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発明の名称 粒子線照射装置の制御システム及びその制御方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−175540(P2007−175540A)
公開日 平成19年7月12日(2007.7.12)
出願番号 特願2007−90130(P2007−90130)
出願日 平成19年3月30日(2007.3.30)
代理人 【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
発明者 ▲柳▼澤 正樹 / 秋山 浩 / 松田 浩二 / 藤巻 寿隆
要約 課題

患部内における放射線量分布をより均一化する。

解決手段
特許請求の範囲
【請求項1】
治療計画情報に基づいて照射条件情報より必要な散乱体の厚み及び吸収体の厚みを選定し、選定した散乱体及び吸収体の各厚み情報を基に散乱体及び吸収体の位置を選定し、駆動制御装置に対し駆動指令信号と散乱体及び吸収体の各選定した厚みの情報を出力する照射制御装置と、
その散乱体の厚み情報に基づいて散乱体を散乱体装置の散乱体の中から選定し、選定された吸収体の厚み情報に基づいてその厚みになる吸収体を飛程調整装置の吸収体の中から選定する駆動制御装置とを備え、
該当する散乱体及び吸収体が設定位置に達したとき、該当する各リミットスイッチの作動によって発生する各位置信号を該駆動制御装置に伝えることを特徴とする粒子線治療装置の制御システム。
【請求項2】
治療計画情報に基づいて照射条件情報より必要な散乱体の厚み及び吸収体の厚みを選定し、選定した散乱体及び吸収体の各厚み情報を基に散乱体及び吸収体の位置を選定し、駆動制御装置に対し駆動指令信号と散乱体及び吸収体の各選定した厚みの情報を出力する照射制御装置と、
その散乱体の厚み情報に基づいて散乱体を散乱体装置の散乱体の中から選定し、選定された吸収体の厚み情報に基づいてその厚みになる吸収体を飛程調整装置の吸収体の中から選定する駆動制御装置とを備え、
該当する散乱体及び吸収体が設定位置に達したとき、該当する各リミットスイッチの作動によって発生する各位置信号を該駆動制御装置に伝え、該駆動制御装置は、該照射制御装置に散乱体及び吸収体の移動完了情報を出力することを特徴とする粒子線治療装置の制御システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の粒子線治療装置の制御システムにおいて、
前記照射制御装置は、前記駆動制御装置に対して、前記散乱体及び吸収体の位置情報情報を出力することを特徴とする粒子線治療装置の制御システム。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の粒子線治療装置の制御システムにおいて、
患者の位置決め前に、照射制御装置は、患者に対する治療計画情報が入力され、記憶することを特徴とする粒子線治療装置の制御システム。
【請求項5】
治療計画情報に基づいて照射条件情報より必要な散乱体の厚み及び吸収体の厚みを選定し、選定した散乱体及び吸収体の各厚み情報を基に散乱体及び吸収体の位置を選定し、駆動制御装置に対し駆動指令信号と散乱体及び吸収体の各選定した厚みの情報を出力する照射制御する工程と、
その散乱体の厚み情報に基づいて散乱体を散乱体装置の散乱体の中から選定し、選定された吸収体の厚み情報に基づいてその厚みになる吸収体を飛程調整装置の吸収体の中から選定する駆動制御する工程とを含み、
該当する散乱体及び吸収体が設定位置に達したとき、該当する各リミットスイッチの作動によって発生する各位置信号を該駆動制御装置に伝えることを特徴とする粒子線治療装置の制御方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子線照射装置の制御システム及びその制御方法に係り、特に、陽子及び炭素イオン等の荷電粒子ビームを患部に照射して治療する粒子線治療装置,荷電粒子ビームを材料に照射する材料照射装置,食品に荷電粒子ビームを照射する食品照射装置、及び荷電粒子ビームを利用したラジオアイソトープ製造装置に適用するのに好適な粒子線照射装置の制御システム及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の粒子線治療装置は、荷電粒子ビーム発生装置,ビーム輸送系及び回転式の照射装置を備える。荷電粒子ビーム発生装置は、加速器としてシンクロトロン(またはサイクロトロン)を含んでいる。シンクロトロンで設定エネルギーまで加速された荷電粒子ビーム(以下、イオンビームという)は、ビーム輸送系(以下、第1ビーム輸送系という)を経て照射装置に達する。回転式の照射装置は、照射装置ビーム輸送系(以下、第2ビーム輸送系という),照射野形成装置、及び第2ビーム輸送系及び照射野形成装置を一体で回転
させる回転装置(回転ガントリー)を有する。イオンビームは第2ビーム輸送系を通って照射野形成装置から患者の癌の患部に照射される。
【0003】
照射野形成装置は、荷電粒子ビーム発生装置からのイオンビームを、照射目標である患部の形状に合わせて整形して照射する装置である。照射野形成装置は、大別して3種類存在する。第1は散乱体方式を適用した照射野形成装置、第2はウォブラ方式を適用した照射野形成装置(特許文献1及び特許文献2)、及び第3はスキャニング方式を適用した照
射野形成装置(特許文献3)である。
【0004】
【特許文献1】特開平10−211292号公報
【特許文献2】特開平2000−202047号公報
【特許文献3】特開平10−199700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
照射野形成装置から患者の体内にイオンビームを照射する際、イオンビームの進行方向(体内の深さ方向)及びその進行方向に直行する方向における放射線量分布が一様になることが望まれる。特に、癌の患部内においてはそのような放射線量分布の一様性が望まれる。これは、3種類の各照射野形成装置からのイオンビームの照射の際にそれぞれ望まれることである。しかしながら、上記した従来の照射野形成装置を有する粒子線治療装置では、特に、体積の大きな患部(照射対象領域)に対して、照射線量を高く保ちつつ深さ方向における放射線量分布の一様性を高く保つことは困難であった。
【0006】
本発明の目的は、粒子線治療装置の制御システム及びその制御方法において、散乱体を、治療計画情報に基づいて設定された位置に容易に位置させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、治療計画情報に基づいて照射条件情報より必要な散乱体の厚み及び吸収体の厚みを選定し、選定した散乱体及び吸収体の各厚み情報を基に散乱体及び吸収体の位置を選定し、駆動制御装置に対し駆動指令信号と散乱体及び吸収体の各選定した厚みの情報を出力する照射制御装置と、その散乱体の厚み情報に基づいて散乱体を散乱体装置の散乱体の中から選定し、選定された吸収体の厚み情報に基づいてその厚みになる吸収体を飛程調整装置の吸収体の中から選定する駆動制御装置と、該当する散乱体及び吸収体が設定位置に達したとき、該当する各リミットスイッチの作動によって発生する各位置信号を該駆動制御装置に伝えることを特徴とする。
【0008】
好ましくは、駆動制御装置は、照射制御装置に散乱体及び吸収体の移動完了情報を出力する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、粒子線治療装置の制御システム及びその制御方法において、散乱体を、治療計画情報に基づいて設定された位置に容易に位置させることにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の各実施例を説明する。
【0011】
(実施例1)
本発明の好適な一実施例である粒子線治療装置を、図1を用いて説明する。本実施例の粒子線治療装置1は、荷電粒子ビーム発生装置2及び照射野形成装置15を備える。荷電粒子ビーム発生装置2は、イオン源(図示せず),前段加速器3及びシンクロトロン4を
有する。イオン源で発生したイオン(例えば、陽子イオン(または炭素イオン))は前段
