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フィルアップ機能付マスタシリンダ - トヨタ自動車株式会社
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発明の名称 フィルアップ機能付マスタシリンダ
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2006−1379(P2006−1379A)
公開日 平成18年1月5日(2006.1.5)
出願番号 特願2004−178760(P2004−178760)
出願日 平成16年6月16日(2004.6.16)
代理人 【識別番号】100079669
【弁理士】
【氏名又は名称】神戸 典和
発明者 磯野 宏
要約 課題
車両用の液圧ブレーキシステムに設けられてブレーキ操作部材の操作に応じた液圧を発生させるマスタシリンダのフィルアップ装置を改善する。

解決手段
ピストン42のハウジング40に対する相対移動に機械的に連動して切り換えられる連動切換弁を設ける。連動切換弁は、ピストン42が後退端位置から設定距離前進するまではフィルアップ室54をリリーフ弁88を経てリザーバ72に連通させる第一状態にあり、設定距離以上前進した状態ではリリーフ弁を経ることなく連通路84により直接リザーバ72に連通させる第二状態に切り換えられる。それにより、フィルアップ室54の液圧は速やかに低下し、加圧室50,52の液圧が速やかに上昇させられ、ブレーキの効き遅れ等の問題が軽減される。
特許請求の範囲
【請求項1】
ハウジングと、その内部に摺動可能に配設されて少なくとも前進は一体的に行う2つのピストンとを少なくとも備え、それらハウジングと2つのピストンとの間に加圧室とフィルアップ室とが形成されたマスタシリンダと、
リリーフ弁と、
前記2つのピストンの前記ハウジングに対する相対的な前進に機械的に連動して作動し、前記2つのピストンが後退端位置から設定距離前進するまでは前記フィルアップ室を前記リリーフ弁を経て外部に連通させる第一状態にあり、設定距離以上前進した状態では前記リリーフ弁を経ることなく直接外部に連通させる第二状態となる連動切換弁と
を含むことを特徴とするフィルアップ機能付マスタシリンダ。
【請求項2】
前記連動切換弁が前記ハウジングと前記2つのピストンの1つとにより形成された請求項1に記載のフィルアップ機能付マスタシリンダ。
【請求項3】
前記2つのピストンが、互いに一体的に進退する小径ピストンと大径ピストンとを含み、前記ハウジングがそれら小径ピストンと大径ピストンとを収容し、小径ピストンの前方に前記加圧室を、大径ピストンの前方に前記フィルアップ室を形成する請求項1または2に記載のフィルアップ機能付マスタシリンダ。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の液圧ブレーキシステムに設けられてブレーキ操作部材の操作に応じた液圧を発生させるマスタシリンダに関するものであり、特にフィルアップ機能を有するものの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の液圧ブレーキシステムにはマスタシリンダが設けられるのが普通である。マスタシリンダは、バキュームブースタ,液圧ブースタ等の倍力装置を介して、あるいは介さないで直接、ブレーキペダル等のブレーキ操作部材と連携させられ、操作力に対応するマスタシリンダ圧を発生させる。このマスタシリンダ圧が、通常、ブレーキシリンダに供給されてブレーキが作動させられる場合と、通常はマスタシリンダとは別に設けられた動力液圧源の液圧が液圧制御弁装置により制御されてブレーキシリンダに供給され、動力液圧源や液圧制御弁装置の故障時にマスタシリンダ圧が供給される場合とがある。
【0003】
いずれにしても、マスタシリンダからのブレーキ液の供給によりブレーキシリンダが作動させられる場合、実質的な制動効果が出始める前に相当量のブレーキ液が供給されることが必要である。摩擦部材とブレーキ回転体との間、あるいは摩擦部材とそれをブレーキ回転体に向かって押圧する押圧部材との間の隙間であるブレーキクリアランスを消滅させたり、比較的軟らかいシール部材等を弾性変形させたりするためにブレーキ液が消費されるからである。この分のブレーキ液の供給をフィルアップと称しており、従来からマスタシリンダにフィルアップ機能を持たせることが行われている。
【0004】
