米国特許情報 | 欧州特許情報 | 国際公開(PCT)情報 | Google の米国特許検索
 
     特許分類
A 農業
B 衣類
C 家具
D 医学
E スポ−ツ;娯楽
F 加工処理操作
G 机上付属具
H 装飾
I 車両
J 包装;運搬
L 化学;冶金
M 繊維;紙;印刷
N 固定構造物
O 機械工学
P 武器
Q 照明
R 測定; 光学
S 写真;映画
T 計算機;電気通信
U 核技術
V 電気素子
W 発電
X 楽器;音響


  ホーム -> 医学 -> 松下電器産業株式会社

発明の名称 超音波診断装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−7347(P2007−7347A)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
出願番号 特願2005−214349(P2005−214349)
出願日 平成17年7月25日(2005.7.25)
代理人 【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
発明者 金井 浩 / 長谷川 英之 / 萩原 尚
要約 課題
ノイズの影響を低減し、高い精度で性状特性を計測することのできる超音波診断装置を提供する。

解決手段
本発明の超音波診断装置は、応力によって周期的に変形する被検体へ超音波を送信するために、探触子を駆動する駆動信号を生成する送信部102と、前記超音波が前記被検体において反射することにより得られるエコーを前記探触子により受信し、受信エコー信号を生成する受信部103と、前記受信エコー信号に基づいて前記被検体中の任意の2つの測定部位間の距離変化を示す厚さ変化波形を算出する演算部151と、基準波形を生成する基準波形生成部117と、前記基準波形を用いて、前記厚さ変化波形の全体から前記厚さ変化波形の最大変化量を算出する厚さ変化量推定部118とを備える。
特許請求の範囲
【請求項1】
応力によって周期的に変形する被検体へ超音波を送信するために、探触子を駆動する駆動信号を生成する送信部と、
前記超音波が前記被検体において反射することにより得られるエコーを前記探触子により受信し、受信エコー信号を生成する受信部と、
前記受信エコー信号に基づいて前記被検体中の任意の2つの測定部位間の距離変化を示す厚さ変化波形を算出する演算部と、
基準波形を生成する基準波形生成部と、
前記基準波形を用いて、前記厚さ変化波形の全体から前記厚さ変化波形の最大変化量を算出する厚さ変化量推定部と、
を備えた超音波診断装置。
【請求項2】
前記厚さ変化量推定部は、前記厚さ変化波形と前記基準波形との整合誤差が最小となるように前記厚さ変化波形または前記基準波形に乗じる係数を求め、前記係数および前記基準波形の振幅から前記厚さ変化波形の最大変化量を算出する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記基準波形生成部は、前記基準波形のデータを記憶した記憶部を含む請求項1または2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記基準波形は、あらかじめ複数の被検体から取得した厚さ変化波形を平均したものである請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記被検体の変形の周期に基づいて、前記基準波形の周期を調整する周期調整部をさらに備え、
前記厚さ変化量推定部は、周期が調整された基準波形と前記厚さ変化波形とに基づいて前記厚さ変化波形の最大変化量を算出する請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記被検体の変形の周期に基づいて、前記厚さ変化波形の周期を調整する周期調整部をさらに備え、
前記厚さ変化量推定部は、周期が調整された厚さ変化波形と前記基準波形とに基づいて前記厚さ変化波形の最大変化量を算出する請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
周期が調整された厚さ変化波形の複数周期における平均を求める平均化部をさらに備え、平均化された厚さ変化波形と前記基準波形とに基づいて前記厚さ変化波形の最大変化量を算出する請求項5に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記厚さ変化波形の周期が一定でない場合において、前記厚さ変化波形の周期のうち最も短い周期に合わせて、各周期のデータを抽出し、前記厚さ変化波形の周期を一定にする周期調整部をさらに備える請求項1または2に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記演算部は、前記受信エコー信号に基づいて前記被検体中の複数の測定部位の位置変化をそれぞれ示す移動波形を算出する移動波形算出部と、前記移動波形に基づいて、前記2つの測定部位間の厚さ変化波形を算出する演算部とを含む請求項1または2に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記基準波形生成部は、前記移動波形に基づいて、前記基準波形を生成する請求項9に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記移動波形に基づいて前記被検体に含まれる血管径の変化波形を算出する血管径算出部をさらに備え、前記基準波形生成部は、前記変化波形に基づいて、前記基準波形を生成する請求項9に記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記基準波形生成部は、前記被検体の血圧変化波形に基づいて前記基準波形を生成する請求項1または2に記載の超音波診断装置。
【請求項13】
前記被検体の変形周期において生じる前記応力の応力差の情報を受け取って、前記最大変化量から弾性率を求める弾性率算出部をさらに備える請求項1から12のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項14】
超音波診断装置の制御部による超音波診断装置の制御方法であって、
探触子を駆動して超音波を送信するステップ(A)と、
応力によって周期的に変形する被検体において前記超音波が反射することにより得られるエコーを前記探触子により受信するステップ(B)と、
前記受信エコー信号に基づいて前記被検体中の任意の2つの測定部位間の距離変化を示す厚さ変化波形を算出するステップ(C)と、
基準波形を生成するステップ(D)と、
前記基準波形を用いて、前記厚さ変化波形の全体から前記厚さ変化波形の最大変化量を算出するステップ(E)と、
を包含する超音波診断装置の制御方法。
【請求項15】
前記ステップ(E)は、前記厚さ変化波形と前記基準波形との整合誤差が最小となるように前記厚さ変化波形または前記基準波形に乗じる係数を求め、前記係数および前記基準波形の振幅から前記厚さ変化波形の最大変化量を算出する請求項14に記載の超音波診断装置の制御方法。
【請求項16】
前記基準波形は、あらかじめ複数の被検体から取得した厚さ変化波形を平均したものである請求項14または15に記載の超音波診断装置の制御方法。
【請求項17】
前記被検体の変形の周期に基づいて、前記基準波形の周期を調整するステップをさらに包含し、
前記ステップ(E)は、周期が調整された基準波形と前記厚さ変化波形とに基づいて前記厚さ変化波形の最大変化量を算出する請求項14に記載の超音波診断装置の制御方法。
【請求項18】
前記被検体の変形の周期に基づいて、前記厚さ変化波形の周期を調整するステップをさらに包含し、
前記ステップ(E)は、周期が調整された厚さ変化波形と前記基準波形とに基づいて前記厚さ変化波形の最大変化量を算出する請求項16に記載の超音波診断装置の制御方法。
【請求項19】
周期が調整された厚さ変化波形の複数周期における平均を求めるステップをさらに包含し、
平均化された厚さ変化波形と前記基準波形とに基づいて前記厚さ変化波形の最大変化量を算出する請求項18に記載の超音波診断装置の制御方法。
【請求項20】
前記ステップ(C)は、前記受信エコー信号に基づいて前記被検体中の複数の測定部位の位置変化をそれぞれ示す移動波形を算出するステップと、
前記移動波形に基づいて、前記2つの測定部位間の厚さ変化波形を算出するステップとを含む請求項14または15に記載の超音波診断装置の制御方法。
【請求項21】
前記ステップ(D)は、前記移動波形に基づいて、前記基準波形を生成する請求項20に記載の超音波診断装置の制御方法。
【請求項22】
前記移動波形に基づいて前記被検体に含まれる血管径の変化波形を算出するステップをさらに包含し、
前記ステップ(D)は、前記変化波形に基づいて、前記基準波形を生成する請求項20に記載の超音波診断装置の制御方法。
【請求項23】
前記ステップ(D)は、前記被検体の血圧変化波形に基づいて前記基準波形を生成する請求項14または15に記載の超音波診断装置の制御方法。
【請求項24】
前記被検体の変形周期において生じる前記応力の応力差の情報を受け取って、前記最大変化量から弾性率を求めるステップをさらに包含する請求項14から23のいずれかに記載の超音波診断装置の制御方法。




