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発明の名称 血液浄化装置及びその再循環率算出方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−105149(P2007−105149A)
公開日 平成19年4月26日(2007.4.26)
出願番号 特願2005−297442(P2005−297442)
出願日 平成17年10月12日(2005.10.12)
代理人 【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
発明者 村上 智也 / 豊田 将弘 / 森 義博
要約 課題

患者のアクセス部位を流れる血液の流量が体外循環血液量よりも小さい故に血液再循環が生じた場合であっても、良好な血液浄化を行わせる対処方法を示すことができる血液浄化装置及びその再循環率算出方法を提供する。

解決手段
特許請求の範囲
【請求項1】
患者のアクセス部位から採取した血液を体外循環させるべく動脈側血液回路及び静脈側血液回路から成る血液回路と、
前記動脈側血液回路に配設された血液ポンプと、
前記動脈側血液回路と静脈側血液回路との間に接続され、当該血液回路を流れる血液を浄化する血液浄化手段と、
前記血液回路にて体外循環する血液に対して所定の目印を付与する目印付与手段と、
該目印付与手段にて付与された目印を検出する検出手段と、
該検出手段で検出された目印に基づき、前記静脈側血液回路から患者に戻された血液が再び前記動脈側血液回路に導かれて流れる再循環血液量の体外循環血液量に対する割合である再循環率を演算可能な演算手段と、
を具備した血液浄化装置において、
前記演算手段にて演算された再循環率が所定値より大きい場合、当該再循環率を所定値以下とする理想体外循環血液量を算出可能な算出手段を具備したことを特徴とする血液浄化装置。
【請求項2】
前記算出手段にて算出された理想体外循環血液量となるよう前記血液ポンプが連動して制御されることを特徴とする請求項1記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記理想体外循環血液量は、再循環率を略0とするものであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の血液浄化装置。
【請求項4】
前記算出手段は、前記演算手段にて演算された再循環率(α)から患者のアクセス部位を流れる血液流量であるシャント流量(Qf)を求めるとともに、当該シャント流量(Qf)に基づいて理想体外循環血液量を算出することを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【請求項5】
前記算出手段は、シャント流量(Qf)=(1−再循環率(α))×(体外循環血液量(Qb))なる演算式により、シャント流量(Qf)を求めることを特徴とする請求項4記載の血液浄化装置。
【請求項6】
患者のアクセス部位から採取した血液を動脈側血液回路及び静脈側血液回路から成る血液回路にて体外循環させつつ、当該動脈側血液回路と静脈側血液回路との間に接続された血液浄化手段にて当該血液を浄化するとともに、前記血液回路にて体外循環する血液に対して所定の目印を付与する一方、当該目印を検出することにより、前記静脈側血液回路から患者に戻された血液が再び前記動脈側血液回路に導かれて流れる再循環血液量の体外循環血液量に対する割合である再循環率を演算する血液浄化装置の再循環率算出方法において、再循環率を所定値以下とする理想体外循環血液量を算出することを特徴とする血液浄化装置の再循環率算出方法。
【請求項7】
前記理想体外循環血液量は、再循環率を略0とするものであることを特徴とする請求項6記載の血液浄化装置の再循環率算出方法。
【請求項8】
演算された再循環率(α)から患者のアクセス部位を流れる血液流量であるシャント流量(Qf)を求めるとともに、当該シャント流量(Qf)に基づいて理想体外循環血液量を算出することを特徴とする請求項6又は請求項7記載の血液浄化装置の再循環率算出方法。
【請求項9】
シャント流量(Qf)=(1−再循環率(α))×(体外循環血液量(Qb))なる演算式により、シャント流量(Qf)を求めることを特徴とする請求項8記載の血液浄化装置の再循環率算出方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の血液を体外循環させつつ浄化する血液浄化装置及びその再循環率算出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、血液浄化療法、例えば透析治療においては、患者の血液を体外循環させるべく可撓性チューブから成る血液回路が使用されている。この血液回路は、患者から血液を採取する動脈側穿刺針が先端に取り付けられた動脈側血液回路と、患者に血液を戻す静脈側穿刺針が先端に取り付けられた静脈側血液回路とから主に成り、これら動脈側血液回路と静脈側血液回路との間にダイアライザを介在させ、体外循環する血液の浄化を行っている。
