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発明の名称 希土類元素添加酸化セリウム粉体の製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−22836(P2007−22836A)
公開日 平成19年2月1日(2007.2.1)
出願番号 特願2005−205508(P2005−205508)
出願日 平成17年7月14日(2005.7.14)
代理人 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
発明者 石塚 雅之
要約 課題
La、Pr、Nd、Sm、Gd、Y、Scのような希土類元素を高濃度で含む等方形状の希土類元素添加酸化セリウム粉体の製造方法を提供する。

解決手段
3価のCeイオンを含む水溶液に過酸化水素水を添加し、次いで、この水溶液に濃アンモニア水を添加してセリウム水和物を含む分散液とし、次いで、このセリウム水和物を含む分散液を熟成して酸化セリウム微粒子を生成させ、次いで、この酸化セリウム微粒子を含む分散液からイオンを除去して酸化セリウム微粒子を分散させた分散液とし、次いで、この酸化セリウム微粒子を分散させた分散液に、セリウムを除く希土類元素の塩である希土類金属塩を添加し、次いで、この分散液にアルカリ性物質を添加して沈殿物を生成し、次いで、この沈殿物を熱処理することを特徴とする。
特許請求の範囲
【請求項1】
3価のセリウムイオンを含む水溶液に過酸化物を添加し、次いで、この水溶液にアルカリ性物質を添加してセリウム水和物を含む分散液とし、
次いで、このセリウム水和物を含む分散液を熟成して酸化セリウム微粒子を生成させ、次いで、この酸化セリウム微粒子を含む分散液からイオンを除去して酸化セリウム微粒子を分散させた分散液とし、
次いで、この酸化セリウム微粒子を分散させた分散液に、セリウムを除く希土類元素の塩である希土類金属塩を添加し、次いで、この分散液にアルカリ性物質を添加して沈殿物を生成し、
次いで、この沈殿物を熱処理することを特徴とする希土類元素添加酸化セリウム粉体の製造方法。
【請求項2】
前記熟成は、前記セリウム水和物を含む分散液を、大気圧下、80℃以上かつ100℃以下の温度範囲にて50時間以上かつ120時間以下保持することを特徴とする請求項1記載の希土類元素添加酸化セリウム粉体の製造方法。
【請求項3】
前記希土類金属塩は、ランタン塩、プラセオジム塩、ネオジム塩、サマリウム塩、ガドリニウム塩、イットリウム塩、スカンジウム塩の群から選択された1種または2種以上であることを特徴とする請求項1または2記載の希土類元素添加酸化セリウム粉体の製造方法。
【請求項4】
前記希土類金属塩の添加割合を、この希土類金属塩に含まれる希土類元素のモル数と前記酸化セリウムのモル数との合計モル数の0.1モル%以上かつ50モル%以下となるように設定することを特徴とする請求項1、2または3記載の希土類元素添加酸化セリウム粉体の製造方法。
【請求項5】
前記過酸化物は、過酸化水素であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の希土類元素添加酸化セリウム粉体の製造方法。
【請求項6】
前記アルカリ性物質は、アンモニア水であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載の希土類元素添加酸化セリウム粉体の製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類元素添加酸化セリウム粉体の製造方法に関し、特に、ガスセンサ、固体電解質型燃料電池等に好適に用いられ、低い焼成温度にて希土類元素添加酸化セリウム焼結体を得ることが可能な、易焼結性の、希土類元素添加酸化セリウム粉体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、希土類元素添加酸化セリウム粉体の製造方法としては、例えば、次の2つの方法が知られている。
(1)セリウム塩と、セリウムを除く希土類元素の塩である希土類金属塩とを含む混合溶液に、シュウ酸を添加して、セリウムのシュウ酸塩と希土類元素のシュウ酸塩との共沈物を生成させ、この共沈物を熱処理する方法。
