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発明の名称 調理方法および調理機器
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2006−173(P2006−173A)
公開日 平成18年1月5日(2006.1.5)
出願番号 特願2004−176832(P2004−176832)
出願日 平成16年6月15日(2004.6.15)
代理人 【識別番号】100097445
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 文雄
発明者 中村 起子 / 藤本 眞嗣 / 橋野 真衣 / 安信 淑子
要約 課題
調味液の食品への染み込み状態をよくしながら食品自体の旨味を最大限に引き出す調理方法,調理機器を提供する。

解決手段
食品を加熱することにより40℃〜60℃の温度で一定時間維持する保温工程52と、保温工程52に続き食品を95℃〜200℃の温度まで加熱する加熱工程53と、加熱工程53に続き95℃〜200℃の温度で一定時間維持する沸騰維持工程54と、沸騰維持工程54の後、食品を60℃〜80℃の温度まで冷却を行う冷却工程55と、冷却工程55の後に60℃〜80℃の温度で一定時間維持する保温維持工程とを有し、前記各工程を食品の種類によって制御することによって、食品自体の旨みを最大限に引き出し、調味料を減らしても官能的に美味しいと感じられる食品を提供する調理方法および調理機器を実現することができる。
特許請求の範囲
【請求項1】
食品を40℃〜60℃の温度で一定時間維持する保温工程と、前記保温工程に続いて食品を95℃〜200℃の温度まで加熱する加熱工程と、前記加熱工程に続いて食品を95℃〜200℃の温度で一定時間維持する沸騰維持工程と、前記沸騰維持工程に続いて食品を60℃〜80℃の温度まで冷却する冷却工程と、前記冷却工程に続いて60℃〜80℃の温度で一定時間維持する保温維持工程とを有し、前記保温工程および前記加熱工程および前記沸騰維持工程および前記冷却工程および前記保温維持工程の各工程時間を食品の種類によって制御することを特徴とする調理方法。
【請求項2】
保温工程の前に0℃〜10℃の温度で冷却保存する保存工程とをさらに備えた請求項1に記載の調理方法。
【請求項3】
保温維持工程の後に95℃〜200℃の温度に維持する再加熱工程をさらに備えた請求項1または2に記載の調理方法。
【請求項4】
少なくとも保温工程と加熱工程と沸騰維持工程と保温維持工程とを食品の種類に加えて、さらに食品の重量によって制御する請求項1から3のいずれか一項に記載の調理方法。
【請求項5】
少なくとも保温工程と加熱工程と沸騰維持工程と保温維持工程とを食品の種類に加えて、さらに食品の温度によって制御する請求項1から4のいずれか一項に記載の調理方法。
【請求項6】
断熱構造で構成された調理室と、前記調理室内に収納された食品を40℃〜60℃の温度で一定時間維持する保温手段と、前記保温手段によって保温された前記食品を95℃〜200℃の温度で加熱する加熱手段と、前記加熱手段によって加熱された食品を95℃〜200℃の温度で一定時間維持する沸騰維持手段と、前記沸騰維持手段によって沸騰維持された前記食品を60℃〜80℃の温度まで冷却する冷却手段と、前記冷却手段によって冷却された前記食品を60℃〜80℃の温度で一定時間維持する保温維持手段と、前記保温手段および前記加熱手段および前記沸騰維持手段および前記冷却手段および前記保温維持手段の各作動時間を前記食品の種類によって制御する制御手段とを備えた調理機器。
【請求項7】
前記断熱構造は、ウレタン発砲材で形成されたものである請求項6に記載の調理機器。
【請求項8】
前記断熱構造は、真空断熱材で形成されたものである請求項6に記載の調理機器。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を調理するための調理方法および調理機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の食文化の多様化や質の向上にともなって、食品をより美味しく調理する為に様々は方法が提案されている。
【0003】
