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発明の名称 農業用マルチフィルム
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−209204(P2007−209204A)
公開日 平成19年8月23日(2007.8.23)
出願番号 特願2006−29275(P2006−29275)
出願日 平成18年2月7日(2006.2.7)
代理人
発明者 田中 茂 / 増田 順一 / 光岡 秀人
要約 課題
透気性に優れ、防虫剤、肥料、除草剤等の薬剤の含有量が高く、薬剤効果の持続性に優れ、機械強度高くて施工性に優れ、農作物の育成に最適な農業用マルチフィルムを提供せんとするものである。

解決手段
本発明の農業用マルチフィルムは、フィルム厚み25μmあたりのJIS P8117に基づいて測定されるガーレ値で表される透気度が50〜5000sec/100mlの範囲であるボイドを有するポリプロピレンフィルムが、該ボイド内に、防虫剤、肥料および除草剤から選ばれた少なくとも1種を10ml/m〜22ml/mの範囲で含有してなり、かつ、該ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に、ポリエステル系フィルムが積層されてなることを特徴とする。
特許請求の範囲
【請求項1】
フィルム厚み25μmあたりのJIS P8117に基づいて測定されるガーレ値で表される透気度が50〜5000sec/100mlの範囲である実質的に無核のボイドを有するポリプロピレンフィルムが、該ボイド内に、防虫剤、肥料および除草剤から選ばれた少なくとも1種を10ml/m〜22ml/mの範囲で含有してなり、かつ、該ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に、ポリエステル系フィルムが積層されてなることを特徴とする農業用マルチフィルム。
【請求項2】
該ポリプロピレンフィルムの長手方向と幅方向の破断強度が、それぞれ50MPa以上であることを特徴とする請求項1に記載の農業用マルチフィルム。
【請求項3】
該ポリプロピレンフィルムが、コア層(B層)の少なくとも片面にスキン層(A層)が積層されてなる2層以上の積層構造を有し、かつ、該A層の空隙率が該B層よりも10%以上低いことを特徴とする請求項1または2に記載の農業用マルチフィルム。
【請求項4】
該ポリプロピレンフィルムが二軸配向されていることを特徴とする請求項3に記載の農業用マルチフィルム。
【請求項5】
該ポリプロピレンフィルムの全厚みが10〜60μmの範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の農業用マルチフィルム。
【請求項6】
該ポリエステル系フィルムが、薬剤揮発防止用の離型フィルムであり、そのフィルム厚みが3〜30μmの範囲であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の農業用マルチフィルム。

発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、透気度が高くて透気性に優れ、薬剤の含浸量が高く、また薬剤保持性に優れ、機械強度高くて施工性に優れ、農作物の育成に最適な農業用マルチフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、畑で作られる野菜や果物などの農作物に害虫がつくのを防ぐために農薬散布がされていたが、近年では農薬の人体への影響を考慮して無農薬野菜や果物が注目されている。しかしながら、無農薬野菜や果物は管理が難しく、生産性に劣るのが問題であった。畑で作られる農作物に危害を及ぼす害虫の多くは土壌中に住み、夜に活動する。そこで、近年では、農薬散布をせずに土壌の害虫から農作物を守るために、防虫剤を含浸させた塩化ビニル製のマルチフィルムを土壌の上に敷く方法が主に用いられてきた。マルチフィルムを土壌の上に敷くことにより、雑草の成長を抑制し、土壌の保温性が高くなり育苗を促進することができる。しかし、従来用いられている塩化ビニル製マルチフィルムは焼却時にダイオキシン類を発生する可能性が指摘されている。そこで、塩化ビニル製マルチフィルムに代わるフィルムとして、低密度ポリエチレン製マルチフィルムが用いられているが、透気性がないために土壌が蒸れて土壌とフィルム間にカビが発生し、農作物が腐ってしまうという問題があった。そこで、微細孔を有し、分子鎖長が2850nm以上のポリオレフィンを含むポリオレフィン系熱可塑性樹脂からなる農業用マルチングフィルムが提案されている(特許文献1)。しかし、特許文献1では、ボイド形成材として無機粒子を30vol%と多量に添加しているために、破断強度が低く取り扱い時に破れ易く、作業時に遊離した無機粒子を吸引する危険性も有しており、また、揮散性化合物の効果維持や、揮発防止についての配慮がなされておらず、長期間の保管性に劣るという問題があった。また、熱可塑性樹脂発泡フィルムに揮散性化合物を含浸させてなる揮散性化合物含浸体であって、揮散性化合物を含浸させることにより。外観が不透明から透明に変化することを特徴とする揮散性化合物含浸体がある(特許文献2)。特許文献2に用いられている熱可塑性樹脂発泡フィルムは、市販の発泡(ボイド含有)フィルムに揮散性化合物を含浸させ、該揮散性化合物の残量が目視で判断できることを目的としたものであって、用いられているフィルムは透気性に劣り、また、揮散性化合物の含浸速度が遅くてマルチフィルムの生産性に劣り、さらに、マルチフィルムの性能についての配慮がなく、用いられているフィルムが透気性に劣るために土壌が蒸れて土壌とフィルム間にカビが発生し、農作物が腐ってしまうという問題があった。またさらに、揮散性化合物の効果維持や、揮発防止についての配慮がなされておらず、長期間の保管性に劣るという問題があった。また、ポリプロピレン中に無機粒子やポリエステル系樹脂などの非相溶性樹脂を含有せしめ、延伸工程でポリプロピレンと無機粒子や非相溶性樹脂の界面を剥離させ、ボイドを形成したフィルムがある(例えば、特許文献3、4参照)。特許文献3、4でのフィルムでは透気性に劣り、薬剤の含浸速度が遅く実用性に劣るという問題があった。また、ボイド形成材を添加せずに、β晶の結晶転移を用いた微多孔フィルムおよびその製造方法としては、例えば、ポリプロピレンとポリプロピレンよりも溶融結晶化温度の高いポリマーとβ晶核剤よりなるポリプロピレンシートを延伸したポリプロピレン微多孔フィルムの製造方法(特許文献5参照)や、特定組成のポリプロピレンとアミド系β晶核剤の樹脂組成物を溶融押出し、特定条件で結晶化・延伸する微多孔フィルムの製造方法(特許文献6参照)や、特定孔径、特定窒素透過係数を有し、面内の力学性能が均一で、特定条件で測定したβ晶比率(K値)が特定範囲であるシートを二軸延伸して得られる微多孔フィルム(特許文献7参照)や、特定組成のポリプロピレン、ポリエチレン、β晶核剤の樹脂組成物を溶融成形後、特定条件で延伸する微多孔フィルムの製造方法がある(特許文献8参照)。特許文献5〜8のフィルムはいずれも透気性を得るために創意工夫されたものであって、マルチフィルムとしての機能性および薬剤含浸と保持性についての配慮がなく、農業用マルチフィルムへの実用性について推察できるものではない。
【特許文献1】特開2003−210053号公報(請求項1〜3)
【特許文献2】特開2004−129844号公報(請求項1〜6)
【特許文献3】特許第2599934号公報(請求項1)
【特許文献4】特許1748101号公報(請求項1〜15)
【特許文献5】特許1974511号公報(請求項1)
【特許文献6】特許3443934号公報(請求項1〜5)
【特許文献7】特許2509030号公報(請求項1〜8)
【特許文献8】特許3523404号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、透気性に優れ、防虫剤、肥料、除草剤等の薬剤の含浸量が高く、薬剤効果の持続性に優れ、機械強度高くて施工性に優れ、農作物の育成に最適な農業用マルチフィルムを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の農業用マルチフィルムは、フィルム厚み25μmあたりのJIS P8117に基づいて測定されるガーレ値で表される透気度が50〜5000sec/100mlの範囲である実質的に無核のボイドを有するポリプロピレンフィルムが、該ボイド内に、防虫剤、肥料および除草剤から選ばれた少なくとも1種を10ml/m〜22ml/mの範囲で含有してなり、かつ、該ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に、ポリエステル系フィルムが積層されてなることを特徴とするものである。
【0005】
本発明のさらに好ましい態様は、
(1)該ポリプロピレンフィルムの長手方向と幅方向の破断強度が、それぞれ50MPa以上であること。
【0006】
(2)該ポリプロピレンフィルムが、コア層(B層)の少なくとも片面にスキン層(A層)が積層されてなる2層以上の積層構造を有し、かつ、該A層の空隙率が該B層よりも10%以上低いこと該ポリプロピレンフィルムの長手方向と幅方向の破断強度が、それぞれ50MPa以上であること。
【0007】
(3)該ポリプロピレンフィルムが二軸配向されており、かつ、該B層が実質的に無核のボイドを有するものであること。
【0008】
(4)該ポリプロピレンフィルムの全厚みが10〜60μmの範囲であること。
【0009】
(5)該ポリエステル系フィルムが、薬剤揮発防止用の離型フィルムであり、そのフィルム厚みが3〜30μmの範囲であること。
【0010】
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下のような農作物の育成に優れた特性を発揮する農業用マルチフィルムを提供することができる。
【0012】
(1)透気度が高く、蒸れやカビの発生を抑えることができる。
【0013】
(2)薬剤含浸量が高く、長期間薬剤効果を維持できる。
【0014】
(3)薬剤を含浸させたフィルムを用いることにより、薬剤の誤飲や、目に薬剤が入ることがなく、安全に施行することができる。
【0015】
(4)フィルムの長手方向と幅方向の破断強度が高く、作業性(施行性)に優れる。
【0016】
(5)ポリプロピレンフィルムが、実質的に無核のボイドを有し、二軸配向していること
から、ボイド核の飛散がなくて、作業環境がよく、取り扱い性に優れる。
【0017】
(6)ポリエステル系フィルムを積層することによって、ロール状に巻かれたマルチフィルムの薬剤の揮発防止性に優れ、長期間の保管が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、前記型第、つまり透気性に優れ、防虫剤、肥料、除草剤等の薬剤の含浸量が高く、薬剤効果の持続性に優れ、機械強度高くて施工性に優れ、農作物の育成に最適な農業用マルチフィルムについて、鋭意検討し、特定な多孔性のポリプロピレンフィルムを選択して、これに薬剤を含有させ、こうして得られた薬剤含有ポリプロピレンフィルムを補強性および気密性に優れたポリエステル系フィルムに積層して包み込むように巻き込んでみたところ、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0019】
以下、本発明の農業用マルチフィルムを得る最良の形態、ならびに本発明の農業用マルチフィルムを適用したときの効果について例にとって説明する。
【0020】
本発明の農業用マルチフィルムのポリプロピレンフィルムは、フィルム厚み25μmあたりのガーレ透気度が50〜5000sec/100mlの範囲であるボイドを有するものであることが必要である。ガーレ透気度が50sec/100ml未満では、透気性が高くなりすぎて薬剤の揮発が早く効果の維持期間が短くなるので好ましくなく、また、土壌の保温効果も低下するので好ましくない。ガーレ透気度が5000sec/100mlを越えると通気性に劣り、土壌とフィルム間で蒸れが起こり、カビなどが発生して農作物の育成を阻害する場合がある。
【0021】
本発明の農業用マルチフィルムのかかるポリプロピレンフィルムは、該ボイド内に、防虫剤、肥料および除草剤から選ばれた少なくとも1種を含有するものである。すなわち、水溶性または有機溶剤系の薬剤である防虫剤、肥料、除草剤の少なくとも1種以上が、フィルム厚み25μmあたり10ml/m〜22ml/mの範囲で含浸されて、含有されていることが必要である。フィルム厚み25μm換算での薬剤含浸量が10ml/m未満では、農作物の収穫期間前に薬剤の効果がなくなり、害虫の被害にあう場合があるので好ましくない。また、フィルム厚み25μm換算での薬剤含浸量が22ml/mを越えると、薬剤が表面に滲み出てベタツキを生じ、滲み出た薬剤に皮膚に触れて被れ等の薬害が起こる場合があるので好ましくない。
