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発明の名称 コーヒーの殺菌方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−29013(P2007−29013A)
公開日 平成19年2月8日(2007.2.8)
出願番号 特願2005−218070(P2005−218070)
出願日 平成17年7月27日(2005.7.27)
代理人 【識別番号】100097825
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 久紀
発明者 井上 孝司 / 高橋 渉 / 土方 祥一 / 植村 邦彦 / 五十部 誠一郎
要約 課題
本発明は、液状食品(コーヒー)中で問題となる微生物(主に耐熱性芽胞菌)を殺菌し、食品の安全性及び保存性を向上させることを課題とする。

解決手段
1対以上の金属製の電極に挟まれた通電ユニットを用いて電気伝導性を有する液体食品を殺菌する方法であって、通電ユニットは密閉系とし、電圧を印加した通電ユニットに濾過処理済の液体食品を連続的に通液することによって微生物を殺菌すること、を特徴とする液体食品の殺菌方法。本法によれば、通電ユニット内は液体食品自体の液圧によって加圧されるため、通電ユニットを加圧容器内に収容することなく、効率的に加圧交流高電界殺菌処理が可能となり、しかも濾過処理を有機的に結合したため、コーヒーの香気成分の変化を抑制しながら、更に効率的殺菌処理が可能となり、長期間保存してもオイル上昇現象の発生も抑制される。
特許請求の範囲
【請求項1】
1対以上の金属製の電極に挟まれた通電ユニットを用いて電気伝導性を有する液体食品であるコーヒーを殺菌する方法であって、通電ユニットは密閉系にするとともに、通電ユニットの電極には交流電源を接続し、電圧を印加した通電ユニットに未殺菌コーヒーを連続的に通液することによって微生物を殺菌すること、且つ、この交流高電界殺菌処理に先立ち、未殺菌コーヒーを1又はそれ以上の回数濾過処理すること、を特徴とするコーヒーの殺菌方法。
【請求項2】
通電ユニット内部は、その中を通液するコーヒー自体によって加圧されてなること、を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記濾過処理において、200μm以上の粒子を除去すること、を特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
濾過処理が、濾布による濾過、80メッシュ以上のポアサイズの金属フィルタによる濾過、遠心分離、精密濾過から選ばれる少なくともひとつであること、を特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
時間当たり60L高電界処理した場合に、電極に1.5kV/cm以上の電圧を印加し、品温を120℃以上となること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
印加電界時間が1秒以内であること、を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
コーヒー中に含まれる香気成分の変化を防止ないし抑制するものであること、を特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
脱酸素条件下で実施すること、を特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
コーヒーがコーヒー又はコーヒー含有飲料であること、を特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法で得られたコーヒー。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒーの殺菌方法に関するものである。本発明によれば、従来簡単には殺菌することができなかった耐熱性芽胞菌も容易に殺菌することが可能となったので、本発明はコーヒー(以下、液体食品ということもある)の安全性及び保存性を更に高めるのに特に有用である。
【背景技術】
