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発明の名称 磁気共鳴イメージング装置の音源位置推定方法および装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−44348(P2007−44348A)
公開日 平成19年2月22日(2007.2.22)
出願番号 特願2005−233355(P2005−233355)
出願日 平成17年8月11日(2005.8.11)
代理人 【識別番号】100093492
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 市郎
発明者 松井 祐二 / 唐司 茂樹
要約 課題
冷凍機の稼動音が大きい環境下でもMRI装置に組み込まれたコイルから発生する音の到着時刻を正確に計測して、音源位置を推定する。

解決手段
MRI装置を稼動する前の試験で、冷凍機7が稼動中、かつ、コイル5、6が非励磁状態のときに、冷凍機音用のセンサ11で計測した音響信号とコイル音用センサ12(1)〜(n)で計測した音響信号から、冷凍機音の伝達関数を予め算出しておく。MRI装置の稼動中には、冷凍機音用センサ11で計測した冷凍機音に、予め算出しておいた伝達関数を乗じて、コイル音計測用センサ位置12(1)〜(n)における冷凍機ノイズを推定し、コイル音計測用センサ12(1)〜(n)で受信した音響信号から推定ノイズを減ずることによってコイルで発生した音を明瞭化してから、音響信号の到着時刻を正確に計測し、音源位置を推定する。
特許請求の範囲
【請求項1】
冷凍機を有する磁気共鳴イメージング装置内に配置されたコイルから発生する音の音源位置を推定する音源位置推定方法において、
冷凍機から発生する音を受信する冷凍機音検出手段及びコイルから発生する音を受信する複数のコイル音検出手段を磁気共鳴イメージング装置の所定位置に配置し、
冷凍機稼動時かつコイル非励磁時に前記冷凍機音検出手段及びコイル音検出手段でそれぞれ音響信号を収録し、
収録された音響信号に基づいて前記冷凍機から発生する音の伝播音の伝達関数を算出し、
冷凍機稼動時かつコイル励磁時に前記コイル音検出手段によって受信した実測音から冷凍機音と前記伝達関数に基づいて推定した冷凍機ノイズを除去したコイル音の受信時刻を算出し、
コイルで発生した音の音源位置を推定すること
を特徴とする音源発生位置推定方法。
【請求項2】
冷凍機を有する磁気共鳴イメージング装置内に配置されたコイルから発生する音の音源位置を推定する音源位置推定方法において、
前記冷凍機が稼動中かつ前記コイル非励磁状態のときに、冷凍機音検出手段で受信した音響信号と複数のコイル音用検出手段で受信した音響信号から前記冷凍機から発生する音の伝播音の伝達関数を予め算出しておき、
前記冷凍機が稼動中かつ前記コイル励磁状態のときに、前記冷凍機音検出手段で受信した冷凍機音と前記予め算出しておいた伝達関数とから前記コイル音用検出手段の設置位置における冷凍機ノイズを推定し、
前記コイル音用検出手段で受信した音響信号と前記推定された冷凍機ノイズに基づいて前記コイルで発生したコイル音を明瞭化し、
前記明瞭化したコイル音の到着時刻を計測し、
前記到着時刻に基づいてコイル音の音源位置を推定すること
を特徴とする音源位置推定方法。
【請求項3】
冷凍機を有する磁気共鳴イメージング装置内に配置されたコイルから発生する音の音源位置を推定する音源位置推定方法において、
前記冷凍機が稼動中かつ前記コイル非励磁状態のときに、冷凍機音検出手段で受信した音響信号と複数のコイル音用検出手段で受信した音響信号から前記冷凍機音の伝達関数を予め算出しておき、
前記冷凍機が稼動中かつ前記コイル励磁状態のときに、前記冷凍機音検出手段で受信された冷凍機音に前記予め算出しておいた伝達関数を乗じて前記コイル音用検出手段の設置位置における冷凍機ノイズを推定し、
前記コイル音用検出手段で受信した音響信号から前記コイル音用検出手段の設置位置における冷凍機ノイズを減じてコイル音を推定し、
前記推定されたコイル音の到着時刻を計測し、
前記到着時刻に基づいてコイル音の音源位置を推定すること
を特徴とする音源位置推定方法。
【請求項4】
前記伝達関数は各コイル音検出手段毎に算出されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の音源位置推定方法。
