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発明の名称 超音波診断装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−20915(P2007−20915A)
公開日 平成19年2月1日(2007.2.1)
出願番号 特願2005−208346(P2005−208346)
出願日 平成17年7月19日(2005.7.19)
代理人 【識別番号】100075258
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 研二
発明者 宮坂 好一 / 原田 烈光
要約 課題
超音波診断において、カラードプラのフレームレートの向上を図る新たな技術を確立する。

解決手段
TxDBF(送信ビームフォーマ)12,14は、互いに異なる方向に対し同時に送信するパルス型超音波を生成する。そして、圧電素子アレイ22は、対応する超音波送信を行うとともに、その反射波を受信する。この一連の処理を方向を固定して複数回繰り返すことで、各方向について複数回分の受信信号が取得され、その位相関係の解析に基づいて空間速度分布が得られる。同時に異なる方向に送信するパルス型超音波の波形は、少なくとも中心周波数が互いに等しくなるように設定されている。これにより、中心周波数に応じて変化するドプラシフト周波数の特性が共通化されるため、エリアジング処理等の受信処理が簡略化される。
特許請求の範囲
【請求項1】
複数方向に対し同時にパルス型超音波を送信して反射体からの反射波を受信する一連の処理を複数回繰り返し、各方向について複数回分の受信信号を取得する取得手段と、
受信信号間の位相解析に基づいて、各方向についての反射体速度の空間分布を算出する算出手段と、
を備え、
取得手段において複数方向に同時に送信されるパルス型超音波は、中心周波数が互いに等しく設定されている、ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
取得手段は、設定された走査領域を走査するようにパルス型超音波の送信方向を変更しながら受信信号の取得を繰り返し、
算出手段は、走査領域における反射体速度の空間分布を求める、ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
算出手段での位相関係の解析においては、各方向について同じ折り返し周波数設定でエリアジング処理が行われる、ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
取得手段における超音波送信は、各方向に対し互いに異なる焦点距離で行われる、ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項4に記載の超音波診断装置において、
取得手段における超音波送信は、各方向に対し焦点距離に応じた互いに異なるエネルギ強度で行われる、ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項4に記載の超音波診断装置において、
取得手段における各方向の複数回の超音波送信では、少なくとも一度焦点距離の変更が行われる、ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
取得手段における超音波送信は、各方向に対し同じ送信波形で行われる、ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
取得手段における超音波送受信では、パルス圧縮の手法が用いられる、ことを特徴とする超音波診断装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一方向に繰り返し超音波送受信を行って、ドプラ情報の空間分布を求める技術に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断においては、しばしば測定対象内の血流等の速度空間分布を求める計測が行われる。この計測においては、同一方向に複数回の超音波送受信を行い、受信信号間の位相関係に基づいて速度を算出する処理を各方向について繰り返すことで、空間的な速度分布を求めている。そして、計測の結果は、通常表示画面にリアルタイムで表示され、その表示態様などから、カラードプラ、パワードプラ、白黒ドプラ、組織ドプラなどと呼ばれる。
【0003】
