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発明の名称 心臓安定器
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−44351(P2007−44351A)
公開日 平成19年2月22日(2007.2.22)
出願番号 特願2005−233389(P2005−233389)
出願日 平成17年8月11日(2005.8.11)
代理人 【識別番号】100058479
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦
発明者 山谷 謙 / 前田 靖二
要約 課題
開胸下でも用いることができ、内視鏡下でも用いることができる、トロッカーに確実に挿入可能な心臓安定器を提供する。

解決手段
心臓安定器10は、内視鏡により術部を観察した状態でトロッカーを通して挿入されて使用される。この心臓安定器10は、細長い挿入部12と、この挿入部12の基端部に設けられ、術者に把持される操作部16と、前記挿入部12の先端部に設けられ、心臓の拍動を部分的に抑制するための安定部材14とを備えている。そして、安定部材14は、挿入部12の先端部に支持された押圧固定部材42と、この押圧固定部材42に対して回動して開閉可能な押圧可動部材44と、押圧固定部材42および押圧可動部材44を接続するヒンジ46および圧縮バネ48とを備えている。
特許請求の範囲
【請求項1】
内視鏡により術部を観察した状態でトロッカーを通して挿入されて使用される心臓安定器であって、
細長い支柱部材と、
この支柱部材の基端部に設けられ、術者に把持される操作部と、
前記支柱部材の先端部に設けられ、心臓の拍動を部分的に抑制するための押圧部材と
を備え、
前記押圧部材は、
前記支柱部材の先端部に支持された押圧固定部材と、
この押圧固定部材に対して回動して開閉可能な押圧可動部材と、
前記押圧固定部材および押圧可動部材を接続する接続部材と
を具備することを特徴とする心臓安定器。
【請求項2】
前記接続部材は、
前記押圧固定部材と前記押圧可動部材とを回動可能に枢支するヒンジと、
前記押圧固定部材に対して前記ヒンジによって前記押圧可動部材を開いた状態に付勢する弾性部材と
を具備することを特徴とする請求項1に記載の心臓安定器。
【請求項3】
前記接続部材は、前記押圧固定部材と前記押圧可動部材とを開いた状態に付勢する弾性部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載の心臓安定器。
【請求項4】
前記弾性部材は、圧縮バネであることを特徴とする請求項2もしくは請求項3に記載の心臓安定器。
【請求項5】
前記接続部材は、一端が前記押圧可動部材に固定され、他端が前記操作部に配設され、前記押圧可動部材から前記押圧固定部材、前記支持部材を通して前記操作部に配設されたワイヤを備えていることを特徴とする請求項1に記載の心臓安定器。
【請求項6】
前記押圧固定部材と前記押圧可動部材とは、前記接続部材によって開いたときに互いに対して対称な略U字状もしくは略V字状に形成され、
前記押圧固定部材および前記押圧可動部材の基部の外周縁部は、前記トロッカーの端部に当接されたときに前記押圧可動部材を前記押圧固定部材に対して閉じる方向に移動させる、曲面状もしくは斜面状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1に記載の心臓安定器。
【請求項7】
前記押圧固定部材と前記押圧可動部材とは、前記接続部材によって開いたときに略U字状もしくは略V字状に形成され、
前記押圧固定部材は、前記支持部材の先端部に支持された基部を備え、
前記押圧可動部材は、前記接続部材によって前記基部に対して回動可能に配設されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1に記載の心臓安定器。
【請求項8】
前記押圧可動部材の基端部の外周縁部は、前記トロッカーの端部に当接されたときに前記押圧可動部材を前記押圧固定部材に対して閉じる方向に移動させる、曲面状もしくは斜面状に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の心臓安定器。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
この発明は、内視鏡下で用いられ、心臓の拍動を部分的に止める心臓安定器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、開胸下における心拍動下冠状動脈バイパス手術においては、血管吻合領域を部分的に安定させるために、心臓安定器を用いて手技を行なっている。この安定器は、手技を行なう部分の周囲を押さえて、その周囲のみ心臓の拍動による影響を抑えて、手技を行ない易くするために用いられている。
【特許文献1】特開平10−005230号公報
【特許文献2】米国特許第5,807,243号明細書
【特許文献3】米国特許第6,503,245号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、冠状動脈バイパス手術を開胸下ではなく、内視鏡下で行なう場合、例えばトロッカーによるポート孔を設けてそのポート孔を通して手技を行なう。このため、ポート孔を介して鉗子や安定器を体内に挿入する必要があるが、開胸下で用いている安定器がその種類や型式等によってはポート孔に入らないことがある。したがって、ポート孔に挿入可能な安定器を選択することが必要であるが、この作業は面倒な場合がある。
【0004】
この発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、開胸下でも用いることができ、内視鏡下でも用いることができる、トロッカーに確実に挿入可能な心臓安定器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、この発明に係る、内視鏡により術部を観察した状態でトロッカーを通して挿入されて使用される心臓安定器は、細長い支柱部材と、この支柱部材の基端部に設けられ、術者に把持される操作部と、前記支柱部材の先端部に設けられ、心臓の拍動を部分的に抑制するための押圧部材とを備えている。そして、前記押圧部材は、前記支柱部材の先端部に支持された押圧固定部材と、この押圧固定部材に対して回動して開閉可能な押圧可動部材と、前記押圧固定部材および押圧可動部材を接続する接続部材とを具備することを特徴とする。
押圧部材は、接続部材によって、押圧固定部材に対して押圧可動部材を回動可能である。すなわち、押圧部材を、押圧固定部材に対して押圧可動部材を折り畳むことができるので、押圧部材をトロッカーに挿入する際や、トロッカーから抜去する際に小さくして容易に挿脱させることができる。したがって、開胸下でも用いることができ、内視鏡下でも用いることができる、トロッカーに確実に挿入可能な心臓安定器を提供することができる。
