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発明の名称 MRI装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−185547(P2007−185547A)
公開日 平成19年7月26日(2007.7.26)
出願番号 特願2007−109742(P2007−109742)
出願日 平成19年4月18日(2007.4.18)
代理人 【識別番号】100078765
【弁理士】
【氏名又は名称】波多野 久
発明者 宮崎 美津恵
要約 課題
造影剤を投与することなく、非侵襲で、動静脈の分離画像を好適に描出し、データ収集のための撮像時間を大幅に短縮するMRI装置を提供する。

解決手段
MRI装置は、被検体の第1の心時相、第2の心時相を設定する心時相設定部と、前記第1の心時相の第1のスキャンを実行して第1のエコー信号セットを収集し、前記第2の心時相の第2のスキャンを実行して第2のエコー信号セットを収集するイメージング用スキャン手段と、前記第1のエコー信号セットに基づいて第1の画像を生成し、前記第2のエコー信号セットに基づいて第2の画像を生成し、前記第1の画像と前記第2の画像を差分して差分画像を生成する画像生成部と、を備えるものである。
特許請求の範囲
【請求項1】
被検体の第1の心時相、第2の心時相を設定する心時相設定部と、
前記第1の心時相の第1のスキャンを実行して第1のエコー信号セットを収集し、前記第2の心時相の第2のスキャンを実行して第2のエコー信号セットを収集するイメージング用スキャン手段と、
前記第1のエコー信号セットに基づいて第1の画像を生成し、前記第2のエコー信号セットに基づいて第2の画像を生成し、前記第1の画像と前記第2の画像を差分して差分画像を生成する画像生成部と、
を備えることを特徴とするMRI装置。
【請求項2】
被検体の第1の心時相は拡張期に属する時相であり、前記第2の心時相は収縮期に属する時相であることを特徴とする請求項1記載のMRI装置。
【請求項3】
前記第1の3次元スキャン及び第2の3次元スキャンは、FSE法或いはFASE法によることを特徴とする請求項1または2記載のMRI装置。
【請求項4】
前記画像生成部は、前記差分画像に基づいて非造影の血流像を生成することを特徴とする請求項1または2記載のMRI装置。
【請求項5】
前記画像生成部は、前記差分画像を最大値投影処理することを特徴とする請求項1、2または4記載のMRI装置。
【請求項6】
前記被検体の基準時相から相異なる遅延時間それぞれにて準備用スキャンを行い複数組のエコー信号セットを収集する準備用スキャン手段と、この準備用スキャン手段にて収集された複数組のエコー信号セットに基づいて複数の準備画像を生成する準備画像生成手段を更に備え、
前記心時相設定部は、前記複数の準備画像に基づいて前記第1の心時相及び第2の心時相を設定することを特徴とする請求項1または2記載のMRI装置。
【請求項7】
被検体の拡張期において第1の3次元スキャンを実行して第1のエコー信号セットを収集し、前記被検体の収縮期において第2の3次元スキャンを実行して第2のエコー信号セットを収集するイメージング用スキャン手段と、
前記第1のエコー信号セットに基づいて第1の画像を生成し、前記第2のエコー信号セットに基づいて第2の画像を生成し、前記第1の画像と第2の画像に基づいて非造影の血流像を生成する画像生成部と、
を備えることを特徴とするMRI装置。
【請求項8】
被検体の基準時相から第1の遅延時間で開始される第1の3次元スキャンを実行して第1のエコー信号セットを収集し、前記被検体の基準時相から第2の遅延時間で開始される第2の3次元スキャンを実行して第2のエコー信号セットを収集するイメージング用スキャン手段と、
前記第1のエコー信号セットに基づいて第1の画像を生成し、前記第2のエコー信号セットに基づいて第2の画像を生成し、前記第1の画像と第2の画像に基づいて非造影の血流像を生成する画像生成部と、
を備えることを特徴とするMRI装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の磁気共鳴現象に基づいて被検体内部を画像化する磁気共鳴イメージングに関する。とくに、造影剤を使用しなくても、最適な遅延時間のECGゲート(electrocardiogram gating)を掛けて短い撮像時間でエコー信号を収集し、血流を描出するMRアンジオグラフィ用のMRI(磁気共鳴イメージング)装置に関する。
【0002】
なお、ここで用いる「血液(または血流)」は、被検体内を流れる脳髄液や血液(血流)などを代表した「流体」の意味として用いる。
【背景技術】
【0003】
磁気共鳴イメージングは、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをそのラーモア周波数の高周波信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生するMR信号から画像を再構成する撮像法である。
【0004】
この磁気共鳴イメージングの分野において、肺野や腹部の血流像を得る場合、臨床的には、被検体に造影剤を投与して血管造影を行うMRアンジオグラフィが行われつつある。しかし、この造影MRアンジオグラフィ法は、造影剤を投与することから侵襲的な処置が必要で、何よりもまず、患者の精神的、体力的な負担が大きい。また、検査コストも高い。さらに、患者の体質などによっては造影剤を投与できない場合もある。
【0005】
造影剤を投与できない場合、ほかのイメージング法で実施するしかないが、それに代わる手法として、タイム・オブ・フライト(time−of−flight:TOF)法や位相コントラスト(phase contrast:PC)法が知られている。磁気共鳴イメージングにおける流れの効果は、移動するスピンが有する2つの性質のいずれかによって起こる。1つは、スピンが単純に位置を移動させることで、2つ目は、傾斜磁場の中をスピンが移動することによって生じる横磁化の位相シフトに依る。この内、前者の位置移動に基づく手法がTOF法であり、後者の位相シフトに基づく手法が位相コントラスト法である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したTOF法や位相コントラスト法にしても、肺野や腹部のMR像を得る場合であって、大動脈などの大血管の上下(superior−inferior)方向の流れを描出しようとすると、血流方向と垂直に撮像する必要がある。つまり、スライス方向を上下方向にとってアキシャル像を撮影することになり、3D(3次元)画像を得る場合、撮像枚数も多くなり、全体の撮像時間が相当に長くなってしまう。
【0007】
本発明は、このような従来技術の現状を打破するためになされたもので、その目的の1つは、造影剤を投与することなく、非侵襲で、MRA(アンジオグラフィ)像を得ることができ、しかも、撮像時間を大幅に短縮することである。
【0008】
本発明の別の目的は、造影剤を投与することなく、非侵襲で、心臓からポンピングされる血液を好適に描出でき、しかも、この描出に必要なデータ収集のための撮像時間を大幅に短縮することである。
【0009】
また、本発明の更に別の目的は、造影剤を投与することなく、非侵襲で、動静脈を分離した画像を好適に描出でき、しかも、この描出に必要なデータ収集のための撮像時間を大幅に短縮することである。
【0010】
さらに、本発明の更に別の目的は、造影剤を投与することなく、非侵襲で、血管の走行方向の描出能を向上させ、しかも、この描出に必要なデータ収集ための撮像時間を大幅に短縮することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るMRアンジオグラフィの手法は、心臓から拍出されたフレッシュな血液を常にスキャンできるので、「FBI(Fresh Blood Imaging)法」と呼ぶことにする。このFBI法は、具体的には、最適に設定した遅延時間でECG同期を掛け、常に、R波毎に心臓から拍出されたフレッシュで安定した速い流速の血流を捕捉するとともに、1スライスエンコード毎の繰返し時間TRを短めに設定して、静止実質部の縦磁化緩和を敢えて不十分な状態にし、また、必要に応じてIR(反転回復)パルス、脂肪抑制パルスなどを用いて脂肪信号を抑制し、これにより、実質部からの信号値を抑制する3次元スキャンを行って血流を描出する。これにより、造影剤を投与しなくても血管(血流)を確実に描出できる。
