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発明の名称 電子血圧計
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−167171(P2007−167171A)
公開日 平成19年7月5日(2007.7.5)
出願番号 特願2005−366029(P2005−366029)
出願日 平成17年12月20日(2005.12.20)
代理人 【識別番号】100064746
【弁理士】
【氏名又は名称】深見 久郎
発明者 佐野 佳彦 / 高橋 明久 / 山下 新吾 / 澤野井 幸哉
要約 課題
コンプライアンス変化(カフ内の圧力変化に対するカフの容積変化)が脈波成分に与える影響を抑制する。

解決手段
血圧測定用空気袋50に一定量の空気を入れ、閉鎖させ、CPU30は予めP−V特性を測定しておく。測定部位に血圧測定用空気袋50を巻き付ける。血圧測定用空気袋50の外側から応圧を加えることで、測定部位に密着させた血圧測定用空気袋50の内圧を上げるとともに、血管の圧迫を行っていく。この過程にいて、血圧測定用空気袋50の外側から応圧を変化させ、血管の容積変化により生じる血圧測定用空気袋50のカフ圧と、その時発生する圧脈波データを採取し、そのデータを元に予め測定しておいP−V特性で得られたカフコンプライアンス特性を圧脈波の補正値として加え、血圧算出を行なう。
特許請求の範囲
【請求項1】
一定量の空気が密閉されて測定部位を圧迫する測定用空気袋と、
前記測定用空気袋の内圧の圧力信号を検出する圧力検出手段と、
前記圧力検出手段により検出した前記圧力信号に含まれる脈波振幅を検出する脈波検出手段と、
前記測定用空気袋に対して外部から押圧を加えて、前記測定用空気袋により前記測定部位を圧迫する圧迫手段と、
血圧算出手段と、を備え、
前記一定量の空気が密閉された前記測定用空気袋の前記内圧と容積の変化から求められたカフコンプライアンス特性の情報を予め記憶しておき、
前記血圧算出手段は、
前記圧迫手段により前記測定用空気袋に対して外部から加える圧力を変化させて前記測定用空気袋の内圧を変化させる過程において前記脈波検出手段により前記脈波振幅を検出する脈波振幅検出手段と、
前記脈波振幅検出手段により検出された前記脈波振幅を、予め記憶された前記カフコンプライアンス特性の情報を用いて補正する補正手段と、を含み、
前記補正手段により補正された前記脈波振幅に基づき血圧を算出する、電子血圧計。
【請求項2】
前記補正手段は、
予め記憶された前記カフコンプライアンス特性の情報を、前記内圧の変化に対して一定のカフコンプライアンスを示すように補正する第1補正手段を含み、
前記第1補正手段による、予め記憶された前記カフコンプライアンス特性の情報の補正量に従い、前記脈波振幅検出手段により検出された前記脈波振幅を補正する、請求項1に記載の電子血圧計。
【請求項3】
前記補正手段は、
前記脈波振幅検出手段により前記脈波振幅のピークが検出されたときの前記圧力検出手段が検出した前記圧力信号が示す前記内圧よりも低い内圧において検出された前記脈波振幅は大きくするように補正し、高い内圧において検出された前記脈波振幅は小さくするように補正する、請求項1または2に記載の電子血圧計。
【請求項4】
前記カフコンプライアンス特性は、前記内圧の変化に対する前記容積の変化が、緩やかな傾きを持った直線に近似される特性を示す、請求項1から3のいずれか1項に記載の電子血圧計。
【請求項5】
前記圧迫手段は、
前記測定部位を圧迫する前記血圧測定用空気袋の外周に設けられて、膨張または縮小することにより内径を縮小または伸長させて、前記測定用空気袋に対して、外部から加える圧力を変化させる圧迫用空気袋を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の電子血圧計。
【請求項6】
前記圧迫手段は、
前記測定部位を圧迫する前記血圧測定用空気袋の外周に設けられた帯状の部材を含み、
前記帯状の部材に対する引っ張り力を調整して、当該帯状の部材がなす内径を縮小または伸長させて、前記測定用空気袋に対して、外部から加える圧力を変化させる、請求項1から4のいずれか1項に記載の電子血圧計。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
この発明は生体の上腕などの測定部位を空気袋により圧迫して血圧を測定する電子血圧計に関し、特に、空気袋を介して圧迫された血管の容積変化に基づき生じる空気袋の内圧変化から血圧値を算出する電子血圧計に関する。
【背景技術】
【0002】
生体の一部の測定部位に巻付いたカフ内の空気袋の内圧(以下、カフ圧という)を調整することにより、測定部位において圧迫された血管の容積変化に基づいて生じる当該空気袋の内圧変化(以下、圧脈波という)から血圧値を算出するオシロメトリック法を用いた電子血圧計が提供されている。このような電子血圧計においては、血管の容積変化がカフ圧変化として正確に反映されることが重要である。なお、空気袋は最大の容積を有しており、空気を注入・排気することでその容積が最大容積を超えない範囲で可変となる伸縮自在の樹脂材料からなる。
【0003】
血圧測定時にカフ圧(mmHg)が変化すると、拍動に対する血管の容積変化量にも変化が起こる。オシロメトリック法を用いた電子血圧計では、血管の容積変化はカフ圧に重畳する圧脈波として検出されて、検出された圧脈波によって形成される脈波包絡線(圧脈波の集合からなる曲線)に基づき、最高血圧値および最低血圧値が算出される。脈波包絡線に基づく血圧および脈拍数の算出手順は公知のものに従うので詳細は略す。
【0004】
したがって、血圧測定時にはカフ圧の変化が正確に動脈の容積変化を反映することが望まれている。動脈の容積変化がカフ圧として伝達される過程でその伝達感度に変化が生じると、血圧測定精度の低下の原因となる。つまり、カフの状態(カフが測定部位に巻き付けられている巻きの強さの程度(すなわち、空気袋の容積)、または巻き付けられている測定部位の腕周の大きさ、測定部位の柔らかさなど)が変化すると、同じ大きさの血管容積変化に対して得られる圧力変化の大きさが変わってくるのである。
【0005】
この伝達時の感度を評価できる一つの指標として、カフコンプライアンス(ml/mmHg)がある。カフコンプライアンス(Cp=dV/dP)とは、カフ圧変化(dP)に対するカフの容積変化(dV)を表す指標であり、カフコンプライアンスCpが大きいほど伝達感度は低くなる。つまり、同じ大きさの容積変化に対する圧力変化の大きさは、カフコンプライアンスが大きいほど小さくなる。