加速器(例えば直線加速器)3で加速される。前段加速器3から出射されたイオンビームはシンクロトロン4に入射される。このイオンビームは、シンクロトロン4で、高周波加速空胴5から印加される高周波電力によってエネルギーを与えられて加速される。シンクロトロン4内を周回するイオンビームのエネルギーが設定されたエネルギーまでに高められた後、出射用の高周波印加装置6から高周波がイオンビームに印加される。安定限界内で周回しているイオンビームは、この高周波の印加によって安定限界外に移行し、出射用デフレクタ13を通ってシンクロトロン4から出射される。イオンビームの出射の際には
、シンクロトロン4に設けられた四極電磁石7及び偏向電磁石8等の電磁石に導かれる電流が設定値に保持され、安定限界もほぼ一定に保持されている。高周波印加装置6への高周波電力の印加を停止することによって、シンクロトロン4からのイオンビームの出射が停止される。
【0012】
シンクロトロン4から出射されたイオンビームは、ビーム輸送系9を経て照射装置である照射野形成装置15に達する。ビーム輸送系9の一部である逆U字部10及び照射野形成装置15は、回転可能なガントリー(図示せず)に設置される。逆U字部10は偏向電磁石11,12を有する。イオンビームは、照射野形成装置15から治療台(ベッド)
59に乗っている患者61の患部(図2)62に照射される。
【0013】
本実施例に用いられる照射野形成装置15の詳細構成を図2に基づいて説明する。照射野形成装置15は、ウォブラ方式の照射野形成装置である。照射野形成装置15は、逆U字部10に取り付けられるケーシング16を有し、ケーシング16内に、イオンビーム進行方向の上流側より順次、第1走査電磁石17,第2走査電磁石18,散乱体装置19,飛程調整装置20、及びブラッグピーク拡大装置(以下、SOBP装置という)21を配置する。第1走査電磁石17及び第2走査電磁石18は散乱体装置19の上流側でケーシング16に取り付けられる。散乱体装置19及び飛程調整装置20は一体化されて貫通孔37を有する支持部材24に取り付けられる。支持部材24は2つのネジ孔を通るボールネジ27,28とそれぞれ噛合っている。ボールネジ27,28の上端部はそれぞれ回転可能にケーシング16に取り付けられる。ボールネジ27,28の下端部は、ケーシング16に取り付けられる交流サーボモータ25,26の回転軸に連結される。エンコーダ
29は交流サーボモータ25の回転軸に連結される。交流サーボモータ25,26は一方のみでもよい。交流サーボモータの替りにステップモータを用いてもよい。SOBP装置21は、飛程調整装置20に向って伸びる複数の楔形部材を配置している。楔形部材の両側面は厳密には階段状の形状となっている。SOBP装置として、回転ホイール型SOBPフィルタを用いてもよい。SOBP装置21は、ボールネジ32と噛合うネジ孔、及び貫通孔38を有する支持部材30に取り付けられる。ボールネジ32の上端部はケーシング
16に回転可能に取り付けられる。ボールネジ32の下端部は、ケーシング16に取り付けられる交流サーボモータ31に連結される。エンコーダ33は交流サーボモータ31の回転軸に連結される。支持部材30は、ケーシング16に設置されるリニアガイド34に移動可能に取り付けられる。ケーシング16はボーラス保持部35を有する。交流サーボモータ25及びボールネジ27,交流サーボモータ26及びボールネジ28、及び交流サーボモータ31及びボールネジ32は、それぞれリニアアクチュエータを構成する。
【0014】
散乱体装置19の詳細構成を図3を用いて説明する。散乱体装置19は、圧縮空気シリンダ41、及び圧縮空気シリンダ41内に設置されたピストン(図示せず)に連結されるピストンロッド42を有する複数の散乱体操作装置40を有する。これらの散乱体操作装置40は支持枠39に設置される。散乱体装置19は、イオンビームの進行方向(ビーム軸14という)における厚みが異なる散乱体43A〜43Fを有する。これらの散乱体は
、個々の散乱体操作装置40に一個ずつ取り付けられる。散乱体43A〜43Fは、イオンビームの散乱量に対するイオンビームのエネルギー損失の量が少ないタングステンで構成される。散乱体は、タングステン以外に鉛等の原子番号の大きな物質で構成される材料を用いてもよい。電磁弁50を有する圧縮空気配管49が、各散乱体操作装置40の圧縮空気シリンダ41にそれぞれ接続される。各圧縮空気配管49は圧縮空気供給装置(図示せず)に接続される。支持枠39は飛程調整装置20の支持枠44上に設置される。
【0015】
飛程調整装置20は、図4に示すように、圧縮空気シリンダ46、及び圧縮空気シリンダ46内に設置されたピストン(図示せず)に連結されるピストンロッド47を有する複数の吸収体操作装置45を有する。これらの吸収体操作装置45は支持枠44に設置される
。飛程調整装置20は、ビーム軸14の方向における厚みが異なる吸収体48A〜48Fを有する。これらの吸収体は、個々の吸収体操作装置45に一個ずつ取り付けられる。各吸収体は、炭化水素等の原子番号の小さい物質を含む樹脂で構成される。電磁弁52を有する圧縮空気配管51が、各吸収体操作装置45の圧縮空気シリンダ46にそれぞれ接続される。各圧縮空気配管51は圧縮空気供給装置(図示せず)に接続される。支持枠44は支持部材24上に設置される。
【0016】
なお、散乱体装置19の各散乱体操作装置40及び飛程調整装置20の各吸収体操作装置45は、それぞれリミットスイッチを備える。散乱体操作装置40のリミットスイッチ
【0017】
【表1】


【0018】
は、該当する散乱体が、イオンビームが通過する設定位置に達したことを検出する。吸収体操作装置45のリミットスイッチは、該当する吸収体が、その設定位置に達したことを検出する。上記した散乱体装置及び飛程調整装置として、対向して配置された2枚の楔板を有し、各楔板を移動させて重なり部の厚みを連続的に変化させる装置を用いてもよい。
【0019】
本実施例の粒子線治療装置は、照射制御装置54,駆動制御装置56〜58、及び走査電磁石制御装置36を含む制御システム70を備える。照射制御装置54のメモリ55は
、表1に示す照射条件情報を記憶する。照射条件情報の項目は、患部62の、ビーム軸
14に直角な方向における長さ(照射野サイズ),患部62の深さ方向の位置(飛程),
照射野形成装置15への入射エネルギー(入射Eg),散乱体の厚み(散乱体厚),吸収
体の厚み(吸収体厚),散乱体装置19及び飛程調整装置20の位置(SC+RS位置),
第1走査電磁石17の励磁電流(Wbl1)及び第2走査電磁石18の励磁電流(Wbl2)である。治療計画情報である照射野サイズ,飛程及び入射エネルギーの各情報と、散乱体厚み,吸収体厚み,SC+RS位置,Wbl1及びWbl2との関係は、予め、計算および実験により求めておく。SC+RS位置は、散乱体装置19及び飛程調整装置20に対する第1基準位置を起点とした位置である。治療計画装置53は、治療する患者61に対する治療計画情報(照射野サイズ,イオンビームの入射方向,その入射方向における飛程
,入射エネルギー等)を記憶している。メモリ55は、表2に示すブラッグピーク拡大幅
【0020】
【表2】


【0021】
(SOBP幅)と治療計画情報の1つである、体内への入射エネルギーとの関係で、各
SOBP装置21の位置(SOBP位置)を、照射条件情報として記憶する。各SOBP装置21の位置は、SOBP装置21に対する第2基準位置を起点とした位置である。照射制御装置54、駆動制御装置56〜58、及び走査電磁石制御装置36を個々に設けずに、制御システム70が照射制御装置54、駆動制御装置56〜58及び走査電磁石制御装置36の各機能を発揮するように構成してもよい。
【0022】
SOBP装置21は、表2に示すE150S010及びE150S020等のように複数準備されている。E150S010及びE150S020等はSOBP装置21のNo.(SOBPNo.)である。それらのSOBP装置21は、例えば、楔形部材の高さ,階段部の幅及び高さが異なっている。SOBP装置21は、照射野形成装置15への入射エネルギー及びSOBP幅に応じて選択して支持部材30に予め取り付けられる。SOBP幅はイオンビームの進行方向における患部62の長さに応じて定まる。
【0023】
照射野形成装置15に対する患者61の位置決め前に、照射制御装置54は、治療計画装置53から患者61に対する治療計画情報(照射野サイズ(照射野情報),飛程(飛程
情報),入射エネルギー(ビームエネルギー情報)等)を入力し、メモリ55に記憶させ