(2)セリウム塩と、セリウムを除く希土類元素の塩である希土類金属塩とを含む混合溶液に、アンモニアを添加して、セリウムの水酸化物と希土類元素の水酸化物との共沈物を生成させ、この共沈物を熱処理する方法。
【0003】
ところで、上記の(1)の方法では、生成するシュウ酸塩の沈殿物、すなわち共沈物は、サブミクロンオーダーの大きな凝集体となり、この共沈物を熱処理した場合、熱処理時におけるシュウ酸塩の熱分解により酸化物化して得られた希土類元素添加酸化セリウム粉体の粒径もサブミクロンオーダーまたはそれ以上となる。したがって、この粉体を用いて成形された成形体は、粉体の充填性が悪いために成形密度が低く、この成形体を焼成した場合、得られた焼結体の密度は理論密度より低くなり、緻密な焼結体は得られない。ここで、緻密な焼結体を得るためには、焼成温度(最高保持温度)を例えば1500℃以上の高温とする必要があるが、焼成温度が高い場合、異常粒成長等により焼結密度が低下する虞があり、また、このような高い焼成温度を得るためには、焼成炉の構造を大幅に改良する必要が生じ、しかも高温の焼成炉は非常に高価なものとなるために、製造コストが高くなり、経済的ではない。
【0004】
一方、上記の(2)の方法では、共沈物中のアンモニア成分が、水酸化物や炭酸塩である沈殿物質の表面に強く吸着するために、この共沈物を熱処理により熱分解、酸化物化する際にアンモニア成分が残存することとなる。したがって、生成した希土類元素添加酸化セリウム粉体は、残存するアンモニア成分の作用により棒状〜柱状の異方形状に強く凝集することとなる。したがって、この異方形状の粉体を用いて成形された成形体は、粉体の充填性が悪いために成形密度が低く、この成形体を焼成した場合、得られた焼結体の密度は理論密度より低くなり、緻密な焼結体は得られない。ここで、緻密な焼結体を得るためには、焼成温度(最高保持温度)を例えば1600℃以上の高温とする必要があるが、上記の(1)の方法と同様、焼結密度が低下する虞があり、製造コストも上昇する。
【0005】
また、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)のように、イオン半径がセリウム(Ce)のイオン半径と近似またはセリウム(Ce)のイオン半径より大きな希土類元素の場合、上記の(1)、(2)のいずれの方法によっても、生成する共沈物は異方形状を有する。したがって、この異方形状の共沈物の熱分解、酸化物化により生成する希土類元素添加酸化セリウム粉体も棒状〜柱状の異方形状粒子となる。そのため、この異方形状の希土類元素添加酸化セリウム粉体は、成形性が著しく劣化することとなり、この成形体を1500℃以上、あるいは1600℃以上の高温下で焼成しても緻密な焼結体が得られず、この傾向は、イオン半径がより大きい希土類元素ほど顕著であった。
【0006】
そこで、最近、セリウム炭酸塩を熟成させることで焼結性に優れた等方形状の希土類元素添加酸化セリウム粉体を製造する方法が提案されている(特許文献1参照)。
この方法は、2価または3価の希土類元素の硝酸塩とセリウムの硝酸塩とを、特定比率となるように混合し、この混合溶液に沈殿剤として炭酸水素アンモニウムを混合してセリウム炭酸塩を沈殿させ、このセリウム炭酸塩を大気中、50℃以上かつ70℃以下の温度にて熟成させ、その後、洗浄、特定の温度範囲での仮焼を施すことにより、焼結性に優れた希土類元素添加酸化セリウム系化合物粉末を製造する方法である。
この希土類元素添加酸化セリウム系化合物粉末は、焼結性に優れているので、低温度で焼結させることができる。
【特許文献1】特開2004−107186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このセリウム炭酸塩を熟成させる製造方法においても、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)のように、イオン半径がセリウム(Ce)のイオン半径と近似またはセリウム(Ce)のイオン半径より大きな希土類元素を20モル%以上含む希土類元素添加酸化セリウム系化合物粉末は、棒状〜柱状の異方形状の粒子となる。