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発明の名称 香辛料の殺菌方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−252369(P2007−252369A)
公開日 平成19年10月4日(2007.10.4)
出願番号 特願2007−41789(P2007−41789)
出願日 平成19年2月22日(2007.2.22)
代理人
発明者 濱▲崎▼ 芳活 / 大越 友里 / 曽根原 仁 / 松本 隆志 / 富松 徹
要約 課題
香辛料の風味を劣化させず、菌数を低減する殺菌技術を提供すること。

解決手段
粉砕前のホール状の香辛料を、過酢酸水溶液の特定の範囲の濃度、温度で処理することにより、風味劣化は無く、菌数低減が可能となる。また、過酢酸処理前に、事前に水浸漬することによって更に菌数低減効果が向上する。
特許請求の範囲
【請求項1】
香辛料を、過酢酸濃度100〜3000ppm、温度が15〜100℃の水溶液中に、1分以上浸漬させることを特徴とする香辛料の殺菌方法。
【請求項2】
香辛料を過酢酸処理に付す前に、水温15〜100℃の水中に3分〜24時間浸漬させることを特徴とする請求項1記載の殺菌方法。
【請求項3】
香辛料を処理する過酢酸溶液を68〜100℃に加温することを特徴とする請求項1記載の殺菌方法。
【請求項4】
香辛料が、粉砕又は粉末化される前の種子、茎、葉であることを特徴とする請求項1ないし3記載の殺菌方法。
【請求項5】
香辛料が粉砕又は粉末化される前の、種子状の黒胡椒である請求項1ないし3記載の殺菌方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉砕または粉末化前の香辛料の洗浄時に、過酢酸を用いることにより、洗浄及び殺菌を同時に行う技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品の殺菌方法については、それぞれの食品に対してそれぞれの殺菌方法が考案され、採用されている。殺菌方法が加熱を伴う方法である場合、その工程の加熱負荷は原料の菌数や製造工程の汚染度に依存する。つまり、原料の菌数が高いとそれだけ加熱負荷がかかり、製品の風味を損ねることになる。従って、製品の風味を損ねることなく、加熱負荷を低減する方法の一つとして菌数の低い原料を選定し用いることがある。
【0003】
しかし、原料の中で香辛料、特に黒胡椒は菌数が高い原料の一つである。香辛料の殺菌方法としては、エチレンオキサイドなどによるガス殺菌、ガンマー線照射や過熱水蒸気殺菌などが知られているが、ガス殺菌では残留物に対する危険性、ガンマー線殺菌に対する国民のイメージの問題がある国もあり、過熱水蒸気殺菌等、加熱による手段が多く取られている。しかし、過熱水蒸気による殺菌方法を用いた場合でも、短時間では菌数低減の効果が低く、長時間では菌数低減効果はあるが風味を損ねるという問題があった。
【0004】
この改善策として、近年、過酢酸を用いる方法がいくつか提案されている。過酢酸を食品の殺菌に利用する例として「魚の切り身の殺菌方法及び殺菌装置」(特許文献1)、「農産物及び植物性産物の殺菌及び消毒のための新規な方法」(特許文献2)、「IMPROVEMENTS TO DECONTAMINATION OF SEEDS」(特許文献3)等の先行文献中にその記載がある。その他、直接食品への利用ではないが、「食品容器類の殺菌方法」(特許文献4)、「圃場用殺菌剤、及び圃場の殺菌方法」(特許文献5)、甲殻類の飼育方法の改良(特許文献6)においても過酢酸が用いられている。
【0005】