【0022】
水溶性または有機溶剤系の薬剤である防虫剤としては、例えばパラニトロフェニル、チオホスフェイト、イソプロピルアンモニウム、パラジクロロベンゼン、ナフタリン、樟脳、アレスリン、プラレトリン、フタルスリン、レスメトリン、ペルメトリン、フェノトリン、イミプロスリン、トランスフルスリン、フェンバレレート、ジペルメトリン、ジフェノトリン、エンペントリン、テラレスリン、フェンプロパトリン、フェンフルスリン等を挙げることができ、これらの1種を単独、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
肥料としては、例えば水溶性リン酸、水溶性カリウム、水溶性マンガン、水溶性ホウ素、キトサンオリゴ糖、アンモニウム窒素などを挙げることができ、これらの1種を単独、または2種以上を組み合わせて用いることができ、アルコール濃度20%以上の水に適度に薄めて含浸させる。
【0024】
除草剤としては、2.6−ジクロロベンゾニトリル、3(3.4−ジクロロフェニル)−1.1−ジメチル尿素等等を挙げることができ、これらの1種を単独、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
本発明の農業用マルチフィルムのポリプロピレンフィルムは、空隙率が40〜85%の範囲であるようなボイドを有することが好ましい。空隙率が40%未満では水溶性または有機溶剤系の薬剤の含浸量が低くなり、薬剤の効果維持期間が短く、空隙率が85%を越えると、機械強度が低下して取り扱い性に劣る場合がある。
【0026】
本発明の農業用マルチフィルムのポリプロピレンフィルムは、長手方向と幅方向の破断強度がそれぞれ50MPa以上であることが好ましい。長手方向と幅方向の破断強度がそれぞれ50MPa未満では、フィルムを土壌の上に敷く際にフィルムが破れ易く、好ましくは長手方向と幅方向の破断強度は、60〜300MPaの範囲であることが、フィルムの柔軟性も維持して取り扱い性がよいので好ましい。
【0027】
本発明の農業用マルチフィルムのかかるポリプロピレンフィルムは、全体的にポリプロピレンフィルムで構成された積層構造であってもよい。つまり、上述のボイドを有するポリプロピレンフィルムからなるコア層(B層)の少なくとも片面に別のポリプロピレンフィルムからなるスキン層(A層)が積層されてなる2層以上の積層構造を有し、かつ、該A層の空隙率が該B層よりも低い、やはりボイドを有するポリプロピレンフィルムで積層したものを使用することができる。かかるA層の空隙率は、B層よりも好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上低いことが好ましい。空隙率の高いコア層(B層)の上に、空隙率の低いスキン層(A層)を積層することによって、フィルムの破断強度が高くなり、また、薬剤の揮発速度を抑制して、効果を持続することができるので好ましい。A層とB層の空隙率の差が10%未満では、スキン層を積層する効果がない。
【0028】
該ポリプロピレンフィルムは、二軸配向していることが好ましい。フィルムを縦−横二軸延伸して配向させることによりフィルム内に微細なボイドを数多く生成して高空隙率のフィルムが得られ、長手方向と幅方向の破断強度が高くなるので好ましい。二軸配向の方法としては、チューブラー延伸法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法いずれでも良いが、経済性およびボイド形成性の点で逐次二軸延伸法が好ましい(以下、二軸配向したポリプロピレンフィルムをOPPと略称する場合がある)。
【0029】
また、かかる積層構造を有するボイドを有するOPPにおいて、該OPPのコア層(B層)は、実質的に無核のボイドを有していることが必要である。実質的に無核のボイドを有することにより、フィルム内のボイド数が多くなり、空隙率が高く溶剤含浸量が高くなり、透気性も高くなるので好ましい。従来のようにボイド形成材として無機又は有機の粒子や非相溶性樹脂性をポリエチレンまたはポリプロピレン樹脂に多量に添加して二軸延伸し、ボイド形成材を核とするボイドを形成したフィルムは、二軸延伸した際にボイド形成材の分散性不良または凝集によって巨大なボイドが形成されて透気性を高くできず、また、フィルム強度が低くなり土壌への施行工程において、フィルム破れが起こり易く、フィルムから脱落したボイド核を吸引して人体に影響を及ぼす可能性がある。
【0030】
ここで、実質的にボイド核を有さないとは、フィルムの断面を、走査型電子顕微鏡S−2100A形((株)日立製作所製)を用いて5000倍に拡大観察して撮影した断面写真を用いて、1000μm当たりの全ボイド数(境界線を有する単独ボイドの大小全て)と、核を有するボイド数を数え、核を有するボイド数を全ボイド数で割った値が5%以下を、実質的にボイド核を有さないとした。なお、フィルム断面のボイド観察に当たっては、互いに異なる測定視野から任意に選んだ計10箇所の断面写真計10枚を使用した。
【0031】
該ポリプロピレンフィルムの全厚みは10〜60μmの範囲であることが、薬剤の含浸量および取り扱い性、また、ロール状への巻き取り性から好ましい。また、上記スキン層(A層)とコア層(B層)の厚み比は、1:10〜1:60の範囲出あることが、フィルムの強度と薬剤の含浸量を両立できて好ましい。
【0032】
次に、本発明の農業用マルチフィルムでは、水溶性または有機溶剤系の薬剤である防虫剤、肥料、除草剤の少なくとも1種以上が、フィルム厚み25μmあたり10ml/m〜22ml/mの範囲で含浸されたポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に、ポリエステル系フィルムが積層されていることが必要である。薬剤を含浸させてポリプロピレンフィルムの少なくとも片面にポリエステル系フィルムを積層しロール状に巻き取ることにより、ポリエステルフィルムがポリプロピレンフィルムの両面を覆うような構成となることによって、ポリプロピレンフィルムに含浸された薬剤の揮発を抑制し、長期保管を可能することができる。ポリエステル系フィルムを片面に積層する場合は、ロール状に巻き取る時にポリエステル系フィルムが外側にくるように積層することが、最表層部の薬剤の揮発を抑制できるので好ましい。
【0033】
該ポリエステル系フィルム積層を積層しないで、薬剤を含浸したポリプロピレンフィルム単体をロール状に巻き取って保管すると、保管中に薬剤が揮散して商品価値が低下する場合がある。この時、ポリエステル系フィルム積層により揮散量が20%以上少くなることが、ポリエステル系フィルムを積層した効果として好ましい。
【0034】
該ポリエステル系フィルムとは、例えばポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略称する)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2.6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリプロピレンテレフタレートのフィルム等が挙げられ、その中でも、薬剤透過性が低く、薄膜で、ポリプロピレンフィルムとの剥離が容易にできるPETフィルムが好ましい。該PETフィルムは、縦−横もしくは横−縦逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法、さらには二軸延伸後の再延伸されたフィルムなどを用いることができる、
該PETフィルムとしては、市販のフィルムを用いることができ、その例として、東レ株式会社製の“ルミラー”(登録商標)、帝人デュポンフィルム株式会社製の“テフレックス” (登録商標)“テトロン” (登録商標)、東洋紡株式会社製“エステル” (登録商標)、三菱化学株式会社製“ダイアホイル” (登録商標)などを挙げることができる。フィルムは、透明、マット調、白色いずれでもよいが、薬剤を含浸したOPPの状態がよくわかるので透明のフィルムが好ましい。 ポリエステル系フィルムの厚みは3〜30μmの範囲であり、フィルムの価格と剥離性から、5〜20μmの範囲が、OPPとの剥離がスムーズで、また、OPPに積層してロール状に巻き取った時の巻径が大きくならずに好ましい。
【0035】
厚みが3μm未満では、剥離時に破れが起きたり、また、OPPと積層する際にしわが入る場合がある。また、30μmを超えると、OPPに積層してロール状に巻き取った時の巻径が大きくなり、また、フィルム価格も高価となって経済性に劣り、剥離後のフィルムの廃棄処理性にも劣る。
【0036】
本発明の農業用マルチフィルムのOPPとポリエステル系フィルムの剥離強度は、引き剥がし角度180°、剥離速度300mm/分の条件下で、20〜200g/15mmであり、より好ましくは30〜150g/15mmであることが、剥離性と巻き取り性が容易となり好ましい。剥離強度が20g/15mm未満の場合、積層してロール状に巻き取る際に空気をかみ込みやすく、外観又は、薬剤が揮散しやすくなる。また、剥離強度が200g/15mmよりも大きい場合、OPPとの剥離時にOPPの破壊が起こる場合がある。
【0037】
本発明の農業用マルチフィルムのOPPまたはOPP積層体のコア層(B層)は、ポリプロピレンを主成分とする。ここで、ポリプロピレンを主成分とすることは、フィルムを構成する全ての樹脂がポリプロピレンであることを意味するが、本発明の効果を奏する限り、例えば、下記に例示するようなポリプロピレン以外の樹脂、添加剤などを含有せしめても構わない。
【0038】
かかるOPPまたはOPPのB層を構成するポリプロピレンは、主としてプロピレンの単独重合体からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でポリプロピレンと他の不飽和炭化水素の単量体成分が共重合された重合体であってもよいし、プロピレンとプロピレン以外の単量体成分が共重合された重合体がブレンドされてもよいし、プロピレン以外の不飽和炭化水素の単量体成分の(共)重合体がブレンドされてもよい。このような共重合成分やブレンド物を構成する単量体成分として、例えば、エチレン、プロピレン(共重合されたブレンド物の場合)、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチルペンテン−1、3−メチルブテン−1、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、5−エチルヘキセン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、アリルベンゼン、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、アクリル酸およびそれらの誘導体などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0039】
本発明のOPPまたはOPPのB層を構成するポリプロピレンは、製膜性向上の観点から、いわゆる高溶融張力ポリプロピレン(High Melt Strength−PP:以下、単にHMS−PPと略称する場合がある)を含有することが好ましい。特にB層を構成するポリプロピレンが、HMS−PPを含有することにより、含有しない場合に比較して、延伸時の破れが少なく、製膜性が向上する。また、縦方向に低温・高倍率延伸しても横延伸でフィルムが破れることなく製膜安定性が向上できる。したがって、含有しない場合に比較して、キャスト工程における金属ドラムの周速が同じでも、縦高倍率延伸によりライン速度を高められることから、単位時間当たりのフィルムの生産量を高められることから、生産性を著しく高められる。これは、HMS−PPを含有することにより、未延伸シートの段階から、系内の微結晶を貫く非晶相のタイ分子の絡み合いが促進され、これによりその後の延伸過程で延伸応力が系全体に均一に伝達されるためと推定される。
【0040】
HMS−PPを得る方法としては、例えば、高分子量成分を多く含むポリプロピレンをブレンドする方法、分岐構造を持つオリゴマーやポリマーをブレンドする方法、特開昭62−121704号公報に記載されているように、ポリプロピレン分子中に長鎖分岐構造を導入する方法、あるいは特許第2869606号公報に記載されているように、長鎖分岐を導入せずに溶融張力と固有粘度、結晶化温度と融点とがそれぞれ特定の関係を満たし、かつ沸騰キシレン抽出残率が特定の範囲にある直鎖状の結晶性ポリプロピレンとする方法などが好ましく用いられる。
【0041】
これらHMS−PPのうち、本発明のOPPまたはOPPのB層には、溶融押出の安定化効果、生産性の向上効果が大きいことから、主鎖骨格中に長鎖分岐を有するポリプロピレンを用いることが特に好ましい。なお、主鎖骨格中に長鎖分岐を有するポリプロピレンとは、ポリプロピレン主鎖骨格から主鎖同等の長さを有する枝分かれしたポリプロピレン鎖を有するポリプロピレンである。
