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発明の名称 超音波診断装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−130063(P2007−130063A)
公開日 平成19年5月31日(2007.5.31)
出願番号 特願2005−323543(P2005−323543)
出願日 平成17年11月8日(2005.11.8)
代理人 【識別番号】100075258
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 研二
発明者 伊藤 安啓
要約 課題
組織の複数時相に亘る運動を視覚的に捕らえる技術を提供する。

解決手段
パターンマッチングの手法を利用して、複数フレームに亘って心筋の動きに伴って追跡点が動的に追跡され、所定フレームの心筋1の超音波画像上に、複数フレームに亘って動的に追跡される追跡点の軌跡が、矢印群5によって表現される。矢印群5に含まれる各矢印は、フレーム間の特定部位の移動を示す矢印であり、フレーム間における追跡点の移動を示すものである。このため、矢印群5が表示された軌跡表示画像から、複数フレームに亘る心筋1の特定部位の動きを視覚的に捕らえることができる。
特許請求の範囲
【請求項1】
対象組織を含む空間内に超音波を送受波してエコー信号を取得する送受波手段と、
エコー信号から得られるデータで構成されるデータ空間内において、対象組織の動きに伴って移動する対象組織の特定部位を複数フレームに亘って追跡する特定部位追跡手段と、
対象組織の動きに伴って複数フレームに亘って動的に追跡される特定部位について、その特定部位の動きを反映させた組織運動の評価画像を形成する評価画像形成手段と、
を有する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記評価画像形成手段は、前記評価画像として、複数フレームに亘って動的に追跡される特定部位の軌跡を示す軌跡表示画像を形成する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波診断装置において、
前記軌跡表示画像は、フレーム間の特定部位の移動を示す矢印または線分を複数フレームに亘って表示した画像である、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記評価画像形成手段は、前記評価画像として、複数フレームに亘って動的に追跡される特定部位の速度変化を示す速度変化グラフを形成する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記評価画像形成手段は、前記評価画像として、フレーム間の特定部位の移動を示す矢印または線分であって複数フレームに亘って動的に設定される矢印または線分について、その矢印または線分の角度変化を示す角度変化グラフを形成する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記評価画像形成手段は、前記評価画像として、フレーム間の特定部位の移動を示す矢印または線分であって複数フレームに亘って設定される複数の矢印または線分について、それら複数の矢印または線分の各々の始点を原点上に揃えて表示した動きベクトル表示画像を形成する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特に組織の動きを反映させた表示画像を形成する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置を利用することによって、例えば心臓などの組織の動きを超音波画像として表示することができる。また、ドプラ情報から組織の運動速度を計測することもできる。
【0003】
特許文献1には、ドプラエコーに基づいて複数のサンプルボリュームにおける速度ベクトルを求めて、さらに、心筋の断層画像上の各サンプルボリュームの位置に速度ベクトルに対応した矢印を表示する技術が記載されている(特許文献1第20図参照)。
【0004】
また、特許文献2には、心臓の時系列画像からパターンマッチングなどを用いて各部の位置座標や運動速度を求めて、さらに、運動速度を収縮/拡張方向成分とその他の方向成分とに分類して、収縮/拡張方向成分の速度ベクトルを心臓の画像上に矢印で表示する技術が記載されている(特許文献2第5図参照)。