【0006】
図14(A)と(B)には、カフ圧の変化に対応したカフコンプライアンスCpと脈波信号の振幅(mmHg)の関係が模式的に示される。図14(A)においては、カフ圧の変化に対するカフコンプライアンスCpの変化が示される。直線の線分Aは、カフ圧の変化に伴うカフの容積変化率が一定、すなわちカフコンプライアンスCpの値がカフ圧変化に対して一定(平行)の場合を示している。カフの空気袋に空気の出し入れがある場合、同じカフ圧の変化を呈していても、線分Aとは異なり、曲線Bのようにカフコンプライアンスがカフ圧に対して一定とはならず変化する。
【0007】
図14(B)には、図14(A)の線分Aと曲線BのようなカフコンプライアンスCpが検出される空気袋を有するカフを測定部位(上腕)に巻き付けた場合に、並行して検出される脈波信号の振幅の変化が符号A1とB1で示される。カフコンプライアンスCpの値がカフ圧に対して一定の場合(線分A)に検出される脈波振幅は符号A1で示されて、カフコンプライアンスCpがカフ圧に対して変動する場合(曲線B)、すなわちカフの空気袋の容積変化率が一定でない場合に検出される脈波は符号B1で示される。
【0008】
脈波振幅は、カフによって圧迫された血管の容積変動を示すが、この血管の容積変動をカフを介して損失なく伝達して、圧力センサなどにより検出された場合には、正確な血圧測定が可能となるが、曲線BのようにカフコンプライアンスCpがカフ圧力に対して変動する場合には、その変動に起因して、検出する脈波成分を示す脈波振幅に歪みが生じる。したがって、この脈波信号を複数個連ねてなる脈波包絡線にも歪みが発生する。
【0009】
脈波振幅の歪みは、カフ圧の高圧側で振幅が大きくなるように歪み、低圧側では振幅が小さくなるように歪む。つまり、カフ圧が高圧である場合には空気袋には多くの空気を送り込むため十分に膨張した状態であるから、カフによって圧迫された血管の容積変動を示す圧脈波の振幅は実際の血管の容積変動値を示す圧脈波振幅よりも大きくなるように歪み、逆に、カフ圧が低圧である場合には空気袋内の空気は少ない状態であるから、そのようなカフによって圧迫された血管の容積変動を示す圧脈波の振幅は小さくなるように歪む。したがって、曲線Bのような空気袋に空気が出し入れされる状態では、上述の歪み成分により血圧測定精度は低下せざるを得ない。
【0010】
図15(A)と(B)には、カフを測定部位(上腕)に巻き付けた場合にカフ圧の変化に応じたカフコンプライアンスCpと脈波振幅の関係が測定部位である腕のサイズ(腕周の長さ)に対応して示される。図15(A)では、腕周が長い場合と短い場合とでカフコンプライアンスCpと脈波振幅の関係が曲線Aと曲線Bで示される。
【0011】
図15(B)には、図15(A)と同じようなカフ圧変化をさせた場合に検出される脈波の振幅の変化が符号A1の脈波信号と、符号B1の脈波信号により示される。符号A1の脈波信号は、曲線AのようにカフコンプライアンスCpが変化した場合に対応し、符号B1の脈波信号は、曲線BのようにカフコンプライアンスCpが変化した場合に対応する。図示されるように、腕周が長いほうが短い方よりも巻き付けられるカフの空気袋の容積は大きいので、所定カフ圧にまで高めるのに必要な空気袋の容積変動(容積変化率)は腕周が長いほうが短いほうよりも大きくなり、その結果、検出される脈波振幅は腕周の長い方が短い方よりも小さくなる。
【0012】
また、カフ圧の高い側と低い側でカフコンプライアンスCpの比が腕の太さによって異なり、つまり、曲線Bの腕サイズ小での高圧側と低圧側のカフコンプライアンスCpの比b2/b1と曲線Aの腕サイズ大でのカフコンプライアンスCpのa2/a1とは異なり、腕の太さによって、検出される脈波振幅には大きく歪が生じる。
【0013】
図16(A)と(B)には、カフを測定部位(上腕)に巻き付けた場合にカフ圧の変化に応じたカフコンプライアンスCpと脈波振幅の関係が測定部位である腕の柔らかさ(柔らかい・硬い)に対応して示される。図16(A)では、腕が柔らかい場合と硬い場合とでカフコンプライアンスCpと脈波振幅の関係が曲線Cと曲線Dで示される。
【0014】
図16(B)には、図16(A)と同じようなカフ圧変化をさせた場合に検出される脈波の振幅の変化が符号C1の脈波信号と、符号D1の脈波信号により示される。符号C1の脈波信号は、曲線CのようにカフコンプライアンスCpが変化した場合に対応し、符号D1の脈波信号は、曲線DのようにカフコンプライアンスCpが変化した場合に対応する。図示されるように、同じカフ圧にまで高める場合に、測定部位(腕)が柔らかいと、必要なカフの空気容積は硬い場合よりも増加し、検出される圧脈波の振幅は硬い場合よりも小さくなる。また、カフ圧の高い側と低い側でカフコンプライアンスCpの比が腕の柔らかさによって異なり、つまり曲線Dの腕が堅い状態での高圧側と低圧側のカフコンプライアンスCpの比d2/d1と曲線Cの腕が柔らかい状態でのカフコンプライアンスCpのc2/c1とは異なり、腕の柔らかさによって検出される脈波振幅には大きく歪が生じる。
【0015】
このように、柔らかい腕と硬い腕とのカフコンプライアンスの比はカフ圧に応じて異なることになるから脈波振幅に歪みが生じて、血圧測定精度は腕の柔らかさ・硬さに依存して変わることになる。
【0016】
図17(A)と(B)には、カフを測定部位(上腕)に巻き付けた場合にカフ圧の変化に応じたカフコンプライアンスCpと脈波振幅の関係が測定部位におけるカフの巻き付の強さの程度に対応して示される。図17(A)では、きつめに巻き付けた場合とゆるく巻き付けた場合とでカフコンプライアンスCpと脈波振幅の関係が曲線Eと曲線Fで示される。
【0017】
図17(B)には、図17(A)と同じようなカフ圧変化をさせた場合に検出される脈波の振幅の変化が符号E1の脈波信号と、符号F1の脈波信号により示される。符号E1の脈波信号は、曲線EのようにカフコンプライアンスCpが変化した場合に対応し、符号F1の脈波信号は、曲線FのようにカフコンプライアンスCpが変化した場合に対応する。
【0018】
図示されるように、カフを測定部位にゆるく巻いた場合には、カフの空気袋に血圧測定可能な量の空気が注入されていたとしても、カフを実際に測定部位に圧迫するには空気袋に関してさらなる容積の増加が必要とされるから、同じカフ圧まで高める場合にはきつく巻き付けた場合に比較してカフの空気袋に送り込むべき空気容量は増加する。このように、ゆるく巻き付けた状態においては、きつ巻あるいは適正な巻き付け状態に比べて、同じカフ圧にまで高めるのにカフの空気袋に注入すべき空気量は多くなる。そのため、ゆる巻状態においては、同じカフ圧であったとしても検出される圧脈波の振幅は、きつ巻あるいは適正な巻き付け状態に比べて小さくなる。
