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発明の名称 繊維製面ファスナー
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2004−201821(P2004−201821A)
公開日 平成16年7月22日(2004.7.22)
出願番号 特願2002−372888(P2002−372888)
出願日 平成14年12月24日(2002.12.24)
代理人
発明者 大川 光久
要約 課題
裏面がソフト感に優れたソフト繊維糸による被覆面を有し、しかも面ファスナーとしての機能と耐久性に富む繊維製の面ファスナーを提供する。

解決手段
地組織から構成される基材織編物(10)の織編成と同時に織り込まれ又は編み込まれ、同織編物(10)の表面から突出する多数の係合素子を有する面ファスナーである。前記地組織を構成する経糸(11 〜17,111,114) の一部に加工糸(15,114)を含み、同加工糸(15,114)が前記基材織編物(10)の背面に浮き上がって織り込まれ又は編み込まれて、同加工糸(15,114)をもって同基材織編物(10,110)の裏面の略全面を被覆している。この加工糸(15,114)はマルチフィラメントからなる嵩高加工糸であることが好ましい。
特許請求の範囲
【請求項1】
地組織から構成される基材織編物(10)の織編成と同時に織り込まれ又は編み込まれ、同織編物(10)の表面から突出する多数の係合素子を有する面ファスナーにおいて、
前記地組織を構成する経糸(11 〜17,111,114,115) の一部の経糸(15,114,115)が前記基材織編物(10)の背面に浮き上がって織り込まれ又は編み込まれて、同一部の経糸(15,114,115)をもって同基材織編物(10,110)の裏面の略全面を被覆してなることを特徴とする繊維製面ファスナー。
【請求項2】
前記一部の経糸(15,114,115)が加工糸である請求項1記載の繊維製面ファスナー。
【請求項3】
前記加工糸(15,114,115)がマルチフィラメントの嵩高加工糸である請求項2記載の繊維製面ファスナー。
【請求項4】
前記織編物を構成する前記経糸(11 〜15,111,114,115) に対する前記加工糸(15,114,115)の重量割合が35〜60%である請求項2又は3記載の繊維製面ファスナー。
【請求項5】
前記地組織を構成する経糸(11 〜17,111,114,115) が更に他の構成糸材料よりも融点が低い熱溶着糸(16,17) を含み、加熱処理により溶着する熱溶着糸材料をもって、その周辺部の糸条同士が接合されてなる請求項4記載の繊維製面ファスナー。
【請求項6】
前記基材織編物(10)の1以上の緯糸(19,113)又は経糸(11 〜15,111,114,115) に沿って跨ぎ背面に浮き上がる加工糸(15,114,115)の、耳部(B) における浮上り回数が主体部(A) における浮上り回数の2倍以上である請求項2又は3記載の繊維製面ファスナー。
【請求項7】
前記係合素子がマルチフィラメント糸からなるループ状の雌係合素子である請求項1又は2記載の繊維製面ファスナー。
【請求項8】
前記係合素子がモノフィラメントからなるフック状又はきのこ状の雄係合素子である請求項1又は3記載の繊維製面ファスナー。
【請求項9】
前記基材織編物(10)の表面にマルチフィラメントからなるループ状の雌係合素子とモノフィラメントからなるフック状又はきのこ状の雄係合素子とが混在して形成されてなる請求項1又は2記載の繊維製面ファスナー。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は織成又は編成により得られる織編物の表面に、同織編物の織成と同時に織り込まれる多数のループやフックなどからなる係合素子を有する繊維製面ファスナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の繊維製面ファスナーは、一般に繊維製の織物や編物の地組織からなる平板状の基材織編物の一表面に立設する多数のループをもつ、いわゆるパイル織編物から製造される。