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発明の名称 薬理活性剤の制御放出または送達のためのポリマー組成物
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−152102(P2007−152102A)
公開日 平成19年6月21日(2007.6.21)
出願番号 特願2006−324162(P2006−324162)
出願日 平成18年11月30日(2006.11.30)
代理人 【識別番号】100066474
【弁理士】
【氏名又は名称】田澤 博昭
発明者 ジョナサン・ゼット・チャオ
要約 課題
薬理活性剤の貯蔵寿命を延長する。

解決手段
本発明は、薬理活性剤の制御放出または送達のためのポリマー組成物に関する。各ポリマー組成物は、酸化分解に感受性を示す少なくとも1種類の薬理活性剤を含有する生体適合性ポリマーマトリックスを含み、このポリマーマトリックスは、少なくとも1つの第一のポリマー材料を含み、この第一のポリマー材料は、少なくとも1種類の薬理活性剤を酸化分解から保護するのに十分な量の、第一のポリマー材料に共有結合された活性な抗酸化機能部分を有する。任意に、前記ポリマーマトリックスは、共有結合された活性な抗酸化機能部分を基本的に含まない第二のポリマー材料をさらに含む。本発明は植え込み可能な構造体を含み、一方で、植え込み可能な構造体が前記ポリマー組成物を含むか、または、前記ポリマー組成物でコートされている、医療用具にも関する。
特許請求の範囲
【請求項1】
ポリマー組成物において、
酸化分解に感受性を示す少なくとも1種類の薬理活性剤を含有する生体適合性ポリマーマトリックス、
を含み、
前記生体適合性ポリマーマトリックスが、少なくとも第一のポリマー材料を含み、前記第一のポリマー材料は、前記少なくとも1種類の薬理活性剤を酸化分解から保護するのに十分な量の、前記第一のポリマー材料に共有結合された活性な抗酸化機能部分(active antioxidant functional moiety)を有し、かつ、
任意に、前記生体適合性ポリマーマトリックスが、共有結合された活性な抗酸化機能部分を基本的に含まない第二のポリマー材料をさらに含む、
ポリマー組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のポリマー組成物において、
前記少なくとも1種類の薬理活性剤が、トランス-レチノイン酸、パクリタキセル、パクリタキセル誘導体、ラパマイシン、および、ラパマイシンの哺乳類標的物(mammalian target of rapamycin)(mTOR)に結合する少なくとも1つのドメインを含むラパマイシン誘導体、からなる群から選択される、ポリマー組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のポリマー組成物において、
前記少なくとも1種類の活性な抗酸化機能部分が、フェノール類、ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンK、および、それらの誘導体、からなる群から選択される、ポリマー組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のポリマー組成物において、
前記少なくとも1種類の活性な抗酸化機能部分が、フェノール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、プロブコール、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ミコフェノール酸(MPA)、チロシン、トランス-レスベラトロール(trans-resveratrol)、シス-レスベラトロール(cis-resveratrol)、および、それらの誘導体、からなる群から選択されるフェノール類の1つである、ポリマー組成物。
【請求項5】
請求項1に記載のポリマー組成物において、
前記第一のポリマー材料が、フェノール類、ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンK、および、それらの誘導体、からなる群から選択される少なくとも2種類の異なるタイプの共有結合された活性な抗酸化機能部分(covalently bound active antioxidant functional moiety)を含む、ポリマー組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のポリマー組成物において、
前記少なくとも1種類の活性な抗酸化機能部分が、任意に1つ以上のフッ素置換基を有する、直鎖のまたは枝分れしたC1−C20アルキル、C1−C20アルキレン、C1−C20オキサアルキレン(C1−C20 oxaalkylenes)、C1−C20オリゴ-オキサアルキレン(C1−C20 oligo-oxaalkylenes)、C1−C20アルキレンオキサアルキレン(C1−C20 alkyleneoxaalkylenes)、および、C1−C20アルキレンオリゴ-オキサアルキレン(C1−C20 alkylene oligo-oxaalkylenes)、からなる群から選択される側鎖結合基によって前記第一のポリマー材料に共有結合される、ポリマー組成物。
【請求項7】
請求項1に記載のポリマー組成物において、
前記第一のポリマー材料が、生体適合性付加ポリマー、および、生体適合性縮合ポリマー、からなる群から選択される、ポリマー組成物。
【請求項8】
請求項7に記載のポリマー組成物において、
前記第一のポリマー材料が、生体安定性ポリマー、または、生体吸収性ポリマー、である、ポリマー組成物。
【請求項9】
請求項1に記載のポリマー組成物において、
前記第一のポリマー材料が、ポリビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリ(エステルアミド)(poly(esteramide))、ポリウレタン、ポリ(ブチルメタクリレート)(poly(butyl methacrylate))、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(poly(2-hydroxyethylmethacrylate))、または、それらの組み合わせ、からなる群から選択される、ポリマー組成物。
【請求項10】
請求項1に記載のポリマー組成物において、
前記第一のポリマー材料が、生体適合性ポリビニルを含む、ポリマー組成物。
【請求項11】
請求項1に記載のポリマー組成物において、
前記第一のポリマー材料が、前記ポリマー材料に共有結合された前記少なくとも1種類の活性な抗酸化機能部分を有する、ポリ(ブチルメタクリレート)、および、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)コポリマー、を含む、ポリマー組成物。
【請求項12】
請求項11に記載のポリマー組成物において、
前記ポリ(ブチルメタクリレート)、および、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)コポリマーが、次式を有する少なくとも一部を含み、
【化1】


