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発明の名称 生理活性なブロック共重合体
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−181691(P2007−181691A)
公開日 平成19年7月19日(2007.7.19)
出願番号 特願2006−355180(P2006−355180)
出願日 平成18年12月28日(2006.12.28)
代理人 【識別番号】100066474
【弁理士】
【氏名又は名称】田澤 博昭
発明者 ジョナソン・ゼット・チャオ
要約 課題
コーティング中に物理的または化学的に含浸される製剤または治療薬と相容れる過程を経て製造し得る、医療用具の少なくとも1つの表面に施用するためのコーティング組成物およびポリマー材料を提供する。

解決手段
本発明は、疎水性ブロック、親水性ブロックおよび生理活性ブロックを有するブロック共重合体を開示する。生理活性ブロックは、親水性ブロックに直接隣接している。ブロック共重合体は、可逆的付加フラグメンテーション連鎖移動(RAFT)重合を経て製造されることが好ましい。本発明はまた、本発明のブロック共重合体を含有するコーティング組成物を開示する。コーティング組成物は、物品の1つの表面の少なくとも一部分に施用するために使用することができる。本発明は更に、物品の上に本発明のコーティング組成物を有する該物品を開示する。該物品は、医療用具または医療用具の部品であることが好ましい。
特許請求の範囲
【請求項1】
ブロック共重合体において、
疎水性ブロックと、
親水性ブロックと、
生理活性ブロックと、
を含み、
前記生理活性ブロックが、前記親水性ブロックに直接隣接している、
ブロック共重合体。
【請求項2】
請求項1に記載のブロック共重合体において、
前記疎水性ブロックが、少なくとも1種のメタクリル酸アルキルまたはアクリル酸アルキル、の重合モノマー単位を含んでいる、ブロック共重合体。
【請求項3】
請求項2に記載のブロック共重合体において、
少なくとも1種のメタクリル酸アルキルの前記重合モノマー単位が、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、およびメタクリル酸ドデシル、から成る群から選ばれている、ブロック共重合体。
【請求項4】
請求項2に記載のブロック共重合体において、
少なくとも1種のアクリル酸アルキルの前記重合モノマー単位が、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、およびアクリル酸ドデシル、から成る群から選ばれている、ブロック共重合体。
【請求項5】
請求項1に記載のブロック共重合体において、
前記親水性ブロックが、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリル酸、スチレンスルホン酸、ビニルアルコール、エチレングリコール、およびN−ビニルピロリドン、から成る群から選ばれた重合モノマー単位を含んでいる、ブロック共重合体。
【請求項6】
請求項1に記載のブロック共重合体において、
前記生理活性ブロックは、ビニル部分から誘導された直線状主鎖と生理活性ペンダント分子とを含んでおり、
前記生理活性ペンダント分子は、ビニル部分から誘導された前記直線状主鎖に共有結合によって結合されている、
ブロック共重合体。
【請求項7】
請求項6に記載のブロック共重合体において、
前記生理活性ペンダント分子が、抗血栓剤、免疫抑制剤、抗腫瘍薬、抗炎症剤、血管形成阻害薬、タンパク質キナーゼ阻害薬、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、siRNA、リボザイム、多糖類、オリゴ糖類、および脂質、から成る群から選ばれている、ブロック共重合体。
【請求項8】
請求項7に記載のブロック共重合体において、
前記生理活性ペンダント分子が、ヘパリン、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、siRNA、リボザイム、多糖類、オリゴ糖類、および脂質、から成る群から選ばれている、ブロック共重合体。
【請求項9】
請求項1に記載のブロック共重合体において、
以下の構造を有しており、
【化1】


式中、
x、nおよびmは、同一であるかまたは相違しており、独立的に10〜2500の整数であり、
生体分子は、抗血栓剤、免疫抑制剤、抗腫瘍薬、抗炎症剤、血管形成阻害薬、タンパク質キナーゼ阻害薬、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、siRNA、リボザイム、多糖類、オリゴ糖類、および脂質、から成る群から選ばれている、
ブロック共重合体。
【請求項10】
請求項9に記載のブロック共重合体において、
以下の構造を有しており、
【化2】


式中、
x、nおよびmは、同一であるかまたは相違しており、独立的に10〜2500の整数である、
ブロック共重合体。
【請求項11】
請求項1に記載のブロック共重合体において、
ビニル部分から誘導された直線状主鎖、およびビニル部分から誘導された前記直線状主鎖に共有結合によって結合されている光反応性ペンダント分子、を有する光反応性ブロック、
を更に含んでいる、ブロック共重合体。
【請求項12】
請求項11に記載のブロック共重合体において、
前記光反応性ペンダント分子が、ベンゾフェノン、アジド、チオキサントン、またはそれらの誘導体である、ブロック共重合体。
【請求項13】
請求項12に記載のブロック共重合体において、
以下の構造を有し、
【化3】


式中、
x、nおよびmは、同一であるかまたは相違しており、独立的に10〜2500の整数であり、yは1〜10の整数である、
ブロック共重合体。
【請求項14】
請求項1に記載のブロック共重合体において、
約5,000〜約500,000ドルトンの範囲の調節可能な分子量を有する、ブロック共重合体。
【請求項15】
ブロック共重合体において、
以下の構造を有し、
【化4】


式中、
x、nおよびmは、同一であるかまたは相違しており、独立的に10〜2500の整数であり、
Wは、活性な中間体である、
ブロック共重合体。
【請求項16】
請求項15に記載のブロック共重合体において、
以下の構造を有し、
【化5】