一般に言われている調理とは、鍋等の容器に、食品等の調理物を収納して、加熱操作を行うことにより、組織の温度を急速に上げ、組織破壊や成分変化を生じさせることである。また、食品を組織破壊により軟らかくするためには、所定の温度以上で所定の時間維持する必要があり、調理操作の過程では、成分変化が生じた調理物内部の破壊された組織から一般に旨味と言われる成分が溶出される。
【0004】
さらに、調味液とともに所定の時間加熱操作を行った調理物を冷却すると、その冷却過程において調味液が食品内部に染み込むことも一般によく知られている。
【0005】
よってこの原理を応用して、加熱操作を行った調理物を、さらに断熱容器内に収納して、冷却過程を経て保温状態で調理を行うようにした保温調理機器もある。
【0006】
上記構成の保温調理機器では、調味液とともに所定の時間、加熱操作により沸騰状態に維持した調理物を、断熱容器内に収納することにより所定の温度まで冷却され、その冷却過程において、調味液を食品内部に染み込ませ、食べるときに再加熱を行うことができるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−146834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の構成では、調味液の食品への染み込み状態をよくすることができたが、初期工程の加熱操作により、食品自体に含まれる旨味成分等を引き出す作用のある酵素が熱によって失活してしまい、食品自体の旨味を最大限に引き出すことができなかった。その結果、食品自体から出る旨味が少ない分、調味料でそれを補うことになり、調味料に含まれる塩分、糖分等の過剰摂取に繋がるという課題を有していた。
【0008】
このように調理物の塩分や糖分が過多となると、特に現代社会に置いては、その調理物を摂取する人間が健康を害し、糖尿病をはじめとする成人病になりやすいという問題を抱えていた。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を考慮して、食品の種類によって食品自体の旨味を充分に引き出し、調味料を減らしても、官能的に美味しい調理物を得ることができる調理方法および調理機器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来の課題を解決するために、本発明の調理方法は、食品を40℃〜60℃の温度で一定時間維持する保温工程と、前記保温工程に続いて食品を95℃〜200℃の温度で加熱する加熱工程と、前記加熱工程に続いて食品を95℃〜200℃の温度で一定時間維持する沸騰維持工程と、前記沸騰維持工程に続いて食品を60℃〜80℃の温度まで冷却する冷却工程と、前記冷却工程に続いて60℃〜80℃の温度で一定時間維持する保温維持工程とを有し、前記各工程時間を食品の種類によって制御するものである。
【0011】
これによって、初期工程の40℃〜60℃の保温維持の際、食品に含まれる酵素が活性化し、化学反応により、食品自体の旨味成分を最大限に引き出し、官能的に食品そのものの本来の旨味を得ることができる調理方法を実現することが出来る。
【0012】
また、本発明の調理機器は、断熱構造で構成された調理室と、調理室内を加熱する加熱手段と、調理室内を冷却する冷却手段と、加熱手段と冷却手段を制御する制御装置を備え、前記調理法を用いて調理を行う調理機器である。
【0013】
これによって、保温工程の40℃〜60℃で食品を一定時間維持する際、食品に含まれる酵素が活性化し、食品自体の旨味成分を最大限に引き出し、官能的に食品そのものの本来の旨味を得ることができる調理機器を実現することが出来る。
【発明の効果】
【0014】
本発明の調理方法は、食品の種類に応じて最適な調理工程時間を制御することが出来るので、食品自体の旨味を最大限に引き出し、調味液を減らしても官能的に美味しいと感じられる調理方法を実現することができ、健康的でかつ美味しい調理物を提供することが出来る。
【0015】
また、本発明の調理機器は、食品の種類に応じて最適な調理工程時間を制御することが出来るので、食品自体の旨味を最大限に引き出し、調味液を減らしても官能的に美味しいと感じられる調理機器を実現することができ、健康的でかつ美味しい調理機器を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