発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波診断装置に関し、被検体を構成する組織の性状特性、特に、弾性率を計測する超音波診断装置に関する。
【0002】
超音波診断装置は、超音波を被検体に照射し、そのエコー信号に含まれる情報を解析することにより、被検体を非侵襲的に検査する。従来から広く用いられている超音波診断装置は、エコー信号の強度を対応する画素の輝度に変換することにより、被検体の構造を断層画像として得ている。これにより、被検体の内部の構造を知ることができる。また、エコー信号のドップラーシフトを検出し、被検体の運動情報、たとえば、血流情報を画像表示する超音波診断装置も用いられてきた。
【0003】
これに対し、近年、エコー信号の主に位相を解析することによって、被検体の組織の動きを精密に測定し、組織の歪みや弾性率、粘性率などの物理的(性状)特性を求めることが試みられている。
【0004】
特許文献1は、エコー信号の検波出力信号の振幅および位相を用い、被検体の瞬間的な位置を決定することによって、被検体組織の追跡を高精度に行ない、拍動している心臓組織に生じている微小振動を捕らえる方法を開示している。この方法によれば、被検体に対して同じ方向にΔTの間隔をおいて超音波パルスを複数回送信し、被検体において反射した超音波をそれぞれ受信する。図17に示すように受信したエコー信号をy(t)、y(t+ΔT)、y(t+2ΔT)とする。ある深度x1から得られるエコー信号の受信時刻t1は、パルス送信時刻をt=0とすると、t1=x1/(C/2)となる。ただし、Cは音速である。このとき、y(t1)とy(t1+ΔT)の間の位相偏移をΔθ、t1付近での超音波の中心周波数をfとすると、この期間ΔTにおけるx1の移動量Δxは、以下の式(1)で表される。
【0005】
Δx=−C・Δθ/4πf (1)
【0006】
移動量Δxをx1に加算することで、以下の式(2)に示すように、ΔT秒後のx1の位置x1’を求めることができ、この計算を繰り返すことにより、被検体の同一部位x1を追跡していくことができる。この方法は位相差トラッキング法と呼ばれている。
【0007】
x1’=x1+Δx (2)
【0008】
特許文献2は、特許文献1の方法をさらに発展させ、被検体組織、特に動脈壁の弾性率を求める方法を開示している。この方法によれば、まず、図18に示すように、探触子101から血管壁16へ向けて超音波を送信し、血管壁16上に設定した測定点AおよびBからのエコー信号を特許文献1の方法により解析することにより、測定部位AおよびBの動きを追跡する。図19は、測定点AおよびBの位置を示す追跡波形TAおよびTBを示している。また、心電波形ECGも合わせて示している。
【0009】
図19に示すように、追跡波形TAおよびTBは心電波形ECGに一致した周期性を有している。これは、心臓の心拍周期に一致して、動脈が拡張および収縮することを示している。具体的には、心電波形ECG中にR波と呼ばれる大きなピークが見られる際、心臓の収縮が開始し、心臓の収縮によって、動脈中に血液が押し出される。この際の血圧変化によって急激に血管が拡張する。したがって、心電波形ECGにR波が現れた後、追跡波形TAおよびTBも急激に立ち上がり、動脈が急激に拡張する。その後、心臓はゆっくり拡張するので、追跡波形TAおよびTBも徐々に立ち下がり、動脈血管がゆっくり収縮する。このような動きを動脈は繰り返している。
【0010】
追跡波形TAおよびTBの差は測定点AB間の厚さ変化波形Wとなる。厚さ変化波形WはAB間の歪み波形とみなすこともできる。最大厚さ変化量ΔWは、厚さ変化波形Wの最大値Wmaxと最小値Wminとの差から求めることができる。
【0011】
ΔW=Wmax−Wmin (3)
【0012】
測定点AB間の初期化時の基準厚さをWsとすると、測定点AB間の最大歪み量εは以下のようになる。
【0013】
ε=ΔW/Ws (4)
【0014】
また、血圧計などを用いて、このときの被検体の最高血圧Pmaxおよび最低血圧Pminを測定する。血圧差ΔPは以下の式で表される。
【0015】
ΔP=Pmax−Pmin (5)
【0016】
最大歪み量εは、血圧差ΔPにより発生したものと考えられる。弾性率Erは応力を歪みで除した値として定義されるので、測定点AB間の弾性率Erは以下の式で表される。
【0017】
Er=ΔP/ε=ΔP・Ws/ΔW=ΔP・Ws/(Wmax−Wmin) (6)
【0018】
非特許文献1は、血管が不均一な厚さをもつ管とした場合において、各部の弾性率を最大歪み量εおよび血圧差ΔPを用いて算出する方法を開示している。
【0019】
これらの演算を断層画像上の複数点に対して行うことにより、弾性率Erの分布画像が得られる。図18に示すように、血管壁16中に粥腫11が生じている場合、粥腫とその周りの血管壁組織とでは弾性率が異なる。したがって、弾性率の分布画像が得られれば粥腫の生成やその位置を診断することが可能となる。
【特許文献1】特開平10−5226号公報
【特許文献2】特開2000−229078号公報
【非特許文献1】長谷川他著「不均一な壁厚を有する管の局所壁弾性率の計測法」、J Med Ultrasonics Vol.28 No.1(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、従来技術による弾性率の測定方法では、厚さ変化波形Wの最大値Wmaxと最小値Wminとの差を用いて弾性率を測定するため、ノイズ耐性が低いという問題がある。たとえば、図20に示す厚さ変化波形Wが得られた場合、時刻t1およびt2のときの値をそれぞれ最大値Wmaxおよび最小値Wminとして弾性率を求める。しかし、図に示すように、時刻t2における厚さ変化波形Wの値はノイズが混入しており、正しい値ではない。
【0021】
本発明は、このような従来技術の問題を解決し、ノイズの影響を低減し、高い精度で性状特性を計測することのできる超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の超音波診断装置は、応力によって周期的に変形する被検体へ超音波を送信するために、探触子を駆動する駆動信号を生成する送信部と、前記超音波が前記被検体において反射することにより得られるエコーを前記探触子により受信し、受信エコー信号を生成する受信部と、前記受信エコー信号に基づいて前記被検体中の任意の2つの測定部位間の距離変化を示す厚さ変化波形を算出する演算部と、基準波形を生成する基準波形生成部と、前記基準波形を用いて、前記厚さ変化波形の全体から前記厚さ変化波形の最大変化量を算出する厚さ変化量推定部とを備える。