特許文献1では、切り身化した魚を0.3〜1.0%濃度の過酸化水素水または過酢酸水溶液中、0℃以上常温で3分から20分撹拌しながら浸漬する方法が開示されている。特許文献2では、主として粉末化された農産物(香辛料、ガム、乾燥野菜など)を、周囲圧力において、発生期原子状酸素又はヒドロキシラジカルなどの酸化剤に接触させ、それにより汚染微生物の酸化および撲滅をもたらす、不均一系二相殺菌方法と装置が開示され、発生期原子状酸素の供給源として、原料粉末に対し、1〜10重量%の過酸化水素、過酢酸などが用いられることが記載されている。特許文献3には、種子又はそれから発芽した植物の殺菌に主にクロリン・ジオキサイドと接触させる方法が開示され、過酸化水素、過酢酸、エタノールなども使用できることが記載されている。しかし、これらの先行技術は、香辛料、とりわけ粉砕又は粉末化される前の、ホールタイプ(種子状)の黒胡椒の殺菌については具体的には何ら開示していない。
【0006】
香辛料の中でも、黒胡椒は、未成熟状態で収穫され、種皮ごと天日乾燥されるものなので、ポストハーベストの段階でも微生物により汚染される可能性は高く、一方、種皮に黒胡椒特有の精油成分が多く含まれるため、過度な殺菌処理では成分の流出、飛散、破壊にも繋がり、官能的に良質で、微生物的にも汚染の少ない黒胡椒を得ることは困難であった。
【0007】
【特許文献1】特開2004-313145号公報
【特許文献2】特表2005-514169号公報
【特許文献3】WO2005/060727号公報
【特許文献4】特開平4-30783号公報
【特許文献5】特開2001-199810号公報
【特許文献6】特開平8-336341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、ガス殺菌あるいは放射線殺菌が認められない国において、過熱水蒸気殺菌に代わって、風味を劣化させないで菌数を低減した、すぐれた品質の粉砕又は粉末化前のホールタイプの香辛料、とりわけ黒胡椒を、極力簡単な方法で製造し提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を達成するため、種々検討した結果、特定温度、特定時間、特定濃度の過酢酸水溶液への浸漬で目標が達成されることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、(1)香辛料を、過酢酸濃度100〜3000ppm、温度が15〜100℃の水溶液中に、1分以上浸漬させることを特徴とする香辛料の殺菌方法であり、(2)香辛料を過酢酸処理に付す前に、水温15〜100℃の水中に3分〜24時間浸漬させることを特徴とする(1)記載の殺菌方法であり、(3)香辛料を処理する過酢酸溶液を68〜100℃に加温することを特徴とする(1)記載の殺菌方法であり、(4)香辛料が、粉砕又は粉末化される前の種子、茎、葉であることを特徴とする(1)ないし(3)記載の殺菌方法であり、又、(4)香辛料が粉砕又は粉末化される前の種子状の黒胡椒である(1)ないし(3)記載の殺菌方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、極簡単な設備で香辛料に付着している微生物を低減し、品質の良好な香辛料原料を供給することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明でいう香辛料とは、粉砕又は粉末化される前の、ホールタイプの香辛料であり、種実、葉、茎、根などを指す。粉砕又は粉末化処理前の、適当な大きさに切断されているものも本発明に含まれることは勿論である。その種類は特に限定されないが、黒胡椒、白胡椒、タイム、ローズマリー、コリアンダー、クミン、フェンネル、キャラウェイ、アニス、マスタード、セロリーシード、ディルシード、フェネグリーク、麻の実等に利用できる。本発明は、とりわけ黒胡椒に適正がある。香辛料は、乾燥されたものは勿論のこと、生のものでも使用可能である。洗浄・殺菌時の香辛料のサイズ、形状は特に限定されず、洗浄、乾燥後の処理に適した状態にして使用すればよい。
【0012】