【0012】
本発明で用いる3次元スキャンは、被検体のボリューム領域をイメージングするためのスキャンであり、いわゆる3次元フーリエ変換法に基づくスキャンのみならず、2次元フーリエ変換法で複数スライスを撮像するマルチスライス法に基づくスキャンを含む、ものとする。このマルチスライス法で本発明を実施する場合、心時相を表す信号への同期タイミングは各スライスで同一に設定される。
【0013】
とくに、血管の走行方向とほぼ平行な方向に各スライスエンコード毎のデータ収集が行えるようにスライス方向を設定することが望ましい。また、位相エンコード方向を血管の走行方向に合わせることが望ましい。これにより、TOF法や位相コントラスト法のように撮像時間が長くなることもない。ECG同期の遅延時間を変えて例えば2回撮像したデータの差分を演算することで、動静脈を分離したMRA像を提供できる。
【0014】
なお、本発明において言及している「短い繰返し時間TR」は、MRCP(MR Cholangioo Pancreatography)などのT2値の長い部位をイメージングするときの従来法に基づくFASE(Fast Asymmetric SE)法による繰返し時間(5000ms〜8000ms程度)との比較であって、この繰返し時間よりも短い、ことを意味している。この「短い繰返し時間TR」は、静止実質部のスピンの縦磁化の緩和を意図的に不十分な状態に置くことを狙っている。従来法との対比から、本発明における「短い繰返し時間TR」は、4心拍(4R−R)以下に設定される。
【0015】
具体的な手段として、本発明に係るMRI装置の基本構成は、被検体の第1の心時相、第2の心時相を設定する心時相設定部と、前記第1の心時相の第1のスキャンを実行して第1のエコー信号セットを収集し、前記第2の心時相の第2のスキャンを実行して第2のエコー信号セットを収集するイメージング用スキャン手段と、前記第1のエコー信号セットに基づいて第1の画像を生成し、前記第2のエコー信号セットに基づいて第2の画像を生成し、前記第1の画像と前記第2の画像を差分して差分画像を生成する画像生成部と、を備えることを特徴とする。
【0016】
好適には、被検体の第1の心時相は拡張期に属する時相であり、前記第2の心時相は収縮期に属する時相であることを特徴とするものである。また、前記第1の3次元スキャン及び第2の3次元スキャンは、FSE法或いはFASE法によるものである。さらに、前記画像生成部は、前記差分画像に基づいて非造影の血流像を生成するものである。
【0017】
例えば、前記画像生成部は、前記差分画像を最大値投影処理するものである。
【0018】
また、一例として、前記被検体の基準時相から相異なる遅延時間それぞれにて準備用スキャンを行い複数組のエコー信号セットを収集する準備用スキャン手段と、この準備用スキャン手段にて収集された複数組のエコー信号セットに基づいて複数の準備画像を生成する準備画像生成手段を更に備え、前記心時相設定部は、前記複数の準備画像に基づいて前記第1の心時相及び第2の心時相を設定するものである。
【0019】
また、他例として、被検体の拡張期において第1の3次元スキャンを実行して第1のエコー信号セットを収集し、前記被検体の収縮期において第2の3次元スキャンを実行して第2のエコー信号セットを収集するイメージング用スキャン手段と、前記第1のエコー信号セットに基づいて第1の画像を生成し、前記第2のエコー信号セットに基づいて第2の画像を生成し、前記第1の画像と第2の画像に基づいて非造影の血流像を生成する画像生成部と、を備えるものである。
【0020】
一方、被検体の基準時相から第1の遅延時間で開始される第1の3次元スキャンを実行して第1のエコー信号セットを収集し、前記被検体の基準時相から第2の遅延時間で開始される第2の3次元スキャンを実行して第2のエコー信号セットを収集するイメージング用スキャン手段と、前記第1のエコー信号セットに基づいて第1の画像を生成し、前記第2のエコー信号セットに基づいて第2の画像を生成し、前記第1の画像と第2の画像に基づいて非造影の血流像を生成する画像生成部と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るMRI装置によれば、造影剤を投与することなく、非侵襲で、所望の血管のみを確実に描出し、動静脈を分離したMRアンジオグラフィ像を提供し、診断能の向上に寄与することができ、しかも、この描出に必要なデータ収集のための撮像時間を大幅に短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に係るMRI装置の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0023】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態を図1〜図10を参照して説明する。
【0024】
この実施形態にかかるMRI(磁気共鳴イメージング)装置の概略構成を図1に示す。
【0025】
このMRI装置は、被検体Pを載せる寝台部と、静磁場を発生させる静磁場発生部と、静磁場に位置情報を付加するための傾斜磁場発生部と、高周波信号を送受信する送受信部と、システム全体のコントロール及び画像再構成を担う制御・演算部と、被検体Pの心時相を表す信号としてのECG信号を計測する心電計測部とを備えている。
【0026】
静磁場発生部は、例えば超電導方式の磁石1と、この磁石1に電流を供給する静磁場電源2とを備え、被検体Pが遊挿される円筒状の開口部(診断用空間)の軸方向(Z軸方向)に静磁場Hを発生させる。なお、この磁石部にはシムコイル14が設けられている。このシムコイル14には、ホスト計算機6の制御下で、シムコイル電源15から静磁場均一化のための電流が供給される。寝台部は、被検体Pを載せた天板を磁石1の開口部に退避可能に挿入できる。
【0027】
傾斜磁場発生部は、磁石1に組み込まれた傾斜磁場コイルユニット3を備える。この傾斜磁場コイルユニット3は、互いに直交するX、Y及びZ軸方向の傾斜磁場を発生させるための3組(種類)のx,y,zコイル3x〜3zを備える。傾斜磁場発生部はまた、x,y,zコイル3x〜3zに電流を供給する傾斜磁場電源4を備える。この傾斜磁場電源4は、後述するシーケンサ5の制御のもと、x,y,zコイル3x〜3zに傾斜磁場を発生させるためのパルス電流を供給する。
【0028】
傾斜磁場電源4からx,y,zコイル3x〜3zに供給されるパルス電流を制御することにより、物理軸である3軸X,Y,Z方向の傾斜磁場を合成して、互いに直交するスライス方向傾斜磁場Gs、位相エンコード方向傾斜磁場Ge、および読出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場Grの各論理軸方向を任意に設定・変更することができる。スライス方向、位相エンコード方向、および読出し方向の各傾斜磁場Gs,Ge,Grは、静磁場Hに重畳される。
【0029】
送受信部は、磁石1内の撮影空間にて被検体Pの近傍に配設されるRFコイル7と、このコイル7に接続された送信器8T及び受信器8Rとを備える。この送信器8T及び受信器8Rは、後述するシーケンサ5の制御のもとで動作する。送信器8Tは、核磁気共鳴(NMR)を励起させるためのラーモア周波数のRF電流パルスをRFコイル7に供給する。受信器8Rは、RFコイル7が受信したMR信号(高周波信号)を取り込み、これに前置増幅、中間周波変換、位相検波、低周波増幅、フィルタリングなどの各種の信号処理を施した後、A/D変換してMR信号のデジタルデータ(原データ)を生成する。
【0030】
さらに、制御・演算部は、シーケンサ(シーケンスコントローラとも呼ばれる)5、ホスト計算機6、演算ユニット10、記憶ユニット11、表示器12、入力器13、および音声発生器16を備える。この内、ホスト計算機6は、記憶したソフトウエア手順(図示せず)により、シーケンサ5にパルスシーケンス情報を指令するとともに、装置全体の動作を統括する機能を有する。
【0031】
