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発明の名称 血糖値測定装置及び代謝量測定装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−105329(P2007−105329A)
公開日 平成19年4月26日(2007.4.26)
出願番号 特願2005−300962(P2005−300962)
出願日 平成17年10月14日(2005.10.14)
代理人 【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
発明者 永田 浩司 / 三巻 弘 / 内田 剛 / 浅野 林一 / 木口 雅史
要約 課題
簡素な装置構成と簡易な信号処理技術により、簡便に血流量の計測を行い非侵襲的かつ簡易に血糖値あるいは代謝量を測定する。

解決手段
被測定部位に対する温度計測機能と熱負荷を与える機能を統合した測定機能部を用い、測定機能部により得られる測定結果から、血流による表面温度回復に伴う温度変化分を抽出するための処理を行うようにし、血糖値および代謝量を測定する装置を提供する。
特許請求の範囲
【請求項1】
体表面に由来する複数の温度を測定し、前記体表面からの熱放散に関する対流伝熱量と輻射伝熱量との算出に用いる情報を得る熱量測定部と、
血中酸素量に関する情報を得る酸素量測定部と、
前記複数の温度及び前記血中酸素量に各々対応するパラメータと血糖値との関係を記憶した記憶部と、
前記熱量測定部及び前記酸素量測定部から入力される複数の測定値を前記パラメータへ各々変換し、前記パラメータを前記記憶部に記憶した前記関係に適用して血糖値を演算する演算部と、
前記演算部によって算出された結果を表示する表示部とを備え、
前記酸素量測定部は、血流量に関する情報を得る血流量測定部と、血中のヘモグロビン濃度、ヘモグロビン酸素飽和度を得る光学測定部とを有し、
前記血流量測定部は、体表面接触部と、前記体表面接触部の体表面が接触する面と反対側の面に接触して設けられた温度検出器と、金属ブロックと、前記温度検出器と前記金属ブロックを熱結合させる熱結合部材とを有することを特徴とする血糖値測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の血糖値測定装置において、前記熱結合部材の熱伝導率は、前記金属ブロックの熱伝導率より小さいことを特徴とする血糖値測定装置。
【請求項3】
請求項1記載の血糖値測定装置において、前記金属ブロックは、3.0×10-3(KJ/K)以上の熱容量を有することを特徴とする血糖値測定装置。
【請求項4】
環境温度を測定する環境温度測定器と、
体表面が接触する体表面接触部と、
前記体表面からの輻射熱を測定する輻射熱検出器と、
前記体表面接触部の体表面が接触する面と反対側の面に接触して設けられた温度検出器と、
金属ブロックと、
前記温度検出器と前記金属ブロックを熱結合させる熱結合部材と、
前記体表面接触部に向けて少なくとも2つの異なる波長の光を照射する光源と、
前記体表面へ照射された後の光を検出する光検出器と、
前記環境温度測定器、前記輻射熱検出器、前記温度検出器及び前記光検出器各々の出力を各々パラメータに変換する変換部と、前記パラメータと血糖値との関係を予め記憶し、前記パラメータを前記関係に適用して血糖値を算出する処理部とを有する演算部と、
前記演算部から出力される結果を表示する表示部とを備えることを特徴とする血糖値測定装置。
【請求項5】
請求項4記載の血糖値測定装置において、前記熱結合部材の熱伝導率は、前記金属ブロックの熱伝導率より小さいことを特徴とする血糖値測定装置。
【請求項6】
請求項4記載の血糖値測定装置において、前記金属ブロックは、3.0×10-3(KJ/K)以上の熱容量を有することを特徴とする血糖値測定装置。
【請求項7】
環境温度を測定する環境温度測定器と、
被測定体の体表面上の第1部位に由来する温度を測定する第1部位温度測定器と、
前記被測定体の前記第1部位とは異なる位置の第2部位の温度を取り込む第2部位温度取り込み部と、
前記第1部位の血流量に関する情報を取得する血流量取得部と、
前記環境温度、前記第1部位に由来する温度、前記第2部位の温度、及び前記血流量と代謝量との関係を記憶した記憶部と、
前記環境温度測定器によって測定された環境温度、前記第1部位温度測定器によって測定された第1部位温度、前記第2部位温度温取り込み部によって取り込まれた第2部位温度、及び前記血流量取り込み部によって取り込まれた血流量を前記記憶部に記憶した前記関係に適用して代謝量を演算する演算部と、
前記演算部によって演算された結果を表示する表示部と
を備え、
前記血流量取得部は、前記体表面上の第1の部位が接触する体表面接触部と、前記体表面接触部の体表面が接触する面と反対側の面に接触して設けられた温度検出器と、
金属ブロックと、前記温度検出器と前記金属ブロックを熱結合させる熱結合部材とを有することを特徴とする代謝量測定装置。
【請求項8】
請求項7記載の代謝量測定装置において、前記第2部位温度取り込み部は体温計からなり、前記体温計の出力が前記演算部に供給されることを特徴とする代謝量測定装置。
【請求項9】
請求項7記載の代謝量測定装置において、前記第2部位温度取り込み部は、体温を数値入力するための操作部を有することを特徴とする代謝量測定装置。
【請求項10】
請求項7記載の代謝量測定装置において、前記第1部位は被測定体の四肢の部位であり、前記第1部位温度測定器は、前記四肢の部位の温度を測定することを特徴とする代謝量測定装置。
【請求項11】
請求項7記載の代謝量測定装置において、前記熱結合部材の熱伝導率は、前記金属ブロックの熱伝導率より小さいことを特徴とする代謝量測定装置。
【請求項12】
請求項7記載の代謝量測定装置において、前記金属ブロックは、3.0×10-3(KJ/K)以上の熱容量を有することを特徴とする代謝量測定装置。
【請求項13】
請求項7記載の代謝量測定装置において、前記第1部位の酸素飽和度に関する情報を取り込む酸素飽和度取り込み部をさらに有し、前記記憶部は、前記第1部位に由来する温度、前記第2部位の温度、前記血流量及び前記酸素飽和度と代謝量との関係を記憶し、前記演算部は、前記環境温度測定器によって測定された環境温度、前記第1部位温度測定器によって測定された第1部位温度、前記第2部位温度温取り込み部によって取り込まれた第2部位温度、前記血流量取り込み部によって取り込まれた血流量、前記酸素飽和度取り込み部によって取り込まれた酸素飽和度を前記記憶部に記憶した前記関係に適用して代謝量を演算することを特徴とする代謝量測定装置。
【請求項14】
環境温度を測定する環境温度測定器と、
体表面の第1部位が接触する体表面接触部と、
前記体表面接触部に接し、かつ一端が開口する筒状部材と、
前記筒状部材の他端の近傍に設けられ、前記第1部位からの輻射熱を測定する輻射温度計と、
前記体表面接触部の前記第1の部位が接触する面と反対側の面に接触して設けられた温度検出器と、金属ブロックと、前記温度検出器と前記金属ブロックを熱結合させる熱結合部材とを有し、前記体表面の第1の部位が接触した後の前記体表面接触部の温度変化から前記第1部位の血流量に関する情報を取得する血流量取得部と、
前記筒状部材の前記一端に向けて、少なくとも2つの異なる波長の光を照射する光源と、
前記体表面と相互作用した光を検出する光検出器と、
前記体表面の前記第1部位と異なる部位の第2部位の温度を取り込む第2部位温度取り込み部と、
前記環境温度測定器によって測定された環境温度、前記第1部位温度測定器によって測定された第1部位温度、前記第2部位温度温取り込み部によって取り込まれた第2部位温度、前記血流量取り込み部によって取り込まれた血流量、及び前記光検出器によって測定された光検出結果を、予め記憶した代謝量との関係に適用して代謝量を演算する演算部と、
前記演算部から出力される結果を表示する表示部と
を備えることを特徴とする代謝量測定装置。
【請求項15】
請求項14記載の代謝量測定装置において、前記熱結合部材の熱伝導率は、前記金属ブロックの熱伝導率より小さいことを特徴とする代謝量測定装置。
【請求項16】
請求項14記載の代謝量測定装置において、前記金属ブロックは、3.0×10-3(KJ/K)以上の熱容量を有することを特徴とする代謝量測定装置。
【請求項17】
請求項14記載の代謝量測定装置において、前記第2部位温度取り込み部は体温計であることを特徴とする代謝量測定装置。
【請求項18】
請求項14記載の代謝量測定装置において、前記第2部位温度取り込み部は体温を数値入力するための操作部であることを特徴とする代謝量測定装置。
