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発明の名称 魚釣用電動リール
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−60931(P2007−60931A)
公開日 平成19年3月15日(2007.3.15)
出願番号 特願2005−248294(P2005−248294)
出願日 平成17年8月29日(2005.8.29)
代理人 【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
発明者 寺内 孝
要約 課題
駆動モータからの出力を高速伝達状態、又は低速伝達状態に切換え可能な機械式の変速装置を備えた魚釣用電動リールにおいて、電動駆動時のギヤの噛み合い音を少なくして快適な巻取りが行なえる魚釣用電動リールを提供する。

解決手段
本発明の魚釣用電動リールは、リール本体4に回転自在に支持された釣糸巻取り用のスプールを回転駆動する駆動モータ14と、駆動モータ14とスプールとの間に設けられるギヤ同士の噛合による動力伝達機構15に配設され、高速伝達状態又は低速伝達状態に切換え可能な機械式の変速装置16とを備えている。そして、動力伝達機構15の金属製のギヤに、振動抑制部材60を設けたことを特徴とする。
特許請求の範囲
【請求項1】
リール本体に回転自在に支持された釣糸巻取り用のスプールを回転駆動する駆動モータと、前記駆動モータとスプールとの間に設けられるギヤ同士の噛合による動力伝達機構に配設され、高速伝達状態又は低速伝達状態に切換え可能な機械式の変速装置と、を備えた魚釣用電動リールにおいて、
前記動力伝達機構の金属製のギヤに、振動抑制部材を設けたことを特徴とする魚釣用電動リール。
【請求項2】
前記振動抑制部材は、弾性部材で構成されて動力の補助的伝達を可能としていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用電動リール。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、リール本体に回転自在に支持されたスプールを回転駆動する駆動モータを備えた魚釣用電動リールに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、魚釣用電動リールは、状況に応じた巻取り操作を行なうべく、変速装置を備えている。このような変速装置としては、駆動モータへ供給される電流量を制御して、モータ出力の増減調節を行ない、これによってスプールの回転速度を変化させる電気式の変速装置が一般的に知られている。
【0003】
また、スプールの回転速度を変化させる魚釣用電動リールとして、機械式の変速装置を組み込んだものも一般的に知られている。例えば特許文献1には、釣場の状況変化に対応した電動による巻上げ操作が行なえるように、モータ出力部とスプール動力伝達機構との間に、高速用減速歯車機構と低速用減速歯車機構とを連結し、モータの回転方向によっていずれか一方を選択して高低速の動力伝達の切換えを可能にした構成が開示されている。また、特許文献2には、遊星歯車伝達機構の動力伝達経路を規制制御して高低速に切換える機械式の変速装置を備えた構成が開示されている。
【特許文献1】特許第3537363号
【特許文献2】特許第3159637号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に開示されている魚釣用電動リールは、ギヤ比の異なる動力伝達歯車系統を、駆動モータの回転方向を変更することによって高速、又は低速の動力伝達経路に選択的に切換える構造であり、上記した特許文献2に開示されている魚釣用電動リールは、遊星歯車伝達機構を構成する内歯歯車の回転を規制制御して出力歯車(太陽歯車)の回転状態を高低速に切換える構造である。
【0005】