【0003】
かかるダイアライザは、内部に複数の中空糸が配設されており、それぞれの中空糸の内部を血液が通過するとともに、その外側(中空糸の外周面と筐体の内周面との間)に透析液を流し得る構成とされている。中空糸は、その壁面に微小な孔(ポア)が形成されて血液浄化膜を成しており、中空糸内部を通過する血液の老廃物等が血液浄化膜を透過して透析液内に排出されるとともに、老廃物が排出されて浄化された血液が患者の体内に戻るようになっている。また、透析装置内には、患者の血液から水分を取り除くための除水ポンプが配設されており、透析治療時に除水が行われるように構成されている。
【0004】
ところで、例えば動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針を患者のシャント(外科手術により動脈と静脈とを連結させたアクセス部位)及びその周辺に穿刺し体外循環を行わせる際、当該静脈側穿刺針から浄化されて患者の体内に戻された血液が、患者の臓器等を経ず再び動脈側穿刺針から導入されてしまう血液再循環が生じることがある。このような血液再循環が生じると、浄化した血液を更に体外循環させることとなり、その分だけ浄化が必要な血液の体外循環量が減少するので、血液浄化効率が悪化してしまうという不具合が生じてしまう。また、血液再循環が生じた場合、血液回路に接続されたブラッドボリューム計(ヘマトクリットセンサ)など体外循環する血液の濃度を検出するための手段による検出値が、全身の血液濃度を反映しなくなるため、信頼できるデータを得ることができなくなってしまう。
【0005】
然るに従来より、体外循環する血液に対して急峻で且つ短時間の濃度塊から成る目印を付与するとともに、その目印(濃度塊)を検出器で検出し、得られた目印における血液濃度変化を示す検出信号の面積比から再循環率を演算し得る透析装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。かかる文献で開示された透析装置によれば、短時間で再循環率を測定することが可能とされる。
【特許文献1】特表2001−502590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の血液浄化装置においては、以下の如き問題があった。
患者のアクセス部位(シャント)における狭窄などにより、当該アクセス部位を流れる血液の流量が体外循環血液量よりも小さくなっている場合には、足りない体外循環血液量を満たすべく血液再循環が生じると考えられる。即ち、血液ポンプを駆動して規定流量の体外循環を行わせようとした場合、アクセス部位の血液流量では足りないと、静脈側穿刺針から動脈側穿刺針に血液が流れてしまって血液再循環が生じるのである。
【0007】
一方、従来の血液浄化装置においては血液再循環を検出し得るものの、当該血液再循環が検出された後に如何なる処置を行えば良好な血液浄化を行うことができるかを示唆するものでないという問題があった。即ち、現状においては、甚大な血液再循環が認められた場合、医師等医療従事者が穿刺針の穿刺位置を変更等して対処するのが実情であるが、上述の如くアクセス部位の血液流量が体外循環血液量より小さい故に血液再循環が生じた場合には、穿刺位置を変更しても血液再循環を抑制できないのである。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、患者のアクセス部位を流れる血液の流量が体外循環血液量よりも小さい故に血液再循環が生じた場合であっても、当該血液再循環を低下させた良好な血液浄化を行わせるための対処方法を示すことができる血液浄化装置及びその再循環率算出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、患者のアクセス部位から採取した血液を体外循環させるべく動脈側血液回路及び静脈側血液回路から成る血液回路と、前記動脈側血液回路に配設された血液ポンプと、前記動脈側血液回路と静脈側血液回路との間に接続され、当該血液回路を流れる血液を浄化する血液浄化手段と、前記血液回路にて体外循環する血液に対して所定の目印を付与する目印付与手段と、該目印付与手段にて付与された目印を検出する検出手段と、該検出手段で検出された目印に基づき、前記静脈側血液回路から患者に戻された血液が再び前記動脈側血液回路に導かれて流れる再循環血液量の体外循環血液量