【0019】
これとは逆に、きつく巻き付けた場合には、ゆる巻き状態に比べて、同じカフ圧にまで高めるのに空気袋に注入すべき必要な空気容量は少ないので、検出される圧脈波の振幅は、ゆる巻き状態よりも大きくなる。このように、カフの測定部位への巻き付け状態(きつ巻あるいはゆる巻の別)に応じて、図17(B)の符号E1およびF1のように脈波振幅の大きさは同じカフ圧であっても異なり、上記と同様、カフ圧の高い側と引く側でカフコンプライアンスCpの比が巻き付け状態によって異なり、高圧側と低圧側のカフコンプライアンスCpの比e2/e1と曲線Fのきつ巻き状態でのカフコンプライアンスCpの比f2/f1とは異なり、カフの容積変化率が一定でないことに起因して(図17(A)を参照)脈波は歪む。これにより、巻きつけ状態の影響によって血圧の測定精度は低下する。
【0020】
図14〜図17に示すように、カフの状態(腕の柔らかさ、腕周の長さ、カフ巻き付けの強さ)が変化すると、血管の容積変化により生じる脈波振幅にも変化が生じる。またカフコンプライアンスCpが異なれば脈波振幅も変化が生じる。このことから、同じカフ圧で動脈を圧迫していても、カフの状態およびカフコンプライアンスCpの相違により、検出される脈波振幅は変化する、すなわち歪むことになる。
【0021】
カフの状態とコンプライアンスを考慮して血圧測定する従来の技術として特許文献1〜4に記載の方法がある。
【0022】
特許文献1では、カフ圧に対するカフの容積変化特性を予め備えておき、カフ圧力変化の信号を容積変化へと換算しなおし、それを用いて血圧値を補正して計測する方法が示される。この方法では、カフの圧力と容積変化特性を予め与えておく必要がある。
【0023】
特許文献2と3では、人体を圧迫する圧迫用流体袋に所定量の流体を供給し、圧迫用流体袋を生体に押圧させる押圧手段を設けた血圧計カフが示されている。
【0024】
特許文献4では、動脈を圧迫する小さなインナ―カフに低粘性の伝導液を入れ、インナ―カフの外側にあるアウタ―カフを用いて、インナ―カフを人体に押し付ける構成の血圧計カフが示される。
【特許文献1】特開平5−329113号公報
【特許文献2】特開平11−309119号公報
【特許文献3】特開平11−318835号公報
【特許文献4】特開平5−269089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
特許文献1で用いられる変化特性は、カフの巻き方、腕の太さおよび腕の柔らかさなどにより無限に変化するために、十分な補正を行なうのは困難である。
【0026】
また、補正のためのより複雑な複数の手順(測定の度に異なる流量検出、腕のサイズ検出、巻き付け状態検出、人体の軟度検出など)が必要であるから、装置も大掛かりとなり、実用的ではない。
【0027】
特許文献2および3の方法では、人体に一定の容積の圧迫用流体袋を押し付ける際に生じる圧力に対する容積の変化がある。低圧になれば容積変化は大きくなり、そのため圧迫用流体袋を介して検出される圧脈波の振幅は小さくなり、高圧になれば圧脈波の振幅は大きくなる。特に圧脈波を検出する圧迫用流体袋が小さいと圧力に対する容積比は大きくなり、圧脈波が歪やすく正確に血圧計測ができない。
【0028】
また特許文献4の方法では、動脈を圧迫するインナーカフに非圧縮性である低粘性の伝導液を入れて、外側から別のアウターカフで人体を押圧させるため、流体の圧力が変化してもインナーカフ内の流体容積は常に一定であり、定容積で押圧できるが、流体による血管容積変化の伝導率が悪いため圧脈波が鈍りやすく精度に劣る、またインナーカフに密閉された流体が漏れやすいなどの問題がある。
【0029】
それゆえにこの発明の目的は、コンプライアンス変化(カフ内の圧力変化に対するカフの容積変化)が脈波成分に与える影響を抑制する測定精度の高い電子血圧計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
この発明のある局面に従うと、電子血圧計は、一定量の空気が密閉されて測定部位を圧迫する測定用空気袋と、測定用空気袋の内圧の圧力信号を検出する圧力検出手段と、圧力検出手段により検出した圧力信号に含まれる脈波振幅を検出する脈波検出手段と、測定用空気袋に対して外部から押圧を加えて、測定用空気袋により測定部位を圧迫する圧迫手段と、血圧算出手段と、を備える。
【0031】
一定量の空気が密閉された測定用空気袋の内圧と容積の変化から求められたカフコンプライアンス特性の情報を予め記憶しておき、血圧算出手段は、圧迫手段により測定用空気袋に対して外部から加える圧力を変化させて測定用空気袋の内圧を変化させる過程において脈波検出手段により脈波振幅を検出する脈波振幅検出手段と、脈波振幅検出手段により検出された脈波振幅を、予め記憶されたカフコンプライアンス特性の情報を用いて補正する補正手段と、を含み、補正手段により補正された脈波振幅に基づき血圧を算出する。
【0032】
好ましくは、補正手段は、予め記憶されたカフコンプライアンス特性の情報を、内圧の変化に対して一定のカフコンプライアンスを示すように補正する第1補正手段を含み、予め記憶されたカフコンプライアンス特性の情報の第1補正手段による補正量に従い、脈波振幅検出手段により検出された脈波振幅を補正する。
【0033】
好ましくは、補正手段は、脈波振幅検出手段により脈波振幅のピークが検出されたときの圧力検出手段が検出した圧力信号が示す内圧よりも低い内圧において検出された脈波振幅は大きくするように補正し、高い内圧において検出された脈波振幅は小さくするように補正する。
【0034】
好ましくは、カフコンプライアンス特性は、内圧の変化に対する容積の変化が、緩やかな傾きを持った直線に近似される特性を示す。
【0035】
好ましくは、圧迫手段は、測定部位を圧迫する血圧測定用空気袋の外周に設けられて、膨張または縮小することにより内径を縮小または伸長させて、測定用空気袋に対して、外部から加える圧力を変化させる圧迫用空気袋を含む。
【0036】
好ましくは、圧迫手段は、測定部位を圧迫する血圧測定用空気袋の外周に設けられた帯状の部材を含み、帯状の部材に対する引っ張り力を調整して、当該帯状の部材がなす内径を縮小または伸長させて、測定用空気袋に対して、外部から加える圧力を変化させる。
【発明の効果】
【0037】