例えば、カラードプラ画像では、通常、白黒の断層画像(Bモード画像や白黒画像とも呼ばれる)の上に、血流又は組織の運動速度や、血流又は運動する組織からの受信信号パワーの情報がカラー表示される。白黒の断層画像は、一般に各方向について一度だけ送受信を行う超音波走査に基づいて作成される画像であり、診断対象内部の(静的な)構造を示すものである。
【0004】
この方式ではカラードプラ画像のフレームレートfRは次式で表される: fR=c/{(NBWB+NCFB*NP)*2*LD}}
ここで、NBWBは1フレーム当たりの断層画像用のビーム方向数、NCFBは1フレーム当たりのカラードプラ診断に用いられるビーム方向数、NPはカラードプラ診断の一方向における送信繰り返し数(1方向に対する一連の送信をパケットとみなせば、1パケット当たりの送信繰り返し数と解釈できる)、LDは診断距離、cは測定対象中の平均的な音速(一般的には水中における音速)を表す。
【0005】
カラードプラで心臓のように動きの速い臓器内の血流を診断するためには、高い時間分解能を必要とする。一例としては、小児の心臓の診断例が挙げられる。このような場合、従来は、診断距離LDを短くして送信繰り返し周波数を高めたり、方位方向の診断エリアを狭めたりしていた他、送信ビームの密度(1画像当たりの送信方向数)を下げることも行われていた。
【0006】
しかし、診断距離を短くすると深部の情報を検出できなくなる。また、診断エリアを狭めると方位方向の情報が欠落してしまう。さらに、送信ビームの密度を下げると方位方向の空間分解能が低下することとなる。以下に、こうした問題を踏まえ、フレームレートの向上等を目的としてなされた技術改良に関する文献について簡単に説明する。
【0007】
下記特許文献1の技術は、リニア電子走査でリアルタイム性を高めることを目的とするものであり、振動子アレイの偶数番目素子と奇数番目素子とで互いに異なる方向に同時にパルスを送波し、各々の受信信号を同時に受信することで、2倍のフレームレートを実現している。また、下記特許文献2には、振動子アレイの偶数番目素子と奇数番目素子とで、互いに異なる周波数帯域の送信波形を異なる方向に同時に送波する技術が開示されている。
【0008】
下記特許文献3には、2つの異なる周波数変調波を異なる方向へ同時に送波して時間分解能を改善する技術が開示されている。また、下記特許文献4では、2つの異なる周波数帯域の送信波形を異なる方向へ同時送波し時間分解能を改善する態様が記されている。
【0009】
しかしながら、上記特許文献1,2の技術では、同一方向の送波に用いられる素子ピッチが粗くなるため、超音波ビームをステアリングした場合に高い周波数成分が低下して、方位方向の空間分解能低下と検出感度低下を招くこととなる。また、開口サイズが従来と同じ場合、送信素子数が半減するため、一方向当たりの送信音圧が低下する。しかし、音圧の低下を送信振幅の増大により補おうとすると、プローブの発熱を引き起こすおそれがある。
【0010】
ドプラシフト周波数は送信中心周波数に依存して定まる。このため、上記特許文献2乃至3の技術においては、血流速度が等しい場合であっても、中心周波数の高い送波に対する受信結果において、エリアジングによる周波数の折り返しが先に発生することとなる。エリアジングの補正は、一般に複雑な手順を要するため、このような場合に各方向について個別の補正処理を行うことは好ましくない。また、上記特許文献2乃至4の技術には、生体等の測定対象内における超音波減衰が周波数に依存することに起因して、各方向において検出感度に差が発生してしまう問題がある。このように、上記従来技術では、血流等の速度空間分布を求めるにあたり、フレームレート及び空間均一性の向上を図ることは困難であった。
【0011】
なお、下記特許文献5にも同時に異なる方向へ超音波送波を行う技術が開示されている。ここでは、送波した各超音波ビームについて、複数の受信焦点を設定して近接する複数の方向に対する受信信号を取得することで、フレームレートの向上を図っている。ただし、この技術は断層画像を得るためになされたものであり、カラードプラについての言及はなされていない。
【0012】
【特許文献1】特許第2760558号公報
【特許文献2】特許第3356996号公報
【特許文献3】特表2002−539877号公報
【特許文献4】特開平8−38473号公報
【特許文献5】特開2002−336246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、超音波診断により血流や運動する組織の速度空間分布を求めるにあたり、フレームレートの向上を図る新たな技術を確立することにある。
