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発明の名称 原子炉構造材料の光触媒皮膜形成方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2003−139891(P2003−139891A)
公開日 平成15年5月14日(2003.5.14)
出願番号 特願2001−340143(P2001−340143)
出願日 平成13年11月6日(2001.11.6)
代理人 【識別番号】100087332
【弁理士】
【氏名又は名称】猪股 祥晃 (外2名)
【テーマコード(参考)】
4G069
4K062
【Fターム(参考)】
4G069 AA02 AA03 BA02A BA02B BA04A BA04B BA21C BA48A BB01C BB02A BB02B BC70A BC71A BC71B BC72A BC75A BC75B BD01C BD06C BE08C CD10 EA07 EB15X EB15Y FA03 FA04 FB06 FB23 FB24 FB77 FC04 FC08 
4K062 AA01 AA03 BA14 BA20 BB04 BB06 BB12 BC16 CA02 CA05 DA05 FA20
発明者 村上 一男 / 大里 哲夫 / 市川 長佳 / 逸見 幸雄 / 高木 純一 / 四柳 端 / 岡村 雅人
要約 課題
原子炉冷却水の水質基準および管理目標値に対応した光触媒皮膜を原子炉構造材料面に均一に形成し、原子炉運転中の腐食を低減する。

解決手段
溶液中に含有する光触媒の粒径、濃度、光触媒助剤濃度、分散剤とバインダーの割合、不純物濃度を制御する。光触媒はTiO2で、その皮膜の厚みを0.3μmから2μmに制御する。2μm以上になると酸化チタンにおいて光触媒反応で励起した電子と正孔が再結合反応し、材料の電位は徐々に上昇し、0.3μmを下回ると粒界応力腐食割れ防止を抑制するので望ましくない。
特許請求の範囲
【請求項1】 原子炉構造材料に光触媒を構成する成分を注入して前記原子炉構造材料に前記光触媒の皮膜を形成する方法において、前記注入する光触媒の粒径、前記光触媒の薬剤に含まれる分散剤、バインダーおよび不純物の割合を規定し、原子炉水への注入の場合には前記原子炉水中での光触媒の濃度を制御するか、または塗布、噴霧法により注入の場合には塗布、噴霧溶液中での光触媒の濃度を制御することを特徴とする原子炉構造材料の光触媒皮膜形成方法。
【請求項2】 前記光触媒はTiO2であり、このTiO2の皮膜厚みは、0.1μmから10μmに制御されることを特徴とする請求項1記載の原子炉構造材料の光触媒皮膜形成方法。
【請求項3】 前記光触媒の粒径は20nm以下(ただし、0を含まず)に制御されていることを特徴とする請求項1または2記載の原子炉構造材料の光触媒皮膜形成方法。
【請求項4】 前記光触媒の表面にPt、Rh、RuまたはPdの少なくとも一種の光触媒助剤が0.05%〜3%付着されていることを特徴とする請求項1記載の原子炉構造材料の光触媒皮膜形成方法。
【請求項5】 前記光触媒の濃度は10%以下(ただし、0を含まず)に制御されることを特徴とする請求項1記載の原子炉構造材料の光触媒皮膜形成方法。
【請求項6】 前記原子炉水中に光触媒含有溶液を注入するにあたり、原子炉の定常運転時に連続注入する場合には500ppb以下に、起動時および停止時のトランジェント時に注入する場合には10ppb以下に前記光触媒を濃度制御することを特徴とする請求項1記載の原子炉構造材料の光触媒皮膜形成方法。
【請求項7】 前記光触媒の凝集を抑制する分散剤はアンモニアまたはカルボン酸からなり、前記分散剤の濃度を前記光触媒に対して3.4%以下(ただし、0を含まず)に制御することを特徴とする請求項1記載の原子炉構造材料の光触媒皮膜形成方法。
【請求項8】 前記光触媒の皮膜形成を促進するためのバインダーを前記光触媒に対して2.5%から0.01%に制御することを特徴とする請求項1記載の原子炉構造材料の光触媒皮膜形成方法。
【請求項9】 請求項6において、請求項8記載のバインダーを1ppm以下に制御することを特徴とする請求項6記載の原子炉構造材料の光触媒皮膜形成方法。
【請求項10】 前記光触媒、前記分散剤および前記バインダーを原子炉運転時の原子炉水中で有害不純物のCl-またはSO42-を0.05ppb以下にして前記原子炉通常運転時の基準値以下に制御することを特徴とする請求項1記載の原子炉構造材料の光触媒皮膜形成方法。
【請求項11】 原子炉運転時の原子炉水の導電率が前記原子炉通常運転時の基準値である0.1μS/cmとなるように制御することを特徴とする請求項2から10の何れかに記載の原子炉構造材料の光触媒皮膜形成方法。
