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発明の名称 甲殻類用保存剤及び甲殻類の保存方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−20566(P2007−20566A)
公開日 平成19年2月1日(2007.2.1)
出願番号 特願2006−163941(P2006−163941)
出願日 平成18年6月13日(2006.6.13)
代理人 【識別番号】100082669
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 賢三
発明者 樋口 信行
要約 課題
従来から海老類の保存用として使用される亜硫酸化合物に代えて、食品又は食品添加物として既知の有機素材を利用し、甲殻類の外観色目や旨味の劣化を防止すると共に、異味や異臭の発生も抑制できる、衛生上でも安全な甲殻類用保存剤を提供する。

解決手段
本発明の甲殻類用保存剤は、有効量のアスコルビン酸化合物からなる第1成分と、該第1成分の含有量に対して等量未満の有機多塩基酸化合物、及び該第1成分の含有量に対して等量未満のアミノ酸化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる第2成分とを含み、該第2成分の含有量が該第1成分の含有量に対して等量未満であることを特徴とする。そして上記の甲殻類用保存剤を水溶液とした保存処理液に、活状態、仮死状態、又は生活反応を維持しているか回復しえる状態を維持している甲殻類を、所要の時間接触させて保存処理した後、冷蔵又は冷凍して保存する。
特許請求の範囲
【請求項1】
有効量のアスコルビン酸化合物からなる第1成分と、該第1成分の含有量に対して等量未満の有機多塩基酸化合物、及び該第1成分の含有量に対して等量未満のアミノ酸化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる第2成分とを含み、該第2成分の含有量が該第1成分の含有量に対して等量未満であることを特徴とする、甲殻類用保存剤。
【請求項2】
前記アスコルビン酸化合物は、アスコルビン酸、エリソルビン酸、及びそれらの塩並びにエステルなどから選ばれたものである、請求項1に記載の甲殻類用保存剤。
【請求項3】
前記有機多塩基酸化合物は、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、及び酒石酸、並びにこれらの塩から選ばれたものである、請求項1又は2に記載の甲殻類用保存剤。
【請求項4】
前記アミノ酸化合物は、リシン、及びグリシンから選ばれたものである、請求項1又は2に記載の甲殻類用保存剤。
【請求項5】
前記アスコルビン酸化合物に対して0.1〜1倍量の還元性糖化合物を含む、請求項1又は2に記載の甲殻類用保存剤。
【請求項6】
剤型が水溶液である、請求項1乃至4のいずれかに記載の甲殻類用保存剤。
【請求項7】
有効濃度のアスコルビン酸化合物からなる第1成分と、該第1成分の含有濃度に対して1倍未満の有機多塩基酸化合物、及び該第1成分の含有濃度に対して1倍未満のアミノ酸化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる第2成分とを含み、該第2成分の含有濃度が該第1成分の含有濃度に対して1倍未満である水溶液からなる甲殻類用保存処理液に、活状態、仮死状態で生活反応を失っていない生状態、又は冷凍状態にあって解凍後に生活反応を回復しえる状態を維持している甲殻類を、所要の時間接触させて処理したのち、冷蔵又は冷凍して保存することを特徴とする甲殻類の保存方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、生の甲殻類の品質を劣化させることなく長期に保存するために用いられる、甲殻類用の保存剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に魚介類のうちで海老やカニ等の甲殻類は、捕獲され水揚げされると、先ず生活反応が停止して死後硬直が起き、それに続いて組織の酸化が始まって髭や殻の変色や筋肉の軟化が進み、遂には腐敗に到るという劣化過程をとることが知られている。そこで、このような劣化の進行を阻止するために、一般的に、食品を冷凍保存する方法が採用されている。しかし、海老、特に甘海老などを冷凍状態で保存しても、一旦解凍した後の海老の組織は比較的に速やかに劣化が進行するから、解凍後は速やかに調理するなどして食べるか、或いは保存食品に加工してしまうのが良いとされていた。
【0003】
また、冷凍海老を解凍後に冷蔵状態で保存する場合のほか、生海老を冷凍するまでもなく単に冷蔵保存しておき、劣化が余り進まないうちに食するか又は調理するような場合もある。このような室温下での調理や保管の間でも、海老の組織は劣化が進むので、海老の商品価値の低下を防止するための保存料として、二酸化硫黄を含む亜硫酸化合物を海老やカニ用に使用することが認められている。こうした亜硫酸化合物は酸化防止力を備えていて、海老の頭部あるいはヒゲや脚などに黒変が生ずる、又は殻の一部が白化し艶が失われるなどの劣化を抑制することができるので、従来から市場で販売されている冷凍海老や冷蔵海老の多くが、亜硫酸塩やピロ亜硫酸塩などの亜硫酸化合物を含む保存料で、劣化防止処理がなされていると見られている。
【0004】
上記のような亜硫酸化合物を含む保存剤としては、例えば2%程度のピロ亜硫酸ナトリウムと、1%程度のエリソルビン酸とを含む水溶液が使用されることが多く、更にこれに少量のトリポリリン酸ナトリウムやポリリン酸ナトリウム等のリン酸塩を加えたり、或いは2〜3%程度のデキストリンなどを配合した水溶液状保存剤も使用されている。従来このような水溶液状保存剤は、比較的に小容量の浸漬槽に貯留しておき、漁獲されたのち魚溜まり槽中で泳いでいた海老を掬い上げ、コンベア上で選別した後に該浸漬槽に送り込み、短時間浸漬処理したのち再び掬い上げて冷蔵工程や冷凍工程に送り、それぞれ冷蔵商品や冷凍商品として出荷されるのが普通であった。
【0005】
ところで、上記のような亜硫酸化合物は強力な還元性材料であることが知られており、保存料用の食品添加物としての他に、漂白剤や酸化防止剤としての使用も認められている。そして少量ならば健康上無害として、えび等に対する残存濃度は、二酸化硫黄として0.10g/kg未満という基準で認められているものの、亜硫酸化合物自体は食品として望ましい化学物質ではない。そのうえ、亜硫酸化合物を含む保存剤で処理された海老には、海老の殻や筋肉の色が褪色し、艶も失われる問題があるほか、異臭が発生したり、食味にも異味や苦味などが加わる欠点もある。
【0006】
なお、このような冷凍海老に付着している亜硫酸化合物の量は、例えば海老を重量で約5倍量程度の15℃以下の蒸留水中に5分間浸漬し、この浸出液に亜硫酸イオン試験紙(QUANTOFIX Sulphite, NACHEREY NAGEL GmbH)を浸して、20秒後の発色した試験紙の色調を色見本と比較する簡便法などで、浸出液の亜硫酸イオン濃度を測定し、海老に対する亜硫酸化合物の付着量を求めることができる。
【0007】
そこで本発明者は、従来から使用されている亜硫酸化合物に代えて、食品又は食品添加しょ物として既知である有機素材を用いて、黒変防止性能が優れると共に肉色が良く、衛生上でも安全な海老保存用の組成物を開発する研究を進めた結果、有効濃度のアスコルビン酸化合物と、該アスコルビン酸化合物の含有量に対して0.1〜1倍量の還元性糖化合物とを含む海老用保存剤を発明して、特願2004-236756として特許出願している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、亜硫酸化合物を用いず、更に安全な食品添加物である有機素材を用いて、従来の海老用保存剤では十分ではなかった、海老やカニ等を含む甲殻類の外観色目や旨味の劣化を防止すると同時に、異味や異臭の発生も抑制することができる、衛生上でも安全な甲殻類用保存剤を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の甲殻類用保存剤は、有効量のアスコルビン酸化合物からなる第1成分と、該第1成分の含有量に対して等量未満の有機多塩基酸化合物、及び該第1成分の含有量に対して等量未満のアミノ酸化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる第2成分とを含み、該第2成分の含有量が該第1成分の含有量に対して等量未満であることを特徴とするもので、特に水溶液からなるものが好ましい。
【0010】
そして本発明の甲殻類の保存方法は、有効濃度のアスコルビン酸化合物からなる第1成分第1成分と、該第1成分の含有濃度に対して1倍未満の有機多塩基酸化合物、及び該第1成分の含有濃度に対して1倍未満のアミノ酸化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる第2成分とを含み、該第2成分の含有濃度が該第1成分の含有濃度に対して1倍未満である水溶液からなる甲殻類用保存処理液に、活状態、仮死状態で生活反応を失っていない生状態、又は冷凍状態にあって解凍後に生活反応を回復しえる状態を維持している甲殻類を、所要の時間接触させて処理したのち、冷蔵又は冷凍して保存することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の甲殻類用保存剤を用いた保存処理液との接触処理がなされ、冷蔵又は冷凍して保存された甲殻類は、解凍した後に常温付近の環境で放置するなどの厳しい条件下でも、頭部やヒゲ、脚などにおける黒変や白化などの発生について、亜硫酸化合物を用いた保存剤と同等程度の劣化抑制効果が発揮されるほか、亜硫酸化合物を用いた場合には避け得なかった甲殻類特有の赤い色艶の褪色や、食味の変質並びに異臭の発生の何れをも防止することができ、食品としての品質を高め得る効果がある。そのうえ、特に甘海老などの商品価値を低下させる殻部の白点を効果的に抑制できる効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の甲殻類用保存剤における第1成分の前記アスコルビン酸化合物としては、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸の立体異性体であってエリソルビン酸と呼ばれるD-アスコルビン酸など、及びそれらの塩並びにエステルなどから選ばれた1種又はそれ以上の化合物を、単独で又は複数種を組み合わせて使用することができ、特には、ビタミンC用として市販されているL-アスコルビン酸及びL-アスコルビン酸塩から選ばれたものから、適宜選択して用いることが好ましい。しかし、こうしたアスコルビン酸化合物は、日本薬局方などの規格に沿った薬剤に限られるものではなく、食用に適した天然物、例えば植物性のジュースなどであっても利用可能である。