【請求項19】
請求項14記載の代謝量測定装置において、前記第1部位は被測定体の四肢の部位であり、前記第1部位温度測定器は、前記四肢の部位の温度を測定することを特徴とする代謝量測定装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮的に皮膚組織中の血流量を計測する技術を用いて、非侵襲的かつ簡易に血糖値あるいは代謝量を測定することのできる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
経皮的に皮膚組織中の血流量を計測する技術として、レーザ照射による方法、また熱電効果を利用した方法が知られている。前者の例として、特許第3478346号公報により開示されているレーザ組織血流測定方法がある。これは、被測定部の皮膚に対してレーザを照射し、そのときに得られる反射・散乱光信号の強度に重畳する強度変化の周波数を分析することにより血流量を算出する方法である。後者の例としては、熱伝導ブロックと熱電対で内表面温度を測定する方法(特開平7-248267号公報)がある。この方法では、測定対象となる部位の皮膚表面に加熱点とそれに近接する温度測定点を設け、加熱点において加熱し、同時に温度測定点で温度測定を行って加熱量をフィードバック制御することで皮膚表面温度が一定に保たれるようにする。このとき加熱点での加熱量の変化は、その皮下における血流量に比例するという原理に基づいて血流量を算出する方法である。
【0003】
【特許文献1】特許第3478346号公報
【特許文献2】特開平7-248267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記説明した方法が、従来一般的に使用されている血流量の測定方法であるが、どちらの方式においても、計測装置に複雑な構成、又は得られた測定信号に対する高度な信号処理技術が要求され、装置の大型化や高コスト化が避けられない。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みて、簡素な装置構成と簡易な信号処理技術により、簡便に血流量の計測を行い、得られた血流量の情報を用いて非侵襲的かつ簡易に血糖値あるいは代謝量を測定することのできる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
冷水に浸す等、指に対して熱負荷を与えた際に観測される表面温度の回復過程は、指内部の血流量(ω)に依存することが、文献(「血流循環と生体熱輸送現象に関する数値と実験的研究」理研 賀纓、他)により報告されている。熱平衡状態にある指を冷水に一定時間浸し、その後、冷水から取り出し、室温中で安静にするという熱負荷を与える実験を行った場合、図1に示すような指表面温度プロファイルが得られる。指が冷水に浸されると熱平衡状態にあった指表面の温度は一旦低下する。そして、冷水から出されるとゆっくりと回復し、最終的に初期温度に到達する。この時、血流量が多い場合と少ない場合では、回復過程の温度変化速度に図1に示した差異が発生する。この現象は、熱的負荷(冷却)による指表面温度の変化、特に冷却終了後の温度回復過程における温度測定プロファイルを利用して、指内部の血流が推定できることを示唆している。そこで本発明の血流量測定方法においては、上記現象を利用可能にするため、被測定部位に対する温度計測機能と熱負荷を与える機能を統合した測定機能部を用い、該測定機能部により得られる測定結果から上記現象に起因する温度変化分を抽出するための処理を行うようにした。こうして取得した血流量に関する情報を、血糖値あるいは代謝量の測定に利用する。
【0007】
本発明の血糖値測定装置は、体表面に由来する複数の温度を測定し、体表面からの熱放散に関する対流伝熱量と輻射伝熱量との算出に用いる情報を得る熱量測定部と、血中酸素量に関する情報を得る酸素量測定部と、複数の温度及び血中酸素量に各々対応するパラメータと血糖値との関係を記憶した記憶部と、熱量測定部及び酸素量測定部から入力される複数の測定値を前記パラメータへ各々変換し、前記パラメータを記憶部に記憶した関係に適用して血糖値を演算する演算部と、演算部によって算出された結果を表示する表示部とを備え、酸素量測定部は、血流量に関する情報を得る血流量測定部と、血中のヘモグロビン濃度、ヘモグロビン酸素飽和度を得る光学測定部とを有し、血流量測定部は、体表面接触部と、体表面接触部の体表面が接触する面と反対側の面に接触して設けられた温度検出器と、金属ブロックと、温度検出器と金属ブロックを熱結合させる熱結合部材とを有する。
【0008】
本発明の血糖値測定装置は、また、環境温度を測定する環境温度測定器と、体表面が接触する体表面接触部と、体表面からの輻射熱を測定する輻射熱検出器と、体表面接触部の体表面が接触する面と反対側の面に接触して設けられた温度検出器と、金属ブロックと、温度検出器と金属ブロックを熱結合させる熱結合部材と、体表面接触部に向けて少なくとも2つの異なる波長の光を照射する光源と、体表面へ照射された後の光を検出する光検出器と、環境温度測定器、輻射熱検出器、温度検出器及び光検出器各々の出力を各々パラメータに変換する変換部と、前記パラメータと血糖値との関係を予め記憶し、前記パラメータを前記関係に適用して血糖値を算出する処理部とを有する演算部と、演算部から出力される結果を表示する表示部とを備える。
【0009】
本発明による代謝量測定装置は、環境温度を測定する環境温度測定器と、被測定体の体表面上の第1部位に由来する温度を測定する第1部位温度測定器と、被測定体の第1部位とは異なる位置の第2部位の温度を取り込む第2部位温度取り込み部と、第1部位の血流量に関する情報を取得する血流量取得部と、環境温度、第1部位に由来する温度、第2部位の温度及び血流量と代謝量との関係を記憶した記憶部と、環境温度測定器によって測定された環境温度、第1部位温度測定器によって測定された第1部位温度、第2部位温度温取り込み部によって取り込まれた第2部位温度及び血流量取り込み部によって取り込まれた血流量を記憶部に記憶した前記関係に適用して代謝量を演算する演算部と、演算部によって演算された結果を表示する表示部とを備え、血流量取得部は、体表面上の第1の部位が接触する体表面接触部と、体表面接触部の体表面が接触する面と反対側の面に接触して設けられた温度検出器と、金属ブロックと、温度検出器と金属ブロックを熱結合させる熱結合部材とを有する。
【0010】
本発明による代謝量測定装置は、また、環境温度を測定する環境温度測定器と、体表面の第1部位が接触する体表面接触部と、体表面接触部に接し、かつ一端が開口する筒状部材と、筒状部材の他端の近傍に設けられ、第1部位からの輻射熱を測定する輻射温度計と、体表面接触部の第1の部位が接触する面と反対側の面に接触して設けられた温度検出器と、金属ブロックと、温度検出器と金属ブロックを熱結合させる熱結合部材とを有し、体表面の第1の部位が接触した後の体表面接触部の温度変化から第1部位の血流量に関する情報を取得する血流量取得部と、筒状部材の前記一端に向けて、少なくとも2つの異なる波長の光を照射する光源と、体表面と相互作用した光を検出する光検出器と、体表面の第1部位と異なる部位の第2部位の温度を取り込む第2部位温度取り込み部と、環境温度測定器によって測定された環境温度、第1部位温度測定器によって測定された第1部位温度、第2部位温度温取り込み部によって取り込まれた第2部位温度、血流量取り込み部によって取り込まれた血流量に関する情報、及び光検出器によって測定された光検出結果を、予め記憶した代謝量との関係に適用して代謝量を演算する演算部と、演算部から出力される結果を表示する表示部とを備える。熱結合部材の熱伝導率は、金属ブロックの熱伝導率より小さく設定する。また、金属ブロックは、3.0×10-3(KJ/K)以上の熱容量を有するものとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡素な装置構成と簡易な信号処理技術により、簡便に血糖値あるいは代謝量を計測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
指など生体組織内における血流を含む熱伝導を記述する式として下記のPennesの式が一般的に知られている(Pennes, H. H., “Analysis of tissue and arterialblood temperatures in the resting human forearm”, J. Applied Physiology, Vol.1, No.2, pp.93-122 ,1948)。
【0013】
【数1】


