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発明の名称 止血器具
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−21112(P2007−21112A)
公開日 平成19年2月1日(2007.2.1)
出願番号 特願2005−211907(P2005−211907)
出願日 平成17年7月21日(2005.7.21)
代理人 【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
発明者 石井 竹夫 / 久保寺 幸則
要約 課題
簡単な操作で優れた止血効果が得られる止血器具を提供すること。

解決手段
止血器具1Aは、手首等の止血すべき部位に巻き付ける帯体2と、帯体2を手首等に巻き付けた状態で固定する面ファスナー3と、硬質材料で構成され、内周側に向かって湾曲した部位を有する湾曲板と、湾曲板の内側に設置され、内圧の上昇により拡張する拡張体50と、拡張体50内に流体を注入する注入部7とを備える。拡張体50は、外周がシール部54でシールされ、かつ、加圧等により剥離可能な仕切り部55により第1空間51と第2空間52とに分離されている。第1空間51内には水剤61が収納され、第2空間52内には水剤61と接触して吸熱反応を生じる寒剤62が収納されている。仕切り部55の一部が剥離し第1空間51と第2空間52とが連通すると、水剤61と寒剤62とが接触し、低温の冷却媒体となる。
特許請求の範囲
【請求項1】
肢体の止血すべき部位に巻き付ける可撓性を有する帯体と、
前記帯体を前記肢体に巻き付けた状態で固定する固定手段と、
前記帯体に設置され、流体を注入することにより拡張する拡張体を備え、前記肢体の止血すべき部位を加圧して圧迫し得る圧迫手段と、
前記肢体の止血すべき部位を冷却し得る冷却手段とを有することを特徴とする止血器具。
【請求項2】
前記冷却手段を構成する構成物の少なくとも1つが前記圧迫手段を構成する構成物の少なくとも1つと兼用されている請求項1に記載の止血器具。
【請求項3】
前記冷却手段を構成する冷却媒体が前記圧迫手段を構成する加圧媒体を兼ねている請求項1に記載の止血器具。
【請求項4】
前記冷却手段は、水剤と、前記水剤と接触して吸熱反応を生じる寒剤とを含む請求項1ないし3のいずれかに記載の止血器具。
【請求項5】
前記拡張体は、仕切り部により仕切られた第1空間および第2空間を有し、前記第1空間に水剤が収納され、前記第2空間に寒剤が収納されている請求項4に記載の止血器具。
【請求項6】
前記仕切り部は、前記第1空間および/または前記第2空間の加圧によりその少なくとも一部が剥離または破断して前記第1空間と前記第2空間とが連通するよう構成されている請求項5に記載の止血器具。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、止血器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばイントロデューサーシースの内腔より、カテーテル等を血管内に経皮的に挿入して治療、検査などを行った場合、そのイントロデューサーシースを抜去した後、シースの抜去部を止血する必要がある。この止血を行うために、大腿部のシース抜去部位のある部分に巻き付けて固定するベルトと、前記シース抜去部位(以下単に「抜去部位」と言う)を圧迫する圧迫手段(半球形バルーン)とを備えた止血器具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような止血器具を使用した場合、圧迫手段であるバルーンが抜去部位を圧迫して止血するが、強く圧迫し過ぎたり、長時間圧迫し続けたりすると弊害を生じるおそれがあることから、加える圧迫力や圧迫継続時間には限界がある。特に、圧迫が長時間継続すると、血行不良によりしびれや痛みが生じることがある。
【0004】
そのため、従来の止血器具では、上記弊害を避けるため、十分な止血効果が得られないという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平5−115487号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、圧迫と冷却の相乗効果により、優れた止血効果を得ることができる止血器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)〜(6)の本発明により達成される。また、下記(7)〜(18)であるのが好ましい。
【0008】
(1) 肢体の止血すべき部位に巻き付ける可撓性を有する帯体と、
前記帯体を前記肢体に巻き付けた状態で固定する固定手段と、
前記帯体に設置され、流体を注入することにより拡張する拡張体を備え、前記肢体の止血すべき部位を加圧して圧迫し得る圧迫手段と、
前記肢体の止血すべき部位を冷却し得る冷却手段とを有することを特徴とする止血器具。
【0009】
(2) 前記冷却手段を構成する構成物の少なくとも1つが前記圧迫手段を構成する構成物の少なくとも1つと兼用されている上記(1)に記載の止血器具。
【0010】
(3) 前記冷却手段を構成する冷却媒体が前記圧迫手段を構成する加圧媒体を兼ねている上記(1)に記載の止血器具。
【0011】
(4) 前記冷却手段は、水剤と、前記水剤と接触して吸熱反応を生じる寒剤とを含む上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の止血器具。
【0012】
(5) 前記拡張体は、仕切り部により仕切られた第1空間および第2空間を有し、前記第1空間に水剤が収納され、前記第2空間に寒剤が収納されている上記(4)に記載の止血器具。
【0013】
(6) 前記仕切り部は、前記第1空間および/または前記第2空間の加圧によりその少なくとも一部が剥離または破断して前記第1空間と前記第2空間とが連通するよう構成されている上記(5)に記載の止血器具。
【0014】
(7) 前記加圧は、前記拡張体を外部から圧迫することにより行われる上記(6)に記載の止血器具。
【0015】
(8) 前記加圧は、前記第2空間に流体を注入することにより行われる上記(6)に記載の止血器具。
【0016】
(9) 前記仕切り部は、前記拡張体を構成するシート材を軽度に融着または接着した弱シール部で構成されている上記(5)ないし(8)のいずれかに記載の止血器具。
【0017】
(10) 前記冷却手段は、水剤と接触して吸熱反応を生じる寒剤を含み、前記寒剤が前記拡張体の内部に収納されている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の止血器具。
【0018】
(11) 前記拡張体の内部に水剤を注入して前記寒剤と接触させることにより冷却機能を得る上記(10)に記載の止血器具。
【0019】
(12) 前記拡張体の内部に、前記水剤と接触して気泡を発生する発泡剤が収納されている上記(10)または(11)に記載の止血器具。
【0020】
(13) 前記圧迫手段および/または前記冷却手段を構成する構成物として、前記拡張体の内部に流体を注入する注入部を有する上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の止血器具。
【0021】
(14) 前記圧迫手段を作動させる操作の少なくとも一部と、前記冷却手段を作動させる操作の少なくとも一部とが同一の操作で行われるよう構成されている上記(1)ないし(13)のいずれかに記載の止血器具。
【0022】
(15) 前記拡張体の前記止血すべき部位との接触面積は、10〜40cmである上記(1)ないし(14)のいずれかに記載の止血器具。
【0023】
(16) 前記帯体と前記拡張体との間に設置され、前記帯体より剛性の高い板材を有する上記(1)ないし(15)のいずれかに記載の止血器具。
【0024】
(17) 前記板材は、内周側に向かって湾曲した湾曲板である上記(16)に記載の止血器具。
【0025】