本発明では、測定部位には常に一定量の空気が密閉された、すなわち一定容積である測定用空気袋が圧迫手段により圧迫される構造とする。このことにより、測定状態(測定部位の柔らかさ、測定部位の測定用空気袋の巻き付けに関するサイズ、測定用空気袋の巻き付け方など)によらず、測定用空気袋のカフコンプライアンス特性により示される内圧変化に対する容積変化がほぼ一定となる(変化し難くなる)。血圧測定中には送排気することなく一定量の空気が入った測定用空気袋に外部から加える圧力を変化させることで、脈波検出手段により測定部位において検出された圧脈波の振幅に対して、求めておいたカフコンプライアンス特性に基づく補正を行なう。
【0038】
この補正により測定部位への測定用空気袋の巻き付け方の違い(きつ巻き・ゆる巻き)、測定部位の巻き付けに関するサイズ、測定部位の柔らかさなどに起因する、血圧情報以外のアーチファクト(測定用空気袋の容積変化)が脈波振幅に含まれるのを回避できて、より正確な血圧の算出が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照し説明する。本実施の形態に係る電子血圧計はオシロメトリック方法に従う血圧測定方法を採用すると想定する。
【0040】
各実施の形態では、血圧測定時には一定の容積の空気袋を人体の測定部位に巻き付けて圧迫する構造にすることにより、測定状態(測定部位の柔らかさ、測定部位のサイズ、巻き付け方など)にかかわらず圧力−容積の関係をあらわすP−V特性は変化し難くなる。そのP−V特性から予め得ておいたカフコンプライアンス特性を、血圧算出する際に補正のために参照することにより、血圧測定の精度を向上させる。
【0041】
各実施の形態では測定部位として上腕を想定するが、上腕に限定されず他の部位、たとえば手首などであってもよい。
【0042】
また、各実施の形態に係る電子血圧計は、空気袋を内蔵した腕帯を自動的に測定部位に巻き付けるものを採用する。自動的に巻き付けるものとしては、実施の形態1で示すようにカーラーを介した圧迫用空気袋の膨張力により血圧測定用空気袋の測定部位に対する巻き付け径を縮小するもの、または、後述の実施の形態2のように、モータの回転によって腕帯の測定部位に対する巻き付け径が小さくなるように腕帯の張力を増加させるものを例示するが、これらに限定されない。
【0043】
(実施の形態1)
図1(A)と(B)には、実施の形態1に係る血圧測定フローチャートが示される。図2には、実施の形態1の電子血圧計のブロック構成が示されて、図3には実施の形態1の電子血圧計のエアー系が示されて、図4(A)と(B)には実施の形態1の電子血圧計の外観と血圧測定のための使用状態が概略的に示されている。
【0044】
(装置構成について)
図2を参照して電子血圧計1は、血圧測定用空気袋50、圧迫用空気袋51、血圧測定用空気袋50にチューブ(エアー管)53を介して空気を供給または排出するための血圧測定用エアー系52、血圧測定用エアー系52に関連して設けられる増幅器35、ポンプ駆動回路36、弁駆動回路37およびA/D変換器38を備える。さらに電子血圧計1は、圧迫用空気袋51にチューブ55を介して空気を供給または排出するための圧迫用エアー系54、圧迫用エアー系54に関連して設けられる増幅器45、ポンプ駆動回路46、弁駆動回路47およびA/D(Analog/Digital)変換器48を備える。さらに電子血圧計1は、各部を集中的に制御および監視するためのCPU(Central Processing Unit)30、CPU30に所定の動作をさせるプログラムや測定された血圧値などの各種情報を記憶するためのメモリ39、血圧測定結果を含む各種情報を表示するための表示器40および測定のための各種指示を入力するために操作される操作部41を備える。
【0045】
血圧測定用エアー系52は血圧測定用空気袋50内の圧力(以下、カフ圧Pという)を検出して出力する圧力センサ32、血圧測定用空気袋50に空気を供給するためのポンプ33および血圧測定用空気袋50の空気を排出しまたは封入するために開閉される弁34を有する。増幅器35は圧力センサ32の出力信号を増幅してA/D変換器38に与え、A/D変換器38は与えられたアナログ信号をデジタル信号に変換してCPU30に出力する。ポンプ駆動回路36はポンプ33の駆動をCPU30から与えられる制御信号に基づいて制御する。弁駆動回路37は弁34の開閉制御をCPU30から与えられる制御信号に基づいて行なう。
【0046】
圧迫用エアー系54は圧迫用空気袋51内の圧力を検出して出力するための圧力センサ42、圧迫用空気袋51に空気を供給するためのポンプ43、圧迫用空気袋51の空気を排出しまたは封入するために開閉される弁44を有する。増幅器45は圧力センサ42の出力信号を増幅してA/D変換器48に与え、A/D変換器48は与えられるアナログ信号をデジタル信号に変換してCPU30に出力する。ポンプ駆動回路46はCPU30から与えられる制御信号に従いポンプ43の駆動を制御する。弁駆動回路47はCPU30から与えられる制御信号に従って弁44の開閉を制御する。
【0047】
図4(A)を参照して電子血圧計1は、被験者の測定部位である上腕を固定するための固定用筒状ケース57および血圧計本体部58を備える。血圧計本体部58には、表示器40としてのLCD59およびランプ60を有する。また血圧計本体部58には、外部操作が可能なように操作部41として電源スイッチ61、血圧測定の開始および停止を指示するためのスタートスイッチ62およびストップスイッチ63を有する。固定用筒状ケース57の内周面には、測定部位に装着される血圧測定用空気袋50を有する。図4(B)には、血圧測定するために固定用筒状ケース57の図面手前方向から被験者の測定部位である上腕が挿通された状態が示される。
【0048】
図3には、図4(B)の状態における固定用筒状ケース57の横断面が模式的に示される。固定用筒状ケース57には測定部位である上腕の外周から固定用筒状ケース57の内周面方向に向かって、血圧測定用空気袋50、その径が測定部位の腕の径の巻き付け方向に変形する略円筒上の可とう性部材である圧迫用カーラー56および圧迫用空気袋51が設けられる。圧迫用エアー系54により空気が徐々に供給されて圧迫用空気袋51が膨張すると、その作用により圧迫用カーラー56は径を縮ませるので、それに伴い圧迫用カーラー56と人体(上腕)の間に介在する血圧測定用空気袋50が測定部位に対して押圧される。これにより、血圧測定用空気袋50は圧迫用カーラー56および圧迫用空気袋51により人体(腕)の周囲に巻き付けられて、血圧測定可能な状態となる。
【0049】
圧迫用空気袋51および血圧測定用空気袋50は空気が排出または供給されることにより伸縮自在(容積可変)である軟質塩化ビニル、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)、PU(ポリウレタン)などの樹脂材料からなる。また、圧迫用カーラー56はPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、などの復元性に優れ柔軟な樹脂材料からなる。