【0006】
また、前記接続部材は、前記押圧固定部材と前記押圧可動部材とを回動可能に枢支するヒンジと、前記押圧固定部材に対して前記ヒンジによって前記押圧可動部材を開いた状態に付勢する弾性部材とを具備することが好適である。
このため、押圧固定部材に対して押圧可動部材を開く方向に付勢しておけば、付勢力によって、トロッカーに挿入した際には心臓の近くでヒンジによって押圧固定部材に対して押圧可動部材を開くことができ、トロッカーから抜去する際には付勢力に抗してヒンジによって押圧固定部材に対して押圧可動部材を閉じる(折り畳む)ことができる。
【0007】
また、前記接続部材は、前記押圧固定部材と前記押圧可動部材とを開いた状態に付勢する弾性部材を備えていることが好適である。
このため、押圧固定部材に対して押圧可動部材を開く方向に付勢しておけば、付勢力によって、トロッカーに挿入した際には心臓の近くで押圧固定部材に対して押圧可動部材を開くことができ、トロッカーから抜去する際には付勢力に抗して押圧固定部材に対して押圧可動部材を閉じる(折り畳む)ことができる。
【0008】
また、前記弾性部材は、圧縮バネであることが好適である。
このため、部品も安価で、安定した付勢力を発揮することができる。
また、前記接続部材は、一端が前記押圧可動部材に固定され、他端が前記操作部に配設され、前記押圧可動部材から前記押圧固定部材、前記支持部材を通して前記操作部に配設されたワイヤを備えていることが好適である。
このため、操作部に配設されたワイヤによって、押圧固定部材に対して押圧可動部材を張力によって自動的または意図的に開閉させることができる。
【0009】
また、前記押圧固定部材と前記押圧可動部材とは、前記接続部材によって開いたときに互いに対して対称な略U字状もしくは略V字状に形成され、前記押圧固定部材および前記押圧可動部材の基部の外周縁部は、前記トロッカーの端部に当接されたときに前記押圧可動部材を前記押圧固定部材に対して閉じる方向に移動させる、曲面状もしくは斜面状に形成されていることが好適である。
トロッカーから押圧部材を抜去する際に、曲面もしくは斜面がトロッカーの端部(ポート孔の縁部)に当接されるので、その曲面や斜面に沿って当接位置が移動されるにしたがって押圧部材が閉じられる(折り畳まれる)。
【0010】
また、前記押圧固定部材と前記押圧可動部材とは、前記接続部材によって開いたときに略U字状もしくは略V字状に形成され、前記押圧固定部材は、前記支持部材の先端部に支持された基部を備え、前記押圧可動部材は、前記接続部材によって前記基部に対して回動可能に配設されていることが好適である。
このため、基部に対して押圧可動部材を開閉させることによって、押圧部材をトロッカーに対して挿脱可能である。
【0011】
また、前記押圧可動部材の基端部の外周縁部は、前記トロッカーの端部に当接されたときに前記押圧可動部材を前記押圧固定部材に対して閉じる方向に移動させる、曲面状もしくは斜面状に形成されていることが好適である。
曲面や斜面がトロッカーに端部に当接されるので、その曲面や斜面に沿って当接位置が移動させるにしたがって押圧部材が閉じられる(折り畳まれる)。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、開胸下でも用いることができ、内視鏡下でも用いることができる、ポート孔に確実に挿入可能な心臓安定器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながらこの発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)について説明する。
【0014】
まず、第1の実施の形態について図1ないし図6を用いて説明する。
【0015】
図1および図2に示すように、この実施の形態に係る心臓安定器(心臓スタビライザ)10は、細長い挿入部12と、この挿入部12の先端部に設けられ、心臓H(図3参照)の外表面に当接させる安定部材(押圧部材)14と、挿入部12の基端部に設けられた操作部(ハンドル部)16とを備えている。
【0016】
挿入部12は、例えばステンレス鋼材などにより形成された円筒部材(支柱部材)22を備えている。この円筒部材22は、後述するトロッカーT(図3参照)のポート孔に挿通させるため、細く、真直ぐに形成されている。なお、図示しないが、トロッカーTは挿入部12の円筒部材22を係止可能である。このため、安定器10がトロッカーTに対して操作することなく移動することが防止され、術者が挿脱しようとして力を加えたときのみトロッカーTに対して移動可能である。
【0017】
操作部16は、円筒部材22の基端部に一体的に配設された操作保持部材32と、この操作保持部材32に配設された軸固定部材34とを備えている。操作保持部材32は、トロッカーTのポート孔の開口径よりも大きく形成されている。このため、挿入部12はトロッカーTのポート孔に挿通可能であるが、操作部16はそれに挿通することが防止されている。
【0018】
安定部材14は、押圧固定部材42と、この押圧固定部材42に対してヒンジ(回転補助部材)46により接続された押圧可動部材44とを備えている。さらに、押圧固定部材42と押圧可動部材44とは、圧縮バネ(弾性部材)48により連結されている。このとき、圧縮バネ48は、ヒンジ46の中心軸に対して直交する方向に配設されている。
【0019】
図2(A)および図2(B)に示すように、ヒンジ46が開いて押圧固定部材42に対して押圧可動部材44が開いたときには、押圧固定部材42と押圧可動部材44とは略U字状や略V字状(ここでは、主にU字状として説明する)である。すなわち、押圧固定部材42と押圧可動部材44とは、それぞれ略L字状に形成されている。
【0020】
押圧固定部材42および押圧可動部材44は、ヒンジ46の中心軸に対して対称的に形成されている。このため、ヒンジ46の中心軸は、安定部材14の基部に設けられている。また、押圧固定部材42および押圧可動部材44の略L字状の曲部の外周面の縁部42a,44aは、それぞれの略平行に形成された延出部42b,44bに対して滑らかな曲線状(図2(A)参照)や斜面状(図2(B)参照)に形成されている。これら縁部42a,44aは、安定器10がトロッカーTに対して抜去される際に、トロッカーTの胸壁CW内側の端部に当接されると、圧縮バネ48のバネ力に抗して押圧可動部材44が押圧固定部材42に対して閉じる方向に力を働かせる際に利用される。すなわち、縁部42a,44aは、物理的な力が押圧可動部材44の回転と連動する。
【0021】