る。これらの治療計画情報は、イオンビームの照射条件を現している。照射制御装置54は、治療計画情報に基づいて照射条件情報より必要な散乱体の厚み及び吸収体の厚みを選定する。イオンビームの入射エネルギーが大きくなる程、厚みの厚い散乱体が選定され、要求される飛程が短い程、厚みの厚い吸収体が選定される。また、照射制御装置54は、選定した散乱体及び吸収体の各厚み情報(飛程の情報)を基に(SC+RS位置)も選定する。照射制御装置54は、駆動制御装置56に対して、駆動指令信号と共に散乱体及び吸収体の各選定した厚みの情報を出力する。駆動制御装置56は、その散乱体の厚み情報に基づいて、散乱体(一枚または複数枚)を散乱体装置19の散乱体の中から選定する。例えば、散乱体43B及び43Cのそれぞれの厚みの合計が散乱体厚み情報と一致した場合には散乱体43B及び43Cが選定される。駆動制御装置56は、散乱体43B及び
43Cを操作するそれぞれの散乱体操作装置40に接続された各圧縮空気配管49の電磁弁50を開く。該当する散乱体操作装置40のシリンダ41内に圧縮空気が供給され、散乱体43B及び43Cはピストンロッド42の移動により上記設定位置まで押し出される
。残りの散乱体はイオンビームの通過位置から離れた場所に位置している。また、駆動制御装置56は、選定された吸収体の厚み情報に基づいて、その厚みになる吸収体(一枚または複数枚)を飛程調整装置20内の吸収体の中から選定する。例えば、吸収体48Eの厚みが吸収体厚み情報と一致した場合には吸収体48Eが選定される。駆動制御装置56は、吸収体48Eを操作するそれぞれの吸収体操作装置45に接続された各圧縮空気配管51の電磁弁52を開く。該当する吸収体操作装置45のシリンダ46内に圧縮空気が供給され、吸収体48Eはピストンロッド47の移動により上記設定位置まで押し出される
。残りの吸収体はイオンビームの通過位置から離れた場所に位置している。該当する散乱体及び吸収体が設定位置に達したとき、該当する各リミットスイッチの作動によって発生する各位置信号が駆動制御装置56に伝えられる。駆動制御装置56は、照射制御装置
54に対して散乱体及び吸収体の移動完了情報を出力する。
【0024】
照射制御装置54は、駆動制御装置57に対して、駆動指令信号と共に、(SC+RS
位置)情報、すなわち第1位置情報を出力する。駆動制御装置57は、第1位置情報に基づいて交流サーボモータ25,26を回転させて、支持部材24を所定の位置まで移動させる。これに伴って、散乱体装置19及び飛程調整装置20は第1位置情報に対応した位置まで移動される。駆動制御装置57は、支持部材24がその位置に達したことを、エンコーダ29の検出信号で確認する。照射制御装置54は、必要なSOBP幅が10mmであるため、駆動制御装置58に対して、駆動指令信号を出力しない。SOBP幅を30mmにしなければならない患者61を治療する場合には、照射制御装置54は、駆動制御装置
58に対して、駆動指令信号と共に、SOBP装置21の位置情報、すなわち第2位置情報を出力する。駆動制御装置58は、第2位置情報に基づいて交流サーボモータ31を回転させて、支持部材30を所定の位置まで移動させる。SOBP装置21は第2位置情報に対応した所定の位置まで移動する。駆動制御装置58は、支持部材30がその位置に達したことを、エンコーダ33の検出信号で確認する。
【0025】
照射制御装置54は、メモリ55から患者61に対する照射野サイズ及び入射エネルギーの各情報を取り込み、これらの情報を用いて上記の照射条件情報より第1走査電磁石
17及び第2走査電磁石18のそれぞれの励磁電流を選択する。選択された各励磁電流の情報(例えば、図13(B)に示す各走査電磁石に対する励磁電流の情報)は、走査電磁石制御装置36に伝えられる。走査電磁石制御装置36は、それらの励磁電流情報に基づいて第1走査電磁石17及び第2走査電磁石18にそれぞれ供給する励磁電流を制御し、イオンビームを、ビーム軸14に直交する平面内で円を描くように回転させる。この円をウォブラ円という。具体的には、第1走査電磁石17の走査によりイオンビームを上記円内でX方向に移動させ、第2走査電磁石18の走査によりイオンビームを上記円内でX軸と直交するY軸方向に移動させる。そのような第1走査電磁石17及び第2走査電磁石
18の協調したイオンビーム走査によって、イオンビームは上記平面内で円を描くように移動する。このようなイオンビームの走査は、照射野形成装置15からイオンビームを出射するときに行われる。ウォブラ円の大きさはイオンビームの進行方向に垂直な方向における患部62の大きさに対して定まる。
【0026】
選定された散乱体及び吸収体がイオンビーム通過位置に設定され、散乱体装置19,飛程調整装置20及びSOBP装置21が所定の位置まで移動された後に、イオンビームの調整等の治療前の準備が行われる。更に、患者61用のボーラス22がボーラス保持部
35に設置され、コリメータ23がボーラス保持部35の下方でケーシング16に設置される。これらの準備が完了した後、治療台59を移動して患者61の患部62を照射野形成装置15のビーム軸14と一致させ、治療開始となる。オペレータは、操作盤(図示せず)から治療開始信号を入力する。その治療開始信号を取り込んだ加速器制御装置(図示せず)の作用によって、イオンビームがシンクロトロン4から出射される。このイオンビームは、前述したように、照射野形成装置15に達する。照射制御装置54は、入力した上記の治療開始信号に基づいて、イオンビーム走査開始信号、上記した各励磁電流情報を走査電磁石制御装置36に出力する。走査電磁石制御装置36は、励磁電流を制御して前述したようにイオンビームを走査する。
【0027】
走査されたイオンビームは散乱体43B,43Cを通過する。イオンビームは、各散乱体によって散乱され、イオンビームの進行方向に対して円錐状に拡大される。そして、イオンビームは、吸収体48Eを通過する。吸収体は、イオンビームのエネルギーを減少させることによって、イオンビームの体内における飛程を調整する。更に、イオンビームは
、SOBP装置21を通過する。SOBP装置21は、楔形部材においてイオンビーム進行方向における厚みが異なっている。このように厚みの異なった部分が存在するため、散乱体で拡大されて各走査電磁石によって走査されたイオンビームのエネルギーの減衰度合いはSOBP装置21の通過する部分で異なる。SOBP装置21を通過してエネルギーが異なった各イオンビームは、体内の異なる位置でそれぞれブラッグピークを形成する。このため、ビーム軸14の方向における放射線量の分布がより平坦化される。
【0028】
SOBP装置21を通過したイオンビームは、ボーラス22を通過する。イオンビームの飛程は、ボーラス22によって、イオンビームの進行方向における患部62の形状に合せて調整される。ボーラス22を通過し、患部62をビーム軸14方向に投影した形状の外側に位置するイオンビームは、コリメータ23によって除外される。すなわち、コリメータ23はその形状の内側に位置するイオンビームを通過させる。コリメータ23を通過したイオンビームが患部62に照射される。
【0029】
本実施例では、イオンビーム進行方向における、患部62の下流側端の位置でのウォブラ円(照射目標下流側ウォブラ円)、及びイオンビーム進行方向における、患部62の上
流側端の位置でのウォブラ円(照射目標上流側ウォブラ円)のそれぞれの大きさ(図5)は、単純に同じ走査電磁石17,18の走査焦点位置からの距離によって定義される。これに対して、その下流側端でのイオンビームのサイズ及び量はSOBP装置21の厚みの薄い部分を通過したイオンビームのサイズ及び量であり、その上流側端でのそのサイズはSOBP装置21の厚みの薄い部分及び厚い部分を通過したイオンビームを重ね合わせたイオンビームのサイズ及び量となる。その上流側端でのウォブラ円とイオンビームサイズとの比、及びその下流側端でのウォブラ円とイオンビームサイズとの比を、それぞれ適切な比となるように、散乱体,吸収体、及びSOBP装置21を、それぞれ該当する位置に移動,設定することにより、患部に対する放射線量分布の一様性の高い照射を、照射線量率が高い状態のまま行うことができる。照射目標は、患部62の形状によって定まり、多少マージンをとり患部よりも大きくする場合もある。
【0030】