このように、複数の歯車からなる高速動力伝達経路と低速動力伝達経路の何れかが、駆動モータの回転方向により(特許文献1)、又は遊星歯車機構の伝達経路を規制制御することにより(特許文献)選択され、これにより、駆動モータの回転をスプールに伝達することから、複数の歯車同士の噛み合い音が多く発生する状態となる。この状態は、駆動モータの出力アップに伴って増幅される他、動力伝達経路が高速動力伝達経路に選択された場合においても、噛み合い音が増幅されることとなり、電動巻取り駆動時において不快なものとなる。
【0006】
本発明は、上記した問題に基づいてなされたものであり、駆動モータからの出力を高速伝達状態、又は低速伝達状態に切換え可能な機械式の変速装置を備えた魚釣用電動リールにおいて、電動駆動時のギヤの噛み合い音を少なくして快適な巻取りが行なえる魚釣用電動リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明に係る魚釣用電動リールは、リール本体に回転自在に支持された釣糸巻取り用のスプールを回転駆動する駆動モータと、前記駆動モータとスプールとの間に設けられるギヤ同士の噛合による動力伝達機構に配設され、高速伝達状態又は低速伝達状態に切換え可能な機械式の変速装置と、を備えており、前記動力伝達機構の金属製のギヤに、振動抑制部材を設けたことを特徴とする。
【0008】
上記した構成の魚釣用電動リールによれば、駆動モータの出力は、ギヤ同士の噛合による動力伝達機構によってスプールに伝達されると共に、駆動モータから出力される回転駆動力は、機械式の変速装置によって、高速伝達状態又は低速伝達状態に切換えられる。そして、このような変速装置を備えた魚釣用電動リールにおいて、金属製のギヤ部分に振動抑制部材を配設したことで、ギヤ同士の噛合による噛み合い音の発生が抑制されるようになる。
【0009】
なお、上記した振動抑制部材は、金属製のギヤ(アルミニウム合金、銅合金、ステンレス鋼等によって構成される)よりも固有振動数の小さい部材、例えばプラスチックやエラストマー(合成ゴム等)、ゲル(シリコン、ウレタン等)など、振動を吸収抑制する部材であれば良い。この場合、振動抑制部材は、例えばギヤ同士の噛合部分に設置して動力の補助的な伝達を可能にするように設置したものであっても良い。すなわち、例えば合成ゴムのようにゴム弾性を有する物質(弾性部材)を、ギヤ同士の噛合部に介在したり、ギヤに重ね合わせたりする等して、回転方向に弾性力又は摩擦力を発生させ、ギヤの噛合による動力伝達を補完してギヤ同士の噛合時におけるバックラッシュ(噛合遊度)を抑制するものであっても良い。又は、上記した振動抑制部材は、噛合するギヤ同士において、他方のギヤの歯先が接触するように一方のギヤの歯底に設けたり、噛合するギヤ同士の噛合部以外で対向する部分に設けたり、或いは、金属製のギヤの表面部分に貼付、埋設等することで、バックラッシュを抑制したり、噛合するギヤ同士が回転する際に生じる振動を抑制するものであっても良い。
【0010】
また、上記した振動抑制部材は、動力伝達機構を構成するギヤ同士の噛合部の少なくとも一部に配設されていれば良く、特に、機械式の変速装置の変速部に配設することが好ましい。すなわち、このような部位では、高速伝達状態時において、ギヤ同士の噛み合い音が大きくなる傾向になるため、この部位に振動抑制部材を配設することで、効果的に噛み合い音を抑制することが可能になる。もちろん、上記したような振動抑制部材の配置方法は、適宜、組み合わせて実施することが可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、駆動モータからの出力を高速伝達状態、又は低速伝達状態に切換え可能な機械式の変速装置を備えた魚釣用電動リールにおいて、電動駆動時のギヤの噛み合い音が抑制され、快適な巻取りが行なえるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0013】
図1から図3は、本発明に係る魚釣用電動リールの第1の実施形態を示しており、図1は、変速装置が配設される部分を示す部分断面平面図、図2は、図1の主要部の拡大図、そして、図3は、変速装置部分の動力伝達経路を説明する模式図である。