【0023】
ある好ましい実施形態において、前記厚さ変化量推定部は、前記厚さ変化波形と前記基準波形との整合誤差が最小となるように前記厚さ変化波形または前記基準波形に乗じる係数を求め、前記係数および前記基準波形の振幅から前記厚さ変化波形の最大変化量を算出する。
【0024】
ある好ましい実施形態において、前記基準波形生成部は、前記基準波形のデータを記憶した記憶部を含む。
【0025】
ある好ましい実施形態において、前記基準波形は、あらかじめ複数の被検体から取得した厚さ変化波形を平均したものである。
【0026】
ある好ましい実施形態において、超音波診断装置は、前記被検体の変形の周期に基づいて、前記基準波形の周期を調整する周期調整部をさらに備え、前記厚さ変化量推定部は、周期が調整された基準波形と前記厚さ変化波形とに基づいて前記厚さ変化波形の最大変化量を算出する。
【0027】
ある好ましい実施形態において、超音波診断装置は、前記被検体の変形の周期に基づいて、前記厚さ変化波形の周期を調整する周期調整部をさらに備え、前記厚さ変化量推定部は、周期が調整された厚さ変化波形と前記基準波形とに基づいて前記厚さ変化波形の最大変化量を算出する。
【0028】
ある好ましい実施形態において、超音波診断装置は、周期が調整された厚さ変化波形の複数周期における平均を求める平均化部をさらに備え、平均化された厚さ変化波形と前記基準波形とに基づいて前記厚さ変化波形の最大変化量を算出する。
【0029】
ある好ましい実施形態において、超音波診断装置は、前記厚さ変化波形の周期が一定でない場合、前記厚さ変化波形の周期のうち最も短い周期に合わせて、各周期のデータを抽出し、前記厚さ変化波形の周期を一定にする周期調整部をさらに備える。
【0030】
ある好ましい実施形態において、前記演算部は、前記受信エコー信号に基づいて前記被検体中の複数の測定部位の位置変化をそれぞれ示す移動波形を算出する移動波形算出部と、前記移動波形に基づいて、前記2つの測定部位間の厚さ変化波形を算出する演算部とを含む。
【0031】
ある好ましい実施形態において、前記基準波形生成部は、前記移動波形に基づいて、前記基準波形を生成する。
【0032】
ある好ましい実施形態において、超音波診断装置は、前記移動波形に基づいて前記被検体に含まれる血管径の変化波形を算出する血管径算出部をさらに備え、前記基準波形生成部は、前記変化波形に基づいて、前記基準波形を生成する。
【0033】
ある好ましい実施形態において、前記基準波形生成部は、前記被検体の血圧変化波形に基づいて前記基準波形を生成する。
【0034】
ある好ましい実施形態において、超音波診断装置は、前記被検体の変形周期において生じる前記応力の応力差の情報を受け取って、前記最大変化量から弾性率を求める弾性率算出部をさらに備える。
【0035】
本発明の超音波診断装置の制御方法は、超音波診断装置の制御部による超音波診断装置の制御方法であって、探触子を駆動して超音波を送信するステップ(A)と、応力によって周期的に変形する被検体において前記超音波が反射することにより得られるエコーを前記探触子により受信するステップ(B)と、前記受信エコー信号に基づいて前記被検体中の任意の2つの測定部位間の距離変化を示す厚さ変化波形を算出するステップ(C)と、基準波形を生成するステップ(D)と、前記基準波形を用いて、前記厚さ変化波形の全体から前記厚さ変化波形の最大変化量を算出するステップ(E)とを包含する。
【0036】
ある好ましい実施形態において、前記ステップ(E)は、前記厚さ変化波形と前記基準波形との整合誤差が最小となるように前記厚さ変化波形または前記基準波形に乗じる係数を求め、前記係数および前記基準波形の振幅から前記厚さ変化波形の最大変化量を算出する。
【0037】
ある好ましい実施形態において、前記基準波形は、あらかじめ複数の被検体から取得した厚さ変化波形を平均したものである。
【0038】
ある好ましい実施形態において、超音波診断装置の制御方法は、前記被検体の変形の周期に基づいて、前記基準波形の周期を調整するステップをさらに包含し、前記ステップ(E)は、周期が調整された基準波形と前記厚さ変化波形とに基づいて前記厚さ変化波形の最大変化量を算出する。
【0039】
ある好ましい実施形態において、超音波診断装置の制御方法は、前記被検体の変形の周期に基づいて、前記厚さ変化波形の周期を調整するステップをさらに包含し、前記ステップ(E)は、周期が調整された厚さ変化波形と前記基準波形とに基づいて前記厚さ変化波形の最大変化量を算出する。
【0040】
ある好ましい実施形態において、超音波診断装置の制御方法は、周期が調整された厚さ変化波形の複数周期における平均を求めるステップをさらに包含し、平均化された厚さ変化波形と前記基準波形とに基づいて前記厚さ変化波形の最大変化量を算出する。
【0041】
ある好ましい実施形態において、前記ステップ(C)は、前記受信エコー信号に基づいて前記被検体中の複数の測定部位の位置変化をそれぞれ示す移動波形を算出するステップと、前記移動波形に基づいて、前記2つの測定部位間の厚さ変化波形を算出するステップとを含む。
【0042】
ある好ましい実施形態において、前記ステップ(D)は、前記移動波形に基づいて、前記基準波形を生成する。
【0043】
ある好ましい実施形態において、超音波診断装置の制御方法は、前記移動波形に基づいて前記被検体に含まれる血管径の変化波形を算出するステップをさらに包含し、前記ステップ(D)は、前記変化波形に基づいて、前記基準波形を生成する。
【0044】
ある好ましい実施形態において、前記ステップ(D)は、前記被検体の血圧変化波形に基づいて前記基準波形を生成する。
【0045】
ある好ましい実施形態において、超音波診断装置の制御方法は、前記被検体の変形周期において生じる前記応力の応力差の情報を受け取って、前記最大変化量から弾性率を求めるステップをさらに包含する。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、基準波形を用いて、厚さ変化波形の全体から最大厚さ変化量を推定する。このため、厚さ変化波形に突発的なノイズなどが重畳しても、より正確な最大厚さ変化量および弾性率を求めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