【0050】
(血圧測定手順について)
図1(A)と(B)には本実施の形態に係る血圧測定のフローチャートが示される。このフローチャートに従うプログラムは、メモリ39に予め記憶されて、CPU30がメモリ39からこのプログラムを読出し実行することにより血圧測定が行なわれる。
【0051】
図1(A)と(B)の手順では、被測定者が図4(B)のように腕を挿通して測定が開始されると、まず初期化が行なわれる(ステップST1)。その後、血圧測定用空気袋50に一定量の空気が供給されて、血圧測定用空気袋50のカフ容量を所定レベルにする(ステップST2)。そして、圧迫用空気袋51に空気を供給してその内圧を徐々に上昇させる(ステップST3)。これにより、圧迫用空気袋51の膨張により圧迫用カーラー56の巻き付け径が縮小するので、血圧測定用空気袋50は測定部位に押圧開始される。その後、圧迫用空気袋51に空気を供給することにより人体の測定部位に圧迫され血圧測定用空気袋50のカフ圧Pが所定レベルに達したときに、圧迫用空気袋51の空気を排気して圧迫用空気袋51の内圧を徐々に減圧する(ステップST4)。この減圧過程において、図1(B)の血圧算出(ステップST5)が行なわれる。その後、血圧測定の結果がメモリ39に格納されるとともに表示器40に表示されて(ステップST6)、圧迫用空気袋51と血圧測定用空気袋50の空気は急速に排気されて、両者の内圧は大気圧レベルとなり測定は終了する(ST7)。
【0052】
ステップST5では、CPU30は、カフ圧の検出信号を入力して、入力したカフ圧信号に重畳している圧脈波の成分を抽出(サンプリング)し、脈波包絡線を形成可能な数の圧脈波(脈波信号)のサンプリングが終了すると、形成した脈波包絡線を予め求めておいた補正係数を用いて補正し、血圧測定(算出)が行なわれる。
【0053】
なお、上述の血圧測定は圧迫用空気袋51の内圧を徐々に減圧していく過程で血圧を算出する減圧時測定の方法であるが、これに限らずステップST3で圧迫用空気袋51の内圧を徐々に上昇させて加圧していく過程で血圧を算出する加圧時測定でも同様に、脈波包絡線を予め求めておいた補正係数を用いて補正し、血圧測定(算出)が行われても良い。
図1(A)と(B)の処理を詳細に説明する。
【0054】
(ステップST1の処理)
まず、図4(B)の状態で被測定者が電子血圧計1のスタートスイッチ62を操作して電源ONすると電子血圧計1の初期化がなされる。初期化においては、弁駆動回路37および47を介して弁34と44を全開にして、血圧測定用空気袋50と圧迫用空気袋51の空気を全て排気してそれらの内圧を大気圧レベルとする。またCPU30は圧力センサ52と54の0mmHgの調整を行なう。
【0055】
(ステップST2の処理)
本処理では、図5に示すように、CPU30は弁駆動回路37を制御して血圧測定用エアー系52の弁34を閉じる。ただし、圧迫用エアー系54の弁44は開放された状態にある。その後、CPU30が、ポンプ駆動回路36を制御してポンプ33を駆動することにより、血圧測定用空気袋50に対して矢印F1の方向に一定量の空気が送り込まれる。その後、ポンプ33は停止して空気の送り込みは停止する。したがって、圧迫用空気袋51により外部から押圧がされない状態で測定部位に巻き付けられる血圧測定用空気袋50は一定量空気が送り込まれたのち密封状態となる。
【0056】
なお、血圧測定用空気袋50に送り込む一定量の空気容量は、流量計を取り付けて送り込まれた流量を測定し制御する方法もあるが、構造が複雑になるため、CPU30がポンプ駆動回路36を制御してポンプ33を駆動する際に一定電圧と時間で一定流量を規定しても良い。なお、一定流量とするための一定電圧と時間を規定するデータは予めメモリ39に格納されているので、CPU30はメモリ39から当該データを読出し、読出したデータに基づきポンプ駆動回路36を制御することで、ポンプ33により一定流量の空気が血圧測定用空気袋50に送り込まれる。
【0057】
(ステップST3の処理)
図5のように血圧測定用空気袋50に一定量の空気を密封した状態で血圧測定が開始される。このときの一定量の空気で膨張した血圧測定用空気袋50の容積を初期容積Vとする。この初期容積Vのデータは実験により予め求めておきメモリ39に格納されているので、これを読出して用いる。また、この初期容積であるときの血圧測定用空気袋50のカフ圧(初期カフ圧P1という)を、圧力センサ32を介して検出してメモリ39に格納する。
【0058】
その後、図6のように、CPU30は弁駆動回路47を制御して圧迫用エアー系54の弁44を閉じた後、ポンプ駆動回路46を制御してポンプ43を駆動して、圧迫用空気袋51に対して空気を図中の矢印F2の方向に徐々に送り込む。これにより、圧迫用空気袋51は徐々に膨張し、その作用により圧迫用カーラー56は、その端を矢印AR方向に移動させて、その径を縮ませるので、それに伴い圧迫用カーラー56と測定部位の間に介在する血圧測定用空気袋50が測定部位に対して押圧される。その後も、ポンプ43の駆動が継続するので、圧迫用空気袋51は膨張をし続けて、血圧測定用空気袋50による測定部位に対する押圧力が上昇し続ける。
【0059】
この押圧力が上昇する過程において、血圧測定用エアー系52の圧力センサ32により、血圧測定用空気袋50の内圧であるカフ圧が検出されて、検出されたカフ圧を示す信号は増幅器35およびA/D変換器38を介してCPU30に与えられる。このように、逐次検出されるカフ圧をカフ圧P2とする。CPU30は、与えられるカフ圧信号が示すカフ圧P2が所定の圧力レベルにまで上昇したことを検出すると、ポンプ駆動回路46を制御してポンプ43を停止させる。これにより、ポンプ43による圧迫用空気袋51に対する空気の送り込みは停止する。
【0060】
(ステップST4の処理)
図6のようにして、カフ圧が所定レベルにまで達して、ポンプ43の駆動を停止した後、図7のように弁駆動回路47を制御して圧迫用エアー系54の弁44を徐々に開き、圧迫用空気袋51内の空気を矢印F3の方向にゆっくりと排気させる(微速排気)。これにより、圧迫用カーラー56は、その端を矢印BR方向に移動させて、その径を広げるので、それに伴い圧迫用カーラー56と測定部位の間に介在する血圧測定用空気袋50による測定部位に対する押圧力が低下す。これにより血圧測定部位に対して加えられていた圧力が徐々に減じられるので、測定部位における血管の容積変動を示す圧脈波が、血圧測定用エアー系52の圧力センサ32により検出されるカフ圧信号に重畳され、増幅器35およびA/D変換器38を介してCPU30に与えられる。CPU30は、減圧過程においてステップST5の血圧測定(血圧算出)を図1(B)の手順に従い行なう。