【0014】
Pennesの式では、任意の点の組織における温度変化は、血液温度Taと該組織温度Ttとの温度差(Ta-Tt)、及び血流量ωに比例する成分と、隣接する組織間での温度差(空間的な温度分布)による成分、更に、局所的な発熱(代謝熱)によって表される。
【0015】
これを、伝熱回路網により表現すると図2のようになる。ここでは、説明の対象を指などの部位に限定するため代謝熱の項は省略している。また、2次元、3次元的な回路網の表現は省略している。また、全ての温度は室温Trを基準としてそれとの差を示している。図2の伝熱回路網では、熱源が血液温度Taとなり、各組織部位と上記比例関係によって決まる熱伝導経路が定義される。この伝熱経路において、熱伝導を記述する一般式であるフーリエ則に照らし合わせると、血流量ωは血液温度Taを有する部位と各組織部位間の熱伝導率として扱える。また、伝熱経路の熱伝導率と熱抵抗は、反比例の関係になる。これらのことから、図2の伝熱回路網では血液温度Taを有する部位201を仮定し、該部位201が各組織部位203間と血流ωに依存する熱抵抗202によって結合されているように表現可能になる。また、各組織部位203間には組織部位間の熱伝導率に依存する熱抵抗205と、各組織部位の熱容量204が定義されている。
【0016】
本発明の血流量計測方法では、指などの全体組織に対して前記熱負荷を与える領域、及び温度計測を行う領域を十分小さくすることによって、指などの全体組織を半無限の均一物質として捉え、上記伝熱回路網を集中定数表現化できるようにしている。従って、図2の伝熱回路網は、図3に示す伝熱回路網に集約される。図3において、301は血液温度、302は熱抵抗、303は組織部位、304は組織熱容量、305は室温を表す。ここで、上記簡略化の理由により、集約される各組織部位間では温度差は無く熱の移動が無いので、伝熱経路を表す熱抵抗は無視される。以下、本発明の血流量計測方法を、被測定部位の組織の伝熱回路網を図3に示される形態として説明する。
【0017】
図4は、被測定部を指先として説明する図である。図中、Taは血液温度、Trは室温、R1は血流ωに反比例する熱抵抗、R2はセンサと指の間の接触熱抵抗、R3はセンサと室温間の熱抵抗、C1は組織の熱容量、C2はセンサの熱容量である。図4では、被測定部に対して接触温度センサ(例えばサーミスタなどを使用)を接触させる方式を例としている。本発明による血流測定では、指が室温Trに対して熱平衡状態にあることを必要条件とする。この状態を初期状態とする。この初期状態においては、指組織の熱容量C1に深部温度Taからの熱が血流ωを介して蓄えられており表面温度Tsがある初期値Ts0に安定している。
【0018】
この指表面温度の初期値は、血液温度Ta、血流ωに反比例する熱抵抗R1、及び指表面から空気への熱伝達係数で決まる指表面と空気間の熱抵抗Rairとで決定され、以下の通りとなる。
【0019】
【数2】