具体的には、例えば下記特許文献1に記載されているように、マスタシリンダにおいて、ブレーキ液を加圧する加圧室とは別にフィルアップ室を設けることが行われているのである。フィルアップ室は、通常、逆止弁を備えた連通路により加圧室と接続されるとともに、リリーフ弁と絞りとの並列回路を経てリザーバ等の低圧源と接続される。フィルアップ室の液圧がリリーフ弁のリリーフ圧以下である間は、フィルアップ室のブレーキ液が連通路および逆止弁を経て加圧室に供給され、フィルアップが行われる。加圧室の液圧(マスタシリンダ圧)が上昇し、それにつれてフィルアップ室の液圧がリリーフ圧を超えれば、リリーフ弁が開いてフィルアップ室のブレーキ液が低圧源へ流れる状態となり、フィルアップが終了する。ブレーキ操作力をマスタシリンダ圧の上昇のために有効に利用する観点から、最終的にはフィルアップ室の液圧が大気圧まで低下することが望ましいため、フィルアップ室はリリーフ弁をバイパスして低圧源と連通させられることが望ましいが、フィルアップ中はフィルアップ室の液圧をリリーフ圧を超える高さまで上昇させることが必要であるため、リリーフ弁と並列に絞りが設けられるのである。
【特許文献1】特開2002−211383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このフィルアップ室をリリーフ弁と絞りとの並列回路を経て低圧源に接続するものには、未だ改善の余地があることが判明した。例えば、ブレーキペダルの踏み込み後、踏力が一定に保たれる場合に、ブレーキの効き遅れが生じる。上記一定の踏力は、リターンスプリングの弾性力や各部の摩擦力を無視すれば、加圧室の液圧に基づいてピストンに作用する力(加圧反力と称する)と、フィルアップ室の液圧に基づいてピストンに作用する力(フィルアップ反力と称する)との和と釣り合う。つまり、踏力のうちブレーキの効きに有効に利用されるのは、フィルアップ反力を差し引いた部分であり、フィルアップ反力はフィルアップ室のブレーキ液が絞りを経て低圧源に流出するにつれて減少する。したがって、踏力が一定に保たれる場合、加圧室の液圧はフィルアップ室の液圧の低下に従って緩やかに上昇することとなり、その分効き遅れが生じるのである。この効き遅れの問題は、特に、踏力が比較的小さい大きさで一定に保たれた場合に無視できないものとなる。
【0006】
また、ブレーキペダルの踏み込みが緩やかに行われる場合には、フィルアップ室から絞りを経て低圧源に流出するブレーキ液の量が多くなり、その分、踏込ストロークが無駄になる問題もある。この問題は、ブレーキペダルが踏込限度に達し、あるいは加圧ピストンが前進端位置に達するまでに、ブレーキシリンダに供給されるブレーキ液の総量が減少する問題にもつながる。
本発明は、以上の事情を背景として、フィルアップ機能を有するマスタシリンダを改善すること、すなわち上記問題を解消し、あるいは軽減することを課題として為されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために、本発明に係るフィルアップ機能付マスタシリンダは、(a)ハウジングと、その内部に摺動可能に配設されて少なくとも前進は一体的に行う2つのピストンとを少なくとも備え、それらハウジングと2つのピストンとの間に加圧室とフィルアップ室とが形成されたマスタシリンダと、(b)リリーフ弁と、(c)前記2つのピストンの前記ハウジングに対する相対的な前進に機械的に連動して作動し、前記2つのピストンが後退端位置から設定距離前進するまでは前記フィルアップ室を前記リリーフ弁を経て外部に連通させる第一状態にあり、設定距離以上前進した状態では前記リリーフ弁を経ることなく直接外部に連通させる第二状態となる連動切換弁とを含むものとされる。
【発明の効果】
【0008】
このように構成されたフィルアップ機能付マスタシリンダにおいては、ピストンが後退端位置から設定距離前進するまでは連動切換弁が第一状態にあり、フィルアップ室は直接低圧源には連通させられない。したがって、フィルアップ室の液圧がリリーフ圧に達してブレーキ液が低圧源へ流出しない限り、フィルアップ室のブレーキ液は必ずブレーキシリンダに供給され、前述の、フィルアップ室のブレーキ液が絞りを経て低圧源へ流出することによる踏込ストロークの無駄や、ボトミングまでにブレーキシリンダに供給されるブレーキ液総量の減少の問題が解消される。そして、ピストンが設定距離以上前進すれば、連動切換弁がフィルアップ室を低圧源に連通させるため、フィルアップ室の液圧は速やかに低下し、実質的に全踏力がブレーキシリンダの作動に利用される状態となり、前述のブレーキ効き遅れの問題も軽減される。
【発明の態様】