【0002】
従来より、当業界においては、微生物の殺菌を行うには、被処理物を加熱し殺菌を行うのが一般的である。また、微生物制御という観点から抗菌剤・静菌剤などを使用したり、又はpHを調整することにより微生物制御を行っている。また、食品添加物の使用が好まれない昨今にあっては、物理的ないし電気的殺菌方法への関心も高まり、例えば高電圧のパルスを用いる方法が提案されている(非特許文献1参照)。
【0003】
たしかにこの高電圧パルス法はすぐれた方法であるが、殺菌対象物を一旦槽内に貯留する必要があるためバッチ式処理であって、連続処理ができないし、殺菌時間も長く、そのため殺菌対象物の風味や品質の劣化は避けられず、充分に満足できるものとはいい難い。
【非特許文献1】日本食品工学会誌、Vol.4, No.2, p47〜51 (2003年6月15日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、液体食品中で腐敗や変敗などの問題となる微生物(耐熱性芽胞菌を含む)を効果的に殺菌して、液体食品の保存性を向上させ、微生物制御のために使用する添加物量の削減や加熱殺菌に伴う加熱劣化の防止や抑制、例えば香気成分等の有効成分の分解などの防止や抑制を目的とするものである。更に殺菌の効率化を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、各方面から検討の結果、化学的方法ではなく電気的方法に着目するに至り、食品の加熱に伴う有効成分の変化の防止や制御、香気成分の変化の防止や制御、微生物制御の為の各種添加物の削減を目指し、交流電源を用いて電圧を印加する事により電界を発生させたところ上記有用成分の変化や香気成分の変化を制御し、更に効果的に微生物を連続的に殺菌することができ、しかも通常の方法では簡単に殺菌することのできない耐熱性芽胞菌も短時間に効率的に連続殺菌できることをはじめて見出し、この有効新知見に基づき、交流高電界殺菌処理システムに関する発明を完成し、その成果を先に特願2005−61139として特許出願したところである。
【0006】
この交流高電界殺菌処理システムは非常にすぐれたシステムであるが、本発明者らは、これに満足することなく、更に改良することとし、そしてその際、その需要が近年になって急上昇しているコーヒーに特に注目し、特にコーヒーの殺菌に適合したシステムを開発するという目的を新たに設定した。
【0007】
そこで各方面から検討を行い、濾過処理に着目した。そこで交流高電界殺菌処理前の工程に濾過工程(不溶性固形物を除去する工程)を設けてコーヒーを殺菌処理したところ、パイプや電極へのスケールの付着が防止、抑制されて、電圧が一定し、その結果、殺菌が安定的に行われること、及び、長期保存してもオイル浮上の発生が抑制され、更に、コーヒー中の香気成分等有用成分の変質や分解が防止、抑制されるという著効、しかもコーヒーに特に有用な著効が奏されることをはじめて発見した。なお、通常、完全に「抑制」された場合が「防止」となるが、本明細書においては、「防止」が不完全な「抑制」を意味する場合もある。なお、本発明においては、コーヒーにはコーヒー含有飲料も包含される。
【0008】
本発明は、これらの有用新知見に基づいてなされたものであって、交流高電界殺菌を実施する前に濾過工程を1回以上実施することを特徴とするコーヒーの殺菌方法を基本的技術思想とするものである。交流高電界殺菌は、先に出願した特願2005−61139(2005年3月4日出願)にしたがって行う。
【0009】
すなわち本発明は、1対以上の金属製の電極に挟まれた通電ユニットを用いて電気伝導性を有する液体食品であるコーヒーを殺菌する方法であって、通電ユニットは密閉系にするとともに、通電ユニットの電極には交流電源を接続し、電圧を印加した通電ユニットに未殺菌コーヒーを連続的に通液することによって微生物を殺菌すること、且つ、この交流高電界殺菌処理に先立ち、未殺菌コーヒーを1又はそれ以上の回数濾過処理すること、を特徴とするコーヒーの殺菌方法を提供するものである。
【0010】
更に好適には、交流高電界殺菌を実施する前で、ポンプに通液する前に濾過工程を実施すること、そして、濾過の種類は、濾布、80メッシュ以上の金属フィルタ、遠心分離、精密濾過の少なくともひとつであり、濾過サイズは200μm以上の粒子を除去することが実施態様のひとつとして包含される。