【0020】
このように定常状態にある指に対してセンサを接触させると、組織の熱容量C1に蓄えられている熱はセンサに移動する。その熱移動に伴う指表面の温度Tsとセンサ(サーミスタ)の温度T1の変化は次式で表される。
【0021】
【数3】


【0022】
このとき、指から移動した熱量によりセンサは短時間で熱的飽和に達する。逆に指表面温度は低下し、熱負荷が与えられたことになる。本発明のセンサは指との接触熱抵抗R2を小さくするため、接触温度センサに熱伝導性の良い接触面を持たせるように設計されている。また、短時間に熱量移動を生じさせるように、接触温度センサの被測定部位への接触面と接触温度センサを挟んだ反対の部位に、該部位の温度安定化のための熱容量を設けている。
【0023】
このセンサの熱飽和と同時に指側では、深部からの熱により血流を介して再び組織の熱容量C1に熱が蓄えられる過程(温度回復過程)に移行する。この時の温度変化は次式で表される。また、先に述べたとおり、センサはすでに熱飽和しているので、センサの応答特性に影響されずにこの温度回復過程の計測が可能である。
【0024】
【数4】


以上説明の通り、本発明のセンサを指に接触させた場合に得られる温度検出波形は、指への接触直後からセンサの熱飽和までの期間は、
【0025】
【数5】


で表される変化が主と成り、熱飽和後は、
【0026】
【数6】


で表される変化が主となる。本血流計測では、温度回復過程、つまり熱飽和後の温度変化に着目する。
【0027】
温度回復過程、つまり熱飽和後の温度変化で得られた温度変化の時間微分は、次式で表される。この式は、温度回復過程、つまり熱飽和後の温度変化の時間微分は、血流量に比例する成分と、指表面の初期温度(Ts0)の積であることを示している。
【0028】
【数7】


これを、指表面の初期温度(Ts0)で除すことで、(1)指の特性を表す固定値、と(2)センサの特性を表す固定値で決まる値を比例係数に持つ血流BF(ω)に対して比例する値が得られる。
【0029】
【数8】


【0030】
以上、説明したように、本発明の血流計測方法によれば、指表面の被測定部に温度センサの接触により熱負荷を与え、その後の温度回復過程を計測することにより、被測定部の血流量が計測可能である。
【実施例1】
【0031】
上記説明の通り、安静状態にあり熱平衡状態にある人体の皮膚の一部、例えば指先などに対して、その部位の初期温度と室温を計測し、熱負荷を与えた後の皮膚表面温度の回復過程を計測することで血流量に比例する値が計測できる。従って、最低限必要な測定項目は、指初期温度、室温、皮膚表面温度変化である。この原理に基づく本発明の血流測定装置の一実施例を図5に示す。図5(a)は装置の上面図、図5(b)はそのAB断面図である。本実施例では、センサ501は、接触温度センサ511と非接触温度センサ512を並列して設けている構成とする。接触温度センサ511は、上記回復過程の計測を行うと共に、熱負荷を与える部位となる。また、非接触温度センサ512は、主として指表面温度の初期値(何も触れていない状態)を計測するためのものであり、赤外線検出素子507を備える。
【0032】
接触温度センサ511の構造は、次の通りである。金等に代表される熱伝導率の良い金属の薄膜で形成された接触部502と、接触部502の計測部位への接触面とは反対の面に接触するように設置された温度検出素子503と、金属ブロック505と、温度検出素子503と金属ブロック505を熱結合させるための支持部504と、断熱カバー部506、から構成されている。支持部504は、伝熱経路となり、金属ブロック505と温度検出素子503を熱的に分離するため、金属ブロック505に比較して小さい熱伝導率を持たせることが好ましい。具体的には、5W/m/K以下の熱伝導率を有する素材となる。
【0033】
金属ブロック505は、接触温度センサ511の基準温度を、全計測期間中に渡って室温に一致、安定化させるためのものである。この目的から、金属ブロック505には満たすべき熱容量の下限値が規定される。全計測期間中に渡って基準点の温度変化を0.5℃以下に抑えるためには、熱容量として3.0×10-3 (kJ/K)以上が必要である。例えば、金属として銅を用いた場合には10g程度の質量となる。金属の物性により必要な質量は異なるが、上記熱容量を満たせば機能的に同等であることは明らかである。本実施例では、金属ブロック505の温度を監視するための温度センサ510を設けている。温度センサ510によって得られたデータは、血流計測のために積極的に用いられるものではないが、センサの熱的状況を知る手段となる。
【0034】
図6は、本例に示す接触温度センサにより、被測定部を指先とした場合に計測される温度検出波形の一例を示す図である。横軸は時間、縦軸は温度又は温度の時間微分値である。
【0035】
領域aは、接触温度センサ511が指に接触する以前の状態であり、検出している温度は室温である。領域bは、接触温度センサ511が指に接触している時間帯である。接触温度センサの信号波形601は、組織の熱容量、センサ熱容量などで決定される応答時定数で飽和し、その後、指表面温度変化を反映した波形となる。同時に非接触温度センサ512は、その視野に被測定部位が現れると、信号波形602のように、その表面温度に従った値を瞬時に出力するので接触温度センサよりも速い応答性を示す。領域cは、指をセンサから離した後の時間帯である。接触温度センサ511の出力は、センサ自身にたまった熱を放熱してゆっくりと初期状態(室温)に戻る。非接触温度センサ512の出力は、被測定部位が視野から外れると瞬時に初期状態に戻る。
【0036】
このようにして得られた信号波形601、602を、本発明では、前記説明した原理に基づいて処理することで血流量を算出する。先ず、領域aの結果から室温を算出する。算出方法の一例としてここでは、波形601の領域aの全時間範囲における計測結果の平均値を採るものとする。
【0037】
次に、領域bの非接触温度センサの信号波形602から指表面温度の初期値を算出する。算出方法の一例としてここでは、接触温度センサの信号波形601の微分値603が最大値をとる時刻における被接触温度センサの出力値を採るものとする。これは、接触温度センサの検出波形の微分値が最大値をとる時刻は、実際にセンサに指が接触した時刻を示すと共に、非接触温度センサと被測定物との距離が最も適切になっている時刻であるためである。
【0038】
次に、領域bの接触温度センサの信号波形601に対して次式の非線形最小二乗法を適用し、一次関数部の係数(B1)を算出する。
【0039】
【数9】