に対する割合である再循環率を演算可能な演算手段とを具備した血液浄化装置において、前記演算手段にて演算された再循環率が所定値より大きい場合、当該再循環率を所定値以下とする理想体外循環血液量を算出可能な算出手段を具備したことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の血液浄化装置において、前記算出手段にて算出された理想体外循環血液量となるよう前記血液ポンプが連動して制御されることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の血液浄化装置において、前記理想体外循環血液量は、再循環率を略0とするものであることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記算出手段は、前記演算手段にて演算された再循環率(α)から患者のアクセス部位を流れる血液流量であるシャント流量(Qf)を求めるとともに、当該シャント流量(Qf)に基づいて理想体外循環血液量を算出することを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の血液浄化装置において、前記算出手段は、シャント流量(Qf)=(1−再循環率(α))×(体外循環血液量(Qb))なる演算式により、シャント流量(Qf)を求めることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、患者のアクセス部位から採取した血液を動脈側血液回路及び静脈側血液回路から成る血液回路にて体外循環させつつ、当該動脈側血液回路と静脈側血液回路との間に接続された血液浄化手段にて当該血液を浄化するとともに、前記血液回路にて体外循環する血液に対して所定の目印を付与する一方、当該目印を検出することにより、前記静脈側血液回路から患者に戻された血液が再び前記動脈側血液回路に導かれて流れる再循環血液量の体外循環血液量に対する割合である再循環率を演算する血液浄化装置の再循環率算出方法において、再循環率を所定値以下とする理想体外循環血液量を算出することを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の血液浄化装置の再循環率算出方法において、前記理想体外循環血液量は、再循環率を略0とするものであることを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の発明は、請求項6又は請求項7記載の血液浄化装置の再循環率算出方法において、演算された再循環率(α)から患者のアクセス部位を流れる血液流量であるシャント流量(Qf)を求めるとともに、当該シャント流量(Qf)に基づいて理想体外循環血液量を算出することを特徴とする。
【0017】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の血液浄化装置の再循環率算出方法において、シャント流量(Qf)=(1−再循環率(α))×(体外循環血液量(Qb))なる演算式により、シャント流量(Qf)を求めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、再循環率を所定値以下とする理想体外循環血液量を算出するので、患者のアクセス部位を流れる血液の流量が体外循環血液量よりも小さい故に血液再循環が生じた場合であっても、当該血液再循環を低下させた良好な血液浄化を行わせるための対処方法を示すことができる。特に、請求項2の発明によれば、算出手段にて算出された理想体外循環血液量となるよう血液ポンプが連動して制御されるので、血液浄化治療中において自動的に再循環率を所定値以下とすることができる。また、請求項3及び請求項7の発明によれば、再循環率を略0とする理想体外循環血液量を算出するので、血液再循環が生じず、且つ、より効率的な血液浄化治療を行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る血液浄化装置は、患者の血液を体外循環させつつ浄化するためのもので、透析治療で使用される透析装置に適用されたものである。かかる透析装置は、図1に示すように、血液浄化手段としてのダイアライザ2が接続された血液回路1、ダイアライザ2に透析液を供給しつつ除水する透析装置本体6から主に構成されている。血液回路1は、同図に示すように、可撓性チューブから成る動脈側血液回路1a及び静脈側血液回路1bから主に構成されており、これら動脈側血液回路1aと静脈側血液回路1bの間にダイアライザ2が接続されている。
【0020】