このMRI装置は、予め選択した値の同期タイミング(心時相)に基づく心電同期法に拠るスキャンを行うことを特徴の1つとしている。ホスト計算機6は、図2に示すように、予め同期タイミング(心時相)を決めるための準備用パルスシーケンスを実行する準備用スキャン(以下、ECG−prepスキャンという)、および、その同期タイミングに拠る心電同期でイメージング用パルスシーケンスを実行するイメージング用スキャン(以下、イメージングスキャンという)を、図示しないメインプログラムを実行する中で行う。ECG−prepスキャンの実行ルーチンの一例を図3に、心電同期に基づくイメージングスキャンの実行ルーチンの一例を図7および図8にそれぞれに示す。
【0032】
シーケンサ5は、CPUおよびメモリを備えており、ホスト計算機6から送られてきたパルスシーケンス情報を記憶し、この情報にしたがって傾斜磁場電源4、送信器8T、受信器8Rの動作を制御するとともに、受信器8Rが出力したMR信号のデジタルデータを一旦入力し、これを演算ユニット10に転送するように構成されている。ここで、パルスシーケンス情報とは、一連のパルスシーケンスにしたがって傾斜磁場電源4、送信器8Tおよび受信器8Rを動作させるために必要な全ての情報であり、例えばx,y,zコイル3x〜3zに印加するパルス電流の強度、印加時間、印加タイミングなどに関する情報を含む。
【0033】
このパルスシーケンスとしては、フーリエ変換法を適用したものであれば、2次元(2D)スキャンまたは3次元スキャン(3D)のものであってもよいし、またそのパルス列の形態としては、高速SE法、EPI(Echo Planar Imaging;エコープラナーイメージング)法、FASE(FastAsymmetric SE)法(すなわち、高速SE法にハーフフーリエ法を組み合わせたイメージング法)などが好適である。
【0034】
また、演算ユニット10は、受信器8Rが出力したデジタルデータ(原データ)をシーケンサ5を通して入力し、その内部メモリ上のフーリエ空間(k空間または周波数空間とも呼ばれる)に原データ(生データとも呼ばれる)を配置し、この原データを1組毎に2次元または3次元のフーリエ変換に付して実空間の画像データに再構成する。また演算ユニット10は、画像に関するデータの合成処理や差分演算処理を行うようになっている。この合成処理には、複数フレームの画像データを対応画素毎に加算する処理、複数フレームの画像データ間で対応ピクセル毎に最大値を選択する最大値投影(MIP)処理などが含まれる。また、上記合成処理の別の例として、フーリエ空間上で複数フレームの軸の整合をとって原データのまま1フレームの原データに合成するようにしてもよい。なお、加算処理には、単純加算処理、加算平均処理、重み付け加算処理などが含まれる。
【0035】
記憶ユニット11は、再構成された画像データのみならず、上述の合成処理や差分処理が施された画像データを保管することができる。表示器12は画像を表示する。また入力器13を介して、術者が希望する同期タイミング選択用のパラメータ情報、スキャン条件、パルスシーケンス、画像合成や差分の演算に関する情報をホスト計算機6に入力できる。
【0036】
音声発生器16は、ホスト計算機6から指令があったときに、息止め開始および息止め終了のメッセージを音声として発することができる。
【0037】
さらに、MRI装置の心電計測部は、被検体の体表に付着させてECG信号を電気信号として検出するECGセンサ17と、このセンサ信号にデジタル化処理を含む各種の処理を施してホスト計算機6およびシーケンサ5に出力するECGユニット18とを備える。この心電計測部による計測信号は、ECG−prepスキャンと心電同期のイメージングスキャンとのそれぞれを実行するときにシーケンサ5により用いられる。これにより、心電同期法の同期タイミングを適切に設定でき、この設定した同期タイミングに基づく心電同期のイメージングスキャンを行ってデータ収集できるようになっている。
【0038】
次に、心電同期によるイメージングスキャンのための同期タイミングの決定処理を図3〜図6を参照して説明する。
【0039】
ホスト計算機6は、図示しない所定のメインプログラムを実行している中で、入力器13からの指令に応答して、図3に示す準備用スキャンのECG−prepスキャンを実行開始する。
【0040】
最初に、ホスト計算機6は、ECG−prepスキャン(準備用スキャン)を実行するスキャン条件およびパラメータ情報を入力器13から読み込む(同図ステップS1)。スキャン条件には、スキャンの種類、パルスシーケンス、位相エンコード方向などが含まれる。パラメータ情報には、心電同期の同期タイミング(心時相)を決めるための初期時間T(ここでは、ECG信号中のR波のピーク値からの経過時間)、時間増分に刻み幅Δt、回数カウンタCNTの上限値などが含まれ、これらのパラメータは操作者に任意に設定できる。
【0041】
次いで、ホスト計算機6は、シーケンスの実行回数をカウントする回数カウンタCNTおよび同期タイミングを決めるための時間の増分パラメータTincをクリヤする(CNT=0,Tinc=0:ステップS2)。この後、ホスト計算機6は音声発生器16にメッセージデータを送出して、例えば「息を止めて下さい」といった息止め指令を被検体(患者)に対して行わせる(ステップS3)。この息止めは、ECG−prepスキャン実行中の被検体の体動を抑制する上で実施する方が好ましいが、場合によっては、息止めを実施しない状態でECG−prepスキャンを実行するようにしてもよい。
【0042】
このように準備が整うと、ホスト計算機6はステップS4以降の処理を順次実行する。これにより、心電同期の同期タイミングを変更しながらのスキャン実行に移行する。
【0043】
具体的には、R波のピーク到達時間からの遅延時間TDLが、TDL=T+Tincにより演算される(ステップS4)。次いで、ECGユニット18で信号処理されたECG信号が読み込まれ、その信号中のR波のピーク値が出現したか否かが判断される(ステップS5)。この判断処理はR波出現まで繰り返される。R波が出現すると(ステップS5,YES)、ステップS4で演算したその時点の遅延時間TDLがR波ピーク時間から経過したかどうかが続いて判断される(ステップS6)。この判断処理も遅延時間TDLが経過するまで続けられる。
【0044】
R波のピーク時刻から遅延時間TDLが経過すると(ステップS6,YES)、各回のパルスシーケンスの開始をシーケンサ5に指令する(ステップS7:図4参照)。このパルスシーケンスは好ましくは、後述するイメージング用パルスシーケンスと同一に設定され、例えば、高速SE法にハーフフーリエ法を組み合わせたFASE(Fast Asymmetric SE)法である。勿論、このシーケンスには高速SE法、EPI法など、各種のものを採用できる。この指令に応答し、シーケンサ5は操作者から指令された種類のパルスシーケンスの実行を開始するので、被検体の所望部位の領域がスキャンされる。このECG−Prepスキャンは、例えば、画像データ収集用の本スキャン(イメージングスキャン)が3次元(3D)法の場合、2次元(2D)スキャンで行ってもよいし、その本スキャンの領域に合わせた3次元スキャンで行ってもよい。
【0045】
上記シーケンス実行開始の指令後、回数カウンタCNT=CNT+1の演算が行われ(ステップS8)、さらに、時間の増分パラメータTinc=ΔT・CNTの演算が行われる(ステップS9)。これにより、パルスシーケンスの実行を指令した各回毎に回数カウンタCNTのカウント値が1ずつ増加し、また同期タイミングを調整する増分パラメータTincがそのカウント値に比例して増加する。
【0046】
次いで、各回のパルスシーケンスの実行に必要な予め定めた所定期間(例えば500〜1000msec程度)が経過するまでそのまま待機する(ステップS10)。さらに回数カウンタCNT=予め定めた上限値になったか否かを判断する(ステップS11)。同期タイミングを最適化させるために、遅延時間TDLを各種の時間値に変更しながら、例えば5枚の2次元像を撮影する場合、回数カウンタCNT=5に設定される。回数カウンタCNT=上限値に到達していない場合(ステップS11,NO)、ステップS5の処理に戻って上述した処理が繰り返される。反対に、回数カウンタCNT=上限値に到達した場合(ステップS11,YES)、息止め解除の指令が音声発生器16に出され(ステップS12)、その後の処理はメインプログラムに戻される。息止めの音声メッセージは例えば「息をして結構です」である。