式中、
x、nおよびmは、同一であるかまたは相違しており、独立的に10〜2500の整数である、
ブロック共重合体。
【請求項17】
物品の1つの表面の少なくとも一部分の上に施用するためのコーティング組成物において、
疎水性ブロック、親水性ブロック、および生理活性ブロック、を有するブロック共重合体、
を含有し、
前記生理活性ブロックが、前記親水性ブロックに直接隣接している、
コーティング組成物。
【請求項18】
請求項17に記載のコーティング組成物において、
約1nm〜約10μmの厚さを有している、コーティング組成物。
【請求項19】
物品の上にコーティングを有する前記物品において、
前記コーティングが、
疎水性ブロック、親水性ブロック、および生理活性ブロック、を有するブロック共重合体であって、前記生理活性ブロックが、前記親水性ブロックに直接隣接している、ブロック共重合体、
を含有している、
物品。
【請求項20】
請求項19に記載の物品において、
前記疎水性ブロックが、少なくとも1種のメタクリル酸アルキルまたはアクリル酸アルキル、の重合モノマー単位を含んでいる、物品。
【請求項21】
請求項20に記載の物品において、
少なくとも1種のメタクリル酸アルキルの前記重合モノマー単位が、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、およびメタクリル酸ドデシル、から成る群から選ばれている、物品。
【請求項22】
請求項20に記載の物品において、
少なくとも1種のアクリル酸アルキルの前記重合モノマー単位が、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、およびアクリル酸ドデシル、から成る群から選ばれている、物品。
【請求項23】
請求項19に記載の物品において、
前記親水性ブロックが、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリル酸、スチレンスルホン酸、ビニルアルコール、エチレングリコール、およびN−ビニルピロリドン、から成る群から選ばれた重合モノマー単位を有している、物品。
【請求項24】
請求項19に記載の物品において、
前記生理活性ブロックが、ビニル部分から誘導された直線状主鎖、および生理活性ペンダント分子、を含んでおり、
前記生理活性ペンダント分子は、ビニル部分から誘導された前記直線状主鎖に共有結合によって結合されている、
物品。
【請求項25】
請求項24に記載の物品において、
前記生理活性ペンダント分子が、抗血栓剤、免疫抑制剤、抗腫瘍薬、抗炎症剤、血管形成阻害薬、タンパク質キナーゼ阻害薬、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、siRNA、リボザイム、多糖類、オリゴ糖類、および脂質、から成る群から選ばれている、物品。
【請求項26】
請求項25に記載の物品において、
前記生理活性ペンダント分子が、ヘパリン、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、siRNA、リボザイム、多糖類、オリゴ糖類、および脂質、から成る群から選ばれている、物品。
【請求項27】
請求項19に記載の物品において、
前記ブロック共重合体が、ビニル部分から誘導された直線状主鎖、およびビニル部分から誘導された前記直線状主鎖に共有結合によって結合されている光反応性ペンダント分子、を含んでいる光反応性ブロック、を更に含んでいる、物品。
【請求項28】
請求項27に記載の物品において、
前記光反応性ペンダント分子が、ベンゾフェノン、アジド、チオキサントン、またはそれらの誘導体である、物品。
【請求項29】
請求項19に記載の物品において、
約5,000〜約500,000ドルトンの範囲の調節可能な分子量を有する、ブロック共重合体。
【請求項30】
請求項19に記載の物品において、
前記コーティングが、約1nm〜約10μmの厚さを有している、物品。
【請求項31】
請求項19に記載の物品において、
医療用具、または、医療用具の部品である、物品。
発明の詳細な説明
【開示の内容】
【0001】
本発明は、新規な種類のブロック共重合体と、本発明のブロック共重合体を含有するコーティング組成物とに関する。本発明は更に、物品の上に本発明のコーティングを有する該物品にも関する。
【0002】
〔発明の背景〕
大抵の医療用具は、金属、セラミックスまたはポリマー材料で作られている。しかし、これらの材料は、非コンフォーマル(non-conformal)、疎水性かつ非平滑性(non-slippery)であり、したがって、使用または手術の間、血栓形成、炎症、または、粘膜に対する損傷を引き起こすことがある。このように、生体適合性の問題は、医療用具(とりわけ、医療用インプラント)の製造業者にとって重大な関心事である。医療用具は、適切かつ安全に機能するように、通常、生体適合性材料の1つ以上の層で被覆されている。これらの医療用具上のコーティングは、場合によっては、治療薬および製剤を運搬するために使用することができる。
【0003】