【0040】
先に説明したとおり、本発明での温度検出波形は、センサの接触から熱飽和までの指数関数変化(短時定数)とその後の回復過程における指数関数変化(長時定数)の和となることを説明した。式(1)は、センサの接触から熱飽和までの指数関数変化(短時定数)を、係数B2,B3を持つ指数関数として表している。また、その後の回復過程における指数関数変化(長時定数)をB1を係数とする一次関数で近似して表している。
【0041】
上記式内の温度は信号波形601の値、tは時間である。最小二乗法に用いる関数の形態は、センサの飽和と温度回復過程が分離されるものであれば、上記形態に限られるものではない。
【0042】
上記関係より、係数B1は、回復過程における指数関数変化(長時定数)を一次関数により近似した結果の微分係数であり、血流量に比例する成分と指初期温度と室温との差の積に等しい。
【0043】
従って、上記算出された一次関数部の係数B1を、前記算出した指初期温度と室温との差で除することにより、血流量に比例する値が得られる。図11に、レーザ血流計を参照値(横軸)として本発明の血流量測定装置による計測値をプロットした結果を示す。このように得られた数値を、レーザ血流計などの既存の測定装置により校正することにより、血流量(ωb)を計測可能になる。
【0044】
また、最小二乗法を適用する波形を領域bの非接触温度センサの波形602として処理することも可能であることは明らかである。また、室温の算出方法や指表面温度の算出方法など処理の方法は上記実施例に限定されるものではないことは明らかである。更に、室温を計測する目的の温度センサなどを接触温度センサや非接触温度センサとは別に設ける構成も同様であることは明らかである。
【0045】
図9に、測定回路ブロックの一実施例を示す。各温度センサ(接触温度センサ511、非接触温度センサ512)からの信号はアナログディジタル変換器903,904によりディジタルデータに変換される。変換周期は、測定の時間分解能に対して十分短くする。ここでは、一例として変換周期を0.1secとする。変換されたデータは、CPU回路部905と記憶素子回路部906により上記の処理を実施する。処理結果は、表示回路部907により数値表示される。IF回路部908は、被測定者(使用者)による操作が行われる部位である。ここでは、例えば処理の開始、停止制御を行う。更に上記結果は、外部記憶素子回路部909に蓄えられる。
【0046】
図7は、本発明による測定装置の変形例を示す図である。図示した測定装置は、図5に示した温度センサを、指などの被測定部位に対して接触させて荷重を作用させる方向に可動とした例である。図7に示すように、測定時にはセンサと被測定部(この例の場合は指)の間には作用反作用による荷重が働く。指側に働く力は組織を圧迫し、その部位の血流を阻害するため、測定精度を低下させる要因となる。本実施例では、荷重の働く方向にセンサ全体が可動となる構造とし、ばね701,702等の作用で接触圧力が制御されるようになっている。本実施例によれば、被測定部に作用する圧力が低減され、血流阻害が緩和されるため高精度な計測が可能になる。
【0047】
図8は、本発明による測定装置の更に別の変形例を示す図である。図示した測定装置は、図5に示した温度センサ全体が荷重の働く方向に可動となる構造とし、ばね701,702等の作用で接触圧力が制御されるようになっている。さらに、可動部の移動距離を計測又は位置検出する機能801、又は荷重を計測する機能802と、最適値の情報を表示する機能803を設けることにより、被測定者に対して適切な押し圧を知らせることが可能になる。最適値の情報を表示する機能803は、機能801又は802の出力をもとに指などの被測定部位によるセンサの押圧力が適切か、過小か、過大かを判定し、その判定結果を表示する。本実施例によれば被測定部に作用する圧力が低減されると共に、被測定者が最適な押し圧を認識しながら測定を行えるため、血流阻害が緩和され高精度な計測が可能になる。
【実施例2】
【0048】
本発明の測定装置を血糖値の測定に適用した実施例について説明する。特開2004-329542号公報には、血糖値(Glu)が血流量を表すパラメータを含むn個のパラメータの多項式(2)により推定できることが示されている。
【0049】
【数10】


【0050】
図13は、上記特開2004-329542号公報に開示されている無侵襲血糖値測定装置に対して、図5に示した本発明の血流量測定部を適用した場合の詳細を示す図であり、(a)は上面図、(b)はそのXX断面図、(c)はそのYY断面図である。
【0051】
本実施例で説明する無侵襲血糖値測定装置における温度測定部は、上記説明の通りに血流量を計測する部位であり、構成や測定原理は実施例1にて説明した通りである。
【0052】
次に、光学センサ部について説明する。光学センサ部は、酸素供給量を求めるために必要なヘモグロビン濃度とヘモグロビン酸素飽和度とを測定するためのものである。ヘモグロビン濃度とヘモグロビン酸素飽和度を測定するには最低2波長での吸光度測定が必要であり、図13(c)は2個の光源33,34と1個の検出器35によって2波長測定を行うための構成例を示している。
【0053】
光学センサ部には、2個の光ファイバー31,32の端部が位置する。光ファイバー31は光照射用の光ファイバーであり、光ファイバー32は受光用の光ファイバーである。図13(c)に示すように、光ファイバー31は支線となるファイバー31a,31bにつながり、それらの末端には2つの波長の発光ダイオード33,34が配されている。受光用光ファイバー32の末端には、フォトダイオード35が配されている。発光ダイオード33は波長810nmの光を出射し、発光ダイオード34は波長950nmの光を出射する。波長810nmは、酸素結合型ヘモグロビンと還元型(脱酸素)型ヘモグロビンのモル吸光係数が等しくなる等吸光波長であり、波長950nmは酸素結合型ヘモグロビンと還元型ヘモグロビンのモル吸光係数の差が大きい波長である。
【0054】
2個の発光ダイオード33,34は時分割的に発光し、発光ダイオード33,34から発生された光は光照射用光ファイバー31から被検者の指に照射される。指に照射された光は、指の皮膚で反射し、受光用光ファイバー32に入射してフォトダイオード35によって検出される。指に照射された光が指の皮膚で反射されるとき、一部の光は皮膚を通して組織内部に侵入し、毛細血管を流れる血液中のヘモグロビンによる吸収を受ける。フォトダイオード35による測定データは反射率Rであり、吸光度は近似的にlog(1/R)で計算される。波長810nmと波長950nmの光について各々照射を行い、各々につき反射率Rを測定し、かつlog(1/R)を求めることにより、波長810nmの吸光度A1と波長950nmの吸光度A2が測定される。
【0055】
還元型ヘモグロビン濃度を[Hb]、酸素結合型ヘモグロビン濃度を[HbO2]とすると、吸光度A1及び吸光度A2は次式で表される。
【0056】
【数11】