通常は、モノフィラメントからなるループ(パイル)糸が地組織を構成する基材織編物の織編成と同時に織り込み或いは編み込んだのちに、前記各ループの側部を一部切断してフック片を作り、又はループの頂部を切断してから、その先端を球状(又は半球状)に加熱溶融してきのこ片を作り、雄係合素子を成形する。雌の係合素子の場合には、基材織編物の織編成と同時に織り込み或いは編み込まれるループ糸にはマルチフィラメントが使われ、前記織編成の終了後に熱セットや染色を行い、続いてループ形状はそのままとしてループにナッピングを施して、マルチフィラメントを単繊維に分離するとともに多方向を向かせる。
【0003】
また、前述の切断やバフィングを行う前には、熱セットしてループ形状を固定するが、ループに切断やバフィングなどの外部応力が作用すると、ループが引き出され或いは基材織編物から引き抜かれてしまい、面ファスナーとしての機能を失ってしまう。これを防ぐため、通常は一表面にループが形成された基材織編物の背面、すなわちループの形成されていない面にバックコーティングがなされる。このバックコーティングは、溶剤により溶解したナイロン、ポリエステル、ポリウレタンなどの樹脂溶液を塗工することにより行われる。これらの樹脂溶液は溶剤が除去されると固化して硬くなる。更に、これらの樹脂は溶剤とともに基材織編物の構成糸の交絡部間に形成される空隙に浸入して基材織編物の構成糸条間及び同構成糸とループ糸との間を接着固化する。また同時に、前記構成糸を構成する多数の繊維間にも浸入して固化するため、基材織編物の背面だけが硬くなるのではなく、基材織編物全体が硬くなってしまう。
【0004】
こうした不具合を排除するため、例えば実公平1−33656号公報や特開2001−309805号公報では、一重又は二重パイル(ループ)織物の緯糸又は経糸の一部に熱溶着糸を使い、ループ織物を織成したのち加熱して前記熱溶着糸を溶融させて、基材織物の内部で熱溶着糸と他の構成糸間を接着固化することを提案している。こうすることにより、格別に接着剤が使われず、しかも基材織物の表面に表出する固化樹脂部分が殆どなくなるため、面ファスナー全体の柔軟性が確保できるとしている。
【0005】
更に、例えば特開2001−238708号公報によれば、地組織を構成する基材織物の経糸が緯糸を一本跨ぐたびにループ糸の左右に振って絡ませる、いわゆるレノ組織で織成し、ループ糸の抜けを防いでいる。同公報によれば、更に前記ループ糸に絡められた経糸とループ糸の左右両側に配される経糸に上記公報と同様の熱溶融糸を使うことも開示されており、この場合には前記レノ組織と熱溶融糸の溶着とが相まって、ループ糸の抜けや織組織の崩れを効果的に防いでいる。
【0006】
【特許文献1】
実公平1−33656号公報
【特許文献2】
特開2001−309805号公報
【特許文献3】
特開2001−238708号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この種の面ファスナーの用途の多様化は更に細分化を続けており、例えば単なる一般の衣料分野や日用品、或いは産業機材の固着具としての用途に限らず、各種スポーツ用品、衛生用品、医療用具などでは面ファスナー自体が直接使われるようになってきている。その代表的な例としては、各種の結束バンドや上記特許文献によっても提案されているような各種の吸湿ベルト、或いは直接肌に触れる包帯や時計バンドなどがある。これらの製品には、柔軟性が要求されると同時に、肌に触れる部分の感触が重視されることが多い。
【0008】
しかるに、上記特許文献により提案された繊維製の面ファスナーは、なるほどその背面に各種樹脂によるバックコーディングがなされていないため、全体的には柔軟性が増し、背面側の感触も多少の改善はされるものの、その背面には従来と同様に緯糸を跨いで屈曲する経糸の屈曲回数が多いため、背面がざらつくだけでなく、糸の種類によってはごつごつ感を払拭することができない。これは、特に面ファスナーの背面が直接肌に触れる用途には致命的な欠点となる。