【0013】
また、本発明の甲殻類用保存剤における第2成分の一方はアミノ酸化合物であるが、本発明で用いられるアミノ酸化合物としては、特にリシンやグリシンが好ましい。これらのアミノ酸化合物は、それ単独では甲殻類の劣化を抑制する作用は示さないが、第1成分であるアスコルビン酸化合物の使用量に対して0.5倍量未満の少量、例えば0.01〜0.4倍量の範囲で使用することで、アスコルビン酸化合物の劣化防止作用、特に甲殻類の外観や色目、食味の劣化を抑制する作用を強め、更に異味や異臭の発生を防止する効果を示す。
【0014】
そして、これらのアミノ酸化合物の使用量が上記の範囲より少ないときは、食味の劣化や異味・異臭の発生を抑制する効果が少なく、他方で使用量が上記の範囲より多くなると、アスコルビン酸化合物の劣化防止作用が阻害されることが起こるほか、アミノ酸の味が甲殻類本来の食味に加わって異味と感じられるようになるから、使用量の上限近傍で利用することは避けるべきである。
【0015】
更に、本発明の甲殻類用保存剤における第2成分の他の一方は、有機多塩基酸化合物であり、特にリンゴ酸、コハク酸、酒石酸、及びクエン酸、並びにこれらの塩から選ばれたものが好ましい。これらの有機多塩基酸化合物は水溶性で食用に適したものであれば良く、天然物、例えば植物性のジュースやエキスなどであっても利用でき、またその塩としてはナトリウム塩やカリウム塩などが好ましく用いられる。しかし、この有機多塩基酸化合物も、前記のアミノ酸化合物と同様に、それ単独では甲殻類の劣化を抑制する作用は少ないが、第1成分であるアスコルビン酸化合物の使用量に対して1倍量未満の少量、特に甲殻類の種類によっても異なるが、例えば、0.05〜0.5倍量の範囲で併用することで、アスコルビン酸化合物の劣化防止作用、特に甲殻類の外観、即ち黒変や白点、白化などの発生、色目の低下を防ぎ、食味の劣化を抑制する作用を強め、更に異味や異臭の発生を防止する効果を示す。
【0016】
そして、これらの有機多塩基酸化合物の使用量が上記の範囲より少ないときは、食味の劣化や異味・異臭の発生を抑制する効果が少なく、他方で使用量が上記の範囲より多くなると、アスコルビン酸化合物の劣化防止作用が阻害されることが起こるほか、有機多塩基酸の味が甲殻類本来の食味に加わって異味と感じられるようになるから、避けるべきであることも、前記のアミノ酸化合物の場合と同様である。
【0017】
本発明の甲殻類用保存剤には、上述のような基本的な構成成分のほか、種々の機能を追加するために各種の成分を含有させることができる。このような追加的な機能成分の例としては、本発明者が発明している特願2004-236756の海老用保存剤で使用されている、海老の黒変防止や色目改善、食味の劣化防止等に有効な還元性糖化合物を、アスコルビン酸化合物に対して0.1〜1倍量加える、或いは海老の冷凍状態を改善するための増粘剤などを適宜に加える、などを挙げることができるが、本発明の目的、即ち食品として使用するに適した材料を利用する条件に反しない限り、適宜の機能成分を追加することができる。
【0018】
本発明の甲殻類用保存剤を使用して甲殻類を保存するに当たっては、甲殻類を浸漬処理するのに適した水溶液状の保存処理液を調製する必要がある。ところでこの保存処理液には、保存剤における主剤、即ち第1成分であるアスコルビン酸化合物の濃度を、処理対象の甲殻類の種類や生鮮さの状態によっても異なるが、水溶液中の濃度として少なくとも1〜1.5%程度以上とすることが好ましい。しかし、保存処理した甲殻類の保存環境が冷涼でない場合が想定されるときは、保存剤の処理液中のアスコルビン酸化合物の濃度を2 〜3%程度とすることが好ましく、従って処理液中の補助剤、即ち第2成分であるアミノ酸化合物又は有機多塩基酸化合物は、それぞれアスコルビン酸化合物の濃度に対して、0.5倍量未満の濃度、又は1倍量未満の濃度の範囲内に入るように、添加量を調整することが望ましい。しかし、第2成分であるアミノ酸化合物と有機多塩基酸化合物とを併用しようとする場合には、それぞれが上記の濃度範囲内の低い濃度となるように調整することが勧められる。
【0019】
上記のような本発明の甲殻類用保存剤で保存処理される甲殻類は、保存処理される時点において生きていることが必要である。即ち、生活反応を示す甲殻類でなければ本発明の甲殻類用保存剤の効果は得られず、捕獲された直後の活甲殻類、又は捕獲された後に良好な管理環境下で蓄養されていた甲殻類を、水槽などから掬い上げて直ちに、0.1〜5分の範囲内で浸漬或いはシャワー処理することが好ましい。しかし、仮死状態で生活反応を失っていない生状態の甲殻類を浸漬処理することや、上記の活状態の甲殻類を急速冷凍することで、解凍後に生活反応を回復し得る状態にある甲殻類などを、解凍すると同時に浸漬処理することでも、十分ではないとしても、一応の劣化防止の効果を期待することができる。
【0020】
更に、本発明の甲殻類用保存剤により浸漬処理された甲殻類は、長期間の保存を望む場合には、処理後直ちに冷凍するのがよく、その際に甲殻類の殻の外側が保存処理液の氷結体、即ちグレーズで覆われた冷凍状態となっていることが好ましい。こうした状態で清浄な暗所に保存された甲殻類の品質劣化は、ほぼ完全に無視することができる。従って、保存処理済の甲殻類の品質の劣化は、甲殻類を解凍した後の保存環境、特に雰囲気中の酸化性物質、保存温度、照明などによって支配されると考えられるから、短期間の保存であっても冷蔵庫中に保管されることが望ましい。
【0021】
本発明の甲殻類用保存剤は、保存処理の対象となる甲殻類の種類については、特に限定されるものではないが、食味が特に重要である甘海老などは、異味や異臭の無いことが重要な品質評価項目となるから、亜硫酸化合物を用いた海老用保存剤の持つ品質上の欠点の発生を、予め抑制することが可能な甲殻類用保存剤として、甘海老にとって特に好適に利用することができる。
【実施例1】
【0022】
海面下約300〜400mの海底に生息している甘海老をトロール網で捕獲し、0〜5℃の海水を満たした水槽中で蓄養しておいた。一方で、アスコルビン酸化合物としてL-アスコルビン酸(ASCA)及びエリソルビン酸(ETBA)の2種を、アミノ酸化合物としてリシン(LYS)、グリシン(GLY)、アルギニン(ARG)及びグルタミン酸ナトリウム(GLUN)の4種を用いて、それぞれ表1に示すような濃度(g/dl)となるよう1%食塩水中に溶解し、それぞれ配合が異なる保存処理液を調製した。そして、これらの各保存処理液を用いて上記の活甘海老に保存処理を加え、それぞれの処理海老について品質の劣化促進試験を行い、保存処理液の配合組成と海老に対する保存性能との関係を調べた。
【0023】
(海老の保存処理方法)
水槽中の甘海老を掬いあげて余分の水を落とし、処理槽に入れておいた約 4〜15℃のそれぞれの保存処理液に、1分間浸漬した後掬い上げ、直ちにプラスチック袋に入れて脱気密封し−18℃の冷凍庫に入れて急速冷凍し、そのまま保存した。
【0024】
(海老の劣化性測定方法)
上記の冷凍庫中で少なくとも16時間以上保存された甘海老10尾を、15〜20℃の流水(水道水)で解凍し、20℃に達した甘海老を角型バットに敷き詰めたキッチンペーパー上に並べて、21〜24℃の室内で白色蛍光灯による間接照明下に、約10時間の経時劣化の促進試験を行い、殻つき状態に於ける黒変や白点の発生及び色目の低下を観察した。その後続いて海老肉の食味を舌で味わい、同時に異味や異臭の発生の有無を調べた。なお、これらの各検査項目については、5人の評価者がそれぞれ後記の評価基準に基づいて独立に評価し、採点した数値を平均したのち4捨5入して丸めた値として、表1の保存成績の欄にそれぞれ表示すると共に、それらの合計得点も表示した。
【0025】
前記の海老の劣化性を判断するための検査項目として採用した、10時間経過後の黒変等の程度及び色目の状態、肉に残っている旨味の程度、異味や異臭の有無の評価基準は、それぞれ以下の通り、4点から0点までの5段階の評点により評価した。従って、全ての検査項目で2点以上であれば合計得点が6点以上となり、特に欠点のない海老食品が得られたこと、また1点の項目があれば格外品であり、0点の項目があれば商品として扱えないことを意味する。
4点:活海老と同等かそれに劣らない状態を維持している
3点:活海老冷凍品の解凍直後と略同等である
2点:通常冷凍品解凍後の目立つ欠点がない状態と同等
1点:明らかな欠点がある
0点:食品として不適である
【0026】
また、上記の劣化状態の採点評価と並んで、食品としての総合評価を、上記の合計得点を基準とした上、これに各検査項目に対する重要度の補正を加えて、秀:◎◎、優:◎、良:○、可:△、不可:×の、5段階で実施し、表中の総合評価の欄に表示した。
【0027】
なお、比較のための対照保存剤として、亜硫酸化合物を主剤とした2種の市販品、即ち、ピロ亜硫酸ナトリウム17.5%、エリソルビン酸12%、ポリリン酸ナトリウム7.5%、アルギン酸ナトリウム3%、デキストリン60%からなる配合組成の市販保存剤A(CMPA)と、ピロ亜硫酸ナトリウム67%、エリソルビン酸15%、リン酸ナトリウム塩混合物12%、クエン酸ナトリウム3.5%、グルタミン酸ナトリウム2.5%からなる配合組成の市販保存剤B(CMPB)を用意し、それぞれの推奨使用濃度である4g/dLと、1g/dLとに合わせて1%食塩水中に溶解して、対照用保存処理液を調製した。そして、前記と同様にして甘海老を浸漬処理し、冷凍保存した。この冷凍甘海老は、前記と同様の方法で解凍し、劣化試験を行い、それぞれの検査項目について評価を行って、それぞれ保存成績を調べ、表1に併せて示した。
【0028】
【表1】