(第1の実施形態)
以下、本発明による超音波診断装置の第1の実施形態を説明する。図1は、超音波診断装置201の構成を示すブロック図である。超音波診断装置201は、送信部102、受信部103、演算部151、基準波形生成部117および厚さ変化量推定部118を備えている。また、これら超音波診断装置201の各構成要素を制御するために超音波診断装置201は制御部100を備えている。
【0048】
送信部102は、制御部100の指令に基づいて、所定のタイミングで探触子101を駆動する駆動信号を生成する。探触子101は駆動信号に基づいて、超音波を送信する。送信された超音波は、応力によって周期的に変形している被検体へ到達し、被検体の内部において反射する。本実施形態では、被検体は動脈血管の血管壁を含み、血管壁の弾性率を求める。動脈血管には心周期に一致した周期で血液が流れるため、血液から受ける応力によって血管壁は周期的に変形する。
【0049】
受信部103は、被検体から反射するエコーを探触子101によって受信し、エコーを電気信号に変換し、増幅して、受信エコー信号を生成する。また、受信エコー信号をデジタル信号に変換する。
【0050】
送信部102および受信部103は、好ましくは、被検体を走査するように超音波を送信し、所定の位置および方向からの超音波のみを検出するよう、駆動信号や受信エコー信号の遅延時間を制御する遅延時間制御部を含んでいることが好ましい。また、探触子101は複数の超音波振動子が配列されたアレイ振動子を含むことが好ましい。
【0051】
演算部151は、受信エコー信号を解析することにより、被検体の複数の測定部位の動きを追跡する。そして、被検体中の任意の2つの測定部位間の距離変化である厚さ変化波形を生成する。このために、演算部151は移動波形算出部115と厚さ変化波形算出部116とを含む。移動波形算出部115は、受信エコー信号を受け取って、被検体中に設定した複数の測定部位xiの位置変化である移動波形を式(1)および(2)にしたがって算出する。厚さ変化波形算出部116は、複数の測定部位xiから選ばれる2つの間の距離変化を示す厚さ変化波形を、2つの測定部位の移動波形の差を求めることによって算出する。
【0052】
測定部位は、送信する超音波の周波数などによって定まる解像度に応じて、1つの超音波ビーム上に複数設定することができる。したがって、超音波ビームを走査させることによって、2次元に配列された測定部位の各移動波形を取得することができる。
【0053】
基準波形発生部117は、基準波形を生成する。この基準波形は、以下において詳細に説明するように、厚さ変化波形算出部116において算出する厚さ変化波形の基準となるものである。本実施形態では、基準波形はあらかじめ計測などによって求められており、基準波形のデータが基準波形発生部117に設けられた半導体メモリなどの記憶部に記憶されている。
【0054】
厚さ変化量推定部118は、以下において詳細に説明するように、厚さ変化波形算出部116から得られる厚さ変化波形と基準波形発生部117から得られる基準波形とに基づいて、厚さ変化波形の最大変化量を算出する。より具体的には、基準波形を用いて、厚さ変化波形の全体から最大厚さ変化量ΔWを算出する。この演算は、厚さ変化波形の周期ごとに行われる。この点で、厚さ変化波形の最大値と最小値とから最大変化量を求める従来技術と本発明とは大きく異なっている。
【0055】
超音波診断装置201は、好ましくは、求めた最大変化量から弾性率を算出する弾性率算出部120をさらに備える。弾性率算出部120は、血圧計119など被検体に加えられた応力に関する情報を受け取る。たとえば、血圧計から、最高血圧と最低血圧との血圧差ΔPを受け取る。そして、式(6)にしたがって、血圧差ΔPと最大厚さ変化量ΔWとから弾性率Erを求める。ここで基準厚さWsは、厚さ変化波形を求めた2つの測定部位間の距離(たとえば400μm)であり、厚さ変化波形算出部116で選択した2つの測定部位の位置に応じて、あらかじめ設定される。このようにして、被検体の弾性率を求めることができる。
【0056】
求めた弾性率は被検体の断層画像とともに表示することが好ましい。これにより、測定部位の位置を分りやすく示すことができるからである。このために、超音波診断装置201は、断層画像生成部104と、画像合成部105と、画像表示部106とをさらに備えていることが好ましい。断層画像生成部104は、フィルタおよび振幅検出器を含み、受信部103から受け取った受信エコー信号の振幅を主として解析し、被検体の内部の構造を画像化した断層画像の画像信号を生成する。
【0057】
画像構成部105は、画像信号および弾性率算出部120から得られた弾性率のデータを受け取って、求めた弾性率が断層画像上の適切な位置にマッピングされるように、画像信号と弾性率のデータとを合成する。画像表示部106は、合成された画像を表示する。
【0058】
次に、本発明の要部である基準波形発生部117および厚さ変化量推定部118の動作をさらに詳しく説明する。図2は、基準波形発生部117の記憶部に記憶されている基準波形M(t)を示している。この波形は、あらかじめ、複数の被検者に対し厚さ変化波形の測定を行い、その一心周期分について平均を求めることによって得られている。基準波形M(t)は、超音波診断装置201によって測定する対象に応じてあらかじめ用意される。本実施形態では、動脈血管の血管壁の弾性率を求めるため、基準波形M(t)にも複数の被検者から得られた動脈血管の血管壁の基準波形を用いる。
【0059】
基準波形M(t)の振幅であるΔWは、基準値、たとえば1μmとなるよう正規化されている。複数の被検者から得られたデータを平均化するため、実測したデータであってもノイズの影響等は低減されている。
【0060】
図3は、厚さ変化波形算出部116から得られた厚さ変化波形y(t)を示している。この厚さ変化波形は被検体を実際に計測することによって得られた波形の一心周期分である。tはサンプリング時刻を表しており、サンプリング点数をN個とすると、tはt=0、1、・・・N−1で表される整数である。
【0061】
厚さ変化量推定部118は、基準波形M(t)および厚さ変化波形y(t)を受け取り、厚さ変化波形y(t)の振幅を何倍すると、基準波形M(t)に最も類似するかを最小2乗法により算出する。y(t)に乗じる係数をkとしたとき、M(t)とk・y(t)との差の2乗をRとすると、Rは式(7)で表される。
【0062】
【数1】