医療用具、とりわけ移植可能な医療用具は、長期使用が意図されており、しかも、体組織、体液、電解質、タンパク質、酵素、脂質および他の生体分子と直接接触するので、医療用具のためのコーティング材料は、厳しい生体的および物理的な必要条件を満たさなければならない。これらの必要条件には、最低限、次のこと:(1)コーティングは、体組織と接触したとき、疎水性かつ潤滑性であり、そのことによって、手術の間、患者の安楽さが増大し、かつ、該医療用具の操縦性(maneuverability:機動性)が改善されなければならないこと、(2)コーティングは可撓性かつ弾力性であり、それゆえに、該コーティングは、有害となる応力を有することなく、生体構造にコンフォームし(conform:一致し)なければならないこと、(3)コーティングは血液適合性(hemocompatible)であり、そうであることによって、血栓もしくは塞栓の形成が減少するか、または回避されなければならないこと、(4)コーティングは、体組織および体液に対して化学的に不活性でなければならないこと、ならびに、(5)コーティングは、医療用具上に形成されるとき、機械的に耐久性がありかつひびが入ってはならないこと、が包含される。コーティングが製剤または治療薬を含浸する場合、該コーティングおよびそれの組成物は典型的には、製剤または治療薬と相溶性である必要がある。コーティングが被覆剤として使用され、下に横たわる下塗りが製剤または治療薬を含浸する場合、該コーティングおよびそれの組成物は、該下塗り、および、その中に含浸される製剤または治療薬と相溶性でなければならず、しかも、該コーティングは、該製剤または該治療薬が該コーティングを通り抜けるのを可能にしなければならない。コーティングは、物理的障壁(physical barrier)、化学的障壁(chemical barrier)、または、それらの組み合わせとして機能して、下に横たわる下塗りの中の製剤または治療薬が溶出するのを制御することも望ましい。
【0004】
商業的な薬剤溶出性ステントのための従来のコーティング組成物では、異なるポリマー材料の所望の特性を組み合わせるために、ポリ(エチレン酢酸ビニル)(EVAc)とポリメタクリル酸ブチル(BMA)とのポリマーブレンド(即ち、物理的混合物)が使用された。しかし、この従来のコーティングの1つの欠点は、ポリマーブレンドの相分離である。この相分離は、コーティングの性能とその中に含浸された薬剤の安定性とに対して有害である場合がある。
【0005】
従来技術のもう1つのコーティング組成物は、支持性ポリマー(supporting polymer)および親水性ポリマーを含有する。この場合、支持性ポリマーは、架橋反応を受けることのできる機能的部分を含有し、また、親水性ポリマーは、該支持性ポリマーと関連する[例えば、米国特許第6,238,799号明細書を参照されたい]。しかし、この従来技術のコーティング組成物を製造するためには、化学的架橋反応と高温硬化過程とが用いられ、これらは、薬剤含有コーティングと相容れるものではない。
【0006】
従来技術では、ポリエチレングリコールビニルエーテル化合物のモノマーを含有する気体の気相重合またはプラズマ重合によって形成されたコーティング組成物が更に使用される[例えば、米国特許出願公開公報2003/0113477号明細書を参照されたい]。しかし、プラズマ過程によって製造されたポリマーは、分子量と大きい多分散度(polydispersity)とによって十分には特徴付けられなかった。低分子量のプラズマ暴露ポリマーは、機械的耐久性を制限した。プラズマ処理は、下に横たわる下塗りを貫通して、その中の薬物内容物を損傷させることがある。この従来技術のアプローチに関するもう1つの問題は、プラズマ過程で発生した遊離基または他の高エネルギー種が、コーティング中に存続して、下塗り中の薬物内容物を経時的に破壊することがあることである。
【0007】
医療用具を使用することによって生じる血栓を減少させるため、従来技術ではまた、抗血栓剤(例えば、ヘパリン)を医療用具のコーティングに結合させる(即ち、共有結合させる)ことによって、該コーティングが修飾される[例えば、米国特許第4,973,493号明細書およびwww.surmodics.comを参照されたい]。このアプローチは、優れた抗血栓性を有するコーティングを作り出すものの、従来技術の結合方法は、複合体の製法を採用し、該コーティング中の抗血栓剤の分解を引き起こすことのある様々な副産物を生じる。
【0008】
このように、医療用具の少なくとも1つの表面に施用するための上述の厳しい必要条件を満たすことができるコーティング組成物およびポリマー材料であって、該コーティング中に物理的または化学的に含浸される製剤または治療薬と相容れる過程を経て製造し得るコーティング組成物およびポリマー材料を得るため必要性が依然として存在している。
【0009】
〔発明の概要〕
したがって、本発明は、疎水性ブロック、親水性ブロックおよび生理活性ブロックを有するブロック共重合体であって、前記生理活性ブロックが、前記親水性ブロックに直接隣接している該ブロック共重合体を提供する。
【0010】
本発明の1つの具体例において、ブロック共重合体は、次の構造:
【化1】


