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発明の名称 動脈瘤の病気を治療するための内腔内装置および治療剤の組み合わせ物
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−105466(P2007−105466A)
公開日 平成19年4月26日(2007.4.26)
出願番号 特願2006−274228(P2006−274228)
出願日 平成18年10月5日(2006.10.5)
代理人 【識別番号】100066474
【弁理士】
【氏名又は名称】田澤 博昭
発明者 ロバート・ファロティコ / パルラサナ・ベンケテススワラン・ナラヤナン
要約 課題
生体への医療装置の導入に対する生物学的な生体反応を最少にするかほぼ無くすために被覆可能である、植え込み可能な医療装置を提供する。

解決手段
医療装置は多数の生体適合性の材料により被覆可能である。治療用の薬物、薬剤または化合物を生体適合性の材料と共に混合して医療装置の少なくとも一部分に固定することができる。薬物、薬剤および/または化合物は、ぜい弱性プラークを含む、特定の病気を治療するために利用することも可能である。治療剤は病気の部位の領域に送達することも可能である。装置は内皮化を促進するために改良できる。植え込み可能な医療装置を送達するために用いる装置は、配備中に、植え込み可能な医療装置を損傷する可能性を減少させるように改良できる。種々のポリマーの組み合わせ物が植え込み可能な医療装置からの治療用の薬物、薬剤および/または化合物の溶出速度を調整するために利用できる。
特許請求の範囲
【請求項1】
医療装置において、
植え込み可能な内腔内医療装置と、
動脈瘤の病気の治療のために前記植え込み可能な内腔内医療装置に放出可能に固定されている、治療の投薬量における、少なくとも2種類の薬剤の組み合わせ物であって、前記少なくとも2種類の薬剤のうちの第1の薬剤は、マトリクスメタロプロテイナーゼおよびゼラチナーゼの弾性線維溶解活性を調節するために、第1の持続された時間の期間にわたり放出され、前記少なくとも2種類の薬剤のうちの第2の薬剤は、高親和性のサイトゾル蛋白質である、FKBP12、に結合する類似体、誘導体および同属体、を含む、少なくとも2種類の薬剤の組み合わせ物と、
を備えている、医療装置。
【請求項2】
請求項1に記載の薬物送達装置において、
前記第1の薬剤はテトラサイクリン化合物を含む、薬物送達装置。
【請求項3】
請求項1に記載の薬物送達装置において、
前記内腔内医療装置はステントグラフトを含む、薬物送達装置。
【請求項4】
請求項1に記載の薬物送達装置において、
前記内腔内医療装置は動脈瘤修復装置を含む、薬物送達装置。
【請求項5】
請求項3に記載の薬物送達装置において、
前記少なくとも2種類の薬剤は、前記ステントグラフトに固定されている非侵食性の高分子基材の被膜の中に組み込まれている、薬物送達装置。
【請求項6】
請求項4に記載の薬物送達装置において、
前記少なくとも2種類の薬剤は、前記動脈瘤修復装置に固定されている非侵食性の高分子基材の被膜の中に組み込まれている、薬物送達装置。
【請求項7】
動脈瘤修復装置において、
動脈の動脈瘤の部分を通る流体の流路を確立するように構成されている少なくとも1つのバイパス・プロテーゼと、
前記少なくとも1つのバイパス・プロテーゼの少なくとも一部分に固定されている少なくとも2種類の薬剤であって、前記少なくとも2種類の薬剤の第1の薬剤は、マトリクスメタロプロテイナーゼおよびゼラチナーゼの弾性線維溶解活性を調節するために、ある持続された時間の期間にわたり放出され、前記少なくとも2種類の薬剤の第2の薬剤は、高親和性のサイトゾル蛋白質である、FKBP12、に結合する類似物、誘導体および同属体、を含む、少なくとも2種類の薬剤と、
を備えている、動脈瘤修復装置。
【請求項8】
請求項7に記載の動脈瘤修復装置において、
前記第1の薬剤はテトラサイクリン化合物を含む、動脈瘤修復装置。
【請求項9】
請求項7に記載の動脈瘤修復装置において、
前記少なくとも1つのバイパス・プロテーゼはステントを含む、動脈瘤修復装置。
【請求項10】
請求項9に記載の動脈瘤修復装置において、
前記少なくとも1つのバイパス・プロテーゼは、前記ステントに固定されているグラフトをさらに含む、動脈瘤修復装置。
【請求項11】
請求項7に記載の動脈瘤修復装置において、
前記少なくとも1つのバイパス・プロテーゼはグラフトを含む、動脈瘤修復装置。
【請求項12】
請求項7に記載の動脈瘤修復装置において、
前記少なくとも2種類の薬剤は、前記少なくとも1つのバイパス・プロテーゼに固定されている非侵食性の高分子基材の被膜の中に組み込まれている、動脈瘤修復装置。
【請求項13】
動脈瘤修復装置において、
動脈の動脈瘤の部分を通る流体の流路を確立するように構成されている少なくとも1つのバイパス・プロテーゼと、
前記少なくとも1つのバイパス・プロテーゼに操作可能に付随している薬物送達貯蔵部と、
を備えており、
前記薬物送達貯蔵部は少なくとも2種類の薬剤を送達するように構成されており、
前記少なくとも2種類の薬剤のうちの第1の薬剤は、マトリクスメタロプロテイナーゼおよびゼラチナーゼの弾性線維溶解活性を調節するために、第1の持続された時間の期間にわたり放出され、前記少なくとも2種類の薬剤のうちの第2の薬剤は、高親和性のサイトゾル蛋白質である、FKBP12、に結合する類似物、誘導体および同属体、を含む、
動脈瘤修復装置。
発明の詳細な説明
【開示の内容】
【0001】
〔発明の背景〕
〔発明の分野〕
本発明は、脈管の病気の予防および治療のための治療剤の投与に関連しており、特に、動脈瘤等のような、脈管の病気の予防および治療のための治療剤との組み合わせにおける内腔内医療装置に関連している。
【0002】
〔関連技術の論述〕
多くの個人は心臓およびその他の主要な器官において多くある種々の血管の進行性の閉塞により生じる循環系の病気に罹っている。これらの個人における血管のさらに深刻な閉塞は多くの場合に高血圧、虚血性の傷害、発作、または心筋梗塞を引き起こす。冠動脈の血流を制限または閉塞するアテローム硬化症の病巣は虚血性の心臓病の主因である。経皮経内腔式の冠動脈血管形成術は動脈の中を通る血流を増加することを目的としている医療処置である。この経皮経内腔式の冠動脈血管形成術は冠動脈血管狭窄のための主要な治療である。この処置の使用の増加は冠動脈バイパス術に比べた場合のその比較的に高い成功率およびその最小限の侵襲性を起因としていると考えられる。この経皮経内腔式の冠動脈形成術に付随する制限はその処置の直後に生じる可能性のある血管の急な閉鎖およびその処置に続いて徐々に生じる再狭窄である。加えて、この再狭窄は伏在静脈のバイパス移植術(bypass grafting)を受けている患者における慢性の問題である。上記のような急性の閉塞のメカニズムは幾つかの要因を含むと考えられ、結果的に動脈の閉塞を伴う脈管の反跳および/または新しく開口した血管の損傷部分の長さに沿う血小板およびフィブリンの堆積により生じる可能性がある。
【0003】
経皮経内腔式の冠動脈形成術の後における再狭窄は脈管の傷害により始まる比較的に漸進的な過程である。血栓症、炎症、増殖因子およびサイトカインの放出、細胞増殖、細胞移動および細胞外基質の合成を含む多数の過程がそれぞれ上記のような再狭窄の過程の原因になっている。
【0004】
再狭窄の正確なメカニズムは完全には理解されていないが、このような再狭窄の過程における全般的な態様が認識されつつある。正常な動脈壁部内において、平滑筋細胞は1日あたりにほぼ0.1パーセント(%)よりも低い速度で増殖する。また、脈管壁部内における平滑筋細胞は80〜90%の細胞質の容積が収縮性の組織により占められていることにより特徴付けられる収縮性の表現型で存在している。小胞体、ゴルジ体、および遊離のリボソームは少量であり、核周囲領域内に存在している。また、細胞外基質は平滑筋細胞を囲っていて、ヘパリン様グリコシルアミノグリカンに富んでおり、これらは平滑筋細胞をその収縮性の表現型の状態に維持するために作用すると考えられている(キャンベル(Campbell)およびキャンベル(Campbell),1985年)。
【0005】
血管形成術中における冠動脈内バルーン・カテーテルの圧力による拡張時に、その血管壁部内の平滑筋細胞と内皮細胞が損傷して、血栓および炎症性の応答が開始する。血小板、侵襲性のマクロファージおよび/または白血球から放出されるか、平滑筋細胞自体から直接的に放出される血小板由来増殖因子、塩基性線維芽細胞増殖因子、表皮増殖因子、トロンビン等のような細胞由来型の増殖因子は内側平滑筋細胞における増殖性および移動性の応答を誘発する。これらの細胞はその収縮性の表現型からわずかな量の収縮性のフィラメントの束および多量の粗面の小胞体、ゴルジ体および遊離のリボソームにより特徴付けられる合成的な表現型への変化を生じる。このような増殖/移動は通常的に傷害後の1日〜2日以内に始まり、その数日後に最高になる(キャンベル(Campbell)およびキャンベル(Campbell),1987年、クロウズ(Clowes)およびシュワルツ(Schwartz),1985年)。
【0006】
娘細胞が動脈平滑筋の内膜層に移動して、増殖しながら相当量の細胞外基質タンパク質を分泌し続ける。このような増殖、移動および細胞外基質の合成は損傷を受けた内皮層が修復されるまで続き、この修復時点において、通常的に傷害後の7日〜14日以内に、その増殖はその内膜内において減速する。このようにして新たに形成された組織はネオ内膜(新内膜)と呼ばれる。その後の3ヶ月〜6ヶ月にわたり生じる付加的な血管の狭窄化は主として陰性または狭窄性の再造形による。
【0007】
局所的な増殖および移動と同時に、炎症性の細胞が血管の傷害部位に付着する。傷害後の3日〜7日以内に、これらの炎症性の細胞は血管壁のさらに深い層まで移動する。バルーンによる傷害またはステントの植え込みのいずれかを採用している動物体モデルにおいて、炎症性の細胞は少なくとも30日間にわたり血管の傷害部位に付着し続ける可能性がある(タナカ(Tanaka)他,1993年、エデルマン(Edelman)他,1998年)。従って、炎症性の細胞が存在していると、再狭窄における急性の状態と慢性の状態の両方の起因になる可能性がある。
【0008】
多くの物質が再狭窄において推測される抗増殖作用について調査されており、実験動物モデルにおいてある程度の活性を示している。動物モデルにおける内膜の過形成の程度を有効に軽減することを示している一部の物質はヘパリンおよびヘパリン・フラグメント(クロウズ,A.W.(Clowes, A.W.)およびカルノブスキー,M.(Karnovsky, M.),ネイチャー(Nature),265巻,p.25−26,1977年、ガイトン,J.R.(Guyton, J.R.)他,サーキュレーション・リサーチ(Circ. Res.),46巻,p.625−634,1980年、クロウズ,A.W.(Clowes, A.W.)およびクロウズ,M.M.(Clowes, M.M.),ラボラトリー・インベスティゲーション(Lab. Invest.),52巻,p.611−616,1985年、クロウズ,A.W.(Clowes, A.W.)およびクロウズ,M.M.(Clowes, M.M.),サーキュレーション・リサーチ(Circ. Res.),58巻,p.839−845,1986年、マジェスキー(Majesky)他,サーキュレーション・リサーチ(Circ. Res.),61巻,p.296−300,1987年、スノー(Snow)他,アメリカン・ジャーナル・オブ・パソロジー(Am. J. Pathol.),137巻,p.313−330,1990年、オカダ,T.(Okada, T.)他,ニューロサージェリー(Neurosurgery),25巻,p.92−98,1989年)、コルヒチン(クーリエ,J.W.(Currier, J.W.)他,サーキュレーション(Circ.),80巻,p.11−66,1989年)、タクソール(ソロット,S.J.(Sollot, S.J.)他,ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(J. Clin. Invest.),95巻,p.1869−1876,1995年)、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬(パウエル,J.S.(Powell, J.S.)他,サイエンス(Science),245巻,p.186−188,1989年)、アンギオペプチン(ランデルガン,C.F.(Lundergan, C.F.)他,アメリカン・ジャーナル・オブ・カージオロジー(Am. J. Cardiol.),17巻(増刊B),p.132B−136B,1991年)、シクロスポリンA(ジョナッソン,L.(Jonasson, L.)他,プロシーデイング・ナチュラル・アカデミック・ソサイエテイ(Proc. Natl. Acad. Sci.),85巻,p.2303,1988年)、ヤギ−アンチ−ラビットPDGF抗体(フェルンス,G.A.A.(Ferns, G.A.A.)他,サイエンス,253巻,p.1129−1132,1991年)、テルビナフィン(ネメセック,G.M.(Nemecek, G.M.)他,ジャーナル・オブ・ファーマコロジー・エクスペリメンタル.セラピー(J. Pharmacol. Exp. Thera.),248巻,p.1167−1174,1989年)、トラピジル(リウ,M.W.(Liu, M.W.)他,サーキュレーション(Circ.),81巻,p.1089−1093,1990年)、トラニラスト(フクヤマ,J.(Fukuyama, J.)他,ユーロピアン・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(Eur. J. Pharmacol.),318巻,p.327−332,1996年)、インターフェロン−ガンマ(ハンソン,G.K.(Hansson, G.K.)およびホルム,J.(Holm, J.),サーキュレーション(Circ.),84巻,p.1266−1272,1991年)、ラパマイシン(マークス,S.O.(Marx, S.O.)他,サーキュレーション・リサーチ(Circ. Res.),76巻,p.412−417,1995年)、ステロイド(コルバーン,M.D.(Colburn, M.D.)他,ジャーナル・オブ・バスキュラー・サージェリー(J. Vas. Surg.),15巻,p.510−518,1992年)、(さらに、これについてはバーク,B.C.(Berk, B. C.)他,ジャーナル・オブ・アメリカン・コル・カージオロジー(J. Am. Coll. Cardiol.),17巻,p.111B−117B,1991年も参照されたい)、電離放射線(ウエインバーガー,J.(Weinberger, J.)他,インターナショナル・ジャーナル・オブ・ラディオロジカル・オンコロジカル・バイオロジカル・フィジオロジー(Int. J. Rad. Onc. Biol. Phys.),36巻,p.767−775,1996年)、融合トキシン(ファーブ,A.(Farb, A.)他,サーキュレーション・リサーチ(Circ. Res.),80巻,p.542−550,1997年)、アンチセンス・オリジオヌクレオチド(シモンズ,M.(Simons, M.)他,ネイチャー(Nature),359巻,p.67−70,1992年)および遺伝子ベクター(チャン,M.W.(Chang, M.W.)他,ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(J. Clin. Invest.),96巻,p.2260−2268,1995年)を含む。生体外(イン・ビトロ)における平滑筋細胞に対する抗増殖作用はこれらの物質の多くにおいて示されており、これらは、ヘパリン、ヘパリン共役物質、タクソール、トラニラスト、コルヒチン、ACE阻害薬、融合トキシン、アンチセンス・オリジオヌクレオチド、ラパマイシンおよび電離放射線を含む。従って、平滑筋細胞阻害のさまざまなメカニズムを伴う薬物は内膜の過形成を減少する点において治療的有用性を有すると考えられる。
【0009】
しかしながら、動物体モデルとは対照的に、人間の血管形成術の患者における全身系的な薬理学的手段による再狭窄の防止の試みはこれまでに成功には程遠いものであった。アスピリン−ジピリダモール、チクロピジン、抗血液凝固剤療法(急性のヘパリン、慢性のワルファリン、ヒルジン、ヒルログ)、トロンボキサン受容体拮抗物質、あるいはステロイドは再狭窄の予防にいずれも有効ではなかったが、血小板抑制物質は血管形成術後における急性の再閉塞の防止に効果的であった(マック(Mak)およびトポル(Topol),1997年、ラング(Lang)他,1991年、ポプマ(Popma)他,1991年)。また、血小板GPIIb/IIIa受容体である、拮抗物質のレオプロ(Reopro)(登録商標)は依然として研究中であるが、このレオプロ(Reopro)(登録商標)は血管形成術およびステント処理の後における再狭窄の軽減において明らかな結果を示していない。さらに、再狭窄の防止において有効性を示していない他の物質として、カルシウム・チャネル拮抗薬、プロスタサイクリン・ミメティック薬、アンギオテンシン変換酵素阻害薬、セロトニン受容体拮抗薬、および抗増殖剤が含まれる。しかしながら、これらの薬物は全身系的に投与する必要があり、治療において有効な投薬量を達成することが可能でない場合があり、抗増殖(または、抗再狭窄)に対応する濃度がこれら薬物の既知の毒性濃度を超える可能性があるので、平滑筋阻害を生じさせるために十分な量に到達し得ない場合が有り得る(マック(Mak)およびトポル(Topol),1997年、ラング(Lang)他,1991年、ポプマ(Popma)他,1991年)。
【0010】
食用魚油サプリメントまたはコレステロール低下剤を利用して再狭窄を防止する有効性を調べている別の臨床的な試行が競合的なまたは否定的な結果を示すことが確かめられており、薬理学的な物質はいずれも依然として血管形成術後の再狭窄を防止することにおいて臨床的に利用可能な段階ではない(マック(Mak)およびトポル(Topol),1997年、フランクリン(Franklin)およびファクソン(Faxon),1993年、セリュイズ,P.W.(Serruys, P.W.)他,1993年)。最近の観察結果の示唆するところによれば、抗脂質剤/酸化防止剤のプロブコールが再狭窄の防止において有効であると思われるが、この作用は確認の必要がある(タージフ(Tardif)他,1997年、ヨコイ(Yokoi)他,1997年)。このプロブコールは米国では現在において使用が認可されておらず、緊急の血管形成術において30日間の予備治療期間においてその使用を避ける必要があると考えられている。さらに、電離放射線の適用はステントを伴う患者における血管形成術後の再狭窄の軽減または防止において相当な有望性を示している(テイルスタイン(Teirstein)他,1997年)。しかしながら、現在においては、再狭窄の最も有効な治療は血管形成術、アテレクトミーまたは冠動脈バイパス移植術を繰り返すことであり、この理由は、血管形成術後の再狭窄の防止のために使用するための食品医薬品局の認可を有する治療物質が現在において全く存在していないからである。
【0011】
全身系的な薬理学的療法とは異なり、ステントは再狭窄を相当に軽減することにおいて有用であることが立証されている。一般的に、ステントはバルーン拡張型のスロット付きの金属チューブ(通常的に、ステンレス・スチールであるがこれに限定されない)であり、これらは血管形成術が施された冠動脈の内腔内において拡張されると、その動脈壁部に対する剛性の支持骨格構造の形成により構造的な支持を行なう。この支持構造は血管の内腔を開存状態に維持することに役に立つ。例えば、2回の無作為的に行なわれた臨床試行において、ステントは最小の内腔の直径を増大すると共に6ヶ月目における再狭窄の発生率をゼロにしたわけではないが減少したことにより、経皮経内腔式の冠動脈形成術後における血管造影による有効性を高めている(セリュイズ(Serruys)他,1994年、フィッシュマン(Fishman)他,1994年)。
【0012】
加えて、ステントのヘパリン被膜はステント植え込み後における亜急性の血栓症を減少するという付加的な利点を有すると思われる(セリュイズ(Serruys)他,1996年)。従って、ステントによる狭窄した冠動脈の持続された機械的な拡張は再狭窄の防止の方法を提供することが示されており、ヘパリンによるステントの被覆は薬物を損傷した組織部位に局所的に送達することの実行可能性および臨床的な有用性の両方を立証している。
【0013】
上述のように、ヘパリンを被覆したステントを用いることは局所的な薬剤送達の実行可能性および臨床上の有用性を立証しているが、このような特定の薬物または薬物の組み合わせ物を局所送達装置に固定する様式はこの種の治療の効能において役割を果たす必要がある。例えば、薬物/薬物の組み合わせ物を局所送達装置に固定するために用いる方法および材料はその薬物/薬物の組み合わせ物の作用に対して干渉してはならない。さらに、これらの利用する方法および材料は生体適合性である必要があり、送達中および所与時間の期間にわたり薬物/薬物の組み合わせ物をその局所送達装置に保持する必要がある。例えば、局所送達装置の送達中におけるその薬物/薬物の組み合わせ物の脱落は潜在的にその装置の能力不全を生じる可能性がある。
【0014】
従って、例えば、アテローム硬化症のように生物学的に誘発されるか、または、たとえば、経皮経内腔式の冠動脈形成術を介して機械的に誘発される、内膜の肥厚化を生じる脈管の損傷の防止および治療のための薬物/薬物の組み合わせ物および関連の局所送達装置に対する要望が存在している。加えて、送達および位置決め中に薬物/薬物の組み合わせ物を局所送達装置において保持すること、および所与時間の期間にわたり治療的投薬量で薬物/薬物の組み合わせ物を放出することを確実に行なうことに対する要望が存在している。
【0015】
内膜の肥厚化を引き起こす傷害の防止および治療のための多様なステント被膜および配合物が提案されている。これらの被膜はそれ自体でステントが損傷した内腔壁に与える刺激を減少することができ、それゆえ、血栓症または再狭窄への傾向を低下することができる。あるいは、前記の被膜は平滑筋組織の増殖または再狭窄を減少する医薬品/治療薬または薬物を内腔に送達することも可能である。この薬剤送達のメカニズムはバルクポリマーまたはそのポリマーの構造中に形成されている細孔による薬剤の拡散、あるいは、生体分解性の被膜の浸食により行われる。
【0016】
ステント用の被膜として生体吸収性で生体安定性の配合物が報告されている。これらの配合物は一般に、医薬品/治療薬または薬物、例えば、ラパマイシン、タクソール等を包み込むか、このような物質をその表面、例えば、ヘパリン被覆型のステントに結合する種々のポリマー被膜であった。これらの被膜は浸漬法、吹き付け法またはスピン・コート法を含むがこれらに限定されない多くの方法でステントに塗布される。
【0017】
ステント用の被膜として報告されている生体安定性の材料の一例はポリフルオロ・ホモポリマーである。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ホモポリマーは長年にわたりインプラント材料として用いられている。これらのホモポリマーは適当な温度においてはいずれの溶剤にも溶解せず、それゆえ、上記装置の重要な特徴部分(例えば、ステントにおけるスロット部分)を維持しながら小形の各種医療装置に塗布することが困難である。
【0018】
ポリフッ化ビニリデンのホモポリマーにより作成されていて、放出するための医薬品/治療薬または薬物を含有している被膜を伴うステントがこれまでに提案されている。しかしながら、大抵の結晶質ポリフルオロ・ホモポリマーと同様に、これらの被膜は、これらをそのポリマーの融点に相当する比較的に高い温度にしない場合には、種々の表面上に高品質なフィルムまたは皮膜として塗布することが困難である。
【0019】
血栓症、再狭窄またはその他の有害な反応を軽減し、このような作用を達成するために種々の医薬品または治療薬または薬物の使用を含むことができるが必ずしもこれを必要とせず、種々の被覆型装置が比較的に低い最高温度にかけられる時でも、これらの装置において使用することに有効である物理的および機械的な諸特性を有することのできる植え込み可能な種々の医療装置のための被膜を開発することが有利になると考えられる。また、病気を治療し、医療装置の植え込みに対する生体反応を最少にするか実質的に無くす種々の薬物、薬剤および/または化合物との組み合わせにおける植え込み可能な医療装置を開発することも有利と考えられる。特定の状況において、傷の治癒および医療装置における内皮化を助長する種々の薬物、薬剤および/または化合物との組み合わせにおける植え込み可能な医療装置を開発することも有利になると考えられる。
【0020】
また、上記の被膜または医療装置自体に悪影響を及ぼすことなく種々の被覆型の植え込み可能な医療装置の送達を行なう送達装置を開発することも有利になると考えられる。加えて、このような送達装置は前記医療装置を標的領域内に容易に且つ正確に位置決めするための手段を医者に必然的に提供する。
【0021】
また、植え込み可能な医療装置からの種々の薬物、薬剤および/または化合物の溶出速度の正確な制御を可能にする植え込み可能な医療装置のための被膜を開発することも有利になると考えられる。
【0022】
また、細胞増殖に影響を及ぼす異なる分子レベルのメカニズムを通して作用する1種類以上の薬剤の放出を行なう送達装置を開発することも有利になると考えられる。
【0023】
また、アテローム硬化症の治療のための1種類以上の薬剤の所与の領域に投与を行なう送達装置を開発することも有利になると考えられる。
【0024】
薬物の効果および送達性を増す薬物の液体調合物を開発することも有利になると考えられる。特に、水に不溶性で親油性の薬物の液体の溶液の投薬形態は、相当量の界面活性剤、補助溶媒等に頼ることなく、作ることが困難である。
【0025】
相当な問題の別の種類の脈管の病気はアテローム硬化症である。このアテローム硬化症は動脈の肥厚化および硬化であり、一般に、例えば、コレステロール等の脂肪性の物質、炎症性の細胞、細胞廃棄産物、動脈の内膜または内壁内のカルシウムおよびその他の物質の、進行性の蓄積により生じると考えられている。これらの刺激性の物質の蓄積はさらに、病気に冒された動脈の壁部の中の細胞を刺激して、障害部位の成長につながる細胞のさらなる蓄積を結果として生じる付加的な物質を生成させる。この蓄積または障害部位は一般にプラークと呼ばれている。
【0026】
最近の研究は、アテローム硬化症の理解に変化を導いて、まだ十分に治療されていない別の重要な脈管の問題を明らかにしている。科学者は、少なくとも一部の冠動脈の病気が炎症性の過程であると理論付けており、この場合に、炎症はプラークを不安定にして破裂させる。このような炎症を起こしたプラークはアテロームぜい弱性プラークとして知られている。
【0027】
ぜい弱性プラークは平滑筋細胞の薄い層により被覆されている高脂肪のコアからなっている。これらのぜい弱性プラークは破裂しやすくて浸食を受けやすく、上記の薄い細胞層が破裂するか、潰瘍になると、かなりの梗塞を引き起こす可能性がある。炎症性の細胞が浸食を受けるか、破裂すると、その脂肪のコアは血流に曝されて、その動脈内に血栓を形成する。これらの血栓は速やかに成長して、その動脈を遮断するか、分離して下流側に移動して、塞栓性の現象、不安定なアンギナ、心筋梗塞、および/または急死を引き起こす。実際に、一部の最近の研究では、プラークの破裂が、全ての致命的な心筋梗塞の内の60〜70%を引き起こす可能性がある、と示唆している。なお、ぜい弱性プラークのさらに詳細な説明については、キャンベル(Campbell)に発行されている米国特許第5,924,997号およびキャンベル(Campbell)他に発行されている米国特許第6,245,026号を参照されたい。
【0028】
アテローム硬化症を検出するために用いられている初期の方法は、心臓の患者におけるぜい弱性プラークを可視化して確認するための診断器具を欠いていた。しかしながら、新しい診断技法は、冠動脈内のぜい弱性プラークの位置を確認するために開発中である。これらの新しい装置は、精密な磁気共鳴画像法(MRI)、炎症の過程が熱を発生するという仮定において動脈壁部の温度を測定する熱センサー、弾性センサー、脈管内超音波、光干渉トモグラフィ(OCT)、造影剤、および近赤外および赤外光、を含む。しかしながら、現在において明らかでないことは、ぜい弱性のプラークの障害部位が見つかった後にこれらを治療する方法である。
【0029】
従来のステント処理に続いてバルーン血管形成を用いることによりぜい弱性プラークを治療することは十分とは言えない結果を生じることになるであろう。すなわち、バルーン血管形成は、それ自体により、ぜい弱性プラークを破裂させて、下層の新しい組織細胞、コラーゲンまたは損傷した内皮、を血流に対して露出させる可能性がある。この状況は、血管を部分的にまたは完全に閉塞させる血栓または血液凝固物の形成に、最終的につながる。加えて、裸の被覆されていないステントはぜい弱性プラークの上に保護カバーを与える新内膜過形成を誘発するが、再狭窄が、元のぜい弱性プラークよりも、患者をさらに危険にする可能性がある重要な問題として残る。
【0030】
従って、ぜい弱性プラークおよび関連の脈管の病気を有効に治療する薬物溶出式ステントまたはその他の医療装置を開発することが有利になると考えられる。
【0031】
上述のように、多数の薬物、薬剤および/または化合物を、多数の医療装置を介して、局所的に送達してもよい。例えば、ステントおよび吻合装置は、上記において詳細に説明されているような、種々の病気の状態および体による反応を治療するために、薬物、薬剤および/または化合物、を含む被膜を組み込むことができる。さらに、治療の投薬量の薬物、薬剤および/または化合物により被覆されるかその他の様式で組み込んでいてよい別の装置は、ステントグラフト(stentgraft)および、腹大動脈瘤ならびに、例えば、胸大動脈瘤等の別の動脈瘤を治療するための装置等のような、ステントグラフトを利用している装置、を含む。
【0032】
ステントグラフトは動脈瘤を治療するために利用できる。動脈瘤は動脈壁部の一つ以上の層の異常な膨張であり、通常は、全身系的なコラーゲンの合成または構造の欠陥により引き起こされる。腹大動脈瘤は大動脈の腹部の部分の中の動脈瘤であり、通常は、2個の腸骨動脈の一方または両方の中または近くに、あるいは腎動脈の近くに、位置している。この動脈瘤は、例えば、腎臓の下方における、病気の大動脈の腎下部の中において起こる場合が多い。一方、胸大動脈瘤は大動脈の胸部の中の動脈瘤である。治療をしないまま放っておくと、この動脈瘤は破裂して、通常は、速やかな致命的な出血を引き起こす可能性がある。
【0033】
したがって、腹大動脈流および炎症の治療のための、薬物および薬物送達装置を開発することが有利になると考えられる。
【0034】
〔発明の概要〕
本発明の、治療の投薬量の1種類以上の薬物、薬剤、および/または化合物との組み合わせにおける医療装置は、上記において簡単に説明されているような、動脈瘤およびその他の関連の脈管の病気の治療のために現在において用いられている方法および装置に付随する困難を解消するための手段を提供している。
【0035】
第1の態様によれば、本発明は薬物送達装置に関連している。この薬物送達装置は、植え込み可能な内腔内医療装置と、動脈瘤の病気の治療のために植え込み可能な内腔内医療装置に放出可能に固定されている、治療の投薬量における、少なくとも2種類の薬剤の組み合わせ物と、を備えており、この少なくとも2種類の薬剤の第1の薬剤は、マトリクスメタロプロテイナーゼ(matrix metalloproteinase)およびゼラチナーゼの、弾性線維溶解活性(elastolytic activity)を調節するために第1の持続された時間の期間にわたり、放出され、上記少なくとも2種類の薬剤の第2の薬剤は、高親和性のサイトゾル蛋白質である、FKBP12、に結合する類似体、誘導体および同属体、を含む。
【0036】
別の態様によれば、本発明は動脈瘤の修復装置に関連している。この動脈瘤修復装置は、動脈の動脈瘤の部分を通る流体の流路を確立するように構成されている少なくとも1個のパイパス・プロテーゼと、この少なくとも1個のバイパス・プロテーゼの少なくとも一部分に固定されている少なくとも2種類の薬剤と、を備えており、この少なくとも2種類の薬剤の第1の薬剤は、マトリクスメタロプロテイナーゼおよびゼラチナーゼの、弾性線維溶解活性を調節するために、ある持続された時間の期間にわたり、放出され、上記少なくとも2種類の薬剤の第2の薬剤は、高親和性のサイトゾル蛋白質である、FKBP12、に結合する類似物、誘導体および同属体、を含む。
【0037】
別の態様によれば、本発明は動脈瘤修復装置に関連している。この動脈瘤修復装置は、動脈の動脈瘤の部分を通る流体の流路を確立するように構成されている少なくとも1個のバイパス・プロテーゼと、この少なくとも1個のバイパス・プロテーゼに操作可能に付随している薬物送達貯蔵部と、を備えており、この薬物送達貯蔵部は少なくとも2種類の薬剤を送達するように構成されており、この少なくとも2種類の薬剤の第1の薬剤は、マトリクスメタロプロテイナーゼおよびゼラチナーゼの、弾性線維溶解活性を調節するために、第1の持続された時間の期間にわたり、放出され、上記の少なくとも2種類の薬剤の第2の薬剤は、高親和性のサイトゾル蛋白質である、FKBP12、に結合する類似物、誘導体および同属体、を含む。
【0038】
本発明の、医療装置、薬物被膜、送達装置、および当該送達装置の上に薬物被膜またはビヒクルを維持するための方法は、病気や、病気またはその他の状況の治療のための医療装置の植え込みによる生体の反応、を治療するために、材料の組み合わせ物を利用している。この薬物、薬剤または化合物の局所的な送達は一般に、それぞれの効果を増すと同時に、全身系的な送達に比べた場合に、それらの薬物、薬剤または化合物の潜在的な毒性を実質的に減少させる。
【0039】
薬物、薬剤または化合物は、種々の病気を治療するために、多数の医療装置に固定できる。これらの薬物、薬剤または化合物はまた、別の状況を治療するために利用されている医療装置の導入に対する生物学的な生体反応を最小限にするか実質的に無くすために固定することも可能である。例えば、ステントは冠動脈や、胆管等のような、別の体内腔を開くために導入できる。これらのステントの導入は平滑筋細胞の増殖作用ならびに炎症を引き起こす。したがって、これらのステントは、上記のような反応に対処するために、薬物、薬剤または化合物により被覆できる。特定の種類の外科手術において日常的に用いられている、吻合装置もまた、平滑筋細胞の増殖作用ならびに炎症を引き起こす可能性がある。また、ステントグラフトおよび、例えば、動脈瘤バイパス・システム等の、ステントグラフトを利用しているシステムは、これらの装置の導入により引き起こされる有害な影響を防ぎ、治癒や取り込みを促進させるために、薬物、薬剤および/または化合物により被覆できる。それゆえ、これらの装置はまた、これらの反応に対処するために、薬物、薬剤および/または化合物により被覆することも可能である。加えて、動脈瘤バイパス・システム等のような装置は、傷治癒および内皮化を促進させる薬物、薬剤および/または化合物により被覆することが可能であり、これにより、内部漏れの危険性やその他の類似の現象を減少させる。
【0040】
上記薬物、薬剤または化合物は、医療装置の種類、医療装置の導入に対する反応および/または治療することが求められている病気に応じて、変わる。また、これらの薬物、薬剤または化合物を医療装置に固定するために利用される被膜やビヒクルの種類も、その医療装置の種類、薬物、薬剤または化合物の種類、およびこれらの放出の速度を含む、さまざまな要素に応じて、変えてもよい。
【0041】
効果的であるために、上記の薬物、薬剤または化合物は、送達や植え込みの間に、医療装置に留まっていることが当然に好ましい。したがって、これらの薬物、薬剤または化合物の間の強い結合を作り出すための種々の塗布技法が利用できる。加えて、薬物、薬剤または化合物が時期尚早に脱離することを防ぐための表面改質剤として、種々の物質を利用できる。
【0042】
微小針または、灌流バルーン等のような、他のカテーテル型送達システムは、アテローム硬化性プラークの部位に、ラパマイシン(rapamycin)を含む、1種類以上の薬物、薬剤および/または化合物を送達するために利用できる。この種の所与の領域にわたる送達は、単独で、または、同種または異種の薬物が固定されている植え込み可能な医療装置との組み合わせにおいて、利用できる。上記の1種類以上の薬物、薬剤および/または化合物は好ましくは、病変に最も近い外膜の空間に送達される。
【0043】
ラパマイシン(rapamycin)等のような、有効な治療剤の、局所的または所与の領域にわたり送達される溶液は、全身系的に送達される薬剤や植え込み可能な医療装置により送達される薬剤よりも、多数の利点を提供する。例えば、動脈壁内に薬剤を直接沈着させることにより、比較的に高い組織濃度を達成できる。沈着の位置により、薬物溶出式ステントの付着によるものとは異なる薬物濃度プロファイルを達成することができる。加えて、局所的にまたは所与の領域にわたり送達される溶液により、ステント等のような永久に植え込まれている装置に対する必要性がなくなり、これにより、炎症性の反応や長期間の組織の損傷等のような、永久に植え込まれる装置に伴う潜在的な副作用が無くなる。しかしながら、この局所的にまたは所与の領域にわたり送達される溶液が、薬物溶出式ステントや他の被覆型の植え込み可能な医療装置との組み合わせにおいて利用可能であることに注目することが重要である。さらに、溶液または液体調合物の別の利点は、その液体調合物中の賦形剤の調節が薬物の分布および保持のプロファイルを容易に変えるという事実において、存在している。加えて、上記液体調合物は、投与形態の貯蔵および保管の寿命を改善するために、予め包装された多数チャンバー式の注入装置により、注入の直前に混合してもよい。
【0044】
ステントグラフトは動脈瘤を治療するために利用してもよい。動脈瘤は動脈壁部の一つ以上の層の異常な膨張であり、通常は、全身系的なコラーゲンの合成または構造の欠陥により引き起こされる。腹大動脈瘤は大動脈の腹部の部分の中の動脈瘤であり、通常は、2個の腸骨動脈の一方または両方の中または近くに、あるいは腎動脈の近くに、位置している。この動脈瘤は、病気の大動脈の腎下部の中、例えば、腎臓の下方において起こる場合が多い。一方、胸大動脈瘤は大動脈の胸部の中の動脈瘤である。治療をしないまま放っておくと、この動脈瘤は破裂して、通常は、速やかな致命的な出血を引き起こす可能性がある。
【0045】
動脈瘤はこれらの位置および群をなす動脈瘤の数により分類または類別できる。一般的に、腹大動脈瘤は5種類の型に分類できる。I型の動脈瘤は各腎動脈と各腸骨動脈との間に存在する単一の拡張部分である。一般的に、I型の動脈瘤においては、その大動脈は各腎動脈とその動脈瘤との間、およびその動脈瘤と各腸骨動脈との間において健康である。
【0046】
IIA型の動脈瘤は各腎動脈と各腸骨動脈との間に存在する単一の拡張部分である。このIIA型の動脈瘤においては、その大動脈は各腎動脈とその動脈瘤との間において健康であるが、その動脈瘤と各腸骨動脈との間において健康ではない。換言すれば、この拡張部分は大動脈の分岐部分にまで延在している。また、IIB型の動脈瘤は三つの拡張部分を含む。これらの内の1個の拡張部分は各腎動脈と各腸骨動脈との間に存在している。上記IIA型の動脈瘤と同様に、大動脈はその動脈瘤と各腎動脈との間において健康であるが、その動脈瘤と各腸骨動脈との間において健康ではない。また、他の二つの拡張部分は大動脈の分岐部分と、各外腸骨および各内腸骨の間の各分岐部分との間における、それぞれの腸骨動脈の中に存在している。この場合に、これらの腸骨動脈はその腸骨分岐部分と動脈瘤との間において健康である。IIC型の動脈瘤もまた三つの拡張部分を含む。しかしながら、このIIC型の動脈瘤においては、各腸骨動脈内の拡張部分はその腸骨分岐部分にまで延在している。
【0047】
さらに、III型の動脈瘤は各腎動脈と各腸骨動脈との間において存在する単一の拡張部分である。このIII型の動脈瘤においては、その大動脈は各腎動脈とその動脈瘤との間において健康ではない。換言すれば、この拡張部分は各腎動脈にまで延在している。
【0048】
ステントグラフトまたは体内プロテーゼ(endoprostheses)は現在において米国食品医薬品局(FDA)により認可されており、市販されている。この送達方法は一般的に総大腿動脈または上腕動脈等のような遠隔の動脈の外科的切開部分を介して得られる脈管接近部分を通して行なわれる高度な脈管造影技法を含む。この場合に、適当な寸法の導入装置をガイドワイヤ上に配置する。その後、カテーテルおよびガイドワイヤを動脈瘤の中に通して、ステントグラフトを収容している適当な寸法の導入装置と共に、そのステントグラフトをガイドワイヤに沿って適当な位置まで前進させる。このステントグラフト装置の一般的な配備は、当該ステントグラフトの位置が内側安定化装置により維持されている状態で、外側シースを後退させる必要がある。大抵のステントグラフトは自己拡張式であるが、さらに別の脈管形成方法、例えば、バルーン脈管形成術もステントグラフトの位置を固定するために必要とされる場合がある。さらに、このようなステントグラフトの配置の後に、標準的な脈管造影図を得ることが可能になる。
【0049】
ステントグラフトを含む多数の動脈瘤修復システムは、適当な薬物、薬剤および/または化合物、ならびにこれらの組み合わせ物、により被覆できる。動脈瘤の種類または生体内におけるその位置にかかわらず、上記修復システムを構成している部品は、ステントグラフトに関連して上述されているように、適当な薬物、薬剤および/または化合物により被覆できる。例えば、ラパマイシン(rapamycin)は抗炎症剤として利用できる。加えて、ラパマイシン(rapamycin)は脈管の再造形の現象を調整することにおいて、利用することも可能である。ラパマイシン(rapamycin)はまた、コラーゲンの形成または代謝に関連する重要な蛋白質の翻訳にも影響する可能性がある。加えて、ラパマイシン(rapamycin)は、作用の異なるメカニズムを伴う別の治療剤と組み合わせることも可能であり、これにより、相乗効果を生じる。あるいは、ラパマイシンの代わりに、高親和性のサイトゾル蛋白質である、FKBP12、に結合する類似体、誘導体および同属体も、別の治療剤との組み合わせにおいて、利用可能である。
【0050】
本発明の上記およびその他の特徴および利点が以下の添付図面において例示されている本発明の好ましい実施形態のさらに詳しい説明により明らかになるであろう。
【0051】
〔好ましい実施形態の詳細な説明〕
本発明の薬物/薬物の組み合わせおよび送達装置は、脈管の病気、特に傷害により生じた脈管の病気を効果的に予防および治療するために利用できる。脈管の病気の治療において利用されている種々の医療用の治療装置は、最終的にさらに別の合併症を誘発する可能性がある。例えば、バルーン脈管形成術は動脈の中を通る血流を増加するために利用されている処置であり、冠状動脈の狭窄における主要な治療方法である。しかしながら、前述のように、この処置は脈管壁部に対してある程度の損傷を生じるために、ある程度の時間の経過後に、その問題を潜在的に悪化させる可能性がある。また、別の処置および病気も同様の傷害の原因になる可能性があるが、本発明の例示的な実施形態は、経皮経管冠状動脈脈管形成術およびその他の、類似の動脈、静脈およびこれら以外の流体運搬用の導管を含む、別の類似の動脈/静脈用の処置に続いて生じる再狭窄および関連の合併症の治療に関して説明されている。加えて、被覆型の医療装置の効果的な送達のための種々の方法および装置が説明されている。
【0052】
本発明の例示的な実施形態は経皮経管冠状動脈脈管形成術に続いて生じる再狭窄および関連の合併症の治療に関して説明されているが、前記薬物/薬物の組み合わせの局所的な送達が多数の医療装置を利用して多用な状況を治療すること、およびその装置の機能および/または寿命を高めること、のために利用できることに注目することが重要である。例えば、白内障の手術後の視力を回復するために配置される眼内レンズは二次的な白内障の形成により損なわれる場合が多い。後者はレンズ表面の上における細胞の過剰成長の結果である場合が多く、その装置に対する1種類以上の薬物の結合により潜在的に最小にすることができる。さらに、装置の内部、上部およびその周囲における組織の内部増殖または蛋白質様の物質の堆積により故障する場合の多い別の医療装置、例えば、水頭症用のシャント、透析グラフト(dialysis graft)、結腸瘻袋取付装置、耳ドレナージ管、ペース・メーカーおよび植え込み可能な除細動器用のためのリード線等もまた前記のような装置−薬物の組み合わせの方法により恩恵を受けることができる。また、組織または器官の構造および機能を改善するために役立つ装置も、適当な1種類以上の薬剤と組み合わされる場合に種々の有益性を示すことができる。例えば、植え込みされた装置の安定性を高めるための改善された整形外科装置の骨一体化機能が、その装置を骨−形態形成性の蛋白質等のような物質と組み合わせることにより潜在的に達成可能になる。同様に、別の外科装置、縫合糸、ステープル、吻合装置、椎骨ディスク、骨ピン、縫合糸アンカー、止血用バリア、クランプ、ねじ、プレート、クリップ、脈管インプラント、組織接着剤および密封材、組織支持骨格材料、種々の包帯、骨置換材料、内腔内装置、および脈管支持体もまた、前記のような薬物−装置の組み合わせの方法により患者の有益性を高めることができる。特に、脈管周囲ラップは単独または他の医療装置との組み合わせにおいて有利であると考えられる。すなわち、このような脈管周囲ラップは治療部位に対して付加的な薬物を供給することができる。本質的に、任意の種類の医療装置がその装置または薬剤の1回の使用期間の全体にわたり治療効果を高める薬物または薬物の組み合わせにより、ある様式で被覆できる。
【0053】
種々の医療装置に加えて、これらの装置における被膜は治療薬および薬剤を送達するために用いることができ、これらの治療薬および薬剤は、ビンカ・アルカロイド類(vinca alkaloids)(すなわち、ビンブラスチン(vinblastine)、ビンクリスチン(vincristine)、およびビノレルビン(vinorelbine))等のような天然産物、パクリタキセル(paclitaxel)、エピジポドフィルロトキシン類(epidipodophyllotoxins)(すなわち、エトポシド(etoposide)、テニポシド(teniposide))、抗生物質(すなわち、ダクチノマイシン(dactinomycin)(アクチノマイシンD(actinomycin D))、ダウノルビシン(daunorubicin)、ドキソルビシン(doxorubicin)およびイダルビシン(idarubicin))、アントラサイクリン(anthracyclines)、ミトザントロン(mitoxantrone)、ブレオマイシン(bleomycins)、プリカマイシン(plicamycin)(ミトラマイシン(mithramycin))およびマイトマイシン(mitomycin)、酵素(L−アスパラギン(L-asparagine)を全身系的に代謝し、独自にアスパラギン(asparagine)を合成する機能をもたない細胞を奪取するL−アスパラギナーゼ等)を含む抗増殖/抗有糸分裂剤、G(GP)IIb/IIIa抑制因子およびビトロネクチン(vitronectin)受容体拮抗物質等のような抗血小板剤、ナイトロジェン・マスタード(nitrogen mustards)(メクロレタミン(mechlorethamine)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)およびその類似体、メルファラン(melphalan)、クロラムブシル(chlorambucil))、エチレンイミン(ethyleneimines)およびメチルメラミン(methylmelamines)(ヘキサメチルメラミン(hexamethylmelamine)およびチオテパ(thiotepa))、スルホン酸アルキル類−ブスルファン複合物(alkyl sulfonates-busulfan)、ニトロソ尿素類(nitrosoureas)(カルムスチン(carmustine)(BCNU)およびその類似体、ストレプトゾシン(streptozocin))、トラゼン−ダカルバジニン複合物(trazenes-dacarbazinine)(DTIC)等のような抗増殖/抗有糸分裂アルキル化剤、葉酸類似体(メトトレキサート(methotrexate))、ピリミジン類似体(フルオロウラシル(fluorouracil)、フロクスウリジン(floxuridine)およびシタラビン(cytarabine))、プリン類似体および関連の抑制因子(メルカプトプリン(mercaptopurine)、チオグアニン(thioguanine)、ペントスタチン(pentostatin)および2−クロロデオキシアデノシン(2-chlorodeoxyadenosine){クラドリビン(cladribine)})、白金配位錯体(シスプラチン(cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin))、プロカルバジン(procarbazine)、ヒドロキシ尿素(hydroxyurea)、ミトーテン(mitotane)、アミノグルテチミド(aminoglutethimide)等のような抗増殖/抗有糸分裂代謝拮抗物質、ホルモン類(すなわち、エストロゲン(estrogen))、抗凝固薬(ヘパリン(heparin)、合成ヘパリン塩類(synthetic heparin salts)およびその他のトロンビンの抑制因子)、フィブリン溶解剤(組織プラスミノゲン活性化因子(tissue plasminogen activator)、ストレプトキナーゼ(streptokinase)、ウロキナーゼ(urokinaze)等)、アスピリン(aspirin)、ジピリダモール(dipyridamole)、チクロピジン(ticlopidine)、クロピドグレル(clopidogrel)、アブシキシマブ(abciximab)、抗遊走薬、抗分泌薬(ブレベルジン(breveldin))、さらに、副腎皮質ステロイド(コルチソル(cortisol)、コルチゾン(cortisone)、フルドロコルチゾン(fludrocortisone)、プレドニゾン(prednisone)、プレドニゾロン(prednisolone)、6α−メチルプレドニゾロン(6α-methylprednisolone)、トリアムシノロン(triamcinolone)、ベタメタゾン(betamethasone)、およびデキサメタゾン(dexamethasone))、非ステロイド性薬剤(サリチル酸誘導体(salicylic acid derivatives)、すなわち、アスピリン(aspirin)、パラアミノフェノール誘導体(para-aminophenol derivatives)、すなわち、アセトアミノフェン(acetaminophen))等のような抗炎症薬、インドールおよびインデン酢酸(インドメタシン(indomethacin)、スリンダク(sulindac)、およびエトダラック(etodalac))、ヘテロアリール酢酸(トルメチン(tolmetin)、ジクロフェナク(dicrofenac)およびケトロラク(ketorolac))、アリールプロピオン酸(イブプロフェン(ibuprofen)およびその誘導体)、アントラニル酸(メフェナム酸(mefenamic acid)およびメクロフェナム酸(meclofenamic acid))、エノール酸(ピロキシカム(piroxicam)、テノキシカム(tenoxicam)、フェニルブタゾン(phenylbutazone)、およびオキシフェンタトラゾン(oxyphenthatrazone))、ナブメトン(nabumetone)、金化合物(オーラノフィン(auranofin)、金チオグルコース(aurothioglucose)、金チオリンゴ酸ナトリウム(gold sodium thiomalate))、免疫抑制剤、すなわち、(シクロスポリン(cyclosporine)、タクロリムス(tacrolimus)(FK−506)、シロリムス(sirolimus)(ラパマイシン(rapamycin))、アザチオプリン(azathioprine)、ミコフェノール酸モフェチル(mycophenolate mofetil))、脈管形成剤、すなわち、脈管内皮細胞増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、アンギオテンシン受容体遮断薬、酸化窒素供与体、アンチセンス・オリゴヌクレオチド類およびこれらの組み合わせ、細胞周期抑制因子、mTOR抑制因子、および増殖因子受容体信号伝達キナーゼ抑制因子、レテノイド(retenoid)、サイクリン/CDK抑制因子、HMG補酵素レダクターゼ抑制因子(スタチン類(statins))、およびプロテアーゼ抑制因子等、を含む。
【0054】
前述のように、バルーン脈管形成術と関連している冠状動脈ステントの植え込みは急性の脈管閉塞の治療において極めて有効であり、再狭窄の危険性を減少させることができる。脈管内超音波調査に関する研究(ミンツ(Mintz)他,1996年)は、冠状動脈ステント処理が脈管の狭窄を有効に防止すること、およびステント植え込み後における術後内腔損失の大部分がプラークの増殖によるものであり、恐らくはネオ内膜過形成に関連していること、を示唆している。この冠状動脈ステント処理後の術後内腔損失率は従来のバルーン脈管形成術の後に観察される量のほぼ2倍高い。従って、ステントが再狭窄の過程の少なくとも一部分を妨げる限りにおいて、平滑筋細胞の増殖を阻止し、炎症を軽減して凝固を減少させるか、あるいは、多数のメカニズムにより平滑筋細胞の増殖を阻止するか、ステントと組み合わされて炎症を軽減して凝固を減少させる、薬物、薬剤または化合物の組み合わせは、脈管形成術後の再狭窄に対する最も効力のある治療方法を提供する可能性がある。また、同種または異種の薬物/薬物の組み合わせの局所的な送達との組み合わせにおける薬物、薬剤または化合物の全身系的な使用も有益な治療の選択肢を与える可能性がある。
【0055】
ステントからの薬物/薬物の組み合わせの局所的な送達は以下の利点、すなわち、ステントの支持骨格作用による脈管の反跳および再造形の防止、新内膜の過形成または再狭窄の多くの発生要素の阻止ならびに炎症および血栓症の軽減という利点を、有している。さらに、前記のようなステント処理した冠状動脈への薬物、薬剤または化合物の局所的な投与はさらに付加的な治療上の有益性を有することもできる。例えば、薬物、薬剤または化合物の、組織における比較的に高い濃度は、全身系的な投与ではなく、局所的な送達を利用することにより達成できる。加えて、減少された全身系的な毒性は、全身系的な投与ではなく、組織における比較的に高い濃度を維持しながら、局所的な送達を利用することにより達成できる。また、全身系的な投与の代わりに、ステントによる局所的な送達を利用することにおいて、1回の処置で、比較的に良好な患者の応諾感に対して十分に対応できる。さらに、前記のような薬物、薬剤、および/または化合物の組み合わせによる治療の付加的な有益性は治療用の薬物、薬剤または化合物のそれぞれの投薬量を減少させることができることであり、これにより、それぞれの毒性を制限すると共に、再狭窄、炎症および血栓症の軽減を達成できる。それゆえ、前記のような局所的なステントに基づく治療方法は抗再狭窄性、抗炎症性、または抗血栓性の薬物、薬剤または化合物の治療率(効力/毒性)を改善する手段である。
【0056】
経皮経管冠状動脈形成術に続いて利用できる多数の異なるステントが存在する。このような多数のステントを本発明に従って利用することが可能であるが、簡明化のために、限定された数のステントが本発明の例示的な実施形態において説明されている。なお、当業者であれば、任意数のステントが本発明に関連して利用可能であることが認識できるであろう。加えて、前述のように、別の医療装置も利用可能である。
【0057】
ステントは一般的に、障害を軽減するために一つの管路の内腔の中に留置される管状の構造体として用いられる。一般的に、ステントは非拡張状態の形態で内腔の中に挿入された後に、自律的に、または、原位置における第2の装置の補助により、拡張する。代表的な拡張の方法は、拡張状態の内腔を得るために、脈管の壁部の構成要素に付随している障害物を剪断および崩壊するように、狭窄した脈管または体内の通路の中において膨張されるカテーテル取付型の脈管形成バルーンの使用により行なわれている。
【0058】
図1は、本発明の例示的な実施形態に従って利用可能である例示的なステント100を示している。この拡張可能な円筒形のステント100は、血管、管路または内腔を開口状態に保つためにその血管、管路または内腔の中に配置するための、特に、血管形成術後に動脈の一部分を再狭窄から保護するための、有窓構造を含む。このステント100は円周方向に拡張されて、拡張した形態に維持されることが可能であり、円周方向または半径方向に剛性になる。さらに、このステント100は軸方向に柔軟であり、その帯域部分において曲がる場合に、このステント100は外部に突出する構成部分を含まないようになっている。
【0059】
前記ステント100は一般に第1の端部および第2の端部、およびこれらの端部の間の中間部分を有している。さらに、このステント100は長手軸を有していて、複数の長手方向に配置された帯域部分102を含んでおり、それぞれの帯域部分102は前記長手軸に対して平行な線分に沿って概ね連続的な波形を定めている。さらに、円周方向に配列されている複数の連結部材104が各帯域部分102を実質的に管状の構造に維持している。本質的に、長手方向に配置されているそれぞれの帯域部分102は、複数の周期的な位置において、短い円周方向に沿って配列されている連結部材104を介して、隣接している帯域部分102に接続している。これらの帯域部分102のそれぞれに付随している波形はその中間部分において概ね同一の基本的な空間的周波数を有しており、これらの帯域部分102は、互いに概ね同一の位相になるように、これらに付随する波形が概ね整合するように配置されている。図示のように、長手方向に配列されているそれぞれの帯域部分102は隣接している帯域部分102に対する連結部分が存在するまでの間にほぼ2周期で波打ちしている。