【0005】
ちなみに、速度ベクトルを超音波画像上に矢印で表示する旨は、特許文献3や特許文献4においても示唆されている。
【0006】
【特許文献1】特開平6−114059号公報
【特許文献2】特開2003−265480号公報
【特許文献3】特開平8−299333号公報
【特許文献4】特開2005−130877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記各特許文献に記載されているように、組織内の各位置の速度ベクトルを超音波画像上に矢印で表示することにより、各時相ごとに心筋の動きを視覚的に捕らえることが可能になる。しかしながら、組織の複数時相に亘っての運動、例えば、心筋の拡張収縮の1心周期の運動の様子を視覚的に捕らえることは困難であった。
【0008】
本発明は、このような背景において成されたものであり、その目的は、組織の複数時相に亘る運動を視覚的に捕らえる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の好適な態様である超音波診断装置は、対象組織を含む空間内に超音波を送受波してエコー信号を取得する送受波手段と、エコー信号から得られるデータで構成されるデータ空間内において、対象組織の動きに伴って移動する対象組織の特定部位を複数フレームに亘って追跡する特定部位追跡手段と、対象組織の動きに伴って複数フレームに亘って動的に追跡される特定部位について、その特定部位の動きを反映させた組織運動の評価画像を形成する評価画像形成手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
上記構成では、複数フレームに亘って動的に追跡される特定部位の動きを反映させた組織運動の評価画像が形成される。評価画像としては、例えば、複数フレームに亘って動的に追跡される特定部位の軌跡を示す軌跡表示画像などが形成される。望ましくは、その軌跡表示画像は、フレーム間の特定部位の移動を示す矢印または線分を複数フレームに亘って表示した画像である。上記構成により、軌跡表示画像などの評価画像から、組織の複数時相に亘る運動を視覚的に捕らえることが可能になる。
【0011】
望ましい態様において、前記評価画像形成手段は、前記評価画像として、複数フレームに亘って動的に追跡される特定部位の速度変化を示す速度変化グラフを形成することを特徴とする。また、望ましい態様において、前記評価画像形成手段は、前記評価画像として、フレーム間の特定部位の移動を示す矢印または線分であって複数フレームに亘って動的に設定される矢印または線分について、その矢印または線分の角度変化を示す角度変化グラフを形成することを特徴とする。また、望ましい態様において、前記評価画像形成手段は、前記評価画像として、フレーム間の特定部位の移動を示す矢印または線分であって複数フレームに亘って設定される複数の矢印または線分について、それら複数の矢印または線分の各々の始点を原点上に揃えて表示した動きベクトル表示画像を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、組織の複数時相に亘る運動を視覚的に捕らえることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
まず、図1および図2を利用して本実施形態において実行される追跡処理の原理について説明する。この処理は超音波診断装置において実行されるものであるが、超音波診断装置からデータを取得するコンピュータにおいて実行されてもよい。
【0015】
図1は、対象組織である心筋を含む超音波画像を示している。つまり、図1に示す超音波画像は、心筋1を含む空間内に超音波を送受波して得られるエコー信号から形成されるBモード画像である。なお本実施形態においては、超音波画像として、心筋1や血流の速度を色によって表現するカラードプラ画像を形成してもよい。つまり、エコー信号から得られるドプラ情報に基づいて、心筋1や心筋1に囲まれた心腔内の血流の各位置ごとの速度を算出し、算出された速度を色によって表現したカラードプラ画像を形成してもよい。
【0016】
