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発明の名称 ハイブリッド車およびその制御方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2006−44536(P2006−44536A)
公開日 平成18年2月16日(2006.2.16)
出願番号 特願2004−230489(P2004−230489)
出願日 平成16年8月6日(2004.8.6)
代理人 【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
発明者 干場 健 / 田嶋 啓志
要約 課題
エンジンからの動力とモータからの動力とにより走行可能なハイブリッド車において、駆動輪の空転によるスリップが生じたときにスリップを抑制すると共にバッテリの過大な電力による放電を伴うことなく運転者が要求する駆動力を出力する。

解決手段
モータ走行中に駆動輪のいずれかに空転によるスリップが生じたときにはモータの回転軸の回転角加速度αに基づいて設定されるトルク上限値Tslipによりモータからのトルクを制限することによりスリップを抑制すると共にエンジン22を始動し(S350〜S370)、エンジン22の始動が完了したのを確認してスリップを生じている駆動輪にブレーキにより制動力を作用させることによってスリップを抑制するスリップ抑制制御に切り替える(S400)。これにより、バッテリ50の過大な電力による放電を伴うことなく運転者の要求する駆動力を出力することができる。
特許請求の範囲
【請求項1】
車軸に連結された駆動軸に動力を出力可能な内燃機関と、
前記駆動軸に動力を出力可能な電動機と、
該電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、
前記車軸に連結された左右の駆動輪のいずれかに空転によるスリップが発生したのを判定するスリップ判定手段と、
前記左右の駆動輪に個別に制動力を作用させる制動力作用手段と、
前記内燃機関を運転停止している状態で前記スリップ判定手段により前記左右の駆動輪のいずれかにスリップが判定されたときには、該スリップを抑制するために前記駆動軸に出力される動力が制限されるよう前記電動機を制御すると共に前記内燃機関が始動されるよう前記内燃機関を制御し、該内燃機関が始動された後は該スリップを抑制するために該スリップが判定された駆動輪に制動力が作用されるよう前記制動力作用手段を制御すると共に前記駆動軸に動力が出力されるよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する制御手段と、
を備えるハイブリッド車。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド車であって、
運転者の操作に基づいて前記駆動軸に出力すべき要求動力を設定する要求動力設定手段と、
該設定された要求動力に基づいて前記内燃機関の始動および運転停止を判定する始動停止判定手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記スリップ判定手段により前記左右の駆動輪のいずれにもスリップが判定されていないときには前記始動停止判定手段による判定結果が実行されると共に前記設定された要求動力に基づく動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記電動機とを制御し、前記内燃機関を運転停止している状態で前記スリップ判定手段により前記左右の駆動輪のいずれかにスリップが判定されたときには該スリップを抑制するために前記設定された要求動力を制限した動力が前記駆動軸に出力されるよう前記電動機を制御すると共に前記始動停止判定手段による判定結果に拘わらず前記内燃機関が始動されるよう前記内燃機関を制御し、前記内燃機関を運転している状態で前記スリップ判定手段により前記左右の駆動輪のいずれかにスリップが判定されたときには該スリップを抑制するために該スリップが判定された駆動輪に制動力が作用されるよう前記制動力作用手段を制御すると共に前記設定された要求動力に基づく動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する手段である
ハイブリッド車。
【請求項3】
請求項1または2記載のハイブリッド車であって、
前記内燃機関の出力軸と前記駆動軸とに接続され、電力と動力の入出力を伴って前記内燃機関からの動力の少なくとも一部を前記駆動軸に出力可能な電力動力入出力手段を備え、
前記蓄電手段は、前記電力動力入出力手段とも電力のやりとりが可能な手段である
ハイブリッド車。
【請求項4】
前記電力動力入出力手段は、前記内燃機関の出力軸と前記駆動軸と回転軸との3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記回転軸に動力を入出力可能な発電機と、を備える手段である請求項3記載のハイブリッド車。
【請求項5】
前記電力動力入出力手段は、前記内燃機関の出力軸に接続された第1の回転子と前記駆動軸に接続された第2の回転子とを有し、該第1の回転子と該第2の回転子との相対的な回転により回転する対回転子電動機である請求項3記載のハイブリッド車。
【請求項6】
車軸に連結された駆動軸に動力を出力可能な内燃機関と、前記駆動軸に動力を出力可能な電動機と、該電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、左右の駆動輪に個別に制動力を作用させる制動力作用手段と、を備えるハイブリッド車の制御方法であって、