通常、過酢酸は、化学的な安定性を確保するために過酸化水素と酢酸を混合し平衡反応状態にした過酢酸製剤として供給される。本発明で用いる過酢酸は、一般に市販されている過酢酸製剤などが使用できる。過酢酸の使用に当たっては、これを100〜3000ppm濃度の水溶液に調製し、この水溶液を15〜100℃に調製し、これに香辛料を1分以上、静置で浸漬するか、又は連続的あるいは断続的に穏やかに撹拌する。浸漬時間は使用する原料の種類、産地、過酢酸水溶液の濃度及び温度によっても異なるが、通常過酢酸濃度が2000ppm、温度が80〜90℃であれば5分間の浸漬で一般生菌数を100CFU/g(colony forming unit (コロニー形成単位) )未満にすることができる。過酢酸濃度が500〜1500ppm、温度が80〜90℃の場合は、5分以上20分位の浸漬で十分であるが、前述の通り、原料の種類、産地、過酢酸濃度、浸漬温度、後述の事前水浸漬の有無によっても異なる。しかし、これらの条件は、当業者であれば本明細書の記載を参考に、事前の簡単な予備実験により容易に決定できるものである。
【0013】
浸漬終了後直ちに香辛料を過酢酸水溶液から分離し、流水あるいはため水で洗浄し、付着過酢酸を除去する。容器、分離方法は特に限定されないが、分離後、直ちに水洗できるよう、予め香辛料を布、又は金属製のメッシュかご等に入れておき、簡単に過酢酸水溶液から分離できるようにしておくことが望ましい。過酢酸水溶液の濃度が100ppm未満では満足な殺菌効果は得られず、3000ppm以上にしても効果は顕著には変わらないので、3000ppmまでの濃度での使用が、作業者の安全衛生上好ましい。好ましくは1000〜2000ppmが良い。本発明による過酢酸水溶液温度は、100℃でも特に安全上の問題はない。
【0014】
過酢酸を香辛料へ浸透させるため、一般的には15℃〜100℃、好ましくは68〜100℃、更に好ましくは80〜95℃が良い。また、香辛料への過酢酸の浸透性を高めるためには減圧しながら処理を行うのも有効な手段である。調製した過酢酸溶液に関して、一度使った溶液は利用当日であれば再利用可能である。また、過酢酸濃度の確認のために、過酢酸濃度分析法による分析を行う。(『現場必携・微生物殺菌実用データ集』株式会社サイエンスフォーラム(2005年)発行を参照)
【0015】
香辛料を過酢酸水溶液に浸漬する前に、予め前処理として香辛料を水に浸漬しておくことは、過酢酸との接触が速やかに行われるので、有効な方法である。すなわち、香辛料を、15℃〜100℃の水に3分〜24時間浸漬しておくだけでよい。この場合、処理温度が高いと風味劣化の可能性があるので、対象とする香辛料により注意する必要がある。黒胡椒の場合は、通常15〜35℃で2〜24時間の処理を行う。好ましくは、15℃〜35℃、6〜24時間で十分である。
【0016】
1分以上の過酢酸水溶液への浸漬が終了した香辛料は、直ちに流水あるいはため水で洗浄される。この処理により、香辛料への付着菌は大幅に低減される。本処理後に乾燥品にする場合は乾燥工程を設ける。乾燥工程はそれぞれの使用目的に適した方法を用いればよい。乾燥工程では、極力再汚染のない様注意を払うことは当然である。
【0017】
乾燥後、粉砕が必要なものはそれぞれの目的に適した粉砕処理を行えばよく、更に必要があれば過熱水蒸気等による、短時間の殺菌工程にかけることも可能である。殺菌の効果を確認するには、食品衛生検査指針に則った微生物検査を行えばよい。以下、実施例にて詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
マレーシア産の天日乾燥した黒胡椒および白胡椒それぞれのホール100gを過酢酸濃度2,000ppm水溶液500ml(25℃)に5分間浸漬し、蒸留水500mlのため水で30秒間、2回洗浄した。水切り後、55℃の乾燥機で12時間乾燥後、無菌的に室温まで放冷して標品を得た。殺菌性を確認するために一般生菌数を測定した。なお、過酢酸製剤は日本パーオキサイド株式会社製を用いた。
【0019】
【表1】


【0020】