【0009】
本発明は、こうした従来の課題を解決すべくなされたものであり、具体的な目的はバックコーティングを施すことなく、同時に係合素子が抜け落ちたり、引き出されたりせずに、その形態を長期にわたって維持でき、しかも背面側の触感が柔らかで肌に優しい繊維製の面ファスナーを提供することにある。
本発明の他の目的は、以下の説明によって更に明らかにされる。
【0010】
【発明を解決するための手段及び作用効果】
かかる目的は、本件の請求項1〜請求項8に係る発明によって達成できる。
これらの発明にあって、最も基本的な構成は、地組織から構成される基材織編物の織編成と同時に織り込まれ又は編み込まれ、同織編物の表面から突出する多数の係合素子を有する面ファスナーにおいて、前記地組織を構成する経糸の一部の経糸が前記基材織編物の背面に浮き上がって織り込まれ又は編み込まれて、前記一部の経糸をもって同基材織編物の裏面の略全面を被覆してなることを特徴としている。
【0011】
前記一部の経糸を基材織編物の背面に浮き上がって織り込むには、紋織により織物の片面に自由な織模様や織柄を作りだすことができる各種のドビー織機を使えばよい。勿論、通常の二重織構造によっても作成できる。一方、一部の経糸を基材織編物の背面に浮き上がらせて編み込むには、前後の針床を備えたダブル経編機や横編機を使うことができる。本発明にあっては、これら一部の経糸が基材織編物の裏面の略全面を被覆するようにして、織り込まれ又は編み込まれる。
【0012】
前記一部の経糸としては、柔軟性に優れた各種加工糸を使うことが好ましく、例えば請求項2にも挙げたとおり、嵩高加工が施されたナイロン系やアクリル系などの柔軟性の高い合成樹脂からなるマルチフィラメントからなる加工糸が好ましい。或いは吸湿性が求められる場合には、各種のセルロース繊維からなる加工糸を使うことも可能である。いずれにしても、これらの加工糸に他の経糸よりも太い糸を使うことが基材織編物の裏面を被覆するため好ましい。
【0013】
面ファスナーの地組織を構成する基材が織物である場合には、加工糸以外の経糸については可能な限り織密度を高くして織成し、その間の適当な箇所に加工糸を織り込むようにする。このとき、一本の緯糸の表面を跨いだのち、複数本の緯糸の裏面側を跨ぐように飛ばして、面ファスナーの裏面に浮き上がらせる。この一本の緯糸の表面を跨ぐ加工糸の位置と同加工糸に隣接する加工糸が一本の緯糸の表面を跨ぐ位置とは同じ位置ではなく、緯糸一本ずつ経糸方向にずらして跨ぐようにさせることが、面ファスナーの裏面の全体を均一に被覆することができるため好ましい。前記緯糸の表面を跨ぐ加工糸の位置を織物全面にわたってランダムに分散させることもできる。
【0014】
面ファスナーの地組織を構成する基材が編物である場合には、加工糸以外の係合素子を形成するループ糸を含めた編糸構造を、前後いずかの針床を使って主に編成し、加工糸については反対側の後前針床のいずれかを使って編成する。勿論、加工糸を表裏面側と結合させる必要があるため、面ファスナーの裏面を編成する後前いずれかの針床において複数のコースを飛ばしたのち、反対側の前後いずれかの針床に配された編針に絡ませて、地組織の表面側の編糸と一緒に編み込む。この地組織の編成の間に、係合素子用のループ糸が表面側にループを形成しながら面ファスナーの表面側を編成する編糸に一緒に編み込まれる。
【0015】
こうして、織編成されたループ織物又は編物のループが形成された側とは反対側の組織に加工糸の一部が結合されて、加工糸はその結合された一部を除いて面ファスナーの裏面側に全て浮き上がって表出し、面ファスナーの略裏面全体を覆うようになる。その結果、加工糸が表出する面ファスナーの裏面は、柔軟性と嵩高性に優れた極めてソフトな感触が得られる。このとき、前記地組織を構成する全経糸に対する加工糸の重量割合を35〜60%に設定することが、面ファスナーの柔軟性確保するとともに、裏面のソフト感を得るために必要である。