動脈側血液回路1aには、その先端に動脈側穿刺針aが接続されているとともに、途中にしごき型の血液ポンプ3、及び第1検出手段5aが配設されている。一方、静脈側血液回路1bには、その先端に静脈側穿刺針bが接続されているとともに、途中に第2検出手段5b及び除泡用のドリップチャンバ4が接続されている。
【0021】
そして、動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bを患者のシャント(外科手術により動脈と静脈とを連結させたアクセス部位)に穿刺した状態で、血液ポンプ3を駆動させると、患者の血液は、アクセス部位から採取された後、動脈側血液回路1aを通ってダイアライザ2に至り、該ダイアライザ2によって血液浄化が施され、ドリップチャンバ4で除泡がなされつつ静脈側血液回路1bを通って患者の体内に戻る。即ち、患者の血液を血液回路1にて体外循環させつつダイアライザ2にて浄化するのである。
【0022】
ダイアライザ2は、その筐体部に、血液導入ポート2a、血液導出ポート2b、透析液導入ポート2c及び透析液導出ポート2dが形成されており、このうち血液導入ポート2aには動脈側血液回路1aの基端が、血液導出ポート2bには静脈側血液回路1bの基端がそれぞれ接続されている。また、透析液導入ポート2c及び透析液導出ポート2dは、透析装置本体6から延設された透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2とそれぞれ接続されている。
【0023】
ダイアライザ2内には、複数の中空糸が収容されており、該中空糸内部が血液の流路とされるとともに、中空糸外周面と筐体部の内周面との間が透析液の流路とされている。中空糸には、その外周面と内周面とを貫通した微少な孔(ポア)が多数形成されて中空糸膜を形成しており、該膜を介して血液中の不純物等が透析液内に透過し得るよう構成されている。
【0024】
一方、透析装置本体6は、図2に示すように、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2に跨って形成された複式ポンプPと、透析液排出ラインL2において複式ポンプPを迂回して接続されたバイパスラインL3と、該バイパスラインL3に接続された除水ポンプ8(目印付与手段)とから主に構成されている。そして、透析液導入ラインL1の一端がダイアライザ2(透析液導入ポート2c)に接続されるとともに、他端が所定濃度の透析液を調製する透析液供給装置7に接続されている。
【0025】
また、透析液排出ラインL2の一端は、ダイアライザ2(透析液導出ポート2d)に接続されるとともに、他端が図示しない廃液手段と接続されており、透析液供給装置7から供給された透析液が透析液導入ラインL1を通ってダイアライザ2に至った後、透析液排出ラインL2及びバイパスラインL3を通って廃液手段に送られるようになっている。尚、同図中符号9及び10は、透析液導入ラインL1に接続された加温器及び脱気手段を示している。
【0026】
除水ポンプ8は、ダイアライザ2中を流れる患者の血液から水分を除去するためのものである。即ち、かかる除水ポンプ8を駆動させると、複式ポンプPが定量型であるため、透析液導入ラインL1から導入される透析液量よりも透析液排出ラインL2から排出される液体の容量が多くなり、その多い容量分だけ血液中から水分が除去されるのである。尚、かかる除水ポンプ8以外の手段(例えば所謂バランシングチャンバ等を利用するもの)にて患者の血液から水分を除去するようにしてもよい。
【0027】
ここで、本実施形態の目印付与手段としての除水ポンプ8は、透析治療に必要な除水を行う他、急激で且つ短時間の除水が行い得るようになっている。即ち、透析治療中に行われる一定速度の除水を一旦中止し(但し、体外循環は行われている)、測定したヘマトクリット値が安定したところで、除水ポンプ8を急激且つ短時間駆動して除水を行わせしめることにより、その間の血液濃度(ヘマトクリット値)の変化に特有のピークを付与し得るよう構成されているのである。ここで、本発明における「急激且つ短時間」とは、回路を経た後において付与したパルスが確認できる程度の大きさ及び時間のことをいい、「特有」とは、ポンプの変動や患者の体動による他の要因による変動パターンと区別できるものをいう。
【0028】
より具体的には、図3に示すように、時間t1で一定速度の除水(通常の除水)を停止し、その後測定しているヘマトクリットの値が安定した時間t2になった際に除水ポンプ8を通常より高速で時間t3まで駆動させる。かかる時間t2からt3までは微小時間とされている。これにより、通常の除水に比べて、急激で且つ短時間の除水を行うことができ、例えば図4で示すような、ヘマトクリット値において特有のピークを付与することができる。
【0029】
