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発明の名称 開離嵌挿具付きスライドファスナー
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2004−283299(P2004−283299A)
公開日 平成16年10月14日(2004.10.14)
出願番号 特願2003−77523(P2003−77523)
出願日 平成15年3月20日(2003.3.20)
代理人
発明者 水原 久佳 / 熊野 勇 / 真田 幸夫 / 瀬川 清正
要約 課題
開閉操作の際、補強部に加わる外力を分散して負荷の軽減を図り、柔軟性のある補強部の破損を防ぐ開離嵌挿具を提供する。

解決手段
合成樹脂を用いて開離嵌挿具5の箱棒8、蝶棒9の下半部にファスナーテープ3上へ張り出す補強部10を表裏対称に一体成形し、補強部10は箱棒8、蝶棒9に隣接する内側部11と、これに連接する外側部分12とから形成し、内側部分11は複数のリブ13が斜交状に配し、リブ13間に凹窩部を形成して柔軟性を付与し、内側部分11に連接して分厚いリブ13からなる外側部分12を形成することにより、薄手の内側部分11の斜交状のリブ13によって、補強部に加わる外力を分散し、負荷を軽減することができる。
特許請求の範囲
【請求項1】
一対のファスナーテープ3の対向側縁にファスナーエレメント4を取り付け、該ファスナーエレメント4の端部でファスナーテープ3の側縁に取り付けた合成樹脂製の開離嵌挿具5と、開離嵌挿具5と一体に成形し、ファスナーテープ3の少なくとも一面に張り出す補強部10とを設け、補強部10は開離嵌挿具5と連結する内側部分11に平面上斜交状に配置した複数のリブ13から形成してなることを特徴とする開離嵌挿具付きスライドファスナー。
【請求項2】
補強部10はリブ13をファスナーテープ3の両面に対称に配置し、内側部分11は外側部分12よりも薄く形成してなる請求項1記載の開離嵌挿具付きスライドファスナー。
【請求項3】
リブ13の交差部分は平面上弧状を呈する形に形成してなる請求項1記載の開離嵌挿具付きスライドファスナー。
【請求項4】
補強部10の内側部分11におけるリブ13間に凹窩部14を形成してなる請求項1記載の開離嵌挿具付きスライドファスナー。
【請求項5】
補強部10の内側部分11における下端縁に上端へ向けて窪む凹欠部15を形成してなる請求項1記載の開離嵌挿具付きスライドファスナー。
【請求項6】
補強部10は、開離嵌挿具5と連結する内側部分11と、内側部分11と連結してファスナーテープ3の外側縁へ向けて延びる外側部分12とから形成し、外側部分12は一定の間隔で並列する複数のリブ13から形成してなる請求項1記載の開離嵌挿具付きスライドファスナー。
【請求項7】
箱棒8または蝶棒9の先端部を基準に芯部6およびファスナーテープ3をヒートカットし、補強部10の内側部分11および外側部分12の下端縁がカットラインよりも内側に位置する形に形成してなる請求項1記載の開離嵌挿具付きスライドファスナー。
【請求項8】
ファスナーテープ3は、補強部10の外側端部12と対面する部位を粗組織20に編織製し、補強部10の端部が粗組織20内へ浸透してなる請求項1記載の開離嵌挿具付きスライドファスナー。
【請求項9】
補強部10の内側部分11の範囲は、ファスナーエレメント4の内側端面からファスナーテープ3の内方へ向けての幅Wが4.0mm以内に形成してなる請求項1記載の開離嵌挿具付きスライドファスナー。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、スライドファスナーに設置した開離嵌挿具におけるファスナーテープの端部に取り付けた箱棒、蝶棒または箱体に連設したファスナーテープを補強するための補強部の形態に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、スライドファスナー分野においては、構造を簡略化し、低価格で品質のよい製品を提供することが市場より要望されている。この傾向は、主に衣服の前身頃の開閉部分に用いられ、ファスナーテープの端部を連結または分離可能な開離嵌挿具付きスライドファスナーにおいて著しい。
【0003】
