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発明の名称 燃料物質内プルトニウム238の非破壊測定方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2005−43173(P2005−43173A)
公開日 平成17年2月17日(2005.2.17)
出願番号 特願2003−202217(P2003−202217)
出願日 平成15年7月28日(2003.7.28)
代理人
発明者 熊埜御堂 宏徳 / 植田 精 / 吉岡 研一 / 川島 正俊
要約 課題
核拡散抵抗性の高い使用済燃料におけるPu−238の量あるいはPu組成における核分裂性PuとPu−238との比率を非破壊測定すること。

解決手段
燃料物質からグロス中性子計数率φg及び中性子同時計数率φcを求め、グロス中性子計数率φgからグロス中性子放出率Sg、中性子同時計数率φcから同時計数中性子放出率Scを求め、さらに全(α、n)中性子放出率Sαを求め、一方別途燃焼度推定値を用いて、Pu−238、Pu−240、Cm−242、Cm−244、Am−241の(α、n)反応に基づく全(α、n)中性子放出率Sαに対するPu−238の(α、n)反応に基づくPu−238(α、n)中性子放出率SαとのSα/Sα推定値を求めて、全(α、n)中性子放出率Sαに乗ずることによりPu−238(α、n)中性子放出率Sαを求め、中性子放出率に関する物理定数を用いてプルトニウム238濃度を求める。
特許請求の範囲
【請求項1】
燃料物質から放出されている全ての中性子を測定してグロス中性子計数率φgを求めるステップと、中性子の同時計数を行って中性子同時計数率φcを求めるステップと、前記グロス中性子計数率φgからグロス中性子放出率Sgステップと、前記中性子同時計数率φcから同時計数中性子放出率Scを求めるステップと、グロス中性子放出率Sgから同時計数中性子放出率Scを差し引いて全(α、n)中性子放出率Sαを求めるステップと、燃焼度推定値を用いて、プルトニウム238及びプルトニウム240、キュリウム242及びキュリウム244、アメリシウム241等が放出するα線と、酸素、窒素、炭素等との(α、n)反応に基づく全(α、n)中性子放出率Sαに対するプルトニウム238が放出するα線と、酸素、窒素、炭素等との(α、n)反応に基づくPu−238(α、n)中性子放出率SαとのSα/Sα推定値を求めるステップと、このSα/Sα推定値を前記全(α、n)中性子放出率Sαに乗ずることによりPu−238(α、n)中性子放出率Sαを求めるステップと、中性子放出率に関する物理定数を用いて前記Pu−238(α、n)中性子放出率Sαからプルトニウム238濃度を求めるステップを有することを特徴とする燃料物質内プルトニウム238の非破壊測定方法。
【請求項2】
燃料物質から放出されている全ての中性子を測定してグロス中性子計数率φgを求めるステップと、中性子の同時計数を行って中性子同時計数率φcを求めるステップと、燃焼度推定値を用いて中性子実効増倍率keffを求めるステップと、グロス中性子計数率に対する比例係数aを求めるステップと、中性子同時計数率に対する比例係数aを求めるステップと、前記中性子実効増倍率keffと前記比例係数aを用いて前記グロス中性子計数率φgからグロス中性子放出率Sgを求めるステップと、前記中性子実効増倍率keffと前記比例係数aを用いて前記中性子同時計数率φcから同時計数中性子放出率Scを求めるステップと、グロス中性子放出率Sgから同時計数中性子放出率Scを差し引いて全(α、n)中性子放出率Sαを求めるステップと、燃焼度推定値を用いて、プルトニウム238及びプルトニウム240、キュリウム242及びキュリウム244、アメリシウム241等が放出するα線と、酸素、窒素、炭素等との(α、n)反応に基づく全(α、n)中性子放出率Sαに対するプルトニウム238が放出するα線と、酸素、窒素、炭素等との(α、n)反応に基づくPu−238(α、n)中性子放出率SαとのSα/Sα推定値を求めるステップと、このSα/Sα推定値を前記全(α、n)中性子放出率Sαに乗ずることによりPu−238(α、n)中性子放出率Sαを求めるステップと、中性子放出率に関する物理定数を用いてPu−238(α、n)中性子放出率Sαからプルトニウム238濃度を求めるステップを有することを特徴とする燃料物質内プルトニウム238の非破壊測定方法。
【請求項3】
燃料物質から放出されている全ての中性子を測定してグロス中性子計数率φgを求めるステップと、中性子の同時計数を行って中性子同時計数率φcを求めるステップと、前記グロス中性子計数率φgからグロス中性子放出率Sgを求めるステップと、前記中性子同時計数率φcから同時計数中性子放出率Scを求めるステップと、グロス中性子放出率Sgから同時計数中性子放出率Scを差し引いて全(α、n)中性子放出率Sαを求めるステップと、燃焼度推定値を用いて、プルトニウム238及びプルトニウム240、キュリウム242及びキュリウム244、アメリシウム241等が放出するα線と、酸素、窒素、炭素等との(α、n)反応に基づく全(α、n)中性子放出率Sαに対するプルトニウム238が放出するα線と、酸素、窒素、炭素等との(α、n)反応に基づくPu−238(α、n)中性子放出率SαとのSα/Sα推定値を求めるステップと、このSα/Sα推定値を前記全(α、n)中性子放出率Sαに乗ずることによりPu−238(α、n)中性子放出率Sαを求めるステップと、中性子放出率に関する物理定数を用いてPu−238(α、n)中性子放出率Sαからプルトニウム238濃度を求めるステップと、外部中性子源を用いたアクティブ中性子法により燃料物質のアクティブ中性子計数率φaを求めるステップと、アクティブ中性子計数率φaからウラン235、プルトニウム239及びプルトニウム241の少なくとも1を含む全核分裂性物質の濃度を求めるステップと、前記プルトニウム238濃度と前記全核分裂性物質濃度との比を求めるステップとを有することを特徴とする燃料物質内プルトニウム238の非破壊測定方法。
【請求項4】
カロリメトリ法により燃料から放出されているグロス発熱率Hgを測定するステップと、燃料の初期組成、冷却期間及び燃焼度評価値を用いて測定時点に対応する発熱率計算を行って、プルトニウム238に基づく発熱率H8を除く全核種のPu−238外全核種発熱率Hxを算出するステップと、測定したグロス発熱率Hgと算出したPu−238外全核種発熱率Hxとからプルトニウム238に基づくPu−238発熱率H8を算出するステップと、発熱率に関する物理定数を用いてPu−238発熱率H8からプルトニウム238濃度を求めるステップとを有することを特徴とする燃料物質内プルトニウム238の非破壊測定方法。
【請求項5】
