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発明の名称 投影または断層撮影による位相コントラスト画像の作成方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−203074(P2007−203074A)
公開日 平成19年8月16日(2007.8.16)
出願番号 特願2007−22877(P2007−22877)
出願日 平成19年2月1日(2007.2.1)
代理人 【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
発明者 ビェルン ハイスマン / エクハルト ヘンペル / シュテファン ポペスク
要約 課題
化学的に類似した組成の構造がより強力に細分化されている撮影結果を可能にする。

解決手段
X線システムまたはX線CTシステム(1)により、検査対象を透過するX線(Si)の位相シフト(φ)の測定による位置に関係した画像値を用いて、検査対象(P)の投影または断層撮影による位相コントラスト画像を作成する方法において、位相シフト(φ(E1),φ(E2))が少なくとも2つの異なるエネルギー範囲(E1,E2)に関してエネルギー固有に測定され、画像値がエネルギー固有の位相シフト(φ(E1),φ(E2))の関数として形成される。
特許請求の範囲
【請求項1】
X線システムまたはX線CTシステム(1)により、検査対象を透過するX線(Si)の位相シフト(φ)の測定による位置に関係した画像値を用いて、検査対象(P)の投影または断層撮影による位相コントラスト画像を作成する方法において、位相シフト(φ(E1),φ(E2))が少なくとも2つの異なるエネルギー範囲(E1,E2)に関してエネルギー固有に測定され、画像値がエネルギー固有の位相シフト(φ(E1),φ(E2))の関数として形成されることを特徴とする投影または断層撮影による位相コントラスト画像の作成方法。
【請求項2】
エネルギー固有の位相シフト(φ(E1),φ(E2))が厳密に2つのエネルギー範囲(E1,E2)について決定されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
エネルギー固有の位相シフト(φ(E1),φ(E2))の関数において、
{φ(E1)−φ(E2)}/{φ(E1)+φ(E2)}
なる値が使用されることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
エネルギー固有の位相シフト(φ(E1),φ(E2))の関数において、
φ(E1)/φ(E2)
なる値が使用されることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
エネルギー固有の位相シフト(φ(E1),φ(E2))の関数において、
φ(E1)−φ(E2)
なる値が使用されることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項6】
測定されたエネルギー固有の位相シフト(φ(E1),φ(E2))からエネルギー固有の屈折率(n(E1),n(E2))が算出され、画像値として使用されることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項7】
エネルギー固有の屈折率(n(E1),n(E2))が、φ=2πnv/λ(但し、λは観察されたエネルギー範囲のX線の波長、vはボクセルの広がり)なる関係にしたがって決定されるであることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
エネルギー固有の屈折率(n(E1),n(E2))の関数において、
{n(E1)−n(E2)}/{n(E1)+n(E2)}
なる値が使用されることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
エネルギー固有の屈折率(n(E1),n(E2))の関数において、
n(E1)/n(E2)
なる値が使用されることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項10】
エネルギー固有の屈折率(n(E1),n(E2))の関数において、
n(E1)−n(E2)
なる値が使用されることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項11】
断層撮影によるX線位相コントラスト画像を作成するために、
検査対象(P)が少なくとも1つの焦点−検出器システム(2,3)により円状またはスパイラル状に走査され、検出器システム(3)は少なくとも1つの検出器列を形成する多数の隣接配置された検出素子(Ex)を有し、
測定のために少なくとも1つの焦点(F1)と少なくとも1つの検出器(D1)との間に、X線(Si)を照射されるX線光学格子(Gxy)のセットが配置され、
焦点(F1)と検査対象(P)との間の少なくとも1つの線源格子(G0x)により、個別のコヒーレントX線(Si)を有するX線源の場が作成され、
検査対象(P)がX線(Si)によって透過され、X線が透過物質に応じて異なる位相シフト(φ)を受け、
第1のエネルギー範囲(E1)に同調した第1の位相格子(G11)により、このエネルギー範囲のX線の干渉パターンが発生され、
他のエネルギー範囲(E2)に同調した少なくとも1つの第2の位相格子(G12)により、このエネルギー範囲のX線の少なくとも1つの他の干渉パターンが発生され、
X線が分析格子(G2x)を通して検出器に案内され、分析格子(G2x)をそれぞれ異なってずらして同じ空間ビームの少なくとも3回の強度測定によって、検査対象(P)の透過時における各ビームの位相シフト(φ)が求められ、
ビームの測定された位相シフト(φ)またはそれから求められた屈折率(n)から、検査対象(P)の断層撮影による位相コントラストデータが再構成される
ことを特徴とする請求項1乃至10の1つに記載の方法。
【請求項12】
エネルギー範囲ごとに位相シフト(φ)を測定するために、それぞれエネルギー固有に合わせられた格子セット(G0x,G1x,G2x)を有する専用の焦点−検出器システム(2,3;4,5)が使用され、焦点−検出器システム(2,3;4,5)は角度をずらされてガントリ上に配置されていることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
エネルギー範囲ごとに位相シフト(φ;Ex)を測定するために、同じ焦点−検出器システム(2,3)において異なった位相格子(G1x)が使用されることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの分析格子(G2x)が同調している少なくとも1つのエネルギー範囲(Ex)のために、使用された陽極材料の特性X線のピークのエネルギーが使用されることを特徴とする請求項1乃至13の1つに記載の方法。
【請求項15】
陽極材料のKα線およびKβ線が2つのエネルギー範囲(E1,E2)のために使用されることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項16】