【0009】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0010】
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に、(4)項が請求項2に、(8)項が請求項3にそれぞれ相当する。
【0011】
(1)ハウジングと、その内部に摺動可能に配設されて少なくとも前進は一体的に行う2つのピストンとを少なくとも備え、それらハウジングと2つのピストンとの間に加圧室とフィルアップ室とが形成されたマスタシリンダと、
リリーフ弁と、
前記2つのピストンの前記ハウジングに対する相対的な前進に機械的に連動して作動し、前記2つのピストンが後退端位置から設定距離前進するまでは前記フィルアップ室を前記リリーフ弁を経て外部に連通させる第一状態にあり、設定距離以上前進した状態では前記リリーフ弁を経ることなく直接外部に連通させる第二状態となる連動切換弁と
を含むことを特徴とするフィルアップ機能付マスタシリンダ。
(2)前記加圧室と前記フィルアップ室とを互いに連通させる連通路に設けられ、フィルアップ室から加圧室に向かう作動液の流れは許容するが逆向きの流れは阻止する逆止弁を含む(1)項に記載のフィルアップ機能付マスタシリンダ。
逆止弁を備えた連通路によれば、単純な装置により、フィルアップ室から加圧室を経てブレーキ液をブレーキシリンダに供給することができる。
(3)前記連通路が、前記2つのピストンのうち、前記加圧室の作動液を加圧するピストン内に形成された(2)項に記載のフィルアップ機能付マスタシリンダ。
連通路をピストン内に設ければ、装置を一層単純化し得る。
(4)前記連動切換弁が前記ハウジングと前記2つのピストンの一方とにより形成された(1)項ないし(3)項のいずれかに記載のフィルアップ機能付マスタシリンダ。
後に実施例の項において説明するように、連動切換弁をマスタシリンダの外部に設けることも可能であるが、ハウジングとピストンとにより構成すれば、ピストンを弁子として利用することができる。しかも、連動切換弁は必然的にピストンのハウジングに対する相対移動に機械的に連動することとなって、連動装置が不要になり、装置コストを低減し得る。
(5)前記リリーフ弁が前記2つのピストンの一方に設けられた(1)項ないし(4)項のいずれかに記載のフィルアップ機能付マスタシリンダ。
リリーフ弁をマスタシリンダの外部に設ける場合に比較して、装置をコンパクトに構成することができ、ピストン自体をリリーフ弁のハウジングとして利用する場合には、構成を一層単純にすることができる。
(6)前記リリーフ弁が前記ハウジングに設けられた(1)項ないし(4)項のいずれかに記載のフィルアップ機能付マスタシリンダ。
前記(5)項の特徴による場合と類似の効果が得られる。
(7)前記リリーフ弁が前記ハウジングの外部に、ハウジングとは別個に設けられた(1)項ないし(4)項のいずれかに記載のフィルアップ機能付マスタシリンダ。
(8)前記ピストンが、互いに一体的に進退する小径ピストンと大径ピストンとを含み、前記ハウジングがそれら小径ピストンと大径ピストンとを収容し、小径ピストンの前方に前記加圧室を、大径ピストンの前方に前記フィルアップ室を形成する(1)項ないし(7)項のいずれかに記載のフィルアップ機能付マスタシリンダ。
ピストンを、大径ピストンと小径ピストンとを一体的に有する段付ピストンとし、ハウジングも段付孔を有するものとしてもよく、また、互いに別体の大径ピストンと小径ピストンとを仕切壁で仕切られた前後のシリンダボアに嵌合し、上記仕切壁を液密かつ摺動可能に貫通して後方のピストンの力を前方のピストンに伝達する伝達ロッドを設けてもよい。なお、後者の場合には、前後のピストンの直径を同じにすることも可能である。
【実施例】
【0012】
以下、請求可能発明の実施例を、図を参照しつつ説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、上記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更を施した態様で実施することができる。
【0013】
本発明の一実施例であるフィルアップ機能付マスタシリンダを備えた液圧ブレーキシステムを図1に示す。この液圧ブレーキシステムは、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル10,マスタシリンダ12,動力式液圧源14,液圧制御弁装置16,ブレーキシリンダ20,22,24,26等を備えており、通常は、動力式液圧源14に発生させられた液圧が、液圧制御弁装置16により制御されてブレーキシリンダ20〜26に伝達され、ブレーキシリンダ20〜26の液圧により左右前後輪30〜36のブレーキが作動させられるものである。