【0061】
(ステップST5の処理)
CPU30は、圧力センサ32から与えられるカフ圧信号を入力して、そこに重畳した圧脈波を示す脈波信号をサンプリングする(ST10、ST13)。具体的には、カフ圧信号に含まれている脈波信号の振幅レベルを検出して、検出した振幅レベルとその時点で検出されたカフ圧信号が示すカフ圧レベルとを対応付けてメモリ39のテーブル391に格納する。このようにテーブル391に格納される都度、CPU30は脈波包絡線のピーク値を検出する(ステップST15)。すなわち、今回、サンプリングした脈波信号の振幅レベルが直前に検出した脈波信号の振幅レベルを超えるときは、今回サンプリングした脈波信号の振幅レベルと対応のカフ圧信号のレベルとを対応付けてピークデータ392としてメモリ39に格納する(ピークデータ392を更新する)。一方、今回サンプリングした脈波信号の振幅レベルが直前に検出した脈波信号の振幅レベルを超えない時は、ピークデータ392は更新されない。したがって、脈波包絡線を形成するためのデータがテーブル391に格納終了した時点で、ピークデータ392が示すデータが当該脈波包絡線のピーク値を示すことになる。
【0062】
次に、CPU30は、脈波包絡線を形成するのに必要な所定数の脈波信号をサンプリングしたことを検出すると、すなわち当該脈波包絡線のピーク値が決定していると判定すると(ステップST17でYES)、後述のステップST19の処理に移行するが、ピーク値が決定していない場合には(ステップST17でNO)、ステップST10に戻り、以降のサンプリング処理が同様に繰り返される。
【0063】
CPU30は、ピーク値が決定していると判定すると、すなわちテーブル391に圧脈波包絡線を形成するデータの格納が終了したと判定すると(ステップS17でYES)、後述するようにして脈波包絡線を補正するための係数の算出処理を行なう(ステップST19)。その後、補正係数を元に、作成した脈波包絡線を、すなわちテーブル391のデータを補正し(ステップST21)、テーブル391の補正後の脈波包絡線のデータに基づき血圧算出のパラメータを決定する、すなわち周知の手順に基づき最高血圧よび最低血圧を算出する(ステップST23)。
【0064】
(ステップST6の処理)
CPU30は、ステップST5の算出結果は、メモリ39に格納するとともに表示器40に表示する。
【0065】
(ステップST7の処理)
ステップST6の処理の後、CPU30は、図8のように、血圧測定用エアー系52の弁34と、圧迫用エアー系54の弁44とを全開となるように制御する。これにより、図中の矢印F4の方向に、血圧測定用空気袋50および圧迫用空気袋51内の空気は急速に排気される。この排気に伴い圧迫用空気袋51は縮小するので、圧迫用カーラー56は、その端を矢印R1とR2方向に移動させて、その径を元に戻すようになる。それに伴い圧迫用カーラー56と測定部位の間に介在する血圧測定用空気袋50による測定部位に対する押圧はなくなる。そして、排気が進行して、血圧測定用空気袋50および圧迫用空気袋51の内圧は低下して大気圧となる。これにより血圧測定は終了する。
【0066】
(補正係数の算出)
ここで、本実施の形態に係る補正係数の算出手順について図9と図10を参照し説明する。まず一定容積空気袋測定方式の原理を説明する。
【0067】
<一定容積空気袋測定方式>
図9(A)〜(C)には、本実施の形態に係る一定容積空気袋測定方式が示される。
【0068】
ここで、血圧測定用空気袋50と同様の材料とサイズ及び構成からなる所定量の空気を入れたカフを密閉して、その後当該カフを人体に押付けることによって、カフの内圧と容積の関係は変化する。その関係は、理想気体の状態変化においては、次の式1によって表わされる。
【0069】
【数1】


【0070】
このとき、初期容積をV1とすると、次の式2により、カフ容積Vを求めることができる。式2の条件は気体と周囲の間に熱交換がなく、摩擦などによる内部熱発生のない状態を想定している。
【0071】
【数2】


【0072】
このような一定容積のカフ(血圧測定用空気袋50)を外部押付けにより容積と圧力を変化させているため、すなわちカフ(血圧測定用空気袋50)には外部からの空気の出し入れがないため、腕のサイズ、柔らかさ、巻き付け状態が異なっても、カフ圧と容積の関係から求められたカフコンプライアンスCpは従来方式(図15、図16、図17)と比較しほとんど変化しない。つまり、図9(A)に示されるような関係が得られる。図9(A)には、縦軸にカフの容積(ml)が取られて、横軸に、カフの内圧(カフ圧)の変化が示される。図示されるように、カフ圧と容積の関係(P−V特性)は常に一定となり、y=ax−bx+c(ただし、y=カフ容積、x=カフ圧)の式を用いて示される。
【0073】
このときのカフコンプライアンスCpは、図9(A)に示すカフ圧とカフ容積の関係を示す式を微分することにより算出することができる。したがって、カフコンプライアンスCpとカフ圧との関係は図9(B)の線分の式で示される。当該線分の式は(dx/dy=2ax−b)として示されて、カフ圧が変化してもカフコンプライアンスCpは直線に近似されることがわかる。
【0074】
したがって、図9(A)および(B)の特性を示す一定容量カフを用いて血圧測定をした場合に、腕のサイズ、柔らかさ、巻き付けの強さにかかわらずカフ圧の変化に応じたカフの容積変化は空気を出し入れする方式よりも抑制され、それから得られるカフコンプライアンスCpの変化は緩やかな傾きをもった直線に近似されるため、カフ圧に重畳する脈波信号の振幅は、カフの圧力変化に起因して大きく歪むことは少なくなる(図9(C)を参照)。
【0075】
このように一定容積の血圧測定用空気袋50に空気の出し入れがない状態では、カフコンプライアンス測定部位の血管の容積変動を伝える脈波の振幅を正確に検出することが可能となって、それから形成される脈波包絡線を用いた血圧算出の精度は向上する。
【0076】
<補正係数を用いた補正>
次ぎに、この一定容量の血圧測定用空気袋50を使ってさらに精度を向上させる補正方法について説明する。
【0077】
図9(A)〜(C)に示した一定容積空気袋を用いた実際の血圧測定における補正係数の決定について図10(A)と(B)を参照し説明する。図10(A)には、横軸のカフ圧(mmHg)の変化に応じた、カフの容積変化率を示すカフコンプライアンスCp(ml/mmHg)が示される。