心筋1は、その厚さを変化させることによって、血液を全身に循環させるポンプとして機能する。このため、心臓の機能の評価において、心筋1の動きの評価は一つの重要な評価要素となる。例えば、心筋梗塞の症状が進むと、心筋1の厚み変化に影響が生じる。本実施形態では、まず、心筋1に対して、例えば内膜の特定部位を指定する追跡点2が設定される。追跡点2は、例えばユーザが超音波画像を見ながら所望の位置に設定する点であり、内膜の特定部位を指定するものに限定されない。例えば、外膜の特定部位を指定する点や心筋1の組織内部の点が指定されてもよい。
【0017】
図2は、心筋1の動きを説明するための図であり、図1の追跡点2の近傍の拡大図である。心筋1は厚みを変化させた結果、図2において、内膜面(破線)10´および外膜面(破線)11´で示す輪郭から、内膜面(実線)10および外膜面(実線)11で示す輪郭に変化する。この際、心筋1に対して設定された追跡点2の位置の組織部位は、移動点3の位置に移動する。そして、追跡点2から移動点3までの移動が矢印4によって表現されている。なお、追跡点2から移動点3までの移動は、矢印4に換えて追跡点2と移動点3を結ぶ線分で表現されてもよい。
【0018】
追跡点2の移動は、Bモード画像からパターンマッチングの手法で確認することができる。つまり、例えば、追跡点2が設定されたフレーム(前フレーム)のBモード画像と、移動点3が検出されるフレーム(現フレーム)のBモード画像を比較し、追跡点2の近傍の画像に類似する画像を現フレームから抽出することにより移動点3を検出することができる。パターンマッチングの手法としては、テンプレートマッチング法やPGマッチング法などの公知の技術を挙げることができる。もちろん、本実施形態では、他のパターンマッチング技術が利用されてもよい。
【0019】
本実施形態では、パターンマッチングの手法を利用して、追跡点2が複数フレームに亘って追跡され、心筋の動きに伴って心筋の特定部位が動的に追跡される。そして、その特定部位の動きを反映させた組織運動の評価画像が形成される。図3から図9には、本実施形態の超音波診断装置によって形成される評価画像の例が図示されている。
【0020】
図3は、組織運動の評価画像である軌跡表示画像を示す図である。つまり、所定フレームの心筋1の超音波画像上に、複数フレームに亘って動的に追跡される追跡点の軌跡を、矢印群5によって表現した画像である。図3に示すように、複数フレームに亘って設定される複数の矢印(矢印群5)が、所定フレーム(例えば最新フレーム)の超音波画像上に一括表示されているため、複数フレームに亘る追跡点の動きを視覚的に容易に捕らえることが可能になる。
【0021】
矢印群5に含まれる各矢印は、フレーム間の特定部位の移動を示す矢印であり、フレーム間における追跡点の移動を示すものである。つまり、図2の矢印4に相当する。このため、図3に示す軌跡表示画像から、複数フレームに亘る心筋1の特定部位の動きを視覚的に捕らえることができる。
【0022】
図4は、図3の軌跡表示画像における矢印群を示している。矢印群5は、複数の矢印4で構成されている。各矢印4は、フレーム間における追跡点の移動を示すものである。各矢印4の始点は、フレーム間における移動前の追跡点の位置に設定される。つまり、例えば図2に示すフレーム間の移動の場合、矢印4の始点は、移動前の追跡点2の位置に設定される。図4に示す矢印群5は、複数フレームに亘って設定される複数の矢印4によって構成される。
【0023】
なお、矢印群5に含まれる複数の矢印4は、その時相に応じて互いに異なる表示態様で表示されてもよい。例えば、矢印4の色、太さ、線種、輝度などによって複数時相の矢印4が互いに区別できる表示態様が望ましい。また、特定時相の矢印4sに対してのみ太線などによって強調表示を行ってもよい。特定時相とは、例えば、矢印群5が重ねられる超音波画像の時相や、矢印4の長さが最大となる時相などである。
【0024】
さらに、矢印群5は、例えば、1心拍期間内の矢印4で構成されてもよい。つまり、心電信号から得られるR波のタイミングを利用して、R波に対応するフレームから次々に得られるフレーム間の矢印4を重ねて1心拍期間内の矢印群5を構成し、次のR波のタイミングでその矢印群5を消去してから、次の1心拍期間内の矢印群5を再構成する表示態様でもよい。また、各心拍期間ごとに矢印群5の表示態様(色など)を換えることにより、複数の心拍期間に亘って得られる複数の矢印群5を同時表示してもよい。
【0025】
さらに、矢印4の長さをフレーム間の時間で除すことにより、追跡点の移動速度(つまり特定部位の移動速度)を求めることができる。このため、矢印4の長さを移動速度に応じた長さで表現してもよい。例えば、速度1cm/秒を10画素分の長さと定義して、追跡点の移動速度に応じて矢印4の長さが設定される。