少なくとも2つの異なるエネルギー範囲(E1,E2)のX線が異なる陽極材料により発生されることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項17】
投影による位相コントラスト画像を作成するために、
検査対象(P)がX線管(2)の焦点(F1)から出射するX線ビームを照射され、
検出器(D1)により受信したX線強度が測定され、少なくとも1つのX線管(2)と検出器(D1)との間に、少なくとも1つの線源格子(G0x)と、交互にビーム通路内に挿入される少なくとも2つの異なる位相格子(G11,G12)と、分析格子(G2)とから構成されたX線光学格子セットが配置され、
焦点(F1)と検出器(D1)との間の空間内において検査対象を透過する各ビームについて、分析格子(G2)をそれぞれ異なってずらして配置して少なくとも3回の強度測定によって対象(P)の透過時の該当ビームの位相シフトが求められ、
各ビームについて、各ビームの異なるエネルギー範囲の測定された位相シフト(φ(E1),φ(E2)から、ピクセル値がエネルギー固有の位相シフト(φ(E1),φ(E2)の関数として算出される
ことを特徴とする請求項1乃至10の1つに記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの分析格子(G2x)が同調している少なくとも1つのエネルギー範囲(Ex)のために、使用された陽極材料の特性X線のピークのエネルギーが使用されることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
陽極材料のKα線およびKβ線が2つのエネルギー範囲(E1,E2)のために使用されることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
少なくとも2つの異なるエネルギー範囲(E1,E2)のX線が異なる陽極材料により発生されることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項21】
断層撮影による位相コントラスト画像を作成するためのX線コンピュータ断層撮影システム(1)において、
検査対象(P)の周りを回転可能にガントリまたはCアーム上に配置された少なくとも1つの焦点−検出器システム(2,3)と、
少なくとも1つの線源格子(G0)、交互にビーム経路内に導入可能な少なくとも2つの位相格子(G11,G12)および分析格子(G2)から構成され、焦点(F1)と検出器(D1)との間でX線を照射されるX線光学格子セットと
を備えていることを特徴とするX線コンピュータ断層撮影システム。
【請求項22】
断層撮影による位相コントラスト画像を作成するためのX線コンピュータ断層撮影システム(1)において、
検査対象(P)の周りを回転可能にガントリまたはCアーム上に配置された少なくとも2つの焦点−検出器システム(2,3;4,5)と、
焦点−検出器システム(2,3;4,5)ごとに、線源格子(G0x)、位相格子(G1x)および分析格子(G2x)から構成され、エネルギー固有に設計され、かつ焦点(F1)と検出器(D1)との間でX線を照射されるX線光学格子セットと
を備えていることを特徴とするX線コンピュータ断層撮影システム。
【請求項23】
分析格子(G2x)を、位相格子(G1x)に対して相対的に、ビーム方向に対して垂直かつ格子線の長手方向に対して垂直な方向に移動させる装置が設けられていることを特徴とする請求項21又は22記載のX線コンピュータ断層撮影システム。
【請求項24】
X線光学格子を持たず専ら吸収測定に用いられる少なくとも1つの他の焦点−検出器システム(4,5)が角度をずらしてガントリ上に配置されていることを特徴とする請求項21乃至23の1つに記載のX線コンピュータ断層撮影システム。
【請求項25】
格子装置が次のジオメトリ条件を満たすこと、すなわち、第1の格子セットに対しては、
11=2×(p01×p2)/(p01+p2
01=p2×(l1/d1
1=(l1×d´1)/(l1−d´1),但しd´1={p12/(4λ1)}/2
11=λ1/{2(n−1)}
が当てはまり、第2の格子セットに対しては、
12=2×(p02×p2)/(p02+p2
02=p2×(l2/d2
2=(l2×d´2)/(l2−d´2),但しd´2={p22/(4λ2)}/2
12=λ2/{2(n−1)}
が当てはまる
(但し、
x =格子Gxの格子周期、
xy=格子Gxyの格子周期、
x =エネルギー範囲Exについての線源格子G0から位相格子G1xまでの距離、
x =ファンビームジオメトリにおけるエネルギー範囲Exについての位相格子G1xから分析格子G2までの距離、
d´x=平行ジオメトリのもとでのエネルギー範囲Exについての位相格子G1xから分析格子G2までの距離、
λx =エネルギー範囲ExにおけるX線の波長、
1x=放射方向におけるエネルギー範囲Exについての格子G1xの突条部高さ、
n =格子材料の屈折率)
ことを特徴とする請求項21乃至24の1つに記載のX線コンピュータ断層撮影システム。
【請求項26】
格子装置は、付加的にl1+d1=l2+d2なるジオメトリ条件を満たし、したがってp01≠p02であることを特徴とする請求項25記載のX線コンピュータ断層撮影システム。
【請求項27】
格子装置は、付加的にp01=p02なるジオメトリ条件を満たし、したがってl1+d1≠l2+d2であることを特徴とする請求項25記載のX線コンピュータ断層撮影システム。
【請求項28】
格子装置は、p01≠p02なるジオメトリ条件も、l1+d1≠l2+d2なるジオメトリ条件も満たすことを特徴とする請求項25記載のX線コンピュータ断層撮影システム。
【請求項29】
コンピュータ断層撮影システムが、動作中に請求項1乃至16の少なくとも1つに記載の方法を実行するプログラムコード(Prgx)を含む計算および制御ユニット(10)を有することを特徴とする請求項21乃至28の1つに記載のX線コンピュータ断層撮影システム。
【請求項30】
コンピュータ断層撮影システムの記憶媒体またはコンピュータ断層撮影システムのための記憶媒体において、記憶媒体(11)が、コンピュータ断層撮影システム(1)の動作中に請求項1乃至16の少なくとも1つに記載の方法を実行するプログラムコード(Prgx)を含むことを特徴とする記憶媒体。
【請求項31】
焦点(F1)と多数の検出素子(Ex)を有する対向する平らな検出器(D1)とを備えたX線源と、
焦点(F1)と検出器(D1)との間に配置されてX線を照射され、検査対象(P)を透過する際のX線の位相シフト(φ)をビームごとに分解して測定し、平行に位置合わせされているX線光学格子セット(G0x,G1x,G2x)と
から少なくとも構成され、
X線光学格子セット(G0x,G1x,G2x)が、
少なくとも1つの焦点(F1)と検査対象(P)との間に配置されている線源格子(G0x)と、
検査対象(P)と検出器(D1)との間に配置されかつ交互にビーム通路内に導入可能な少なくとも2つの位相格子(G1x)と、
検出器の前に配置されている分析格子(G2)と、
分析格子を、位相格子に対して相対的に、ビーム方向に対して垂直かつ格子線の長手方向に対して垂直な方向に移動させる装置と
を有することを特徴とするX線装置の焦点−検出器システム。
【請求項32】
請求項31記載の少なくとも1つの焦点−検出器システムを有することを特徴とするX線システム。