【0011】
そして、時間当たり60L高電界処理した場合に、電極に1.5kV/cm以上電圧を印加し、品温を120℃以上となることも実施態様のひとつとして包含され、また、印加電界時間を1秒以内とすることも実施態様のひとつとして包含される。
【0012】
また、本発明は、コーヒーの中に含まれる香気成分といった有効成分の分解を防止ないし抑制することを特徴とする殺菌方法、及び、脱酸素条件下における殺菌方法も提供するものである。
【0013】
更に本発明は、コーヒーのほか、コーヒー液やコーヒーを含有する各種コーヒー飲料を殺菌する方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、通電ユニット内の電界中に液体食品を通過させることにより、液体食品を連続的に殺菌することができる。しかもその際、少なくとも通電ユニットの内部を加圧することによって、通常の微生物はもとより耐熱性微生物、特に耐熱性芽胞菌等も1秒以内というきわめて短い時間で殺菌でき、そのため、液体食品の風味、品質の劣化や有効成分の減少や変質も防止でき、液体食品の殺菌システムとして特に好適である。
【0015】
また、装置の面からは、通電ユニットのほか各装置や手段はパイプで連結し且つ密閉系となすことにより、これらの内部はポンプによって送液される液体食品自体の圧力によって加圧されるため、装置全体を圧力容器内に収容する必要がなく、装置はコンパクトとなり、操作は格段に簡素化され、きわめて効率的に殺菌処理を達成することができる。
【0016】
液体食品、特に缶コーヒーといった容器入り液体食品は、自動販売機で販売されることが多く、その際は製造から一定期間経過後に消費されることになるが、殺菌処理しても、耐熱性芽胞菌が残っていると、その間にこれが繁殖して腐敗や品質の劣化を生じる。しかしながら、このような微生物を完全に殺菌するには、高温、且つ高圧でしかも長時間処理せざるを得ず、コストアップや液体食品の風味、品質の劣化は避けられない。
【0017】
本発明はこれらの点を一挙に解決するのにはじめて成功したものであって、特に飲食品の技術分野に適合した殺菌方法である。しかも、大型で複雑な加圧装置を使用する必要がないので、コスト面、操作面及び作業安全性の面からもすぐれており、小さな装置で非常に高い殺菌効果が得られる点においても、液体飲食品の殺菌システムとして特に卓越している。
【0018】
そして更に本発明においては、濾過処理を交流高電界殺菌処理に有機的に組み合わせたため、上記した交流高電界殺菌処理による著効のほか、次のような著効、特にコーヒーに特有にして且つ顕著な効果が奏される。
【0019】
すなわち、パイプ、電極、装置の器壁等にスケールが発生、付着するのを防止ないし抑制できるため、電圧が一定し、殺菌が安定して行われる。また、電極にスケールが付着するのが防止ないし抑制されるため、電極の交換頻度ないし洗浄頻度が低下し、風味が損なわれない範囲で効率化が図られる。
【0020】
また、長期保存する場合、オイル浮上が発生するが、本発明によればこのオイル浮上の発生が抑制される。そのうえ更に、本発明に係る殺菌方法によれば、コーヒーの変色及び/又は成分変化(品質劣化)が防止ないし抑制され、UHT殺菌よりも、未処理に近い色を保持することができ、香気成分等有用成分の変化(劣化)が防止ないし抑制できるという著効も奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、電圧を印加した通電ユニットに濾過処理後の液体食品を通液させることによって電極間で電界が発生し、微生物を連続的に殺菌するものであるが、その際、通電ユニットを密閉系とし、所望に応じて通電ユニット内を更に加圧することにより、液体殺菌するのが困難であった耐熱性芽胞菌もごく短時間で殺菌することができ、コーヒー本来の風味、品質を損なうことなく、大幅な効率化が達成される。
【0022】
本発明を実施するには、濾過処理後の液体食品(未殺菌コーヒー)を先願に係る交流高電界殺菌システムによって処理すればよい。濾過処理は別途行ってもよいし、図1に示したように、ポンプの前に濾過工程を設けて連続的に殺菌処理することも可能である。