【請求項5】
前記音源位置の推定は、前記コイル音検出手段で受信した各コイル音の到着時刻の時刻差に基づいて行われることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の音源位置推定方法。
【請求項6】
前記冷凍機は液体へリムを冷却し、前記各音の受信は液体ヘリウムの充填状態で実行されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の音源位置推定方法。
【請求項7】
冷凍機を有する磁気共鳴イメージング装置内に配置されたコイルから発生する音の音源位置を推定する音源位置推定装置において、
前記冷凍機から発生した音を受信する冷凍機音検出手段と、
前記コイルから発生した音を受信する複数のコイル音検出手段と、
前記各検出手段で受信した音響波をデジタル信号として記録する波形収録手段と、
前記冷凍機が稼動中かつ前記コイル非励磁状態のときに前記波形収録部で記録した冷凍機音と前記コイルからの伝播音の伝達関数を算出する伝達関数算出手段と、
前記冷凍機音と前記算出された前記伝達関数とから冷凍機ノイズを推定する冷凍機ノイズ推定手段と、
前記コイル音検出手段で検出した実測音から冷凍機ノイズを差し引いてコイル音を求めるコイル音算出手段と、
前記コイル音算出手段によって算出され、冷凍機ノイズが除去された各コイル音の受信時刻を測定する受信時刻測定手段と、
前記受信時刻測定手段によって測定された各コイル音の受信時刻差から音源位置を推定する音源位置推定手段と、
を備えていることを特徴とする音源位置推定装置。
【請求項8】
冷凍機を有する磁気共鳴イメージング装置内に配置されたコイルから発生する音の音源位置を推定する音源位置推定装置において、
前記冷凍機から発生した音を受信する冷凍機音検出手段と、
前記コイルから発生した音を受信する複数のコイル音検出手段と、
前記各検出手段で受信した音響波をデジタル信号として記録する波形収録手段と、
前記冷凍機が稼動中かつ前記コイル非励磁状態のときに前記波形収録部で記録した冷凍機音と前記コイルからの伝播音の伝達関数を算出する伝達関数算出手段と、
前記伝達関数算出手段によって算出された伝達関数を記憶する記憶手段と、
前記冷凍機音と前記記憶手段に記憶された前記伝達関数とから冷凍機ノイズを推定する冷凍機ノイズ推定手段と、
前記コイル音検出手段で検出した実測音から前記冷凍機ノイズ推定手段によって推定された冷凍機ノイズを差し引いてコイル音を求めるコイル音算出手段と、
前記コイル音算出手段によって算出され、冷凍機ノイズが除去された各コイル音の受信時刻を測定する受信時刻測定手段と、
前記受信時刻測定手段によって測定された各コイル音の受信時刻差から音源位置を推定する音源位置推定手段と、
を備えていることを特徴とする音源位置推定装置。
【請求項9】
コイルが非励磁状態で冷凍機が稼動状態にある試験モード及びコイルが励磁状態で冷凍機が稼働状態にある稼動モードのいずれかを選択するモード選択手段を備えていることを特徴とする請求項7又は8記載の音源位置推定装置。
【請求項10】
前記モード選択手段が前記モードをいずれかに切り替える切替スイッチからなることを特徴とする請求項9記載の音源位置推定装置。
【請求項11】
前記切替スイッチが前記波形収録手段に設けられていることを特徴とする請求項10記載の音源位置推定装置。
【請求項12】
前記冷凍機音検出手段が冷凍機本体に取り付けられていることを特徴とする請求項7又は8記載の音源位置推定装置。
【請求項13】
前記コイル音検出手段が前記コイルを胴部に対して支持する支持部材の前記胴部への取り付け位置近傍に設けられていることを特徴とする請求項7又は8記載の音源位置推定装置。