【0029】
上記の表1の結果を見ると、アスコルビン酸化合物のうちのエリソルビン酸とピロ亜硫酸ナトリウムとを併用した、亜硫酸化合物を含む既知の保存剤である市販保存剤A(CMPA)、及び市販保存剤B(CMPB)を用いて、それぞれ調製した対照用保存処理液に浸漬した後冷凍した甘海老は、保存処理しない活甘海老の10時間後の劣化状態(試験番号1のデータ)に比べて、黒変防止及び色目の保持については優れた外観を維持する効果を示すが、その一方で活甘海老の旨みが損なわれるほか異味や異臭などが生じて、実質的に食品の品質が保持できないこと(試験番号42〜43のデータを参照)、及びアスコルビン酸化合物の代表であるL-アスコルビン酸は、それぞれ単独で保存処理液として用いると、黒変防止及び色目の保持については、亜硫酸化合物を含む従来の保存処理液に及ばない上、薬剤濃度が2.0〜2.5g/dl程度であればよいが、それ以上となると、苦味に代わって異味が生ずるなどの品質低下を抑制できなくなること(試験番号2〜6のデータを参照)が分かる。
【0030】
ところが、アミノ酸化合物を単独で使用すると甘海老の品質低下を促進する(試験番号1と13、20、36、41とのデータを参照)のに対して、アスコルビン酸化合物を単独で使用したときの、甘海老の上記のような品質低下の現象は、特にリシン(LYS)やグリシン(GLY)の少量を、アスコルビン酸化合物と組合せて使用すると、格段に改良されること、このときの保存処理液中のアスコルビン酸化合物の濃度は、2.0〜2.5g/dl程度でよいこと、また、L-アスコルビン酸(ASCA)は、エリソルビン酸(ETBA)より優れた効果を示すこと(試験番号14〜19と試験番号26〜31のデータを参照)が分かった。
【0031】
そして、リシン(LYS)やグリシン(GLY)の併用効果は、アミノ酸化合物の液中濃度として0.03g/dl、即ちアスコルビン酸化合物の濃度に対して0.01倍以上で現れ、アスコルビン酸化合物の濃度に対して0.4倍程度まで有効であるが、それ以上のアミノ酸化合物を添加すると、逆に有害である(試験番号7〜12、試験番号14〜19のデータを参照)こと、及びリシン(LYS)やグリシン(GLY)以外のアミノ酸は、甘海老の品質劣化を防止する効果を殆ど示さないことが分かった。
【実施例2】
【0032】
前記の実施例1と同様にして、アスコルビン酸化合物としてL-アスコルビン酸(ASCA)を、有機多塩基酸化合物としてリンゴ酸(MALA)、リンゴ酸ナトリウム(MALN)、コハク酸(SUCA)、コハク酸ナトリウム(SUCN)、クエン酸(CITA)、クエン酸ナトリウム(CITN)、酒石酸(TARA)、及び酒石酸ナトリウム(TARN)を選び、表2に示すような配合に従って組み合わせて、それぞれ前記と同様にして保存処理液を調製した。これらの各保存処理液を用いて上記の活甘海老に保存処理を加え、それぞれの処理海老について前記と同様にして品質の劣化促進試験を行い、実施例1と同様にして、保存処理液の配合組成と海老に対する保存性能とを調べ、更に総合評価を行った結果を表2に示した。
【0033】
【表2】