白胡椒は完熟した種子を収穫後、種皮を剥いで乾燥されるため、微生物汚染が少なく、また、種皮がないため過酢酸が微生物に接触しやすい状態にあると考えられ、殺菌処理が容易であった。一方で、黒胡椒は微生物汚染度が高く、また、過酢酸溶液に浸漬しただけでは十分な殺菌効果は得られなかった。黒胡椒のように種皮を有している香辛料等では、殺菌成分の浸透が阻害され微生物に作用し難く、通常は単純に過酢酸溶液に浸漬しただけでは十分な殺菌効果が得られない。そこで、黒胡椒に対する殺菌効果を高めるため、過酢酸溶液に浸漬する前に、事前に水に十分に浸漬しておくこと、および過酢酸浸漬する際に加温することを検討した。
【実施例2】
【0021】
マレーシア産の天日乾燥した黒胡椒100gを実施例1と同様に、過酢酸濃度2,000ppm水溶液500mlに5分間浸漬し、蒸留水500mlのため水で30秒間、2回洗浄した。水切り後、55℃の乾燥機で12時間乾燥後、無菌的に室温まで放冷して標品を得た。過酢酸処理に付す前に、事前水浸漬を行う場合は、100gの黒胡椒を蒸留水(25℃)300mlに24時間浸漬した。おのおのの浸漬中は、特に撹拌は行わなかった。過酢酸水溶液での浸漬温度の検討結果を表2に示した。殺菌性を確認するために一般生菌数を測定した。また、過酢酸処理後に風味の劣化が無いことを確認するために、標品の風味評価を担当者10名により、ホール状態のまま行い、未処理品と比較して変化のないものを合格(○)とした。結果を表2に示した。
【0022】
【表2】


【0023】
表2から明らかなように、過酢酸水溶液処理を行うことにより、風味には変化を与えず、一般生菌数の低減が見られた。すなわち、室温(25℃)〜53℃における過酢酸処理(本発明3及び4)によって未処理区と比較して2オーダーの菌数減少を確認でき(10の7乗から10の5乗への菌数減少)、処理温度を63℃に上げることによって3オーダーの菌数減少効果(10の7乗から10の4乗への菌数減少)があった(本発明5及び6)。70℃による処理では未処理区と比較して5オーダーの劇的な菌数減少がみられた(10の7乗から10の2乗への菌数減少)(本発明7)。黒胡椒の場合、過酢酸水溶液浸漬は、70℃以上で行うと特に効果が期待できる。
【実施例3】
【0024】
更に実施例2に準じて、事前水浸漬(25℃、24時間)、過酢酸添加の有無、過酢酸水溶液の温度を80〜90℃に上げて効果を確認した。この際、黒胡椒投入直後に一旦約80℃に温度が低下するが、約2分後には再度90℃に上昇し5分後まで温度は保持された。結果を表3に示した。
【0025】
【表3】


【0026】
表3から分かるように、事前水浸漬、処理時の加温、過酢酸の添加、いずれが欠けても十分な殺菌効果は得られない。主要な汚染菌は芽胞菌であり、これらは本実施例のような加熱温度では通常死滅せず、過酢酸との組合せ効果によって高い殺菌作用がはたらいたものと考えられる。また、黒胡椒のように種皮を有するものは殺菌成分の浸透が妨げられると考えられ、事前に十分に水に浸漬しておくことで過酢酸の浸透が促進され殺菌効果が向上したと考えられた。つまり、処理4のようにこれら3つの処理の組合せによって高い殺菌効果が得られる。
【実施例4】
【0027】
事前水浸漬の時間について、更に検討した。黒胡椒を常温の水(25℃)に2、4、6あるいは24時間浸漬した。また、比較のために事前水浸漬を行なわない場合も検討した。その他の処理方法については実施例3の処理4と同様の方法で実施した。処理効果のバラツキを見るために、各処理区について3回ずつ実施した。結果を図1に示した。
【0028】
事前水浸漬を行なわないと、2オーダーしか減少しないが(未処理品10の7乗から10の5乗への菌数減少)、2時間以上事前水浸漬することによって高い殺菌効果が得られるようになる。しかしながら、2〜6時間程度の浸漬では個々の黒胡椒粒によって水の浸透が不十分なものがあると考えられ、殺菌効果に大きなバラツキがあった。しかし、24時間浸漬することによって、バラツキは解消され、安定した殺菌効果が得られた。常温(25℃)で事前水浸漬を行なう場合は、数時間浸漬でも殺菌効果が得られることもあるがバラツキが大きいため、安定して高い殺菌効果を得るには少なくとも6時間以上浸漬することが望ましい。
【実施例5】
【0029】