【0026】
なお、矢印4に換えて、矢印4の向きを省略した線分を利用して、矢印群5に換えて線分群を表示させてもよい。この場合、追跡点の移動方向を線分上の色などによって表現してもよい。
【0027】
図5は、複数の矢印4の始点を原点上に揃えて表示した動きベクトル表示画像6を示す図である。動きベクトル表示画像6は、複数の矢印4で構成されている。各矢印4は、フレーム間の特定部位の移動を示している。つまり、図2の矢印4に相当する。但し、図5においては、各矢印4の始点が、原点O上に揃えられている。
【0028】
動きベクトル表示画像6において、矢印4の長さはフレーム間における特定部位の移動距離に相当し、そして、矢印4の方向(例えば、横軸に対する角度)はフレーム間における特定部位の移動方向に相当する。なお、図5に示す動きベクトル表示画像6では、初期時相の矢印4の角度を角度の基準(例えば0°)としてもよいし、振動子方向や画面のXY座標の軸方向を基準として角度を定義してもよい。
【0029】
図5の動きベクトル表示画像6に含まれる複数の矢印4は、その時相に応じて互いに異なる表示態様で表示されてもよい。また、各矢印4が存在する象限によって各矢印4の表示態様(色など)を設定してもよい。また、特定時相の矢印4に対してのみ太線などによって強調表示を行ってもよい。さらに、動きベクトル表示画像6に含まれる複数の矢印4は、例えば、1心拍期間内の複数の矢印4(矢印群)で構成されてもよい。つまり、心電信号から得られるR波のタイミングを利用して、R波に対応するフレームから次々に得られるフレーム間の矢印4を重ねて1心拍期間内の矢印群を構成し、次のR波のタイミングでその矢印群を消去してから、次の1心拍期間内の矢印群を再構成する表示態様でもよい。また、各心拍期間ごとに矢印群の表示態様(色など)を換えることにより、複数の心拍期間に亘って得られる複数の矢印群を同時表示してもよい。
【0030】
図5の動きベクトル表示画像6において、矢印4の長さをフレーム間の時間で除すことにより、追跡点の移動速度(つまり特定部位の移動速度)を求めることができる。このため、矢印4の長さを移動速度に応じた長さで表現してもよい。また、矢印4の長さは、基準となる時相の矢印4の長さなどによって正規化されてもよい。なお、矢印4に換えて矢印4の向きを省略した線分を利用して動きベクトル表示画像6を表現してもよい。
【0031】
図6は、組織運動の評価画像である速度の変化グラフを示す図である。つまり、図6に示すグラフは、複数フレームに亘って動的に追跡される追跡点の速度の変化を示すグラフであり、追跡点の速度を示す縦軸と、各時相を示す時間軸(横軸)とによって構成される。追跡点の速度(つまり特定部位の移動速度)は、図4または図5に示す各矢印4の長さをフレーム間の時間で除すことにより求めることができる。図6のグラフから、複数フレーム(複数時相)に亘る心筋の特定部位の速度の変化の様子を視覚的に捕らえることができる。
【0032】
図7は、組織運動の評価画像である角度の変化グラフを示す図である。図7に示す角度の変化グラフは、図4または図5に示す複数の矢印4の角度変化を示すグラフであり、基準時相の矢印に対する各時相の矢印の角度を示す縦軸と、各時相を示す時間軸(横軸)とによって構成される。各矢印は、心筋の特定部位のフレーム間の移動を示すベクトルである。そして、各矢印の角度の変化は、心筋の拡張収縮運動におけるねじれ運動などによって発生する。つまり、図7のグラフから、複数フレーム(複数時相)に亘る心筋のねじれ具合などを視覚的に捕らえることができる。
【0033】
図1から図7を利用した説明では、心筋(図1の符号1)に対して1点の追跡点(図1の符号2)のみが設定されていた。しかしながら、心筋の複数の関心部位に複数の追跡点が設定されてもよい。
【0034】
図8は、複数の関心部位に複数の追跡点が設定された場合の評価画像を示す図である。つまり、心筋1の互いに異なる複数の関心部位に複数の追跡点が設定され、各追跡点ごとに図1および図2を利用して説明した原理によって矢印が形成され、図8に示す矢印4a〜4dが表示されている。そして、各矢印4a〜4dごとに矢印群(図4の符号5)や動きベクトル表示画像(図5の符号6)が形成され、また、各矢印4a〜4dごとに、速度の変化グラフ(図6)や角度の変化グラフ(図7)が形成される。