【0034】
上記の表2の結果を見ると、アスコルビン酸化合物を代表するL-アスコルビン酸に、有機多塩基酸化合物を配合した保存処理液は、アスコルビン酸化合物のみを用いた保存処理液の、甘海老の外観と色目の改良が不十分である欠点、特に白点の発生を効果的に補うことができ、そのときの有機多塩基酸化合物の液中濃度は、少なくとも0.1g/dL、即ちアスコルビン酸化合物の濃度に対して0.05倍以上が好適であるが、0.5倍を超えると、アスコルビン酸化合物の劣化防止作用が抑制される傾向があること、及びリンゴ酸(MALA)、コハク酸(SUCA)、クエン酸(CITA)、酒石酸(TARA)などの有機多塩基酸は、遊離酸であっても中性塩であっても、上記のようなアスコルビン酸化合物の、甘海老に対する劣化防止機能を高めるのに有効であること、が分かった。
【実施例3】
【0035】
温暖な地域で養殖されることが多い南米原産のバナメイ海老を、25〜28℃の1/3希釈海水を満たした水槽中で蓄養しておいたほか、アスコルビン酸化合物としてL-アスコルビン酸(ASCA)及びエリソルビン酸(ETBA)の2種を、アミノ酸化合物としてリシン(LYS)、グリシン(GLY)、及びアルギニン(ARG)の3種を用い、実施例1と同様にして、それぞれ表3に示すような濃度(g/dl)となるよう1%食塩水中に溶解し、それぞれ配合が異なる保存処理液を調製した。そして、これらの各保存処理液と、比較のための前記の市販保存剤A(CMPA)と前記の市販保存剤B(CMPB)とで、表3に示すような濃度に調製した保存処理液とを用いて、上記の活バナメイ海老に、実施例1と同様にして約25℃の保存処理液に1分間浸漬する保存処理を加え、直ちに−18℃の冷凍庫に入れて急速冷凍し、保存した。
【0036】
こうしてアミノ酸配合の甲殻類用保存剤と、対照用保存剤によって処理し、16時間以上保存た冷凍バナメイ海老を、実施例1で実施したと同様の方法で流水により解凍し、21〜24℃で約10時間の劣化促進試験を行って、保存処理液の配合組成と海老に対する保存性能との関係を調べ、更に総合評価を行って得た結果を、表3に併せて示した。
【0037】
【表3】