【0047】
上述の処理を順次実行すると、一例として、図4に示すタイミングで準備用のパルスシーケンスが実行される。例えば、初期時間T0=300msec,時間刻みΔT=100msecを指令していたとすると、第1回目のシーケンスに対する遅延時間TDL=300msec、第2回目のそれに対する遅延時間TDL=400msec、第3回目のそれに対する遅延時間TDL=500msec、…といった具合に同期タイミングを決する遅延時間TDLが調整される。このため、息止め指令後の最初のR波がピーク値に達すると、その到達時刻から遅延時間TDL(=T0)後に、例えばFASE法に基づく第1回目のスキャンIMGprep1が所定時間(500〜1000msec)継続し、エコー信号が収集される。このシーケンス継続中に次のR波が出現した場合でも、図3のステップS10の待機処理があるので、このR波出現には何等関与されずに、シーケンスは続けられる。つまり、ある心拍に同期して開始されたシーケンスの実行処理は次の心拍にまたがって続けられ、エコー信号が収集される。
【0048】
そして、回数カウンタCNTが所定値に到達していない場合、ステップS5〜ステップS11の処理が再び実行される。このため、図4の例では、3番目のR波が出現してピーク値に達すると、この到達時点から遅延時間TDL=T+Tinc=400msecが経過した時点で、第2回目のスキャンIMGprep2が所定時間継続し、同様にエコー信号が収集される。このスキャンが終わって次のR波が出現すると、遅延時間TDL=T0+2・Tinc=500msecが経過すると、第3回目のスキャンIMGprep3が所定時間継続し、同様にエコー信号が収集される。さらに、このスキャンが終わって次のR波が出現すると、遅延時間TDL=T+3・Tinc=600msecが経過すると、第4回目のスキャンIMGprep4が所定時間継続し、同様にエコー信号が収集される。このスキャンが所望回数、例えば5回続き、合計5フレーム(枚)の同一断面のエコーデータが収集される。
【0049】
エコーデータは順次、受信器8Rおよびシーケンサ5を経由して演算ユニット10に送られる。演算ユニット10はk空間のエコーデータを2次元フーリエ変換法により実空間の画像データに再構成する。この画像データはMRA像データとして記憶ユニット11に記憶される。ホスト計算機6は、例えば入力器13からの操作信号に応答して、このMRA(アンジオグラフィ)像を順次、シネ(CINE)表示する。
【0050】
このように、心電同期の遅延信号(同期タイミング)をダイナミックに変更した状態でエコーデータを収集・再構成した複数枚のMRA像の表示例を図5(a)〜(e)に示す。これらの図は、2D−FASE法(実効TE(TEeff)=40ms,エコー間隔(ETS)=5ms,ショット数=1,スライス厚(ST)=40mm,スライス枚数(NS)=1,加算枚数(NAQ)=1,マトリクスサイズ=256×256,FOV=40×40cm,実際のスキャン時間=500ms程度)、かつ、位相エンコード方向=図の上下方向(体軸方向)に設定して実験した肺野の画像写真を模写した図である。この画像で目的としているエンティティとしての血流は下行大動脈である。図5において遅延時間TDLはそれぞれ、(a)でTDL=300msec,(b)でTDL=400msec,(c)でTDL=500msec,(d)でTDL=600msec,(e)でTDL=700msec、となっている。
【0051】
これらのシネ表示像を目視観察すれば、大動脈流からのエコー信号が最も強く表れているのは、図5(e)のMRA像である。ほかの(a)〜(d)のMRA像の場合、(e)に比べて、大動脈流の写っている範囲が極く一部または短い範囲であって、拍動に伴う血流の速度が低いなどの要因から、エコー信号の強度が相対的に低く、フローボイド現象に近い状態になっている。つまり、肺野において大動脈流のMRA像を得る場合、この実験の場合には、図5(e)の状態、すなわち遅延時間TDL=700msecが最適となる。これにより、心電同期の同期タイミングは、R波のピーク到達時刻から遅延時間TDL=700msec後の時刻ということが判明する。
【0052】
したがって、操作者は、このように遅延時間TDLをダイナミックに変えて撮像した複数枚のMRA像から最適な画像、すなわち最適な遅延時間TDLを目視判定で決し、この遅延時間のパラメータを引き続き行うイメージングスキャンに反映させる処理を行う。
【0053】
さらに、上述したECG−prepスキャンにおいて、位相エンコード方向を大動脈流の走行方向に沿った方向(体軸方向)に意図的に設定している。これにより、位相エンコード方向をそれ以外の方向に設定した場合に比べて、大動脈流の走行方向(方向性)を欠落または落とさずに、より明瞭に撮像することができ、その描出能に優れている。この理由を以下に述べる。
【0054】
一般に、肺血管や肝臓の血管(門脈)に代表される血流はT時間が若干短い(T=100〜200ms)ことが知られている。このT時間の短めの血流は、T時間が長いCSFや関節液(T>2000ms)に比べて、信号の半値幅が広がることが分かっている。このことは、例えば、文献「R. ToddCons−table and John C. Gore, “The loss of small objects in Variable TE imaging:Implications for FSE, RARE, and EPI", Magnetic Resonance in Medicine 28, 9−24, 1992」に示されている。同文献によると、T時間の異なる物質に対する信号値の広がりは、図6に示すように、“pointspread function"によって表される。図6のグラフは、静磁場=1.5T、TEeff =240ms、エコー間隔(ETS)=12msのときのもので、横軸が位相エンコード方向の画像上の画素数を表し、縦軸が任意単位の信号強度である。これによると、T=2000msのCSFや関節液に比べて、T=200msの血液(動脈)はその半値幅が広がっている。これは、T=200msの血液(動脈)はCSFや関節液よりも、見掛け上、1画素当たりの位相エンコード方向の幅が伸びているのと等価であると言える。したがって、T=200msの血液(動脈)は、CSFや関節液に比べて、画像全体が位相エンコード方向に余計にぼけることを示している。
【0055】
そこで、位相エンコード方向をほぼ血流方向に一致させることで、T時間が短い血液の位相エンコード方向の信号値のピクセル上の広がり(ぼけ)の度合いが、T時間が長いものよりも大きいことを積極的に利用でき、血流方向が強調されるのである。したがって、上述したように、心電同期のための最適なMRA像(すなわち最適な遅延時間)を選択するときに、その選択がより容易化される。
【0056】
次に、この実施形態のイメージングスキャンの動作を図7〜図10を参照して説明する。
【0057】
ホスト計算機6は、図示しない所定のメインプログラムを実行し、その一環として、入力器13からの操作情報に応答して図7に示す処理を実行する。
【0058】
これを詳述すると、ホスト計算機6は、最初に、前述したECG−prepスキャンを通して操作者が決めた最適な遅延時間TDLを例えば入力器13を介して入力する(ステップS20)。次いで、ホスト計算機6は操作者が入力器13から指定したスキャン条件(位相エンコードの方向、画像サイズ、スキャン回数、スキャン間の待機時間、スキャン部位に応じたパルスシーケンスなど)および画像処理法の情報(加算処理か最大値投影(MIP)処理かなど。加算処理の場合には、単純加算、加算平均処理、重み付け加算処理のいずれかなど)を入力し、遅延時間TDLを含むそれらの情報を制御データに処理し、その制御データをシーケンサ5および演算ユニット10に出力する(ステップS21)。
【0059】
次いで、スキャン前の準備完了の通知があったと判断できると(ステップS22)、ステップS23で息止め開始の指令を音声発生器14に出力する(ステップS23)。これにより、音声発生器14は、ECG−prepスキャン時と同様に「息を止めて下さい」といった内容の音声メッセージを発するから、これを聞いた患者は息を止めることになる(図9参照)。