請求項1に記載の発明は、食品を40℃〜60℃の温度で一定時間維持する保温工程と、前記保温工程に続いて食品を95℃〜200℃の温度で加熱する加熱工程と、前記加熱工程に続いて食品を95℃〜200℃の温度で一定時間維持する沸騰維持工程と、前記沸騰維持工程に続いて食品を60℃〜80℃の温度まで冷却する冷却工程と、前記冷却工程に続いて60℃〜80℃の温度で一定時間維持する保温維持工程とを有し、前記保温工程および前記加熱工程および前記沸騰維持工程および前記冷却工程および前記保温維持工程の各工程時間を食品の種類によって制御することにより、食品の種類に応じて最適な調理工程時間を制御することができるので、調味液の食品への過剰な染み込みを防止した上で、官能的に美味しいと感じられる最適な量の調味液を食品に染み込ませる調理方法を実現することができ、さらに保温工程を備えることによって食品に含まれる酵素を活性化し、化学反応により食品自体の旨味を最大限に引き出し、調味液の過剰添加を防止することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1の発明に加えて、保温工程の前に0℃〜10℃の温度で冷却保存する保存工程とをさらに備えたものであり、請求項1に記載の発明の作用に加えて、食品を調理前に保存しておいても食品の鮮度が低下することを防ぐことができる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明に加えて、保温維持工程の後に95℃〜200℃の温度に維持する再加熱工程をさらに備えたものであり、調理後の食品を温かい状態にすることが出来る。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3に記載の発明に加えて、少なくとも保温工程と加熱工程と沸騰維持工程と保温維持工程とを食品の種類に加えて、さらに食品の重量によって制御するものであり、各調理工程を食品の種類に加えて重量によって制御することにより、食品の重量に応じてさらに精度良く食品組織全体に調味液が染み込んだ上で調味液の食品への過剰な染み込みを防止することができ、さらに食品の重量に応じて精度良く食品に含まれる酵素を活性化し、食品自体の旨味を最大限に引き出し、調味液の過剰添加を防止することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4に記載の発明に加えて、少なくとも保温工程と加熱工程と沸騰維持工程と保温維持工程とを食品の種類に加えて、さらに食品の温度によって制御するものであり、各調理工程を食品の種類に加えて温度によって制御することにより、外気温や食品の温度に応じてさらに精度良く食品組織全体に調味液が染み込んだ上で調味液の食品への過剰な染み込みを防止することができ、さらに外気温や食品の温度に応じてさらに度良く食品に含まれる酵素を活性化し、食品自体の旨味を最大限に引き出し、調味液の過剰添加を防止することができる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、断熱構造で構成された調理室と、前記調理室内に収納された食品を40℃〜60℃の温度で一定時間維持する保温手段と、前記保温手段によって保温された前記食品を95℃〜200℃の温度で加熱する加熱手段と、前記加熱手段によって加熱された食品を95℃〜200℃の温度で一定時間維持する沸騰維持手段と、前記沸騰維持手段によって沸騰維持された前記食品を60℃〜80℃の温度まで冷却する冷却手段と、前記冷却手段によって冷却された前記食品を60℃〜80℃の温度で一定時間維持する保温維持手段と、前記保温手段および前記加熱手段および前記沸騰維持手段および前記冷却手段および前記保温維持手段の各作動時間を前記食品の種類によって制御する制御手段とを備えたものであり、食品自体の旨味を最大限に引き出し、調味液の過剰添加を防止する調理機器を実現することが出来る。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明に加え、前記断熱構造はウレタン発砲材で形成されたものであり、様々な形状の調理室に応じた断熱構成を容易に形成することが出来る。
【0023】
請求項8に記載の発明は、請求項6または7に記載の発明に加え、断熱構造は真空断熱材で形成されたものであり、調理室の断熱性能を向上させることが出来る。
【0024】
(実施の形態1)
以下、本実施の形態1における調理機器の構成及び作用について、図1を参照にしながら説明する。尚、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0025】
図1は、本実施の形態1における調理機器を示す断面図である。