第1検出手段5a及び第2検出手段5bは、動脈側血液回路1a及び静脈側血液回路1bにそれぞれ配設されて、これら回路を流れる血液の濃度(具体的にはヘマトクリット値)を検出することにより除水ポンプ8にて付与された目印(急激且つ短時間の除水により血液濃度(ヘマトクリット値)の変化に付与された特有のピーク)を検出するものである。これら第1検出手段5a及び5bは、ヘマトクリットセンサから成るもので、かかるヘマトクリットセンサは、例えばLED等の発光素子及びフォトダイオード等の受光素子を備え、発光素子から血液に光を照射するとともに、その透過した光或いは反射した光を受光素子にて受光することにより、患者の血液濃度を示すヘマトクリット値を検出するものである。
【0030】
具体的には、受光素子から出力された電気信号に基づき、血液の濃度を示すヘマトクリット値を求める。即ち、血液を構成する赤血球や血漿などの各成分は、それぞれ固有の吸光特性を持っており、この性質を利用してヘマトクリット値を測定するのに必要な赤血球を電子光学的に定量化することにより当該ヘマトクリット値を求めることができるのである。より具体的には、発光素子から照射された近赤外線は、血液に入射して吸収と錯乱の影響を受け、受光素子にて受光される。その受光した光の強弱から光の吸収散乱率を解析し、ヘマトクリット値を算出するのである。
【0031】
上記の如く構成された第1検出手段5aは、動脈側血液回路1aに配設されているので、透析治療中における動脈側穿刺針aを介して患者から採取した血液のヘマトクリット値を検出するとともに、第2検出手段5bは、静脈側血液回路1bに配設されているので、ダイアライザ2にて浄化され、患者に戻される血液のヘマトクリット値を検出することとなる。即ち、除水ポンプ8にて付与された特有のピークは、まず第2検出手段5bで検出(図4参照)され、その後、その血液が再び動脈側血液回路1aに至って再循環があった場合、当該再循環血液に残存した特有のピークを第1検出手段5aが検出(図5参照)し得るようになっている。
【0032】
従って、第2検出手段5bにより除水ポンプ8による特有のピークの付与があったか否かの確認を行うことができるとともに、第1検出手段5aにより再循環血液の有無を検出することができる。即ち、除水ポンプ8により特有のピークが付与されたか否かの確認を行い得るので、動脈側血液回路のみに検出手段が配設されたものに比べ、確実且つ精度よく血液再循環の検出を行うことができるのである。
【0033】
更に、上記第1検出手段5a及び第2検出手段5bは、図6に示すように、透析装置本体6に配設された演算手段11と電気的に接続されている。かかる演算手段11は、例えばマイコン等で構成されたものであり、第1検出手段5a及び第2検出手段5bで検出されたヘマトクリット値(特有のピーク)を比較し、動脈側血液回路1aを流れる血液中の再循環血液が占める割合を演算可能なものである。即ち、演算手段11は、第1検出手段5a及び第2検出手段5bで検出された特有のピーク(目印)に基づき、静脈側血液回路1bから患者に戻された血液が再び動脈側血液回路1aに導かれて流れる再循環血液量の体外循環血液量に対する割合である再循環率を演算可能なものとされている。
【0034】
具体的には、血液再循環がある場合に、除水ポンプ8により特有のピーク(目印)を付与してから、その血液が第2検出手段5bに至るまでの時間(図4における時間t5)及び再循環して第1検出手段5aに至るまでの時間(図5におけるt7)を予測しておき、除水ポンプ8による特有のピークの付与後、時間t5経過した際に第2検出手段5bによって検出されたヘマトクリット値と、時間t7経過した際に第1検出手段5aによって検出されたヘマトクリット値とを演算手段11が比較する。
【0035】
このように、血液が第2検出手段5bに至るまでの時間t5、及び再循環して第1検出手段5aに至るまでの時間t7を予測することで、心肺再循環(浄化された血液が心臓や肺のみを通り、他の組織や臓器等を通らずに体外に引き出されてしまう現象)と、計測対象である再循環とを判別することができる。尚、かかる方法に代えて、第1検出手段5a及び第2検出手段5bで検出されるヘマトクリット値が所定の数値を超えたことを演算手段11にて認識させ、当該数値を超えたヘマトクリット値同士を比較するようにしてもよい。
【0036】
そして、図4及び図5で示すような時間−ヘマトクリット値のグラフに基づき、第1検出手段5a及び第2検出手段5bのヘマトクリット値の変化を求め、上記の如き比較されるべき時間の部分(変化部分)の面積を積分法など数学的手法にて演算する。例えば、第2検出手段5bによる変化部分(図4におけるt5からt6までの部分)の面積をSv、第1検出手段5aによる変化部分(図5におけるt7からt8までの部分)の面積をSaとおくと、再循環血液の割合(再循環率)Rrecは、以下の如き演算式にて求められる。
