を検出する必要はなく、レーザ光14が加工部材を貫通したことのみ検出できれば良い。この場合、パワーメータ54に替えてフォトトランジスタをレーザ光14の検出に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第1実施形態のレーザ加工装置の概略構成を示す図である。
【図2】加工部材の穿孔部位に孔が加工される様子を示す断面斜視図であり、(a)は、加工開始時を示す図であり、(b)は表孔が形成され下孔が貫通するまでの状態を示す図であり、(c)は下孔が貫通して裏孔が形成された状態を示す図であり、(d)は、裏孔が拡大していく状態を示す図であり、図2(e)は所望の孔が形成されて加工が完了した状態を示す図である。
【図3】アルゴンガスと、アルゴンと酸素の混合ガスとで、下孔が貫通するまでに要する時間を比較した図である。
【図4】アルゴンガスと、アルゴンと酸素の混合ガスとで、下孔貫通後から加工完了に要する時間を比較した図である。
【図5】第2実施形態のレーザ加工装置の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
10 レーザ加工装置、11 照射部、12 ノズル(加工部材)、13 噴射部、14 レーザ光、15 アシストガス種制御部、22 穿孔部位、32 流量調整器、34 流量制御装置、50 レーザ加工装置、54 パワーメータ(貫通検出部)。




 

 


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