(18) 前記肢体の止血すべき部位に対する前記圧迫手段による圧迫および前記冷却手段による冷却がそれぞれ経時的に緩和されるよう構成されている上記(1)ないし(17)のいずれかに記載の止血器具。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、止血すべき部位を圧迫するとともに冷却するので、これらの相乗効果により、優れた止血効果を得ることができる。
【0027】
特に、圧迫手段と冷却手段の各構成物の少なくとも一部が兼用されている場合には、簡単な構成で上記効果を得ることができる。
【0028】
また、圧迫手段と冷却手段とは、それぞれ、必要時に作動させることができるので、操作性が優れ、止血器具の止血すべき部位への装着も容易に行うことができる。そのため、簡単な操作で止血を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の止血器具(冷却機能付き止血器具)を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0030】
<第1実施形態>
図1は、本発明の止血器具の第1実施形態を示す底面図(手首に装着したときの内面側が見える状態)、図2は、図1に示す止血器具の使用状態を示す断面図(手首に装着した直後の状態を示す横断面図)、図3は、図1に示す止血器具の使用状態を示す断面図(手首に装着し、圧迫手段および冷却手段を作動させた状態を示す横断面図)である。
【0031】
図1〜図3に示す止血器具1Aは、例えば、治療、検査、診断等の目的で手首100(肢体)に形成した穿刺孔より経皮的に血管(動脈)へ挿入したカテーテル等を抜去した後に、その抜去部位110を止血するのに使用されるものであり、手首100に巻き付ける帯体2と、帯体2を手首100に巻き付けた状態で固定する固定手段としての面ファスナー3と、湾曲板(板材)4と、拡張体50を含む圧迫手段5と、冷却手段6とを備えている。
【0032】
帯体2は、可撓性を有する帯状の部材である。図2および図3に示すように、帯体2は、手首100の外周を一周するように巻き付けられ、その両端付近の部分を互いに重ね合わせるようにして、手首100に装着される。そして、帯体2は、この重ね合わせ部分が後述する面ファスナー3によって固定(接合)される。
【0033】
この帯体2には、所定の部位に開口22が形成されている。この開口22が形成された部位は、帯体2を手首100に巻き付けて装着した状態(以下「装着状態」と言う)で、当該手首100の豆状骨130に対応する部位である。具体的には、図2および図3に示すように、帯体2の装着状態で、手首100の中心部120を介して拡張体50とぼぼ反対の箇所とされる。
【0034】
開口22の形状は、図示のような円形に限らず、例えば楕円形、四角形、五角形、六角形、八角形等の多角形等、いかなる形状でもよい。
【0035】
帯体2にこのような開口22を設けることにより、帯体2の装着状態において、止血すべき部位(抜去部位110)以外の部位、特に豆状骨130およびその近傍への帯体2による圧迫力を軽減することができる。すなわち、図2および図3に示すように、突出した豆状骨130付近が、開口22内に入り、帯体2の張力の増大を緩和し、圧迫力を軽減する。このように圧迫力が軽減される結果、しびれや痛み、血行不良等の弊害を防止または緩和することができる。
【0036】
なお、開口22と同様の機能を発揮するものとして、例えば、十文字状、放射状、平行に並設されたパターン等のスリットを設けてもよい。また、このような開口22やスリット等は、設けられていなくてもよい。
【0037】
帯体2の構成材料(シート材)としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)のようなポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)のようなポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、シリコーン、ポリウレタン、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはこれらを任意に組み合わせたもの(ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等)が挙げられる。帯体2の構成材料としては、後述するシート材53の構成材料で挙げたものと同様の材料を用いることができる。
【0038】
また、帯体2は、透明または半透明であるのが好ましい。これにより、帯体2を手首に巻き付けた部分、特に患部を外側から視認することができる。
【0039】
帯体2を構成するシート材の厚さは、特に限定されないが、後述する帯体2の引張弾性率や伸び率を考慮すれば、0.1〜0.7mm程度が好ましく、0.2〜0.5mm程度がより好ましい。
【0040】
帯体2の長手方向のほぼ中央部には、後述する湾曲板4を保持する湾曲板保持部21が形成されている。湾曲板保持部21は、外面側(または内面側)に別個の帯状の部材が融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)または接着(接着剤や溶媒による接着)等の方法により接合されることにより、二重になっており、それらの間に湾曲板4を挿入して保持する。
【0041】
帯体2の図1中の左端付近の部分の内面側(図1の紙面の表側)には、一般にマジックテープ(登録商標)などと呼ばれる面ファスナー3の雄側31が設置(固定)されており、帯体2の図1中の右端付近の部分の外面側(図1の紙面の裏側)には、面ファスナー3の雌側32が設置(固定)されている。なお、雄側31と雌側32との設置箇所は、逆であってよい。
【0042】
図2および図3に示すように、帯体2を手首100に巻き付け、面ファスナー3の雄側31と雌側32とを接合することにより、止血器具1Aが手首100に装着され、固定される。面ファスナー3は、着脱操作が簡単であるという利点に加え、手首100の太さに応じて固定位置を微調整することができ、手首100の太さに係わらず適正な状態、特に適正な締め付け度合いで帯体2を装着することができるという利点がある。
【0043】
なお、帯体2を手首100に巻き付けた状態で固定する固定手段としては、面ファスナー3に限らず、例えば、スナップ、ボタン、クリップ、フック、粘着テープ、帯体2の端部を通す枠部材等、いかなる構成のものであってもよい。
【0044】
湾曲板4は、帯体2の二重に形成された湾曲板保持部21の間に挿入されることにより、帯体2に保持されている。湾曲板4は、その少なくとも一部が内周側に向かって湾曲した形状をなしている。この湾曲板4は、帯体2よりも硬質な材料で構成されており、ほぼ一定の形状を保つようになっている。
【0045】
図1に示すように、本実施形態では、湾曲板4は、帯体2の長手方向に長い形状をなしている。図2および図3に示すように、この湾曲板4の長手方向の中央部41は、ほとんど湾曲せずに平板状になっており、この中央部41の両側には、それぞれ、内周側に向かって、かつ、帯体2の長手方向(手首100の周方向)に沿って湾曲した湾曲部42が形成されている。すなわち、湾曲部42の曲率半径R2は、中央部41の曲率半径R1(図示の構成では、R1は、ほぼ無限大)より小さい。
【0046】
湾曲板4の構成材料としては、特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル(特に硬質ポリ塩化ビニル)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエンのようなポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、アイオノマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)のようなポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、芳香族または脂肪族ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂等の各種樹脂材料が挙げられる。また、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料であってもよい。
【0047】