【0057】
AHb(810nm)とAHb(950nm)、AHbO2(810nm)とAHbO2(950nm)はそれぞれ還元型ヘモグロビン、酸素結合型ヘモグロビンのモル吸光係数であり各波長で既知である。aは比例係数である。ヘモグロビン濃度[Hb]+[HbO2]、ヘモグロビン酸素飽和度[HbO2]/([Hb]+[HbO2])は上式から次のように求められる。
【0058】
【数12】


【0059】
なお、ここでは2波長による吸光度測定によってヘモグロビン濃度とヘモグロビン酸素飽和度を測定する例について説明したが、3波長以上で吸光度を測定することによって、妨害成分の影響を低減し測定精度を高めることも可能である。
【0060】
以上説明した通りの構成を有するセンサにより得られる計測値から、血糖値を推定するためのパラメータxi(i=1,2,3,4,5)が計算される。各パラメータxiの具体例は以下のとおりとなる(a1〜a5は比例係数)。また、各パラメータと測定値の関係を図12に示す。
【0061】
【数13】


【0062】
つづいて、実際の多数の健常者及び糖尿病患者のデータから得られたパラメータxiの平均値と標準偏差から正規化パラメータを算出する。各パラメータxiから正規化パラメータXi(i=1,2,3,4,5)を次の式で計算する。
【0063】
【数14】


【0064】
前述の5つの正規化パラメータをもって、最終的な表示を行うためのグルコース濃度への変換計算が行われる。処理計算に必要なプログラムは、装置に組み込まれたマイクロプロセッサに内蔵されたROMに記憶されている。また、処理計算に必要なメモリー領域は、同様に装置に組み込まれているRAMに確保される。計算処理された結果は、液晶表示部に表示される。
【0065】
ROMには処理計算に必要なプログラム構成要素として、特にグルコース濃度Cを求めるための関数が入っている。この関数は以下のように定められたものである。まず、Cは以下の式(3)で表現される。ai(i=0,1,2,3,4,5)は、複数の測定データから前もって決定されている。aiを求める手順は以下のとおり。
(1)正規化パラメータとグルコース濃度Cの関係を示す重回帰式を作成する。
(2)最小二乗法によって得られた式から正規化パラメータに関する正規方程式(連立方程式)を求める。
(3)正規方程式から係数ai(i=0,1,2,3,4,5)の値を求め、重回帰式に代入する。
【0066】
初めに、グルコース濃度Cと正規化パラメータX1,X2,X3,X4,X5の関係を示す次の回帰式(3)を作る。
【0067】
【数15】


【0068】
つづいて、酵素電極法によるグルコース濃度測定値Ciとの誤差が最小になるような重回帰式を求めるため、最小二乗法を用いる。残差の二乗和をDとすると、Dは次式で表される。
【0069】
【数16】


【0070】
残差の二乗和Dが最小になるのは、上式をa0,a1,…,a5で偏微分してゼロとなるときなので、次式が得られる。
【0071】
【数17】


【0072】
C、X1〜X5の平均値をCmean、X1mean〜X5meanとするとXimean=0(i=1〜5)であるので、次式が得られる。
【0073】
【数18】


【0074】
また、正規化パラメータ間の変動・共変動は、次式のSijで表され、正規化パラメータXi(i=1〜5)とCとの共変動は次式のSiCで表される。
【0075】
【数19】


【0076】
以上を整理すると、次の連立方程式(正規方程式)が得られ、これを解くことでa1〜a5が求まる。
【0077】
【数20】


【0078】
定数項a0は、式(4)を用いて求める。以上で求めた ai(i=0,1,2,3,4,5)は装置製造時にROMに格納されている。装置による実際の測定では、測定値から求めた正規化パラメータX1〜X5を回帰式(3)に代入することで、グルコース濃度Cが算出される。
【0079】
以下にグルコース濃度の算出過程の具体例を示す。予め健常者及び糖尿病患者に対して測定した多数のデータから回帰式(3)の係数が決められており、マイクロプロセッサのROMには下記のグルコース濃度の算出式が格納されている。
【0080】
【数21】


【0081】
1〜X5はパラメータx1〜x5を正規化したものである。パラメータの分布が正規分布であると仮定すると、正規化パラメータの95%は−2から+2の間の値をとる。
【0082】
健常者の測定値の一例として、正規化パラメータX1=-0.06、X2=+0.04、X3=+0.05、X4=-0.12、X5=+0.15 を上記の式に代入するとC=94.7mg/dlとなる。また、糖尿病患者の測定値の1例として、正規化パラメータX1=+1.15、X2=-1.02、X3=-0.83、X4=-0.91、X5=-1.34 を上記の式に代入するとC=210.4mg/dlとなる。
【0083】
図10に、本実施例の血糖測定装置による測定結果と従来の酵素電極法による測定結果を比較した結果を示す。両者の相関係数は0.92であり、本実施例の血糖値測定装置により血糖値を高精度に測定できることがわかる。
【実施例3】
【0084】
本発明の測定装置を代謝量の推定に適用した実施例について説明する。
人体の熱制御機構の原理に基づき、代謝によって発生した熱量(産熱量) は体内に蓄えられる熱量(蓄熱量) と体外へ放出される熱量(放熱量) の和と等しいため、次式が成り立つ。
【0085】
(体全体の代謝量[産熱量])=(体全体の蓄熱量)+(体全体の放熱量) …(5)
体の部位riにおける体内部温度をT、体の部位riにおける組織温度をTT、体の部位riにおける熱容量をαiとすると、体全体の蓄熱量は体の各部位における蓄熱量の総和となり、以下の式で示すことができる。
【0086】
【数22】


【0087】
上式は体の部位ごとの量を取り扱ったものであるが、体内部温度を代表する有効値として体の深部の動脈血温度Taを用い、体の組織温度を代表する有効値として体温Tcを用いる。また熱容量についても、体全体の熱容量を代表する有効値としてαを用いる。このαは各個人の体組成、密度及び体重等に依存する値となる。以上から体全体の蓄熱量は以下の式で表すことができる。
体全体の蓄熱量 =α(Ta−Tc) …(6)
【0088】
また、通常、放熱は伝導、放射、対流及び蒸発により行なわれるが、伝導及び放射は人が服を着ている状態では熱量が小さく無視することができる。蒸発は、発汗がない温度制御が行なわれている室内状態を仮定すると、無視することができる。このため体表面と空気との対流による放熱のみ考慮すると、体の表面部位rjにおける皮膚温度をTs、体の表面部位rjに接する外部温度をTOUT、体の表面部位rjにおける対流熱伝達率をβjとすると、体全体の放熱量は体の表面部位からの放熱量の総和となり、以下の式で示すことができる。
【0089】
【数23】