【0060】
この後、ホスト計算機6はシーケンサ5にイメージングスキャン開始を指令する(ステップS24)。
【0061】
シーケンサ5は、イメージングスキャン開始の指令を受けると(ステップS24−1)、ECG信号の読み込みを開始し(ステップS24−2)、ECG信号におけるR波(参照波形)のピーク値の所定n回目の出現を、そのピーク値に同期させたECGトリガ信号から判断する(ステップS24−3)。ここで、R波の出現をn回(例えば2回)待つのは、確実に息止めに移行した時期を見計らうためである。所定n回目のR波が出現すると、設定した遅延時間TDLだけ待機する処理を行う(ステップS24−4)。この遅延時間TDLは、前述したように、ECG−prepスキャンにより対象とする血流や組織を撮像する上で最もエコー信号の強度が高くなり、そのエンティティの描出能に優れた値に最適化されている。
【0062】
この最適な遅延時間TDLが経過した時点が最適な心電同期タイミングであるとして、シーケンサ5はイメージングスキャンを実行する(ステップS24−5)。具体的には、既に記憶していたパルスシーケンス情報に応じて送信器8Tおよび傾斜磁場電源4を駆動し、例えば3次元FASE法のパルスシーケンスに基づく1回目のスキャンが図9に示す如く心電同期で実行される(同図において位相エンコード方向傾斜磁場の図示は省略されている)。このとき、位相エンコード方向PEは指定されている方向、例えば図10に示すように、血流(動脈AR,静脈VE)の流れる方向にほぼ一致させる。また、このパルスシーケンスにおけるエコー間隔は5msec程度に短縮される。これにより、最初のスライスエンコード量SE1の元、約600msec程度のスキャン時間で、例えば図10に示す如く下腹部に設定した3次元撮像領域Rimaからエコー信号が収集される。
【0063】
この1回目のイメージングスキャンが終了すると、シーケンサ5は、最終のイメージングスキャンが完了したかどうかを判断し(ステップS24−6)、この判断がNO(最終スキャンが済んでいない)の場合、ECG信号を監視しながら、例えばイメージングスキャンに使用したR波から例えば2心拍(2R−R)と、短めに設定した期間が経過するまで待機し、静止している実質部のスピンの縦磁化の回復を積極的に抑制する(ステップS24−7)。つまり、この待機期間が繰返し時間TRとなる。
【0064】
この繰返し時間TRは、MRCP(Magnetic Risonance Cholangiopancreatography)などによりイメージングするときのFASE法による繰返し時間(5000ms〜8000ms程度)に比べて、短く設定される。これにより、静止実質部のスピンの縦磁化の緩和を意図的に不十分にすることができる。従来法との対比から、この繰返し時間TRは4心拍(4R−R)以下に設定される。
【0065】
このように例えば2R−R分に相当する期間待って、例えば3個目のR波が出現すると(ステップS24−7,YES)、シーケンサ5は前述したステップS24−4にその処理を戻す。これにより、その3個目のR波ピーク値に同期したECGトリガ信号から指定遅延時間TDLが経過した時点で次のスライスエンコード量SE2に応じて2回目のイメージングスキャンが前述と同様に実行され、3次元撮像領域Rimaからエコー信号が収集される(ステップS24−4,5)。以下同様に、最終のスライスエンコード量SEn(例えばn=8)までエコー信号が収集される。
【0066】
スライスエンコード量SEnでの最終回のイメージングスキャンが終わると、ステップS24−6における判断がYESとなり、シーケンサ5からホスト計算機6にイメージングスキャンの完了通知が出力される(ステップS24−8)。これにより、処理がホスト計算機6に戻される。
【0067】
ホスト計算機6は、シーケンサ5からのスキャン完了通知を受けると(ステップS25)、息止め解除の指令を音声発生器16に出力する(ステップS26)。そこで、音声発生器16は、例えば「息をして結構です」といった音声メッセージを患者に向けて発し、息止め期間が終わる(図9参照)。
【0068】
したがって、図9に模式的に示す如く、例えば2心拍(2R−R)毎に心電同期によるイメージングスキャンが例えば3D−FASE法に基づきn回(例えば8回)実行される。
【0069】
患者Pから発生したエコー信号は、各回のスキャン毎に、RFコイル7で受信され、受信器8Rに送られる。受信器8Rはエコー信号に各種の前処理を施し、デジタル量に変換する。このデジタル量のエコーデータはシーケンサ5を通して演算ユニット10に送られ、メモリで形成される3次元k空間に配置される。ハーフフーリエ法を採用していることから、収集しなかったk空間のデータは演算により求められ、k空間に埋められる。このようにk空間全部にエコーデータが配置されると、3次元フーリエ変換が実行され、エコーデータが実空間の画像データに変換される。この画像データはさらにMIP処理により2次元断層像データに変換される。この断層像データは記憶ユニット11に格納されるとともに、表示器12に表示される。
【0070】
本発明者は、上述した構成の効果を確認するため、腹部の大動脈を描出したコロナル像の撮像を行った。静磁場は0.5Tとし、使用したパルスシーケンスは3D−FASE法のシーケンス(TEeff=24.8ms,ETS=6.2ms)で、256×256のマトリクスを、3心拍(3R−R)毎に8スライスエンコード量で実行し、腹部のコロナル像をMIP(Maximum Intencity Projection:最大値投影)処理により得た。位相エンコード方向は上下(患者の体軸方向)に設定した。ECG遅延時間は600msとした。全体の撮像時間は約23秒で、1回息止めで行った。この結果、優れた血管描出能を確認できた。
【0071】
このように、1スライスエンコード毎の繰返し時間TRが2心拍(2R−R)や3心拍(3R−R)といった短めに設定することで、静止実質部の縦磁化緩和を積極的に不十分にして、実質部からの信号値を抑制できる。
【0072】
しかも、ECG同期によって1心拍毎に流れてくる流速の比較的速い血液を描出できる。スライスエンコード毎に、血流が安定した拡張期にスキャンを実行させる最適な遅延時間TDLに拠る心電同期法であるので、血流を確実に捕捉でき、かつ、心臓から吐出されたフレッシュな血液を常にスキャンできる。本発明者は、このMRアンジオグラフィの手法を「FBI(Fresh Blood Imaging)法」と名付けた。
【0073】
R波出現の直後に発生する乱流的な時間帯を回避し、血流状態が比較的安定している時間帯を選択してスキャンできる。これにより、乱流的な血流の影響を排除でき、安定した血流状態でのエコー信号をk空間の位相エンコード方向の中心域に配置して、再構成画像のコントラストを高めることはできる。
【0074】
したがって、血流の描出能に優れたMRアンジオグラフィを提供できる。
【0075】
また、繰返し時間TRおよびエコー間隔を短く設定するとともに、位相エンコード方向を血管走行方向にほぼ一致させ、かつ、スライス方向を患者の冠状方向の前後(前から背中に抜ける)にとるので、TOF法などのような血流と垂直に撮影する手法と比較して、全体のスキャン時間が短くなる。さらに、スライス方向の撮像範囲(長さ)が短くなり、スライスエンコードの印加回数が少なくて済むので、全体の撮像時間が従来のTOF法や位相エンコード法に比べて大幅に短縮される。これにより、患者の負担も少なく、患者スループットも上がる。
【0076】
これに付随して、全体の撮像(複数回のイメージングスキャン)が1回の息止め可能期間内に終わることができるから、患者の負担も著しく少なくなる。
【0077】
さらに、造影剤を投与しなくても済むので、非侵襲に撮像でき、この点からも患者の精神的、体力的な負担が著しく軽くなる。同時に、造影効果のタイミングを計る必要があるなど、造影法固有の煩わしさからも解放されるとともに、造影法と違って、必要に応じて繰返し撮像が可能になる。
【0078】
さらに、位相エンコード方向を血管の走行方向と一致又は略一致させているので、ピクセルのぼけ(blurring)を積極的に利用でき、これにより、血管の走行方向の描出能にも優れている。撮像部位の血管走行方向応じて位相エンコード方向を変えることで、多様な部位に容易に対処できる。