安定部材14の押圧固定部材42と、挿入部12の円筒部材22との間には、押圧軸部材52が配設されている。この押圧軸部材52の一端は、押圧固定部材42に固定されている。押圧軸部材52の他端は、挿入部12の円筒部材22の先端部に固定されている。この押圧軸部材52の他端は、ユニバーサルジョイントを備えている。このため、安定部材14の押圧固定部材42は、押圧軸部材52の他端を支点として所定の範囲内で回動、回転等することができる。押圧固定部材42が押圧軸部材52の他端を支点として回動すると、押圧固定部材42にヒンジ46により接続された押圧可動部材44も連動して回動する。
【0022】
次に、この実施の形態に係る心臓安定器10の作用について説明する。ここでは、開胸せずに行なう内視鏡下での一般的な冠状動脈バイパス手術を行なう場合を例として説明する。
【0023】
図3に示すように、胸壁CWにトロッカーTを配置するために、胸壁CWの数箇所に小切開部を形成する。そして、それら小切開部にそれぞれトロッカーTを配置して固定する。このような小切開部にトロッカーTを配置した場合、胸壁CWの内部を視覚的に認識することが困難である。このため、トロッカーTのポート孔に胸壁CWの内部を観察するための内視鏡62を挿入する。
【0024】
胸壁CWの内部には外界から光が入らないため、図示しない光源装置に一端が接続され、光を導くライトガイド64の他端を内視鏡62に接続して胸壁CWの内部に照明光を導光する。内視鏡62により得られる映像は、内視鏡62に装着されたカメラヘッド66により撮像されて電気信号に変換される。この電気信号は図示しないカメラコントロールユニット(CCU)で信号が処理されて映像信号が形成された後、図示しないモニタにその映像信号が送られて表示される。このため、内視鏡62の観察像が術者により容易に観察される。
【0025】
以下、手技の概略を説明する。
心臓Hに一部が閉塞もしくは狭窄された冠状動脈Cが表在されているものとする。冠状動脈C上の閉塞部もしくは狭窄部を迂回するために、閉塞もしくは狭窄された領域よりも血流の下流側(以降、“下降領域”と呼ぶ)に微小切開部を形成する。下降領域の血流を改善するために、良好な上腕の橈骨動脈や胸部の内胸動脈、下腿部の大伏在静脈等から採取した血管(以降、“採取血管”と呼ぶ)BVを冠状動脈Cの微小切開部に吻合する。
【0026】
次に、具体的手技について説明する。
採取血管BVを冠状動脈Cの微小切開部に吻合させるために、内視鏡62で冠状動脈Cを観察する。このとき、心臓Hは拍動しているため、拍動を抑制せずに採取血管BVを冠状動脈Cの微小切開部に吻合させることは困難である。このため、冠状動脈Cの微小切開部の近傍の拍動を抑制するために心臓安定器10を使用する。
【0027】
内視鏡62を配置したトロッカーTの他の残りのトロッカーTのポート孔に対して、心臓安定器10、持針器72および把持鉗子74等を挿入する。このため、心臓安定器10、持針器72および把持鉗子74を胸壁CWを通して容易に冠状動脈Cに向かって挿入することができる。
【0028】
このとき、特に、安定器10の安定部材14をトロッカーTの狭いポート孔に挿入するため、安定部材14の押圧可動部材44を押圧固定部材42に対して閉じる。このため、圧縮バネ48のバネ力に抗して押圧可動部材44を押圧固定部材42に対してヒンジ46の中心軸を支軸として回動させて閉じた状態でトロッカーTのポート孔に挿入する。
【0029】
そして、安定部材14をトロッカーTの胸壁CW内側の端部から突出させると、図4(A)に示すように、圧縮バネ48のバネ付勢力により、押圧固定部材42に対して押圧可動部材44がヒンジ46の中心軸を支軸として回動して開く。このとき、図4(B)に示すように、押圧固定部材42と押圧可動部材44とは同一平面内に配置され、これらの厚さ方向の面同士が対向する(接触する)。
【0030】
そして、安定部材14の延出部42b,44bが心臓Hの表面に当接されると、押圧軸部材52の他端のユニバーサルジョイントにより、安定部材14が回動してその向きが変化する。このため、心臓Hの表面に対して略直交する面に安定部材14の押圧固定部材42および押圧可動部材44が配置される。
【0031】
トロッカーTのポート孔を通して導入した心臓安定器10の安定部材14を心臓Hに押し当てる。このとき、冠状動脈Cの微小切開部周囲の領域部の拍動が抑制される。すなわち、心臓安定器10の安定部材14の延出部42b,44b間に冠状動脈Cの微小切開部を配置する。安定部材14は、押圧軸部材52の他端のユニバーサルジョイントにより、安定部材14の挿入部12の円筒部材22に対する角度が心臓Hの表面に合わせて変化する。
【0032】
心臓安定器10の安定部材14を適当に押し付けることによりその押し付けた部分近辺の拍動を抑制した冠状動脈Cの切開部と、採取血管BVの一端とを吻合するために、トロッカーTのポート孔から持針器72および把持鉗子74を胸壁CWの内部に挿入する。持針器72は、吻合のために微小作業可能に針を把持するものである。把持鉗子74は、針糸や採取血管BVを吻合のために把持するものである。把持鉗子74の採取血管BVの端部を切開部近傍に配設して持針器72の針を移動させて冠状動脈Cの微小切開部に血管BVを吻合させる。このようにして血流の迂回手術を実施する。
【0033】
血管BVを冠状動脈Cの切開部に吻合させる作業の終了後、安定部材14を心臓Hの表面から離す。そうすると、安定部材14を押し当てていた部分の心臓Hの拍動が再び開始される。
【0034】
図4(A)に示すように、心臓安定器10の挿入部12の円筒部材22および安定部材14を、トロッカーTに対して抜去していく。すると、安定部材14の押圧固定部材42および押圧可動部材44の外周面の縁部42a,44aがトロッカーTの胸壁CW内側の端部に当接される。この状態で安定器10の安定部材14をトロッカーTのポート孔内にさらに引き込むと、押圧固定部材42および押圧可動部材44に縁部42a,44aに力が加えられる。引き込みによって、縁部42a,44aは、ヒンジ46側から延出部42b,44b側に、トロッカーTの胸壁CW内側の端部に対して当接される部位が変化する。このため、トロッカーTのポート孔の開口径に合わせて、押圧固定部材42に対して押圧可動部材44が圧縮バネ48のバネ付勢力に抗してヒンジ46の中心軸を支軸として回動する。そうすると、図5(B)に示すように、押圧可動部材44が押圧固定部材42に対してヒンジ46の中心軸を支軸として閉じられる(折り畳まれる)。
【0035】
このため、安定部材14はトロッカーTのポート孔に挿入可能な大きさとなる。そして、円筒部材22を把持して挿入部12をトロッカーTから引き抜く。
したがって、安定部材14は、押圧固定部材42に対して押圧可動部材44が閉じられた状態でトロッカーTのポート孔の内部に入る。このため、安定部材14はトロッカーTから抜去される。
【0036】
持針器72や把持鉗子74、さらには内視鏡62も同様にトロッカーTから抜去される。そして、トロッカーTを胸壁CWから取り外して処置を終了する。
【0037】
以上説明したように、この実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