【0042】
上記した主鎖骨格中に長鎖分岐を有するポリプロピレンの具体例としては、Basell社製ポリプロピレン(タイプ名:PF−814、PF−633、PF−611、SD−632など)、Borealis社製ポリプロピレン(タイプ名:WB130HMSなど)、Dow社製ポリプロピレン(タイプ名:D114、D201、D206など)などが挙げられる。
【0043】
上記HMS−PPの添加量は、用いるHMS−PPの性能にもよるが、B層の樹脂全体の全量に対して、1〜20重量%であることが好ましい。HMS−PPの添加量が上記範囲未満であると、製膜性向上の効果が得られない場合がある。HMS−PPの添加量が上記範囲を超えても効果は同等であり、経済性に劣ったり、比重が高くなる場合がある。HMS−PPの添加量は、より好ましくは、1〜15重量%である。
【0044】
また、特に縦方向に高倍率延伸する場合には、コア層(B層)だけでなく、スキン層(A層)にも上記HMS−PPを含有せしめることが好ましい。これにより、製膜工程において、スキン層(A層)がコア層(B層)に追従し、フィルム全体がより安定に延伸される(当該業者は、この状態をB層とA層の共延伸性が高い状態という場合がある)場合がある。
【0045】
本発明のOPPまたはOPP積層体のB層を構成するポリプロピレンのアイソタクチックインデックス(以下、IIと略称する場合がある)は、90〜99.8%であることが好ましい。IIが上記範囲未満であると、フィルムの強度が低下する場合がある。IIが上記範囲を超えると、製膜が不安定になる場合がある。B層のポリプロピレンのIIは、より好ましくは、92〜99.5%である。
【0046】
本発明のOPPまたはOPP積層体のB層を構成するポリプロピレンのメルトフローレイト(MFR)は1〜20g/10分であることが好ましい。MFRが上記範囲未満であると、220℃前後の低温での溶融押出の際に押出量が変動し、押出原料の置換に長時間を要する場合がある。MFRが上記範囲を超えると、A層とB層を共押出積層する場合、均一厚みで積層することが難しくなったり、キャスト工程において、口金から押出された溶融ポリマーを金属ドラム上で固化させて未延伸シートを製造する際に、溶融ポリマーの金属ドラム上での着地点が大きく変動するため、シートが波打つために得られるフィルムの厚みムラが大きくなったり、二軸延伸によるボイド形成が不均一になる場合がある。OPPまたはOPP積層体のB層を構成するポリプロピレンのMFRは、より好ましくは1〜15g/10分である。
【0047】
また、延伸時(本発明のOPPを逐次二軸延伸により製造する場合には、特に縦延伸時)の延伸応力を低下させ、既存設備の延伸トルク容量内で製造でき、延伸に伴うボイド形成が促進できる場合があることから、本発明のOPPまたはOPP積層体のB層を構成する上記したポリプロピレン以外の他のポリマーから選ばれる少なくとも1種を適宜添加しても構わない。ただし、上記した無核のボイドを有するのは勿論のこと、上記の効果が得られず、製膜時の延伸応力が改善されなかったり、逆に必要以上に高くなったり、粗大なボイドが形成されることによりボイド形状が不均一になる場合は、これら他のポリマーを添加しない方が好ましい。
【0048】
上記したポリプロピレン以外の他のポリマー(以下、単に他のポリマーと略称する場合がある)としては、各種ポリオレフィン系樹脂を含むビニルポリマー樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリイミド系樹脂などが挙げられ、特に限定されないが、所謂ポリオレフィン系エラストマー樹脂を添加することにより、上記した延伸応力低下、透気性向上のためのボイド形成促進の効果が同時に得られる場合があることから好ましい。
【0049】
上記ポリオレフィン系エラストマー樹脂としては、特に限定されないが、例えば、メタロセン触媒法による超低密度ポリエチレン(mVLDPE)もしくは直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)、エチレン・ブテンラバー、エチレン・プロピレンラバー、プロピレン・ブテンラバー、エチレン酢酸ビニル、エチレン・エタクリレート共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・プロピレン−ジエン共重合体、イソプレンゴム、スチレン系共重合体として、スチレン・ブタジエンラバー、水添スチレブタジエンラバー、スチレン・ブチレン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体等が挙げられるが、これらに限定される訳ではない。特に、ポリプロピレンにエチレン・プロピレンラバーを混合した、所謂エチレン・プロピレンブロック共重合体(当該業者は、インパクトポリプロピレンポリマーと称する場合もある)では、製膜後のフィルムに大量のゲルが発生する場合があるので、その選択には注意が必要である。
【0050】
これらポリオレフィン系エラストマー樹脂のうち、本発明のOPPまたはOPP積層体のB層には、溶融押出工程でポリプロピレン中に超微分散し、その後の延伸工程で製膜性が向上し、かつボイド形成が促進されて透気性が向上し、かつ得られるフィルムが無核の孔を有することから、mVLDPEを用いることが特に好ましい。当該mVLDPEの具体例としては、DuPont Dow Elastomers製“Engage(エンゲージ)”(登録商標)(タイプ名:8411、8452、8100など)などが挙げられる。
【0051】
これら他のポリマーの添加量は、樹脂により効果が異なるため、特に限定されないが、ポリプロピレン、その他のポリマー、添加剤など含めたOPPまたはOPP積層体のB層樹脂全体の全量に対して、1〜15重量%程度添加することが好ましい。添加量が上記範囲未満であると、実質的な添加効果が得られない。添加量が上記範囲を超えると、分散不良が起り、得られるOPPにゲル状の突起が形成されたり、実質的に無核のボイドを有さない該OPPの空隙率が低下する場合がある。添加量は、より好ましくは2〜8重量%、さらに好ましくは2〜6重量%である。
【0052】
本発明のOPPまたはOPP積層体のB層に無核のボイドを形成するために、β晶活性を有することが好ましい。本発明のOPPまたはOPP積層体のB層がβ晶活性を有することにより、その製造工程において、製膜条件を制御することにより、未延伸シート中にβ晶を生成させ、その後の延伸工程でβ晶をα晶に結晶転移させ、結晶密度差により均一かつ緻密なボイドを形成することが可能となる。
【0053】
ここで、本発明では、OPPまたはOPP積層体がβ晶活性を有していることを、以下の基準で判定する。即ち、示差走査熱量計(DSC)を用いて、JIS K 7122(1987)に準じて窒素雰囲気下で5mgのOPPまたはOPP積層体のB層を20℃/分の速度で260℃まで昇温させ、その後5分間保持した後に20℃/分の冷却速度で30℃まで冷却し、次いで5分間保持した後に再度20℃/分の速度で昇温した際に得られる熱量曲線に、140〜160℃にβ晶の融解に伴う吸熱ピークが存在し、該吸熱ピークのピーク面積から算出される融解熱量が10mJ/mg以上であれば、該OPPまたはOPP積層体のB層が、(フィルム全体として)β晶活性を有すると定義する。また、以下、最初の昇温で得られる熱量曲線をファーストランの熱量曲線と称し、2回目の昇温で得られる熱量曲線をセカンドランの熱量曲線と称する場合がある。
【0054】
ここで、チョウら(Cho)ら,“ポリマー”(Polymer),44,p.4053−4059(2003);高橋ら,“成形加工”,15,p.756−762(2003)などに開示されているように、ポリプロピレンのβ晶の生成能はDSCを用いて確認することができる。これらの文献では、上記に近い温度条件下でDSCを用いて熱量曲線を採取し、β晶核剤を含有したポリプロピレンのβ晶活性を確認している。ここで、フィルムが“β晶活性を有する”ことは、ポリプロピレンを結晶化させた際にβ晶が生成しうることを意味する。また、ここでいうβ晶活性の判定は、押出、キャスト、延伸、巻き取り工程後、即ち製膜後のフィルムについて測定を行う。したがって、OPPまたはOPP積層体のB層が下記に例示するようなβ晶核剤を含有する場合においても、OPPまたはOPP積層体のA層とB層を含むフィルム全体に対してβ晶活性を判定することとなる。
【0055】
また、上記温度範囲に吸熱ピークが存在するが、β晶の融解に起因するか不明確な場合などは、DSCの結果と併せて、当該サンプルを下記測定方法の詳細な説明で記載した特定条件で溶融結晶化させたサンプルについて、広角X線回折法を用いて算出される下記K値により “β晶活性を有する”と判定してもよい。すなわち、β晶に起因する2θ=16°付近に観測される(300)面の回折ピーク(Hβとする)と2θ=14,17,19°付近にそれぞれ観測され、α晶に起因する(110)、(040)、(130)面の回折ピーク強度(それぞれHα、Hα、Hαとする)とから、下記の数式により算出されるK値が、0.3以上、より好ましくは0.5以上であることをもって“β晶活性を有する”と判定してもよい。ここで、K値は、β晶の比率を示す経験的な値である。各回折ピーク強度の算出方法などK値の詳細については、ターナージョーンズ(A.Turner Jones)ら,“マクロモレキュラーレ ヒェミー”(Makromolekulare Chemie),75,134−158頁(1964)を参考にすればよい。
K = Hβ/{Hβ+(Hα+Hα+Hα)}
(ただし、Hβ: ポリプロピレンのβ晶に起因する(300)面の回折ピーク強度、 Hα、Hα、Hα : それぞれ、ポリプロピレンのα晶に起因する(110)、(040)、(130)面の回折ピーク強度)
ここで、本発明のOPPまたはOPP積層体のB層のβ晶比率は、30%以上であることが好ましい。β晶比率が上記範囲未満であると、ボイド形成量が不十分であり、フィルムの厚み方向に均一なボイドが得られにくい場合がある。また、本発明のOPPまたはOPP積層体のB層のβ晶比率は、高いほど上記したボイド形成を促進でき、透気性は向上する傾向にあり、特に上限は設けないが、あまりに高すぎると空隙率が向上するものの、破断強度が低下する場合があるため、透気性と破断強度両立の観点から、例えば、95%以下であることが好ましい。β晶比率は、より好ましくは40〜90%、さらに好ましくは50〜90%である。
【0056】
ここで、β晶比率とは、上記セカンドランの熱量曲線において、140℃以上160℃未満に頂点が観測されるポリプロピレン由来のβ晶の融解に起因する吸熱ピーク(1個以上のピーク)のピーク面積から算出される融解熱量(ΔHu−1)と、160℃以上に頂点が観測されるポリプロピレン由来のβ晶以外の結晶融解に起因し、ベースラインを越えてピークを有する吸熱ピークのピーク面積から算出される融解熱量(ΔHu−2)から、下記式を用いて求める。ここで、β晶分率とは、ポリプロピレンの全ての結晶に占めるβ晶の比率であり、特開2004−142321や上記した特開2005−171230、国際公開第02/66233、特開2000−30683などでは、本発明に近い温度条件下でDSCを用いて熱量曲線を測定し、フィルムのβ晶分率を求めている。なお、140〜160℃に吸熱ピークが存在するがβ晶の融解に起因するか不明確な場合などは、上記K値により判定すればよい。
【0057】
β晶比率(%)={ΔHu−1/(ΔHu−1+ΔHu−2)}×100
このような高いβ晶活性およびβ晶比率を付与するために、本発明のOPPまたはOPP積層体のB層を構成するポリプロピレンには、所謂β晶核剤を添加することが好ましい。このようなβ晶核剤が添加されない場合、上記のような高いβ晶比率が得られない場合がある。本発明のOPPまたはOPP積層体のB層を構成するポリプロピレンに好ましく添加できるβ晶核剤としては、例えば、ナノスケールのサイズを有する酸化鉄;1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウム、コハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウムなどに代表されるカルボン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩;N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミドなどに代表されるアミド系化合物;ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウムなどに代表される芳香族スルホン酸化合物;二または三塩基カルボン酸のジもしくはトリエステル類;テトラオキサスピロ化合物類;イミドカルボン酸誘導体;フタロシアニンブルーなどに代表されるフタロシアニン系顔料;キナクリドン、キナクリドンキノンなどに代表されるキナクリドン系顔料;有機二塩基酸である成分Aと周期律表第IIA族金属の酸化物、水酸化物または塩である成分Bとからなる二成分系化合物などが挙げられるが、これらに限定される訳ではなく、1種類のみを用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。