【0063】
係数kを変数として式(7)をkで偏微分し、偏微分した式が0となるとき、2乗差Rは最小となる。
【0064】
【数2】


【0065】
式(8)をkについて解くと、式(9)が得られる。
【0066】
【数3】


【0067】
式(9)により得られる係数kの値は、測定した厚さ変化波形y(t)をk倍すると、振幅1μmの基準波形M(t)との差の2乗が最小となり、2つの波形がもっとも一致することを意味している。したがって、測定した厚さ変化波形y(t)の振幅Aは、以下の式(10)により求められる。
【0068】
A=1/k (μm) (10)
【0069】
なお、上述の演算と同様に、基準波形M(t)の振幅を何倍すれば実際の厚さ変化波形y(t)に近づくかを算出してもよい。この場合、基準波形M(t)に乗ずる係数をaとし、残差をR'とすれば、以下の式(11)で示される。
【0070】
【数4】


【0071】
R’をaで偏微分した値を0と置き(式(12))、係数aについて解くと式(13)が得られる。
【0072】
【数5】


【0073】
【数6】


【0074】
この場合には、係数aは、振幅1μmの基準波形をa倍すると、実測の厚さ変化波形y(t)との差の2乗が最小となり、2つの波形がもっとも一致することを意味している。したがって厚さ変化波形y(t)の振幅A'は式(14)により求められる。
【0075】
A’=a (μm) (14)
【0076】
このように、厚さ変化量推定部118は、基準波形M(t)および厚さ変化波形y(t)を受け取り、式(9)または式(13)を用いて、基準波形M(t)と厚さ変化波形y(t)の整合誤差が最小となる係数kまたは係数aを算出する。算出した係数kまたは係数aから、厚さ変化波形の振幅である最大厚さ変化量をさらに算出する。
【0077】
図4は、弾性率が異なる血管壁から得られる厚さ変化波形y0(t)およびy1(t)の一心周期分を模式的に示している。図4に示すように、弾性率が異なることによって、振幅が相違しているが、2つの厚さ変化波形の時間軸方向の変化は一致している。これは被検体が受ける応力変化である血圧の変化、あるいは、心臓の振動の様子は、理想的には、血管の硬さによらずほぼ一定であることを意味している。
【0078】
図4に示すように、従来の方法によれば、厚さ変化波形の最大厚さ変化量を求める場合、厚さ変化波形の最大値Wmaxおよび最小値Wminを求める必要があった。これに対し、本発明では、厚さ変化波形と基準波形との全体の整合性を解析することによって最大厚さ変化量を推定する。上述したように、弾性率の違いによって厚さ変化波形振幅のみが異なると仮定した場合において、一心周期分の厚さ変化波形の全体から最大厚さ変化量を推定することを意味している。
【0079】
図4の厚さ変化波形y0(t)において示しているように、厚さ変化波形の最大値Wm
axおよび最小値Wminは、厚さ変化波形y0(t)のそれぞれ一点で定まるものであ
る。しかし、厚さ変化波形の最大値Wmaxおよび最小値Wminの間の傾斜部分a1、a2およびa3の傾きは、最大値Wmaxおよび最小値Wminに応じて変化する。つまり、傾斜部分a1、a2およびa3の傾きは、最大値Wmaxおよび最小値Wminに関する情報を含んでいる。このため、厚さ変化波形にノイズが重畳することによって、最大値Wmaxや最小値Wminが正しく得られない場合であっても、厚さ変化波形の形状が著しく変形するほどにノイズが重畳しない限り、傾斜部分a1、a2およびa3を含む厚さ変化波形の全体から最大厚さ変化量を推定することが可能となる。
【0080】
したがって、本発明によれば、突発的に混入するようなスパイク状ノイズなどのノイズの影響を受けにくく、高い精度で最大厚さ変化量あるいは弾性率を求めることが可能となる。
【0081】
なお、上述の説明から明らかなように、傾斜部分a1、a2およびa3にそれぞれ最大値Wmaxや最小値Wminの情報が含まれているため、厚さ変化波形の一心周期の一部を用いても、従来よりもノイズの影響が低減された最大厚さ変化量を推定することができる。ただし、選択する区間が長いほど推定する最大厚さ変化量の精度が高まるため、厚さ変化波形の一心周期全体を用いて基準波形と比較し、最大厚さ変化量を求めることが最も好ましい。このことは、式(13)を用いて以下のように説明できる。厚さ変化波形y(t)を厚さ変化s(t)とノイズn(t)の和で表すと式(13)は以下のように表すことができる。
【0082】
【数7】


【0083】
ノイズn(t)がスパイクノイズやランダムノイズである場合、加算区間が長いほど式(13’)の分子の第2項は第1項に比べて小さくなる。したがって、厚さ変化s(t)が基準波形と相似(s(t)=a’・M(t))であり、加算区間が十分に長く、式(13’)の第2項が無視できる場合には、式(13’)は以下の式(13’’)と表せる。
【0084】
【数8】