ガンマ線スペクトルを測定することによってセシウム137濃度を求めるステップと、セシウム137に基づく発熱率H137を求めるステップと、前記セシウム137濃度から校正定数を用いて燃焼度を求めるステップと、前記セシウム137濃度からセシウム137に基づく発熱率H137を求めるステップと、前記燃焼度から相関式を用いてキュリウム244濃度を求めるステップと、前記キュリウム244濃度からキュリウム244に基づく発熱率H244を求めるステップと、前記燃焼度から相関式を用いてストロンチウム90濃度を求めるステップと、前記ストロンチウム90濃度からストロンチウム90に基づく発熱率H90を求めるステップと、前記燃焼度から相関式を用いてその他の核種に基づくその他核種発熱率Δhを求めるステップと、これらの発熱率を加算してプルトニウム238に基づく発熱率H8を除くプロトニウム238外全核種発熱率Hxを算出するステップと、カロリメトリ法により燃料から放出されているグロス発熱率Hgを測定するステップと、測定したグロス発熱率Hgと算出したPu−238外全核種発熱率Hxとからプルトニウム238に基づくPu−238発熱率H8を算出するステップと、発熱率に関する物理定数を用いてPu−238発熱率H8からプルトニウム238濃度を求めるステップとを有することを特徴とする燃料物質内プルトニウム238の非破壊測定方法。
【請求項6】
ガンマ線スペクトルを測定することによってセシウム134/セシウム137濃度比を求めるステップと、セシウム134/セシウム137濃度比から相関式を用いて燃焼度を求めるステップと、前記燃焼度から相関式を用いてセシウム137濃度を求めるステップと、前記セシウム137濃度からセシウム137に基づく発熱率H137を求めるステップと、前記燃焼度から相関式を用いてキュリウム244濃度を求めるステップと、前記キュリウム244濃度からキュリウム244に基づく発熱率H244を求めるステップと、前記燃焼度から相関式を用いてストロンチウム90濃度を求めるステップと、前記ストロンチウム90濃度からストロンチウム90に基づく発熱率H90を求めるステップと、前記燃焼度から相関式を用いてその他の核種に基づくその他核種発熱率Δhを求めるステップと、これらの発熱率を加算してプルトニウム238に基づく発熱率H8を除くプロトニウム238外全核種発熱率Hxを算出するステップと、カロリメトリ法により燃料から放出されているグロス発熱率Hgを測定するステップと、測定したグロス発熱率Hgと算出したPu−238外全核種発熱率Hxとからプルトニウム238に基づくPu−238発熱率H8を算出するステップと、発熱率に関する物理定数を用いてPu−238発熱率H8からプルトニウム238濃度を求めるステップとを有することを特徴とする燃料物質内プルトニウム238の非破壊測定方法。
【請求項7】
燃料から放出されているグロス中性子を測定するするステップと、測定したグロス中性子からグロス中性子計数率φgを求めるステップと、相関式を用いて燃焼度を求めるステップと、前記燃焼度から相関式を用いてセシウム137濃度を求めるステップと、前記セシウム137濃度からセシウム137に基づく発熱率H137を求めるステップと、前記燃焼度から相関式を用いてキュリウム244濃度を求めるステップと、前記キュリウム244濃度からキュリウム244に基づく発熱率H244を求めるステップと、前記燃焼度から相関式を用いてストロンチウム90濃度を求めるステップと、前記ストロンチウム90濃度からストロンチウム90に基づく発熱率H90を求めるステップと、前記燃焼度のから相関式を用いてその他の核種に基づくその他核種発熱率Δhを求めるステップと、これらの発熱率を加算してプルトニウム238に基づく発熱率H8を除くプロトニウム238外全核種発熱率Hxを算出するステップと、カロリメトリ法により燃料から放出されているグロス発熱率Hgを測定するステップと、測定したグロス発熱率Hgと算出したPu−238外全核種発熱率Hxとからプルトニウム238に基づくPu−238発熱率H8を算出するステップと、発熱率に関する物理定数を用いてPu−238発熱率H8からプルトニウム238濃度を求めるステップとを有することを特徴とする燃料物質内プルトニウム238の非破壊測定方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、核拡散に対する抵抗性を高めるためNp−237が予め添加された原子燃料の照射後の燃料物質内のプルトニウム組成におけるプルトニウム238の量を求めるための燃料物質内プルトニウム238の非破壊測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の使用済燃料の非破壊測定では、使用済燃料から放出されるγ線や中性子を測定して、使用済燃料の燃焼度を求める方法がある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。ここでは、核拡散に対する抵抗性を高める目的で予めネプツニウム237(以下、Np−237という)が添加されたことにより、プルトニウム238(以下、Pu−238という)の蓄積量が従来よりも多くなった照射燃料について、プルトニウム(以下、Puという)組成におけるPu−238の量を非破壊測定によって確認することを想定している。
【0003】
また、使用済燃料の全発熱に占めるキュリウム244(以下、Cm−244という)の寄与率が大きい場合について、使用済燃料を対象とした発熱率測定方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。ここでは、Pu−238の量が従来より多くなったことにより、使用済燃料からの発熱の多くがPu−238によってなされる場合を想定している。
【0004】
【特許文献1】特許第3103361号公報
【0005】
【特許文献2】特許第3026455号公報
【0006】
【特許文献3】特開2003−43183号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、使用済核燃料を再処理して抽出されるPuは核爆弾への転用の恐れがあり、国際的に強い規制の対象となっている。Puの組成のうち核分裂断面積の大きいプルトニウム239(以下、Pu−239という)とプルトニウム241(以下、Pu−241という)の比率が高いものほど、核爆弾に転用される危険性が高い。
【0008】
逆に、Pu−238、プルトニウム240(以下、Pu−240という)及びプルトニウム242(以下、Pu−242という)は核分裂断面積が比較的小さく、さらに自発核分裂によって常時中性子を放出するため、これらの成分は核爆弾製造への妨げとなる。Pu型核爆弾の起爆時においてこれらPu偶数核成分の放出する自発中性子は、核分裂連鎖反応を早い時点から誘起させるので、爆縮の強度を大幅に減損させるためである。
【0009】
さらに、現在軽水炉燃料で用いられている酸化物燃料では、Pu−238のα崩壊で生じるα線と燃料中の酸素原子との(α、n)反応に伴う発熱量が極めて高く、取り扱いを困難とすることから、盗取目的の不正なアクセスに対する防護の役割を果たす。(α、n)反応による中性子の発生は、酸素だけでなく、窒素や炭素についても起こるので、現在広く実用されているものではないが、窒化物燃料や炭化物燃料についても同様のことが言える。
【0010】