【0037】
Rrec(%)=Sa/Sv×100 …(演算式1)
【0038】
ここで、第1検出手段5aによる変化部分の時間(t7からt8までの時間間隔)は、特有のピークが付与された血液が第2検出手段5bから第1検出手段5aまで流れる過程において拡散することを考慮し、第2検出手段5bによる変化部分の時間(t5からt6までの時間間隔)より大きく設定されている。求められた再循環血液の割合は、透析装置本体6に配設された表示手段(不図示)に表示され、医師等の医療従事者が視認し得るようになっている。尚、血液再循環がない場合は、上記Saが0となるため、再循環血液の割合として表示される数値は0(%)となる。これにより、血液再循環の有無に加え、その割合をも医療従事者に認識させることができ、その後の処置(血液再循環を抑制すべく穿刺針を穿刺し直したり或いはシャントの形成をし直すなどの措置)の参考とすることができる。
【0039】
然るに、本実施形態においては、図6に示すように、演算手段11、第1検出手段5a、5b、及び血液ポンプ3の駆動を制御する血液ポンプ制御手段13とそれぞれ電気的に接続された算出手段12が形成されている。かかる算出手段12は、演算手段11と同様、例えばマイコン等で構成されたものであり、演算手段11にて演算された再循環率が所定値(例えば10%)より大きい場合、当該再循環率を予め設定された所定値以下とする理想体外循環血液量を算出可能とされたものである。
【0040】
具体的には、算出手段12は、演算手段11による演算の結果、血液透析治療における現時点での再循環率が所定値以上であることを条件として、演算手段11にて演算された再循環率(α)から患者のアクセス部位を流れる血液流量であるシャント流量(Qf)を求めるとともに、当該シャント流量(Qf)に基づいて再循環率を所定値(血液浄化効率にあまり影響が及ばず且つヘマトクリットセンサなどによって検出される血液濃度値に影響があまり及ばない範囲の値)以下とすべき理想体外循環血液量を算出するものである。
【0041】
然るに、アクセス部位(シャント)の狭窄などにより、シャント流量(Qf)が現時点での体外循環血液量(Qb)よりも小さくなっている場合は、足りない体外循環血液量を満たすべく血液再循環が生じると考えられることから、当該血液再循環流量をQr、体外循環血液量をQbとした場合、以下の演算式が成り立つ。
Qb=Qf+Qr … (演算式2)
【0042】
一方、再循環率(α)は、再循環血液量(Qr)の体外循環血液量(Qb)に対する割合であることから、α=Qr/Qbなる関係式が成り立ち、かかる関係式を上記演算式1に代入すると、以下の演算式が成り立つ。
Qb=Qf+α・Qb
Qf=(1−α)Qb … (演算式3)
【0043】
ところで、体外循環血液量(Qb)は、血液ポンプ3の駆動量(即ち、血液ポンプ制御手段13による制御)にて把握されるため、かかる体外循環血液量(Qb)と演算式1にて求められた再循環率(α)を上記演算式3に代入すれば、体外循環血液量(Qb)のときのシャント流量(Qf)を求めることができる。
【0044】
上記の如くシャント流量(Qf)が求まれば、再循環率(α)を所定値以下とする理想体外循環血液量を求めることができる。即ち、シャント流量(Qf)は体外循環血液量の変化に拘わらず常に一定であるので、演算式3の関係から再循環率(α)を0(即ち、血液再循環がない状態)にするには、当該シャント流量(Qf)と同量の体外循環血液量(理想体外循環血液量)とすればよいのが分かる。
【0045】
特に、予め設定する所定値を略0として再循環率(α)を略0とする理想体外循環血液量を算出することとすれば、シャント流量(Qf)のほぼ全てが体外循環することとなるため、血液再循環が生じず、且つ、より効率的な血液浄化治療を行わせることができる。
【0046】
更に、本実施形態においては、上記の如く算出手段12で求められた理想体外循環血液量となるよう血液ポンプ3が駆動されるべく、当該算出手段12から血液ポンプ制御手段13に制御信号が送られるよう構成されている。これにより、演算手段11による演算の結果、血液透析治療における現時点での再循環率が所定値以上であると、上述の如く再循環率を所定値以下(理想的には0)とすべき理想体外循環血液量を算出手段12にて算出するとともに、該理想体外循環血液量となるよう血液ポンプ3が連動して制御(この場合、体外循環血液量が小さくなる方向への制御)されることとなる。
【0047】
従って、血液浄化治療中において自動的に再循環率を所定値以下とすることができる。また、本実施形態においては、血液回路1に配設された血液ポンプ3を制御して血液再循環が生じない体外循環血液量(理想体外循環血液量)とすることができるので、当該理想体外循環血液量とするための別個の駆動手段を不要とすることができる。尚、血液ポンプ3とは別個の駆動手段により再循環率を所定値以下とする理想体外循環血液量とするよう構成してもよい。