【0085】
したがって、真の係数a’を推定できることになる。逆にこのことから、厚さ変化波形の全体を用いて基準波形と比較することによって、ノイズの影響が低減された厚さ変化量を推定できることが分かる。
【0086】
本発明では、基準波形と測定値とを用いて最大厚さ変化量および弾性率を求めるため、適切な基準波形を用意することが重要である。測定する被検体の部位によって厚さ変化波形の時間方向の変化の様子が異なる場合には、部位に応じた基準波形を用意することが好ましい。具体的には、動脈血管の血管壁の弾性率を測定する場合には、血管壁の内膜、中膜および外膜に対してそれぞれ基準波形のデータを用意してもよい。複数の基準波形のデータを基準波形発生部117において記憶しておき、測定部位に合わせて基準波形のデータを切り換えることによって、より精密な厚さ変化量の推定が可能となる。
【0087】
さらに、健常者用基準波形、糖尿病患者用基準波形、動脈硬化患者用基準波形等、被検者の状態ごとに複数の基準波形のデータを基準波形発生部117の記憶部に記憶しておき、操作者の指示により基準波形を選択することも可能である。これにより、より精密な厚さ変化量の推定が可能となる。
【0088】
(第2の実施形態)
以下、本発明による超音波診断装置の第2の実施形態を説明する。図5は、超音波診断装置202の構成を示すブロック図である。超音波診断装置202は、周期調整部140をさらに備えている点で第1の実施形態の超音波診断装置201とは異なっている。超音波診断装置202の送信部102、受信103、演算部151や厚さ変化量推定部118は、第1の実施形態の超音波診断装置201の対応する構成要素と同様に機能する。
【0089】
周期調整部140は、基準波形発生部117で発生させた基準波形の周期が厚さ変化波形算出部116で算出する厚さ変化波形の周期と一致するよう、基準波形の周期を調節する。このために、超音波診断装置202は、被検体の応力変化の周期に関する情報を外部の周期検出部141から受け取る。被検体が、動脈血管の血管壁である場合には、被検体の血圧変化、心電変化、心音変化などを用いることができる。たとえば、心臓の心拍周期を検出する心電計を周期検出部141として好適に用いることができる。
【0090】
図6(a)、(b)および(c)は、周期検出部141から得られる心電波形、厚さ変化波形算出部116から得られる厚さ変化波形y(t)および基準波形生成部117から得られる基準波形M(t)を示している。図6(a)に示すように、心電波形にはR波が観測される。図6(a)および(b)から明らかなように、心電波形の周期と厚さ変化波形y(t)の周期Tyとは一致している。これは、動脈血管の血管壁の厚さ変化が心臓の鼓動によって生じる血圧変化によって引き起こされているからである。
【0091】
一方、図6(b)および(c)から明らかなように、基準波形M(t)の周期Tmは、厚さ変化波形y(t)の周期Tyとは一致していない。
【0092】
周期調整部140は、基準波形M(t)および厚さ変化波形y(t)の周期の不一致を解消するため、周期検出部141から受け取る被検体の応力変化の周期に関する情報に基づき、基準波形M(t)の周期を調節する。本実施形態では、周期調整部140は心電波形のR波の周期を検出し、基準波形発生部117が発生する基準波形M(t)を時間方向に伸縮させる。時間方向に伸縮した基準波形はM’(t)は以下の式で示される。
【0093】
M’(t)=M(t・Ty/Tm) (15)
【0094】
ここでt・Ty/Tmが整数にならない場合には、tとM(t)との関係を用いて補間値を生成する。M(t)の値を十分細かなサンプリング単位で記憶しておき、最も近傍の値を代用値として用いることも可能である。
【0095】
厚さ変化量推定部118において、M’(t)とy(t)との時間的位相がずれていることをM’(t)とy(t)との相関演算などにより検出した場合には、基準波形発生部117から基準波形を読み出すタイミングを適切にシフトさせることにより調整することができる。
【0096】
このようにして基準波形M’(t)の周期と厚さ変化波形y(t)の周期と一致させた後、厚さ変化量推定部118において厚さ変化波形y(t)の最大厚さ変化量を第1の実施形態で説明したように求めることができる。
【0097】
このように、本実施形態によれば、周期調整部140によって、基準波形発生部117で生成する基準波形を被検体の応力周期に合わせることより、より精密な厚さ変化量および弾性率値の算出が可能となる。
【0098】
なお、本実施形態では、基準波形の周期を調節したが、厚さ変化波形算出部116から得られる厚さ変化波形の周期が基準波形の周期と一致するよう厚さ変化波形の周期を調節してもよい。図7に示す超音波診断装置202’では、周期調整部140は、厚さ変化波形算出部116から得られる厚さ変化波形を受け取る。そして、周期検出部141から得られる被検体に加わる応力に関する情報を受け取って、厚さ変化波形の周期を調整する。このような構成を用いても上述した効果を得ることができる。
【0099】
また、不整脈などの理由により被検体の心周期が心拍間で異なり、厚さ変化波形の周期が一定ではない場合、周期調整部140は、厚さ変化波形の周期のうち最も短い周期に合わせて、各周期のデータを抽出することによって、厚さ変化波形の周期を一定にしてもよい。具体的には、周期調整部140は、最も短い心周期をTminとした場合、厚さ変化波形の各心周期から、心電波形のR波をトリガとして、期間Tminの間のデータを抽出することによって厚さ変化波形の周期を一定にしてもよい。
【0100】
この場合、R波は収縮期の初期に観測されるため、このようなデータ抽出によって、拡張期におけるデータの一部が欠落してしまう心周期も生じる。しかし、同一の被検体において心拍間で心周期が異なる場合、心周期中の収縮期の長さはほとんど変化せず、拡張期の長さがおもに変動しているという特性がある。また、弾性特性の測定に必要な厚さ変化量の最大値および最小値は、収縮期において観測される。したがって、拡張期におけるデータが欠落しても弾性率の測定には大きな影響は生じないと考えられる。厚さ変化波形の周期を一定にした後、必要に応じて、上述したように基準波形と厚さ変化波形との周期を一致させてもよい。
【0101】
(第3の実施形態)
以下、本発明による超音波診断装置の第3の実施形態を説明する。図8は、超音波診断装置203の構成を示すブロック図である。超音波診断装置203は、平均化部170をさらに備えている点で第2の実施形態の超音波診断装置202’と異なっている。超音波診断装置203の送信部102、受信103、演算部151、厚さ変化量推定部118や周期調整部140は、第2の実施形態の超音波診断装置202’の対応する構成要素と同様に機能する。
【0102】
平均化部170は、周期が調整された厚さ変化波形の複数周期における平均の波形を求める。図9(a)は、周期検出部141から得られる被検体の変形の周期に関する情報の波形を示している。第2の実施形態と同様、被検体の変形の周期に関する情報はたとえば、心電波形である。図9(b)は、周期調整部140によって周期が調整された厚さ変化波形y’(t)のy’1(t)およびy’2(t)で示される2周期分を示している。
【0103】
平均化部170は、厚さ変化波形y'(t)の各周期毎の波形の複数周期に渡る平均を求める。平均後の厚さ変化波形をY(t)とすると、以下の式(16)によって求められる。
【0104】
【数9】