【請求項33】
位相格子を異なってずらして同じビームの複数回の強度測定から位相シフトを算出する手段が設けられていることを特徴とする請求項32記載のX線システム。
【請求項34】
格子装置が次のジオメトリ条件を満たすこと、すなわち、第1の格子セットに対しては、
11=2×(p01×p2)/(p01+p2
01=p2×(l1/d1
1=(l1×d´1)/(l1−d´1),但しd´1={p12/(4λ1)}/2
11=λ1/{2(n−1)}
が当てはまり、第2の格子セットに対しては、
12=2×(p02×p2)/(p02+p2
02=p2×(l2/d2
2=(l2×d´2)/(l2−d´2),但しd´2={p22/(4λ2)}/2
12=λ2/{2(n−1)}
が当てはまる
(但し、
x =格子Gxの格子周期、
xy=格子Gxyの格子周期、
x =エネルギー範囲Exについての線源格子G0から位相格子G1xまでの距離、
x =ファンビームジオメトリにおけるエネルギー範囲Exについての位相格子G1xから分析格子G2までの距離、
d´x=平行ジオメトリのもとでのエネルギー範囲Exについての位相格子G1xから分析格子G2までの距離、
λx =エネルギー範囲ExにおけるX線の波長、
1x=放射方向におけるエネルギー範囲Exについての格子G1xの突条部高さ、
n =格子材料の屈折率)
ことを特徴とする請求項32又は33記載のX線システム。
【請求項35】
格子装置は、付加的にl1+d1=l2+d2なるジオメトリ条件を満たし、したがってp01≠p02であることを特徴とする請求項34記載のX線システム。
【請求項36】
格子装置は、付加的にp01=p02なるジオメトリ条件を満たし、したがってl1+d1≠l2+d2であることを特徴とする請求項34記載のX線システム。
【請求項37】
格子装置は、p01≠p02なるジオメトリ条件も、l1+d1≠l2+d2なるジオメトリ条件も満たすことを特徴とする請求項34記載のX線システム。
【請求項38】
X線システムは、動作中に請求項1乃至10または17乃至20の少なくとも1つに記載の方法を実行するプログラムコード(Prgx)を含む計算および制御ユニット(10)を有する請求項32乃至37の1つに記載のX線Tシステム。
【請求項39】
X線システムの記憶媒体またはX線システムのための記憶媒体において、記憶媒体(11)がX線システム(1)の動作中に請求項1乃至10の少なくとも1つまたは請求項
17乃至20の少なくとも1つに記載の方法を実行するプログラムコード(Prgx)を含むことを特徴とする記憶媒体。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線システムによる検査対象、とりわけ患者の投影および断層撮影による位相コントラスト画像の作成方法に関し、更にこの方法を実施するための相応のX線システムにも関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なコンピュータ断層撮影(CT)法では検査対象、特に患者の断層撮影が検査対象を透過するX線により行なわれ、一般にX線源は検査対象の周りを円状またはスパイラル状に移動され、X線源に対向する側で検出器、たいていは多数の検出素子を有する少なくとも1つの多列検出器が、検査対象を通過する際のX線吸収を測定する。断層撮影画像を作成するために、測定された全ての空間ビームにおける測定された吸収データから、断層撮影によるスライス画像またはボリュームデータが再構成される。これらのコンピュータ断層撮影画像により、対象内の吸収差が非常にきれいに表示される。もちろん、当然のことながら類似の吸収特性を有する類似の化学的組成の領域の詳細は不十分にしか表示されない。
【0003】
更に、検査対象を通過する際のビームの位相シフト作用がX線によって透過される物質の吸収作用よりも著しく強いことは知られている。この種の位相シフトは公知のように2つの干渉分光格子の使用によって測定される(例えば、非特許文献1参照)。この方法では、検査対象がコヒーレントX線を照射され、これに続いて格子対によって案内され、第2格子の直後でX線強度が測定される。第1格子が干渉パターンを生成し、この干渉パターンが第2格子によりその背後にある検出器上にモアレパターンを形成する。第2格子が僅かに移動されると、これから同様にモアレパターンの移動が生じる。すなわち、第2格子の背後にある検出器には、第2格子の移動に対して相対的に決定可能である位置に関係した強度の変化が生じる。第2格子の各検出素子について、すなわち各ビームについて強度変化を第2格子の移動行程に依存して描くと、それぞれのビームの位相シフトが決定される。この方法は、干渉パターンを形成するためにコヒーレントX線が必要であるので、非常に小さいX線源を必要とし、したがって大きな対象のコンピュータ断層撮影の実践には使用できないことに問題がある。
【0004】
上述の公知の方法は、使用されたX線に十分な空間的コヒーレンスが存在するように、極めて小さい焦点を有するX線源を必要とする。しかしながら、このように小さい焦点を使用すると、大きな対象を検査するために十分な線量率が生じない。しかし、単色コヒーレントX線、例えばシンクロトロン放射をX線源として使用することも可能である。これによって、しかしながらCTシステムが構造的に非常に高価となり、多彩な応用は不可能である。
【0005】
この問題は、焦点−検出器セット内においてビーム通路中に焦点に続いて直ぐに第1の吸収格子が配置されることによって回避される。格子線の向きは検査対象の後に続く干渉格子の格子線に対して平行である。
【0006】
第1格子のスリットは、ビーム方向において検査対象の背後に配置された位相格子により既知の干渉パターンを生成するために十分である個々のコヒーレントビームの場を作成する。
【0007】
このようにして、CTシステムもしくは透過光−X線システムにおける標準的なX線管に対応する広がりを有するX線源を使用することができるので、例えば、一般的な医療診断学の分野において今やX線装置により良好に細分化された軟部撮影を行うことができる。
【0008】
しかし、この上述の改善にもかかわらず、検査対象の構造、特に患者の軟部構造の更に改善された細分化が有利であることが明らかになった。
【非特許文献1】"X−ray phase imaging with a grating interferometer",T.Weitkamp at all,8.August 2005/Vol.12,No.16/OPTCS EXPRESS
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、化学的に類似した組成の構造がより強力に細分化されている撮影結果を可能にするように、位相コントラスト撮影法を方法技術的にも装置的にも改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は独立の請求項の特徴によって解決される。本発明の有利な実施態様は従属請求項に記載されている。
【0011】