さて、従来、開離嵌挿具付きスライドファスナーは、通常の製品が、一対のファスナーテープの対向側縁に沿ってファスナーエレメントを取り付け、ファスナーエレメントの下端に連続して箱棒、箱体、蝶棒から構成された開離嵌挿具を取り付けている。そして開離嵌挿具を取り付ける部分のファスナーテープには平織り繊維(タフタ)あるいは合成樹脂フィルムの裏面に接着層を設けた補強テープを貼り付けて、同部分の形態を安定化すべく補強した後に開離嵌挿具を取り付けている。
【0004】
また、ファスナーテープの端部に補強テープを貼り付けることなく、直接箱棒、蝶棒および網状の補強片を合成樹脂を用いてファスナーテープの表裏で位置を半ピッチずらした形で射出成形で成形したスライドファスナーの開離嵌挿具が知られている。(例えば特許文献1参照)
さらに、ファスナーテープの端部に開離嵌挿具と水平的な格子形状を一体に設け、この格子形状に連接して斜交状の格子形状を一体に成形した補強部をファスナーテープの表面に形成した開離嵌挿具付きのスライドファスナーが知られている。(例えば特許文献2参照)
【0005】
【特許文献1】
実公昭41−17374号公報(第1頁、図1,2)
【特許文献2】
米国特許第3435489号明細書(2〜4欄、図1〜4)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前項で述べた補強テープを貼り付けた開離嵌挿具付きスライドファスナーは、ファスナーテープを補強するために、補強テープを必要とし、スライドファスナーの部品点数が多くなって商品コストを増加させている。またスライドファスナーの製造過程において必ず補強テープなどを貼着する工程および貼着加工機が必要であり、製造過程において簡略化を図ることができないから、商品のコスト高につながる。
【0007】
特許文献1に開示されたスライドファスナーの開離嵌挿具は、補強片の外周縁が先鋭状の角部を有するので、補強片が他物と引っ掛かり剥離しやすい。また補強片はファスナーテープの外側縁に向けて幅広く大きく設けられているので、同部分のファスナーテープが剛直化し、スライドファスナーを被着物に取り付ける縫製の際、補強片とミシン針とが接触して、ミシン針が折れる頻度が高い。また、開離嵌挿具を連結又は分離する操作を行う際、補強片に捻りや折り曲げ等の外力が繰り返し加わり、補強片が破断する問題がある。
【0008】
さらに特許文献2に開示された開離嵌挿具付きスライドファスナーは、箱棒、箱体、蝶棒と連結する補強片の内側部分がファスナーテープの幅方向に平行に延びるリブとファスナーテープの長さ方向に平行に延びるリブとで格子形状を呈し、リブ間に形成された凹部が並んで配されているので、同部分はファスナーテープに折り曲げや捻りなどの外力が作用したときに最も負担が加わる部分であるにもかかわらず、外力に対し耐久性が低く破損しやすい問題があった。また補強片は、上記連結部分からファスナーテープの外側縁に至る部分、すなわちファスナーテープが衣服の生地に縫製される部分に、ファスナーテープの幅方向に斜めに延びる複数のリブが交差する格子形状を形成しているので、縫糸が走る縫製ラインと交差するリブが多く、縫製時に縫針とリブとが接触する頻度が増大して、リブが破断する問題がある。
【0009】
この発明は、上述の問題点を考慮して発明されたものであり、請求項1記載の発明は、開離嵌挿具付きスライドファスナーにおけるファスナーストリンガーに表裏方向へ折り曲げようとする外力が働いた場合、最も負荷が加わる開離嵌挿具と補強部との連結部分すなわち補強部における内側部分は、複数のリブが斜交状に配された形状であるので、外力が分散し易く、負荷が軽減され、破損し難く、かつまた補強部が他物に引っ掛かって剥離するのを防ぐことができる開離嵌挿具付きスライドファスナーを提供することが主たる目的である。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、補強部がファスナーテープを両面から一体成形によって挟着し、安定した形態の補強部また柔軟性のある補強部の内側部分を備えた開離嵌挿具付きスライドファスナーを提供することが主たる目的である。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、補強部における内側部分に加わる外力をよく分散させ、内側部分の補強部の破損を未然に防ぐことができる開離嵌挿具付きスライドファスナーを提供することが目的である。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、補強部の内側部分におけるリブの補強構造あるいはリブの可変構造を簡単に具備させることができる開離嵌挿具付きスライドファスナーを提供することが目的である。