本実施例は、イオンビームの通過位置に位置する散乱体(例えば散乱体43B,43C)をイオンビームの進行方向に移動させるため、患部62の位置におけるイオンビームの散乱サイズ(イオンビームの進行方向に直交する方向においてイオンビームの拡大されたサイズ)を変化させることができる。すなわち、散乱体を患部62に近づけることによって散乱サイズが小さくなり、逆に遠ざけることによって散乱サイズが大きくなる。イオンビームの進行方向における散乱体の移動は、体内におけるイオンビームの飛程を変えないでイオンビームの散乱サイズを、イオンビームの進行方向における放射線量分布が平坦化された最適な散乱サイズに調整することができ、患部62における照射された放射線量の分布を調整できる。具体的には、イオンビームの散乱サイズが最適散乱サイズより小さい場合には散乱体を患部62から遠ざけ、逆に最適散乱サイズよりも大きい場合には散乱体を患部62に近づける。
【0031】
また、イオンビーム通過領域内での吸収体の厚みが増す程、イオンビームの散乱サイズが最適散乱サイズよりも大きくなり、患部62の放射線量分布が悪くなる。しかしながら
、本実施例は、選定された吸収体をイオンビームの進行方向に移動させるため、吸収体を選定してイオンビームの飛程を調整した際におけるイオンビームの散乱サイズの変化によって生じる、患部62の放射線量分布の悪化を抑制でき、最適散乱サイズの放射線量分布が得られる。吸収体のその移動は、イオンビームの飛程を変えないで、吸収体に起因した患部62の放射線量分布の変化を調整できる。選定された吸収体の厚みが増す程、吸収体はイオンビームの進行方向で下流側に更に移動される。
【0032】
SOBP幅の異なる複数のSOBP装置21が用意されており、前述のように1つの
SOBP装置21が選択して設置される。各SOBP装置21は達成できるSOBP幅に応じてイオンビームの散乱サイズが異なる。散乱サイズの大きなSOBP装置21程、上記下流側に移動される。この移動によって、イオンビームの散乱サイズは最適散乱サイズに調整され、イオンビームの進行方向と直行する方向での患部62の放射線量分布は平坦化される。
【0033】
本実施例は、前述したように、散乱体装置19,飛程調整装置20及びSOBP装置
21をイオンビーム進行方向に移動できるため、患部62内の放射線量分布(イオンビームの進行方向、及びこれと直行する方向における放射線量分布)を一様にすることができる。また、イオンビームの利用効率が高まるので、照射線量率も増大する。
【0034】
本実施例では、散乱体装置19が飛程調整装置20に設置されているため、これらの装置を一緒に同じ駆動装置である交流サーボモータ25,26によって移動できる。このため、本実施例は、散乱体装置19と飛程調整装置20を別々の駆動装置で移動させる場合に比べて構成が簡単になる。本実施例では、散乱体装置19と飛程調整装置20が一体化されて吸収体が散乱体に近接しているため、吸収体に入射されるイオンビームのサイズが小さくなり、ビーム軸14に直行する面内での各吸収体の長さ及び幅を小さくできる。これは、飛程調整装置20が小型化される。吸収体の挿入量に応じて吸収体による散乱の影響がでるが、本実施例は、吸収体及び散乱体を一緒にイオンビームの進行方向に移動させるため、その進行方向における吸収体の移動量を少なくでき、患部62から吸収体までの距離をより長くすることができる。この距離の増大、及び散乱体と吸収体とが近接しているため、患部62外への放射線量分布のにじみ(半影)が小さくなる。なお、本実施例では吸収体と散乱体のビーム軸14に沿っての移動量は同じである。一体化された散乱体装置19及び飛程調整装置20がビーム軸14に沿って移動されるので、吸収体の選定によって定まるイオンビームの飛程に拘らず、患部62の放射線量分布の変化が小さくできる
。更に、本実施例は、飛程調整装置20と散乱体装置19とが一体化されているので、選定された吸収体が散乱体の近くに位置し、その吸収体に入射するイオンビームのサイズが小さくなる。従って、各吸収体を小さくでき照射野形成装置15を小型化できる。
【0035】
本実施例は、制御システム70、特に、照射制御装置54及び駆動制御装置56の機能により、第1散乱体装置19の散乱体をイオンビームの進行方向に移動させて設定された位置に容易に位置させることができる。特に、照射制御装置70が、患者61の治療計画情報、具体的には飛程(飛程情報)を用いて、第1散乱体装置19の散乱体を上記設定位置に位置させることができる。
【0036】
本実施例は、体内の深さ方向において、イオンビームの照射に基づいた照射目標内の放射線量分布が、図6(B)に示すように、一様になる。図6(B)の放射線量分布は本実施例のように飛程調整装置20を移動させることによって得られる。散乱体装置19,飛程調整装置20及びSOBP装置21を移動しない従来例では、その照射目標内での放射線量分布は、図6(A)に示すように、体内の深さ方向において変化する。本実施例では
、そのような放射線量分布の変化を著しく抑制できる。なお、図6(A),(B)は同じ
エネルギーのイオンビームを照射した場合の例である。
【0037】
図7(A)は、従来例での照射目標における放射線量分布の一様性を示している。従来例では、照射目標の深さ方向の長さが変わっても放射線量分布は一様である。本実施例では、図7(B)に示すように、照射目標の深さ方向における長さが短い場合にはその長さが長い場合よりも放射線量の一様性がより向上する。図7(B)の特性は本実施例のようにSOBP装置21を移動させることによって得られる。
【0038】
本実施例では、一体化された散乱体装置19及び飛程調整装置20と、SOBP装置
21との両方をビーム軸14方向に沿って移動させているが、散乱体装置19,飛程調整装置20、及びSOBP装置21のうちの1つをを移動できる構成にしてもよい。この場合には、散乱体装置19及び飛程調整装置20が分離され、それぞれの装置に対して該当する装置をイオンビームの進行方向に移動させる駆動装置(ボールネジ及び交流サーボモータ)が設けられる。また、SOBP装置21が移動でき散乱体装置19及び飛程調整装置20を移動できない構造とした場合には、吸収体に対応して生じる患部62における放射線量分布の変化の調整ができなくなるが、患部62の放射線量分布は従来例に比べてより均一化される。更には、散乱体装置19,飛程調整装置20及びSOBP装置21のうちのいずれか2つの装置を、イオンビームの進行方向に移動させてもよい。
【0039】
また、実施例1において、一体化された散乱体装置19及び飛程調整装置20を第1走査電磁石17の上流側に位置させてもよい。散乱体装置19が第1走査電磁石17の上流側に位置するため、散乱体装置19によってイオンビームを散乱させる度合いを小さくできる。このため、散乱体装置19の散乱体の厚みを薄くでき、散乱体装置19をコンパクト化できる。本実施例は、飛程調整装置20が第1走査電磁石17の上流側に位置するため、それがその下流側に位置する場合に比べて有効線源距離を更に長くでき、有効線源サイズを更に小さくできる。このため、半影が更に小さくなる。また、飛程調整装置20を上流側に位置させることによって、吸収体量が多く(吸収体の厚みが厚く)なればイオンビームの散乱が大きくなり、また、イオンビームのエネルギーが減少するので、大きなウォブラ円を得ることができる。これによって、患部62におけるイオンビームの散乱サイズとウォブラ円の大きさの比の選択の自由度が増大する。
【0040】
本実施例は飛程調整装置20を備えているが、飛程調整装置20を設けないでシンクロトロン4において加速時にイオンビームに与えるエネルギーを調節し、患者61の体内でのイオンビームの飛程を調節することも可能である。更には、ボーラス22の底部の厚みを所定の厚みに事前に設定することによっても、希望する飛程を得ることができる。
【0041】
(実施例2)
本発明の他の実施例である実施例2の粒子線治療装置を、以下に説明する。本実施例の粒子線治療装置は、図1に示す粒子線治療装置1において照射野形成装置15を図8に示す照射野形成装置15Aに替えた構成を有する。照射野形成装置15Aは、SOBP装置21及びこれに付随する構成の位置が照射野形成装置15と異なっているだけである。照射野形成装置15Aは、図8に示すように、SOBP装置21を第1走査電磁石17の上流側に配置した構成を有する。支持部材30,交流サーボモータ31,ボールネジ32,エンコーダ33及びリニアガイド34も、第1走査電磁石17よりも上流側に位置しており、ケーシング16内に設置されている。SOBP装置としては、回転ホイール型のSOBPフィルタを用いてもよい。