【0058】
本発明のOPPまたはOPP積層体のB層を構成するポリプロピレンに添加するβ晶核剤としては、上記のなかでは特に下記の化合物1、2が、未延伸シートのβ晶比率を高くでき、その後の延伸工程でボイドの形成を促進できるので、特に好ましい。
[化合物1]
下記化学式(1)、(2)で表される、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミドなどに代表されるアミド系化合物。
【0059】
−NHCO−R−CONH−R (1)
ここで、式中のRは、炭素数1〜24の飽和もしくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数4〜28の飽和もしくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基または炭素数6〜28の芳香族ジカルボン酸残基を表し、R、Rは同一または異なる炭素数3〜18のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基またはこれらの誘導体である。
【0060】
−CONH−R−NHCO−R (2)
ここで、式中のRは、炭素数1〜24の飽和もしくは不飽和の脂肪族ジアミン残基、炭素数4〜28の飽和もしくは不飽和の脂環族ジアミン残基または炭素数6〜12の複素環式ジアミン残基または炭素数6〜28の芳香族ジアミン残基を表し、R、Rは同一または異なる炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基またはこれらの誘導体である。
[化合物2]
有機二塩基酸である成分Aと周期律表第IIA族金属の酸化物、水酸化物または塩である成分Bとからなる二成分系化合物。
【0061】
かかる特に好ましいβ晶核剤もしくはβ晶核剤添加ポリプロピレンの具体例としては、新日本理化(株)製β晶核剤“エヌジェスター”((登録商標)タイプ名:NU−100など)、SUNOCO社製β晶核剤添加ポリプロピレン“BEPOL”(タイプ名:B022−SPなど)などが挙げられる。
【0062】
本発明のβ晶核剤の添加量は、用いるβ晶核剤のβ晶生成能にもよるが、OPPまたはOPP積層体のB層の樹脂全体量に対して、0.001〜1重量%であることが好ましい。β晶核剤の添加量が上記範囲未満であると、得られる白色フィルムのβ晶比率が不十分となったり、比重が高くなったり、粗大なボイドが形成され、透気性および破断強度が低下する場合がある。β晶核剤の添加量が上記範囲を超えると、それ以上添加しても得られるフィルムのβ晶比率が向上せず、経済性に劣り、核剤自体の分散性が悪化して逆にβ晶比率が低下する場合がある。β晶核剤の添加量は、より好ましくは0.005〜0.5重量%、さらに好ましくは0.05〜0.2重量%である。
【0063】
該ポリプロピレン樹脂には、公知の添加剤、例えば酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、滑り剤、ブロッキング防止剤、充填剤、耐候剤、難燃剤、マイナスイオン発生剤などを製造工程やフィルム特性を低下させない程度に含有させてもよい。中でも、易滑性を付与して工程通過性向上させる点ために、少量の有機系滑剤、無機粒子および有機粒子の少なくとも1種以上を含有することが好ましい。ただし、この時の添加量は5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは3重量%以下である。添加量が5重量%を越えると、製膜工程及び基材との積層工程で有機系滑剤や粒子の脱落が起こり工程を汚す場合があり、さらに、無機または有機粒子によるフィルム表面のアルカリ性または酸性によって肌を刺激する場合があるので好ましくない。
【0064】
有機系滑剤としては、例えばステアリン酸アミド、エルシン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリルエルカアミド等のアミド系化合物など、もしくはこれらの混合物が挙げられる。
【0065】
無機粒子としては、例えば湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、珪酸アルミ、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化ランタン、酸化マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛、塩基性炭酸鉛(鉛白)、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸鉛、硫化亜鉛、マイカ、雲母チタン、タルク、クレー、カオリン、フッ化リチウムおよびフッ化カルシウム等を用いることができる。
【0066】
有機粒子とは、高分子化合物を架橋剤を用いて架橋した粒子である。例えば、ポリメトキシシラン系化合物の架橋粒子、ポリスチレン系化合物の架橋粒子、アクリル系化合物の架橋粒子、ポリウレタン系化合物の架橋粒子、ポリエステル系化合物の架橋粒子、フッソ系化合物の架橋粒子、もしくはこれらの混合物を挙げることができる。
【0067】
無機粒子および架橋有機粒子は球状で、その平均粒径は0.1〜1μmの範囲であることが粒子の凝集が少なく、易滑性効果が高いので好ましい。平均粒径が0.1μm未満では易滑効果が低く、1μmを越えると粗大ボイドが形成されやすく、透気性および破断強度が低下する場合がある。
【0068】
また、本発明の農業用マルチフィルムのポリプロピレンフィルム(OPP)は、上記OPPをコア層(B層)とし、そのB層の少なくとも片面に、B層よりも空隙率が10%以上低いスキン層(A層)を積層した2層以上の構成とした時に、該A層の空隙率は、70%以下、好ましくは30〜60%の範囲であることが好ましい。ここで、スキン層の空隙率は、下記の通り、特定条件で調整したフィルム断面を特定条件にてSEMで観察した際に、ボイドがスキン層に占める割合を求めたものである。スキン層の空隙率が60%を越えるとPETフィルムを剥離する際に劈開して破れる場合があり、A層の空隙率が20%未満であると、透気性が悪化するので好ましくない。
【0069】
該スキン層(A層)の樹脂組成としては、上記ポリプロピレンフィルムのB層樹脂と同様の組成とすることが好ましい。A層の空隙率をB層よりも10以上低くする方法としては、上記β晶核剤の添加量をB層よりも少なくするか、β晶核剤を含有したポリプロピレン樹脂を溶融押出して冷却固化してシート化する際に、A層の冷却温度をB層よりも低い温度とするか、又は、β晶比率を低下させるために、プロピレン以外の単量体成分が共重合された重合体をブレンドされてもよいし、プロピレン以外の不飽和炭化水素の単量体成分の(共)重合体がブレンドされてもよい。このような共重合成分やブレンド物を構成する単量体成分として、例えば、エチレン、プロピレン(共重合されたブレンド物の場合)、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチルペンテン−1、3−メチルブテン−1、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、5−エチルヘキセン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、アリルベンゼン、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、アクリル酸およびそれらの誘導体などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0070】
また、スキン層(A層)には、空隙を形成させ透過性を向上させることと、滑り性を付与する目的で、非相溶性樹脂、無機または有機粒子を添加することができる。ただし、この時の添加量は10重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1〜5重量%範囲である。添加量が10重量%を越えると、非相溶性樹脂、無機または有機粒子の分散径が大きくなって過大ボイドを形成紙し、透気性が低下する場合があり、また、製膜工程及び基材との積層工程で有機系滑剤や粒子の脱落が起こり工程を汚す場合があり、1重量%未満では添加効果がみられない。
【0071】
該非相溶性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリメチルペンテン、環状ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリサルホン、ポリアリレート、アイソタクチックポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、飽和ポリエステル、液晶樹脂(LCP)等から選ばれる少なくとも1種の樹脂が挙げられる。本発明のポリプロピレンフィルムのA層に用いる非相溶性樹脂としては、取り扱い性、製造コスト(原料価格)、ポリプロピレンへの分散性、微細な孔形成などの観点から、特にポリメチルペンテンを用いることが特に好ましい。
【0072】
また、無機粒子としては、例えば湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、珪酸アルミ、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化ランタン、酸化マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛、塩基性炭酸鉛(鉛白)、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸鉛、硫化亜鉛、マイカ、雲母チタン、タルク、クレー、カオリン、フッ化リチウムおよびフッ化カルシウム等を用いることができる。
【0073】
有機粒子とは、高分子化合物を架橋剤を用いて架橋した粒子である。例えば、ポリメトキシシラン系化合物の架橋粒子、ポリスチレン系化合物の架橋粒子、アクリル系化合物の架橋粒子、ポリウレタン系化合物の架橋粒子、ポリエステル系化合物の架橋粒子、フッソ系化合物の架橋粒子、もしくはこれらの混合物を挙げることができる。
【0074】
スキン層(A層)中に分散した非相溶性樹脂、無機粒子および架橋有機粒子の平均分散粒径は0.1〜4μmの範囲であることが粒子の凝集が少なく、易滑性効果が高いので好ましい。平均粒径が0.1μm未満では易滑効果が低く、4μmを越えると過大ボイドを形成し易くなって透気性やクッション率、エンボス率が低下し、粒子の脱落やフィルム同士を擦った時にフィルム表面に傷がつきやすくなるので好ましくない。
【0075】
本発明の農業用マルチフィルムのOPPに薬剤を含浸させる方法としては、薬剤を入れた浴槽にフィルムを入れて含浸させる方法、印刷やラミネートなどに用いられるグラビアやオフセットによる転写法、薬剤噴射法等があるが、作業性および簡易性から浴槽浸漬法が好ましい。
【0076】
また、薬剤を含浸させたOPPに、ポリエステル系フィルムを積層する方法としては、金属ロールとゴムロールの一対のニップロール間に、薬剤を含浸させたOPPとポリエステル系フィルムを通してラミネートして巻き取る。
【0077】
ポリエステル系フィルムには、剥離性を阻害しない程度に接着剤を塗布してもよい。接着剤樹脂としては、アクリル系樹脂として、例えばエチレン−アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体などを挙げることができる。
【0078】
ポリエステル系樹脂としては、芳香族ポリエステルが好ましく、ポリウレタン系樹脂としては、アイオノマー型のポリエーテル系ウレタン、ポリエステル系ウレタン共重合体などを挙げることができる。
【0079】
また、ホットメルト接着剤として、ポリオール−ウレタン系の反応性ホットメルト接着剤がある。この接着剤は乾燥、キュア時間が数秒〜数十数と速いので生産性上好ましい。
【0080】
接着剤の塗布厚みは0.2〜4μm、接着剤の接着強度にもよるが、0.5〜2μmの範囲が、ポリプロピレンフィルムとの密着性と剥離性を両立できて好ましい。
【0081】
コーティング手法としては、ナイフオーバーロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアードクターコーター、ホットメルトコーターあるいはこれら以外の公知の塗布装置を用いて塗布する方法が挙げられる。
【0082】