【0078】
前述したように一定容積空気袋で測定する方式では、測定状態(腕の太さ、腕の柔らかさ、カフの巻き付けの強さ)が異なったとしても、カフ圧の変化に応じたカフコンプライアンス特性は常に一定の緩やかな傾きをもった直線になるので、このことを利用して補正係数を求める。
【0079】
まず、血圧測定に先立った(工場出荷時の)実験などにより、血圧測定用空気袋50に一定量の空気を注入し、その後密封し、それを被測定者もしくは模擬人体の測定部位に巻き付け、測定部位を外部から圧迫する。このようにした状態で、図9(A)に示すP−V特性のデータを実測して得ておく。実測して得たP−V特性のデータはメモリ39のテーブル390に格納される。また、図9(B)のカフコンプライアンス−カフ圧の特性を示すデータを、テーブル390のデータに基づき算出して、算出したデータをメモリ39のテーブル393に格納しておく。
【0080】
そして、この測定結果に基づき、ステップST19において、カフ圧の変化に応じたカフコンプライアンスCpが一定となるような補正係数を図10(A)に示すようにして算出する。つまり、CPU30は、実際に測定されたカフコンプライアンス−カフ圧特性を示すテーブル393のデータを読出す。これにより図10(A)の直線70が読出される。そして、脈波振幅のピークデータ392をメモリ39から読出して、直線70における、当該ピークデータ392が検出された時点のカフ圧に対応のカフコンプライアンスCpを通る図10(A)のカフ圧に対してカフコンプライアンスCpが変化しないカフコンプライアンス−カフ圧特性を示す直線71を、すなわちカフ圧の軸に対して平行な直線71を想定する。そして、CPU30は、直線70のデータを直線71のデータに一致させるように処理する。つまり、直線70のデータに関して、ピークデータ392が示すカフ圧よりも低圧側では対応のカフコンプライアンスCpを減じるようにし、高圧側では対応のカフコンプライアンスCpを増加させるように補正する。このようにすることで、図10(A)では、矢印方向に直線70で示されるカフコンプライアンスCpの値が補正(加減算)されて、この補正量に応じて、減圧過程で検出されたテーブル391の脈波包絡線(脈波振幅)のデータが補正される。ここでは、図10(A)において矢印方向に直線70で示されるカフコンプライアンスCpの値を直線71の値に一致させるように補正するための補正量を補正係数ともいう。本実施の形態では、想定され得るピークデータ392が示すカフ圧のそれぞれに対応した補正係数のデータは予め算出されて、メモリ39のテーブル394に格納されていると想定する。
【0081】
本実施の形態では、実際の電子血圧計1に搭載する血圧測定用空気袋50と同様の材料とサイズ及び構成の空気袋を用いて、血圧測定に先立ち、P−V特性を得て、得られたP−V特性に基づきカフコンプライアンスCp−カフ圧特性を算出し、さらに、算出したカフコンプライアンスCp−カフ圧特性を用いて補正係数を算出し、算出した補正係数のデータをメモリ39にテーブル394として格納しておく方法を適用するが、この方法に限定されない。たとえば、カフコンプライアンスCp−カフ圧の特性のデータをテーブル393に(メモリ39に)予め記憶させておき、血圧測定の度に、CPU30はメモリ39から読出したピークデータ392およびテーブル393のデータに基づき、補正係数を算出するようにしてもよい。このように補正係数を求める手順は、カフコンプライアンスCpの特性の情報として、補正係数を予めメモリ39に記憶しておく方法でも、カフコンプライアンスCpの特性そのものをメモリ39に記憶しておきCPU30により血圧測定の都度、計算して補正係数を求める方法であっても良い。すなわち、カフコンプライアンスCpの特性の情報とはこれら補正係数やカフコンプライアンスCpの特性そのものを含むものであり、それに限定されることは無い。
【0082】
(脈波包絡線の補正)
次に、カフコンプライアンス特性の情報を用いた脈波包絡線の補正について説明する。
【0083】
図10(B)を参照して、脈波包絡線の補正は、図10(A)のカフコンプライアンス特性の情報に応じたカフコンプライアンスCpの補正係数に従い行われる。具体的には、脈波包絡線テーブル391においてピークデータ392が示すカフ圧よりも低圧側のカフ圧では、低圧であるほど所定量のカフ圧変化に応じたカフの容積変化であるカフコンプライアンスCpは大きいので、対応の符号80の脈波の振幅データは、テーブル394の補正係数を用いて、符号81のように振幅を大きくするように補正される。また高圧側では高圧であるほど所定量のカフ圧変化に応じたカフ容積変化は小さいので符号80の脈波の振幅データは、テーブル394の補正係数を用いて、符号81で示すように振幅を小さくするように補正される。このように、あるカフ圧に応じた脈波振幅の補正量は、当該あるカフ圧に応じて検出されたカフコンプライアンスと、前記脈波振幅のピークが検出されたときの前記カフ圧に応じて検出されたカフコンプライアンスとの差分の大きさ、すなわち補正係数の値に依存する。ここでは、あるカフ圧に対応の脈波振幅の補正量は補正係数を用いて決定することができる。すなわち、当該カフ圧におけるカフコンプライアンスCpが一定の直線71と緩やかな傾きを持った直線70とのカフコンプライアンスCpの差分及び傾きに応じて、CPU30が所定の計算式に従い算出することで決定することができる。
【0084】
なお、ピークデータ392が示す脈波振幅のピーク値に対応のカフ圧は、ほぼ平均血圧に相当しており、ステップST23では、補正された脈波振幅波形から周知の算出アルゴリズムにより最高血圧および最低血圧を算出している。
【0085】
(実施の形態2)
実施の形態1では、血圧測定用空気袋50の測定部位への巻き付けには、圧迫用空気袋51を用いていたが、本実施の形態2にように圧迫用空気袋51の膨張・収縮に代替してベルトの引っ張りを用いてもよい。
【0086】
実施の形態2の電子血圧計2の機能構成が図11に示されて、血圧測定の処理フローチャートが図12に示されて、巻き付け構造の概略が図13に示される。図11の電子血圧計2と図2の電子血圧計1と比較し異なる点は、電子血圧計2は、図2の圧迫用空気袋51に代替して圧迫用空気袋51と同様の作用をする巻き付け圧迫部97を備え、CPU30に代替してCPU301を備え、圧迫用エアー系54、増幅器45、ポンプ駆動回路46、弁駆動回路47およびA/D変換器48に代替して巻き付け圧迫部97にケーブルを介して接続された圧迫固定部95およびモータ駆動回路461を備える点にある。他の部分は、図2の電子血圧計1のそれと同じである。