前記内燃機関を運転停止している状態で前記車軸に連結された左右の駆動輪のいずれかに空転によるスリップが発生したときには、該スリップを抑制するために前記駆動軸に出力される動力が制限されるよう前記電動機を制御すると共に前記内燃機関が始動されるよう前記内燃機関を制御し、該内燃機関が始動された後は該スリップを抑制するために該スリップが判定された駆動輪に制動力が作用されるよう前記制動力作用手段を制御すると共に前記駆動軸に動力が出力されるよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する
ハイブリッド車の制御方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド車としては、駆動輪のいずれかに空転によるスリップが発生したときには駆動軸に出力するトルクを制限するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド車では、駆動輪の角加速度が増大するに従って駆動軸に出力してもよいトルク上限値を小さくすることにより、空転によるスリップを収束させている。
【特許文献1】特開2001−295676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
エンジンからの動力とモータからの動力とにより走行可能なハイブリッド車では、エネルギ効率を向上させる目的から、発進時や低速走行時など比較的大きな動力を必要としない状態ではエンジンを停止してバッテリからの電力を用いてモータからの動力だけで走行する。こうしたモータ走行している最中に駆動輪のいずれかに空転によるスリップが生じると、モータトルクを制限してスリップを抑制するが、スリップを生じている駆動輪に作用するトルクを小さくするだけでなく、スリップが生じていない駆動輪に作用するトルクも小さくされるから、車両に要求される駆動力を出力することができない場合が生じる。スリップの抑制手法としては、モータトルクを制限する他にスリップした駆動輪に制動力を付与するものも考えられるが、この場合、更なる駆動力要求に伴ってエンジンを始動する際に駆動力要求をモータトルクとして出力しながらエンジンを始動する結果、モータトルクの出力もエンジンの始動もバッテリからの電力を用いる場合、バッテリから過大な電流が流れる場合が生じる。
【0004】
本発明のハイブリッド車およびその制御方法は、エンジンからの動力とモータからの動力とにより走行可能なハイブリッド車において、駆動輪の空転によるスリップが生じたときにスリップを抑制すると共にバッテリなどの蓄電装置から過大な電流を流すことなく運転者が要求する駆動力を出力することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のハイブリッド車およびその制御方法は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明のハイブリッド車は、
車軸に連結された駆動軸に動力を出力可能な内燃機関と、
前記駆動軸に動力を出力可能な電動機と、
該電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、
前記車軸に連結された左右の駆動輪のいずれかに空転によるスリップが発生したのを判定するスリップ判定手段と、
前記左右の駆動輪に個別に制動力を作用させる制動力作用手段と、
前記内燃機関を運転停止している状態で前記スリップ判定手段により前記左右の駆動輪のいずれかにスリップが判定されたときには、該スリップを抑制するために前記駆動軸に出力される動力が制限されるよう前記電動機を制御すると共に前記内燃機関が始動されるよう前記内燃機関を制御し、該内燃機関が始動された後は該スリップを抑制するために該スリップが判定された駆動輪に制動力が作用されるよう前記制動力作用手段を制御すると共に前記駆動軸に動力が出力されるよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明のハイブリッド車では、内燃機関を運転停止している状態で車軸に連結された左右の駆動輪のいずれかにスリップが発生したと判定されたときには、スリップを抑制するために車軸に連結された駆動軸に出力される動力が制限されるよう電動機を制御すると共に内燃機関が始動されるよう内燃機関を制御し、内燃機関が始動された後はスリップを抑制するためにスリップが判定された駆動輪に制動力が作用されるよう左右の駆動輪に個別に制動力を作用させる制動力作用手段を制御すると共に駆動軸に動力が出力されるよう内燃機関と電動機とを制御する。即ち、内燃機関を運転停止している状態で左右の駆動輪のいずれかにスリップが発生したときには、まず、駆動軸に出力される動力が制限されるよう電動機を制御することによりスリップを抑制し、こうした電動機によるスリップを抑制する制御を実行している最中に内燃機関を始動する。したがって、電動機から大きなトルクを出力している最中に内燃機関が始動される際に生じ得る過大な電流による蓄電手段の放電を防止することができる。また、内燃機関を始動した後は、制動力作用手段からスリップが生じた駆動輪に制動力を作用させることによってスリップを抑制し、内燃機関と電動機から駆動軸に出力するから、十分な動力を駆動軸に出力することができる。
【0008】