【0079】
また、高速SE系のパルスシーケンスを使用しているので、サスセプタビリティや形態の歪みの点での優位性も当然に享受することができる。
【0080】
さらに、心電同期の同期タイミングが予め最適化されるから、撮像のやり直しを行う必要も殆ど無くなり、操作者の操作上の負担も軽減するとともに、患者スループットの向上も可能になり、さらに患者の負担も軽減または抑制される。
【0081】
さらに、上述した実施形態の場合、1回の息止め期間に全部のイメージングスキャンを終えるようにしている。このため、肺などの周期的運動による体動アーチファクトの発生を抑制できるとともに、複数回にわたって息止め撮像をするときの患者の体自体の位置ずれに因る体動アーチファクトの発生も合わせて低減できる。これにより、アーチファクトのより少ない高品質の画像を提供できる。
【0082】
ところで、本実施形態によれば、位相エンコード方向を変えて収集したエコーデータの複数枚の画像から新規な合成画像を得ることができる。この合成画像はエンコード方向の変更制御に拠って、とくに、T時間の短めな血流の描出能に優れている。
【0083】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態を図11および図12に基づき説明する。この実施形態のMRI装置は、上述した実施形態の構成を更に展開したもので、ECG同期の遅延時間を変えて撮像し、この撮像による複数のMRA(アンジオグラフィ)原画像を相互に差分することで特定の血管のみを描出することを特徴とする。
【0084】
なお、本実施形態のハード構成は第1の実施形態で説明したものと同一または同等である。
【0085】
図11に概略示す如く、ホスト計算機6は、例えば大動脈などの特定血管を描出する指令が出されると(ステップS31)、シーケンサ5にECG遅延時間TDL=α1(例えば100ms)とTDL=α2(≠α1:例えば500ms)とのイメージングスキャンを指令する(ステップS32,S33)。この複数種の遅延時間TDLはその値が異なっていれば適宜な値に設定でき、描出対象の血管の種類に応じて、ECG−prepスキャンなどにより予め決めて記憶していてもよいし、その都度、撮像条件の一部としてオペレータに入力させるようにしてもよい。
【0086】
この複数種の遅延時間TDLそれぞれに基づき複数回撮像された原データは、前述と同様に、演算ユニット10に格納されて画像再構成演算が実施される(ステップS34)。次に、ホスト計算機6は、演算ユニット10に、再構成された複数組の画像データ同士でのピクセル毎の重み付け差分演算を指令する(ステップ35)。
【0087】
これにより、一例として図12に模式的に示すように、例えばECG遅延時間TDL=100msの3次元画像データの組と、TDL=500msの3次元画像データの組との間で重み付け差分演算がなされる。同図(a)に示すように、ECG遅延時間TDL=100msが短いと、パンプ(拍出)された血液が乱流であるためフローボイドになり、動脈ARの信号値が殆ど零となって(実際の画像写真では黒く表される)、静脈VEの信号のみが収集される。これに対して、同図 (b)に示すように、ECG遅延時間TDL=500msと適宜な値である場合、動脈ARおよび静脈VEの信号が共に適宜な強さで収集される。したがって、同図(a),(b)の画像データをピクセル毎に相互に重み付け差分することで、同図(c)に示す如く動脈ARのみを描出する3次元の画像データを得る。同図の場合、同図(a),(b)の画像データに対して、「(b)−k・(a)」の重み付け係数kを用いた差分演算が実施される。重み付け係数kは、静脈VEの画像データが差分演算によって良好に相殺されるように決められている。
【0088】
次いで、ホスト計算機6は演算ユニット10に対し、差分された画像データにMIP処理を指令し(ステップS36)、次いで、それを表示させる(ステップS37)。これにより、動脈ARを好適に描出したMRA像が提供される。
【0089】
これにより、前述した第1の実施形態と同等の作用効果を得ることができ、加えて、所望の血管のみを確実に描出できるから、とくに動静脈を分離したMRA像を提供して診断能の向上に寄与することができる。
【0090】
なお、本発明における上述した差分演算は、ECG遅延時間が異なる2組の3次元原データ(k空間データ)同士で差分演算を行い、その後に、再構成/MIP(Maximum Intencity Projection:最大値投影)処理を行うようにしてもよい。
【0091】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態を図13に基づき説明する。
【0092】
この実施形態のMRI装置は、心電同期法によるイメージングスキャンの別の例に関し、とくにMTパルスの印加に特徴を有する。本発明に拠るFBI法に関しては、前述したFBI法独特の設定および構成を継承している。
【0093】
ハードウエア構成およびイメージング処理は前述した第1又は第2の実施形態と同一または同様である。
【0094】
本実施形態では、ECG同期法の遅延時間TDL(同期タイミング)がECG−prepスキャンにより収集される画像を用いて最適値に設定された後、図13に示すイメージングスキャンが前述と同様の手順でシーケンサ5により指令される。このイメージングスキャンには息止め法も併用される。
【0095】
図13に示すパルスシーケンスの列は、各列毎に、ECG信号のR波に所定遅延時間TDLをもって同期する。各ショット(RF励起)毎のパルスシーケンスは、最初に印加される事前シーケンスSQpreと、これに続くデータ収集シーケンスSQacqから成る。
【0096】
事前シーケンスSQpreは、MT効果を生じさせるMTパルス列PMTと、このMTパルス列PMTの印加後に印加する傾斜磁場スポイラーパルスSP,SP,SPとを含む。MTパルス列PMTは、MTパルスとして順次印加する複数個の励起用のRFパルスP,P,P,…,Pと、これらのMTパルスと並行して印加するスライス用傾斜磁場パルスGSとから成る。
【0097】
スライス用傾斜磁場パルスGの印加強度=GS1は、MTパルスの印加が、目的とする撮像領域に対してはオフ・レゾナンスなRF励起となるように設定される。一例として、このスライス用傾斜磁場パルスGSに拠る選択領域が、撮像領域(このときGS=G(GS1)とは異なるギャップレスまたはギャップ有りの位置になるように設定されている。
【0098】
各MTパルスP(P,P,…,P)は、一例としてSINC関数で形成され、このパルス印加に伴うスピンのフリップ角FA=例えば90°になるように強度設定されている。MTパルスP,P,P,…,Pの総個数は一例として10個に設定されている。
【0099】
つまり、本実施形態では、大きなフリップ角度FA(例えば500°〜1000°)のMTパルスを1個、スライス選択で印加する従来の構成に代えて、このMTパルスを複数個に分割して順次、印加するMTパルス列の構成を採る。
【0100】
各MTパルスP(P,P,…,P)に与えられるフリップ角度FAは、MTパルス列全体で所望のMT効果を引き起こせるように分割した値(好適な例としては90°〜100°)であるとともに、その個数もMTパルス列全体のMT効果および撮像時間との兼ね合いによって適宜な数(5個〜10個)に決められる。この分割された個々のMTパルスの印加時間は、1300μsec程度と、従来のスライス選択MTパルスよりも、分割した分だけ、短くなっている。
【0101】
さらに、MTパルス列における分割化MTパルス間の時間間隔Δtは、MTパルス印加領域の実質部の水/脂肪のMT効果を最適化できる値に設定されている。この時間間隔Δtは測定部位に拠っても異なり、また、場合によってはΔt=0に設定することもできる。
【0102】
一方、スライス方向、読出し方向、および位相エンコード方向の3方向に入れた傾斜磁場スポイラーパルスSP, SP, SPは、事前シーケンスSQpreにおけるエンドスポイラとして使用される。このため、傾斜磁場スポイラーパルスSP, SP, SPのそれぞれは、複数個の分割化MTパルス印加後においてスピン位相を各方向毎に分散させ、事前シーケンスとデータ収集シーケンスとの間でスピン位相の干渉を排除し、疑似エコーの発生を防止するようにしている。なお、このスポイラーパルスは任意の1方向または2方向のみに印加するようにしてもよい。