事前水浸漬の温度を上げた場合について、更に検討した。水を90℃に加熱し、そこに黒胡椒を投入して、3、5あるいは10分間浸漬した。黒胡椒投入直後に一旦約80℃に温度が低下するが、約2分後には再度90℃に上昇した。その後、過酢酸浸漬に供した。その他の処理方法については実施例3の処理4と同様の方法で実施した。結果を表4に示した。
【0030】
【表4】


【0031】
事前水浸漬の際の温度を80〜90℃に上げた場合、3分間浸漬では2オーダーしか菌数が減少しなかったが(未処理品10の7乗から10の5乗への菌数減少)、5分間あるいは10分間浸漬では5オーダー以上の高い殺菌効果が確認された(未処理品10の7乗から100未満への菌数減少)。したがって、事前水浸漬温度を80〜90℃に上げた場合、少なくとも3分以上の浸漬が必要で、5〜10分間程度で十分である。ただし、過度に加熱処理することは、風味劣化の可能性があるので、対象とする香辛料により注意する必要がある。
【実施例6】
【0032】
過酢酸浸漬時の温度について、更に検討した。黒胡椒A(マレーシア産)、黒胡椒B(ベトナム産)、および黒胡椒C(マレーシア産)の3種類の黒胡椒ホールについて、過酢酸浸漬時(2000ppm)に常温(25℃)、63−70℃、68−76℃、あるいは80−90℃で処理した。また、全ての殺菌処理区において事前水浸漬(25℃、24時間)を実施した。その他の処理方法については、実施例2と同様の方法で行った。結果を表5に示した。
【0033】
【表5】


【0034】
黒胡椒Aの処理の結果より、過酢酸浸漬時の温度63-70℃では常温処理に比べ1オーダーしか減少していないが(未処理品10の7乗から10の4乗への菌数減少)、温度を上げて68-76℃にすると更に2オーダー減少しており殺菌効果の向上が確認された(未処理品10の7乗から10の2乗への菌数減少)。一方で、黒胡椒BおよびCでは同温度処理においても多くの微生物が残存しており、黒胡椒の種類によって殺菌効果に大きな差が見られた。これは前述の通り、原料の種類、産地及び実施例4で示した効果のバラツキによるものと考えられるが、浸漬温度を80-90℃に上げると全ての種類の黒胡椒で100CFU/g未満を達成することができた。
【実施例7】
【0035】
過酢酸濃度を変えた殺菌処理について、事前水浸漬(25℃、24時間)を実施した場合としない場合で検討した。試料として黒胡椒BおよびCを用いた。過酢酸の濃度は2000、1000、500、200、100、および0 ppmで浸漬した。また、過酢酸浸漬温度は80-90℃とした。その他の処理方法については実施例2と同様の方法で実施した。結果を図2(1)、(2)に示した。
【0036】
黒胡椒の種類によって殺菌効果に大きな差が出ることが再確認された。黒胡椒Bは殺菌され易く、事前水浸漬しない場合においても過酢酸濃度2000ppmで処理することによって100CFU/g未満にすることができた(10の6乗から10の2乗未満への菌数減少)。また、事前水浸漬を行なうと、100ppmから顕著な殺菌効果が見られ、200ppmで100CFU/g未満が達成された。一方、黒胡椒Cは殺菌され難く、事前水浸漬しない場合は過酢酸濃度2000ppm処理においても十分な殺菌効果は得られず、事前水浸漬することによって1000ppm処理から顕著な殺菌効果が出始め(10の7乗から10の4乗への菌数減少)、2000ppm処理によって100CFU/g未満が達成された(10の7乗から10の2乗未満への菌数減少)。これらのことから実施例2、3でも見られた、事前水浸漬による顕著な殺菌効果向上が確認された。この処理により、黒胡椒の種類によっては過酢酸浸漬時の濃度100ppm程度から顕著な殺菌効果が得られる。殺菌が困難な種類の黒胡椒においても過酢酸を2000ppm添加すれば十分な殺菌効果が得られる。
【実施例8】
【0037】