こうした本発明のハイブリッド車において、運転者の操作に基づいて前記駆動軸に出力すべき要求動力を設定する要求動力設定手段と、該設定された要求動力に基づいて前記内燃機関の始動および運転停止を判定する始動停止判定手段と、を備え、前記制御手段は、前記スリップ判定手段により前記左右の駆動輪のいずれにもスリップが判定されていないときには前記始動停止判定手段による判定結果が実行されると共に前記設定された要求動力に基づく動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記電動機とを制御し、前記内燃機関を運転停止している状態で前記スリップ判定手段により前記左右の駆動輪のいずれかにスリップが判定されたときには該スリップを抑制するために前記設定された要求動力を制限した動力が前記駆動軸に出力されるよう前記電動機を制御すると共に前記始動停止判定手段による判定結果に拘わらず前記内燃機関が始動されるよう前記内燃機関を制御し、前記内燃機関を運転している状態で前記スリップ判定手段により前記左右の駆動輪のいずれかにスリップが判定されたときには該スリップを抑制するために該スリップが判定された駆動輪に制動力が作用されるよう前記制動力作用手段を制御すると共に前記設定された要求動力に基づく動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、要求動力に基づく動力を駆動軸に出力することができると共に車両のエネルギ効率を向上させることができる。
【0009】
また、本発明のハイブリッド車において、前記内燃機関の出力軸と前記駆動軸とに接続され電力と動力の入出力を伴って前記内燃機関からの動力の少なくとも一部を前記駆動軸に出力可能な電力動力入出力手段を備え、前記蓄電手段は前記電力動力入出力手段とも電力のやりとりが可能な手段であるものとすることもできる。この場合、前記電力動力入出力手段は、前記内燃機関の出力軸と前記駆動軸と回転軸との3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記回転軸に動力を入出力可能な発電機と、を備える手段であるものとすることもできるし、前記内燃機関の出力軸に接続された第1の回転子と前記駆動軸に接続された第2の回転子とを有し、該第1の回転子と該第2の回転子との相対的な回転により回転する対回転子電動機であるものとすることもできる。
【0010】
本発明のハイブリッド車の制御方法は、
車軸に連結された駆動軸に動力を出力可能な内燃機関と、前記駆動軸に動力を出力可能な電動機と、該電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、左右の駆動輪に個別に制動力を作用させる制動力作用手段と、を備えるハイブリッド車の制御方法であって、
前記内燃機関を運転停止している状態で前記車軸に連結された左右の駆動輪のいずれかに空転によるスリップが発生したときには、該スリップを抑制するために前記駆動軸に出力される動力が制限されるよう前記電動機を制御すると共に前記内燃機関が始動されるよう前記内燃機関を制御し、該内燃機関が始動された後は該スリップを抑制するために該スリップが判定された駆動輪に制動力が作用されるよう前記制動力作用手段を制御すると共に前記駆動軸に動力が出力されるよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する
ことを要旨とする。
【0011】
この本発明のハイブリッド車の制御方法では、内燃機関を運転停止している状態で車軸に連結された左右の駆動輪のいずれかにスリップが発生したと判定されたときには、スリップを抑制するために車軸に連結された駆動軸に出力される動力が制限されるよう電動機を制御すると共に内燃機関が始動されるよう内燃機関を制御し、内燃機関が始動された後はスリップを抑制するためにスリップが判定された駆動輪に制動力が作用されるよう左右の駆動輪に個別に制動力を作用させる制動力作用手段を制御すると共に駆動軸に動力が出力されるよう内燃機関と電動機とを制御する。即ち、内燃機関を運転停止している状態で左右の駆動輪のいずれかにスリップが発生したときには、まず、駆動軸に出力される動力が制限されるよう電動機を制御することによりスリップを抑制し、こうした電動機によるスリップを抑制する制御を実行している最中に内燃機関を始動する。したがって、電動機から大きなトルクを出力している最中に内燃機関が始動される際に生じ得る過大な電流による蓄電手段の放電を防止することができる。また、内燃機関を始動した後は、制動力作用手段からスリップが生じた駆動輪に制動力を作用させることによってスリップを抑制し、内燃機関と電動機から駆動軸に出力するから、十分な動力を駆動軸に出力することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明の一実施例である動力出力装置を搭載したハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、動力出力装置全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0014】
エンジン22は、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン22の運転状態を検出する各種センサから信号を入力するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などの運転制御を受けている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0015】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
【0016】
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0017】
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、バッテリECU52では、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)も演算している。