(式中、x、nおよびmは、同一であるかまたは相違しており、独立的に10〜2500の整数であり;生体分子は、抗血栓剤、免疫抑制剤、抗腫瘍薬、抗炎症剤、血管形成阻害薬、タンパク質キナーゼ阻害薬、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、siRNA、リボザイム、多糖類、オリゴ糖類および脂質から成る群から選ばれている)を有する。
【0011】
本発明は更に、ブロック共重合体において、次の構造:
【化2】


(式中、x、nおよびmは、同一であるかまたは相違しており、独立的に10〜2500の整数であり、Wは活性な中間体である)を有する該ブロック共重合体を提供する。Wは、N−ヒドロキシスクシンイミジル基(N-hydroxysuccinimidyl)であることが好ましい。
【0012】
本発明はまた、物品の1つの表面の少なくとも一部分の上に施用するためのコーティング組成物において、疎水性ブロック、親水性ブロックおよび生理活性ブロックを有するブロック共重合体を含有し、しかも、前記生理活性ブロックが前記親水性ブロックに直接隣接している、該コーティング組成物を提供する。
【0013】
本発明はもう1つの面において、物品の上にコーティングを有する該物品において、前記コーティングが、疎水性ブロック、親水性ブロックおよび生理活性ブロックを有するブロック共重合体を含有し、しかも、前記生理活性ブロックが前記親水性ブロックに直接隣接している該物品を提供する。該物品は医療用具または医療用具の部品であることが好ましい。
【0014】
〔発明の詳細な記述〕
本発明は、疎水性ブロック、親水性ブロックおよび生理活性ブロックを有するブロック共重合体を提供する。生理活性ブロックは、親水性ブロックに直接隣接している。「ブロック共重合体(block copolymer)」は、異なる重合モノマーのブロックを含有するヘテロポリマーを意味する。本発明のブロック共重合体は、直線状であることが好ましい。即ち、本発明のブロック共重合体は、直鎖の形状を有することが好ましい。
【0015】
本発明のブロック共重合体の疎水性ブロックは、1種以上のメタクリル酸アルキルまたはアクリル酸アルキルの重合モノマー単位を有している。「疎水性(hydrophobic)」は、水との親和性が欠如しており、有機溶媒もしくは脂質に溶解する傾向があるか、または有機溶媒もしくは脂質と混合する傾向があることを意味する。重合が行われる間、1種以上のメタクリル酸アルキルまたはアクリル酸アルキルの重合モノマー単位のうちビニル部分は、直線状主鎖を形成し、一方、1種以上のメタクリル酸アルキルまたはアクリル酸アルキルの重合モノマー単位のうち、ビニル部分以外の部分は、該直線状主鎖に共有結合によって結合されるペンダント基(pendant groups)を構成する。「メタクリル酸アルキル(alkyl methacrylate)」は、メタクリレート誘導体であってカルボニル基の炭素原子に結合した酸素原子が、アルキル基と置換されているメタクリレート誘導体を意味する。「アクリル酸アルキル(alkyl acrylate)」は、アクリレート誘導体であってカルボニル基の炭素原子に結合した酸素原子が、アルキル基と置換されているアクリレート誘導体を意味する。本発明に適したメタクリル酸アルキルの例は、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニルおよびメタクリル酸ドデシルを包含するが、それらに限定されない。本発明に適したアクリル酸アルキルの例は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニルおよびアクリル酸ドデシルを包含するが、それらに限定されない。
【0016】
本発明のブロック共重合体の親水性ブロックは、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリル酸、スチレンスルホン酸、ビニルアルコール、エチレングリコールおよびN−ビニルピロリドンから成る群から選ばれた重合モノマー単位を有する。「親水性(hydrophilic)」は、水との強い親和性を有しており、水もしくは水性媒体に溶解する傾向があるか、水もしくは水性媒体と混合する傾向があるか、または、水もしくは水性媒体で膨潤する傾向があることを意味する。重合が行われる間、上述の群から選ばれるモノマー単位のうちビニル部分は、直線状主鎖を形成し、一方、上述の群から選ばれるモノマー単位のうち、ビニル部分以外の部分は、該直線状主鎖に共有結合によって結合されるペンダント基を構成する。
【0017】
本発明のブロック共重合体の生理活性ブロックは、ビニル部分から誘導された直線状主鎖と生理活性ペンダント分子とを有する。「ビニル部分から誘導された直線状主鎖(linear backbone derived from vinyl moieties)」は、生理活性ブロックの主鎖が、直鎖であり、かつ、ビニル基の重合によって形成されていることを意味する。生理活性ペンダント分子は、ビニル部分から誘導された直線状主鎖に共有結合によって結合されている。生理活性ブロックは、親水性ブロックに直接隣接し、疎水性ブロックには直接隣接しないことが好ましい。本明細書および特許請求の範囲で使用される「生理活性ペンダント分子(pendant biologically active molecule)」は、生きている組織に影響を及ぼす化合物もしくは物質、または、生きている組織から反応を引き出す化合物もしくは物質を意味する。本発明に適した生理活性ペンダント分子には、例えば、生体への医療用具の導入に対する生体反応の処置もしくは予防、または、疾患の処置もしくは予防を行うための治療効果を有する、あらゆる薬物、作用物質、化合物および/またはそれらの組み合わせが包含される。好ましい生理活性ペンダント分子は、抗血栓剤、免疫抑制剤、抗腫瘍薬、抗炎症剤、血管形成阻害薬、タンパク質キナーゼ阻害薬、および、哺乳動物における再狭窄を治癒するか、軽減するか、または、予防することのできる他の作用物質を包含するが、それらに限定されない。好ましい生理活性ペンダント分子には、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、siRNA、リボザイム、多糖類、オリゴ糖類および脂質も包含される。本発明の生理活性ペンダント分子の例は、ヘパリン、アルブミン、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノゲン活性化因子(TPA)、ウロキナーゼ、ラパマイシン、パクリタキセル、ピメクロリムス、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、siRNA、リボザイム、多糖類、オリゴ糖類、脂質、ならびに、それらの類似体および誘導体を包含するが、それらに限定されない。本発明で使用されるヘパリンは、低分子量ヘパリンであることが好ましい。生理活性ブロックは、本発明のブロック共重合体に対して生理活性を与える。生理活性ブロックのためには広範囲に渡る生理活性ペンダント分子を使用することができるので、本発明のブロック共重合体の生理活性は、適切に調節することができる。
【0018】
本発明の1つの具体例において、本発明のブロック共重合体は、次の構造:
【化3】


(式中、x、nおよびmは、同一であるかまたは相違しており、独立的に10〜2500の整数であり;生体分子は、抗血栓剤、免疫抑制剤、抗腫瘍薬、抗炎症剤、血管形成阻害薬、タンパク質キナーゼ阻害薬、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、siRNA、リボザイム、多糖類、オリゴ糖類および脂質から成る群から選ばれている)を有する。
【0019】
本発明のもう1つの具体例において、本発明のブロック共重合体は、次の構造:
【化4】


(式中、x、nおよびmは、同一であるかまたは相違しており、独立的に10〜2500の整数である)を有する。本発明で使用されるヘパリンは、低分子量ヘパリンであることが好ましい。
【0020】
本発明はまた、次の構造:
【化5】