【0103】
データ収集シーケンスSQacqは、前述した図9のものと同一に形成されている。
【0104】
このように、事前シーケンスSQpreにおいて、分割された複数個のMTパルスP,…,Pを使用することで、撮像領域の実質部(静止部)からのエコー信号はMT効果で低減し、かつ、この撮像領域に流入する血流(動脈および/または静脈)に生じるMT効果が緩和(低減)する。つまり、複数個に分割された短いMTパルスに拠って、流れている又はタンブリング(tumbling)している血流の見掛けの縦緩和T1 時間が短くなって、MT効果の効き方が低減する一方で、実質部(静止部)には複数の分割MTパルスの和として働いた分の信号値低減効果があるので、撮像領域への流入血流(血液)と実質部との間の画像コントラストが従来の1個のMTパルス(印加時間が長く、フリップ角が大きい)を使ったMT効果よりも格段に向上する。
【0105】
したがって、本実施形態によれば、前述したFBI法に基づく作用効果に加え、アーチファクトが少なく、流入血流/実質部間の画像コントラストが従来のMTパルスを使用した場合よりも格段に改善されたMRA像を提供することができる。
【0106】
なお、複数の分割化MTパルスを印加する手法は図13記載のものに限らず、図14および図15のように変形して実施することもできる。
【0107】
図14に示す印加法によれば、複数個の分割化MTパルスの印加時にスライス用傾斜磁場Gのパルスも複数個印加する構成に代えて、複数個の分割化MTパルスを印加している間、スライス用傾斜磁場Gのパルス1個が、連続して印加される。これにより、MTパルス列PMTの印加に必要な時間が短かくて済み、全体の撮像時間も短縮させることができる。また、図15に示すMTパルスの印加法の場合、傾斜磁場パルスはいずれの方向にも印加されず、分割化MTパルスが単独で印加される。これにより、複数の分割化MTパルス空間非選択的に印加される。このため、分割化MTパルスは広い領域にわたって印加され、スライスやスラブに限定されない。なお、図14および図15において、読出し方向および位相エンコード方向の傾斜磁場軸の図示は省略している。
【0108】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態を図16および図17を参照して説明する。
【0109】
この実施形態に係るMRI装置は、前述したECG同期法に呼吸同期を併用することを特徴とする。
【0110】
このため、MRI装置は、図16に示すように、被検体の胸部に当接され且つ胸郭運動に比例する信号を検知する呼吸センサ(電極)19と、このセンサ19の検知信号から呼吸曲線データを演算し、被検体の呼吸周期の所望期間(例えば呼気期間)に同期させた同期信号を出力する呼吸同期ユニット20とを付加している。なお、呼吸センサおよび呼吸同期ユニットは、そのほかの構成、例えば、腹筋の運動を光学的な変量として検知することで呼吸周期を検出する構成であってもよいし、呼吸に伴うガス流を回転翼で検知する構成を用いた装置であってもよい。
【0111】
呼吸同期ユニット20が出力した呼吸同期信号はシーケンサ5に送出される。シーケンサ5は、ECG信号および呼吸同期信号の両方を用いて、前述した各実施形態に記載のイメージングスキャンを実行する。このMRI装置のそのほかの構成は前述したものと同一である。
【0112】
シーケンサ5は、図17に示す如く、呼吸運動の例えば呼気期間の開始から所定遅延時間Tの経過を監視する。そして、この遅延時間Tが経過すると、その後に発生するECG信号のR波からの遅延時間TDLが経過するタイミングを監視する。このタイミングが到来すると、前述したように、各スライスエンコード量毎のスキャンを実行する。
【0113】
このようにして、ECG同期法と呼吸同期法とを併用したFBI法に基づく3次元スキャンを実行できる。このため、前述したFBI法に拠る様々な作用効果に加え、被検体は息止めが不要になるので、被検体の負担が緩和された撮像になる。また、息止め指令に伴うオペレータの操作上の負担も軽減される。
【0114】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態を図18〜図20を参照して説明する。
【0115】
この実施形態は、各種の試薬を被検体に投与し、その試薬の造影効果を、又は、その試薬に刺激された対象の機能をイメージングすることを特徴とする。
【0116】
本発明で用いる試薬は、従来から用いられているGd−DTPAなどのMR造影剤ではなく、生理食塩水、ブドウ糖などの注射薬、及び、酢酸を含む飲料剤、すなわち経口投与型の試薬である。前者の注射薬を用いた場合、その造影効果により画像化がなされる。後者の飲料剤としては、患者が飲み易いように酢酸に他の成分を混合した飲料剤が好適である。
【0117】
この試薬投与を組み込んだイメージング法の基本的なシーケンスおよび画像生成の流れの一例を図18に示す。このシーケンスは、ホスト計算機6の制御のもと、シーケンサ5および演算ユニット10により実行される。このシーケンスに関わるスキャンの実行および画像生成に関わるデータ処理は、前述した実施形態記載のものと同一または同等である。
【0118】
最初に前述したECG−prepスキャンが行われ、心電同期に最適な遅延時間TDHを求められる。この後、試薬投与前の心電同期イメージングスキャン(1)が前述したFBI法に基づいて実施される。このイメージングスキャン(1)には息止めが指令される。
【0119】
次いで、試薬が被検体に投与される。この試薬が生理食塩水又はブドウ糖のときには、一例として、注射により100cc程度、投与される。試薬が酢酸を含む飲料剤であるときには一例として、10cc程度、経口投与される。この投与の後、適宜な時間、待機する。この後、試薬投与後の心電同期イメージングスキャン(2)が前述したFBI法に基づいて同様に実施される。このイメージングスキャン(1)には息止め法が併用される。
【0120】
この2回のイメージングスキャンに用いられるパルスシーケンスは、共に、前述したT2値のblurringによる強調効果が得られるシーケンス、例えばFSE法、FASE法、EPI法などに基づく3次元スキャン法が好適である。
【0121】
なお、試薬を投与して状態でTOF法やPS法によりイメージングを行う構成も可能である。
【0122】
試薬として生理食塩水又はブドウ糖を注射投与したときには、血液のT2値が上がり、つまり、T2緩和時間が長くなって、造影効果が発揮される。この結果、血液から検出するエコー信号の強度が上がり、SNRが向上する。一方、試薬として、酢酸を含む飲料剤を用いた場合、投与された飲料剤中の酢酸成分が血管系、とくに門脈を刺激し(反射)、血管を拡張させる。この結果、血流量が増え、血流から検出するエコー信号の強度が上がり、SNRが向上する。
【0123】
これらのイメージングスキャンで発生したエコー信号はそれぞれ受信器8R、シーケンサ5を介して演算ユニット10に収集され、3次元画像データとして再構成される(図18、ステップS51a,S51b、S52a,S52b)。この後、2組の3次元画像データは、演算ユニット10により、一例として、互いの画素毎の差分処理に付される(ステップS53)。次いで、この差分結果のデータはMIP処理され後、表示及び格納される(ステップS54、S55)。
【0124】
一方、図19に、試薬投与後にダイナミックスキャンを行うときのシーケンスの流れを示す。試薬を投与した後、または、投与を開始した後、一定時間毎にボリューム領域の3次元スキャンにより撮像を行い、試薬に関わる体内での時間変化データを特定する。この3次元スキャンには、3次元フーリエ変換法に基づくFBI法のパルスシーケンスが、または、2次元フーリエ変換法に基づくFBI法のマルチスライス法(スライス毎の心電同期遅延時間が同じ)が適用される。
【0125】