【0038】
上記の表3の結果を見ると、アスコルビン酸化合物を代表するL-アスコルビン酸の濃度が2g/dL以上の保存処理液で、バナメイ海老の外観、特に黒変の改良効果が現れ、味や異臭などの劣化も抑制される(試験番号101〜106のデータを参照)が、亜硫酸化合物を含む既知の保存剤である市販保存剤A(CMPA)、及び市販保存剤B(CMPB)を用いて保存処理すると、黒変防止及び色目の保持については優れた外観を維持する効果を示すものの、海老の旨みが損なわれるほか異味や異臭などが生じて、実質的に食品としての品質が損なわれてしまうこと(試験番号135〜136のデータを参照)が分かる。
【0039】
その一方で、単独で使用すると海老の劣化を促進するアミノ酸化合物、即ちリシン(LYS)、グリシン(GLY)(試験番号112、118のデータを参照)を、L-アスコルビン酸に対して少量併用すると、外観や色目の改良効果が一段と大きくなるほか、異味や異臭の発生が抑制され、旨みの低下も防止できる(試験番号107〜111、113〜117のデータを参照)が、アルギニン(ARG)は殆ど効果がないこと、また、アミノ酸化合物の配合割合は、L-アスコルビン酸の濃度に対して0.5倍を超えないことが好ましいことが分かった。そして更に、海老の外観や色目の改良に関しては、エリソルビン酸(ETBA)はL-アスコルビン酸(ASCA)に劣らない効果を示すが、旨みや異臭の改良に関しては、L-アスコルビン酸(ASCA)に及ばないこと(試験番号113〜117と試験番号124〜128,のデータを参照)も分かった。
【実施例4】
【0040】
前記の実施例3と同様にして、アスコルビン酸化合物としてL-アスコルビン酸(ASCA)を、有機多塩基酸化合物としてリンゴ酸(MALA)、リンゴ酸ナトリウム(MALN)、コハク酸(SUCA)、コハク酸ナトリウム(SUCN)、クエン酸(CITA)、クエン酸ナトリウム(CITN)、酒石酸(TARA)、及び酒石酸ナトリウム(TARN)を選び、表4に示すような配合に従って組み合わせて、それぞれ前記と同様にして保存処理液を調製した。そして、これらの各保存処理液を用いて、実施例3と同様にして活バナメイ海老に保存処理を加え、それぞれの処理海老について品質の劣化試験を行い、実施例3と同様にして保存処理液の配合組成と海老に対する保存性能とを調べ、更に総合評価を行った結果を、表4に併せて示した。
【0041】
【表4】