発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の音検出手段で受信した信号の到着時刻から、その音の発生源の位置を推定する音源位置推定装置に関するものであり、特に磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI装置と称す)に組み込まれている超電導コイルから発生する音を対象とした磁気共鳴イメージング装置の音源位置推定方法及び音源位置推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の音響信号検出センサ(以下、単にセンサと称す)で音響信号を受信し、受信信号の到着時刻差から音源位置を推定する技術としては、例えば、特許文献1に開示された発明が知られている。この発明では、音の伝播経路全体の音速を測定できない場合に、既知の位置で故意に発生させた音を、前記複数のセンサで受信し、その受信信号の到着時刻から音源位置を演算し、その演算された音源位置と前記既知の位置との誤差を格納し、前記複数のセンサで受信した受信信号の到着時刻に基づいて演算された音源位置を、前記格納された誤差に基づき補正する補正手段とを設けたもので、既知の音源位置で発生させた音の測定結果を用いて経路全体の平均音速を補正することにより、未知の音源位置の推定誤差を小さくすることを可能としている。
【特許文献1】特開平6−324139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1記載の発明は、音の伝播経路内で音速が変化する場合があることを想定しているが、音の到着時刻は明瞭に計測できることを前提としている。したがって、音源位置を推定したい着目音に雑音が重畳し、着目音のセンサへの到着時刻が明瞭に計測できない場合には、当然、未知の音源位置を推定することはできない。すなわち、前記特許文献1記載の発明では、着目音に雑音が重畳し、着目音のセンサへの到着時刻が明瞭に計測できない場合のことは想定していない。このような状況は、例えば、冷凍機を備えているMRI装置において発生する。MRI装置において、当該MRI装置に組み込まれたコイルから発生する音を受信しようとする場合、冷凍機稼動音のレベルがコイルから発生する音より大きくなってしまう場合があり、冷凍機稼働音のレベルがノイズとして着目音に重畳されることになる。このようなノイズの大きい環境で着目音の到着時刻を正確に計測する方法については、特許文献1は考慮していない。
【0004】
本発明の目的は、上記従来技術の現状に鑑み、冷凍機の稼動音が大きい環境の下でもMRI装置に組み込まれたコイルから発生する音の到着時刻を正確に計測し、この正確な到着時刻に基づいてコイルの音源位置を推定する方法及び音源位置推定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、MRI装置のコイルが非励磁状態で冷凍機が稼動状態にあるときを試験モード、コイルが励磁状態にあるときを稼動モードと定義する。試験モードは、コイルからは音が発生せず、冷凍機音は発生している状況となる。稼動モードでは、コイルから音が発生する可能性がある。本発明は、試験モードにおいて、冷凍機音用検出手段で計測した冷凍機音とコイル音検出手段で計測した冷凍機ノイズをMRI装置の稼動前に収録し、稼動モードでMRI装置を操作する前に、伝達関数を算出・記録し、この記録された伝達関数を使用して冷凍機ノイズを推定し、更に、推定された冷凍機ノイズを使用してコイル音検出手段によって検出される音響信号から冷凍機ノイズを除去し、除去したコイル音の受信時刻から音源位置を推定するようにしたものである。
【0006】
具体的には、本発明は、冷凍機を有する磁気共鳴イメージング装置内に配置されたコイルから発生する音の音源位置を推定する音源位置推定方法において、前記冷凍機が稼動中かつ前記コイル非励磁状態のときに、冷凍機音検出手段で受信した音響信号と複数のコイル音用検出手段で受信した音響信号から前記冷凍機音の伝達関数を予め算出しておき、前記冷凍機が稼動中かつ前記コイル励磁状態のときに、前記冷凍機音検出手段で受信した冷凍機音と前記予め算出しておいた伝達関数とから前記コイル音用検出手段の設置位置における冷凍機ノイズを推定し、前記コイル音用検出手段で受信した音響信号と前記推定された冷凍機ノイズに基づいて前記コイルで発生したコイル音を明瞭化した後、音響信号の到着時刻を計測し、前記到着時刻に基づいて音源位置を推定することを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、前記方法を実施する装置として、冷凍機を有する磁気共鳴イメージング装置内に配置されたコイルから発生する音の音源位置を推定する音源位置推定装置において、前記冷凍機から発生した音を受信する冷凍機音検出手段と、前記コイルから発生した音を受信する複数のコイル音検出手段と、