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、ファスナーテープの端部に捻転力が加わったとき、補強部の内側部分に凹欠する部分を配することによって、外力の一部を吸収し負荷の軽減ができる開離嵌挿具付きスライドファスナーを提供することが目的である。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、補強部の外側部分は、ファスナーテープを衣服などへ縫着する際、ミシン針との接触する頻度を少なくし、リブの破損を防いで縫着できる開離嵌挿具付きスライドファスナーを提供することが目的である。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、ファスナーストリンガーをヒートカットしても端部に硬直化、特に芯部に塊りができず肌触りがよく、またファスナーテープの端部に捻転力が加わっても、補強部のリブがテープから剥離することがない品質のよい開離嵌挿具尽きスライドファスナーを提供することが目的である。
【0016】
請求項8記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、補強部の外側部分をファスナーテープに強固に固定することができ、補強部の剥離を未然に防いで長期の使用に耐えられる開離嵌挿具付きスライドファスナーを提供することが目的である。
【0017】
請求項9記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、補強部の内側部分の大きさを特定し、補強部の内側部分が最適かつ有効的な機能が発揮できる形態に形成した開離嵌挿具付きスライドファスナーを提供することが目的である。
【0018】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、この発明のうち請求項1記載の発明は、スライドファスナーにおける一対のファスナーテープ3が対向する側縁にファスナーエレメント4を取り付け、このファスナーエレメント4に連接してファスナーテープ3の側縁に一体成形で取り付けた合成樹脂製の開離嵌挿具5、例えば箱体7、箱棒8、蝶棒9と、この開離嵌挿具5と一体に成形してファスナーテープ3の少なくとも一面に張り出し、ファスナーテープ3を補強する補強部10とを設け、この補強部10は開離嵌挿具5に連接する内側部分11に、平面的にみて斜交状を呈する形に配した複数のリブ13から形成した開離嵌挿具付きスライドファスナーを主な構成とするものである。
【0019】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、ファスナーテープ3に形成する補強部10は、リブ13をファスナーテープ3の両面に対称的に配し、開離嵌挿具5に連接する内側部分11を外側部分12よりも厚みが薄くなる形で形成した開離嵌挿具付きスライドファスナーである。
【0020】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、補強部10の内側部分11に形成するリブ13における交差部分は、平面的にみて弧状を呈する形に形成した開離嵌挿具付きスライドファスナーである。
【0021】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、補強部10の内側部分11に形成するリブ13間に凹窩部14、例えば透孔形状、あるいは薄い底部分がある凹部形状に形成した開離嵌挿具付きスライドファスナーである。
【0022】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、補強部10の内側部分11に形成したリブ13の下端縁には、上方へ向けて凹状に窪む凹欠部15を形成した開離嵌挿具付きスライドファスナーである。
【0023】
請求項6記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、ファスナーテープ3に形成する補強部10は、開離嵌挿具5と連接して形成する内側部分11と、この内側部分11に連接して形成し、かつファスナーテープ3の外側縁へ向けて延びる外側部分12とから形成し、外側部分12は一定の間隔で横方向または縦方向に並列する複数のリブ13から形成した開離嵌挿具付きスライドファスナーである。