このようにPu組成のうち偶数核成分、特にPu−238は核爆弾への転用を妨げる特性をもつため、Pu−238組成の多い使用済燃料は核拡散に対する抵抗性が高く、核の平和利用へ寄与する有効な手段となり得る。原子炉で取り出される使用済燃料をこのような核拡散抵抗性の高い使用済燃料とすることを、ネプチニウム、アメリシウムAm及びキュリウムCmに代表されるマイナーアクチニドを予め原子燃料製造時に添加することによって実現することが検討されている(相楽他、日本原子力学会2003年春の年会予稿集G33「MA変換を利用したPuの改質に関する研究」、2003年3月)。
【0011】
さて、このような核拡散抵抗性の高い使用済燃料が実現された場合、実際に取り出された燃料が目的とした特性を有していること、即ち、Pu−238が十分に蓄積されていることの確認手段をもつことは、このような燃料を実際に運用する上で極めて有意義なことである。
【0012】
本発明の目的は、核拡散抵抗性の高い使用済燃料におけるPu−238の量あるいはPu組成における核分裂性PuとPu−238との比率を非破壊測定できる燃料物質内プルトニウム238の非破壊測定方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、燃料の燃焼度が低い場合には、プルトニウム238の(α、n)中性子放出率とキュリウム244の自発核分裂中性子放出率が同程度であることから、燃料物質から放出されている全ての中性子を測定してグロス中性子計数率φgを求めると共に、中性子の同時計数を行って中性子同時計数率φcを求め、別途求められた換算係数を用いて前記グロス中性子計数率φgからグロス中性子放出率Sg、前記中性子同時計数率φcから同時計数中性子放出率Scを求め、グロス中性子放出率Sgから同時計数中性子放出率Scを差し引いて全(α、n)中性子放出率Sαを求め、一方別途燃焼度推定値を用いて、プルトニウム238及びプルトニウム240、キュリウム242及びキュリウム244、アメリシウムAm241等が放出するα線と、酸素、窒素、炭素等との(α、n)反応に基づく全(α、n)中性子放出率Sαに対するプルトニウム238が放出するα線と、酸素、窒素、炭素等との(α、n)反応に基づくPu−238(α、n)中性子放出率SαとのSα/Sα推定値を求めて、前記全(α、n)中性子放出率Sαに乗ずることによりPu−238(α、n)中性子放出率Sαを求め、中性子放出率に関する物理定数を用いてプルトニウム238濃度を求める。
【0014】
また、換算係数に代えて増倍効果を含む換算因子を用いて前記グロス中性子計数率φgからグロス中性子放出率Sgを求めると共に、前記中性子同時計数率φcから同時計数中性子放出率Scを求めるようにしても良い。また、アクティブ中性子測定を追加してアクティブ中性子計数率φaを求め、別途求めた換算係数を用いてウラン235、プルトニウム239、プルトニウム241の少なくとも1を含む全フィッサイル核種の濃度を求め、プルトニウム238濃度と全核分裂性物質濃度との比を求めるようにしても良い。
【0015】
一方、燃料の燃焼度が高い場合には、燃料の発熱量の多くがプルトニウム238によって占められていることから、カロリメトリ法により燃料から放出されているグロス発熱率Hgを測定すると共に、燃料の初期組成、冷却期間及び燃焼度評価値を用いて測定時点に対応する発熱率計算を行って、プルトニウム238に基づく発熱率H8を除く全核種のPu−238外全核種発熱率Hxを算出し、測定したグロス発熱率Hgと算出したPu−238外全核種発熱率Hxとからプルトニウム238に基づくPu−238発熱率H8を算出し、発熱率に関する物理定数を用いてプルトニウム238濃度を求める。
【0016】
また、ガンマ線スペクトル測定あるいはグロス中性子測定を追加して行い、燃焼度を測定し、燃焼度から主な発熱核種であるセシウム137、ストロンチウム90及びキュリウム244の発熱率及びその他の核種に基づくその他核種発熱率Δhを評価して、Pu−238外全核種発熱率Hxを求め、グロス発熱率HgからPu−238外全核種発熱率Hxを除去することによりプロトニウム238の発熱率を求めるようにしても良い。この場合、少なくとも発熱率測定によって燃焼度が高い場合の照射燃料のプルトニウム238濃度を求めることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係わる燃料物質内プルトニウム238の非破壊測定方法の処理流れ図である。以下の説明では、燃料物質がネプツニウム237添加照射燃料の場合について説明する。
【0018】
まず、燃料物質から発生する全ての中性子数を測定すると共に(S1)、その全ての中性子のうちほぼ同時に発生した中性子数を中性子同時計数測定法により測定する(S2)。
【0019】
中性子同時計数測定法は、核燃料物質中から放出される中性子が核分裂を起源として発生するものと、(α、n)反応を起源として発生するものに大別されることに着目した測定法であり、核分裂を起源とする中性子は通常1回の核分裂で2個の中性子が反対の方向に放出される場合が多いため、測定対象物を挟んで2系統の中性子検出器により、ほぼ同時に中性子が測定された場合は、核分裂による中性子として計数し、これを中性子同時計数率φcとする(S3)。
【0020】
同時測定を行う測定回路では、2系統の中性子検出器のどちらかの信号が発生した場合、その時点から1マイクロ秒程度あるいはそれよりも短い時間幅だけ同時計数回路のゲートを開き、その間に、もう一方の中性子検出器の信号が発生した場合に同時計数を記録する。
【0021】
一方、2系統の中性子検出器による計数の合計は、核分裂による中性子と(α、n)反応による中性子とを全て含んだものであり、これをグロス中性子計数率φgとする(S4)。
【0022】
そして、換算係数を用いてグロス中性子計数率φgからグロス中性子放出率Sgを求め(S5)、換算係数を用いて中性子同時計数率φcから同時計数中性子放出率Scを求める(S6)。さらに、このようにして求めたグロス中性子放出率Sgから同時計数中性子放出率Scを減算して全(α、n)中性子放出率Sαを求める(S7)。
【0023】
【表1】


表1はウランU、プルトニウムPu、アメリシウムAm及びキュリウムCmの主な同位体に関する半減期と主な崩壊形式及び単位重量あたりの中性子放出率のデータである。表1に示すように使用済核燃料の中で中性子を放出する主な核種には、Pu−238、Pu−240、Pu−242、Am−241、Cm−242及びCm−244があるが、単位重量あたりの中性子放出率として、1×10(n/s/g)以上の自発核分裂中性子を放出するのは、Pu−238、Pu−240、Pu−242、Cm−242及びCm−244である。また、酸化物燃料において1×10(n/s/g)以上の(α、n)中性子を放出するのは、Pu−238、Pu−240、Am−241、Cm−242及びCm−244である。
【0024】
表1をさらに詳しくみると、Cm−242とCm−244の単位重量あたりの中性子放出率が他に比べて格段に大きい。また、Pu核種のなかでは、Pu−238の(α、n)中性子が最も大きく、Pu−238及びPu−242の自発核分裂中性子はそれよりも概ね1桁小さい量であることがわかる。
【0025】