次に、本発明の農業用マルチフィルムの製造方法について、その一例を説明するが、本発明は、かかる例のみに限定されるものではない。
【0083】
本発明の農業用マルチフィルムのポリプロピレンフィルムとして、β晶比率が30%以上のポリプロピレン樹脂を、180〜240℃に加熱された押出機に供給して溶融して、Tダイ口金にて押出成形し溶融シートを得る。この溶融シートを、表面温度80〜130℃に保たれたドラム上に押出して密着させ、非ドラム面から20〜120℃の風を吹き付けて冷却固化し、未延伸フィルムを作製する。この時、ドラム温度および非ドラム面側から吹き付ける風が高いことにより、二軸延伸後のフィルムの空隙率が高くなり、透気性が向上する。次に、フィルム内部のボイド形成と貫通孔性を高くするために、該未延伸フィルムを90〜120℃に加熱したロール群またはオーブンに導き、フィルム温度を90〜120℃にした後、表面温度を100〜130℃に保たれたハードクロムメッキした金属ロールとゴムロールの一対のニップロール(延伸ロール)と、表面温度を30〜130℃に保たれたハードクロムメッキした金属ロールとゴムロールの一対のニップロール(冷却ロール)間に通し、延伸ロールと冷却ロールの周速差でMD方向(長手方向、すなわちフィルムの進行方向)に3.5〜6倍延伸し、30℃〜130℃のロール群で冷却する。続いて、MD方向に延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、120〜140℃に加熱した雰囲気中(フィルム温度:100℃〜135℃)で長手方向に垂直な方向(横方向)に5〜10倍に延伸する。その面積倍率(縦延伸倍率×横延伸倍率)は17.5倍〜60倍、製膜安定性から24倍〜45倍であることが好ましい。面積倍率が17.5倍未満であると得られるフィルムの透気性が低く、また破断強度が低くなり本発明のフィルムの特性が得られない、逆に面積倍率が60倍を超えると延伸時に破れを生じ易くなり、破断強度も低下する傾向にある。このようにして得られた二軸延伸フィルムの結晶配向を完了させて平面性、寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内にて150〜160℃で1〜20秒間の熱処理を行ない、その後均一に徐冷後、室温まで冷却して巻き取ることにより、本発明の壁紙のポリプロピレンフィルムを得ることができる。なお、上記熱処理中では、必要に応じて横方向あるいは縦方向に3〜10%の弛緩処理を施してもよい。また、二軸延伸後に縦、横いずれかの方向に再延伸してもよい。このようにして得られた本発明の農業用マルチフィルムのポリプロピレンフィルムの表面には、薬剤の含浸速度を早めるために、空気中または窒素ガス、炭酸ガスの1種以上の雰囲気中でコロナ放電処理を行い、表面の濡れ張力を35mN/m以上にして巻き取ることが好ましい。
【0084】
次に、該ポリプロピレンフィルムを薬剤を入れた浴槽に浸漬して含浸させる。この時の含浸時間は薬剤の種類によるが、1〜20分、好ましくは2〜10分であることが生産上好ましい。
【0085】
次に、ポリエステル系フィルムとしては、市販のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを積層してもよく、また、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を280〜300℃に加熱された押出機に供給して溶融して、Tダイ口金にて押出成形し溶融シートを得る。この溶融シートを、表面温度20〜40℃に保たれたドラム上に押出して密着させ、非ドラム面から静電印加してドラムに密着させて冷却固化し、未延伸フィルムを作製する。次に、該未延伸フィルムを80〜100℃に加熱したロール群またはオーブンに導き、フィルム温度を80〜100℃にした後、表面温度を80〜100℃に保たれたハードクロムメッキした金属ロールとゴムロールの一対のニップロール(延伸ロール)と、表面温度を10〜30℃に保たれたハードクロムメッキした金属ロールとゴムロールの一対のニップロール(冷却ロール)間に通し、延伸ロールと冷却ロールの周速差でMD方向(長手方向、すなわちフィルムの進行方向)に3〜4倍延伸し、10℃〜30℃のロール群で冷却する。続いて、MD方向に延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、90〜120℃に加熱した雰囲気中(フィルム温度:90℃〜110℃)で長手方向に垂直な方向(横方向)に3〜5倍に延伸する。その面積倍率(縦延伸倍率×横延伸倍率)は9倍〜20倍、好ましくは10倍〜15倍であることが、製膜が安定し、厚みも均一となるので好ましい。
【0086】
薬剤を含浸したポリプロピレンフィルムとPETフィルムの積層方法として、PETフィルム上に接着剤を0.2〜4μmコートして、120〜130℃・1分乾燥後、該ポリプロピレンと重ね合わせ、40〜100℃に加熱された金属ロールとゴムロール間で線圧5〜15kg/cmで圧着して積層して本発明の農業用マルチフィルムを得た。
【0087】
また、得られた本農業用マルチフィルムの保管期間延長のために、PETフィルムの袋、またはPETフィルムにアルミニウム金属を蒸着したフィルムの袋に入れて密封することが好ましい。
【0088】
[特性の測定方法および評価方法]
本発明の特性値は、次の評価方法、評価基準により求められる。
【0089】
(1)厚さ25μmあたりのガーレ透気度
フィルム厚みを下記方法にて測定した後、JIS P 8117に準じて、B型デンソメーター(東洋精機(株)製)にて測定し、厚み25μmに換算して求めた。ガーレ値(sec/100ml)が小さいほど透気性に優れる。
【0090】
(2)厚さ25μmあたりの薬剤含浸量
薬剤含浸前の各種フィルム0.01mの重量と、フィルム厚みを23℃の雰囲気下で測定する。その後、各種薬剤の浴槽内にフィルムを10分間浸漬した後取り出して、表面を医用不織布ガーゼ“ハイゼガーゼ”(株式会社旭小津製)で両面拭き取り、重量を測定する。浸漬前後のフィルムの重量差を薬剤の比重で割った値を求め、フィルム厚み25μm、1mあたりの含浸量に換算して求めた。
【0091】
(3)フィルムの長手方向(MD)と幅方向(TD)の破断強度
破断強度は、オリエンテック社製テンシロン(引っ張り試験機)を用いて、25℃において測定した。測定は、シートの長手方向、幅方向をそれぞれサンプルの長さ方向としたサンプル幅10mm、サンプル長150mmのサンプルに切り出し、そのサンプルの試長50mmを長さ方向へ300mm/minの速度で引っ張り、シートの長手方向、幅方向の破断強度(MPa)をそれぞれ10点測定して平均値を求め、長手方向と幅方向の破断強度とした。
【0092】
(4)空隙率
フィルムの空隙率は、シートを30mm×40mmの大きさにカットして得た試料サンプルを、ミラージュ貿易(株)製高精度電子比重計SD−120Lを用い、水中置換法(JIS K−7112のA法)に準じて10点について測定した。なお、測定は温度23℃、相対湿度65%の条件下にて行なった。また、測定は、フィルムの見かけ比重(d1)を測定した後、さらに、このシートを280℃の熱プレスによって熱融解して圧縮して完全に空孔を排除したシートを作成し、該シートを30℃の水に浸漬して急冷したシートの見掛け比重(d2)を同様に測定する。フィルムの空隙率は下記式:
空隙率(%)=(1−d1/d2)×100
により求めた。
【0093】
(5)実質的に無核のボイドを有することの判定
下記に示す方法1、方法2により判定した。
<方法1:SEM法>
凍結ミクロトーム法を用い、−100℃でフィルムの横方向−厚み方向断面を採取した。得られたフィルムの断面に、Ptをコートした後、下記条件にて走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて断面を観察し、断面像を採取した。なお、サンプル調製および断面観察は、(株)東レリサーチセンター(TRC)にて行った。
・装置 :(株)日立製作所製超高分解能電解放射型走査電子顕微鏡(UHR−FE−SEM)S−900H
・加速電圧:2kV
・観察倍率:5000倍。
【0094】
得られた断面像を用いて、断面の1000μm当たりに存在する全てのボイド(境界線を有する単独ボイド)を計測した。さらに、全ボイドのうち、内部に核を有するボイドを計測し、全ボイド数に占める内部に核を有するボイド数の割合を百分率で算出した(単位:%)。なお、断面像は、1000μmの観察面積が得られるように必要な枚数を、観察箇所を変えて採取した。
【0095】
本発明では、コア層(B層)を上記手法で観察し、全ボイド数に占める内部に核を有するボイド数の割合が、5%以下である場合、該B層が実質的に無核のボイドを有すると判定した。
【0096】
なお、“核を有する”ことは、ポリプロピレンにボイドを形成しうる、球状、または繊維状、または不定形状、またはその他の形状をした、非相溶性樹脂、または無機粒子、または有機粒子が、1個の境界線を有する単独ボイド中に、1個以上存在することを意味する。
<方法2:TEM法>
エポキシ樹脂を用いた樹脂包埋法により、ウルトラミクロトームを用い、フィルムの横方向−厚み方向に断面を有する超薄切片を採取した。採取した切片をRuOで染色し、下記条件にて透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察した。なお、サンプル調製および断面観察は、(株)東レリサーチセンターにて行った。
・装置 :(株)日立製作所製 透過型電子顕微鏡(TEM)H−7100FA
・加速電圧:100kV
・観察倍率:40000倍。
フィルムのB層について、写真の一辺がフィルムの横方向に平行となるように、かつ厚み方向に平行に連続して観察した写真を採取する。この際、各写真における横方向に平行な一辺と厚み方向に平行な一辺のサイズは、フィルムの実寸にして各々6μm、5μmとなるように調整し、厚み方向に平行に10μm(写真2枚分に相当)観察することとする。なお、B層の厚さが10μm未満である場合は、適宜横方向に平行に連続して観察した写真を採取すればよい。
【0097】
得られた複数の画像の上にOHPシート(セイコーエプソン(株)製EPSON専用OHPシート)を乗せた。次に、観察したボイドのうち、ボイドの内部に観察された核が有れば、核のみをOHPシート上に油性ペンで黒く塗りつぶした。得られたOHPシートの画像を、下記条件で読み込んだ。
・スキャナ :セイコーエプソン(株)製GT−7600U
・ソフト :EPSON TWAIN ver.4.20J
・イメージタイプ:線画
・解像度 :600dpi。
得られた画像を、(株)プラネトロン製Image−Pro Plus、Ver.4.0 for Windouwsを用いて、画像解析を行った。この際、取り込んだ断面像のスケールを使用して空間校正を行った。なお、測定条件は、以下の通りに設定した。
・カウント/サイズオプション内の表示オプション設定で、アウトラインの形式を塗りつぶしにする。
・オブジェクト抽出オプション設定で、境界上の除外をなし(None)にする。
・測定の際の輝度レンジ選択設定を暗い色のオブジェクトを自動抽出にする。
上記条件下で、写真で観察したフィルムの全面積、即ち測定の対象とした横方向×厚み方向=5μm×10μmに対する、核(黒く塗りつぶした部分)の面積の比率を百分率で算出した。同じサンプルについて観察位置を変えて同様の測定を3回行い、得られた面積比の平均値を当該サンプルの核の面積率(RTEM)とした(単位:%)。これより、核がフィルムの全面積に占める比率が、5%以下である場合を当該フィルムが無核のボイドを有すると定義し、○とした。また、当該比率RTEMが5%を越えるフィルムは、無核のボイドを有さないため、×とした。
(6)スキン層(A層)の空隙率
観察倍率を10000倍にしたこと以外は、(5)の方法1:SEM法と同様の方法で、フィルムのスキン層の断面を横方向に平行に連続観察し、観察位置を変えて断面像を10点採取した。
【0098】
得られた各断面像の上にOHPシート(セイコーエプソン(株)製EPSON専用OHPシート)を乗せた。次に、OHPシート上にスキン層のボイド(空隙)のみをマジックペンで黒く塗りつぶした。得られたOHPシートの画像を、下記条件で読み込んだ。
・スキャナ :セイコーエプソン(株)製GT−7600U
・ソフト :EPSON TWAIN ver.4.20J
・イメージタイプ:線画
・解像度 :600dpi。
得られた画像を、(株)プラネトロン製Image−Pro Plus、Ver.4.0 for Windouwsを用いて、画像解析を行った。この際、取り込んだ断面像のスケールを使用して空間校正を行った。なお、測定条件は、以下の通りに設定した。
・カウント/サイズオプション内の表示オプション設定で、アウトラインの形式を塗りつぶしにする。
・オブジェクト抽出オプション設定で、境界上の除外をなし(None)にする。
・測定の際の輝度レンジ選択設定を暗い色のオブジェクトを自動抽出にする。