したがって、この粉末を用いて成形された成形体は、粉体の充填性が悪いために成形密度が低く、この成形体を焼成した場合、緻密な焼結体が得られず、焼結性の改善が不十分なものであるという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、焼結性に優れた等方形状の希土類元素添加酸化セリウム粉体の製造方法、特に、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)のようなイオン半径がセリウム(Ce)のイオン半径と近似またはセリウム(Ce)のイオン半径より大きな希土類元素を高濃度で含む等方形状の希土類元素添加酸化セリウム粉体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、焼結性に優れた希土類元素添加酸化セリウム粉体について鋭意検討した結果、異方形状の希土類元素添加酸化セリウム粉体を生じさせる原因が、希土類元素イオンとセリウムイオンの共存した溶液に沈殿剤を添加する共沈反応により生成する共沈物にあることを究明し、そこで、共沈物を経由しない方法で焼結性に優れた等方形状の希土類元素添加酸化セリウム粉体を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の希土類元素添加酸化セリウム粉体の製造方法は、3価のセリウムイオンを含む水溶液に過酸化物を添加し、次いで、この水溶液にアルカリ性物質を添加してセリウム水和物を含む分散液とし、次いで、このセリウム水和物を含む分散液を熟成して酸化セリウム微粒子を生成させ、次いで、この酸化セリウム微粒子を含む分散液からイオンを除去して酸化セリウム微粒子を分散させた分散液とし、次いで、この酸化セリウム微粒子を分散させた分散液に、セリウムを除く希土類元素の塩である希土類金属塩を添加し、次いで、この分散液にアルカリ性物質を添加して沈殿物を生成し、次いで、この沈殿物を熱処理することを特徴とする。
【0011】
前記熟成は、前記セリウム水和物を含む分散液を、大気圧下、80℃以上かつ100℃以下の温度範囲にて50時間以上かつ120時間以下保持することが好ましい。
前記希土類金属塩は、ランタン塩、プラセオジム塩、ネオジム塩、サマリウム塩、ガドリニウム塩、イットリウム塩、スカンジウム塩の群から選択された1種または2種以上であることが好ましい。
前記希土類金属塩の添加割合を、この希土類金属塩に含まれる希土類元素のモル数と前記酸化セリウムのモル数との合計モル数の0.1モル%以上かつ50モル%以下となるように設定することが好ましい。
前記過酸化物は、過酸化水素であることが好ましい。
前記アルカリ性物質は、アンモニア水であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の希土類元素添加酸化セリウム粉体の製造方法によれば、セリウム水和物を含む分散液を熟成して酸化セリウム微粒子を生成させ、次いで、この酸化セリウム微粒子を含む分散液からイオンを除去して酸化セリウム微粒子を分散させた分散液とし、次いで、この酸化セリウム微粒子を分散させた分散液に、セリウムを除く希土類元素の塩である希土類金属塩を添加し、次いで、この分散液にアルカリ性物質を添加して沈殿物を生成するので、成型時の充填密度が高く、焼結性に優れた等方形状の希土類元素添加酸化セリウム粉体を得ることができる。
【0013】
特に、添加する希土類元素がランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)のようなイオン半径がセリウム(Ce)のイオン半径と近似またはセリウム(Ce)のイオン半径より大きな希土類元素であっても、成型時の充填密度が高く、焼結性に優れた等方形状の希土類元素添加酸化セリウム粉体を得ることができるので、この粉体を用いて焼結密度が高い希土類元素添加酸化セリウム焼結体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の希土類元素添加酸化セリウム粉体の製造方法の最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0015】