このことから、グロス中性子計数率φgから換算係数を用いて求められるグロス中性子放出率Sgは、Pu−238及びPu−240の自発核分裂中性子と(α、n)中性子、Pu−242の自発核分裂中性子、そしてAm−241及びCm−242、Cm−244の自発核分裂中性子と(α、n)中性子が主な成分であることが分かる。
【0026】
ここで、中性子放出率Sの成分のうち核種を記述する記号として、Pu−238を8、Pu−240を0、Pu−242を2、そしてアメリシウムAm、キュリウムCm等の成分をXと書き、中性子発生の種別を記述する記号として自発核分裂中性子をf、(α、n)中性子をαと書くと、グロス中性子放出率Sgは下記の(1)式で示される。
【0027】
Sg=S+α+S+α+S+S+α …(1)
f:核分裂による中性子
α:(α、n)反応による中性子
一方、中性子同時計数率φcから換算係数を用いて求められる同時計数中性子放出率Scは、同様の記号を用いて、下記の(2)式で示される。
【0028】
Sc=S+S+S+S …(2)
これらから、全(α、n)中性子放出率Sαは下記の(3)式で求めることができる。
【0029】


ここで、グロス中性子放出率Sgを算出するためにグロス中性子計数率φgに乗じる換算係数は、中性子放出率が既知の標準中性子源、例えばCf−252やAm−Be放射性同位体中性子源を測定体系に置いて得られる計数率から求めておくことができる。
【0030】
一方、同時計数測定法では、検出器の配置や検出効率による条件により、核分裂起源の中性子が全て同時計数として測定される訳ではない。このため、測定系ごとに固有の同時計数の確率が決められ、中性子同時計数率φcから同時計数中性子放出率Scを求めるための換算係数に考慮される必要がある。
【0031】
このためには、自発核分裂により中性子を放出する中性子源をもとに換算係数を求めておくことが直接的な方法である。同時計数中性子放出率Scを算出するために、中性子同時計数率φcに乗じる換算係数は、自発核分裂率の既知であるCf−252中性子源を測定体系に置いて得られる同時計数率から求めておくことができる。
【0032】
一方、燃焼度推定値からSαと全(α、n)中性子放出率Sαとの比率Sα/Sαを燃焼計算を行って算出する(S8)。燃焼度推定値からSαと全(α、n)中性子放出率Sαとの比率を求める燃焼計算は、例えば文献(Croff, A. G.”ORIGEN2− A versatile computer code for calculating the nuclide compositions and characteristics of nuclear materials”, Nucl. Thecnol., 62, 335 (1983).)に記載されている手法を使用する。そして、ステップS8で求めたSαと全(α、n)中性子放出率Sαとの比率Sα/SαをステップS7で算出した全(α、n)中性子放出率Sαに乗じることによって(S9)、Pu−238(α、n)中性子放出率Sαを求める(S10)。そして、Pu−238の(α、n)中性子放出率と核種濃度を関係付ける物理定数を用いてSαからPu−238濃度を求める(S11)。
【0033】
ここで、Np−237添加照射後燃料の燃焼度が比較的低い場合について、第1の実施の形態が適していることを説明する。Np−237添加燃料中におけるPu−238の生成量は、これがNp−237の1回の中性子吸収で生成することから燃焼度に概ね比例したものとなる。一方、Cm−244は燃料中のウラン・プルトニウムが複数回の中性子吸収を経て生じることから、その生成量はU,Pu混合酸化物燃料(以下、MOX燃料と記す)の場合燃焼度の約2乗に比例し、UO2燃料の場合は燃焼度の約4乗に比例したものになると考えられる。このことから、燃焼度が高くなるとCm−244の生成量が相対的に大きくなるが、逆に燃焼度が低いときにはPu−238の生成量が相対的に大きい。
【0034】
図2は、従来の沸騰水型原子炉燃料における中性子放出率の燃焼度による変化を7核種について示した計算例である(T.Yokoyama,T.Tamura:Nucl. Technol. Vol.57、P372、Fig3. ”Neutron Emission Characteristics of Spent Boiling Water Reactor Fuel”、1982)。横軸は燃焼度(Exposure)であり縦軸は中性子放出率(Neutron Emission Rate)である。図2に示すように、従来UO2燃料では、燃焼度が10GWd/t程度よりも高い場合には、Cm−242とCm−244による中性子放出率が支配的となっている。ただし、Cm−242については半減期が約163日と比較的短いため、燃料を原子炉から取り出して後は約1.5年経過ごとに1桁ずつ減少していく。このため、1年程度以上冷却した使用済燃料を測定対象とする場合には、Cm−244が主な中性子放出核種となる。
【0035】
これに対しNp−237添加燃料の場合、従来燃料に比べて1桁程度かそれ以上にPu−238の生成量が大きくなると考えられるため、図2から推定して燃焼度が10ないし15GWd/t程度までは、Pu−238による中性子放出率はCm−244による中性子放出率と同程度かそれ以上であると考えられる。Pu−238による中性子放出は(α、n)中性子が主で、Cm−244による中性子放出は自発核分裂中性子が主である。
【0036】
これにより、ここで述べる第1の実施の形態において中性子同時計数法を用い、主にPu−238の(α、n)中性子及びCm−244の自発核分裂中性子とからなるグロス中性子計数率φgと主にCm−244の自発核分裂中性子からなる中性子同時計数率φcを有意な測定精度で分離して測定することが可能である。
【0037】
第1の実施の形態によれば、ネプツニウム237添加照射燃料の燃焼度が低い場合には、Pu−238の(α、n)中性子放出率とCm−244の自発核分裂中性子放出率とが同程度であることから、少なくともグロス中性子測定と中性子同時計数測定とを行うことにより、Pu−238の(α、n)中性子の量を測定して、Pu−238濃度を求めることができる。
【0038】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。図3は本発明の第2の実施の形態に係わる燃料物質内プルトニウム238の非破壊測定方法の処理流れ図である。この第2の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、換算係数に代えて増倍効果を含む換算因子を用いてグロス中性子計数率φgからグロス中性子放出率Sgを求めると共に中性子同時計数率φcから同時計数中性子放出率Scを求めるようにしたものである。
【0039】
すなわち、グロス中性子計数率φgからグロス中性子放出率Sgを求めるため換算係数、及び中性子同時計数率φcから同時計数中性子放出率Scを求めるための換算係数について、その算出方法として、測定体系の中性子増倍率を考慮した換算因子を用いる。図1に示した第1の実施の形態と同一処理内容には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0040】