【0014】
マスタシリンダ12は、段付孔を有したハウジング40と、3つのピストン42,44,46とを含んでいる。ピストン42とピストン46とは同径であり、ピストン44はそれらピストン42,46より小径とされている。小径のピストン44(小径ピストンと称する)とそれより大径のピストン42(大径ピストンと称する)とは一体に形成されて、段付ピストン48を構成している。それら3つのピストン42,44,46がハウジング40のシリンダボアに液密かつ摺動可能に嵌合されることにより、小径ピストン44の前方に加圧室50が、ピストン46の前方に加圧室52がそれぞれ形成され、大径ピストン42の前方(段付ピストン48の段付面とハウジング40の段付面との間)にフィルアップ室54が形成されている。
【0015】
ピストン42は、ブレーキペダル10と連携させられており、ブレーキペダル10の回転運動が直線運動に変換されてピストン42に伝達される。段付ピストン48とピストン46との間、ピストン46とハウジング40の底部との間には、それぞれリターンスプリング56,58が設けられている。リターンスプリング58の弾性力はリターンスプリング56のそれより大きくされているが、その差は小さく、加圧室50と加圧室52とには実質的に同じ高さの液圧(マスタシリンダ圧と称する)が発生させられる。
【0016】
ハウジング40の加圧室50,52に対応する部分には、それぞれ一対のカップシール60,62が設けられている。これら一対のカップシール60,62の間にそれぞれポート64,66が設けられ、それぞれ液通路68,70により、ブレーキ液をほぼ大気圧で蓄えるリザーバ72に接続されている。ピストン42,46には、それぞれ連通路74,76が形成されており、これら連通路74,76がポート64,66に対向する状態で、加圧室50,52がリザーバ72に連通させられ、加圧室50,52からリザーバ72への作動液の流れが許容される。この加圧室50,52からリザーバ72へのブレーキ液の流れが許容される位置、すなわち、連通路74,76とポート64,66とが対向する位置が後退端位置であり、ピストン42,46の後退端位置はそれぞれストッパ78,79によって規定される。
【0017】
また、ハウジング40のシリンダボアには、大径ピストン42が嵌合されている箇所にポート80が設けられ、液通路82によりリザーバ72に接続されている。このポート80は、後退端位置において、大径ピストン42の内部に設けられた連通路84のポート接続部86と対向させられており、フィルアップ室54とリザーバ72とが連通させられる。ただし、連通路84の途中にはリリーフ弁88が設けられており、フィルアップ室54の液圧がリリーフ圧以上である場合に限り、フィルアップ室54からリザーバ72に向かうブレーキ液の流れが許容される。リリーフ弁88は、図示の都合で、あたかも大径ピストン42内の空間に配置されているかの状態で示されているが、実際は、大径ピストン42をリリーフ弁88のハウジングとして構成されている。
【0018】
大径ピストン42には、フィルアップ室54と外部とを連通させるもう1つの連通路90が設けられ、ポート接続部86よりブレーキペダル10側に連通路90のポート接続部92が設けられている。それら連通路84と連通路90とが独立となるよう、大径ピストン42の外周部には、ポート接続部86とポート接続部92との間にOリング94が設けられている。また、大径ピストン42のフィルアップ室54側端部にカップシール96が設けられ、ブレーキ液が、ハウジング40と大径ピストン42との間を通って、フィルアップ室54からリザーバ72へ流出することが阻止されている。
本実施例においては、大径ピストン42の前進(図の左方)に伴って、Oリング94がポート80を通過すれば、ポート80に接続される連通路が、連通路84から連通路90に切り換わるようにされている。
【0019】
小径ピストン44にはフィルアップ室54と加圧室50とを連通させる連通路100が設けられ、連通路100の途中に、フィルアップ室54から加圧室50へ向かう作動液の流れを許容し、逆向きの流れを阻止する逆止弁102が設けられている。
【0020】
以上ように構成されたフィルアップ機能付マスタシリンダ12の加圧室50には、マスタ通路110により、常開の電磁開閉弁であるマスタカット弁112を経て、右前輪32のブレーキシリンダ22が接続され、加圧室52には、マスタ通路114により、マスタカット弁116を経て、左前輪30のブレーキシリンダ20が接続されている。また、マスタ通路114には、常閉の電磁開閉弁であるシミュレータ制御弁118を経てストロークシミュレータ120が設けられている。さらに、マスタシリンダ12に接続されたリザーバ72は、液通路122により動力式液圧源14とも接続されている。