【0023】
濾過処理するにあたり、濾過の種類としては、濾布、網目が80メッシュ以上、好ましくは100〜300メッシュの金属フィルタ、網目が80メッシュをこえてフルイ目の開きが狭いタイラー標準フルイ、遠心分離、精密濾過の少なくともひとつが使用される。また、濾過サイズとしては、200μm以下、好ましくは150μm以下であって、好適な範囲は50〜100μmである。
【0024】
濾過処理は、1回でもよいし、2回以上、又は3回以上、必要あれば4回以上行ってもよい。その際、濾過の種類及び濾過サイズは同種のものを使用してもよいし異種のものを組み合わせて実施してもよい。
【0025】
濾過処理を終了した未殺菌液(未殺菌のコーヒー)は、先願に係る交流高電界殺菌システムにて処理すればよい。
すなわち、濾過処理後の未殺菌液は、以下に例示されるような装置を用いて連続的に殺菌することができる。
【0026】
液体の供給口と取り出し口を通電ユニットに接続し、通電ユニットには1対以上の金属製の電極を配し、且つ、これらの電極には交流電源を接続して電極間で電界を発生するようにしてなり、しかも通電ユニット内は加圧可能としてなること、を特徴とする液体食品の連続殺菌装置。
【0027】
通電ユニット内は、開放系としてもよいが、密閉系とすることにより、通電ユニット内を加圧可能とすることができる。通電ユニット内は、それ自体を密閉系とすることにより、通電ユニットを加圧容器に収容することなく加圧することができる。例えば、通電ユニットは密閉されているため、その中に加圧ガスを供給してもよいし、通電ユニット内をポンプで通液する液体の圧力だけでも加圧状態とすることができる。
【0028】
以下に本発明を添付図面を参照しながら更に具体的に説明する。
【0029】
図1は、本発明に係る液体食品殺菌装置の実施例を図示したものであり、上段が第1実施例、中段が第2実施例、下段が第3実施例である。なお、図1において、濾過工程を除いた装置が先願に係る液体食品の連続殺菌装置、つまり交流高電界殺菌装置である。なお、本発明は全体又は一部を、脱酸素状態(不活性ガス雰囲気下、不活性ガス置換等)で実施することも可能である。
【0030】
図1に図示したように、本発明に係る液体食品の連続殺菌装置は、濾過手段のほか、送液手段、(予備加熱装置)、通電ユニット、冷却装置、保圧弁を備え、通電ユニットには1対以上の金属製の電極を配し、且つ、これらの電極には交流電源を接続し、少なくとも予備加熱装置、通電ユニット、冷却装置、保圧弁は接続して内部を密閉系としてなるものである。殺菌するために予め加熱が必要な場合は、予備加熱装置を使用すればよい。
【0031】
具体的には、濾過手段については既述した通りであるが、更に具体的には、例えば、送液手段としてはポンプが使用され、通常使用されるプランジャーポンプ、シリンダーポンプ、ロータリーポンプなどから適宜選択して使用し、予備加熱装置としては熱交換プレート(加熱用)が使用されるほか(第2実施例:中段)、第3実施例(下段)のように、通電ユニットを設けてそのジュール熱を利用してもよい。なお、上段は第1実施例であって、予備加熱をしない場合である。
【0032】
通電ユニット(図面においては、高電界電極と表示)には、液体の供給口から供給される液体が流れる流路が形成され、この流路には交流電源(高周波交流電源)に接続される少なくとも一対の電極が臨んだ構成となっている。具体的には、この通電ユニットの電極には交流電源が接続され、接続される電極は、絶縁体に覆われた金属の電極を最低1対以上臨んだ構成にする事により殺菌できる。更に、電極を覆う絶縁体は、加圧出来る様に密閉状態である。
【0033】
電極の種類としては、電気伝導性を有する金属であれば問題無いが、電極の腐食など劣化防止の為には、チタン製、白金製もしくはステンレス製が望ましい。また、通電ユニットの電極は絶縁体を複数枚重ねる事により、電極を何枚も積層させる事が出来る。
【0034】
通電ユニットにおいて通電処理することによって、ジュール熱により液体食品が加熱されるため、風味や品質劣化が生じるのでそれを希望しない場合には、冷却手段を設ければよく、例えば、熱交換プレート(冷却用)を使用することができる。
【0035】