【0042】
上記の表4の結果を見ると、アスコルビン酸化合物を代表するL-アスコルビン酸に、有機多塩基酸化合物を組み合わせて配合した保存処理液は、アスコルビン酸化合物のみを用いた保存処理液の欠点を補って、黒変や白斑などの発生を防止すると共に、異味や異臭の発生を抑制して海老の旨みが劣化することを防ぐ効果がある。しかし、その作用が現れる有機多塩基酸化合物の液中濃度は0.1g/dL以上、即ちアスコルビン酸化合物の濃度に対して0.05倍以上が好ましく、また0.5倍を超えることは、アスコルビン酸化合物の劣化防止作用が抑制される傾向が見られ、好ましくないことが分かる。
【実施例5】
【0043】
日本海の沖で漁獲されるズワイガニを、0〜5℃の海水を満たした水槽中で蓄養しておいたほか、アスコルビン酸化合物としてL-アスコルビン酸(ASCA)及びエリソルビン酸(ETBA)の2種を、アミノ酸化合物としてリシン(LYS)、グリシン(GLY)、及びアルギニン(ARG)の3種を用い、実施例3と同様にして、それぞれ表5に示すような濃度(g/dl)となるよう1%食塩水中に溶解し、それぞれ配合が異なる保存処理液を調製した。そして、これらの各保存処理液と、比較のための前記の市販保存剤A(CMPA)と前記の市販保存剤B(CMPB)とで、表5に示すような濃度に調製した保存処理液とを用いて、上記の活ズワイガニに、実施例1と同様にして約4〜15℃の保存処理液に3分間浸漬する保存処理を加えた後、直ちに−18℃の冷凍庫に入れて急速冷凍し、そのまま冷凍保存した。
【0044】
こうしてアミノ酸配合の甲殻類用保存剤と対照用保存剤によって処理し、16時間以上保存した冷凍ズワイガニを、実施例1で実施したと同様の方法で解凍し、21〜24℃で約10時間の劣化促進試験を行って、保存処理液の配合組成とズワイガニに対する保存性能との関係を調べ、総合評価を行って得た結果を、表5に併せて示した。
【0045】
【表5】



【0046】
上記の表5の結果を見ると、アスコルビン酸化合物を代表するL-アスコルビン酸の濃度が2g/dL以上の保存処理液で、ズワイガニの外観、特に黒変の改良効果が現れ、味や異臭などの劣化も抑制される(試験番号201〜206のデータを参照)が、亜硫酸化合物を含む既知の保存剤である市販保存剤A(CMPA)、及び市販保存剤B(CMPB)を用いて保存処理すると、黒変防止及び色目の保持については優れた外観を維持する効果を示すものの、カニの旨みが損なわれるほか異味や異臭などが生じて、実質的に食品の品質が損なわれてしまうこと(試験番号236〜237のデータを参照)が分かる。
【0047】
その一方で、単独で使用するとカニの劣化を促進するアミノ酸化合物、即ちリシン(LYS)、グリシン(GLY)を、L-アスコルビン酸に対して少量併用すると、外観や色目の改良効果が一段と大きくなるほか、異味や異臭の発生が抑制され、旨みの低下も防止できる(試験番号207〜212,、213〜217のデータを参照)が、アミノ酸化合物のL-アスコルビン酸の濃度に対する配合割合は、1倍未満であることが好ましく、また外観や色目の改良に関しては、エリソルビン酸(ETBA)はL-アスコルビン酸(ASCA)に劣らない効果を示すが、旨みや異臭の改良に関してはL-アスコルビン酸(ASCA)に及ばないことも分かった。
【実施例6】
【0048】
前記の実施例5と同様にして、アスコルビン酸化合物としてL-アスコルビン酸(ASCA)を、有機多塩基酸化合物としてリンゴ酸(MALA)、リンゴ酸ナトリウム(MALN)、コハク酸(SUCA)、コハク酸ナトリウム(SUCN)、クエン酸(CITA)、クエン酸ナトリウム(CITN)、酒石酸(TARA)、及び酒石酸ナトリウム(TARN)を選んで、表6に示すような配合に従って組み合わせ、それぞれ前記と同様にして保存処理液を調製した。これらの各保存処理液を用いて、実施例5と同様にして活ズワイガニに保存処理を加え、それぞれの処理海老について品質の劣化試験を行い、実施例3と同様にして保存処理液の配合組成と海老に対する保存性能とを調べ、更に評価を行った結果を表6に示した。
【0049】
【表6】