【0021】
動力式液圧源14は、リザーバ72からブレーキ液を汲み上げるポンプ130と、ポンプ130を駆動する電動モータ132と、ポンプ130から吐出されたブレーキ液を加圧下に蓄えるアキュムレータ134と、ポンプ130の吐出圧を設定値以下に規制するリリーフ弁136とを含んでいる。動力式液圧源14には、液圧制御弁装置16を介して、4つのブレーキシリンダ20〜26が接続されている。
【0022】
液圧制御弁装置16は、ポンプ130から各ブレーキシリンダ20〜26へのブレーキ液の流入を制御する増圧弁140,142,144,146と、各ブレーキシリンダ20〜26からリザーバ72へのブレーキ液の流出を制御する減圧弁150、152,154,156とを含んでおり、ポンプ130と増圧弁140〜146とは増圧通路148により接続され、減圧弁150〜156とリザーバ72とは減圧通路158により接続されている。それら増圧弁140〜146および減圧弁150〜156は、供給電流に応じてリニアに液圧を制御するリニア液圧制御弁である。増圧弁140〜146および前輪側の減圧弁150,152は、常閉の電磁制御弁であり、後輪側の減圧弁154,156は常開の電磁制御弁である。
【0023】
ポンプ130と増圧弁140との間に液圧源液圧センサ160が設けられて動力式液圧源14の液圧が検出され、ブレーキシリンダ20〜26の各液圧がブレーキシリンダ圧センサ162により検出される。また、マスタシリンダ12の2つの加圧室50,52とマスタカット弁112,116との間にそれぞれマスタシリンダ圧センサ164が設けられ、加圧室50,52にそれぞれ発生させられる液圧が検出される。
【0024】
本液圧ブレーキシステムは、図2に示すブレーキECU(電子制御ユニット)170の指令に基づいて制御される。ブレーキECU170は,コンピュータを主体とする制御部172と複数の駆動回路174とを含んでおり、制御部172は、CPU176,ROM178、RAM180,入出力部182等を備えている。入出力部182には、液圧源液圧センサ160,ブレーキシリンダ圧センサ162,マスタシリンダ圧センサ164,ブレーキペダル10の操作ストロークを検出するペダルストロークセンサ190、ブレーキペダル10に加えられる踏力を検出する踏力センサ192、各車輪30〜36の回転速度を検出する車輪速センサ194、異常検出装置196等が入力側に接続されるとともに、マスタカット弁112,116,シミュレータ制御弁118,増圧弁140〜146,減圧弁150〜156の各コイル、電動モータ132等が駆動回路174を介して出力側に接続されている。
【0025】
異常検出装置196は、液圧ブレーキを正常に制御し得ない事態が発生していることを検出するものであり、動力式液圧源14の電動モータ132に接続された電源電圧が設定電圧以下に低下、液圧制御弁装置16の各制御弁140〜146,150〜156の作動異常等を検出する。
また、ROM178には、フローチャートの図示は省略するがブレーキ液圧制御プログラム、アンチロック制御プログラム等の種々のプログラムや図示を省略する目標ブレーキ液圧決定テーブル等が格納されている。
【0026】
以上のように構成された液圧ブレーキシステムの作動について説明する。本実施例においては、通常、運転者によりブレーキ操作が行われれば、マスタカット弁112,116が閉状態とされてマスタシリンダ12とブレーキシリンダ20〜26とが遮断されるとともに、ストロークシミュレータ118がマスタシリンダ12に連通させられて運転者に操作感を付与するようにされる。一方、液圧制御弁装置16においては、運転者によるブレーキペダル10の操作量(操作ストロークと操作力との少なくとも一方)や、車輪速度,車体速度などに基づいて、ブレーキECU170により増圧弁140〜146および減圧弁150〜156の制御が行われて、各ブレーキシリンダ20〜26内の液圧が増圧,減圧されることにより、車両の減速度がブレーキペダル10の操作量に対応した大きさとなるようにされる。
【0027】