【0014】
本発明の別の目的は、超音波診断により血流や運動する組織の速度空間分布を求めるにあたり、プローブ投入電力の増加を抑制する一方で、診断エリアを狭めることなく空間的均一性の向上を達成する技術を開発することにある。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、超音波の多方向同時送信により血流や運動する組織の速度空間分布を求めるにあたり、受信信号処理の簡易化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の超音波診断装置は、複数方向に対し同時にパルス型超音波を送信して反射体からの反射波を受信する一連の処理を複数回繰り返し、各方向について複数回分の受信信号を取得する取得手段と、受信信号間の位相解析に基づいて、各方向についての反射体速度の空間分布を算出する算出手段と、を備え、取得手段において複数方向に同時に送信されるパルス型超音波は、中心周波数が互いに等しく設定されている。
【0017】
取得手段は、典型的には多数の超音波振動子がアレイ配置された超音波プローブを制御して、測定対象(例えば人等の生体)に対する超音波送受信を行う。送信においては複数方向に対し同時にパルス型超音波が送波され、受信においては各方向で反射体に反射した反射超音波が受信される。取得手段は、この処理を複数回繰り返すことで、各方向について複数回の送信に対応した受信信号を取得する。なお、取得手段において複数方向に同時に送信されるパルス型超音波は、中心周波数が互いに等しく設定されている。
【0018】
算出手段は、各方向について得た複数の受信信号を解析することで、それらの方向における反射体の速度分布を得る。速度の算出は、受信信号間の位相関係の解析によって行われる。
【0019】
この構成によれば、複数方向に同時に超音波送信が行われるため、高いフレームレートを確保して、速度の空間分布を求めることが可能となる。しかも、複数方向に送波する超音波の中心周波数は等しい値に設定されているため、反射体の速度に応じたドプラシフト周波数は、各方向とも同じ尺度で速度と対応づけられることとなる。したがって、方向毎に特別な処理を行うことなく、同様の信号処理を行って速度分布を求めることが可能となる。これにより、信号処理の時間が軽減されるため、診断エリアを狭めることなく、超音波診断におけるフレームレートを向上させることが可能となる。
【0020】
なお、セクタ走査の場合、異なる複数方向は、典型的には、互いの方向間における送信波形の干渉を低減するように角度差がつけられる(例えば20度以上)。また、求めた速度の空間分布は、典型的には適当な色づけを行って、表示装置(内蔵でも別途設けられたものでもよい)に表示される。表示は、通常は、上記処理の合間になされる超音波送受信により得られる白黒断層画像データに重ねて行われる。
【0021】
本発明の超音波診断装置の一態様においては、取得手段は、設定された走査領域を走査するようにパルス型超音波の送信方向を変更しながら受信信号の取得を繰り返し、算出手段は、走査領域における反射体速度の空間分布を求める。これにより、走査領域についての二次元又は三次元の速度分布を求めることが可能となる。
【0022】
本発明の超音波診断装置の一態様においては、算出手段での位相関係の解析においては、各方向について同じ折り返し周波数設定を前提にして処理が行われる。一般に、ドプラシフトは送信の中心周波数に依存して変化し、ドプラシフトがパルス繰り返し周波数の半分を超えるとエリアジングが発生する。そのため、各方向ごとに送信中心周波数やパルス繰り返し周波数が異なるとエリアジング条件が異なる。これを処理側で補正するには複雑な処理を必要とする。しかし、ここでは、各方向の送信波の中心周波数を等しく設定することで、ドプラシフト周波数特性が共通化されるため、エリアジング処理における折り返し周波数設定も共通化することが可能となる。
【0023】
本発明の超音波診断装置の一態様においては、取得手段における超音波送信は、各方向に対し互いに異なる焦点距離で行われる。また、本発明の超音波診断装置の一態様においては、取得手段における超音波送信は、各方向に対し焦点距離に応じた互いに異なるエネルギ強度で行われる。すなわち、通常は、焦点距離が深い場合には高いエネルギ強度で超音波送信を行い、焦点距離が浅い場合には低いエネルギ強度で超音波送信を行う。これにより、深い位置からの反射波を十分な大きさで受信できるようになり受信感度が増加することとなる。また、その一方で浅い位置への超音波送信には過度に大きなエネルギを投入しないことで、全エネルギを抑制しプローブの発熱を低減することができるようになる。