【0105】
ここでy’i(t)は、i番目の心周期の厚さ変化波形を示し、Lは平均を行う心周期の数を示す。平均化部170において求められられた平均化された厚さ変化波形Y(t)は、厚さ変化量推定部118へ入力され、第1の実施形態で説明したように最大厚さ変化量が算出される。周期が調整された厚さ変化波形を平均化部170へ入力するので、厚さ変化波形の各周期は一定であり、平均化部170では、単純な加算によって式(16)の演算を行うことが可能である。
【0106】
平均を行う心周期の数は任意に選択できる。計測した期間全体に渡る平均を求めてもよいし、平均を計算する心周期をリアルタイムでシフトさせながら、複数周期分の平均を求めてもよい。また、式(16)では、単純な加算平均を求めているが、重み付け加算平均を求めてもよい。
【0107】
本実施形態によれば、平均化部170における平均化により、厚さ変化波形に含まれるランダムノイズが低減される。このため、厚さ変化量推定部118において、より正確な最大厚さ量を推定することが可能となり、弾性率の計算精度もさらに向上する。
【0108】
(第4の実施形態)
以下、本発明による超音波診断装置の第4の実施形態を説明する。図10は、超音波診断装置204の構成を示すブロック図である。これまで説明してきた超音波診断装置では、測定によってあらかじめ得られた基準波形を用いて、厚さ変化波形の全体から最大厚さ変化量を推定していた。これに対して、超音波診断装置204では、被検体を計測することによって得られる測定部位の移動波形から基準波形を生成する。このために、超音波診断装置204は、移動波形算出部115から得られる移動波形に基づいて基準波形を生成する基準波形生成部117’を備えている。
【0109】
図11は、探触子101によって計測される被検体12の断面を模式的に示している。被検体12は動脈血管を含んでおり、動脈血管の軸に対して垂直な断面を測定するよう、超音波ビーム20a、20b、20cが探触子101から送信される。走査断面において、動脈血管は、血管前壁31、血管腔32および血管後壁33を含んでいる。
【0110】
血管腔32を流れる血液の圧力変化によって血管前壁31および血管後壁33は血液から応力を受け、拡張および収縮を周期的に繰り返す。超音波ビーム20c上の微小幅をもつ血管前壁31の血管領域21aにおいて、2点p1およびp2間の距離変化である厚さ変化は、内膜側端22aの移動により発生すると考えられる。したがって、内膜側端22aの組織移動波形とp1およびp2間の層の厚さ変化波形とは相似していると考えられる。
【0111】
図12(a)は、移動波形算出部115から得られるたとえば内膜側端22aの移動波形n(t)を示しており、図12(b)は、移動波形n(t)に基づいて、基準波形生成部117’において生成される基準波形M(t)を示している。ここで、tはサンプリング時刻を表しており、サンプリング点数をN個とすると、tはt=0、1、・・・N−1を満たす整数である。移動波形n(t)は、血管径が拡大する方向に測定点が移動する場合を正方向としている。これらの波形は一心周期分のみを示している。移動波形n(t)の一心周期における最大値をNmax、最小値をNminとするとき、基準波形発生部117は、基準波形M(t)を移動波形n(t)より次式で算出する。
【0112】
【数10】