【0018】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速V、駆動輪63a,63bの回転軸に取り付けられた車輪速センサ64a,64bからの車輪速Vl,Vrなどが入力ポートを介して入力されている。また、ハイブリッド用電子制御ユニット70からは、駆動輪63a,63bに取り付けられた油圧式のブレーキ66a,66bへの駆動信号などが出力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0019】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
【0020】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特にエンジン22を停止した状態でモータMG2からの動力だけで走行している最中に駆動輪63a,63bのいずれかが空転によるスリップを生じたときの動作について説明する。図2はハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。
【0021】
駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,バッテリ50の入出力制限Win,Wout,充放電要求パワーPb*,車輪速センサ64a,64bからの車輪速Vl,Vrなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されるモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて計算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。また、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、温度センサ51により検出されたバッテリ50の電池温度Tbとバッテリ50の残容量(SOC)とに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の残容量(SOC)に基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じて入出力制限Win,Woutを設定することができる。図3に電池温度Tbと入出力制限Win,Woutとの関係の一例を示し、図4にバッテリ50の残容量(SOC)と入出力制限Win,Woutの補正係数との関係の一例を示す。さらに、充放電要求パワーPb*は、バッテリ50の残容量(SOC)に基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。
【0022】
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動輪63a,63bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*とエンジン22に要求される要求パワーPe*とを設定する(ステップS110)。要求トルクTr*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図5に要求トルク設定用マップの一例を示す。要求パワーPe*は、設定した要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものとバッテリ50が要求する充放電要求パワーPb*とロスLossとの和として計算することができる。なお、リングギヤ軸32aの回転数Nrは、車速Vに換算係数kを乗じることによって求めたり、モータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで割ることによって求めることができる。
【0023】
次に、後述するスリップ抑制処理(ステップS210)によって設定されるスリップ始動フラグFslipの値を調べると共に(ステップS120)、設定した要求パワーPe*を閾値Prefと比較する(ステップS130)。ここで、このスリップ始動フラグFslipは、エンジン22の運転を停止した状態でモータMG2からの動力だけで走行している最中に駆動輪63a,63bのいずれかがスリップし、これに伴ってエンジン22を始動したときに値1が設定され、こうしたスリップが収束したときに値0に設定される。また、閾値Prefは、エンジン22を始動したりその運転を停止する閾値として設定されるものである。なお、実施例では、説明の容易のために要求パワーPe*と閾値Prefとの比較によりエンジン22を始動したりその運転を停止するものとしたが、要求パワーPe*に加えてバッテリ50の残容量(SOC)や車速Vなどを考慮してエンジン22を始動したりその運転を停止するものとしてもよい。
【0024】
駆動輪63a,63bのいずれにもスリップが生じていないことによりスリップ始動フラグFslipに値0が設定されていると共に設定した要求パワーPe*が閾値Pref未満のときには、エンジン22の運転を停止するためにエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*に値0を設定すると共に(ステップS140)、モータMG1のトルク指令Tm1*にも値0を設定する(ステップS150)。なお、実施例では、エンジン22が既に運転停止されているときにも確認のために目標回転数Ne*や目標トルクTe*,トルク指令Tm1*に値0を設定するものとした。
【0025】