式中、Bが、活性な抗酸化機能成分であり、nおよびmが、ともに≧1である、
ポリマー組成物。
【請求項13】
請求項1に記載のポリマー組成物において、
前記生体適合性ポリマーマトリックスが、前記第二のポリマー材料をさらに含み、
前記第二のポリマー材料が、生体適合性付加ポリマー、および、生体適合性縮合ポリマー、からなる群から選択される、
ポリマー組成物。
【請求項14】
請求項13に記載のポリマー組成物において、
前記第二のポリマー材料が、生体安定性ポリマー、または、生体吸収性ポリマー、である、ポリマー組成物。
【請求項15】
植え込み可能な構造体を含む医療用具において、
前記植え込み可能な構造体の少なくとも一部が、請求項1に記載のポリマー組成物を含むか、または、請求項1に記載のポリマー組成物によってコートされている、医療用具。
【請求項16】
請求項14に記載の医療用具において、
前記植え込み可能な構造体が、ステント、ステントグラフト、吻合器、血管グラフト、血管パッチ、AVシャント、カテーテル、ガイドワイヤ、バルーン、および、フィルター、からなる群から選択される、医療用具。
【請求項17】
医療用具を形成する方法において、
酸化分解に感受性を示す少なくとも1種類の薬理活性剤を含有する生体適合性ポリマーマトリックスを含むポリマー組成物を提供する段階であって、
前記生体適合性ポリマーマトリックスが、少なくとも1つの第一のポリマー材料を含み、前記第一のポリマー材料は、少なくとも1種類の前記薬理活性剤を酸化分解から保護するのに十分な量の、前記第一のポリマー材料に共有結合された活性な抗酸化機能部分を有し、かつ、
任意に、前記生体適合性ポリマーマトリックスが、共有結合された活性な抗酸化機能部分を基本的に含まない第二のポリマー材料をさらに含む、
段階と、
前記ポリマー組成物を使って、植え込み可能な構造体の少なくとも一部を形成するか、またはコートする段階と、
を含む、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、
前記植え込み可能な構造体が、ステント、ステントグラフト、吻合器、血管グラフト、血管パッチ、AVシャント、カテーテル、ガイドワイヤ、バルーン、および、フィルター、からなる群から選択される、方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法において、
前記少なくとも1種類の薬理活性剤が、トランス-レチノイン酸、パクリタキセル、パクリタキセル誘導体、ラパマイシン、および、ラパマイシンの哺乳類標的物(mTOR)に結合する少なくとも1つのドメインを含むラパマイシン誘導体、からなる群から選択される、方法。
【請求項20】
抗酸化コポリマーにおいて、
次式を有する少なくとも一部を含み、
【化2】


式中、Bが、活性な抗酸化機能部分であり、nおよびmが、ともに≧1である、
抗酸化コポリマー。
【請求項21】
抗酸化コポリマーにおいて、
次式を有する少なくとも一部を含み、
【化3】


式中、Lが、任意に1つ以上のフッ素置換基を有する、直鎖のまたは枝分れしたC1−C20アルキル、C1−C20アルキレン、C1−C20オキサアルキレン、C1−C20オリゴ-オキサアルキレン、C1−C20アルキレンオキサアルキレン、および、C1−C20アルキレンオリゴ-オキサアルキレン、からなる群から選択された側鎖結合基であり、
nおよびmが、ともに≧1である、
抗酸化コポリマー。
【請求項22】
モノマー化合物において、
次式を有する少なくとも一部を有し、
【化4】


式中、R1、R2、R3およびR4が、独立して、水素、ヒドロキシル、および、C1−C8アルキル、からなる群から選択され、
Pが、加水分解によって除去可能な保護官能基であり、
Xが、重合可能な官能基である、
モノマー化合物。
【請求項23】
請求項21に記載のモノマー化合物において、
次式からなる群から選択される、モノマー化合物。
【化5−1】