【0042】
SOBP装置21の、イオンビーム進行方向における厚みの薄い部分を通過したイオンビームは、エネルギーが高いため、第1及び第2走査電磁石による走査量が小さくなる。しかしながら、SOBP装置21の、イオンビーム進行方向における厚みの厚い部分を通過したイオンビームについては、エネルギーが低いため、第1及び第2走査電磁石によって走査された場合の走査量が前述の厚みの薄い部分を通過したイオンビームのそれよりも大きくなる。このため、第1及び第2走査電磁石による走査後における、上記の厚みの厚い部分を通過したイオンビームの広がり角度は、図9に示すように、それらによる走査後における、上記の厚みの薄い部分を通過したイオンビームのその角度よりも大きくなる。照射目標上流側ウォブラ円は上記の厚みの厚い部分を通過したイオンビームによって形成され、照射目標下流側ウォブラ円は上記の厚みの薄い部分を通過したイオンビームによって形成される。従って、第1及び第2走査電磁石によって走査されたイオンビームが体内において飛程の浅い領域に描く各エネルギー成分によって重ね合される円と各エネルギー成分のイオンビームによって重ね合されたイオンビームサイズとの比、及び飛程の深い領域に描かれるイオンビームが描く円と各エネルギー成分のイオンビームによって重ね合されたイオンビームサイズとの比が、それぞれ最適な値となるような位置に、SOBP装置21が移動されて設定される。これによって、図10(B)に示すように、照射目標のビーム軸14(中心軸)上での相対放射線量分布が体内の深さ方向で一様になると共に、照射目標の外周部での相対放射線量分布がその深さ方向でより一様化される。また、図10(B)に示される本実施例における照射目標の外周部での相対放射線量分布は、SOBP装置21が第2走査電磁石18の下流側に配置された実施例1におけるその外周部での相対放射線量分布(図10(A))よりも一様化される。すなわち、実施例1は、照射目標
の深い位置と浅い位置におけるビーム軸14の直行する方向での放射線量分布のバランスを取ることにより、放射線量分布をより平坦にしようとしている。これに対して、本実施例は、深い位置と浅い位置におけるそれらの放射線量分布の格差自体を取り除いている。
【0043】
本実施例は、実施例1で生じる効果を得ることができる。更に、本実施例は、SOBP装置21を第1走査電磁石17よりも上流側に配置しているため、イオンビームのサイズは小さく、SOBP装置21のサイズを小さくできる。
【0044】
実施例2において、散乱体装置19,飛程調整装置20及びSOBP装置21のうちの1つ、またはそれらの装置のうちのいずれか2つをイオンビームの進行方向に移動できる構成にしてもよい。
【0045】
実施例2において、一体化された散乱体装置19及び飛程調整装置20を、それらをビーム軸14に沿って移動させる駆動装置と共に、SOBP装置21よりも上流側に配置することも可能である。これによって、前述したように飛程調整装置20をコンパクト化できる。
【0046】
(実施例3)
以上述べた各実施例はウォブラ方式の照射野形成装置を適用した粒子線治療装置であるが、散乱体方式の照射野形成装置を適用した粒子線治療装置の実施例を以下に説明する。本発明の他の実施例である実施例3の粒子線治療装置は、図1に示す粒子線治療装置1において照射野形成装置15を図11に示す散乱体方式の第1照射野形成装置である照射野形成装置15Bに替えた構成を有する。本実施例の粒子線治療装置は、駆動制御装置58を備えていない。照射野形成装置15Bは、回転照射装置13に取り付けられるケーシング16内に、イオンビーム進行方向の上流側より順次、散乱体装置19(第1散乱体),
散乱体装置63(第2散乱体),SOBP装置21及び飛程調整装置20を配置する。ケ
ーシング16は飛程調整装置20の下流側にボーラス保持部を有する。
【0047】
散乱体装置19は支持部材67に取り付けられる。支持部材67はネジ孔を通るボールネジ66と噛合っている。ボールネジ66の上端部は回転可能にケーシング16に取り付けられる。ボールネジ66の下端部は、ケーシング16に取り付けられる交流サーボモータ65の回転軸に連結される。エンコーダ29Aは交流サーボモータ65の回転軸に連結される。散乱体装置63は支持部材64によってケーシング16に取り付けられる。SOBP装置21は支持部材によってケーシング16に取り付けられる。更に、飛程調整装置20は支持部材68によってケーシング16に取り付けられる。本実施例では、散乱体装置
63,SOBP装置21及び飛程調整装置20はビーム軸14に沿って移動できない。
【0048】
散乱体装置63は、イオンビームの散乱度合いがイオンビームの入射する部分によって異なるように構成されている。散乱体装置63は、例えば、散乱度合いが異なる複数の材料で構成された二重リングの散乱体を有する。散乱体装置63は、イオンビームの線量分布を調整する装置である。すなわち、散乱体装置63は、内側と外側の構造が異なっており、主として、内側と外側で散乱強度を変えることにより、内側を通過したイオンビームと外側を通過したイオンビームが重ね合わされた部分での放射線量分布が均一になるように調整する装置である。散乱体装置63に用いる散乱体の他の例としては、段階的に材料の割合を変えるコンタード照射用の構造等がある。
【0049】
実施例1と同様に、照射制御装置54は、メモリ55に記憶されている被検者の治療計画情報を基に、メモリ55に記憶されている照射条件情報より散乱体及び吸収体の各厚みを選定する。メモリ55は表1に示す照射条件情報であって(SC+RS位置)の情報をSC位置の情報、すなわち散乱体装置19の位置情報に替えた照射条件情報を記憶している。SC位置は散乱体装置19に対する第1基準位置を基準とした位置である。駆動制御装置56は、選定された散乱体の厚み情報に基づいて、散乱体装置19内で必要とする散乱体を選定し、選定された散乱体をイオンビームの通過位置まで移動させる制御を行う。また、駆動制御装置56は、選定された吸収体の厚み情報に基づいて、飛程調整装置20内で必要とする吸収体を選定し、選定された吸収体をイオンビームの通過位置まで移動させる制御を行う。ボーラス22がボーラス保持部35に設置され、コリメータ23もケーシング16の下端部に設置される。
【0050】
照射制御装置54は、駆動制御装置57に対し、駆動指令と共に、第1位置情報であるSC位置情報を出力する。駆動制御装置57はそのSC位置情報を基に交流サーボモータ65を回転させて支持部材67をビーム軸14に沿って所定の位置まで移動させる。駆動制御装置57は、ビーム軸14と直交する方向での患部62のサイズに応じて散乱体装置19をビーム軸14の方向に移動させるために交流サーボモータ65の駆動を制御する。
【0051】
回転照射装置10から照射野形成装置15Cに入射されたイオンビームは、散乱体装置19の選定された散乱体によって散乱されてイオンビーム進行方向に円錐状に拡大され、散乱体装置63に入射される。イオンビームは、散乱体装置63の二重リング構造の散乱体によって散乱され、ビーム軸14に垂直な平面内での放射線量分布が調整される。その後、イオンビームは、ブラックピーク拡大装置21,飛程調整装置20,ボーラス22及びコリメータ23を順次通過して患部62に照射される。ブラックピーク拡大装置21及び飛程調整装置20は、実施例1と同様に機能する。
【0052】
本実施例は、散乱体をイオンビーム進行方向に移動させるため、従来例に比べて、患部62内の放射線量分布をより均一化できる。また、イオンビームの利用効率が向上し、照射線量率を増大できる。散乱体装置63をビーム軸14に沿って移動させる場合は、(1)散乱体装置63の中心とビーム軸14の同心度は、放射線量分布に大きな影響を及ぼすため、ビーム軸14の方向への移動の直進性に対して高精度が要求される、及び(2)散乱体装置63は散乱体装置19に比べて大型であり重いため、駆動用の交流サーボモータの容量が大きくなる、という問題を生じる。散乱体装置63を固定し散乱体装置19をその軸に沿って移動させる本実施例はそれらの問題を解消できる。
【0053】
本実施例は、散乱体装置19を治療計画情報に基づいて定まる所定の位置に位置させることができるため、実施例1と同様に患者の照射目標内におけるイオンビームの進行方向