【0090】
上式は体の部位ごとの量を取り扱ったものであるが、体の体表面温度を代表する有効値として指の皮膚温度TFSを用い、外部温度を代表する有効値として室温TRを用いる。また対流熱伝達率についても、体の表面部位全体の対流熱伝達率を代表する有効値としてβを用いる。このβは各個人の表面積及び服装等に依存する値となる。以上により、体全体からの放熱量は以下の式で表すことができる。
体全体の放熱量 = β(TFS−TR) …(7)
【0091】
本実施例で、体全体の放熱を代表する部位として指を用いるのは、指は外部温度の変化に敏感で、皮膚温度や放熱量の変化が大きく現れることと、筋肉が少ないために局所的な産熱量が小さく、体全体の現象をよく反映するからである。
式(5),(6),(7)から体全体の代謝量は以下の式で表すことができる。
(体全体の代謝量[産熱量])=α(Ta−Tc) +β(TFS−TR) …(8)
【0092】
指での熱流保存則から、指に入ってくる熱量と指から放熱される熱量は釣り合っていると考えることができる。指の組織に関して、指の深部の動脈温度をTFaとし、指組織の熱伝導率をλ、指組織における血流量をωb、血液の比熱をcb、指表面の対流熱伝達率κとすると、指の熱流保存則は以下の式で表すことができる。この式でχは比例係数である。
λ(χωbbFa−TFS)=κ(TFS−TR) …(9)
【0093】
左辺は動脈から指表面への組織への熱移動を表し、ペン(Penn)の生体熱移動方程式(Pennes H.H., “Analysis of tissue and arterial blood temperatures in the resting human forearm” J. applied physiology, 1, 93-122(1984))に基づいている。
【0094】
ここで、指の深部の動脈温度TFaと体の深部の動脈血温度Taが比例し、TFa=σTa+τと仮定すると、式(9)は以下のようになる。
【0095】
【数24】


この式(10)を式(8)に代入すると、式(11)が得られる。
【0096】
【数25】


【0097】
式(11)を使用するためには、各個人によって異なる比例係数a〜eを決定する必要がある。そのためには、人の代謝量を測定し、式(11)と代謝量測定値から各個人の係数を重回帰分析により求める方法を取ることができる。
【0098】
上記モデル式に従い、体の体表面温度を代表する有効値としての指表面温度TFS、室温TR、体の組織温度を代表する有効値としての体温Tc、血流量ωbを測定し、別途測定した比例係数を使用することにより、代謝量を測定することができる。ここでは、体の代表測定ポイントを指先としたが、他の体表面を使うことも可能である。体の組織温度の代表ポイントは舌下、腋下、直腸など、体の体表面温度を代表する有効値としての温度測定部位と異なる部位の温度を測定することにより、体内部の組織温度に相当する温度が得られる。なお、体の体表面温度を代表する有効値としての温度測定部位としては、指表面の他、四肢の部位を利用することもできる。
【0099】
また、代謝量を測定することは大掛かりな装置を必要とするため、人のエネルギー源である血中グルコース濃度と代謝量との関係を使用することにより、グルコース濃度に対応する代謝量を求めることもできる。体全体の代謝量とグルコース濃度の関係は、体の部位rkでグルコース熱産生によって発生する熱量をQG(rj)、脂肪及びアミノ酸等のグルコース以外の物質による熱産生によって発生する熱量をQΠ(rj)とすると、体全体の代謝量は体の各部位で発生する熱量総和となり、以下の式で示すことができる。
【0100】
【数26】


【0101】
式(12)は体の部位ごとの熱量を取り扱ったものであるが、体全体での平均的な細胞内グルコース濃度Gcは細胞内のグルコースによる代謝量と比例し、体全体での平均的なグルコース以外の物質の細胞内濃度Πは細胞内のグルコース以外による代謝量と比例すると仮定し、比例係数をA,Bとすると、体全体の代謝量は以下の式で表すことができる。
体全体の代謝量 = AGc+BΠ …(13)
式(11)と式(13)より、以下の式が成立する。
【0102】
【数27】


【0103】
上記モデル式に従い、体の体表面温度を代表する有効値としての指表面温度TFS、室温TR、体の組織温度を代表する有効値としての体温Tc、血流量ωbを測定し、別途測定した比例係数を使用することにより、血中グルコースに対応した代謝量AGcを測定することができる。
【0104】
また、より精度を向上させたい場合は、組織酸素飽和度を考慮する。体全体の放熱量は使用される酸素量に比例するため、Gc+Π∝[O2消費量]の関係が成立する。組織酸素飽和度StO2はO2消費量と同義なため、以下の式で表すことができる。
StO2=a’Gc+b’Π …(15)
式(14)と式(15)より式(16)が得られる。
【0105】
【数28】


【0106】
上記モデル式に従い、体の体表面温度を代表する有効値としての指表面温度TFS、室温TR、体の組織温度を代表する有効値としての体温Tc、血流量ωb、組織酸素飽和度StO2を測定し、別途測定した比例係数を使用することにより、血中グルコースに対応した代謝量である((ab’-a’b)/b’)Gcを測定することができる。
【0107】
また、式(16)の係数を整理すると式(17)のようになり、グルコース濃度を算出することが出来る。
【0108】
【数29】