一方、駆動輪63a,63bのいずれにもスリップが生じていないことによりスリップ始動フラグFslipに値0が設定されていると共に要求パワーPe*が閾値Pref以上のときや、駆動輪63a,63bのいずれかにスリップが生じてエンジン22が始動されたときには、設定した要求パワーPe*に基づいてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する(ステップS160)。この設定は、エンジン22を効率よく動作させる動作ラインと要求パワーPe*とに基づいて目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する。エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を図6に示す。図示するように、目標回転数Ne*と目標トルクTe*は、動作ラインと要求パワーPe*(Ne*×Te*)が一定の曲線との交点により求めることができる。続いて、設定した目標回転数Ne*とリングギヤ軸32aの回転数Nr(Nm2/Gr)と動力分配統合機構30のギヤ比ρとを用いて次式(1)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算した目標回転数Nm1*と現在の回転数Nm1とに基づいて式(2)によりモータMG1のトルク指令Tm1*を計算する(ステップS170)。ここで、式(1)は、動力分配統合機構30の回転要素に対する力学的な関係式である。エンジン22の運転を停止した状態の動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図を図7に示し、エンジン22を運転している状態の動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図を図8に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2に減速ギヤ35のギヤ比Grを乗じたリングギヤ32の回転数Nrを示す。式(1)は、図8の共線図を用いれば容易に導くことができる。なお、図8中のR軸上の2つの太線矢印は、エンジン22を目標回転数Ne*および目標トルクTe*の運転ポイントで定常運転したときにエンジン22から出力されるトルクTe*がリングギヤ軸32aに伝達されるトルクと、モータMG2から出力されるトルクTm2*が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。また、式(2)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(2)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。
【0026】
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ−Nm2/(Gr・ρ) (1)
Tm1*=前回Tm1*+k1(Nm1*−Nm1)+k2∫(Nm1*−Nm1)dt (2)
【0027】
モータMG1の目標回転数Nm1*とトルク指令Tm1*とを計算すると、バッテリ50の出力制限Woutと計算したモータMG1のトルク指令Tm1*に現在のモータMG1の回転数Nm1を乗じて得られるモータMG1の消費電力(発電電力)との偏差をモータMG2の回転数Nm2で割ることによりモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tmin,Tmaxを次式(3)および式(4)により計算すると共に(ステップS180)、要求トルクTr*とトルク指令Tm1*と動力分配統合機構30のギヤ比ρを用いてモータMG2から出力すべきトルクとしての仮モータトルクTm2tmpを式(5)により計算し(ステップS190)、計算したトルク制限Tmin,Tmaxで仮モータトルクTm2tmpを制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する(ステップS200)。このようにモータMG2のトルク指令Tm2*を設定することにより、駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力する要求トルクTr*を、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で制限したトルクとして設定することができる。なお、式(5)は、前述した図8の共線図から容易に導き出すことができる。
【0028】
Tmin=(Win−Tm1*・Nm1)/Nm2 (3)
Tmax=(Wout−Tm1*・Nm1)/Nm2 (4)
Tm2tmp=(Tr*+Tm1*/ρ)/Gr (5)
【0029】
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、図9に例示するスリップ抑制処理を実行し(ステップS210)、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信して(ステップS220)、駆動制御ルーチンを終了する。目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されるようにエンジン22における燃料噴射制御や点火制御などの制御を行なう。ここで、エンジンECU24は、値0の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したときには、エンジン22が運転されているときにはその運転を停止し、エンジン22が運転停止しているときには運転停止の状態を維持する。また、エンジンECU24は、エンジン22が運転停止している状態のときに値0ではない目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したときには、エンジン22を始動し、その後、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されるよう制御する。エンジン22の始動は、エンジン22のクランキングに要するトルクをモータMG1から出力すると共にモータMG1からのトルク出力に伴ってリングギヤ軸32aに出力されるトルクをキャンセルするトルクと要求トルクTrとの和のトルクをモータMG2から出力することにより行なわれる。なお、エンジン22の始動制御は本発明の中核をなさないため、これ以上の説明は省略する。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