上記条件下で、10枚の断面像のスキン層の全面積、即ち測定の対象とした矩形対象領域(Rectangular AOI)の面積に対する、ボイド(黒く塗りつぶした部分)の面積の比を百分率で算出し、スキン層の空隙率とした(単位:%)。
【0099】
(7)フィルム厚み
ダイヤルゲージ式厚み計(JIS B−7509、測定子5mmφ平型)を用いて、フィルムの長手方向及び幅方向に10cm間隔で10点測定して、その平均値とした。
【0100】
(8)β晶活性の確認
[フィルム全体に関する確認]
Seiko Instruments製熱分析装置RDC220型を用いて、JIS K 7122(1987)に基づいて測定した。5mgのフィルム(サンプル)をアルミニウムパンに封入して装填し、当該装置にセットした。窒素雰囲気下で、20℃/分の速度で30℃から260℃まで昇温した(以下、この際得られる熱量曲線をファーストランの熱量曲線と略称する場合がある)。昇温完了後、260℃で5分間待機させた。引き続き、20℃/分の速度で30℃まで冷却した。冷却完了後、30℃で5分間待機させた。次いで、再度20℃/分の速度で260℃まで昇温した(以下、この際得られる熱量曲線をセカンドランの熱量曲線と略称する場合がある)。この際に得られるセカンドランの熱量曲線において、140℃以上160℃未満に頂点を有するβ晶の融解に伴う吸熱ピークが観測される場合に、該フィルム(原料ポリプロピレン)がβ晶活性を有するものと判定した。なお、ここでいう吸熱ピークとは、融解熱量が10mJ/mg以上であるものをいう。また、融解熱量は、熱量曲線が昇温に伴いベースラインから吸熱側にずれ、次いでベースラインの位置に戻るまでのベースラインと熱量曲線で囲まれる面積であり、融解開始温度位置からベースライン上に熱量曲線の交点まで高温側に直線を引き、この面積をコンピュータ処理して求めた。なお、熱量曲線が吸熱側にずれ、完全にベースラインの位置に戻らず、再び吸熱側にずれる場合には、再び吸熱側にずれ始める極大点からベースラインに垂線を下ろし、熱量曲線とベースラインと垂線で囲まれる面積とすればよい。
【0101】
また、上記の手法で140〜160℃に頂点を有する融解ピークが存在するが、β晶の融解に起因するものか不明確な場合は、140〜160℃に頂点を有する融解ピークが存在することと、下記条件で調製したサンプルについて、広角X線回折法による2θ/θスキャンで得られる回折プロファイルでβ晶に起因する回折ピークが存在し、各回折ピーク強度から算出されるK値が0.3以上であることをもってβ晶活性を有するものと判定すればよい。
【0102】
下記に広角X線回折法の測定条件を示す。
・サンプル:本発明のポリプロピレンフィルムを、方向を揃えて、熱プレス調整後のサンプル厚さが1mm程度になるよう重ね合わせた後、これを0.5mm厚みの2枚のアルミ板で挟み、280℃で熱プレスして融解・圧縮させ、ポリマー鎖をほぼ無配向化した。得られたシートを、アルミ板ごと取り出した直後に100℃の沸騰水中に5分間浸漬して結晶化させ、その後25℃の雰囲気下で冷却して得られるシートを幅1mmに切り出したサンプルを測定に供した。
・X線回折装置:理学電気(株)製 4036A2
・X線源 :CuKα線(Niフィルター使用)
・出力 :40kV、20mA
・スリット系 :2mmφ−1°−1°
・検出器 :シンチレーションカウンター
・計数記録装置:理学電気(株)製 RAD−C型
・測定方法 :2θ/θスキャン(ステップスキャン、2θ範囲10〜55°、0.05°ステップ、積算時間2秒)。
【0103】
ここで、K値は、2θ=16°付近に観測され、β晶に起因する(300)面の回折ピーク強度(Hβとする)と2θ=14,17,19°付近にそれぞれ観測され、α晶に起因する(110)、(040)、(130)面の回折ピーク強度(それぞれHα、Hα、Hαとする)とから、下記の数式により算出できる。K値はβ晶の比率を示す経験的な値であり、各回折ピーク強度の算出方法などK値の詳細については、ターナージョーンズ(A.Turner Jones)ら,“マクロモレキュラーレ ヒェミー”(Makromolekulare Chemie),75,134−158頁(1964)を参考にすればよい。
K = Hβ/{Hβ+(Hα+Hα+Hα)}
なお、ポリプロピレンの結晶型(α晶、β晶)の構造、得られる広角X線回折プロファイルなどは、例えば、エドワード・P・ムーア・Jr.著、“ポリプロピレンハンドブック”、工業調査会(1998)、p.135−163;田所宏行著、“高分子の構造”、化学同人(1976)、p.393;ターナージョーンズ(A.Turner−Jones)ら, “マクロモレキュラー ヒェミー”(Makromolekulare Chemie),75,p.134−158や、これらに挙げられた参考文献なども含めて多数の報告があり、それを参考にすればよい。
【0104】
上記確認は、二軸延伸後のフィルムは勿論のこと、対応する未延伸シートについて測定しても構わない。
【0105】
本発明では、β晶活性を有するものを○、有さないものを×とした。
[スキン層(A層)に関する確認]
上記同様の手法により、DSCを用いてスキン層(A層)の樹脂全体について熱量曲線を採取し、判定した。なお、サンプルの形状は、A層の樹脂全体であれば、何を用いても構わないが、取り扱いが容易なので、チップ状であることが好ましい。また、積層フィルムのスキン層(A層)から、カッターナイフなどでA層を必要量削り取ることにより、サンプルを準備してもよい。
【0106】
(9)二軸配向の判別
フィルムの配向状態を、フィルムに対して以下に示す3方向からX線を入射したX線回折写真から判別する。
・Through入射:フィルムの縦方向(MD)・横方向(TD)で形成される面に垂直に入射
・End入射 :フィルムの横方向・厚み方向で形成される面に垂直に入射
・Edge入射 :フィルムの縦方向・厚み方向で形成される面に垂直に入射。
【0107】
なお、サンプルは方向を揃えて重ね合わせ、厚さ1mm程度に調整した後、幅1mm程度に切り出し、測定に供した。
【0108】
X線回折写真は以下の条件でイメージングプレート法により測定した。
・X線発生装置 :理学電気(株)製 4036A2型
・X線源 :CuKα線(Niフィルター使用)
・出力 :40Kv、20mA
・スリット系 :1mmφピンホールコリメータ
・イメージングプレート:FUJIFILM BAS−SR
・撮影条件 :カメラ半径40mm、露出時間5分。
【0109】
ここで、フィルムの無配向、一軸配向、二軸配向の別は、例えば、松本喜代一ら、“繊維学会誌”、第26巻、第12号、1970年、p.537−549;松本喜代一著、“フィルムをつくる”、共立出版(1993)、p.67−86;岡村誠三ら著、“高分子化学序論(第2版)”、化学同人(1981)、p.92−93などで解説されているように、以下の基準で判別できる。
・無配向 :いずれの方向のX線回折写真においても実質的にほぼ均等強度を有するデバイ・シェラー環が得られる
・縦一軸配向:End入射のX線回折写真においてほぼ均等強度を有するデバイ・シェラー環が得られる
・二軸配向 :いずれの方向のX線回折写真においてもその配向を反映した、回折強度が均等ではない回折像が得られる。
本発明では、フィルムが上記の二軸配向の基準を満たせばよい。
【0110】
(10)アイソタクチックインデックス(II)沸騰n−ヘプタン抽出残分
アイソタクチックインデックス(II)は、沸騰n−ヘプタン抽出残分から求める。試料を沸騰n−ヘプタンで一定時間抽出を行い、抽出されない部分の重量(%)を求めてアイソタクチックインデックスを算出する。
【0111】
詳しくは円筒濾紙を110±5℃で2時間乾燥し、恒温恒湿の室内で2時間以上放置してから、円筒濾紙中に試料(粉体またはフレーク状)10gを入れ、秤量カップ、ピンセットを用いて直示天秤にて精秤(小数点4桁まで)する。
【0112】
これをヘプタン80ccの入った抽出器の上部にセットし、抽出器と冷却器を組み立てる。これをオイルバスまたは電機ヒーターで加熱し、12時間抽出する。加熱は冷却器からの滴下数が1分間130滴以上であるように調節する。抽出残分の入った円筒濾紙を取り出し、真空乾燥器にいれて80℃、100mmHg以下の真空度で5時間乾燥する。乾燥後恒温恒湿中に2時間放置した後精秤し、下記式で算出する。
アイソタクチックインデックス(II)(%)=(P/Po)×100
但し、Poは抽出前の試料重量(g),Pは抽出後の試料重量(g)である。
【0113】
(11)MFR(メルトフローレート)
ポリプロピレンおよび熱可塑性エラストマーは、JIS K 7210の条件M(1995年)に従って測定する(温度230℃、荷重2.16kg)。エチレン系樹脂は、JIS K 7210の条件4(1995年)に従って測定する(温度190℃、荷重2.16kg)。
【0114】
(12)β晶比率
ポリプロピレン樹脂およびポリプロピレンフィルムをセイコー電子工業(株)製走査型差動熱量計RDC220(DSC)を用い、プラスチックの転移熱測定方法(JIS K7122)に準拠して、窒素雰囲気下で5mgの試料を20℃/分の速度で260℃まで昇温して5分間保持した後に、20℃/分の冷却速度で20℃まで冷却し、再度20℃/分の速度で昇温していった際に、再度の昇温において、140℃以上160℃未満の範囲にピークを持つポリプロピレン由来のβ晶の融解によって1個以上現れる吸熱ピークの融解熱量(ΔHu−1)と、160℃以上にピークを持つβ晶以外のポリプロピレンに由来する結晶の融解によって1個以上現れる吸熱ピークの融解熱量(ΔHu−2)を測定する。β晶比率は、下記式:
β晶比率(%)= {ΔHu−1/(ΔHu−1+ΔHu−2)}×100
により求めた。
【0115】
(13)融点
融点は、ポリプロプレンフィルムを、セイコー電子工業(株)製走査型差動熱量計RDC220(DSC)を用いて、プラスチックの転移熱測定方法(JIS K7122)に準拠して、窒素雰囲気下で5mgの試料を20℃/分の速度で260℃まで昇温して5分間保持した後に、20℃/分の冷却速度で10℃まで冷却し、再度20℃/分の速度で昇温していった際に、再度の昇温において、樹脂の融解に伴う吸熱ピークのピーク温度を融点(Tm)とした。
【0116】
(14)ポリプロピレンフィルムを構成する各層の厚み
観察倍率を1000倍にしたこと以外は、(5)の方法1:SEM法と同様の方法で、フィルムの断面を横方向に平行に連続観察し、観察位置を変えて断面像を10点採取した。採取した断面写真を用いて、各層の厚み方向の長さを計測し、拡大倍率から逆算して各層の厚みを求めた。尚、各層の厚みを求めるに当たっては、それらの平均値として算出した。
【0117】
(15)濡れ張力(mN/m)
ホルムアミドとエチレングリコールモノエチルエーテルとの混合液を用いて、JIS K6768に規定された測定方法に基づいて測定した。
【0118】
(16)薬剤保持性
防虫剤や除草剤は人体に極めて有害であるため、簡易評価法として、サイズ100mm×100mmのポリプロピレンフィルム10枚を、揮散性薬剤としてイソプロピルアルコール(以下IPAと略称する)50重量%と精製水50重量%の混合液の入った浴槽に2分間浸漬した後、上記(2)に従い各10枚の含浸量を測定した。次に、その後、薬剤を含浸したポリプロピレンフィルム10枚のそれぞれ両面にPETフィルムを重ねてクリップで止め、25℃の恒温槽に24時間入れた後、各10枚のポリプロピレンの重量を測定して薬剤揮散量を測定して平均値として求め、薬剤保持性を以下のように判定した。△以上の判定のものを実用可能とした。
【0119】
○:薬剤揮散量が20%未満
△:薬剤揮散量が20%〜40%
×:薬剤揮散量が40%を越えたもの
(17)剥離強度
ポリプロピレンフィルムとポリエステル系フィルムの剥離強度は、JIS Z−0237に準じ、幅15mm、長さ200mmのシート状に切り出した。幅15mmのポリエステル系フィルムの端部10mmを残し、さらにシートのポリエステル系フィルムを接着した面と反対の面を厚さ10mmのアクリル板で保持してサンプルとした。このサンプルを25℃の環境下で5分間保持した後、TOYO BALDWIN CO.LTD製テンシロンにより、引き剥がし角度180°、引き剥がし速度300mm/分として剥離強度を測定し、その10点の平均値を剥離強度とした。
【0120】
(18)作業性(施行性)
高さ20cm、幅60cmに土を盛り上げ、その土壌をマルチフィルムで覆い被せるために、ロール状に巻かれたマルチフィルムからポリエステル系フィルムを剥離しながらを施行する際の作業性(施行性)を以下のように評価した。
【0121】
○:フィルムの破れ、しわ、折れ曲がり等の発生がなく、作業性が良好であった。
【0122】
×:フィルムの破れ、しわ、折れ曲がり等の発生等のいずれかにより作業性不良であった。
【0123】
(19)結露防止性