【0014】
本実施形態の魚釣用電動リール1は、手動ハンドル2が取り付けられたリール本体4を備えている。リール本体4を構成する左右のフレーム4a,4b間には、スプール軸10が軸受11を介して回転可能に支持されるとともに、このスプール軸10を囲繞するように、釣糸が巻回されるスプール12が配置されている。
【0015】
また、リール本体4の左右のフレーム間には、正逆回転可能な駆動モータ14が保持されており、この駆動モータ14の回転駆動軸(出力部)14aの回転力は、動力伝達機構15を介して、前記スプール12に伝達される。
【0016】
前記動力伝達機構15は、リール本体4の左フレーム4a側、及び右フレーム4b側に設置されており、左フレーム側4aには、駆動モータ14の出力を減速しつつ、高速伝達状態又は低速伝達状態に切換え可能な機械式の変速装置16と、この変速装置16によって変速された回転駆動力をスプール軸10に伝達するスプール軸動力伝達部17が設置されている。また、右フレーム4b側には、スプール軸10に伝達された回転駆動力を減速してスプール12に伝達する遊星歯車を備えた減速機構18が設置されている。すなわち、これら機械式の変速装置16、スプール軸動力伝達部17、及び減速機構18は、動力伝達機構15を構成する。
【0017】
前記機械式の変速装置16は、図2及び図3に示すように、駆動モータ14の回転駆動軸(出力部)14aと、スプール軸動力伝達部17との間に設置されており、駆動モータ14の回転駆動軸14aの回転を減速しつつ、スプール側に高速回転、又は低速回転で伝達すべく、駆動モータ14の回転駆動軸14aに回り止め嵌合されたピニオンギヤ(太陽歯車)20から動力伝達を受ける変速部21(高速用伝達機構21A及び低速用伝達機構21B)を具備している。変速部21は、以下のように噛合される複数枚のギヤ(アルミニウム合金、銅合金、ステンレス鋼等によって形成される)を配置することで構成されており、本実施形態では、このように構成される変速部21の金属製ギヤ部分に、以下に詳述する振動抑制部材を設けている。
【0018】
前記高速用伝達機構21Aは、前記ピニオンギヤ20に噛合すると共に、内歯歯車22に噛合する複数の遊星歯車23と、各遊星歯車を支持するキャリア24と、キャリア24の中心軸に設けられるキャリア出力ギヤ25と、キャリア出力ギヤ25に噛合される高速用出力ギヤ26とを備えている。そして、高速用出力ギヤ26とその支軸27との間には、第1の一方向クラッチ28が介在されている。この第1の一方向クラッチ28は、高速用出力ギヤ26が、図3のD方向から見て反時計回り方向(実線で示す)に回転駆動された際、その動力を支軸27に伝達するように設置されている。この支軸27には、大径の駆動力出力ギヤ40が取り付けられている。
【0019】
また、前記低速用伝達機構21Bは、前記ピニオンギヤ20に噛合すると共に、内歯歯車22に噛合する複数の遊星歯車23と、各遊星歯車を支持するキャリア24と、キャリア24の中心軸に設けられるキャリア出力ギヤ25と、キャリア出力ギヤ25に噛合する低速用出力ギヤ31とを備えている。そして、低速用出力ギヤ31とその支軸32との間には、第2の一方向クラッチ33が介在されている。
【0020】
この第2の一方向クラッチ33と前記第1の一方向クラッチ28は、力を伝達するその回転方向が互いに逆向きに設定されており、低速用出力ギヤ31が、図3のD方向から見て時計回り方向(点線で示す)に回転駆動された際、その動力を支軸32に伝達するように設置されている。この支軸32には、小径の駆動力出力ギヤ37が取り付けられており、この小径の駆動力出力ギヤ37は、前記大径の駆動力出力ギヤ40に噛合されている。すなわち、小径の駆動力出力ギヤ37から大径の駆動力出力ギヤ40を介して動力伝達する際、両ギヤのギヤ比によって減速されるようになっている。
【0021】