、及びこれと直行する方向における線量分布をより均一化できる。具体的には、本実施例は、図14(C)に示すように、イオンビームの進行方向と直交する方向における線量分布をより均一化できる。このため、患者の照射目標内におけるイオンビームの進行方向、及びこれと直行する方向における線量分布をより均一化できる。ちなみに、図14(A)は、散乱体装置19,散乱体装置63,SOBP装置21及び飛程調整装置20がイオンビームの軸方向に移動できない照射野形成装置(従来の照射野形成装置)を用いた場合における線量分布である。イオンビームの進行方向と直行する方向における線量分布が不均一になっている。このため、従来の照射野形成装置を用いた場合は、高照射線量率(2Gy/min )でのイオンビームの照射はできず、図14(B)に示すように照射線量率を低くして(1.5Gy/minにして)、イオンビームの照射を行う。本実施例は、2Gy/min という高照射線量率でイオンビームの照射ができるため、患者1人当りの治療時間を短縮することができる。これは、年間における治療人数の増加につながる。また、本実施例は、前述したように高照射線量率でイオンビームの照射ができるため、照射線量率を低くした図14(B)の場合に比べて、半影を低減できる。半影の低減は、正常な細胞へのイオンビームの照射を低減することにつながり、正常な細胞への副作用が低減できる。これらの効果は、前述した各実施例及び後述の各実施例においても、得ることができる。
【0054】
本実施例における照射目標内の線量分布の均一化について、具体的に説明する。散乱体装置19をイオンビームの進行方向に移動させることによってイオンビームにおける線量分布が平坦になっている部分(例えば、イオンビームの中心部)をコリメータ23の開口部(イオンビームが通過する部分)の全体にわたって入射させることができる。コリメータ23の開口部を通過したイオンビームが患者の照射目標に照射されるため、照射目標のイオンビームの進行方向及びこれと直交する方向における線量分布がより平坦化される。散乱体装置19をイオンビームの進行方向に移動させることによって、イオンビームのエネルギーを変えずに線量分布を偏向することが可能であり、しかも線量分布を連続的に調節することができる。更に、散乱体装置19のイオンビームの進行方向への移動は、SOBP装置及び飛程調整装置がイオンビームの進行方向に移動できない状態であっても、SOBP装置21をイオンビーム通過部の厚みの違う別のSOBP装置に変更した場合、または飛程調整装置20において厚みの違う吸収体に変更した場合におけるそれらの変更によるイオンビームの散乱の影響を、ほぼ完全に補償することができ、照射目標の線量分布をより均一化できる。後述の実施例4のように飛程調整装置20をイオンビームの進行方向に移動させる場合、及び後述の実施例5のようにSOBP装置21を移動させる場合は、吸収体の厚みの変更及びイオンビーム通過部の厚みの違うSOBP装置への変更によるイオンビームの散乱の影響を、散乱体装置19の移動ほど補償することはできない。
【0055】
散乱体装置19は、元々、イオンビームを、ビーム軸14と直交する方向に広げる機能を有しており、飛程調整装置20及びSOBP装置21に比べて線量分布の変更に大きく影響する。このため、散乱体装置19をビーム軸14に沿って移動させた場合における照射目標の線量分布への影響の度合いも、飛程調整装置20及びSOBP装置21のいずれかをビーム軸14に沿って移動させた場合におけるその影響の度合いよりも大きくなる。照射目標の線量分布を同じ程度に調整する場合、散乱体装置19のビーム軸14に沿った移動距離が飛程調整装置20またはSOBP装置21のその移動距離短くなる。このため
、散乱体装置19を移動させると、照射野形成装置のビーム軸14の方向の長さを短くでき、照射野形成装置を小型化できる。
【0056】
以上述べた散乱体装置19をイオンビームの進行方向で移動させることによって得る効果は、本出願の他の実施例において散乱体装置19をイオンビームの進行方向に移動させる場合にも生じる。
【0057】
本実施例において、散乱体装置19,SOBP装置21及び飛程調整装置20のうちのいずれか2つ、またはそれらの装置の全てをイオンビームの進行方向に沿って移動させてもよい。
【0058】
(実施例4)
本発明の他の実施例である実施例4の粒子線治療装置は、実施例3において照射野形成装置15Bを散乱体方式の第2照射野形成装置に替えた構成を有する。本実施例の粒子線治療装置は、駆動制御装置58を備えていない。第2照射野形成装置は、照射野形成装置15Bとは、散乱体装置19を支持部材67によってケーシング16に移動しないように設置し、飛程調整装置20をビーム軸14の方向に移動できるようにケーシング16に設置した点で異なっている。飛程調整装置20をビーム軸14の方向に移動させる駆動装置は、照射野形成装置15Bにおいて散乱体装置19をその方向に移動させる駆動装置(交流サーボモータ65及びボールネジ66)と同じ構成を有し、ケーシング16に取り付けられる。
【0059】
実施例3と同様に、照射制御装置54は、散乱体及び吸収体の各厚みを選定する。また
、メモリ55は、表1に示す照射条件情報であって(SC+RS位置)の情報をRS位置の情報、すなわち飛程調整装置20の位置情報に替えた照射条件情報を記憶する。RS位置は飛程調整装置20に対する第1基準位置を基準とした位置である。駆動制御装置56は、実施例3と同様に、必要とする散乱体及び吸収体を選定し、選定された散乱体及び吸収体をイオンビームの通過位置まで移動させる制御を行う。ボーラス22及びコリメータ23もケーシング16に設置される。
【0060】
照射制御装置54は、駆動制御装置57に対し、駆動指令と共に、第1位置情報であるRS位置情報を出力する。駆動制御装置57はそのRS位置情報を基に交流サーボモータを回転させて支持部材68をビーム軸14に沿って所定の位置まで移動させる。回転照射装置10から第2照射野形成装置に入射されたイオンビームは、散乱体装置19の選定された散乱体,散乱体装置63,ブラックピーク拡大装置21,飛程調整装置20,ボーラス22及びコリメータ23を順次通過して患部62に照射される。
【0061】
本実施例は、吸収体をイオンビーム進行方向に移動させるため、実施例1で述べたように、選定した吸収体に起因するイオンビームの散乱の変化によって生じる、患部62内の放射線量分布を従来例よりも均一化できる。また、イオンビームの利用効率が向上し、照射線量率を増大できる。
【0062】
(実施例5)
本発明の他の実施例である実施例5の粒子線治療装置は、実施例3において照射野形成装置15Bを散乱体方式の第3照射野形成装置に替えた構成を有する。本実施例の粒子線治療装置は、駆動制御装置57を備えていない。第3照射野形成装置は、照射野形成装置15Bとは、散乱体装置19を支持部材67によってケーシング16に移動しないように設置し、SOBP装置21をビーム軸14の方向に移動できるようにケーシング16に設置した点で異なっている。SOBP装置21をビーム軸14の方向に移動可能にした構成は、実施例1と同じである。
【0063】
実施例3と同様に、照射制御装置54は、散乱体及び吸収体の各厚みを選定する。また
、メモリ55は、表1に示す照射条件情報であって(SC+RS位置)以外の情報を照射条件情報を記憶し、更に表2に示す照射条件情報も記憶する。駆動制御装置56は、実施例3と同様に、必要とする散乱体及び吸収体を選定し、選定された散乱体及び吸収体をイオンビームの通過位置まで移動させる制御を行う。ボーラス22及びコリメータ23もケーシング16に設置される。
【0064】
照射制御装置54は、駆動制御装置58に対し、駆動指令と共に、第2位置情報であるSOBP装置21の位置情報を出力する。駆動制御装置58は第2位置情報を基に交流サーボモータを回転させて支持部材30をビーム軸14に沿って所定の位置まで移動させる
。回転照射装置10から第3照射野形成装置に入射されたイオンビームは、実施例4と同様に患部62に照射される。
【0065】