【0026】
調理機器は、調理する調理物10が収容されている鍋11と、調理物の温度を非接触で検知する赤外線センサー12と、調理する調理物を収容する鍋を加熱する電気ヒーター13を備えており、図には示していないが、圧縮機、凝縮器、キャピラリーチューブを有し、強制対流式蒸発器14により、調理室15内を冷却できる構造になっている。
【0027】
強制対流式蒸発器14で冷却された冷気は送風機16により調理室15内に強制通風される。ダンパーサーモ17は調理室入口に設けて電気的入力で冷気流入量を調整するものであり、モーター18の駆動力によってダンパーサーモ17を開閉するように構成されている。吐出ダクト19は前記送風機からの冷気を前記調理室15内に導くものであり、また吹き出し口20は調理室15内に冷気を吹き込むものであり、吸い込みダクト21は調理室15内の冷却した冷気を前記強制対流式蒸発器14に戻すために備えられている。
【0028】
また、調理室15はウレタン発砲あるいは、真空断熱材で形成された断熱構造を有している。
【0029】
図2は、本実施の形態1における調理機器本体外殻の一部に設けたコントロールパネル22であり、調理する調理物のメニューを選択するメニュー選択キー23、選択したメニューを決定するメニュー決定ボタン24、選択したメニューを表示するメニュー表示パネル25、調理を開始する開始ボタン26、調理が終了したことを知らせる終了ランプ27を備えている。
【0030】
調理物を調理室15内の鍋11に収容し、コントロールパネル22のメニュー選択キー23によりメニューを選択し、開始ボタン26を押すことにより、選択されたメニューの情報に基づいて、赤外線センサー12で検知した調理物の温度を制御することより、調理物に最適な保温と加熱と冷却を組み合わせた調理が行われる。
【0031】
以下、本実施の形態1における調理機器の調理室15にて調理する工程を従来の調理方法と比較しながら説明する。
【0032】
(表1)は、従来の調理方法で調理した食品に関するデーターである。
【0033】
【表1】


【0034】
(表1)において、従来の調理方法で、砂糖の量を半分に調整した調味液とともに調理したサツマイモのプルーン煮の調理後の甘味、煮崩れ状態、官能評価による軟らかさを示している。
【0035】
(表1)における甘味の評価は、調理した食品の組織全体が甘いときには○、組織全体の1/2以上のときには△、1/2未満のときには×とした。また、調理後の食品の見栄えや食感として重要な項目である煮崩れ状態は、調理した食品の組織全体がほとんど煮崩れていないときには○、煮崩れが組織全体の1/2未満のときは△、1/2以上のときは×とした。
【0036】
軟らかさの官能評価は、調理前の状態を0ポイントとし、1ポイント違うと軟らかさの差は明確に認識される。
【0037】
総合評価は、調理物として染み込み状態、煮崩れ状態、軟らかさから総合的に判断して評価を行い、甘味が○、煮崩れが1/2未満、軟らかさが2ポイント以上のときに○、いずれか一項目でも満足しないときには×とした。
【0038】
(表1)により従来の調理方法1では、鍋等に調理物としてさつまいものプルーン煮の材料と通常調理の砂糖の量の半分に調整した調味液を収容し、加熱操作により沸騰状態にした調理物をそのまま所定の時間維持したもので、煮崩れはほとんどなかったものの、甘味は表面に付いた調味液の甘さを感じるのみで、軟らかさも1ポイントと食べることは可能であるが十分軟らかい状態にはなっておらず、総合評価も×であった。
【0039】
(表1)に示したように、従来の調理方法1では、沸騰状態にある調理物を所定の時間維持しているが、その時間が不充分であったため、調味液の染込みも悪く、十分軟らかい状態にならなかった。
【0040】
また従来の調理方法2では、従来の調理方法1と同様に鍋等に調理物としてさつまいものプルーン煮の材料と調味液を収容し、加熱操作により沸騰状態にした調理物をそのまま所定の時間維持したもので、甘味及び軟らかさは従来の調理方法1と比較して良くなった。
【0041】
これは、(表1)により沸騰維持時間を1時間と従来の調理方法より長くすることにより、食品の組織の破壊を促進し、その結果軟らかくなり、破壊された組織から調味液が染み込んだためである。しかし、砂糖の量を通常の半分に調整しているため、十分な甘さとはいえなかった。また、沸騰状態を1時間維持したため、調理物の外側から煮崩れが生じ、調理物本来の形を維持することができず、調理物の総合的な評価としては悪かった。