安定部材14に対して押圧固定部材42に対して押圧可動部材44を閉じるといった簡単な操作を行なうだけでトロッカーTのポート孔の内部に挿通させることができ、かつ、特に操作を行なうことなくトロッカーTから抜去することができる。したがって、術者が複雑な操作をすることなく、トロッカーTの狭いポート孔に対して簡単な操作で安定器10の挿脱を行なうことができる。
【0038】
このとき、安定部材14の押圧固定部材42および押圧可動部材44が開いたときに略U字状や略V字状に形成することによって、それらの縁部42a,44aに対してトロッカーTの胸壁CW内側の端部から力を加える際に、滑らかに力を伝達することができる。このため、安定器10をトロッカーTから抜去する際に、安定器10に操作を加えずに、トロッカーTからの物理的な力と、安定部材14の形状によって、容易に抜去することができる。
【0039】
なお、この実施の形態では、押圧固定部材42と押圧可動部材44とはヒンジ46の中心軸に対して対称的であるとして説明したが、ヒンジ46の中心軸は押圧固定部材42と押圧可動部材44との対称軸となる位置ではなく、図2(C)に示すように、対称中心軸から外れた位置に中心軸が配置されていることも好適である。
【0040】
また、図6に示すように、この実施の形態では圧縮バネ48を用いることについて説明したが、ヒンジ46の機能と圧縮バネ48の機能との両方を兼ね備える高弾性率を有する材料を使用しても良い。
【0041】
また、この実施の形態では、略U字状や略V字状など、対称的な形状のものについて説明したが、基部42a,44aに対する延出部42b,44bの長さはそれぞれ異なっていても良い。
【0042】
次に、第2の実施の形態について図7および図8を用いて説明する。この実施の形態は第1の実施の形態の変形例であって、第1の実施の形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0043】
図7(A)に示すように、この実施の形態に係る安定部材14は、基部である押圧固定部材42と、この押圧固定部材42に対してそれぞれヒンジ(回転補助部材)46によって回動可能に枢支された1対の押圧可動部材44とを備えている。この実施の形態では、押圧固定部材42は、略矩形状に形成されている。ヒンジ46は押圧固定部材42の対向する辺に配置されている。
【0044】
一方、押圧可動部材44は、それぞれ縁部44aと延出部44bとを有する略L字状に形成されている。2つの押圧可動部材44間には、圧縮バネ(弾性部材)48が配設されている。このため、2つの押圧可動部材44は、それぞれヒンジ46の中心軸を支軸として押圧固定部材42に対して開くように付勢されている。
【0045】
図8(A)および図8(B)に示すように、挿入部12の円筒部材22の外周には、補助円筒部材24が円筒部材22に対して摺動可能に配設されている。この補助円筒部材24の先端は、補助円筒部材24の軸方向に対して直交する方向でなく、斜め方向に略楕円状の端部(突起部24a)が形成されている。この端部のうち、軸方向に沿って突出した側には、軸方向に沿ってスリット24bが形成されている。このスリット24bには、安定部材14の押圧可動部材44が当接可能である。このため、補助円筒部材24のスリット24bに押圧軸部材52が配設されると、スリット24bの側部の突起部24aによって、押圧可動部材44が押圧される。
【0046】
なお、押圧固定部材42の幅がスリット24bの幅よりも小さく形成されている。また、押圧可動部材44が折り畳まれた際に、押圧固定部材42とともに収納される大きさに形成されている。
【0047】
次に、この実施の形態に係る心臓安定器10の作用について説明する。
【0048】
補助円筒部材24を円筒部材22に対して安定部材14側に相対的に移動させる。そして、補助円筒部材24は、押圧固定部材42に固定された押圧軸部材52をスリット24bの内部に入れていく。そうすると、押圧可動部材44の縁部44aおよびその表面が突起部24aによって押圧される。このため、圧縮バネ48のバネ付勢力に抗して押圧可動部材44がヒンジ46の中心軸を支軸として押圧固定部材42に対して回動する。そして、押圧固定部材42および押圧可動部材44がスリット24bに収納される。
【0049】
この状態で安定器10の安定部材14をトロッカーTの狭いポート孔に挿入する。そして、安定部材14をトロッカーTの胸壁CW内側の端部から突出させ、さらに、補助円筒部材24を円筒部材22に対して操作部16側に相対的に引き込む。そうすると、押圧可動部材44は、補助円筒部材24のスリット24bの側部による規制が解除される。このため、図8(A)に示すように、圧縮バネ48のバネ付勢力により、押圧固定部材42に対して押圧可動部材44がヒンジ46の中心軸を支軸として回動して開く。このとき、押圧固定部材42と押圧可動部材44とは同一平面内に配置され、これらの厚さ方向の面同士が対向する(接触する)。
【0050】
そして、安定部材14の延出部44bが心臓Hの表面に当接されると、押圧軸部材52の他端のユニバーサルジョイントにより、安定部材14が回動してその向きが変化する。このため、心臓Hの表面に対して略直交する面に安定部材14の押圧固定部材42および押圧可動部材44が配置される。
【0051】
血管BVを冠状動脈Cの切開部に吻合させる作業の終了後、図8(B)に示すように、心臓安定器10の挿入部12の円筒部材22および安定部材14を、トロッカーTに対して抜去していく。
【0052】
このとき、補助円筒部材24をトロッカーTに対して固定し、円筒部材22を操作部16側に引き込む。すると、押圧軸部材52がスリット24bの内部に挿入される。そうすると、押圧可動部材44の縁部44aおよびその表面が突起部24aによって押圧される。このため、圧縮バネ48のバネ付勢力に抗して押圧可動部材44がヒンジ46の中心軸を支軸として押圧固定部材42に対して回動する。そして、押圧固定部材42および押圧可動部材44がスリット24bに収納される。
【0053】
このため、安定部材14はトロッカーTのポート孔に挿入可能な大きさとなる。そして、円筒部材22を把持して挿入部12をトロッカーTから引き抜く。
したがって、安定部材14は、押圧固定部材42に対して押圧可動部材44が閉じられた状態でトロッカーTのポート孔の内部に入る。このため、安定部材14はトロッカーTから抜去される。
【0054】
以上説明したように、この実施の形態によれば、以下の効果が得られる。なお、第1の実施の形態で説明した効果と同様な効果については記載を省略する。
トロッカーTの先端形状がどのような形状であっても、補助円筒部材24によって押圧可動部材44の開閉操作を行なうことができるので、心臓安定器10をトロッカーTのポート孔の内部に挿入および抜去することができる。
【0055】
なお、この実施の形態では圧縮バネ48を用いることについて説明したが、図7(B)に示すように、長手方向に押し出し力を有する弾性部材を用いることも好適である。