本発明者は、この試薬投与をFBI法に適用して実際の実験でその効果を確認した。1つの実験は、生理食塩水を約150cc注射投与し、その前後の肺野の画像を1.5T(静磁場)のMRI装置でイメージングし、それらを比較した。この実験に用いたパルスシーケンスは3D―FASE法のシーケンスであり、そのイメージングパラメータは、TEeff=60ms,TR=3R−R,TI=180ms,マトリクスサイズ=256×256,ETS=5ms,FOV=37cm×37cm、解像度=1.4mm(RO)×1.4mm(PE)/2mm(slice)である。これにより、肺動脈の明瞭な信号強度差と細かい血管の描出能の向上を確認した。これは、水成分が血管内に投与されたことで、T2値のblurringの影響が減少したことによると考えられ、血管がシャープに描出できた。
【0126】
別の実験は、酢酸約20ccを経口投与し、その前後の胸腹部の画像を0.5T(静磁場)のMRI装置でイメージングし、それらを比較した。この実験に用いたパルスシーケンスは、3D―FASE法のシーケンスであり、そのイメージングパラメータは、TEff=62ms,TR=3R−R,TI=140ms,マトリクスサイズ=256×256,ETS=6.2ms,FOV=37cm×37cm、解像度=1.4mm(RO)×1.4mm(PE)/2mm(slice)である。図20(a),(b)にそれらの画像を手で模式的に書き写して示す。図20(a)は酢酸投与前の模写画像で、図20(b)は酢酸投与後の模写画像である。これらを比較すれば分かるように、投与後の画像は、投与前のものに比較して、血管の顕著な信号差と脈間系の描出能が大幅に向上していることが確認された。これは、前述したように、酢酸成分が門脈を刺激したことによるものである。また、この刺激により、胃部の血管までも描出された。このように、投与する刺激物(試薬)により血管の機能を測定できることが分かった。
【0127】
とくに、図20(b)の投与後の画像には、図20(a)の投与前の画像には全く現れていなかった、非常に細い血管Bthinまで確認できた。MR造影剤Gd−DTPAを投与するMTアンジオの場合、側副血行路(collateralvessels)などの細い血管は、造影効果の時間変化に依存しない。このため、血管に狭窄などがあって側副血行路ができた場合、そのような血行路を造影アンジオでは描出できない。これに対し、本発明の酢酸投与を行うFBI法のイメージングによれば、かかる側副血行路も描出できるものと期待できる。
【0128】
従来、BOLD(Blood Oxygenation Level Dependent)法のように、T2(見かけのT2値)の変化に基づいて機能MRIを行う方法が知られてはいた。しかし、この方法は血管の機能を画像として直接観測することができるイメージング法ではなかった。本発明によって、そのような直接観察ができる。
【0129】
また、このように酢酸を含む試薬を用いることで、血管の機能を画像対象とすることができる。今まで描出できなかった血管機能障害や血管疾患の患者の血管機能の変化をも画像化することができる。
【0130】
また、上述した試薬投与法の1つとして、血管疾患部位をイメージングする際、血管拡張剤や血圧コントロール試薬を、本発明のよる試薬として用いることもできる。これにより、静脈瘤などの患者に対する試薬投与前後の機能MRAや狭窄などに因り側副血行路などがある場合の脈間網の描出を行うことができる。
【0131】
ところで、Gd−DTPA投与のCE−MRA法の場合、狭窄が過小評価されることが報告されている(日磁医誌17:4;115−124,1995)。このような過小評価を回避するためのイメージング法として、本発明のFBI法を用いることができる。つまり、生理食塩水を投与した状態で単純にFBI法に基づくイメージングを行うようにしてもよい。これにより、生理食塩水が造影剤として機能し、血液のT2値を若干長くし、T2値のblurringが低減される。この結果、狭窄が過小評価されるという事態を極力排除することができる。
【0132】
なお、上記実施形態は、試薬を用いたイメージング法をFBI法で実施する構成であるが、この構成において、呼吸同期を併用することもできる。
【0133】
また、本発明では、前述した3次元スキャン用のパルスシーケンスにおいて、図21に示す如くイメージング用のデータ収集シーケンスを実行する前に、撮像領域の脂肪からのMR信号の収集を抑えるため、反転回復IRパルス及び/又は脂肪抑制パルスFsatを印加するようにしてもよい。
【0134】
本実施形態の説明は以上の通りであるが、本発明はそのような実施形態記載の構成に限定されるものではなく、当業者においては、特許請求の範囲に記載の要旨を逸脱しない範囲で適宜に変更、変形可能なものであり、それらの構成も本発明に含まれる。
【0135】
本発明のMRアンジオグラフィによれば、被検体の心時相を表す信号を収集し、1スライスエンコード毎に3次元スキャン用のパルスシーケンスを被検体の撮像領域に対して参照波形に同期した状態で実行するので、造影剤を投与することなく、非侵襲で、血管走行方向の描出能の高いMRA像を提供できる。しかも、パルスシーケンスに繰返し時間を短く設定したRF励起パルスを含め、位相エンコード方向を血流の走行方向にほぼ合わせた方向に設定し、さらにスライス方向をこれに直交する例えば被検体の前後方向にとることで、血流方向にほぼ平行にスライスエンコード毎のデータ収集を行うことができるので、撮像時間を大幅に短縮することができる。加えて、動静脈を分離した画像を好適に描出できる。
【0136】
また、上述の手法を血液の造影効果を助長したり血管を刺激する試薬と共に実行することで、血流像のS/Nを向上させるとともに、血管の機能を直接画像化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】本発明の実施形態に係るMRI装置の構成の一例を示す機能ブロック図。
【図2】実施形態におけるECG−prepスキャンと心電同期法に基づくイメージングスキャンの時間的前後関係を説明する図。
【図3】ホスト計算機が実行するECG−prepスキャンの手順を例示する概略フローチャート。
【図4】ECG−prepスキャンの一例を示すタイミングチャート。
【図5】ECG−prepスキャンにより得られた、遅延時間をダイナミックに変化させたときの肺野のMRA像を模式的に写生した図。
【図6】位相エンコード方向の信号値の広がりを説明する図。
【図7】ホスト計算機が実行するイメージングスキャンの制御例を示す概略フローチャート。
【図8】シーケンサが実行するイメージングスキャンの制御例を示す概略フローチャート。
【図9】第1の実施形態における心電同期法に基づくイメージングスキャンのタイミングを示す粗いタイミングチャート。
【図10】3次元撮像領域と各エンコード方向との位置関係を説明する図。
【図11】第2の実施形態におけるイメージングキャンの処理の概要を示す粗いフローチャート。
【図12】第2の実施形態に係る重み付け差分演算を説明する図。
【図13】本発明の第3の実施形態における心電同期法に基づくイメージングスキャンのタイミングを示す粗いタイミングチャート。
【図14】分割化MTパルスの別の印加法を示す部分的なタイミングチャート。
【図15】分割化MTパルスの更に別の印加法を示す部分的なタイミングチャート。
【図16】本発明の第4の実施形態に係るMRI装置の構成の一例を示す機能ブロック図。
【図17】第4の実施形態における心電同期法および呼吸同期法を併用イメージングスキャンのタイミングを示す粗いタイミングチャート。
【図18】本発明の第5の実施形態におけるイメージング手順および収集データ処理の概要を説明する図。
【図19】別の実施形態におけるイメージング手順の概要を説明する図。
【図20】第5の実施形態における実験例を模写して示す図。
【図21】本発明のパルスシーケンスの別の例を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
【0138】
1 磁石
2 静磁場電源
3 傾斜磁場コイルユニット
4 傾斜磁場電源
5 シーケンサ
6 ホスト計算機
7 RFコイル
8T 送信器
8R 受信器
10 演算ユニット
11 記憶ユニット
12 表示器
13 入力器
16 音声発生器
17 ECGセンサ
18 ECGユニット
19 呼吸センサ
20 呼吸同期ユニット




 

 


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