【0060】
前記ステント100は多数の方法を利用して作成することができる。例えば、このステント100はレーザー、放電フライス加工、化学的エッチングまたはその他の手段により、機械加工可能である中空のまたは成型処理されているステンレス・スチールの管により作成できる。このようなステント100は体内に挿入されて、非拡張状態の形態で所望の部位に配置される。一例の例示的な実施形態において、拡張はバルーン・カテーテルにより血管内において行なうことができ、この場合に、そのステント100の最終的な直径はその使用するバルーン・カテーテルの直径の関数である。
【0061】
本発明のステント100が、例えば、ニッケルおよびチタンの適切な合金またはステンレス・スチールを含む、形状記憶材料において実施可能であることが認識される必要がある。さらに、このようなステンレス・スチールにより形成される構造は、例えば、このステンレス・スチール材料を編み組み状の形態にねじることによる等の、所定の様式でそのステンレス・スチールを構成することにより、自己拡張式にすることができる。このような実施形態においては、ステント100を形成した後に、このステントを圧縮して挿入手段により血管またはその他の組織の中への挿入を可能するために十分に小さい空間部分を占めるようにすることが可能であり、この場合に、その挿入手段は適当なカテーテルまたは柔軟な棒材を含む。さらに、カテーテルから出た後に、前記ステント100は所望の形態に拡張するように構成することができ、この場合に、その拡張は自動的であるか、圧力、温度または電気等の刺激の変化により開始される。
【0062】
図2は、図1に示すステント100を利用している本発明の例示的な実施形態を示している。図示のように、このステント100は、1つ以上の貯蔵部分106を有するように変更可能である。これらの貯蔵部分106のそれぞれは要望に応じて開閉できる。さらに、これらの貯蔵部分106は送達される薬物/薬物の組み合わせを保持するように特別に設計できる。また、このようなステント100の設計とは無関係に、病巣の領域中に有効な投薬量を供給するために十分な特性および十分な濃度で供給される前記の薬物/薬物の組み合わせの投薬量を有することが好ましい。この点に関して、前記の帯域部分102の中の貯蔵部分の大きさは好ましくは前記薬物/薬物の組み合わせの投薬量を所望の場所において所望の量で適切に供給するように寸法付けられている。
【0063】
代替的で例示的な実施形態において、前記ステント100の内表面部および外表面部の全体を治療の投薬量における薬物/薬物の組み合わせにより被覆することも可能である。さらに、再狭窄を治療するための薬物ならびに例示的な被覆技法についての詳細な説明が以下において記載されている。しかしながら、このような被覆技法が前記の薬物/薬物の組み合わせに応じて変更可能であることに注目することが重要である。さらに、この被覆技法は前記ステントまたはその他の内腔内医療装置を構成する材料に応じて変更することも可能である。
【0064】
ラパマイシン(rapamycin)は米国特許第3,929,992号に開示されているようにストレプトミセス属ハイグロスコピカスにより生成される大環状トリエン型の抗生物質である。このラパマイシン(rapamycin)は、とりわけ、生体内における脈管平滑筋細胞の増殖を抑制することが知られている。従って、ラパマイシン(rapamycin)は、特に、生物学的にまたは機械的に媒介される脈管の損傷に続いて、あるいは、哺乳類動物を脈管損傷に罹りやすくすると考えられる状況において、哺乳類動物における内膜平滑筋細胞の過形成、再狭窄、および脈管閉塞の治療に利用することができる。さらに、ラパマイシン(rapamycin)は平滑筋細胞の増殖を抑制するように機能し、脈管壁部の再内皮化を妨げない。
【0065】
前記ラパマイシン(rapamycin)は、脈管形成術により誘発される傷害において放出されるマイトジェン信号に応答して平滑筋の増殖に拮抗することにより、脈管の過形成を軽減する。細胞周期の後期のG1期における増殖因子およびサイトカインにより媒介される平滑筋増殖の抑制はラパマイシン(rapamycin)の作用の主要なメカニズムであると考えられている。しかしながら、ラパマイシン(rapamycin)はまた、全身系的に投与される場合に、T細胞の増殖および分化を阻止することも知られている。このことがそのラパマイシン(rapamycin)の免疫抑制活性およびそのグラフト(graft)拒絶反応を阻止する能力に対応する論拠である。
【0066】
本明細書においては、ラパマイシン(rapamycin)は、ラパマイシン(rapamycin)と、FKBP12およびその他の免疫促進物質に結合してTORの抑制を含むラパマイシン(rapamycin)と同一の薬理学的な諸特性を有する全ての類似体、誘導体および共役体と、を含む。
【0067】
ラパマイシン(rapamycin)の抗増殖効果は全身系的な使用により達成できるが、さらに優れた結果がその化合物の局所的送達により達成できる。本質的に、ラパマイシン(rapamycin)はその化合物の近くにある組織の中において作用し、その送達装置からの距離が増大するにつれて効果が減少する。このような作用を利用するために、ラパマイシン(rapamycin)を内腔の壁部に直接的に接触させることが望ましいと考えられる。従って、好ましい実施形態において、ラパマイシン(rapamycin)はステントまたはその種々の部分の表面上に組み込まれている。本質的に、ラパマイシン(rapamycin)は、好ましくは、図1において示されているステント100の中に組み込まれており、この場合に、このステント100は内腔の壁部に対して接触する。
【0068】
ラパマイシン(rapamycin)は多くの方法においてステント上に組み込むかこれに対して固着させることができる。例示的な実施形態において、ラパマイシン(rapamycin)は高分子基質(polymeric matrix)の中に直接的に組み込まれて、ステントの外表面部に吹き付けられる。その後、このラパマイシン(rapamycin)は経時的にその高分子基質から溶出して周囲の組織の中に入り込む。このラパマイシン(rapamycin)は、好ましくは少なくとも3日から約6ヶ月までの間にわたり、さらに好ましくは7日〜30日の間にわたり、ステント上に留まっている。
【0069】
多数の非侵食性のポリマーがラパマイシン(rapamycin)と共に利用できる。一例の例示的な実施形態において、ラパマイシン(rapamycin)またはその他の治療薬をフィルム形成用のポリフルオロ・コポリマー中に組み込むことができ、このフィルム形成用のポリフルオロ・コポリマーは、重合化されたフッ化ビニリデン(vinylidenefluoride)と重合化されたテトラフルオロエチレン(tetrafluoroethylene)とから成る群から選択される所与の量の第1の成分と、この第1の成分とは異なり、当該第1の成分と共重合されることにより前記ポリフルオロ・コポリマーを生成する所与の量の第2の成分と、を含有しており、この第2の成分は前記ポリフルオロ・コポリマーに靱性または弾性を賦与することができ、前記第1の成分と第2の成分の相対的な各量は植え込み可能な医療装置の処理において使用するために有効な特性を伴ってこれらから作られる被膜およびフィルムを提供するために有効である。
【0070】
本発明はポリフルオロ・コポリマーを含む高分子の被膜と、例えば、ステントを脈管形成術において用いる場合に血栓および/または再狭窄を減少するために有効な量で前記高分子の被膜のフィルムにより被覆されている、例えば、ステント等のような、植え込み可能な医療装置と、を提供している。なお、本明細書においては、ポリフルオロ・コポリマーは重合化されたフッ化ビニリデン(vinylidenefluoride)と、重合化されたテトラフルオロエチレン(tetrafluoroethylene)とから成る群から選択される所与の量の第1の成分と、この第1の成分とは異なり、当該第1の成分と共重合されることにより前記ポリフルオロ・コポリマーを生成する所与の量の第2の成分と、を含有しているコポリマーを意味し、この第2の成分は前記ポリフルオロ・コポリマーに靱性または弾性を賦与することができ、前記第1の成分と第2の成分の相対的な各量は植え込み可能な医療装置の被覆において使用するために有効な特性を伴って前記ポリフルオロ・コポリマーから作られる被膜およびフィルムを形成するために有効である。
【0071】
前記被膜は再狭窄、炎症および/または血栓を軽減するための薬剤または治療薬を含むことができ、これらの被膜により被覆されているステントは種々の薬剤の持続された放出を行なうことができる。本発明の特定のポリフルオロ・コポリマーの被膜から調製されているフィルムは、その装置の被膜およびフィルムが曝される最高の温度が比較的に低い温度に制限されている場合においても、従来の被覆型の医療装置において必要とされる物理的および機械的な特性を示す。このことは、前記の被膜/フィルムを用いて熱の影響を受けやすい薬剤/治療薬または薬物を送達する場合に、または、前記被膜をカテーテル等のような温度の影響を受けやすい装置に供給する場合に、特に重要である。一方、最高の暴露温度が問題にならない場合、例えば、イトラコナゾール(itraconazole)等のような熱安定性の薬物が被膜中に組み込まれる場合には、比較的に高い融点の熱可塑性のポリフルオロ・コポリマーを用いることができ、極めて高い伸び率および付着性が必要とされる場合には、エラストマーを用いることができる。このように、望まれる場合または必要とされる場合に、ポリフルオロ・エラストマーが、例えば、「モダーン・フルオロポリマーズ(Modern Fluoropolymers)」,(J.シャイアズ(J. Shires)編集),ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons),ニューヨーク,1997年,p.77〜87において記載されている標準的な方法により架橋できる。
【0072】
本発明は医療装置用の改善された生体適合性の被膜またはビヒクルを提供するポリフルオロ・コポリマーを含む。これらの被膜は再狭窄または血栓、あるいは他の望ましくない反応を軽減するために十分な、例えば、人間等のような、哺乳類動物の体組織に対して接触するように、不活性な生体適合性の表面部分を賦与する。多くの報告されているポリフルオロ・ホモポリマーにより作成されている被膜は不溶性であり、さらに/または、植え込み可能な装置、例えば、ステント等において使用する場合に適当な物理的および機械的な特性を備えたフィルムを得るために、例えば、約125℃以上の温度の高い熱を必要とし、あるいは、特定的に靱性または弾性を有していないが、本発明のポリフルオロ・コポリマーにより調製されているフィルムは、医療装置において形成される場合に、適当な接着性、靱性または弾性および割れに対する耐性を賦与する。また、特定の例示的な実施形態において、前記のことは医療装置が比較的に低い最高温度に曝される場合においても言える。
【0073】
本発明による被膜において用いられているポリフルオロ・コポリマーは好ましくは蝋質または粘着質にならない程度に十分に高い分子量を有するフィルム形成用のポリマーである。さらに、これらのポリマーおよび当該ポリマーにより形成されるフィルムは、ステントに付着して、そのステント上に付着した後に容易に変形して血流の応力により移動可能になることのないことが当然に好ましい。また、このポリマーの分子量は、このポリマーを含むフィルムがステントの取扱いまたは配備中に摩擦により剥がれ落ちないように、十分な靱性を賦与する程度に十分に高いことが当然に好ましい。さらに、特定の例示的な実施形態において、前記被膜はステントまたはその他の医療装置の膨張が生じる場合に割れを生じない。
【0074】
本発明の被膜は、前述のように、ポリフルオロ・コポリマーを含有している。このポリフルオロ・コポリマーを調製するために前記の第1の成分と重合される第2の成分は、哺乳類動物に植え込みをする場合に許容可能な生体適合性のポリマーを提供すると共に、本明細書において特許請求されているそれぞれの医療装置において使用するために十分な弾性フィルムの特性を維持すると考えられる、重合化された生体適合性のモノマーから選択できる。このようなモノマーは、限定を伴うことなく、ヘキサフルオロプロピレン(hexafluoropropylene)(HFP)、テトラフルオロエチレン(tetrafluoroethylene)(TFE)、フッ化ビニリデン(vinylidenefluoride)、1−ヒドロペンタフルオロプロピレン(1-hydropentafluoropropylene)、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)(perfluoro(methyl vinyl ether))、クロロトリフルオロエチレン(chlorotrifluoroethylene)(CTFE)、ペンタフルオロプロペン(pentafluoropropene)、トリフルオロエチレン(trifluoroethylene)、ヘキサフルオロアセトン(hexafluoroacetone)およびヘキサフルオロイソブチレン(hexafluoroisobutylene)を含む。
【0075】
本発明において用いられるポリフルオロ・コポリマーは一般的に約50〜約92重量%のフッ化ビニリデン(vinylidenefluoride)および約50〜約8重量%のヘキサフルオロプロピレン(hexafluoropropylene)(HFP)の範囲の重量比率で、ヘキサフルオロプロピレン(hexafluoropropylene)を共重合しているフッ化ビニリデン(vinylidenefluoride)を含有する。好ましくは、本発明おいて用いられるポリフルオロ・コポリマーは約50〜約15重量%のHFPと共重合している約50〜約85重量%のフッ化ビニリデン(vinylidenefluoride)を含有している。さらに好ましくは、前記ポリフルオロ・コポリマーは約45〜約30重量%のHFPと共重合している約55〜約70重量%のフッ化ビニリデン(vinylidenefluoride)を含有している。さらに好ましくは、前記ポリフルオロ・コポリマーは約45〜約35重量%のHFPと共重合している約55〜約65重量%のフッ化ビニリデン(vinylidenefluoride)を含有している。さらに、これらのポリフルオロ・コポリマーはジメチルアセトアミド(dimethylacetamide)(DMAc)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、ジメチルホルムアミド(dimethyl formamide)、ジメチル・スルホキシド(dimethyl sulfoxide)およびN−メチルピロリドン(N-methyl pyrrolidone)等のような溶媒中において、種々の度合いで溶ける。さらに、一部のポリフルオロ・コポリマーはメチルエチルケトン(methylethylketone)(MEK)、アセトン、メタノールおよびその他の従来の植え込み可能な医療装置に対して被膜を供給する場合に一般的に用いられる溶媒中において可溶性である。
【0076】
従来のポリフルオロ・ホモポリマーは結晶質であり、このポリマーの溶融温度(Tm)に一致する比較的に高い温度にその被膜を曝すことなく金属の表面に高品質のフィルムを供給することが困難である。このように高められた温度は、前記装置に対するフィルムの十分な接着性を示すと共に、好ましくはその被覆された医療装置の膨張/収縮時におけるフィルムの割れに耐えるために十分な柔軟性を維持する前記のようなPVDFホモポリマー等の被膜により調製されているフィルムを提供するために役立つ。本発明による特定のフィルムおよび被膜は、これらの被膜およびフィルムが曝される最高温度が概ね所定の最高温度よりも低い場合であっても、それぞれの同一の物理的および機械的な特性、あるいは、実質的に同一の特性を示す。このことは、前記の被膜/フィルムが、例えば、化学的または物理的な劣化あるいはその他の熱により誘発する不都合な影響等のような、熱の影響を受けやすい薬剤または治療薬または薬物を含む場合に、あるいは、例えば、熱により誘発される組成上のまたは構造上の劣化を受けやすい医療装置における熱の影響を受けやすい基質を被覆する場合に、特に重要である。
【0077】
本発明の被膜およびフィルムが供給される特定の装置およびこの装置において必要とされる特定の用途/結果に応じて、これらの装置を調製するために用いるポリフルオロ・コポリマーは結晶質、半結晶質または非晶質のいずれにすることも可能である。
【0078】
装置が当該装置の高温に対する曝露に関する制約条件または制限条件を有していない場合には、結晶質のポリフルオロ・コポリマーを使用することができる。このような結晶質のポリフルオロ・コポリマーはそれぞれのガラス転移(Tg)温度よりも高い温度に曝される場合に、加えられる応力または重力下において流れやすくなることに対して抵抗する傾向を有している。さらに、結晶質のポリフルオロ・コポリマーはこれらの完全な非晶質の対応物よりも靱性の高い被膜およびフィルムを提供する。加えて、結晶質のポリマーは比較的に潤滑性が高く、例えば、ニチノール・ステント等のような、自己拡張式のステントを取り付けるために用いられる圧着および移送の処理の全体を通して比較的に容易に取り扱える。
【0079】
一方、半結晶質および非晶質のポリフルオロ・コポリマーは高い温度に曝されることが問題である場合、例えば、熱の影響を受けやすい薬剤または治療薬がその被膜またはフィルムに混合されている場合に、あるいは、装置の設計、構造および/または用途が前記のような高い温度に曝されることを除外している場合に、有利である。例えば、VDF等のような前記第1の成分と共重合されている、例えば、約30〜約45重量%等のような、比較的に多量の、例えば、HFP等のような、前記第2の成分を含有している半結晶質のポリフルオロ・コポリマーのエラストマーは、非晶質のポリフルオロ・コポリマーのエラストマーに対して摩擦係数および自己遮断性が低いという利点を有している。このような特徴は前記のようなポリフルオロ・コポリマーにより被覆されている医療装置を加工、包装および送達する場合に重要な価値を有すると考えられる。加えて、比較的に高い含有率の前記第2の成分を含有している前記のようなポリフルオロ・コポリマーのエラストマーはそのポリマー中における、例えば、ラパマイシン(rapamycin)等のような特定の薬剤の溶解性を調整し、それゆえ、その基材中におけるその薬剤の浸透性を調整することに役立つ。
【0080】
本発明において利用されているポリフルオロ・コポリマーは既知の様々な重合法により調製できる。例えば、アジロルジ(Ajroldi)他,「フルオロエラストマーズ−ディペンデンス・オブ・リラクゼーション・フェノメナ・オン・コンポジションズ(Fluoroelastomers-dependence of relaxation phenomena on compositions)」,ポリマー(POLYMER),30巻,p.2180,1989年、において開示されているような高圧遊離ラジカル半連続式乳化重合法が非晶質のポリフルオロ・コポリマーを調製するために使用することができ、これらの一部をエラストマーにすることも可能である。加えて、この文献において開示されている遊離ラジカル・バッチ式の乳化重合法は比較的に多量の第2の成分が含まれている場合においても、半結晶質であるポリマーを得るために使用できる。
【0081】
前述のように、ステントは多様な材料により多様な幾何学的形状に構成できる。また、これらのステントは生体安定性で生体吸収性の材料を含む生体適合性の材料により作成できる。適当な生体適合性の金属はステンレス・スチール、タンタル、チタン合金(ニチノールを含む)、および種々のコバルト合金(コバルト−クロム−ニッケル合金を含む)を含むが、これらに限定されない。また、適当な非金属の生体適合性の材料はポリアミド、ポリオレフィン(すなわち、ポリプロピレン、ポリエチレン等)、非吸収性のポリエステル(すなわち、ポリエチレン・テレフタレート(polyethylene terephthalate)等)、および生体吸収性の脂肪族ポリエステル(すなわち、乳酸、グリコール酸、ラクチド、グリコリド、パラジオキサノン(para-dioxanone)、トリメチレンカーボネート(trimethylene carbonate)、ε−カプロラクトン(ε-caprolactone)およびこれらの混合物のホモポリマーおよびコポリマー等)を含むが、これらに限定されない。
【0082】
前記フィルム形成用の生体適合性のポリマーの被膜は一般にステントの中を通る血液の流れの局所的な乱流を減少すると共に有害な組織反応を減少するためにステントに供給される。これらの被膜およびこれらにより形成されるフィルムもまた薬剤として活性な物質をステントの配置部位に投与するために使用できる。一般に、ステントに供給されるポリマー被膜の量は、可能なパラメータの中において、とりわけ、その被膜を調製するために使用する特定のポリフルオロ・コポリマーと、ステントの設計と、その被膜の所望の効果と、により変化する。一般に、被覆されたステントは約0.1〜15重量%、好ましくは約0.4〜約10重量%の被膜を含む。また、前記ポリフルオロ・コポリマーの被膜は、その供給されるポリフルオロ・コポリマーの量に応じて、1回以上の塗布工程において供給することが可能である。さらに、異なるポリフルオロ・コポリマーをステントの被膜の中において互いに異なる層に対応して用いることも可能である。実際に、特定の例示的な実施形態において、薬剤として活性な物質を含有できる後続のポリフルオロ・コポリマーの被膜層の接着を助長するためのプライマーとして、ポリフルオロ・コポリマーを含有している希釈された第1の塗布溶液を用いることが極めて有利である。さらに、個々の被膜を互いに異なるポリフルオロ・コポリマーにより調製することも可能である。
【0083】
加えて、上部被膜を薬剤の放出を遅らせるために供給することも可能であり、あるいは、これらの被膜を異なる薬剤として活性な物質の送達のための基材として使用することも可能である。また、このような被膜の層状化は、薬剤の放出を段階的にするために、あるいは、異なる層の中に配置されている異なる薬剤の放出を調整するために、用いることもできる。
【0084】
また、異なる薬剤の放出速度を調整するために、あるいは、被膜特性、すなわち、弾性、靱性等、および薬物の送達特性、例えば、放出特性等の、望ましい釣り合いを提供するために、ポリフルオロ・コポリマーの混合物を用いることも可能である。さらに、異なる薬物を送達するために使用できる異なるポリマーの層を構築するために、あるいは、薬物の放出特性を調整するために、溶剤中において異なる溶解度を有するポリフルオロ・コポリマー使用することが可能である。例えば、85.5/14.5(重量/重量)のポリ(フッ化ビニリデン(vinylidenfluoride)/HFP)を含むポリフルオロ・コポリマーと60.6/39.4(重量/重量)のポリ(フッ化ビニリデン(vinylidenfluoride)/HFP)を含むポリフルオロ・コポリマーは共にDMAc中において溶ける。しかしながら、60.6/39.4のPVDFポリフルオロ・コポリマーだけがメタノール中において溶ける。従って、所与の薬物を含有している85.5/14.5のPVDFポリフルオロ・コポリマーの第1の層を、メタノール溶媒により作成した60.6/39.4のPVDFポリフルオロ・コポリマーの上部被膜により被覆することが可能である。この上部被膜は前記第1の層の中に含まれている薬物の送達を遅らせるために使用できる。あるいは、前記第2の層は連続的な薬物送達を行なうために異なる薬剤を含有することも可能である。さらに、最初に一つのポリフルオロ・コポリマー、そしてその後の別の種類のポリフルオロ・コポリマー、の交互の層により、異なる薬物の複数の層を備えることも可能である。すなわち、当業者により容易に認識されるように、多数の層状化方式が所望の薬物送達を行なうために使用できる。
【0085】
被膜は1種類以上の治療薬とその被膜のポリフルオロ・コポリマーとをその被膜の混合物中において混合することにより配合できる。この治療薬は、液体、微細に分割された固体または任意の他の適当な物理的な形態として、存在できる。随意的に、前記被膜の混合物は、例えば、稀釈剤、キャリヤー、賦形剤、安定化剤等のような、無毒性の補助物質を含む、1種類以上の添加物を含有できる。さらに、別の適当な添加物が前記のポリマーおよび薬剤として活性な物質または化合物と共に配合できる。例えば、親水性のポリマーを生体適合性で疎水性の被膜に添加してその放出特性を変更することができ、あるいは、疎水性のポリマーを親水性の被膜に添加することによりその放出特性を変更することも可能である。一例として、ポリエチレン・オキシド(polyethylene oxide)、ポリビニル・ピロリドン(polyvinyl pyrrolidone)、ポリエチレン・グリコール(polyethylene glycol)、カルボキシルメチル・セルロース(carboxymethyl cellulose)およびヒドロキシメチル・セルロース(hydroxymethyl cellulose)から成る群から選択される親水性のポリマーをポリフルオロ・コポリマーの被膜に添加してその放出特性を変更することが考えられる。これらの適当な相対量は治療薬についての生体外および/または生体内における放出特性をモニターすることにより決定できる。
【0086】
前記被膜の供給において最良の条件は前記ポリフルオロ・コポリマーと薬剤が共通の溶剤を有している場合である。これにより、真正の溶液である液状被膜が得られる。また、望ましさの点において劣るが、依然として使用可能な状態として、溶媒中の前記ポリマーの溶液の中の固形の分散物として前記薬剤を含有している被膜もある。このような分散の状況においては、分散されている薬剤の粉末の粒度、すなわちその主な粉末の大きさおよびその凝集体と集塊物の両方が、不規則な塗膜面を生じない程度に、あるいは、実質的に被膜の無い状態を維持することが必要なステントの各スロット部分を詰まらせない程度に、十分に小さいことを確実にするために注意を払う必要がある。分散物がステントに供給されて、その被膜フィルムの表面の滑らかさが改善を必要とする場合に、または、薬物の全ての粒子がポリマー中に完全に包み込まれることを確実にするために、あるいは、薬物の放出速度が低められることが必要である場合に、その薬物の持続された放出を行なうために用いられる同一のポリフルオロ・コポリマーまたはその被膜からの薬物の拡散をさらに制限する別のポリフルオロ・コポリマーの透明な(ポリフルオロ・コポリマーだけの)上部被膜を供給することができる。さらに、この上部被膜は、各スロット部分を開口するために、マンドレルによる浸漬塗布により供給できる。この方法は米国特許第6,153,252号において開示されている。さらに、前記上部被膜を供給するための別の方法はスピン塗布法および吹付塗布法を含む。なお、この上部被膜の浸漬塗布は前記薬物がその被膜溶剤中に極めて溶けやすい場合に問題を生じる可能性があり、このような溶媒はポリフルオロ・コポリマーを膨潤させて、その透明な被覆溶液はゼロ濃度シンクとして作用して先に付着された薬剤を再び溶かしてしまう。さらに、薬物がその薬物を含まない槽の中に抽出されないようにするために、その浸漬槽中における消費時間を制限する必要がある。加えて、先に付着された薬物が前記の上部被膜の中に完全に拡散しないように乾燥を速やかに行なう必要がある。
【0087】
前記治療薬の量は使用する特定の薬物および治療されている医療状況に応じて決まる。一般的に、この薬物の量は全体の被膜の重量の約0.001%〜約70%、さらに一般的には全体の被膜の重量の約0.001%〜約60%である。また、この薬物は全体の被膜の重量の0.0001%程度の少ない量であることも可能である。
【0088】
薬剤を含有している被膜フィルム中に用いられているポリフルオロ・コポリマーの量および種類は所望の放出特性および使用する薬剤の量に応じて変化する。この生成物は、所望の放出特性または任意の配合に対して一貫性を示すように、異なる分子量を有する同種または異種のポリフルオロ・コポリマーの混合物を含むことができる。
【0089】
ポリフルオロ・コポリマーは拡散により分散状態の薬剤を放出することができる。この結果、有効量(0.001μg/cm2 −分〜1000μg/cm2 −分)の薬剤の長期の送達(例えば、約1000時間〜2000時間、好ましくは、200時間〜800時間にわたる送達)を行なうことができる。また、この投薬量は、治療を受けている患者、病気の深刻さ、処方医の判断等、に合わせることができる。
【0090】
所望の薬剤放出特性を達成するために、薬剤およびポリフルオロ・コポリマーの個々の調合物を適当な生体外および生体内のモデルにおいて試験することができる。例えば、薬剤をポリフルオロ・コポリマーまたはポリフルオロ・コポリマーの混合物と配合して、ステント上に塗布し、攪拌されているか循環している流体のシステム、例えば、25%のエタノール水溶液の中に置くことができる。その後、これらの循環している流体のサンプルを取り出して、その放出特性を決定することができる(例えば、HPLC、UV分析法または放射線タグ付きの分子の使用等、による)。さらに、ステント被膜からの内腔の内壁部の中への薬剤化合物の放出が適当な動物体のシステムにおいてモデル化できる。その後、その薬剤放出特性が、例えば、サンプルを特定の時点で採取して、各サンプルをその薬物濃度についてアッセイする(HPLCを用いて薬剤濃度を検出する)等のような、適当な手段によりモニターできる。また、血栓形成はハンソン(Hanson)およびハーカー(Harker),「プロシーディング・ナショナル・アカデミカル・ソサイエテイ・ユー・エス・エー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),85巻,p.3184〜3188,(1988年)、により記載されている血小板内画像化法を用いて動物体モデルにおいてモデル化できる。また、前記の手順またはこれに類似の手順に従って、当業者であれば、様々なステント被膜調合物を配合できるようになるであろう。
【0091】
本発明の必要条件ではないが、前記の被膜およびフィルムは医療装置に一旦供給した後に架橋することができる。この架橋は、化学薬品、熱または光等のような、既知の架橋処理のメカニズムの内の任意のものにより行なうことができる。加えて、この架橋処理の開始剤および促進剤も、適用可能であり適当であれば、使用してもよい。薬剤を含有している架橋フィルムを利用している例示的な実施形態において、その硬化処理がその被膜からの薬剤の拡散速度に影響を及ぼす可能性がある。さらに、本発明の架橋されたポリフルオロ・コポリマー・フィルムおよび被膜は植え込み可能な医療装置の表面を改質するために薬剤を伴わずに使用することも可能である。
【0092】
実施例
実施例1:
それぞれ、F19NMRにより決定された場合に、92/8重量%および91/9重量%のフッ化ビニリデン(vinylidenefluoride)/HFPである、PVDFホモポリマー(テキサス州ヒュートンのソルベイ・アドバンスド・ポリマーズ社(Solvay Advanced Polymers)から入手可能なソレフ(Solef)(登録商標)1008、融点:約175℃)およびポリ(フッ化ビニリデン(vinylidenefluoride)/HFP)のポリフルオロ・コポリマー(それぞれ、例えば、テキサス州ヒュートンのソルベイ・アドバンスド・ポリマーズ社(Solvay Advanced Polymers)から入手可能なソレフ(Solef)(登録商標)11010および11008、融点:約159℃および160℃)をステント用の可能性のある被膜として調べた。これらのポリマーはDMAc、N,N−ジメチルホルムアミド(N,N-dimethylformamide)(DMF)、ジメチル・スルホキシド(dimethyl sulfoxide)(DMSO)、N−メチルピロリドン(N-methylpyrrolidone)(NMP)、テドラヒドロフラン(tetrahydrofuran)(THF)およびアセトンを含むが、これらに限定されない、溶媒の中において溶ける。これらのポリマーをプライマーとしてアセトン中に5重量%で溶解させるか、そのポリマーを上部被膜として50/50のDMAc/アセトン中に30重量%で溶解させることにより、それぞれのポリマー被膜を調製した。この場合に、浸漬によりステントに供給されて、数時間にわたり空気中において60℃で乾燥された後に、100mmHg(1.33×104 パスカル)よりも低い真空中において3時間にわたり60℃で乾燥された被膜は白色の発泡体状のフィルムを結果として得た。さらに、供給時に、これらのフィルムはステントに対する接着性が欠けており、剥がれ落ちて、過度に脆いことが分かった。さらに、前記の様式で被覆されたステントは175℃を超える温度、すなわち、そのポリマーの溶融温度を超える温度に加熱されると、透明で付着性のフィルムが形成された。それゆえ、高品質のフィルムを達成するために、被膜は高い温度、例えば、ポリマーの溶融温度を超える温度、を必要とする。前述のように、このような高温の熱処理は大部分の薬剤化合物において、これらの熱に対する影響の受けやすさにより、許容不可能である。
【0093】
実施例2:
次に、F19NMRにより決定された場合に、14.5重量%のHFPと共重合されている85.5重量%のフッ化ビニリデン(vinylidenefluoride)を含有しているポリフルオロ・コポリマー(例えば、ソレフ(Solef)(登録商標)21508)を評価した。このコポリマーは前記実施例1において記載されているポリフルオロ・ホモポリマーおよびコポリマーよりも結晶性が低い。さらに、このコポリマーは約133℃であると報告されている低い融点も有している。この場合も同様に、約20重量%の前記ポリフルオロ・コポリマーを含む被膜が50/50のDMAc/MEK中におけるポリマー溶液により供給されている。その後、数時間にわたり60℃で(空気中において)乾燥した後に、100mmHg(1.33×104 パスカル)よりも低い真空中において3時間にわたり60℃で乾燥したことにより、透明な付着性のフィルムが得られた。この方法は高品質のフィルムを達成するための高温の熱処理の必要性を排除している。このようにして得られた被膜は前記実施例1の被膜よりも滑らかであり且つ付着性が高かった。また、拡張された一部の被覆型ステントは、前記フィルムが金属から分離するのに従って、ある程度の付着性の低下と「テント状化」を示した。そこで、必要である場合には、前記の各コポリマーを含有している被膜の改質を、例えば、可塑剤等をその被膜配合物に添加する等により、行なうことができる。このような被膜により調製されたフィルムは、特に、その装置がステントの程度までの膨張に対して影響を受けにくい場合に、それぞれのステントまたはその他の医療装置を被覆するために使用できる。
【0094】
前記の被覆処理を繰り返して、今回は、前記85.5/14.6(重量/重量)のフッ化ビニリデン(vinylidenefluoride)/HFP、および被膜の固形物の全重量に基づいて約30重量%のラパマイシン(rapamycin)(ペンシルベニア州フィラデルフィアのウエイス−イヤースト・ラボラトリーズ社(Wyeth-Ayesrt Labratories))を含有している被膜を得た。この結果、場合により被覆したステントの膨張時に割れまたは剥がれを生じる透明なフィルムが結果として得られた。この場合に、可塑剤等を前記の被膜の組成に含ませることにより、前記のような割れおよび剥がれの影響を受けない、ステントおよびその他の医療装置において使用するための、被膜およびフィルムが得られるようになると考えられる。
【0095】
実施例3:
その後、前記よりもさらに高いHFP含有量のポリフルオロ・コポリマーを試験した。この系列のポリマーは半結晶質ではなく、むしろ、エラストマーとして市販されている。一例のこのようなコポリマーはフルオレル(Fluorel)(商標)FC2261Q(ミネソタ州オークデールの、3M−ホエスト・エンタープライズ(3M-Hoechst Enterprise)の1社である、ダイニオン社(Dyneon)による)、すなわち、フッ化ビニリデン(vinylidenefluoride)/HFPの60.6/39.4(重量/重量)のコポリマーである。このコポリマーは室温よりも十分に低いTg(ガラス転移点)(このTgは約−20℃)を有しているが、室温または60℃でも粘着性にならない。このポリマーは示差走査熱量計(DSC)または広角X線回折法により測定された場合に、検出可能な結晶化度を持たない。前述のようなステント上に形成されるフィルムは非粘着性で、透明であり、ステントが拡張される時に問題を生じることなく拡張される。
【0096】
前述の被覆処理を繰り返して、今回は、被膜固形物の全重量に基づいて、60.6/39.4(重量/重量)のフッ化ビニリデン(vinylidenefluoride)/HFP、および約9重量%、30重量%および50重量%のラパマイシン(rapamycin)(ペンシルベニア州フィラデルフィアのウエイス−イヤースト・ラボラトリーズ社(Wyeth-Ayerst Labratories))を含む被膜をそれぞれ得た。この場合に、約9重量%および30重量%のラパマイシン(rapamycin)を含有している各被膜はステント上において問題を生じることなく拡張される白色で付着性の強靱なフィルムを形成した。同様に、50%の薬剤を混入すると、その結果として、拡張時に付着性がある程度失われた。
【0097】
前記のポリフルオロ・コポリマーのコモノマーの組成の変化もまた、乾燥後において、その固体状態の被膜の性質に影響を及ぼす可能性がある。例えば、14.5重量%のHFPと重合させた85.5重量%のフッ化ビニリデン(vinylidenefluoride)を含有している半結晶質コポリマーのソレフ(Solef)(登録商標)21508は、DMAcおよび50/50のDMAc/MEK中において、約30%のラパマイシン(rapamycin)(全体の固体の重量、例えば、薬剤+コポリマー、で割った薬剤の重量)と共に均質な溶液を形成する。このフィルムを乾燥させると(16時間にわたり60℃で処理した後に、3時間にわたり60℃で100mmHg(1.3×104 パスカル)の真空中で処理した)、ポリマー中における薬剤の固溶体を示す透明な被膜が得られる。これとは逆に、60.6/39.5(重量/重量)のPDVF/HFPの、非晶質コポリマーである、フルオレル(Fluorel)(商標)FC2261QはDMAc/MEK中におけるラパマイシン(rapamycin)の同様の30%溶液を形成し、同様に乾燥させると、その薬物およびポリマーの相分離を示す白色のフィルムが得られる。しかしながら、この第2の薬物を含むフィルムは、結晶質のソレフ(Solef)(登録商標)21508の前述の透明なフィルムの場合よりも、25%のエタノール水溶液の生体外試験溶液中に薬物を放出することが極めて遅い。さらに、前記の両方のフィルムのX線分析により、前記の薬物は非結晶質の形態で存在していることが示されている。また、高いHFP含有量のコポリマー中における薬物の不十分なまたは極めて低い溶解度により、薄い被膜フィルムを通る薬物の透過度が低下する。なお、この透過度は、フィルム(コポリマー)の中に拡散している物質(この場合、薬物)の拡散速度と、そのフィルムの中の薬剤の溶解度との積である。
【0098】
実施例4:被膜からのラパマイシン(rapamycin)の生体外における放出結果
図3は85.5/14.5のフッ化ビニリデン(vinylidenefluoride)/HFPのポリフルオロ・コポリマーに関するデータをプロットしたグラフ図であり、上部被膜の無い場合における時間の関数として放出される薬剤のフラクションを示している。また、図4は上部被膜が配置されている同一のポリフルオロ・コポリマーについてのデータをプロットしたグラフ図であり、放出速度における最も大きな影響が透明な上部被膜を伴う場合に生じていることを示している。図示のように、例えば、TC150は150マイクログラムの上部被膜を有する装置を示しており、TC235は235マイクログラムの上部被膜を示している。上部被膜を備える前の各ステントは30%のラパマイシン(rapamycin)を含有している平均で750マイクログラムの被膜を有していた。さらに、図5は60.6/39.4のフッ化ビニリデン(vinylidenefluoride)/HFPのポリフルオロ・コポリマーについてのデータをプロットしたグラフ図であり、時間の関数としての放出される薬剤のフラクションを示しており、上部被膜を伴わない場合の被膜からの放出速度の著しい調整を示している。すなわち、この放出は薬剤をフィルム中に装填することにより調整されている。
【0099】
実施例5:ポリ(VDF/HFP)からのラパマイシン(rapamycin)の生体内におけるステントの放出速度
通常の餌を与えられている9匹のニュージーランド種の白色ラビット(2.5kg〜3.0kg)に、手術の24時間前と、手術の直前と、調査の残りの期間中と、においてアスピリン(aspirin)を与えた。手術時に、各動物体にアセプロマジン(acepromazine)(0.1〜0.2mg/kg)をあらかじめ投薬して、ケタミン(ketamine)/キシラジン(xylazine)の混合物(それぞれ40mg/kgおよび5mg/kg)により麻酔をかけた。さらに、各動物体にヘパリン(heparin)の1回分の処置間投与量(150IU/kg、(静脈内(i.v.))を与えた。
【0100】
右総頸動脈の動脈切除を行ない、5フレンチのカテーテル導入装置(コーディス・インコーポレイテッド社(Cordis, Inc.))をその血管内に配置して結紮糸により固定した。その後、ヨウ素造影剤を注入して、右総頸動脈、腕頭動脈および大動脈弓を可視化した。次に、操縦可能なガイドワイヤ(0.036cm(0.014インチ)/180cm、コーディス・インコーポレイテッド社(Cordis, Inc.))を前記の導入装置を介して挿入し、順次に各腸骨動脈内に前進させて、既に行なわれている脈管造影式マッピング法を用いて、その腸骨動脈が2mmに最も近い直径を持つ場所まで進行させた。その後、30%のラパマイシン(rapamycin)を含有しているポリ(VDF/HFP):(60.6/39.4)により作成したフィルムを被覆した2つのステントを、実行可能な場合の各動物体において、3.0mmバルーンを用いて各腸動脈中に1個ずつ配備し、30秒間にわたり8〜10気圧まで膨張させた後に、1分間の時間間隔を置いてさらに30秒間にわたる8〜10気圧までの2回目の膨張を行なった。その後、ステントの正確な配備位置を確認するために、両方の腸骨動脈を可視化する事後点検用の脈管造影図を得た。
【0101】
前記の処置の終了時に、総頸動脈を結紮し、その皮膚を1層の中断された閉鎖部材を用いて3/0ビクリル縫合糸により閉鎖した。各動物体にブトロパノール(butoropanol)(0.4mg/kg、(s.c.))およびゲンタマイシン(gentamycin)(4mg/kg、(筋肉内(i.m.)))を与えた。回復後、各動物体をそれぞれのケージに戻し、自由に食物および水に接触可能にした。
【0102】
早期の死亡および外科的な困難さにより、2匹の動物体はこの分析において用いられなかった。ステント処理した各脈管を以下の各時点、すなわち、植え込み後10分において1本の脈管(1匹の動物体)、植え込み後40分〜2時間(平均、1.2時間)において6本の脈管(3匹の動物体)、植え込み後3日において2本の脈管(2匹の動物体)、および植え込み後7日において2本の脈管(1個の動物体)を残りの7匹の動物体から取り出した。さらに、2時間の時点における1匹の動物体において、そのステントは腸骨動脈ではなく大動脈から回収した。除去時に、各動脈をステントの基端部および先端部の両方において注意深く整形した。その後、各脈管を注意深くステントから切断して離し、洗い流して残留している血液を除去し、そのステントと脈管の両方をすぐに凍結して、別々に箔で包み、ラベルを貼って−80℃において凍結状態に維持した。全てのサンプルを集めて、それぞれの脈管およびステントを凍結し、輸送した後に、組織中におけるラパマイシン(rapamycin)について分析を行ない、これらの結果が図4に示されている。
【0103】
実施例6:ポリマーの浄化
前記のフルオレル(Fluorel)(商標)FC2261Qコポリマーを約10重量%でMEK中に溶解して、14:1のエタノール/水とMEK溶液との溶液比率においてエタノール/水の50/50の混合物中において洗浄した。その後、このポリマーを沈澱させて、遠心処理により溶媒相から分離した。さらに、そのポリマーを再びMEK中に溶解して、洗浄処理を繰り返し行なった。その後、このポリマーを各洗浄工程の後に一晩にわたり真空オーブン(200ミリトル(0.266×102 パスカル)よりも低い)内において60℃で乾燥させた。
【0104】
実施例7:ブタの冠状動脈中における被覆型ステントの生体内試験
クロスフレックス(CrossFlex)(登録商標)ステント(コーディス(Cordis)、ジョンソン・アンド・ジョンソン・カンパニー社(Johnson & Johnson Company)の1社、から入手可能)を、前記の「受け入れられた」フルオレル(Fluorel)(商標)FC2261Q PVDFコポリマーおよび前記実施例6において浄化したポリフルオロ・コポリマーにより、浸漬処理および拭き取り法を用いて被覆した。その後、これらの被覆されたステントをエチレン・オキシドおよび標準的な処理工程により滅菌処理した。さらに、これらの被覆されたステントおよび被覆されていない金属ステント(対照品)をブタの各冠状動脈に植え込み、これらを28日間にわたりその状態に維持した。
【0105】
脈管造影を植え込み時および28日目に各ブタについて行なった。この脈管造影法により、対照の被覆されていないステントは約21%の再狭窄を示した。前記の「受け入れられた」ポリフルオロ・コポリマーは約26%の再狭窄(対照と同等)を示したが、洗浄処理したコポリマーは約12.5%の再狭窄を示した。
【0106】
組織学的な結果により、被覆されていない金属の対照品、浄化されていないコポリマーおよび浄化されたコポリマーにおいて、28日目における新内膜領域はそれぞれ2.89±0.2、3.57±0.4、2.75±0.3であることが分かった。
【0107】
ラパマイシン(rapamycin)は周囲の組織に入ることにより作用するので、1組織に対して接触するステントの表面のみに固着されていることが好ましい。一般的に、このようなステントの外表面部のみが組織に接触する。従って、一例の例示的な実施形態において、ステントの外表面部のみがラパマイシン(rapamycin)により被覆されている。
【0108】
循環器系は、通常の条件下において、自己シール型である必要があり、自己シール型でなければ、外傷部からの継続した血液の損失が生命を脅かすことも考えられる。一般的に、たいていの破局的な出血を除く全ての出血は止血として知られている処理により即時に止まる。この止血は一連の工程を通して行なわれる。流量が多い場合に、止血は血小板凝集とフィブリン形成を含む種々の状態の組み合わせになる。この血小板凝集により、細胞による栓の形成に起因して血液の流れの減少を引き起こすと共に、一連の生物化学的な工程により、フィブリンの凝塊が形成される。
【0109】
フィブリン凝塊は、前述のように、傷害に応答して形成される。このような血液の凝固または特定領域内における凝固が健康上の危険性をもたらす特定の状況が存在する。例えば、経皮経管冠状動脈脈管形成術の実施中において、動脈壁部の内皮細胞が一般的に損傷し、これにより、内皮下細胞が露出する。血小板はこれらの露出した細胞に付着する。凝集している血小板および損傷した組織はさらに生化学的な過程を開始し、これにより、血液凝固が生じる。血小板およびフィブリン血餅は重要な領域への血液の正常な流れを妨げる。従って、血液凝固を種々の医療処置において調整する必要がある。血液が凝固しないようにする化合物は抗凝固剤と呼ばれている。本質的に、抗凝固剤は血栓の形成または機能の抑制因子である。これら化合物はヘパリン(heparin)およびヒルジン(hirudin)等のような薬剤を含む。本明細書においては、このヘパリン(heparin)は血栓または第Xa因子の直接的または間接的な全ての抑制因子を含む。
【0110】
有効な抗凝固剤であることに加えて、ヘパリン(heparin)はまた、生体内における平滑筋細胞の増殖を抑制することが立証されている。従って、ヘパリン(heparin)は脈管の病気の治療においてラパマイシン(rapamycin)と共に有効に利用できる可能性がある。本質的に、ラパマイシン(rapamycin)とヘパリン(heparin)の組み合わせは、ヘパリンが(heparin)抗凝固剤として作用すること加えて、二種類の異なるメカニズムを介して平滑筋細胞の増殖を抑制できる。
【0111】
ヘパリン(heparin)は、その多官能的な化学的性質のために、多くの方法でステントに対して不動化または固着できる。例えば、ヘパリンは種々の方法により多様な表面の上に固着でき、このような方法として、ガイア(Guire)他に発行されている米国特許第3,959,078号および4,722,906号およびカハラン(Cahalan)他に発行されている米国特許第5,229,172号、5,308,641号、5,350,800号および5,415,938号において記載されているフォトリンク(photolink)法が含まれる。また、このようなヘパリン(heparin)を付着した表面はまたディング(Ding)他に発行されている米国特許第5,837,313号、6,099,562号および6,120,536号において記載されているような、例えば、シリコーン・ゴム等のポリマー基質からの調整された放出により達成されている。
【0112】
ラパマイシン(rapamycin)とは異なり、ヘパリン(heparin)は血液中の循環タンパク質に対して作用し、このヘパリン(heparin)が有効であるためには血液に接触することだけを必要とする。従って、例えば、ステント等のような医療器具と共に使用される場合に、血液と接触する面においてのみ存在していることが好ましい。例えば、ヘパリン(heparin)がステントを介して投与される場合に、このヘパリン(heparin)が有効であるためにはそのステントの内表面部においてのみ存在していればよい。
【0113】
本発明の例示的な実施形態において、脈管の病気の治療のためにステントはラパマイシン(rapamycin)およびヘパリン(heparin)との組み合わせにおいて利用可能である。この例示的な実施形態において、ヘパリン(heparin)は血液と接触するようにそのステントの内表面部に固着されており、ラパマイシン(rapamycin)はその周囲組織に対して接触するようにそのステントの外表面部に固着されている。図7は図1において示されているステント100における帯域部分102の断面を示している。図示のように、この帯域部分102はその内表面部110においてヘパリン(heparin)108により被覆されており、その外表面部114においてラパマイシン(rapamycin)112により被覆されている。
【0114】
別の例示的な実施形態において、前記ステントはその内表面部に固着されているヘパリン(heparin)の層およびその外表面部に固着されているラパマイシン(rapamycin)およびヘパリン(heparin)を有することができる。現行の塗布技法を利用すると、ヘパリン(heparin)はラパマイシン(rapamycin)の場合よりも、そのヘパリン(heparin)が固着される表面に対してさらに強固な結合状態を形成する傾向がある。従って、最初にラパマイシン(rapamycin)をステントの外表面部に固着させてから、ヘパリン(heparin)の層をそのラパマイシン(rapamycin)の層に固着させることが可能であると考えられる。このような実施形態において、ラパマイシン(rapamycin)はステントに比較的に確実に固着できると共に、その高分子基質からヘパリン(heparin)を通して周囲の組織の中に比較的に有効に溶け出すことができる。図8は図1において示されているステント100における帯域部分102の断面を示している。図示のように、この帯域部分102はその内表面部110においてヘパリン(heparin)108により被覆されており、その外表面部114においてラパマイシン(rapamycin heparin)112およびヘパリン(heparin)108により被覆されている。
【0115】
前記ヘパリン(heparin)の層をラパマイシン(rapamycin)の層に固着させる方法、すなわち、侵食性の結合による捕捉または共有結合的な連結には多数の方法がある。例えば、ヘパリン(heparin)を高分子基質の上部層に導入することができる。また、別の実施形態においては、異なる形態のヘパリン(heparin)を、例えば図9において示されているように、高分子基質の上部層の上に直接的に固着させることも可能である。すなわち、図示のように、疎水性のヘパリン(heparin)の層116をラパマイシン(rapamycin)の層112の上部被膜層118の上に固着させることができる。なお、これらのラパマイシン(rapamycin)およびヘパリン(heparin)の被膜は非相容性の被膜供給技法を代表するものであるので、疎水性の形態のヘパリン(heparin)が用いられている。さらに、ラパマイシン(rapamycin)は有機溶媒に基づく被膜であり、ヘパリン(heparin)は、その自然な形態において、水性の被膜である。
【0116】
前述のように、ラパマイシン(rapamycin)の被膜は浸漬法、スプレー法またはスピン・コート法および/またはこれら方法の任意の組み合わせによりステントに供給できる。この場合に、種々のポリマーが利用可能である。例えば、前述のように、エチレン酢酸ビニル共重合体(poly(ethylene-co-vinyl acetate)(EVA)およびポリブチル・メタクリレート(polybutyl methacrylate)の混合物を利用することができる。さらに別のポリマーも利用可能であり、例えば、フッ化ポリビニリデン−コ−ヘキサフルオロプロピレン(polyvinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene)およびポリエチルブチルメタクリレート−コ−ヘキシル・メタクリレート(polyethylbutyl methacrylate-co-hexyl methacrylate)が含まれるが、これらに限定されない。また、前述のように、バリアまたは上部被膜をポリマー基質からのラパマイシン(rapamycin)の溶解の調整のために供給することも可能である。前述されている、例示的な実施形態において、ヘパリン(heparin)の薄い層が高分子基質の表面に供給されている。なお、これらのポリマー組織は疎水性であり、親水性のヘパリン(heparin)に対して非相容性であるので、適当な表面改質が必要になる場合がある。
【0117】
前記高分子基質の表面へのヘパリン(heparin)の供給は種々の方法により種々の生体適合性の材料を用いて行なうことができる。例えば、一例の実施形態において、水中またはアルコールの溶液中において、ラパマイシン(rapamycin)を劣化させないように注意しながら(例えば、pH<7、低温において)ポリエチレン・イミン(polyethylene imine)をステントに供給した後に、ヘパリン酸ナトリウム(sodium heparinate)を水性またはアルコールの溶液において供給する。この表面改質の拡張例として、共有結合性のヘパリン(heparin)をアミド型の化学薬品(カルボンジイミド(carbodiimide)活性化剤、例えば、EDC)または還元性のアミノ化薬品(結合のためのCBAS−ヘパリン(CBAS-heparin)およびシアノ水素化ホウ素ナトリウム)を用いてポリエチレン・イミン(polyethylene imine)に結合させることができる。また、別の例示的な実施形態において、ヘパリン(heparin)は、光開始剤の成分により適当にグラフト化されている場合に、その表面において光結合できる。このような改質されたヘパリン(heparin)の調合物を共有結合性のステントの表面に供給すると、光の曝露により、架橋が生じてヘパリン(heparin)がその被膜表面上に固着される。さらに別の例示的な実施形態において、ヘパリン(heparin)は疎水性の第四級アンモニウム塩と共に錯体を形成することにより、その分子が有機溶媒(例えば、ヘパリン酸ベンザルコニウム(benzalkonium heparinate)、ヘパリン酸トリドデシルメチルアンモニウム(tridodecylmethylammonium heparinate))の中に溶けるようになる。このようなヘパリン(heparin)の調合物は疎水性のラパマイシン(rapamycin)の被膜に対して相容性があり、その被膜表面上に直接的に供給可能であるか、前記のラパマイシン(rapamycin)/疎水性ポリマーの調合物中に供給可能になる。
【0118】
ステントが、前述のように、種々の金属、高分子材料およびセラミック材料を含む多数の材料から形成可能であることに注目することが重要である。従って、種々の技法が前記の薬物、薬剤、化合物の組み合わせをステント上に固着させるために利用可能である。特に、前述の高分子基質に加えて、生体ポリマーを用いることができる。これらの生体ポリマーは一般に天然ポリマーとして分類できるが、前述のポリマーは合成ポリマーとして説明することもできる。利用可能な例示的な生体ポリマーはアガロース、アルギネート、ゼラチン、コラーゲンおよびエラスチンを含む。加えて、前記の薬物、薬剤または化合物は他の経皮的に送達される、例えば、グラフトおよび灌流バルーン等のような医療装置と共に利用することも可能である。
【0119】
抗増殖剤および抗凝固剤の利用に加えて、抗炎症薬もこれらと組み合わせて利用できる。このような組み合わせの一例として、ラパマイシン(rapamycin)、クラドリビン(cladribine)、ビンクリスチン(vincristine)、タクソール(taxol)または酸化窒素ドナー等のような抗増殖剤、およびヘパリン(heparin)等のような抗凝固剤を伴う、デキサメタゾン(dexamethasone)等のような抗炎症性のコルチコステロイド(corticosteroid)の添加が考えられる。このような組み合わせによる治療方法はさらに良好な治療効果を与えると考えられ、すなわち、何れか一方の薬剤のみにより生じると考えられる効果よりも、増殖の度合いが低下し、炎症、すなわち、増殖に対応する刺激の度合いが低下する。抗増殖剤、抗凝固剤および抗炎症薬を含むステントを、損傷した脈管に送達することにより、局所的な平滑筋細胞の増殖の度合いが制限され、増殖に対応す刺激すなわち炎症が減少して、凝固作用も低下するので、ステントの再狭窄の制限作用が高められるという付加的な治療上の有益性が得られる。