60℃の水を2リッター入れた直径200mmφの水槽上にフィルムを被せ、12時間放置後に、23℃の室内で表面の結露状態を観察して、結露防止性を以下のように判定した。
【0124】
○:フィルム表面と反対側の表面に結露が見られなかった。
【0125】
×:フィルム表面または反対側の表面のいずれかに結露が見られた。
【実施例】
【0126】
本発明を以下の実施例を用いて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0127】
(参考例1)
ポリエチレンテレフタレートフィルムの製造方法
テレフタル酸ジメチル194重量部とエチレングリコール124重量部とをエステル交換反応装置に仕込み、内容物を140℃に加熱して溶解した。その後、内容物を撹拌しながら酢酸マグネシウム4水塩0.1重量部および三酸化アンチモン0.05重量部を加え、140〜230℃でメタノールを留出しつつエステル交換反応を行った。次いで、リン酸トリメチルの5重量%エチレングリコール溶液を1重量部(リン酸トリメチルとして0.05重量部)添加した。
【0128】
トリメチルリン酸のエチレングリコール溶液を添加すると反応内容物の温度が低下する。そこで余剰のエチレングリコールを留出させながら反応内容物の温度が230℃に復帰するまで撹拌を継続した。このようにしてエステル交換反応装置内の反応内容物の温度が230℃に達したら、反応内容物を重合装置へ移行した。
【0129】
移行後、反応系を230℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を0.1kPaまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。最終温度、最終圧力に到達した後、2時間(重合を始めて3時間)反応させたところ、重合装置の撹拌トルクが所定の値(重合装置の仕様によって具体的な値は異なるが、本重合装置にて固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレートが示す値を所定の値とした)を示した。そこで反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングして固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレートのPETペレットを得た。
【0130】
次に、280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、該PETペレットを98重量部と平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子の10重量%水スラリーを20重量部(球状架橋ポリスチレンとして2重量部)供給し、ベント孔を1kPa以下の真空度に保持し水分を除去し、平均径0.8μmの球状架橋ポリスチレン粒子を2重量%含有する固有粘度0.62のPETペレットを得た。
【0131】
上記粒子添加PETペレットを180℃で3時間減圧乾燥した後に、280℃に加熱された押出機に供給して溶融させた後、Tダイ型口金から押出し、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。この未延伸フィルムを、逐次二軸延伸機にて長手方向に、速度20,000%/分、温度90℃で3.0倍延伸し、さらに、テンターを用いて、幅方向に速度2,000%/分、温度100℃で3.0倍延伸した。その後、定長下で温度200℃1秒間熱処理した後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ2、3、12、30μmの二軸配向ポリエステルフィルム(以下PETフィルムと略称する)を作製した。
【0132】
(参考例2)
ポリ(エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート)(以下PENと略称する)フィルムの製造方法。
【0133】
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部の混合物に、酢酸マンガン・4水和物塩0.03重量部を添加し、150℃の温度から240℃の温度に徐々に昇温しながらエステル交換反応を行った。途中、反応温度が170℃に達した時点で三酸化アンチモン0.024重量部を添加した。また、反応温度が220℃に達した時点で3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩0.042重量部(2mmol%に相当)を添加した。その後、引き続いてエステル交換反応を行い、トリメチルリン酸0.023重量部を添加した。次いで、反応生成物を重合装置に移し、290℃の温度まで昇温し、30Paの高減圧下にて重縮合反応を行い、重合装置の撹拌トルクが所定の値(重合装置の仕様によって具体的な値は異なるが、本重合装置にて固有粘度0.65のポリエチレン−2,6−ナフタレートが示す値を所定の値とした)を示した。そこで反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングして固有粘度0.65のポリエチレン−2,6−ナフタレートペレット以下PENペレットと略称する)を得た。次に、280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、該PENペレットを98重量部と平均径0.8μmの球状架橋ポリスチレン粒子の10重量%水スラリーを20重量部(球状架橋ポリスチレンとして2重量部)供給し、ベント孔を1kPa以下の真空度に保持し水分を除去し、平均径0.8μmの球状架橋ポリスチレン粒子を2重量%含有する固有粘度0.65のPENペレットを得た。
【0134】
次に、上記粒子添加PENペレットを180℃で3時間減圧乾燥した後に、280℃に加熱された押出機に供給して溶融させた後、Tダイ型口金から押出し、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。この未延伸フィルムを、リニアモータ式クリップを有する同時二軸テンターを用いて、二軸延伸した。長手方向および幅方向に同時に、温度90℃、延伸速度6,000%で3.5倍×3.5倍延伸し、70℃まで冷却した。続いて、温度165℃で長手方向および幅方向に同時に1.4×1.4倍に再延伸した。さらに温度210℃で2秒間熱処理後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ12μmのPENフィルムを作製した。、
(実施例1)
本発明の農業用マルチフィルムのポリプロピレンフィルムの樹脂組成として、住友化学(株)製のホモポリプロピレン樹脂(以下H−PPと略称する)FLX80E4(MFR:7g/10分、II:96.5%)96.6重量%と、ポリオレフィン系エラストマー樹脂として、メタロセン触媒法による超低密度ポリエチレン(ダウケミカル社(株)製、“エンゲージ”(登録商標)8411;MFR:18g/10分(190℃);以下、単にmVLDPEと略称する場合がある)3重量%と、β晶核剤として、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、“エヌジェスター” (登録商標)NU−100、以下NU−100と略称する)0.2重量%、滑り剤として有機粒子の架橋PMMA粒子(平均粒径2μm、日本触媒化学工業(株)製、タイプ:“エポスター” (登録商標)MA1002)0.2重量%を添加混合し、二軸押出機に供給して300℃で溶融混合した後、ガット状に押出し、20℃の水槽に通して冷却してチップカッターで3mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥した。該β晶核剤添加PP(以下β晶PPと略称する)のβ晶比率は87%であった。
【0135】
次に、該β晶PPを230℃に加熱された押出機に供給して溶融し、Tダイ口金内を通してシート状に押出成形し、表面温度120℃に加熱されたキャストドラム上に密着させ、未延伸フィルムを作製した。次に、該未延伸フィルムを120℃に加熱保持されたオーブンに導いて予熱後、長手方向(縦方向、すなわちフィルムの進行方向、以下MD方向と略称する)に4倍延伸し後、125℃のロールに通した後に30℃のロールに通して冷却した。続いて、MD方向に延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、135℃に加熱した雰囲気中でMD方向に垂直な方向(横方向、以下TD方向と略称する)に7倍延伸後(面積倍率:縦延伸倍率×横延伸倍率=28倍)、引き続きポリプロピレンフィルムの結晶配向を完了させて平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内にて155℃で横方向5%の弛緩熱処理を行い、均一に徐冷後、室温まで冷却した。さらに、本ポリプロピレンフィルムの表面に、薬剤が含浸し易くするために両面を窒素/炭酸ガス=80/20の混ガス中でコロナ放電処理を行い表面の濡れ張力を50mN/mにして、厚さ25μmのポリプロピレンフィルム(以下OPPと略称する)を巻き取った。
【0136】
次に、フィルムの巻き出し、巻き取り装置が付き、フィルム走行用のロールを配置した浴槽内にイソプロピルアルコール(以下IPAと略称する)50重量%と精製水50重量%の混合液を入れ、その浴槽内に該OPPを通し、その後2対のシリコンゴム製の絞りロール間に通してOPP表面のIPAを拭き取りながら巻き取った。この時の浸漬時間は2分であった。
【0137】
該IPAを含浸したOPP上に積層するポリエステル系フィルムとして、参考例1の厚さ12μmのPETフィルムに、接着剤として“クリスボン” (登録商標)TA−170(大日本インキ化学工業(株)製)100重量部、架橋剤“クリスボ”ンACCEL T(大日本インキ化学工業(株)製)5重量部、トルエン30重量部を混合し、ナイフオーバーロールコーティングにて乾燥後の厚みが2μmとなるようにコートした。その後、乾燥温度130℃で1分乾燥後、上記IPA含浸OPPの片面に重ね合わせ25℃に保たれた一対のニップロール(金属ロールとゴムロール)に通して、該IPAを含浸したOPPとPETフィルムを線圧5kg/cmの圧力で圧着して積層して農業用マルチフィルムとして巻き取った。かくして得られたポリプロピレンフィルムの特性を表1に、農業用マルチフィルムの特性を表2に示した。本発明のポリプロピレンフィルムは、フィルム厚み25μmあたりのJIS P8117に基づいて測定されるガーレ値で表される透気度が250sec/100mlと低くて透気性に優れ、薬剤含浸量が18.4ml/mと多く、破断強度が縦60MPa、横145MPaと高くて作業性に優れ、該PETフィルムを積層して巻き取った農業用マルチフィルムは、薬剤保持性に優れて長期保管が可能となり経済性に優れ、OPPからのPETフィルムの剥離が容易で作業性にも優れていた。
【0138】
(実施例2、3)
実施例2では実施例1のOPPの厚みを10μmとし、実施例3では実施例1のOPPの厚みを60μmとした以外は実施例1と同様にして農業用マルチフィルムを得た。かくして得られたポリプロピレンフィルムの特性を表1に、農業用マルチフィルムの特性を表2に示した。表1、2の特性値をみてわかるように、本発明のポリプロピレンフィルムは、フィルム厚み25μmあたりのJIS P8117に基づいて測定されるガーレ値で表される透気度が180sec/100mlと低くて透気性に優れ、薬剤含浸量が17.0ml/mと多く、破断強度が縦75MPa、横152MPaと高く、作業性に優れ、該PETフィルムを積層して巻き取った農業用マルチフィルムは、薬剤保持性に優れて長期保管が可能となり経済性に優れ、マルチフィルムとしての巻き取り性およびOPPからのPETフィルムの剥離が容易で作業性にも優れていた。
【0139】
(実施例4、5)
実施例4では実施例1のPETフィルムの厚みを3μmとして、そのフィルム上に接着剤を5μmコートした。実施例5では実施例1のPETフィルムの厚みを30μmとした以外は実施例1と同様にして農業用マルチフィルムを得た。かくして得られたポリプロピレンフィルムの特性を表1に、農業用マルチフィルムの特性を表2に示した。該PETフィルムを積層して巻き取った農業用マルチフィルムはロール状への巻き取り性に優れ、また、該OPPの薬剤保持性に優れて長期保管が可能となり経済性に優れ、また、OPPからのPETフィルムの剥離が容易で作業性にも優れていた。
【0140】
(実施例6)