本発明者は、対象を透過する際のX線の位相シフトが異なるX線エネルギーに依存して測定され、引続いて、走査された組織の細分化のために、測定された位相シフトから差関数が作成されることによって、化学的組成が類似の構造の細分化を改善することが可能であることを認識した。最も簡単には、異なるエネルギーにより測定された位相シフトの差が形成されるか、エネルギーに依存する測定された両位相シフトから商が形成されるか、もしくは投影画像または断層撮影画像の測定されたピクセルまたはボクセごとにこれらの値から後述するように一種の正規化されたコントラスト指数が決定されるとよい。位相シフト自体の代わりに、位相シフトと線形関係にある屈折率指数nが使用されてもよく、相応の典型的な差値が形成されるとよい。この基本的な方法が、例えばコンピュータ断層撮影に適用される場合には、この差値を本来の再構成の前に既に形成することが可能であるので、後で再構成された投影は既に差値から構成されている。しかしながら、位相シフトもしくは屈折率をエネルギーに依存する断層撮影画像の再構成に使用し、再構成を行った後に引続いて、その都度同じ位置のスライス画像の個々のボクセルもしくはピクセルを取り出し、それからやっと差値を形成することも可能である。
【0012】
本発明のこの基本思想にしたがって、本発明者は、一方では位相コントラスト測定に基づく投影画像、すなわち透過光−X線画像を作成する方法を提案し、他方では異なるエネルギー範囲を使用して少なくとも2回の位相コントラスト測定により断層撮影画像を作成する方法も提案する。同様に、本発明者は上記の投影画像を作成するための相応のX線システムならびに断層撮影の再構成に基づいてこの種の断層撮影画像を作成するためのX線コンピュータ断層撮影システムも提案する。
【0013】
本発明によれば、X線システムまたはX線CTシステムにより、検査対象、とりわけ患者を透過するX線の位相シフトの測定による位置に関係した画像値(撮影値とも呼ばれている)を用いて、検査対象の投影および断層撮影による画像を作成する本発明の方法において、位相シフトが少なくとも2つの異なるエネルギー範囲に関してエネルギー固有に測定され、画像値がエネルギー固有の位相シフトの関数として形成される。
【0014】
これによって、高感度の「プローブ」により、検査された対象の化学的構造における小さな差異を検出することができる。この方法の選択性は、X線の使用されたエネルギー範囲が被検査物質または被検査組織に関して既知の吸収エッジに広がる場合、つまりX線の少なくとも2つの使用されたエネルギー範囲が被検査物質のエネルギー固有の屈折率に関して1つのエッジの両側にある場合に特に大きい。
【0015】
したがって、この方法は基本的には多数の異なるエネルギー範囲の測定に適しているにもかかわらず、主として、厳密に2つのエネルギー範囲に対して厳密に2つのエネルギー固有の位相シフトを決定することが提案される。
【0016】
エネルギー固有の位相シフトの関数として、
{φ(E1)−φ(E2)}/{φ(E1)+φ(E2)}
なる値が使用される。但し、φ(Ex)はエネルギー範囲Exにおいて測定された位相シフトに関する変数である。
【0017】
代替として、例えばφ(E1)/φ(E2)なる商、またはφ(E1)−φ(E2)なる差値も使用することができる。
【0018】
既に述べたように、測定されたエネルギー固有の位相シフトからそれぞれエネルギー固有の屈折率を算出し、この算出した値を画像値として使用することもできる。エネルギー固有の屈折率の換算は、φ=2πnv/λなる関係にしたがって決定される。但し、λは観察されたエネルギー範囲のX線の波長であり、vはボクセルの広がりである。
【0019】
この関連で指摘しておくに、本発明の範囲内においては、たいてい固有のエネルギーではなく、固有のエネルギー範囲という表現が使用されている。というのは、もちろん与えられた測定方法によって、点として与えられるような厳密に正確なエネルギーに関する位相シフトが求められるのではなく、実用的な範囲内において、実際にエネルギー範囲すなわちエネルギー区間に関する位相シフトが求められるからである。
【0020】
エネルギー固有の位相シフトについての前記関数にしたがって、エネルギー固有の屈折率についての対応する関数は同様に、
{n(E1)−n(E2)}/{n(E1)+n(E2)}
なる関数、またはn(E1)/n(E2)なる商、またはn(E1)−n(E2)なる簡単なΔ値(差値)を介して有利に使用することができる。
【0021】
断層撮影によるX線位相コントラスト画像を作成するこの方法の使用に関して、更に少なくとも次の方法ステップを実行することが提案される。
検出器システムが少なくとも1つの検出器列、とりわけ複数の検出器列を形成する多数の隣接配置された検出素子を有し、検査対象が少なくとも1つの焦点−検出器システムにより円状またはスパイラル状に走査されるステップ、
測定のために少なくとも1つの焦点と少なくとも1つの検出器との間に、X線を照射されるX線光学格子セットが配置されるステップ、
焦点と検査対象との間の少なくとも1つの線源格子により、個別のコヒーレントX線を有するX線源の場が作成されるステップ、
検査対象がX線によって透過され、X線が透過物質に応じて異なる位相シフトを受けるステップ、
第1のエネルギー範囲(E1)に同調した第1の位相格子により、このエネルギー範囲のX線の干渉パターンが発生されるステップ、
他のエネルギー範囲(E2)に同調した少なくとも1つの第2の位相格子により、このエネルギー範囲のX線の少なくとも1つの他の干渉パターンが発生されるステップ、
X線が分析格子を通して検出器に案内され、分析格子をそれぞれ異なってずらして同じ空間ビームの少なくとも3回の強度測定によって、検査対象の透過時における各ビームの位相シフトが求められるステップ、
ビームの測定された位相シフトまたはそれから求められた屈折率から、検査対象の断層撮影による位相コントラストデータが再構成されるステップ。
【0022】
エネルギー範囲ごとの位相シフトの測定は、それぞれエネルギー固有に合わせられた格子セットを有する専用の焦点−検出器システによって行なわれ、とりわけ焦点−検出器システムは角度をずらされてガントリ上に配置されているとよい。
【0023】
しかしながら、エネルギー範囲ごとに位相シフトを測定するために、同じ焦点−検出器システムにおいて異なった位相格子だけを使用することも可能である。このために、異なる位相格子が焦点に対して異なる距離に手動に挿入されるとよく、あるいは位相格子を横からシステム軸線方向または周方向に移動させる装置が設けられてもよい。
【0024】
更に、少なくとも1つの分析格子が同調している少なくとも1つのエネルギー範囲のために、使用された陽極材料の特性X線のピークのエネルギーが使用される。例えば、これは陽極材料、とりわけ陽極材料としてのタングステンのKα線およびKβ線である。
【0025】
もちろん、少なくとも2つの異なるエネルギー範囲のX線を異なる陽極材料により発生させることも可能である。
【0026】
投影による位相コントラスト画像、すなわち再構成法を使用しないで検査対象の照射時に測定された位相シフトだけを投影画像の形成に使用する位相コントラスト画像を作成する方法に関して、本発明者は、特に次の特徴の適用を提案する。
検査対象がX線管の焦点から出射するX線ビームを照射され、
検出器により受信したX線強度が測定され、少なくとも1つのX線管と検出器との間に、少なくとも1つの線源格子と、交互にビーム通路に挿入される少なくとも2つの異なる位相格子と、分析格子とから構成されたX線光学格子セットが配置され、