上記したように、高速用伝達機構21Aに設置される第1の一方向クラッチ28と、低速用伝達機構21Bに設置される第2の一方向クラッチ33は、力を伝達するその回転方向が互いに逆向きに設定されているため、後述するように、高速伝達状態において、その駆動力が低速用伝達機構21Bに影響を及ぼすことはなく、逆に低速伝達状態において、その駆動力が高速用伝達機構21Aに影響を及ぼすことはない。
【0022】
上記した高速状態と低速状態は、駆動モータ14の回転方向を切換えることにより、何れかが選択されるようになっている。この場合、駆動モータ14は、前記リール本体4に設けられている回転速度のモード切換えスイッチSを操作することで、時計回り方向(高速モード;実線)、又は反時計回り方向(低速モード;点線)に切換えられる。そして、各モードにおいて動作する高速用伝達機構21Aからの出力、及び低速用伝達機構21Bからの出力は、いずれも上記した支軸27に固定された大径の駆動力出力ギヤ40を介して、上記した動力伝達機構15を構成するスプール軸動力伝達部17に伝達される。この場合、いずれのモードの駆動力が入力されても、大径の駆動力出力ギヤ40は、図3に示す反時計回り方向に回転駆動されるようになっている。
【0023】
前記駆動力伝達機構15を構成するスプール軸動力伝達部17は、前記大径の駆動力出力ギヤ40と支軸27を介して同軸上に回り止め固定される入力ギヤ42と、この入力ギヤ42に噛合されるアイドルギヤ43と、このアイドルギヤ43に噛合し、かつスプール軸10に固定される出力ギヤ44とを備えた構成となっている。出力ギヤ44は、高速モード、低速モードのいずれの場合においても、入力ギヤ42及びアイドルギヤ43を介して、反時計回り方向に回転駆動される。そして、スプール軸10に伝達された回転駆動力は、前記減速機構18を介して更に減速され、スプール12に伝達される。
【0024】
なお、アイドルギヤ43と左フレーム4aとの間には、一方向クラッチ50が配設されており、ハンドル2によるスプールの巻取り操作時において、スプール軸10の時計回り方向の回転を阻止して、ハンドル2の回転駆動力が前記遊星歯車を有する減速機構18を介してスプール12に伝達されるよう構成されている。
【0025】
上記した機械式の変速装置16における変速部21のギヤ部分(金属製のギヤ部分)には、振動抑制部材60が設けられている。この振動抑制部材60は、上記した金属製のギヤの構成材料よりも固有振動数の小さい部材、例えばプラスチックやエラストマー(合成ゴム等)、ゲル(シリコン、ウレタン等)など、振動を吸収抑制する部材によって構成されている。本実施形態における振動抑制部材60は、エラストマー(合成ゴム等、ゴム弾性を有する物質)による弾性部材をOリング状に形成し、ギヤ同士の噛合部において、いずれか一方のギヤの歯底に、他方のギヤの歯先が接触可能となるように設けられている。
【0026】
具体的には、図2に示すように、キャリア出力ギヤ25に噛合する高速用出力ギヤ26及び低速用出力ギヤ31、並びに大径の駆動力出力ギヤ40に噛合する小径の駆動力出力ギヤ37の夫々の歯底に、周溝26a,31a,37aを形成し、この部分にOリング状に形成された振動抑制部材60を嵌め込んでいる。
【0027】
また、本実施形態の魚釣用電動リールでは、駆動力伝達機構15を構成するスプール軸動力伝達部17におけるギヤの噛合部においても、同様な振動抑制部材60が設けられている。すなわち、アイドルギヤ43に噛合する入力ギヤ42及び出力ギヤ44の夫々の歯底に、周溝42a,44aを形成し、この部分にOリング状に形成された振動抑制部材60を嵌め込んでいる。
【0028】
上記した夫々のギヤに設けられる振動抑制部材60には、それに噛合する他方のギヤの歯先が接触可能となっており、これにより、両ギヤの噛合時に摩擦力が生じてガタ付きが効果的に抑制され、両者の間で発生するバックラッシュを吸収して、不快な振動や異音の発生を防止している。
【0029】
次に、上記した構成の魚釣用電動リール1の動作について説明する。
【0030】
[高速モード]