前記各検出手段で受信した音響波をデジタル信号として記録する波形収録手段と、前記波形収録部で記録した冷凍機音と前記コイルからの伝播音の伝達関数を算出する伝達関数算出手段と、前記冷凍機音と前記算出された前記伝達関数とから冷凍機ノイズを推定する冷凍機ノイズ推定手段と、前記コイル音検出手段で検出した実測音から冷凍機ノイズを差し引いてコイル音を求めるコイル音算出手段と、前記コイル音算出手段によって算出され、冷凍機ノイズが除去された各コイル音の受信時刻を測定する受信時刻測定手段と、前記受信時刻測定手段によって測定された各コイル音の受信時刻差から音源位置を推定する音源位置推定手段とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、冷凍機の稼動音が大きい環境下でも磁気共鳴イメージング装置に組み込まれたコイルから発生する音の到着時刻を正確に計測できるので、コイルから発生した音の音源位置を正確に推定することができる。その際、冷凍機ノイズを除去し、小さなコイル音の発生まで検知できるので、コイルの状態を細かく把握することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
本発明に係る音源位置推定方法は、冷凍機を有するMRI装置に組み込まれたコイルから発生する音を対象としている。図1は本発明の一実施形態に係る音源位置推定装置の構成を示すブロック図である。図1において、MRI装置は上部胴1、下部胴2、両者を連結する連結管3,4、及び上部胴の上部に設けられた冷凍機7を備えている。上部胴1には上コイル5が、下部胴2には下コイル6がそれぞれ組み込まれている。冷凍機7には冷凍機7から発する音を検出する冷凍機音検出手段としての冷凍機用出センサ11が、上部胴1及び下部胴2にはそれぞれに収容されたコイルから発する音を検出する複数のコイル音検出手段としてのコイル音用センサ12(1) 〜12(n)がそれぞれ設けられている(nは2以上の整数、以下、同様)。これらのセンサとして、アコースティク・エミッション(AE)センサが使用される。また、アコースティク・エミッション(AE)センサに代えて超音波探触子を使用することもできる。なお、本発明では「音」は固体中を伝搬するものを対象としている。この実施形態では、センサはn(4≦n)個設けられている。
【0011】
また、アンプ13、14(1)〜14(n)には、使用センサに適したAEセンサ用アンプが使用され、これらのアンプ13、14(1)〜14(n)は波形収録部15の前段に設けられる。そして、冷凍機用センサ11からの検出出力がアンプ13に、各コイル音用センサ12(1)〜12(n)からの検出出力がアンプ14(1)〜14(n)に入力され、アンプ13,14(1)〜14(n)で増幅された出力が波形収録部15に入力される。波形収録部15の後段には伝達関数算出部17及びコイル音算出部20が設けられている。コイル音算出部20の前段には冷凍機ノイズ推定部19が設けられ、冷凍機ノイズ推定部19には前記伝達関数算出部17の後段に設けられた伝達関数記憶部18に格納された伝達関数が入力される。更に、前記コイル音算出部20の後段には、受信時刻推定部21及び音源位置推定部22が設けられ、音源位置推定部22には伝播時間記憶部25から伝播時間が入力され、表示部23に前記音源位置推定部22から推定された音源位置が出力される。
【0012】
波形収録部15は、A/Dボードを搭載したコンピュータなどの情報処理装置、ここではパーソナルコンピュータ(以下、パソコンと称す)、または、デジタルオシロスコープなどを使用する。波形収録部15にはモード切替スイッチ16が備えられている。このモード切替スイッチ16は、多接点の機械的な切換器を使用したハード的なものと、パソコンにインストールしたプログラムで信号処理の流れを切り替えるソフト的なもので実現できる。ソフト的な方法で切り替える場合は、パソコンの表示画面を見ながらキーボードかマウスを操作してモードを選択し、意図とおりのモードを選択していることを画面表示で確認することになる。伝達関数算出部17、冷凍機ノイズ推定部19、コイル音算出部20、受信時刻測定部21、音源位置推定部22はパソコンとパソコンにインストールしたプログラムによって実現でき、伝達関数記憶部18、伝播時間差記憶部25はハードディスクなどの記憶媒体によって実現できる。表示部23には、CRT、液晶モニタなどのパソコン画面を使用する。波形収録部15をA/Dボードを搭載したパソコンとし、モード切替スイッチ16をソフト的なものにすると、音響センサ11,12とアンプ13,14以外は、パソコンとA/Dボード、ハードディスクなどの周辺機器とパソコンにインストールしたプログラムなどで本発明の装置を実現できる。