【0042】
従来の調理方法3で調理したさつまいものプルーン煮は、全体的に甘味が強く、軟らかくなり、煮崩れもほとんどない状態が実現でき、総合評価も良かった。
【0043】
従来の調理方法3では、断熱容器内の調理物を収容している内鍋を加熱する加熱手段と、前記内鍋の温度検知する検知手段とその温度情報をもとに加熱工程と保温工程を制御する制御手段を備えた保温調理機器を用いることにより、初期保温操作では、さつまいもに含まれるβ−アミラーゼという酵素が活性化し、さつまいもの澱粉を麦芽糖に分解し、その結果甘味が増し、通常の半分の量の砂糖でも、甘味を強く感じることができた。なお、さつまいものβ−アミラーゼが最も活性化する温度は60℃〜70℃の間である。また、加熱操作によりさつまいものプルーン煮の材料を煮崩れが生じない時間沸騰維持し、その後冷却過程を経て保温工程を行うことにより染み込みを促進させることができた。また、保温工程の間も、所定の温度が維持することができ、十分に軟らかくすることができた。
【0044】
従来の調理方法4では、従来の調理方法3と同様の保温調理機器で従来の調理方法3のさつまいものプルーン煮の材料と同じ重量の炊き込みご飯の材料を調理したもので、煮崩れはないが、甘味が弱く、軟らかさも芯が残り、さつまいものプルーン煮のときより総合評価は悪くなった。
【0045】
これは、食品の種類によって、最適な酵素活性温度や、組織破壊の状態が異なるためである。
【0046】
次に、従来の調理法3と同等の重量のさつまいものプルーン煮を例にとって、本実施の形態1における調理機器の調理室15にて調理する工程を説明する。
【0047】
まず、調理物10であるさつまいものプルーン煮の材料を、調理室15内の、鍋11に収容し、メニュー選択キー23でさつまいものプルーン煮を選択し、選択したメニューをメニュー決定ボタン24で決定する。
【0048】
その後開始ボタン26を押すことにより、選択されたメニューの情報に基づいて調理が開始され、さつまいものプルーン煮の場合は、まず調理室15内の電気ヒーター13が作動し、鍋11の加熱が行われることにより鍋11に収容された調理物10の温度が上昇し、さつまいものプルーン煮の温度は、赤外線センサーにより、電気ヒーター13の入力を制御することによって、所定の値で所定の時間保温維持される。その後、更に電気ヒーター13が作動し、鍋11の加熱が行われることにより、鍋11に収容された調理物10の温度が更に上昇し、さつまいものプルーン煮の温度は、赤外線センサーにより、電気ヒーター13の入力を制御することによって、所定の値で所定の時間加熱維持される。
【0049】
その後、調理室15内の強制対流式蒸発器14が作動し、強制対流式蒸発器14で冷却された冷気は送風機16により調理室15内に強制通風され、さつまいものプルーン煮は冷却され、選択されたメニューの情報に基づいて、赤外線センサーによりダンパーサーモ17を制御することによって、所定の温度で所定の時間保温維持される。保温維持時間が、終了すると終了ランプが点灯する。
【0050】
図3は、本発明の実施の形態1、2の調理工程図であり、図4は本発明の実施の形態1、2の調理工程の温度変化を示すタイムチャート図である。
【0051】
図において、まず、調理物の入った鍋がセットされた状態で、調理物の温度Tが、温度Tk0より低いことを検知したとき保温手段である電気ヒーター13が作動し、保温工程の適温として設定されたTk0前後で保温される。この保温工程が一定時間経過すると、次に、調理物の温度Tが、温度Tk1より低いことを検知したとき加熱手段である電気ヒーター13が作動し、電気ヒーター13による加熱によって加熱工程を経た後に、調理物は温度Tk1以上でt1時間沸騰維持工程として沸騰維持手段である電気ヒーター13によって随時加熱されることで維持される。次に、調理物の温度Tが温度Tk2以上であることを検知したとき冷却手段である強制対流式蒸発器14が作動し冷却された冷気が調理室に強制通風される。その後t2時間が経過したときにとき調理物の温度Tが温度Tk2より高ければ、さらに冷却が継続しておこなわれ、調理物の温度Tが温度Tk2前後でt3時間保温維持されるように制御され、t3時間経過したら終了表示される。
【0052】
調理物10を加熱する加熱手段は、電気ヒーター13に限定されるものでなく、食品の温度を検知するセンサーは、赤外線センサー12に限定されるものではない。さらに、冷却手段は強制対流式蒸発器14に限定されるものでない。