本実施形態の希土類元素添加酸化セリウム粉体の製造方法は、3価のセリウムイオンを含む水溶液に過酸化物を添加し、次いで、この水溶液にアルカリ性物質を添加してセリウム水和物を含む分散液とし、次いで、このセリウム水和物を含む分散液を熟成して酸化セリウム微粒子を生成させ、次いで、この酸化セリウム微粒子を含む分散液からイオンを除去して酸化セリウム微粒子を分散させた分散液とし、次いで、この酸化セリウム微粒子を分散させた分散液に、セリウムを除く希土類元素の塩である希土類金属塩を添加し、次いで、この分散液にアルカリ性物質を添加して沈殿物を生成し、次いで、この沈殿物を熱処理する製造方法である。
この希土類元素「添加」酸化セリウム粉体の「添加」には、酸化セリウム結晶中に希土類元素がドープされている場合の他、酸化セリウム粉体中に希土類元素を分散させた場合も含む。
【0016】
次に、本実施形態の希土類元素添加酸化セリウム粉体の製造方法についてさらに詳しく説明する。
上記の3価のセリウムイオンを含む水溶液(以下、単に3価セリウム水溶液と略称する)に用いるセリウム化合物としては、水に対する溶解度の大きいセリウム塩であれば、特にその種類に限定されない。例えば、硝酸塩、塩化物、硫酸塩等の無機系のセリウム酸性化合物、あるいは酢酸セリウム等の有機系のセリウム酸性化合物が挙げられる。
【0017】
この3価セリウム水溶液中の3価のセリウムイオンの濃度は0.1モル/リットル(L)以上が好ましい。この3価のセリウムイオンの濃度が0.1モル/L未満であると、3価のセリウムイオンの濃度が薄すぎてしまうために、反応容器の容積の割には得られる酸化セリウム(CeO)微粒子の量が少なくなってしまうので好ましくない。この3価のセリウムイオンの濃度は、3価のセリウムイオンの飽和濃度まで可能である。
【0018】
次いで、この3価セリウム水溶液に過酸化物を添加する。
この過酸化物の添加量は、3価のセリウムイオン1モルに対して、2モル以上かつ10モル以下が好ましい。過酸化物の添加量が2モル未満であると、3価のセリウムイオンを酸化して完全に4価のセリウムイオンとすることができず、一方、10モルを超えて添加しても、過剰の過酸化物はもはや反応には寄与せず、無駄になるからである。
【0019】
この過酸化物としては、3価のセリウムイオンを酸化して完全に4価のセリウム酸化物とすることができ、かつ、生成物中に不純物として残存しないことが必要であり、例えば、過酸化水素が好ましい。
この過酸化水素を添加する場合、過酸化水素を30〜35wt/wt%含む過酸化水素水を用いることが好ましい。
【0020】
次いで、この3価セリウム水溶液に、pHの値が8以上になるまでアルカリ性物質を添加する。このアルカリ性物質としては、金属イオンを含まないアルカリ性物質が好ましく、例えば、アンモニア水が好ましい。
この3価セリウム水溶液のpHの値を8以上とすることで、添加された過酸化水素が酸化剤として機能し、3価のセリウムイオンを酸化して4価のセリウムイオンにするとともに、この4価のセリウムイオンが溶液中の水酸イオンと水和反応し、セリウム水和物を生成する。このセリウム水和物は溶液中に均一に分散しているので、上記の3価セリウム水溶液はセリウム水和物を含む分散液となる。
【0021】
次いで、このセリウム水和物を含む分散液を熟成する。
この熟成は、セリウム水和物を含む分散液を、大気圧下、80℃以上かつ100℃以下の温度範囲にて50時間以上かつ120時間以下、好ましくは60時間以上かつ100時間以下保持することである。
ここで、温度範囲を、大気圧下、80℃以上かつ100℃以下とした理由は、80℃未満であると、効果的な反応速度が得られないからであり、一方、100℃を越えると、このセリウム水和物を含む分散液の溶媒が水であるために、突沸等により分散液の均一な熟成ができない虞があるからである。
この熟成により、セリウム水和物を含む分散液に脱プロトン反応と脱水反応が生じ、その結果、酸化セリウム(CeO)微粒子が生成する。
【0022】
生成した酸化セリウム微粒子(CeO)を洗浄することにより、酸化セリウム(CeO)微粒子に付着する未反応物や不純物であるイオン性物質を十分に除去する。洗浄は、酸化セリウム(CeO)微粒子を含む分散液の濃縮、濃縮された分散液へ純水を添加、という工程を繰り返すことが好ましい。濃縮は、高分子中空糸膜を用いた限外濾過膜を使用することが好ましい。
この洗浄を、限外濾過膜による濾液の電導度が10μs/cm未満になるまで行うことにより、酸化セリウム微粒子(CeO)から十分にイオン性物質を除去することができる。したがって、高純度の酸化セリウム(CeO)微粒子が分散した分散液を得ることができる。