【0024】
本発明の超音波診断装置の一態様においては、取得手段における各方向の複数回の超音波送信では、少なくとも一度焦点距離の変更が行われる。これにより相対的に浅い領域及び相対的に深い領域の両方について高精度の速度分布を求めることが可能となる。
【0025】
本発明の超音波診断装置の一態様においては、取得手段における超音波送信は、各方向に対し同じ送信波形で行われる。送信波形が同じ場合、中心周波数は一致し、さらに、周波数の帯域幅も一致する。したがって、各方向におけるドプラシフト特性の共通性が高まることとなる。
【0026】
本発明の超音波診断装置の一態様においては、取得手段における超音波送受信では、パルス圧縮の手法が用いられる。パルス圧縮は、様々な態様により行うことが可能である。具体的には、線形あるいは非線形のFM信号を用いる例を挙げることができる。また、送信波形は振幅方向の分解能を粗くしてもよく、極端には2値の波形であってもよい。また、2値化コードを用いてキャリア周波数を位相変調したものを送信波形として用いることも可能である。2値化コードの例としては、M系列、Baker系列、Gold系列、Golay系列などが挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、本実施の形態にかかる超音波診断装置10の装置構成を概略的に示したブロック図である。超音波診断装置10は、2方向同時送信を行うものであり、各送信波形(送信ビーム)はTxDBF(送信デジタルビームフォーマ)12,14によって生成される。生成される波形は、同一の波形である。すなわち、両者の位相パターンが一致し、また、その振幅が一致または相似する波形が生成される。これにより両送信信号における中心周波数が一致することとなる。なお、送信波形は、受信時に行われるパルス圧縮に対応したパルス伸張を行って生成される。生成された波形は、加算器16によって加算され、D/A(デジタルアナログコンバータ)18によってアナログ信号に変換される。そして、送信アンプ20で適当な大きさに増幅された後、圧電素子アレイ22に出力される。送信波形の生成及び対応する超音波の送信は、規則的な間隔で繰り返し行われる。
【0028】
圧電素子アレイ22は、超音波プローブ内に設けられ、リニアやコンベックス等の形状に複数の圧電素子が一次元あるいは二次元状に配置された装置である。各圧電素子は、入力された電気信号に応じて振動を行い、超音波を発生させる。そして、診断対象から反射した超音波によって振動させられる際に、振動に対応した電気信号を出力する。
【0029】
受信アンプ24は、圧電素子アレイ22が出力した受信信号を入力して増幅し、A/D(アナログデジタルコンバータ)26は、その信号をデジタル変換する。デジタル変換された各超音波振動子からの受信信号は、RxDBF(受信デジタルビームフォーマ)28,42に入力されて合成される。RxDBF28はTxDBF12の送信信号に対応した受信信号(受信ビーム)を生成し、RxDBF42はTxDBF14の送信信号に対応した受信信号を取り出す。
【0030】
RxDBF28で整相加算された受信信号は、PC(パルス圧縮フィルタ)30でパルス圧縮されて検波器32に出力され、検波器32では受信信号の検波処理を行う。検波器32で検波された信号は、白黒エコー処理部34及びカラードプラ処理部36に出力される。白黒エコー処理部34は、次々と入力される受信信号に基づいて、走査面についての白黒断層画像(Bモード画像)を生成する。また、カラードプラ処理部36は、一方向における複数の受信信号の位相変化の解析に基づいてその方向についての血流分布を求め、さらにその処理を走査面について繰り返すことで血流の二次元分布画像を生成する。同様にして、RxDBF42に入力された受信信号は、PC44、検波器46、白黒エコー処理部48、カラードプラ処理部50によって処理される。なお、PC30,44は、それぞれRxDBF28,42の前に配置することも可能である。
【0031】
白黒エコー処理部34,48及びカラードプラ処理部36,50で生成された各画像データは、DSC(デジタルスキャンコンバータ)40に入力される。DSC40は、表示器52の表示形式に合わせたデータ変換を行って、表示器52にデータを出力する。これにより、表示器52には、白黒の断層画像上にカラーの血流画像が重ねられたカラードプラ画像が表示される。