【0016】
また、本発明にあっては前記地組織を構成する経糸が更に他の構成糸材料よりも融点が低い熱溶着糸を含み、加熱処理により溶着する熱溶着糸材料をもって、その周辺部の糸条同士を接合することもできる。本発明にあって、例えば更に柔軟性と薄さを要求される場合には、上述のごとく、単なる織編組織だけでループ糸の形態を固定することが難しくなる。このような場合に、経糸として一部に熱溶着糸を配して地組織を織編成したのち、その織編物を加熱して熱溶着糸を溶融し、その溶着糸材料をもって周辺の構成糸間及び単繊維(フィラメント)間を接合する。このとき、熱溶着糸が完全に溶融して液状となって周辺の構成糸間及び単繊維(フィラメント)間を接合させるようにしても、或いは熱溶着糸が半溶融状態となり、その表面の溶融部分を周辺の構成糸間及び単繊維(フィラメント)に溶着させるようにすることもできる。
【0017】
このとき、当然に加工糸は面ファスナーの裏面に浮き上がりその全体を被覆しているため、前記溶着糸材料は加工糸を透過して外部にまで表出することはなく、その面ファスナーの表面側の織編組織と接触する構成繊維の一部が面ファスナーの表面側の織編組織と前記溶着糸材料を介して接合されるに過ぎない。このため、製品とされたのちの面ファスナーの裏面は相変わらずソフト感に優れたものとなっている。しかも、従来のバックコーティングと異なり、面ファスナーの基材織編物のごとく大量のバックコーティング用樹脂を使用する必要がなく、基材の内部で効率的に構成糸間を接合するため、柔軟性を損なうこともない。
【0018】
ところで、本発明のように面ファスナーの裏面に、例えば嵩高加工が施されたマルチフィラメントからなる加工糸を浮き上がらせて織編成する場合に、その浮き上がり量が多いと、周辺物や指先などが僅かに引っ掛かっただけでも、簡単に単繊維(フィラメント)に分離して切断しやすい。通常の合成樹脂繊維製の面ファスナーは、量産のために複数本の面ファスナーテープ分を一緒に織編成して広幅の織編物からなる原反を得たのち、所要のテープ幅に切断することが多い。この切断には、切断後の糸のほぐれを防ぐため、高周波や超音波を使った溶着切断、或いは加熱による溶着切断が使われるのが一般的である。
【0019】
しかるに、このような溶着切断によると、その切断端が相当に硬くなり、これが肌に当たると、場合によっては傷を付けるとも限らない。そこで、本発明にあっては広幅のループ織編物を面ファスナー単位の幅に切断するにあたり、前述のごとき溶断によらずにカッターなどによる通常の剪断によろうと考えた。しかしながら、上述の織編組織では切断部(耳部)においても裏面の浮き上がり量が多くなりすぎて、指先などが僅かに引っ掛かっただけで浮き上がっている糸が容易にほぐれやすく、毛羽断ちがひどくなり、製品として実用に耐えないものとなってしまう。そこで本発明では、前記基材織編物の緯糸又はコースを屈曲して跨ぎ背面に浮き上がる加工糸の、耳部における浮上り回数(屈曲)を主体部における浮上り回数(屈曲部)の2倍以上に設定することが好ましい。かかる構成を採用することにより、耳部における裏面の浮き上がり量が少なくなり、簡単にはほぐれないようになる。この場合、既述したように耳部に配される経糸の一部に熱溶着糸を配することにより、更にそのほぐれを無くすことができる。
【0020】
本発明における前記係合素子はループからなる雌係合素子単独であっても、或いはフック状又はきのこ状の雄係合素子単独であってもよく、更には多数の係合素子がループからなる雌係合素子とフック状又はきのこ状の雄係合素子とからなり、それらの係合素子が混在する繊維製面ファスナーであってもよい。更に本発明にあっても、基材織編物の係合素子が形成される表面側の地組織として、上記特許文献3と同様に経糸による絡み組織を採用すれば、さらに面ファスナーとしての形態が安定し、所要の係合強度や剥離強度を得ることができるため好ましい。