【0013】
被検査体は磁気共鳴イメージング装置(MRI)であり、前述のようにそれぞれの内部に上コイル5と下コイル6を組み込んだ上部胴1と下部胴2が連結管3,4で接続されている。上部胴1に取り付けられた冷凍機7は、稼動中は機械音を発生する。冷凍機7には、冷凍機音を計測するためにセンサ11が設置され、計測した音響信号をアンプ13で増幅する。上部胴1および下部胴2の周囲には、コイル5,6からの音を計測するための複数のセンサ12(1)〜12(n)が設置してあり、計測した音響信号をアンプ14(1)〜14(n)で増幅する。上部胴1、下部胴2の内部には、図示しない容器が設置されており、上コイル5、下コイル6はこの容器内に取り付けられている。コイル5,6は図1には図示していない数本のコイル支持部材(図4符号8(1)〜8(p))で保持されており、コイル5,6からの音を計測するためのセンサ12(1)〜12(n)は、この支持部材と上部胴1、下部胴2の接続部近傍に取り付けてある。また、上部胴1と下部胴2には前記コイル5,6の容器を内包するように密封容器が配置され、液体ヘリウムが充填される。なお、液体ヘリウムの密封容器や密封構造は公知のものなので、説明は省略する。また、前述の支持構造材と上部胴1、下部胴2の接続部近傍とは当該接続部が音の伝達部であることから、コイル5,6側から胴部1,2への音の伝達部近傍である。従って、接続形状が異なれば、センサの取り付け位置も異なってくる。
【0014】
冷凍機7が停止しているときには、大きな機械音ノイズがないため、コイル5,6で発生する音響信号の受信時刻を正確に評価できる。このため、正確な時刻差に基づく音源位置推定が可能である。しかしながら、冷凍機7の稼動中では、冷凍機音が発生し、上部胴1、連結管3,4、下部胴2等の構造材を伝播してコイル音用センサ12(1)〜12(n)の設置位置まで達してノイズとなる。コイルで発生した音と冷凍機ノイズが重畳してしまうと、コイル音の受信時刻を正確に判断することができない。
【0015】
そこで、本実施形態では、MRI装置のコイルが非励磁状態で冷凍機が稼動状態にあるときと、コイルが励磁状態で冷凍機が稼働状態のときのそれぞれについて前記センサ13、14(1)〜14(n)から音響信号を検出する。この実施形態では、前者を試験モード、後者を稼動モードと定義する。試験モードでは、コイル5,6は非励磁状態であるのでコイル5,6から音は発生せず、冷凍機7から音が発生している状況となる。稼動モードでは、コイル5,6から音が発生する可能性がある。
【0016】
そのため、冷凍機7が稼動中で上コイル5、下コイル6が非励磁中の試験モードで、冷凍機音の伝播特徴を把握するためのデータを収録して、伝達関数を算出・記憶しておく。稼動モードでは、コイル音用センサ12(1)〜12(n)の受信信号から冷凍機ノイズを除去し、コイル音の受信時刻を測定する。これにより、正確な時刻差に基づく音源位置推定が可能となる。
【0017】
まず、試験モードにおける信号処理方法について説明する。
試験モードでは、モード切替スイッチ16を試験モード(図1の矢印方向)にしておく。この状態で、センサ11、12(1)〜(n)で冷凍機7の振動によって生じる音響信号を受信し、アンプ13、14(1)〜(n)で増幅した信号を波形収録部15でデジタル信号に変換して収録する。モード切替スイッチ16が試験モードにしてあるので、収録波形は伝達関数算出部17に送られる。
【0018】