【0030】
図9に例示するスリップ抑制処理では、まず、モータMG2の回転数Nm2に基づいて回転角加速度αを計算し(ステップS300)、回転角加速度αに基づいて駆動輪63a,63bのいずれかに空転によるスリップが生じているか否かを判定する(ステップS310)。スリップの判定は、実施例では、回転角加速度αを閾値と比較し、回転角加速度αが閾値を超えたときにスリップが発生したと判定し、回転角加速度αが閾値を超えると回転角加速度αが閾値未満になっても所定時間(例えば、0.5秒や1秒などの時間)を経過するまではスリップが生じていると判定するものとした。これは、回転角加速度αが閾値未満となってもスリップが生じやすい状態であるために直ちに再びスリップが発生するのを抑制するためである。スリップが発生していないと判定されると(ステップS320)、スリップ始動フラグFslipに値0を設定して(ステップS330)、処理を終了する。
【0031】
一方、スリップが発生していると判定すると(ステップS320)、エンジン22を停止した状態でモータMG2からの動力だけで走行するモータ走行であるか否かを判定する(ステップS340)。モータ走行であるときには、回転角加速度αに基づいてスリップを抑制するためにモータMG2から出力してもよいトルクの上限としてのトルク上限値Tslipを設定する(ステップS350)。実施例では、回転角加速度αとトルク上限値Tslipとの関係を予め定めてトルク上限値設定用マップとしてROM74に記憶しておき、回転角加速度αが与えられるとマップから対応するトルク上限値Tslipを導出して設定するものとした。トルク上限値設定用マップの一例を図10に示す。図10の例では、回転角加速度αが大きくなるほどトルク上限値Tslipが小さくなるように設定されている。トルク上限値Tslipを設定すると、設定したトルク上限値Tslipの範囲内となるようモータMG2のトルク指令Tm2*を再設定すると共に(ステップS360)、エンジン22を始動するようエンジンECU24に指示を出力し(ステップS370)、エンジン22の始動が完了しているか否かを判定する(ステップS380)。エンジン22を始動するようエンジンECU24に指示を出力しても直ちにエンジン22の始動は完了しないから、エンジン22の始動が完了するまではステップS350〜S380までの処理を実行してスリップ抑制処理を終了する。こうしてモータMG2のトルク指令Tm2*をトルク上限値Tslipで制限することにより、モータ走行中における駆動輪63a,63bのスリップを収束させることができる。また、このようにモータMG2のトルク指令Tm2*をトルク上限値Tslipで制限している最中は、モータMG2の消費電力は比較的小さくなるから、この最中にエンジン22を始動することにより、モータMG2により消費される電力とエンジン22の始動に必要な電力との和が過大な電力となるのを抑制することができる。この結果、モータMG2により比較的大きな電力を消費している最中にエンジン22を始動することに伴って生じるバッテリ50の過大な電力による放電を抑制することができる。
【0032】
こうしたモータ走行中のスリップ抑制制御を行なっている最中にエンジン22の始動が完了すると、ステップS380で肯定的な判定がなされ、スリップ始動フラグFslipに値1が設定される(ステップS390)。スリップ始動フラグFslipに値1が設定されると、図2の駆動制御ルーチンでは、要求パワーPe*に拘わらず、エンジン22の運転を継続するステップS160,S170の処理が実行される。
【0033】
ステップS320で駆動輪63a,63bにスリップが発生していると判定され、ステップS330でモータ走行ではないと判定されると、油圧式のブレーキ66a,66bによるスリップ抑制制御を行なって(ステップS400)、スリップ抑制処理を終了する。油圧式のブレーキ66a,66bによるスリップ抑制制御は、実施例では、車輪速センサ64a,64bにより検出された車輪速Vl,Vrによってスリップを生じている駆動輪を判定し、スリップを生じている駆動輪に制動力を作用させることによりスリップを抑制するいわゆるトラクションコントロールを用いるものとした。
【0034】