【0024】
請求項7記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、ファスナーストリンガー2に取り付けた箱棒8または蝶棒9の先端部を基準にして、芯部6およびファスナーテープ3をヒートカットし、この際補強部10の内側部分11および外側部分12における下端縁が、ヒートカットしたカットラインよりも視覚で区別できるように内側に位置する形に形成した開離嵌挿具付きスライドファスナーである。
【0025】
請求項8記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、ファスナーテープ3は、補強部10の外側端と対面するファスナーテープ3の部位を粗組織20に織製または編製し、補強部10の外側端部がテープの粗組織20内へ浸透し固定した開離嵌挿具付きスライドファスナーである。
【0026】
請求項9記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、補強部10の内側部分11の範囲は、ファスナーエレメント4の内側端面からファスナーテープ3の内方へ向けての幅Wが4.0mm以内の範囲の大きさで形成した開離嵌挿具付きスライドファスナーである。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の開離嵌挿具付きスライドファスナーについて、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0028】
この発明の開離嵌挿具付きスライドファスナーは、図1に示すように、ファスナーチエン1は、下止めを用いた止製品でなく開き製品、すなわち左右のファスナーストリンガー2が完全に分離できる開離嵌挿具5を備えたスライドファスナーであり、ファスナーテープ3の側縁に設けた芯部6にファスナーエレメント4を装着する。一方のファスナーストリンガー2のファスナーエレメント4の下端に連続する形で開離嵌挿具5としての箱棒8を取り付け、他方のファスナーストリンガー2のファスナーエレメント4の下端に連続する形で開離嵌挿具5としての蝶棒9をそれぞれ芯部6に取り付ける。そして箱棒8は図10に示すように、箱体7を取り付けた開離嵌挿具付きのファスナーストリンガー2を作製し、蝶棒9を取り付けたファスナーストリンガー2と組み合わせて開離嵌挿具付きスライドファスナーを完成させる。
【0029】
図2〜12に示す第1実施例の開離嵌挿具付きスライドファスナーは、ファスナーチエン1の一方のファスナーストリンガー2に取り付ける箱棒8には、図2に示すようにファスナーテープ3の表面へ張り出す平坦状の補強部10を箱棒8の一側面に一体に設け、他方のファスナーストリンガー2に取り付ける蝶棒9には、やはり図4に示すようにファスナーテープ3の表面へ張り出す平坦状の補強部10を蝶棒9の側面に一体に設ける。そしてファスナーチエン1におけるファスナーエレメント4、箱棒8、蝶棒9、箱体7および補強部10をポリアセタール、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂を用いて射出成形手段によって、それぞれファスナーテープ3に一体成形する。
【0030】
箱棒8、蝶棒9は図2〜5に示すように箱棒8、蝶棒9の側面に外方へ突出し表面が平坦状に張り出す補強部10を設ける。図2,3に示すように箱棒8の補強部10は、箱棒8の下半部における側面すなわちファスナーテープ3上を外方へ突出する形で内側部分11および外側部分12を設ける。箱棒8に隣接する内側部分11には、平面的にみて複数のリブ13が斜交状に配され、この斜交状のリブ13間に凹窩部14を形成する。凹窩部14は平面的には四角形または菱形あるいは円形または長円形などの各種形状を呈し、かつ図6に示すように貫通状の透孔形状、または薄い底部分のある凹部形状に形成することによって、補強部10の内側部分11をリブ13と凹窩部14により柔軟性を具有させ、またリブ13の交差部分を平面的にみて円弧などの弧状を呈する形に形成することによって、補強部10に加わる外力を分散させる。
【0031】