【0053】
図4は、かかる制御手段の制御の仕方を示すタイムチャートである。図4(a)は強制対流式蒸発器への給電状態であり、図4(b)は電気ヒーターへの給電状態を示す。図4(c)はかかる制御により被加熱物の温度の時間経過を示している。
【0054】
図4において、制御シーケンスは大別すると7つのサイクルから成る。まず、調理室に収納された食品の鮮度低下を防ぐ為の保存工程50のサイクルであり、保存手段として強制対流式蒸発器14を作動させて0℃〜10℃に保たれている。この保存工程50は調理室に食品が収納されてから調理を始めるまでに時間がかかる場合に有効であるが、すぐに調理を行う場合にはこの工程は省略する。
【0055】
次に、食品調理工程の最初の工程は保温工程52のサイクルである。このサイクルは、保存工程50の後、調理室を電気ヒーター13によって加熱し、保温工程の適温まで移行工程51を経て調理室に収容された食品に含まれる酵素が最も活性化される40℃〜60℃の温度に保たれるよう制御されており、この間に食品自体の持つ本来の旨味を引き出すことが出来る。
【0056】
この保温工程のサイクルでは電気ヒーター13によって給電が開始される。この電気ヒーター13は、保温温度まで温度を上げる移行工程51の際には高出力で制御され、食材が保温温度まで達した時点で保温工程へと移行すると出力を低減し、保温温度を維持するように制御される。前者の高出力の制御は電気ヒーター13による加熱の場合、食材の量に依存するが、通常30秒から1分程度であるのと比べて、後者の低出力の制御は、通常数十分から数時間継続する。
【0057】
ついで、加熱工程53のサイクルが続く。ここでの加熱手段として、電気ヒーター13が用いられ、この加熱工程53では高出力で95℃から200℃まで調理室の温度を上昇させる。この加熱工程53の所要時間は食材の量に依存するが、通常数分から数十分程度である。
【0058】
加熱工程53を経た後、食材が沸騰した時点で出力を低減し、弱火でじっくり煮込む沸騰維持工程54のサイクルへと移行する。この沸騰維持手段として、電気ヒーター14が用いられ、加熱時間は食材の量に依存するが、通常数十分から数時間継続する。
【0059】
そして、沸騰維持工程54を経た後、冷却工程55のサイクルが実行される。ここでは加熱手段への給電が完了し、冷却手段である強制対流式蒸発器14に通電が始まる。そして一気に食材の温度が低下させられる。この冷却工程55のサイクルで調味液が食材に浸透する。食材を加熱する加熱工程53のサイクルでは、食材の細胞膜は破壊されるが、食材も調味液も高い温度が維持されるのみで、調味液の染み込みは生じない。ここで「冷却」サイクルをはさむことで、食材の温度は急激に下がり、浸透圧の関係により、調味液が食材に浸透していく。
【0060】
冷却工程55が終了すると、次に保温維持工程56のサイクルが実行される。ここでは食材の温度が所定の温度まで低下すると、冷却手段への給電が完了し、保温維持手段である電気ヒーター13に通電が始まる。そして所定の温度で一定時間維持される。
【0061】
(表2)は、実施の形態1、2の調理物に関するデーターである。
【0062】
【表2】


【0063】
(表2)により実施の形態1では、調理後の甘味は良く、十分軟らかくなっており、煮崩れもない調理物が得られ、総合評価も良かった。
【0064】
これは、(表2)の実施の形態1と同じ重量のさつまいものプルーン煮の従来の調理方法1の調理シーケンスと比較すると、(表2)の実施の形態1の調理シーケンスは、加熱前の保温維持サイクルが含まれていることで、さつまいもに含まれる澱粉分解酵素β−アミラーゼが活性化し、麦芽糖になり、甘味を強く感じることに繋がった。また、加熱後の冷却保温維持サイクルが含まれていることで、冷却中に、浸透圧の影響で、調味液がさつまいもの中まで染込み、更に甘味を感じることに繋がった。
【0065】
(表3)は食品の種類による最適は調理方法の一例である。
【0066】
【表3】


【0067】
(表3)の食品の種類は、初期保温維持による酵素活性が明らかなものを分類し、A、B、C、としている。
【0068】