伝達関数算出部17における信号処理方法を図2に模式的に示す。冷凍機音は連続音ではなく間歇的な繰り返し音の場合があるので、オペレータはセンサ11で受信した冷凍機音波形を観察し、冷凍機音の特徴を含む信号振幅の大きい部分を時間ゲートGTで切り取る。また、オペレータはセンサ12(1)で受信した伝播音S1の波形(横軸に時間、縦軸に電圧を取った波形、以下、同様)を観察し、前述の時間ゲートGTで切り取った部分の冷凍機波形がセンサ12(1)位置まで伝播した部分を推定して、この部分の波形を冷凍機音と同じ時間幅のゲートGTで切り取る。冷凍機音S0と伝播音S1の時間ゲートGTの開始時刻が異なる可能性があるので、時間ゲートGT開始の時刻差をむだ時間d1として記録しておく。ゲートGTで切り取った冷凍機音波形にウェーブレット変換、または、高速フーリエ変換(FET)を適用し、周波数毎の振幅A0と位相φ0を算出する。伝播音S1の波形も同様に変換し、周波数毎の振幅A1と位相φ1を算出する。冷凍機音S0を入力信号、伝播音S1を出力信号と考え、次式に示す周波数毎の振幅比G(f)と位相差θ(f)で表現できる伝達関数
(f)=A(f)/A(f) …… (1)
θ(f)=φ(f)−φ(f) …… (2)
を算出する。位相差θ(f)は周波数毎の信号応答の遅れを表すものなので、次式
τ(f)=d+φ(f)/2πf …… (3)
を適用して、周波数毎の時間遅れτとして表現することもできる。
【0019】
算出した伝達関数は、周波数f、振幅比G(f)、位相差φ(f)、むだ時間dからなる行列(記録形式1)、または、周波数f、振幅比G(f)、遅れ時間τ(f)からなる行列(記録形式2)などの形式で、伝達関数記憶部18に記録する。
【0020】
冷凍機7からセンサ12(1)までの音響波伝播経路とセンサ12(2)までの伝播経路は異なるので、伝達関数も異なる可能性がある。センサ12(2)〜センサ12(n)で受信した伝播音S2〜Snについても、上記センサ12(1)の場合と同様の手順で伝達関数を算出し。伝達関数記憶部18に記録する。なお、切り取るゲートGTの数は図2に示す1つのゲートGTの波形が繰り返されるので、観察に基づいて立ち上がりから減衰まで1つのゲートGTで切り取れば充分である。
【0021】
次に、稼動モードにおける信号処理について説明する。
試験モードでは、モード切替スイッチ16を試験モードにしておく。センサ11、12(1)〜(n)で受信し、アンプ13、14(1)〜(n)で増幅した信号を、波形収録部15でデジタル信号に変換して収録する。モード切替スイッチ16が稼動モードにしてあるので、センサ11で計測した冷凍機音S0は冷凍機ノイズ推定部19に、センサ12(1)〜(n)で受信した実測音S1’〜Sn’はコイル音算出部20に送られる。冷凍機ノイズ推定部19とコイル音算出部20における信号処理法を図3に模式的に示す。センサ11で計測した冷凍機音波形WRにウェーブレット変換を適用し、f〜fの周波数成分毎の信号変化Wf〜Wfに分離する。伝達関数記憶部18に記録した伝達関数の振幅比G(f)と遅れ時間τ(f)を用いて、
W’f(t)=G(f)・Wf(t−τ(f)) ……(4.1)
W’f(t)=G(f)・Wf(t−τ(f)) ……(4.2)
: :
W’f(t)=G(f)・Wf(t−τ(f)) ……(4.k)
によりセンサ12(1)位置での各周波数成分の応答W’f〜W’fを予測する。
【0022】
各周波数成分の応答W’f〜W’fに逆ウェーブレット変換を適用し、冷凍機ノイズN1の予測波形W’Rを算出する。コイル音算出部20では、波形収録部15から送られてきた実測音S1’の波形WRから冷凍機ノイズN1の予測波形W’R
WC(t)=WR(t)−W’R(t) ……(5)
のように差し引き、コイル音C1の波形WCを算出する。式(5)で算出されたコイル音C1の波形WCは、実測音S1’の波形から冷凍機ノイズN1の波形を減じることにより冷凍機ノイズN1が除去されたものとなっており、コイル5で発生する音のSN比が著しく向上している。センサ12(2)〜センサ12(n)で受信した伝播音についても、上記センサ12(1)の場合と同様の手順で冷凍機ノイズN2〜Nnを除去し、SN比の良いコイル音C2ないしCnの波形WC〜 WCを算出する。
【0023】
受信時刻測定部21では、コイル音C1〜Cnの波形WC〜 WCの受信時刻を測定し、センサ12(1)〜(n)で受信したコイル音の時間差を算出する。コイル音WC〜 WCは冷凍機ノイズN1〜Nnを除去した信号なので、受信時刻を正確に測定することができる。音源位置推定部22では、受信時刻測定部21で測定した時間差と、予め伝播時間差記憶部25に記録しておいた時間差データベースを比較し、コイル音の発生位置を推定する。
【0024】