【化5−2】


発明の詳細な説明
【開示の内容】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、1種類以上の薬理活性剤の制御放出または送達に使用されることができるポリマー組成物に関する。本発明は、1種類以上のこのポリマー組成物で形成されるか、またはコートされた植え込み可能な医療用具にも関する。この植え込み可能な医療用具は、疾患を治療または予防し、治癒および内皮形成を促進し、および/または、この医療用具の導入に有用な生体組織の免疫反応を最小化または実質的に排除するのに有効な各種薬理活性剤の局所投与および制御放出に使用されることができる。さらに具体的には、この医療用具は、血管疾患、特に損傷が原因の血管疾患の予防および治療のための薬剤/薬剤の組み合わせの局所投与および制御放出に有用である。
【0002】
〔発明の背景〕
最近、1種類以上の薬理活性剤を含有する、この薬理活性剤の局所投与および制御放出のための植え込み可能な医療用具が、医療用具産業において次第に受け入れられてきた。典型的には、非分解性または分解性である、生体適合性ホモポリマーまたはコポリマーが、この医療用具の少なくとも一部の形成またはコーティングに使用され、この用具表面からの1種類以上の薬理活性剤の制御された放出のための生体適合性ポリマーマトリックスを提供する。
【0003】
しかし、ラパマイシン、パクリタキセル、トランス-レチノイン酸などの特定の薬理活性剤は、酸化的分解に易損性の1つ以上の不飽和結合を含有する。その結果、この薬理活性剤は、経時的に、徐々にその効力と生物学的活性を失い、貯蔵寿命の有意な短縮を生じる可能性がある。
【0004】
そのため、生体適合性ポリマーマトリックスに含有される酸化感受性薬理活性剤を安定化し、それによって、この薬理活性剤の貯蔵寿命を延長することが急務である。
【0005】
〔発明の概要〕
ある態様における本発明は、酸化分解に感受性を示す少なくとも1種類の薬理活性剤を含有する生体適合性ポリマーマトリックスを含むポリマー組成物に関するもので、この場合、この生体適合性ポリマーマトリックスは、少なくとも第一のポリマー材料を含み、この第一のポリマー材料は、酸化分解から少なくとも1種類の薬理活性剤を保護するのに十分な量の、前記ポリマー材料に共有結合された、少なくとも1つの活性な抗酸化機能部分、を有する。任意に、生体適合性ポリマーマトリックスは、さらに、共有結合された活性な抗酸化機能部分(covalently bound active antioxidant functional moiety)を基本的に含まない第二のポリマー材料を含む。
【0006】
本明細書で使用される場合の「ポリマー(polymer)」または「ポリマー性(polymeric)」という用語は、1種類以上のポリマーを含むいずれかの材料、組成物、構造、または、製品を指し、ホモポリマー、コポリマーまたはポリマーブレンドであることができる。
【0007】
本明細書で使用される場合の「生体適合性(biocompatible)」という用語は、生体組織または生体系に基本的に有毒ではなく、あるいは、有害な影響を与えないいずれかの材料、組成物、構造体、または製品を指し、この材料、組成物、構造体、または製品は、この生体組織または生体系に接触し、この生体組織または生体系において免疫反応を基本的に生じない。さらに詳細には、この材料、組成物、構造体、または製品は、この材料、組成物、構造体、または製品と接触する生体組織または生体系の細胞の増殖およびいずれの他の所望の特性に対する有害な影響を基本的に有しない。一般に、材料、組成物、構造体、または製品の生体適合性の検査法は、当業界において周知である。
【0008】
本明細書で使用される場合の「活性な抗酸化機能部分(active antioxidant functional moiety)」という語句は、活性化される必要がある潜伏または潜在する抗酸化機能性を有する機能部分(functional moiety)とは異なり、抗酸化機能性(antioxidant functionality)を活発に示す機能部分を指す。例えば、遊離ヒドロキシル官能基を含有するフェノールまたは置換型フェノール部分は、抗酸化機能性を活発に示し、そのため、本発明の意味において活性な抗酸化機能部分と見なされる。対照的に、ヒドロキシル官能基が別の官能基で保護または置換された保護フェノール部分は、このフェノール部分内に遊離ヒドロキシル官能基を形成するプロセスによって活性化されるまで、この抗酸化機能性を示さない。
【0009】
前記生体適合性マトリックスに組み入れられることができ、共有結合された活性な抗酸化機能部分によって保護されることができる、薬理活性剤は、例えば、トランス-レチノイン酸、パクリタキセル、パクリタキセル誘導体、ラパマイシン、およびラパマイシンの哺乳類標的物(mammalian target of rapamycin)(mTOR)に結合する少なくとも1つのドメインを含むラパマイシン誘導体を含む。
【0010】
共有結合された活性な抗酸化機能部分は、抗酸化剤と前記生体適合性ポリマーマトリックスの間で形成される共有結合が前記抗酸化剤の機能性に悪影響を与えないという条件付きで、当業界において周知のいずれかの適切な抗酸化剤から形成されることができる。好ましくは、共有結合された活性な抗酸化機能部分は、フェノール類、ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンK、および、それらの誘導体からなる群から選択されるが、必須ではない。さらに好ましくは、この共有結合された活性な抗酸化機能部分は、フェノール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、プロブコール、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ミコフェノール酸(MPA)、チロシン、トランス-レスベラトロール(trans-resveratrol)、シス-レスベラトロール(cis-resveratrol)、および、それらの誘導体の少なくとも1種類を含む。「誘導体(derivatives)」という用語は、本明細書で使用される場合、所望の性状を有する特定の化合物のいずれの誘導体化合物も広く網羅し、1個以上の官能基の付加、置換、および/または、欠失によって形成されることができ、この誘導体化合物は、特定の化合物と同一または同様の性状を示す。
【0011】
前記の第一のポリマー材料は、同一タイプまたは異なるタイプのいずれかの共有結合された活性な抗酸化機能部分数を含むことができる。本発明の好ましいが、必須ではない実施形態では、この第一のポリマー材料に共有結合された2つ以上の異なるタイプの活性な抗酸化機能部分が存在する。
【0012】
さらに、本発明の活性な抗酸化機能部分は、側鎖結合基(side-chain linking group)を介して前記第一のポリマー材料に共有結合されることができる。側鎖結合基は、立体障害を回避するために、この活性な抗酸化機能部分とこの第一のポリマー材料のポリマー主鎖(polymeric backbone)との間の十分な空間的分離を提供し、この活性な抗酸化機能部分の機能性に悪影響を伴わない限り、いずれの化学式または構造も有することもできる。好ましくは、前記側鎖結合基は、任意に1個以上のフッ素置換基を有する、直鎖のまたは枝分れしたC1−C20アルキル、C1−C20アルキレン、C1−C20オキサアルキレン(C1−C20 oxaalkylenes)、C1−C20オリゴ-オキサアルキレン(C1−C20 oligo-oxaalkylenes)、C1−C20アルキレンオキサアルキレン(C1−C20 alkyleneoxaalkylenes)、および、C1−C20アルキレンオリゴ-オキサアルキレン(C1−C20 alkylene oligo-oxaalkylenes)からなる群から選択されるが、必ずしもこれらから選択される必要はない。
【0013】
本発明の生体適合性ポリマー材料の少なくとも一部を形成する第一のポリマー材料は、生体適合性付加ポリマーおよび生体適合性縮合ポリマーを含むが、それらに制約されないいずれかの生体適合性ポリマーであることができる。好ましくは、この第一のポリマー材料は、生体安定性または生体吸収性ポリマーを含む。本発明での使用に適した生体安定性ポリマーは、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリ(エステルアミド)(poly(esteramide))、ポリカプロラクタム(polycaprolactam)、ポリイミド、塩化ポリビニル、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール、アクリルポリマーおよびコポリマー、ポリアクリロニトリル、オレフィンとのビニルモノマーのポリスチレンコポリマー(スチレンアクリロニトリルコポリマー、エチレンメチルメタクリレートコポリマー、エチレンビニルアセテート(ethylene vinyl acetate)など)、ポリエーテル、レーヨン、セルロース類(酢酸セルロース、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロースなど)、パリレンおよびそれらの誘導体、および、前記物質の混合物およびコポリマーを含むが、それらに制約されない。本発明で使用されることができる生体吸収性ポリマーは、ポリ(L-乳酸)、ポリ(DL-乳酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(ヒドロキシブチレート)(poly(hydroxy butyrate))、ポリグリコリド、ポリ(ジアキサノン)(poly(diaxanone))、ポリ(ヒドロキシバレレート)(poly(hydroxy valerate))、ポリオルソエステル(polyorthoester)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(poly (lactide-co-glycolide))やポリ(ヒドロキシブチレート-コ-バレレート)(poly(hydroxy butyrate-co-valerate))やポリ(グリコリド-コ-トリメチレンカーボネート)(poly(glycolide-co-trimethylene carbonate))などのコポリマー、ポリ無水物、ポリフォスフォエステル(polyphosphoester)、ポリ(フォスフォエステル-ウレタン)(poly(phosphoester-urethane))、ポリ(アミノ酸)(poly(amino acids))、ポリシアノアクリレート(polycyanoacrylate)、フィブリンやフィブリノーゲンやセルロースやデンプンやコラーゲンやヒアルロン酸などの生体分子、および、前記物質の混合物およびコポリマーを含むが、それらに制約されない。
【0014】
さらに好ましくは、第一のポリマー材料は、生体適合性ポリビニルポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリ(エステルアミド)、ポリウレタン、ポリ(ブチルメタクリレート)(poly(butyl methacrylate))、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(poly(2-hydroxyethylmethacrylate))、または、それらの組み合わせからなる群から選択される。さらに好ましくは、第一のポリマー材料は、生体適合性ビニルである。
【0015】
本発明の特に好ましい実施形態では、第一のポリマー材料は、ポリ(ブチルメタクリレート)とポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)のコポリマーで、このコポリマーに共有結合された前記の少なくとも1つの活性な抗酸化機能部分を有するコポリマーである。例えば、このコポリマーは、少なくとも1つの次式の部分を有することができ、
【化1】