このようにして殺菌処理された液体食品は、保圧弁(調圧弁)を介して系外に取り出される。圧力調整は送液手段と保圧弁とで調節し、通電ユニット内を適切な状態を維持する。
【0036】
本発明に係る連続殺菌装置は、このように濾過工程、及び、ポンプ〜保圧弁に至るまで配管(パイプ:図中、黒い矢印で示す)で接続されて、それ自体密閉系を構成している。したがって、予備加熱手段〜保圧弁、少なくとも通電ユニットは、加圧容器内に配設することなく、それ自体でその内部は加圧可能とすることができるので、本装置はオープンスペース内に設置しておいても、加圧交流高電界殺菌処理が可能となる点で、きわめて特徴的であり、効率的である。すなわち、通電ユニットを加圧容器に収容して通電ユニットを外部から加圧する場合とは根本的に相違するのである。
【0037】
本装置は、このような構成を新規に採用したことにより、加圧容器内に収容した場合とは異なり、各装置、手段はパイプで接続しているため、圧力のコントロールが容易であって、微調整も可能となる。なお、加圧手段としては、加圧ガスを使用してもよいし、液体食品自体の水圧(液圧)も利用可能であるので、ポンプ(及び必要あれば保圧弁)をコントロールすることによって格別な加圧手段を別途設けることなく、液体食品の水圧を利用することによって加圧状態とすることができ、本装置は自己完結型の装置ということができる。加圧手段として好ましくは水圧(液圧)であり、加圧ガスを利用する場合には、処理時の圧力を一定に保持できるようにする。
【0038】
液体食品を殺菌するには、まず、液体食品(未殺菌物)を濾過工程にて濾過処理した後、ポンプを介して通液し、予備加熱した後、通電ユニットにて処理した後に冷却し、保圧弁を介して殺菌物として系外に取り出せばよいが、以下において、内部を加圧した場合を例にとって本発明を詳しく説明する。
【0039】
液体食品は(必要あれば、予備加熱処理した後)、通電ユニットにて加圧下において通電処理するが、その際、通電ユニット内の圧力が、液体食品へ電圧を印加したときの品温に40℃加算したときの飽和水蒸気圧以上の圧力であるのが望ましい。その理由として、電極側でのスパーク(一時的に放電が発生する現象)を抑制し効率的に微生物殺菌を達成させること及び微小スパークを防止することにより電極の劣化を防止するためである。圧力としては、120℃で、0.6MPa以上、好ましくは0.8MPa以上、更に好ましくは0.9MPa以上であるので、これにしたがって加算値をきめればよい。
【0040】
通電ユニット内の電極の電圧印加時間は、きわめて短かく、1秒以内とするのがよい。電圧の印加時間が長すぎると十分な印加電圧を確保することができないからである。このように、印加時間は、1秒以内、好ましくは0.5秒以内であり、実施例においては、0.006〜0.044秒のように0.05秒以内も例示されている。このように、本発明においては、電圧印加時間が1秒以内、例えば0.1秒以内であって、きわめて短かい点でも非常に特徴的である。
【0041】
また、電極間の距離と印加電圧と電圧印加時間との関係については、電極間距離1cmあたりの電極への印加電圧(V/cm)と液体食品への電圧印加時間(液体食品の通過時間)(秒)の積算係数が50以上となるのが望ましい。この関係は係数が50以上となると通常の加熱のみの殺菌(UHT殺菌やレトルト殺菌など)以上に微生物の殺菌を達成できるからである。この係数は、50以上であればよく、格別の限界はないが、通常、60〜200までが例示される。これらの関係を数式で表わすと、次のとおりである。
【0042】
電極間距離あたりの印加電圧(V/cm)×印加時間(秒)≧50
(式中、Vは電圧、cmは電極間の距離を表わす。)
【0043】
また、本発明においては、更に、通電ユニットを2回以上通液したり、予め熱交換プレート等を用い予備加熱を行ったものを通電ユニットに通液しても問題無い。なお、図1には本発明装置は横型のものを図示したが、竪型のものも使用可能である。
【0044】
電源の周波数としては、エネルギー効率の面と電極に対する耐腐食性の面から、50kHz以下、好ましくは20kHz以下がよく、10〜20kHzの範囲が好適であり、5kHzあるいはそれ以下も使用可能である。
【0045】