【0120】
本発明の別の例示的な実施形態においては、増殖因子、抑制因子またはサイトカイン信号変換抑制因子、例えば、ラス(ras)抑制因子、R115777またはP38キナーゼ抑制因子、RWJ67657またはチロシン・キナーゼ抑制因子、例えば、チルホスチン(tyrphostin)を、抗増殖剤、例えば、タクソール(taxol)、ビンクリスチン(vincristine)またはラパマイシン(rapamycin)と組み合わせることにより、平滑筋細胞の増殖を異なるメカニズムにより抑制可能にしている。あるいは、抗増殖剤、例えば、タクソール(taxol)、ビンクリスチン(vincristine)またはラパマイシン(rapamycin)を細胞外基質合成の抑制因子、例えば、ハロフジノン(halofuginone)と組み合わせることも可能であると考えられる。前述の場合に、異なるメカニズムにより作用する薬剤が相乗的に作用して平滑筋細胞の増殖および脈管過形成を減少できると考えられる。本発明はまた2種類以上の前記のような薬剤または薬物の別の組み合わせにも及ぶことも意図されている。前述のように、前記の薬剤、作用薬または化合物は全身系的に投与可能であり、薬剤送達カテーテルを介して局所的に送達でき、あるいは、ステントの表面からの送達のために配合可能であり、あるいは、全身系的および局所的な治療の組み合わせとして供給できる。
【0121】
抗増殖剤、抗炎症薬および抗凝固剤に加えて、他の薬物、薬剤または化合物を医療装置と関連して利用することができる。例えば、免疫抑制剤を単独または前記のような別の薬物、薬剤または化合物と組み合わせて利用できる。また、プラスミドのようなウイルス性ベクターまたは非ウイルス性遺伝子ベクターにおける改変遺伝子(modified gene)(組換えDNAを含む核酸)等のような遺伝子治療送達機構もまた医療装置を介して局所的に導入できる。加えて、本発明は、細胞に基づく治療に利用することもできる。
【0122】
前述の薬物、薬剤、化合物および改変遺伝子の全てに加えて、通常において治療的または生物学的に活性ではない化学薬剤もまた本発明に関連して利用できる。これらの一般的にプロドラッグ(pro-drug)と呼ばれている化学薬剤は、生体に導入されると1種類以上のメカニズムにより生物学的に活性になる薬剤である。これらメカニズムは生体により供給される化合物の付加、または生体により供給される別の物質により生じる種々の物質による化合物の開裂を含む。一般的に、これらのプロドラッグは生体により、さらにその吸収性を高める。加えて、これらのプロドラッグはまた時間放出の付加的な測定手段を提供することもできる。
【0123】
前述のように、ラパマイシン(rapamycin)は脈管の傷害後の再狭窄の防止のために単独でまたは1種類以上の薬物、薬剤および/または化合物との組み合わせにおいて利用可能である。
【0124】
ヒストン・タンパク質はDNAのパッケージングおよび遺伝子の転写を補助する細胞クロマチンの一部である。幾種類かのヒストン・タンパク質が存在しており、これらはそれぞれアニオン性のDNAに対して相互作用できる正味の正の電荷を発現する。これらのヒストン・タンパク質はDNAが周囲に巻き付くヌクレオソームのサブユニットを形成する。アセチルトランスフェラーゼおよびデアセチラーゼのそれぞれの酵素によるアセチル化/脱アセチル化による前記ヒストンの化学的な改質、ならびにその他の翻訳後の改質は、これらのヒストン・タンパク質の形状、およびこれに続く、それぞれの転写酵素に対するDNAの接近の可能性を調整するために役立つ。休止細胞において、その遺伝子の転写は、少なくとも部分的に、DNAに結合するヒストン・タンパク質のアセチル化(転写オン)および脱アセチル化(転写オフ)の釣り合いにより調整される。それゆえ、これらのアセチル化および脱アセチル化の間の釣り合いに影響を及ぼすことは最終的に遺伝子の転写、およびこれに続く、細胞増殖に対して影響を及ぼす可能性があり、この理由は、増殖の経路が遺伝子の転写に相当に依存しているからである。このようなヒストン・デアセチラーゼはRPd3様タンパク質およびHda1様タンパク質の二つの総括的な種類を有している。
【0125】
利用可能である別の薬物、薬剤または化合物は別のヒストン・デアセチラーゼの抑制因子を含み、これらはトリコスタチンA(trichostatin A)、その類似体および誘導体ならびに類似の物質を含む。さらに、これらの物質はブチレート(butylate)、フェニルブチレート(phenyl butylate)およびバルプロエート(valproate)等のような短鎖の脂肪酸、トリコスタチン(trichostatins)、SAHAおよびその誘導体、オキサムフラチン(oxamflatin)、ABHA、スクリプテイド(scriptaid)、ピロキサミド(pyroxamide)、およびプロペナミド(propenamides)等のようなヒドロキサム酸(hydroxamic acids)、トラポキシン(trapoxins)、HC−トキシン(HC-toxin)、クラミドシン(chlamydocin)、ジヘテロペプチン(diheteropeptin)、WF−3161およびCyl−1およびCyl−2等のようなエポキシケトン含有の環状テトラペプチド、FR901228およびアピシジン(apicidin)等のような非エポキシケトン含有の環状テトラペプチド、MS−275(MS−27−275)、Cl−994およびその他のベンズアミド類似体等のようなベンズアミド、およびデプデシン(depudecin)および有機イオウ化合物等のような種々の雑多な構造を含む。
【0126】
トリコスタチンA(trichostatin A)は細胞周期の主にG1期およびG2期における腫瘍細胞の増殖を抑制する一つのヒストン・デアセチラーゼ抑制因子である。細胞周期G1期およびG2期は遺伝子の転写によりそれぞれ特徴付けられる段階である。すなわち、このトリコスタチンA(trichostatin A)の抗増殖性の活性および細胞周期の段階における抑制の特性は、低いナノモル程度の範囲内における抗増殖性のIC50を伴う腫瘍細胞系において主に特徴付けられている(ウー(Woo)他、ジャーナル・オブ・メデイカル・ケミストリー(J. Med. Chem),45巻,p.2877−2885,2002年)。加えて、このトリコスタチンA(trichostatin A)は抗脈管形成性の活性を有することが示されている(デロアンネ(Derroanne)他,オンコジーン(Oncogene),21(3)巻,p.427−436,2002年)。
【0127】
生体外の細胞培養の調査において、トリコスタチンA(trichostatin A)は人間の冠状動脈平滑筋細胞の増殖を完全に抑制することが示されており、約6nMの抗増殖性のIC50を有している。図51は細胞培養調査におけるトリコスタチンA(trichostatin A)による冠状動脈平滑筋細胞の抑制のグラフである。それゆえ、局所的に送達されるトリコスタチンA(trichostatin A)は脈管の傷害後における新内膜の形成を実質的に抑制することができる。
【0128】
前述のとおり、ラパマイシン(rapamycin)は米国特許第3,929,992号に開示されているようにストレプトミセス属ハイグロスコピカスにより生成される大環状トリエン型の抗生物質である。このラパマイシン(rapamycin)は生体内における脈管の平滑筋細胞の増殖を抑制することが知られている。従って、ラパマイシン(rapamycin)は、特に、生物学的にまたは機械的に媒介される脈管の損傷に続いて、あるいは、哺乳類動物を脈管損傷に罹りやすくすると考えられる条件下において、哺乳類動物の内膜平滑筋細胞の過形成、再狭窄および脈管閉塞の治療に利用することができる。また、ラパマイシン(rapamycin)は平滑筋細胞の増殖を抑制するように機能し、脈管壁部の再内皮化を妨げない。
【0129】
前記ラパマイシン(rapamycin)は多数のメカニズムにより平滑筋細胞の増殖を抑制するために機能する。加えて、ラパマイシン(rapamycin)は、例えば、炎症等の脈管の傷害により生じる別の作用も減少させる。このようなラパマイシン(rapamycin)の作用のメカニズムおよび種々の機能が以下において詳細に説明されている。なお、この出願を通して用いられているラパマイシン(rapamycin)は、ラパマイシン(rapamycin)と、FKBP12に結合して、以下において詳細に説明されているような、ラパマイシン(rapamycin)と同一の薬理学的な特性を有するラパマイシン(rapamycin)の類似体、誘導体および同属体と、を含むと考えることができる。
【0130】
前記ラパマイシン(rapamycin)は、脈管形成術中に放出されるマイトジェン信号に応答して平滑筋の増殖に拮抗することにより、脈管の過形成を軽減する。細胞周期の後期のG1期における増殖因子およびサイトカインにより媒介される平滑筋増殖の抑制はラパマイシン(rapamycin)の作用の主要なメカニズムであると考えられる。しかしながら、ラパマイシン(rapamycin)はまた、全身系的に投与される場合に、T細胞の増殖および分化を阻止することも知られている。このことがラパマイシン(rapamycin)の免疫抑制活性およびグラフト拒絶反応を阻止する能力に対応する論拠である。
【0131】
新内膜の過形成の大きさおよび持続時間を減少するように作用する既知の抗増殖剤であるラパマイシン(rapamycin)の作用の原因になっている分子の状態はまだ解明されている途中である。しかしながら、ラパマイシン(rapamycin)は細胞の中に入り、FKBP12と呼ばれている高い親和力のサイトゾルタンパク質に結合することが知られている。さらに、これらのラパマイシン(rapamycin)およびFKBP12の複合体は「ラパマイシンの(rapamycin)哺乳類標的物(mammalian Target of Rapamycin)」またはTORと呼ばれているホスホイノシチド(PI)−3キナーゼに結合してこれを抑制する。このTORは平滑筋細胞およびTリンパ球におけるマイトジェン増殖因子およびサイトカインに付随する下流領域のシグナリング現象を媒介することにおいて一つの重要な役割を果たすタンパク質キナーゼである。これらの現象はp27のホスホリル化、p70s6キナーゼのホスホリル化、およびタンパク質の翻訳における一つの重要な調節因子である4BP−1のホスホリル化を含む。
【0132】
ラパマイシン(rapamycin)が新内膜の過形成を抑制することにより再狭窄を減少することが認識されている。しかしながら、ラパマイシン(rapamycin)は再狭窄の別の主要な要素、すなわち、陰性の再造形も抑制する可能性があることも立証されている。この再造形はそのメカニズムが明らかに理解されていないが、一般に人間の体内において約3ヶ月〜6ヶ月の期間において、経時的に外弾性板の収縮および内腔面積の減少を生じる一つの過程である。
【0133】
陰性または収縮性の脈管の再造形は、その過程を遮断するためのステントが存在しない病巣の部位における狭窄の直径の割合として脈管造影により定量化できる。この結果、その病巣において遅発性の内腔の損失が無ければ、陰性の再造形が抑制されていることが推断できる。また、再造形の程度を決定する別の方法は脈管内超音波法(IVUS)による病巣内における外弾性板の面積の測定を含む。この脈管内超音波法は外弾性板ならびに脈管の内腔を画像処理できる一つの技法である。この場合に、術後の時点から4ヶ月〜12ヶ月の追跡における、ステントに対する近位側および遠位側の外弾性板の変化が再造形の変化を反映する。
【0134】
前記のようなラパマイシン(rapamycin)が再造形において作用を及ぼす証拠がラパマイシン(rapamycin)により被覆されたステントが病巣内およびそのステント内における再狭窄の極めて低い程度を示している人間のインプラントの調査により得られている。病巣内の各パラメータは通常においてステントのいずれかの側、すなわち、近位側および遠位側の約5ミリメートルにおいて測定される。さらに、ステントはバルーンの拡張により影響を受けているそれぞれの領域における再造形を調整するために存在していないので、ラパマイシン(rapamycin)が脈管の再造形を阻止していることが推断できる。
【0135】
以下の表1におけるデータは病巣内における狭窄の直径の割合が12ヶ月目においてもラパマイシン(rapamycin)により処理されたグループにおいて低く保たれていることを示している。従って、これらの結果はラパマイシン(rapamycin)が再造形を減少すると言う仮説を支持している。
【表1】


【0136】
ラパマイシン(rapamycin)による陰性の再造形における減少を支持する別の証拠が、以下の表2において示されているような、人体内における最初の臨床プログラムから得られた脈管内超音波法のデータから得られる。
【表2】


【0137】
前記のデータは、陰性の再造形の抑制がラパマイシン(rapamycin)被覆型ステントにより処理された脈管内において生じることを示している、脈管の面積の最小限の損失が近位側または遠位側において存在していることを示している。
【0138】
ステント以外には、脈管の再造形の問題に対する有効な解決法が存在していない。従って、ラパマイシン(rapamycin)は脈管の再造形の現象を調整するための生物学的な手法と考えることができる。
【0139】
前記ラパマイシン(rapamycin)は幾つかの様式で陰性の再造形を減少するために作用すると仮定できる。傷害に応答する脈管壁部内の線維芽細胞の増殖を特定的に遮断することにより、ラパマイシン(rapamycin)は脈管の瘢痕組織の形成を減少すると考えられる。また、ラパマイシン(rapamycin)はコラーゲン形成または代謝に関与する主要なタンパク質の翻訳に作用を及ぼすと考えられる。
【0140】
前記の状況において用いられているラパマイシン(rapamycin)は、ラパマイシン(rapamycin)と、FKBP12に結合してラパマイシン(rapamycin)と同一の薬理学的な特性を有する全ての類似体、誘導体および同族物と、を含む。
【0141】
好ましい実施形態において、ラパマイシン(rapamycin)は再狭窄を減少または阻止する一つの手段としてバルーン脈管形成術後における動脈部分の陰性の再造形を調整するために局所送達装置により送達される。この場合に、任意の送達装置が利用可能であるが、この装置はラパマイシン(rapamycin)を溶出または放出する被膜またはシースを含むステントを備えていることが好ましい。このような装置のための送達システムは投与者により調整される所与の速度でラパマイシン(rapamycin)を送達する局所注入カテーテルを含むことができる。また、別の実施形態において、注入針を利用することが可能である。
【0142】
ラパマイシン(rapamycin)はまた、陰性の再造形を抑制するために十分である脈管組織のレベルを達成するように、約7日〜45日の範囲の期間にわたりラパマイシン(rapamycin)を送達するための経口の投薬形態または長期間の注入可能な貯蔵形態またはパッチを用いて、全身系的に送達することも可能である。このような治療は、ステントを伴うか伴わない選択的な脈管形成術の前の数日間にわたり投与される場合において、再狭窄を減少または阻止するために用いられる。
【0143】
ブタおよびラビットの各モデルにおいて発生したデータは、所与の範囲の投薬量(35〜430μg/15〜18mmの冠状動脈ステント)における非侵食性の高分子ステント被膜からの脈管壁部内へのラパマイシン(rapamycin)の放出が以下の表3において示されているように新内膜の過形成において最大で50〜55%の減少を生じること、を示している。この減少は約28日〜30日において最大になり、以下の表4において示されているように、一般的にブタのモデルにおいては90日〜180日の範囲内までは持続しない。
【表3】


【表4】


【0144】
非侵食性の高分子ステント被膜からの人間の脈管壁部内へのラパマイシン(rapamycin)の放出は、前記のような各動物体の脈管壁部に対して比べた場合に、ステント内における新内膜の過形成の減少の大きさおよび持続に関して優れた結果を示している。
【0145】
前記と同一の高分子基材を用いて各動物体において調査した場合と同一の用量範囲内においてラパマイシン(rapamycin)を含有しているラパマイシン被覆型ステントを植え込まれた人体は、上述のように、新内膜の減少における大きさおよび持続時間に基づいて、各動物体において観察された量よりもはるかに大きな新内膜の過形成における減少を示している。この人体のラパマイシン(rapamycin)に対する臨床的な応答は、脈管造影法および脈管内超音波法による測定の両方により、ステントの内側の新内膜の過形成の実質的に全体的な排除を示している。さらに、これらの結果は以下の表5において示されているように少なくとも1年にわたり持続されている。
【表5】


【0146】
ラパマイシン(rapamycin)はステントにより送達される場合に少なくとも1年間にわたり持続するステント内の新内膜の過形成において著しい減少を生じることにより人体において予想外の有益性を示している。この人体における有益性の大きさおよび持続時間は動物体のモデルのデータからは予想されない値である。なお、この状況において用いられているラパマイシン(rapamycin)は、ラパマイシン(rapamycin)およびFKBP12に結合してラパマイシン(rapamycin)と同一の薬理学的な諸特性を有する全ての類似体、誘導体および同属体を含む。
【0147】
前記の結果は多数の要因によると考えられる。例えば、人体におけるラパマイシン(rapamycin)の比較的に大きな有効性は、脈管形成術における動物体モデルの病態生理学に比べて人間の脈管の病巣の病態生理学に対するその作用のメカニズムにおける比較的に大きな感応性によると考えられる。加えて、ステントに供給される用量および薬物の放出を調整するポリマー被膜の組み合わせがその薬物の有効性において重要である。
【0148】
前述のように、ラパマイシン(rapamycin)は脈管形成による障害において放出されるマイトジェン信号に応答する平滑筋の増殖に拮抗することにより脈管の過形成を減少する。また、ラパマイシン(rapamycin)が全身系的に投与される場合にT細胞の増殖および分化を阻止することも知られている。さらに、ラパマイシン(rapamycin)が持続された期間(約2〜6週間)にわたり少ない用量でステントから投与される場合にその脈管壁の中に局所的な炎症性の作用を及ぼすことも確認されている。このような局所的な抗炎症性の有益性は甚大であり予想外である。前記平滑筋の抗増殖作用との組み合わせにおいて、ラパマイシン(rapamycin)の二重の作用の様式はその例外的な効力の原因になっていると考えられる。
【0149】
従って、局所用の装置のプラットホームから送達されるラパマイシン(rapamycin)はその抗炎症性の作用と平滑筋の抗増殖作用との組み合わせにより新内膜の過形成を減少させる。本明細書において用いられているラパマイシン(rapamycin)は、ラパマイシン(rapamycin)およびFKBP12に結合してラパマイシン(rapamycin)と同一の薬理学的な特性を有する全ての類似体、誘導体および同属体を含む。また、前記局所用の装置のプラットホームはステント被膜、ステント・シース、グラフトおよび局所薬物注入用のカテーテルまたは多孔質のバルーンまたは任意のその他の薬物、薬剤または化合物の原位置におけるまたは局所的な送達のための適合な手段を含む。
【0150】
前記ラパマイシン(rapamycin)の抗炎症性の作用は以下の表6において示されているように一つの実験によるデータにおいて明らかであり、この場合に、一つのステントから送達されるラパマイシン(rapamycin)が一つのステントから送達されるデキサメタゾン(dexamethasone)に対して比較されている。このデキサメタゾン(dexamethasone)は、一つの有効なステロイド性抗炎症薬であり、基準物質として用いられている。このデキサメタゾン(dexamethasone)は炎症の評価点を減少することができるが、ラパマイシン(rapamycin)は炎症の評価点を減少することにおいてデキサメタゾン(dexamethasone)よりもさらに有効である。加えて、ラパマイシン(rapamycin)はデキサメタゾン(dexamethasone)とは異なり新内膜の過形成を著しく減少させる。
【表6】


【0151】
ラパマイシン(rapamycin)はまたステントから送達される場合に脈管組織内におけるサイトカインの量を減少させることも知られている。図75におけるデータはラパマイシン(rapamycin)が脈管壁部内の単核細胞の走化性タンパク質(MCP−1)の量の減少において極めて有効であることを示している。このMCP−1は脈管の傷害中に合成される炎症前/走化性サイトカインの一例である。このMCP−1における減少は、炎症前の媒体の発現の減少におけるラパマイシン(rapamycin)の有益な作用を示しており、ステントから局所的に送達されるラパマイシン(rapamycin)の抗炎症性の作用の原因になっている。さらに、傷害に応答する脈管の炎症が、新内膜の過形成の進展に対する主要な原因であることが認識されている。
【0152】
ラパマイシン(rapamycin)は脈管の中における局所的な炎症性の現象を抑制することが示されていると考えられるので、このことにより新内膜化の抑制におけるラパマイシン(rapamycin)の予想外の優秀性が説明できると考えられる。
【0153】
前述のように、ラパマイシン(rapamycin)はT細胞増殖の阻止、陰性の再造形の抑制、炎症の減少、および平滑筋細胞増殖の阻止等のような要望されている作用を生じるために多数の水準において機能する。これらの機能の正確なメカニズムはこれまでに完全には知られていないが、今までに確認されているメカニズムを拡張することができる。
【0154】
ラパマイシン(rapamycin)の調査により、細胞周期の遮断による平滑筋細胞増殖の阻止が、新内膜の過形成の減少における有効な手段であることが示唆されている。すなわち、術後の内腔の損失および新内膜プラークの容積における劇的で持続した減少が、ステントにより局所的に送達されるラパマイシン(rapamycin)を受容している患者において観察されている。本発明は細胞周期を抑制して毒性を生じることなく新内膜の過形成を減少するためのさらに付加的な手法を含むために、前記ラパマイシン(rapamycin)のメカニズムを発展させている。
【0155】
前記の細胞周期は、細胞複製の過程を調整する現象の厳密に調整されている生化学的なカスケードである。細胞が適当な増殖因子により刺激される場合に、これらの細胞は細胞周期におけるG0期(休止期)からG1期に移る。DNA複製(S期)の前のG1期における細胞周期の選択的な抑制は、その細胞周期における比較的に後の期、すなわち、S期、G2期またはM期において作用する療法と比べた場合に、抗増殖効力を維持しながら細胞の保存および成育可能性の治療的な利点を提供することができる。
【0156】
従って、体内における血管およびその他の導管の中の内膜の過形成の防止は、細胞周期のG1期において選択的に作用する細胞周期抑制因子を用いることにより達成できる。これらの細胞周期のG1期における抑制因子は小形分子、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチドまたはDNAシーケンスとすることができる。さらに具体的に言えば、これらの薬物または薬剤は、特にcdk2およびcdk4における、G1期を経過する細胞周期の進行に関連するサイクリン依存キナーゼ(cdk’s)の抑制因子を含む。
【0157】
前記細胞周期のG1期において選択的に作用する薬物、薬剤または化合物の例は、サイクリン依存キナーゼの拮抗作用により後期G1期における細胞周期を抑制することが分かっているフラボピリドール(flavopiridol)およびその構造類似体等のような小形分子を含む。さらに、サイクリン依存キナーゼを選択的に抑制するP27kip1と呼ばれる場合のあるP27と呼ばれている内因性のキナーゼ抑制タンパク質kip の効力を向上する治療剤が利用できる。この物質は、P27を生成する遺伝子をトランスフェクションすることのできる遺伝子ベクターを含む、P27の分解を遮断するかP27の細胞生成を増進する小形分子、ペプチドおよびタンパク質、を含む。例えば、タンパク質キナーゼを抑制することにより前記の細胞周期を遮断するスタウロスポリン(staurosporin)および関連の小形分子が利用可能である。また、タンパク質キナーゼを選択的に抑制して、PDGFおよびFGF等のような広範囲の増殖因子に応答して平滑筋内における信号の導入に対して拮抗作用するチロホスチン(tyrophostin)の種類を含むタンパク質キナーゼ抑制因子も利用可能である。
【0158】
前記の薬物、薬剤または化合物はいずれも全身系的に、例えば、口内、静脈内、筋肉内、皮下、鼻腔内または皮膚内に、あるいは、局所的に、例えば、ステントの被膜、ステントの被覆物、または局所的な送達カテーテルのいずれかにより投与できる。加えて、前記の薬物または薬剤は3日〜8週間の範囲の期間にわたり標的の組織に接触した状態にこれらの薬物または薬剤を維持すると言う目的により高速放出または低速放出のためのいずれにも配合することができる。
【0159】
前述のように、前記のラパマイシン(rapamycin)およびFKPB12の複合体はラパマイシン(rapamycin)の哺乳類標的物またはTORと呼ばれているホスホイノシチド(PI)−3キナーゼに結合してこれを抑制する。この場合に、活性部位抑制因子またはアロステリックな調節因子、すなわち、アロステリックに調節する間接的な抑制因子として機能する前記TORの触媒的な活性の拮抗薬は、ラパマイシン(rapamycin)の作用に類似しているがFKBP12の必要性を回避できると考えられる。また、前記TORの直接的な抑制因子の潜在的な利点は、比較的に良好な組織内への侵入および比較的に良好な物理的/化学的な安定性を含む。加えて、別の潜在的な利点は、異なる組織内において存在する可能性のあるTORの多数のイソ型の一つに対応する拮抗薬の特異性による比較的に高い選択性および特異性、および比較的に高い薬物の効力および/または安全性につながる潜在的に異なる範囲の下流域における作用を含む。
【0160】
前記の抑制因子は合成または天然に誘導されているいずれかの生成物である小形の有機分子(分子量:約<1000)とすることができる。ウォルトマニン(wortmanin)は前記の種類のタンパク質の機能を抑制する物質であると言える。この物質はまた一つのペプチドまたはオリゴヌクレオチドのシーケンスと考えることもできる。この抑制因子は全身系的に(口内、静脈内、筋肉内、皮下、鼻腔内、または皮膚内に)、あるいは、局所的に(ステントの被膜、ステントの被覆物、局所薬物送達カテーテルにより)送達することができる。例えば、前記抑制因子は非侵食性の高分子ステント被膜により人体の脈管壁部の中に放出できる。加えて、この抑制因子は3日〜8週間の範囲の期間にわたり標的の組織に接触した状態にラパマイシン(rapamycin)、その他の薬物、薬剤または化合物を維持すると言う目的を伴って高速放出または低速放出のためのいずれにも配合することができる。
【0161】
前述のように、バルーン脈管形成術を伴う冠状動脈ステントの植え込みは急性の脈管の閉鎖を治療することにおいて極めて効果的であり、再狭窄の危険性を減少できる。脈管内超音波の研究(ミンツ(Mintz)他,1996年)は冠状動脈ステント処理が脈管の狭窄を効果的に防止すること、およびステント植え込み後の術後内腔損失の多くがプラークの増殖により、おそらくは新内膜の過形成に関連していることを示唆している。この冠状動脈ステント処理後の術後内腔損失は従来のバルーン脈管形成術後に観察される損失のほぼ2倍である。従って、ステントが再狭窄の過程の少なくとも一部分を阻止する限りにおいて、ステントと組み合わされた、多数のメカニズムにより炎症および増殖を阻止するか増殖を阻止する薬物、薬剤または化合物の使用は脈管形成術後の再狭窄に対する最も有効な治療方法を提供する可能性がある。
【0162】
さらに、ステント等のようなラパマイシン(rapamycin)溶出性の脈管装置を受容しているインスリン(insulin)を補給されている糖尿病患者は、それぞれの正常なまたはインスリン(insluin)を補給されていない糖尿病患者よりも高い再狭窄の発生率を示す可能性がある。従って、種々の薬物の組み合わせ物が有益になる可能性がある。
【0163】
ステントからの薬物、薬剤または化合物の局所的な送達は以下の利点、すなわち、ステントおよび薬物、薬剤または化合物の支持骨格性の作用による脈管の反跳および再造形の防止、および新内膜の過形成の多数の要素の抑制という利点、を有している。また、ステント処理した冠状動脈に対する薬物、薬剤または化合物の局所的な投与は、さらに別の治療における有益性も有することができる。例えば、全身系的な投与、減少された全身系的な毒性、および1回の治療および投与の容易さ、により生じると考えられる濃度よりも高い組織内の濃度が達成可能になる。薬物療法のさらに別の有益性は治療の化合物の用量を減少して、それぞれの毒性を制限すると共に、再狭窄の減少を達成できることであると考えられる。
【0164】
ラパマイシン(rapamycin)およびトリコスタチンA(trichostatin A)は細胞増殖に影響を及ぼす異なる分子レベルのメカニズムを通して作用するので、これらの物質が、薬物溶出式のステント等のような医療装置において組み合わされる場合に、それぞれの異なる多様なメカニズムにより平滑筋および免疫細胞の増殖(炎症性細胞の増殖)の両方をダウンレギュレーションすることによりそれぞれの抗再狭窄性の活性の効力を高めることができる。このようなトリコスタチンA(trichostatin A)によるラパマイシン(rapamycin)の抗増殖性の活性の増強は、脈管再生およびその他の脈管の外科処置中の脈管の傷害後の抗再狭窄性の作用における向上、およびこの抗再狭窄性の作用に対して必要とされるそれぞれの物質の量の減少を意味すると考えられる。
【0165】
トリコスタチンA(trichostatin A)は本明細書において説明されている技法および材料のいずれかを利用して本明細書において説明されている医療装置のいずれかに固着させることができる。例えば、このトリコスタチンA(trichostatin A)は、ポリマーを伴うか伴わずに、ステントに固着させることができ、あるいは、カテーテルに基づく送達システムにより局所的に送達できる。また、このトリコスタチンA(trichostatin A)は人間の冠状動脈平滑筋の細胞増殖の実質的に完全で有効な遮断により、局所的な脈管の適用により新内膜の形成を実質的に遮断できる。前記のラパマイシン(rapamycin)とトリコスタチンA(trichostatin A)との組み合わせ、ならびにその薬理学的な種類に含まれる別の物質は、ラパマイシン(rapamycin)の単独よりもさらに再狭窄/新内膜の肥圧化に対して有効であると考えられる新しい治療用の組み合わせを表している。加えて、この組み合わせの異なる用量はラパマイシン(rapamycin)およびトリコスタチンA(trichostatin A)の単純な付加的な作用よりも高い新内膜の増殖の抑制における有益性を生じることができる。さらにこのラパマイシン(rapamycin)とトリコスタチンA(trichostatin A)との組み合わせ、はぜい弱性アテローム硬化症のプラーク等のような別の心臓脈管の病気に対して有効であると考えられる。
【0166】
さらに別の代替的で例示的な実施形態において、ラパマイシン(rapamycin)はミコフェノール酸(mycophenolic acid)との組み合わせにおいて利用可能である。ラパマイシン(rapamycin)と同様に、ミコフェノール酸(mycophenolic acid)は抗生物質であり、抗炎症性で免疫抑制性の物質である。ラパマイシン(rapamycin)は、既に述べたように、ラパマイシン(rapamycin)の哺乳類標的物の抑制を通して細胞周期のG1期における細胞を制止することによりリンパ球の増殖を減少するように作用する。このラパマイシン(rapamycin)の哺乳類標的物に対するラパマイシン(rapamycin)の下流側の作用は細胞周期に付随するタンパク質キナーゼの後続の活性を遮断する。これに対して、ミコフェノール酸(mycophenolic acid)はプリン生合成において必要な酵素であるイノシン・モノホスファターゼ・デヒドロゲナーゼの抑制を通して細胞周期のS期における免疫細胞の増殖を抑制する。これらの免疫抑制性および抗炎症性の作用に加えて、ラパマイシン(rapamycin)およびミコフェノール酸(mycophenolic acid)はそれぞれ人間の冠状動脈平滑筋細胞の増殖の有効な抑制因子である。
【0167】
前記のラパマイシン(rapamycin)およびミコフェノール酸(mycophenolic acid)は細胞周期の異なる段階における細胞増殖に影響を及ぼす異なる分子レベルのメカニズムを通してそれぞれ作用するので、これらの物質が、本明細書において定められているような薬物溶出式のステントまたは任意の他の医療装置において組み合わされる場合に、異なるメカニズムにより平滑筋細胞および免疫細胞の増殖の両方をダウンレギュレーションすることにより抗再狭窄活性を互いに高めることができる。
【0168】
図52において、2%のウシ胎児血清により刺激された非同調培養のヒト冠状動脈平滑筋細胞における異なる濃度のミコフェノール酸(mycophenolic acid)を伴うラパマイシン(rapamycin)の抗増殖活性がグラフの様式で示されている。これらの多数の曲線はゼロから1000ナノモルの濃度の範囲における種々のミコフェノール酸(mycophenolic acid)の濃度をそれぞれ示している。この図52において示されているように、ラパマイシン(rapamycin)により処理されている細胞に対するミコフェノール酸(mycophenolic acid)の添加は、その抗増殖性のラパマイシン(rapamycin)の投与量の応答曲線を左側および上方にずらしており、ミコフェノール酸(mycophenolic acid)が冠状動脈平滑筋細胞におけるラパマイシン(rapamycin)の抗増殖活性を高めていることを示している。この培養した冠状動脈平滑筋細胞において観察された効力の増加は好ましくは脈管の傷害後における抗再狭窄の効力の向上、および所望の抗再狭窄作用を達成するためのいずれかの物質の必要とされる量の減少を意味する。
【0169】
図53はブタの薬物速度調査における、ラパマイシン(rapamycin)と、ミコフェノール酸(mycophenolic acid)と、ポリマーとの組み合わせからのラパマイシン(rapamycin)の生体内における放出速度のグラフ図である。この調査において、ラパマイシン(rapamycin)およびミコフェノール酸(mycophenolic acid)はEVA/BMAのポリマーの基部被膜の中に組み込まれている。この基部被膜の全重量は600マイクログラムであり、ラパマイシン(rapamycin)およびミコフェノール酸(mycophenolic acid)は共に基部被膜の30重量%を占めている(180マイクログラムがラパマイシン(rapamycin)であり、180マイクログラムがミコフェノール酸(mycophenolic acid)であり、240マイクログラムがEVA/BMAである)。この場合に、曲線5302は上部被膜を用いない場合の基部被膜からのラパマイシン(rapamycin)の放出を示している。また、曲線5304は100マイクログラムのBMAの上部被膜を用いた場合の基部被膜からのラパマイシン(rapamycin)の放出を示している。さらに、曲線5306は200マイクログラムのBMAの上部被膜を用いた場合の基部被膜からのラパマイシン(rapamycin)の放出を示している。この結果、前記BMAの上部被膜は基部被膜からのラパマイシン(rapamycin)の放出を遅らせており、このことはさらに比較的に高い薬物の放出制御のための一つのメカニズムを与えている。
【0170】
図54はブタの薬物速度調査における、ラパマイシン(rapamycin)と、ミコフェノール酸(mycophenolic acid)と、ポリマーとの組み合わせからのミコフェノール酸(mycophenolic acid)の生体内における放出速度のグラフ図である。この調査において、ラパマイシン(rapamycin)およびミコフェノール酸(mycophenolic acid)はEVA/BMAのポリマーの基部被膜の中に組み込まれている。この基部被膜の全重量は600マイクログラムであり、ラパマイシン(rapamycin)およびミコフェノール酸(mycophenolic acid)は共に基部被膜の30重量%を占めている(180マイクログラムがラパマイシン(rapamycin)であり、180マイクログラムがミコフェノール酸(mycophenolic acid)であり、240マイクログラムがEVA/BMAである)。この場合に、曲線5402は上部被膜を用いない場合の基部被膜からのミコフェノール酸(mycophenolic acid)の放出を示している。また、曲線5404は100マイクログラムのBMAの上部被膜を用いた場合の基部被膜からのミコフェノール酸(mycophenolic acid)の放出を示している。さらに、曲線5406は200マイクログラムのBMAの上部被膜を用いた場合の基部被膜からのミコフェノール酸(mycophenolic acid)の放出を示している。この結果、ラパマイシン(rapamycin)の薬物速度調査と同様に、前記BMAの上部被膜は基部被膜からのミコフェノール酸(mycophenolic acid)の放出を遅らせており、このことはさらに比較的に高い薬物の放出制御のための一つのメカニズムを与えている。しかしながら、ミコフェノール酸(mycophenolic acid)はラパマイシン(rapamycin)よりも短い持続時間において比較的に完全に溶出している。
【0171】
図55はラパマイシン(rapamycin)とミコフェノール酸(mycophenolic acid)との組み合わせからのラパマイシン(rapamycin)の生体外における放出速度のグラフ図である。この調査において、ラパマイシン(rapamycin)およびミコフェノール酸(mycophenolic acid)はEVA/BMAのポリマーの基部被膜の中に組み込まれている。この基部被膜の全重量は600マイクログラムであり、ラパマイシン(rapamycin)およびミコフェノール酸(mycophenolic acid)は共に基部被膜の30重量%を占めている(180マイクログラムがラパマイシン(rapamycin)であり、180マイクログラムがミコフェノール酸(mycophenolic acid)であり、240マイクログラムがEVA/BMAである)。なお、この生体外の試験はそれぞれの被膜について2回ずつ行なわれている。この場合に、曲線5502は上部被膜を用いない場合の基部被膜からのラパマイシン(rapamycin)の放出を示している。また、曲線5504は100マイクログラムのBMAの上部被膜を用いた場合の基部被膜からのラパマイシン(rapamycin)の放出を示している。さらに、曲線5506は200マイクログラムのBMAの上部被膜を用いた場合の基部被膜からのラパマイシン(rapamycin)の放出を示している。この結果、前記BMAの上部被膜は生体外の試験においても基部被膜からのラパマイシン(rapamycin)の放出を遅らせているが、この放出速度は生体内の試験よりも速い。
【0172】
図56はブタの薬物速度調査におけるラパマイシン(rapamycin)およびミコフェノール酸(mycophenolic acid)の両方の生体内における放出速度のグラフ図である。この調査において、ラパマイシン(rapamycin)およびミコフェノール酸(mycophenolic acid)はPVDFの上部被膜を伴うPVDFのポリマーの基部被膜の中に組み込まれている。この基部被膜の全重量は600マイクログラムであり、ラパマイシン(rapamycin)およびミコフェノール酸(mycophenolic acid)は基部被膜の2/3の重量%を同等に占めている。さらに、上部被膜は200マイクログラムである。この場合に、曲線5602はミコフェノール酸(mycophenolic acid)の放出速度を示しており、曲線5604はラパマイシン(rapamycin)の放出速度を示している。図から容易に分かるように、ラパマイシン(rapamycin)はミコフェノール酸(mycophenolic acid)の放出速度よりも遅い放出速度を有しており、このことはEVA/BMAの基部被膜およびBMAの上部被膜の場合に見られた結果と一致している。しかしながら、BMAの上部被膜を伴うEVA/BMAの基部被膜は前記の放出速度を遅らせると思われ、従って、PVDFの基部被膜およびPVDFの上部被膜よりも良好な放出速度または溶出速度の制御を行なうと考えられる。
【0173】
さらに別の代替的で例示的な実施形態において、ラパマイシン(rapamycin)がクラドリビン(cladribine)との組み合わせにおいて利用できる。クラドリビン(cladribine)(2−クロロデオキシアデノシン(2-chlorodeoxyadenosine)または2−CdA)はプリン・ヌクレオシドであるアデノシンの2−クロロ−2’デオキシ誘導体である。このクラドリビン(cladribine)は大部分の細胞において見られる2種類の細胞内アデニン・ヌクレオチド調節酵素の内の一つであるアデノシン・デアミナーゼによる変性に対して耐性を有している。さらに別の酵素の5’−ヌクレオチダーゼは異なる細胞型において可変の量で存在している(カールソン(Carson)他,1983年)。前記の細胞内酵素であるデオキシシチジン・キナーゼによるモノホスフェート誘導体に対する初期的なホスホリル化の後に、2−CdAは5’−トリホスフェート(2−CdATP)に変換され、この5’−トリホスフェート(2−CdATP)は正常なdATPの量よりも50倍に多くなることのできる量で蓄積する。従って、5’−ヌクレオチダーゼに対して高比率(>0.04)のデオキシシチジン・キナーゼを含有している白血球等のような細胞中においては、2−CdAおよびその後続の種々の代謝物質が種々の薬理学的な濃度で蓄積する傾向がある(カールソン(Carson)他,1983年)。さらに、このような多量のヌクレオシド・トリホスフェートは、細胞を速やかに分割する場合に酵素のリボヌクレオチド・レダクターゼを抑制して、DNA合成において必要とされるデオキシヌクレオチドの合成を阻止することが知られている。
【0174】
休止細胞において、2−CdATPはDNAの中に取り込まれて、一本鎖切断が生じる。さらに、このDNAにおける切断はポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼの活性化を生じ、この活性化によりNADおよびATPの枯渇および細胞代謝の破壊が生じる(カールソン(Carson)他,1986年、セト(Seto)他,1985年)。さらに、Ca2+/Mg2+依存性エンドヌクレアーゼの活性化は損傷したDNAを、プログラムされた細胞死(アポプトーシス)を生じるフラグメントに開裂する。これにより、2−CdAが休止および分割している細胞の両方に対して細胞毒になり得る(ボイトラー(Beutler)他,1992年)。クラドリビン(cladribine)は、再狭窄に付随する炎症過程において一つの役割を果たすことが知られている別の細胞型において、活性を示している。加えて、本明細書において示されているデータは、クラドリビン(cladribine)が当該クラドリビン(cladribine)について知られていなかった作用である平滑筋の細胞増殖を阻害する能力も有していること、を立証している(クラドリビン(cladribine)の実施例を参照されたい)。それゆえ、クラドリビン(cladribine)は動脈の障害および炎症の部位において生ずることが知られている白血球の蓄積の阻止、および脈管形成およびステントの植え込みにより生じる平滑筋の過形成の阻止を含む、治療作用の特異的な範囲を有する可能性がある。
【0175】
クラドリビン(cladribine)の実施例
細胞増殖を阻止するクラドリビン(cladribine)の能力を評価するために、人間の平滑筋または内皮細胞(クロネテイクス社(Clonetics)、ウォーカースビル、メリーランド州)を2000個の細胞/cm2 の密度(約3600個の細胞/ウェル)で接種して12個ウェル型のプレートのそれぞれの中に入れた後に、5%のウシ胎児血清(FCS)を含有している1.5mlの増殖培地により培養した。24時間後に、前記の増殖培地を変えて、10ng/mlの血小板由来型増殖因子AB(PDGF・AB、ライフ・テクノロジー社(LIFE Technologies))ならびに種々の濃度のクラドリビン(cladribine)(0.001〜10,000nM)を含有している新鮮な培地を3回にわたり各ウェルに加えた。その後、培地を3日後に新鮮なクラドリビン(cladribine)を含有している培地に交換した。さらに、6日目において、細胞をトリプシン処理することにより分離して細胞懸濁液を得て、軽く遠心処理することによりペレットにして、ノイバウアー(Neubauer)血球計システムを用いて手動により計数した。その後、細胞の生活能力をトリパン・ブルー除外処理により評価した。
【0176】
以下の表7は培養における人間の平滑筋および内皮細胞に関するクラドリビン(cladribine)の種々の試験濃度における抑制率を示している。この結果、クラドリビン(cladribine)は前記のモデル・システムにおける平滑筋および内皮の両方の細胞の増殖において濃度関連型の減少を示した。この場合に、平滑筋細胞の増殖および内皮細胞の増殖の抑制におけるIC50の値(ビヒクル処理した細胞の計数の50%に対する増殖の減少を生じるために必要とされる濃度)はそれぞれ23ナノモルおよび40ナノモルであった。従って、クラドリビン(cladribine)は内皮細胞の抑制因子としての効力に対して約2倍の効力を平滑筋細胞の抑制因子として有している。前記の両方のIC50の値は人間の単核細胞(カレラ(Carrera)他,ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(J. Clin. Invest.),86巻,p.1480−1488,1990年)および正常な骨髄、リンパ球およびリンパ芽球の細胞系(カールソン,D.A.(Carson, D.A.)他,ブラッド(Blood),62巻,p.737−743,1983年)に関してクラドリビン(cladribine)について報告されている抑制濃度の範囲内である。従って、末梢白血病の血液細胞増殖および骨髄細胞の抑制において有効であることが知られているクラドリビン(cladribine)の濃度は脈管平滑筋および内皮の細胞の増殖を阻害することにおいても有効である。それゆえ、クラドリビン(cladribine)はステントの植え込みに付随する内膜平滑筋の細胞増殖の抑制に治療において有効であると考えられる。
【表7】


【0177】
クラドリビン(cladribine)または2−クロロデオキシアデノシン(2-chlorodeoxyadenosine)はプリン系の代謝拮抗物質のプロドラッグであり、細胞内のホスホリル化を受けて増殖している細胞のDNAの中に取り込まれる。この物質はDNA鎖の切断を生じてDNA合成の抑制を行なう。また、このクラドリビン(cladribine)はG1/S期の中間における細胞を抑制できる。従って、クラドリビン(cladribine)は脈管平滑筋の細胞増殖を抑制して脈管再生処置に対して二次的な炎症細胞機能を抑制できる可能性がある。
【0178】
図58は2%のウシ胎児血清により刺激された非同調培養したヒト冠状動脈平滑筋細胞におけるクラドリビン(cladribine)の抗増殖活性を、グラフの形式で、示している。図示のように、クラドリビン(cladribine)は人間の冠状動脈平滑筋の細胞増殖を完全に抑制しており、約241ナノモルの抗増殖性のIC50を有している。それゆえ、クラドリビン(cladribine)は局所的に送達される場合に脈管の傷害後の新内膜形成を実質的に抑制できる可能性がある。
【0179】
ラパマイシン(rapamycin)およびクラドリビン(cladribine)は細胞周期の異なる段階において細胞増殖に影響を及ぼす異なる分子レベルのメカニズムを介して作用するので、これらの物質が薬物溶出式のステントまたは本明細書において定められている任意の別の医療装置において組み合わされる場合に、異なるメカニズムにより平滑筋細胞および免疫細胞の両方の増殖をダウンレギュレーションすることによりそれぞれの抗再狭窄の活性の効力を高めることができる。例えば、非同調培養した人間の冠状動脈平滑筋細胞の調査において、ラパマイシン(rapamycin)により処理された細胞にクラドリビン(cladribine)を添加すると、以下において詳細に説明されているように、抗増殖性のラパマイシン(rapamycin)の用量応答曲線が左側および上側にずれて、クラドリビン(cladribine)が冠状動脈平滑筋細胞におけるラパマイシン(rapamycin)の抗増殖活性の効力を実際に高めていることを示している。このようなラパマイシン(rapamycin)とクラドリビン(cladribine)との組み合わせは脈管の傷害後の抗再狭窄の効力を高めること、および抗再狭窄の効果を達成するためのいずれかの物質の必要とされる量を減少することのために利用できる。また、この組み合わせはラパマイシン(rapamycin)またはパクリタキセル(paclitaxel)により被覆されたステント等のような単一の薬物の治療プログラムに対して耐性を有している患者の部分母集団に対して特に関連づけることができる。
【0180】
図57において、2%のウシ胎児血清により刺激された非同調培養したヒト冠状動脈平滑筋細胞における変化した濃度のクラドリビン(cladribine)を伴うラパマイシン(rapamycin)の抗増殖活性がグラフの形式で示されている。この場合に、多数の曲線はゼロ〜900ナノモルの濃度の範囲のクラドリビン(cladribine)の種々の濃度を示している。図57において見られるように、ラパマイシン(rapamycin)により処理された細胞にクラドリビン(cladribine)を添加するとラパマイシン(rapamycin)の単独の抑制率が増大する。曲線5702はラパマイシン(rapamycin)のみの応答を示している。また、曲線5704は56.25ナノモルの濃度のクラドリビン(cladribine)との組み合わせにおけるラパマイシン(rapamycin)の応答を示している。また、曲線5706は112.5ナノモルの濃度のクラドリビン(cladribine)との組み合わせにおけるラパマイシン(rapamycin)の応答を示している。また、曲線5708は225ナノモルの濃度のクラドリビン(cladribine)との組み合わせにおけるラパマイシン(rapamycin)の応答を示している。また、曲線5710は450ナノモルの濃度のクラドリビン(cladribine)との組み合わせにおけるラパマイシン(rapamycin)の応答を示している。さらに、曲線5712は900ナノモルの濃度のクラドリビン(cladribine)との組み合わせにおけるラパマイシン(rapamycin)の応答を示している。図示のように、抑制率はクラドリビン(cladribine)の用量の増加に伴って実質的に増大している。
【0181】
図59は室温において25%エタノール/水の放出媒体の中に混入しているPVDF/HFP基部被膜の中における非無菌状態のクラドリビン(cladribine)の各被膜からのクラドリビン(cladribine)の生体外における放出速度のグラフ図である。この基部被膜は所与の比率のPVDF/HFP(85/15)およびクラドリビン(cladribine)を含有している。すなわち、クラドリビン(cladribine)は基部被膜の30%を占めている。一方、上部被膜も85/15の比率のPVDFおよびHFPを含有しているが、クラドリビン(cladribine)は含有していない。この場合に、曲線5902は基部被膜の重量が600マイクログラム(180マイクログラムがクラドリビン(cladribine))である場合のクラドリビン(cladribine)の放出速度を示している。また、曲線5904は基部被膜の重量が1800マイクログラム(540マイクログラムがクラドリビン(cladribine))である場合のクラドリビン(cladribine)の放出速度を示している。また、曲線5906は基部被膜の重量が600マイクログラム(180マイクログラムがクラドリビン(cladribine))および上部被膜の重量が100マイクログラムである場合のクラドリビン(cladribine)の放出速度を示している。また、曲線5908は基部被膜の重量が1800マイクログラム(540マイクログラムがクラドリビン(cladribine))および上部被膜が300マイクログラムである場合のクラドリビン(cladribine)の放出速度を示している。さらに、曲線5910は基部被膜の重量が600マイクログラム(180マイクログラムがクラドリビン(cladribine))および上部被膜が300マイクログラムである場合のクラドリビン(cladribine)の放出速度を示している。これらの種々の曲線から分かるように、上部被膜の重量または厚さの増加と共に、その被膜からのクラドリビン(cladribine)の放出速度が低下する。
【0182】
図60は室温において25%エタノール/水の放出媒体の中に混入している無菌状態のPVDF/HFP被膜からのクラドリビン(cladribine)の生体外における放出速度のグラフ図である。この場合に、曲線6002は上部被膜を用いていない場合の放出速度を示しており、曲線6004は上部被膜を用いている場合の放出速度を示している。この図から分かるように、3倍の上部被膜はクラドリビン(cladribine)の放出速度を劇的に低下させている。
【0183】
図61はヨークシャー・ブタの中に植え込みをしたコーディス・コーポレーション社(Cordis Corporation)から入手可能なBx・ベロシティ(Bx Velocity)(登録商標)ステントにおける高分子被膜からのクラドリビン(cladribine)の生体内における放出速度のグラフ図である。この基部被膜は合計の組み合わせの重量が1800マイクログラムである85/15の比率のPVDFおよびHFPおよびクラドリビン(cladribine)を含有している(クラドリビン(cladribine)が全体の重量の30%を占めている)。一方、上部被膜は85/15の比率のPVDF/HFPを含有しているが、クラドリビン(cladribine)は全く含有していない。また、この上部被膜の全重量は300マイクログラムである。この場合に、曲線6102により分かるように、最初の日以降、クラドリビン(cladribine)の溶出は著しく低下している。
【0184】
図62はブタの薬物速度調査におけるラパマイシン(rapamycin)と、クラドリビン(cladribine)と、ポリマーとの組み合わせからのラパマイシン(rapamycin)の生体内における放出速度のグラフ図である。この調査において、ラパマイシン(rapamycin)およびクラドリビン(cladribine)はEVA/BMA(50/50)のポリマーの基部被膜中に混入されている。さらに、この基部被膜はBx・ベロシティ(Bx Velocity)(登録商標)ステントに適用されてヨークシャー・ブタの体内に植え込みされている。この場合に、曲線6202は180マイクログラムのラパマイシン(rapamycin)と、180マイクログラムのクラドリビン(cladribine)と、240マイクログラムのEVA/BMAと、を含有している600マイクログラムの基部被膜、および200マイクログラムのBMAの上部被膜からのラパマイシン(rapamycin)の放出速度を示している。また、曲線6204は120マイクログラムのラパマイシン(rapamycin)と、120マイクログラムのクラドリビン(cladribine)と、360マイクログラムのEVA/BMAと、を含有している600マイクログラムの基部被膜、および200マイクログラムのBMAの上部被膜からのラパマイシン(rapamycin)の放出速度を示している。さらに、曲線6206は180マイクログラムのラパマイシン(rapamycin)と、90マイクログラムのクラドリビン(cladribine)と、330マイクログラムのEVA/BMAと、を含有している600マイクログラムの基部被膜、および200マイクログラムのBMAの上部被膜からのラパマイシン(rapamycin)の放出速度を示している。この結果、これらの高分子被膜からのラパマイシン(rapamycin)のそれぞれの放出速度は互いに実質的に類似している。
【0185】