いま、雪道などの低μ路をモータ走行により発進しようとして駆動輪63a,63bの一方が空転によるスリップが生じた場合を考える。この場合、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて要求トルクTr*が設定され(ステップS110)、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でモータMG2のトルク指令Tm2*が設定されるが(ステップS220)、設定されたトルク指令Tm2*はスリップ抑制処理によりモータMG2の回転軸の回転角加速度αに応じたトルク上限値Tslipによって制限される(ステップS360)。このため、発生したスリップは収束する。こうしたスリップの抑制制御では、駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*が制限されるから、スリップが生じた駆動輪だけでなくスリップを生じていない駆動輪に対しても十分な駆動力を出力することができない。このため、雪道などの低μ路における坂路発進では発進が困難なものとなる。実施例では、トルク上限値Tslipによるトルク指令Tm2*の制限を開始すると要求パワーPe*に拘わらずにエンジン22を始動し、エンジン22の始動が完了すると、油圧式のブレーキ66a,66bによるスリップ抑制制御を行なう。このブレーキ66a,66bによるスリップ抑制制御はスリップを生じている駆動輪に制動力を作用させることによりスリップを抑制するものであるから、駆動軸としてのリングギヤ軸32aには要求トルクTr*が出力されることになり、スリップを生じていない駆動輪に十分な駆動力を出力することができる。このため、雪道などの低μ路における坂路発進でもスリップを生じていない駆動輪による駆動力で発進することができる。なお、エンジン22を始動するタイミングはトルク上限値Tslipによるトルク指令Tm2*の制限を開始したタイミングであるから、モータMG2により消費される電力とエンジン22の始動に必要な電力との和が過大な電力となるのを抑制することができ、バッテリ50の過大な電力による放電を抑止することができる。
【0035】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、モータ走行中に駆動輪63a,63bのいずれかに空転によるスリップが生じたときにはモータMG2からのトルクを制限することによりスリップを抑制すると共にエンジン22を始動し、ブレーキ66a,66bによるスリップ抑制制御に切り替えるから、スリップを抑制することができると共にバッテリ50の過大な電力による放電を伴うことなく運転者の要求する要求トルクTr*を駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力することができる。
【0036】
実施例のハイブリッド自動車20では、ブレーキ66a,66bを油圧により作動するものとしたが、油圧以外のアクチュエータを用いてブレーキ66a,66bを作動するものとしてもよい。
【0037】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の動力を動力分配統合機構30を介して駆動輪63a,63bに接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図11の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、エンジン22のクランクシャフト26に接続されたインナーロータ232と駆動輪63a,63bに動力を出力する駆動軸に接続されたアウターロータ234とを有し、エンジン22の動力の一部を駆動軸に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機230を備えるものとしてもよい。また、内燃機関からの動力を用いた走行とモータからの動力だけによる走行とが可能な構成であればよいから、図12の変形例のハイブリッド自動車320に例示するように、駆動輪63a,63bにデファレンシャルギヤを介して接続された駆動軸に変速機340を介してモータ330を取り付け、モータ330の回転軸にクラッチ328を介してエンジン322のクランクシャフトを接続するものとしてもよい。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】バッテリ50における電池温度Tbと入出力制限Win,Woutとの関係の一例を示す説明図である。
【図4】バッテリ50の残容量(SOC)と入出力制限Win,Woutの補正係数との関係の一例を示す説明図である。
【図5】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図6】エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*および目標トルクTe*を設定する様子を示す説明図である。
【図7】エンジン22を運転停止している状態のときの動力分配統合機構30の回転要素を力学的に説明するための共線図の一例を示す説明図である。
【図8】エンジン22を運転している状態のときの動力分配統合機構30の回転要素を力学的に説明するための共線図の一例を示す説明図である。
【図9】スリップ抑制処理の一例を示すフローチャートである。
【図10】トルク上限値設定用マップの一例を示す説明図である。
【図11】変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【図12】変形例のハイブリッド自動車320の構成の概略を示す構成図である。
【符号の説明】
【0040】
20,220,320 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪速センサ、66a,66b ブレーキ、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、230 対ロータ電動機、232 インナーロータ 234 アウターロータ、322 エンジン、328 クラッチ、330 モータ、340 変速機、MG1,MG2 モータ。




 

 


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