本発明で殺菌できる微生物としては、加熱殺菌を必要とする微生物であり、特に変敗や腐敗を引き起こすような微生物に好適である。更に、通常加熱殺菌でも十分な殺菌を要するような耐熱性微生物や芽胞形成する微生物には当該発明の方法による殺菌が効果的である。たとえば、グラム陽性菌を中心とするBacillus属、Geobacillus属、Alicyclobacillus属、Morella属、Clostridium属、Thermoanaerobacter属などが例示される。
【0046】
更に、通電することで抵抗加熱(ジュール熱)が発生することにより液体食品が加熱される為、必要以上の熱が加わらないように、通電ユニットに液体食品を通液させた後、直ちに液体食品が冷却されるような構造であることが望ましい。
【0047】
本発明は、コーヒーを広くその処理対象とし、例えば次のようなコーヒー液が例示される。
(処理するコーヒー液)
コーヒー豆: アラビカ、ロブスタ種等、一般的にコーヒーに使用されるコーヒー豆であれば問題無い。豆を焙煎し、粉砕したものを利用する。
抽出方法: 一般的な抽出条件であれば問題無い。
シャワー式抽出、多塔式抽出、ニーダー式抽出、浸漬抽出など適宜選択できる。
抽出条件: 一般的な抽出条件であれば問題無い。
温水、熱水、蒸気を利用するのが好ましい。
抽出温度は60〜150℃が適温であるが、これに限定しなくても良い。
副原料: 牛乳などの乳原料、糖質、酸味料、香料及び乳化剤、pH調整剤などの添加物が使用可能である。
また、コーヒー抽出液の代替として、市販のコーヒーエキスやインスタントコーヒーも利用することが可能。コーヒー、コーヒー含有飲料に適用できる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
微生物調整
耐熱性微生物胞子Bacillus subtilis JCM2477を用い栄研器材社製 普通ブイヨン培地にて芽胞形成を行い、形成した芽胞を10%グリセロールを含む0.85%生理食塩水中に保存し、−85℃にて凍結保存した物を微生物として用いた。
【0050】
圧力の影響
図1の装置を用いて(但し、濾過工程を除く)上記微生物を用い通電ユニット内を0.4、0.6、0.8、0.95MPaに加圧し、電気伝導性を付与する為に0.01%食塩水中に微生物をケン濁した物を通液した。使用した電極は6mm(幅)×32mm(高さ)×電極間間隔1mm及び6mm(幅)×16mm(高さ)×電極間間隔1mmを用い、ポンプを使用して、流速1L/分で通液した。それぞれの電極の交流電界印加時間は、0.011秒及び0.006秒で印加電界は8000V/cm及び8500V/cmで処理(周波数20kHz)を行った。そのときの品温は、115℃であった。処理後1秒以内に常温まで冷却を行い、生残菌数(対数)−初期芽胞菌数(対数)にて示す(図2)。この数値の正数値が死滅菌数を示す。
【0051】
残存した微生物芽胞数の測定は、栄研器材製の標準寒天培地にてコロニー数をカウントする事により行った。上記結果から、115℃(蒸気圧0.7MPa)に対して40℃を加算した蒸気圧0.45MPa以上に加圧する事によりB.subtilisの胞子を効率的に殺菌できる事が明らかになった。
【0052】
(実施例2)
印加電界時間及び印加電圧の影響
実施例1で用いた微生物を用い通電ユニット内を0.9MPaに加圧し、使用した電極は6mm(幅)×32mm(高さ)×電極間間隔1mm、2mm及び4mmび及び6mm(幅)×24mm(高さ)×電極間間隔2mm及び4mmを用い、周波数20kHz、流速1L/分にて通液した。それぞれの電極の交流電界印加時間を下記表1に示す。
【0053】
【表1】


【0054】
※ 印加電圧 ( )外の数値は1mm当たりの印加電圧(V/mm)、
( )内の数値は実際のテスト時の印加電圧(V)
【0055】
また、印加電界強度を変更するために通液するときの食塩水濃度を0.01〜0.2%に変化させながら処理を行った。そのときの品温は、115℃であった。処理後1秒以内に常温まで冷却を行い、生残菌数から初期芽胞菌数を差し引いた数値にて示す(図3)。表1と図3において丸数字はそれぞれ対応している。
【0056】