【0023】
この酸化セリウム(CeO)微粒子が分散した分散液に、セリウムを除く希土類元素の塩である希土類金属塩を添加する。
この希土類金属塩としては、水に対する溶解度の大きい希土類金属塩であれば良く、特にその種類に限定されないが、例えば、硝酸塩、塩化物、硫酸塩等の無機系の希土類酸性化合物、あるいは酢酸塩等の有機系の希土類酸性化合物が挙げられる。
特に、ガスセンサ、固体電解質型燃料電池等に適用する場合、この希土類金属塩としては、ランタン塩、プラセオジム塩、ネオジム塩、サマリウム塩、ガドリニウム塩、イットリウム塩、スカンジウム塩の群から選択された1種または2種以上であることが好ましい。
【0024】
この希土類金属塩の添加割合は、0.1モル%以上かつ50モル%以下となるように設定することが好ましい。
この添加割合とは、次の式により算出される割合をいう。
希土類金属塩の添加割合(モル%)
={希土類元素のモル数/(酸化セリウム(CeO)のモル数+希土類元素のモル数)}×100
この希土類金属塩の添加割合が0.1モル%未満では、希土類元素を添加しても十分なイオン導電性が得られず、ガスセンサや固体電解質型燃料電池等に用いても十分に機能しないからであり、一方、添加割合が50モル%を超えると、通常の熱処理では希土類元素の添加が困難になるからである。
【0025】
この希土類金属塩がランタン(La)塩の場合、ランタン塩の添加割合は0.1モル%以上かつ50モル%以下、好ましくは35モル%以上かつ40モル%以下となるように設定することが好ましい。
また、この希土類金属塩がサマリウム(Sm)塩の場合、サマリウム塩の添加割合は0.1モル%以上かつ50モル%以下、好ましくは15モル%以上かつ30モル%以下となるように設定することが好ましい。
【0026】
この希土類金属塩が添加された分散液に、pHの値が8以上になるまでアルカリ性物質を添加する。このアルカリ性物質としては、金属イオンを含まないアルカリ性物質が好ましく、例えば、アンモニア水が好ましい。
この分散液のpHの値を8以上とすることで、酸化セリウム(CeO)微粒子は凝集物として沈殿し、添加された希土類元素も水酸化物として沈殿する。
【0027】
得られた沈殿物を、必要に応じて副生物を除去、乾燥した後、400℃以上かつ1200℃以下、好ましくは700℃以上かつ1100℃以下の温度範囲にて熱処理することにより、希土類元素が添加された酸化セリウム粉体を得る。
ここで、熱処理温度が400℃未満であると、希土類元素の添加が不充分なものとなり、一方、1200℃を越えると、得られる希土類元素添加酸化セリウム粉体の比表面積が低下し、粒径も増大し、その結果、焼結性が低下するので好ましくない。
熱処理時間は、処理量にもよるが、3時間以上かつ50時間以下が好ましい。
【0028】
このようにして得られた希土類元素添加酸化セリウム粉体は、希土類元素を、この希土類元素と酸化セリウム(CeO)の合計モル数に対して0.1モル%以上かつ50モル%以下という高濃度で含む等方形状の粉体であるから、この粉体を加圧成形する際の充填密度が高く、焼結性も優れている。
【0029】
特に、添加する希土類元素がランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)のようなイオン半径がセリウム(Ce)のイオン半径と近似またはセリウム(Ce)のイオン半径より大きな希土類元素を酸化セリウムに対して0.1モル%以上かつ50モル%以下という高濃度で添加しても、BET比表面積が1〜10m/gの等方形状の粉体が得られるので、粉体を加圧成形する際の充填密度が高く、焼結性にも優れている。
【0030】
本実施形態の希土類元素添加酸化セリウム粉体の製造方法によれば、ランタン(La)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)のようなイオン半径がセリウム(Ce)のイオン半径と近似またはセリウム(Ce)のイオン半径より大きな希土類元素を添加した酸化セリウム粉体であっても、焼結性に優れた等方形状の希土類元素添加酸化セリウム粉体を得ることができる。
【0031】