それに対して、動力液圧源14や液圧制御弁装置16等に故障が発生し、正常な制御が不能な場合には、マスタカット弁112,116、シミュレータ制御弁118のコイルには電流が供給されず、図示された原位置とされ、マスタカット弁112,116が連通状態、シミュレータ制御弁118が遮断状態とされる。つまり、運転者によりブレーキ操作が行われれば、ブレーキペダル10の操作力に対応するマスタシリンダ圧が発生させられ、そのマスタシリンダ圧がブレーキシリンダ20,22に供給されてブレーキが作動させられるのである。
【0028】
ブレーキペダル10が踏み込まれれば、段付ピストン48が前進させられ、それに伴ってフィルアップ室54、加圧室50の液圧が増加させられる。フィルアップ室54の液圧が加圧室50の液圧より高い間は、フィルアップ室54のブレーキ液が逆止弁102を経て加圧室50に供給され、加圧室50のブレーキ液と共にブレーキシリンダ22に供給される。フィルアップ室54の液圧はリリーフ弁88のリリーフ圧に達するまで増加させられる。本実施例においては、リリーフ圧がほぼフィルアップが終了する高さとされている。フィルアップが終了するまでの間は、ブレーキ液が、フィルアップ室54と加圧室50との両方からブレーキシリンダ22に供給されることになり、フィルアップを速やかに終了させることができる。
【0029】
フィルアップ室54の液圧がリリーフ圧に達すると、ブレーキ液はリリーフ弁88を経てリザーバ72に流出させられる。この後は、加圧室50の液圧の方がフィルアップ室54の液圧より高くなるが、逆止弁102により加圧室50のブレーキ液がフィルアップ室54に流れることが阻止される。ブレーキシリンダ20,22には、フィルアップ室54からブレーキ液が供給されることはなく、それぞれ加圧室52,50からのみ供給される。
【0030】
ブレーキペダルの踏み込み開始からフィルアップ終了まで、ポート80はリリーフ弁86が設けられた連通路84に接続されており、上記のように作動させられる(第一状態)。その状態から、さらに段付ピストン42が前進させられれば、ポート80に接続される連通路が、連通路84から連通路90に切り換わり、フィルアップ室54が直接リザーバ72に連通させられる(第二状態)。これにより、フィルアップ室54の液圧が、速やかにほぼ大気圧まで戻され、全踏力が加圧室50を加圧する力となる。
また、段付ピストン48が後退させられる場合には、フィルアップ室54の容積が増加させられるが、第二状態においては、フィルアップ室54の容積の増加に伴ってリザーバ72から連通路90を経てブレーキ液が供給され、第一状態においては、ポート80からカップシール96とハウジング40との間を通って、フィルアップ室54にブレーキ液が流入させられる。それにより、フィルアップ室54が負圧になることが回避される。
【0031】
図3,4は、時間に対する踏力、操作ストローク、マスタシリンダ圧およびフィルアップ室の液圧(フィルアップ圧と称する)の変化を示すものである。図3は、従来技術のリリーフ弁と絞りとの並列回路を経てフィルアップ室を低圧源に接続するマスタシリンダ12の作動状態であり、ブレーキペダルが踏み込み後、踏力が一定に保たれる場合について示している。時間t0においてブレーキペダルの踏込みが開始され、フィルアップの終了後、時間t1において踏力が一定とされ、それ以後その一定値に保たれるものとする。時間t1から時間t2にかけて、フィルアップ室においては、ブレーキ液が絞りを経てリザーバに流出され、フィルアップ圧が徐々に低下する。それに伴って、マスタシリンダ圧が緩やかに上昇させられる。つまり、ブレーキの効き遅れが生じることになり、踏力が比較的小さい大きさで一定に保たれる場合に、特に問題となるのである。また、緩やかにブレーキペダルが踏み込まれた場合には、フィルアップ室から絞りを経てリザーバに流出されるブレーキ液の量が多くなり、無駄な操作ストロークが生じることになる。
【0032】
それに対して、図4に本実施例におけるマスタシリンダ12の作動状態を示す。時間t1から第二状態に切り換わる時間t3までリリーフ弁88によりブレーキ液が流出させられ、フィルアップ圧54がほぼリリーフ圧に保たれる。時間t3において、第二状態に切り換えられると、フィルアップ室54はリザーバ72に直接連通させられ、フィルアップ圧が速やかに低下する。それに伴って、踏力が一時減少させられることになるが、マスタシリンダ圧は速やかに上昇させられ、ブレーキの効き遅れが軽減されることになる。さらに、第一状態において、リリーフ弁88がリリーフ圧に達するまでは、ブレーキ液がリザーバ72に流出させられることはなく、フィルアップ室54のブレーキ液は必ずブレーキシリンダ22〜26に供給され、無駄な操作ストロークが生じる問題も解消されるのである。
【0033】