式中、Bは活性な抗酸化機能部分であり、nおよびmは、ともに≧1である。
【0016】
本発明の生体適合性ポリマーマトリックスは、好ましくは、前記のとおりの第二のポリマー材料を含むが、必須ではない。この第二のポリマー材料は、生体適合性付加ポリマーおよび生体適合性縮合ポリマーを含むいずれかの生体適合性ポリマーを含むことができるが、それらに制約されない。好ましくは、この第二のポリマー材料は、前記のとおりの生体安定性または生体吸収性ポリマーである。さらに好ましくは、この第二のポリマー材料は、ポリビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリ(エステルアミド)、ポリウレタン、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、または、それらの組み合わせからなる群から選択される。さらに好ましくは、第二のポリマー材料は、生体適合性ビニルである。この第二のポリマー材料は、この第二のポリマー材料が共有結合された活性な抗酸化機能部分を基本的に含まない点を除いて、前記第一のポリマー材料と実質的に同一の化学構造を有することができる。
【0017】
別の態様では、本発明は、植え込み可能な構造体を含み、一方で、この植え込み可能な構造体が前記のとおりのポリマー組成物を含む、あるいは、前記の通りのポリマー組成物でコートされている、医療用具に関する。この植え込み可能な構造体は、好ましくは、ステント、ステントグラフト、吻合器、血管グラフト、血管パッチ、AVシャント、カテーテル、ガイドワイヤ、バルーンおよびフィルターからなる群から選択される。
【0018】
さらなる態様では、本発明は、医療用具を形成する方法に関し、
この方法が、
酸化分解に感受性を示す少なくとも1種類の薬理活性剤を含有する生体適合性ポリマーマトリックスを含むポリマー組成物(polymeric composition)を提供する段階であって、
この生体適合性ポリマーマトリックスは、少なくとも第一のポリマー材料を含み、この第一のポリマー材料は、少なくとも1種類の前記薬理活性剤を酸化分解から保護するのに十分な量の、このポリマー材料に共有結合された活性な抗酸化機能部分を有し、かつ、
任意に、この生体適合性ポリマーマトリックスが、共有結合された活性な抗酸化機能部分を基本的に含まない第二のポリマー材料をさらに含む、
段階と、
このポリマー組成物を使って、植え込み可能な構造体の少なくとも一部を形成するか、またはコートする段階と、
を含む、方法である。
【0019】
本発明の他の態様、特徴および利点は、次の開示および添付の特許請求の範囲からさらに詳細に明らかになる。
【0020】
〔発明の詳細な説明、およびその好ましい実施形態〕
以下の説明では、特定の材料、組成物、化学式(formula)、構造、用具、および、同項目の加工または使用法など多数の具体的詳細が述べられ、本発明の完全な理解を提供する。しかし、本発明がこれらの明細なしでも実施可能であることは、当業者によって理解されるであろう。他の場合には、本発明の曖昧化を回避するために、周知の材料、構造、または処理段階は、詳細には記述されなかった。
【0021】
前記のように、植え込み可能な医療用具に含有される特定の薬理活性剤は、酸化分解に易損性であり、この活性剤に含有されるフリーラジカルの酸化のために、経時的に徐々にその効力を失う可能性がある。そのため、この薬理活性剤の分解を防止するために、このフリーラジカルを安定化することが重要である。
【0022】
ある可能な手法は、前記の植え込み可能な医療用具の少なくとも一部の形成またはコーティング用として、酸化感受性薬理活性剤および1種類以上の抗酸化添加剤(例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、トコフェロールおよびプロブコールなど)の両方を含有するポリマー組成物を使用することである。この抗酸化添加剤は、この薬理活性剤に含有されるフリーラジカルを、このフリーラジカルに電子または水素を供与し、それによって、この薬理活性剤を安定化し、潜在的な酸化攻撃からこの薬理活性剤を保護することによって、停止させる。
【0023】
しかし、この手法は、前記生体適合性ポリマー、前記薬理活性剤(1または複数)および前記抗酸化添加剤(1または複数)の十分に均質な混合を達成するために、温度、圧力、溶媒系、攪拌速度などを含むが、それらに制約されない非常に最適化された処理条件を必要とする。最適以下の処理条件は、それぞれの物理的および化学的性状の相違のために混合成分間の有害な相分離を招く可能性がある。さらに、この抗酸化添加剤(1または複数)は、この薬理活性剤(1または複数)およびこの生体適合性ポリマーに比較して、比較的低い分子量を有する。同様に、この抗酸化添加剤(1または複数)は、比較的低い融点または昇華点を有し、前記ポリマーマトリックスから経時的に徐々に溶出または蒸発し、それによって、この薬理活性剤への保護能を失う可能性がある。
【0024】
そのため、本発明は、前記酸化感受性薬理活性剤の支持、ならびに、酸化分解からのこの薬理活性剤の保護を目的に、ポリマー組成物を提供するもので、この組成物は、第一のポリマー材料を含有する生体適合性ポリマーマトリックスを含有し、この第一のポリマー材料は、このポリマー材料に共有結合された少なくとも1つの活性な抗酸化機能部分を有する。この活性な抗酸化機能部分とこの第一のポリマー材料との間の共有結合は、相分離を有効に防止し、このポリマーマトリックスからの抗酸化剤の溶出または蒸発を有意に減じる。その結果、この活性な抗酸化機能部分は、本発明のポリマー組成物にさらに良好に組み入れられ、前記酸化感受性薬理活性剤に長期に持続する保護を提供する。
【0025】
本発明の生体適合性ポリマーマトリックスによって含有される第一のポリマーは、以下の一般式を有する少なくとも一部分を含むことができ、
【化2】


式中、
Pはこの第一のポリマーのポリマー主鎖の少なくとも一部を形成する反復単位を表し、nは≧1の整数であり、AAは活性な抗酸化機能部分を表し、Lは共有結合によってこの活性な抗酸化機能部分をこのポリマー主鎖に結合する結合基を表す。
【0026】
前記の通りの第一のポリマーは、付加ポリマーおよび縮合ポリマーを含むが、それらに制約されないいずれかの適切なポリマーであることができる。この第一のポリマーは、(1)実質的に同一の反復単位と実質的に同一の共有結合された活性な抗酸化機能部分とを含有するホモポリマー、(2)実質的に同一の反復単位だが、2つ以上の異なる共有結合された活性な抗酸化機能部分を含有するホモポリマー、(3)2つ以上の異なる反復単位だが、実質的に同一の共有結合された活性な抗酸化機能部分を含有するコポリマー、または、(4)2つ以上の異なる反復単位と2つ以上の異なる共有結合された活性な抗酸化機能部分とを含有するコポリマーからなる群から選択することができ、以下の一般式によって表されることができ、
【化3】