図3において、燃焼度推定値を用いて中性子実効増倍率keffを求めると共に(S12)、計算で比例係数a及びa’を求めて(S13、S13’)、グロス中性子計数率に対する増倍効果を含む換算因子を求める(S14)とともに、中性子同時計数率に対する増倍効果を含む換算因子を求める(S14’)。そして、ステップS14で求めた換算因子をグロス中性子計数率φgに乗算することによって(S15)、グロス中性子放出率Sgを求める(S5’)。また、ステップS14’で求めた換算因子を中性子同時計数率φcに乗算することによって(S16)、同時計数中性子放出率Scを求める(S6’)。
【0041】
この第2の実施の形態は、測定対象が複数の燃料棒を束ねた燃料集合体のように大きく、これを水中で測定する場合に特に有効なものである。このような場合には、測定される中性子計数率は中性子増倍率によって変化し、中性子増倍率は燃料中に含まれる核分裂性物質量に依存する。
【0042】
そこで、燃焼度推定値から体系の実効中性子増倍率keffを求める。また、中性子束φと中性子放出率Sとは比例係数aを用いて下記(4)式で示される。
【0043】
φ=a・S/(1−keff) …(4)
これから、求めるべき中性子放出率Sは、下記(5)式で求められる。(5)式中の(1−keff)/aが中性子実効増倍率を考慮した換算因子である。比例係数aは測定体系に応じて計算で求めることができるが、例えば文献(Fowler, T. B.;
et. al, ”Nuclear Reactor Core Analysis Code: CITATION”, ORNL−TM−2496,rev.2, (1971).)に記載されている手法を使用する。
【0044】
S=φ・(1−keff)/a …(5)
この(5)式により、それぞれグロス中性子放出率Sgと同時計数中性子放出率Scとを求めた以降の処理ステップは、図1の第1の実施の形態の場合と同様であるので説明を省略する。
【0045】
第2の実施の形態によれば、測定対象が複数の燃料棒を束ねた燃料集合体のように大きく、これを水中で測定する場合であっても、その照射燃料の燃焼度が低い場合には、Pu−238の(α、n)中性子の量を測定してPu−238濃度を非破壊で求めることができる。
【0046】
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。図4は本発明の第3の実施の形態に係わる燃料物質内Pu−238の非破壊測定方法の処理流れ図である。この第3の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、アクティブ中性子測定を追加してアクティブ中性子計数率φaを求め、別途求めた換算係数を用いてU−235、Pu−239、Pu−241の少なくとも1を含む全フィッサイル核種の濃度を求め、Pu−238濃度と全核分裂性物質濃度との比を求めるようにしたものである。図1に示した第1の実施の形態と同一処理内容には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0047】
図4において、外部中性子源によって測定対象燃料に中性子を照射することにより誘起される核分裂中性子を主な成分とするアクティブ中性子を測定するアクティブ中性子測定を行い(S17)、アクティブ中性子計数率φaを測定する(S18)。そして、この中性子計数率φaに換算係数を乗じて、U−235、Pu−239及びPu−241の少なくとも1を含む全核分裂性物質濃度を求める(S19)。この換算係数は、例えば、核分裂性物質量が既知の試料を測定体系に置いて、アクティブ中性子計数率を測定することにより予め求めておくことができる。Pu−238濃度は図1の第1の実施の形態と同様に求め、(Pu−238/全核分裂性物質)濃度比を求める(S20)。
【0048】
第3の実施の形態によれば、核分裂性物質濃度と対比してPu−238の濃度を測定するので、燃料物質(使用済燃料)中のPu組成におけるPu−238の比率が高められていることを容易に確かめることができる。
【0049】
図5は、第3の実施の形態で使用する中性子測定装置の構成図である。中性子測定装置11は、グロス中性子及び核分裂による同時中性子を検出する同時計数測定部12と、外部中性子源によって測定対象燃料に中性子を照射することにより誘起される核分裂中性子を主な成分とするアクティブ中性子を測定するアクティブ中性子測定を行うアクティブ計数測定部13とから構成されている。
【0050】
同時計数測定部12は一対の中性子検出器14a、14bを有し、使用済燃料が封入された燃料棒18が通過する面にはガンマ線遮蔽材15が設けられている。アクティブ計数測定部13は中性子検出器14c及び中性子減速材16で保持された中性子源17を有し、燃料棒18が通過する面にはそれぞれガンマ線遮蔽材15が設けられている。
【0051】
このような中性子測定装置11で中性子を測定するには、燃料棒18を同時計測部12の中性子検出器14a、14bのガンマ線遮蔽材15側に挿入して中性子を測定する。全ての中性子はグロス中性子として計測され、核分裂による同時に発生する中性子は同時中性子として計測される。そして、その測定した燃料棒18の部位をアクティブ計数測定部13の中性子検出器14cまで移動させ、その部位についてアクティブ中性子を測定する。ここで、ガンマ線遮蔽材15は、鉛、タングステンあるいは鉄などの重金属によって構成されるのが望ましい。
【0052】
図6は、同時計数測定部12を燃料棒18の軸方向から見た断面図である。燃料棒18をガンマ線遮蔽材15が囲み、その外側に2個の中性子検出器14a、14bが備わる。このように燃料棒18を取り囲む中性子検出器14a、14bには、NE213に代表される中性子測定用液体シンチレーション検出器の適用が考えられる。シンチレーション検出器を用いるためには、光電子増倍管19a、19bが検出部に接続される。これらの信号は同時計数回路20によって信号発生時間についての情報が考慮され、ある決められた時間内に中性子検出器14a、14bにおいて同時に中性子信号が発生した場合の数を記録する。これにより、同時計数中性子を計測する。
【0053】
図7は図6と異なる形式の中性子検出器14を用いた場合の同時計数測定部12の断面図である。複数の中性子検出器14を中性子減速材16で保持してガンマ線遮蔽材15を介して燃料棒18の周囲を取り囲むように配置し、同時計数測定を行うものである。
【0054】
中性子減速材16は水素原子を多く含む物質で構成するのが好ましく、ポリエチレン、ポリスチレン等の有機高分子樹脂や水を内蔵するタンクが適切な材料である。この例は中性子検出器14としてBF比例計数管、B−10ラインド計数管あるいはHe−3計数管などを用いた場合の構成例である。円柱管形状の複数個の中性子検出器14を中性子減速材16の中に配置している。
【0055】
また、中性子減速材16と中性子検出器14とを2つの領域に区分するために、熱中性子遮蔽材21で区切る。中性子遮蔽材21は、Cd板、ボロン、ガドリニウムあるいはハフニウムを含む板状の材料が熱中性子を良く吸収するので適している。ひとつの領域にある中性子検出器14の信号は合成回路22a、22bで合成した後に同時計数回路20に入力され、2つの領域の中性子信号を計測処理する。