(式中、x、nおよびmは、同一であるかまたは相違しており、独立的に10〜2500の整数であり、Wは活性な中間体である)を有するブロック共重合体を提供する。本明細書および特許請求の範囲で用いられる用語「活性な中間体(active intermediate)」は、優れた脱離基となり得る化学的部分(chemical moiety)を意味する。式(IV)のブロック共重合体は、式(I)のブロック共重合体の前駆体である場合がある。具体的には、式(IV)のブロック共重合体が、抗血栓剤、免疫抑制剤、抗腫瘍薬、抗炎症剤、血管形成阻害薬、タンパク質キナーゼ阻害薬、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、siRNA、リボザイム、多糖類、オリゴ糖類および脂質から選ばれた生体分子に暴露されるとき、該生体分子は、式(I)のブロック共重合体を形成する周囲条件の下、Wと置換される。したがって、Wは、穏やかな共役結合反応(conjugation reactions)によって生体分子を導入するのに使用することができる。
【0021】
式(IV)におけるWは、N−ヒドロキシスクシンイミジル基(N-hydroxysuccinimidyl)
であることが好ましい。すなわち、式(IV)のブロック共重合体は、次の構造:
【化6】


(式中、x、nおよびmは、同一であるかまたは相違しており、独立的に10〜2500の整数である)を有する。
【0022】
本発明のブロック共重合体は、リビング重合法を経て製造することができる。本発明のブロック共重合体は、可逆的付加フラグメンテーション連鎖移動(reversible addition fragmentation transfer)(RAFT)重合を経て製造することがより好ましい。従来の多くの重合方法は、化学的架橋反応、高温硬化過程および/またはプラズマ処理を必要とする。それらは、ポリマーの分子量分布に関する制御を著しく限定してしまうだけでなく、コーティングに含浸された治療薬と下に横たわる下塗りの中の薬物内容物とに損傷を与える。それらの従来の重合方法とは異なり、可逆的付加フラグメンテーション連鎖移動(RAFT)重合では、周囲温度で、共重合体の各々のセグメントの分子量とモル比とを精確に制御することが可能であり、そうであることによって、所定の分子量と狭い多分散度(polydispersity)(即ち、狭い分子量分布)とを有する共重合体が提供される。このように、本発明のブロック共重合体の構造と分子量とは、可逆的付加フラグメンテーション連鎖移動(RAFT)重合を採用することによって精確に調節することができる。
【0023】
したがって、疎水性ブロック、親水性ブロックおよび生理活性ブロックの構造ならびに/またはモル比を調整することによって、本発明のブロック共重合体の特性を調節することができる。換言すれば、疎水性ブロック、親水性ブロックおよび生理活性ブロックの構造ならびに/またはモル比は、本発明のブロック共重合体の所望の特性にしたがって調整することができる。例えば、本発明のブロック共重合体の親水性または疎水性は、異なる繰返しモノマー単位を有する親水性ブロックおよび/もしくは疎水性ブロックを使用することによって、ならびに/または、疎水性ブロックと疎水性ブロックとの間のモル比を制御することによって調整することができる。更に、疎水性ブロック、親水性ブロックおよび生理活性ブロックは、本発明のブロック共重合体の所望の機械的強度を確保し、同時に、生理活性ブロックの最適な活性度を保持するための親水的環境を提供するモル比である必要がある。該ブロック共重合体は、疎水性ブロック、親水性ブロックおよび生理活性ブロックを、1:1:1のモル比で有することが好ましい。
【0024】
本発明の1つの具体例において、式(II)の本発明のブロック共重合体は、スキーム1に例示されるルートを経て合成される。
【0025】
スキーム1:
【化7】


式中、x、nおよびmは、同一であるかまたは相違しており、独立的に10〜2500の整数である。可逆的付加フラグメンテーション連鎖移動(RAFT)重合は、最近の文献に記載されており、当業者は、RAFT反応の条件の詳細を容易に確かめることができるであろう[例えば、シャイ(Shi)、パン・ジー(Peng-Jie)等:European Polymer Journal,40,第1283頁〜1290頁(2004)を参照されたい]。
【0026】
本発明のブロック共重合体には、可逆的付加フラグメンテーション連鎖移動(RAFT)重合を採用することによって、様々な機能性ブロックを添加することができる。したがって、本発明のブロック共重合体の特性は、適切に調節することができる。
【0027】
本発明の1つの具体例において、本発明のブロック共重合体は、光活性ブロックを更に有することができる。光活性ブロックは、疎水性ブロックに直接隣接することが好ましい。光活性ブロックは、ビニル部分から誘導された直線状主鎖と、光反応性ペンダント分子とを含有する。「ビニル部分から誘導された直線状主鎖(linear backbone derived from vinyl moieties)」は、生理活性ブロックの主鎖が、直鎖であり、かつ、ビニル基の重合によって形成されていることを意味する。光反応性ペンダント分子は、ビニル部分から誘導された直線状主鎖に共有結合によって結合されている。「光反応性ペンダント分子(pendant photoreactive molecules)」は、ある波長バンドの紫外線を吸収し、結果として、架橋重合過程を開始する分子を意味する。光反応性ペンダント分子は、本発明のブロック共重合体の疎水性ブロック、親水性ブロックおよび生理活性ブロックと相溶性である光反応性分子であればいかなるものでもよい。本発明に適した光反応性ペンダント分子の例は、ベンゾフェノン、アジド、チオキサントン、および、それらの誘導体を包含するが、それらに限定されない。
【0028】
本発明の1つの具体例において、本発明のブロック共重合体は、次の構造:
【化8】


(式中、x、nおよびmは、同一であるかまたは相違しており、独立的に10〜2500の整数であり、yは1〜10の整数である)を有する。
【0029】
本発明の1つの具体例において、式(III)の本発明のブロック共重合体は、スキーム2に例示されるルートを経て合成される。
【0030】
スキーム2:
【化9】