【0032】
図1に示した超音波診断装置10の構成は、様々に変形することができる。図2には、一例として、受信信号の処理を一系統の装置構成で実現する態様例を示した。図2においては図1と同一または対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略化乃至は簡略化している。
【0033】
図2に示した超音波診断装置60では、TxDBF12,14により同時に異なる方向に送信される送信信号が生成される点は、図1の超音波診断装置10と同様である。しかし、対応する受信信号は、RxDBF62、PC64、検波器66、白黒エコー処理部68及びカラードプラ処理部70のみによって処理され、DSC40に出力される。これは、RxDBF62の処理能力を高めることにより、2方向の受信信号を時分割処理していることによる。すなわち、A/D26の出力に対し、TxDBF12に対応した受信信号処理を行うと同時に別途メモリにも記憶しておき、その信号処理が終わった時点でメモリに記憶した信号を入力してTxDBF14に対応した受信信号処理を行うことにより、2方向の受信信号を一系統の受信装置で処理している。なお、メモリは圧電素子アレイ22の直後に設置することも可能であるし、受信アンプ24の直後に設置することも可能である。また、従来の複数方向同時受信の技術を適用して、さらに受信ビーム数を増やすことも可能である。
【0034】
図3は、図1に示した超音波診断装置10によって行われる送信ビームの走査例を示す図である。ここでは、2方向同時に行う一連の複数の送信ビーム(このまとまりをパケットと呼ぶ)の送信を、扇型の走査面80を網羅するように送信方向を変えながらN回繰り返す。図3に示した(a)(b)(c)(d)(e)(f)の各図は、第1,2,n,n+1,n+2,N(ここでn=N/2)パケットの送信方向を説明するものである。走査面80の扇形はその開き角度82が90度に設定されており、第1,2,...,nパケットにおいては中心線84よりも左側の領域の走査が行われ、第n+1,n+2,...,Nパケットにおいては中心線84よりも右側の領域の走査が行われる。
【0035】
図3(a)は第1パケットの送信を説明する図である。ここでは、走査面80の左端側に対し送信ビーム86が送信され、それとのなす角85が22.5度に設定された方向に送信ビーム88が送信されている。各送信ビームは所定の時間間隔で複数回繰り返して送信され、対応する受信ビームの受信が行われる。
【0036】
続く図3(b)の第2パケットの送信では、送信ビーム90,92が送信される。この送信ビーム90,92は、それぞれ第1パケットの送信ビーム86,88よりも約22.5/n度だけ右側に方向を変えて送信されている。各パケットにおいては、同様にして、約22.5/n度づつ右側に回転して複数回送信ビームが送信される。そして、図3(c)に示した第nパケットでは、送信ビーム94,96は、第1パケットの送信ビーム86,88よりも22.5度程度だけ右回転した方向に送信されている。これにより、走査面80の左半分の領域の走査が完了する。
【0037】
図3(d)に示した第n+1パケットでは、送信ビーム98は走査面80の中心線84に沿って送信され、送信ビーム100はそれよりも22.5度だけ右回転させた方向に送信されている。続く第n+2パケットでは、図3(e)に示すように送信ビーム102,104は若干右回転した方向に送信される。このようにして走査面80の右半分の領域の走査が繰り返される。そして、最後の第Nパケットでは、送信ビーム106,108は走査面80の右半分の領域における中央方向及び右端方向に送信されている。
【0038】
この一連の走査によって、送信ビームは走査面80の全域に打たれることとなる。なお、走査において、2方向の送信ビームを22.5度だけ離したのは、両者の方向が近すぎると両者の干渉が無視できなくなることによる。また、まず左半分の領域の走査を完了し、次に右半分の領域の走査を完了したのは、図3(c)の第nパケットにおける送信ビーム94と図3(a)の第1パケットにおける送信ビーム88との送信時間差を短くし、両者の接続が滑らかになるように配慮したことによる。
【0039】
次に図4の模式図を用いて、超音波送信における送信エネルギについて説明する。図4(a)は、一方向についてのみ送信を行う場合の送信エネルギの設定を説明する参考図であり、図4(b)(c)は、同時送信される2方向における送信エネルギの設定を説明する図である。横軸は、時間であり、縦軸は送信電圧の大きさを示している。