【0056】
図8はアクティブ計数測定部13の断面図である。アクティブ計数測定部13はガンマ線遮蔽材15と中性子減速材16及び中性子源17で構成されており、中性子源17は必要に応じて照射位置と非照射位置とに位置を変化させることで、中性子照射を行わないバックグランド測定が可能な構造とすることも有益である。中性子源17はCf−252が比較的強い強度が得られるため適している。
【0057】
このような中性子測定を燃料棒18について行うことで、次の測定量が得られる。
【0058】
中性子検出器14a、14bの合計の計数率φg
中性子検出器14a、14bの同時計数率φc
中性子検出器14cによるアクティブ計数率φa
これらの測定量から、図4に示す燃料物質内プルトニウム238の非破壊測定方法の処理流れ図によって、Pu−238/核分裂性物質濃度比を求めることができる。なお、第1の実施の形態及び第2の実施の形態においては、図5に示した中性子測定装置11からアクティブ計数測定部13を除去したものが用いられる。
【0059】
次に、本発明の第4の実施の形態を説明する。図9は本発明の第4の実施の形態に係わる燃料物質内プルトニウム238の非破壊測定方法の処理流れ図である。この第4の実施の形態は、照射燃料の燃焼度が高い場合には、燃料の発熱量を多くがPu−238によって占められているので、燃料の発熱率を測定することによってPu−238濃度を求めるようにしたものである。
【0060】
まず、測定対象の燃料について、カロリメトリ法により燃料から放出されているグロス発熱率Hgを測定する(S21)。一方、燃料の初期組成、燃焼度評価値及び冷却期間の情報を元に発熱率計算を行い、Pu−238による発熱率H8を除く全核種のPu−238外全核種発熱率Hxを求める(S22)。そして、測定されたグロス発熱率HgからPu−238外全核種発熱率Hxを差し引くことによってPu−238の発熱率であるPu−238発熱率H8を求める(S23)。Pu−238発熱率H8から発熱率に関する物理定数を用いてPu−238濃度を求める(S24)。
【0061】
Pu同位体の中ではPu−238の崩壊熱は約570W/kgで、Pu−239の約2W/kg、Pu−241の7.1 W/kg、Pu−241の約3.2 W/kgに比べてはるかに大きい。一方、Cm−244もα崩壊の比放射能はPu−238の5倍程度であるため、Cmが多く存在する場合には多くの崩壊熱を発生させる。
【0062】
図10は使用済MOX燃料における主要核種ごとの発熱率の冷却期間依存性を示す特性曲線図である。Puの組成(重量%単位)が、Pu−238=3%、Pu−239=49%、Pu−240=29%、Pu−241=10%、Pu−242=8%、Am−241=1%のものをウランに9%富化したもので、比較的近い将来実用されると予想される沸騰水型原子炉(BWR)用MOX燃料を燃焼度45GWd/tまで燃焼させた後に冷却した場合の主な核種ごと及び合計の発熱率の冷却期間依存性を示した一例である。
【0063】
図10に示すように、冷却期間10数年程度までPu−238の発熱はCm−244の発熱よりも少し小さいが、本発明で測定対象とする燃料物質(ネプツニウム237添加原子燃料)の場合には、Np−237が中性子を吸収してPu−238の生成量は従来よりも10倍以上に高められ、使用済燃料の発熱量HgにおいてPu−238の発熱が多くを占め、計算で求められるPu−238を除く全核種のPu−238外全核種発熱率Hxの比率は小さい。このため、測定燃料の燃焼度が高い場合についても比較的良い測定精度でPu−238濃度を測定することができる。
【0064】
以上の説明では、燃料の初期組成、燃焼度評価値及び冷却期間の情報を元に発熱率計算を行い、Pu−238による発熱率H8を除く全核種のPu−238外全核種発熱率Hxを求め、測定されたグロス発熱率HgからPu−238外全核種発熱率Hxを差し引くことによってPu−238の発熱率であるPu−238発熱率H8を求めるようにしたが、例えばORIGENコードによる燃焼計算を行い、全発熱率Hgに対するPu−238の発熱率H8の比率(H8/Hg)を求め、測定されたHgに比率(H8/Hg)を乗じてPu−238発熱率H8を求めるようにしても良い。
【0065】
図11は、第4の実施の形態における発熱率測定装置23の構成図である。これは、原子炉の燃料プール水中に設置する発熱率測定の構成概要を示したものである。燃料集合体24は、外部容器25の中の内部容器26の中に封入される。内部容器26の外部表面に断熱層27を設けることによって、発熱率測定精度を向上させる。内部容器26内の水は、循環ライン28の弁29を開き、循環ポンプ30によって循環させる。循環水を循環させて流量計31によって循環流量を、循環水入口温度計32によって入口温度Tiを、循環水出口温度計33によって出口温度Toを長時間測定し、これらから燃料集合体24の発熱率Hgを求める。
【0066】
第4の実施の形態によれば、ネプツニウム237添加照射燃料の燃焼度が高い場合には、燃料の発熱量の多くがPu−238によって占められているので、燃料の発熱率を測定することによってPu−238濃度を求めることができる。特に、測定対象燃料の燃焼度が15GWd/t以上の比較的高い場合で、燃料集合体形状である場合に有効性が高い。
【0067】
次に、本発明の第5の実施の形態を説明する。図12は本発明の第5の実施の形態に係わる燃料物質内プルトニウム238の非破壊測定方法の処理流れ図である。この第5の実施の形態は、図9に示した第4の実施の形態に対し、ガンマ線スペクトル測定を追加して行い、燃焼度を測定し、燃焼度から主な発熱核種であるセシウムCs137、ストロンチウムSr90及びキュリウムCm244の発熱率及びその他の核種に基づくその他核種発熱率Δhを評価して、Pu−238外全核種発熱率Hxを求め、グロス発熱率HgからPu−238外全核種発熱率Hxを除去することによりPu−238の発熱率を求めるようにしたものである。
【0068】
すなわち、Pu−238の発熱率H8を除く全核種のPu−238外全核種発熱率Hxを求める際に、別途、燃料のガンマ線スペクトル測定を行い、Cs−137の濃度からPu−238外全核種発熱率Hxを求めるようにしたものである。図9に示した第4の実施の形態と同一処理内容には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0069】
まず、GeやCd−Te半導体検出器を用いてガンマ線スペクトル測定を行うことによって(S25)、Cs−137の662keVガンマ線フォトピーク計数率(Cs−137ピーク計数率)を測定する(S26)。そして、Cs−137ピーク計数率の減衰補正を行う(S27)。Cs−137は半減期約30年で減衰するので、Cs−137のピーク計数率について、照射終了時から測定時までの冷却期間に応じた減衰分の補正を行う。そして、校正定数を用いて燃料中のCs−137濃度を求める(S28)。
【0070】
Cs−137濃度を求めるために用いられるCs−137ピーク計数率に乗じる校正定数は、例えば、強度既知のCs−137標準線源を測定体系に置きCs−137ピーク計数率を測定することによって予め求めておく。