【0109】
図14は、本発明による代謝メーターの上面図である。この装置では、体表面として指先の腹の皮膚を使うが、計測の原理上、他の体表面を使うことも可能である。
【0110】
装置には体温を測定する体温測定部1001と、室温、指表面温度、血流量及び組織酸素飽和度を測定する本体部1002に分かれ、体温測定部1001と本体部1002とは配線1003で接続されている。本実施例では、体温測定部1001と本体部1002を接続し、体温測定部1001で測定した体温データを本体部1002に送信するようになっているが、一般に販売されている体温計を使用し、その体温データを本体部1002の操作部1010を使用して入力するようにしても良い。また、血流量や組織酸素飽和度を、一般に販売されている装置を使用し、その血流量データや組織酸素飽和度データを本体部1002の操作部1010を使用して入力するようにしても良い。図15に体温及び血流量を一般の装置で測定することとした場合の、本発明による代謝メーターの上面図を示す。
【0111】
体温データ等の入力は、一例として図16に示すような画面で行なうことができる。この例では36.50℃を規定値で表示するようにし、1の位に下線が表示され、入力対象であることが示されている。ここで操作ボタン1010b,1010cを使用して数値を変更する。すなわち、表示されている数値を増やす場合には操作ボタン1010bを押し、減らす場合には操作ボタン1010cを押して、測定した体温となるように入力し、その後、操作ボタン1010dを押して体温の1の位を決定する。後は同様の操作で小数点第1位及び第2位を入力し、体温データを入力する。もし誤って操作ボタン1010dを押してしまったら、操作ボタン1010aを押すことにより、入力をやり直すことができる。
【0112】
装置上面には、操作部1010、測定対象となる指が置かれる測定部1012、測定結果の表示、装置の状態や測定値などを表示する表示部1011が設けられている。操作部1010には、装置の操作を行うための4個の押しボタン1010a〜1010dが配置されている。測定部1012にはカバー1014が設けられ、カバー1014を開けると(図はカバーを開けた状態を示す)、楕円型の周縁を持つ指置き部1013がある。指置き部1013の中には、輻射温度センサ部の開口端 1022と光学センサ部1030、温度センサ部1020がある。光学センサ部1030及び温度センサ部1020は、基本的に図13と同じ構造を有する。
【0113】
装置内の演算処理部では、5つの生理パラメータ(体温、室温、指表面温度、血流量、組織酸素飽和度)が計算され、これら5つの生理パラメータをもって、最終的な表示を行なうための代謝量への変換計算が行なわれる。
【0114】
以下に、代謝量の算出過程の具体例を示す。予め大人数に対して測定した多数のデータから式(11)の係数a〜eが決められており、マイクロプロセッサのROMには下記の代謝量の算出式が格納されている。
【0115】
【数30】


【0116】
この時、必要な測定値は、体温Tc、指の表面温度TFS、室温TR、血流量ωbであるため、図13に示したセンサ部を組み込んだ図14あるいは図15に示した装置によって代謝量の測定に必要な測定値を得ることができる。
【0117】
測定値の一例として、測定データTc = 36.46、TFS−TR =7.52、(TFS−TR)/ωb =11.30、TFSb =47.79を上記の式に代入すると8.5kJとなる。この時の閉鎖回路系の間接熱量測定法による代謝量は8.6kJである。また、閉鎖回路系の間接熱量測定法による代謝量が8.0kJの時の測定データTc =36.56、TFS−TR =7.96、(TFS−TR)/ωb =12.16、TFSb =48.99を上記の式に代入すると8.1kJとなる。
【0118】
図17は、縦軸を本発明の方法による代謝量の算出値、横軸を閉鎖回路系の間接熱量測定法による代謝量の測定値として、複数の被験者に対してそれぞれの測定値をプロットした図である。本法の様に人の体温・指温度・血流量を測定し代謝量を算出することで良好な相関が得られる(相関係数=0.82)。
【0119】
以下に、グルコース濃度の算出過程の具体例を示す。予め大人数に対して測定した多数のデータから式(17)の係数が決められており、マイクロプロセッサのROMには下記のグルコース濃度の算出式が格納されている。
【0120】
【数31】


【0121】
測定値の一例として、測定データTc = 36.71、TFS−TR =5.18、(TFS−TR)/ωb =8.39、TFSb =50.10、StO2=0.46を上記の式に代入すると97.5となる。この時の血中グルコース濃度は108.6mg/dlである。また、血中グルコース濃度が120.1mg/dlの時の測定データTc =36.47、TFS−TR =7.91、(TFS−TR)/ωb =15.64、TFSb =62.92、StO2=0.45を上記の式に代入すると113.5mg/dlとなる。
【0122】
また、算出したグルコース濃度に式(13)の係数Aを掛けると、血中グルコース濃度に対応した代謝量を算出することができる。
【0123】
実施例ではグルコース濃度に対応した代謝量を求めたが、グルコース以外の物質の代謝量として、中性脂肪及び/又はコレステロールによる代謝量があり、これらの血中濃度と測定値とから算出式を作成し、中性脂肪やコレステロール濃度に対応した代謝量も求めることができる。
【0124】
また、算出した代謝量又はグルコース濃度又は血中グルコース濃度等に対応した代謝量の蓄積された測定値の傾向が、健常者と、動脈硬化や心疾患、耐糖能異常などの代謝病の疾患を患っている患者と異なるため、これら算出した値は、病態を把握できる指標としても使用することができる。蓄積された代謝量を時系列的に表示することによって、その傾向についての判断が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】指表面温度変化と血流の関係を説明する図。
【図2】生体の伝熱モデルを説明する図。
【図3】生体の伝熱モデルを説明する図。
【図4】生体の伝熱モデルと計測計の伝熱モデルを説明する図。
【図5】本発明の一実施例を説明する図。
【図6】本発明により計測される信号波形の例を説明する図。
【図7】本発明の一実施例を説明する図。
【図8】本発明の一実施例を説明する図。
【図9】本発明の一実施例を説明する図。
【図10】本発明を血糖値推定に適用した場合の例を説明する図。
【図11】本発明による測定例を説明する図。
【図12】血糖測定のための計測を説明するための図。
【図13】本発明の血流測定方法を、血糖測定のための計測に適用した場合を説明する図。
【図14】本発明による代謝メーターの上面図。
【図15】本発明による代謝メーターの上面図。
【図16】数値の入力操作を示す図。
【図17】本発明の血流測定方法を、代謝測定のための計測に適用した場合を説明する図。
【符号の説明】
【0126】
201・・・血液温度、202・・・熱抵抗、203・・・組織部位、204・・・組織熱容量、205・・・組織間熱抵抗、206・・・室温、
301・・・血液温度、302・・・熱抵抗、303・・・組織部位、304・・・組織熱容量、305・・・室温、
501・・・センサ、502・・・接触部、503・・・温度検出素子、504・・・支持部、505・・・金属ブロック、506・・・断熱カバー、507・・・赤外線検出素子、
601・・・波形、602・・・波形、603・・・微分波形、
701,702・・・ばね、801・・・変位計測機能、802・・・圧力計測機能、803・・・表示機能、
903,904・・・アナログディジタル変換器、905・・・CPU回路部、
906・・・記憶素子回路部、907・・・表示回路部、908・・・IF回路部、909・・・外部記憶素子回路部




 

 


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