【0035】
なお、図8に示すように、互いに異なる複数の関心部位に対応する矢印4a〜4dは、互いに異なる表示態様で表示されることが望ましい。つまり、矢印の色、太さ、線種、輝度などによって矢印が互いに区別できる表示態様が望ましい。さらに、各矢印4a〜4dごとに、時相に応じて表示態様を変化させてもよい。また、各矢印4a〜4dごとに、特定の時相の矢印のみを表示させてもよい。例えば、各矢印4a〜4dごとに、矢印の長さが最大となる時相の矢印のみを表示させてもよいし、矢印の角度がゼロとなる時相の矢印のみを表示させてもよい。
【0036】
図9は、複数の関心部位に複数の追跡点が設定された場合の評価画像の表示例を示す図である。表示画像90は、変化グラフ群92、カラードプラ画像100、Bモード画像102を含んでいる。なお、図示の都合上、カラードプラ画像100において速度に応じた色の表現を省略しているが、実際には、対象組織である心筋の断層画像上の各部に、その速度に応じた色が施される。
【0037】
変化グラフ群92は、複数の矢印4の各々についての変化グラフバー80で構成される。各変化グラフバー80は、各矢印4に対応する追跡点の速度の変化グラフ(図6)または各矢印4の角度の変化グラフ(図7)に対応するものであるが、以下においては、各変化グラフバー80は、各矢印の角度の変化グラフに対応するものとして説明する。各変化グラフバー80は、各時刻ごとの矢印の角度を色で識別できるように配色されて時間軸方向に延びたバーである。図示の都合上、図9において、各変化グラフバー80の色は省略しているが、実際には、各変化グラフバー80には、各時刻ごとの矢印の角度が色によって表現されている。
【0038】
変化グラフ群92は、複数の変化グラフバー80を、時相が揃うように並べることにより形成されたものである。図9においては、横方向に時間軸が伸びている。従って、横軸の所定の位置(時刻)において、縦方向に複数の変化グラフバー80の色を見ることにより、同じ時刻(同じ時相)における複数の矢印4の角度を確認することができる。
【0039】
変化グラフ群92に反映される変化グラフバー80は、複数の矢印4に対応している。そして、これら複数の矢印4は、カラードプラ画像100およびBモード画像102に表示される。つまり、カラードプラ画像100およびBモード画像102内の心筋1に対して、複数の関心部位の各々に矢印4が表示されている。図9においては、10箇所の関心部位に対応する10本の矢印4が表示されている。
【0040】
各矢印4と各変化グラフバー80との対応関係を明示するため、矢印番号94が示されている。この矢印番号94には、対応する矢印4に応じた色が施される。つまり、例えば、Bモード画像102上の10本の矢印4の各々に対して、互いに異なる色が施され、そして、矢印番号94の各々の番号に、その番号に対応する矢印4と同じ色が施され、矢印番号94と矢印4との対応関係が色によって示される。さらに、矢印番号94の各番号が、対応する変化グラフバー80の隣に配置されることにより、各変化グラフバー80と矢印4との対応関係が明らかになる。
【0041】
さらに、本実施形態では、所定期間内における角度の特徴値が各変化グラフバー80ごとに抽出され、複数の変化グラフバー80における角度の特徴値を結んだ特徴ライン96を表示してもよい。特徴ライン96は、例えば、各変化グラフバー80の角度の最大値を結ぶラインであり、あるいは、各変化グラフバー80の角度の0(ゼロ)値を結ぶラインである。もちろん、ユーザによって設定された基準値を結ぶ特徴ライン96を形成してもよい。
【0042】
変化グラフ群92は、複数の変化グラフバー80を、時相が揃うように並べることにより形成されたものである。仮に、心臓内の各部分が一様に心拍運動を行っている場合を想定すると、矢印4が設定された複数の関心部位において一様な運動が計測され、特徴ライン96が、図の上下方向に一直線に延びる波形となる。ただし、実際には、心臓内の各部分は必ずしも完全に一様な心拍運動を行うとは限らないため、各特徴ライン96は直線からずれて、折れ線状の波形となる。このため、折れ線状に形成される各特徴ライン96の直線からのずれに基づいて、心拍運動の一様性を評価することができる。例えば、心臓の収縮が一様ではなくなるアシンクロニーなどの病状を診断する際に、特徴ライン96は極めて有効である。
【0043】
次に本実施形態の超音波診断装置の装置構成について説明する。