【0050】
上記の表6の結果を見ると、アスコルビン酸化合物を代表するL-アスコルビン酸に、有機多塩基酸化合物であるリンゴ酸(MALA)、リンゴ酸ナトリウム(MALN)、コハク酸(SUCA)、コハク酸ナトリウム(SUCN)、クエン酸(CITA)、クエン酸ナトリウム(CITN)、及び酒石酸ナトリウム(TARN)を組み合わせて配合した保存処理液は、アスコルビン酸化合物のみを用いた保存処理液の欠点を補って、黒変や白斑などの発生を防止すると共に、異味や異臭の発生を抑制してカニの旨みが劣化することを防ぐ効果がある。しかし、その作用が現れる有機多塩基酸化合物の液中濃度は0.1g/dL、即ちアスコルビン酸化合物の濃度に対して0.05倍以上が好ましいが、0.5倍を超えると、アスコルビン酸化合物の劣化防止作用が抑制される傾向が見られるので、アスコルビン酸化合物の含有量に対して1倍量未満とするのが好ましいことが分かる。
【実施例7】
【0051】
アスコルビン酸化合物としてL-アスコルビン酸(ASCA)を、アミノ酸化合物としてリシン(LYS)及びグリシン(GLY) を、更に有機多塩基酸化合物として、リンゴ酸(MALA)、リンゴ酸ナトリウム(MALN)、コハク酸ナトリウム(SUCN)、クエン酸ナトリウム(CITN)を選び、これらに他の添加剤として、本発明の先願である特願2004-236756に開示された海老用保存剤において、アスコルビン酸化合物と組み合わせて用いられる還元性糖化合物である転化糖(INVS)と、不活性の多糖類であるデキストリン(DEX)を加えて、表7に示すような10種の配合組成を有する粉末配合物、即ち本発明の甲殻類用保存剤(APN1)〜(APN10)を製造した。
【0052】
【表7】



【実施例8】
【0053】
上記の実施例7で製造した本発明の甲殻類用保存剤の中から、表8に示すように5種の保存剤を選び、それぞれ表8に示すような濃度(g/dl)となるように1%食塩水中に溶解して、甘海老用の保存処理液を調製すると共に、対照保存剤としての亜硫酸化合物を主剤とした前記の市販保存剤A(CMPA)及び市販保存剤B(CMPB)を、それぞれの推奨使用濃度である4g/dL、1g/dLとなるように1%食塩水中に溶解して、対照例の保存処理液を調製した。そしてこれらの保存処理液を用いて、実施例1と同様の方法で、前記の活甘海老を4〜10℃で1分間保存処理した後に急速冷凍し、それぞれの処理海老について前記と同様の方法で劣化促進試験を行い、前記と同様にして評価を行って、保存処理液の組成と海老に対する保存性能との関係を調べ、その結果を表8に併せて示した。
【0054】
【表8】



【0055】
表8の結果を見ると、ピロ亜硫酸ナトリウム(PSFN)とポリリン酸ナトリウム(PPFN)に加えて、更にエリソルビン酸(ETBA)とデキストリン(DEX)とを配合した、対照例の市販保存剤A(CMPA)、又は市販保存剤B(CMPB)を用いで保存処理した活甘海老は、いずれも外観は不自然なほど綺麗であって、肉質の劣化が抑えられているように見えるが、肉の旨味は速やかに低下し、また苦味などの異味が現れるほか異臭も発生する。これに対して本発明の甲殻類用保存剤で保存処理した活甘海老は、殻つき海老の外観は天然甘海老と同様であり、著しく綺麗とは言えない。しかし、海老肉の色、味、風味などには質的な変化は少なく、風味の低下の進行は緩やかであった。
【実施例9】
【0056】
上記の実施例7で製造した本発明の甲殻類用保存剤の中から、表9に示すように5種の保存剤を選び、それぞれ表9に示すような濃度(g/dl)となるように1%食塩水中に溶解して、バナメイ海老用の保存処理液を調製すると共に、対照保存剤としての亜硫酸化合物を主剤とした前記の市販保存剤A(CMPA)及び市販保存剤B(CMPB)を、それぞれの推奨使用濃度である4g/dL、1g/dLとなるように1%食塩水中に溶解して、対照例の保存処理液を調製した。そしてこれらの保存処理液を用いて、実施例3と同様の方法で、前記の活バナメイ海老を約25℃で1分間の保存処理を加えた後に急速冷凍し、それぞれの処理海老について前記と同様の方法で劣化促進試験を行い、前記と同様にして評価を行って、保存処理液の組成と海老に対する保存性能との関係を調べ、その結果を表9に併せて示した。
【0057】
【表9】