モード切換えスイッチSによって高速モードが選択されると、図3の矢印(実線)に示されるように、モータ14の回転駆動軸14aが時計方向に回転駆動される(以下、時計方向の回転を正転、反時計方向の回転を逆転とする)。回転駆動軸14aが正転駆動すると、ピニオンギヤ20に噛み合う遊星歯車23は逆転され、これにより、各遊星歯車23を支持するキャリア24、及びキャリア24の中心軸に設けられるキャリア出力ギヤ25は正転駆動される。そして、このキャリア出力ギヤ25が正転駆動されると、これに噛合する高速用出力ギヤ26は、矢印で示すように逆転駆動され、高速用出力ギヤ26の回転駆動は、前記第1の一方向クラッチ28によって支軸27に伝達される。
【0031】
第1の一方向クラッチ28を介して支軸27が逆転駆動されると、大径の駆動力出力ギヤ40も逆転駆動され、その駆動力は、スプール軸動力伝達部17の入力ギヤ42に出力される。なお、大径の駆動力出力ギヤ40が逆転駆動されることで、これに噛合する小径の駆動力出力ギヤ37、及び支軸32は正転駆動されるが、前記第2の一方向クラッチ33によって、その正転駆動力は、低速用出力ギヤ31に伝達されることはない。また、低速用出力ギヤ31は、前記キャリア出力ギヤ25を介して逆転駆動されるが、前記第2の一方向クラッチ33によって、低速用出力ギヤ31の逆転駆動力は支軸32に伝達されることはない。
【0032】
すなわち、高速モード時においては、高速用伝達機構21Aが動力伝達状態として機能し、低速用伝達機構21Bにおける低速用出力ギヤ31及び支軸32は、互いに逆方向に空回りし、動力伝達状態として機能することはない。
【0033】
そして、上記したように、大径の駆動力出力ギヤ40が逆転駆動されることで、上述したスプール軸動力伝達部17(大径の駆動力出力ギヤ40と同軸上に設置される入力ギヤ42、この入力ギヤ42に噛合するアイドルギヤ43、このアイドルギヤ43に噛合すると共にスプール軸10に設けられる出力ギヤ44)、及び減速機構18を介して、スプール12は釣糸巻取り方向に所定の速度(高速)で回転駆動される。
【0034】
[低速モード]
モード切換えスイッチSによって低速モードが選択されると、図3の矢印(点線)に示されるように、モータ14の回転駆動軸14aが反時計方向に回転駆動(逆転駆動)される。回転駆動軸14aが逆転駆動すると、ピニオンギヤ20に噛み合う遊星歯車23は正転され、これにより、各遊星歯車23を支持するキャリア24、及びキャリア24の中心軸に設けられるキャリア出力ギヤ25は逆転駆動される。そして、このキャリア出力ギヤ25が逆転駆動されると、これに噛合する低速用出力ギヤ31は点線の矢印で示すように正転駆動され、低速用出力ギヤ31の回転駆動は、第2の一方向クラッチ33によって支軸32に伝達される。
【0035】
第2の一方向クラッチ33を介して支軸32が正転駆動されると、小径の駆動力出力ギヤ37も正転駆動され、これに噛合する大径の駆動力出力ギヤ40は、両ギヤ37,40のギヤ比によって、減速された状態で逆転駆動されるようになる。そして、大径の駆動力出力ギヤ40で減速された駆動力は、スプール軸動力伝達部17の入力ギヤ42に出力される。なお、大径の駆動力出力ギヤ40が逆転駆動されることにより、支軸27は逆転駆動されるが、前記第1の一方向クラッチ28によって、その逆転駆動力は、高速用出力ギヤ26に伝達されることはない。また、高速用出力ギヤ26は、前記キャリア出力ギヤ25を介して正転駆動されるが、前記第1の一方向クラッチ28によって、高速用出力ギヤ26の正転駆動力は支軸27に伝達されることはない。
【0036】
すなわち、低速モード時においては、低速用伝達機構21Bが動力伝達状態として機能し、高速用伝達機構21Aにおける高速用出力ギヤ26及び支軸27は、互いに逆方向に空回りし、動力伝達状態として機能することはない。
【0037】