【0056】
また、この実施の形態では、補助円筒部材24を用いて押圧固定部材42に対して押圧可動部材44を開閉させることについて説明したが、第1の実施の形態と同様に、トロッカーTの胸壁CW内側端部によって開閉させることももちろん好適である。
【0057】
次に、第3の実施の形態について図9を用いて説明する。この実施の形態は第1および第2の実施の形態の変形例であって、第1および第2の実施の形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0058】
この実施の形態では、第1および第2の実施の形態とは異なり、圧縮バネ48が除去されている。図9(A)ないし図9(C)に示すように、挿入部12の円筒部材22に沿って開閉導管部材82が配設されている。この開閉導管部材82には、弾性を有するワイヤ(開閉押引部材)84が配設されている。このワイヤ84の基端部は、操作部16(図1参照)に配設されている。一方、このワイヤ84の先端部は、押圧軸部材52に並設され、安定部材14に配設されている。
【0059】
安定部材14の押圧固定部材42には、ワイヤ84の貫通孔が形成されている。この貫通孔を挿通したワイヤ84の先端は、押圧固定部材42の裏面を通して押圧可動部材44に固定されている。このため、ワイヤ84の進退によって、押圧固定部材42に対して押圧可動部材44が開閉する。
【0060】
次に、この実施の形態に係る心臓安定器10の作用について説明する。
【0061】
ワイヤ84の基端を把持して引っ張る。すると、ワイヤ84に加えられた張力により、押圧固定部材42の貫通孔を通してワイヤ84の先端の押圧可動部材44に張力が伝達される。このため、その張力により、押圧可動部材44がヒンジ46によって、押圧固定部材42に対して閉じる。
【0062】
この状態で安定器10の安定部材14をトロッカーTの狭いポート孔に挿入する。そして、安定部材14をトロッカーTの胸壁CW内側の端部から突出させる。そして、ワイヤ84の引っ張り張力を緩めると、押圧固定部材42に対して押圧可動部材44がヒンジ46の中心軸を支軸として回動して開く。このとき、押圧固定部材42と押圧可動部材44とは同一平面内に配置され、これらの厚さ方向の面同士が対向する(接触する)。
【0063】
そして、安定部材14の延出部42b,44bが心臓Hの表面に当接されると、押圧軸部材52の他端のユニバーサルジョイントにより、安定部材14が回動してその向きが変化する。このため、心臓Hの表面に対して略直交する面に安定部材14の押圧固定部材42および押圧可動部材44が配置される。
【0064】
血管BVを冠状動脈Cの切開部に吻合させる作業の終了後、心臓安定器10の挿入部12の円筒部材22および安定部材14を、トロッカーTに対して抜去していく。
【0065】
このとき、ワイヤ84を操作部16に対して引っ張る。すると、ワイヤ84の張力が押圧固定部材42を介して押圧可動部材44に伝達される。このため、押圧可動部材44がヒンジ46の中心軸を支軸として押圧固定部材42に対して回動する。
【0066】
このため、安定部材14はトロッカーTのポート孔に挿入可能な大きさとなる。そして、円筒部材22を把持して挿入部12をトロッカーTから引き抜く。
したがって、安定部材14は、押圧固定部材42に対して押圧可動部材44が閉じられた状態でトロッカーTのポート孔の内部に入る。このため、安定部材14はトロッカーTから抜去される。
【0067】
以上説明したように、この実施の形態によれば、以下の効果が得られる。なお、第1の実施の形態で説明した効果と同様な効果については記載を省略する。
押圧可動部材44の開閉を、ワイヤ84の進退だけで、意図的に容易に操作することができる。また、押圧固定部材42および押圧可動部材44の周囲の構成や外観を単純化することができる。
【0068】
これまで、いくつかの実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明したが、この発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で行なわれるすべての実施を含む。
【0069】
上記説明によれば、下記の事項の発明が得られる。また、各項の組み合わせも可能である。
【0070】
[付記]
(付記項1)
内視鏡下における心臓安定器において、近位端と遠位端を有する保持部材と、前記保持部材遠位端に設けられた操作部材と、前記保持部材内を移動可能な支柱部材と、前記支柱部材近位端に設けられた組織表面を傷つけることなく把持することができる押圧部材において、前記操作部材は把持部材を第1の位置から第2の位置へ移動させることができ、前記把持部材は保持部材内の第1の位置にあるときは付勢された折り畳まれた状態にあり、前記保持部材外の第2の位置にあるときは付勢されずに弾性力によって開放された状態にあり、前記押圧部材が第1の位置から第2の位置、第2の位置から第1の位置へ移動する際に、開閉することを特徴とする心臓安定器。
【0071】
(付記項2)
前記押圧部材は折り畳まれるための形状が一部曲線、もしくは傾斜部を持つことを特徴とする心臓安定器。
【0072】
(付記項3)
前記押圧部材は2つまたはそれ以上からなり、折り畳まれる第1の位置と第2の位置に進行間において回転するための回転部材を持つことを特徴とする心臓安定器。
【0073】
(付記項4)
前記回転部材は初期の位置に戻るために弾性力も備えていることを特徴とする心臓安定器。
【0074】
ところで、安定器には、以下に説明するようなものもある。
【0075】
[付記1]
付記1について図10ないし図14を用いて説明する。
【0076】
図10に示すように、この実施の形態に係る心臓安定器(心臓スタビライザ)110は、細長い挿入部112と、この挿入部112の先端部に設けられた安定部材114と、挿入部112の基端部に設けられた操作部(ハンドル部)116とを備えている。この心臓安定器110は、冠状動脈C(図13および図14参照)上の閉塞および狭窄が多岐に渡って存在するため、各々の状態に合わせて形成されている。
【0077】
挿入部112は、円筒部材122と、この円筒部材122の外周に配設された操作導管124と、円筒部材122の外周面と操作導管124の内周面との間に配設されたワイヤ(可動操作部材)126とを備えている。円筒部材122および操作導管124はそれぞれステンレス鋼材等により形成されている。
【0078】
安定部材114は、後述する冠状動脈Cの閉塞または狭窄部の周囲領域の拍動を抑制するように、略U字状に形成されている。すなわち、この安定部材114は、基部114aと、この基部114aから延出された1対の延出部114bとを備えている。冠状動脈Cの閉塞や狭窄部は、1対の延出部114bの間に配置される。
【0079】