補強部10における内側部分11の大きさ規模は、ファスナーエレメント4の内側端面を基点とし、ファスナーテープ3の内方へ向けての幅Wが4.0mm以内である。好適には通常よく用いられるNo.3〜5のスライドファスナーにおけるファスナーテープ3の幅が13〜16mmであり、このファスナーテープ3幅の約30%程度の範囲内に成形できる大きさである。ただしスライドファスナーの大きさ、また顧客の要望によって内側部分11および外側部分12の比率を変更することは自由であるが、内側部分11はスライダー35のフランジ36間に挿通する部分に存在し、外側部分12はファスナーストリンガー2を被着物に縫着させる部分に存在することが肝心である。さらに内側部分11の補強部10における下端縁に上方へ向けて窪む凹欠部15を設け、ファスナーテープ3の端部に捻りなどの捻転力が加わったとき、凹欠部15によって外力の一部を吸収できる形に形成する。なお内側部分11の上端縁にも凹欠部15を設けることができる。
【0032】
補強部10の外側部分12は、内側部分11に連接する形で成形し、外側部分12は内側部分11のリブ13よりも分厚いリブ13から形成し、リブ13はファスナーテープ3の外側へ向けて複数のリブ13が間隔をあけて平行状に延びる形に設ける。そしてリブ13の断面形状は図7に示すように二等辺三角形で側面の傾斜角度が約60°、すなわち図示のα角度がα≦30°の条件を満たすのが好ましい。リブ13間の間隔を広くとり、かつリブ13の断面形状を前述のとおりの形状に形成することにより、ファスナーストリンガー2を被着物に縫着する際、ミシン針とリブ13とが接触する頻度を少なくしてリブ13の破損を防ぐことができる。また外側部分12における補強部10は、外側にリブ13を連結した形でリブ13による枠部16を形成して、安定した形態に形成し、ファスナーストリンガー2を指で摘んだとき、適度の剛性があり、摘み易く開離嵌挿操作を容易に行うことができる。
【0033】
ファスナーテープ3の芯部6に成形した箱棒8の形態は、補強部10を形成した反対面に凹状の凹陥部17を設け、この凹陥部17に箱体7の前壁25と後壁26との間に架設した仕切板29を嵌入し係止させて箱棒8と箱体7とを一体形態に取り付ける。
【0034】
蝶棒9を取り付けたファスナーストリンガー2の補強部10は図4,5に示すように、箱棒8を取り付けたファスナーストリンガー2と同様に、蝶棒9の下半部における側面すなわちファスナーテープ3上を外方へ突出する形で内側部分11および外側部分12を設ける。蝶棒9に隣接する内側部分11には、平面的に複数のリブ13が斜交状に配され、この斜交状のリブ13間に底部のない透孔形状または薄い底部のある凹部形状の凹窩部14を形成して内側部分11に柔軟性を具有させ、またリブ13の交差部分は円弧などの弧状を呈する形に形成して補強部10に加わる外力を分散させる。なお箱棒8、蝶棒9の一部下半部に補強部10を設けているので、柔軟性のある補強部10に形成することができる。
【0035】
補強部10における内側部分11の大きさは箱棒8を取り付けたファスナーストリンガー2と同様に、ファスナーテープ3幅の約30%程度の範囲内に成形し、内側部分11の補強部10における下端縁に凹欠部15を設け、ファスナーテープ3の端部に捻転力が加わったとき、凹欠部15によって外力の一部を吸収できる形に形成する。なお内側部分11の上端縁にも凹欠部15を設けることもできる。
【0036】
補強部10の外側部分12は、箱棒8を取り付けたファスナーストリンガー2と同様に、内側部分11に連接する形で成形し、外側部分12は内側部分11のリブ13よりも分厚いリブ13に形成し、リブ13はファスナーテープ3の外側へ向けて複数のリブ13が間隔をあけて平行状に延びる形に設け、先端をリブ13で連結して枠部16を形成する。リブ13は図7に示すのと同様に、断面形状が二等辺三角形で側面の傾斜角度を約60°に傾斜する形に形成し、ファスナーストリンガー2の縫着時にミシン針との接触をなるべく避け、リブ13の破損を防ぐものである。
【0037】
箱棒8および蝶棒9を取り付けたファスナーストリンガー2に形成する内側部分11および外側部分12から形成される補強部10は、図3,5に示すようにファスナーテープ3の表裏両面へ射出成形によって成形し、ファスナーテープ3を表裏から補強部10により挟持させる形に形成する。補強部10は両面でなくファスナーテープ3の表面片側にのみ成形してもよい。
【0038】