そして、上記したように、大径の駆動力出力ギヤ40が減速された状態で逆転駆動されることにより、上述したスプール軸動力伝達部17(大径の駆動力出力ギヤ40と同軸上に設置される入力ギヤ42、この入力ギヤ42に噛合するアイドルギヤ43、このアイドルギヤ43に噛合すると共にスプール軸10に設けられる出力ギヤ44)、及び減速機構18を介して、スプール12は釣糸巻取り方向に所定の速度(高速モードと比較して低速)で回転駆動される。
【0038】
以上のように、本実施形態の魚釣用電動リール1は、機械式の変速装置16によって、駆動モータ14の回転方向を切換制御するだけで、スプール12の回転速度(巻取り速度)を高速モードと低速モードとに切換えることができる。
【0039】
そして、上記した構成では、変速装置16における変速部21を構成するギヤの噛合部及びスプール軸動力伝達部17におけるギヤの噛合部に、歯先が接触可能な振動抑制部材60を設けているため、バックラッシュが吸収されると共に、ギヤの回転時に生じる振動が抑制できるようになり、従来のように、複数のギヤによる噛み合い音の発生を効果的に抑制することが可能となる。特に、高速伝達状態に変速したり、或いは、駆動モータのモータ出力をアップして高速状態で電動巻取り操作しても不快な噛み合い音を消音、抑制することができ、快適な変速及び電動巻取り操作が行なえるようになる。
【0040】
また、本実施形態においては、スプール軸動力伝達部17を構成するギヤトレイン部分においても、同様な振動抑制部材60を設けているため、上記した変速部21での静音化と相俟ってより静音化することが可能となる。
【0041】
図4は、本発明の第2の実施形態を示す図であり、変速装置が配設される部分を示す拡大図である。
【0042】
本実施形態では、上記した変速部21のギヤの噛合部に、上記した構成の振動抑制部材60を設けると共に、スプール軸動力伝達部17を構成するギヤトレイン部分に、別の構成の振動抑制部材62,64を設置した例を示している。
【0043】
具体的には、入力ギヤ42、アイドルギヤ43、及び出力ギヤ44の表面部に、夫々凹部42b,43b,44bを形成しておき、この部分に振動抑制部材62を埋設することで、ギヤの回転時に生じる振動や、それに伴う異音の発生を抑制(吸収)するよう構成している。この場合、ギヤの表面部に形成される凹部42b,43b,44bについては、環状に構成したり、所定の間隔をおいて形成する等、適宜変形することが可能である。また、凹部にすることなく、貫通孔にして振動抑制部材を嵌入するような構成であっても良いし、単に、ギヤの表面に振動抑制部材を貼付するような構成であっても良い。
【0044】
さらに、噛合するギヤ同士の噛合部以外で対向する部分に振動抑制部材64が設置されている。具体的には、入力ギヤ42及び出力ギヤ44の歯部に隣接するようにして、環状の凹溝42c,44cを形成しておき、この部分に、Oリング状に形成された振動抑制部材64を嵌入している。この振動抑制部材64は、噛合するギヤとなるアイドルギヤ43の歯部に隣接する円周部43cと対向した状態(ギヤ同士の回転に影響を与えない程度に接触した状態、或いは接触可能な状態であっても良い)となっており、これにより、ギヤの回転時に生じる振動や、それに伴う異音の発生を抑制するよう構成している。
【0045】
このような構成においても、上記した実施形態と同様、複数のギヤによる噛み合い音の発生を効果的に抑制することが可能となり、特に、高速伝達状態に変速したり、或いは、駆動モータのモータ出力をアップして高速状態で電動巻取り操作しても不快な噛み合い音を消音、抑制することができ、快適な変速及び電動巻取り操作が行なえるようになる。
【0046】
なお、振動抑制部材64は、噛合する両方のギヤに設けても良いし、Oリング状にするのではなく、円盤状に構成して各ギヤと一体化したものであっても良い。すなわち、円盤状の振動抑制部材64を、噛合するギヤの歯部に隣接するように設けておき、相手方のギヤの円周部に対向させたり、或いは、相手方のギヤに一体化された同様な円盤状の振動抑制部材に対向させたものであっても良い。
【0047】