式中、
nおよびmは、ともに≧1の整数であり、P1およびP2は、前記ポリマー主鎖を形成する同一または異なる反復単位を表し、AA1およびAA2は、同一または異なる活性な抗酸化機能部分を表し、L1およびL2は、同一または異なる結合基である。
【0027】
共有結合された抗酸化機能部分を含有する前記ポリマーは、酸化感受性の薬理活性剤を支持、ならびに、安定化するポリマーマトリックスの形成に使用されることができ、この薬理活性剤は、トランス-レチノイン酸、パクリタキセル、パクリタキセル誘導体、ラパマイシン、およびラパマイシンの哺乳類標的物(mTOR)に結合する少なくとも1つのドメインを含むラパマイシン誘導体、または、酸化攻撃に易損性の1つ以上の不飽和結合を含有するいずれかの他の薬理活性剤を含むが、それらに制約されない。
【0028】
好ましくは、本発明の実施に使用される前記薬理活性剤は、少なくともラパマイシンを含む。ラパマイシンは、シロリムスとも呼ばれ、米国特許第3,929,992号に開示されているように、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス (Streptomyces hygroscopicus)によって産生される大環状トリエン型の抗生物質(macrocyclic triene antibiotic)である。ラパマイシンは、とりわけ、インビボ(生体内)で血管平滑筋細胞の増殖を抑制することが認められている。したがって、ラパマイシンは、哺乳類動物において、特に、生物学的または機械的に介在する血管損傷後、あるいは、哺乳類動物にこの血管損傷を受けやすくした条件下での、内膜平滑筋細胞の過形成、再狭窄、および、血管閉塞の治療に用いられることができる。ラパマイシンは、平滑筋細胞の増殖を抑制する機能を発揮し、血管壁の再内皮化を妨げない。ラパマイシンは、血管形成術により誘発される損傷において放出される細胞分裂シグナルに応答した平滑筋の増殖に拮抗することによって、血管の過形成を軽減する。細胞周期のG1期後期での増殖因子およびサイトカイン介在平滑筋増殖の抑制は、ラパマイシンの作用のドメインメカニズム(domain mechanism)であると考えられる。しかし、ラパマイシンは、全身投与すると、T細胞の増殖および分化を防止することも知られており、そのため、グラフトの拒絶反応を防止する免疫抑制剤として使用されることができる。
【0029】
ラパマイシンは、以下の化学構造を有する。
【化4】


【0030】
具体的には、ラパマイシン分子の機能ドメイン(functional domain)は、3つの二重結合を含み、ラパマイシンの哺乳類標的物(mTOR)、即ち細胞周期の進行に必要なキナーゼ、に結合できる。ラパマイシンによるmTORキナーゼ活性の抑制は、T細胞の活性化および炎症誘発性サイトカインの分泌を遮断し、ラパマイシンの免疫抑制および抗過形成活性(anti-hyperplastic activities)を司る基礎メカニズムである。そのため、ラパマイシンエステル(rapamycin ester)、エベロリムス(everolimus)、タクロリムス(tacrolimus)、ピメクロリムス(pimecrolimus)およびワートマニン(wortmannin)など、3つの二重結合を含む同様の機能ドメインを有するラパマイシン誘導体も、mTORキナーゼに結合でき、免疫抑制活性および抗過形成活性を示す。さらに重要な点として、このラパマイシン誘導体も、酸化に感受性を示す不飽和二重結合を含有するので、この誘導体も、前記の、共有結合された活性な抗酸化機能部分を含むポリマー組成物によって支持され、保護される。
【0031】
本発明に使用される共有結合された活性な抗酸化機能部分は、前記酸化感受性薬理活性剤を、この薬理活性剤に含有されるフリーラジカルに電子または水素を供与し、このフリーラジカルを停止させることによって、保護し、安定化する。適切な抗酸化機能部分は、フェノール類、ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンK、および、それらの誘導体を含むが、それらに制約されない。
【0032】
フェノール類は、芳香族炭化水素基に結合された少なくとも1つのヒドロキシル基を含有するクラスの化合物である。フェノール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、プロブコール、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ミコフェノール酸(MPA)、チロシン、トランス-レスベラトロール、シス-レスベラトロールなどの各種フェノール類は、周知の抗酸化機能を有し、本発明の活性な抗酸化機能部分の形成に容易に使用されることができる。
【0033】
ビタミンEは、脂溶性ビタミンであり、重要な抗酸化剤でもある。天然のビタミンEは、4種類のトコフェロール(α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、および、δ-トコフェロール)および4種類のトコトリエノール(α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、および、δ-トコトリエノール)を含む8個の異なる形態または異性体として存在する。合成ビタミンEは、無水酢酸または無水コハク酸を使って天然トコフェロール異性体をエステルに変換し、メチル基を付加して、酢酸トコフェロールおよびコハク酸トコフェロールなどのトコフェロールエステルを得ることによって、形成されることができる。すべてのビタミンE異性体は、フリーラジカルを減少させるために遊離水素を供与でき、本発明の活性な抗酸化機能部分の形成に使用されることができるヒドロキシル基を有するクロマノール環を含む。さらに、ビタミンE異性体は、それぞれ、長い疎水性の側鎖を含むので、この異性体は、中間結合基なしでポリマー分子に直接共有結合され、本発明のポリマー組成物を形成できる。
【0034】
本発明の活性な抗酸化機能部分の形成に使用されることができる他の非フェノール系抗酸化剤は、ビタミンC(例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウムまたは他のアスコルビン酸塩)、ビタミンA(例えば、レチナール、レチナールまたはレチノイン酸)、ビタミンK(フィロキノン、メナキノン、メナジオン、および、それらの誘導体を含む)などを含む。
【0035】
本発明のポリマー組成物は、いずれかの数の活性な抗酸化機能部分を含むことができ、これらは、これらは、同一タイプであるか、2種類以上の異なるタイプであることができる。このポリマー組成物中の活性な抗酸化機能部分の濃度は、用途の具体的要件に応じて幅広く変動することができる。例えば、このポリマー組成物は、このポリマー組成物の総重量の約0.1%〜約99.9%の活性な抗酸化機能部分を含むことができる。
【0036】
しかし、前記ポリマーマトリックスの機械的および化学的性状は、高めの濃度の活性な抗酸化機能部分による構成されてもよく、本発明のポリマー組成物は、好ましくは約0.1重量%〜約50重量%、さらに好ましくは1重量%〜約30重量%、最も好ましくは5重量%〜15重量%のこの活性な抗酸化機能部分を含む。
【0037】
さらに、本発明のポリマー組成物は、ともに第一のポリマー材料に共有結合された、前記のとおりのいずれかの2種類以上の異なるタイプの抗酸化機能部分の配合物を含むことができる。この配合物は、広範囲の抗酸化作用スペクトルを提供でき、さらに有利な点として、この配合物は、個々の抗酸化剤の和よりも強力な相乗の抗酸化作用を示すことができる。例えば、このポリマー組成物は、(1)フェノールまたは置換型フェノールおよび少なくとも1種類のトコフェノール、(2)BHTおよび少なくとも1種類のトコフェノールまたはトコフェノール誘導体、(3)天然に存在する全ビタミンE異性体および/またはそれらの誘導体、(4)BHTおよび天然に存在する全ビタミンE異性体および/またはそれらの誘導体、(5)全トコトリエノールおよび/またはそれらの誘導体、(6)少なくとも1種類のビタミンE異性体およびビタミンC、(7)BHTおよびプロブコール、(8)BHTおよびMPA、(9)チロシンおよび少なくとも1種類のビタミンE異性体の各配合物を含むことができる。
【0038】
本発明の好ましい実施形態では、前記生体適合性ポリマーマトリックスによって含有される前記第一のポリマー材料は、この第一のポリマー材料に共有結合されたトコフェロール由来の抗酸化機能部分およびフェノール機能部分の両方を有する。具体的には、この第一のポリマー材料の少なくとも一部は、次式を有し、
【化5】