【0087】
圧迫固定部95は、ベルト93とカーラー92からなる巻き付け圧迫部97を介して血圧測定用空気袋50を測定部位(上腕)に巻き付けるよう作用する。圧迫固定部95は、巻き付けモータ90およびその巻き付け能力を検出するトルクセンサ96を有する。トルクセンサ96の検出結果は、モータ駆動回路461に与えられる。モータ駆動回路461は、CPU301によりその駆動が制御される。モータ駆動回路461は、CPU301によりオンされている間は、トルクセンサ96の検出結果に基づき、巻き付けモータ90を回転させる。巻き付けモータ90の巻き付け部91には帯状の可とう性材料からなるベルト93の一端が巻き付けられる。ベルト93の他方端は固定点951において固定とされる。構成においては、上腕部がその内径に挿通される血圧測定用袋50が位置し、血圧測定用袋50の外周には外側方向に広がる復元性の良い可とう性の樹脂材料からなる円筒状のカーラー92が設けられて、カーラー92の外周にはベルト93が設けられる。したがって、モータ90が回転することでベルト93の一方端が巻き付け部91に巻き付けられる、または巻き戻される。これにより、ベルト93およびカーラー92からなる巻き付け圧迫部97の内径は縮んだり、伸びたりする。この縮み・伸びの作用により、ベルト93およびカーラー92を介して血圧測定用袋50に外側から与えられる押圧力が調整される。
【0088】
具体的には、巻き付け圧迫部97が内径を縮める場合には、巻き付けモータ90は正回転して図中の点線矢印方向に固定点95から伸びているベルト93の一方端を引っ張る(他方端は固定点95で固定されている)ようにして巻き付け部91に巻き付けるので、ベルト93が移動しカーラー92内側に変形し内径は縮むことになり、その作用により、カーラー92と測定部位との間に介在する血圧測定用空気袋50は測定部位に巻き付けられて測定部位は圧迫される。径を広げる場合には、巻き付けモータ90は逆回転もしくはモータのロックを解除すると図中の点線矢印とは反対方向に固定点951から伸びているベルト93を引っ張るようにして巻き付け部91に巻き付けられていたベルト93を解くので、ベルト93およびカーラー92の内径は広がることになり、その作用により、カーラー92と測定部位との間に介在する血圧測定用空気袋50は測定部位から解かれて測定部位は圧迫から開放される。
【0089】
図12を参照して、血圧測定の手順について説明する。ST1とST2が電子血圧計1と同様に行なわれる。
【0090】
その後、CPU301はモータ駆動回路461をオンする。これにより、モータ駆動回路461は、トルクセンサ96からの出力信号に基づき巻き付けモータ90を駆動する。これにより、ベルト93は点線矢印方向に引っ張られるので血圧測定用空気袋50は測定部位に圧迫されるようになる(ステップST3a)。このとき、前述と同様にして所定のカフ圧まで上昇するまで巻き付けられる。その後、モータ駆動回路461により、巻き付けモータ90を逆方向に回転させまたは、モータのロックを徐々に緩めていくことで血圧測定用空気袋50を測定部位に押し付けている押圧力が徐々に緩められ、血圧測定用空気袋50のカフ圧が徐々に減圧する(ST4a)。このような減圧過程において、前述と同様にステップST5〜ST6の処理が行なわれる。その後、ステップST7aにおいて、血圧測定用空気袋50の急速排気がステップST7と同様に行われて、次のステップST8において、CPU301はモータ駆動回路461に指示して、巻き付けモータ90をさらに逆回転またはモータのロックを完全に解除することによりベルト93の巻き付け部91への巻きを完全に解くので、ベルト93とカーラー92がなす内径は十分に広がり、血圧測定用空気袋50は完全に測定部位から離れ、元の広がった内径になる。これにより、血圧測定は終了する。
【0091】
本実施の形態2のような血圧測定用空気袋50の巻き付け方式であっても、実施の形態1と同様に、脈波包絡線を補正できて、腕周のサイズ、腕の柔らかさ、巻き付けの強さにかかわらず、精度よく血圧測定することができる。
【0092】
ここでは巻き付け部材にベルト93を用いたがワイヤまたは薄板などで代用してもよい。
【0093】
また、各実施の形態では、血圧測定用空気袋が測定部位に圧迫加圧された後、減圧過程で血圧測定用空気袋内に発生する圧脈波を測定し、血圧値を算出する方法を説明しているが、加圧過程においても同様の手順で血圧値を算出することが可能である。
【0094】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】(A)と(B)は、実施の形態1に係る血圧測定フローチャートである。
【図2】実施の形態1の電子血圧計のブロック構成図である。
【図3】実施の形態1の電子血圧計のエアー系を示す図である。
【図4】(A)と(B)は実施の形態1の電子血圧計の外観と血圧測定のための使用状態を概略的に示す図である。
【図5】実施の形態1による血圧測定時のエアー系の調整の一例を模式的に示す図である。
【図6】実施の形態1による血圧測定時のエアー系の調整の他の例を模式的に示す図である。
【図7】実施の形態1による血圧測定時のエアー系の調整のさらなる他の例を模式的に示す図である。
【図8】実施の形態1による血圧測定時のエアー系の調整のさらなる他の例を模式的に示す図である。
【図9】(A)〜(C)は、実施の形態1による一定容積空気袋測定方式を説明する図である。
【図10】(A)と(B)は、実施の形態1による一定容積空気袋測定補正方法を説明する図である。
【図11】実施の形態2の電子血圧計のブロック構成図である。
【図12】実施の形態2の電子血圧計のエアー系を巻きつけ機能とともに示す図である。
【図13】実施の形態2に係る血圧測定フローチャートである。
【図14】(A)と(B)は、カフ圧の変化に対応したカフコンプライアンスと脈波振幅の関係を模式的に示す図である。
【図15】(A)と(B)は、カフ圧の変化に応じたカフコンプライアンスと脈波振幅の関係を腕のサイズに対応して示す図である。
【図16】(A)と(B)は、カフ圧の変化に応じたカフコンプライアンスと脈波振幅の関係を腕の柔らかさに対応して示す図である。
【図17】(A)と(B)は、カフ圧の変化に応じたカフコンプライアンスと脈波振幅の関係をカフの巻き付の強さの程度に対応して示す図である。
【符号の説明】
【0096】
1,2 電子血圧計、50 血圧測定用空気袋、51 圧迫用空気袋、95 圧迫固定部、97 巻き付け圧迫部。




 

 


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