図5及び図6は、本発明の第3の実施形態を示す図であり、図5は、変速装置が配設される部分を示す拡大図、図6は、振動抑制部材の構成を示す図である。
【0048】
本実施形態では、上記した変速部21のギヤの噛合部に、上記した構成の振動抑制部材60を設けると共に、スプール軸動力伝達部17を構成するギヤトレイン部分に、別の構成の振動抑制部材66を設置した例を示している。
【0049】
具体的には、アイドルギヤ43の表面部に輪帯状の段部43dを形成しておき、この部分に、アイドルギヤ43の歯部43Aと略重合して振動抑制部材66を取着している。この振動抑制部材66には、図6に示すように、アイドルギヤ43の歯部43Aと同様な歯形状を有する弾性変形部66aが周方向に沿って多数形成されており、各弾性変形部66aが歯部43Aに対して周方向にずれるように、振動抑制部材66はアイドルギヤ43に取着されている。すなわち、アイドルギヤ43の歯部43Aが入力ギヤ42の歯部42A(出力ギヤ44の歯部44A)に噛合すると、弾性変形部66aは、回転方向の弾性力、及び摩擦力の発生によって、動力伝達の補完的な機能を果たすと共に、歯部42Aの側面に当接して両噛合部で生じるバックラッシュを吸収してガタ付きを抑制するようになる。
【0050】
このように、重合された弾性変形部66aが、回転方向に弾性変形しつつ動力伝達の補完的な機能を果たすことから、ギヤの噛合部におけるバックラッシュを抑制することができるようになり、これにより、ギヤ同士の噛み合い音の発生が抑えられ、巻取り電動駆動時の静音化が充分可能となる。
【0051】
なお、上記した構成の振動抑制部材66における弾性変形部については、例えば、図7に示すような形状に形成されていても良い。すなわち、振動抑制部材66をアイドルギヤ43に重合した際、その歯部43Aの周方向両側に、一対の弾性片66cが突出するような形状であっても良い。各弾性片66cは、周方向に弾性変形可能となっており、上記した弾性変形部66aと同様、回転方向の弾性力、及び摩擦力の発生によって、動力伝達の補完的な機能を果たすと共に、歯部42Aの側面に当接して両噛合部で生じるバックラッシュを吸収してガタ付きを抑制するようになっている。これにより、ギヤ同士の噛み合い音の発生を抑えて、巻取り電動駆動時の静音化が可能となる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、動力伝達機構に機械式の変速装置を組み込んだ魚釣用電動リールにおいて、金属製のギヤ部分に、振動を抑制するための振動抑制部材を設置したものであれば、その動力伝達機構や変速装置の構成、及びその配置態様については適宜変形することが可能である。また、振動抑制部材については、上記した実施形態の構成以外にも、例えば、噛合するギヤの一方の歯部の側面に弾性変形する弾性体を取着したり、ギヤ全体、又は歯部を弾性体によって構成する等、適宜変形することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る魚釣用電動リールの一実施形態を示す図であり、変速装置が配設される部分を示す部分断面平面図。
【図2】図1の主要部の拡大図。
【図3】変速装置部分の動力伝達経路を説明する模式図。
【図4】本発明の第2の実施形態を示す図であり、変速装置が配設される部分を示す拡大図。
【図5】本発明の第3の実施形態を示す図であり、変速装置が配設される部分を示す拡大図。
【図6】図5に示す構成において、振動抑制部材の構成を示す図。
【図7】図6に示す構成の変形例を示す図。
【符号の説明】
【0054】
1 魚釣用電動リール
4 リール本体
12 スプール
14 駆動モータ
14a 回転駆動軸(出力部)
15 動力伝達機構
16 変速装置
17 スプール軸動力伝達部
21 変速部
21A 高速用伝達機構
21B 低速用伝達機構
28 第1の一方向クラッチ
33 第2の一方向クラッチ
60,62,64,66 振動抑制部材




 

 


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