また、湾曲板4は、樹脂材料で構成され、実質的に透明(透明または半透明)であるのが好ましい。これにより、患部を外側から(湾曲板4を透して)視認することができる。
【0048】
なお、湾曲板4は、中央部41のような湾曲していない部分を有さないもの、すなわち、その全長に渡り湾曲しているものであってもよい。また、湾曲板4には、1または2以上の貫通孔が形成されていてもよく、あるいは、網状や枠状の部材で構成されていてもよい。
【0049】
また、湾曲板4を帯体2に設置する方法は、図示の構成に限らず、例えば、帯体2の内面側または外面側に融着または接着等の方法により接合、固定されていてもよい。また、帯体2は、手首100を一周するものでなくてもよく、例えば、湾曲板4の両端部にそれぞれ連結されているようなものでもよい。すなわち、湾曲板4と重なる部分の全てに帯体2が存在しなくてもよい。
【0050】
このような湾曲板4を設けたことにより、装着状態で拡張体50が拡張し、手首100の止血すべき部位(抜去部位110)を圧迫した際、その圧力を効率良く抜去部位110に作用させることができ、より確実に圧迫することができる。その結果、止血効果が高まる。
【0051】
なお、本発明では、湾曲板4に代わり、少なくとも1枚の平板を用いてもよい。また、本発明では、湾曲板4や平板のような板材は、存在しなくてもよい。
【0052】
湾曲板4の内側の箇所には、可撓性を有するシート材53で構成された拡張体(袋体)50が設置されている。この拡張体50は、手首100の止血すべき部位(抜去部位110)を加圧して圧迫する圧迫手段5を構成するものである。
【0053】
拡張体50は、帯体2にシート材53を重ね、該シート材53の縁部を帯体2に対し融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)または接着(接着剤や溶媒による接着)等の方法により機密的に固着(シール)することにより形成されている。
【0054】
図1に示すように、拡張体50には、その縁部全周に融着または接着によるシール部54が形成されている。さらに、拡張体50のほぼ中央部には、シート材53と帯体2とをシール部54より弱い接合強度(シール強度)で融着または接着した仕切り部(弱シール部)55が形成されており、これにより、拡張体50の内部を第1空間51と第2空間52とに区画している。
【0055】
シート材53の構成材料としては、内容物の漏出がなく、気密性に優れるものが好ましい。このようなものとしては、例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂として、例えば、スチレン系樹脂(例えば、ポリスチレン、ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体など)、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン樹脂、エチレン−エチルアクリレート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリブデン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリメチルメタクリレート、飽和ポリエステル樹脂(例えば、ポリ乳酸のようなヒドロキシカルボン酸縮合物、ポリブチレンサクシネートのようなジオールとジカルボン酸の縮合物など)、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー等のが挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0056】
止血器具1Aの拡張体50は、冷却手段6の作用により使用時に低温になることから、シート材53は、低温状態においても柔軟性に優れるものであるのが好ましい。また、シート材53は、実質的に透明(透明または半透明)であることが好ましい。
【0057】
また、気密性を高めるために、シート材53は、樹脂シートにアルミニウム層等を積層したアルミラミネートによるシート材を用いることもできる。
【0058】
シート材53の構成材料として、帯体2の構成材料と同一または同種の材料を用いた場合には、それらの密着性、相溶性に優れるため、シール部54および仕切り部55を容易にシールすることができ、また十分なシール強度を得ることができ、好ましい。
【0059】
シート材53の厚さは、特に限定されないが、10〜1000μm程度であるのが好ましく、100〜600μmであるのがより好ましい。
【0060】
仕切り部55は、シール部54に比較して軽度に融着または接着されている。また、仕切り部55の幅は、シール部54の幅よりも小さい(例えば10〜70%程度)のが好ましい。そして、拡張体50の第1空間51および/または第2空間52の部分を例えば外部から指等で圧迫し、第1空間51および/または第2空間52を加圧する(内圧を高める)ことにより、仕切り部55の少なくとも一部を剥離(または破断)することができる。この仕切り部55の剥離(または破断)により、第1空間51と第2空間52とが連通する。
【0061】
また、他の方法として、拡張体50の第1空間51および/または第2空間52に流体(気体または液体)を注入することにより、第1空間51および/または第2空間52を加圧し(内圧を高め)、仕切り部55の少なくとも一部を剥離(または破断)して、第1空間51と第2空間52とを連通させることもできる。例えば、後述する注入部7より第2空間52内に流体を注入し、第2空間52の内圧を高めることにより仕切り部55の少なくとも一部を剥離(または破断)させることができる。
【0062】
シール部54と仕切り部(弱シール部)55とに差を設けてシールする方法としては、例えば、それらの融着条件(ヒートシール条件)やシールの形状、寸法等を各々変更する方法が挙げられる。具体的には、例えば、(1)〜(8)の方法が挙げられる。
【0063】
(1)シール部54を形成する際の融着時間を1としたとき、仕切り部55を形成する際の融着時間を1未満(例えば0.1〜0.7倍程度)とする方法。
(2)シール部54を形成する際の融着温度を1としたとき、仕切り部55を形成する際の融着温度を1未満(例えば3〜50℃程度低い温度)とする方法。
(3)シール部54を形成する際の融着の圧力を1としたとき、仕切り部55を形成する際の融着の圧力を1未満(例えば0.3〜0.7倍程度)とする方法。
(4)仕切り部55の融着に際し、融着し難い材料を介在させてシールする方法。
【0064】
(5)シール部54の融着に際し、融着を促進する材料を介在させてシールする方法。
(6)シール部54と仕切り部55とで、シール幅に差を設ける方法。
(7)仕切り部55のシール幅を部分的に小さくする方法(幅の小さい部分が剥離し易くなる)。
(8)上記(1)〜(7)のうちの任意の2以上の組み合わせ。
【0065】
仕切り部55の形状は、特に限定されず、図示のような直線状の他、例えば、曲線状(円弧状、波状等)、折れ線状(ジグザグ状)等が挙げられる。また、複数本の仕切り部55を設けたり、交差状や分岐した形状の仕切り部55を設けることにより、拡張体50内に3つ以上の分離された空間を設けることもできる。すなわち、第1空間51および第2空間52の少なくとも一方が複数形成されていてもよい。
【0066】
止血器具1Aの未使用の状態において、第1空間51内には、水剤61が収納されており、第2空間52には、水剤61と接触して吸熱反応を生じる寒剤62が収納されている。これら水剤61および寒剤62は、手首100の止血すべき部位(抜去部位110)を冷却する冷却手段6を構成するものである。
【0067】
水剤61としては、寒剤62と接触して吸熱反応を与えるものであれば特に制限されず、次のようなものが挙げられる。すなわち、水剤61としては、水(蒸留水等)の他、炭酸ナトリウム10水和物、水酸化バリウム8水和物、硫酸ナトリウム10水和物等が例示される。水剤61としては、これらのうち1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用(混合)してもよい。本発明においては、化学的安定性に優れ、より短時間で冷却効果を発現させるという点で、水剤61として水を用いるのが好ましい。
【0068】