図63はブタの薬物速度調査におけるラパマイシン(rapamycin)と、クラドリビン(cladribine)と、ポリマーとの組み合わせからのクラドリビン(cladribine)の生体内における放出速度のグラフ図である。この調査において、ラパマイシン(rapamycin)およびクラドリビン(cladribine)はEVA/BMAのポリマーの基部被膜中に混入されている。さらに、この基部被膜はBx・ベロシティ(Bx Velocity)(登録商標)ステントに適用されてヨークシャー・ブタの体内に植え込みされている。この場合に、曲線6302は180マイクログラムのラパマイシン(rapamycin)と、180マイクログラムのクラドリビン(cladribine)と、240マイクログラムのEVA/BMAと、を含有している600マイクログラムの基部被膜、および200マイクログラムのBMAの上部被膜からのクラドリビン(cladribine)の放出速度を示している。また、曲線6304は120マイクログラムのラパマイシン(rapamycin)と、120マイクログラムのクラドリビン(cladribine)と、360マイクログラムのEVA/BMAと、を含有している600マイクログラムの基部被膜、および200マイクログラムのBMAの上部被膜からのクラドリビン(cladribine)の放出速度を示している。また、曲線6306は180マイクログラムのラパマイシン(rapamycin)と、90マイクログラムのクラドリビン(cladribine)と、330マイクログラムのEVA/BMAと、を含有している600マイクログラムの基部被膜、および200マイクログラムのBMAの上部被膜からのクラドリビン(cladribine)の放出速度を示している。さらに、曲線6308はラパマイシン(rapamycin)を含まず、180マイクログラムのクラドリビン(cladribine)および400マイクログラムのEVA/BMAを含む600マイクログラムの基部被膜、および200マイクログラムのBMAの上部被膜からのクラドリビン(cladribine)の放出速度を示している。この結果、図63において示されているように、高分子のステント被膜からのある程度の制御または調整されたクラドリビン(cladribine)の溶出があるように思えるが、総じて、クラドリビン(cladribine)は図62に関連して示されている結果との対比から分かるようにラパマイシン(rapamycin)よりもさらに速く溶出すると結論付けることができる。一般に、上部被膜が厚くまたは重くなるほど、薬剤とは無関係に、溶出速度が遅くなると思われる。
【0186】
さらに別の代替的で例示的な実施形態において、ラパマイシン(rapamycin)との組み合わせにおけるトポテカン(topotecan)は脈管の傷害後の再狭窄を防ぐために利用可能である。ラパマイシン(rapamycin)はこのラパマイシン(rapamycin)の哺乳類標的物の抑制を通して細胞周期のG1期における細胞を制止することによりリンパ球および平滑筋細胞の増殖を減少するように作用する。このラパマイシン(rapamycin)の哺乳類標的物に対するラパマイシン(rapamycin)の下流側の作用により、細胞周期に付随するタンパク質キナーゼの後続の活性が遮断される。一方、トポテカン(topotecan)はトポイソメラーゼIの抑制を通してDNA合成に対して作用を及ぼすカンプトセシン(camptothecin)の類似体である。さらに、この抑制はDNAの二本鎖の分解物の蓄積および細胞周期のS期における細胞分割の制止を生じる。また、トポテカン(topotecan)は人間の冠状動脈平滑筋細胞の増殖を抑制することが示されている(ブレーム(Brehm)他,2000年)。
【0187】
カンプトセシン(camptothecin)は中国カンプトセカ(Chinese camptotheca)の木およびアジア・ノサポジテス(Asian nothapodytes)の木の樹皮において見られるキノリンに基づくアルカロイドである。これらのカンプトセシン(camptothecin)、アミノカンプトセシン(aminocamptothecin)、アメロゲンチン(amerogentin)、CPT−11(イリノテカン(irinotecan))、DX−8951fおよびトポテカン(topotecan)は全てDNAトポイソメラーゼIの抑制因子である。さらに、トポテカン(topotecan)、イリノテカン(irinotecan)およびカンプトセシン(camptothecin)は抗腫瘍薬と一般に呼ばれている薬品または物質の群に属しており、卵巣癌および特定種の肺癌を含む種々の形態の癌を治療するために利用されている。また、カンプトセシン(camptothecin)はその高い油溶性および低い水溶性により局所送達において特に有利と考えられる。すなわち、このような低い水溶性は薬物をその放出部位の近くにおいて比較的に長い作用時間にわたり保持するのに役立ち、細胞周期におけるより多くの細胞を潜在的に被覆することができる。また、高い油溶性は脂質の細胞膜の中への薬物の浸透を増大して有効性を高めることができる。
【0188】
前記のラパマイシン(rapamycin)およびトポテカン(topotecan)(およびその類似体のカンプトセシン(camptothecin)およびイリノテカン(irinotecan))は細胞周期の異なる段階においてその細胞増殖に影響を及ぼす異なる分子レベルのメカニズムを通してそれぞれ作用するので、これらの物質が、薬物溶出方式のステントまたは本明細書において定められているような任意の別の医療装置において組み合わされる場合に、異なる多数のメカニズムにより平滑筋の増殖および免疫細胞の増殖(炎症性の細胞の増殖)のダウンレギュレーションにより互いの抗再狭窄性の活性を増強することができる。また、同調培養した人間の冠状動脈平滑筋細胞の調査において、ラパマイシン(rapamycin)により処理された細胞にトポテカン(topotecan)を加えると、以下において詳細に説明されているように、抗増殖性のラパマイシン(rapamycin)の用量応答曲線が左側および上側にずれて、トポテカン(topotecan)およびその拡張におけるトポイソメラーゼI抑制因子の種類の中の別の物質の投与量が実際に冠状動脈平滑筋におけるラパマイシン(rapamycin)の抗増殖活性の効果を高めていることを示している。従って、このようなラパマイシン(rapamycin)とトポテカン(topotecan)との組み合わせは脈管の傷害後の抗再狭窄性の作用を高めて、その抗再狭窄性の作用を達成するために必要とされるいずれかの物質の量を減少するために利用できる。また、この組み合わせはラパマイシン(rapamycin)またはパクリタキセル(paclitaxel)により被覆されたステント等のような単一の薬物の治療プログラムに対して耐性を有している患者の部分母集団に対して特に関連づけることができる。
【0189】
図64において、2%のウシ胎児血清により刺激した同調培養したヒト冠状動脈平滑筋細胞における異なる濃度のトポテカン(topotecan)を伴うラパマイシン(rapamycin)の抗増殖作用がグラフの様式で示されている。多数の曲線は0〜300ナノモルの濃度の範囲のトポテカン(topotecan)の種々の濃度をそれぞれ示している。トポテカン(topotecan)は1マイクロモルまでの種々の濃度における別の細胞の生活能力のアッセイにおいて細胞毒性が無いことが知られている。図64において分かるように、ラパマイシン(rapamycin)により処理された細胞にトポテカン(topotecan)を添加すると、ラパマイシン(rapamycin)単独における抑制率が高まる。曲線6402はラパマイシン(rapamycin)のみの応答を示している。また、曲線6404は18.8ナノモルの濃度のトポテカン(topotecan)との組み合わせにおけるラパマイシン(rapamycin)の応答を示している。また、曲線6406は37.5ナノモルの濃度のトポテカン(topotecan)との組み合わせにおけるラパマイシン(rapamycin)の応答を示している。また、曲線6408は75ナノモルの濃度のトポテカン(topotecan)との組み合わせにおけるラパマイシン(rapamycin)の応答を示している。また、曲線6410は150ナノモルの濃度のトポテカン(topotecan)との組み合わせにおけるラパマイシン(rapamycin)の応答を示している。また、曲線6412は300ナノモルの濃度のトポテカン(topotecan)との組み合わせにおけるラパマイシン(rapamycin)の応答を示している。
【0190】
ラパマイシン(rapamycin)およびトポテカン(topotecan)、ならびにその他のトポイソメラーゼI抑制因子の組み合わせは一つの新規な治療上の組み合わせを提供することができ、この組み合わせはラパマイシン(rapamycin)単独よりも再狭窄/新内膜の肥圧化に対して作用効果が高くなり得る。従って、異なる投与量のラパマイシン(rapamycin)およびトポテカン(topotecan)、ならびにその他のトポイソメラーゼI抑制因子はラパマイシン(rapamycin)およびトポテカン(topotecan)の単純な添加作用よりも新内膜の増殖の抑制に対するさらに付加的な利得を生じる可能性がある。加えて、トポテカン(topotecan)、ならびにその他のトポイソメラーゼI抑制因子との組み合わせはぜい弱性のアテローム硬化症のプラーク等のような別の心臓脈管病の治療において有効になる可能性がある。
【0191】
前記のラパマイシン(rapamycin)およびトポテカン(topotecan)、ならびにその他のトポイソメラーゼI抑制因子の組み合わせはステントおよびカテーテルを含む多数の手段を介して標的の組織に送達できる。この薬物の組み合わせの送達はその所望の効果を達成するための異なる投与速度において達成することができ、以下においてさらに詳細に説明されているように、それぞれの薬物はそれぞれ異なる量の前記高分子基材の中に充填できる。
【0192】
さらに別の代替的で例示的な実施形態において、ラパマイシン(rapamycin)との組み合わせにおけるエトポシド(etoposide)は脈管の傷害後の再狭窄を予防するために利用可能である。ラパマイシン(rapamycin)はこのラパマイシン(rapamycin)の哺乳類標的物の抑制を通して細胞周期のG1期における細胞を制止することにより平滑筋の増殖およびリンパ球の増殖を減少するように作用する。このラパマイシン(rapamycin)の哺乳類標的物に対するラパマイシン(rapamycin)の下流側の作用により細胞周期に付随するタンパク質キナーゼの後続の活性が遮断される。一方、エトポシド(etoposide)はトポイソメラーゼIIの抑制を通してDNA合成に対して作用を及ぼすポドフィロトキシン(podophyllotoxin)の細胞増殖抑制性のグルコシド誘導体である。この抑制はDNA鎖の分解および細胞周期のG2/M期における細胞の蓄積、G2/M期の標識点のレギュレーション異常およびその後のアポプトーシスを生じる。
【0193】
ポドフィロトキシン(podophyllotoxin)(ポドフィロックス(podofilox))およびその誘導体、エトポシド(etoposide)およびテニポシド(teniposide)は全て細胞増殖抑制性(抗有糸分裂性)のグルコシドである。なお、ポドフィロックス(podofilox)はアメリカミヤオソウ(mayapple)の抽出物である。増殖細胞はこのポドフィロックス(podofilox)に対して特に影響を受けやすい。エトポシド(etoposide)は精巣、肺の癌およびその他の種類の癌を治療するために用いられている。また、エトポシド(etoposide)およびテニポシド(teniposide)は共に2種類の特定の段階において細胞周期を遮断する。すなわち、エトポシド(etoposide)およびテニポシド(teniposide)は最後の分割とDNAの複製の開始との間の段階を遮断し、DNAの複製も遮断する。
【0194】
ラパマイシン(rapamycin)およびエトポシド(etoposide)は細胞周期の異なる段階において細胞増殖に影響を及ぼす異なる分子レベルのメカニズムを通して作用するので、これらの物質が薬物溶出式のステントまたは本明細書において定められている任意の別の医療装置において組み合わされる場合に、異なる多数のメカニズムにより平滑筋細胞および免疫細胞の両方の増殖(炎症性の細胞増殖)をダウンレギュレーションすることによりそれぞれの抗再狭窄の活性の効力を高めることができる。例えば、非同調培養した人間の冠状動脈平滑筋細胞の調査において、ラパマイシン(rapamycin)により処理した細胞にエトポシド(etoposide)を添加すると、以下において詳細に説明されているように、抗増殖性のラパマイシン(rapamycin)の用量応答曲線が左側および上側にずれて、エトポシド(etoposide)、さらにその拡張として、トポイソメラーゼII抑制因子の種類における別の物質が冠状動脈平滑筋細胞におけるラパマイシン(rapamycin)の抗増殖活性の効力を実際に高めていることを示している。このようなラパマイシン(rapamycin)とエトポシド(etoposide)との組み合わせは脈管の傷害後の抗再狭窄の効力を高めること、および抗再狭窄の効果を達成するためのいずれかの物質の必要とされる量を減少することのために利用できる。また、この組み合わせはラパマイシン(rapamycin)またはパクリタキセル(paclitaxel)により被覆されたステント等のような単一の薬物の治療プログラムに対して耐性を有している患者の部分母集団に対して特に関連づけることができる。
【0195】
図65において、2%のウシ胎児血清により刺激した同調培養したヒト冠状動脈平滑筋細胞における異なる濃度のエトポシド(etoposide)を伴うラパマイシン(rapamycin)の抗増殖作用がグラフの様式で示されている。多数の曲線は0〜800ナノモルの濃度の範囲のエトポシド(etoposide)の種々の濃度をそれぞれ示している。エトポシド(etoposide)は10マイクロモルまでの濃度における細胞の生活能力のアッセイにおいて細胞毒性が無いことが知られている。また、図65において分かるように、ラパマイシン(rapamycin)により処理された細胞にエトポシド(etoposide)を添加すると、ラパマイシン(rapamycin)単独における抑制率が高まる。曲線6502はラパマイシン(rapamycin)のみの応答を示している。また、曲線6504は255.7ナノモルの濃度のエトポシド(etoposide)との組み合わせにおけるラパマイシン(rapamycin)の応答を示している。また、曲線6506は340.04ナノモルの濃度のエトポシド(etoposide)との組み合わせにおけるラパマイシン(rapamycin)の応答を示している。また、曲線6508は452.3ナノモルの濃度のエトポシド(etoposide)との組み合わせにおけるラパマイシン(rapamycin)の応答を示している。また、曲線6510は601.5ナノモルの濃度のエトポシド(etoposide)との組み合わせにおけるラパマイシン(rapamycin)の応答を示している。また、曲線6512は800ナノモルの濃度のエトポシド(etoposide)との組み合わせにおけるラパマイシン(rapamycin)の応答を示している。
【0196】
ラパマイシン(rapamycin)およびエトポシド(etoposide)と、ポドフィロトキシン(podophyllotoxin)、その誘導体およびテニポシド(teniposide)を含むその他のグルコシドと、の組み合わせは新規な治療用の組み合わせを提供することができ、この組み合わせ物はラパマイシン(rapamycin)単独よりも再狭窄/新内膜の肥圧化に対して作用効果が高くなり得る。従って、異なる容量のラパマイシン(rapamycin)およびエトポシド(etoposide)と、ポドフィロトキシン(podophyllotoxin)、その誘導体およびテニポシド(teniposide)を含むその他の細胞増殖抑制性のグルコシドはラパマイシン(rapamycin)およびエトポシド(etoposide)の単純な添加作用よりも新内膜の増殖の抑制に対するさらに付加的な利得を生じる可能性がある。加えて、エトポシド(etoposide)と、ポドフィロトキシン(podophyllotoxin)、その誘導体およびテニポシド(teniposide)を含むその他の細胞増殖抑制性のグルコシドと、の組み合わせはぜい弱性のアテローム硬化症のプラーク等のような別の心臓脈管病の治療において有効になる可能性がある。
【0197】
さらに、前記のラパマイシン(rapamycin)およびエトポシド(etoposide)と、ポドフィロトキシン(podophyllotoxin)、その誘導体およびテニポシド(teniposide)を含むその他の細胞増殖抑制性のグルコシドと、の組み合わせはステントおよびカテーテルを含む多数の手段を介して標的の組織に送達可能である。この薬物の組み合わせの送達はその所望の効果を達成するための異なる投与速度において達成することができ、以下においてさらに詳細に説明されているように、それぞれの薬物はそれぞれ異なる量の前記高分子基材の中に充填できる。
【0198】
さらに別の代替的で例示的な実施形態において、パンゼム(Panzem)(登録商標)は脈管の傷害後の再狭窄を防ぐために単独でまたはラパマイシン(rapamycin)との組み合わせにおいて利用可能である。ラパマイシン(rapamycin)またはシロリムス(sirolimus)はラパマイシン(rapamycin)の哺乳類標的物(mTOR)の抑制を通して細胞周期のG1期における細胞を制止することにより平滑筋の増殖およびリンパ球の増殖を減少するように作用する。このラパマイシン(rapamycin)またはシロリムス(sirolimus)は薬物溶出方式のステントを用いて脈管再生処置中に投与される場合に優れた抗再狭窄作用を示している。最近の臨床的な試行において、ポリマー被膜中にラパマイシン(rapamycin)またはシロリムス(sirolimus)を含有している、コーディス・コーポレーション社(Cordis Corporation)から入手可能なサイファー(Cypher)(登録商標)ステントが裸の金属ステントに比べてそのステントの植え込み後の再狭窄に対して優れた効力を一貫して示している。薬物放出方式のステントまたはその他の医療装置からのラパマイシン(rapamycin)の局所送達は最狭窄を減少することにおいて有効であるが、さらに新内膜の過形成の減少が特定の患者の母集団において有益的になると考えられる。従って、ステントまたはその他の医療装置からのラパマイシン(rapamycin)と他の物質、例えば、別の抗増殖性の物質との組み合わせの供給は、脈管の傷害を伴う処置に付随する線維増殖性の脈管の応答をさらに減少させることができる。
【0199】
パンゼム(Panzem)(登録商標)または2−メトキシエストラジオール(2-methoxyestradiol)(2ME2)は内因性エストロゲンの天然に存在する代謝物質である。その多くの特性は多数の適応症を治療するための薬物送達における広範囲の可能な調合物を提供している。例えば、このパンゼム(Panzem)(登録商標)は乳癌、前立腺癌および多発性骨髄腫を伴う患者において抗癌活性を示すことが示されている。このパンゼム(Panzem)(登録商標)は代謝物質のエストロゲンの副産物であり、通常において少量で体内に存在している。しかしながら、このパンゼム(Panzem)(登録商標)はホルモンのようには作用しない。また、パンゼム(Panzem)(登録商標)は効力のある新脈管形成抑制剤であり、このことがこの物質を前記のような有効な抗腫瘍剤にしている理由である。本質的に、パンゼム(Panzem)(登録商標)は、腫瘍細胞に酸素および養分を供給する新たな血管の形成を抑制する。さらに、このパンゼム(Panzem)(登録商標)は、前記において簡単に説明されているように、多様な直接的および間接的な抗骨髄腫作用を有すると思われる。
【0200】
前記のパンゼム(Panzem)(登録商標)、すなわち、2−メトキシエストラジオール(2-methoxyestradiol)(2ME2)またはメトキシ−β−エストラジオール(methoxy-β-estradiol)は、前述のように、エストロゲンの代謝の生成物であり、現在において種々の腫瘍学的な適応症において臨床的に評価されている。このパンゼム(Panzem)(登録商標)は抗脈管形成性の活性を有しており、脈管内皮増殖因子の生成を遮断し、多数の腫瘍性の細胞型の増殖を直接的に抑制する。また、このパンゼム(Panzem)(登録商標)は骨髄腫細胞に対してプロアポプトーシス性(プログラムされた細胞死を与える性質)を有する。さらに、このパンゼム(Panzem)(登録商標)はトレイル(TRAIL)媒介型アポプトーシスの原因である(TNF受容体系統群の)DR−5受容体数をアップレギュレーションすることが分かっており(AACR,2003年)、微小管安定特性を有していて、低酸素症誘発因子1を減少させる(AACR,2003年)。加えて、以下において詳細に説明されているように、パンゼム(Panzem)(登録商標)は冠状動脈平滑筋細胞の生活能力に悪影響を及ぼすことなく人間の冠状動脈平滑筋細胞の増殖を低下させる。
【0201】
図66において、2%のウシ胎児血清により刺激されている同調培養したヒト冠状動脈平滑筋細胞におけるパンゼム(Panzem)(登録商標)の抗増殖活性がグラフの様式で示されている。曲線6600により示されているように、パンゼム(Panzem)(登録商標)は生体外における人間の冠状動脈平滑筋細胞の増殖における極めて有効な抑制因子である。図67は2%のウシ胎児血清により刺激されている同調培養したヒト冠状動脈平滑筋細胞におけるラパマイシン(rapamycin)またはシロリムス(sirolimus)の抗増殖活性をグラフの様式で示している。それぞれの曲線6700と6600との間の比較により分かるように、前記両方の物質はそれぞれの生体外の調査において有効である。
【0202】
前記のラパマイシン(rapamysin)またはシロリムス(sirolimus)およびパンゼム(Panzem)(登録商標)またはその他のエストロゲン受容体調節因子は異なる分子レベルのメカニズムを通してそれぞれ細胞増殖を抑制するように作用するので、これらの物質は、薬物溶出方式のステントまたは本明細書に記載したその他の医療装置において組み合わされる場合に、異なる多数のメカニズムにより平滑筋細胞および免疫細胞の両方の増殖(炎症性の細胞増殖)をダウンレギュレーションすることにより互いの抗再狭窄活性を増強する可能性がある。図68は冠状動脈平滑筋細胞におけるラパマイシン(rapamycin)の抗増殖作用におけるパンゼム(Panzem)(登録商標)によるラパマイシン(rapamycin)の効力増強を示している。このパンゼム(Panzem)(登録商標)および関連の化合物によるラパマイシン(rapamycin)の抗増殖活性の増強は、脈管再生およびその他の脈管の外科処置中における脈管の傷害後の抗再狭窄の効力における向上、およびその抗再狭窄作用を達成するためのいずれかの物質の必要とされる量の減少であると解釈できる。加えて、前記パンゼム(Panzem)(登録商標)および関連の化合物の単独またはラパマイシン(rapamycin)との組み合わせにおける局所的な供給はぜい弱性のプラークを治療することにおいて治療的に有用であると考えられる。
【0203】
図68において、2%のウシ胎児血清により刺激されている同調培養したヒト冠状動脈平滑筋細胞における異なる濃度のパンゼム(Panzem)(登録商標)を伴うラパマイシン(rapamycin)の抗増殖活性がグラフの様式で示されている。これらの多数の曲線は0から100マイクロモルの濃度の範囲におけるパンゼム(Panzem)(登録商標)の種々の濃度をそれぞれ示している。図68において分かるように、ラパマイシン(rapamycin)により処理される細胞にパンゼム(Panzem)(登録商標)を添加することにより、ラパマイシン(rapamycin)の単独による抑制率が高まる。曲線6802はラパマイシン(rapamycin)のみの応答を示している。また、曲線6804は0.813マイクロモルの濃度のパンゼム(Panzem)(登録商標)との組み合わせにおけるラパマイシン(rapamycin)の応答を示している。また、曲線6806は2.71マイクロモルの濃度のパンゼム(Panzem)(登録商標)との組み合わせにおけるラパマイシン(rapamycin)の応答を示している。また、曲線6808は9.018マイクロモルの濃度のパンゼム(Panzem)(登録商標)との組み合わせにおけるラパマイシン(rapamycin)の応答を示している。また、曲線6810は30.03マイクロモルの濃度のパンゼム(Panzem)(登録商標)との組み合わせにおけるラパマイシン(rapamycin)の応答を示している。さらに、曲線6812は100マイクロモルの濃度のパンゼム(Panzem)(登録商標)との組み合わせにおけるラパマイシン(rapamycin)の応答を示している。
【0204】
薬物、薬剤および/または化合物が潜在的に毒性であるか否かおよびその毒性の高さを決定するために生体外の細胞毒性試験またはアッセイが利用可能である。本質的に、生体外の細胞毒性アッセイは直接的な細胞の障害を引き起こす薬物による急性の壊死作用を決定する。これらのアッセイの基本的な考えは毒性の薬品が全ての細胞に共通している細胞の基本的な機能に悪影響を及ぼすと言うことである。一般的に、基準線の毒性を決定するために対照物が用いられる。また、利用可能な多数の異なるアッセイが存在している。本発明において、その用いられている細胞毒性アッセイは細胞の代謝活性の測定に基づいている。すなわち、この代謝活性における低下がその細胞の障害の指示手段になる。さらに、この代謝の機能を測定できる試験方法はMTSの代謝を介する細胞のATPの量またはミトコンドリアの活性を測定できる。図69はパンゼム(Panzem)(登録商標)のMTSアッセイの結果のグラフ図である。図示のように、6.6ナノモル〜30,000.00ナノモルの濃度の範囲のパンゼム(Panzem)(登録商標)の濃度が細胞毒性における何らかの著しい変動を生じずに試験されている。このアッセイの結果は、30,000.00ナノモルまでのパンゼム(Panzem)(登録商標)の濃度が、人間の冠状動脈平滑筋細胞の存在を減少させないことを示している。
【0205】
図70はラパマイシン(rapamycin)およびパンゼム(Panzem)(登録商標)の組み合わせからのラパマイシン(rapamycin)またはシロリムス(sirolimus)の生体外における放出速度のグラフ図である。この調査において、ラパマイシン(rapamycin)およびパンゼム(Panzem)(登録商標)は高分子の被膜における異なる層の中に組み込まれている。また、この調査において、Bx・ベロシティ(Bx Velocity)ステントが400マイクログラムの内側層および300マイクログラムの外側層により被覆されている。さらに、この内側層は45%のパンゼム(Panzem)(登録商標)および55%のEVA/BMA(50/50)を含有している。また、外側層は40%のラパマイシン(rapamycin)および60%のEVA/BMA(50/50)を含有している。また、この調査においてポリマーだけの上部被膜が存在していない。この場合に、曲線7000は前記組み合わせからのラパマイシン(rapamycin)の放出速度を示している。
【0206】
図71はラパマイシン(rapamycin)またはシロリムス(sirolimus)およびパンゼム(Panzem)(登録商標)の組み合わせからのパンゼム(Panzem)(登録商標)の生体外における放出速度のグラフ図である。この調査において、ラパマイシン(rapamycin)およびパンゼム(Panzem)(登録商標)は高分子の被膜における異なる層の中に組み込まれている。また、この調査において、Bx・ベロシティ(Bx Velocity)ステントが400マイクログラムの内側層および300マイクログラムの外側層により被覆されている。さらに、この内側層は45%のパンゼム(Panzem)(登録商標)および55%のEVA/BMA(50/50)を含有している。また、外側層は40%のラパマイシン(rapamycin)および60%のEVA/BMA(50/50)を含有している。また、この調査においてポリマーだけの上部被膜が存在していない。この場合に、曲線7100は前記被膜からのパンゼム(Panzem)(登録商標)の放出速度を示している。さらに、図70および図71の比較から分かるように、前記試験の条件下においてラパマイシン(rapamycin)はパンゼム(Panzem)(登録商標)よりも遅く溶出している。
【0207】
以下においてさらに詳細に説明されているように、医療装置からの前記の薬物、薬剤および/または化合物またはこれらの組み合わせの制御された局所的送達を行なうために、非相容性のポリマーの組み合わせがラパマイシン(rapamycin)およびミコフェノール酸(mycophenolic acid)、ラパマイシン(rapamycin)およびトリコスタチンA(trichostatin A)、ラパマイシン(rapamycin)およびクラドリビン(cladribine)、ラパマイシン(rapamycin)およびトポテカン(topotecan)、ラパマイシン(rapamycin)およびエトポシド(etoposide)、ラパマイシン(rapamycin)およびパンゼム(Panzem)、および/または本明細書において説明されている薬物、薬剤および/または化合物の任意の物との組み合わせにおいて利用可能である。加えて、前記の非相容性のポリマーは種々の物質の組み合わせからの個々の物質の放出速度を制御するために種々の組み合わせ物の中において利用可能である。例えば、前記の各試験から、ミコフェノール酸(mycophenolic acid)がラパマイシン(rapamycin)よりも速く溶出することが分かる。従って、望まれる場合において、非相容性のポリマーの適正な組み合わせを利用することにより、前記両方の物質が同じ速度で溶出すること確実にすることも可能になる。
【0208】
前記の被膜、薬物、薬剤または化合物は多数の医療装置、特に、ステントおよびステントグラフト等のような植え込み可能な医療装置との組み合わせにおいて利用できる。さらに、大静脈フィルターおよび吻合装置等のような別の装置が前記の薬物、薬剤または化合物を含む被膜と共に使用できる。図1および図2において示されている前記の例示的なステントはバルーン拡張式のステントである。このようなバルーン拡張式のステントは多数の脈管または導管の中において利用可能であり、特に、冠状動脈の中において使用するために十分に適している。一方、自己拡張式のステントは、例えば、頸動脈の中におけるつぶれの回復が重要なファクターになる場合に脈管内において使用するために十分に適している。従って、前記の薬物、薬剤または化合物、ならびに被膜のいずれもが当業界において知られている自己拡張式のステントとの組み合わせにおいて利用可能であることに注目することが重要である。
【0209】
外科的な吻合は種々の構造の外科的な結合処理であり、特に、管状の器官を結合してこれらの間に相互の連絡部分を形成する。血管手術は、多くの場合において、血管同士の間にまたは血管と脈管グラフトとの間に吻合部分を形成して、主要な各組織に対する血流路を形成または回復する。また、冠状動脈バイパスグラフト術(CABG)は血液の供給が冠状動脈の内の1以上における閉塞または狭窄により損なわれている虚血性の心筋への血液の流れを回復する外科処置である。このCABG手術を行なう一例の方法は伏在静脈または他の静脈あるいは動脈の導管を体内の別の場所から採取するか、例えば、ダクロン(Dacron)(登録商標)またはゴアテックス(GoreTex)(登録商標)等でできている人工導管を用いて、この導管をバイパスグラフトとして、大動脈等のような、生存可能な動脈から閉塞または細狭化している下流側の冠状動脈に接続する処置を含む。この場合に、合成のグラフトよりも天然のグラフトを利用することが好ましい。なお、グラフトの基端部(近位側の端部)および先端部(遠位側の端部)の両方が分離しているグラフトは「遊離グラフト(free graft)」として知られている。さらに、別の方法は比較的に主要でない動脈、例えば、内乳頭間動脈をその自然な位置から経路変更することにより、この動脈が遮断部分の下流側における冠状動脈に接続できるようにする。このグラフト脈管の基端部はその自然な位置に取り付けられた状態に維持されている。この種のグラフトは「茎状グラフト(pedicled graft)」として知られている。前記第1の場合において、前記バイパスグラフトは当該グラフトの基端部および先端部の両方における端部から側部に到る吻合術により自然なそれぞれの動脈に取り付けられる必要がある。また、前記第2の方法においては、少なくとも1回の端部から側部に到る吻合術を、バイパスに用いる動脈の先端部において行なう必要がある。以下における例示的な実施形態の説明において、近位側吻合および遠位側吻合として遊離グラフトに対する吻合について述べられている。近位側吻合術は、血液供給源、例えば、大動脈、に連結されたグラフト管の端部における吻合術であり、遠位側吻合術は、大動脈を通って流れる血液の行き先、例えば、冠状動脈、に連結されたグラフト管の端部における吻合術である。これらの吻合術はまた第1の吻合術または第2の吻合術と呼ばれる場合もあり、このことは吻合術がグラフトの基端部または先端部のいずれであるかにかかわらずこれらの吻合術が行なわれる順序を示している。
【0210】
現在において、本質的に全ての脈管吻合術は従来の手による縫合により行われている。このような吻合部の縫合は時間がかかり且つ困難な作業であり、外科医における高い技術および経験を必要とする。各吻合部は血液のための滑らかで開いた流路をもたらすと共にその結合部分が完全に漏れの無いことが重要である。このような完全に漏れの無いシールは常に一度で達成されるとは限らない。この結果、吻合部を再縫合して検出された何らかの漏れを閉じる必要が生じる場合が多い。
【0211】
前記のような手作業により縫合する吻合において時間がかかることは幾つかの理由によりCABG手術において特別な問題を有する。第1に、患者は外科処置の大部分において心肺バイパス(CPB)により支援されていることが必要であり、その心臓は全身系の循環から分離(すなわち、「クロスクランプ処理」)されていなければならず、その心臓を、一般的に低温心停止溶液の注入により、停止させてその心臓における吻合部位が吻合部の縫合中に静止して血液の無い状態になるようにする必要がある。これらの心肺バイパス、循環分離および心停止は本来的に極めて傷害性が高く、特定の術後合併症の頻度が心臓停止状態の持続時間(「クロスクランプ時間」と呼ばれる場合が多い)により直接的に変化することが分かっている。第2に、心臓手術室の使用時間の費用が高いのでその手術が長引くとそのバイパス手術の病院および患者に対する費用が相当に増大する可能性がある。従って、吻合部の質または作用効果を低下させることなくその吻合処置を速めることにより前記のようなクロスクランプ時間および手術全体の持続時間を短縮することが望ましい。
【0212】
従来の手動式の縫合による吻合において必要とされる既に高度である操作の熟練は、非開胸心式またはポートアクセス式の胸腔鏡下バイパス手術、すなわち、標準の開胸心式のCABG処置と比較された場合に、CABG手術の死亡率を減少するよう設計されている新しく開発された外科処置においてさらに高められている。このような非開胸心式の処置において、心臓への外科的接近は患者の胸部における肋間隙内に作成された狭い接近ポートを介して行われ、この処置は胸腔鏡による観察下において行われる。患者の胸部は開かれないので、吻合部の縫合は組織に接近して、吻合を行なうために使用する針および縫合糸を保持して操作するための接近ポートを介して位置決めされた細長い器具を用いて、所与の距離において行なう必要がある。このことは開胸心式CABG術中に吻合部位を縫合するための既に知られている困難な処置よりもさらに優れた操作の熟練が必要になる。
【0213】
開胸心式CABG手術または非開胸心式CABG手術の実施中においてその脈管吻合部を形成することにおける困難さを軽減するために、バイパスグラフトまたは動脈とその心臓の大動脈または自然な脈管との間の信頼性の高い端部から側部に到る吻合を行なうための迅速な手段を提供することが望ましいと考えられる。このような吻合処置を速めて改善するための第1の方法はステープル処理技法を用いることであった。このステープル処理技法は組織の取り付けを比較的に迅速に且つ高い信頼度で行なうために多くの異なる手術領域において有効に用いられている。このようなステープル処理技法における最大の進歩は胃腸手術の領域においてであった。種々の外科的ステープル処理器具が中空または管状の器官、例えば、腸の端部から端部、側部から側部、および端部から側部に到る吻合のために開発されている。不都合にも、これらの器具は脈管吻合部を形成する用途には容易に適合できない。このことは、部分的に、これらの器具を血管等のような比較的に細い器官に適応させるために小形化することにおける困難さによる。考えられるさらに重要なことは血液のための滑らかで開口している流路を形成することの必要性である。管状の器官の端部から端部または端部から側部に到る吻合のための既知の胃腸ステープル処理器具は逆吻合部分を形成するように、すなわち、結合する器官の内腔内に組織が内側に折り込まれるように設計されている。このことは腸管の外側層(漿膜)に近づくことが最も重要である胃腸手術では許容可能である。この組織は一緒に生長して強固で永久的な結合部分を形成する組織である。しかしながら、脈管手術においては、このような形態は幾つかの理由により許容できない。第1に、前記のような逆にした脈管壁部は血液の流れの中断部分を生じると考えられる。このことはその中断部分の下流側において減少された流れおよび虚血症を生じる可能性があり、さらに悪いことに、その形成された流れの中断部分または渦が、吻合部位において脈管内に塞栓を分散して閉塞させる可能性のある血栓領域になる可能性がある。第2に、腸導管とは異なり、血管の外表面部(外膜)は近接している場合に一緒に生長しない。従って、縫合糸、ステープルまたはその他の結合装置が脈管吻合部の構造的な完全性を維持するために永久的に必要とされる場合がある。第3に、永久的な非血栓形成性の脈管を作るために、最も内側の層(内皮)はその脈管の全体における連続した中断されていない内膜に対応して一緒に増殖する必要がある。従って、外転して、外側に折り重ねられているか、裏返しされずに直接的な縁から縁に到る接合部を形成している、脈管吻合部、を形成するステープル処理器具を提供することが好ましい。
【0214】
少なくとも1つのステープル処理器具がCABG手術中における脈管吻合を行なうために適用されている。この装置は、ドクター・バシリ・I.コレソフ(Dr. Vasilii I. Kolesov)によりCABG手術における使用において初めて適用されていて、後に、ドクター・エフゲニー・V.コレソフ(Dr. Evgenii V. Kolesov)(米国特許第4,350,160号)により改造されて、内乳頭間動脈(IMA)または静脈グラフトと、冠状動脈の内の一つ、主として、左前下降冠状動脈(LAD)との間に、端部から端部に到る吻合部を形成するために用いられている。この装置は端部から端部に到る吻合だけを行なうことができるので、前記の冠状動脈を最初に周囲の心筋層から切断および分離して、その露出された端部を取り付けのために外転させる必要がある。しかしながら、このような技術は、前記装置の適応性を、冠状動脈が完全に閉塞されている場合、すなわち、吻合部分を形成するためにその遮断部分の下流側においてその冠状動脈を完全に切断することによる血液の損失が全く無い場合に、制限している。この結果、前記装置は前記冠状動脈が部分的にのみ閉塞している場合には適用できず、バイパスグラフトと大動脈との間の近位側から端部に到る吻合を行なうことには全く適用できない。
【0215】
端部から側部に到る脈管吻合のための脈管ステープル処理装置を提供する一例の試みが、キャスター(Kaster)他に発行されている米国特許第5,234,447号(発明の名称:「サイド−トゥ−エンド・バスキュラー・アナストモチック・ステープル・アパレイタス(Side-to-end Vascular Anastomotic Staple Apparatus)」において記載されている。このキャスター(Kaster)他はリング形状のステープルを提供しており、そのステープルの脚部は2本の血管を端部から側部に到る吻合術において一緒に結合するようにそのリングの近位側および遠位側の各端部から延出している。しかしながら、前記キャスター(Kaster)他は吻合を迅速且つ自動的に行なうための完全なシステムを開示していない。このキャスター(Kaster)他により開示されている吻合ステープルを適用する方法は、グラフトが取り付けられた後であってそのグラフトが大動脈壁に形成されている開口部の中に挿入される前に、ステープルの遠位側の歯を個々に変形させるために手動操作型の工具を用いる、そのステープルにおける多量の手動操作を含む。また、このキャスター(Kaster)他によりステープルを適用することにおけるさらに困難な操作の内の一つは、グラフト管をステープルの各脚部の尖った端部の上に注意深く外転させる処理、および、その後に、各ステープルの脚部により脈管の平坦化された縁部を突き通す処理を含む。この技術を応用する実験的な試みにより、この方法が、グラフト管の操作における困難さおよびグラフト管壁部への損傷の可能性と言う理由により、極めて不都合であることが立証されている。つまり、速さ、信頼性および利便性のために、吻合を行ないながら複雑な操作を行なう必要性を回避することが好ましい。さらに別の屈曲作業をステープルの各脚部に対して行なわなければならない。また、前記ステープルの遠位側の歯部がいったん変形されると、このステープルを大動脈切除のための開口部を通して挿入することが困難になる場合がある。さらに、前記キャスター(Kaster)他による装置の別の不都合点は、グラフト管の壁がステープル上で平坦になっている場所においてそのステープルの遠位側の歯部がグラフト管の壁部を突き通すということである。このようなグラフト管の壁部への突き通しにより、吻合部の漏れが潜在的に誘発されて、グラフト管壁部の構造的な完全性が損なわれる可能性があり、このことが切開または断裂の場所として作用して、破滅的な破損が生じることも考えられる。前記キャスター(Kaster)他によるステープルの各脚部は選択された位置においてその吻合部に圧力を供給するだけであるので、そのステープルの脚部の間において潜在的な漏れの可能性がある。さらに、このステープルの遠位側の歯部は血栓症の可能性を回避することが最も重要である吻合部位において血液の流路に曝される。また、ステープルがグラフト管の壁部を突き通しているそのグラフト管の中間層における露出部分が内膜の過形成の開始部位となり、これが前述のようなグラフトの長期間の開存性を損なうという可能性もある。これらの潜在的な欠点のために、グラフト管への取り付けをその脈管壁部に対して可能な限り無傷の状態で行なうこと、および吻合部位またはグラフト管内腔内の平滑で中断されていない内膜層以外の異物あるいは脈管層の露出部分をできるだけ無くすことが望ましい。
【0216】
吻合処置を速めて改善する別の方法は血管を一緒に接合するための吻合継手を用いることによる方法である。端部から側部に到る脈管吻合のための脈管吻合継手装置を提供する一例の試みがキャスター(Kaster)に発行されている米国特許第4,366,819号(発明の名称:「アナストモチック・フィッテイング(Anastomotic Fitting)」)において記載されている。この装置は四部品型の吻合継手であり、この継手は上部においてグラフト管が平坦化される管状部材、大動脈内腔内から大動脈壁部に係合するリング・フランジ、および大動脈壁部の外部に係合する係止リングを有している。さらに、別の類似の吻合継手がキャスター(Kaster)に発行されている米国特許第4,368,736号において記載されている。この装置は取付リングにより大動脈壁部に固定されるフランジ付きの遠位側端部と、およびグラフト管に取り付けるためのグラフト固定カラーを伴う近位側端部とを有する管状継手である。これらの装置は多数の欠点を有している。第1に、前記の吻合継手は吻合装置の異物をその動脈内の血液の流路に露出する。このことは血液流路内の異物が溶血、血小板の堆積および血栓症を引き起こす傾向を有する可能性があるので望ましくない。異物に対する免疫反応、例えば、異物の拒絶または異物の存在により引き起こされる自己免疫反応は、その異物が血液の流れに曝されるとさらに強くなる傾向を有している。従って、血液の流路に曝される吻合継手の内表面部の内のできるだけ多くを標的の脈管またはグラフト管からの脈管組織により被覆して、平滑で連続した血液に適合性を有する内皮層をその血液の流れに対して存在させることが好ましい。前記‘819号特許におけるキャスター(Kaster)により記載されている吻合継手もまたグラフト管を吻合継手の上に保持するスパイクが血液の流路に極めて近く、潜在的に血管に外傷を引き起こす可能性があり、このことはその吻合部における漏れを生じるか、その血管の機構的な完全性を損なう可能性があると考えられる。この結果、グラフト管に対してできるだけ外傷性の無い吻合継手を提供することが望ましい。また、取付スパイク等のような鋭利な構造的な特徴部分は血液の流路および吻合部位からできるだけ離して配置して、吻合部の密封性または当該血管の構造的な完全性が損なわれないようにする必要がある。
【0217】
端部から端部に到る吻合用の別の装置、すなわち、3M−ユニリンク(3M-Unilink)装置(米国特許第4,624,257号、4,917,090号、4,917,091号)が、事故において切断された脈管を再結合する等のような、顕微外科手術において使用するように設計されている。この装置は2個の外転リングを有している吻合クランプを備えており、これらのリングはそれぞれの反対側の面において一連の突き通し用スパイクにより一緒に係止される。しかしながら、この装置は端部から側部に到る吻合に用いる場合に手間がかかり、標的の脈管を変形する傾向があるので、現在においてはCABG手術には用いられていない。さらに、脈管をこの装置内に挿入するために必要とされる繊細な処理のために、ポート接近式の外科手術にも不適当であると考えられる。
【0218】
前記およびその他の問題を解決するために、血管の間または他の中空器官と脈管との間において端部から側部に到る吻合を行なう吻合装置を提供することが望ましい。また、吻合を実施しながら血管に対する外傷を最小限に抑え、これにより、血管内の血液流路に曝される異物の量を最小限にして、漏れの問題を回避し、迅速な内皮化および治癒を促進する吻合装置を提供することが望ましい。また、本発明が最小限の手動操作による吻合処理を迅速且つ自動的に行なう完全なシステムを提供することが望ましい。
【0219】
吻合装置は生物学的組織の接合、特に、流体通路を形成するための管状の器官の接合に利用できる。このような管状の器官または脈管の間の連結は側部から側部、端部から端部および/または端部から側部に到る様式で行なうことができる。一般的に、グラフト管および標的脈管が存在する。この標的脈管は動脈、静脈または任意の他の導管または流体搬送用の脈管、例えば、冠状動脈とすることができる。また、グラフト管は、合成材料、自己脈管、同種脈管または異種移植片(xenograft)を含むことができる。吻合装置は任意の適当な生体適合性の材料、例えば、金属、ポリマーおよびエラストマーを含むことができる。加えて、形成される連結部分の種類に応じて吻合装置に対応する多様な設計および形態が存在する。ステントと同様に、吻合装置は標的の脈管に対して傷害を生じ、これにより、その身体から一つの応答を誘発する。従って、ステントの場合と同様に、遮断された連結部分を生じる可能性のある平滑筋細胞の増殖の潜在性が存在している。従って、吻合部位における平滑筋細胞の増殖および炎症を最小限に抑えるか、実質的に無くす必要がある。ラパマイシンおよび/またはその他の薬物、薬剤または化合物を前述のステントと類似している様式で利用できる。換言すれば、吻合装置の少なくとも一部分をラパマイシンまたはその他の薬物、薬剤または化合物により被覆できる。
【0220】
図10〜図13は端部から側部に到る吻合用の例示的な吻合装置200を示している。この例示的な吻合装置200は締結フランジ202および取り付けられた状態の複数のステープル部材204を有している。前述のように、この吻合装置は任意の適当な生体適合性の材料により構成できる。好ましくは、この吻合装置200は変形可能な生体適合性の金属、例えば、ステンレス・スチール合金、チタン合金またはコバルト合金を含む。また、前述のように、表面被膜、または薬物、薬剤または化合物を含有している表面被膜を用いてこの装置の生体適合性またはその他の材料特性を改善すると共にその装置の体内への配置に対する身体の応答を軽減するか実質的に無くすことができる。
【0221】
前記の例示的な実施形態において、吻合の完了時に、締結フランジ202は標的脈管の壁部208の内表面部206の上に存在している。溶血、血栓形成または異物反応の危険性を実質的に減少させるために、この締結フランジ202の全体的な大きさは標的脈管の内腔210内の異物の量を減少するために可能な限り小さいことが好ましい。
【0222】
前記締結フランジ202は所与の内径を有するワイヤー・リングの形態をしており、このワイヤー・リングは、完全に拡張すると、グラフト管壁部214および標的脈管壁部208内に作成される開口部216の外径よりもわずかに大きい。初めに、締結フランジ202のワイヤー・リングはそのリングの直径を減少するためにさざなみ状の形状を有しており、これにより、標的脈管壁部208の開口部216中に容易に嵌め込めるようになっている。複数のステープル部材204が前記ワイヤー・リングから近位側方向に実質的に垂直に延びている。図示の例示的な実施形態においては、9個のステープル部材204がワイヤー・リングの締結フランジ202に取り付けられている。前記吻合装置200の別の変形例は一般的に接合される脈管の大きさおよび特定の用途において必要とされる取り付けの確実性に応じて、4個〜12個のステープル部材204を有する。これらのステープル部材204は前記ワイヤー・リングの締結フランジ202と一体に形成することができ、あるいは、これらのステープル部材204は溶接、ろう付けまたは任意の他の適当な接合方法により締結フランジ202に取り付けることもできる。各ステープル部材204の近位側端部218は標的脈管壁部208およびグラフト管壁部214に容易に突き通るように鋭利化されている。好ましくは、これらステープル部材204の近位側端部218は吻合装置200の配備時にその取り付けの確実さを改善するための突起部220を有している。このような吻合装置200はこの装置を供給装置222の遠位側端部に取り付けることにより使用の準備ができる。さらに、締結フランジ202は取付器具222の細長い軸部226の遠位側端部に取り付けられているアンビル224に取り付けられる。各ステープル部材204はアンビル224の近位側において前記器具222に取り付けられている円錐形のホルダー228に対して内側に押圧される。さらに、各ステープル部材204はキャップ230により前記の位置に固定され、このキャップ230は前記細長い軸部226に摺動自在に取り付けられている。このキャップ230は遠位側に動いて各ステープル部材204の鋭利化された突起付きの近位側端部218を覆うと共にこれらを前記円錐形ホルダー228に対して当接状態に保持する。その後、取付器具222がグラフト管214の内腔232の中に挿入される。このことは取付器具222をグラフト管214の近位側端部から遠位側端部までグラフト管内腔232の中を通して挿入することにより行なうことができ、あるいは、取付器具222の細長い軸部226を前記の遠位側端部から近位側端部までグラフト管内腔232内の中に後方に押し込むことにより行なうことができ、どちらも場合により最も有利になる。その後、前記吻合装置200が取り付けられている取付器具222の遠位側端部におけるアンビル224および円錐形ホルダー228を開口部216の中を通して標的脈管の内腔210内に広げる。
【0223】
次に、グラフト管内腔232が標的脈管壁部208の開口部216の中心に整合されている状態で、グラフト管壁214の遠位側端部234を外転して標的脈管壁部208の外表面部236に当接させる。その後、キャップ230をステープル部材204の近位側端部218から引き抜いて、ステープル部材204を外側にばね作用により開いてそれぞれの拡張状態の位置に到達させる。次に、取付器具222を近位側方向に引っ張り、各ステープル部材が開口部216の周りの標的脈管壁部208およびグラフト管214の外転状態の遠位側端部234を突き通す。
【0224】
前記取付器具222はグラフト管214の外側を囲む環状ステープル形成部材238を有している。前記の突き通しの工程中に環状ステープル形成部材238から外転されたグラフト管壁部に加えられるわずかな圧力が各ステープル部材204によるグラフト管壁部214に対する突き通しを補助する。この処置のこの時点において環状ステープル形成部材238により過度に大きな圧力を供給しないように注意する必要がある。この理由は、各ステープル部材204が脈管壁部を完全に横切る前に時期尚早に変形する可能性があるからである。望まれる場合に、各ステープル部材204が脈管壁部を突き通る際にその脈管壁部を支持するために、エラストマー等のような、比較的に軟質の材料により作成されている環状の表面を取付器具222の上に設けることができる。
【0225】
各ステープル部材204が標的脈管壁部208およびグラフト管壁部214をいったん完全に横切ると、アンビル224により締結フランジ202を支持している状態で、前記ステープル形成部材238は比較的に大きな力で押し下げられる。これにより、各ステープル部材204は外側に変形して、鋭利化された突起付きの端部218が外転された遠位側端部234を通して標的脈管壁部208の中に後から刺さって永続的な取り付け部を形成する。その後、吻合を完了させるために、アンビル224はグラフト管内腔232の中を通して引き抜かれる。このアンビル224がワイヤー・リングの締結フランジ202の中を通過する時に、その波状の部分が直線状になり、ワイヤー・リングフランジ202はその完全な拡張状態の直径を有する。あるいは、このワイヤー・リングの締結フランジ202は弾性材料により作成することができ、これにより、このフランジ202は、当該フランジ202が標的脈管の内腔部210の中に放出されるまで、波状または折りたたみ状の位置に圧縮および保持されるようになり、その後に、このフランジ202はその完全に拡張した直径を有することができる。別の代替的な構成は形状記憶合金の吻合装置を動作させることであると考えられ、これにより、前記締結フランジは前記標的脈管の開口部の中に圧縮および挿入することが可能になり、その後に、このフランジはその吻合装置200を前記形状記憶合金の転移温度よりも高い温度に加熱することによりその完全に拡張した状態の直径に戻ると考えられる。
【0226】
前述の例示的な実施形態において、ステープル部材204および/またはワイヤー・リング締結フランジ202は、平滑筋壁部の増殖を阻止または実質的に減少させるために、前述の薬物、薬剤または化合物のうち任意のもの、例えば、ラパマイシン(rapamycin)により被覆できる。
【0227】
図14は吻合装置の別の例示的な実施形態を示している。この図14は本発明の別の例示的な実施形態に従って、少なくとも2つの解剖学的構造を接合する装置の側面図である。この装置300は第1の端部304および第2の端部306を有している縫合糸302を含み、この縫合糸302は以下において説明されている所与の様式で解剖学的構造を通過するように構成されている。この縫合糸302は多様な材料、例えば、ポリプロピレンまたはポリアミドを含む、最小限の形状記憶特性を有するモノフィラメント材料により形成できる。任意の適当な直径の寸法、例えば、8番〜0番、を用いることができる。もちろん、他の縫合糸の種類および寸法も可能であり、これらは本発明により同等に考えられている。
【0228】
針308は、好ましくは、湾曲しており、縫合糸302の第1の端部304に備えられている。この針308の鋭利な先端部310は種々の解剖学的構造における容易な侵入を可能にすると共に、この針308および縫合糸302がその構造の中を容易に通過することを可能にする。この針308は、例えば、スエージ加工による等の種々の方法により縫合糸302に取り付けることができ、好ましくは、この針308と縫合糸302の外径を可能な限り近づけて実質的に一致させることができる。
【0229】
前記装置300は縫合糸302の第2の端部306において配置されている保持装置312も有している。この保持装置312は図示の例示的な実施形態により第1および第2の各肢部314,316を有しており、好ましくは、縫合糸302よりも高い剛性を有している。この第1の肢部314は、例えば、スエージ加工による等の多数の方法で縫合糸302に接続可能であり、好ましくは、縫合糸302に対して前記保持装置312の外径を可能な限り近づけて実質的に一致させることができる。前記保持装置312は、好ましくは、吻合部の外側において圧着されている位置を圧着して保持するために十分に軟質で展性を有している屈曲可能な材料を含むステープル構造、を有している。このような材料はチタンまたはステンレス・スチールを含むことができる。この保持装置312は、図示の実施形態によれば、ステープルと言うこともでき、さらに、前記縫合糸302および針308は当該ステープル312の送達システムと言うこともできる。
【0230】
図14は保持装置312の多くの考えられる初期的な形態の内の一つを示しており、この保持装置312の形態は解剖学的構造の中を初期的に通過する時および/またはその前の時点における形態である。以下において説明されているように、保持装置312はその初期の形態から保持用の形態に移動可能であり、この保持用の形態において、当該保持装置312は解剖学的構造を一緒に保持する。図示の例示的な実施形態によれば、前記保持装置312は、図19(以下においてさらに説明されている)において示されているように、屈曲時または圧着時においてその保持形態を採る。
【0231】
前記保持装置312は、好ましくは、図示のように、実質的にV字形または実質的にU字形であるが、特定の外科的状況および/または外科医の選択に適合するように多様な形状を採ることができる。例えば、前記肢部314,316の内の一方が直線状であり、他方が湾曲状であってもよく、あるいは、これらの肢部314,316が同一線状であってもよい。前記保持装置312は好ましくは針308と同程度に平滑で断面が丸い。さらに、前記針308、縫合糸302および保持装置312の直径は、好ましくは、実質的に同一であり、特に、針308および保持装置312の直径は、前記ステープル312の直径よりも大きい解剖学的構造に穴を形成することを避けるために実質的に同一である。なお、このような穴は出血または漏れを引き起こしやすい。
【0232】