上記実施例においては、ハウジング40と段付ピストン48の大径ピストン42とにより連動切換弁が形成され、リリーフ弁88が段付ピストン48内に設けられていたが、リリーフ弁がハウジング内に設けられてもよい。その一実施例を図5に示す。なお、上記実施例の液圧ブレーキシステムの構成要素と同じ作用を成す構成要素には同一の符号を付して対応関係を示し、説明を省略する。
【0034】
マスタシリンダ200は、段付孔を有するハウジング202と、ピストン204,46とを含んでおり、ピストン204は、小径ピストン206と大径ピストン208とを一体に有して段付状を成す段付ピストンとされている。前記実施例と同様に、それら3つのピストン、すなわち大径ピストン208,小径ピストン44およびピストン44ハウジング202のシリンダボアに液密かつ摺動可能に嵌合されることにより、小径ピストン206およびピストン44の前方に加圧室50,52がそれぞれ形成され、大径ピストン208の前方にフィルアップ室54が形成されている。
【0035】
ハウジング202には、大径ピストン208が嵌合されている箇所に2つのポート210,212が設けられ、それぞれ液通路214,216によりリザーバ72に接続されている。ポート210は、後退端位置において、ピストン204の内部に設けられたフィルアップ室54と外部とを連通させる連通路218と対向させられる。また、ポート210には、リリーフ弁220が設けられており、フィルアップ室54の液圧がリリーフ圧以上である場合に、フィルアップ室54からリザーバ72にブレーキ液が流出させられる。
【0036】
大径ピストン208の外周部には、連通路218の小径ピストン206側にOリング222が設けられている。大径ピストン208の前進に伴って、Oリング222がポート212を通過すれば、連通路218に、ポート210に加えてポート212も連通させられ、フィルアップ室54が直接リザーバ72に連通させられる。以上のように、フィルアップ室54が、リリーフ弁220を経てリザーバ72に連通させられる第一状態と、リリーフ弁220を経ることなく直接リザーバ72連通させられる第二状態とを切り換える連動切換弁が、ハウジング202と段付ピストン204の大径ピストン208とにより形成されている。本実施例においても、マスタシリンダ200からのブレーキ液の供給によりブレーキシリンダが作動させられる場合に、前記実施例とまったく同様の効果が得られる。
【0037】
上記2つの実施例においては、リリーフ弁がマスタシリンダ12内部に設けられていたが、マスタシリンダの外部に設けられてもよい。また、フィルアップ室54と加圧室50とを互いに連通させる連通路100が、フィルアップ室54から加圧室50に向かうブレーキ液の流れは許容する逆止弁102と共に、段付ピストン48,204内部に形成されていたが、それら連通路と逆止弁とがマスタシリンダ外部に設けられてもよい。さらに、小径ピストン44,206と大径ピストン42,208とを一体に有する段付ピストン48,204とされていたが、小径ピストンと大径ピストンとが別個に設けられるものでもよい。これらの態様を組み合わせた一実施例を図6に示す。
【0038】
マスタシリンダ230は、3つのピストン232,234,236と、仕切壁238で仕切られた前後に2つのシリンダボア240,242を備えるハウジング244とを含むものである。シリンダボア240,242にそれぞれ嵌合されている大径ピストン232と小径ピストン234とは、仕切壁238を液密かつ摺動可能に貫通する伝達ロッド246により連携させられ、ブレーキペダル10に加えられた操作力が、ブレーキペダル10と連携させられた大径ピストン232と小径ピストン234とに伝達される。
【0039】
シリンダボア242には、小径ピストン234の前方にピストン236も嵌合され、3つの液室が形成されている。小径ピストン234の前方の液室が、右前輪32のブレーキシリンダ22に接続されている加圧室250であり、ピストン236の前方の液室が、左前輪30のブレーキシリンダ20に接続されている加圧室252であり、小径ピストン234と仕切壁238との間に形成された液室254は、液通路256により常時リザーバ72と連通させられている。また、大径ピストン232と仕切壁238との間には、フィルアップ室258が形成されている。
【0040】
ハウジング244の底部とピストン236との間、ピストン236と小径ピストン234との間、仕切壁238と大径ピストン232との間には、それぞれリターンスプリング260,262,264が設けられている。ピストン232,234,236の後退端位置はストッパ266,268,269により規定されている。