寒剤62としては、水剤61と接触して吸熱反応を生じる(与える)ものであれば特に制限されず、例えば次にようなものが例示される。すなわち、寒剤62としては、硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、チオシアン酸銀、ホウ酸、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、チオシアン酸アンモニウム等が例示される。寒剤62としては、これらのうち1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用(混合)してもよい。本発明においては、より短時間で冷却効果を発現させるという点で、寒剤62として硝酸アンモニウムを用いるのが好ましい。
【0069】
寒剤62の形態としては、特に限定されないが、水剤61との接触、混合(溶解)を容易、迅速に行えるという点で、粒子状(粉末状)または顆粒状であるのが好ましい。この場合、平均粒径は、0.5〜3mm程度であるのが好ましい。
【0070】
寒剤62と水剤61の配合比は、特に限定されないが、十分な吸熱反応が得られるように設定するのが好ましく、重量比で1:5〜5:1程度が好ましく、1:3〜3:1程度がより好ましく、2:3〜3:2程度がさらに好ましい。
【0071】
なお、水剤61および/または寒剤62には、使用感を向上させ、冷却効果の持続性を高めるために、例えば、ゲル化剤や重合体等の添加物を添加してもよい。
【0072】
以上のような水剤61および寒剤62は、止血器具1Aが未使用の状態では、互いに分離された(独立した)空間である第1空間51および第2空間にそれぞれ収納(密封収納)されており、また外気とも接触しないため、吸熱反応を起こすことなくそのままの状態で保持される。
【0073】
拡張体50の形状(平面形状)については、特に限定はなく、目的に応じて適宜決定することができる。拡張体50の形状(外形)としては、例えば、正方形(略正方形)、長方形(略長方形)、平行四辺形、台形、円形、楕円形等が挙げられる。また、拡張体50が例えば正方形の場合には、その大きさは32〜63mm四方程度が好ましい。拡張体50が円形の場合には、その直径は35〜71mm程度が好ましい。
【0074】
第1空間51の容積と第2空間52の容積は、ほぼ同一、前者が大、後者が大のいずれでもよいが、通常は、1:3〜3:1程度が好ましい。
【0075】
また、装着状態で、拡張体50の皮膚(手首100の表面)への接触面積は、10〜40cm程度が好ましく、14〜36cm程度がより好ましい。接触面積をこのような範囲とすることにより、必要かつ十分な圧迫および冷却を行うことができる。
【0076】
このような拡張体50では、図3に示すように、前述したような方法で仕切り部55の少なくとも一部を剥離(または破断)させると、第1空間51と第2空間52とが連通し、水剤61と寒剤62とが接触する。拡張体50を揺動させたり揉んだりしてこれらを混合すると、寒剤62が水剤61に溶解して冷却媒体63となる。冷却媒体63では、水剤61と寒剤62とが反応し、吸熱反応を生じる。その結果、冷却媒体63は温度が低下し、装着状態で手首100の止血すべき部位(抜去部位110)を冷却することが可能となる。抜去部位110は、冷却されることにより、止血効果が発揮される。なお、この冷却媒体63は、拡張体50により抜去部位110を加圧する加圧媒体(この加圧媒体は圧迫手段5を構成する)としても機能する。すなわち、冷却媒体63と加圧媒体とが兼用されており、構成の簡素化に寄与している。
【0077】
図1に示すように、拡張体50には、拡張体50内に流体(空気等の気体または液体)を注入する注入部7が接続されている。本実施形態では、注入部7は、止血器具1Aの未使用の状態(第1空間51と第2空間52とが連通する前の状態)で、第2空間52に連通している。
【0078】
注入部7は、その基端部が拡張体50に接続され、内腔が第2空間52に連通する可撓性を有するチューブ71と、該チューブ71の先端部に設置されたコネクタ73と、該コネクタ73内に設置され、拡張体50内へ流体を送り込む方向は許容するが拡張体50内から流体を排出する方向は阻止する逆止弁75とで構成されている。
【0079】
拡張体50を拡張(膨張)させる際には、コネクタ73にシリンジ8の先端突出部81を接続(嵌合)し、シリンジ8の押し子82を押して、シリンジ8内の流体(気体または液体)を先端突出部81より排出し、注入部7を介して拡張体50内に注入する。これにより、拡張体50は、流体の注入量に応じて拡張し、内圧が高まり、装着状態では抜去部位110が適度に圧迫される。
【0080】
拡張体50内に流体を注入した後、コネクタ73からシリンジ8を取り外すと、コネクタ73に内蔵された逆止弁75の作用により、流体の漏出が阻止れる。これにより、拡張体50は拡張状態(内圧)がある程度維持され、急激に収縮することが防止される。これにより、装着状態では抜去部位110の圧迫および冷却が一定時間維持される。
【0081】
なお、注入部7を介しての流体の拡張体50内への注入は、第1空間51と第2空間52との連通前、連通後のいずれに行ってもよいが、連通後(冷却媒体63の生成後)に行うのが好ましく、手首100への装着状態で行うのがより好ましい。
【0082】
なお、寒剤62が粒子状または顆粒状である場合、チューブ71の内径は、寒剤62の平均粒径より小さい値であるのが好ましい。これにより、チューブ71内に寒剤62が入り込み、チューブ71の内腔を閉塞させることを防止することができる。
【0083】
止血器具1Aでは、注入部7を介して拡張体50内に注入する流体の量を調整することにより、拡張体50の拡張の度合い、すなわち、抜去部位110への圧迫力(初期の圧迫力)を、患者の条件や症例等に応じて自由に設定、変更することができるという利点がある。
【0084】
また、止血器具1Aは、装着状態で拡張体50を拡張させて止血を開始すると、拡張体50による圧迫力が経時的に減少するよう構成されているのが好ましい。この場合、拡張体50による圧迫力の経時的減少は、帯体2および/または拡張体50が経時的に変形することにより生じる。本実施形態では、拡張体50の内圧が経時的に減少(徐々に減少)することによりなされる。
【0085】
この拡張体50の内圧の経時的減少の程度は、以下に述べるようなものが好ましい。すなわち、拡張体50は、拡張後(拡張完了時点から)、その内圧が経時的にわずかに減少し、拡張後60分経過した後の内圧が、初期内圧の20〜85%となるように、好ましくは35〜65%となるように構成されている。ここで、「初期内圧」とは、拡張体50を止血に好適な圧迫力が得られる程度まで拡張し、当該拡張が完了してから10秒経過した時点の圧力のことを言う。
【0086】
このような構成とすることにより、拡張体50による圧迫力が時間の経過とともに適度に(過不足なく)緩和され、前述した開口22による効果と相まって、高い圧迫力の持続による弊害、例えば抜去部位110やその末梢側でのしびれや痛み、血行不良(血管の閉塞)等を有効に防止することができる。特に、拡張体50の内圧の減少は、医師や看護師等がなんらかの操作(例えばバルブを緩めるなどの減圧操作、抜気操作)をすることなく、自然に生じる。従って、このような操作を行うことによる手間(煩雑さ)が回避される。
【0087】
バルーン拡張後60分経過した後の内圧が初期内圧の85%超であると、拡張体50の内圧の減少率が小さく、拡張したときの圧迫力(内圧)がほぼそのまま維持されるため、上述した高い圧迫力の維持による弊害を回避する効果が少ない。
【0088】
また、バルーン拡張後60分経過した後の内圧が初期内圧の20%未満であると、拡張体50の内圧の減少率が大きすぎて、止血が十分になされる前に拡張体50の圧迫力が衰え、抜去部位110より血液が漏れ出すおそれがある。
【0089】
以上のような拡張体50の内圧の経時的減少を得るための具体的構成としては、以下に述べるような例(A〜E)が挙げられる。
【0090】
A. 帯体2および/または拡張体50の素材として、柔軟であり容易に変形(伸長)し得る材質を用いる。
【0091】