【0021】
【発明の実施形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を図示実施例に基づき具体的に説明する。
図1及び図2は、本発明に係る織成面ファスナーの織物構造を備えた典型的な実施例を模式的に示す織組織図である。同実施例は前記織成面ファスナーが地組織をなす基材織物の一表面に多数のマルチフィラメント糸からなるパイルが形成された雌面ファスナーの例を挙げている。同図において、符号10は基材織物、11〜14はパイル形成側表面の地組織を構成する第1〜第4の4本の経糸、15は本発明の特徴部の一部をなすパイル形成側とは反対側の地組織裏面に浮き上がる加工糸を示しており、符号16及び17は本発明の特徴部の更に一部を構成し、パイル形成側表面の地組織の一部となる第1及び第2の熱溶着糸を示している。また、符号18は地組織の表面に形成されるパイル用の経糸(パイル糸)を示し、マルチフィラメントから構成される。なお、符号19は緯糸を示している。
【0022】
本実施例にあって、前記地組織の通常の経糸11〜14、経糸の一部を構成する加工糸15及び熱溶着糸16,17、パイル糸18、緯糸19の全てがナイロン系樹脂からなるマルチフィラメントにより構成されている。勿論、本発明にあってはナイロン製のマルチフィラメントに限らず、例えばポリエステル、アクリル、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂を単独で又は組み合わせて使うことができ、或いはこれらの樹脂からなるフィラメントにセルロース繊維などを組み合わせて使うこともできる。更には、係合素子が雄係合素子である場合には、パイル糸として前述の各種合成樹脂材料からなるモノフィラメントが使われる。
【0023】
本実施例では、図1及び図2に示すように、地組織に使う経糸としては第1〜第4の通常経糸11〜14、加工糸15、第1及び第2の熱溶着糸16,17とパイル糸18の5種類が使われ、面ファスナーの一単位ごとに表面にパイルが形成された主体部Aとその幅方向の両側に形成された耳部Bとから構成される。主体部Aの地組織は、図1に示すように、左から第1の経糸11、第1の熱溶着糸16、第2の経糸12、加工糸15、第3及び第4の経糸13,14、第2の熱溶着糸17の順に配されている。第1、第2及び第4の経糸11,12,14の経方向の走行は、隣接する緯糸19間を一本ずつ潜ったあとで跨ぐ動作を繰り返しており、熱溶着糸16は前記第1の経糸11が緯糸19を潜るとき同緯糸18を跨ぎ、第1の経糸11が緯糸19を跨ぐときに潜る動作を繰り返して織成される。第3の経糸13は前記熱溶着糸16,17と同じ動作を繰り返す。
【0024】
上記係合素子用のパイル糸18は、第1の熱溶着糸16と第2の経糸12との間を第1の熱溶着糸16と同様に緯糸19の下を潜り、これに隣接する緯糸19を1本飛ばしてパイルを形成しながら第2〜第4の3本の経糸12〜14を斜めに跨いだのち、第4の経糸14と第2の熱溶着糸17との間で更に隣接する緯糸19の下を潜り、次位の緯糸19を跨いだのち次の緯糸19の下を潜ったのち第4〜第2の3本の経糸14〜12を斜めに跨いだのち、第1の熱溶着糸16と第2の経糸12との間で次位の緯糸19の下を潜ってから次の緯糸19を跨ぎ、更に次位の緯糸19と第2〜第4の経糸12〜14をパイルを形成しながら斜めに跨ぐ動作を繰り返して経糸方向に走行する。
【0025】
上記加工糸15は上記第2の経糸12と第3の経糸13との間に配され、1本の緯糸19を跨いだのち、11本の緯糸19の下を潜って12本目の緯糸19の上を跨ぐ動作を繰り返している。また、前記加工糸15と織幅方向で隣接する加工糸15の緯糸19を跨ぐ位置は、先の加工糸15の緯糸19を跨いだ位置から経糸方向に6本飛んだ緯糸19の位置であり、これが交互に繰り返される。なお、本実施例では前記加工糸15は2本のマルチフィラメントからなる加工糸から構成されており、その合計の糸太さを、例えば470dtexとしている。因みに、このとき主体部Aにおける通常のマルチフィラメントからなる第1〜第3の各経糸11〜14の糸太さは155dtex、低融点のマルチフィラメントからなる第1及び第2の熱溶着糸16,17の各糸太さは220dtex、マルチフィラメントからなるパイル糸18の各糸太さは235dtexに設定されている。