また、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)のようなイオン半径がセリウム(Ce)のイオン半径と近似またはセリウム(Ce)のイオン半径より大きな希土類元素を酸化セリウムに対して0.1モル%以上かつ50モル%以下という高濃度で添加しても、BET比表面積が1〜10m/gの等方形状の焼結性に優れた希土類元素添加酸化セリウム粉体を得ることができる。
【0032】
この希土類元素添加酸化セリウム粉体は、充填密度が高く、焼結性にも優れているので、焼結体の相対密度が80%以上、好適には90%以上の緻密な焼結体を容易に得ることができる。
ここで、相対密度とは、下記の式で算出した値である。
相対密度(%)={見かけ密度(g/cm)/理論密度(g/cm)}
×100
【0033】
なお、焼結体の見掛け密度は、(1)焼結体の寸法と重量を基に算出、(2)アルキメデス法により測定、のいずれかの方法により求めることができる。
また、理論密度は、測定する焼結体を粉砕して得られた試料の格子定数を、標準試料の特定の結晶格子面の回折線、例えば、塩化ナトリウム(NaCl)の(200)面の回折線を基準にして、上記の試料の回折角を補正して求め、この補正値を基に算出することができる。
この緻密な焼結体は、例えば、ガドリニウム(Gd)やサマリウム(Sm)を添加した酸化セリウムの固体電解質としての性質を利用して固体電解質型燃料電池部材などに利用することができる。
【0034】
また、固体電解質としてランタンガレードを使用した低温作動型燃料電池においては、ランタンガレード固体電解質と電極との界面の反応による性能低下を抑制するために、この界面に40モル%のランタン(La)が添加された酸化セリウムの焼結体からなる反応抑制層を設けることが提案されている(Journal of Electrochemical Society.,148巻、7号、p.p.A788〜A794、2001年)。
本発明の製造方法によって得られた希土類元素添加酸化セリウム粉体は、焼結性に優れているため、例えば、相対密度が80%以上、好適には90%以上の緻密な焼結体を容易に得ることができる。そこで、この緻密な焼結体を上記の反応抑制層へ適用すれば、低温作動型燃料電池の放充電特性を向上させることができる。
【0035】
なお、本実施形態の希土類元素添加酸化セリウム粉体の製造方法は、成型時の充填密度が高く、焼結性に優れた等方形状の希土類元素添加酸化セリウム粉体を得ることができるもので、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)のようなイオン半径がセリウム(Ce)のイオン半径と近似またはセリウム(Ce)のイオン半径より大きな希土類元素の替わりに、ガドリニウム(Gd)、イットリウム(Y)、スカンジウム(Sc)等のようなイオン半径がセリウム(Ce)のイオン半径より小さな希土類元素を用いても、全く同様に、成型時の充填密度が高く、焼結性に優れた等方形状の希土類元素添加酸化セリウム粉体を得ることができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例1、2及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
「実施例1」
純水1Lに硝酸セリウム6水和物(Ce(NO・6HO)216gを溶解して3価のセリウムイオン水溶液を作製し、この3価のセリウムイオン水溶液に過酸化水素水溶液(過酸化水素:30wt/wt%)226gを添加した。さらに、攪拌しながらアンモニア水(アンモニア:28wt/wt%)を滴下し、水溶液のpHを8.7に調整し、分散液とした。
次いで、この分散液をエバポレータ(凝縮器付き容器)に収容し、熟成した。熟成条件は、大気圧下、95℃にて72時間保持することとした。
【0037】
次いで、中空子膜を用いた限外ろ過膜により、濃縮と純水の添加を繰り返し,限外ろ過膜から排出される濾液の電気電導度が5.6μS/cmになるまで洗浄を行った。このようにして、酸化セリウム(CeO)微粒子が分散した分散液を得た。
次いで、この分散液に硝酸ランタン6水和物(La(NO・6HO)144gを溶解し、次いで、アンモニア水(アンモニア:28wt/wt%)を滴下し、この分散液のpHを8.9に調整し、沈殿物を得た。次いで、この沈殿物を洗浄、乾燥し、その後、大気中、700℃にて3時間熱処理し、粉体を得た。
【0038】