箱棒8を取り付けたファスナーストリンガー2に取り付ける箱体7は、図8,9に示すように、全体が直方体で前壁25と後壁26との間の中央上部に細幅状の仕切板29を架設し、仕切板29の下端に係止部32を設ける。箱体7の側方に存在する一方の後壁27には、箱棒8を取り付けたファスナーストリンガー2が挿入できる補強部10の内側部分11の厚みに相当する開口部分の挿入口28を設け、かつ挿入口28と仕切板29との間に箱棒8が差し込むことができる箱棒差込孔30を設ける。他方の側壁27には、蝶棒9を取り付けたファスナーストリンガー2が挿入できる補強部10の内側部分11の厚みに相当する開口部分の挿入口28を底部分まで設け、かつ挿入口28と仕切板29との間に蝶棒9が差し込むことができる蝶棒差込孔31を設けて箱体7を完成させる。
【0039】
完成した箱体7は、図10に示すように箱棒8を取り付けたファスナーストリンガー2の箱棒8を箱体7の箱棒差込孔30に挿入するとともに、側壁27の挿入口28に補強部10の内側部分11を挿入し、箱体7に設けた仕切板29を箱棒8の側面に設けた凹陥部17に圧入すると、仕切板29の下端縁に設けた係止部32が凹陥部17の一端に係止し、箱棒8と箱体7が一体に連結し固定する。
【0040】
箱体7を取り付けたファスナーストリンガー2に対し、蝶棒9を取り付けたファスナーストリンガー2を装着するには、図11に示すようにスライダー35を箱体7の上端面に接触するように摺動させて保持した状態にし、蝶棒9を取り付けたファスナーストリンガー2の補強部10を摘んで蝶棒9をスライダー35のガイド溝37へ挿入するとともに、補強部10の内側部分11を、フランジ36間に挿通して箱体7の蝶棒差込孔31へ蝶棒9を挿入した後、補強部10を摘んだままスライダー35を引き上げ摺動させると、図12に示すように左右のファスナーストリンガー2のファスナーエレメント4が噛合した状態のファスナーチエン1に仕上がる。
【0041】
図13,14,15に示した開離嵌挿具5は、それぞれ補強部10の外側部分12の変形例を示すものであり、図13に示す補強部10は、箱棒8、蝶棒9に対し内側部分11および外側部分12の設置範囲を長く広く形成し、ファスナーストリンガー2を縫着する際、外側部分12を枠部16内で横方向へ並行するリブ13を増やすことによって、容易かつ確実にミシン針によるリブ13の破損頻度を下げ、ファスナーストリンガー2を縫着できる形に形成したものである。
【0042】
図14に示す補強部10は、箱棒8、蝶棒9に対する内側部分11の設置範囲は第1実施例と同様であるが、外側部分12のリブ13の配置形態が異なる。すなわち外側部分12のリブ13は、枠部16内に横方向のリブ13はなく、1本のリブ13を縦方向に配し、ミシンによる縫製ラインからリブ13をずらすことができ、リブ13の破損頻度を下げ、ファスナーストリンガー2を確実、かつ有効に縫着することができる。また図15に示す補強部10は、外側部分12の外側端にリブ13がなく、枠部16が形成されていないので、補強部10の外側に柔軟性を付与することができる。
【0043】
図16に示す蝶棒9用の補強部10について説明すると、蝶棒9の側面に一体に成形する補強部10は、蝶棒9の下端の位置よりも補強部10の下端の位置が内部にあること、すなわち補強部10の下端にファスナーテープ3が蝶棒9の下端よりも余分に存在することである。このファスナーストリンガー2の端部をヒートカットすると蝶棒9部分の芯部6が余分に突出していないので熱で溶ける余地がなく硬直することがないから肌触りがよい。しかも補強部10の下端にファスナーテープ3が存在するので、ファスナーテープ3に捻りの外力が働いても直接リブ13に加わらないので、リブ13がファスナーテープ3から剥がれることがない。なお箱棒8を取り付けたファスナーストリンガー2にも適用できる。
【0044】
図17に示す補強部10は、箱棒8と箱体7とを一体成形しているため、補強部10の内側部分11の一部が箱体7と一体成形され、強固に連結固定することができる。
【0045】
図18,19に示す補強部10は、補強部10を強固にファスナーテープ3に固定するため、織地のファスナーテープ3における外側縁部の経糸21を一定区間抜き取り緯糸22のみが存在する粗目状の織地に形成して粗組織20を設け、また経編のファスナーテープ3においては、経編糸を抜き取って粗目状の編地に形成して粗組織20を設ける。この織地または編地の粗組織20の部分に補強部10における外側部分12の外側にある枠部16のリブ13を表裏に一体成形することにより、枠部16を成形する合成樹脂材料の一部が粗組織内へ入り込み、補強部10をファスナーテープ3に強固に溶着固定した補強部10である。
【0046】