【0044】
図10は、本実施形態の超音波診断装置の機能ブロック図である。プローブ50は、超音波を送受波する送受波器である。本実施形態において、プローブ50内には複数の振動素子からなるアレイ振動子が設けられており、そのアレイ振動子によって超音波ビームが形成される。超音波ビームは本実施形態において電子セクタ走査方式によって電子走査され、これによって扇状の走査面が構築されている。ちなみに、1つの送信ビーム当たり複数の受信ビームを同時形成する制御を適用することも可能であり、またプローブ50がいわゆる3Dプローブであってもよい。例えば心臓の超音波診断を行う場合には、生体の胸部表面上に当接されるプローブ50の位置及び姿勢が適正に調整される。その場合においては表示器に表示される例えばBモード画像などが観察される。組織ドプライメージング法(TDI法)を実行するために、各ビームアドレスごとに複数回の超音波の送受信が実行されてもよい。
【0045】
送受信部52はデジタルビームフォーマーとして構成されている。すなわち送受信部52は送信ビームフォーマー及び受信ビームフォーマーを有している。送信ビームフォーマーによってアレイ振動子に対して複数の送信信号が供給され、これによって送信ビームが形成される。一方、アレイ振動子から出力される複数の受信信号が受信ビームフォーマーにおいて整相加算処理され、これによって整相加算後の受信信号が得られる。すなわち受信ビームに対応した受信信号が得られることになる。送受信部52から出力される受信信号は組織エコー処理部56及び組織速度処理部58へ出力される。
【0046】
組織エコー処理部56は、組織エコー画像を形成するための各種の信号処理を実行している。その処理には、例えば対数変換処理などが含まれる。そして、スキャンコンバート部64において、座標変換処理や補間処理などが行われる。つまり、スキャンコンバート部64はいわゆるDSC(デジタルスキャンコンバータ)の機能を備えている。組織エコー処理部56およびスキャンコンバート部64による処理を経て、各フレームのデータが出力され、そして2Dエコー画像処理部68において2次元のBモード画像の画像データが形成される。
【0047】
なお、組織エコー処理部56の後段にはシネメモリ60が設けられており、シネメモリ60には座標変換前の各フレームのデータが時系列順で格納される。スキャンコンバート部64において処理された座標変換後の各フレームのデータを保存するメモリが設けられてもよい。
【0048】
組織速度処理部58は、ドプラ処理部として機能するものであり、送受信部52から出力される受信信号に対して複素信号変換処理、自己相関演算処理などを実行し、これによって組織の速度情報を演算している。そして、スキャンコンバート部62において、座標変換処理や補間処理などが行われ、さらに2D速度画像処理部70において、各組織部位ごとに速度の正負及びその値に応じた色を施したカラー画像(カラードプラ画像)の画像データが形成される。なお、組織速度処理部58の後段にはシネメモリ60が設けられており、組織速度処理部58から出力される各フレームのデータが時系列順で格納される。
【0049】
本実施形態において、シネメモリ60には、組織エコー処理部56で処理された組織エコーデータと組織速度処理部58で処理された組織速度データが格納される。これら二種類のデータは、一定の時間範囲内における時系列順の複数のデータが互いに対応付けられて格納されている。シネメモリ60はリングバッファ構造を有しており、最新のフレームから過去一定時間前のフレームまでの時間範囲内にわたってフレーム列を格納する機能を有する。シネメモリ60を利用することにより、そこに格納されているフレーム列を後に読み出してループ再生させることなどが可能である。
【0050】
なお、シネメモリ60に一時的に保存されたデータを、外部記録メディア54へ記憶することにより、シネメモリ60の容量を超えた長時間に亘るフレームデータの格納も可能となる。本実施形態においては、例えば、シネメモリ60又は外部記録メディア54に記憶された一定の時間範囲内における時系列順の複数のフレームデータに対して各種処理が実行される。
【0051】