拡張した拡張体50の内圧および反発力により、帯体2および/または拡張体50の全部または一部が抜去部位110や豆状骨130の形状に合うように徐々に変形し、その結果、拡張体50の内圧が減少して、抜去部位110への圧迫力が緩和される。つまり、帯体2および/または拡張体50の構成材料の物性(引張弾性率、厚さ、伸び率等)により、抜去部位110への圧迫力の減少の度合いを制御する。
【0092】
具体的には、帯体2の引張弾性率を、好ましくは12gf/mm以下、より好ましくは2〜10gf/mmとする。
【0093】
また、帯体2の、バルーン拡張後180分経過した後の伸び率を、好ましくは1〜9%、より好ましくは3〜7%とする。
【0094】
帯体2の開口22付近では、帯体2の幅が実質的に小さくなり、強度が減少するため、この部分では前記伸び率はさらに大きくなる。そのため、豆状骨130の周辺(開口22の外周部付近)に対する圧迫力はより緩和されることとなる。
【0095】
B. 拡張体50のシート材53のガス透過性を制御する。これにより、拡張体50内の気体が拡張体50のシート材を透過して徐々に外部に放散され、拡張体50の内圧が徐々に減少し、抜去部位110への圧迫力が緩和される。
【0096】
C. 拡張体50に連通するチューブ71のガス透過性を制御する。これにより、拡張体50内の気体がチューブ71を透過して徐々に外部に放散され、拡張体50の内圧が徐々に減少し、抜去部位110への圧迫力が緩和される。
【0097】
D. コネクタ73に内蔵された逆止弁75の気体逆流阻止効果が完全ではなく、当該逆止弁から微量の気体が漏れ出すようにする。これにより、拡張体50内の気体が逆止弁75を介して外部に微量ずつ排出され、拡張体50の内圧が徐々に減少し、抜去部位110への圧迫力が緩和される。
E. 前記A〜Dのうちに任意の2以上の組み合わせ。
【0098】
以上のようなA〜Eの方法によれば、拡張体50の内圧の制御(経時的減少)を、簡単な構成で達成することができるという利点がある。特に、Aの方法によれば、帯体2や拡張体50の構成材料、寸法等の諸条件(例えば、開口22の形状や開口面積)を適宜設定することで、容易に拡張体50の内圧の制御が可能となる。
【0099】
以上のような止血器具1Aにおいて、圧迫手段5は、拡張体50と、拡張体50内の加圧媒体(冷却媒体63)と、拡張体50を拡張させるための注入部7とで構成されている。また、冷却手段6は、冷却媒体63(未使用時は水剤61と寒剤62)で構成されている。このように、冷却手段6を構成する冷却媒体63は、圧迫手段5を構成する加圧媒体を兼ねている。すなわち、冷却手段6を構成する構成物の少なくとも1つが圧迫手段5を構成する構成物の少なくとも1つと兼用されている。これにより、本発明の止血器具1Aでは、簡単な構成で、抜去部位110への圧迫と冷却とを同時に行うことができ、優れた止血効果を得ることができる。
【0100】
また、前述したように、注入部7を介して第2空間52内に流体(例えば空気、水剤等)を注入し、第2空間52の内圧を高めることにより仕切り部55の少なくとも一部を剥離(または破断)させ、第1空間51と第2空間52とを連通させて冷却媒体63を得るとともに拡張体50を拡張させて抜去部位110を圧迫可能な状態とするような構成とした場合には、圧迫手段5を作動させる操作の少なくとも一部と、冷却手段6を作動させる操作の少なくとも一部とを同一の操作で行えるので、止血のための操作(圧迫および冷却)を容易に行うことができる。
【0101】
止血器具1Aにおいて、冷却手段6による冷却は、抜去部位110付近を好ましくは5〜24℃(平均温度)で3分以上、より好ましくは7〜18℃(平均温度)で5〜7分程度維持することができるものであればよい。抜去部位110付近の温度が5℃未満となると、冷却持続時間が長くなる場合、抜去部位110が過度に冷却されることによる弊害(例えば凍傷またはそれによる疼通)が生じる場合があり、一方、24℃を超える温度では、冷却持続時間が短い場合などに、冷却による止血効果を十分に得ることができないことがある。また、冷却持続時間が5分未満では、抜去部位110付近の温度が十分に下がらず、冷却が不十分となる場合がある。なお、冷却が終了(体温の吸収により冷却媒体63が24℃以上になる)した後も、拡張体50による抜去部位110付近への圧迫が所定時間継続されてもよい。また逆に、圧迫力(拡張体50の内圧)が十分に減衰した後も冷却(前記条件のような有効な冷却)が持続されてもよい。
【0102】
次に、止血器具1Aの作用(使用方法)の一例について説明する。
1.第1の方法
<1A> 止血器具1Aを手首100に装着する前は、拡張体50は、拡張しておらず、かつ、第1空間51と第2空間52とが連通していない状態とされている。手首100の場合、通常、動脈に留置されたシース(カテーテル)を抜去した抜去部位110は、手首100の内側(腱がある側)の親指側へ片寄った位置にある。また、この抜去部位110に対し、手首100の中心部120を介してほぼ反対側の箇所に豆状骨130がある。
【0103】
抜去部位(止血部位)110を指などで圧迫しながら、抜去部位110上に拡張体50の中央部(仕切り部55付近)が位置するようにして、帯体2を手首100に巻き付け、帯体2の両端部付近を面ファスナー3にて固定(接合)する。この状態では、豆状骨130の突出部位が開口22内に位置するようにする(図2参照)。
【0104】
<2A> 止血器具1Aを手首100に装着したら、注入部7のコネクタ73にシリンジ8を接続し、前述したようにしてシリンジ8を操作し、シリンジ8内の流体(例えば空気)を拡張体50の第2空間52に注入する。これにより、第2空間52の内圧が徐々に高まり、やがて仕切り部55の一部が剥離し、第1空間51と第2空間52とが連通し、水剤61と寒剤62とが接触する。拡張体50を揺動させたり揉んだりしてこれらを混合すると、寒剤62が水剤61に溶解して冷却媒体63となる。冷却媒体63では、水剤61と寒剤62とが反応し、吸熱反応を生じる。その結果、冷却媒体63は温度が低下し、抜去部位110付近を冷却する。
【0105】
必要に応じ、シリンジ8をさらに押圧操作して拡張体50の内部の圧力をさらに高め、拡張体50を所望の程度まで拡張させることができる。これにより、抜去部位110が適度な圧力(圧迫力)で圧迫される。
【0106】
拡張体50は、拡張により手首100の抜去部位110を含む領域に密着しており、低温となった冷却媒体63の吸熱作用により、抜去部位110付近が効率良く冷却される。
【0107】
<3A> 拡張体50を所望の程度に拡張させたら、コネクタ73からシリンジ8を取り外す。コネクタ73に内蔵された逆止弁75の作用により、拡張体50内から流体(冷却媒体63および空気)が急激に漏れ出すことはなく、拡張体50は、その拡張状態を必要な程度維持し、抜去部位110への圧迫状態および冷却状態が維持される(図3参照)。この状態では、拡張体50が抜去部位110およびその周辺の所定領域を(局所的に)押圧するとともに冷却する。拡張体50の拡張により、湾曲板4は、手首100の表面から離間して、手首100に接触し難くなる。これにより、抜去部位110およびその周辺が集中的に圧迫力を受けかつ冷却されるので、止血効果が高いとともに、止血を必要としない他の血管や神経等を圧迫したり冷却したりするのを回避することができ、手のしびれや血行不良などを生じるのを有効に防止することができる。
【0108】
また、拡張体50の拡張に伴って、帯体2に作用する張力も徐々に増大し、帯体2の拡張体50と反対側の部位の内面が手首100の外表面に密着する。この際、豆状骨130の突出部位は、開口22内に挿入されているので、豆状骨130付近の圧迫力が緩和され、しびれや痛み、血行不良などが有効に防止される。
【0109】
なお、手首100の抜去部位110に対し拡張体50を図3中右方向に若干ずれた位置とした場合には、図3中の矢印Fで示すように、抜去部位110を上から下へ垂直な方向(手首100の表面に対し垂直な方向)ではなく、傾斜した方向(手首100の中心部120に向かうような方向)に押圧(圧迫)することとなる。これにより、抜去部位110を上から下へ垂直な方向に押圧(圧迫)する場合と比べ、より優れた止血効果が得られ、より確実に止血することができる。
【0110】