安定部材114の基部114aと挿入部112の円筒部材122の先端部との間には、押圧保持軸130が配設されている。この押圧保持軸130の一端は安定部材114の基部114aに固定され、他端はユニバーサルジョイント130aを備えている。このユニバーサルジョイント130aは、挿入部112の円筒部材122の先端部に固定されている。このため、安定部材114は、円筒部材122の先端部に対して所定の範囲内で自在に回動、回転等することができる。
【0080】
押圧保持軸130の一端が固定された基部114aの側部には、1対のワイヤ126の一端がそれぞれ固定されている。これらワイヤ126の他端は操作部116の後述する可動軸部材144にそれぞれ固定されている。
【0081】
操作部116は、円筒部材122の基端部に一体的に設けられた操作保持部材142と、この操作保持部材142に対して可動で、ワイヤ126の他端が固定された可動軸部材144と、この可動軸部材144を所望の位置で固定する操作軸固定部材146と、軸固定部材148とを備えている。操作保持部材142には、円筒部材122の軸方向に沿って案内溝142aが形成されている。これら案内溝142aには、可動軸部材144が配設されている。このため、この可動軸部材144は、案内溝142aの長さの範囲内で1対のワイヤ126を軸方向に沿って同じ方向に移動させたり、互いに異なる方向に移動させたりすることが可能である。
【0082】
ワイヤ126を同じ方向に移動させる場合、操作部116の可動軸部材144の軸方向は挿入部112の軸方向に対して直交する状態を保つ。このような状態で可動軸部材144を操作すると、安定部材114が押圧保持軸130によって、円筒部材122の先端部で挿入部112の軸方向に対して直交するように回動する。すなわち、安定部材114は図11に示す矢印α,βの向きに回動する。
【0083】
一方、互いに異なる方向に移動させる場合、操作部116の可動軸部材144の軸方向は挿入部112の軸方向に対して直交した状態をニュートラルの状態として、その状態から外れる方向に移動する。このような状態で可動軸部材144を操作すると、安定部材114が押圧保持軸130の軸回りに回動する。すなわち、安定部材114は図12に示す矢印γ,δの向きに回動する。
【0084】
この実施の形態に係る心臓安定器110は、以下の作用を奏する。ここではまず、開胸した状態で行なう一般的な冠状動脈バイパス手術に安定器110を適用した状態を説明し、続いて、内視鏡観察下で胸部に大きな切開部を設けずに冠状動脈バイパス手術する際に安定器110を適用した状態について説明する。
【0085】
開胸した状態で行なう一般的な冠状動脈バイパス手術を行なう際の作用について説明する。
図13に示すように、心臓Hに一部が閉塞もしくは狭窄された冠状動脈Cが表在されているものとする。冠状動脈C上の閉塞部もしくは狭窄部を迂回するために、閉塞もしくは狭窄された領域よりも血流の下流側(以降、“下降領域”と呼ぶ)に微小切開部を形成する。下降領域の血流を改善するために、良好な上腕の橈骨動脈や胸部の内胸動脈、下腿部の大伏在静脈等から採取した血管(以降、“採取血管”と呼ぶ)BVを冠状動脈Cの微小切開部に吻合する。
【0086】
次に、具体的手技について説明する。
採取血管BVを冠状動脈Cの微小切開部に吻合させるために、患者の胸部を大きく切開し、術者が冠状動脈Cを目視確認可能な状態とする。ここでは、胸部の大切開部を拡張した状態に維持するために胸壁CWに開胸器RSを配置する。このとき、心臓Hは拍動しているため、拍動を抑制せずに採取血管BVを冠状動脈Cの微小切開部に吻合させることは困難である。このため、冠状動脈Cの微小切開部の近傍の拍動を抑制するために心臓安定器110を使用する。
【0087】
そこで、開胸器RSにより拡張した切開部より冠状動脈Cの切開部周囲の小領域部のみ、心臓Hの拍動を抑制するために心臓安定器110を開胸器RSに固定する。このため、心臓安定器110、持針器172および把持鉗子174を胸壁CWを通して容易に冠状動脈Cに向かって挿入することができる。
【0088】
そして、安定部材114の延出部114bが心臓Hの表面に当接されると、押圧保持軸130の他端のユニバーサルジョイントにより、安定部材114が回動してその向きが変化する。このため、心臓Hの表面に対して略直交する面に安定部材114が配置される。
【0089】
開胸器RSを通して導入した心臓安定器110の安定部材114を心臓Hに押し当てる。このとき、冠状動脈Cの微小切開部周囲の領域部の拍動が抑制される。すなわち、心臓安定器110の安定部材114の延出部114b間に冠状動脈Cの微小切開部を配置する。安定部材114は、操作部116の可動軸部材144を操作してワイヤ126を動作させて、押圧軸部材152の他端のユニバーサルジョイントにより、安定部材114の挿入部112の円筒部材122に対する角度を心臓Hの表面に合わせて変化させる。そして、図11に示す操作部116の可動軸部材144を、操作軸固定部材146の溝部に嵌合させる。そうすると、安定部材114の角度が決められた状態に保持される。すなわち、安定部材114は、心臓Hの表面に押し付けられた状態で保持される。
【0090】
心臓安定器110の安定部材114を適当に押し付けることによりその押し付けた部分近辺の拍動を抑制した冠状動脈Cの切開部と、採取血管BVの一端とを吻合するために、開胸器RSの開口部から持針器172および把持鉗子174を胸壁CWの内部に挿入する。持針器172は、吻合のために微小作業可能に針を把持するものである。把持鉗子174は、針糸や採取血管BVを吻合のために把持するものである。把持鉗子174の採取血管BVの端部を切開部近傍に配設して持針器172の針を移動させて冠状動脈Cの微小切開部に血管BVを吻合させる。このようにして血流の迂回手術を実施する。
【0091】
血管BVを冠状動脈Cの切開部に吻合させる作業の終了後、安定部材114を開胸器RSから取り外して心臓Hの表面から離す。そうすると、安定部材114を押し当てていた部分の心臓Hの拍動が再び開始される。
持針器172や把持鉗子174も同様に開胸器RSから抜去して処置を終了する。
【0092】
次に、開胸せずに行なう一般的な冠状動脈バイパス手術を行なう際の作用について説明する。
図14に示すように、胸壁CWにトロッカーTを配置するために、胸壁CWの数箇所に小切開部を形成する。そして、それら小切開部にそれぞれトロッカーTを配置して固定する。このような小切開部にトロッカーTを配置した場合、胸壁CWの内部を視覚的に認識することが困難である。このため、トロッカーTのポート孔に胸壁CWの内部を観察するための内視鏡162を挿入する。
【0093】
胸壁CWの内部には外界から光が入らないため、図示しない光源装置に一端が接続され、光を導くライトガイド164の他端を内視鏡162に接続して胸壁CWの内部に照明光を導光する。内視鏡62により得られる映像は、内視鏡162に装着されたカメラヘッド166により撮像されて電気信号に変換される。この電気信号は図示しないカメラコントロールユニット(CCU)で信号が処理されて映像信号が形成された後、図示しないモニタにその映像信号が送られて表示される。このため、内視鏡162の観察像が術者により容易に観察される。