焦点と検出器との間の空間内において検査対象を透過する各ビームについて、分析格子をそれぞれ異なってずらして配置して少なくとも3回の強度測定によって対象の透過時の該当ビームの位相シフトが求められ、
各ビームについて、各ビームの異なるエネルギー範囲の測定された位相シフト(φ(E1),φ(E2))から、ピクセル値がエネルギー固有の位相シフト(φ(E1),φ(E2))の関数として算出される。
【0027】
少なくとも1つの分析格子が同調している少なくとも1つのエネルギー範囲のために、使用された陽極材料の特性X線のピークのエネルギーが使用されることが提案される。例えば、この場合に、陽極材料、とりわけ陽極材料としてのタングステンのKα線およびKβ線が使用される。同様に、少なくとも2つの異なるエネルギー範囲のX線が異なる陽極材料により発生されるとよい。この関連で指摘しておくに、異なる陽極材料により動作させるために、必ずしも異なるX線管を使用する必要はない。例えば、異なる材料で覆われた異なる陽極範囲にその都度跳躍する跳躍焦点が存在する陽極、特に回転陽極を構成することが可能である。代替として、例えば、管電流の相応の時間制御によってX線を発生するためのそれぞれ所望の陽極材料が使用されるように部分的に異なる陽極材料で覆われた回転陽極も使用可能である。
【0028】
上述の方法に対応して、本発明者は、断層撮影による位相コントラスト画像を作成するためのX線CTシステムも提案する。すなわち、このX線CTシステムは、検査対象の周りを回転可能にガントリまたはCアーム上に配置された少なくとも1つの焦点−検出器システムと、少なくとも1つの線源格子、交互にビーム経路内に導入可能な少なくとも2つの位相格子および分析格子から構成され、焦点と検出器との間でX線を照射されるX線光学格子セットとを有する。
【0029】
これに対する代替として、検査対象の周りを回転可能にガントリまたはCアーム上に配置された少なくとも2つの焦点−検出器システムと、焦点−検出器システムごとに、線源格子、位相格子および分析格子から構成され、エネルギー固有に設計され、かつ焦点と検出器との間でX線を照射されるX線光学格子セットとを有するX線CTシステムが提案される。
【0030】
上述の両変形は組み合わせることができ、例えば角度をずらされてガントリ上に配置された2つの焦点−検出器システムがそれぞれ2つ以上の異なる格子セットを備え、それにより、位相シフトを測定するために使用された検査されるエネルギー範囲の選択時に大きなバリエーションが存在する点に注目すべきである。
【0031】
この本発明によるCTシステムは、分析格子を位相格子に対して相対的に、ビーム方向に対して垂直かつ格子線の長手方向に対して垂直な方向に移動させる装置を有すると有利である。
【0032】
付加的な変形においては、X線光学格子を持たず専ら吸収測定に用いられる少なくとも1つの他の焦点−検出器システムが角度をずらしてガントリ上に配置されている。
【0033】
更に、本発明によれば、本発明によるX線CTシステムの格子装置が次のジオメトリ条件を満たすことが提案される。すなわち、第1の格子セットに対しては、
11=2×(p01×p2)/(p01+p2
01=p2×(l1/d1
1=(l1×d´1)/(l1−d´1),但しd´1={p12/(4λ1)}/2
11=λ1/{2(n−1)}
が当てはまり、第2の格子セットに対しては、
12=2×(p02×p2)/(p02+p2
02=p2×(l2/d2
2=(l2×d´2)/(l2−d´2),但しd´2={p22/(4λ2)}/2
12=λ2/{2(n−1)}
が当てはまる。
但し、
x =格子Gxの格子周期、
xy=格子Gxyの格子周期、
x =エネルギー範囲Exについての線源格子G0から位相格子G1xまでの距離、
x =ファンビームジオメトリにおけるエネルギー範囲Exについての位相格子G1xから分析格子G2までの距離、
d´x=平行ジオメトリのもとでのエネルギー範囲Exについての位相格子G1xから分析格子G2までの距離、
λx =エネルギー範囲ExにおけるX線の波長、
1x=放射方向におけるエネルギー範囲Exについての格子G1xの突条部高さ、
n =格子材料の屈折率。
【0034】
与えられた格子装置に基づいて、格子装置はl1+d1=l2+d2なるジオメトリ条件を満たし、それにより使用された線源格子の周期が異なること、すなわちp01≠p02であることが必然的に生じる。代替として、使用された線源格子の周期が同一に、すなわち、p01=p02に選定されるとよく、それによりl1+d1≠l2+d2なるジオメトリ条件を満たすことができる。さらに、p01≠p02なるジオメトリ条件も、l1+d1≠l2+d2なるジオメトリ条件も満たすこともできる。
【0035】
他の選択肢によれば、線源格子が異なる周期を有すると共に線源格子と分析格子との間の間隔が異なって選択される。
【0036】
更に、この種のCTシステムは、動作中に上述の方法を実行するプログラムコードを含む計算および制御ユニットを有するとよい。
【0037】
更に、上述のプログラムコードを含むCTシステムの記憶媒体またはCTシステム用の記憶媒体が本発明の範囲に属する。
【0038】
更に、焦点と多数の検出素子を有する対向する平らな検出器とを備えたX線源と、
焦点と検出器との間に配置されてX線を照射され、検査対象を透過する際のX線の位相シフトをビームごとに分解して測定し、平行に位置合わせされているX線光学格子セットと
から少なくとも構成され、X線光学格子セットが、
少なくとも1つの焦点と検査対象との間に配置されている線源格子と、
検査対象と検出器との間に配置されかつ交互にビーム通路内に導入可能な少なくとも2つの位相格子と、
検出器の前に配置されている分析格子と、
分析格子を、位相格子に対して相対的に、ビーム方向に対して垂直かつ格子線の長手方向に対して垂直な方向に移動させる装置と
を有するX線装置の焦点−検出器システムが本発明に含まれる。
【0039】
したがって、本発明者は、位相格子を異なってずらして同じビームの複数回の強度測定から位相シフトを算出する手段、とりわけ計算ユニットが設けられている上述の焦点−検出器システムを有するX線システムも提案する。
【0040】
この種のX線システムもしくは相応の焦点−検出器システムについても、格子が上述のジオメトリ条件に応じて配置されていることが提案される。
【0041】
更に、動作中に上述の方法を実行するプログラムコードを含む計算および制御ユニットを有する投影画像を作成するためのX線Tシステムも提案される。同様に、相応のプログラムコードを含むこのようなX線システムの記憶媒体またはこのようなX線システムのための記憶媒体が本発明に含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下において、有利な実施形態に基づいて図面を参照しながら本発明を更に詳細に説明する。図面には本発明の理解に必要な特徴のみが示されている。
図1はX線CTの焦点−検出器システムの概略的な3D表示を示し、
図2は線源格子、位相格子、分析格子およびそれらの格子構造が表示されている焦点−検出器システムの縦断面を示し、
図3は干渉現象を表示するために位相格子、分析格子および検出器を有するCTの焦点−検出器システムの縦断面を示し、
図4は種々の加速電圧においてビームハードニングフィルタを使用した際の特性線を有するタングステン陽極の制動スペクトルを示し、