【0026】
上記耳部の織組織は、上記第1及び第4の経糸11〜14と同様の経糸11〜14が使われて平織組織にて織成されており、その第2及び第3の経糸12,13の間に上記加工糸15と同様の1本の加工糸15と、上記熱溶着糸16と同様の1本の熱溶着糸16が隣接して配され、熱溶着糸16は第3の経糸13とは逆の動作を繰り返して織り込まれており、加工糸15は主体部Aとは異なり、上述の緯糸5本を下に潜ったのち6本目の緯糸19のパイル形成側表面を跨ぐ動作を繰り返して織り込まれている。こうして得られる面ファスナーの一単位ごとに使われる地組織を構成する第1〜第4の経糸11〜14の総本数は130本、加工糸の総本数は33本、熱溶着糸16,17の総本数は62本となっている。
【0027】
なお、上記第1実施例と同様の織組織を使って、基材織物10の表面に多数のフック片やきのこ状の雄係合素子を形成することも可能である。ただし、この場合には、上記パイル糸18として合成樹脂からなるモノフィラメントが使われる。因みに、このときのパイル糸18を除く全ての糸の太さは、上記第1実施例に対応しており、パイル糸18の太さは360dtexとされる。織成後に加熱処理がなされたのち、前記パイル糸18により形成されたパイルの側部を一部切断してフック片を形成し、或いはパイル糸の頂部を切断したのち、その先端部を加熱して半球状又は球状の係合頭部を形成して、雄係合素子を形成する。
【0028】
以上の構成にあって、面ファスナーテープ10の原反が織成されると、表面に多数のパイルが形成され、その裏面に浮き上がって織り込まれた加工糸15により裏面の全体が被覆された形態を備えるようになる。このような浮き組織の織成は、従来の織り模様や織り柄と同様に、ドビー織機を使えば容易に織成することができる。この織成に続いて、熱溶着糸16,17の融点よりも高温で、且つ他の構成糸の融点よりも低い温度(本実施例にあっては100℃程度)の染色液に投入されて染色される。この染色時に、前記熱溶着糸16,17は溶融して周辺の構成糸(経糸及び緯糸)とその構成単繊維間に浸入して互いを接合して、パイルの基端部及び地組織の織形態が固定され、パイルの抜脱や引出しも完全に防がれる。
【0029】
しかしながら、この接合も面ファスナーの裏面側に浮き上がって織られた加工糸15の表面までは及ばず、そのソフトな感触を阻害することもない。また、耳部Bにおいても、裏面側に浮いて織られた加工糸15が6本の緯糸19ごとに屈曲してパイル形成側とは反対側の表面にて緯糸19の下に潜り、地組織による結合が主体部Aよりもその接合部が2倍とされるため、前記熱溶着糸16による溶着と相まって、耳部Bにおける加工糸15の繊維ほぐれが殆ど発生せず、長期にわたって安定した形態を維持する。
【0030】
図3は本発明の第2実施例である編糸を使った面ファスナーの編構造例を示す平面図であり、図4は各編糸の編組織を示し、図5は同組織のうち緯挿入糸を省いた編構造を示す部分斜視図である。図5は理解をしやすくするため、編糸の太さを種類ごとに変えるとともに、その編密度を粗くして示しているが、編糸の太さは用途により任意に設定することができ、その編糸同士の間隔も実際にはもっと密になっている。更に図示は省略しているが、図示する編糸に加えて第1実施例と同様に熱溶着糸を加えることができる。そのときの熱溶着糸の編組織は、用途及び他の編糸組織により任意に決めればよい。
【0031】