前記装置300を用いる一つの方法が図15〜図19において示されている。最初に、図15において示されているように、針308は解剖学的構造318,320を通過しており、これらの解剖学的構造は、例えば、脈管構造である。具体的に言えば、図示の例示的な実施形態に従って、針308は各脈管構造318,320の縁部322,324を通過している。次に、図16において示されているように、針308は縫合糸302を両方の構造318,320に引き入れてこれらを通過させている。その後、ステープル312を図示の吻合部および関連の内腔部326の両側において係合するように、このステープル312が、図17〜図19において示されているように、各構造318,320に対して所望の近さになるまで引きこまれる。一例の例示的な実施形態によれば、ステープル312の位置を留めるために、牽引力が縫合糸302に加えられる。
【0233】
図19において示されていると共に、既に参照されているように、前記ステープル312は、その後、その初期形態から保持用のまたは圧着された形態328に移動し、この形態において、前記解剖学的構造318,320はこれらの間に吻合を行なうように一緒に接合される。前記ステープル312は、その圧着部分330が管腔321の外部にある状態で、前記吻合部の縁部において実質的に360゜のループを形成する。多様な工具および/または機構を用いて、ステープル312を、例えば、脈管クリップによる閉鎖様式等において、保持用の形態に圧着できる。その後、同一の工具または別の代替的な工具を用いて、例えば、切断等により、ステープル312を縫合糸302から分離できる。
【0234】
前記のようにして、ステープル312は、対向している構造を外部のみから固定する多くの従来のステープルとは異なり、各脈管構造の内部および外部から脈管構造318,320を一緒に保持する。このことは、前述のような、多くの利点を達成している。ステープルの圧着処理は比較的に良好な接近効果を実現するだけでなく、1つ以上の結び目を形成する処理よりも簡単であり、組織に対する外傷性も低くなる傾向がある。また、単一の圧着部分によるステープルの閉鎖は、例えば、数回の糸通しを必要とする結び目に比した場合に、吻合部分における張力をさらに低下させる。本発明の実施形態は、例えば、小さいポートを通した、侵襲性を最小限に抑えた設備における結び目プッシャを伴う結び目の形成処理が特に手間がかかり、すべりを防止するために4回〜5回の糸通しを必要とする可能性があるので、このような侵襲性を最小限に抑えた外科的状況において特に有利である。本発明の実施形態におけるように、ステープルを一つのポートを通して圧着処理することは遙かに簡単でありその困難さを大幅に軽減する。
【0235】
一例の例示的な実施形態によれば、外科医は好ましくは限られた数のステープルまたはその他の保持装置により脈管またはその他の構造に対する正確な接近を達成した後に、生物学的な接着剤またはレーザー技法を用いてその吻合部分を完成することができる。例えば、2つ以上の数の保持装置を用いて前記の構造を配向または配列することができ、これらをその吻合部分の完成に誘導するための「案内手段」として使用できる。
【0236】
前述の例示的な実施形態において、保持装置312は前述の薬物、薬剤または化合物の内の任意のもの、例えば、ラパマイシン(rapamycin)により被覆して平滑筋細胞の増殖を阻止するか実質的に減少させることができる。
【0237】
前述のように、種々の薬物、薬剤または化合物が医療装置を介して局所的に送達できる。例えば、ラパマイシン(rapamycin)およびヘパリン(heparin)を再狭窄、炎症、および凝固を減少させるためにステントにより送達できる。さらに、これらの薬物、薬剤または化合物を固着させるための種々の技法が前記において述べられているが、これらの薬物、薬剤または化合物を送達中に医療装置において保持して位置決めすることはその処置または治療の成功において重要である。例えば、ステントの送達中に前記薬物、薬剤または化合物の被膜を除去することは、その装置の故障を潜在的に引き起こす可能性がある。自己拡張式のステントの場合に、その保持用のシースを後退することにより薬物、薬剤または化合物がそのステントから擦れ落ちる可能性がある。また、バルーン拡張式のステントの場合には、そのバルーンの拡張により、薬物、薬剤または化合物がそのバルーンとの接触または拡張によりそのステントから単純に剥がれ落ちる可能性がある。それゆえ、前記のような潜在的な問題はステント等のような有効な治療用の医療装置を有することにおいて重要である。
【0238】
前記の問題を実質的に減少するために利用できる多数の方法がある。一例の例示的な実施形態において、潤滑剤または離型剤が利用できる。これらの潤滑剤または離型剤は任意の適当な生体適合性で潤滑性の被膜を構成することができる。例示的な潤滑性の被膜はシリコーンを含むことができる。この例示的な実施形態においてシリコーンを基材とする被膜の溶液をバルーン表面の上、高分子基材の上、および/または自己拡張式のステント送達装置のシースの内面の上に導入して自然に空気により硬化させることができる。あるいは、前記シリコーン基材型の被膜を高分子基材の中に組み込むことも可能である。しかしながら、材料が生体適合性であること、また、その材料が薬物、薬剤または化合物の作用/効果に影響を及ぼさないこと、さらに、その材料が医療装置にそれらの薬物、薬剤または化合物を固着させるために利用されている材料に影響を及ぼさないことを基本的な必要条件として、多数の潤滑性の材料が利用可能になることに注目することが重要である。また、前記の方法の1つ以上またはそれらの全部が組み合わせにおいて利用可能であることに注目することも重要である。
【0239】
次に図20において、原位置においてステントを拡張させるために利用できるバルーン式カテーテルにおけるバルーン400が示されている。図示のように、このバルーン400は潤滑性の被膜402を備えている。この潤滑性の被膜402はこの医療装置における被膜とバルーン400との間の接着を最小限にするか実質的に無くすように機能する。前記の例示的な実施形態において、潤滑性の被膜402はバルーン400とヘパリン(heparin)またはラパマイシン(rapamycin)の被膜との間の接着を最小限にするか実質的に無くすと考えられる。この潤滑性の被膜402は溶液または懸濁液からの被膜材料の浸漬、噴霧、はけ塗りまたはスピン・コーティング処理の後に必要に応じて硬化するか溶媒を除去する工程を含むがこれに限らない多数の方法でバルーン400に取り付けおよび維持できる。
【0240】
例えば、ジエチレングリコール・モノステアレート(diethyleneglycol monostearate)、水素添加キャスター・オイル(hydrogenated castor oil)、オレイン酸(oleic acid)、ステアリン酸(stearic acid)、ステアリン酸亜鉛(zinc stearate)、ステアリン酸カルシウム(calcium stearate)、エチレンビス(ステアラミド)(ethylenebis(stearamide))等のような合成ワックス、パラフィン・ワックス、鯨蝋、ブラジルロウヤシワックス、アルギン酸ナトリウム(sodium alginate)、アスコルビン酸(ascorbic acid)および小麦粉等のような天然産物、ペルフルオロアルカン(perfluoroalkanes)、ペルフルオロ脂肪酸(perfluorofatty acids)、およびアルコール等のようなフッ素化化合物、例えば、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane)等のようなシリコーン、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリフルオロエーテル(polyfluoroether)を含む合成ポリマー、例えば、ポリエチレン・グリコール・ワックス(polyethylene glycol wax)等のようなポリアルキルグリコール、さらに、タルク、カオリン、雲母、およびシリカ等のような無機材料を含む材料が前記の被膜の調製に使用できる。さらに、前記の潤滑性被膜を調製するために、例えば、パリレン−C(parylene-C)蒸着等の蒸着重合化処理、またはペルフルオロアルケン(perfluoroalkenes)およびペルフルオロアルカン(perfluoroalkanes)のRFプラズマ重合化等が使用可能である。
【0241】
図21は図1において示されているステント100における帯域部分102の断面図である。この例示的な実施形態において、その潤滑性被膜500は高分子被膜の外表面部に固着されている。前述のように、薬物、薬剤または化合物を高分子基材の中に組み込むことができる。図21において示されているステント帯域部分102はポリマーおよびラパマイシン(rapamycin)を含む基部被膜502およびポリマーを含む上部被膜504または拡散層504を有している。前記の潤滑性被膜500は前記上部被膜を形成するために使用するポリマーを含んでいても含んでいなくてもよい溶液または懸濁液による塗布材料の噴霧、はけ塗り、浸漬またはスピン・コート処理の後に必要に応じて硬化処理または溶媒を除去する工程を含むがこれに限らない任意の適当な手段により上部被膜502に固着できる。さらに、蒸着重合化およびRFプラズマ重合化もまた前記の上部被膜にこれらの蒸着方法に役立つ潤滑性の塗膜材料を固着させるために使用できる。また、別の例示的な実施形態において、前記潤滑性の被膜は前記高分子基材の中に直接的に組み込むことができる。
【0242】
自己拡張式のステントを用いる場合に、前記の潤滑性の被膜を拘束用のシースの内表面部に固着させることができる。図22は送達装置のシース14の内孔部の中における自己拡張式のステント200の部分断面図を示している。図示のように、潤滑性の被膜600がシース14の内表面部に固着されている。従って、ステント200の配備時において、潤滑性の被膜600は好ましくはシース14と薬物、薬剤または化合物により被覆したステント200との間の接着を最小限にするか実質的に無くす。
【0243】
代替的な手法において、物理的および/または化学的な架橋方法が薬物、薬剤または化合物を含有している高分子被膜と医療装置の表面との間、または薬物、薬剤または化合物を含有している高分子被膜とプライマーとの間の結合強度を改善するために適用できる。あるいは、浸漬、噴霧またはスピン・コート処理等のような従来的な塗布方法、あるいは、RFプラズマ重合化のいずれかにより供給できる別のプライマーもまた前記の結合強度を高めるために使用できる。例えば、図23において示されているように、気相重合したパリレン−C(parylene-C)等のようなプライマー層700を一つの装置の表面上に最初に蒸着した後に、第2の層702を配置することにより前記の結合強度を高めることができ、この第2の層702は、例えば、ポリエチレン−コ−ビニル・アセテート(polyethylene-co-vinyl acetate)またはポリブチル・メタクリレート(polybutyl methacrylate)等のような薬物含有の基材704を作成している1種類以上のポリマーに化学組成が類似しているが、多数の架橋部分を含むように改変されている。その後、この第2の層702を紫外光に曝露してから前記プライマーに架橋する。なお、当該技術を熟知している者であれば、活性剤の有無にかかわらず加熱により活性化される架橋剤を用いて類似の結果が達成可能であることが認識できることに注目する必要がある。その後、前記の薬物含有基材704が前記第2の層702を部分的にまたは完全に膨潤させる溶媒を用いて当該第2の層702の上に層として形成される。このことはポリマー鎖の前記基材から第2の層702の中への混入を促進し、逆に、第2の層702から薬物を含有している基材704の中への混入も促進する。その後、前記被覆層から溶媒を除去すると、前記ポリマー鎖の内部浸透性のまたは相互係合性の網状構造が前記の層の間に形成されて、これらの間の接着強度が高まる。さらに、上部被膜706が前述のように用いられている。
【0244】
関連の困難さがステント等のような医療装置において生じる。薬物を被覆したステントの圧着状態において、一部の支柱部は互いに接触し、ステントが拡張している時に、その動作により薬物、薬剤または化合物を含有している前記の高分子被膜が付着して伸びる。この動作はその被膜を特定の領域内においてステントから分離可能にする可能性がある。この被膜の自己接着の主なメカニズムは機械的な力によると考えられる。前記ポリマーがそれ自体と接触すると、そのポリマー鎖が絡み合ってベルクロ(Velcro)(登録商標)に類似している機械的な結合を生じる。また、例えば、フルオロポリマー等のような特定のポリマーは互いに結合しない。しかしながら、他のポリマーの場合には、粉末が利用できる。換言すれば、粉末が前記の機械的な結合力を低下させるために前記医療装置の表面部分における薬物、薬剤またはその他の化合物を含有している1種類以上のポリマーに供給できる。前記の薬物、薬剤および化合物、または前記医療装置の上に薬物、薬剤または化合物を固着させるための材料に対して干渉しない任意の適当な生体適合性の材料が使用可能である。例えば、水溶性の粉末によるダスティング処理(dusting)は前記被膜の表面における粘着性を減少させることができ、このことは前記ポリマーがそれ自体で付着することを防ぐので剥がれの可能性が減少できる。さらに、前記の粉末は塞栓の危険性を生じないように水溶性にする必要がある。また、この粉末はビタミンC等のような酸化防止剤を含むことができ、アスピリン(aspirin)またはヘパリン(heparin)等のような抗凝固剤を含むことができる。前記の酸化防止剤を利用する利点は比較的に長い時間の期間において他の薬物、薬剤または化合物を保存できるという事実にあると考えられる。
【0245】
結晶質のポリマーが一般に付着性または粘着性を持たないことに注目することが重要である。従って、結晶質のポリマーが非晶質のポリマーの代わりに用いられる場合に、付加的な材料が不要になる可能性がある。また、薬物、薬剤および/または化合物を伴わない高分子被膜が前記医療装置の動作特性を改善できることに注目することも重要である。例えば、前記医療装置の機械的特性は薬物、薬剤および/または化合物を伴うか伴わない高分子被膜により改善できる。また、被覆されたステントは改善された柔軟性および向上された耐久性を有することができる。加えて、前記の高分子被膜は前記医療装置を構成している異なる金属材料の間の電蝕を実質的に減少するか無くすことができる。さらに、同じことが吻合装置についても言える。
【0246】
前述のように自己拡張式のステントの場合に、前記拘束用のシースの後退により薬物、薬剤または化合物がステントから剥がれ落ちる可能性がある。従って、代替的で例示的な実施形態において、前記ステント送達装置は皮膜の剥がれ落ちの潜在性を減少するために改良できる。このことは、例えば、ラパマイシン(rapamycin)被覆処理した長いステント等のような、長いステントにおいて特に重要である。加えて、前記の送達シースがステント配備中に後退する際にそのステント自体を損傷する潜在性も存在している。従って、このようなステント送達装置は力を当該ステントの比較的に広い領域に分配することによりそのステントの特定領域に作用する力を実質的に減少するように改良できる。なお、本明細書において説明されているステントおよびステント送達システムは本質的に単に例示的であることを目的としており、当業者であれば、開示されている設計を多数のステントおよびステント送達システムに組み込むことが可能であることが認識できる。
【0247】
図35および図36は本発明による例示的な自己拡張式のステント送達装置5010を示している。この装置5010は内側および外側の同軸状のチューブを有している。この内側チューブは軸部5012と呼ばれており、外側チューブはシース5014と呼ばれている。さらに、自己拡張式のステント7000がシース5014の中に配置されており、この場合に、このステント7000はシース5014に対して摩擦を伴って接触しており、前記軸部5012はこのステント7000の内腔部の中に同軸に配置されている。
【0248】
前記軸部5012は近位側または基端側の端部5016および遠位側または先端側の端部5018をそれぞれ有している。この軸部5012の基端部5016はこれに取り付けられているルア・ガイドワイヤ・ハブ5020を有している。図44により最良に示されているように、前記軸部5012の基端部5016は好ましくは研削処理されたステンレス・スチール製の皮下注射管である。一例の例示的な実施形態において、この皮下注射管はステンレス・スチール製であり、その基端部において1.067ミリメートル(0.042インチ)の外径を有しており、その先端部における0.914ミリメートル(0.036インチ)の外径までテーパー状になっている。また、この皮下注射管の内径はその長さの全体にわたり0.813ミリメートル(0.032インチ)である。前記のようなテーパー状の外径部分はその皮下注射管の剛性をその長さに沿って徐々に変化させるために利用されている。さらに、このような皮下注射管の剛性における変化はステントの配備中に必要とされる基端部またはハンドル端部のより高い剛性を可能にしている。この基端部が十分な剛性でなければ、以下において説明されているそのツオヒー・ボースト弁(Tuohy Borst valve)から先に延出している皮下注射管の部分が配備のための力が伝達される時に曲がる可能性がある。一方、この皮下注射管の先端部は比較的に柔軟であり、曲りくねった脈管の中における比較的に良好な追随能力を可能にしている。また、この皮下注射管の先端部はこの皮下注射管と以下において説明されているコイル部分との間における移動を最小限にするために柔軟であることが必要である。
【0249】
以下においてさらに詳細に説明されているように、前記軸部5012は本体部分5022を有しており、この場合に、その少なくとも一部分は圧縮されたまたは閉じられた状態のコイルばねに極めてよく似ている柔軟なコイル状の部材5024により形成されている。軸部5012はまた前記本体部分5022よりも先端側に先端側部分5026を有しており、この先端側部分5026は好ましくは高密度ポリエチレンおよびナイロン(Nylon)(登録商標)の同時押出物により作成されている。前記の2つの部分5022および5026は熱融着、接着剤による結合、化学的な結合または機械的な連結等を含む当業者において知られている多数の手段により一緒に連結されている。
【0250】
図37において最良に示されているように、前記軸部5012の先端側部分5026はこれに取り付けられている先端部分5028を有している。この先端部分5028は多層構造または単層構造を含むポリアミド、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、およびポリエチレンを含む当業界において知られている多数の適当な材料により作成できる。前記の先端部分5028は基端部5030を有しており、その直径は当該基端部5030の直ぐ近くのシース5014の外径と実質的に同一である。また、この先端部分5028はテーパー状であり、その基端部5030からその先端部5032まで直径が徐々に小さくなっており、この場合に、この先端部分5028の先端部5032は前記シース5014の内径よりも小さな直径を有している。
【0251】
前記のステント送達装置5010はそのステントの配備部位までの操縦中にガイドワイヤ8000(図35において示されている)の上を摺動する。本明細書においては、このガイドワイヤは本発明に含まれている先端側保護装置を有する類似の案内装置も意味することができる。なお、一例の好ましい先端側保護装置が1998年2月3日の国際出願日を有する公開PCT特許出願第98/33443号において開示されている。前述のように、前記先端部分5028の剛性が過度に高いと、この先端部分5028はガイドワイヤの経路に必要以上の力を加えてこのガイドワイヤ8000を内腔の壁部に対して押し当てるために、一部の極めて曲りくねった設定においては、そのステント送達装置5010がワイヤから外れる可能性がある。このようなワイヤにおける過度の力および内腔壁部に対する装置の押し付けは、ガイドワイヤがその装置を配向し得なくなるために、その装置が標的領域に到達することを妨げる可能性がある。また、前記装置が進行して内腔壁部に対して押し当てられるので、その病巣からの破片が移動して上流側に送られるためにその遠位側の脈管の内腔に合併症が生じる可能性がある。前記先端部分5028は極めて柔軟な先導用のエッジ部分および比較的に柔軟性の低い部分に到る段階的な遷移部分を伴って設計されている。また、この先端部分5028は中空にすることができ、40D・ナイロン(40D Nylon)(登録商標)を含む多数の適当な材料により作成できる。さらに、その柔軟さはその断面の直径の厚さを徐々に増加することにより変更可能であり、これにより、その直径はその先端部において最小であり、その基端部において最大になる。すなわち、先端部分5028の断面の直径および壁部の厚さは基端側の方向に移動するのに従って増大する。このことにより、先端部分5028における比較的に直径が大きく壁厚の大きい、比較的に柔軟性の低い部分が前記ガイドワイヤに過度の力を加える前に、そのガイドワイヤにより配向される能力が先端部分5028の先端部5032に与えられる。一方、このワイヤに対して過度の力が加えられると、前述のように、その装置はその剛性によりワイヤに追随することなくその装置の方向を定めるようになる。
【0252】
前記ガイドワイヤの内腔部5034は、前記ガイドワイヤ8000と先端部分5028における当該ガイドワイヤの内腔部5034との間にわずかな摩擦係合が存在するように、推奨されている寸法のガイドワイヤに近づくことに適合する直径を有している。この先端部分5028はその先端側の部分5032と基端側の部分5030との間に丸みを付けた部分5036を有している。このような構成はシース5014が先端部分5028を越えて先端側に滑り動くことを防いでおり、このような動きは当該シース5014における四角いエッジ部分が脈管に対して露出してその脈管に損傷を与える可能性がある。さらに、前記の構成は前記装置の「押出性」を改善している。従って、先端部分5028が抵抗に会うと、この先端部分5028はシース5014がこの部分を乗り越えてそのシース5014の四角い切断端部を露出させないように作用する。その代わりに、前記シース5014は先端部分5028の丸みを付けた部分5036に接触し、これにより、加えられる力がその先端部分5028に伝達される。この先端部分5028はまた基端側にテーパー状になっている部分5038も有しており、この部分5038はステントの支柱部の端部またはその他の内腔内の直径における不規則な構造に対して引っかかる可能性のある鋭いエッジ部分を備えることなく配備されるステント7000の中を通して先端部分5028を案内することに役立つ。
【0253】
前記軸部5012の先端側部分5026に停止部材5040が取り付けられており、この停止部材5040は前記の先端部分5028およびステント7000よりも基端側にある。この停止部材5040はステンレス・スチールを含む当業界において知られている多数の適当な材料により作成可能であり、さらに好ましくは、プラチナ、金−タンタル等のような高度に放射線不透過性の材料、または放射線不透過剤を充填したポリマー等により作成されている。この停止部材5040は機械的なまたは接着剤による結合を含む任意の適当な手段により、あるいは、当該当業者により知られている任意の別の手段により前記軸部5012に取り付けることができる。好ましくは、この停止部材5040の直径は前記シース5014に対して摩擦による接触を伴わずに装填されるステント7000に対して十分に接触するために十分な大きさである。以下において説明されているように、前記停止部材5040は、ステント配備のためのシース5014の後退中に当該シース5014の中にステント7000が基端側に移動することを防ぐことにより、当該ステント7000を「押し出す」こと、および配備中におけるその相対的な位置を維持することに役立つ。また、前記放射線不透過性の停止部材5040は、以下において説明されているように、脈管の中における配備中にその標的の病巣領域の中にステント7000を位置決めすることに役立つ。
【0254】
ステント・ベッド5042が前記の先端部分5028と停止部材5040との間における前記軸部5012の部分として定められている(図36)。このステント・ベッド5042およびステント7000は同軸であり、当該ステント・ベッド5042を含む軸部5012の先端側部分5026はステント7000の内腔部の中に配置されるようになっている。このステント・ベッド5042は前記軸部5012とシース5014との間に存在している空間部分によりステント7000に対して最小限の接触を行なう。ステント7000はそのオーステナイト相変換における温度を受けるので、シース5014の中において半径方向に外側に移動することによりそのプログラムされている形状に復帰しようとする。一方、シース5014は、以下において詳細に説明されているように、前記のようなステント7000を拘束する。さらに、軸部5012に取り付けられている装填されたステント7000の先端部よりも先端側に放射線不透過性のマーカー5044があり、このマーカー5044はプラチナ、イリジウム、被覆処理したプラチナ、金−タンタル、ステンレス・スチール、放射線不透過剤を充填したポリマーまたは当業界において知られている任意の別の適当な材料により作成可能である。
【0255】
図36,37および44から分かるように、前記軸部5012の本体部分5022は、閉鎖型のコイルまたは圧縮状のばねに類似している、柔軟なコイル状の部材5024により作成されている。前記ステント7000の配備中に、前記停止部材5040からルア・ガイドワイヤ・ハブ5020に対する圧縮力の伝達は配備の精度における重要な要因である。すなわち、軸部5012の圧縮性が高くなるほど、配備の精度が低下し、この理由は、X線透視画像処理におけるステント7000の可視化においては軸部5012の圧縮は考慮されないためである。しかしながら、軸部5012の圧縮性が低くなるほど、通常において柔軟性が低下し、このことにより、装置5010の曲りくねった脈管の中を操縦するための能力が低下すると考えられる。コイル状の組立体は前記のような柔軟性および圧縮に対する抵抗性の両方を可能にする。すなわち、前記装置5010が動脈の中を通して操縦される際に、その軸部5012が圧縮しないので、そのコイル状の部材5024は送達経路に対して自由に屈曲できる。さらに、ステント7000を配備する場合に、シース5014がその中に包まれているステント7000の上を後退する際に、このシース5014に張力が加わる。一方、このステント7000は自己拡張式であるので、このステント7000は前記シース5014に対して接触して前記の力がステント7000に沿って軸部5012の停止部材5040に移される。このことにより、軸部5012に圧縮力が加わる。この現象が生じると、前記柔軟性のコイル状の部材5024はその各コイル部材の間に隙間がなくなり、各コイル間を伝わって前記の圧縮力が移される。
【0256】
前記の柔軟なコイル状の部材5024はさらに屈曲および圧縮の両方のモードにおいて当該コイル状の部材5024の曲がりに対して抵抗することに役立つためにこの柔軟なコイル状の部材5024の上に嵌着している被覆部分5046を有している。この被覆部分5046は押出成形されたポリマー・チューブであり、好ましくは前記の柔軟なコイル状の部材5024の屈曲に適応するためにわずかに延びるが、各コイルが互いに乗り越えることを可能にしない軟質の材料である。この被覆部分5046はナイロン(Nylon)(登録商標)および高密度ポリエチレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)等の同時押出物を含む多数の適当な材料により作成可能である。この押出物はまた前記停止部材5040に連結している。また、前記の柔軟なコイル状の部材5024はステンレス・スチール、ニチノール(Nitinol)、および剛性ポリマーを含む当業界において知られている多数の材料により作成可能である。一例の例示的な実施形態において、前記の柔軟なコイル状の部材5024は0.076ミリメートル(0.003インチ)の厚さ×0.254ミリメートル(0.010インチ)の幅のステンレス・スチール製のリボン・ワイヤにより作成されている。このワイヤは丸形でもよく、さらに好ましくは前記の柔軟なコイル状の部材5024の外形を減少するために平坦である。
【0257】
前記シース5014は好ましくは高分子のカテーテルであり、シース・ハブ(図35)に到達している基端部5048を有している。このシース5014はまた前記軸部5012の先端部分5028の基端部5030まで到達している先端部5052も有しており、この場合に、ステント7000は図36において示されているような無配備状態である。前記シース5014の先端部5052はその外表面部に沿って配置されている放射線不透過性のマーカー帯域部分5054を有している(図35)。以下において説明されているように、前記ステント7000は前記マーカー帯域部分5054が放射線不透過性の停止部分5040よりも基端側にある時に完全に配備されるので、医者に対して前記送達装置5010が身体から安全に除去できる時点を示すことができる。
【0258】
図36において詳細に示されているように、前記シース5014の先端部5052は拡大された部分5056を含む。この拡大された部分5056は当該拡大された部分5056よりも基端側のシース5014の内径および外経よりも大きな内径および外経を有している。また、この拡大された部分5056は予備装填状態のステント7000、停止部材5040およびステント・ベッド5042を収容している。前記の外側シース5014はその拡大された部分5056の基端部において比較的に小さな寸法の直径部分まで基端側にテーパー状になっている。なお、この設計は参照により本明細書に組み入れられている1999年2月3日に出願されている同時係属の米国特許出願第09/243,750号においてさらに詳細に記載されている。前記の拡大された部分5056よりも基端側のシース5014の外径寸法における減少に対する一例の特定の利点は、送達装置5010と、当該送達装置5010が内部に配置される案内用のカテーテルまたはシースとの間の隙間の増加である。X線透視により、医者は送達装置5010をその案内用のカテーテルの中に配置した状態で当該案内用のカテーテルまたはシースの中に放射線不透過性の溶液を注入することにより、ステントの配備の前後において、脈管内の標的部位の画像を見ることができる。従って、前記の拡大された部分5056よりも基端側のシース5014の外径部分をテーパー状にするか縮小することにより当該シース5014と前記案内用のカテーテルとの間の隙間が増大するので、比較的に高い注入速度が達成可能になり、医者にとってその標的部位の比較的に良好な画像が得られる。さらに、このシース5014におけるテーパー状の部分は前記ステントの配備の前後の両方において放射線不透過性の溶液の比較的に高い注入速度を提供している。
【0259】
比較的に早期の自己拡張式のステント送達システムに伴う一つの問題は、そのステントが配置されるシースの中に埋め込まれるという問題であった。図45において、ステントがシースの中に埋め込まれることを実質的に予防するために効果的に利用できると共に、以下において詳細に説明されているような別の利点を適用できるシースの構成が示されている。図示のように、このシース5014は少なくとも2つの層、好ましくは3つの層の複合的な構造を有している。外側の層5060は任意の適当な生体適合性の材料により形成できる。好ましくは、この外側の層5060はシース5014の挿入および除去を容易にするための潤滑性の材料により形成されている。好ましい実施形態において、この外側の層5060はナイロン(Nylon)(登録商標)等のような高分子材料を含む。また、内側の層5062も任意の適当な生体適合性の材料により形成できる。例えば、この内側の層5062はポリエチレン、ポリアミドまたはポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)を含む多数のポリマーにより形成できる。好ましい実施形態において、この内側の層5062はポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)を含む。ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)はまた潤滑性の材料であり、この材料はステントの送達を比較的に容易にするので、ステント7000に対する損傷を防ぐ。さらに、内側の層5062も別の材料により被覆してその潤滑性を高めてステントの配備を容易にすることが可能である。多数の適当な生体適合性の材料が利用できる。例示的な実施形態において、シリコーンを基材とする被膜が利用できる。本質的に、シリコーンを基材とする被膜の溶液を装置の中に注入して室温において硬化させることができる。このようなシリコーンを基材とする被膜の量はこの被膜のステント7000に対する移動を防ぐために最小限にする必要がある。さらに、ワイヤ補強層5064が前記の外側層および内側層5060および5062のそれぞれの間に挟まれている。このワイヤ補強層5064は多数の形態を採ることができる。この例示的な実施形態においては、このワイヤ補強層5064は単純な下方および上方の織目または編組パタンを有している。さらに、このワイヤ補強層5064を形成するために使用するワイヤは任意の適当な材料を含み、任意の適当な断面形状を有することができる。なお、図示の例示的な実施形態においては、このワイヤ補強層5064を形成しているワイヤはステンレス・スチールを含み、実質的に円形の断面を有している。さらに、目的の用途に応じて機能するために、前記ワイヤは、以下において詳細に説明されているように、0.051ミリメートル(0.002インチ)の直径を有している。
【0260】
前記シース5014を構成している3つの層5060,5062および5064は集合的にステントの配備能力を高めている。これらの内の外側層5060は全体の装置5010の挿入および除去を容易にしている。また、内側層5062およびワイヤ補強層5064はステント7000がシース5014の中に埋め込まれることを防ぐように機能する。本発明のステント7000等のような自己拡張式のステントは所与の温度においてそれぞれのプログラムされた直径に拡張する傾向がある。このようなステントは拡張することを目的としているので、このステントは半径方向に外側に向いている力を生じて、その拡張を拘束している前記シース5014の中に埋め込まれる可能性がある。従って、ワイヤ補強層5064は内側層5062に対して半径方向またはフープ方向に沿う強度を賦与することにより、シース5014内におけるステント7000の外側に向いている半径方向の力に対する十分な抵抗力を形成している。この内側層5062はまた、前述のように、ステント7000を配備するために必要とされる力を減少するための比較的に低い摩擦係数(一般的に約2.27キログラム〜3.63キログラム(約5〜8ポンド)の範囲内)の表面を備えている。このワイヤ補強層5064はまたシース5014に対して引張強度も賦与している。換言すれば、このワイヤ補強層5064は比較的に良好な押出性、すなわち、前記シース5014における基端側の位置において医者により先端部分5028に対して力を伝達する能力を賦与しており、この能力は脈管内における引き締まった狭窄領域の中を通して操縦することにおいて役立つ。また、前記ワイヤ補強層5064はステント配備のためのシースの後退中における張力の負荷の結果としての伸びおよびネッキングに対する比較的に良好な抵抗力もシース5014に賦与する。
【0261】
前記シース5014はその全長に沿って、あるいは、例えば、ステント7000の長さに沿っている特定の部分においてのみ、3つの層すべてを有することができる。好ましい実施形態において、前記シース5014はその長さ全体に沿って3つの層すべてを有している。
【0262】
従来技術の自己拡張式のステント送達システムはワイヤ補強層を利用していなかった。一般的な自己拡張式ステントの寸法は、バルーン拡張式の冠状動脈ステントに比べると、比較的に大きいために、その送達装置の直径または外形もまた大きくする必要があった。しかしながら、可能な限り小形の送達システムを有することが常に有利である。このことは前記の装置が比較的に小さい脈管の中に到達可能になり、患者に対して引き起こされる外傷が少なくなるという点において望ましい。しかしながら、前述のように、ステント送達装置における薄い補強層の利点は、そのわずかに増大した外形による不都合に優っている。
【0263】
前記装置5010の外形における前記ワイヤ補強層の影響を最小限にするために、このワイヤ補強層5064の形態を改良することができる。例えば、この改良はその編組構造のピッチの変更、ワイヤ形状の変更、ワイヤ直径の変更および/または利用するワイヤの数の変更を含む多数の方法で達成できる。好ましい実施形態において、前記ワイヤ補強層を形成するために利用するワイヤは図46において示されているような実質的に長方形の断面を有している。このような実質的に長方形の断面のワイヤを利用することにおいて、前記補強層5064の強度の特徴はその送達装置の外形における著しい減少を伴って維持できる。このような好ましい実施形態において、その長方形の断面のワイヤは0.076ミリメートル(0.003インチ)の幅および0.025ミリメートル(0.001インチ)の高さを有している。従って、図45と類似の様式でこのワイヤを編み組むことにより、ワイヤ補強層5064の厚さを50%減少させると共に、0.051ミリメートル(0.002インチ)の丸形のワイヤと同一の有益な特性を維持できる。このような平坦なワイヤは任意の適当な材料を含むことができ、好ましくはステンレス・スチールを含む。
【0264】
別の代替的で例示的な実施形態において、前記送達システムにおけるシースはその内表面部において内側層または被膜を有することができ、この被膜はステントがその内部に埋め込まれることを実質的に防ぐと共にその潤滑性を高める。この内側層または被膜は図45および図46において示されている各シースと共に利用可能であり、あるいは、ステント配備の力を減少させるための代替的な手段として利用することもできる。この被膜が薄ければ、以下においてさらに詳細に説明されているように、その送達システムの全体の外形に対する影響は仮に存在したとしても最小限になる。さらに、前記シースの強度を高めてそのシースをさらに潤滑にすることに加えて、前記被膜は極めて生体適合性であり、このことは、この被膜が、たとえ一時的であっても、血液に対して接触するので重要である。
【0265】
本質的に、前記の例示的な実施形態において、硬質で潤滑性の被膜が前記自己拡張式の送達システムにおけるシースの内表面部に供給または固着されている。この被膜は現在において利用されている自己拡張式のステント送達システムに優る多数の利点を提供している。例えば、この被膜はステントが半径方向に外側に向く力を加える硬質の表面を賦与する。前述のように、それぞれの自己拡張式のステントはその送達システムの中に装填された場合に一定の外側に向く力を有する。このような一定の比較的に高い半径方向に外側に向く力は、前記送達システムにおけるシースを構成している高分子材料を押し広げて前記ステントがそのポリマーの表面の中に埋め込まれることを可能にする。さらに、ステントの各プラットホームが比較的に大きな直径のステントおよびこれに続く比較的に大きな半径方向に外側に向く力と共に展開すると、この現象の発生率はさらに高まる。この結果として、その埋め込みにより、ステントの送達装置の中における移動に対する機械的な抵抗力が生じるために、そのステントを配備するために必要とされる力が増大し、これにより、正確な配備が妨げられてステントに損傷が生じる可能性がある。加えて、前記の被膜は潤滑性であり、低い摩擦係数を有している。潤滑な被膜は、前述のように、ステントを配備するために必要とされる力をさらに減少するように機能するので、ステントが医者により送達および配備されるための容易さを高めることができる。このことは比較的に新しい比較的に大きな直径のステントの設計および/または高められた半径方向の力、増大した外形または増大した全体の直径のいずれかを有する薬物/ポリマー被覆型のステントの設計に関連して特に重要である。さらに、潤滑な被膜は薬物/ポリマー被覆型のステントに関連して特に有利である。従って、この被膜は配備前にステントがその送達システムのシースの中に埋め込まれることを防いで、これらのシースとステントとの間の摩擦を減少するように機能し、これら両方の作用は配備の力を減少させる。
【0266】
様々な薬物、薬剤または化合物がステント等のような医療装置を介して局所的に送達できる。例えば、ラパマイシン(rapamycin)および/またはヘパリン(heparin)は再狭窄、炎症および凝固を減少するためにステントにより送達可能である。これらの薬物、薬剤または化合物をステント上に固着させるための種々の技法が知られているが、ステント送達および位置決め中におけるこれらの薬物、薬剤または化合物の保持はその処置または治療の成功において重要である。例えば、ステントの送達中における薬物、薬剤または化合物の除去はその装置の機能不全を生じる可能性がある。自己拡張式のステントの場合に、その拘束用のシースの後退により、薬物、薬剤または化合物がそのステントから剥がれ落ちる可能性がある。それゆえ、このような潜在的な問題の防止はステント等のような有効な治療用の医療装置を得るために重要である。
【0267】
図47は本発明の例示的な実施形態によるステント送達システムにおける軸部および改良されたシースの部分断面図を示している。図示のように、材料の被膜または層5070がシース5014の内周面に固着またはその他の方法により取り付けられている。前述のように、この材料の被膜または層5070は硬質で潤滑性の物質を含む。好ましい実施形態において、前記被膜5070は熱分解カーボンを含む。この熱分解カーボンは多様な植え込み可能な医療用プロテーゼにおいて利用されている周知の物質であり、この物質が組織および血液の優れた相容性と共に高い強度を合せ持っているので、心臓弁において最も一般的に利用されている。
【0268】
植え込み可能な医療装置の領域における前記熱分解カーボンの有用性はその化学的な不活性性、等方性、軽量性、緻密性および弾性を含む物理的および化学的な特性の独特の組み合わせの結果である。この熱分解カーボンはグラファイトの構造に類似している乱層構造炭素(turbostratic carbons)の特異的な系統群に属している。グラファイトにおいて、その炭素原子は比較的に弱い層間結合により層状に重なっている平面状の六角形状の配列に共役的に結合している。一方、乱層構造炭素(turbostratic carbons)においては、その積層の順序が不規則であり、ゆがみが各層の中に存在している可能性がある。これらの層における構造的なゆがみはその熱分解カーボンのすぐれた延性および耐久性の原因である。本質的に、この熱分解カーボンの微少構造はその材料を耐久性にして強靭におよび耐磨耗性にしている。加えて、この熱分解カーボンは高度な凝塊抑制因子であり、血液および軟質組織に対する固有の細胞生体適合性を有している。
【0269】
前記熱分解カーボンの層5070は前記シース5014の全長に沿って、あるいは、図36および図37において示されているステント・ベッド5042の近くにおいてのみ付着させることができる。好ましい実施形態において、この熱分解カーボンの層5070はステント・ベッド5042の領域内におけるシース5014に固着されている。また、この熱分解カーボン5070の層は前記シース5014を構成している高分子材料に対して相容性があり共に使用可能である多数の既知の技法によりその内周面部に付着または固着できる。この熱分解カーボンの層5070の厚さは、前記シース5014の柔軟性を減少することなく、あるいは、前記自己拡張式のステント送達システムの外形を増大させることなく、シース5014の中にステントが埋め込まれることを防止するかその可能性を実質的に減少するように選択される。前述のように、体内における曲りくねった経路において操縦するために柔軟であると共に押し出しが可能であることが重要である。加えて、経皮的に送達される装置の外形を減少することが常に望ましい。
【0270】
前述のように、熱分解カーボンの表面は特に血液に接触する用途に関連して生体適合性であるとして認識されている。しかしながら、このことはステントの送達の用途に関して二次的な利点に過ぎず、その理由は、シース5014内におけるこの熱分解カーボンの層5070の位置が血液に対して最小限に曝露されているだけであり、ステントを送達するために十分な持続時間においてのみ体内に存在しているからである。
【0271】
前記熱分解カーボンの層5070は前述のような多数の方法で前記シースの内腔部に固着できる。一例の例示的な実施形態において、この熱分解カーボンの層5070は前記シース5014の内腔部に直接的に固着できる。また、別の例示的な実施形態においては、前記熱分解カーボンの層5070は当該カーボンの層を同様に多数の既知の技法により種々の支持体に最初に供給することにより、前記シース5014の内腔部に間接的に供給できる。この熱分解カーボンの層5070が前記シース5014に直接的に付着するか最初に支持体の上に付着するかによらず、例えば、化学的蒸着等のような、多数の既知の技法が利用可能である。この化学的蒸着においては、前記のカーボン材料は気相の炭化水素化合物から、例えば、カーボン材料、金属、セラミックスならびにその他の材料等の適当な下層の支持体の上に、約1000°K〜約2500°Kの温度範囲において、蒸着される。このような温度において、支持体をできるだけ利用することが必要であることが理解されると考える。任意の適当な生体適合性で耐久性の柔軟な支持体を利用した後に接着剤等のような周知の技法によりこれを前記シース5014の内腔部に固定できる。前述のように、外形および柔軟性は重要な設計の特徴点であり、それゆえ、選択する支持体の材料の種類および/またはその厚さを考慮する必要がある。さらに、供給源のガスにおける温度、種類、濃度および流量および下層の支持体の表面積を含む蒸着条件に応じて、広範囲の微小構造、例えば、等方性、ラメラ状、支持体−核形成型および残留水素の可変の含有量が生じる可能性があることに注目することが重要である。
【0272】
さらに、前記熱分解カーボンの層5070をシース5014の上に直接的に固着させるか支持体の上に固着させるために利用できる別の技法は、パルス化レーザー・アブレーション蒸着、高周波プラズマ改質、物理的蒸着ならびに別の既知の技法を含む。また、前記の熱分解カーボンに加えて、類似の特性を与えることにおいて有益的であると考えられる別の材料はダイアモンド様炭素被膜、シラン/シリコン・ガラス様表面、およびアルミナ、ヒドロキシアパタイトおよびチタニア等のような薄層セラミック被膜を含む。
【0273】
代替的で例示的な実施形態において、前記の熱分解カーボンの被膜は前記において概説されているような調整されている有限の多孔度を伴って供給できる。このような調整されている有限の多孔度は2種類の異なる利点を提供する。第1に、このような多孔度は前記ステントがこの熱分解カーボンの被膜5070を伴う場合にその接触表面積を減少するために役立つことができ、これにより、そのステントと前記シース5014の内腔部との間の摩擦が減少できる。第2に、生体適合性のオイル、蝋質および粉末等のような潤滑性の材料をその被膜の多孔質な表面の中に注入または含浸することができ、これにより、摩擦係数をさらに減少させる潤滑性の材料の貯蔵手段を備えることができる。
【0274】
図35および図36は前記ステント7000をその完全に無配備な状態として示している。この位置は前記装置5010を脈管の中に挿入してその先端部が一つの標的部位に操縦されている時のステントの位置である。このステント7000は前記シース5014におけるステント・ベッド5042の周囲および先端部5052において配置されている。前記軸部5012の先端部分5028は前記シース5014の先端部5052よりも先端側にある。また、ステント7000は圧縮された状態にあり、シース5014の内表面部に摩擦接触している。
【0275】
患者の体内に挿入される場合に、前記のシース5014および軸部5012はツオヒー・ボースト弁5058によりそれぞれの基端部において一緒に係止されている。これにより、前記ステント7000の時期尚早の配備または部分的な配備を生じる可能性の有るこれらの軸部5012とシース5014との間のあらゆる滑動が阻止されている。その後、ステント100がその標的部位に到達して配備の準備ができると、ツオヒー・ボースト弁5058が開いて、シース5014および軸部5012が一緒の係止状態から解除される。
【0276】
前記送達装置5010がステント7000を配備する方法が図39〜図43に基づいて最良に説明されている。図39において、前記送達装置5010は脈管9000の中に挿入されていて、そのステント・ベッド5042が病気の状態の部位に存在している。医師がステント7000の端部を示している軸部5012における放射線不透過性のマーカー帯域部分5054および停止部材5040が標的の病気の部位の近くに十分に配置されていると決定した時に、医師はツオヒー・ボースト弁5058を開く。その後、医師は軸部5012を固定された位置に保持するためにその軸部5012におけるルア・ガイド・ハブ5020を把持する。次に、医師はシース5014よりも基端側に取り付けられているツオヒー・ボースト弁5058を把持して、図40および図41において示されているように軸部5012に対してそのツオヒー・ボースト弁5058を基端側に摺動させる。停止部材5040はステント7000がシース5014と共に後方に摺動することを防いでおり、これにより、シース5014が後方に移動する時に、ステント7000が当該シース5014の先端部5052から効果的に外に「押し出される」か、標的部位に対して所与の位置に保持される。このステント7000は病気の状態の脈管9000に対して塞栓を形成する可能性を最小限にするために先端側から基端側の方向に配備する必要がある。このステントの配備は、図42において示されているように、シース5014における放射線不透過性の帯域部分5054が放射線不透過性の停止部材5040よりも基端側になる時に完了する。この時点において装置5010はステント7000の中を通して後退可能になり、患者から除去される。
【0277】
図36および図43は本発明に関連して使用できるステント7000の好ましい実施形態を示している。このステント7000は、図36において、配備される前の、その無配備の圧縮状態において示されている。このステント7000は好ましくはニチノール等のような超弾性合金により作成されている。最も好ましくは、このステント7000は約50.5%(本明細書においては、これらの%値は原子の存在率を意味している)のNi〜約60%のNi、最も好ましくは約55%のNiを含有していて、合金の残りの部分Tiを伴う合金により作成されている。好ましくは、このステント7000は体温において超弾性状態であり、好ましくは約21℃〜約37℃の範囲内のAf温度を有する材料である。このようなステントの超弾性の設計により、前述のように、そのステントを回復可能につぶすことができ、異なる用途における多数の脈管装置に対応するステントまたはフレームとして使用できる。
【0278】
ステント7000は前方および後方の各端部が開放した管状の部材であり、長手軸がこれらの端部の間に延在している。この管状の部材は患者の体内に挿入して脈管の中を通して操縦するための第1の比較的に小さな直径(図30)、および一つの脈管における標的領域の中において配備するための第2の比較的に大きな直径を有している。この管状の部材はその前後の端部の間に延在している複数の隣接しているフープ7002により作成されている。さらに、これらのフープ7002は複数の長手方向に沿う支柱部7004および隣接している各支柱部を接続している複数のループ7006を含み、この場合に隣接している各支柱部は対向している各端部においてそれぞれ接続していて実質的にS字またはZ字の形状のパタンを形成している。前記ステント7000はさらに隣接している各フープ7002を接続している複数の湾曲状の架橋部7008を含む。さらに、これらの架橋部7008は一つのループの中心からずれている各ループの接続点に対する架橋部において隣接している支柱部を一緒に接続している。
【0279】
前記のような形状は前記ステントの全体におけるひずみを比較的に良好に分配することに役立ち、ステントの屈曲時に金属同士の接触を防ぎ、各特徴部分、支柱部、ループおよび架橋部の間の開口寸法を最小限にすることに役立つ。これらの支柱部、ループおよび架橋部の設計における数および性質は、ステントの動作特性および疲れ寿命特性を決定する際の重要な要因である。好ましくは、各フープ24〜36つまたはそれ以上の支柱部を有している。さらに、ステントは、フープ1つあたりの支柱の数に対する支柱の長さ(インチ単位)の比率が200より大きいことが好ましい。なお、この支柱部の長さはそのステントの長手軸に対して平行な圧縮状態において測定されている。
【0280】
各特徴部分に与えられる最大のひずみを最小限にするために、前記ステントは他の部分よりも破壊しにくいステントの各領域にひずみを分配する構造的な形状を利用している。例えば、ステントにおける一例の損傷しやすい領域は接続用の各ループの内側の半径部分である。これらの接続用のループはステントの全ての特徴部分における最大の変形を受ける。さらに、このループの内側の半径部分は通常においてそのステントにおける最大のひずみを有する領域になると考えられる。この領域はまた通常的にステントにおける最小限の半径部分である点において重要である。すなわち、応力の集中は可能な限りに最大の半径を維持することにより全体的に制御または最小化される。同様に、本発明者は架橋部および架橋部から各ループの接続点に到る部分における局所的なひずみの集中を最小限にすることを望んでいる。このことを達成するための一例の方法は、加えられる力に相当する各特徴部分の幅を維持しながら可能な限り最大の半径を利用することである。また、別の考えは、ステントにおける最大の開口面積を最小限にすることである。ステントを切り出す元のチューブの効率的な利用により、そのステントの強度および塞栓性の物質を捕捉する能力を増大できる。
【0281】
前述のように、ポリマーおよび薬物、薬剤および/または化合物の組み合わせにより被覆されているステントはそのステントの配備中にそのステントに作用する力を増大させる可能性がある。このような力の増加はステントを損傷させる可能性がある。例えば、前述のように、配備中に、前記のステントはその外側のシースを後方に摺動させる力に打ち勝つために停止部材に対して押し当てられる。例えば、200mmよりも長い、比較的に長いステントの場合に、シースの後退中にそのステントの端部に加えられる力は過剰になる可能性があり、そのステントの端部またはそのステントにおける他の部分に対して損傷を引き起こす可能性がある。従って、そのステントの比較的に大きな領域全体にその力を分配するステント送達装置が有益的であると考えられる。
【0282】
図48はステント送達部分における改良された軸部5012を示している。この例示的な実施形態において、軸部5012は複数の起立部分5200を有している。これらの起立部分5200は任意の適当な寸法および形状を有することができ、任意の適当な様式で形成できる。また、これらの起立部分5200は前記軸部5012を形成している材料を含む任意の適当な材料を含むことができる。また、これらの起立部分5200の数も変更可能である。本質的に、これらの起立部分5200はステント7000の各要素の間における開口状の空間部分を占有できる。また、これらの空間部分は全て充填可能であり、選択した空間部分を充填することも可能である。換言すれば、前記の起立部分5200のパタンおよび数は好ましくはそのステントの設計により決定される。なお、図示の実施形態においては、前記の起立部分または突出部分5200は隣接している各フープ7002において隣接している各ループ7006の間および各架橋部7008の間において形成されているそれぞれの空間部分を占有するように配列されている。
【0283】
前記の起立部分5200は多数の方法において形成できる。例えば、これらの起立部分5200は加熱されたクラムシェル金型またはワッフル・焼き型加熱ダイによる方法により形成できる。いずれの方法も複数の突出部分を含む内側軸部の低コストの大量生産を可能にする。
【0284】
前記の起立部分5200の寸法、形状およびパタンは任意のステント設計に適合させるために変更可能である。これらの起立部分5200のそれぞれの高さは好ましくは内側の軸部5012と外側のシース5014との間に存在しているわずかな隙間を補う程度に十分に大きい。さらに、前記軸部5012における起立部分または突出部分5200の高さHは、軸部5012の外径IM(r)とシース5014の内径OM(r)との間の半径における差から、前記装置またはステント7000の壁厚WTを差し引いた値よりも、その最小値において、大きいことが好ましい。この関係を表している式は以下のように与えられる。
H>(OM(r)−IM(r))−WT
【0285】
例えば、前記軸部5012が2.03ミリメートル(0.08インチ)の外径を有し、前記シース5014が2.54ミリメートル(0.1インチ)の内径を有していて、前記ステント7000の壁厚が0.203ミリメートル(0.008インチ)である場合に、前記の起立部分または突出部分5200の高さは以下の値になる。
【数1】


【0286】
前記起立部分5200の高さは好ましくはこれらの突出部分5200が圧縮可能でなければ前記シースの半径と前記軸部の半径との間の差よりも小さいことに注目することが重要である。
【0287】
それぞれの起立部分5200は小形であるが、これらの起立部分5200の数を増やすことができ、各起立部分5200は小さな量の力をステント7000の異なる部分に加えるので、これにより、ステント7000を配備する力を分配してステント7000の特にその基端部における損傷を防ぐことができる。前記起立部分5200はまたステント7000をその送達システムの中に装填する途中においてそのステント7000を保護する。本質的に、配備中にステント7000に作用する力と同一の力が装填中においてもそのステント7000に作用する。このステントの長手方向の柔軟性は、反復可能な短縮および正確な配置を確実に行なうために、そのステントが解放または配備される時にできるだけ小さな力をそのステントに加えることを必要としている。本質的に、前記ステント7000の長手方向の移動がその配備中に無いこと、または実質的に減少されてステント圧縮が無くなるか実質的に減少されることが好ましい。従って、前記の起立部分5200が無ければ、ステント7000の配備時に、前記の圧縮力が前記の送達システムならびにステント7000を圧縮することになる。さらに、この圧縮のエネルギーは配備時に解放されて、ステント7000の正確な配置の可能性を低下させ、ステントの「跳び上がり」の可能性の原因になる。一方、起立部分5200が存在すれば、そのステント7000は移動しにくくなり、これにより、圧縮が無くなるか実質的に減少できる。