図5は異なる格子セットを有するCTの2つの90°ずれた焦点−検出器システムの概略的な断面図を示し、
図6は分割された異なる格子セットを有するCTの分割された焦点−検出器システムの概略的な断面図を示し、
図7は分割された異なる格子セットを有するCTの他の分割された焦点−検出器システムの概略的な断面図を示し、
図8は本発明によるCTシステムの3D表示を示す。
【0043】
図においては次の参照符号が使用されている。1:コンピュータ断層撮影(CT)システム、2:第1のX線管、3:第1の検出器、4:第2のX線管、5:第2の検出器、6:ガントリハウジング、7:患者、8:患者用寝台、9:システム軸線、10:制御および計算ユニット、11:メモリ、12:本発明による方法の概略図、A:経路、B:経路、D1,D2:検出器、d1,d2:位相格子−分析格子の距離、E1:第1のエネルギー範囲、E2:第2のエネルギー範囲、F1,F2:焦点、G0,G01,G02:線源格子、G11,G12:位相格子、G2,G21,G22:分析格子、h0,h11,h12,h2:格子突条部の高さ、Iph:位相コントラスト画像、IA:吸収画像、I(Ei(XG)):格子ずれXGの際に検出素子Eiで測定された強度、Kα,Kβ:特性X線のピーク、l1,l2:線源格子−位相格子の距離、P:患者、p01,p02,p11,p12,p2:格子線の周期、Prgx:プログラム、S:システム軸線、xG:分析格子のずれ、w:焦点広がり、x,y,z:直交座標系、v:ボクセルの広がり、μ(φ(E1),(E2)):CT画像データセットのボクセルの位相シフトの差関数、φ:位相シフト、φ(Ex):エネルギーExを有するX線の位相シフト、λ:観察されたX線の波長。
【0044】
図1はビーム通路内に存在する検査対象としての患者Pを有するX線CTの焦点−検出器システムの概略的な3D表示を示す。焦点F1および検出器D1はここには詳しく図示されていないガントリ上に配置され、システム軸線Sの周りを円状に回転移動する。付加的に焦点−検出器システムの回転中に患者Pのシステム軸線方向への直線移動が行なわれるならば、患者Pの公知のスパイラル走査が生じる。焦点−検出器システムのビーム通路内に3つのX線光学格子G0x,G1x,G2が配置され、線源格子とも呼ばれる第1格子G0xが焦点F1の直ぐ近くに取り付けられ、X線を照射される。X線の広がり方向において、その後に本来の検査対象すなわち患者Pが続く。システム軸線Sの他の側にある検出器D1の前に、先ず位相格子と呼ばれる第2の格子G1xが続く。その後に放射方向において分析格子と呼ばれる第3の格子G2が続き、この第3の格子G2は検出器D1の直前に配置されていると好ましい。検出器D1は多数の検出素子を有する少なくとも1つの列を持ち、好ましくは、検出器D1は複数列検出器すなわち多列検出器として構成されている。多列検出器はそれぞれ多数の検出素子を有する多数の平行配置された検出器列を備えている。焦点F1と個々の検出素子との間の接続線は、走査時にそれぞれ空間内に配置された1つのX線ビームを表し、かつこの1つのX線ビームの強度変化はそれぞれの検出素子によって測定される。
【0045】
ここに述べたCTシステムの部類に含まれるいわゆるCアーム装置の場合、検出器D1は図示のように円筒部分として焦点F1の周りに配置されているのではなく、平らな形状を有する。走査中に検査対象の周りでの移動が行なわれない投影X線システムの場合には、一般に検出器D1が同様に平らに構成されている。
【0046】
格子G0x〜G2の線方位は、3つの格子の全ての格子線が互いに平行に延び、更にシステム軸線Sに対して平行に向けられている。しかも格子G0x〜G2はたいてい平らに形成され、焦点中心と検出器中心との間の中心線に対して垂直に向けられている。しかしながら、基本的には、格子表面をコーンビームのビーム経過に整合させるために、あらゆる位置において格子が焦点とそれぞれの検出素子との間にビーム接続線と垂直に交差し、それにより格子が相応に湾曲させられているようにすることも可能である。
【0047】
これまでに説明した配置は、格子装置が合わせられている特定のエネルギー範囲における位相シフトを測定するためにしか使用できない。したがって、角度をずらして複数のこのような焦点−検出器をガントリ上に配置することも可能である。この場合に、個々の各焦点−検出器システムは、格子配置に関して、異なるエネルギー範囲に合わせられる。しかしながら、代替として、図1に示されているように、唯一の焦点−検出器システムを使用し、線源格子および位相格子、ここでは格子G01,G02およびG11,G12だけを交換可能に構成することも可能である。両格子は、それらが同調しているエネルギーに応じて、異なる位置もしくは異なる周期を有し、しかもそれぞれ格子セットの前述のジオメトリ条件が満たされるべきである。このような変形例が図1に示されている。図1では、第2の線源格子G01も第2の位相格子G11もビーム通路外に配置されているので、第2の所望エネルギーによる測定のためには、線源格子G02および位相格子G12がビーム通路から取り出され、線源格子G01および位相格子G11が使用される。
【0048】
図2には、2つの格子セットG01,G11,G2およびG02,G12,G2を有する本発明による焦点−検出器システムが示されている。第1の格子G02の前に、wにて示された最大広がりを有する焦点F1が存在する。第1の格子G02は線間隔すなわち格子周期p02および格子の溝の間に形成された突条部の高さh02を有する。同様に、格子G01,G11,G12,G2も、格子の溝の間に形成された突条部の高さh01,h11,h12,h2および周期p01,p11,p12,p2を備えている。
【0049】
本発明による方法の作用のために、線源格子と位相格子との間の距離および位相格子と分析格子との間の距離が互いに定められた関係にあることが重要である。この場合に、次の関係が当てはまる。すなわち、第1の格子セットに対しては、
11=2×(p01×p2)/(p01+p2
01=p2×(l1/d1
1=(l1×d´1)/(l1−d´1),但しd´1={p12/(4λ1)}/2
11=λ1/{2(n−1)}
が当てはまり、第2の格子セットに対しては、
12=2×(p02×p2)/(p02+p2
02=p2×(l2/d2
2=(l2×d´2)/(l2−d´2),但しd´2={p22/(4λ2)}/2
12=λ2/{2(n−1)}
が当てはまる。
但し、
x =格子Gxの格子周期
xy=格子Gxyの格子周期
x =エネルギー範囲Exについての線源格子G0から位相格子G1xまでの距離
x =ファンビームジオメトリにおけるエネルギー範囲Exについての位相格子G1xから分析格子G2までの距離
d´x=平行ジオメトリのもとでのエネルギー範囲Exについての位相格子G1xから分析格子G2までの距離
λx =エネルギー範囲ExにおけるX線の波長
1x=放射方向におけるエネルギー範囲Exについての格子G1xの突条部高さ
n =格子材料の屈折率
【0050】
図には、現在、第2の位相格子G12により測定され、第1の位相格子G11がビーム通路から取り出されている状況が示されている。実際においては、その都度使用される焦点−検出器システムは、位相格子を必要に応じて自動的にビーム通路内で使用するかもしくは望まれない格子を外側に取り出す装置を有している。この場合に2つよりも多い位相格子をそれぞれ焦点からの異なる距離でビーム通路内に配置することも可能である。