【0071】
図10より、Pu−238外全核種発熱率Hxのなかの主な成分はCm−244、Cs−137及びSr−90であることが分かる。そこで、まず、Cs−137濃度に核種濃度と発熱率に関する物理定数を乗じてCs−137の発熱率H137を求める(S29)。また、Cs−137濃度は燃焼度と良く比例するので、燃焼計算によって求められるCs−137濃度と燃焼度を関係づける物理定数をCs−137濃度に乗じて燃焼度を精度良く求める(S30)。
【0072】
次に、燃焼度から燃焼計算で決められる相関式を用いてCm−244濃度及びSr−90濃度を求める(S31、S32)。Cm−244濃度を求めるための相関式は、燃料の初期濃縮度をパラメータとして燃焼計算を行い、燃焼度とCm−244の関係式をいくつかの初期濃縮度について求める。該関係式はべき乗関数あるいは指数関数を含む多項式を用いることができるが、複数の係数を用いた燃焼度の関数として表される。例えば、燃焼度をBU、Cm−244濃度をCm4という記号で表すとき、下記の(6)式で表すことができる。
【0073】
Cm4=a・BU …(6)
軽水炉のUO2燃料中におけるCm−244濃度は燃焼度のほぼ4乗に比例し、MOX燃料中におけるCm−244濃度は燃焼度のほぼ2乗に比例すると考えられるので、べき乗の係数bはUO2燃料では4、MOX燃料では2に近い値となる。このような関数をいくつかの初期濃縮度について求めた後、それぞれの係数を初期濃縮度の関数として表す。例えば、上記係数aを初期濃縮度の2次関数とし、係数bを初期濃縮度の3次関数として求める。この関数を用いることによって、初期濃縮度が与えられたときに、係数aと係数bが求められ、燃焼度BUが測定結果ないし運転管理情報として与えられたときにCm−244濃度が求められる。同様にSr−90濃度についても燃焼計算を行って相関式を作成しておくことにより、燃焼度からSr−90濃度を求めることができる。
【0074】
Cm−244濃度とCm−244の発熱率に関する物理定数をCm−244濃度に乗じてCm−244発熱率H244を求め(S33)、Sr−90濃度とSr−90の発熱率に関する物理定数をSr−90濃度に乗じてSr−90発熱率H90を求める(S34)。また、その他の核種の発熱率であるその他核種発熱率Δhは、初期濃縮度をパラメータとした燃焼計算によって相関式を作成しておくことにより、燃焼度から算出される(S35)。
【0075】
Pu−238外全核種発熱率Hxは、Cs−137の発熱率H137、Cm−244発熱率H244、Sr−90発熱率H90及びその他核種発熱率Δhの和として求められ(S36)、これをステップS21で測定されたグロス発熱率Hgから差し引くことによってPu−238発熱率H8を求める(S23)。そして、Pu−238発熱率H8から発熱率に関する物理定数を用いてPu−238濃度を求める(S24)。
【0076】
第5の実施の形態によれば、少なくともCs−137発熱量H137についてはガンマ線スペクトル測定法によるCs−137濃度測定値から直接求めることができるので、燃焼度から計算されるCm−244発熱率H244、Sr−90発熱率H90及びその他核種発熱率Δhの評価値の信頼性を確保できる。従って、燃焼度が高い場合の照射燃料のPu−238濃度を適正に求めることができる。
【0077】
次に、本発明の第6の実施の形態を説明する。図13は本発明の第6の実施の形態に係わる燃料物質内プルトニウム238の非破壊測定方法の処理流れ図である。この第6の実施の形態は、図12に示した第4の実施の形態に対し、燃料のガンマ線スペクトル測定を行いCs−137の濃度からPu−238外全核種発熱率Hxを求めることに代えて、燃料のガンマ線スペクトル測定を行いCs−134/Cs−137の濃度比からPu−238外全核種発熱率Hxを求めるようにしたものである。図12に示した第5の実施の形態と同一処理内容には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0078】
まず、GeやCd−Te半導体検出器を用いてガンマ線スペクトル測定を行うことによって(S25)、Cs−134の放出するいくつかのエネルギーのガンマ線のうちのひとつ、例えば796keVのガンマ線フォトピーク計数率(Cs−134ピーク計数率)を測定し(S37)、Cs−134ピーク計数率の減衰補正を行うと共に(S38)、Cs−137の662keVガンマ線フォトピーク計数率(Cs−137ピーク計数率)を測定し(S26)、Cs−137ピーク計数率の減衰補正を行う(S27)。Cs−134は半減期約2年で減衰し、Cs−137は半減期約30年で減衰するので、それぞれのピーク計数率について、照射終了時から測定時までの冷却期間に応じた減衰分の補正を行う。そして、Cs−134ピーク計数率とCs−137ピーク計数率との比を求める(S39)。これにより、照射終了時に対応するCs−134/Cs−137計数率比が得られる。
【0079】
そして、物理定数を用いてCs−134とCs−137とのCs−134/Cs−137濃度比を求める(S40)。ここで、物理定数を用いるのは以下の理由による。ガンマ線ピーク計数の検出効率はガンマ線エネルギーによる依存性が大きいので、Cs−134/Cs−137計数率比とCs−134/Cs−137濃度比とは必ずしも同一にならない。また、ガンマ線通過路の構造物によりガンマ線は減衰し、その減衰率はガンマ線通過路の構造物の材料や寸法に依存する。なお、単一エネルギーのガンマ線の物質中での減衰率は、均質な物質中では透過距離に応じて指数関数的に変化する。このため、検出器のガンマ線検出効率のエネルギー依存性および測定体系におけるガンマ線通過路減衰から求められる物理定数をCs−134/Cs−137計数率比に乗じてCs−134/Cs−137濃度比を求める。
【0080】
次に、Cs−134/Cs−137濃度比は燃焼度とほぼ比例する相関関係があるので、予め相関式を求めておくことによりCs−134/Cs−137濃度比から燃焼度を求める(S41)。照射終了時のCs−134/Cs−137濃度比と燃焼度との相関式は、初期濃縮度と比出力をパラメータとして燃焼計算を行って求めておく。燃焼計算により燃料の照射終了時点におけるCs−134/Cs−137濃度比の燃焼度による変化を求め、これを直線あるいは多項式の関数として表す。
【0081】
そして、直線あるいは多項式の各係数を初期濃縮度および比出力の関数として求める。この関数を用いて、初期濃縮度と比出力の情報から相関式である直線あるいは多項式の係数を求め、Cs−134/Cs−137濃度比から燃焼度を求める。
【0082】
燃焼度から計算で決められる相関式を用いて、Cs−137濃度を求め(S42)、Cs−137発熱率H137を求める(S43)。同様に、Cm−244濃度を求め(S44)、Cm−244発熱率H244を求め(S45)、Sr−90濃度を求め(S46)、Sr−90発熱率H90を求める(S47)。さらに、相関式からその他の核種の発熱率であるその他核種発熱率Δhを求める(S48)。
【0083】