【0040】
図4(a)では送信ビームの送出は電圧Vで時間Tにわたって行われており、送信のエネルギPはV2Tに比例している。これに対し、図4(b)(c)に示した二つの送信ビームでは、V’=V/2の電圧で、T’=2*Tにわたって送信が行われる。それぞれの送信エネルギは(V/2)2*2*T=P/2であり、合計ではPのエネルギが送信される。つまり、各方向について従来と半分の送信エネルギで送信を行うことで、全体の送信エネルギは従来と同程度に制限する。これにより、超音波プローブの温度上昇を従来と同程度に維持することが可能となる。
【0041】
図5は、検出感度をパルス圧縮の手法によって高めるための態様を説明する図である。図4を用いて説明したように、全エネルギを維持したまま、複数方向に同時に超音波送信を行うと、各方向についてはエネルギの低下分だけ検出感度が下がってしまう。これを補うために、ここでは、周波数変調波を用いたパルス圧縮の技術を導入している。
【0042】
図5(a)〜図5(d)は、横軸を時間、縦軸を周波数とするグラフであり、それぞれ送信信号に対して施す周波数変調の例を示している。図5(a)は、時間がt1からt2に進行するにつれ、周波数がf1からf2に線形的に増加する周波数変調の例を表している。また、図5(b)は、時間がt1からt2に進行するにつれ、周波数がf2からf1に線形的に減少する周波数変調の例を表している。周波数変調は時間に対して非線形に行われてもよく、図5(c)は、時間がt1からt2に進行するにつれ、周波数がf1からf2に非線形的に増加する例を表し、図5(d)は、周波数がf2からf1に非線形的に減少する例を表している。
【0043】
周波数変調された信号を送波して得た反射信号を受信した場合には、図1に示したPC30,44において参照信号との相関処理又は整合フィルタ処理を施すことで、短い時間帯にエネルギが集中したパルス型の信号を得ることができる。これにより、エネルギ低下分を補って検出することが可能となる。なお、周波数変調は、方向毎に異なるものを用いることができる。これにより、各方向間の送受信信号の干渉の影響を抑制することが可能となる。
【0044】
続いて、図6を用いて、各方向の送信波形を等しくした場合の利点について説明する。図6は、横軸を深さ方向(時間方向)、縦軸を周波数とするグラフであり、受信により得られる二つの模式的なドプラシフト周波数パターン110,112を示している。ドプラシフト周波数パターン110は、血流の速度が比較的遅い場合である。この場合には、送信信号のパルス送出間隔PRTによって規定される周波数帯−1/2PRT〜1/2PRTによって検出することができる。
【0045】
これに対し、ドプラシフト周波数パターン112は、血流の速度が比較的速くなった場合を示している。ここでは、深さd1〜d2までの間で1/2PRTを超えてしまっており、エリアジングによって−1/2PRTの側に折り返しパターン112aが発生してしまっている。このような場合には、この折り返しパターン112aを本来の速度を表すものとしてエリアジング補正を行うことが望ましい。
【0046】
ドプラシフト周波数の大きさは、一般に、送信波形の中心周波数に依存する。したがって、中心周波数が異なる波形では、折り返し周波数に対応する周波数が異なることとなる。このため、折り返し周波数の値を各方向について個別に補正する必要が生じてしまい、処理が煩雑化する。そこで、ここでは、中心周波数を同一とした同じ送信波形をもつ超音波ビームを送信することにより、ドプラシフト特性は共通となり、エリアジング補正処理を簡略化できる。また、各方向については異なる周波数変調処理を施してもよい。この場合、変調周波数帯の中心周波数(図5(a)〜(d)におけるf1とf2の中心周波数)を等しくすれば、ドプラシフト特性を共通にできる。
【0047】
次に、図7,8を用いて、同時送信する各方向の焦点距離を互いに異ならせる態様について説明する。図7,8は、共に、2方向同時送信を行う場合における1パケット中の送信ビームの焦点設定を模式的に示した図である。図7は送信焦点が2の例を示しており、図8は送信焦点が3の例を示している。
【0048】
図7(a)は、2方向同時送信を行う場合の焦点設定の一例を示す模式図である。ここでは、1パケット中に第1送信〜第6送信までの6回の送信が行われるものとして、各送信における送信焦点設定を示している。送信焦点の設定は、相対的に浅い第1送信焦点と相対的に深い第2送信焦点のいずれかに対して行われる。
【0049】