<4A> 拡張体50は、拡張が完了した時点から、その内圧が少しずつ減少する。例えば、拡張後60分経過した後の内圧は、初期内圧の20〜85%程度となる。また、拡張体50内の冷却媒体63は、手首100の体温の吸熱により徐々に温度が上昇する(昇温速度は、例えば1〜2℃/分程度)。これにより、抜去部位110付近や豆状骨130付近への圧迫力が経時的に緩和されるとともに、冷却の度合い(冷却温度)も経時的に緩和されてゆき、抜去部位110付近の温度が徐々に上昇する(体温に近付く)。その結果、例えばしびれや痛み、血行不良等の、高い圧迫力の持続や低温状態の長時間の持続による種々の弊害を防止することができる。
【0111】
なお、止血器具1Aは、十分に止血がなされたと判断されたら、手首100から除去される。拡張体50の拡張完了から止血器具1Aの除去までの時間(止血器具装着時間)は、特に限定されず、例えば、10〜360分程度、好ましくは20〜180分程度とすることができる。この止血器具装着時間は、患者の症例や個人差等に応じて適宜選択することができる。なお、冷却手段6による冷却は、止血器具装着時間の全部においてなされる場合に限らず、止血器具装着時間の前半、例えば止血器具装着時間の1/20〜2/3程度(有効冷却時間)であってもよい。
【0112】
2.第2の方法
次に、第2の方法について説明するが、前記第1の方法と同様の事項についてはその説明を省略する。
【0113】
<1B> 止血器具1Aを手首100に装着する前は、拡張体50は、ほとんど拡張しておらず、かつ、第1空間51と第2空間52とが連通していない状態とされている。この状態で、拡張体50の第1空間51および/または第2空間52の部分を指などで圧迫して加圧し、仕切り部55の一部を剥離する。これにより、第1空間51と第2空間52とが連通し、水剤61と寒剤62とが接触する。拡張体50を揺動させたり揉んだりしてこれらを混合すると、寒剤62が水剤61に溶解して冷却媒体63となる。冷却媒体63では、水剤61と寒剤62とが反応し、吸熱反応を生じる。その結果、冷却媒体63は温度が低下し、抜去部位110の冷却が可能な状態となる。
【0114】
<2B> 一方、手首100の抜去部位(止血部位)110を指などで圧迫しながら、抜去部位110上に拡張体50のほぼ中央部が位置するようにして、帯体2を手首100に巻き付け、帯体2の両端部付近を面ファスナー3にて固定(接合)する。この状態では、豆状骨130の突出部位が開口22内に位置するようにする。
【0115】
<3B> 止血器具1Aを手首100に装着したら、注入部7のコネクタ73にシリンジ8を接続し、前述したようにしてシリンジ8を操作し、シリンジ8内の流体(例えば空気)を拡張体50の内部(第1空間51と第2空間52とが連通した空間)に注入する。拡張体50の内圧が徐々に高まり、拡張体50は所望の程度まで拡張する。これにより、抜去部位110が適度な圧力(圧迫力)で圧迫される。
【0116】
拡張体50は、拡張により手首100の抜去部位110を含む領域に密着しており、低温となった冷却媒体63の吸熱作用により、抜去部位110付近が効率良く冷却される。
【0117】
<4B> 拡張体50を所望の程度に拡張させたら、コネクタ73からシリンジ8を取り外す。コネクタ73に内蔵された逆止弁75の作用により、拡張体50内から流体(冷却媒体63および空気)が急激に漏れ出すことはなく、拡張体50は、その拡張状態を必要な程度維持し、抜去部位110への圧迫状態および冷却状態が維持される(図3参照)。この状態では、拡張体50が抜去部位110およびその周辺の所定領域を(局所的に)押圧するとともに冷却する。拡張体50の拡張により、湾曲板4は、手首100の表面から離間して、手首100に接触し難くなる。これにより、抜去部位110およびその周辺が集中的に圧迫力を受けかつ冷却されるので、止血効果が高いとともに、止血を必要としない他の血管や神経等を圧迫したり冷却したりするのを回避することができ、手のしびれや血行不良などを生じるのを有効に防止することができる。
【0118】
<5B> 拡張体50は、拡張が完了した時点から、その内圧が少しずつ減少し、また、拡張体50内の冷却媒体63は、体温により徐々に温度が上昇する。それらの程度や効果は、前記第1の方法と同様である。
【0119】
なお、止血器具1Aは、十分に止血がなされたと判断されたら、手首100から除去される。止血器具装着時間や有効冷却時間は、前記第1の方法と同様である。
【0120】
以上のような第1の方法および第2の方法によれば、止血すべき部位を最適な圧力で圧迫するとともに比較的短時間で冷却し、効率よく止血することができるとともに、手のしびれ、血行不良を抑制、回避することができる。
【0121】
<第2実施形態>
図4は、本発明の止血器具の第2実施形態を示す底面図(手首に装着したときの内面側が見える状態)、図5は、図4に示す止血器具の使用状態を示す断面図(手首に装着した直後の状態を示す横断面図)、図6は、図4に示す止血器具の使用状態を示す断面図(手首に装着し、圧迫手段および冷却手段を作動させた状態を示す横断面図)である。
【0122】
以下、これらの図を参照しつつ本発明の止血器具の第2実施形態について説明するが、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0123】
第2実施形態の止血器具1Bは、圧迫手段5および冷却手段6の構成が前記第1実施形態と異なり、それ以外は同様である。以下詳述する。
【0124】
湾曲板4の内側の箇所には、可撓性を有するシート材53で構成された拡張体(袋体)50が設置されている。この拡張体50は、手首100の止血すべき部位(抜去部位110)を加圧して圧迫する圧迫手段5を構成するものである。
【0125】
拡張体50は、帯体2にシート材53を重ね、該シート材53の縁部を帯体2に対し融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)または接着(接着剤や溶媒による接着)等の方法により機密的に固着(シール)することにより形成されている。すなわち、拡張体50の縁部全周に融着または接着によるシール部54が形成されている。そして、前記のような仕切り部55は形成されておらず、拡張体50の内部には、シール部54により周囲が封止された1つの空間が形成されている。
【0126】
シート材53の構成材料、厚さ等の条件については、前記第1実施形態で述べたのと同様である。
【0127】
図5に示すように、拡張体50の内部には、寒剤62が収納されている。寒剤62の種類、形態等の諸条件については、前記第1実施形態で述べたのと同様である。なお、図5では、拡張体50の内部に、寒剤62の他に相当量の空気(気体)が入っているが、この空気の量は任意であり、拡張体50の内部に空気がほとんど入っていなくてもよい。
【0128】
一方、水剤61は、注入部7を介して拡張体50内に注入される。水剤61が収納されたシリンジ8の先端突出部81を注入部7のコネクタ73に接続し、シリンジ8の押し子82を押して、シリンジ8内の水剤61を先端突出部81より排出し、注入部7を介して拡張体50内に注入する。これにより、拡張体50内において水剤61と寒剤62とが接触する。拡張体50を揺動させたり揉んだりしてこれらを混合すると、寒剤62が水剤61に溶解して冷却媒体63となる(図6参照)。冷却媒体63では、水剤61と寒剤62とが反応し、吸熱反応を生じる。その結果、冷却媒体63は温度が低下し、装着状態で手首100の止血すべき部位(抜去部位110)を冷却することが可能となる。
【0129】
また、拡張体50は、水剤61の注入により拡張する。1本のシリンジ8内に収納されている水剤61の量では不十分な場合には、空のシリンジ8をコネクタ73から一旦取り外し、水剤61をシリンジ8内に吸入し、再度コネクタ73に接続し、同様にして水剤61を拡張体50内に注入する。また、予め水剤61が入れられた別のシリンジ8に交換して再度拡張体50内に注入してもよい。このように、拡張体50は、水剤61の注入量に応じて拡張する。ここで、水剤61の注入量は十分であるが、拡張体50の拡張度をさらに高めたい場合には、コネクタ73に空のシリンジ8を接続して拡張体50内に空気を注入し、拡張体50の内圧を高める操作を行ってもよい。
【0130】
なお、水剤61の種類や、寒剤62と水剤61の好ましい配合比等については、前記第1実施形態で述べたのと同様である。