式中、
Lは、任意の結合基であり、式中、nおよびmは、ともに≧1の整数である。
【0039】
前記活性な抗酸化機能部分は、前記第一のポリマー材料にランダムに、あるいは、制御されながら共有結合されることができ、この機能部分は、この第一のポリマー材料のポリマー分子の所望の部分(1または複数)に、例えば中間または末端に、存在することができる。
【0040】
前記活性な抗酸化機能部分と前記ポリマー主鎖の間の任意の結合基は、約1〜約20個、さらに好ましくは約1〜約10個の炭素原子、および、任意に1個以上のフッ素置換基を含有する、いずれかの適切な直鎖のまたは枝分れした、アルキル、アルキレン、オキサアルキレン、オリゴ-オキサアルキレン、アルキレンオキサアルキレン、アルキレンオリゴ-オキサアルキレンであることができる。この結合基は、この活性な抗酸化機能部分とこの第一のポリマー材料のポリマー主鎖との間の立体障害を軽減するように機能し、それによって、この結合基の長さは、この活性な抗酸化機能部分およびポリマー主鎖のサイズおよび構造に応じて、容易に調整されることができる。さらに、この結合基の構造は、具体的な応用の要件にしたがって調整され、得られるポリマー分子の物理的および化学的性状を最適化することができる。
【0041】
前記活性な抗酸化機能部分が共有結合される、本発明の第一のポリマー材料は、十分な生体適合性のあるいずれかの適切なポリマー、コポリマーまたはポリマーブレンドを含むことができる。前記いずれかのポリマーは、付加ポリマーか縮合ポリマーであることができ、好ましくは、ポリビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリ(エステルアミド)、ポリウレタン、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、および、それらの組み合わせの少なくとも1種類を含むが、それらに制約されない。好ましくは、この第一のポリマー材料は、ブチルメタクリレート(butyl methacrylate)(BMA)または2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-hydroxyethyl methacrylate)(HEMA)モノマーの重合、または、酢酸エチレン/ビニルコポリマー(EVAc)またはBMA/HEMAコポリマーなどのいずれかの生体適合性コポリマーによって形成される生体適合性ホモポリマーである。
【0042】
本発明のある具体的な実施形態では、少なくとも1つの反応基を含有するポリマー前駆化合物(polymeric precursor compound)が、1つ以上の抗酸化剤または抗酸化剤誘導体と反応し、前記共有結合された活性な抗酸化機能部分を有する本発明の第一のポリマー材料を形成する。
【0043】
例えば、以下の化学式を有するポリ(ブチルメタクリレート/2-ヒドロキシエチルメタクリレート)コポリマー前駆化合物(poly(butyl methacrylate/2-hydroxyethyl methacrylate) copolymer precursor compound)が、最初に提供され、
【化6】


式中、
nおよびmは、≧1の整数であり、この場合、n:mは、約1:9〜9:1の範囲である。
【0044】
前記ポリ(BMA/HEMA)コポリマー前駆化合物(poly(BMA/HEMA) copolymer precursor compound)は、反応性の-OH基を含むので、活性な抗酸化剤と反応し、以下の通りに、共有結合された活性な抗酸化機能部分を有するポリ(BMA/HEMA)コポリマーを形成でき、
【化7】


式中、
Bは、前記共有結合された活性な抗酸化機能部分を表し、nおよびmは、ともに≧1である。
【0045】
本発明の代替の実施形態では、重合可能なモノマーが、最初に提供されることができ、直接、あるいは、中間結合基を介して、重合可能な部分にすでに共有結合された1つ以上の抗酸化機能部分を含む。この重合可能な部分は、重合され、本発明の第一のポリマー材料のポリマー主鎖を形成することができる。活性な抗酸化機能部分は、典型的には、重合プロセスを妨害する可能性のある遊離電子または水素を含むので、本発明の重合可能なモノマーによって含有される活性な抗酸化機能部分が一時的に、すなわち1つ以上のキャッピング構造(capping structures)によって保護され、重合プロセスの妨害を軽減または最小化し、保護された活性な抗酸化機能部分は、例えば、保護キャッピング構造を除去する加水分解反応によって容易に活性化され、重合が完了した後に抗酸化機能を回復することができる。この抗酸化機能部分のこの保護および脱保護は、ポリマー産業界では既知である。シオドラW.グリーンおよびピーターG.M.ウッツ(Theodora W. Greene & Peter G.M. Wuts) 「有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)」 、第3版(3rd Edition), pp. 246-292(ワイリー、1999年(Wiley 1999))を参照されたい。
【0046】
例えば、前記重合可能なモノマーは、以下の一般式を有する少なくとも一部を有することができ、
【化8】


R1、R2、R3およびR4は、独立して、水素、ヒドロキシル、C1−C8アルキルなどからなる群から選択される。Pは、重合後に加水分解によって除去され、ベンジル環に遊離水素を有するヒドロキシル官能基を形成できる保護官能基(すなわち、キャッピング構造)である。Xは、重合を受けて、前記第一のポリマー材料のポリマー主鎖を形成できる重合性官能基である。このモノマーは、2つ以上の前記の式を有する部分を含むことができる。
【0047】
本発明の第一のポリマー材料の形成に使用されることができる数個の典型的モノマーは、説明のためだけに以下に詳述されるが、広い本発明の範囲を制限すると解釈してはならない。
【0048】
例えば、以下の化学式を有する4-アセトキシスチレンモノマー(4-acetoxystyrene monomer)は、
【化9】


重合可能なビニル基に共有結合され、-COCH3キャップによって保護されるフェノール機能部分を有する。このモノマーは、最初に重合され、次の化学式を有するポリマー前駆体を形成することができ、
【化10】