第1送信〜第3送信まで、即ち全送信のうちの前半分の送信では、一方向については第1送信焦点に固定され、もう一方向については第2送信焦点に固定されている。そして、この後に送信焦点の変更が行われ、第4送信〜第6送信まで、即ち全送信のうちの後半分の送信では、前記一方向については第2送信焦点に固定され、もう一方向については第1送信焦点に固定されている。すなわち、二つの送信ビームの送信焦点の組み合わせは、(1,2),(1,2),(1,2),(2,1),(2,1),(2,1)のように行われる。
【0050】
焦点距離の設定は、これ以外にも様々に行うことができる。図7(b)は、2方向同時送信を行う場合の焦点設定の別の一例を示す模式図である。ここでは、二つの送信ビームの送信焦点を順次入れ替えている。すなわち、1パケット中の第1送信〜第6送信までの6回の送信においては、同時送信される互いに異なる2方向の送信ビームの送信焦点の組み合わせは、(1,2),(2,1),(1,2),(2,1),(1,2),(2,1)のように設定されている。
【0051】
このようにして、焦点設定を1パケット中で変更することにより、浅い部分を高精度に検出した複数の受信信号と深い部分を高精度に検出した複数の受信信号との組み合わせが得られる。速度分布を求めるための処理、例えば自己相関処理は、焦点設定が等しい受信信号間で行うことができる。また、焦点設定が異なる受信信号間でも行ってもよい。いずれにせよ、焦点設定が異なる複数の受信信号に基づいて速度分布を求めることで、走査領域全体の空間分解能や検出感度を向上させ、また、空間的均一性を向上させたカラードプラ画像を得ることができるようになる。
【0052】
送信焦点数は、3以上であっても実施することができる。図8(a)は、送信焦点を相対的に浅い第1送信焦点、中程度の第2送信焦点、相対的に深い第3送信焦点のいずれかに設定して、2方向同時送信を行う場合の一態様を説明する図である。ここでは、第1送信〜第6送信までの6回の送信においては、同時送信される互いに異なる2方向の送信ビームの送信焦点の組み合わせは、(1,2),(1,2),(2,3),(2,3),(3,1),(3,1)となっている。すなわち、全送信回数である6回を送信焦点数の3で分割した2回の送信毎に、各送信焦点を順次変更している。
【0053】
また、図8(b)は、同じく三つの送信焦点を設定する場合の別の例を説明する図である。ここでは、第1送信〜第6送信までの6回の送信においては、同時送信される互いに異なる2方向の送信ビームの送信焦点の組み合わせは、(1,2),(2,3),(3,1),(1,2),(2,3),(3,1)となっている。すなわち、1回の送信毎に各送信焦点を順次変更している。このようにして送信焦点数を増やすことにより、二つの場合よりも一層走査領域全体の空間的均一性を向上させることが可能となる。
【0054】
図9は、送信焦点を変更する場合の超音波振動子の遅延時間設定について説明する図である。図の縦軸は深さ方向であり、プローブ表面120の下方側の相対的に浅い位置に第1送信焦点122が設定され、相対的に深い位置に第2送信焦点124が設定されている。そして、プローブ表面120の上側には、プローブ中央の超音波振動子における送信波形126が示されている。
【0055】
第1送信焦点122に焦点を設定する場合には、第1送信焦点への到達時刻が等しくなるように、各超音波振動子からの超音波の送波遅延時間が設定される。したがって、第1送信焦点用の等位相面128は、第1送信焦点122を中心とした円弧状に形成される。同様にして、第2送信焦点用の等位相面130は、第2送信焦点124を中心とした円弧状に形成される。これにより、各送信焦点においては、伝播時間に伴う位相誤差の発生が抑えられ、精度の高い検出が可能となる。
【0056】
ここで、複数方向同時送信を行う場合における送信エネルギの設定について、図10,11を用いて説明する。図10は、2方向同時送信をするにあたり、両方向ともに同じ深さに送信焦点を設定した場合の例であり、図11は、2方向同時送信をするにあたり、互いに異なる深さに送信焦点を設定した場合の例である。
【0057】
図10においては、プローブ140から、送信ビーム142,144が互いに異なる方向に向けて同時送信されている。この送信ビーム142の送信焦点146と送信ビーム144の送信焦点148は互いに等しい深さに設定されている。そして、送信ビーム142,144は共にE/2のエネルギで送信が行われている。すなわち、プローブ140に対して投入されている全エネルギEを折半して送信ビーム142,144の送信に用いている。これは、送信ビームに必要なエネルギは一般に送信焦点が深いほど大きくなるため、送信焦点146,148の深さが等しい送信ビーム142,144に対しては、投入可能な最大エネルギEを等しい大きさに分割していることによる。