追跡点トラッキング部66は、組織エコー処理部56およびスキャンコンバート部64による処理を経て出力される各フレームの組織エコーデータ(Bモード画像用のデータ)に基づいて、心筋の特定部位を指定する追跡点をトラッキングする。つまり、追跡点トラッキング部66は、図1および図2を利用して説明したように、パターンマッチングの手法を利用して、心筋の動きに伴って移動する追跡点(特定部位)を複数のフレームに亘って追跡する。また、追跡点トラッキング部66は、組織速度処理部58およびスキャンコンバート部62による処理を経て出力される各フレームの組織速度データ(カラードプラ画像用のデータ)に対しても、Bモード画像の場合と同様に、心筋の追跡点(特定部位)をトラッキングする。
【0052】
評価画像形成部72は、複数フレームに亘って追跡された追跡点に基づいて、心筋運動の評価画像を形成する。つまり、評価画像形成部72は、軌跡表示画像(図3参照)、動きベクトル表示画像(図5参照)、速度の変化グラフ(図6参照)、角度の変化グラフ(図7参照)を形成する。また、評価画像形成部72は、複数の関心部位に複数の追跡点が設定された場合の評価画像(図8、図9参照)を形成する。
【0053】
合成処理部76は、入力される複数の画像データの中から表示モードに応じて選択された複数の画像データを合成して1つの表示画像を構成するモジュールである。合成処理部76から出力される画像データは表示器78に出力され、表示器78上には、例えば、評価画像形成部72において形成された評価画像などが表示される。表示器78は例えばCRTによって構成されてもよいし、液晶ディスプレイによって構成されてもよい。あるいは、合成処理部76の後段にCRT及び液晶ディスプレイの2つのディスプレイを接続し、一方をメインディスプレイとし、他方をサブディスプレイとしてもよい。
【0054】
制御部82は超音波診断装置が有する各構成の動作制御を行っている。この制御部82はCPU及び動作プログラムによって構成されるものである。図10において符号200で示す表示処理部は本実施形態において制御部82とは別のモジュールとして示されているが、表示処理部200がCPU及び処理プログラムによって構成されてもよい。あるいは、表示処理部200が専用のハードウエアによって構成されてもよい。あるいは、表示処理部200が有する機能の内で一部の機能のみがソフトウエア処理によって実現され、残りがハードウエアによって実現されてもよい。
【0055】
制御部82は、本実施形態においてシネメモリ60の動作制御を行っている。シネメモリ60は半導体メモリなどによって構成されており、それらにはフレーム列が格納される。制御部82の制御によってそれらに格納されたフレーム列に対するループ再生などが実行される。例えば、シネメモリ60に対してループ再生の指示が出されると、そこに格納された時系列順のフレーム列が順番に呼び出されて表示器78に動画像として表示されることになる。なお、本実施形態における画像形成処理はリアルタイムで行うことも可能である。また、フリーズ後の画像データや、装置内あるいは外部記録メディア54などに記憶された画像データを処理対象としてもよい。
【0056】
入力部84は操作パネルなどによって構成され、その入力部84を利用して、ユーザが、追跡点の設定、時相の指定、表示モードの選択などを行うことができる。心電計86から出力される心電信号は制御部82に出力される他に、合成処理部76に出力されている。心電信号は上述したループ再生における同期信号として用いられ、また表示器78上には心電波形が表示されてもよい。
【0057】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】対象組織である心筋を含む超音波画像を示す図である。
【図2】心筋の動きを説明するための図である。
【図3】軌跡表示画像を示す図である。
【図4】軌跡表示画像における矢印群を示す図である。
【図5】動きベクトル表示画像を示す図である。
【図6】速度の変化グラフを示す図である。
【図7】角度の変化グラフを示す図である。
【図8】複数の関心部位に追跡点が設定された場合の評価画像を示す図である。
【図9】複数の関心部位に追跡点が設定された場合の評価画像の表示例を示す図である。
【図10】本実施形態の超音波診断装置の機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0059】
1 心筋、2 追跡点、5 矢印群、6 動きベクトル表示画像、66 追跡点トラッキング部、72 評価画像形成部。




 

 


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