式中、x、nおよびmは、同一であるかまたは相違しており、独立的に10〜2500の整数であり、yは1〜10の整数であり、かつ、BPAは、次の構造:
【化10】


を有するメタクリル酸ベンゾフェノンである。
【0031】
本発明のブロック共重合体は、所望の機械的耐久性と十分な密着性とを有するコーティングの形成が可能となるように、約5,000〜約500,000ドルトンの範囲の調節可能なポリマー分子量を有することが好ましい。コーティングの機械的耐久性はポリマー分子量を増大することによって改善されるので、本発明のブロック共重合体は、生体内での拡張と展開とを必要とする幾種類かの医療用具(例えば、ステント)のためのコーティングに使用するためには、10,000〜500,000ドルトンの高いポリマー分子量を有することが、とりわけ好ましい。
【0032】
本発明はまた、物品の1つの表面の少なくとも一部分の上に施用するためのコーティング組成物を提供する。コーティング組成物は、疎水性ブロック、親水性ブロックおよび生理活性ブロックを有するブロック共重合体であって、該生理活性ブロックが該親水性ブロックに直接隣接しているブロック共重合体を含有する。ブロック共重合体は直線状であることが好ましい。ブロック共重合体の疎水性ブロックは、1種以上のメタクリル酸アルキルまたはアクリル酸アルキルの重合モノマー単位を有する。本発明に適したメタクリル酸アルキルの例は、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニルおよびメタクリル酸ドデシルを包含するが、それらに限定されない。本発明に適したアクリル酸アルキルの例は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニルおよびアクリル酸ドデシルを包含するが、それらに限定されない。ブロック共重合体の親水性ブロックは、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリル酸、スチレンスルホン酸、ビニルアルコール、エチレングリコールおよびN−ビニルピロリドンから成る群から選ばれた重合モノマー単位を有する。ブロック共重合体の生理活性ブロックは、ビニル部分から誘導された直線状主鎖と生理活性ペンダント分子とを有する。生理活性ペンダント分子は、ビニル部分から誘導された該直線状主鎖に共有結合によって結合されている。好ましい生理活性ペンダント分子は、抗血栓剤、免疫抑制剤、抗腫瘍薬、抗炎症剤、血管形成阻害薬、タンパク質キナーゼ阻害薬、および、哺乳動物における再狭窄を治癒するか、低減するか、または、予防することのできる他の作用物質を包含するが、それらに限定されない。好ましい生理活性ペンダント分子には、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、siRNA、リボザイム、多糖類、オリゴ糖類および脂質も包含される。本発明の生理活性ペンダント分子の例は、ヘパリン、アルブミン、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノゲン活性化因子(TPA)、ウロキナーゼ、ラパマイシン、パクリタキセル、ピメクロリムス、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、siRNA、リボザイム、多糖類、オリゴ糖類、脂質、ならびに、それらの類似体および誘導体を包含するが、それらに限定されない。本発明で使用されるヘパリンは、低分子量ヘパリンであることが好ましい。
【0033】
ブロック共重合体は、光活性ブロックを更に含有することができる。光活性ブロックは、疎水性ブロックに直接隣接することが好ましい。光活性ブロックは、ビニル部分から誘導された直線状主鎖と、光反応性ペンダント分子とを含有する。光反応性ペンダント分子は、ビニル部分から誘導された直線状主鎖に共有結合によって結合されている。光反応性ペンダント分子は、本発明のブロック共重合体の疎水性ブロック、親水性ブロックおよび生理活性ブロックと相溶性である光反応性分子であればいかなるものでもよい。本発明に適した光反応性ペンダント分子の例は、ベンゾフェノン、アジド、チオキサントン、および、それらの誘導体を包含するが、それらに限定されない。光反応性ペンダント分子は、本発明のブロック共重合体が光によって架橋されるのを可能にし、それによって、本発明のコーティング組成物の耐久性が向上する。
【0034】
本発明のコーティング組成物は、高品質膜の形成を容易にするために、共溶媒および/または他の添加物(例えば、可塑剤、消泡剤、クレーター防止剤(anticrater agents)および凝集溶剤)を更に含有することができる。本発明のコーティング組成物への他の適切な添加剤は、生理活性剤、抗菌剤、抗血栓剤、抗生物質、顔料、放射線不透過物質(radiopacifiers)およびイオン導電体を包含するが、それらに限定されない。そのような諸成分の選定と量とに関する詳細は、当業者に知られている。
【0035】
本発明のコーティング組成物は、物品の1つの表面の少なくとも一部分に施用することができる。幾つかの具体例において、本発明のコーティング組成物は、物品の露出面全体に施用される。本発明のコーティング組成物の厚さは、コーティングを形成するのに使用される過程だけでなく、物品の用途によっても変わることがある。本発明のコーティング組成物は、典型的には、また、医療用具のためには、約1nm〜約10μmの厚さに施用され、より典型的であるのは約10nm〜約10μmの厚さである。本発明のブロック共重合体は、一般的な有機溶媒[例えば、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、および、それらの混合物]に可溶性である。有機溶媒は、ポリマー材料を取り扱うために、広範囲に渡って使用されるので、本発明のコーティング組成物は、様々な被覆過程(例えば、吹付け塗装過程)を経て、物品の少なくとも1つの表面に施用することができる。
【0036】
本発明のコーティング組成物が物品の少なくとも1つの表面に施用されたとき、直線状主鎖および疎水性ブロックは、機械的耐久性が改善され、かつ、下に横たわる表面に対する密着性が向上した本発明のブロック共重合体を提供し、同時に、親水性ブロックおよび生理活性ブロックは、潤滑性および血液適合性を提供する。更に、本発明のブロック共重合体の所望の弾性を得るために、疎水性ブロックおよび親水性ブロックは、様々な長さに調整することができる。また、親水性ブロックは、生理的条件の下、水和して膨潤し、生理活性ブロックが生理活性を保持するための所望の環境を提供することができる。
【0037】