残存した微生物芽胞数の測定は、栄研器材製の標準寒天培地にてコロニー数をカウントする事により行った。また、用いたB.subtilisの温浴中でのD115℃=0.029(すなわち、115℃でのDeath Value(D値)が0.029分)である事から一秒での殺菌できる菌数(対数)が0.57である事から係数50以上にすることによりB.subtilisの胞子を効果的に殺菌できる事が明らかになった。
【0057】
(実施例3)
図4に示したコーヒー製造フローにしたがってコーヒーを製造し、得られた濾過処理済のコーヒーについて、手法の違いによる殺菌効果の比較、香りの成分の比較を行った。
【0058】
(1)殺菌効果の比較
高電界殺菌(実施例)とUHT殺菌(比較例)の手法による殺菌効果の比較を行った。殺菌手法及び結果を、それぞれ、表2及び表3に示す。なお、指標細菌としては、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)JCM2744を用いた。UHT機種としては、Micro Thermics社製のModel 25HV Hybrid UHT/LTST殺菌機を使用した。
【0059】
【表2】


【0060】
【表3】


【0061】
上記結果から明らかなように、高電界殺菌効果は丸数字の1>2>3>4の順であり、UHT殺菌効果は丸数字の5>6>7>8の順である。
【0062】
高電界殺菌とUHT殺菌と比較した結果、高電界1とUHT5が同程度の殺菌効率であること、及び、高電界2とUHT6が近似した殺菌効率であることがいずれも判明した(なお、各数字は丸数字を表わす)。
【0063】
(2)香り成分の比較
同等レベルの殺菌効果において、殺菌条件、殺菌手法の違いが及ぼす香りの変化を比較した。香りの分析フローは次のとおりとした。
【0064】
(香りの分析フロー)
GC−MS(HEWLETT PACKARD社製GCsystem HP6890Series)を使用し、固層マイクロ抽出(SPME)樹脂にコーヒーの各種成分を吸着させて固層マイクロ抽出法(SPME法)にて分析した。
分析条件としては、スプリット方式で注入、キャピラリー(DB−WAX)60mカラムを使用。ヘリウムガスを1.0ml/分にて流しながら40℃で3分ホールド→5℃/分で240℃まで昇温→240℃で5分ホールドで香気成分の分離・定量を実施した。
解析は、未殺菌(未処理)品の各ピーク面積から10%以上変化(増加もしくは減少)したピークを変化成分として変化率を求めた。
【0065】
得られた結果を表4に示した。香り変化率は、未殺菌と比較したときのGC−MS分析のピーク面積が10%以上変化した割合を示したものである。得られた結果から明らかなように、UHT殺菌より高電界殺菌のほうが、香りの変化率が抑制されているのが判る。
【0066】
【表4】


【0067】
(実施例4)
図5に示したコーヒー製造フロー(実施例)及び図6に示したコーヒー製造フロー(比較例)にしたがって、それぞれ、コーヒーを製造し、得られた濾過処理済のコーヒーについて、濾過工程の違いによる高電界殺菌効果の比較を行った。
【0068】
殺菌手法及び結果を表5に示した。なお、指標細菌としては、Bacillus subtilis JCM2744を使用した。
【0069】
【表5】


【0070】
上記結果から明らかなように、殺菌効率という面から検討した結果、比較例においては、次のような欠点があることが判った。すなわち、
電流が低下し、電圧を高めに設定しないと殺菌が効率的にできない。
スケーリングの発生が原因で、電極に負荷がかかっている。高電界処理の条件を良くしても殺菌が不十分になる。
温度を120℃から117℃に下げているにも関わらず、殺菌効率を上げるために、電圧を上げなくてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る連続殺菌装置を示す装置構成図である。
【図2】処理圧力と殺菌菌数との関係を示す。
【図3】使用電極と殺菌菌数との関係を示す。
【図4】コーヒー製造フローを示す。
【図5】コーヒー製造フロー(実施例)を示す。
【図6】コーヒー製造フロー(比較例)を示す。




 

 


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