【0058】
これに対し、図11においては、プローブ140から、互いに異なる方向に向けて送信される送信ビーム150,152においては、その送信焦点の深さが異なっている。すなわち、送信ビーム150は相対的に深い送信焦点154に設定され、送信ビーム152は相対的に浅い送信焦点156に設定されている。このため、投入可能な全エネルギEのうち、例えば、3/5を送信ビーム150に投入し、2/5を送信ビーム152に投入している。これにより、深い位置における詳細な測定を主たる目的としてなされる送信ビーム150からは、ビームの拡がり及び減衰にもかかわらず比較的大きな受信信号を得ることが可能となる。
【0059】
なお、図7と図8に示した例においては、同時に送信する2方向の送信ビームの焦点は、互いに異なるように設定した。これは、図11のように、深い送信焦点をもつ送信ビームに対して相対的に高いエネルギを投入することが可能となるためである。
【0060】
図12には、図7(b)に示した送信焦点設定の下、図11に示した例に従って送信を行う場合のエネルギ投入態様を示す図である。図の形式は、図4と同様であり、横軸は時間、縦軸は送信電圧の大きさを表している。そして、図4(a)は、従来の一般的な送信態様を表し、図4(b)(c)は、2方向同時送信を行う例を示している。
【0061】
図4(a)においては、パルス送信時間PRT毎に、短い時間T0の間、電圧V0の大きさでエネルギP0の超音波送信が行われる。これに対し、図4(b)(c)に示すように、2方向同時送信が行われる各方向においては、パルス送信時間PRT毎に、それぞれ電圧V1(V1<V2)で超音波送信が行われる。送信時間は、送信焦点が浅い場合にはT1であり、送信焦点が深い場合にはT2(T1<T2)である。そして、1パケット内において、毎回の送信毎に送信焦点が入れ替えられることに対応して、T1とT2の送信時間も入れ替えられる。この結果、送信エネルギの大きさは、P1とP2(P1<P2)を交互に繰り返している。全エネルギの大きさがP0である場合には、P1+P2=P0の条件の下で、P1とP2の大きさを決めればよい。
【0062】
以上の説明では、具体的に2方向の場合を例に挙げて、複数方向同時送信について説明した。しかし、当然ながら、3方向以上の場合にも適用可能である。
【0063】
また、カラードプラの診断においては、走査領域を減らすために、測定対象となるROI(関心領域)を設定する場合がある。この場合には、送信焦点をROIの形状に連動して設定するようにしてもよい。
【0064】
さらに、本技術は二次元的な診断に限らず三次元的な診断にも広く拡張可能である。すなわち、同時に多方向に行う複数回送受信過程を、所定の三次元的な走査領域を網羅するように繰り返すことで、三次元的な速度分布を求めることができる。三次元の場合には、一般に走査に時間を要するが、本技術を用いることでフレームレートを高くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】超音波診断装置の別の構成例を示すブロック図である。
【図3】2方向同時送信による走査例を示す図である。
【図4】送信エネルギについて説明する模式図である。
【図5】周波数変調の変調周波数特性を示す図である。
【図6】エリアジング処理について説明する図である。
【図7】二つの送信焦点を切り替える態様例を示す図である。
【図8】三つの送信焦点を切り替える態様例を示す図である。
【図9】送信焦点と遅延時間との関係を示す図である。
【図10】2方向の送信焦点距離を等しくする例を示す図である。
【図11】2方向の送信焦点距離を異ならせる例を示す図である。
【図12】焦点切替に対応した送信エネルギ切替を説明する図である。
【符号の説明】
【0066】
10 超音波診断装置、12,14 TxDBF、16 加算器、18 D/A、20 送信アンプ、22 圧電素子アレイ、24 受信アンプ、26 A/D、28,42 RxDBF、30,44 PC、32 検波器、34,48 白黒エコー処理部、36,50 カラードプラ処理部、40 DSC、52 表示器。




 

 


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