本発明のコーティング組成物はまた、医療用具の下塗り塗料(例えば、ステントの下塗り塗料)から治療量の製剤が溶出するのを制御するように施用することができる。下塗り塗料は通常、1種以上の薬物、作用物質および/または化合物のマトリックスと、ポリマー等の生体適合性材料とを含有する。溶出は、物理的障壁、化学的障壁またはそれらの組み合わせによって制御される。溶出は、コーティングの厚さを変えることによって制御され、そうされることによって、薬物、作用物質および/または化合物が下塗り塗料マトリックスから拡散する拡散経路(diffusion path)の長さが変わる。下塗り塗料マトリックス中の薬物、作用物質および/または化合物は本質的に、コーティング中の隙間空間を通って拡散する。したがって、コーティングが厚ければ厚いほど拡散経路はそれだけいっそう長くなり、逆に、コーティングが薄ければ薄いほど拡散経路はそれだけいっそう短くなる。下塗り塗料から薬物を溶出するためのレギュレータ(regulator)としての、本発明のコーティング組成物の有効性は、ブロック共重合体中の様々なブロックの相対モル比を調節して該ブロック共重合体の最適疎水性を得ることによって最大にすることができる。下塗り塗料とコーティングとの両方の厚さは、それらが施用される物品の所望の全体的プロフィールによって制限されることがあるということに注目することが重要である。
【0038】
本発明はまた、物品の上にコーティングを有する該物品を提供する。コーティングは、疎水性ブロック、親水性ブロックおよび生理活性ブロックを含有するブロック共重合体を有する。生理活性ブロックは、親水性ブロックに直接隣接している。物品の1つの表面の少なくとも一部分は、ポリマーコート、プラスチック基体、セラミック、鋼鉄または他の合金金属の表面である場合がある。様々な機能性ブロック(例えば、光活性ブロック)を、本発明のブロック共重合体に添加して、本発明のブロック共重合体および本発明のコーティングに所望の特性を与えることができる。
【0039】
本発明のコーティング組成物で被覆することのできる物品は、いかなる形状のものであってもよく、好ましくは医療用具または医療用具の部品である。医療用具または医療用具の部品は移植可能であることがより好ましい。本明細書および特許請求の範囲で使用される用語「医療用具(medical device)」は、医療処置において使用される物品(physical item)を意味し、外用医療用具と移植可能な医療用具との両方を包含する。本発明のコーティング組成物で被覆することのできる医療用具は、カテーテル、ガイドワイヤー、薬物溶出用ステント、蝸牛インプラント(cochlear implants:人工内耳)、網膜インプラント、胃バンド、神経刺激装置、筋肉刺激装置、移植可能な薬物運搬デバイス、眼内デバイス、および、他の様々な医療用具を包含するが、それらに限定されない。
【0040】
本コーティング組成物は、従来の被覆技術(例えば、吹付け塗装法、超音波被覆法、浸漬被覆法、等)を用いて、物品の表面に施用することができる。浸漬被覆法では、コーティング組成物の入っている浴の中に物品を浸漬し、次いで、取り出す。約1分〜約2時間の範囲の滞留時間(dwelling time)を使用することができ、該滞留時間は構成材料と医療用具の複雑さと所望のコーティング厚さとによって決まる。次いで、該コーティング組成物で被覆された物品は、乾燥して乾燥コーティングを提供することができる。乾燥工程は、単に周囲条件に放置することによって達成することができ、または、約30℃〜約65℃のような温和な温度で加熱することによって加速することができる。
【0041】
本発明の好ましい諸具体例に関連して、本発明を詳細に示され記述してきたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態と細部とに関する前述の変形および他の変形を行うことができるということを当業者は理解するであろう。したがって、本発明は記述され例示されたそのままの正確な形態と細部とに限定されるのではなく、特許請求の範囲に含まれることが意図されている。
【0042】
〔実施態様〕
(1)ブロック共重合体において、
疎水性ブロックと、
親水性ブロックと、
生理活性ブロックと、
を含み、
前記生理活性ブロックが、前記親水性ブロックに直接隣接している、
ブロック共重合体。
(2)実施態様1に記載のブロック共重合体において、
前記疎水性ブロックが、少なくとも1種のメタクリル酸アルキルまたはアクリル酸アルキル、の重合モノマー単位を含んでいる、
ブロック共重合体。
(3)実施態様2に記載のブロック共重合体において、
少なくとも1種のメタクリル酸アルキルの前記重合モノマー単位が、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、およびメタクリル酸ドデシル、から成る群から選ばれている、ブロック共重合体。
(4)実施態様2に記載のブロック共重合体において、
少なくとも1種のアクリル酸アルキルの前記重合モノマー単位が、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、およびアクリル酸ドデシル、から成る群から選ばれている、ブロック共重合体。
(5)実施態様1に記載のブロック共重合体において、
前記親水性ブロックが、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリル酸、スチレンスルホン酸、ビニルアルコール、エチレングリコール、およびN−ビニルピロリドン、から成る群から選ばれた重合モノマー単位を含んでいる、ブロック共重合体。
(6)実施態様1に記載のブロック共重合体において、
前記生理活性ブロックは、ビニル部分から誘導された直線状主鎖と生理活性ペンダント分子とを含んでおり、
前記生理活性ペンダント分子は、ビニル部分から誘導された前記直線状主鎖に共有結合によって結合されている、
ブロック共重合体。
(7)実施態様6に記載のブロック共重合体において、
前記生理活性ペンダント分子が、抗血栓剤、免疫抑制剤、抗腫瘍薬、抗炎症剤、血管形成阻害薬、タンパク質キナーゼ阻害薬、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、siRNA、リボザイム、多糖類、オリゴ糖類、および脂質、から成る群から選ばれている、ブロック共重合体。
(8)実施態様7に記載のブロック共重合体において、
前記生理活性ペンダント分子が、ヘパリン、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、siRNA、リボザイム、多糖類、オリゴ糖類、および脂質、から成る群から選ばれている、ブロック共重合体。
(9)実施態様1に記載のブロック共重合体において、
以下の構造を有しており、
【化11】