【0094】
内視鏡162を配置したトロッカーTの他の残りのトロッカーTのポート孔に対して、心臓安定器110、持針器172および把持鉗子174等を挿入する。
【0095】
他の作用は、開胸して行なった冠状動脈バイパス手術と同様に行なうものであり、上述した作用と同一の作用を奏するので、説明を省略する。
【0096】
以上説明したように、このような形態によれば以下の効果が得られる。
【0097】
冠状動脈バイパス術において、血管吻合領域を部分的に安定化させるための心臓安定器(スタビライザ)110は血管吻合領域に接近させて直接安定部材(スタビライズ部)114に術者が設置する際、術者が心臓Hの表面に対して位置の調整を容易に行なうことができる。このため、安定器110の挿入方向に対して心臓Hの表面が傾いている場合であっても、安定部材114を心臓Hの表面に対して角度を変化させることによって、容易に押し付けることができる。
【0098】
したがって、従来、冠状動脈バイパス術において、血管吻合領域を部分的に安定化させるためのスタビライザが血管吻合領域に近接させて直接スラビライズ部(安定部材)に術者が設置するが、内視鏡下で行なう場合、術者が心臓Hの表面での位置の調整等を行なうことができない、といった課題を解決することができる。
【0099】
[付記2]
次に、付記2について図15および図16を用いて説明する。この付記2は、付記1の変形例であって、付記1で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0100】
図15および図16に示すように、付記2では、操作導管124が円筒部材122と並設されている。この操作導管124は、円筒部材122に対して軸方向に沿って摺動可能である。この操作導管124の内側には、ワイヤ126が挿通されている。図16に示すように、ワイヤ126は、操作導管124の内側で交差されている。
【0101】
操作軸固定部材146を操作部116の矢印I方向に移動させると、操作保持部材142と連動して安定部材114が矢印I方向に回動する。また、操作保持部材142を操作部116の矢印II,III方向に移動させると、安定部材114が矢印II,III方向に回動する。
【0102】
なお、操作軸固定部材146の一端には、指標部材146aが固定されている。この指標部材146aによって、術者だけでなく、患者の反対に位置している助手が操作する際に混乱することなく安定部材114の位置および角度を調整することが容易である。
【0103】
[付記3]
次に、付記3について図17を用いて説明する。この付記3は、付記1の変形例であって、付記1で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。付記3に係る安定器110は、付記1の安定器110と安定部材114にさらにクリップ装置が付加されている。
【0104】
図17(A)および図17(B)に示すように、安定部材114には、クリップ(組織保持部材)182が配設されている。このクリップ182は、それ自身のバネ付勢力または、後述する回転軸部材184の回りに配設されたつる巻バネ(図示せず)によって、安定部材114の表面に付勢されている。一方、このクリップ182は、安定部材114の表面に回転軸部材184によって枢支されている。クリップ182の一端には、円筒部材122に沿って配設され、例えば操作部116などの外部より遠隔操作が可能なように、ワイヤ186が連結されている。また、このワイヤ186は、安定部材114の基部114aにも摺動可能に係止されている。すなわち、このクリップ182は、ワイヤ186が引っ張られると、クリップ182が回転軸部材184を支点として回動する。すなわち、安定部材114の表面に対して開く。ワイヤ186の引っ張り力を解除すると、それ自身のバネ付勢力または、後述する回転軸部材184の回りに配設されたつる巻バネの付勢力によって、クリップ182が安定部材114の表面に対して閉じる。
【0105】
なお、この付記3の図17(A)および図17(B)では図示しないが、付記1と同様に安定部材114を回動、回転等させる、ワイヤ186と異なるワイヤ126が固定されていることも好適である。
【0106】
次に、付記3に係る心臓安定器110の作用について説明する。付記1で説明した作用と同一の作用については説明を省略する。
冠状動脈バイパス手術をする際に採取血管BVを安定させた状態にするために、安定部材114付近に採取血管BVの一端を胸部内で位置決めして保持する。この場合、ワイヤ186を引っ張ってクリップ182を回転軸部材184回りに回動させて、クリップ182と安定部材114の表面との間を開ける。そして、ワイヤ186の張力を開放して、安定部材114上に採取血管BVの一端を保持する。
【0107】
以上説明したように、付記3によれば以下の効果が得られる。
【0108】
安定部材114に血管BV等を係止することができるので、吻合作業を行ない易くすることができる。
【0109】
したがって、従来、冠状動脈バイパス術において血管を吻合する際、グラフトを吻合領域に術者が近づけて配置するが、拍動下でバイパス術を行なう場合、配置したグラフトが拍動の影響で吻合部からずれてしまうため、精密な吻合の支障をきたし、吻合時間も長くなるという課題や、内視鏡下で行なう場合はグラフトを鉗子等で配置、固定するため、吻合の際に支障となる、といった課題を解決することができる。
【0110】
[付記4]
次に、付記4について図18を用いて説明する。この付記4は、付記3の変形例であって、付記3で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。付記4に係る安定器110は、付記3の安定器110とクリップ装置の構成が異なる。
【0111】
図18(A)および図18(B)に示すように、クリップ182は、一端が安定部材114の基部114aに固定されている。このクリップ182は、板バネ状である。このクリップ182には、ワイヤ186の一端が固定されている。すなわち、付記4では、付記3で説明した回転軸部材184(図17(A)および図17(B)参照)が除去されている。
【0112】
付記4の作用および効果は付記3と同様であるので、説明を省略する。
【0113】
[付記5]
次に、付記5について図19ないし図21を用いて説明する。この付記5は、付記1の変形例であって、付記1で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。付記5に係る安定器110は、付記1の安定器110と安定部材114の構成が異なる。
【0114】