過酢酸濃度を変えた殺菌処理について、殺菌効果のバラツキの程度を確認した。全ての殺菌処理区において事前水浸漬(25℃、24時間)を実施した。過酢酸の濃度は2000、1800、1600、1400、1200、1000、500、200、100、および0 ppmで浸漬した。その他の処理方法については実施例7と同様の方法で実施し、結果を図3に示した。
【0038】
殺菌され易い黒胡椒Bにおいては、過酢酸濃度100ppm処理においても約4オーダーの菌数減少が見られるが(10の6乗から10の2乗への菌数減少)バラツキが大きく、1000ppm添加によって4オーダー以上の殺菌効果が安定して得られた(10の6乗から10の2乗未満への菌数減少)。一方、殺菌され難い黒胡椒Cにおいては、過酢酸濃度1000ppmから顕著な殺菌効果が得られるが(10の7乗から10の4乗への菌数減少)バラツキが大きく、1800ppmから5オーダー以上の殺菌効果が安定して得られた(10の7乗から10の2乗への菌数減少)。これらのことから過酢酸添加濃度は100ppm以上が良く、好ましくは1000ppmから2000ppmにおいて顕著な殺菌効果が期待でき、更に好ましくは1800ppmから2000ppmにおいて5オーダー以上の劇的な菌数減少が安定して得られる。
【実施例9】
【0039】
過酢酸浸漬時間を延ばすことによって過酢酸濃度を低減する検討を行なった。実験には黒胡椒Cを使用した。過酢酸浸漬時間を10および20分間とした。過酢酸の濃度は1500、1000、および500ppmで浸漬した。また、比較として2000ppm、5分間処理も実施した。その他の処理方法については実施例8と同様の方法で実施し、結果を表6に示した。
【0040】
【表6】


【0041】
過酢酸浸漬10分間では、過酢酸濃度500および1000ppmにおいて若干菌の生残が見られるが、全ての試験区において5オーダー以上の菌数減少が確認された(10の7乗から10の2乗への菌数減少)。つまり、過酢酸濃度が500〜1500ppm、温度が80〜90℃の場合は、5分以上20分位の浸漬で十分である。しかし、過度に加熱処理することは、風味劣化の可能性があるので注意する必要がある。
【実施例10】
【0042】
実施例8と同様の方法で得られた黒胡椒Cについて、辛味成分、および香り成分の分析を行なった。辛味成分としてピペリンを高速液体クロマトグラフ法により分析した。香り成分としてリモネン、α−ピネン、およびβ−ピネンをガスクロマトグラフ質量分析法により分析した。分析は財団法人日本食品分析センターに依頼した。比較として、未処理品および過熱水蒸気処理品も同様に分析した。それぞれの結果を図4、図5に示した。
【0043】
辛味成分(ピペリン)については大きな差は見られなかった(図4)。一方、香り成分(リモネン、α−ピネン、およびβ−ピネン)については過熱水蒸気処理品では大きく減少しているのに対し、過酢酸処理品については1000ppあるいは2000ppmいずれの濃度の処理においても数値の減少は見られなかった(図5)。つまり本発明の殺菌方法は黒胡椒の香り保持において、従来殺菌技術である過熱水蒸気処理よりも極めて優位であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0044】
過酢酸処理により、官能的には変化を与えず、原料の菌数を低減できる効果的な新殺菌技術であることが確認できた。この新殺菌技術は、黒胡椒だけではなく、香辛料全般に応用することができる。更に、加熱殺菌工程を要する加工食品においては、菌数の低い原料を用いることで殺菌負荷を低減し、より品質の良い製品を製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】過酢酸処理の事前水浸漬時間と一般生菌数の関係を示す。
【図2】過酢酸処理による(1)黒胡椒B、(2)黒胡椒Cでの殺菌性を示す。
【図3】過酢酸水溶液の濃度と一般生菌数の関係を示す。
【図4】過酢酸濃度とピペリン濃度の関係を示す。
【図5】過酢酸濃度とリモネン、α−ピネン、β−ピネン濃度の関係を示す。




 

 


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