【0058】
表9の結果を見ると、前記の対照例の市販保存剤A(CMPA)、又は市販保存剤B(CMPB)を用いで保存処理した活バナメイ海老は、いずれも外観は殆ど劣化がなく、肉質の劣化も少ないように見えるが、肉の旨味は速やかに低下し、また苦味などの異味が現れるほか異臭も発生する。これに対して本発明の甲殻類用保存剤で保存処理した活バナメイ海老は、殻つき海老の外観は活天然海老と同様であり、劣化は殆ど見られない。そして、海老肉の色、味、風味などには質的な変化は少なく、風味の低下の進行は緩やかであった。
【実施例10】
【0059】
上記の実施例7で製造した本発明の甲殻類用保存剤の中から、表10に示すように5種の保存剤を選び、それぞれ表10に示すような濃度(g/dl)となるように1%食塩水中に溶解して、ズワイガニ用の保存処理液を調製すると共に、対照保存剤としての亜硫酸化合物を主剤とした前記の市販保存剤A(CMPA)及び市販保存剤B(CMPB)を、それぞれの推奨使用濃度である4g/dL、1g/dLとなるように1%食塩水中に溶解して、対照例の保存処理液を調製した。そしてこれらの保存処理液を用いて、実施例5と同様の方法で、前記の活ズワイガニを約10℃で3分間の保存処理を加えた後に急速冷凍し、それぞれの処理カニについて前記と同様の方法で劣化促進試験を行い、前記と同様にして評価を行って、保存処理液の組成とズワイガニに対する保存性能との関係を調べ、その結果を表10に併せて示した。
【0060】
【表10】



【0061】
表10の結果を見ると、前記の対照例の市販保存剤A(CMPA)、又は市販保存剤B(CMPB)を用いで保存処理した活ズワイガニは、いずれも外観は殆ど劣化がないが、肉の旨味は速やかに低下し、また苦味などの異味が現れるほか異臭も発生する。これに対して本発明の甲殻類用保存剤で保存処理した活ズワイガニは、殻つきカニの外観は活天然カニと同様であり、劣化は殆ど見られない。そして、カニ肉の色、味、風味などには質的な変化は少なく、風味の低下の進行は緩やかであった。
【実施例11】
【0062】
上記の実施例7で製造した本発明の甲殻類用保存剤の中から、表11に示すように5種の保存剤を選び、それぞれ表11に示すような濃度(g/dl)となるように1%食塩水中に溶解して、車エビ用の保存処理液を調製すると共に、対照保存剤としての亜硫酸化合物を主剤とした前記の市販保存剤A(CMPA)及び市販保存剤B(CMPB)を、それぞれの推奨使用濃度である4g/dL、1g/dLとなるように1%食塩水中に溶解して、対照例の保存処理液を調製した。
【0063】
その一方で、約20℃の1/3希釈海水を満たした水槽中で蓄養しておいた活車エビを、網で掬い上げ、上記の約20℃の車エビ用の保存処理液をそれぞれ入れた処理槽中に浸漬して、1分間の保存処理した後に急速冷凍し、それぞれの処理エビについて前記と同様の方法で劣化促進試験を行い、前記と同様にして評価を行って、保存処理液の組成と海老に対する保存性能との関係を調べ、その結果を表11に併せて示した。
【0064】
【表11】



【0065】
表11の結果を見ると、前記の対照例の市販保存剤A(CMPA)、又は市販保存剤B(CMPB)を用いで保存処理した活車エビは、いずれも外観は余り劣化しないが、肉の旨味は低下し、また苦味などの異味が現れるほか異臭も発生する。これに対して本発明の甲殻類用保存剤で保存処理した活車エビは、外観は活車エビと同様であり、劣化は殆ど見られない。そして、エビの食味、風味などには質的な変化は少なく、風味の低下の進行は緩やかであった。
【実施例12】
【0066】
上記の実施例7で製造した本発明の甲殻類用保存剤の中から、表12に示すように5種の保存剤を選び、それぞれ表12に示すような濃度(g/dl)となるように1%食塩水中に溶解して、シャコエビ用の保存処理液を調製すると共に、対照保存剤としての亜硫酸化合物を主剤とした前記の市販保存剤A(CMPA)及び市販保存剤B(CMPB)を、それぞれの推奨使用濃度である4g/dL、1g/dLとなるように1%食塩水中に溶解して、対照例の保存処理液を調製した。
【0067】
その一方で、約20℃の海水を満たした水槽中で蓄養しておいた活シャコエビを、網で掬い上げ、上記の約20℃のシャコエビ用の保存処理液をそれぞれ入れた処理槽中に浸漬して、1分間の保存処理した後に急速冷凍し、それぞれの処理シャコエビについて前記と同様の方法で劣化促進試験を行い、前記と同様にして評価を行って、保存処理液の組成とシャコエビに対する保存性能との関係を調べ、その結果を表12に併せて示した。
【0068】
【表12】



【0069】
表11の結果を見ると、前記の対照例の市販保存剤A(CMPA)、又は市販保存剤B(CMPB)を用いで保存処理した活シャコエビは、外観上での劣化は進み、肉の旨味も低下し、また苦味などの異味が現れるほか異臭も発生する。これに対して本発明の甲殻類用保存剤で保存処理した活シャコエビは、外観はあまり劣化は進まず、また食味、風味などには質的な変化は少なく、風味の低下の進行も少ないことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の甲殻類用保存剤は、食品添加物或いは食品として既知材料である、アスコルビン酸化合物と、アミノ酸化合物又は有機多塩基酸化合物から選ばれた化合物の比較的少量とを、配合してなる薬剤であって、多様な種類の生の甲殻類に対して、該甲殻類の食品としての品質を劣化させることなく冷凍保存するために使用することができる。そして、本発明の甲殻類用保存剤を用いて保存処理して得た冷凍甲殻類は、解凍した後の保存中に殻の一部に黒変や白斑などの発生が抑制されるばかりでなく、甲殻類の食味を損なう欠点を持っている保存剤の使用を避けることで、衛生上で不安がある亜硫酸化合物の使用を排除できる利点がある。




 

 


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