【0048】
上記実施形態によれば、再循環率を所定値以下とする理想体外循環血液量を算出するので、患者のアクセス部位を流れる血液の流量(シャント流量(Qf))が体外循環血液量(Qb)よりも小さい故に血液再循環が生じた場合であっても、当該血液再循環を低下させた良好な血液浄化を行わせるための対処方法を示すことができる。
【0049】
尚、シャント流量(Qf)が体外循環血液量(Qb)より大きく血液の体外循環に余裕がある場合、血液ポンプ3を体外循環血液量が大きくなる方向へ制御してもよい。例えば、求められた理想体外循環血液量にて治療を行い、そのとき検出された再循環率(α)が「0」となった場合、シャント流量(Qf)が実際の体外循環血液量と同量である場合に加え、シャント流量(Qf)が実際の体外循環血液量よりも大きく体外循環に余裕があることが考えられる。かかる場合、更に血液ポンプの駆動を制御して体外循環血液量を段階的に増加させ、シャント流量(Qf)が実際の体外循環血液量と同量である状態(即ち、シャントを流れる血液が全て体外循環される状態)を認識するようにしてもよい。
【0050】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば算出手段12にて算出された理想体外循環血液量を画面等にて表示させ、医師等医療従事者が血液ポンプ3を手動にて制御して循環血液が当該理想体外循環血液量となるようにしてもよい。しかして、本発明においては、良好な血液浄化を行わせる対処方法を示すために理想体外循環血液量を算出すれば足りるのである。
【0051】
また、本実施形態においては、除水ポンプ8による急激且つ短時間の除水により特有のピークを付与してこれを目印としているが、これに代え、他の形態の目印付与手段としてもよい。即ち、再循環血液を検出すべく血液回路1にて体外循環する血液に対して所定の目印を付与するものであれば足り、本実施形態の如く血液濃度を濃縮するものの他、生理食塩水の注入等により血液濃度を急激且つ短時間にて希釈させるもの或いは温度変化を急激且つ短時間にて付与するものとしてもよい。
【0052】
更に、本実施形態においては2つの検出手段5a、5bにて目印付与手段にて付与された目印を検出しているが、これに代えて血液回路1に配設された単独の検出手段により目印を検出するようにしてもよい。尚、目印(特有のピーク)を検出し得るものであれば、ヘマトクリットセンサ以外(例えばヘモグロビン濃度を検出するセンサやタンパク質等の濃度を検出するセンサなど)にて検出手段を構成してもよい。
【0053】
また更に、再循環血液の割合(再循環率)が所定の数値を超えた際に警報等を鳴らして、医療従事者の注意を促すようにしてもよい。尚、本実施形態においては、透析装置本体6が透析液供給機構が内蔵されない透析監視装置から成るものであるが、透析液供給機構が内蔵された個人用透析装置に適用するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
再循環率を所定値以下とする理想体外循環血液量を算出する血液浄化装置及びその再循環率算出方法であれば、体外循環させつつ血液浄化を行う他の治療(血液濾過療法や血液濾過透析療法など)で使用されるもの或いは他の機能が付加されたものにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態に係る血液浄化装置を示す全体模式図
【図2】同血液浄化装置における透析装置本体を示す模式図
【図3】同血液浄化装置における除水ポンプの制御を示すグラフであって、除水を急激で且つ短時間に行うことを示すグラフ
【図4】同血液浄化装置における第2検出手段で検出されるヘマトクリット値の変化を示すグラフ
【図5】同血液浄化装置における第1検出手段で検出されるヘマトクリット値の変化(再循環がある場合)を示すグラフ
【図6】同血液浄化装置における第1検出手段、第2検出手段、演算手段、血液ポンプ制御手段、及び算出手段の接続関係を示すブロック図
【符号の説明】
【0056】
1…血液回路
1a…動脈側血液回路
1b…静脈側血液回路
2…ダイアライザ(血液浄化手段)
3…血液ポンプ
4…ドリップチャンバ
5a…第1検出手段(検出手段)
5b…第2検出手段(検出手段)
6…透析装置本体
7…透析液供給装置
8…除水ポンプ(目印付与手段)
9…加温器
10…脱気手段
11…演算手段
12…算出手段
13…血液ポンプ制御手段




 

 


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