【0113】
これにより、基準パターン波形M(t)は、内膜側端22aの波形n(t)に比例し、振幅が1の波形となる。
【0114】
図13は、厚さ変化波形算出部116から出力される実際に測定した一心周期分の厚さ変化波形y(t)を示している。この厚さ変化波形y(t)は、たとえば、図11の測定位置p1において得られる移動波形と測定位置p2において得られる移動波形との差を求めたものである。
【0115】
図11に示すように、基準波形M(t)および厚さ変化波形y(t)はいずれも超音波ビーム20cから得られる受信エコー信号に基づいている。しかし、厚さ変化波形y(t)は微小な2点間の距離変化であるのに対して、基準波形M(t)は移動波形n(t)に基づいている。図12(a)に示すよう移動波形n(t)の振幅D1はたとえば数百μm程度であるのに対して、厚さ変化波形y(t)の振幅D2は数十μm程度である。このため、ノイズ影響が基準波形M(t)では厚さ変化波形y(t)に比べて格段に小さくなっている。
【0116】
したがって、このようにして生成した基準波形を用い、厚さ変化量推定部118において第1の実施形態で説明したように、厚さ変化波形の全体から最大変化量を求めることにより、突発的に混入するようなスパイク状ノイズなどのノイズの影響を受けにくく、高い精度で最大厚さ変化量あるいは弾性率を求めることが可能となる。特に、本実施形態によれば、基準波形M(t)および厚さ変化波形y(t)はいずれも同じ受信エコー信号に基づいている。このため、周期調整部を設けなくとも2つの波形の周期は一致しており、精度の高い最大厚さ変化量を求めることができる。また、心電計や血圧計など被検体の応力周期を示す外部の信号を必要としないため、計測を簡単に行うことができる。
【0117】
(第5の実施形態)
以下、本発明による超音波診断装置の第5の実施形態を説明する。図14は、超音波診断装置205の構成を示すブロック図である。超音波診断装置205は、血管径算出部142をさらに備えている点で第4の実施形態の超音波診断装置204と異なっている。
【0118】
血管径算出部142は、移動波形算出部から移動波形を受け取って、被検体中の動脈血管の内径または外径の血管径波形を算出する。基準波形生成部117は、血管径算出部142から血管径波形を受け取り、血管径波形に基づいて、基準波形を生成する。より具体的には、まず、血管腔32を定めるため、図11に示すように、たとえば、血管壁の内膜側端22aおよび内膜側端22bの位置を特定する。この位置の特定は、操作者が画像表示部106に表示された動脈血管の断面画像を観察し、断面画像上においてこれらの位置を指定してもよいし、受信エコー信号を解析することにより制御部100が自動的に行ってもよい。内膜側端22aの移動波形をia(t)、内膜側端22bの移動波形をib(t)とすると、血管径波形L(t)は、以下の式(18)で表される。
【0119】
L(t)=ia(t)+ib(t) (18)
【0120】
ここで、ia(t)およびib(t)の符号は、血管径が増す方向を正とする。上述したように血管の外径変化波形を求めてもよい。
【0121】
基準波形発生部117は、血管径波形L(t)を受け取り、式(17)において移動波形n(t)の換わりに血管径波形L(t)を用いて基準波形M(t)を生成する。これにより、第4の実施形態と同様にして最大厚さ変化量あるいは弾性率を求めることが可能となる。
【0122】
本実施形態において、基準波形の生成に用いる血管径波形は、血管径の変化を示しており、血管を流れる血液の圧力と強い相関がある。また、血管壁の変形あるいは厚さ変化は、血圧と相関がある。このため、血管壁内の2点の距離変化である厚さ変化は血管径の変化と相関があり、血管径波形を好適に基準波形の生成に利用できる。
【0123】
特に、血管径を定める内膜側端22aと内膜側端22bとは血圧によって逆方向に移動するため、血管径波形L(t)の振幅は、移動波形ia(t)や移動波形ib(t)の約2倍となる。このため、血管径波形L(t)ではノイズの影響が抑制されており、生成する基準波形におけるノイズの影響も小さい。したがって、より精密な厚さ変化量および弾性率値の算出が可能となる。
【0124】
(第6の実施形態)
以下、本発明による超音波診断装置の第6の実施形態を説明する。図15は、超音波診断装置206の構成を示すブロック図である。第4の実施形態では、基準波形生成部117’は、移動波形に基づいて、基準波形を生成していた。本実施形態では、基準波形生成部117’’は、外部から血圧波形を受け取り、血圧波形に基づいて基準波形を生成する。
【0125】
基準波形生成部117’’に入力する血圧波形は、被検体の動脈血管の血圧変化を示すものであり、リアルタイム血圧計150などによって取得される。
【0126】
図16は、血圧波形の一例を示している。血圧の変化は、図12(a)に示す移動波形n(t)とほぼ一致する。基準波形生成部117’’は血圧波形を受け取り、式(17)にしたがって基準波形M(t)を生成する。血管壁内の2点の距離変化である厚さ変化は、血圧変化により生じ、厚さ変化と血圧変化とは相関があるので、血圧波形を好適に基準波形の生成に利用できる。このため、生成した基準波形を用いてより精密な厚さ変化量および弾性率値を算出することができる。
【0127】
なお、上記各実施形態では、基準波形として、被検体中の任意の2つの測定部位間の距離(厚さ)変化波形を用いているが、被検体中の任意の2つの測定部位間の速度差波形を基準波形として用いても同様の効果が得られる。この場合、あらかじめ複数の被検体から2つの測定部位間の速度差波形を求めてもよいし、血管径波形を時間微分することによって速度差波形を求めてもよい。また、血圧波形を時間微分することによって速度差波形を求めてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の超音波診断装置は、被検体を構成する組織の厚さ変化量、歪み量、弾性特性などの性状特性の測定に適している。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明による超音波診断装置の第1の実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1の超音波診断装置の基準波形発生部において生成する基準波形を示している。
【図3】図1の超音波診断装置の厚さ変化波形算出部から出力される厚さ変化波形を示している。
【図4】厚さ変化波形に含まれる情報を説明する図である。
【図5】本発明による超音波診断装置の第2の実施形態を示すブロック図である。
【図6】(a)、(b)および(c)は、第2の実施形態において、周期検出部から得られる心電波形、厚さ変化波形算出部から得られる厚さ変化波形および基準波形生成部から得られる基準波形をそれぞれ示している。
【図7】本発明による超音波診断装置の第2の実施形態の変形例を示すブロック図である。
【図8】本発明による超音波診断装置の第3の実施形態を示すブロック図である。
【図9】(a)および(b)は、第3の実施形態において、周期検出部から得られる心電波形および周期調整部から得られる厚さ変化波形をそれぞれ示している。
【図10】本発明による超音波診断装置の第4の実施形態を示すブロック図である。
【図11】探触子によって計測される被検体の断面を模式的に示している。
【図12】(a)および(b)は、第4の実施形態において、基準波形発生部に入力される位置波形および基準波形発生部において生成する基準波形をそれぞれ示している。
【図13】第4の実施形態において、厚さ変化波形算出部から出力される厚さ変化波形を示している。
【図14】本発明による超音波診断装置の第5の実施形態を示すブロック図である。
【図15】本発明による超音波診断装置の第6の実施形態を示すブロック図である。
【図16】第6の実施形態において用いる血圧波形の一例を示している。
【図17】超音波エコー信号の位相差から組織の追跡を行う方法を説明する図である。
【図18】探触子によって計測される被検体の断面を模式的に示している。
【図19】被検体組織の追跡波形から歪み量を求める方法を説明する図である。
【図20】厚さ変化波形にノイズが重畳している場合に最大厚さ変化量に誤差が生じることを説明する図である。
【符号の説明】
【0130】
12 被検体
31 血管前壁
32 血管腔
33 血管後壁
100 制御部
101 探触子
102 送信部
103 受信部
104 断層画像生成部
105 画像合成部
106 画像表示部
115 移動波形算出部
116 厚さ変化波形算出部
117、117’、117’’ 基準波形生成部
118 厚さ変化量推定部
119 血圧計
120 弾性率算出部
140 周期調整部
141 周期検出部
142 血管径算出部
150 演算部
170 平均化部
201、202、203、204、205、206 超音波診断装置






 

 


     NEWS
会社検索順位 特許の出願数の順位が発表

URL変更
平成6年
平成7年
平成8年
平成9年
平成10年
平成11年
平成12年
平成13年


 
   お問い合わせ info@patentjp.com patentjp.com   Copyright 2007-2013