その後、X線回折装置を用いて、この粉体の組成及び結晶状態を調べたところ、立方晶の酸化セリウム(CeO)単相であることが分かった。
また、ICP発光分光分析法により、この粉体におけるランタン(La)のドープ量を調べたところ、40モル%であることが分かった。
また、上記の粉体の透過型電子顕微鏡像(TEM像)を観察したところ、図1に示すように、球状であり、等方性の形状を呈していた。
以上により、この粉体は、ランタン(La)を40モル%ドープした等方形状の酸化セリウム(CeO)であることが確認された。
【0039】
次に、このランタンドープ酸化セリウム粉体を、成形機を用いて200MPaの1軸圧で円板状に成形した後、焼成炉を用いて、大気中、1400℃にて3時間焼成し、円板状のランタンドープ酸化セリウム焼結体を得た。この焼結体の相対密度は92%であった。
ここでは、この焼結体の見掛け密度を、この焼結体の寸法と重量を基に算出した。また、この焼結体の理論密度を、測定する焼結体を粉砕して得られた試料の格子定数を、塩化ナトリウムの(200)面の回折を基準にして、上記の試料の回折角を補正して求め、この補正値を基に算出した。
【0040】
「実施例2」
実施例1に準じて、酸化セリウム(CeO)微粒子が分散した分散液を得た。 次いで、この分散液に硝酸サマリウム6水和物(Sm(NO・6HO)95gを溶解し、次いで、アンモニア水(アンモニア:28wt/wt%)を滴下し、この分散液のpHを8.8に調整し、沈殿物を得た。次いで、この沈殿物を洗浄、乾燥し、その後、大気中、700℃にて3時間熱処理し、粉体を得た。
【0041】
その後、実施例1と同様の方法により、この粉体におけるサマリウム(Sm)のドープ量を調べたところ、30モル%であることが分かった。
また、この粉体の透過型電子顕微鏡像(TEM像)を観察したところ、図2に示すように、球状であり、等方性の形状を呈していた。
以上により、この粉体は、サマリウム(Sm)を30モル%ドープした等方形状の酸化セリウム(CeO)であることが確認された。
また、このサマリウムドープ酸化セリウム粉体を、実施例1に準じて焼成し、円板状のサマリウムドープ酸化セリウム焼結体を得た。この焼結体の相対密度を実施例1に準じて測定したところ、95%であった。
【0042】
「比較例」
実施例1に準じて、3価のセリウムイオン水溶液を作製した。次いで、この3価のセリウムイオン水溶液に硝酸ランタン6水和物(La(NO・6HO)144gを溶解し、次いで、アンモニア水(アンモニア:28wt/wt%)を滴下し、この水溶液のpHを9.0に調整し、沈殿物を得た。次いで、この沈殿物を洗浄、乾燥し、その後、大気中、1000℃にて36時間焼成し、ランタン(La)ドープ酸化セリウム(CeO)粉体を得た。
【0043】
その後、実施例1と同様の方法により、この粉体におけるランタン(La)のドープ量を調べたところ、40モル%であった。
また、この粉体の透過型電子顕微鏡像(TEM像)を観察したところ、棒状であり、異方性の形状を呈していた。
以上により、この粉体は、ランタン(La)を40モル%ドープした異方形状の酸化セリウム(CeO)であることが確認された。
【0044】
また、このランタンドープ酸化セリウム粉体を、実施例1に準じて焼成し、円板状のランタンドープ酸化セリウム焼結体を得た。この焼結体の相対密度を実施例1に準じて測定したところ、62%と非常に低いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の希土類元素添加酸化セリウム粉体の製造方法は、成型時の充填密度が高く、焼結性に優れた等方形状の希土類元素添加酸化セリウム粉体を得ることができるものであるから、酸化セリウム以外の希土類元素酸化物に対しても適用可能であり、その産業的利用価値は非常に大きなものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施例1のランタン(La)ドープ酸化セリウム(CeO)粉体を示す透過型電子顕微鏡(TEM)像である。
【図2】本発明の実施例2のサマリウム(Sm)ドープ酸化セリウム(CeO)粉体を示す透過型電子顕微鏡(TEM)像である。




 

 


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