【0131】
止血器具1Bでは、拡張手段5は、拡張体50と、加圧媒体としても機能する冷却媒体63と、注入部7とで構成され、冷却手段6は、冷却媒体63(水剤61と寒剤62)と、注入部7と、シリンジ(注入器具)8とで構成される。前記止血器具1Aと同様に、冷却媒体63は加圧媒体と兼用される。
【0132】
このような止血器具1Bでは、前記止血器具1Aで述べた利点に加え、次のような利点がある。止血器具1Bでは、シリンジ8の押し子82の押し込み量、シリンジ8の交換回数等の選択により、水剤61の組成、温度、注入量等の諸条件を自由に設定、変更することができる。すなわち、寒剤62と水剤61の配合比や冷却媒体63の量、温度等(熱容量)を容易に設定、変更し、それに伴い冷却媒体63の冷却機能の有無や程度を調整することができるという利点がある。特に、注入部7から水剤61を全く注入せず、空気(気体)のみを注入して拡張体50を所望に拡張させた場合には、抜去部位110に対する冷却を行わず、圧迫のみを行うようにすることもできる。
【0133】
また、注入部7より水剤61を注入するという操作で、冷却媒体63の生成および冷却と加圧媒体による加圧(拡張体50の拡張)とを行うことができ、操作性が優れている。
【0134】
次に、止血器具1Bの作用(使用方法)の一例について説明する。
<1C> 止血器具1Bを手首100に装着する前は、拡張体50は、拡張していない。手首100の場合、通常、動脈への抜去部位110は、手首100の内側(腱がある側)の親指側へ片寄った位置にある。また、この抜去部位110に対し、手首100の中心部120を介してほぼ反対側の箇所に豆状骨130がある。
【0135】
抜去部位(止血部位)110を指などで圧迫しながら、抜去部位110上に拡張体50の中央部が位置するようにして、帯体2を手首100に巻き付け、帯体2の両端部付近を面ファスナー3にて固定(接合)する。この状態では、豆状骨130の突出部位が開口22内に位置するようにする(図5参照)。また、拡張体50は、手首100の皮膚に接触する程度で、ほとんど圧迫していない。
【0136】
<2C> 止血器具1Bを手首100に装着したら、注入部7のコネクタ73に水剤61が収納されたシリンジ8を接続し、次いで前述したようにしてシリンジ8を操作し、シリンジ8内の水剤61を拡張体50の内部に注入する。これにより、拡張体50内に収納されている寒剤62が水剤61と接触する。拡張体50を揺動させたり揉んだりしてこれらを混合すると、寒剤62が水剤61に溶解して冷却媒体63となる。冷却媒体63では、水剤61と寒剤62とが反応し、吸熱反応を生じる。その結果、冷却媒体63は温度が低下し、抜去部位110付近を冷却する。
【0137】
また、水剤61の注入により、拡張体50は拡張する。すなわち、冷却媒体63は、加圧媒体としても機能する。このような拡張体50の拡張により、抜去部位110が適度な圧力(圧迫力)で圧迫される。
【0138】
必要に応じ、シリンジ8を交換するなどして、シリンジ8同様に操作し、注入部7を介して拡張体50内に空気等を注入すると、拡張体50の内圧が増大し、拡張体50をさらに拡張させることができる。これにより、抜去部位110をより大きな圧力(圧迫力)で圧迫することができる。
【0139】
拡張体50は、拡張により手首100の抜去部位110を含む領域に密着しており、低温となった冷却媒体63の吸熱作用により、抜去部位110付近が効率良く冷却される。
【0140】
<3C> 拡張体50を所望の程度に拡張させたら、コネクタ73からシリンジ8を取り外す。コネクタ73に内蔵された逆止弁75の作用により、拡張体50内から流体(冷却媒体63および空気)が急激に漏れ出すことはなく、拡張体50は、その拡張状態を必要な程度維持し、抜去部位110への圧迫状態および冷却状態が維持される(図6参照)。この状態では、拡張体50が抜去部位110およびその周辺の所定領域を(局所的に)押圧するとともに冷却する。拡張体50の拡張により、湾曲板4は、手首100の表面から離間して、手首100に接触し難くなる。これにより、抜去部位110およびその周辺が集中的に圧迫力を受けかつ冷却されるので、止血効果が高いとともに、止血を必要としない他の血管や神経等を圧迫したり冷却したりするのを回避することができ、手のしびれや血行不良などを生じるのを有効に防止することができる。
【0141】
また、拡張体50の拡張に伴って、帯体2に作用する張力も徐々に増大し、帯体2の拡張体50と反対側の部位の内面が手首100の外表面に密着する。この際、豆状骨130の突出部位は、開口22内に挿入されているので、豆状骨130付近の圧迫力が緩和され、しびれや痛み、血行不良などが有効に防止される。
【0142】
なお、手首100の抜去部位110に対し拡張体50を図6中右方向に若干ずれた位置とした場合には、図6中の矢印Fで示すように、抜去部位110を上から下へ垂直な方向(手首100の表面に対し垂直な方向)ではなく、傾斜した方向(手首100の中心部120に向かうような方向)に押圧(圧迫)することとなる。これにより、抜去部位110を上から下へ垂直な方向に押圧(圧迫)する場合と比べ、より優れた止血効果が得られ、より確実に止血することができる。
【0143】
<4C> 拡張体50は、拡張が完了した時点から、その内圧が少しずつ減少する。例えば、拡張後60分経過した後の内圧は、初期内圧の20〜85%程度となる。また、拡張体50内の冷却媒体63は、手首100の体温の吸熱により徐々に温度が上昇する(昇温速度は、例えば1〜2℃/分程度)。これにより、抜去部位110付近や豆状骨130付近への圧迫力が経時的に緩和されるとともに、冷却の度合い(冷却温度)も経時的に緩和されてゆき、抜去部位110付近の温度が徐々に上昇する(体温に近付く)。その結果、例えばしびれや痛み、血行不良等の、高い圧迫力の持続や低温状態の長時間の持続による種々の弊害を防止することができる。
【0144】
なお、止血器具1Bは、十分に止血がなされたと判断されたら、手首100から除去される。拡張体50の拡張完了から止血器具1Bの除去までの好ましい時間(止血器具装着時間)は、前記止血器具1Aと同様である。冷却手段6による冷却は、止血器具装着時間の全部においてなされる場合に限らず、止血器具装着時間の前半、例えば止血器具装着時間の1/20〜2/3程度(有効冷却時間)であってもよい。
【0145】
なお、抜去部位110に対する冷却を行わず、圧迫のみによる止血を行う場合には、前記工程<2C>において、拡張体50内への水剤61の注入を行わず、シリンジ8を用いて拡張体50内に空気(気体)のみを注入し、拡張体50を所望に拡張させる。
【0146】
<第3実施形態>
以下、本発明の止血器具の第3実施形態について説明するが、前述した第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0147】
第3実施形態の止血器具1Bは、図4および図5に示す構成において、拡張体50内に予め寒剤62が収納されていない以外は前記第2実施形態と同様である。この止血器具1Bでは、予め低温状態となっている冷却媒体(加圧媒体)63を拡張体50内に注入して用いる。すなわち、シリンジ8内には、例えば0℃付近の水あるいはアルコール、油類、半固形状(ゼリー状)物質等(以下単に「低温の冷却媒体63」と言う)が収納されており、このシリンジ8を注入部7に接続し、装着状態でシリンジ8の押し子82を操作して低温の冷却媒体63を拡張体50内に注入し、抜去部位110付近を圧迫および冷却する。
【0148】
本実施形態の止血器具1Bは、注入部7より低温の冷却媒体63注入するという操作で、冷却媒体63による冷却と加圧媒体による加圧(拡張体50の拡張)とを行うことができ、操作性が優れている。
【0149】
<第4実施形態>
図7は、本発明の止血器具の第4実施形態を示す底面図(手首に装着したときの内面側が見える状態)、図8は、図7に示す止血器具の使用状態を示す断面図(手首に装着した直後の状態を示す横断面図)、図9は、図7に示す止血器具の使用状態を示す断面図(手首に装着し、圧迫手段および冷却手段を作動させた状態を示す横断面図)である。
【0150】
以下、これらの図を参照しつつ本発明の止血器具の第4実施形態について説明するが、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0151】