ここで、仮想音源走査法に基づいて伝播時間差記憶部25に記録する時間差データベースの算出する方法について、図4を用いて説明する。上コイル5は、複数のコイル支持材8(1)〜8(p)によって上部胴1に固定されている。上コイル5の周方向、径方向、高さ方向をそれぞれ適切な間隔で分割し、コイル5をメッシュ状に細分して考える。このメッシュの交点に仮想音源24があると仮定し、仮想音源24からコイル音用センサ12(1)〜12(p)までの伝播経路を考える。上コイル5がコイル支持材8(1)〜8(p)で支持されているので、仮想音源24から発した音は、まず上コイル5とコイル支持材8(1)〜8(p)の接合点5(1)〜5(p)まで上コイル5の内部を伝播する。上コイル5の中心孔を経由しないルートで仮想音源24から上コイル5とコイル支持材8(1)〜8(p)の接合点5(1)〜5(p)までの最短経路を考え、コイル音速の情報を加えると、接合点5(1)〜5(p)までの伝播時間を算出できる。
【0025】
次に、コイル支持材8(1)〜8(p)、および、上部胴1を伝播する経路を考え、コイル支持材8(1)〜8(p)中の音速、上部胴1構造材中の音速の情報を加えると、接合点5(1)〜5(p)からコイル音用センサ12までの伝播時間を算出できる。その際、上部胴1の上コイル5を収納した空間には上部胴1との間に真空層を挟んで密閉構造で液体ヘリウムが充填されているので、コイル5,6の中心部の空間部にも液体ヘリウムが満たされている。音は固体(ここでは金属)の方が伝達特性に優れており、固相から液相に伝播することは少なく、よしんば液相に伝播しても液相から固相に伝播する間に減衰するので、液相部分(液体ヘリウム)に伝達される音は実質的に無視することができる。
【0026】
そこで、仮想音源24から接合点5(1)〜5(p)までの伝播時間と、接合点5(1)〜5(p)からコイル音用センサ12までの伝播時間を加算すると、全体の伝播時間を算出できる。もし、仮想音源24からコイル音用センサ12までの経路が複数考えられる場合には、考えられる経路の伝播時間を全て算出し、最短の伝播時間を選択する。各コイル音用センサ12(1)〜(p)の伝播時間から最短伝播時間を差し引くと、仮想音源24の位置で発生した音の時間差を算出できる。上コイル5のメッシュ上で仮想音源24を走査しながら各走査点での上記のように伝播時間差を算出する操作を繰り返し、時間差データベースを算出する。音源位置推定部22では、受信時刻算出部21で測定した時間差と伝播時間差記憶部25に記録しておいた時間差データベースを比較し、時間差の差が最小となるメッシュ交点位置を音源位置と推定する。推定結果は、表示部23に表示する。
【0027】
このように処理すると、冷凍機ノイズを除去したSN比の良いコイル音の受信時刻差に基づいて音源位置を推定しているので、確からしい音源位置推定が可能となる。
【0028】
また、冷凍機ノイズNを除去しない一般的な方法では、発生したコイル音が冷凍機音より小さい場合には検出は困難であり、コイル音の発生を検知することができないため音源位置の評定を行うこともできない。これに対し、本実施形態では、前記式(5)のようにしてコイル検出音から冷凍機ノイズを除去できるので、小さなコイル音の発生まで検知することが可能となり、概略位置を評定できる。その結果、コイルの状態を細かく把握することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る音源位置推定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】試験モードで収録した音響信号の伝達関数算出手順を模式的に示す説明図である。
【図3】稼動モードでコイル音信号から冷凍機ノイズを除去する信号処理手順を模式的に示す説明図である。
【図4】時間差データベースの算出方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 上部胴
2 下部胴
5 上コイル
6 下コイル
7 冷凍機
8(1)〜8(p) コイル支持材
11 冷凍機音用センサ
12(1)〜12(n) コイル音用センサ
15 波形収録部
16 モード切替スイッチ
17 伝達関数算出部
18 伝達関数記憶部
19 冷凍機ノイズ推定部
20 コイル音算出部
21 受信時刻算出部
22 音源位置推定部
23 表示部
24 仮想音源




 

 


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