式中、
x、nおよびmは、同一であるかまたは相違しており、独立的に10〜2500の整数であり、
生体分子は、抗血栓剤、免疫抑制剤、抗腫瘍薬、抗炎症剤、血管形成阻害薬、タンパク質キナーゼ阻害薬、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、siRNA、リボザイム、多糖類、オリゴ糖類、および脂質、から成る群から選ばれている、
ブロック共重合体。
(10)実施態様9に記載のブロック共重合体において、
以下の構造を有しており、
【化12】


式中、
x、nおよびmは、同一であるかまたは相違しており、独立的に10〜2500の整数である、
ブロック共重合体。
【0043】
(11)実施態様1に記載のブロック共重合体において、
ビニル部分から誘導された直線状主鎖、およびビニル部分から誘導された前記直線状主鎖に共有結合によって結合されている光反応性ペンダント分子、を有する光反応性ブロック、
を更に含んでいる、
ブロック共重合体。
(12)実施態様11に記載のブロック共重合体において、
前記光反応性ペンダント分子が、ベンゾフェノン、アジド、チオキサントン、またはそれらの誘導体である、ブロック共重合体。
(13)実施態様12に記載のブロック共重合体において、
以下の構造を有し、
【化13】


式中、
x、nおよびmは、同一であるかまたは相違しており、独立的に10〜2500の整数であり、yは1〜10の整数である、
ブロック共重合体。
(14)実施態様1に記載のブロック共重合体において、
約5,000〜約500,000ドルトンの範囲の調節可能な分子量を有する、ブロック共重合体。
(15)ブロック共重合体において、
以下の構造を有し、
【化14】


式中、
x、nおよびmは、同一であるかまたは相違しており、独立的に10〜2500の整数であり、
Wは、活性な中間体である、
ブロック共重合体。
(16)実施態様15に記載のブロック共重合体において、
以下の構造を有し、
【化15】


式中、
x、nおよびmは、同一であるかまたは相違しており、独立的に10〜2500の整数である、
ブロック共重合体。
(17)物品の1つの表面の少なくとも一部分の上に施用するためのコーティング組成物において、
疎水性ブロック、親水性ブロック、および生理活性ブロック、を有するブロック共重合体、
を含有し、
前記生理活性ブロックが、前記親水性ブロックに直接隣接している、
コーティング組成物。
(18)実施態様17に記載のコーティング組成物において、
約1nm〜約10μmの厚さを有している、コーティング組成物。
(19)物品の上にコーティングを有する前記物品において、
前記コーティングが、
疎水性ブロック、親水性ブロック、および生理活性ブロック、を有するブロック共重合体であって、前記生理活性ブロックが、前記親水性ブロックに直接隣接している、ブロック共重合体、
を含有している、
物品。
(20)実施態様19に記載の物品において、
前記疎水性ブロックが、少なくとも1種のメタクリル酸アルキルまたはアクリル酸アルキル、の重合モノマー単位を含んでいる、物品。
【0044】
(21)実施態様20に記載の物品において、
少なくとも1種のメタクリル酸アルキルの前記重合モノマー単位が、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、およびメタクリル酸ドデシル、から成る群から選ばれている、物品。
(22)実施態様20に記載の物品において、
少なくとも1種のアクリル酸アルキルの前記重合モノマー単位が、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、およびアクリル酸ドデシル、から成る群から選ばれている、物品。
(23)実施態様19に記載の物品において、
前記親水性ブロックが、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリル酸、スチレンスルホン酸、ビニルアルコール、エチレングリコール、およびN−ビニルピロリドン、から成る群から選ばれた重合モノマー単位を有している、物品。
(24)実施態様19に記載の物品において、
前記生理活性ブロックが、ビニル部分から誘導された直線状主鎖、および生理活性ペンダント分子、を含んでおり、
前記生理活性ペンダント分子は、ビニル部分から誘導された前記直線状主鎖に共有結合によって結合されている、
物品。
(25)実施態様24に記載の物品において、
前記生理活性ペンダント分子が、抗血栓剤、免疫抑制剤、抗腫瘍薬、抗炎症剤、血管形成阻害薬、タンパク質キナーゼ阻害薬、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、siRNA、リボザイム、多糖類、オリゴ糖類、および脂質、から成る群から選ばれている、物品。
(26)実施態様25に記載の物品において、
前記生理活性ペンダント分子が、ヘパリン、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、siRNA、リボザイム、多糖類、オリゴ糖類、および脂質、から成る群から選ばれている、物品。
(27)実施態様19に記載の物品において、
前記ブロック共重合体が、ビニル部分から誘導された直線状主鎖、およびビニル部分から誘導された前記直線状主鎖に共有結合によって結合されている光反応性ペンダント分子、を含んでいる光反応性ブロック、を更に含んでいる、物品。
(28)実施態様27に記載の物品において、
前記光反応性ペンダント分子が、ベンゾフェノン、アジド、チオキサントン、またはそれらの誘導体である、物品。
(29)実施態様19に記載の物品において、
約5,000〜約500,000ドルトンの範囲の調節可能な分子量を有する、ブロック共重合体。
(30)実施態様19に記載の物品において、
前記コーティングが、約1nm〜約10μmの厚さを有している、物品。
(31)実施態様19に記載の物品において、
医療用具、または、医療用具の部品である、物品。




 

 


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