【0288】
一例の代替的で例示的な実施形態において、前記ステントがその送達装置の軸部に位置決めされると、このステントは加熱可能であり、外部から加圧することによりその送達システムの内側軸部の中に鏡像様の陰影を作成することができる。さらに、この陰影は三次元的な表面を構成し、この表面は前記シースが後退する時にステントがその位置を維持することを可能にする。この三次元的な陰影は熱のみ、圧力のみ、あるいは、別の装置により作成可能である。
【0289】
前記の医療装置はいずれもその装置のすぐ周辺ではない別の領域への薬物、薬剤および/または化合物の局所的な送達のために利用できる。また、全身系的な薬物送達に付随する合併症の可能性を回避するために、本発明の医療装置は当該医療装置の近くの領域に治療用の薬剤を送達するために利用可能である。例えば、ラパマイシン(rapamycin)被覆したステントはそのラパマイシン(rapamycin)をそのステントの周囲の組織だけでなくそのステントの上流側およびそのステントの下流側の各領域にも送達することができる。組織の浸透性の程度は前記の薬物、薬剤または化合物、その薬物の濃度およびその薬剤の放出速度を含む多数の要因により決まる。さらに、同一のことが被覆処理された吻合装置においても言える。
【0290】
前記の薬物、薬剤および/または化合物/キャリヤーまたはビヒクルの各組成物は多数の方法で配合できる。例えば、これらは製造性、被膜の完全性、滅菌性、薬物の安定性、および薬物の放出速度に影響を及ぼす種々の賦形剤および/または配合用の成分を含む付加的な成分または要素を用いて配合できる。本発明の例示的な実施形態において、前記の賦形剤および/または配合用の成分は即時放出用および持続型放出用の両方の薬物溶出プロファイルを達成するために添加できる。これらの賦形剤は酸/塩基性の物質または緩衝剤の成分等のような塩類および/または無機化合物、酸化防止剤、界面活性剤、ポリペプチド、タンパク質、スクロース、グルコースまたはデキストロースを含む炭化水素、EDTA等のようなキレート化剤、グルタチオン(glutathione)またはその他の賦形剤または薬剤を含むことができる。
【0291】
前記の医療装置のいずれも薬物、薬剤または化合物を含有している被膜により、あるいは、単に薬物、薬剤または化合物を全く含まない被膜により被覆可能であることに注目することが重要である。加えて、医療装置の全体を被覆することができ、あるいは、医療装置の一部分のみを被覆することも可能である。また、前記の被膜は均一にすることもでき、不均一にすることもできる。さらに、この被膜は不連続状であってもよい。
【0292】
前述のように、任意数の薬物、薬剤および/または化合物を任意数の医療装置を介して局所的に送達できる。例えば、ステントおよび吻合装置は前記において詳述されているような種々の病状および身体による反応を治療するための薬物、薬剤および/または化合物を含有している被膜を組み込むことができる。さらに、治療用の投薬量の薬物、薬剤および/または化合物により被覆されているかこれらをその他の方法により組み込むことのできる別の装置は、前記において略説されているステントグラフト、および、腹大動脈瘤ならびに、例えば、胸大動脈瘤等の別の動脈瘤を治療するための装置等のようなステントグラフトを利用している装置を含む。
【0293】
ステントグラフトは、その名称が意味するように、ステントおよびこのステントに取り付けられたグラフト材料を含む。図24は例示的なステントグラフト800を示している。このステントグラフト800は以下において詳細に説明されているような任意の種類のステントおよび任意の種類のグラフト材料を含むことができる。図示の例示的な実施形態において、ステント802は自己拡張式の装置である。典型的な自己拡張式のステントは相互接続されている複数の支柱部の拡張可能な格子構造または網状構造を含む。本発明の好ましい実施形態において、その格子構造は材料の一体のチューブから、例えば、レーザー切断により、作成されている。
【0294】
本発明によれば、前記ステントは多様に構成できる。例えば、このステントは反復式の幾何学的形状を形成している複数の支柱部またはその類似物により構成できる。当業者であれば、ステントが特定の特徴部分を含むことおよび/または特定の1種類以上の機能を行なうことのために構成または適合できること、および代替的な設計がその特徴または機能を実行するために使用可能であること、が認識できる。
【0295】
図24において示されている本発明の例示的な実施形態において、前記ステント802の基材または支柱部は少なくとも2つのフープ804に構成することができ、各フープ804は約9つのダイアモンド形を有するダイアモンド形状に形成されている多数の支柱部806を含む。さらに、前記ステント802は隣接している各フープを互いに接続するためのジグザグ形状のリング808を含むことができる。これらのジグザグ形状のリング808は多数の代替的な支柱部810により形成可能であり、この場合に、各リングは54個の支柱部を有している。
【0296】
ステント802の内表面部または外表面部はグラフト材料により被覆可能であり、当該グラフト材料を支持できる。このようなグラフト材料812は当業者において既知の多数の材料により作成可能であり、織り状のまたはその他の形態のポリエステル、ダクロン(Dacron)(登録商標)、テフロン(Teflon)(登録商標)、ポリウレタン、多孔質ポリウレタン、シリコーン、ポリエチレン・テレフタレート(polyethylene terephthalate)、発泡ポリテトラフルオロエチレン(expanded polytetrafluoroethylene)(ePTFE)および種々の材料の混合物を含む。
【0297】
前記グラフト材料812は好ましくは所定の機械的特性を達成するように多様に構成することができる。例えば、このグラフト材料は単一または多数の織り目および/またはプリーツ状のパタンを含むことができ、あるいは、プリーツを有していてもいなくてもよい。例えば、このグラフト材料は平織り、サテン織りに構成することができ、長手方向のプリーツ、中断されているプリーツ、環状または螺旋状のプリーツ、半径方向に配向されているプリーツ、またはこれらの組み合わせを含むことができる。あるいは、このグラフト材料を編み状または編み組み状にすることも可能である。グラフト材料がプリーツ付きである本発明の実施形態においては、これらのプリーツは連続状または不連続状のいずれでもよい。さらに、各プリーツを長手方向、外周方向、またはこれらの組み合わせの方向に配向できる。
【0298】
図24において示されているように、前記グラフト材料812はその表面に沿って、前記ステントグラフト800の長手軸に対して概ね平行に、延在している長手方向の複数のプリーツ814を含むことができる。これらのプリーツ814はステントグラフト800が、患者の体内に送達される場合等において考えられるように、その中心の回りにつぶれることを可能にする。このことは比較的に小さな外形の送達システムを提供し、このシステムからの、制御されて一貫している、配備様式を提供している。さらに、このような形態はしわおよびその他の幾何学的な不規則性を最小限に留めると考えられる。さらに、その後に行われる拡張の際に、前記ステントグラフト800はその自然な円筒形の形状を有し、各プリーツ814は均一に且つ対称形に開く。
【0299】
加えて、前記プリーツ814はステントグラフトの製造を容易にすることに役立っており、これらは前記長手軸に平行な方向を示して、これらの線に沿うステントのグラフトに対する取り付けを可能にすることにより、取り付け後におけるそのステントに対するグラフトの偶発的な捩れを抑制している。また、グラフトのプリーツ状のエッジ部分だけが前記送達システムの内表面部に対して摩擦を伴って接触するので、ステントグラフト800をその送達システムから押し出すために必要とされる力も減少できる。これらのプリーツ814のさらに別の利点は血液がこれらプリーツ814の各溝の中において概ね均一に凝固して、グラフトの表面上における非対称的な、または大形の凝固物の形成を抑制することにより、塞栓の危険性を減少していることである。
【0300】
図24において示されているように、グラフト材料812は1つ以上の、好ましくは複数の半径方向に配向されているプリーツ中断部分816も含むことができる。これらのプリーツ中断部分816は一般的に実質的に円形であり、長手軸に対して垂直に配向されている。これらのプリーツ中断部分816はグラフトおよびステントが選択的な位置において比較的に良好に屈曲することを可能にしている。このような設計により、良好な圧着性および改善された耐捩れ性を有するグラフト材料が得られる。
【0301】
前記のグラフト材料は編み状または織り状にすることができ、縦編み状または横編み状にすることも可能である。この材料を縦編み状にする場合に、この材料はベロア状またはタオル状の表面を備えることができ、このことは血餅の形成を速めると考えられ、これにより、周囲の細胞構造中へのステントグラフトまたはステントグラフトの部品の一体化が促進できる。
【0302】
グラフト材料は、ポリウレタン接着剤等のような接着剤、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、ポリプロピレン、ダクロン(Dacron)(登録商標)または任意の他の適当な材料による複数の従来式の縫合糸、超音波溶接、機械的締り嵌め、および各種ステープルを含む当業者において知られている多くの構造または方法によりステントまたはその他のグラフト材料に取り付けることができる。
【0303】
前記ステント802および/またはグラフト材料812は前記の薬物、薬剤および/または化合物の内の任意のものにより被覆できる。一例の例示的な実施形態において、ラパマイシン(rapamycin)が前記の材料および方法の内の任意のものを利用してグラフト材料812の少なくとも一部分に固着できる。また、別の例示的な実施形態においては、ラパマイシン(rapamycin)をグラフト材料812の少なくとも一部分に固着させて、ヘパリン(heparin)またはその他の抗血栓性の物質をステント802の少なくとも一部分に固着できる。このような構成により、平滑筋細胞の過剰増殖を最小限にするか実質的に無くすために、ラパマイシン(rapamycin)により被覆されたグラフト材料812を利用することが可能になり、ヘパリン(heparin)により被覆されたステントは血栓の可能性を実質的に減少できる。
【0304】
使用する特定の1種類以上のポリマーは、そのポリマーを固定する特定の材料により決まる。加えて、特定の薬物、薬剤および/または化合物もまたこのポリマーの選択に影響を及ぼす可能性がある。前述のように、前記の1種類以上のポリマーおよび方法を利用することによりラパマイシン(rapamycin)をグラフト材料812の少なくとも一部分に固着できる。また、別の代替的で例示的な実施形態においては、ラパマイシン(rapamycin)または任意の他の薬物、薬剤および/または化合物が多くの既知の方法を利用することによりグラフト材料812中に直接的に含浸できる。
【0305】
さらに別の代替的で例示的な実施形態において、前記ステントグラフトは前記グラフト材料を間に挟んだ状態の2つのステントにより形成可能である。図25は内側ステント902、外側ステント904およびこれらの間に挟まれているグラフト材料906により形成されているステントグラフト900の簡単な図である。これらのステント902,904およびグラフト材料906は前述の材料と同一の材料により形成できる。前述のように、内側ステント902はヘパリン(heparin)等のような抗血栓剤または抗凝固剤により被覆することができ、外側ステント904はラパマイシン(rapamycin)等のような抗増殖剤により被覆できる。あるいは、グラフト材料906は前述の薬物、薬剤および/または化合物およびこれらの組み合わせの内の任意のものにより被覆でき、あるいは、前記3種類の構成要素の全てを同一または異なる薬物、薬剤および/または化合物により被覆することも可能である。
【0306】
さらに別の代替的で例示的な実施形態において、前記ステントグラフトはグラフトカフス部を含むように変更できる。図26において示されているように、グラフト材料906は外側ステント904の周囲に折り返されてカフス部908を形成することができる。この例示的な実施形態においては、カフス部908にラパマイシン(rapamycin)およびヘパリン(heparin)を含む薬物、薬剤および/または化合物を装填できる。さらに、前記の方法および材料を利用するか、その他の手段により、薬物、薬剤および/または化合物をカフス部908に固着できる。例えば、これら薬物、薬剤および/または化合物をカフス部908の中に捕捉して、グラフト材料906がこれらの薬物、薬剤および/または化合物を溶出する拡散バリアとして作用することができる。選択された特定の材料およびその物理的特性は前記溶出の速度を決定すると考えられる。あるいは、前記カフス部908を形成しているグラフト材料906を1種類以上のポリマーにより被覆して前述のようにその溶出速度を調整することも可能である。
【0307】
ステントグラフトは動脈瘤の治療のために利用できる。動脈瘤は、通常において全身系的なコラーゲンの合成また構造的な欠陥により生じる、動脈壁部における1つ以上の層の異常な拡張である。腹大動脈瘤は、通常において2つの腸骨動脈の一方または両方の中またはその近くにおいて、あるいは、各腎動脈の近くにおいて存在している、大動脈の腹部における動脈瘤である。この動脈瘤は、例えば、各腎臓の下方における病気の大動脈の腎下部内に生じる場合が多い。また、胸大動脈瘤は大動脈の胸部内における動脈瘤である。これらは治療しないままに放置すると、その動脈瘤が破裂して、通常、迅速で致命的な出血を生じる。
【0308】
動脈瘤はこれらの位置および一群の動脈瘤の数により分類または類別できる。一般的に、腹大動脈瘤は5種類の型に分類できる。I型の動脈瘤は各腎動脈と各腸骨動脈との間に存在する単一の拡張部分である。一般的に、I型の動脈瘤においては、その大動脈は各腎動脈とその動脈瘤との間、およびその動脈瘤と各腸骨動脈との間において健康である。
【0309】
IIA型の動脈瘤は各腎動脈と各腸骨動脈との間に存在する単一の拡張部分である。このIIA型の動脈瘤においては、その大動脈は各腎動脈とその動脈瘤との間において健康であるが、その動脈瘤と各腸骨動脈との間において健康ではない。換言すれば、この拡張部分は大動脈の分岐部分にまで延在している。また、IIB型の動脈瘤は3つの拡張部分を含む。これらの内の1つの拡張部分は各腎動脈と各腸骨動脈との間に存在している。前記IIA型の動脈瘤と同様に、大動脈はその動脈瘤と各腎動脈との間において健康であるが、その動脈瘤と各腸骨動脈との間において健康ではない。また、他の2つの拡張部分は大動脈の分岐部分と、各外腸骨および各内腸骨の間の各分岐部分との間における、各腸骨動脈の中に存在している。この場合に、これらの腸骨動脈はその腸骨分岐部分と動脈瘤との間において健康である。IIC型の動脈瘤もまた3つの拡張部分を含む。しかしながら、このIIC型の動脈瘤においては、各腸骨動脈内の拡張部分はその腸骨分岐部分にまで延在している。
【0310】
さらに、III型の動脈瘤は各腎動脈と各腸骨動脈との間において存在する単一の拡張部分である。このIII型の動脈瘤においては、その大動脈は各腎動脈とその動脈瘤との間において健康ではない。換言すれば、この拡張部分は各腎動脈にまで延在している。
【0311】
破裂した腹大動脈瘤は現在、米国において13番目に多い死因である。腹大動脈瘤の慣例的な管理は外科バイパス術であり、その関連の部分または拡張した部分の中へのグラフトの配置を伴う。経腹膜的または腹膜後的な方式における合成グラフトによる切除が標準的な治療法であったが、この方法は相当な危険性を伴う。例えば、合併症として、手術時の心筋虚血、腎不全、勃起不能、腸虚血、感染、下肢虚血、麻痺を伴う脊髄損傷、大動脈−内臓瘻および死が含まれる。腹部大動脈瘤の外科的治療は無症候性の患者において5%、症候性の患者において16〜19%という全体的な死亡率を伴い、破裂した腹大動脈瘤を伴う患者においては50%程度という高い死亡率である。
【0312】
従来の外科手術に伴う不都合点は、その死亡率の高さに加えて、大手術による切開部分および腹腔の開口部に伴う長期の回復期間、大動脈に対するグラフトの縫合における困難さ、グラフトを支持して補強する既存の血栓部分の喪失、腹大動脈瘤を有する多くの患者における手術の不適切さ、および動脈の破裂後の緊急状態における手術の実施に付随する問題を含む。さらに、一般的な回復期間は病院内における1〜2週間であり、さらに、合併症がその後に生じた場合には、2〜3ヶ月あるいはそれ以上の自宅における回復期間になる。腹大動脈瘤を有する多くの患者はこれら患者の多くが高齢であるという事実に加えて、別の慢性の病気、例えば、心臓病、肺病、肝臓病および/または腎臓病を有しているので、手術の理想的な候補者とは言えない。
【0313】
動脈瘤の発生は腹部領域に限らない。腹大動脈瘤は一般に最もよく知られているが、大動脈における別の領域内またはその分岐部分の一つにおける動脈瘤も有り得る。例えば、動脈瘤は胸大動脈の中に生じる場合がある。腹大動脈瘤の場合と同様に、胸大動脈内の動脈瘤の治療に対して広く受け入れられている方法はプロテーゼ装置によるその動脈瘤部分の置換を含む手術による修復である。このような手術は、前述のように、高い危険性および相当な死亡率および罹病率を伴う大がかりな作業である。
【0314】
過去5年間にわたり、動脈瘤の、特に、腹大動脈瘤の、治療のために比較的に低い侵襲性の経皮的な、例えば、カテーテル関連型の技法の開発を目的とした多くの研究が行なわれている。この技法は脈管ステントの開発により容易化されており、これらの脈管ステントはステントグラフトまたは体内グラフト(endograft)を形成するための標準的な薄壁型のグラフト材料と共に使用可能であり、このようなグラフト材料と共に用いられている。このような比較的に低い侵襲性の治療の潜在的な利点は、手術による罹病率および死亡率が減少すること、および病院および集中治療室に滞在している期間が短くなることを含む。
【0315】
ステントグラフトまたは体内プロテーゼは現在において米国食品医薬品局(FDA)により認可されており、市販されている。この送達方法は一般的に総大腿動脈または上腕動脈等のような遠隔の動脈の外科的切開部分を介して得られる脈管接近部分を通して行なわれる高度な脈管造影技法を含む。この場合に、適当な寸法の導入装置をガイドワイヤ上に配置する。その後、カテーテルおよびガイドワイヤを動脈瘤の中に通して、ステントグラフトを収容している適当な寸法の導入装置と共に、そのステントグラフトをガイドワイヤに沿って適当な位置まで前進させる。このステントグラフト装置の一般的な配備は、当該ステントグラフトの位置が内側安定化装置により維持されている状態で、外側シースを後退させる必要がある。大抵のステントグラフトは自己拡張式であるが、さらに別の脈管形成方法、例えば、バルーン脈管形成術もステントグラフトの位置を固定するために必要とされる場合がある。さらに、このようなステントグラフトの配置の後に、標準的な脈管造影図を得ることが可能になる。
【0316】
一般的に6.67ミリメートル(20フレンチ(3フレンチ(F)=1mm))よりも大きい前記の各装置の大きな直径により、動脈切開部分の閉鎖は外科手術による修復を必要とする。さらに、一部の方法は動脈瘤を適正に治療するために、または、両方の下肢に対する流れを維持するために、下腹動脈塞栓形成、脈管結紮または外科的バイパス術等のようなさらに別の外科技法を必要とする場合がある。これと同様に、一部の方法は動脈瘤を有効に排除すると共にその漏れを効率的に管理するために、脈管形成術、ステント配備、および塞栓形成等のようなさらに別の高度なカテーテルによる技法を必要とする。
【0317】
前記の体内プロテーゼは従来の外科技法に優る著しい改善を示しているが、変化する生物学的な諸条件に対応してこれらの体内プロテーゼ、その使用方法および適用性を改善する必要性がある。従って、腹大動脈瘤および胸大動脈瘤を含む動脈瘤を治療するための安全で効果的な別の手段を提供するために、現在において知られている体内プロテーゼおよびこれらの送達システムに伴う多数の問題を解決する必要がある。これらの体内プロテーゼの使用における一つの問題は体内漏れの防止および脈管における通常の流体力学的な力による破裂である。いずれの技法を採用している装置も必要に応じて位置決めおよび再位置決めすることが簡単であることが好ましく、急速な液密シールを形成することも好ましく、さらに、動脈瘤のある脈管および分岐している各脈管の両方における通常の血流に対して影響することなく移動を阻止するように固定されていることが当然に好ましい。加えて、前記の技法を採用している装置は分岐状の脈管、曲がりくねっている脈管、急な角度の脈管、部分的に病気の脈管、石灰化している脈管、異形の脈管、短い脈管および長い脈管の中において固定、密封および維持が可能であることが当然に好ましい。さらに、このことを達成するためには、前記の体内プロテーゼは短期間および長期間にわたる液密シールおよび固定位置を維持しながら伸長可能であり且つ再構成可能であることが当然に望ましい。
【0318】
また、体内プロテーゼはカテーテル、ガイドワイヤおよび開放性の外科的介入の必要性を実質的に無くすその他の装置により経皮的に送達できることが当然に好ましい。従って、カテーテルの中における体内プロテーゼの直径は重要なファクターになる。このことは胸大動脈のような比較的に大きな脈管内における動脈瘤の場合に特に言えることである。
【0319】
前述のように、1つ以上のステントグラフトを動脈瘤の治療のために利用することができる。これらのステントグラフトまたは体内プロテーゼは多くの材料および形態を含むことができる。図27は腹大動脈瘤を治療するための例示的なシステムを示している。このシステム1000は第1のプロテーゼ1002および2つの第2のプロテーゼ1004,1006を有しており、これらプロテーゼは組み合わせの状態で動脈瘤1008に対してバイパス形成している。この図示の例示的な実施形態において、前記システム1000の基端側または近位側の部分は動脈瘤1008の上流側における動脈の部分1010内に位置決めすることができ、当該システム1000の先端側または遠位側の部分はその動脈または各腸骨動脈1012,1014等のような異なる動脈の下流側部分の中に位置決めできる。
【0320】
本発明によるシステム内において用いられるプロテーゼは一般的に開口状の近位側端部および開口状の遠位側端部を有する内部空間または内腔部を定めている相互に連結している複数の支柱部による支持体、ステントまたは格子構造を含む。さらに、この格子構造は内表面部および外表面部も定めている。この格子構造の内表面部および/または外表面部、またはこの格子構造の一部分は少なくとも1種類のガスケット材料またはグラフト材料により被覆することができ、あるいは、これを支持することができる。
【0321】
本発明の好ましい実施形態において、プロテーゼが拡張状態または膨張状態の位置と未拡張状態または収縮状態の位置との間、およびこの間の任意の位置において移動可能である。本発明の一部の例示的なの実施形態において、完全につぶれた状態から完全に拡張した状態のみに移動するプロテーゼを提供することが望ましい場合がある。また、本発明の別の例示的な実施形態において、プロテーゼを拡張した後に、そのプロテーゼをつぶすか部分的につぶすことが望ましい場合がある。このような能力は外科医がこれらのプロテーゼを適当に位置決めするか再位置決めするために有益である。本発明によれば、前記プロテーゼは自己拡張式にすることができ、あるいは、バルーンまたはその類似物等のような膨張可能な装置により膨張可能にすることもできる。
【0322】
図27に戻り、前記システム1000は腹大動脈の腎下頸部1010内に配備されており、その上流側において、この動脈は第1および第2の各総腸骨動脈1012,1014に分かれている。図27は腎下頸部1010内に位置決めされている第1のプロテーゼまたはステント・ガスケット1002および2つの第2のプロテーゼ1004,1006を示しており、これら第2のプロテーゼの各近位側端部はステント・ガスケット1002における近位側部分に係合しており、各遠位側端部は各総腸骨動脈1012または1014の中にそれぞれ延在している。図示のように、第2のプロテーゼの各本体部分は動脈瘤1008の場所を通過している導管または流体の流路を形成している。本発明の好ましい実施形態において、前記システム1000の各部品は動脈瘤が存在している動脈の部分にバイパス形成する流体の流路を定めている。
【0323】
前記第1のプロテーゼは密封材料または発泡材料を支持する支持基材またはステントを含み、その少なくとも一部分は生物学的な流体の流路を横切って、例えば、血液の流路を横切って位置決めされている。本発明の好ましい実施形態において、前記第1のプロテーゼ、ステントおよび密封部材は半径方向に拡張可能であり、当該プロテーゼにおける近位側部分と当該プロテーゼにおける遠位側部分との間に中空の空間部分を定めている。さらに、この第1のプロテーゼは当該プロテーゼを動脈内に位置決めして固定するための1つ以上の構造部分、および少なくとも1つの第2のプロテーゼ、例えば、バイパス・プロテーゼに係合してこれを固定するための1つ以上の構造部分も有することができる。
【0324】
前記第1のプロテーゼにおける支持基材またはステントは多様な材料により形成可能であり、多様な形状に構成することができ、これらの形状および使用方法は当該技術分野において周知である。例示的な従来技術のステントが米国特許第4,733,665号(パルマズ(Palmaz))、米国特許第4,739,762号(パルマズ(Palmaz))および米国特許第4,776,337号(パルマズ(Palmaz))において開示されており、これらの特許はそれぞれ参照により本明細書に組み入れられている。
【0325】
本発明の好ましい実施形態において、前記第1のプロテーゼのステントはニチノールまたはステンレス・スチール等のような金属または金属合金により形成されている押しつぶし可能で柔軟な自己拡張式の格子構造または基材である。ステンレス・スチールにより形成されている構造体は、例えば、編み組み状の形態に捩じる等による所定の様式でこのステンレス・スチールを構成することにより自己拡張式にすることができる。さらに好ましくは、前記ステントは密封材料を支持する管状フレームである。なお、用語「管状(tubular)」は、本明細書においては、間に中空の空間部分または内腔部を定めている1個つ以上の側壁部を有している任意の形状を意味しており、その断面形状は一般に円筒形、楕円形、長円形、長方形、三角形または任意の他の形状にすることができる。さらに、この形状はステントまたはプロテーゼに対して押圧できる種々の力の結果として変化させるか変形可能にすることができる。
【0326】
前記ステントにより支持される密封材料またはガスケット部材は多様な材料により形成可能であり、多様な形状に構成することができ、これらの形状および使用方法は当該技術分野において周知である。本発明の前記の態様と共に使用するための例示的な材料が米国特許第4,739,762号(パルマズ(Palmaz))および米国特許第4,776,337号(パルマズ)において開示されており、これらは共に参照により本明細書に組み入れられている。
【0327】
前記の密封材料またはガスケット部材は任意の適当な材料を含むことができる。例示的な材料は好ましくは連続気泡型発泡材料および独立気泡型発泡材料を含むがこれらに限定されない生体耐久性で生体適合性の材料を含む。さらに、例示的な材料はポリウレタン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、およびその他の種々のポリマー材料を含み、好ましくは織り状または編み状であり、ダクロン(Dacron)(登録商標)等のような柔軟性の構造を提供する。高度に圧縮性の発泡材料が特に好ましく、比較的に良好な送達のために圧着状態の外形に維持できることが好ましい。さらに、この密封材料または発泡材料は好ましくは圧縮状態にあるときに血液に対して実質的に不透過性である。
【0328】
前記密封材料は前記ステントの1つ以上の表面部分を被覆することができ、そのステントの内壁部または外壁部、あるいは、これらの両方に沿って存在することができ、好ましくは、そのステントの近位側端部または近位側部分を横切って延在している。この密封材料は、例えば、前記第1のプロテーゼと動脈壁部との間、および当該第1のプロテーゼの内腔部の中に1つ以上のバイパス・プロテーゼを配備した後におけるこれらバイパス・プロテーゼの周囲等のような、前記第1のプロテーゼの周囲におけるあらゆる血流を防止するために役立つ(以下においてさらに詳細に説明されている)。
【0329】
本発明の好ましい実施形態において、前記密封材料はステントの近位側端部の一部をステントの外壁部の少なくとも一部に沿って広がり、これを覆う。
【0330】
本発明の一部の実施形態において、ステントの近位側部分を被覆している密封材料の部分が、ガイドワイヤを位置決めするために、第2のプロテーゼ等のようなシステム部品を位置決めするために、さらに/または、好ましくは、第2のプロテーゼ等のような1つ以上のシステム部品に係合するために、1つ以上の穴、孔、点、スリット、スリーブ、フラップ、弱めスポット、ガイド等を有することが望ましい場合がある。例えば、カバーまたはその類似物として構成されていて穴を有する密封材料がステントの内腔部を部分的に閉塞することができる。
【0331】
前記の開口部は主としてその用途に適合するように多様に構成できる。これらの構造は前記第1のプロテーゼの中における1つ以上の、好ましくは、多数のプロテーゼの適当な横並びの配置を助長し、本発明の一部の実施形態において、この密封材料は完全に配備状態のシステムまたは部品の特定の形状を維持することを補助するために構成または適合できる。さらに、前記の開口部はプロテーゼの配備の前に存在していてもよく、あるいは、配備処置の一部としてプロテーゼの中に形成することもできる。前記開口部の種々の機能が以下の説明により明らかになる。本発明の例示的な実施形態において、前記密封材料は単一の穴を有する発泡体カバーである。
【0332】
前記密封材料は種々のコネクタの内の任意のものにより前記ステントに取り付けることができ、このようなコネクタとしては、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、ポリプロピレン、ダクロン(Dacron)(登録商標)または任意の他の適当な材料による複数の従来型の縫合糸が含まれる。さらに、前記密封材料をステントに取り付ける別の方法は接着剤、超音波溶接、機械的な締り嵌め法およびステープル等を含む。
【0333】
さらに、1つ以上のマーカーをステントの内部または上部においてその近位端部と遠位端部との間に随意的に配置することができる。好ましくは、2つ以上のマーカーが、解剖学的な特徴部分または他のシステム部品に関連して、プロテーゼにおける所与の位置を確認するために、あるいは、そのプロテーゼの所与の位置またはその一部分を確認するために寸法付けおよび/または位置決めされている。
【0334】
前記第1のプロテーゼは、一般的に動脈瘤の上流側における動脈通路内に配備され、その動脈を開いて拡張すること、前記システムの種々の部品を適正に位置決めして固定すること、および他の部品との組み合わせにおいて、前記システムまたはその各部分を流体の漏れに対して密封すること、のために機能する。例えば、この密封用のプロテーゼは患者における腹大動脈瘤と各腎動脈との間の腎下頸部内に配備されて腹大動脈瘤の治療を補助することができる。
【0335】
図27〜図29は本発明の例示的な密封用プロテーゼを示している。この密封用プロテーゼ1002は一般的に複数の相互接続している支柱部1018により作成されている円筒形または楕円形の自己拡張型の格子構造、支持体またはステント1016を含む。このステント1016は2つの開口端部、すなわち、近位側端部1022と遠位側端部1024を有する内部空間部分または内腔部1020を定めている。さらに、1つ以上のマーカーまたは標識1026が随意的に前記ステントの内部または上部においてその近位側端部1022と遠位側端部1024との間に配置できる。
【0336】
前記ステント1016はさらに少なくとも2つの好ましくは(図28において示されているように)8つの互いに離間している長手方向の脚部1028を有することができる。好ましくは、各支柱部1018により形成されているダイアモンド形状の各頂点1030から延出している脚部が存在している。少なくとも1つの脚部、好ましくは各脚部がその遠位側端部に隣接しているフランジ部分1032を有しており、このフランジ部分1032はステント1016がその部分的なまたはほぼ完全な配備の後にその送達装置内に後退することを可能にして、これを適正な位置合わせのために回転または他の様式により再位置決めできるようにする。
【0337】
図29はステント・ガスケット1002の近位側端部1022を被覆している密封材料1034を示している。図29において示されている例示的な実施形態において、密封用プロテーゼ1002は第1の開口部または穴1036および第2の開口部またはスリット1038を有する密封材料1034を含む。このガスケット材料は前記ステントの内部または外部の少なくとも一部分を被覆し、最も好ましくは、そのステントの外部の実質的に全体を被覆する。例えば、ガスケット材料1034はステント1016をその近位側端部1022から遠位側端部1024まで被覆するが、好ましくは長手方向の各脚部1028を被覆しないように構成できる。
【0338】
前記密封材料1034は各バイパス・プロテーゼ1004および1006を配備した後に(図27において示されている)、血液がこれらバイパス・プロテーゼ1004および1006の周囲に流れること、およびステント・ガスケット1002自体の周囲に流れること、を妨げるために役立つ。このような実施形態において、前記密封材料1034はステント1016の外部およびステント1016の内部の少なくとも一部分に沿って配置されている圧縮可能な部材またはガスケットである。
【0339】
前記第2のプロテーゼ1004および1006は図24に関連して説明されているようなステントグラフトを含むことができ、前述のように、薬物、薬剤および/または化合物の内の任意のものにより被覆できる。換言すれば、前記のステントおよび/またはグラフト材料は前述のポリマーおよび方法の内の任意のものを利用することにより前述の薬物、薬剤および/または化合物の内の任意のものにより被覆できる。さらに、前記ステント・ガスケット1002も前述の薬物、薬剤および/または化合物の内の任意のものにより被覆できる。換言すれば、前記のステントおよび/または密封材料は前述のポリマーおよび方法の内の任意のものを利用することにより前述の薬物、薬剤および/または化合物の内の任意のものにより被覆できる。特に、ラパマイシン(rapamycin)およびヘパリン(heparin)は平滑筋細胞の過剰増殖および血栓症を防止するために重要であると考えられる。また、別の薬物、薬剤および/または化合物も利用可能である。例えば、再内皮化を促進する薬物、薬剤および/または化合物を利用することにより生体内への前記プロテーゼの組み込みを容易にすることができる。また、塞栓材料を前記ステントグラフトに組み込むことにより内部漏れの可能性を減少できる。
【0340】
腹大動脈瘤を修復するための前述のシステムが前記システムの一例であることに注目することが重要である。すなわち、ステントグラフトを含む多くの動脈瘤修復システムが適当な薬物、薬剤および/または化合物ならびにこれらの組み合わせにより被覆できる。例えば、胸大動脈瘤を類似した様式で修復することができる。また、動脈瘤の種類または生体内におけるその位置にかかわらず、前記修復システムを構成している各部品はステントグラフトに関連して前述のような適当な薬物、薬剤および/または化合物により被覆できる。
【0341】
動脈瘤、特に腹大動脈瘤の治療に伴う困難さは内部漏れである。内部漏れは一般にステントグラフトの内腔部の外側であって、当該ステントグラフトにより治療されている動脈瘤嚢または隣接している脈管部分の内部における血流の持続として定義されている。本質的に、これらの内部漏れは2種類の主なメカニズムの内の1つにより生じ、それぞれのメカニズムは多数の可能な様相を有している。第1のメカニズムは動脈瘤嚢または脈管部分の不完全な密封または除外を含む。また、第2のメカニズムは逆流を含む。この種の内部漏れにおいては、動脈瘤嚢の中への血流が開存性の副行脈管、特に腰動脈または下腸間膜動脈からの逆流により逆転する。さらに、この種の内部漏れはステントグラフトの周囲において完全な密封が達成されている場合においても生じる可能性がある。また、内部漏れがステントグラフトの不全、例えば、グラフトの布材における断裂等により発展する可能性もある。
【0342】
前記の内部漏れはその型により分類できる。I型の内部漏れはステントグラフトの近位側または遠位側の取付部位におけるグラフトの周囲(perigraft)の漏れである。本質的に、この種の内部漏れはステントグラフトの各端部における非効果的なまたは不適当な密封により血流の持続したグラフトの周囲における通路が発展している場合に生じる。このI型の内部漏れには、ステントグラフトの不適正な寸法決め、ステントグラフトの移動、不完全なステントグラフトの拡張および動脈内腔の不規則な形状を含む多数の可能な原因が有る。また、II型の内部漏れは大動脈における開存性の分岐部分からの動脈瘤嚢内への持続した副行状の血流である。本質的に、動脈瘤嚢内における圧力は副行状の分岐部分よりも低く、これにより、血流の逆行が生じる。このようなII型の内部漏れの発生源は副腎動脈、精巣動脈、腰動脈、正中仙骨動脈、下腸間膜動脈および脊髄動脈を含む。また、III型の内部漏れは腹大動脈瘤の修復システムまたはその部品、例えば、ステントグラフトの構造的な不全により生じる可能性がある。このIII型の内部漏れはまたモジュール式の部品を採用しているシステムにおける連結部分の不全により生じることも有り得る。このIII型の内部漏れの発生原因はステントグラフトの布材における断裂、引裂きまたは穴、モジュール式部品の不適正な寸法決め、およびモジュール式部品の制限されている重なりを含む。また、IV型の内部漏れはグラフト材料自体の中を通過する血流である。この血流はグラフト材料をステントに取り付けるためのステープルまたは縫合糸により生じるグラフト材料の穴またはその布材における小孔を通して流れる。このような穴を通る血流は高度に多孔質なグラフトの布材により一般的に生じる。また、V型の内部漏れまたは内部張力は放射線学的に検出可能な内部漏れを伴わない動脈瘤嚢における持続したまたは再発する加圧である。このV型の内部漏れの可能な原因は血栓による圧力の伝達、高度に多孔質なグラフト材料、または隣接している大動脈の内腔を含む。
【0343】
前述のそれぞれの型の内部漏れに対応する多数の可能な治療の選択肢が存在している。特定の治療の選択肢は主にその内部漏れの原因により決まり、これらの選択肢は必ずしも常に有効であるとは限らない。本発明は内部漏れの発生を無くすか実質的に減少させることを目的としている、本明細書において説明されている例示的な装置等のような、既存の脈管内式腹大動脈瘤修復用のシステムまたは装置の改良を目的としている。
【0344】
前記の改良は腹大動脈修復システムを構成している種々の部品の少なくとも一部分を、以下において説明されているように、傷の治癒を促進する薬物、薬剤および/または化合物により被覆する処理を含む。例えば、図27において示されている例示的なシステム1000の各部分は傷の治癒過程を誘発して促進する1種類以上の薬物、薬剤および/または化合物により被覆可能であり、これにより内部漏れの危険性が減少または実質的に減少できる。前記2つの第2のプロテーゼ1004および1006のそれぞれの端部および第1のプロテーゼ1002の全体は内部漏れが最も起こりやすい領域であるので、これらを被覆することが特に有利であると考えられる。しかしながら、ステントグラフトの全体、すなわち、グラフト材料およびステントを被覆することは前記の内部漏れの型に応じてその有益性を実証することができる。現行において利用可能な方法により内部漏れを停止することは常に可能であるとは限らないが、本発明による局所的に送達される傷治癒用の薬剤の使用は急性および慢性の内部漏れを効果的に停止または阻止することに役立つと考えられる。本発明が任意の腹大動脈瘤修復システムとの組み合わせにおいて、あるいは、漏れが潜在的な問題である任意の別の種類のグラフト部品との組み合わせにおいて利用可能であることに注目することが重要である。また、本発明は前記のI型、III型、IV型およびV型の内部漏れに関連して利用可能である。
【0345】
通常の傷の治癒は本質的に3種類の段階または相において生じ、これらはある程度の重なりを有している。第1の相は細胞移動および炎症である。この相は数日間にわたり継続する。第2の相は新しいコラーゲン合成を伴う2〜4週間にわたる線維芽細胞の増殖である。さらに、第3の相は瘢痕の再造形であり、一般的に1ヶ月〜1年にわたり継続する。この第3の相はコラーゲンの架橋および活性コラーゲンの代謝回転を含む。
【0346】
前述のように、前記の修復システムを介して修復部位に局所的に送達できる特定の薬物、薬剤および/または化合物が存在しており、この修復システムは傷の治癒を促進し、この傷の治癒によりさらに内部漏れの発生が無くなるか実質的に減少できる。例えば、傷の治癒における早期の増加したコラーゲン生成はその傷の強度を高める。従って、コラーゲンを前記の修復システムに組み合わせて傷の強度を高めて血小板の凝集およびフィブリンの形成を促進することができる。加えて、特定の増殖因子を前記の修復システムに組み合わせて血小板の凝集およびフィブリンの形成を促進すると共に傷の強度を高めることができる。
【0347】
血小板由来増殖因子は有糸分裂を誘発し、接合組織内における増殖のための漿液中における主要なマイトジェンである。また、血小板第4因子はヘパリン(heparin)の中和により血液凝固を促進する血小板放出タンパク質である。これらの血小板由来増殖因子および血小板第4因子は炎症および修復において重要である。これらは人間の単核細胞、好中球、平滑筋細胞、線維芽細胞および炎症細胞に対して活性である。また、形質転換増殖因子βは骨髄による血液細胞の増殖、分裂および成熟を調整するために体内において生成されるポリペプチド・ホルモンまたは生物学的因子の複合的な系統群の一部である。この形質転換増殖因子βは種々の組織および血小板において見出されており、生体内に植え込まれた傷の空洞の中における全体のタンパク質、コラーゲンおよびDNAの内容物を刺激することが知られている。また、コラーゲンとの組み合わせにおける形質転換増殖因子βは傷の治癒において極めて有効であることが既に示されている。
【0348】
血餅が形成し始める時にいつでもその体内において一連の反応が生じる。これらの反応における主要な開始因子は組織因子/VIIa複合体と呼ばれる酵素系である。従って、組織因子/VIIaは血液凝固の形成を促進するために利用可能であり、それゆえ、傷の治癒を向上することができる。さらに、血栓の形成を開始することが知られている別の物質はトロンビン、フィブリン、プラスミノゲン活性化開始因子、アデノシン二リン酸(adenosine diphosphate)およびコラーゲンを含む。
【0349】
前記修復システムの種々の構成部品との関連における前記の薬物、薬剤および/または化合物の使用は、血餅の形成および傷の治癒により内部漏れの発生を無くすか実質的に減少させるために利用できる。
【0350】
前記システム1000の各構成部品を含むステントおよび/またはグラフト材料は前述の薬物、薬剤および/または化合物の任意のものにより被覆できる。さらに、これらの薬物、薬剤および/または化合物は前記の材料および方法の任意のものを利用して前記構成部品の一部分またはこれらの構成部品の全てに固定できる。例えば、前記の薬物、薬剤および/または化合物は高分子基材に組み込むことができ、あるいは、前記システムの構成部品の種々の部分に直接的に固定することも可能である。
【0351】
前記の利用可能な特定のポリマーはこのポリマーを固定する特定の材料により決まる。加えて、前記の特定の薬物、薬剤および/または化合物もまた前記ポリマーの選択に影響する可能性がある。
【0352】
動脈瘤は動脈のある部分の異常な拡張である。動脈瘤は、体のあらゆる部分の中の動脈の中において生じる可能性があるが、一般的に、例えば、上述のような腹大動脈瘤等のような、大動脈の中、例えば、大脳動脈瘤等のような、脳の中、例えば、膝窩動脈瘤等のような、足の中、例えば、腸間膜動脈瘤および脾動脈瘤等のような、腸の中、において生じる可能性がある。本質的に、動脈瘤は、弱っている動脈の部分を通過している血液の圧力がその血管を強制的に膨らませるかその他の様式で拡張させる場合に、生じる可能性がある。動脈の壁部を弱らせることのできるあるあらゆる状況が動脈瘤につながる可能性がある。このような動脈瘤の形成に影響する可能性のある要因は、アテローム硬化症、高血圧、喫煙、および感染、先天性の異常およびマルファン(Marfan)症候群等のような遺伝性の病気、を含む動脈に対する障害、を含む。
【0353】
動脈瘤の形成に影響する種々の可能な原因および潜在的な要因が存在する。この場合に、動脈に構造的な強度を与える蛋白質の能力の低下により、多くの動脈瘤が引き起こされることが考えられる。コラーゲンおよびエラスチンと呼ばれている、蛋白質は、年齢と共に自然に、漸進的に低下する可能性があるが、上述の要因がコラーゲンやエラスチンの低下に役割を果たす可能性があることが知られている。加えて、エラスチンおよび/またはコラーゲンの低下を引き起こす天然に存在している酵素もある。さらに、過剰量の、これらの酵素またはこれらの酵素を活性化する別の要因も、動脈瘤の形成または成長の原因になる可能性がある。
【0354】
コラーゲンは主要な構造蛋白質であり、体の蛋白質の約25パーセントを占めている。エラスチンも蛋白質であるが、コラーゲンのように構造的な支持を与えるのではなく、エラスチンは弾性を与える。コラーゲンおよびエラスチンは、伸びおよび弛緩する能力を種々の器官に与えるために、共同して作用する。例えば、コラーゲンは動脈に強度と剛性を与えるが、エラスチンは動脈が伸びてから、その元の位置に戻ること、を可能にする。したがって、これら2種類の蛋白質は動脈瘤の潜在的な形成において重要な役割を果たす。
【0355】
上述のように、ラパマイシン(rapamycin)は、幾つかの様式で、陰性の再造形を減少させるように作用できる。傷害に応答して脈管の壁部の中の線維芽細胞の増殖を特定的に遮断することにより、ラパマイシン(rapamycin)は脈管の瘢痕組織の形成を減少させることができる。ラパマイシン(rapamycin)はまた、コラーゲンの形成または代謝に関連する重要な蛋白質の翻訳に影響する可能性もある。
【0356】
したがって、上述のステントグラフト等のような動脈瘤修復装置を伴うラパマイシン(rapamycin)の局所的な投与は動脈瘤の病気を治療するために利用できる可能性がある。本質的に、コラーゲンおよびその他の蛋白質を形成する基材を調整することにより、動脈瘤の病気の進行を実質的に遅らせることができ、停止させることも可能である。ラパマイシン(rapamycin)はステントグラフトに固定でき、あるいは、上述の方法および装置のいずれかにより、局所的にまたは所与の領域にわたり、送達することが可能である。
【0357】
別の例示的な実施形態によれば、テトラサイクリン化合物は、動脈瘤または動脈瘤の病気の治療のために、ラパマイシン(rapamycin)との組み合わせにおいて、利用できる。
【0358】
血管の2つの基本的な種類である、動脈と静脈は、これらの構造的な要素により、区別できる。これらの動脈および静脈は共に層状構造を有しており、この構造において、幾つかの異なる層が同軸に配列されている。動脈においては、これらの層は、内側層または内皮層(内膜)、内部弾性層、中間層(中膜)、および外側層(外膜)、を含んでいる。動脈と同様に、静脈も、内側層(内膜)、中間層(中膜)、および外側層(外膜)、を含んでいるが、これらの層は、動脈におけるほど、厚くはなく、はるかに低い構造的な剛性を与えている。例えば、静脈は、血管が切れる時に、つぶれ、これらは、内部の血圧により、支えられなくなる。
【0359】
はるかに大きな構造的な強度のために、動脈は比較的に高い内部圧力に耐えることに適合している。この特徴は、心臓が大きな一時的な圧力を発生するので、心臓から血液を運び出すことにおいて、それぞれの動脈の役割に、直接に対応する。内部の動脈の圧力は、通常において、約70mmHg(9.3×103 パスカル)(心臓拡張時の圧力)乃至約120mmHg(1.6×104 パスカル)(心臓収縮時の圧力)の範囲であるが、動脈の構造は、長期間にわたり比較的に高い基準線の圧力に耐えて、同様に、比較的に高い心臓収縮時のピークにも適応するように、十分に順応性を有している。一方、静脈の圧力は、一般的に、10mmHg(1.3×103 パスカル)の範囲内であるが、いくらかさらに高い圧力にも耐えることができる。静脈は、血液が組織に分配された後に、心臓に血液を送り戻すので、これらの静脈は、深刻度が比較的に低く少ない血圧の一時的な変動に対して、曝される。
【0360】
動脈および静脈は共に弾性であり、圧力の変化に応じて、制限された変形が可能である。動脈は、上述のように、特別の内部の弾性な層を有しており、この層は動脈の構造に比較的に大きな弾性を与えている。特に、胸部の中の動脈は、胸部以外の動脈の中に見られるものよりも、それぞれの壁部の中における剛性(コラーゲン)繊維に対する弾性(エラスチン)繊維のはるかに大きな割合により、極めて膨張性が高い。この膨張性は、心臓周期の間の血液の放出中に、血液の貯蔵所として、動脈が作用することを可能にしている。この結果として、ピークの圧力は、比較的に剛性であり脈動血圧の過渡応答(transients)に対して適応しない遠位側の動脈の中よりも、近位側の動脈の中において低くなる可能性がある。しかしながら、これらの脈管構造の適応性は無限ではなく、高い血圧(高血圧症)はこれらの補う能力に打ち勝って、異常な(過度の)拡張を結果として生じて、それらの血管を破裂させる可能性がある。
【0361】
血管が高血圧症に曝されると、その血管はその全長に沿って過剰拡張するのではなく、局在化した領域内において拡張する傾向がある。一般的に、これらの拡張は、本質的に、または、本明細書において説明されているような病気または外傷の結果として、最も弱い壁部の中の領域において生じる。このような拡張が進行すると、一般的に動脈瘤と呼ばれる、比較的に顕著な広がりまたは嚢が生じる。その後、血圧が高く維持されるか、さらに高くなると、その動脈瘤は破裂する可能性がある。また、脳の中においては、破裂した血管は発作として現われるが、傷ついた脈管からの出血が体の別の部分においても生じて、生命をおびやかす状況につながる可能性がある。一方、大動脈瘤は、心臓から出て体の他の部分につながっている主要な動脈であるために、大動脈が大量の血液を運び、その破裂は一般的に速やかで致命的な出血を生じるので、特に重要である。
【0362】
本明細書において簡単に説明されているように、多数の動脈瘤の原因が考えられる。これらの動脈瘤の原因の中には、動脈硬化症、梅毒、血管の中膜の退化的な変化および嚢胞性壊死、外傷、細菌感染、動脈炎、および先天性奇形がある。
【0363】
動脈硬化性動脈瘤および梅毒による動脈瘤は最も一般的な種類であり、胸部および腹部の大動脈を主に含む。さらに、胸部の動脈瘤は、これらが拡張すると、一般的に、種々の構造を圧縮してこれらに侵食する。さらに、これらの動脈瘤は、前胸壁を通して、肺や脊柱の中に侵食して、脈動するかたまりとして、その外部に存在する可能性がある。これらの動脈瘤を通る血流は比較的に少なく、その結果として、これらの動脈瘤には凝固した血液(血栓)がはりつくが、このような蓄積物は、血圧に対して、ほとんど構造的な支持を与えない。
【0364】
さらに、動脈瘤の限定された種類は大動脈の解離性動脈瘤であり、この動脈瘤においては、血液が、大動脈の壁部の層の間に入り、これらを分離する。このような動脈瘤は一般的に高血圧症により引き起こされ、血管の組織内の局在化した退化的な変化を伴い、潜在的に、穿孔を生じて、結果として、致命的な出血を生じる。
【0365】
漿果状動脈瘤は、最も一般的には、ウィリス(Willis)の円の中の血管の接合部における、大脳動脈の中において生じる先天的な欠陥である。これらの動脈瘤は、血管の筋肉の被膜の中の欠陥に関連していると思われる。この動脈瘤の破裂は一般的であり、くも膜下(頭蓋内)出血を結果として生じる。
【0366】
特に臨床的に重要であるものは、大動脈瘤、特に、腹大動脈瘤であり、この腹大動脈瘤は、拡張、進行性の増殖、および結果として生じる破裂、を引き起こす経壁的な大動脈壁部の変性により、特徴づけられる。別の種類の動脈瘤は、動静脈フィステル、心臓動脈瘤(一般的に、心筋梗塞により生じる)、および粟粒動脈瘤(例えば、網膜等の、微細な動脈の中の動脈瘤)等、を含む。
【0367】
動脈瘤は、積極的に探されなければ、容易に検出することはできないが、これらは、多くの場合、特徴的な臨床的徴候の手段により、検出できる。例えば、動脈瘤は脈動する腫瘍の形成を示し、強弱を伴って聞こえる「雑音」の場合が多い。また、接触している部分における圧力も観察できる。
【0368】
動脈瘤の治療は、一般的に、上述のような、外科的介入を含む。多くの場合に、置換用の血管または人工的なプロテーゼを用いて、動脈瘤の切除、および血管の吻合を行なうことができる。あるいは、本明細書において記載されているような、ステントまたはその他の脈管内装置等のような、支持構造を、本明細書において記載されているような、ストレスを軽減するために、血管の中に植え込むことも可能である。しかしながら、外科的介入は動脈瘤が生じた後にのみ有用であり、一般的に、予防のための使用はできない。さらに、上記の方法は侵襲性であり、外科手術および患者の入院を必要とする。
【0369】
動脈瘤の形成を予防するための予防方法は、脈管における機械的なストレスを減少させるために、血圧を減少させることに依存する傾向がある。これらの方法は、特に長期間の使用にわたって、例えば、腎臓または肝臓の障害等の、望ましくない副作用を生じる可能性のある薬物の使用、を含む。さらに重要なことは、これらの薬物は、血管の構造を改善すること、あるいは、異常な拡張に関連する細胞および分子の過程を変えることのためには、適用されない。さらに、これらの薬物が定着した動脈瘤を退化させることができるという証拠は見出されていない。
【0370】
多くの動脈瘤、特に腹大動脈瘤、における、最も顕著な組織学的な発見は、内側の弾性層(medial elastic lamellae)の破壊、外側の大動脈壁部内の慢性の炎症、および内側の血管新生である。セリンプロテアーゼ、プラスミノゲン活性因子、およびマトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)、を含む接合組織蛋白分解酵素の増加した局所的な生成は動脈瘤の組織内において立証されている。これらの酵素のいずれもが、動脈瘤の中の構造的に重要な細胞外基質蛋白質の変性に貢献する可能性があるが、何らかの具体的なメカニズムが、腹大動脈瘤の進行性の病理生物学的な状況において、特に重要な役割を果たす可能性があるかについては、明らかになっていない。
【0371】
テトラサイクリンは、周知の有効な種類の抗生物質である。テトラサイクリン、スポロサイクリン等のような化合物は、多様な細菌に対して有用性を有する、広い範囲の抗生物質である。
【0372】
テトラサイクリン、ならびに、その5−OH誘導体(テラマイシン)および7−Cl誘導体(オーレオマイシン)は、天然に存在していて、全て周知の抗生物質である。しかしながら、天然のテトラサイクリンは、それらの抗生物質作用の特性を失うことなく、修飾することが可能であるが、その構造の特定の要素は、このような修飾を行なうために、維持される必要がある。例えば、基本的なテトラサイクリンの構造に対して、行なうことのできる、あるいは、行なうことのできない、修飾が、ミッチャー(Mitscher)により調査されている(ミッチャー,エル・エー(Mitscher, L.A.),ザ・ケミストリー・オブ・ザ・テトラサイクリン・アンチバイオティクス,第6章,マーセル・デッカー(Marcel Dekker),ニューヨーク(1978年))。例えば、このミッチャー(Mitscher)によれば、テトラサイクリンの環状組織の5位乃至9位における修飾は、抗生物質作用の特性の完全な損失を生じることなく、行なうことができる。しかしながら、この環状組織の基本構造に対する変化、あるいは1位乃至4位または10位乃至12位における置換基の置き換えは、一般に、抗菌活性の、実質的に低い、あるいは本質的に皆無である、合成テトラサイクリンを生じることになる。例えば、4−デジメチルアミノテトラサイクリンは、非抗菌性のテトラサイクリンであると、一般的に考えられている。
【0373】
テトラサイクリンの抗生物質の使用は、感染症を治療するためには一般に有効であるが、望ましくない副作用を生じる可能性がある。例えば、抗生物質作用のテトラサイクリンの長期の投与は、腸管の微生物叢等のような、健康な細菌叢を減少させるか無くす可能性があり、さらに、抗生物質耐性の生物の生成や酵母および真菌の過剰増殖を引き起こす可能性がある。
【0374】