Aのいも類は、初期保温温度は65℃前後に保った上で、保温維持時間を1時間程度取ることで、いもに含まれる酵素が活性化し、澱粉を分解し、麦芽糖を作り出し、甘味が増す。加熱による細胞破壊が大きいAのいも類は、沸騰維持工程の沸騰維持時間は短くてよく、その後冷却工程において、ゆっくりと60分から70分かけて冷却していくことで食品への調味料の染み込みが十分に図れる。この冷却工程においては冷却速度を食品の重量や温度を検知しながら制御していくことでより、食品の種類に応じた染み込みを図ることができる。その後、保温工程においては保温温度を65℃前後に保った上で、保温維持時間を100分程度とることで、さらに食品への最適な染み込みを図ることができる。
【0069】
Bの米類については、初期保温温度を40℃前後に保った上で、保温維持時間を2時間程度取ることで、米の酵素が活性化し、上質の甘味を持つオリゴ糖や粘性多糖類が生成される。さらに、血流を良くし中性脂肪を抑え、痴呆予防効果があるといわれるギャバも形成される。騰維持工程をAよりも長くとったあと、Aと同様にゆっくりと60分から70分かけて冷却していくことで食品への味の染み込みが十分に図れる。この冷却工程においては冷却速度を食品の重量や温度を検知しながら制御していくことでより、食品の種類に応じた染み込みを図ることができる。その後、保温工程においては保温温度を70℃前後に保った上で、保温維持時間を110分程度とることで、さらに食品への染み込みを最適に図ることができる。
【0070】
Cの肉類については初期保温温度を60℃前後に保った上で、保温維持時間を2時間程度取ることで、酵素による異化作用が進み、これによって旨味成分であるアミノ酸が増加する。また、A、Bよりも食品に調味液が染み込みにくく、また保温工程において硬化しやすいものであるが、沸騰維持時間をA、Bよりも長く取った上で、保温温度をやや低めの60℃とし、さらに保温時間は180分程度まで長くとることで染み込みを図ることができた。
【0071】
また、メニューや食品の重量、種類、大きさによっては、保温維持時間終了後、さらに加熱を行うことによって、調味液の染み込みも良くなり、煮崩れもなく十分軟らかい調理物を得ることが出来る。
【0072】
また、保存ボタンを備えたコントロールパネル22においては、保存ボタンを調理前に押すことにより、調理室15の鍋11内に収容された調理物10は冷却保存され、予め調理物10をセットしておくことができる。また、再加熱ボタンを備えたコントロールパネル22においては、調理が終了した調理物10を、食べる直前に、再加熱ボタンを押すことにより、食べごろ温度にまで加熱維持することができる。さらに、タイマー等の所定の時間を自由に制御できる制御基板を備えた調理機器においては、保存時間、調理開始時間、再加熱時間を設定することができることにより、保存、調理、再加熱を自動で行うことができる。
【0073】
以上述べたところから明らかなように、実施の形態1の調理機器は、調理物としてさつまいものプルーン煮を調理するとき、材料の重量に関わらず最適な加熱と冷却を組み合わせた調理を実現することにより、食材そのものの旨味を増加させ、調味液の染み込みも良く、煮崩れもなく、十分軟らかい総合評価が良い調理物を得ることができることを特徴とするものである。
【0074】
(実施の形態2)
本実施の形態2における調理機器は、本実施の形態1の調理機器と同様の図1に示すような構成になっている。
【0075】
従来の調理方法3と同等の重量の炊き込み御飯を例にとって、本実施の形態2における調理機器の調理室15にて調理する工程を説明する。まず、調理物10である炊き込み御飯の材料を、調理室15内の、鍋11に収容し、メニュー選択キー23で炊き込み御飯を選択し、選択したメニューをメニュー決定ボタン24で決定する。
【0076】
その後開始ボタン26を押すことにより、選択されたメニューの情報に基づいて調理が開始され、炊き込み御飯の場合は、まず調理室15内の電気ヒーター13が作動し、鍋の加熱が行われることにより鍋に収容された調理物の温度が上昇し、炊き込み御飯の温度は、赤外線センサーにより、電気ヒーターの入力を制御することによって、所定の値で所定の時間保温維持される。その後、再び電気ヒーター13が作動し、鍋の加熱が行われることにより鍋に収容された調理物の温度が更に上昇し、炊き込み御飯の温度は、赤外線センサーにより、電気ヒーターの入力を制御することによって、所定の値で所定の時間加熱維持される。
【0077】
その後調理室15内の強制対流式蒸発器14が作動し、強制対流式蒸発器14で冷却された冷気は送風機16により調理室15内に強制通風され、炊き込み御飯は冷却され、選択されたメニューの情報に基づいて、赤外線センサーによりダンパーサーモ17を制御することによって、所定の温度で所定の時間保温維持される。保温維持時間が、終了すると終了ランプが点灯する。