本実施例にあっては、これらの図に示すとおり、前筬と後筬を使ったダブル経編機を使っており、本実施例における編糸は、基本構造として前後の全てのニードルを使って編成する鎖編糸111、フロントニードルを飛ばしてバックニードルだけを使って0−2/2−2/2−4/2−2/2−4/2−2/0−2の繰り返し組織によりバックパイルを形成するパイル編糸112と、前記鎖編糸111の隣接するコース上に形成されるバックニードルによる編目に交絡させて交互に折り返し、4ウェール間を緯方向に順次挿入される緯挿入糸113とから構成されており、これらの編糸により面ファスナーのパイル形成側の地組織を形成している。一方、本実施例における加工糸114は、全ての同一ウェール上にてバックニードルを飛ばすとともに、一針おきにフロントニードルに交絡させてニードルループを形成する0−0/0−2/2−2/2−2/2−2/2−0の繰り返し組織をもって経糸方向の浮き編みを形成している。
【0032】
以上の説明からも理解できるように、上記第2及び第3実施例では面ファスナーの係合素子形成側とは反対側の裏面に表出して、同裏面の全体を被覆する加工糸114は、その加工糸114の表出方向がコース方向とウェール方向との差はあるものの、面ファスナーの係合素子形成側とは反対側の裏面に浮き上がらせて編み込まれるため、上記第1実施例と同様の作用効果を奏するようになる。特に、これらの第2及び第3実施例では織組織ではなく各編糸がループ(編目)をもって絡まっているため、編構造に基づき糸抜けが少なく、通常であれば熱溶融糸を使う必要がない。しかしながら、その編み形状を安定化するには、上記第1実施例と同様に熱溶着糸を編み込むことが好ましい。この場合も、上記第2及び第3実施例では、熱溶着糸をバックニードルにて編成することにより、面ファスナーの裏面側表面に浮き上がらせて編み込まれる加工糸のソフト感を損なうことがない。
【0033】
また、これらの実施にあっても、加工糸には他の編糸と異なりより柔軟性とソフト感が要求されるため、材質はともかくとしても通常の嵩高加工が施されたマルチフィラメントからなる太い糸を使うことが好ましい。このときの鎖編糸111の総重量に対する加工糸114の総重量の割合を35〜60%の範囲とすることが好ましい。35%以下であると面ファスナーの裏面に浮き上がる加工糸の量が少なくなりすぎて、表面側の地組織の一部が裏面側に露呈し、ソフト感が不十分となる。また60%以上では面ファスナーの裏面に浮き上がる加工糸の量が多くなりすぎて、面ファスナーとしての厚みが増して違和感が増加し、或いは編成が難しくなり安定した編成が出来なくなることがある。
【0034】
以上の説明は、本発明の好適な実施例を説明したものであり、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、例えば面ファスナーの表面に形成される係合素子は、雌係合素子又は雄係合素子が単独で形成されるだけでなく、雄係合素子と雌係合素子とを混在させて形成することもできる。その場合には、雄係合素子と雌係合素子とを織編物の幅方向に交互に配するようにすると、織編成後のパイルの加工がしやすくなるため好ましい。また、上述の具体的数値で示した糸太さや重量割合も単なる一例を上げたに過ぎず、それらの数値も本発明の精神を損なわないかぎり任意に選定し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例である雌面ファスナーの織構造を模式的に示す部分平面図である。
【図2】同雌面ファスナーの各種の構成糸の交絡状態を模式的に示す部分側面図である。
【図3】本発明の第2実施例である雌面ファスナー主体部の編構造を示す組織図である。
【図4】同雌面ファスナーの編糸ごとの編組織図である。
【図5】同組織のうち緯挿入糸の図示を省略した編構造を示す部分斜視図である。
【符号の説明】
10 基材織物
11〜14 第1〜第4の経糸(通常経糸)
15 加工糸
16,17 熱溶着糸
18 パイル糸
19 緯糸
111 鎖編糸
112 パイル編糸
113 緯挿入糸
114 加工糸




 

 


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