次のように、これが加水分解され、ポリビニル主鎖に共有結合された活性フェノール機能部分を有するポリマー分子を形成できる。
【化11】


【0049】
別の実施例では、前記の通りの4-アセトキシスチレンモノマーは、ブチルメタクリレート(BMA)モノマーと反応され、次のようにコポリマーを形成することができ、
【化12】


その後、このコポリマーは、加水分解され、フェノール機能部分を活性化し、次のようにポリ(フェノール/BMA)コポリマー(poly(phenol/BMA) copolymer)を形成できる。
【化13】


【0050】
なおも別の実施例では、以下の典型式(化14)を有する保護されたBHT機能部分を有する各種重合可能なモノマーが重合され、
【化14】


その後、加水分解され、次の通り(化15)の共有結合された活性なBHT機能部分を有するポリマーを形成できる。
【化15】


【0051】
なおも別の実施例では、ブドウ、クワの実、ピーナッツ、および、他の植物または食品に典型的に検出される天然フェノール系抗酸化剤であるレスベラトロールが、イミダゾールおよび乾燥ジメチルホルムアミド(dry dimethylformamide)(DMF)を含む溶媒系中でtert-ブチルメチルクロロシラン(tert-butyldimethylchlorosilane)(TBDMSC1)と反応し、-OTBDMSキャップによって保護されたモノマーレスベラトロール誘導体を形成し、続いて、保護レスベラトロール誘導体の重合、および、アルカリおよびNH4Fの存在下での加水分解を受け、それによって、次式のように、活性フェノール抗酸化機能部分(active phenolic antioxidant functional groups)を有するレスベラトロール誘導ポリマー(resveratrol-derived polymers)を形成することができる。
【化16】


【0052】
トランス-レスベラトロールは、主に前記の反応で説明されるが、シス-レスベラトロール、または、例えば、トランス-レスベラトロール-3-O-グリコシド(trans-resveratrol-3-O-glucoside)およびシス-レスベラトロール-3-O-グリコシド(cis-resveratrol-3-O-glucoside)のようなトランス-レスベラトロールおよびシス-レスベラトロールの誘導体も、TBDMSC1との同一の反応を受け、-OTBDMSキャップによって保護されるモノマーレスベラトロールを形成し、その後、これが、重合および加水分解を受け、活性フェノール抗酸化機能部分を有するレスベラトロール誘導ポリマーを形成することができることが容易に理解される。シス-レスベラトロール、トランス-レスベラトロール-3-O-グリコシド、および、シス-レスベラトロール-3-O-グリコシドによって形成されることができる-OTBDMSキャップによって保護された典型的なモノマーレスベラトール誘導体は、以下の式を有することができる。
【化17】


【0053】
本発明のポリマーの形成には、フリーラジカル反応、重縮合反応、陰イオン反応、陽イオン反応などを含むが、それらに制約されない各種重合反応が使用されることができる。以上の提供された典型的な実施例は、主に、本発明のポリマーの形成へのフリーラジカル反応の使用を示しているが、当然ながら、本発明はそのように制約されるものではなく、本発明を実施する上で、当業者によって他の重合技術は容易に使用されることができる。
【0054】
前記の本発明のポリマーは、前記の通りの1種類以上の酸化感受性薬理活性剤と容易に混合され、生体適合性ポリマーマトリックスに共有結合された活性な抗酸化機能部分を有するこの生体適合性ポリマーマトリックスに組み入れられるように、この薬理活性剤を含有するポリマー組成物を形成することができる。さらに、この生体適合性ポリマーマトリックスは、ポリ-BMA、ポリ-HEMA、BMA/HEMAコポリマー、EVAcなど、基本的に共有結合された活性な抗酸化機能部分を含まない、1種類以上の従来のポリマーを含むことができる。この従来のポリマーは、前記の第一のポリマー材料と容易に混合され、植え込み可能な医療用具の少なくとも一部を形成するか、またはコーティングするための、所望の物理的および化学的性状のポリマーブレンドを形成することができる。
【0055】
本発明のポリマーまたはポリマーブレンドによって形成またはコートされることができる適切な植え込み可能な医療用具は、ステント、ステントグラフト、吻合器、血管グラフト、血管パッチ、シャント、カテーテル、ガイドワイヤ、バルーン、および、フィルターを含むが、それらに制約されず、前記薬理活性剤の局所投与および/または制御放出に使用されることができる。好ましくは、本発明は、経皮的冠動脈形成術後の再狭窄および関連した合併症の治療のための、本発明の1種類以上のポリマーまたはポリマーブレンドから形成されるポリマーコーティングを含む少なくとも一部を有するステントを提供する。
【0056】
以上、本発明の具体的実施例が記述、説明されているが、当業者が、本明細書に提供される説明と一致する前記の具体的な実施形態を容易に変更できることは明らかである。そのため、本発明が、前記の具体的な実施形態に制約されるのではなく、むしろ、いずれかの他の変更、変形、応用、および、具体化に有用性を拡大するものであり、したがって、前記の他の変更、変形、応用および具体化は、すべて、本発明の精神および範囲内であると見なす必要があると認識すべきである。
【0057】
〔実施の態様〕
(1) ポリマー組成物において、
酸化分解に感受性を示す少なくとも1種類の薬理活性剤を含有する生体適合性ポリマーマトリックス、
を含み、
前記生体適合性ポリマーマトリックスが、少なくとも第一のポリマー材料を含み、前記第一のポリマー材料は、前記少なくとも1種類の薬理活性剤を酸化分解から保護するのに十分な量の、前記第一のポリマー材料に共有結合された活性な抗酸化機能部分(active antioxidant functional moiety)を有し、かつ、
任意に、前記生体適合性ポリマーマトリックスが、共有結合された活性な抗酸化機能部分を基本的に含まない第二のポリマー材料をさらに含む、
ポリマー組成物。
(2) 実施態様1に記載のポリマー組成物において、
前記少なくとも1種類の薬理活性剤が、トランス-レチノイン酸、パクリタキセル、パクリタキセル誘導体、ラパマイシン、および、ラパマイシンの哺乳類標的物(mammalian target of rapamycin)(mTOR)に結合する少なくとも1つのドメインを含むラパマイシン誘導体、からなる群から選択される、ポリマー組成物。
(3) 実施態様1に記載のポリマー組成物において、
前記少なくとも1種類の活性な抗酸化機能部分が、フェノール類、ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンK、および、それらの誘導体、からなる群から選択される、ポリマー組成物。
(4) 実施態様1に記載のポリマー組成物において、
前記少なくとも1種類の活性な抗酸化機能部分が、フェノール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、プロブコール、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ミコフェノール酸(MPA)、チロシン、トランス-レスベラトロール(trans-resveratrol)、シス-レスベラトロール(cis-resveratrol)、および、それらの誘導体、からなる群から選択されるフェノール類の1つである、ポリマー組成物。
(5) 実施態様1に記載のポリマー組成物において、
前記第一のポリマー材料が、フェノール類、ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンK、および、それらの誘導体、からなる群から選択される少なくとも2種類の異なるタイプの共有結合された活性な抗酸化機能部分(covalently bound active antioxidant functional moiety)を含む、ポリマー組成物。
(6) 実施態様1に記載のポリマー組成物において、
前記少なくとも1種類の活性な抗酸化機能部分が、任意に1つ以上のフッ素置換基を有する、直鎖のまたは枝分れしたC1−C20アルキル、C1−C20アルキレン、C1−C20オキサアルキレン(C1−C20 oxaalkylenes)、C1−C20オリゴ-オキサアルキレン(C1−C20 oligo-oxaalkylenes)、C1−C20アルキレンオキサアルキレン(C1−C20 alkyleneoxaalkylenes)、および、C1−C20アルキレンオリゴ-オキサアルキレン(C1−C20 alkylene oligo-oxaalkylenes)、からなる群から選択される側鎖結合基によって前記第一のポリマー材料に共有結合される、ポリマー組成物。
(7) 実施態様1に記載のポリマー組成物において、
前記第一のポリマー材料が、生体適合性付加ポリマー、および、生体適合性縮合ポリマー、からなる群から選択される、ポリマー組成物。
(8) 実施態様7に記載のポリマー組成物において、
前記第一のポリマー材料が、生体安定性ポリマー、または、生体吸収性ポリマー、である、ポリマー組成物。
(9) 実施態様1に記載のポリマー組成物において、
前記第一のポリマー材料が、ポリビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリ(エステルアミド)(poly(esteramide))、ポリウレタン、ポリ(ブチルメタクリレート)(poly(butyl methacrylate))、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(poly(2-hydroxyethylmethacrylate))、または、それらの組み合わせ、からなる群から選択される、ポリマー組成物。
(10) 実施態様1に記載のポリマー組成物において、
前記第一のポリマー材料が、生体適合性ポリビニルを含む、ポリマー組成物。
(11) 実施態様1に記載のポリマー組成物において、
前記第一のポリマー材料が、前記ポリマー材料に共有結合された前記少なくとも1種類の活性な抗酸化機能部分を有する、ポリ(ブチルメタクリレート)、および、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)コポリマー、を含む、ポリマー組成物。
(12) 実施態様11に記載のポリマー組成物において、
前記ポリ(ブチルメタクリレート)、および、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)コポリマーが、次式を有する少なくとも一部を含み、
【化18】