図20,21に示す補強部10は、前例と同様に織地または編地のファスナーテープ3の外側縁部に粗目状の粗組織20を設け、ファスナーテープ3の芯部6側の表裏に補強部10の内側部分11を成形し、補強部10の外側部分12における外側の枠部16のリブ13を粗組織20に配されるように成形して枠部16を粗組織20に溶着し、補強部10をファスナーテープ3に強固に固定した補強部10である。
【0047】
図22に示す実施例は、両開き用の開離嵌挿具5に適用したものであり、一方のファスナーストリンガー2の一端に箱棒8を取り付け、他方のファスナーストリンガー2の一端に蝶棒9を取り付け、左右にファスナーストリンガー2には箱体7はなく、2個のスライダー35を相反する方向、逆向きに挿通して、ファスナーチエン1を両側から開閉し、かつ左右に分離できるスライドファスナーである。
【0048】
このスライドファスナーの一方のファスナーテープ3の芯部6上にスライダー35が2個挿通できるやや長めの箱棒8を成形する。この箱棒8の先端にはスライダー35のフランジ36が当接しスライダー35の摺動を停止させるストッパー18が横方向へ延びた形で形成され、ストッパー18の先端は補強部10の外側部分12の分厚いリブ13まで延設されている。箱棒8の上端には側方へ突出する薄い突片33を段差状に設け、蝶棒9の上端に設けた段差状の突片33とが重合できる形に形成する。
【0049】
他方のファスナーテープ3の芯部6上にスライダー35が2個挿通できるやや長めの蝶棒9を成形する。そして蝶棒9の上端には箱棒8の突片33に合致し、突片33と重合できる突片33を設ける。また補強部10の内側部分11はスライダー35の肩口側の広幅状の翼板を挿通するため、スライダー35の翼板に合致するように末端側が拡張される形に形成する。
【0050】
この開離嵌挿具5の使用態様は、箱棒8を取り付けたファスナーストリンガー2に2個のスライダー35を相反する方向に向けて挿通して箱棒8のストッパー18に当接して保持し、この状態で蝶棒9を取り付けたファスナーストリンガー2の蝶棒9を挿通した後、上位にあるスライダー35を上方へ引き上げて左右のファスナーストリンガー2のファスナーエレメント4を噛合させてファスナーチエン1が完成する。ファスナーチエン1を分離するには、2個のスライダー35を箱棒8のストッパー18まで引き下げた後、蝶棒9を取り付けたファスナーストリンガー2を2個のスライダー35から抜脱すれば左右のファスナーストリンガー2に分離開放することができる。
【0051】
【発明の効果】
この発明の開離嵌挿具付きスライドファスナーは、以上説明したとおりの構成であり、この構成によって下記の効果を奏するものである。
【0052】
この発明のうち請求項1記載の発明は、一対のファスナーテープの対向側縁にファスナーエレメントを取り付け、ファスナーエレメントの端部でファスナーテープの側縁に取り付けた合成樹脂製の開離嵌挿具と、開離嵌挿具と一体に成形し、ファスナーテープの少なくとも一面に張り出す補強部とを設け、補強部は開離嵌挿具と連結する内側部分に平面上斜交状に配置した複数のリブから形成したことによって、開離嵌挿具付きスライドファスナーにおいて、ファスナーストリンガーの端部に対し、折曲または捻転力が働いても、開離嵌挿具としての補強部における内側部分の斜交状のリブが外力を有効に分散させ、かつ変形が容易で破損を未然に防ぐとともに、端部に設けた補強部が他物に引っ掛かって剥離するのを未然に防ぐことができる効果がある。
【0053】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、補強部はリブをファスナーテープの両面に対称に配置し、内側部分は外側部分よりも薄く形成したことによって、補強部がファスナーテープの両面から挟持する形で強固に固定でき、かつ補強部の内側部分が薄く柔軟性に富んだ効果がある。
【0054】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、リブの交差部分は平面上弧状を呈する形に形成したことによって、補強部の内側部分におけるリブの交差部分が弧状であるので、補強部に加わる外力を容易に分散させることができる効果がある。
【0055】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、補強部の内側部分におけるリブ間に凹窩部を形成したことによって、補強部のリブを変形し、またリブの補強を簡単かつ容易に行うことができる効果がある。