本発明のポリプロピレンフィルムを積層フィルムとするとき、コア層(B層)樹脂組成として、住友化学(株)製ポリプロピレン樹脂WF836DG3(MFR:7g/10分、II:96.5%)93.4重量%と、“HMS−PP”タイプPF−814を1.5重量%と、ポリオレフィン系エラストマー樹脂として、メタロセン触媒法による超低密度ポリエチレン(ダウケミカル社ン(株)製、“エンゲージ”(登録商標)8411;MFR:18g/10分(190℃);以下、単にV−LDPEと略称する場合がある)5重量%と、β晶核剤として、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、“NU−100”)0.1重量%を添加混合し、二軸押出機に供給して300℃で溶融混合した後、ガット状に押出し、20℃の水槽に通して冷却してチップカッターで3mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥した。また、スキン層(A層)樹脂組成として、プライムポリマー(株)製ホモポリプロピレンJ107G(MFR:30g/10分)97.95重量%に、平均粒径4μmの有機粒子の架橋PMMA粒子(平均粒径1μm、日本触媒化学工業(株)製、タイプ:“エポスター” (登録商標))2重量%と、β晶核剤として、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、“NU−100”)0.05重量%を添加し、加熱された二軸押出機に供給した。300℃で溶融・混練した後、ガット状に押出し、20℃の水槽に通して冷却し、チップカッターで5mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥したチップを用いた。上記コア層(B層)の樹脂全体を加熱された押出機(b)に供給して、230℃で溶融・混練させ、35μmカットのリーフディスク型のフィルターで濾過した後、マルチマニホールド型の2種3層複合口金に導入した。次に、上記スキン層(A層)の樹脂全体を加熱された押出機(a)に供給して、230℃で溶融・混練させ、35μmカットの金網フィルターで濾過した後、上記口金に導入した。口金内で押出機(b)の溶融ポリマーの両面に、押出機(a)の溶融ポリマーを積層してシート状に共押出成形し、表面温度122℃に加熱されたキャストドラム上に密着させ、非ドラム面側のスキン層面にエアーナイフを通して110℃の風を吹きかけて冷却固化し、未延伸シートを作製した。該未延伸シートを100℃に加熱保持されたロールに導いて予熱後、シートの長手方向に4.5倍延伸し、90℃のロールで冷却した。続いて、延伸したシートの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、135℃加熱した雰囲気中でシートの幅方向に8倍延伸後(面積倍率:縦延伸倍率×横延伸倍率=36倍)、シートの結晶配向を完了させて平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内にて150℃で横方向8%の弛緩熱処理を行い、均一に徐冷後、室温まで冷却してポリプロピレンフィルムを得た以外は、実施例1と同様にして農業用マルチフィルムを得た。かくして得られたポリプロピレンフィルムの特性を表1に、農業用マルチフィルムの特性を表2に示した。
【0141】
本発明のポリプロピレンフィルムは、フィルム厚み25μmあたりのJIS P8117に基づいて測定されるガーレ値で表される透気度が450sec/100mlと低くて透気性に優れ、薬剤含浸量が15ml/mと多く、積層体としたことによりさらに破断強度が縦85MPa、横200MPaと高くなって作業性が向上し、また、該PETフィルムを積層して巻き取った農業用マルチフィルムは、薬剤保持性に優れて長期保管が可能となり経済性に優れ、マルチフィルムとしての巻き取り性およびOPPからのPETフィルムの剥離が容易で作業性にも優れていた。
【0142】
(実施例7、8)
実施例7では、実施例6においてキャスティングドラム温度を100℃、縦延伸温度130℃で3.5倍延伸をし、実施例8では、実施例6のコア層(B層)樹脂組成を用いて、キャスティングドラム温度を125℃として未延伸フィルムを得た後、リニアモーター式クリップを有する同時二軸テンターを用いて、長手方向および幅方向に同時に、温度120℃、延伸速度100%/分で5倍×5倍延伸し、続いて、温度150℃で2秒間熱処理後、幅方向に2%の弛緩処理を行した以外は実施例1と同様にして農業用マルチフィルムを得た。かくして得られたポリプロピレンフィルムの特性を表1に、農業用マルチフィルムの特性を表2に示した。
【0143】
実施例7ではフィルム厚み25μmあたりのJIS P8117に基づいて測定されるガーレ値で表される透気度が4500sec/100mlと高く透気性が低いが、OPP特性が本発明の範囲であり、また、実施例8では、フィルム厚み25μmあたりのJIS P8117に基づいて測定されるガーレ値で表される透気度が60sec/100mlとが低く透気性は高いが、破断強度が縦58MPa、横55MPaと低いが、本発明の範囲であり、実用可能なものであった。
【0144】
(実施例9)
実施例1において、ポリエステル系フィルムとしてPETフィルムの代わりに、厚さ12μmのPENフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして農業用マルチフィルムを得た。かくして得られたポリプロピレンフィルムの特性を表1に、農業用マルチフィルムの特性を表2に示した。
【0145】
該PENフィルムを積層して巻き取った農業用マルチフィルムはロール状への巻き取り性に優れ、また、該OPPの薬剤保持性に優れて長期保管が可能となり経済性に優れ、また、OPPからのPETフィルムの剥離が容易で作業性にも優れていた。
【0146】
(比較例1)
融解温度が110℃の低密度ポリエチレン樹脂(“スミカセン” (登録商標)L705、住友化学(株)製、以下LDPEと略称する)35重量%と、融解温度が110℃のポリエチレンワックス(“ハイワックス” (登録商標)110P、三井化学(株)製、以下PE−WAXと略称する)35重量%と、炭酸カルシウム(商品名:“スターピゴット” (登録商標)15A、白石カルシウム(株)製、融解温度平均粒子径0.15μm、以下CaCOと略称する)30重量%を混合した組成を二軸押出機に供給して230℃で溶融混合した後に、円筒型口金から押出してインフレーション法にて厚さ20μmのLDPEフィルムを得た。次に、実施例1と同様にしてLDPEフィルムにIPAを含浸させてた後に、PETフィルムを積層せずに巻き取った。ポリエチレンフィルムの特性を表1に、薬剤含浸後のフィルム特性を表2に示した。
【0147】
得られたポリエチレンフィルムはフィルム厚み25μmあたりのJIS P8117に基づいて測定されるガーレ値で表される透気度が650sec/100mlと透気性には優れるが、無機粒子を多量に含むために空隙率が37%と低くて、薬剤含浸量がフィルム厚み25μmあたり9.4ml/mと少なく、また、破断強度も35MPaと低いために作業性に劣り、さらに、PETフィルムを積層していないために、薬剤保持性にも劣っていた。
(比較例2)
ポリプロピレン発泡フィルムとして、市販のパール調フィルム(二村化学製“OPL−W”厚み35μm、炭酸カルシウム添加品)を用いた以外は、実施例1と同様にして農業用マルチフィルムを得た。得られたポリプロピレンフィルムの特性を表1に、農業用マルチフィルムの特性を表2に示した。
【0148】
得られたポリプロピレンフィルムはガーレ透気度が測定不可能な程透気性がなく、結露防止性に劣り、薬剤含浸量もフィルム厚み25μmあたり2ml/mと低いものであった。
【0149】
(比較例3)
実施例1において、押出キャスト時にキャスティングドラム温度を80℃とし、50m/分の速度で高速にキャストして縦配向したフィルムを得、該フィルムを120℃で5分をアニーリング後、100℃で長手方向に5倍延伸して一軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た以外は実施例1と同様にしてマルチフィルムを得た。得られたポリプロピレンフィルムの特性を表1に、農業用マルチフィルムの特性を表2に示した。
【0150】
得られたポリプロピレンフィルムは、フィルム厚み25μmあたりのJIS P8117に基づいて測定されるガーレ値で表される透気度が650sec/100mlと透気性を有し、また、無核のボイドを有するが、空隙率が38%と低く、薬剤含浸量もフィルム厚み25μmあたり9.6ml/mと低く、また、横方向の破断強度が25MPaと低いために破れやすく、作業性に劣るものであった。
【0151】
(比較例4)
実施例1において、住友化学(株)製ホモポリプロピレンFS2016(MFR:2.3g/10分、II:96.5%)84.9重量%に、β晶核剤として、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミド(新日本理化(株)製、NU−100)を0.1重量%、非相溶性樹脂として、ポリカーボネート(出光化学(株)製、“タフロン”(登録商標)A1500;MFR:65g/10分(300℃)、Tg:150℃;以下、単にPCと略称する場合がある)を15重量%の比率で添加し、加熱された二軸押出機に供給した。270℃で溶融・混練した後、ガット状に押出し、20℃の水槽に通して冷却し、チップカッターで5mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥したチップを260℃に加熱された押出機に供給して溶融させ、35μmカットのリーフディスク型のフィルターで濾過した後、Tダイ型の口金に導入してシート状に押出し、表面温度90℃に保持されたキャスティングドラム上で固化させて、シート状に成形した。得られた未延伸シートを、125℃に加熱されたオーブンに導いて予熱した後、縦方向に4倍延伸し、100℃の冷却ロールで冷却した。
【0152】
引き続き、上記縦延伸フィルムを、その両端をクリップで把持しながらテンターに導入し、150℃で予熱し、145℃に加熱した雰囲気中で横方向に8倍に延伸した。次いで、二軸配向ポリプロピレンフィルムの結晶配向を完了させて平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内で横方向に5%の弛緩を与えつつ、160℃で熱固定し、均一に徐冷した後、室温まで冷却して巻き取った以外は、実施例1と同様にしてマルチフィルムを得た。得られたポリプロピレンフィルムの特性を表1に、農業用マルチフィルムの特性を表2に示した。
【0153】
得られたフィルムは、長手方向および幅方向の破断強度は、それぞれ100MPa、350MPaと高いが、PC添加によってフィルム内に過大ボイドが形成され、そのため、空隙率が35%と低く、ガーレ透気度が5000sec/100ml以上と透気性に劣り、薬剤含浸量もフィルム厚み25μmあたり7.3ml/mと低いものであった。
【0154】
(比較例5、6)
比較例5では、実施例1においてポリプロピレンフィルムの縦、横延伸温度をそれぞれ20℃高くした以外は実施例1と同様にOPPを得た。比較例6では、実施例8において、延伸倍率を縦7倍、横7倍に延伸した以外は実施例1と同様にして農業用マルチフィルムを得た。かくして得られたポリプロピレンフィルムの特性を表1に、農業用マルチフィルムの特性を表2に示した。
【0155】
比較例5では長手方向および幅方向の破断強度は、それぞれ115MPa、360MPaと高いが、ガーレ透気度が5700sec/100mlと高く透気性に劣り、薬剤含浸量もフィルム厚み25μmあたり8.9ml/mと低いものであった。
【0156】
比較例6では、ガーレ透気度が30sec/100mlと低く透気性は高いが、破断強度が縦、横45MPaと低く作業時(施行時)にフィルム破れが起こり、実用性に劣るものであった。
【0157】
(比較例7、8)
比較例7では、実施例1においてポリエステル系フィルムを積層せずにマルチフィルムとして巻き取った。比較例8では、ポリエステル系フィルの代わりに、市販のOPP(東レ株式会社製“トレファン” (登録商標)BO、YK−57、フィルム厚さ12μm)を用いた以外は、実施例1と同様にしてマルチフィルムを得た。得られたポリプロピレンフィルムの特性を表1に、農業用マルチフィルムの特性を表2に示した。
【0158】
比較例7では、PETフィルムを積層せずに巻き取ったために薬剤保持性に劣り、比較例8では、PETフィルムの代わりにOPPを用いたものは、薬剤保持性が低下し、薬剤含浸OPPと同様の樹脂であるため剥離強度が高く、離型性にも劣っていた。
【0159】
【表1】


【0160】
【表2】


【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明は、透気度が高くて透気性に優れ、薬剤の含浸量が高く、また薬剤保持性に優れ、機械強度高くて施工性に優れることから、農作物の育成に最適な農業用マルチフィルムとして用いることができ、また、ハウス用にも用いることができる。




 

 


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