式中、Bが、活性な抗酸化機能成分であり、nおよびmが、ともに≧1である、
ポリマー組成物。
(13) 実施態様1に記載のポリマー組成物において、
前記生体適合性ポリマーマトリックスが、前記第二のポリマー材料をさらに含み、
前記第二のポリマー材料が、生体適合性付加ポリマー、および、生体適合性縮合ポリマー、からなる群から選択される、
ポリマー組成物。
(14) 実施態様13に記載のポリマー組成物において、
前記第二のポリマー材料が、生体安定性ポリマー、または、生体吸収性ポリマー、である、ポリマー組成物。
【0058】
(15) 植え込み可能な構造体を含む医療用具において、
前記植え込み可能な構造体の少なくとも一部が、実施態様1に記載のポリマー組成物を含むか、または、実施態様1に記載のポリマー組成物によってコートされている、医療用具。
(16) 実施態様14に記載の医療用具において、
前記植え込み可能な構造体が、ステント、ステントグラフト、吻合器、血管グラフト、血管パッチ、AVシャント、カテーテル、ガイドワイヤ、バルーン、および、フィルター、からなる群から選択される、医療用具。
(17) 医療用具を形成する方法において、
酸化分解に感受性を示す少なくとも1種類の薬理活性剤を含有する生体適合性ポリマーマトリックスを含むポリマー組成物を提供する段階であって、
前記生体適合性ポリマーマトリックスが、少なくとも1つの第一のポリマー材料を含み、前記第一のポリマー材料は、少なくとも1種類の前記薬理活性剤を酸化分解から保護するのに十分な量の、前記第一のポリマー材料に共有結合された活性な抗酸化機能部分を有し、かつ、
任意に、前記生体適合性ポリマーマトリックスが、共有結合された活性な抗酸化機能部分を基本的に含まない第二のポリマー材料をさらに含む、
段階と、
前記ポリマー組成物を使って、植え込み可能な構造体の少なくとも一部を形成するか、またはコートする段階と、
を含む、方法。
(18) 実施態様17に記載の方法において、
前記植え込み可能な構造体が、ステント、ステントグラフト、吻合器、血管グラフト、血管パッチ、AVシャント、カテーテル、ガイドワイヤ、バルーン、および、フィルター、からなる群から選択される、方法。
(19) 実施態様17に記載の方法において、
前記少なくとも1種類の薬理活性剤が、トランス-レチノイン酸、パクリタキセル、パクリタキセル誘導体、ラパマイシン、および、ラパマイシンの哺乳類標的物(mTOR)に結合する少なくとも1つのドメインを含むラパマイシン誘導体、からなる群から選択される、方法。
(20) 抗酸化コポリマーにおいて、
次式を有する少なくとも一部を含み、
【化19】


式中、Bが、活性な抗酸化機能部分であり、nおよびmが、ともに≧1である、
抗酸化コポリマー。
(21) 抗酸化コポリマーにおいて、
次式を有する少なくとも一部を含み、
【化20】


式中、Lが、任意に1つ以上のフッ素置換基を有する、直鎖のまたは枝分れしたC1−C20アルキル、C1−C20アルキレン、C1−C20オキサアルキレン、C1−C20オリゴ-オキサアルキレン、C1−C20アルキレンオキサアルキレン、および、C1−C20アルキレンオリゴ-オキサアルキレン、からなる群から選択された側鎖結合基であり、
nおよびmが、ともに≧1である、
抗酸化コポリマー。
(22) モノマー化合物において、
次式を有する少なくとも一部を有し、
【化21】


式中、R1、R2、R3およびR4が、独立して、水素、ヒドロキシル、および、C1−C8アルキル、からなる群から選択され、
Pが、加水分解によって除去可能な保護官能基であり、
Xが、重合可能な官能基である、
モノマー化合物。
(23) 実施態様21に記載のモノマー化合物において、
次式からなる群から選択される、モノマー化合物。
【化22−1】


【化22−2】






 

 


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