第4実施形態の止血器具1Cは、圧迫手段5および冷却手段6の構成が前記第1実施形態と異なり、それ以外は同様である。以下詳述すると、止血器具1Cは、注入部7およびシリンジ8を有さず、第2空間52は、シール部54と仕切り部(弱シール部)55とでその周囲が封止されている。また、第1空間51内には、前記と同様の水剤61が収納され、第2空間52内には、前記と同様の寒剤62と、発泡剤9とが収納されている。発泡剤9は、例えば錠剤やその他塊状の形態をなし、水剤61と接触して気泡(例えば炭酸ガス)91を発生するものである。
【0152】
この止血器具1Cでは、例えば前記工程<1B>において、止血器具1Cを手首100に装着する前は、拡張体50は、ほとんど拡張しておらず、かつ、第1空間51と第2空間52とが連通していない状態とされている。この状態で、拡張体50の第1空間51および/または第2空間52の部分を指などで圧迫して加圧し、仕切り部55の一部を剥離する。これにより、第1空間51と第2空間52とが連通し、水剤61が寒剤62および発泡剤9と接触する。
【0153】
拡張体50を揺動させたり揉んだりしてこれらを混合すると、寒剤62が水剤61に溶解して冷却媒体63となる。冷却媒体63では、水剤61と寒剤62とが反応し、吸熱反応を生じる。その結果、冷却媒体63は温度が低下し、抜去部位110の冷却が可能な状態となる。一方、発泡剤9は水剤61と接触すると気泡91を発生する。発泡剤9が水剤61に全て溶解すると、気泡91の発生は停止する。この発生した気泡91により、拡張体50の内部の圧力が上昇し、拡張体50が拡張する。これにより、装着状態で、抜去部位110付近は適度な圧力(圧迫力)で圧迫されるとともに冷却がなされ、優れた止血効果が得られる。
【0154】
なお、寒剤62は、粒子状(粉末状)または顆粒状であり、発泡剤9は、錠剤状であるため、これらの溶解速度の差から、水剤61に対する発泡剤9の溶解(気泡91の発生による拡張体50の内圧上昇)は、水剤61に対する寒剤62の溶解(冷却媒体63の生成)に遅れて終了する。これにより、冷却媒体63の生成と拡張体50の拡張とが円滑、良好に行われる。
【0155】
拡張体50の拡張の程度(内圧)は、拡張体50の容積と初期内圧と気泡91の発生量とにより定まる。例えば、拡張体50内に予め収納しておく発泡剤9の量を調整することにより、拡張体50の拡張の程度を設定しておくことができる。
【0156】
本実施形態の止血器具1Cでは、加圧手段5は、拡張体50と、加圧媒体(水剤61と発泡剤9)とで構成され、冷却手段6は、冷却媒体63(水剤61と寒剤62)で構成される。
【0157】
本実施形態の止血器具1Cでは、注入部7が存在せず、構成が簡素であるという利点に加え、発泡剤9の水剤61との接触により拡張体50が拡張するので、拡張体50の拡張の操作が極めて簡単であるという利点がある。すなわち、仕切り部55の一部を剥離して第1空間51と第2空間52とを連通させるという1つの操作で、冷却媒体63の生成および冷却と加圧媒体による加圧(拡張体50の拡張)とを行うことができ、操作性が優れている。
【0158】
なお、本実施形態の止血器具1Cにおいても、前記と同様の注入部7を設け、該注入部7およびシリンジ8を用いて拡張体50の内圧を調整し得るように構成してもよいことは、言うまでもない。
【0159】
また、本発明の止血器具は、前記第1〜第4実施形態のうちの任意の2以上の構成を組み合わせたものでもよい。
【0160】
以上、本発明の止血器具(冷却機能付き止血器具)を各実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、止血器具を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができ、また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0161】
また、本発明の止血器具は、手首に装着して使用するものの他、腕、脚(これらを総称して「肢体」という)等の手首以外の部位に装着して使用する止血器具に適用することができる。
【0162】
また、本発明の止血器具は、血管造影やインターベンションの際のカテーテル抜去部(カテーテル挿入用シースの抜去部)の止血に用いるのに適しているが、本発明の止血器具の用途や用法は、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0163】
次に、以下の各種試験を行った結果を参照しつつ本発明をさらに詳細に説明する。
(冷却温度測定試験)
以下の方法により、寒剤としての硝酸アンモニウム(顆粒状)と、水剤としての水(蒸留水)とを混合したときの温度の経時変化を測定した。
【0164】
20mLのビーカーに硝酸アンモニウム(和光純薬工業(株)製)と蒸留水とを、合計量15gとなるように下記表1に示す種々の配合比(重量比)で投入し、卓上で攪拌しながら混合し、デジタル温度計(model 2455:横河電気(株)製)を用いてその温度変化を経時的に5分間測定した。なお、水の温度は23℃で実施し、室温は23℃であった。測定結果を下記表1に示す。
【0165】
【表1】


【0166】
表1からわかるように、水剤の温度に関わらず、硝酸アンモニウムと蒸留水との配合比が2:1〜1:2の範囲では十分な温度低下が生じ、配合比が1:1のときに温度低下が最大となった。
【0167】
(皮膚冷却試験)
以下の方法により、水剤と寒剤との混合による冷却後の皮膚温度の経時的変化を測定した。
【0168】
被験者(4名)の前腕部の皮膚上に底面が平坦なビーカー(直径3cm、底面の面積約7cm)を載置し、前記冷却温度測定試験と同様の方法により、前記ビーカー内で寒剤としての硝酸アンモニウムと、水剤としての水(蒸留水)とを1:1の配合比(重量比)で配合した混合液を攪拌しながら前記ビーカーの底面を皮膚の表面に密着させて一定時間(1分、3分、5分、7分、10分、15分および20分)放置した。なお、用いた水剤の温度は23℃であった。前記一定時間経過後、ビーカーを除去し、放射温度計(Infrared thermometer model 5500:共立電気計器(株)製)を用いて除去直後の皮膚温を測定した。その結果(4名の被験者の結果)をNo.1〜4として下記表2に示す。
【0169】
【表2】


【0170】
表2からわかるように、20℃以下の皮膚温度を約10分間保つことができ、特に、18℃以下の皮膚温度を約7分間保つことができた。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】本発明の止血器具の第1実施形態を示す底面図(手首に装着したときの内面側が見える状態)である。
【図2】図1に示す止血器具の使用状態を示す断面図である。
【図3】図1に示す止血器具の使用状態を示す断面図である。
【図4】本発明の止血器具の第2実施形態を示す底面図(手首に装着したときの内面側が見える状態)である。
【図5】図4に示す止血器具の使用状態を示す断面図である。
【図6】図4に示す止血器具の使用状態を示す断面図である。
【図7】本発明の止血器具の第4実施形態を示す底面図(手首に装着したときの内面側が見える状態)である。
【図8】図7に示す止血器具の使用状態を示す断面図である。
【図9】図7に示す止血器具の使用状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0172】
1A、1B、1C 止血器具
2 帯体
21 湾曲板保持部
22 開口
3 面ファスナー
31 雄側
32 雌側
4 湾曲板
41 中央部
42 湾曲部
5 圧迫手段
50 拡張体(袋体)
51 第1空間
52 第2空間
53 シート材
54 シール部
55 仕切り部(弱シール部)
6 冷却手段
61 水剤
62 寒剤
63 冷却媒体
7 注入部
71 チューブ
73 コネクタ
75 逆止弁
8 シリンジ
81 先端突出部
82 押し子
9 発泡剤
91 気泡
100 手首
110 抜去部位
120 中心部
130 豆状骨




 

 


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