【0051】
検出素子E1〜Enを有する検出器D1と分析格子G2との距離は重要ではないが、しかし分析格子G2はできるだけ検出器の近くに配置されるべきである。
【0052】
有利な変形において、位相格子G11,G12は、使用される陽極のX線スペクトルにおける特性線に対応するエネルギーに対して設定されている。今日通常に用いられているタングステン陽極の場合には、例えばそのKα線およびその隣にあるKβ線が使用されるとよい。他の陽極材料が選択される場合には、相応に異なるエネルギー、従って異なる位相格子寸法が必要となる。
【0053】
分析格子の高さh2は、背面側に相応のモアレパターンを形成すべく、X線を照射される突条部と格子の十分な欠落個所(溝)との間に有効吸収差を発生させるために十分でなければならない。
【0054】
よりよい理解のために、図3において、唯一の使用される分析格子G2のみを有する状況の例にて、格子G0から到来し患者Pを透過する個々のコヒーレントX線がもう一度示されている。患者Pの透過後に位相シフト現象が生じる。これによって、格子G11を通過すると、灰色陰影によって表示されている干渉パターンが発生される。この干渉パターンは、格子G2により、後に続く検出器D1およびその検出素子に、検出素子ごとに異なるX線強度を生じ、そこでいわゆるモアレパターンが形成される。例えば検出素子Eiを分析格子G2のずれxGに依存して観察し、強度IについてずれxGの関数としての強度I(Ei(xG))をプロットすると、この検出素子Eiにおいて強度Iの正弦波状の上昇および下降が得られる。各検出素子EiもしくはEjについてこれらの測定されたX線強度IをずれxGに依存してプロットすると、異なる検出素子は結局は焦点とそれぞれの検出素子との間の空間X線ビームを表すことが明らかになり、それにより各検出素子について相互の相対的な位相シフトφが決定される。ここでは、
φ=2πn(v/λ)
が成立する。但し、vは検査対象におけるボクセルもしくはピクセルの大きさに相当し、nは屈折率であり、λはX線の波長である。
【0055】
したがって、このようにして各ビームについて空間内で分析格子をその都度ずらして少なくとも3回の測定によって位相シフトがビームごとにX線の狭いエネルギー範囲に対して決定される。これが同様に、異なったエネルギー範囲に同調されている他の格子装置により、空間内の各ビームについて行なわれるならば、各ビームについて、異なるエネルギーにおける2つの異なる位相シフトφ(E1),φ(E2)の知識から、差関数u(φ(E1),φ(E2))が決定され、それから投影によるX線撮影の場合には直接に投影によるX線画像のピクセル値が算出され、またはCT検査の場合にはビームごとに算出された差関数に相当するピクセル値を有する投影が作成される。これから公知の再構成法により、検査対象内のどのボリューム要素を、測定された位相シフトのどの成分に属させるべきかを算出することができる。したがって、これから、差関数への検査対象の局所的作用を反映するスライス画像またはボリュームデータが算出される。有利な差関数としては、正規化されエネルギーに依存する一種の位相シフト勾配である関数
{φ(E1)−φ(E2)}/{φ(E1)+φ(E2)}
が使用されるとよい。同様な関係は、この関数から値のφ=2πnv/λなる線形換算にしたがって決定される関数
{n(E1)−n(E2)}/{n(E1)+n(E2)}
にも当てはまる。
【0056】
組成の僅かの差が位相シフトのエネルギー依存性に対して強い作用を及ぼすために、これによって、特に軟部組織の比較的類似した物質の非常に詳細かつコントラストの強いボリュームデータの表示が可能となる。
【0057】
上述の差関数の代わりに、例えば単純な商または差が形成されてもよい。
【0058】
ここで付加的に、位相シフトを決定するための検出器の個々の検出素子における強度測定の和によって吸収画像も作成しようとする場合には、分析格子のずれを異ならせた際の個々の測定を合算することによって分析格子の作用を平均化し、それによりそれぞれのビームの吸収値に対する直接的な尺度を得ることが可能である。すなわち、位相シフトに関する測定データに基づいて、各ビームについて吸収値を再現するデータセットも算出可能であるので、これらの吸収値は公知のように直接的な投影吸収画像または公知の再構成法で断層撮影による吸収画像に変換可能である。この場合に注意すべきことは、両測定において同じエネルギースペクトルを使用すればエネルギー依存性が消えることである。しかしながら、異なるエネルギースペクトルが使用されるならば、吸収のエネルギー依存性も観察可能であり、場合によっては相応の差関数が形成され、表示に利用されるとよい。
【0059】
対象を通過するX線ビームの位相シフトを決定するための上述の方法は非常にエネルギー選択性であるので、位相格子の大きさは、できるだけ高い光子数が存在する使用されたX線のエネルギー範囲用に設定されるべきである。
【0060】
例えばタングステン陽極が使用される場合には、図4に示されているような加速電圧に依存したエネルギースペクトルが生じる。ここではエネルギースペクトルにおいて左右にそれぞれ1つの大きいピークを現われ、これはこの場合に使用されているタングステン陽極の特性X線である。左側にタングステンのKα線が、右側にタングステンのKβ線が現われている。本発明によれば、位相格子の突条部高さが正確にこれらの特性線に合わせられている。
【0061】
図5には、2つの焦点−検出器システムF1,D1およびF2,D2を有するCTシステムの模範的な実施形態が断面図で概略的に示されている。両焦点−検出器システムF1,D1およびF2,D2は、共通なガントリ上にあり、したがって等しい速度で検査対象、ここでは患者Pの周りを回転させられ、一方とりわけ患者Pはシステム軸線Sの方向に移動されるので、スパイラル走査が生じる。両焦点−検出器システムF1,D1およびF2,D2には、それぞれ、異なる格子セットG01,G11,G2およびG02,G12,G2が配置されている。両格子セットG01,G11,G2およびG02,G12,G2は異なる間隔d1,l1およびd2,l2を有する。もちろん、位相格子の突条部高さも同様に、位相シフトが測定される所望の異なるX線エネルギーに整合させられている。このようにして、患者Pはエネルギーに依存する異なる位相シフトに関して同時に走査される。両焦点−検出器システムF1,D1およびF2,D2における異なる加速電圧の使用に関する制限は存在しない。
【0062】
焦点F1および検出器D1を有するCTの本発明による焦点−検出器システムの構成の他の変形が図6に示されている。ここでは、唯一の焦点−検出器システムが、2つのエネルギー固有の格子装置G0,G11,G21およびG0,G12,G22を備え、両格子装置G0,G11,G21およびG0,G12,G22は異なる間隔d1,l1およびd2,l2を有する。各格子装置G0,G11,G21およびG0,G12,G22は焦点−検出器システムのファン角の半分だけをカバーしている。この例では、位相シフトを測定されるべき異なるエネルギーに整合させるために、線源格子および位相格子が異ならせて使用されるのではなく、異なる位相格子および分析格子が使用され、線源格子は分析格子に対して等しい距離を有するが、異なる周期を有する。コーンビームについては共通な線源格子が使用される。