【0056】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、補強部の内側部分における下端縁に上端へ向けて窪む凹欠部を形成したことによって、補強部の内側部分に加わる捻転力をよく吸収し負荷の軽減ができる効果がある。
【0057】
請求項6記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、補強部は、開離嵌挿具と連結する内側部分と、内側部分と連結してファスナーテープの外側縁へ向けて延びる外側部分とから形成し、外側部分は一定の間隔で並列する複数のリブから形成したことによって、補強部の外側部分は縫製の際、ミシン針がリブに接触する頻度を少なくすることができ、したがってリブの破損を未然に防ぐことができる効果がある。
【0058】
請求項7記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、箱棒または蝶棒の先端部を基準に芯部およびファスナーテープをヒートカットし、補強部の内側部分および外側部分の下端縁がカットラインよりも内側に位置する形で形成したことによって、補強部におけるファスナーテープをヒートカットしても芯部部分が硬直化して塊りとならず肌触りがよく、また補強部のリブがファスナーテープから剥離することがなく、品質のよい開離嵌挿具に仕上げることができる効果がある。
【0059】
請求項8記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、ファスナーテープは、補強部の外側端部と対面する部位を粗組織に編織製し、補強部の端部が粗組織内へ浸透させたことによって、補強部の外側部分のリブをファスナーテープの組織内へ浸透固化でき、強固に取り付けることができる効果がある。
【0060】
請求項9記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、補強部の内側部分の範囲は、ファスナーエレメントの内側端面からファスナーテープの内方へ向けての幅Wが4.0mm以内に形成したことによって、補強部における内側部分が、左右のファスナーストリンガーの嵌挿操作が容易にでき、かつ内側部分が最適な形態で有効に機能が発揮できる効果があるなど、この発明が奏する効果はきわめて顕著である。
【図面の簡単な説明】
【図1】開離嵌挿具付きスライドファスナーの要部の正面図である。
【図2】同上の箱棒を装着したファスナーストリンガーの要部の正面図である。
【図3】同上のファスナーストリンガーの底面図である。
【図4】同上の蝶棒を装着したファスナーストリンガーの要部の正面図である。
【図5】同上のファスナーストリンガーの底面図である。
【図6】同上の図2におけるA−A断面図である。
【図7】同上の図2におけるB−B断面図である。
【図8】同上の箱体における断面図である。
【図9】同上の図8におけるC−C断面図である。
【図10】同上の箱体と箱棒を連結した状態の一部切欠した正面図である。
【図11】同上の箱体を装着したファスナーストリンガーに蝶棒を装着したファスナーストリンガーを嵌挿させる状態を示す一部切欠した正面図である。
【図12】同上の箱体を装着したファスナーストリンガーに蝶棒を装着したファスナーストリンガーを嵌挿した状態を示す一部切欠した正面図である。
【図13】補強部の変形例を示す正面図である。
【図14】補強部の他の変形例を示す正面図である。
【図15】補強部のさらに他の変形例を示す正面図である。
【図16】蝶棒および補強部の変形例を示す正面図である。
【図17】箱体と箱棒が一体化した嵌挿具の一部切欠した正面図である。
【図18】ファスナーストリンガーに補強部を装着する実施例の正面図である。
【図19】同上の図18におけるD−D断面図である。
【図20】ファスナーストリンガーに補強部を装着する他の実施例の側面図である。
【図21】同上の図18に示すD−Dに対応する断面図である。
【図22】他の開離嵌挿具付きスライドファスナーの要部の正面図である。
【符号の説明】
2 ファスナーストリンガー
3 ファスナーテープ
4 ファスナーエレメント
5 開離嵌挿具
6 芯部
7 箱体
8 箱棒
9 蝶棒
10 補強部
11 内側部分
12 外側部分
13 リブ
14 凹窩部
15 凹欠部
20 粗組織




 

 


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