図19および図20(A)に示すように、付記5に係る安定器110の安定部材114の表面には、送吸気部192が一体的に形成されている。一方、安定部材114の裏面には、心臓Hの表面を吸着する吸引保持部材194が配設されている。
【0115】
図20(A)に示すように、安定部材114の内部、すなわち表面と裏面との間には、空間が設けられている。送吸気部192には、安定部材114の内部に吸引した気体圧を一定に保つための逆止弁192aが形成されている。図20(B)に示すように、使用時には、送吸気部192には、気体圧を変化させるシリンジ(吸引要素)196が接続されている。
【0116】
シリンジ196を送吸気部192に接続して吸引すると、逆止弁192aは、図20(A)に示す逆止弁192aが閉じた状態から、図20(B)および図20(C)に示す開いた状態に変形する。このため、安定部材114内の気体圧が減少する。
【0117】
次に、付記5に係る心臓安定器110の作用について説明する。
【0118】
心臓Hの特定領域を安定器110の安定部材114で押圧して拍動を抑制する。このとき、シリンジ196によって吸引を行なうと、安定部材114内の気体圧が減少して吸引保持部材194が心臓Hの表面に吸着される。
【0119】
一方、吸着された安定部材114を開放するときには、送吸気部192から送気する。そうすると、逆止弁192aが元の状態に戻り、吸引保持部材194の吸着が解除される。
【0120】
したがって、冠状動脈Cの周囲の領域に安定部材114を吸着して、心臓Hの拍動による影響を抑制することができる。
【0121】
なお、この実施の形態では、安定部材114と送吸気部192とが一体であるとして説明したが、図21(A)および図21(B)に示すように、別体であっても良い。例えば、金属材や樹脂材製の安定部材114の表面に、ゴム材などで弾性を備えた送吸気部192が配設されていることも好適である。
【0122】
以上説明したように、付記5によれば、以下の効果が得られる。
【0123】
安定部材114に送吸気部192と吸引保持部材194とが設けられているので、安定部材114を心臓Hの表面に容易に吸着することができ、また、吸着を解除することができる。このため、安定部材114によって、心臓Hの狭い領域の拍動を容易に抑制することができる。
【0124】
したがって、従来、冠状動脈バイパス術においては、血管吻合領域を部分的に安定化させるスタビライザがあるが、吸引源を備えた場合、スラビライズ部の固定用部材とは別に吸引用チューブが存在するために、血管吻合に支障をきたすという課題があり、さらに、内視鏡下においてはポート孔より挿入するため、吸引用チューブがポート孔と干渉し、チューブが折れ曲がる場合があるため、スタビライザが吻合領域から外れてしまい、手技に支障がある、といった課題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る心臓安定器を示し、(A)は安定部材を開いた状態としたときの状態を示す概略的な斜視図、(B)は安定部材を閉じた状態としたときの状態を示す概略的な斜視図。
【図2】第1の実施の形態に係る心臓安定器の先端部を示し、(A)は略U字状に対称的に形成された安定部材を示す概略図、(B)は略V字状に対称的に形成された安定部材を示す概略図、(C)は略U字状に非対称的に形成された安定部材を示す概略図。
【図3】第1の実施の形態に係る心臓安定器を用いて内視鏡下で冠状動脈バイパス手術を行なう状態を示す概略図。
【図4】第1の実施の形態に係る心臓安定器の先端部を示し、(A)は開いた状態の安定部材を示す概略的な斜視図、(B)は安定部材を(A)中の矢印4B側から観察した状態を示す概略図。
【図5】第1の実施の形態に係る心臓安定器の先端部を示し、(A)は閉じた状態の安定部材を示す概略的な斜視図、(B)は安定部材を(A)中の矢印5B側から観察した状態を示す概略図。
【図6】第1の実施の形態に係る心臓安定器の先端部に配置された、略U字状に対称的に形成された安定部材を示す概略図。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る心臓安定器における安定部材を示す概略図。
【図8】第2の実施の形態に係る心臓安定器の先端部を示し、(A)は安定部材を開いた状態としたときの状態を示す概略的な斜視図、(B)は安定部材を閉じた状態としたときの状態を示す概略的な斜視図。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る心臓安定器の先端部を示し、(A)は安定部材を開いた状態としたときの状態を示す概略的な斜視図、(B)は安定部材を開いた状態としたときの状態を示す、(A)を裏面から観察した状態を示す概略的な斜視図、(C)は安定部材を閉じた状態としたときの状態を示す概略的な斜視図。
【図10】付記1に係る心臓安定器を示す概略的な斜視図。
【図11】付記1に係る心臓安定器を示す概略的な側面図。
【図12】付記1に係る心臓安定器を示す概略的な上面図。
【図13】付記1に係る心臓安定器を用いて開胸状態で冠状動脈バイパス手術を行なう状態を示す概略図。
【図14】付記1に係る心臓安定器を用いて内視鏡下で冠状動脈バイパス手術を行なう状態を示す概略図。
【図15】付記2に係る心臓安定器を示す概略的な斜視図。
【図16】付記2に係る心臓安定器を示す概略的な斜視図。
【図17】付記3に係る心臓安定器の先端の安定部材を示し、(A)は安定部材に設けられたクリップで採取血管を挟んだ状態を示す概略的な斜視図、(B)は安定部材にクリップを配置した状態を示す概略的な側面図。
【図18】付記4に係る心臓安定器の先端の安定部材を示し、(A)は安定部材に設けられたクリップで採取血管を挟んだ状態を示す概略的な斜視図、(B)は安定部材にクリップを配置した状態を示す概略的な側面図。
【図19】付記5に係る心臓安定器の先端の、送吸気部および吸引保持部材を有する安定部材を示す概略的な斜視図。
【図20】付記5に係る心臓安定器の先端の、送吸気部および吸引保持部材を有する安定部材を示し、(A)は基部の概略的な断面図、(B)は吸引保持部材を心臓に密着させ、送吸気部からシリンジによって吸引している状態を示す概略的な断面図、(C)は送吸気部からシリンジによって送気して吸引保持部材を心臓から離した状態を示す概略的な断面図。
【図21】付記5に係る心臓安定器の先端の、送吸気部および吸引保持部材を有する安定部材を示し、(A)は基部の概略的な断面図、(B)は送吸気部からシリンジによって送気して吸引保持部材を心臓から離した状態を示す概略的な断面図。
【符号の説明】
【0126】
10…心臓安定器、12…挿入部、14…安定部材、16…操作部、22…円筒部材、32…操作保持部材、34…軸固定部材、42…押圧固定部材、44…押圧可動部材、46…ヒンジ、48…圧縮バネ、52…押圧軸部材




 

 


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