ハウジング244の加圧室250,252に対応する箇所にポート270,272が設けられ、それぞれリザーバ72から延び出させられた連通路68,70と接続されて、小径ピストン234,ピストン236が後退端位置にある場合にのみ、加圧室250,252とリザーバ72とが連通させられる。
【0041】
フィルアップ室258には、リリーフ弁280とそれと並列に設けられた開閉弁282とを経てリザーバ72が接続され、その開閉弁282は、連携装置284によりブレーキペダル10と機械的に連携させられている。
連携装置284は、図7に示すように、3本のロッド286,288,290から構成されている。開閉弁282の操作部としてのロッド286が、ロッド288に設けられた案内孔292に摺動可能に嵌合され、そのロッド288がロッド290の連結部294に相対回動および軸方向の相対移動可能に連結されている。連結部294は円筒状を成し、その内径がロッド288の外径より大きくされている。また、連結部294には一対の長穴296が形成されており、それら長穴296にロッド288に固定されたピン298が係合させられて、ロッド288とロッド290とが相対回動および軸方向の相対移動可能に連結されている。また、ロッド288とロッド290との間にはスプリング300が設けられており、開閉弁282に設けられたスプリング302より強いセット荷重が付与されている。
【0042】
ブレーキペダル10が踏み込まれれば、ロッド288および290が、ロッド286の先端部とロッド288の案内孔292の底部とが当接するまで一体的に前進させられ、それ以上踏み込まれた場合に開閉弁282が閉状態から開状態に切り換えられる。さらに踏み込まれれば、ロッド290がスプリング300を圧縮しつつロッド288に対して相対的に前進し、ブレーキペダル10の踏込みを許容する。
以上のように、ブレーキペダル10のストローク量が設定値以上となった場合に、開閉弁282が閉状態から開状態に切り換えられるのであり、開閉弁282は、踏込み開始から設定ストロークに達するまではフィルアップ室258をリリーフ弁280を経てリザーバ72に連通させる第一状態にあり、設定ストローク以上では直接リザーバ72に連通させる第二状態に切り換えられる連動切換弁となっている。
【0043】
また、フィルアップ室258は連通路310,312によりマスタ通路110,114に接続されており、それら連通路310,312にそれぞれ逆止弁314,316が設けられている。これにより、フィルアップ室258の液圧が加圧室250,252の液圧より高い間は、ブレーキ液がフィルアップ室258と加圧室250,252との両方からブレーキシリンダ22,20に供給されることになり、フィルアップを速やかに終了させることができる。
本実施例においても、マスタシリンダ230からのブレーキ液の供給によりブレーキシリンダが作動させられる場合に、前記2つの実施例と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施例であるフィルアップ機能付マスタシリンダを備えた液圧ブレーキシステムの回路図(一部断面図)である。
【図2】上記液圧ブレーキシステムのブレーキECUの周辺を示すブロック図である。
【図3】従来技術における液圧ブレーキシステムの操作状態の変化を示す図である。
【図4】本発明における液圧ブレーキシステムの操作状態の変化を示す図である。
【図5】本発明の別の実施例であるフィルアップ機能付マスタシリンダを備えた液圧ブレーキシステムの回路図(一部断面図)である。
【図6】本発明のさらに別の実施例であるフィルアップ機能付マスタシリンダを備えた液圧ブレーキシステムの回路図(一部断面図)である。
【図7】図6の液圧ブレーキシステムの一部であるブレーキペダルと連動切換弁とを連携させる連携装置の拡大図である。
【符号の説明】
【0045】
12:マスタシリンダ 40:ハウジング 42:段付ピストン 46:小径部 48:大径部 50,52:加圧室 54:フィルアップ室 88:リリーフ弁 100:連通路 102逆止弁 200:マスタシリンダ 202:ハウジング 204:段付ピストン 206:小径部 208:大径部 220:リリーフ弁 230:マスタシリンダ 232:大径ピストン 234:小径ピストン 238:仕切壁 244:ハウジング 246:連結ロッド 250,252:加圧室 258:フィルアップ室 280:リリーフ弁 282:連動切換弁 310,312:連通路 314,316:逆止弁




 

 


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