本実施例は、SOBP装置21をイオンビーム進行方向に移動させるため、実施例1で述べたように、設置されたSOBP装置21に対応して生じる患部62の放射線量分布の変化を調整でき、患部62内の放射線量分布を従来例よりも均一化できる。また、イオンビームの利用効率が向上し、照射線量率を増大できる。SOBP装置はイオンビームの進行方向における厚み(イオンビーム通過部の厚み)が厚いほど、ビーム軸14と直交する方向におけるイオンビームの広がりが大きくなる。このSOBP装置によるイオンビームの散乱の影響を補償するため、SOBP装置をイオンビームの進行方向に移動させ、照射目標の線量分布を従来よりも均一化することができる。
【0066】
実施例3〜5は、実施例1で移動する散乱体装置19,飛程調整装置20及びSOBP装置21のうちの1つを移動しているため、実施例1に比べて患部62内の放射線量分布の均一化の調整能力は劣るが、従来例に比べてその放射線量分布がより均一化される。
【0067】
実施例3において、移動可能に構成された散乱体装置19以外で、飛程調整装置20及びSOBP装置21の少なくとも1つを移動可能に構成することも可能である。すなわち
、飛程調整装置20をビーム軸14に沿って移動可能にするためには、飛程調整装置20の駆動装置をケーシング16に設置すればよい。また、SOBP装置21をビーム軸14に沿って移動可能にするためには、SOBP装置21の駆動装置を図2に示すようにケーシング16に設置すればよい。例えば、散乱体装置19と共に、飛程調整装置20及び
SOBP装置21を移動可能にすることによって、患部62内の放射線量分布の一様化は実施例3よりも向上して実施例1と同等になる。また、実施例4において、移動可能に構成された飛程調整装置20と共に、SOBP装置21を移動可能に構成することも可能である。この場合は、上記したSOBP装置21の駆動装置をケーシング16に設置すればよい。
【0068】
(実施例6)
本発明の他の実施例である実施例6の粒子線治療装置は、実施例1において照射野形成装置15を図12に示す照射野形成装置15Eに替えた構成を有する。照射野形成装置
15Eは、照射野形成装置15Bとは、実施例1と同様に一体化した散乱体装置19及び飛程調整装置20を第2散乱体である散乱体装置63よりも上流側に配置し、更に散乱体装置19,飛程調整装置20及びSOBP装置21をビーム軸14に沿って移動可能に構成した点で異なっている。一体化された散乱体装置19と飛程調整装置20をビーム軸
14に沿って移動させる駆動装置は、図1に示すその駆動装置と同じ構成である。SOBP装置21ビーム軸14に沿って移動させる駆動装置は、図1に示すその駆動装置と同じ構成である。
【0069】
本実施例における照射制御装置54、及び駆動制御装置56,57,58は実施例1と同様に機能する。照射野形成装置15Eに入射されたイオンビームは内部の各装置を通過して患部62に照射される。
【0070】
本実施例は、散乱体装置19,飛程調整装置20及びSOBP装置21をビーム軸14に沿って移動させるため、実施例1と同様に患部62の放射線量分布を一様にできる。本実施例は、一体化された散乱体装置19と飛程調整装置20を散乱体装置63の上流側に配置しているため、選定される吸収体によって飛程の調整量が大きくなった場合でも、有効線源距離を長くできかつ有効線源サイズを小さくできる。このため、患部外への放射線量分布のにじみ(半影)を小さく抑えることができる。加えて、飛程調整装置20に入射するイオンビームのビームサイズが小さくなるので飛程調整装置20を小型化できる。
【0071】
飛程調整装置20を第2散乱体である散乱体装置63の上流に配置することは、飛程調整に伴う放射線量分布の変化量が大きくなることにつながる。しかし、本実施例は、散乱体装置19及び飛程調整装置20をビーム軸14の方向に移動できるため、その放射線量分布の変化量を補正する調整が可能である。なお、散乱体装置19と飛程調整装置20が一体化されているため、それらのビーム軸14の方向への移動量を小さくできる。また、飛程調整装置20でのイオンビームのエネルギー損失量が大きくなる場合(厚みの厚い吸収体が選定された場合)には散乱体装置63でのイオンビームの散乱量も大きくなる。このため、散乱体装置19及び飛程調整装置20の移動によって、吸収体によるイオンビームの飛程の調整量に拘わらず、患部62内の放射線量分布の変化を小さくできる。
【0072】
本実施例において、一体化された散乱体装置19及び飛程調整装置20と、SOBP装置21とのいずれかをビーム軸14に沿って移動しない構造にすることも可能である。一体化された散乱体装置19及び飛程調整装置20が移動しない構造では、イオンビームの通過領域に吸収体を挿入することにより、散乱体装置63の外側領域へのイオンビームの入射量が多くなる。しかしながら、吸収体挿入によりエネルギーが減少している分、散乱体装置63の位置でのイオンビームの散乱が、吸収体を挿入しない場合よりも大きくなる

【0073】
ウォブラ方式の照射野形成装置の他の実施例を説明する。本実施例における照射野形成装置(A型照射野形成装置という)は、照射野形成装置15B(図11)において散乱体装置63を図2に示す第1走査電磁石17及び第2走査電磁石18に替えた構成を有する。第1走査電磁石17の上流側に位置する散乱体装置19はビーム軸14の方向に移動可能である。飛程調整装置20及びSOBP装置21はビーム軸14の方向に移動しない。本実施例の照射野形成装置において、飛程調整装置20及びSOBP装置21の少なくとも1つを更にビーム軸14の方向に移動させてもよい。これらの照射野形成装置を用いても
、患部62の放射線量分布が従来に比べて均一化される。
【0074】
ウォブラ方式の照射野形成装置の更に他の実施例を説明する。本実施例における照射野形成装置(B型照射野形成装置という)は、A型照射野形成装置において、散乱体装置
19を第2走査電磁石18の下流側でSOBP装置21の上流側に配置した構成を有する
。本実施例では、散乱体装置19,飛程調整装置20及びSOBP装置21のうち散乱体装置19がビーム軸14の方向に移動できる。B型照射野形成装置において、飛程調整装置20及びSOBP装置21の少なくとも1つを更にビーム軸14の方向に移動させてもよい。これらの照射野形成装置を用いても、患部62の放射線量分布が従来に比べて均一化される。
【0075】
(実施例7)
スキャニング方式の照射野形成装置を適用した本発明の他の実施例である実施例7の粒子線治療装置を、以下に説明する。本実施例の粒子線治療装置は、図1に示す粒子線治療装置とは、走査電磁石制御装置36によって行われる第1走査電磁石17及び第2走査電磁石18のイオンビーム走査の制御が異なっている。
【0076】
本実施例におけるイオンビームのスキャニングについて具体的に説明する。照射制御装置54は、患者61に対するスキャニングにおけるイオンビームの走査条件情報(例えば
、図13(A)に示す励磁電流パターン等)をメモリ55から取り込んで走査電磁石制御装置36に出力する。イオンビームの走査条件情報は、患者61に対する治療計画時において作成される。走査電磁石制御装置36は、その励磁電流パターン情報を基に第1走査電磁石17及び第2走査電磁石18にそれぞれ供給される各励磁電流を制御する。第1走査電磁石17及び第2走査電磁石18によって走査されたイオンビームは、散乱体装置
19,飛程調整装置20,SOBP装置21,ボーラス22及びコリメータに3を通過して患部62に照射される。ちなみに、ウォブラ方式でのイオンビームの走査は、実施例1で述べたように、図13(B)に示す各走査電磁石に対する励磁電流パターンに基づいて行われる。
【0077】
スキャニング方式は、患部62を複数の領域に分割して分割された領域(例えば、体内の深さ方向において患部62を複数の領域に分割する)内でイオンビームをスキャンしながら照射する方式である。このようなスキャニング方式は、患部62の形状に合せてイオンビームを照射することができ、患部62の周囲に位置する健全な細胞へのイオンビームの照射を避けることができる。上記の図13(A)の励磁電流パターンのように各励磁電流を制御することによって、イオンビームは上記の分割された領域内を蛇行しながら一定方向に進行する。このようなイオンビームの走査によって、1つの分割領域に対するイオンビームの照射が完了する。体表面からの深さが異なる他の分割領域へのイオンビームの移動は、イオンビームのエネルギーを変えることによって行う。
【0078】