最近において、抗生物質のテトラサイクリンに構造的に関連しているが、それらの抗生物質の活性は化学的な修飾により実質的にまたは完全に失われている、新しい種類の化合物が定められている。これらの化合物は、化学修飾テトラサイクリン(CMT)として知られており、生体内における過剰な膠原溶解性の活性の抑制等のような、多数の興味ある特性を有していることが分かっている。特に、CMTは、一部のMMP、すなわち、広い範囲の接合組織基質を伴う一群の亜鉛依存性の酵素、により、コラーゲンの変性を抑制することが示されている。例えば、ゴルブ(Golub)他(ゴルブ,エル・エム(Golub, L.M.),ラママーシー,エヌ・エス(Ramamurthy, N.S.),マクナマラ,ティー・エフ(McNamara, T.F.),グリーンワルド,アール・エー(Greenwald, R.A.),およびリフキン,ビー・アール(Rifkin, B.R.),「テトラサイクリンズ・インヒビット・コネクティブ・ティシュー・ブレイクダウン:ニュー・セラピューティック・インプリケーションズ・フォー・アン・オールド・ファミリー・オブ・ドラッグズ(Tetracyclines inhibit connective tissue breakdown: New therapeutic implications for an old family of drugs)」クリティカル・レビュー・イン・オーラル・バイオロジー・アンド・メディシン(Crit. Rev. in Oral Biol. And Med.),2(2)巻:p.297−322,(1991年))、ライアン(ライアン,エム・イー(Ryan, M.E.),ラママーシー,エヌ・エス(Ramamurthy, N.S.)およびゴルブ,エル・エム(Golub, L.M.),「マトリックス・メタロプロテアーゼズ・アンド・ゼア・インヒビション・イン・ペリオドンタル・トリートメント(Matrix metalloproteases and their inhibition in periodontal treatment)」カレント・オピニオン・オブ・ペリオドンタル(Curr. Opin. Periodontal),3巻,p.85−96,(1966年))、を参照されたい。
【0375】
この例示的な実施形態において、テトラサイクリンの化合物は、脈管の動脈瘤の治療のためのデキサメタゾン(dexamethasone)およびラパマイシン(rapamycins)等のような、抗炎症性の化合物との組み合わせにおいて利用可能である。これらの薬剤は、本明細書において記載されているような動脈瘤修復システム1000から、あるいは、別の送達用の貯蔵部から、局所的に送達できる。上述のように、ラパマイシン(rapamycin)は、脈管の動脈瘤の開始および成長を抑制して阻止するためと、傷害に応答して脈管壁部内の線維芽細胞の減少させることを含む、多数のメカニズムによる定着した動脈瘤の後退を誘発させるために、利用可能であり、これにより、脈管の瘢痕組織の形成を減少させて、炎症を減少させ、さらに、コラーゲンの形成または代謝に関連する重要な蛋白質の翻訳に影響を及ぼすことができる。これらの作用のメカニズムは、上記において簡単に説明されていて、以下において詳細に説明されているような、テトラサイクリン化合物の作用とは異なっている。したがって、ラパマイシン(rapamycin)との組み合わせにおけるテトラサイクリン化合物の使用は、動脈瘤の治療において相乗効果を結果として生じることができる。ラパマイシン(rapamycin)は、本明細書において記載されているように、多数の利点を与えるが、多数の抗炎症性の作用も利用できる。
【0376】
本発明の方法に従って使用するための例示的な薬剤配合物は、当業界における専門家により理解されているような、適当な薬剤キャリヤーまたは賦形剤の中においてテトラサイクリン化合物を含んでいる。これらの配合物は、経口によるか、局所的に、あるいは、注入によるか、本明細書において論じられていて説明されている別の手段により、投与するために適しているキャリヤーと共に、配合されている。さらに、時間放出式または調整送達式の投与が、既知の方法にしたがって、採用できる。また、薬剤キャリヤーを伴うテトラサイクリン化合物の送達の手段は、被験者に対する経口投与に適している、カプセル、圧縮した錠剤、ピル、溶液、または懸濁液、の形態にすることができる。
【0377】
上記の薬剤の化学的および物理的な特性は投与の特定の様式の効率に影響を及ぼすことができる。例えば、比較的に親油性の高いテトラサイクリン化合物は、経口投与により比較的に良好な血中濃度を生じることができ、皮下注射によると比較的に低い血中濃度を生じるが、他の薬剤が、脈管の灌流により、このテトラサイクリン化合物を、さらに効果的に送達しやすくさせる特性を有する可能性もある。なお、当業界における熟練者は、特定の場合において必要とされる時に、上記のような考慮点に効果的に対処する方法を理解するであろう。
【0378】
本発明により治療可能な状況は、哺乳類動物の被験体の中において生じる。人間の患者は、本発明の方法により治療可能な、はるかに、最重要の被験体であるが、この方法は、例えば、イヌやネコ等のようなペット動物、ラットやマウス等のような実験動物、ならびに、ウマやウシ等のような家畜、を含む、他の哺乳類動物における有益な効果のために実施することも可能である。
【0379】
本発明の方法は、初期のまたは既存の血管の拡張または動脈瘤の部位に対して、テトラサイクリン化合物または他の抑制性の化合物の、方向を定めた送達により、実施できる。一つの例示的な実施形態において、本発明は、活性な物質の脈管内における送達を可能にする、本明細書において記載されているような、脈管内に植え込み可能な装置を含む、医療装置の使用方法、に関連している。使用に適している植え込み可能な装置は、ステント、カテーテル、塞栓コイル、フィルター、カニューレ、プロテーゼ、およびその他の当業界において知られている類似の装置、等のような装置、を含む。上記の活性物質は上記の装置の表面の上に被覆することにより含ませることができ、あるいは、その装置が高分子材料により作られている場合には、植え込み時に周囲の組織の中に放出するための材料の中に混入させてもよい。あるいは、上記の被膜は、活性物質が調整された放出様式で、原位置において送達できるように、水溶性のポリマー等のような高分子材料を含むこともできる。これらの方法における使用に適しているポリマーは当業界において周知であり、セルロース・ポリマー、ポリアクリレートおよびポリアクリルアミド等のような、ポリマー、ポリビニル・アルコール、ポリビニルピロリドン、およびその他の親水性ポリマー、を含む。あるいは、周囲の組織または流体の中への活性物質の放出に適している多孔性を有するポリマーも使用可能である。加えて、調整されて局在化された、または全身系的な、薬剤の送達のために、血管の中に、ミクロン単位さらに/またはナノ単位の粒子の調合物中において、上記の1種類以上の薬剤を直接に注入するか灌流するために、カテーテルを使用することも可能である。多数のポリマーが、本発明に従って、利用可能であることに、注目することが重要である。薬剤の送達の好ましい様式は、植え込み部位における血管の壁部の中に直接に薬剤を放出すると共に、その部位における血管に対して直接の構造的な支持を与えるための材料で被覆された、ステント、ステントグラフトおよび/または動脈瘤修復装置、を使用することである。あるいは、二重のバルーン灌流カテーテルが拡張部または動脈瘤の部位を分離するために用いられ、テトラサイクリン化合物またはその他のプロテアーゼ抑制因子を、周囲の組織に無関係に、その分離された領域に送達できる。
【0380】
本発明による使用において適しているテトラサイクリン化合物は、市販されているか、当業界において知られている方法により調製できる。一部の適当な方法は、ミッチャー(Mitscher)(1978年)により記載されている方法、を含む。
【0381】
以下の実施例は本発明のさらなる理解を補助するために記載されている。使用されている特定の材料および条件は、本発明のさらなる例証になることを意図されており、本発明の妥当な範囲における限定ではない。
【0382】
オスのウィスター・ラット(350〜400g)を、アニジャー(Anidjar)他(アニジャー,エス(Anidjar, S.),サルツマン,ジェイ・エル(Salzmann, J.L.),ジェネリック,ディー(Generic, D.),ラグノー,ピー(Lagneau, P.),カミレリ,ジェイ・ピー(Camilleri, J.P.),およびマイケル,ジェイ・ビー(Michel J.B.),「エラスターゼ・インデュースド・エクスペリメンタル・アニューリズムズ・イン・ラッツ(Elastase induced experimental aneurysms in rats)」,サーキュレーション(Circulation),82巻,p.973−981,(1990年))、ハルペルン(Halpern)他(ハルペルン,ブイ・ジェイ(Halpern, V.J.),リアオ,ナックマン,ジー・ビー(Liao, Nackman, G.B.),ガンジー,アール・エイチ(Gandhi, R.H.),イリザリー,イー(Irizarry, E.),シューレス,ジェイ・ブイ(Scholes, J.V.),ラメイ,ダブリュー・ジー(Ramey, W.G.),およびチルソン,エム・ディー(Tilson, M.D.),「ジ・エラスターゼ・インフュージョン・モデル・オブ・エクスペリメンタル・アオーチック・アニューリズムズ:シンクロニー・オブ・インダクション・オブ・エンドゲナス・プロテイナーゼ・ウィズ・マトリックス・デストラクション・アンド・インフラマトリー・セル・レスポンス(The elastase infusion model of experimental aortic aneurysms: Synchrony of induction of endogenous proteinases with matrix destruction and inflammatory cell response)」,ジャーナル・オブ・バスキュラー・サージェリー(J. Vasc. Surg.),20巻,p.51−60,(1994年))、およびペトリネック(Petrinec)(ペトリネック,ディー(Petrinec, D.),リアオ,エス(Liao, S.),ホルムズ,デイー・アール(Holmes, D. R.),レイリー,ジェイ・エム(Reilly, J.M.),パークス,ダブリュー・シー(Parks, W.C.),およびトンプソン,アール・ダブリュー(Tompson, R.W.),「ドキシサイクリン・インヒビション・オブ・アニューリズマル・ディジェネレーション・イン・アン・エラスターゼ−インデュースド・ラット・モデル・オブ・アブドミナル・アオーチック・アニューリズム:プリザベイション・オブ・アオーチック・エラスチン・アソシエイテッド・ウィズ・サプレスド・プロダクション・オブ・92kD・ゼラチナーゼ(Doxycycline inhibition of aneuryssmal degeneration in an elastase-induced rat model of abdominal aortic aneurysm: Preservation of aortic elastin associated with suppressed production of 92kD gelatinase)」,ジャーナル・オブ・バスキュラー・サージェリー(J. Vasc. Surg.),23巻,p.336−346,(1996年))、により記載されている方法を用いて、50単位のブタ膵臓エラスターゼを伴って、腎下腹大動脈の分離されている部分の灌流処理を受けさせた。この方法は、腹大動脈瘤の実験的誘発のための容認されているモデルである。これらの動物体(それぞれのグループにおいてn=6のラット)を、その後、塩水のビヒクル(対照)か、種々の投与量のドキシサイクリン(Dox)か、4種類の異なる、非抗生物質作用の、化学的に修飾されたテトラサイクリン(CMTs、コラジェネックス・インコーポレイション(CollaGenex, Inc.)ニュートン、ペンシルバニア州)の内の1種類の、いずれかの、1日に2回の皮下注射により、処理した。大動脈の直径(AD)を、エラスターゼの灌流の前後、および7日目に犠牲にする直前に、マイクロキャリパーにより、測定した。また、腹大動脈瘤を、灌流の前に測定したADの少なくとも2倍までの、最終的なADにおける増加として定めた(必要最小限で100%の増加)。次に、それぞれのグループ内の2頭の動物体からの大動脈の組織を、10%の中性の緩衝液化したホルマリンにより、灌流して固定し、パラフィン中に埋め込み、エラスチンについてベルホエッフ−ファン−ガイセン(Verhoeff-van Geisen)(VVG)により染色した。さらに、残りの動物体からの組織を抽出して、全体の蛋白質に対して規格化し、記述されているようなゼラチン基質の電気泳動により分析した(トンプソン(Thompson)他,1995年,ハルペルン(Halpern)他,(1994年),ペトリネック(Patrinec),(1996年))。
【0383】
塩水処理した対照の動物体については、平均のAD値は125±18%だけ増加し、動物体の6頭の内の5頭(83%)は、上記において定義されているような、腹大動脈瘤を有していた。一方、60mg/kg/日のDoxにより処理したラットは、対照の動物体よりも、かなり低い大動脈の拡張率(平均で61±7%)を有しており、腹大動脈瘤は全く観察されなかった(p<0.01)。また、Doxの効果は投与量依存型であり、約12.5mg/kg/日において最大の抑制率を示した。図76は、Doxによる大動脈の拡張の投与量依存型の抑制を、示しており、この場合に、データは、塩水処理した対照(S)に対して比較されているDox処理したラットにおける大動脈の拡張の抑制率、をそれぞれ示している(p<0.01、ステューデントt検定対S)。例えば、15mg/kg/日において、各CMTはエラスターゼ灌流により誘発される大動脈の拡張を同様に抑制している。図77は、一括したグループとしての各CMTによる大動脈の拡張の抑制、を示しており、この場合に、データはS−、Dox−、CMT−により、それぞれ処理した動物体において観察された大動脈の拡張の程度、をそれぞれ示している(p<0.05、ステューデントt検定対S)。このことは、CMT−3,CMT−7およびCMT−8(p<0.05)において統計的に有意であり、CMT−4も大動脈の拡張を抑制しているが、その効果は、この調査において、統計的な有意性に到達していなかった。また、同一の投与量におけるDoxに比べた場合に、動脈瘤の拡張を抑制することにおけるそれぞれのCMTの相対的な効果は、92%(CMT−3)、75%(CMT−4)、92%(CMT−7)、および105%(CMT−8)であった。VVG染色した大動脈の切片は、単核性の炎症に付随する、全ての塩水処理した対照物において、中間の弾性層の実質的な退化を示した。一方、テトラサイクリン化合物は、一貫して、炎症の応答を変えることなく、大動脈のエラスチンの退化を妨げていた。また、対照の動物体からの大動脈の抽出物は、ゼラチン電気泳動像により、MMP−9の生成において顕著な増加を示したが、このことは、テトラサイクリンにより処理したラットにおいては、実質的に減らされている。
【0384】
従って、テトラサイクリンの誘導体は、エラスターゼ灌流したラットの大動脈において、動脈の拡張およびエラスチンの退化を抑制する。また、テトラサイクリン化合物は、拡張された動脈瘤の脈管組織の弾性線維溶解性のゼラチナーゼの特徴の増加された発生に付随する、弾性線維溶解性の活性も減少させる。このようなテトラサイクリン化合物の観察された効果は、影響を受けた組織内の、炎症の応答とは無関係であるように思われる。それゆえ、このような弾性線維溶解性の活性の薬理学的な抑制は新規の治療方策として用いることができ、この方策により、進行している大動脈壁部の基質の破壊が抑制され、腹大動脈瘤の進行性の成長が制限される。確かに、腹大動脈瘤および動脈の拡張の退行は、本発明による種々のMMPの抑制により行なうことができる。
【0385】
上記の例示的な実施形態によれば、本発明の方法は、抗動脈瘤の治療を必要としている被験体に、抗動脈瘤の量のラパマイシンまたはその他の抗炎症性の物質との組み合わせにおける、抗動脈瘤の量のテトラサイクリン化合物の投与、を含む。このテトラサイクリンの抗動脈瘤の量は、血管内における動脈瘤の形成を妨げるか、定着した(既存の)動脈瘤の進行を抑制するか退行させる、量、である。したがって、抗動脈瘤の治療を必要としている哺乳類動物は、異常な血管の拡張または動脈瘤が形成されやすい哺乳類動物であるか、定着した血管の拡張または動脈瘤を示している哺乳類動物である。本発明の方法はこのような動脈瘤の形成に抵抗することにより有効であり、関連の血管(動脈瘤の組織)をさらに安全な状態、好ましくは正常なまたは正常に近い状態に戻すように、既存の動脈瘤を退行させることにおいて有用である。
【0386】
上記の例示的な方法は、抗動脈瘤の効果を有する任意の適当なテトラサイクリン化合物を用いている。本発明に従って投与される物質として、テトラサイクリン化合物を使用することにおいて、観察された抗動脈瘤の効果は、その化合物が有すると考えられるあらゆる抗菌性の活性とは、無関係であって、独立している、ように思われる。したがって、このテトラサイクリンは抗菌性のテトラサイクリン化合物でもよく、あるいは、有意の抗菌活性をほとんどまたは全く有していないテトラサイクリン類似体であってもよい。このような意図において、本明細書においては、有意の抗菌活性をほとんどまたは全く有していないテトラサイクリン類似体もCMTと呼ばれている。
【0387】
例示的な抗菌性のテトラサイクリン化合物(抗動脈瘤剤)は、例えば、テトラサイクリン自体、ならびにその誘導体、を含む。また、例示的な誘導体は、例えば、オーレオマイシンおよびクロロマイシン、を含む。
【0388】
CMTが用いられる場合に、そのCMTは、そのテトラサイクリンの環構造の4位において、ジメチルアミノ基を有していないこと、が好ましい。このような化学的に修飾されているテトラサイクリンは、例えば、4−ジメチルアミノテトラサイクリン(CMT−1)、4−デジメチルアミノ−5−オキシテトラサイクリン、4−デジメチルアミノ−7−クロロテトラ−サイクリン(CMT−4)、4−ヒドロキシ−4−デジメチルアミノテトラサイクリン(CMT−6)、5a,6−アンヒドロ−4−ヒドロキシ−4−デジメチルアミノテトラサイクリン、6−デメチル−6−デオキシ−4−デジメチルアミノテトラサイクリン(CMT−3)、4−デジメチルアミノ−12a−デオキシテトラサイクリン(CMT−7)、および6−アルファ−デオキシ−5−ヒドロキシ−4−デジメチルアミノテトラサイクリン(CMT−8)、を含む。また、例えば、テトラサイクリノニトリル等のようなニトリルを産生するための、2位の炭素の位置において修飾されているテトラサイクリンも、非抗菌性で抗メタロプロテイナーゼ性(anti-metalloproteinase)の物質として、有用である。
【0389】
減少された抗菌活性のために修飾されているテトラサイクリンのさらに別の例は、テトラサイクリンのモノ−N−アルキル化アミドである6−アルファ−ベンジルチオメチレンテトラサイクリン、6−フルオロ−6−デメチルテトラサイクリン、および11アルファ−クロロテトラサイクリン、を含む。
【0390】
テトラサイクリン化合物が、実質的に全く抗菌活性を有さない量で投与可能であるが、この量は、血管の中の動脈瘤に付随する、病理学的状況を減少させることや、望ましくない結果を抑制することのために、有効である、ということは、本発明の利点に含まれる。したがって、抗菌性のテトラサイクリンは、有効に非抗菌性である量で、使用可能である。あるいは、上述のように、テトラサイクリン化合物は、その抗菌性の特性を減少させるか無くさせるために、化学的に修飾することが可能である。このような修飾したテトラサイクリンの使用は、これらが抗菌性のテトラサイクリンよりも多い量で使用可能であると共に、抗菌性または抗殺菌性の量のこのような化合物の使用に伴う場合の多い、有益な微生物の無差別の殺菌等のような、特定の不都合を避けることができるので、本発明において好ましいと考えられる。このことは、1種類以上の薬剤の全身系的な送達に、特に関連がある。
【0391】
とりわけ、本発明は、他の場合には拡張および/または動脈瘤を引き起こす可能性のある異常な退化から、血管の中間層における弾性線維を保護するための方法、を提供している。したがって、この方法は、脈管組織の中における、弾性線維溶解性の活性を選択的に抑制する工程、を含む。この弾性線維溶解性の活性は、動脈のエラスチンおよび、細胞外基質成分等のような、関連の物質の、プロテアーゼ関連の構造的劣化、を含む。なお、上記の弾性線維溶解性の活性は、血管に対する後続の傷害または外傷を増やし、この現象がその血管の拡張に関連する可能性があるように思える。したがって、この例示的な実施形態においては、本発明は、脈管組織内の異常な、または、高められた弾性線維溶解性の活性の選択的な抑制、を含む。
【0392】
この例示的な実施形態において、上記の方法は、組織内の弾性線維溶解性の活性を選択的に抑制するために十分な量(抗弾性線維溶解性の量)における、弾性線維溶解性の活性の抑制因子、に対して、脈管組織を接触させる工程、を含む。この方法は、脈管組織の単離された試料の中における弾性線維溶解性の活性の、実験的なまたは診断による抑制手段として、生体外において行なうことが可能であり、あるいは、異常な血管の拡張や動脈瘤を引き起こす可能性のある、脈管組織内の弾性溶解性の活性、を減少させるために、生きている哺乳類動物の被験体が治療される場合の、生体内において、行なうことも可能である。
【0393】
上記の弾性線維溶解性の活性の抑制は、組織マトリクスメタロプロテイナーゼ(tissue matrix metalloproteases)に付随する蛋白分解性の活性に対して、選択的に管理されることが好ましい。他の抗メタロプロテイナーゼの作用の中でも、本発明は、ゼラチナーゼ、すなわち、MMP−9(92kDゼラチナーゼ)の選択的な抑制を達成するために有効である。したがって、一般に、マトリクスメタロプロテイナーゼ(コラーゲナーゼ等を含む)の抑制因子、特に、ゼラチナーゼの抑制因子は、本発明の方法による使用が可能である。
【0394】
また、MMP活性の他の抑制因子は、異常な脈管の拡張および動脈瘤を抑制することにおける使用にも適している。
【0395】
適当な抑制因子は、例えば、種々のMMPの組織抑制因子(TIMP)およびアルファ−マクログロブリン等のような、内因性の抑制因子、およびキレート化剤(例えば、EDTAおよび1,10−フェナントロリン)、ペプチド、抗体等のような、合成の抑制因子、を含む。また、他の適当な抑制因子も知られており、例えば、ライアン(Ryan)他、(1996年)を参照されたい。このように、本発明は、MMP関連の活性が過剰であると考えられる脈管組織の中におけるMMP関連の活性を抑制する方法、をさらに提供している。蛋白分解性の活性の有効な抗動脈瘤性の抑制は、関連のMMPの合成または発現を抑制するか、発現されたMMPの蛋白分解性の活性を抑制することにより、達成できる。
【0396】
哺乳類動物のための活性物質の最大限の投与量は、有効に抗動脈瘤性であり、望ましくないまたは耐えられない副作用を引き起こさない、最大の投与量である。例えば、テトラサイクリン化合物は、約0.1mg/kg/日乃至約30mg/kg/日、好ましくは約1mg/kg/日乃至約18mg/kg/日、の量で投与できる。本発明の目的において、副作用は、臨床的に著しい抗菌性または抗細菌性の活性、ならびに毒性作用を含む。例えば、約50mg/kg/日を超える投与量は、人間を含むたいていの哺乳類動物において、副作用を生じやすいと考えられる。しかしながら、あらゆる場合において、専門家はこの分野において、熟練と知識により導かれるものであり、本発明は、限定を伴わずに、記載されている現象を達成させるために有効である投与量、を含む。
【0397】
本発明の方法に従って有用な薬剤は、投与量依存型の様式で、それぞれの有益な効果を示す。例えば、広い範囲内で、大量のテトラサイクリン化合物の投与は、少量の投与により誘発されるよりも、大きく、または強い応答を誘発するであろう。さらに、抗動脈瘤の効果は、毒性が見られる投与量よりも少ない投与量において、観察されている。
【0398】
テトラサイクリン化合物は、腸内および非経口の経路を含む、任意の利用可能で有効な経路により、被験体に対して投与できる。経口投与は投与の一つの様式である。例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下等、薬剤の注射も、熟練者による決定に従って、使用できる。本発明によれば、治療の投与量における、ラパマイシン(rapamycin)およびテトラサイクリン等のような抗炎症剤の組み合わせ物は、動脈瘤の治療のために、患者に対して投与できる。これらの薬剤は、本明細書において記載されているように、任意の適当な手段により、送達できる。例えば、これらの薬剤は、動脈瘤の修復装置または別の薬物送達用の貯蔵部に対して、直接的にまたは間接的に付随することができる。また、これらの薬剤は、多数の生体適合性のポリマーの中に、混入させることもできる。ラパマイシン(rapamycin)は脈管壁部内における線維芽細胞の増殖を遮断させて、脈管の瘢痕組織の形成を減少させるために、利用できる。また、ラパマイシン(rapamycin)は、コラーゲンの形成または代謝に関連する重要な蛋白質の翻訳に影響を及ぼす可能性もある。また、ラパマイシン(rapamycin)は炎症も減少させることができる。一方、テトラサイクリンは、マトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)およびゼラチナーゼの弾性線維溶解活性を抑制するために利用できる。これらの化合物のそれぞれは、動脈瘤疾患の異なる状況において利用可能であり、これにより、相乗効果を生じる。
【0399】
あるいは、テトラサイクリンは、高親和性サイトゾル蛋白質である、FKBP12、に結合する物質との組み合わせにおいて、利用してもよい。本明細書において記載されているように、ラパマイシン(rapamycin)は、ラパマイシン(rapamycin)と、FKBP12に結合するその全ての類似体、誘導体、同属体および共役体(conjugates)と、その他のイムノフィリン(immunophillins)と、を含み、mTORの抑制を含む、ラパマイシン(rapamycin)と同じ薬理学的な特性、を有している。しかしながら、有効な組み合わせ物は、テトラサイクリンの化合物と、炎症を減少させるために、mTORを抑制しない、FKBP12に結合する物質と、の組み合わせ物も、同様に含んでいてよいと考えられる。
【0400】
FKBP12は、ラパマイシンおよびその他の免疫抑制薬が結合する細胞内イムノフィリン(immunophylin)蛋白質である。このFKBP12と免疫抑制薬のラパマイシン(rapamycin)との複合体は、上記において簡単に説明されているような、ラパマイシン(rapamycin)の哺乳類標的物またはmTORと呼ばれている細胞内キナーゼ、を抑制する。この作用は、マイトジェン誘導型の細胞増殖に関連している多数の蛋白質キナーゼを抑制し、特に、G1期の抑制を引き起こす。このことは、本明細書において詳細に記載されているような、平滑筋細胞や、主な炎症性細胞の標的であるT細胞、を含む、多数の細胞型に当てはまる。すなわち、この作用は、テトラサイクリン化合物と、FKBP12に結合する物質と、の組み合わせ物の、有益な態様の一つ、を与えている。
【0401】
FKBP12はまた、タクロリムス(tacrolimus)(FK−506)に対して相互作用する。このFKBP12とタクロリムス(tacrolimus)との複合体はカルシニューリン(calcineurin)の機能を遮断する。また、シクロスポリンAと言う、別の免疫抑制薬も、カルシニューリン(calcineurin)の機能を遮断する、シクロフィリン(cyclophylin)と呼ばれている、異なる蛋白質と共に、複合体を形成する。このように、カルシニューリン(calcineurin)を遮断することは、活性化T細胞の核因子(Nuclear Factor of Activated T Cells)またはNFATと呼ばれている蛋白質の活性化を妨げ、これにより、T細胞の機能を抑制する。なお、FKBP12は、一般的に、高濃度で、細胞内に存在している。
【0402】
図30は無被覆状態のまたは裸の状態の外科ステープル3000を示している。このステープル3000は任意の用途に対する必要な強度条件を有する任意の適当な生体適合性の材料により形成できる。一般に、これらの外科ステープルはステンレス・スチールを含む。図31は多数の貫通穴3002を有する外科ステープル3000の例示的な実施形態を示しており、このステープルは好ましくは前述のような1種類以上の薬物、薬剤および/または化合物を含有している。さらに、これらの1種類以上の薬物、薬剤および/または化合物は高分子の混合物を伴うか伴わずに前記の貫通穴3002の中に注入できる。例えば、一例の例示的な実施形態において、前記の貫通穴3002は前記1種類以上の薬物、薬剤および/または化合物をこれらの穴の中に直接的に注入してこれらの貫通穴3002の寸法に基づく特定の速度で溶出できるように寸法付けることができる。また、別の例示的な実施形態においては、前記1種類以上の薬物、薬剤および/または化合物は前記の溶出速度を調整する適当なポリマーと共に混合して、前記の貫通穴3002の中に注入および装填することができる。さらに別の代替的で例示的な実施形態においては、前記1種類以上の薬物、薬剤および/または化合物は前記の貫通穴3002の中に注入して装填した後にその溶出速度を調整するためのポリマーにより被覆することが可能である。
【0403】
図32は外科ステープル3000の例示的な実施形態を示しており、この外科ステープル3000はその表面の全体を実質的に被覆している被膜3006を有している。この実施形態においては、前記1種類以上の薬物、薬剤および/または化合物は噴霧または浸漬を含む多数の既知の技法により前記ステープル3000に直接的に固着させることができ、あるいは、これら1種類以上の薬物、薬剤および/または化合物を高分子基材と共に混合するかその中に組み込んだ後に前記ステープル3000に固定できる。あるいは、前記1種類以上の薬物、薬剤および/または化合物を前記ステープル3000の表面に直接的に固着させた後に、これらの1種類以上の薬物、薬剤および/または化合物の層の上に拡散バリアを供給することも可能である。
【0404】
多数の薬物、薬剤および/または化合物が種々の状況を治療すること、および/または、前記ステープル3000の植え込みに対する生体の反応を最小限にするか実質的に無くすことのためにその外科ステープル3000と共に使用できるが、好ましい実施形態において、その外科ステープル3000は抗増殖剤により被覆されている。このような装置の利点はその抗増殖剤の被膜が新内膜の過形成に対する予防薬として機能することである。前述のように、新内膜の過形成は、例えば、過形成の発生部位である場合が多い吻合部位、組織対組織または組織対インプラントの部位等のような、身体が損傷であると知覚する部位において発生する場合が多い。この場合に、抗増殖性の物質を含有しているステープルを利用することにより、前記のような新内膜の過形成の発生を実質的に減少できるか無くすことができる。
【0405】
ラパマイシン(rapamycin)は前記の外科ステープル3000の上かその中において利用できる既知の抗増殖剤であり、前記の高分子材料の任意のものの中に組み込むことができる。このラパマイシン(rapamycin)を利用する付加的な利点はその抗炎症薬としての作用である。このような二重の作用は新内膜の過形成を減少するだけでなく炎症も減少するために機能する。本明細書においては、ラパマイシン(rapamycin)はラパマイシン(rapamycin)、シロリムス(sirolimus)、エベロリムス(everolimus)およびFKBP12に結合する全ての類似体、誘導体および共役体、およびその他のイムノフィリン(immunophilins)を含み、MTORの抑制を含むラパマイシン(rapamycin)と同一の薬理学的な特性を有する。
【0406】
さらに別の代替的で例示的な実施形態において、前記外科ステープル3000は前記の1種類以上の薬物、薬剤および/または化合物を含む高分子材料等のような材料により作成できる。この特定の実施形態によらず、前記1種類以上の薬物、薬剤および/または化合物の溶出速度は前述のように調整できる。
【0407】
次に図33において、縫合糸材料4000の一部分が示されている。この縫合糸4000は吸収性または非吸収性の両方の縫合糸の作成において一般的に利用されている任意の適当な材料を含むことができる。図示のように、この縫合糸4000は1種類以上の薬物、薬剤および/または化合物による被膜4002を有している。前記外科ステープル3000における被膜の場合と同様に、これら1種類以上の薬物、薬剤および/または化合物は縫合糸4000に直接的に供給することができ、あるいは、高分子基材の中に混入した後に縫合糸4000に固着させることも可能である。さらに、前述のように、これら1種類以上の薬物、薬剤および/または化合物を縫合糸4000に固着させた後に、拡散バリアまたは上部被膜をこれら1種類以上の薬物、薬剤および/または化合物に固着させてその溶出または放出の速度を調整することができる。
【0408】
図34は1種類以上の薬物、薬剤および/または化合物4004を含浸している縫合糸4000の一部分を示している。これら1種類以上の薬物、薬剤および/または化合物は縫合糸材料4000の中に直接含浸するか、高分子基材の中に組み込んだ後に縫合糸材料4000の中に含浸できる。あるいは、前記1種類以上の薬物、薬剤および/または化合物を縫合糸材料4000の中に含浸した後に高分子材料により被覆することも可能である。
【0409】
さらに別の代替的で例示的な実施形態において、前記縫合糸4000は、例えば、1種類以上の薬物、薬剤および/または化合物を組み込んでいる高分子材料等のような材料により形成できる。例えば、これら1種類以上の薬物、薬剤および/または化合物をポリマー基質の中に混入した後に押出成形するか浸漬法により形成して前記の縫合糸材料を形成することができる。
【0410】
特定の1種類以上のポリマーがこれらを固着する特定の材料に応じて利用されている。加えて、特定の薬物、薬剤および/または化合物もこれらのポリマーの選択に影響を及ぼす可能性がある。なお、ラパマイシン(rapamycin)はポリ(フッ化ビニリデン)(poly(vinylidenfluoride))/ヘキサフルオロプロピレン(hexafluoropropylene)と共に利用可能である。
【0411】
医療装置の生体、特に生体における脈管、の中への導入はその生体による応答を引き起こす。一般的に、医療装置により得られる有益性はこの生体による応答に伴うあらゆる合併症をはるかに超えるものである。内皮化は合成材料により作られている装置における血液に対する相容性を高めるための一例の好ましい様式または手段である。この内皮は全ての血管の内層を形成している内皮細胞の単一の層である。この内皮は血液とその周囲の組織との間の交換を調整し、基底膜、すなわち、上皮および脂肪および筋肉細胞を含むその他の細胞型を結合組織から分離している細胞外基質により囲まれている。
【0412】
内皮細胞は心臓、動脈、静脈、毛細管およびこれらの間にある全ての組織を含む脈管系全体の内表面部を被覆または内張りしている。これらの内皮細胞は血液の流れに対する出入りにおける物質の通過および白血球細胞の移動を調整する。比較的に大きな血管は異なる組織の多数の層を含むが、最小の血管は内皮細胞および基底膜により実質的に構成されている。これらの内皮細胞は局所的な必要性に適合するためにそれらの数および配列を変更または調節するための高度な能力を有している。本質的に、内皮細胞の増殖および再造形が無ければ、その血管/組織の網状構造の増殖および修復は不可能になる。
【0413】
成育した生体においてさえも、脈管系の全体における内皮細胞は細胞の分裂および移動のための能力を保持している。例えば、静脈または動脈の一部分が損傷または病気により内皮細胞を失っている場合には、その露出している表面を被覆するために隣接の内皮細胞が増殖してその患部の領域に移動する。これらの内皮細胞は内皮細胞を失っている領域を修復するだけでなく、新しい血管を形成することもできる。加えて、本発明に直接的に関連して、新しく形成された内皮細胞はステントおよびその他の類似の装置を含む植え込み可能な医療装置も被覆する。
【0414】
前述のように、内皮化は合成材料により作られている装置の血液に対する相容性を高めるための手段であり、それゆえ、生体に対する許容性が高い。特定の医療装置の脈管内のあらゆる場所への導入において、その一例の目標はその医療装置による血栓形成性の減少である。このことは装置に対して特異的であり、例えば、特定の医療装置はその治癒および固定のために血栓の形成を必要とする。それゆえ、これらの特異的な医療装置における内皮化は好ましい。自己由来の内皮細胞の供給源は重要であり、それゆえ、医療装置の設計の複雑さに無関係にその医療装置の露出される表面の全体を被覆するために十分な細胞を得るための増幅工程が好ましい。従って、医療装置を被覆するかそのインプラントの部位に内皮細胞の助長または増殖のための化学薬品、薬剤、薬物、化合物および/または生物学的な要素の導入のための局在化した手段を供給することが好ましいと考えられる。
【0415】
一例の例示的な実施形態によれば、ステント等のような、植え込み可能な内腔内医療装置を、内皮細胞に選択的に作用する脈管内皮増殖因子VEGFと共に、前記の様式のいずれかにおいて、固定できる。すなわち、脈管内皮増殖因子およびその種々の関連のイソ型の要素は本明細書において説明されている手段の任意のものにより本明細書において図示および説明されている医療装置の任意のものに対して直接的に固着できる。例えば、VEGFは高分子基材の中に組み込むことができ、あるいは、医療装置に対して直接的に固着できる。
【0416】
内皮細胞の刺激を助長する別の因子は線維芽細胞増殖因子の系統群における種々の要素を含む。例えば、インテグリンをアップレギュレーションする物質を含む、細胞移動を加速する種々の物質が内皮化を増進できる。また、酸化窒素も内皮化を促進できる。加えて、脈管形成促進剤(pro-angiogenic agents)も内皮化を刺激できる。
【0417】
あるいは、物理的な材料の特性によって前記医療装置に対する内皮細胞の移動を促進する材料により、その医療装置を作成することができる。本質的に、生体は内皮細胞を形成するので、これらの内皮細胞を引き付けるあらゆる材料または被膜が好ましいと考えられる。
【0418】
例えば、ポリマー等のような生体適合性の材料の上部被膜の供給が、例えば、ステントの基部被膜等のような医療装置の基部被膜からの薬事用の薬物、薬剤および/または化合物、またはこれらの組み合わせの治療のための投薬における溶出を調整または制御するために利用できることが当業界において一般に知られている。この基部被膜は一般に1種類以上の薬物、薬剤および/または化合物およびポリマー等のような生体適合性の材料を含む。このような溶出に関する調整は前記上部被膜の材料により供給される物理的なバリア、化学的なバリア、または物理的および化学的なバリアの組み合わせのいずれかにより行なわれる。この上部被膜の材料が物理的なバリアとして作用する場合に、その溶出はその上部被膜の厚さを変更することにより調整され、これにより、基部被膜の基材から拡散する薬物、薬剤および/または化合物のための拡散経路が変化する。本質的に、前記基部被膜の基材内の薬物、薬剤および/または化合物は上部被膜の中の隙間の空間部分を通って拡散する。従って、その上部被膜が厚いほど、その拡散経路が長くなり、逆に、上部被膜が薄いほど、拡散経路が短くなる。前記の基部被膜および上部被膜の両方の厚さが前記医療装置の望まれる全体の外形により制限されることに注目することが重要である。一方、化学的なバリアとして作用する場合には、前記上部被膜は好ましくは前記の拡散を実質的に阻止するか遅延するために前記の薬物、薬剤および/または化合物に対する相容性が低いか、これらの薬物、薬剤および/または化合物が放出される前に通り抜ける必要のある化学的なバリアを形成するために前記基部被膜に対して相容性が低い材料を含む。また、前記の薬物、薬剤および/または化合物の濃度がその拡散速度に対して影響する可能性があるが、この薬物、薬剤および/または化合物の濃度が本明細書において説明されているような必要とされる治療の投薬にある程度において指定されることに注目することが重要である。
【0419】
一例の実施形態において、ステント等のような医療装置はそのステントからのラパマイシン(rapamycin)の溶出の調整のための化学的なバリアとして主に作用する高分子の材料を利用できる。本明細書においては、ラパマイシン(rapamycin)はラパマイシン(rapamycin)、シロリムス(sirolimus)、エベロリムス(everolimus)およびFKBP12に結合する全ての類似体、誘導体および共役体、およびその他のイムノフィリン(immunophilins)を含み、mTORの抑制を含むラパマイシン(rapamycin)と同一の薬理学的な特性を有する。このような例示的な実施形態において、前記被膜はポリマーのみを含む上部被膜と共に薬物、薬剤および/または化合物およびポリマー基質を含む基部被膜を含む。これらの上部被膜のポリマーおよび基部被膜のポリマーは混合しないか相容性が無く、それゆえ、化学的なバリアを形成する。しかしながら、種々の比較例が、全く同一のポリマーを含むか、異なる比率で同一の諸成分を含有しているポリマーによる基部被膜および上部被膜により作成されている。なお、前記の主な調整機構は化学的なバリアであるが、前記上部被膜はまた、以下において説明されているような、限定された物理的なバリアも備えることができる。
【0420】
前記の例示的な実施形態において、その基部被膜は任意の適当なフルオロポリマーを含むことができ、上部被膜は任意の適当なアクリレートまたはメタクリレートを含むことができる。好ましい実施形態において、前記基部被膜の薬物、薬剤および/または化合物/ポリマー基質は前記において詳細に説明されているようなコポリマーのポリフッ化ビニリデン−コ−ヘキサフルオロプロピレン(polyvinylidenefluoride-co-hexafluoropropylene)(PVDF/HFP)を含む。さらに、この例示的な基部被膜の実施形態において用いられているコポリマーは60重量%のフッ化ビニリデン(vinylidenefluoride)および40重量%のヘキサフルオロプロピレン(hexafluoropropylene)の重量比率でヘキサフルオロプロピレン(hexafluoropropylene)に対して共重合化されているフッ化ビニリデン(vinylidenefluoride)を含有している。一方、上部被膜は、前述のように、任意の適当なアクリレートまたはメタクリレートを含むことができる。さらに、好ましい実施形態において、前記上部被膜のポリマーはポリ−n−ブチルメタクリレート(poly(n-butylmethacrylate))(PBMA)またはBMAを含む。
【0421】
前記のPVDF/HFPおよびBMAは非混和性または非相容性のポリマーであり、これらは既知の技法により混合または溶液から析出する場合に、相分離を生じる。このような非相容性により、アクリル系ポリマーの上部被膜が前記基部被膜の基材からのラパマイシン等のような薬物、薬剤および/または化合物の放出に対する化学的なバリア(一次的な機構)および物理的なバリア(二次的な機構)の両方として作用することが可能になる。
【0422】
前記のPVDF/HFPの基部被膜およびBMAの上部被膜の組み合わせは、高められた耐久性、増加した潤滑性および改善された溶出速度の調整を含む、別の組み合わせに優る多数の利点を提供する。この場合に、PVDF/HFPは柔軟なポリマーである。このような柔軟なポリマーはステントまたはその他の装置が変形する場合に移動または伝達する傾向があるので比較的に耐久性の高い医療装置の被膜を形成する。一方、ポリ−n−ブチルメタクリレート(poly(n-butylmethacrylate))(PBMA)またはBMAは比較的に弾性の高いポリマーではなくむしろ比較的に熱可塑性の高いポリマーであるので、PVDF/HFPよりも剛性が高い。このような比較的に剛性の高いポリマーは比較的に硬い表面になると考えられ、このような比較的に硬い表面は比較的に潤滑性の高い表面である。さらに、このようなポリマーの上部被膜の潤滑性は、本明細書において詳細に説明されているように、装置の送達および配備中において重要である。さらに、このような潤滑性の被膜は送達シースの後退を一般的に必要とする自己拡張式のステントの送達において特に有利である。例えば、この被膜が潤滑性でなければ、前記送達シースの後退は内部において含有されている前記の薬物、薬剤および/または化合物を含む前記の被膜の位置を移動する可能性がある。潤滑性の被膜はまた、配備中におけるステント/バルーンの分離が前記被膜を除去する可能性のあるバルーン拡張式のステントにおいても有利である。フルオロポリマーと共に用いられているアクリル系ポリマーは前述のように優れた化学的および物理的なバリアであり、それゆえ、溶出速度の調整を向上させる。
【0423】
前記の例示的な実施形態における被膜は本明細書において説明されているような多数の植え込み可能な医療装置において利用可能であるが、以下において記載されている例示的な被膜の実施形態はニッケル−チタンの自己拡張式ステントと共に用いられている。
【0424】
次に、図49において、多数のフルオロポリマー/フルオロポリマーおよびフルオロポリマー/アクリル樹脂の被膜調合物についての生体内における薬物放出曲線が示されている。この生体内における方法は基部被膜および上部被膜の両方における多数のポリマー被膜調合物を伴うラパマイシン(rapamycin)溶出式ステントの溶出特性の評価に関連している。ブタは脈管内ステントの研究において確立されている動物種であり、適当な調査機関による前記の研究において容認されている。この生体内における調査はサス・スクロファ(Sus Scrofa)種のオスのブタおよびヨークシャー種のブタを用いている。この場合に、コーディス・コーポレーション社(Cordis Corporation)から入手可能なスマート(S.M.A.R.T)(商標)ステントを腸骨動脈および大腿動脈の中に入れて、コーディス・コーポレーション社(Cordis Corporation)から入手可能なパルマズ(PALMAZ)(登録商標)ゲネシス(GENESIS)(商標)ステントを腎動脈の中に入れ、さらに、コーディス・コーポレーション(Cordis Corporation)社から入手可能なサイファー(CYPHER)(商標)ステントを冠状動脈の中に配置した。その後、前記のブタの1/3を2日目、4日目および8日目にそれぞれ安楽死させて、それぞれのステントおよびその周囲の脈管を外植して薬物の含有量について分析した。
【0425】
図49において示されているデータは前記被覆型のスマート(S.M.A.R.T)(商標)ステントからの生体内におけるラパマイシン(rapamycin)の放出を示しており、これらのステントは、本明細書において説明されているように、長さが20ミリメートルのニッケル−チタンのステントである。このラパマイシン(rapamycin)のポリマーに対する重量の比率はそれぞれのPVDF/HFPの基部被膜において30/70であり、ポリエチレン−コ−ビニル・アセテート(polyethylene-co-vinylacetate)/ポリ−n−ブチルメタクリレート(poly(n-butylmethacrylate)(EVA/BMA)の基部被膜において33/67である。曲線4902は167マイクログラムのPVDF/HFP(60/40の重量比率のVDF:HFP)の上部被膜と共にPVDF/HFP(60/40の重量比率のVDF:HFP)およびラパマイシン(rapamycin)の基部被膜により被覆されているステントにおける溶出の放出速度を示している。また、曲線4904は350マイクログラムのPVDF/HFP(85/15の重量比率のVDF:HFP)の上部被膜と共にPVDF/HFP(60/40の重量比率のVDF:HFP)およびラパマイシン(rapamycin)の基部被膜により被覆されているステントにおける溶出の放出速度を示している。また、曲線4906は350マイクログラムのBMAの上部被膜と共にEVA/BMAおよびラパマイシン(rapamycin)の基部被膜(33%のEVA、33%のBMAおよび33%のラパマイシン(rapamycin))により被覆されているステントにおける溶出の放出速度を示している。また、曲線4908は150マイクログラムのBMAの上部被膜と共にPVDF/HFP(60/40の重量比率のVDF:HFP)およびラパマイシン(rapamycin)の基部被膜により被覆されているステントにおける溶出の放出速度を示している。また、曲線4910は350マイクログラムのBMAの上部被膜と共にPVDF/HFP(60/40の重量比率のVDF:HFP)およびラパマイシン(rapamycin)の基部被膜により被覆されているステントにおける溶出の放出速度を示している。さらに、曲線4912は490マイクログラムのBMAの上部被膜と共にPVDF/HFP(60/40の重量比率のVDF:HFP)およびラパマイシン(rapamycin)の基部被膜により被覆されているステントにおける溶出の放出速度を示している。
【0426】
図49において示されているデータは種々の被膜の組み合わせによるラパマイシン(rapamycin)の溶出速度についての一つの理解を与えている。PVDF/HFPの上部被膜を伴うPVDF/HFPの基部被膜はこれらの基部被膜および上部被膜が化学的に同一であるので、薬物の溶出に対して程度の低い物理的なバリアおよび効力が最少の化学的なバリアを提供している。一方、EVA/BMAの基部被膜上のBMAの上部被膜は、EVA/BMAの薬物基材とBMAの上部被膜の化学的性質との間の相容性により物理的なバリアを提供している。さらに、このBMAの上部被膜は基部被膜の基材(EVA/BMA)と上部被膜(BMAのみ)の化学的性質における差により溶出に対してわずかに有効性の高いバリアを提供している。しかしながら、ラパマイシン(rapamycin)の溶出に対する最も実質的なバリアは、PVDF/HFPの基部被膜およびBMAの上部被膜において観察されており、この理由は、互いに非相容性のポリマーの化学的性質により生じる化学的なバリアのためである。しかしながら、化学的なバリアにおいても、その上部被膜の厚さまたは密度の変化により、薬物の溶出に対するさらに別のレベルの物理的なバリアが提供され、これにより、各曲線4908,4910および4912において示されているような薬剤化合物の放出を調整するための化学的および物理的な両方のバリアを提供する被膜システムが形成できる。
【0427】
本発明による上部被膜の厚さの変更と共に非相容性のポリマーの化学的性質を利用する考えは、望まれる作用を達成するための化学的な非相容性の否定的な態様として通常においては見なされる態様を利用している。曲線4912において示されているように、3日目における最大の溶出率は50%よりも実質的に低いが、PVDF/HFPの基部被膜およびPVDF/HFPの上部被膜における3日目の最大の溶出率は曲線4902において示されているように75%よりも実質的に高い。
【0428】
前記の場合に、PVDF/HFP(60−40の重量比率のVDF:HFP)のコポリマーおよびBMAのポリマーの特定の例が示されているが、前記の概念はアクリル系樹脂(ポリ(アルキル)アクリレート(poly(alkyl)acrylate)およびポリ(アルキル)メタクリレート(poly(alkyl)methacrylate))の系統群における任意のポリマーとの組み合わせにおけるフルオロポリマーの系統群における任意のポリマーに適用できると考えられる。
【0429】
次に、図50において、図49に関連して前記において説明されている同一のフルオロポリマー/アクリル系樹脂の被膜調合物についての生体外における薬物放出曲線が示されている。この生体外の試験方法において、それぞれのステントは24時間の期間にわたり界面活性剤の媒体の連続的な流れに対して曝されている。この媒体の曝露はそれぞれのステントからの薬物、薬剤および/または化合物(この場合にはラパマイシン(rapamycin))の溶出を生じる。また、この媒体の流れは紫外光/可視光の分光光度計の中を流れており、ステントから溶出するラパマイシン(rapamycin)の濃度が時間の関数として決定されている。さらに、同一ロットからのステントにおける薬物含有量のアッセイにより決定される全体の薬物含有量に対比して放出したラパマイシン(rapamycin)のフラクションに基づいて計算が行なわれている。
【0430】
前記の生体外の試験による結果は前記の生体内の試験による結果に類似している。本質的に、各曲線5002,5004,5006,5008,5010および5012を調べることにより、この場合も同様に、ラパマイシン(rapamycin)の溶出に対する最も実質的なバリアはPVDF/HFPの基部被膜およびBMAの上部被膜において観察されており、この理由は、曲線5012により示されているように、非相容性のポリマーの化学的性質に起因する化学的なバリアおよび比較的に厚い上部被膜により与えられる物理的なバリアによるためである。
【0431】
また、PVDF/HFP(60/40の重量比率のVDF:HFP)の基部被膜の基材およびBMAの上部被膜により被覆されているステントが、PVDF/HFP(60/40の重量比率のVDF:HFP)の基部被膜の基材およびPVDF/HFP(60/40の重量比率のVDF:HFP)の上部被膜により被覆されているステントよりも耐久性が高いことに注目することも重要である。
【0432】
治療薬、薬剤および/または化合物を溶出する被覆型の植え込み可能な医療装置の設計は多数の設計上の要因を釣り合わせることを必要とする。例えば、植え込み可能な医療装置に対する被膜の付加はその装置の外形を変化し、このことはさらにその装置の送達に影響を及ぼす可能性がある。さらに具体的に言えば、ステントにおける被膜の付加はそのステントの直径を増大し、このことはさらにその送達を困難にする可能性がある。従って、前記被膜の厚さを最小限にすると共にその治療薬、薬剤および/または化合物の濃度を高めることが好ましいと考えられる。さらに、この治療薬、薬剤および/または化合物の濃度を高めることはその周囲の組織または血流の中への溶出速度を高める可能性がある。しかしながら、この溶出速度を高めることは時期尚早にその薬物、薬剤および/または化合物を枯渇させる可能性がある。それゆえ、本発明は溶出速度に関する調整を維持して比較的に小形の外形を維持しながら薬物、薬剤および/または化合物の濃度を高めることのできる機構を提供している。本質的に、前記の二層法において上部被膜により与えられる化学的および物理的なバリアは薬物、薬剤および/または化合物の濃度を高めて、好ましくは、比較的に小形の外形を維持し、好ましくは、溶出速度に関する比較的に正確な調整を維持するための手段を提供している。
【0433】
加えて、前記の多数の層または多数のポリマーの方法が単一層の方法では提供し得ない耐久性、柔軟性および潤滑性の利点を提供していることを強調することが重要である。
【0434】
脈管の病気は血管を含む種々の領域に影響を及ぼす病気を含む。例えば、狭窄は通常においてアテローム硬化症/冠状動脈心臓病(CHD)による生体(例えば、人間)の体内の動脈の内腔の狭窄化または収縮である。また、再狭窄は脈管形成およびステント処理等のような経皮的な介入後における狭窄の再発である。この再狭窄の原因になっているメカニズムは脈管の反跳、陰性の脈管の再造形、血栓の形成および新内膜の過形成による影響の組み合わせを含む。さらに、バルーンの脈管形成後の再狭窄が主に脈管の再造形および新内膜の過形成により、ステント処理後の再狭窄が主に新内膜の過形成によることが示されている。
【0435】
狭窄および再狭窄に対する治療は多様である。前記CHDにより生じる狭窄は多くの場合に生活の質に影響を及ぼし、その狭窄により卒中、心臓発作、急死および手足または手足の制動機能の損失を引き起こす可能性がある。また、血管の再疎通も狭窄および再狭窄に罹っている種々の個人を治療するために必要になる可能性がある。さらに、冠状動脈バイパスは心臓の脈管再生および通常の血流の回復のために利用可能である。また、別の場合に、バルーン式脈管形成が患部の領域の口径を増大するために行なうことができる。全体的に、これらの治療方法は狭窄に付随する種々の問題に対処するが、これらはまた再狭窄の問題を生じる可能性があり、これらの再狭窄は心臓の種々の症状の再発および死を結果として生じる可能性がある。さらに、前記の治療方法は本質的に予防のためではなく、それゆえ、一般に相当な病気の進行が発生するまで利用されない。
【0436】
狭窄の一例がアテローム硬化症である。このアテローム硬化症は中程度または大形の動脈に悪影響を及ぼし、その動脈の内腔を侵食する集合状の壁内の過形成により特徴付けられ、その最も深刻な形態において、閉塞を生じる。このアテローム硬化症のプラークは細胞内および細胞外の脂質、平滑筋細胞および接合組織基質の蓄積物により構成されている。また、このアテローム硬化症の最も初期の病巣は動脈を被覆する線維質のプラークに進展する脂肪の線条である。さらに、アテローム硬化症の脈管は減少した収縮期の拡張および異常波の伝播を有する。このようなアテローム硬化症の治療は通常においてその合併症、例えば、不整脈、心不全、腎不全、発作、および抹消動脈の閉塞について考慮されている。
【0437】
特に、アテローム硬化症は動脈が肥大して硬化する症状であり、一般に、例えば、コレステロール等の脂肪性の物質、細胞の廃産物、炎症性の細胞、カルシウムおよびその他の動脈の内膜または内皮における物質の進行性の蓄積により生じると考えられている。このような物質の蓄積は、罹患した動脈壁内の細胞を刺激し、このことはさらに細胞を集めてくるような別の物質を作り出す可能性がある。
【0438】
アテローム硬化症は一般的に幼児期に始まり個々の年齢と共に進行する緩やかで複合的な病気である。この進行の速度は血液コレステロールの量、糖尿病、肥満、身体の無活動、高血圧およびタバコの使用を含む多数の要因により影響を受ける可能性がある。また、前記の蓄積物は一般的にプラークと呼ばれ、その影響を受けている動脈の中の血流を著しく減少させる程度に十分に増大する可能性がある。
【0439】