Pu−238外全核種発熱率Hxは、Cs−137の発熱率H137、Cm−244発熱率H244、Sr−90発熱率H90及びその他核種発熱率Δhの和として求められ(S36)、これをステップS21で測定されたグロス発熱率Hgから差し引くことによってPu−238発熱率H8を求める(S23)。そして、Pu−238発熱率H8から発熱率に関する物理定数を用いてPu−238濃度を求める(S24)。
【0084】
第6の実施の形態によれば、燃焼度を求める際に、ガンマ線スペクトル測定器の校正定数を必要とせず、Cs−134/Cs−137濃度比は相対値の測定であるために、測定体系の変動による測定誤差の影響が小さくなるという利点がある。
【0085】
次に、本発明の第7の実施の形態を説明する。図14は本発明の第7の実施の形態に係わる燃料物質内Pu−238の非破壊測定方法の処理流れ図である。この第7の実施の形態は、図9に示した第4の実施の形態に対し、グロス中性子測定を追加して行い、燃料から放出されているグロス中性子を測定することによってグロス中性子計数率φgを求め、相関式を用いて燃焼度を求め、燃焼度からセシウム137濃度、ストロンチウム90濃度及びキュリウム244濃度を求め、発熱に関する物理定数を用いてセシウム137に基づく発熱率H137、ストロンチウム90に基づく発熱率H90及びキュリウム244に基づく発熱率H244を求めると共に、燃焼度のから相関式を用いてその他の核種に基づくその他核種発熱率Δhを求め、これらの発熱率を加算してPu−238外全核種発熱率Hxを算出し、グロス発熱率HgからPu−238外全核種発熱率Hxを除去することによりPu−238の発熱率を求めるようにしたものである。
【0086】
すなわち、Pu−238の発熱率H8を除く全核種のPu−238外全核種発熱率Hxを求める際に、別途、燃料のグロス中性子測定を行って燃焼度を求め、これからPu−238外全核種発熱率Hxを求めるようにしたものである。図9に示した第4の実施の形態と同一処理内容には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0087】
まず、グロス中性子の測定を行い(S49)、グロス中性子計数率を測定し(S50)、グロス中性子計数率に測定体系に応じた換算係数を乗じてグロス中性子放出率を求める(S51)。
【0088】
燃焼度が高い場合の使用済燃料のグロス中性子計数率はCm−244が放出する自発核分裂中性子が主な成分となっている。従って、予め初期濃縮度を計算パラメータとして燃焼計算を行うことにより、燃焼度とグロス中性子放出率との相関式を求めておき、グロス中性子放出率から燃焼度を求める(S52)。
【0089】
次に、燃焼度から計算で決められる相関式を用いて、Cs−137濃度を求め(S42)、Cs−137発熱率H137を求める(S43)。同様に、Cm−244濃度を求め(S44)、Cm−244発熱率H244を求め(S45)、Sr−90濃度を求め(S46)、Sr−90発熱率H90を求める(S47)。さらに、相関式からその他の核種の発熱率であるその他核種発熱率Δhを求める(S48)。
【0090】
Pu−238外全核種発熱率Hxは、Cs−137の発熱率H137、Cm−244発熱率H244、Sr−90発熱率H90及びその他核種発熱率Δhの和として求められ(S36)、これをステップS21で測定されたグロス発熱率Hgから差し引くことによってPu−238発熱率H8を求める(S23)。そして、Pu−238発熱率H8から発熱率に関する物理定数を用いてPu−238濃度を求める(S24)。
【0091】
第7の実施の形態によれば、グロス中性子の主な成分であるCm−244は、MOX燃料では燃焼度の概ね2乗、UO2燃料では燃焼度の概ね4乗に比例するため、計数率の誤差が燃焼度の測定誤差へ伝播する割合が低減される。従って、グロス中性子測定によって燃焼度を求める場合は、その燃焼度測定精度が良好であるという利点がある。
【0092】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば燃料物質の燃焼度が低い場合には、Pu−238の(α、n)中性子放出率とCm−244の自発核分裂中性子放出率が同程度であることから、少なくとも全(グロス)中性子測定と中性子同時計数測定を行うことにより、Pu−238の(α、n)中性子の量を測定して、Pu−238濃度を求めることが可能である。また、燃料物質の燃焼度が高い場合には、燃料の発熱量を多くがPu−238によって占められていることにより、燃料の発熱率を測定することによってPu−238濃度を求めることが可能である。
【0093】
これにより、例えばNp−237を添加した核拡散抵抗性の高い使用済燃料におけるPu−238の量あるいはPu組成における核分裂性PuとPu−238との比率を非破壊測定することができるので、国際的な核の平和利用体制に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる燃料物質内プルトニウム238の非破壊測定方法の処理流れ図。
【図2】沸騰水型原子炉燃料における中性子放出率の燃焼度による変化を7核種について示した計算例の特性図。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係わる燃料物質内プルトニウム238の非破壊測定方法の処理流れ図。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係わる燃料物質内プルトニウム238の非破壊測定方法の処理流れ図。
【図5】本発明の第3の実施の形態で使用する中性子測定装置の構成図。
【図6】本発明の第3の実施の形態で使用する中性子測定装置の同時計数測定部を燃料棒の軸方向から見た断面図。
【図7】本発明の第3の実施の形態で使用する中性子測定装置の他の一例の同時計数測定部を燃料棒の軸方向から見た断面図。
【図8】本発明の第3の実施の形態で使用する中性子測定装置のアクティブ計数測定部13の断面図。
【図9】本発明の第4の実施の形態に係わる燃料物質内プルトニウム238の非破壊測定方法の処理流れ図。
【図10】使用済MOX燃料における主要核種ごとの発熱率の冷却期間依存性を示す特性曲線図。
【図11】本発明の第4の実施の形態における発熱率測定装置の構成図。
【図12】本発明の第5の実施の形態に係わる燃料物質内プルトニウム238の非破壊測定方法の処理流れ図。
【図13】本発明の第6の実施の形態に係わる燃料物質内プルトニウム238の非破壊測定方法の処理流れ図。
【図14】本発明の第7の実施の形態に係わる燃料物質内プルトニウム238の非破壊測定方法の処理流れ図。
【符号の説明】
11…中性子測定装置、12…同時計数測定部、13…アクティブ計数測定部、14…中性子検出器、15…ガンマ線遮蔽材、16…中性子減速材、17…中性子源、18…燃料棒、19…光電子増倍管、20…同時計数回路、21…熱中性子遮蔽材、22…合成回路、23…発熱率測定装置、24…燃料集合体、25…外部容器、26…内部容器、27…断熱層、28…循環ライン、29…弁、30…循環ポンプ、31…流量計、32…循環水入口温度計、33…循環水出口温度計




 

 


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