従来のスキャニング用の照射野形成装置を用いた場合には、イオンビームのスキャニングにおいて、分割領域内でのイオンビームの進行方向の長さ、または体内の深さ方向で異なる位置に応じてイオンビームのサイズが異なるという問題が生じる。しかしながら、本実施例では、散乱体装置19をビーム軸14の方向に移動させるのでイオンビームのサイズを調整でき、飛程調整装置20もその方向に移動させるので選定された吸収体により飛程を調整した際におけるイオンビームの散乱の変化、すなわちイオンビームサイズの変化を調整でき、更に、SOBP装置21を移動させるので選定されたSOBP装置21によって生じるイオンビームサイズの変化を調整できる。このように、本実施例は、イオンビームサイズを調整できるため、上記した分割領域内でのイオンビームの進行方向の長さ、または体内の深さ方向で異なる位置に応じてイオンビームのサイズが異なるという問題を解消できる。本実施例は、散乱体装置19,飛程調整装置20及びSOBP装置21をビーム軸14に沿って移動させることにより、イオンビームのサイズを簡単に調整できる。
【0079】
(実施例8)
スキャニング方式の照射野形成装置を適用した本発明の他の実施例である実施例8の粒子線治療装置を、以下に説明する。本実施例の粒子線治療装置は、図1に示す粒子線治療装置と構造上は同じであり、図2に示す照射野形成装置15を備える。本実施例は、走査電磁石制御装置36による第1走査電磁石17及び第2走査電磁石18のイオンビーム走査の制御の仕方が実施例1及び実施例7と異なっている。本実施例も実施例7のように患部62を分割した領域に対してイオンビームを照射する。
【0080】
照射制御装置54は、患者61に対するスキャニングにおけるイオンビームの走査条件情報をメモリ55から読み込んで走査電磁石制御装置36に出力する。その走査条件情報は、図13(C)に示す第1走査電磁石17及び第2走査電磁石18のそれぞれの励磁電流パターンである。走査電磁石制御装置36は、その励磁電流パターン情報を基に第1走査電磁石17及び第2走査電磁石18に供給される各励磁電流を制御する。図13(C)に示すそれぞれの励磁電流パターンは、図13(A)に示すスキャニング方式の励磁電流パターンに図13(B)に示すウォブラ方式の励磁電流パターンを加味したものである。
【0081】
第1走査電磁石17及び第2走査電磁石18によって走査されたイオンビームは、散乱体装置19,飛程調整装置20,SOBP装置21,ボーラス22及びコリメータに3を通過して患部62に照射される。
【0082】
本実施例は、図13(C)に示す励磁電流パターンに基づいて各走査電磁石を制御するため、実施例7で生じる、イオンビームの進行方向の長さ等に応じてイオンビームのサイズが異なるという問題を解消できる。すなわち、分割領域内でのイオンビームの進行方向の長さ、または体内の深さ方向の位置が変わってもイオンビームのサイズは変わらない。実際には、イオンビームの形状はガウス分布に類似した形状となり、ウォブリングを行って円軌道を描いた場合には、イオンビームはガウス分布に類似した分布形状を円積分した形状となる。しかしながら、イオンビームの散乱量に対して走査を行う円軌道が小さければ、イオンビームの形状をガウス分布に類似した形状として想定することは可能である。具体的には、走査電磁石制御装置36は、ビームサイズの小さい照射領域ではウォブリングパターン(ウォブリング電磁石に印加する電流値の時間的推移)を大きく、ビームサイズが大きい照射領域ではウォブリングパターンを小さくするように第1走査電磁石17及び第2走査電磁石18に供給される各励磁電流を制御する。ラスタースキャニングに本実施例を適用した場合には螺旋軌道を描きながらイオンビームを走査することになり、ボクセルスキャニングに本実施例を適用した場合には固定位置でそれぞれイオンビームが円軌道を描く様な照射を行うことになる。本実施例は、実施例7と同様にイオンビームサイズの変化を調整できる。
【0083】
実施例7及び8のそれぞれにおいて、散乱体装置19,飛程調整装置20及びSOBP装置21の全てをビーム軸14に沿って移動させないで、それらのうちの1つ、またはそれらのうちの2つをビーム軸14に沿って移動させた場合は、それら3つを移動させた場合に比べて劣るが、従来のスキャニング方式に比べてイオンビームサイズの変化をより抑制できる。
【0084】
実施例1以外の第1及び第2走査電磁石を有する前述の実施例においても、走査電磁石制御装置36により第1及び第2走査電磁石に供給する各励磁電流を実施例7及び8で述べた各励磁電流パターンに基づいて制御することができる。
【0085】
上記した各実施例はシンクロトロンを含む粒子線治療装置を対象としているが、各実施例における照射野形成装置は、サイクロトロンを含む粒子線治療装置に対しても適用可能である。サイクロトロンを含む粒子線治療装置は、飛程調整装置の替りに、ボーラス22の底部の厚みを所定の厚みに事前に設定することによっても希望する飛程を得ることができる。
【0086】
以上に述べた各実施例は、荷電粒子ビーム発生装置及び照射野形成装置を有する荷電粒子ビームを材料に照射する材料照射装置,食品に荷電粒子ビームを照射する食品照射装置
、及び荷電粒子ビームを利用したラジオアイソトープ製造装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の粒子線治療装置の構成図である。
【図2】図1の照射野形成装置の縦断面図である。
【図3】図2における散乱体装置の縦断面図である。
【図4】図2における飛程調整装置の縦断面図である。
【図5】図2の照射野形成装置、すなわちSOBP装置が走査電磁石の下流側に位置する場合において、走査電磁石で走査されたイオンビームの状態を示す説明図である。
【図6】照射目標のビーム軸方向の深さと放射線量分布の一様性との関係を示しており、(A)は従来の照射野形成装置に対するそれらの関係を示す特性図であり、(B)は図2の照射野形成装置に対するそれらの関係を示す特性図である。
【図7】照射目標のビーム軸方向の長さと線量分布の一様性との関係を示して、(A)は従来の照射野形成装置に対するそれらの関係を示す特性図であり、(B)は図2の照射野形成装置に対するそれらの関係を示す特性図である。
【図8】本発明の他の実施例である実施例2の粒子線治療装置に用いられる照射野形成装置の構成図である。
【図9】図8の照射野形成装置、すなわちSOBP装置が走査電磁石の上流側に位置する場合において、走査電磁石で走査されたイオンビームの状態を示す説明図である。
【図10】照射目標の中心軸及び照射目標の外周部におけるイオンビームの飛程と相対線量分布との関係を示しており、(A)は従来の照射野形成装置に対するそれらの関係を示す特性図であり、(B)は図2の照射野形成装置に対するそれらの関係を示す特性図である。
【図11】本発明の他の実施例である実施例3の粒子線治療装置に用いられる照射野形成装置の構成図である。
【図12】本発明の他の実施例である実施例6の粒子線治療装置に用いられる照射野形成装置の構成図である。
【図13】照射野形成装置の走査電磁石に対する励磁電流パターンを示しており、 (A)は実施例7のスキャニングに適用される励磁電流パターンの説明図であり、 (B)は実施例1に適用される励磁電流パターンの説明図であり、(C)は実施例8のスキャニングに適用される励磁電流パターンの説明図である。
【図14】照射目標内の線量分布、及び半影を示す説明図であり、(A)は従来の照射野形成装置を用いた場合における高照射線量率での照射目標内の線量分布を示す説明図、(B)は従来の照射野形成装置を用いた場合における低照射線量率での照射目標内の線量分布、及び半影を示す説明図、(C)は図11の実施例3における照射野形成装置を用いた場合における低照射線量率での照射目標内の線量分布、及び半影を示す説明図である。
【符号の説明】
【0088】
1…粒子線治療装置、2…荷電粒子ビーム発生装置、4…シンクロトロン、6…高周波印加装置、15,15A,15B,15E…照射野形成装置、16…ケーシング、17…第1走査電磁石、18…第2走査電磁石、19,63…散乱体装置、20…飛程調整装置
、21…ブラッグピーク拡大装置、25,26,31…交流サーボモータ、27,28,32…ボールネジ、40…散乱体操作装置、43A〜43F…散乱体、45…吸収体操作装置、48A〜48F…吸収体、54…照射制御装置、56,57,58…駆動制御装置
、59…治療台。




 

 


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