本質的に、前記のような種々の物質の堆積、およびこれにより生じる付加的な細胞性の物質または成分の増殖は実質的にその内膜を拡大し、このことはさらにその内腔の断面積を減少させ、この内腔の断面積の減少によりさらに1つ以上の器官への酸素の供給が減少する。また、前記の堆積物またはプラークは崩壊して血栓を形成する可能性もあり、これらはその影響を受けている動脈の中の血流を完全にふさぐか、破壊されて遊離し体内の別の部分に塞栓物を形成する可能性がある。これらのいずれの場合が生じても、その個人はその影響を受けている動脈が心臓を灌流している場合に心筋梗塞に罹り、その影響を受けている動脈が脳に血液を供給していれば卒中に罹る可能性がある。また、その影響を受けている動脈が手足または付属肢に血液を供給している場合には、壊疽が生じる可能性がある。
【0440】
従来の知識において、心筋梗塞はアテローム硬化症により形成される深刻な遮断により生じると考えられている。すなわち、1つ以上の動脈内における脂質の増加およびこれに続く組織反応によりその影響を受けている1つ以上の動脈が狭くなり、このことはさらにアンギナを生じ、最終的に冠状動脈の閉塞、突然の心臓死および血栓性の発作を生じる可能性がある。しかしながら、比較的に最近の研究では、アテローム硬化症の理解にある変化が見られる。すなわち、研究者は、最近において、少なくとも一部の冠状動脈の病気が一つの炎症性の過程であり、この炎症がプラークの蓄積または進行および崩壊を生じていると考えている。これらの崩壊しやすく一般的にぜい弱性プラークと呼ばれているプラークはそれ自体ではその影響を受けている1つ以上の動脈の中の流れを遮断せず、むしろ、膿瘍と同様に、これらは動脈壁部の中に浸み込んで検出することが困難になる可能性がある。本質的に、これらのぜい弱性のプラークは従来の脈管造影法および/またはX線透視法により見ることはできず、これらは一般的に虚血症状を生じない。しかしながら、このようなぜい弱性プラークの存在を決定するための技法が以下において論じられているように進歩している。
【0441】
種々の理由により、前記のいわゆるぜい弱性プラークは比較的に侵食または崩壊しやすく、血栓形成性の高い塞栓物質および露出した組織表面を形成する。従って、急性の心筋梗塞、突然の心臓死および血栓性の発作の場合の大部分が血栓症を引き起こすぜい弱性のアテローム硬化症のプラークの崩壊により生じることが今日において認められている。それゆえ、そのぜい弱性のプラークは他のプラークよりも生命を脅かす可能性が高く、全ての心筋梗塞の内の60〜80%程度の原因になる可能性がある。
【0442】
さらに具体的に言えば、前記の不安定なまたはぜい弱性のプラークはアテローム硬化症の血管内において進展する炎症性の脈管の病巣である。このようなぜい弱性のプラークは活性な炎症性、細胞の過形成および変化可能な程度の内腔の閉塞により特徴付けられる。形態学的に、ぜい弱性のプラークは脈管の内腔に接触して脂質のコアまたは芯および細胞性の物質を被覆している線維質の被包を含む。これらのぜい弱性のプラークは、虚血性の症状を生じる慢性の安定なプラークとは対照的に、一般的に閉塞性ではない。この理由のために、これらは容易に検出できない。
【0443】
前記ぜい弱性プラークの顕著な特徴は、主にTリンパ球およびマクロファージを含む、相当な炎症性の細胞の浸潤を伴う活性な炎症であり、本質的に前記線維質の被包の壁部を消化して、プラークを不安定にし、最終的にプラークの崩壊を誘発するタンパク分解性の酵素の発生を引き起こす。このプラークの崩壊は流れている血液に対して脂質の芯の中の血栓形成性の高い物質を露出させて閉塞性の血栓を速やかに発育させる。さらに、この崩壊したぜい弱性のプラークは、前述のように、急性の冠状動脈および大脳の症候群の主因になる。なお、これらの症状は不安定なアンギナ、心筋梗塞、Q波および非Q波の両方の心筋梗塞、脳卒中および一過性の大脳虚血症を含む。換言すれば、前記の崩壊したぜい弱性のプラークは相当な割合の心臓脈管の罹病率および死亡率の原因になる。
【0444】
ぜい弱性プラークを検出するための現在において利用可能で有効な技法が欠けているために、このぜい弱性プラークの治療は一般的にそのプラークが崩壊して臨床的な症状が進展した後にのみ開始される。現在調査中の検出技法は洗練された磁気共鳴画像処理、炎症性の過程が熱を発生することを前提として動脈壁部の温度を測定する熱センサー、弾性センサー、脈管内超音波、光学結合断層撮影法、造影剤、および近赤外および赤外光を含む。比較的に良好な診断方法は崩壊する前にぜい弱性のプラークの病巣を確認するように進化しているので、危険な臨床症状が生じる前にそれぞれの異なる病巣を治療することが可能になる。しかしながら、このぜい弱性のプラークの治療は以下において記載されているように行なわれることが好ましい。
【0445】
活性なぜい弱性プラークにおいて進行している2種類の基本的で生理学的な過程、すなわち、炎症および脂質の蓄積および代謝がある。この炎症は進行中の過程であり、前記線維質の被包の炎症および崩壊するぜい弱性の被包の形成を含む。また、脂質の代謝は崩壊しやすい柔らかいコレステロールの脂質物質を含む活性な脂質の堆積物またはコアの形成である。また、前記の炎症過程は急性な段階であり、脂質の代謝はぜい弱性プラークの病気の慢性の段階である。
【0446】
脈管の能力を維持するように構成されていて、前記の炎症および脂質代謝の両方の過程を治療するための1種類以上の治療用の物質、薬剤、および/または化合物を含有している多層の被膜構造を有しているステントまたはその他の支持骨格構造が、ぜい弱性プラークを効果的に治療するために利用できる。一例の実施形態において、2段階の放出特性を有する被膜を含むステントが前記ぜい弱性プラークの急性および慢性の両方の段階を治療するために利用できる。例えば、急性の段階のぜい弱性プラークの病気に対処するために「高速放出」用および比較的に短い全体の持続時間のための被膜構造の中にコルチコステロイド(corticosteroids)等のような抗炎症性の治療剤、非ステロイド性抗炎症薬、アセチルサリチル酸(acetylsalicylic acid)、アセトアミノフェン(acetaminophen)およびイブプロフェン(ibuprofen)等を組み込むことができ、慢性の段階のぜい弱性プラークの病気に対処するために「低速放出」用および比較的に長い全体の持続時間のための被膜構造の中に脂質低量化用または脂質改質用の物質を組み込むことができる。さらに、前記のステント/薬物の構造は最適な生理学的作用のためにその送達プロファイルを調整、調節および/または最適化するための多様な非吸収性または吸収性のポリマーを利用できる。換言すれば、例えば、前記線維質の被包の炎症性の崩壊に対処するための高速放出用で抗炎症性の薬物、薬剤および/または化合物、およびぜい弱性プラークの脂質の蓄積物の大きさおよび組成に影響を及ぼすための低速放出用で脂質低量化用または脂質改質用の薬物、薬剤および/または化合物等のような、特定の治療用の薬物、薬剤および/または化合物を全ての態様のぜい弱性プラークを治療するために前記ステントと共に利用することが可能である。
【0447】
前記ステントはステンレス・スチールまたはその他の金属合金により構成されているバルーン拡張可能なステント、および/または、ニチノールまたはその他の形状記憶金属の合金により構成されている自己拡張式のステントを含む任意の適当な支持骨格構造を含むことができる。あるいは、前記ステントは生体分解可能なセラミックおよび/またはポリマー等のような非金属材料により作成できる。このような生体分解性のステントは一時的な支持骨格として作用して、最終的に数日間または数週間〜数ヶ月または数年の範囲の時間の期間にわたり溶解する。このようなステントは送達カテーテルの上に取り付けられて、再狭窄の治療について前記において詳細に説明されているようにぜい弱性プラークの病巣の部位に血管の内腔を通して経皮的に送達される。また、このステントは、前述のように、脈管の開通性を維持するように設計されていて、弱くなっているまたは潜在的に弱くなっている線維質の被包に対して構造的な支持を行ないこれが崩壊することを防ぐ。前記ステントはまた病巣によるさらなる侵害を予防するための手段も形成する。
【0448】
最近の研究において、異なる性ホルモンが脈管の機能における異なる作用を有する可能性があることが見出されている。例えば、心臓脈管病における性別の差は主に女性におけるエストロゲンの保護作用が原因であると考えられており、閉経前の女性は冠状動脈心臓病の発生率が低い。特に、エストロゲンは脂質の特性において良く知られている有益な作用を有する。さらに重要なことは、エストロゲンはアテローム硬化症の一つの重要な要素である脈管の反応性に直接的に影響する可能性がある。最近の疫学の研究において、ホルモン補充療法(HRT)が閉経後の女性における冠状動脈病の危険性を減少する可能性があることが提唱されている。特に、多くの疫学の研究において、エストロゲン補充療法(ERT)が閉経後の女性において心臓を保護できることが提唱されている。さらに、これらのホルモン療法の有益な作用は男性にも適用可能である。しかしながら、不都合にも、エストロゲンの全身系的な使用は女性に子宮および乳房におけるエストロゲンの過形成作用、および男性における女性化の作用により、制約を有している。
【0449】
前記の有益な作用のためのメカニズムは多因子性であると考えられる。エストロゲンはアテローム発生性の脂質の特性を都合よく変化することが知られており、血管壁部に直接的に作用できる。また、エストロゲンは凝固およびフィブリン溶解性の因子、酸化防止薬の局所的な生成および一酸化窒素およびプロスタグランジン(prostaglandins)等のようなその他の脈管作用性の分子の生成を含む脈管における速やかなおよび長期の両方の作用を有することができ、これらの作用の全てが脈管の病気の進展に対して影響することが知られている。
【0450】
さらに、実験の調査により、エストロゲンが男性および女性の両方において直接的にまたはエストロゲン受容体を介して内皮および平滑筋の細胞に作用できることも提唱されている。このことはアテローム硬化症の過程における多くの段階において抑制作用を有すると考えられる。また、治療心臓学に関して、エストロゲンは脈管壁部に対するバルーンによる傷害に対する応答を抑制すると思われる。エストロゲンは、生体内および生体外において内皮細胞を修復し、その成長を促進することが可能である。このような内皮細胞の完全性における初期の回復は一酸化窒素の利用可能性を増大することにより傷害に対する応答の減衰作用の原因になる可能性がある。このことはさらに平滑筋細胞の増殖を直接的に抑制できる。さらに、実験の調査により、エストロゲンがバルーンによる傷害に応答する平滑筋細胞の増殖および移動を抑制することが示されている。また、エストロゲンは外膜の線維芽細胞の移動を抑制することも立証されており、このことはさらに陰性の再造形に作用を及ぼす可能性がある。
【0451】
従って、本明細書において説明されている薬物に加えて、エストロゲン、ラパマイシン(rapamycin)および/またはこれらの組み合わせの局所的なまたは所与の領域にわたる投与が脆弱なプラークの病巣の治療または安定化において利用可能である。本発明において用いられているエストロゲンは17ベータ−エストラジオール(17 beta-estradiol)(化学記号:C18242 を有する1,3,5(10)−エストラジエン−3,17ベータ−ジオール(1,3,5(10)-estradien-3,17 beta-diol)として化学的に記載される)、エストロゲン様の活性を有する17ベータ−エストラジオール(17 beta-estradiol)の合成または天然の類似体または誘導体、または2−メトキシエストラジオール(2 methoxyestradiol)等のような17ベータ−エストラジオール(17 beta-estradiol)の生物学的に活性な代謝物質を含むものとする。なお、前記の17ベータ−エストラジオール(17 beta-estradiol)は体内自体において生成される天然のエストロゲンである。従って、この17ベータ−エストラジオール(17 beta-estradiol)が局所的に、所与の領域に、または全身系的に投与される場合に全く生体適合性の問題が生じない。
【0452】
17ベータ−エストラジオール(17 beta-estradiol)は最も効力の高い女性ホルモンとして一般に見なされている。閉経前の女性が他の個人よりも冠状動脈心臓病の発生率が低いこと、およびこれらの女性が比較的に多量の17ベータ−エストラジオール(17 beta-estradiol)を生成していることが一般に知られている。また、17ベータ−エストラジオール(17 beta-estradiol)は多数の細胞のメカニズムにより媒介される脈管保護性の作用を生じる天然の脈管保護剤として呼ばれている。さらに、17ベータ−エストラジオール(17 beta-estradiol)が平滑筋細胞の増殖および移動を抑制して、再内皮化を促進し、脈管の傷害後に正常な内皮機能を回復できることが確認されている。加えて、17ベータ−エストラジオール(17 beta-estradiol)は多形態性、すなわち、種々の異なる形態で生じる能力、抗アテローム硬化症性、抗炎症性および酸化防止特性を有することが知られている。
【0453】
従って、17ベータ−エストラジオール(17 beta-estradiol)はぜい弱性プラークを治療するためにラパマイシン(rapamycin)と組み合わせることができる。このぜい弱性プラークの治療は平滑筋の増殖、炎症およびアテローム硬化症を減少するための異なるメカニズムを通して相互作用的に作用する2種類の治療剤の組み合わされた効果により達成できる。
【0454】
前記ステントとの組み合わせにおいて用いる1種類以上の治療用の薬物、薬剤および/または化合物は好ましくはステント処理において一般的に見られて前述のように再狭窄および装置の故障を引き起こす可能性のある新内膜の過形成を予防することができる。加えて、同一またはさらに付加的な治療用の薬物、薬剤および/または化合物が局所的な炎症を減少して線維質の被包のさらなる侵食を防ぐことによりその病巣を安定化して被覆することが好ましい。これら1種類以上の治療用の薬物、薬剤および/または化合物はステントの各支柱部に供給される高分子の基材の被膜の中に送達するか、そのステント自体を形成している材料の中に埋め込むことができ、好ましくは前記において簡単に説明されているような2種類の様式の放出速度を利用して、所定の期間にわたり脈管の壁部の中に放出できる。
【0455】
脈管の傷害後の再狭窄を治療することおよびぜい弱性のプラークを治療することの両方において、本明細書において説明されているような薬物、薬剤および/または化合物の局所的な送達に加えて薬物、薬剤および/または化合物のその所与の領域にわたる送達を行なうことが有利であると考えられる。このような所与の領域に供給される薬物、薬剤および/または化合物は局所的に送達される物と同一でもよく、異なっていてもよい。この所与の領域にわたる送達(regional delivery)は、本明細書においては、ステントおよびその他の植え込み可能な医療装置を含む、本明細書に開示されているような局所的な送達(local delivery)の装置により処理される領域よりも大きな領域にわたる送達を意味する。例えば、注入カテーテルが、例えば、狭窄性またはぜい弱性のプラークの病巣等のような病気の部位の近くの多数の部位に1種類以上の薬物、薬剤および/または化合物の所定の治療の用量または所与の範囲の用量を投与するために利用できる。本質的に、これらの1種類以上の薬物は病巣の遠位側、病巣の近位側、または病巣に対して直接的に、あるいはこれらの任意の組み合わせにおいて投与できる。また、前記の1種類以上の薬物は外膜の注入を含む多数の方法で投与できる。この場合の用量および注入部位の数はその薬物、薬剤および/または化合物の種類、薬物、薬剤および/または化合物の拡散特性、および治療する体内の領域に依存する。実際に、この薬物、薬剤および/または化合物は病巣の近位側および/または遠位側の外膜組織ならびにその病巣の周囲の外膜組織の中に注入された後に、その注入の部位から軸方向および縦方向に分配される。
【0456】
本明細書において説明されているように、薬物により被覆されているステントは再狭窄およびぜい弱性のプラークの治療および/または予防において利用できる。これらのステントは本明細書において説明されているような多数の薬物または薬物の組み合わせにより被覆できる。例えば、ラパマイシン(rapamycin)の単独または組み合わせはステントまたは植え込み可能な医療装置から局所的に送達できる。このような例示的な実施形態において、同一または異なる薬物をカテーテルに基づく装置を介してその所与の領域に送達することも可能である。本質的に、このカテーテルに基づく装置は局所送達装置に付随する1種類以上の薬物またはこれらとは完全に異なる薬物の付加的な量を送達するために利用できる。このような薬物の所与の領域への送達は比較的に多い投与量および比較的に広い適用領域を含む多数の理由により有益的になる可能性がある。加えて、特定の薬物は高分子の被膜の中に溶解するか懸濁するよりも注入可能な形態においてさらに有効になる可能性がある。さらに、このような薬物療法は個々の患者に合わせることができる。
【0457】
ラパマイシン(rapamycin)に加えて、ぜい弱性のプラークの治療のために所与の領域に送達できる別の薬物はアスピリン(aspirin)およびセレコキシブ(celecoxib)等のような非ステロイド性抗炎症薬、エストロゲン等のようなステロイド性の薬剤、トログリタゾン(troglitazone)等のような代謝物質およびエノキサパリン(enoxaparin)、プロブコール(probucol)、ヒルジン(hirudin)およびアポ−A1・ミラノ(apo-A1MILANO)等のような抗凝固剤を含む。従って、これらの薬物は単独またはラパマイシン(rapamycin)との組み合わせにおいて利用できる。
【0458】
多数のカテーテルに基づく装置が所与の領域の薬物送達において利用可能である。一例の例示的な実施形態において、この薬物送達装置は介入性の処置または微小針のための微細加工された外科装置を含む。この装置はカリフォルニア州、サン・レアンドロスのエンドバイオニクス社(EndoBionics, Inc.)から入手可能であるエンドバイオニクス・マイクロシリンジ(EndoBionics MicroSyringe)(登録商標)注入カテーテルであり、以下のように概ね特徴付けることができる。
【0459】
前記の微小針は患者に対する傷害をできるだけ排除するために脈管(動脈または静脈)の壁部に対して実質的に垂直に挿入される。この微小針が注入部位に置かれるまで、その先端部により動脈または静脈の壁部を傷つけないように逸らして位置決めされる。具体的に言えば、この微小針は介入中の患者または取り扱い中の医師を傷つけないようにカテーテルに取り付けられているアクチュエータまたはシースの壁部の中に包まれた状態に維持される。その後、注入部位に到達すると、脈管に沿うアクチュエータの移動が終わり、このアクチュエータは、例えば、前記カテーテルが挿入されている、脈管の中心軸に対して実質的に垂直に、微小針を外側に押し出すために調整される。
【0460】
図72A〜図73Bにおいて示されているように、微細加工された外科装置7210はアクチュエータ本体部分7212aおよび中心の長手軸7212bを有するアクチュエータ7212を含む。このアクチュエータの本体部分はその長さに実質的に沿って延在している開口部またはスリット7212dを有するC字形状の外形を概ね形成している。さらに、微小針7214が、図72Bにおいて示されているように、前記アクチュエータがその不作動状態(収納状態)にある時に、以下においてさらに詳細に論じられているように、前記アクチュエータ本体部分の中に配置されている。一方、この微小針は、図73Bにおいて示されているように、アクチュエータを操作してその作動状態(展開状態)になる時に、アクチュエータ本体部分から外に出る。
【0461】
前記アクチュエータは治療用カテーテル7220におけるリード端部7216およびチップ端部7218によりその基端部7212eおよび先端部7212fにおいてそれぞれ被包できる。このカテーテルのチップ端部は放射線不透過性の被膜または標識の使用により血管の内側に前記アクチュエータを位置決めする手段として作用する。また、このカテーテルのチップは前記アクチュエータの先端部7212fにおいてシールも形成している。一方、前記カテーテルのリード端部は前記アクチュエータの基端部7212eにおいて必要な内部連結部分(流体用、機械的、電気的または光学的な連結部分)を形成している。
【0462】
さらに、保持リング7222aおよび7222bが前記アクチュエータの先端部および基端部にそれぞれ配置されている。この場合に、前記カテーテルのチップが保持リング7222aに連結しており、カテーテルのリード端部は保持リング7222bに連結している。これらの保持リングは、パリレン(Parylene)(タイプC、DまたはN)、または、例えば、アルミニウム、ステンレス・スチール、金、チタンまたはタングステン等のような、細い、10〜100μm程度の、実質的に剛性の材料により作成されている。これらの保持リングは前記アクチュエータのそれぞれの端部において剛性の実質的にC字形状の構造を形成している。さらに、前記カテーテルは、例えば、突合せ溶接または超音波溶接した一体のポリマーの封入材またはエポキシ等ような接着剤により各保持リングに連結できる。
【0463】
前記アクチュエータ本体部分はさらに各保持リング7222aと7222bとの間に配置されている中央の膨張可能な部分7224を含む。この膨張可能な部分7224は活性化用の流体がこの領域に供給される時に速やかに膨張するための内部の開口領域7226を含む。また、この中央部分7224は、例えば、パリレン(Parylene)(タイプC、DまたはN)、シリコーン、ポリウレタンまたはポリイミド等のようなポリマーを含む薄い、半剛性または剛性の膨張可能な材料により作成されている。さらに、この中央部分7224は、作動時に、バルーン式装置に幾分似ている状態で膨張する。
【0464】
前記の中央部分はその開口領域7226への活性化用の流体の供給時に約100気圧までの圧力に耐えることができる。この中央部分を作成している材料はこの中央部分がその開口領域7226から前記の活性化用の流体を除去した時にその元の形態および配向(不作動状態)に実質的に復帰すると言うことにおいて剛性または半剛性を有している。従って、この意味において、前記の中央部分は固有の安定な構造を有していないバルーンとはかなり異なっている。
【0465】
前記アクチュエータの開口領域7226は前記カテーテルのリード端部からそのアクチュエータの基端部まで延在している送達用の導管、チューブまたは流体通路7228に連結している。これにより、前記活性化用の流体がこの送達管を介して前記開口領域に供給される。この送達管はテフロン(Teflon)(登録商標)またはその他の不活性なプラスチックにより構成できる。また、前記活性化用の流体は塩水溶液または放射線不透過性の色素の溶液とすることができる。
【0466】
前記微小針7214は前記中央部分7224のほぼ中央に配置できる。しかしながら、以下において論じられているように、このことは、特に多数の微小針を使用する場合には、必ずしも必要ではない。この微小針は前記中央部分の外表面部7224aに固定されている。さらに、この微小針はシアノアクリレート等のような接着剤により前記表面7224aに固定されている。あるいは、この微小針は金属またはポリマーのメッシュ様の構造体7230により前記表面7224aに結合可能であり、この構造体7230自体が接着剤により表面7224aに固定されている。このようなメッシュ様の構造体は、例えば、スチール材またはナイロン等により作成できる。
【0467】
前記微小針は鋭い先端部分7214aおよび軸部7214bを含む。この微小針の先端部分は挿入用のエッジ部分または先端を有することができる。また、軸部7214bは中空にすることができ、先端部分は出口ポート7214cを有していて、薬剤または薬物を患者に注入することを可能にしている。しかしながら、この微小針は別の用途を達成するために神経プローブ等のように構成することも可能であるので、必ずしも中空である必要はない。図示のように、前記微小針は表面7224aからほぼ垂直に延出している。従って、既に説明されているように、この微小針は脈管の壁部に対する直接的な穴あけまたは侵入を可能にするためにこの針が挿入される脈管または動脈の軸に対して実質的に垂直に移動する。
【0468】
前記微小針はさらに薬剤または薬物の供給用の導管、チューブまたは流体通路7214dを含み、この管により、前記微小針は前記カテーテルのリード端部における適当な流体の相互連結部分において流体と連通した状態となる。さらに、この供給管は前記軸部7214bに一体に形成することができ、あるいは、例えば、エポキシ等のような接着剤により前記軸部に後で連結される分離している部材片として形成することも可能である。
【0469】
前記針7214は30ゲージまたはそれ以下のスチール針とすることができる。あるいは、この微小針はポリマー、別の金属、金属合金または半導体材料により微細加工製造できる。さらに、この針は、例えば、パリレン(Parilene)、シリコーンまたはガラスにより作成可能である。
【0470】
前記カテーテル7220は、使用において、動脈または静脈の中を通して挿入され、図74において示されているように、特定の標的領域7234に到達するまで、例えば、静脈7232等の患者の脈管の中を移動する。カテーテルに基づく介入処理において周知のように、前記カテーテル7220は患者の体内に既に挿入されているガイドワイヤ7236に追随して移動できる。随意的に、このカテーテル7220は前記ガイドワイヤを収容している既に挿入されているガイド・カテーテル(図示せず)の経路に従って移動することも可能である。いずれの場合においても、前記アクチュエータは中空であり、小形の外形を有しており、前記ガイドワイヤに適合する。
【0471】
前記カテーテル7220の操作中に、このカテーテルを画像処理して標的領域に前記のアクチュエータ7212および微小針7214の位置決めを補助するためにX線透視法または磁気共鳴画像処理(MRI)等の周知の方法が利用できる。このカテーテルが患者の体内において案内されている時に、前記微小針がアクチュエータ本体部分の中に収納または保持された状態に保たれるので、傷害が脈管の壁部に対して全く生じない。
【0472】
標的領域7234に位置決めされた後に、前記カテーテルの移動が終わり、活性化用の流体が前記アクチュエータの開口領域7226に供給されて、膨張可能な部分7224が速やかに展開して、微小針7214がアクチュエータ本体部分7212aの長手方向の中心軸7212bに対して実質的に垂直な方向に移動することにより、脈管壁部7232aが穴あけされる。この場合に、微小針がその収納状態から展開状態に移動するために約100ミリ秒〜2秒を要するだけで済む。
【0473】
前記保持リング7222aおよび7222bにおけるアクチュエータの各端部はカテーテル7220に対してそれぞれ強固に固定した状態に維持される。従って、これらは動作中に変形しない。このアクチュエータは収納された構造として始動するので、そのいわゆる妊娠状態の形態は不安定なゆがみの有る形態として存在している。このような作動時における不安定性は前記アクチュエータ本体部分の中心軸にほぼ垂直な前記微小針の大きな移動を生じるので、大きなモーメントの移動を伴わずに脈管壁部の速やかな穴あけが行なえる。この結果、微小な開口部がその周囲の組織に対する極めて小さな損傷を伴って形成できる。また、前記モーメントの移動が比較的に小さいので、作動中および穴あけ中に前記カテーテルおよびアクチュエータの位置を保持するためにごくわずかなバイアス力だけが必要とされる。
【0474】
前記微小針は、実際に、脈管周辺の組織7232bならびに脈管組織に入り込むことができる程度の力を伴って速やかに移動する。加えて、前記アクチュエータは作動する前に「留置」または停止されているので、脈管壁部の侵入に関する比較的に正確な配置および制御が行なえる。
【0475】
前記微小針の作動およびその微小針を介する前記薬剤の標的領域に対する送達の後に、前記活性化用の流体が前記アクチュエータの開口領域7226から排出されて、膨張可能な部分7224がその元の収納状態に戻る。このことはまた微小針を脈管壁部から後退させる。この微小針は後退しながら、アクチュエータにより再び収容される。
【0476】
前述のように、前記微小針またはその他のカテーテルに基づく送達システムはアテローム硬化症のプラークの部位に対する、ラパマイシン(rapamycin)を含む1種類以上の薬物、薬剤および/または化合物の送達のために利用可能である。さらに、この種の所与の領域にわたる送達は単独で、あるいは、同一または異なる薬物が固着されている植え込み可能な医療装置との組み合わせにおいて利用できる。これらの1種類以上の薬物、薬剤および/または化合物は病巣基端側のの外膜の空間部分に送達されることが好ましい。
【0477】
本明細書において説明されているように、植え込み可能な医療装置以外の、あるいは、当該装置に加えて、種々の手段による特定の薬物、薬剤および/または化合物の局所的なまたは所与の領域にわたる送達に対する多数の利点が存在する。しかしながら、これらの薬物、薬剤および/または化合物の効力は、ある程度まで、その配合により決まる。
【0478】
相当量の界面活性剤、補助溶媒等の補助を伴わずにラパマイシン(rapamycin)等のような非水溶性で親油性の(脂質に対して親和性を有していてこれらと混合する傾向を有している)薬物の溶液の投与形態を形成することは一般的に極めて困難である。また、多くの場合に、前記のような賦形剤(ビヒクルとして作用する不活性な物質)、例えば、トゥイーン(Tween)20および80、クレモフォル(Cremophor)およびポリエチレン・グリコール(polyethylene glycol)(PEG)は周囲の組織に対してさまざまな程度の毒性を与える。従って、ジメチル・スルホキシド(dimethyl sulfoxide)(DMSO)、N−メチルピロリドン(N-methylpyrrolidone)(NMP)およびエタノール等のような有機性の補助溶媒の使用は溶媒の毒性を低下するために最少にする必要がある。本質的に、非水溶性の薬物の液体調合物において重要なことは賦形剤と補助溶媒との良好な組み合わせ、および薬物の溶解度の向上と必要な安全性の限界とを釣り合わせるための最終の投与形態における種々の添加物の最適な範囲を見つけることである。
【0479】
サイファー(Cypher)(登録商標)およびタクサス(Taxus)(登録商標)等の薬物溶出式ステントのような最近の薬物溶出式ステントの臨床試行による顕著な結果が示しているように、ステントの被膜から放出される有力な抗炎症性で抗腫瘍性の薬剤の、長期の局所的な高い濃度および組織における維持が、脈管形成処置に続く新内膜の増殖を実質的に排除できる。このサイファー(Cypher)(登録商標)ステントから放出されるラパマイシン(rapamycin)は露出型の金属ステントに比べた場合にステントの植え込み後における再狭窄に対して優れた効力を一貫して示している。しかしながら、分岐されている連結部分、小動脈および既に植え込みされたステントにおける再狭窄を含む局所的な送達または所与の領域にわたる送達のための非ステント型の手法が好都合になる可能性のある臨床的な状況が存在する。従って、局所的にまたは所与の領域にわたるように送達されることのみを必要として、薬物が主にその良好な親油性および長期に及ぶ組織における保持特性によりその薬理学的な機能を発揮すると言う、有力な治療方法に対する要望が存在していると考えられる。
【0480】
ラパマイシン(rapamycin)等のような有力な治療剤の局所的にまたは所与の領域に送達される溶液は全身系的に送達される薬剤または植え込み可能な医療装置を介して送達される薬剤に優る多数の利点を提供する。例えば、比較的に高い組織における濃度が前記のような薬剤の動脈壁部内への直接的な送達により達成できる。さらに、この送達の位置に応じて、異なる薬物濃度のプロファイルが薬物溶出式のステントの場合よりも達成できる。加えて、局所的にまたは所与の領域に送達される溶液により、ステント等のような永久植え込み型の装置の必要性がなくなり、これにより、炎症性の反応および長期に及ぶ組織の損傷等のような、前記のような装置に伴う潜在的な副作用が排除できる。しかしながら、前記の局所的にまたは所与の領域に送達される溶液が薬物溶出式のステントまたはその他の被覆型の植え込み可能な医療装置との組み合わせにおいて使用可能であることに注目することが重要である。また、前記のような溶液または液体の調合物の別の利点はその液体調合物中における賦形剤の調節によりその薬物の分布および保持のプロファイルまたは特性を容易に変更可能にできると言う事実にある。加えて、この液体調合物はその投与形態の保管および保存寿命を改善するために予備包装型の多数チャンバー式の注入装置により注入の前に速やかに混合することができる。
【0481】
本発明の例示的な実施形態によれば、一連の液体調合物が滲出性のバルーンおよびカテーテル式の注入針による、シロリムス(sirolimus)およびCCI−779、ABT−578およびエベロリムス(everolimus)を含むその類似体等のような非水溶性の化合物の局所的なまたは所与の領域にわたる送達のために開発されている。前記のシロリムス(sirolimus)およびその類似体はラパマイシン(rapamycin)であり、このラパマイシン(rapamycin)は本明細書においては、ラパマイシン(rapamycin)およびFKBP12に結合してラパマイシン(rapamycin)と同一の薬理学的な諸特性を有する全ての類似体、誘導体および共役体を含む。これらの液体調合物は、前記の薬理学的に活性であるが非水溶性である化合物の見かけの溶解度を、水中におけるこれらの化合物の溶解度の限界値に比べて、二桁〜四桁だけ、高める。これらの液体調合物は極めて少量のエタノール(一般的に2パーセントに満たない)等のような有機溶媒および前記の化合物の溶解度を高めるための比較的に多量のポリエチレン・グリコール(polyethylene glycol)(PEG200、PEG400)およびビタミンE・TGPS等のような安全な両親媒性の(無極性で非水溶性の炭化水素の鎖に結合している極性で水溶性の基を有する分子の、または当該分子に関連している)賦形剤の使用に依存している。これらの高度に非水溶性の化合物の液体調合物は室温において安定で容易に流動可能である。さらに、前記のビタミンE・TPGSおよびBHT等のような特定の賦形剤はこれらの酸化防止特性によりシロリムス(sirolimus)の化合物の保存の安定性を高めるために利用できる。
【0482】
以下において示されている表8は本発明の例示的な実施形態に従う4種類の異なる液体調合物における賦形剤、補助溶媒および薬物のそれぞれの濃度をまとめている。この場合に、それぞれの成分の濃度は液体クロマトグラフィにより決定されており、重量%の値として示されている。表8から分かるように、4mg/mlの濃度のシロリムス(sirolimus)が2%のエタノール濃度、25%の水の濃度、および75%のPEG200の濃度を伴って達成されている。このエタノールの濃度は前記の調合物中において活性な成分になることを避けるために2%以下であることが好ましい。
【表8】


【0483】
前述のように、4mg/mlのシロリムス(sirolimus)を含有している液体調合物が賦形剤としてのPEG200および補助溶媒としてのエタノールおよび水を利用することにより達成できる。このシロリムス(sirolimus)の濃度は水中におけるシロリムス(sirolimus)の溶解度の約400〜約1000倍も高い。すなわち、有効な補助溶媒およびPEG200を含有することにより、高濃度のシロリムス(sirolimus)が5〜10倍に水により希釈されるまでその溶液から析出し始めない。また、このような高濃度のシロリムス(sirolimus)は所与の部位への送達後において有効で高いシロリムス(sirolimus)の濃度を維持するために必要である。これらの液体調合物は室温において流動可能であり、多数の送達装置に対して適合性を有している。具体的に言えば、これらの調合物のそれぞれは以下においてさらに詳細に説明されているようなフロリダ州、マイアミのコーディス・コーポレーション社(Cordis Corporation)からの商品名クレスセンド(CRESCENDO)(商標)により指定されている注入カテーテル、およびブタの調査においてさらに詳細に説明されているカリフォルニア州、サン・レアンドロスのエンドバイオニクス・インコーポレイテッド社(EndoBionics, Inc.)から入手可能なエンドバイオニクス・マイクロシリンジ(EndoBionics Micro Syringe)(商標)注入カテーテルを通して有効に注入されている。
【0484】
別の例示的な実施形態において、前記シロリムス(sirolimus)の液体調合物は補助溶媒としての水およびエタノール、および賦形剤としてのビタミンE・TPGSを含有している。この液体調合物は以下のプロセスを利用して形成されている。200ミリグラムのシロリムス(sirolimus)および2グラムのエタノールを予め秤量している20ミリリットルのシンチレーション・バイアルに加えた。次に、このバイアルをかき混ぜてシロリムス(sirolimus)が完全に溶解するまで超音波を当てて分解した。その後、約600ミリグラムのビタミンE・TPGSを前記エタノールおよびシロリムス(sirolimus)の溶液に加えた。さらに、このバイアルを透明な黄色味がかった溶液が得られるまで再びかき混ぜた。次に、窒素ガスを用いてバイアル中のエタノールの量を約229ミリグラムまで減少させた。さらに、別のバイアルにおいて、300ミリグラムのビタミンE・TPGSを11ミリリットルの精製した水の中にかき混ぜながら溶解した。その後、このビタミンE・TPGSおよび水の溶液をシロリムス、ビタミンE・TPGSおよびエタノールを含有している前記第1のバイアルに加えた。次に、この第1のバイアルを3分間にわたり激しく継続的にかき混ぜた。この結果として得られたシロリムス(sirolimus)の溶液は透明であり上部に泡を伴っていた。この泡は室温において放置した後に徐々に消失した。その後、シロリムス(sirolimus)のHPLCアッセイにより、最終の溶液中のシロリムス(sirolimus)濃度が15mg/mlであることが分かった。この最終の溶液は2%よりも低いエタノールの濃度を有しており、この濃度は前述のようにエタノールを不活性な成分として維持するために重要である。従って、ビタミンE・TPGSをPEGの代わりに使用することはその最終的な調合物中におけるさらに高いシロリムス(sirolimus)の濃度を生じている。
【0485】
以下において示されている表9は異なる比率においてエタノール、ビタミンE・TPGSおよび水を利用している幾つかのシロリムス(sirolimus)の水性調合物についての組成および視覚による観察結果とまとめている。この表9に含まれているデータにより表されている各溶液はシロリムス(sirolimus)とビタミンE・TPGSとの間の比率が変わっていることを除いて前述の手順と実質的に同一の手順により作成されている。
【表9】


【0486】
5番を除く前記の全ての調製物は室温および冷蔵条件下の両方においてそれぞれ安定な溶液として保たれた。この表9における結果はビタミンE・TPGSが水性溶液中におけるシロリムス(sirolimus)の溶解度を高めるために広範囲な濃度において利用可能であることを示している。
【0487】
別の例示的な実施形態において、シロリムス(sirolimus)の類似体であるCCI−779の液体調合物がエタノール、ビタミンE・TPGSおよび水を用いて調製されている。この液体調合物は前記の条件と同様の条件下において作成されている。このCCI−779のエタノール中における比較的に良好な溶解度のために、前記2グラムのシロリムス(sirolimus)に対する場合において、200ミリグラムのCCI−779を溶解するために0.8グラムのエタノールしか用いられていない。その後、エタノールの量を約230ミリグラムに減少させた後に、300ミリグラムのビタミンE・TPGSを含有している11ミリリットルの精製水をそのエタノールおよびCCI−779のバイアルに加えた。次に、この混合溶液を3分間にわたりかき混ぜて、透明な溶液を形成した。このCCI−779のHPLCアッセイにより、その最終溶液におけるCCI−779の濃度が15mg/mlであることが分かった。また、この最終溶液中のエタノールの濃度は2%よりも低かった。従って、これらの結果は前記のシロリムス(sirolimus)において達成されている結果と実質的に同一である。
【0488】
前述のように、多数のカテーテルに基づく送達システムが前記の液体調合物を送達するために利用できる。一例のこのようなカテーテルに基づくシステムはクレスセンド(CRESCENDO)(商標)注入カテーテルである。このクレスセンド(CRESCENDO)(商標)注入カテーテルは、例えば、冠動脈の脈管に対して選択的にヘパリン(heparin)を加えた塩水および血栓崩壊性の物質等のような、溶液を送達するために適用されている。この注入カテーテルはまた本明細書において説明されているシロリムス(sirolimus)の液体の溶液を含む液体調合物の送達のために使用することも可能である。この注入領域はカテーテルの先端部分において多数の穴を伴う2つの膨張可能なバルーンにより構成されている領域を含む。また、この注入領域はカテーテルの中に延在している内孔部に連通していてその基端部におけるルア・ポートまで到達している。この場合に、溶液の注入は注入ポートを介して手による注入動作により達成される。前記カテーテルはまたガイドワイヤ内腔部およびX線透視下においてその注入領域の相対位置を標識するために当該領域の中心に位置決めされている放射線不透過性の標識帯域も含む。
【0489】
前記において図示および説明されている内容は最も実用的で好ましい実施形態であると考えられる事例であるが、これらの説明および図示されている特定の設計および方法からの変形例は当業者において自然に考え出され、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく使用可能になることは明らかである。すなわち、本発明は前記において説明および図示されている特定の各構成に限定されず、添付の特許請求の範囲に含まれると考えられる全ての変更例に対して一貫するように構成されていると考えられるべきである。
【0490】
〔実施の態様〕
(1)医療装置において、
植え込み可能な内腔内医療装置と、
動脈瘤の病気の治療のために前記植え込み可能な内腔内医療装置に放出可能に固定されている、治療の投薬量における、少なくとも2種類の薬剤の組み合わせ物であって、前記少なくとも2種類の薬剤のうちの第1の薬剤は、マトリクスメタロプロテイナーゼおよびゼラチナーゼの弾性線維溶解活性を調節するために、第1の持続された時間の期間にわたり放出され、前記少なくとも2種類の薬剤のうちの第2の薬剤は、高親和性のサイトゾル蛋白質である、FKBP12、に結合する類似体、誘導体および同属体、を含む、少なくとも2種類の薬剤の組み合わせ物と、
を備えている、医療装置。
(2)実施態様1に記載の薬物送達装置において、
前記第1の薬剤はテトラサイクリン化合物を含む、薬物送達装置。
(3)実施態様1に記載の薬物送達装置において、
前記内腔内医療装置はステントグラフトを含む、薬物送達装置。
(4)実施態様1に記載の薬物送達装置において、前記内腔内医療装置は動脈瘤修復装置を含む、薬物送達装置。
(5)実施態様3に記載の薬物送達装置において、
前記少なくとも2種類の薬剤は、前記ステントグラフトに固定されている非侵食性の高分子基材の被膜の中に組み込まれている、薬物送達装置。
【0491】
(6)実施態様4に記載の薬物送達装置において、
前記少なくとも2種類の薬剤は、前記動脈瘤修復装置に固定されている非侵食性の高分子基材の被膜の中に組み込まれている、薬物送達装置。
(7)動脈瘤修復装置において、
動脈の動脈瘤の部分を通る流体の流路を確立するように構成されている少なくとも1つのバイパス・プロテーゼと、
前記少なくとも1つのバイパス・プロテーゼの少なくとも一部分に固定されている少なくとも2種類の薬剤であって、前記少なくとも2種類の薬剤の第1の薬剤は、マトリクスメタロプロテイナーゼおよびゼラチナーゼの弾性線維溶解活性を調節するために、ある持続された時間の期間にわたり放出され、前記少なくとも2種類の薬剤の第2の薬剤は、高親和性のサイトゾル蛋白質である、FKBP12、に結合する類似物、誘導体および同属体、を含む、少なくとも2種類の薬剤と、
を備えている、動脈瘤修復装置。
(8)実施態様7に記載の動脈瘤修復装置において、
前記第1の薬剤はテトラサイクリン化合物を含む、動脈瘤修復装置。
(9)実施態様7に記載の動脈瘤修復装置において、
前記少なくとも1つのバイパス・プロテーゼはステントを含む、動脈瘤修復装置。
(10)実施態様9に記載の動脈瘤修復装置において、
前記少なくとも1つのバイパス・プロテーゼは、前記ステントに固定されているグラフトをさらに含む、動脈瘤修復装置。
【0492】
(11)実施態様7に記載の動脈瘤修復装置において、
前記少なくとも1つのバイパス・プロテーゼはグラフトを含む、動脈瘤修復装置。
(12)実施態様7に記載の動脈瘤修復装置において、
前記少なくとも2種類の薬剤は、前記少なくとも1つのバイパス・プロテーゼに固定されている非侵食性の高分子基材の被膜の中に組み込まれている、動脈瘤修復装置。
(13)動脈瘤修復装置において、
動脈の動脈瘤の部分を通る流体の流路を確立するように構成されている少なくとも1つのバイパス・プロテーゼと、
前記少なくとも1つのバイパス・プロテーゼに操作可能に付随している薬物送達貯蔵部と、
を備えており、
前記薬物送達貯蔵部は少なくとも2種類の薬剤を送達するように構成されており、
前記少なくとも2種類の薬剤のうちの第1の薬剤は、マトリクスメタロプロテイナーゼおよびゼラチナーゼの弾性線維溶解活性を調節するために、第1の持続された時間の期間にわたり放出され、前記少なくとも2種類の薬剤のうちの第2の薬剤は、高親和性のサイトゾル蛋白質である、FKBP12、に結合する類似物、誘導体および同属体、を含む、
動脈瘤修復装置。
【図面の簡単な説明】
【0493】
【図1】ステントの外表面部および特徴的な帯域パタンを示している拡張前のステント(両端部が示されていない)の長さに沿う斜視図である。
【図2】本発明による貯蔵部分を有している図1のステントの長さに沿う斜視図である。
【図3】上部被膜が全く配置されていない本発明の被膜から時間の関数として放出されている薬物のフラクションを示しているグラフ図である。
【図4】上部に配置されている上部被膜を含んでいる本発明の被膜から時間の関数として放出されている薬物のフラクションを示しているグラフ図である。
【図5】上部被膜が全く配置されていない本発明の被膜から時間の関数として放出されている薬物のフラクションを示しているグラフ図である。
【図6】ポリ(VDF/HFP)からのラパマイシン(rapamycin)の生体内におけるステント放出速度を示しているグラフ図である。
【図7】本発明の第1の例示的な実施形態による、上部に薬物被膜を有する図1のステントの帯域部分の断面図である。
【図8】本発明の第2の例示的な実施形態による、上部に薬物被膜を有する図1のステントの帯域部分の断面図である。
【図9】本発明の第3の例示的な実施形態による、上部に薬物被膜を有する図1のステントの帯域部分の断面図である。
【図10】本発明による固定用フランジおよび取付型のステープル部材を有する吻合装置の例示的なワンピース型の実施形態を示している斜視図である。
【図11】本発明による固定用フランジおよび取付型のステープル部材を有する吻合装置の例示的なワンピース型の実施形態を示している部分断面図である。
【図12】本発明による固定用フランジおよび取付型のステープル部材を有する吻合装置の例示的なワンピース型の実施形態を示している部分断面図である。
【図13】本発明による固定用フランジおよび取付型のステープル部材を有する吻合装置の例示的なワンピース型の実施形態を示している部分断面図である。
【図14】本発明の例示的な実施形態に従って、解剖学的構造を一緒に連結するための器具の側面図である。
【図15】本発明の例示的な実施形態に従って、解剖学的構造のエッジ部分に通されている図14の器具における針部分を示している断面図である。
【図16】本発明の例示的な実施形態に従って、複合部位の中を通して引き戻されている図14の器具を示している断面図である。
【図17】本発明の例示的な実施形態に従って、解剖学的構造の近くに配置されている図14の器具におけるステープルを示している断面図である。
【図18】本発明の例示的な実施形態に従って、吻合部位の両側に係合している図14の器具におけるステープルを示している断面図である。
【図19】本発明の例示的な実施形態に従って、解剖学的構造を連結するために圧着された後のステープルを示している断面図である。
【図20】本発明による潤滑性の被膜が上部に固定されているバルーンの断面図である。
【図21】本発明による潤滑性の被膜が上部に固定されている図1のステントにおける帯域部分の断面図である。
【図22】本発明による潤滑性の被膜を有する送達装置の中における自己拡張式ステントの部分断面図である。
【図23】本発明による改良されたポリマー被膜を有する図1のステントにおける帯域部分の断面図である。
【図24】本発明による例示的なステントグラフトの側面図である。
【図25】本発明によるステントグラフトの別の代替的で例示的な実施形態の部分断面図である。
【図26】本発明によるステントグラフトの別の代替的で例示的な実施形態の部分断面図である。
【図27】本発明による完全に配備された状態の大動脈修復システムの正面図である。
【図28】本発明による、明瞭化のために拡張された状態で示されている、第1のプロテーゼにおけるステントの斜視図である。
【図29】本発明によるガスケット材料により被覆されているステントを有する第1のプロテーゼの斜視図である。
【図30】本発明による無被覆型の外科ステープルの概略図である。
【図31】本発明による多数の貫通穴を有する外科ステープルの概略図である。
【図32】本発明による外表面部に被膜を有している外科ステープルの概略図である。
【図33】本発明による表面上に被膜を有している縫合糸材料の一部分の概略図である。
【図34】本発明による表面の中に含浸されている被膜を有している縫合糸材料の一部分の概略図である。
【図35】本発明に従って作成されているステント送達器具の簡単化されている正面図である。
【図36】図35の器具に類似している図であるが、その内部に装填されているステントを示すために破断されている部分を有している器具の先端部の拡大図を示している図である。
【図37】本発明に従って作成されている内側軸部の先端部の簡単化されている正面図である。
【図38】線38−38に沿う図37の断面図である。
【図39】脈管内への自己拡張式ステントの配備を連続的に示している本発明の器具の部分断面図である。
【図40】脈管内への自己拡張式ステントの配備を連続的に示している本発明の器具の部分断面図である。
【図41】脈管内への自己拡張式ステントの配備を連続的に示している本発明の器具の部分断面図である。
【図42】脈管内への自己拡張式ステントの配備を連続的に示している本発明の器具の部分断面図である。
【図43】脈管内への自己拡張式ステントの配備を連続的に示している本発明の器具の部分断面図である。
【図44】本発明に従って作成されているステント送達器具のための軸部の簡単化されている正面図である。
【図45】本発明によるステント送達器具の軸部およびシースの部分断面図である。
【図46】本発明によるステント送達システムの軸部および改良されたシースの部分断面図である。
【図47】本発明によるステント送達システムの軸部および改良されたシースの部分断面図である。
【図48】本発明によるステント送達システムの改良された軸部の部分断面図である。
【図49】本発明による生体内の試験中において種々の高分子の被膜から経時的に放出されるラパマイシン(rapamycin)のフラクションまたは放出率のグラフ図である。
【図50】本発明による生体外の試験中において種々の高分子の被膜から経時的に放出されるラパマイシン(rapamycin)のフラクションまたは放出率のグラフ図である。
【図51】生体外の細胞培養調査におけるトリコスタチンA(trichostatin A)を利用している冠状動脈平滑筋の細胞増殖の抑制のグラフ図である。
【図52】本発明による2%のウシ胎児血清により刺激された非同調培養したヒト冠状動脈平滑筋細胞の中におけるミコフェノール酸(mycophenolic acid)の濃度の変化によるラパマイシン(rapamycin)の抗増殖活性のグラフ図である。
【図53】本発明によるブタの薬物速度調査におけるラパマイシン(rapamycin)と、ミコフェノール酸(mycophenolic acid)と、ポリマーとの組み合わせからのラパマイシン(rapamycin)の生体内における放出速度のグラフ図である。
【図54】本発明によるブタの薬物速度調査におけるラパマイシン(rapamycin)と、ミコフェノール酸(mycophenolic acid)と、ポリマーとの組み合わせからのミコフェノール酸(mycophenolic acid)の生体内における放出速度のグラフ図である。
【図55】本発明によるラパマイシン(rapamycin)とミコフェノール酸(mycophenolic acid)との組み合わせからのラパマイシン(rapamycin)の生体外における放出速度のグラフ図である。
【図56】本発明によるブタの薬物速度調査におけるラパマイシン(rapamycin)およびミコフェノール酸(mycophenolic acid)の両方の生体内における放出速度のグラフ図である。
【図57】本発明による2%のウシ胎児血清により刺激された非同調培養したヒト冠状動脈平滑筋細胞における種々の濃度のクラドリビン(cladribine)を伴うラパマイシン(rapamycin)の抗増殖活性のグラフ図である。
【図58】本発明による2%のウシ胎児血清により刺激された非同調培養したヒト冠状動脈平滑筋細胞におけるクラドリビン(cladribine)の抗増殖活性のグラフ図である。
【図59】本発明による室温における25%のエタノール/水の放出媒体中に混入されているPVDF/HFPの基部被膜内における滅菌していないクラドリビン(cladribine)の被膜からのクラドリビン(cladribine)の生体外における放出速度のグラフ図である。
【図60】本発明による室温における25%のエタノール/水の放出媒体中に混入されているPVDF/HFPの基部被膜内における滅菌したクラドリビン(cladribine)の被膜からのクラドリビン(cladribine)の生体外における放出速度のグラフ図である。
【図61】本発明によるブタの薬物速度調査における高分子被膜からのクラドリビン(cladribine)の生体内における放出速度のグラフ図である。
【図62】本発明によるブタの薬物速度調査におけるラパマイシン(rapamycin)と、クラドリビン(cladribine)と、ポリマーとの組み合わせからのラパマイシン(rapamycin)の生体内における放出速度のグラフ図である。
【図63】本発明によるブタの薬物速度調査におけるラパマイシン(rapamycin)と、クラドリビン(cladribine)と、ポリマーとの組み合わせからのクラドリビン(cladribine)の生体内における放出速度のグラフ図である。
【図64】本発明による2%のウシ胎児血清により刺激された同調培養したヒト冠状動脈平滑筋細胞における異なる濃度のトポテカン(topotecan)を伴うラパマイシン(rapamycin)の抗増殖作用のグラフ図である。
【図65】本発明による2%のウシ胎児血清により刺激された同調培養したヒト冠状動脈平滑筋細胞における異なる濃度のエトポシド(etoposide)を伴うラパマイシン(rapamycin)の抗増殖作用のグラフ図である。
【図66】本発明による2%のウシ胎児血清により刺激された同調培養したヒト冠状動脈平滑筋細胞におけるパンゼム(Panzem)(登録商標)の抗増殖作用のグラフ図である。
【図67】本発明による2%のウシ胎児血清により刺激された同調培養したヒト冠状動脈平滑筋細胞におけるラパマイシン(rapamycin)の抗増殖作用のグラフ図である。
【図68】本発明による2%のウシ胎児血清により刺激された同調培養したヒト冠状動脈平滑筋細胞における異なる濃度のパンゼム(Panzem)(登録商標)を伴うラパマイシン(rapamycin)の抗増殖作用のグラフ図である。
【図69】本発明によるパンゼム(Panzem)(登録商標)のMTSアッセイのグラフ図である。
【図70】本発明による層状化されているラパマイシン(rapamycin)と、パンゼム(Panzem)(登録商標)と、高分子との被膜からのラパマイシン(rapamycin)の生体外における放出速度のグラフ図である。
【図71】本発明による層状化されているラパマイシン(rapamycin)と、パンゼム(Panzem)(登録商標)と、高分子との被膜からのパンゼム(Panzem)(登録商標)の生体外における放出速度のグラフ図である。
【図72A】本発明による不作動の状況における介入処置のための微細加工されている外科装置の概略的な斜視図である。
【図72B】図72Aの線72B−72Bに沿う概略図である。
【図72C】図72Aの線72C−72Cに沿う概略図である。
【図73A】本発明による作動状況における介入処置のための微細加工されている外科装置の概略的な斜視図である。
【図73B】図73Aの線73B−73Bに沿う概略図である。
【図74】患者の脈管の中に挿入されている本発明の微細加工されている外科装置の概略的な斜視図である。
【図75】別の抗炎症剤に対する、抗炎症剤としてのラパマイシンの効果を示しているチャートである。
【図76】本発明による、動脈の直径の、誘発される拡張の抑制における、テトラサイクリン化合物の投与量依存型の効果のグラフである。
【図77】本発明による、抗菌活性を実質的に全く有していない、塩水、ドキシサイクリン、および、一群の、化学的に改質されたテトラサイクリン化合物の、平均の動脈の直径における、効果のヒストグラム・チャートの比較図である。




 

 


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