【0078】
調理物を加熱する加熱手段は、電気ヒーターに限定されるものでなく、食品の温度を検知するセンサーは、赤外線センサーに限定されるものではない。さらに、冷却手段は強制対流式蒸発器に限定されるものでない。
【0079】
(表2)により実施の形態2では、調理後の甘味も良く、十分軟らかくなっており、煮崩れもない調理物が得られ、総合評価も良かった。
【0080】
これは、(表1)の実施の形態2と同じ重量の炊き込み御飯の従来の調理方法4と比較すると、保温温度は40℃と低くなり、保温維持温度は120分と長くなり、沸騰維持時間は30分と長くなり、炊き込み御飯に最適な加熱状態が実現できたことにより、米自体が持つ旨味が増加し、調味液の染み込みも良くなり、煮崩れもなく十分軟らかい調理物を得ることが出来た。
【0081】
米の旨味は、炊飯によってタンパクが分解され遊離アミノ酸が増えると共に、米に存在する天然のアミラーゼが澱粉を分解し、糖が生成され、こうした旨味成分が統合してもたらされる。遊離アミノ酸はさらに甘味系のアラニン、グリシン、スレオニン、苦味系のアルギニン、ロイシン、酸味旨味系のアスパラギン酸、グルタミン酸、ギャバなどに分けられる。これが他の成分と微妙に結びついて米の旨味が形成される。
【0082】
そして米の表層にはこうしたアミノ酸に加え、旨味物質のショ糖が多く含まれている。炊く前に行う浸水の水を40℃にすると、酵素の働きが活性化して上質の甘味を持つオリゴ糖や粘性多糖類が生成されるために、十分浸水することで食味の向上が図れる。さらに浸漬中には、血流を良くし中性脂肪を抑え、痴呆予防効果があるといわれるギャバも形成される。
【0083】
また、保存ボタンを備えたコントロールパネル22においては、保存ボタンを調理前に押すことにより、調理室15の鍋11内に収容された調理物10は冷却保存され、予め調理物10をセットしておくことができる。また、再加熱ボタンを備えたコントロールパネル22においては、調理が終了した調理物10を、食べる直前に、再加熱ボタンを押すことにより、食べごろ温度にまで加熱維持することができる。
【0084】
さらに、タイマー等の所定の時間を自由に制御できる制御基板を備えた調理機器においては、保存時間、調理開始時間、再加熱時間を設定することができることにより、保存、調理、再加熱を自動で行うことができる。
【0085】
以上述べたところから明らかなように、実施の形態2の調理機器は、調理物として炊き込み御飯を調理するとき、食品の種類に関わらず最適な加熱と冷却を組み合わせた調理を実現することにより、調味液の染み込みも良く、煮崩れもなく、十分軟らかい総合評価が良い調理物を得ることができることを特徴とするものである。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上のように、本発明にかかる調理機器は、食品を調理するとき、食品の種類に応じた最適な加熱と冷却を組み合わせた調理を実現することにより、食材そのものの旨味成分を最大限に引き出し、調味液を食品内部へ染み込ませることが十分に図ることができるので、食品以外の有機物や無機物の加熱や冷却の制御を実現する用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明実施の形態1、2の調理機器の断面図
【図2】本発明実施の形態1、2のコントロールパネルの正面図
【図3】本発明実施の形態1、2の調理工程を示すフローチャート
【図4】本発明の実施の形態1、2の調理工程の温度変化を示すタイムチャート
【符号の説明】
【0088】
10 調理物
11 鍋
12 赤外線センサー
13 電器ヒーター(加熱手段)
14,41 強制対流式蒸発器(冷却手段)
15 調理室
16 送風機
17 ダンパーサーモ
18 モーター
19 吐出ダクト
20 吹き出し口
21 吸い込みダクト
22 コントロールパネル
23 メニュー選択キー
24 メニュー決定ボタン
25 メニュー表示パネル
26 開始ボタン
27 終了ランプ
30 低温室内部の温度
40 室温センサー
41 強制対流式蒸発器
42 送風機
43 ダンパーサーモ
44 モーター
45 吐出ダクト
46 吹き出し口
47 吸い込みダクト




 

 


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