【0063】
焦点F1および検出器D1を有するCTの本発明による焦点−検出器システムの構成の更に別の変形が図7に示されている。ここでも、唯一の焦点−検出器システムが、2つのエネルギー固有の格子装置G0,G11,G21およびG0,G12,G22を備え、各格子装置G0,G11,G21およびG0,G12,G22は同様に焦点−検出器システムのファン角の半分のみをカバーしている。この変形には、位相シフトを測定されるべき異なるエネルギーに整合させるために、両分析格子は、それらの周期に関しては同一であるが、位相格子に対して異なる距離を有する。この場合にも線源格子は同じである。補足するにこの構成では、検出器を同様に分割し、それぞれ分析格子に対してできるだけ短い距離に配置することが推奨できるであろう。
【0064】
図6および図7の変形の場合、測定可能な投影の個数は分解能および信号雑音比の相応の結果とともに半減する。しかし、このようにして、唯一の焦点−検出器システムを有する従来のCTであっても1回で同時に2つの異なるエネルギーにおいて位相シフトを測定することができ、格子の交換を要しない。
【0065】
本発明による方法を実施するための完全なコンピュータ断層撮影システムが図8に示されている。これは、ガントリハウジング6内の詳細には示されていないガントリに配置されたX線管2および対向する検出器3を備えた第1の焦点−検出器システムを持つCTシステム1を示す。第1の焦点−検出器システム2,3のビーム通路内に図1〜図3による格子システムが配置されているので、システム軸線9に沿って移動可能な患者用寝台8上にいる患者7が第1の焦点−検出器システムのビーム通路内に送り込まれ、そこで走査される。CTシステムの制御は計算および制御ユニット10によって行なわれる。計算および制御ユニット10のメモリ11内にプログラムPrg1〜Prgnが格納されている。プログラムPrg1〜Prgnは、既述の本発明による方法を実行し、測定されビームに依存する位相シフトおよび吸収から相応の断層撮影画像を再構成する。この本発明による方法の実行は破線で示された枠12内に示されている。
【0066】
任意選択的に、唯一の焦点−検出器システムの代わりに、第1の焦点−検出器システムに追加して第2の焦点−検出器システムがガントリハウジング内に配置されてもよい。これは、図8において、破線で示されたX線管4と破線で示された検出器5とによって表されている。
【0067】
枠12内には本発明による方法の概略的な流れ図が示されている。左に示されたタングステン陽極の2つの特性X線の特性線を有するエネルギースペクトルは、ここで使用されたエネルギースペクトルを示す。上側の経路Aではこの特性線およびそこで発生する非常に多数の光子を利用して位相コントラスト測定が行なわれるのに対して、下側の経路Bでは同じ測定が他の特性X線の範囲で行なわれる。患者Pを通る両エネルギー範囲E1,E2の各ビームについてエネルギー固有の位相シフトφ(E1),φ(E2)が決定されるとすぐに、前述の差関数u(φ(E1),φ(E2))を介して投影が算出され、断層撮影画像の再構成に供される。このようにして、X線により、例えば軟部組織のような類似組成の領域においても非常に詳細化された構造を表示する断層撮影画像が形成される。
【0068】
誤解のないように指摘しておくに、上述の技術は、より簡単な実施形態において、投影画像の作成に適用可能である。投影画像の作成の場合には、検査対象の回転走査および投影データからの再構成が省略される。
【0069】
更に補足するに、示された焦点−検出器システムによりX線の位相シフトが測定可能であるだけでなく、これは更にX線吸収の従来の測定および相応の吸収画像の再構成にも適している。場合によっては吸収画像と位相コントラスト画像との複合画像も作成可能である。
【0070】
更に指摘しておくに、実用的な実施形態においてコントラスト改善のための使用される格子では、格子線間の間隙(溝)が高吸収材料を充填されているとよい。例えば、このために金を使用することができる。基本的には少なくとも吸収格子として働く線源格子および分析格子は、少なくともe-1のコントラスト係数を達成するように構成されている。
【0071】
要約すると、この明細書には、X線システムにより検査対象、とりわけ患者の投影および断層撮影による位相コントラスト画像を作成する方法ならびにこの方法を実施するための相応のX線システムにおいて、異なるエネルギー範囲に同調したX線光学光子セットが検査対象の透過時におけるエネルギーに依存する位相シフトを決定するために使用され、これらのエネルギーに依存する位相シフトから差値が形成され、この差値から断層撮影画像または投影画像が作成されることが記載されている。
【0072】
本発明の上述の特徴は、その都度述べた組み合わせにおいてのみならず、本発明の範囲を逸脱することなく他の組み合わせまたは単独にて使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】X線CTの焦点−検出器システムの3D表示による概略図
【図2】線源格子、位相格子、分析格子およびそれらの格子構造が表示されている焦点−検出器システム縦断面図
【図3】干渉現象を表示するために位相格子、分析格子および検出器を有するCTの焦点−検出器システムの縦断面図
【図4】種々の加速電圧においてビームハードニングフィルタを使用の際の特性線を有するタングステン陽極の制動スペクトルを示すダイアグラム
【図5】異なる格子セットを有するCTの2つの90°ずれた焦点−検出器システムの概略的な断面図
【図6】分割された異なる格子セットを有するCTの分割された焦点−検出器システムの概略的な断面図
【図7】分割された異なる格子セットを有するCTの他の分割された焦点−検出器システムの概略的な断面図
【図8】本発明によるCTシステムの3D表示による概略図
【符号の説明】
【0074】
1 CTシステム
2 第1のX線管
3 第1の検出器
4 第2のX線管
5 第2の検出器
6 ガントリハウジング
7 患者
8 患者用寝台
9 システム軸線
10 制御および計算ユニット
11 メモリ
12 本発明による方法の概略図
A 経路
B 経路
1,D2 検出器
1,d2 位相格子−分析格子の距離
1 第1のエネルギー範囲
2 第2のエネルギー範囲
1,F2 焦点
0,G01,G02 線源格子
11,G12 位相格子
2,G21,G22 分析格子
0 格子突条部の高さ
11,h12 格子突条部の高さ
2 格子突条部の高さ
ph 位相コントラスト画像
A 吸収画像
I(Ei(XG)) 格子ずれxGの際に検出素子Eiで測定された強度
Kα,Kβ 特性X線のピーク
1,l2 線源格子−位相格子の距離
P 患者
01,p02 格子線の周期
11,p12 格子線の周期
2 格子線の周期
Prgx プログラム
S システム軸線
G 分析格子のずれ
w 焦点広がり
x,y,z 直交座標系
ν ボクセルの広がり
μ(φ(E1),(E2))CT画像データセットのボクセルの位相シフトの差関数
φ 位相シフト
φ(Ex) エネルギーExを有するX線の位相シフト
λ 観察されたX線の波長




 

 


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