【請求項12】 請求項6において、原子炉の水質が通常運転時として定められた基準から除外される起動時、中間停止時、最終停止時の期間に前記光触媒を付着させることを特徴とする請求項6記載の原子炉構造材料の光触媒皮膜形成方法。
【請求項13】 請求項12に記載した期間に請求項6に記載した方法により光触媒皮膜を形成するにあたり、前記原子炉運転時の原子炉水中で有害不純物であるCl-、SO42-の濃度を5ppb以下、導電率を1μS/cm以下に制御することを特徴とする請求項12記載の原子炉構造材料の光触媒皮膜形成方法。
【請求項14】 請求項6に記載した方法で請求項11から13までの基準を満たすために、前記原子炉水中の光触媒および不純物の濃度、導電率、pHを測定する計測系を設け、その計測系のデータを注入システム、温度、流量、流路、浄化系流量の制御系にフィードバックすることを特徴とする請求項6記載の原子炉構造材料の光触媒皮膜形成方法。
【請求項15】 請求項6において、前記原子炉水をサンプリングし、このサンプリングした原子炉水中に試験片を浸漬し、この試験片への光触媒の付着量を注入システム、温度、流量、流路を有する制御系にフィードバックすることを特徴とする請求項6記載の原子炉構造材料の光触媒皮膜形成方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、原子力発電プラントの原子炉一次系材料の腐食抑制のために、原子炉構造材料面に光触媒皮膜を形成する原子炉構造材料の光触媒皮膜形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】沸騰水型原子力(BWR)発電所においては、放射線場で水の放射線分解により生成した酸素,過酸化水素等が原子炉水中に存在する。原子炉構造材料であるステンレス鋼やニッケル基金属は原子炉のような高温環境下では、酸素,過酸化水素の存在下で応力腐食割れを起こすことが知られている。
【0003】この対策のために、給水から水素を注入して原子炉水中の酸素,過酸化水素を低減させる水素注入技術が国内外のいくつかの原子力プラントで行われている。酸素,過酸化水素の低減の効果は材料の腐食電位に現れ、腐食電位が低下する。応力腐食割れの発生や割れ亀裂の進展はこの腐食電位に依存しており、電位が低いほど割れの発生や亀裂の進展が抑制される。
【0004】水素注入はこのような背景により実施されているが、弊害としてタービン系の線量率の上昇がある。これは核反応で生成したN-16が水素と反応して揮発性のアンモニアとなり蒸気系へ移行しやすくなるためである。また、水素注入においても、注入した水素により生ずるオフガス系の過剰水素を、酸素を注入して再結合させる等の様々な設備が必要となってくる。
【0005】この弊害を極力少なくし、なおかつ構造材料の腐食電位を低下させるために近年、貴金属を原子炉水へ添加し、構造材料へ貴金属を付着させ少量の水素注入で腐食電位を低下させる方法が提案されている。これは白金等の貴金属は電位の低い水素の可逆反応を選択的に捕らえる性質を利用したもので、貴金属を構造材料に付着させることにより、少量の水素注入で腐食電位の低下を図るものである。
【0006】しかしながら、この方法を実プラントで実施する場合,燃料のジルコニウム酸化皮膜上にも付着するため、燃料材料の酸化および水素化が増大することがわかった。また、N-16のタービン系への移行増加による線量率の上昇などの問題を抱えている。不純物を含む貴金属薬剤を高濃度に使用するための水質悪化による燃料材料の健全性に与える影響も問題となる。
【0007】これらの影響、すなわち、従来の貴金属注入技術は水質保全および放射能の移行低減および燃料の高燃焼度化に対し負の作用を及ぼすため、貴金属の注入量を少なくするとともに、高価な貴金属の使用量を少なくするか、または貴金属にかわる物質の開発が重要となっている。
【0008】腐食電位を低減させる方法として、光触媒の反応を利用することが最近注目されている。材料表面に光触媒を配置し、そこに紫外線近傍の波長を持つ光を照射すると、光励起反応によって活性化した電子の作用によって腐食電位が低減することがわかっている。この反応は光触媒近傍に貴金属があることによって効率よく進み、腐食電位が下がる。
【0009】この反応を利用することによって、構造材料表面にあらかじめ光触媒ないし貴金属を付着させた光触媒高機能を付着させ、炉心で発生するチェレンコフ光の光を利用して運転中の腐食電位を低減することができる。
【0010】本発明者らは水冷却原子炉一次系材料の腐食抑制方法として、従来技術である水素注入,貴金属コロイド粒子を材料表面に付着させかつ水素注入を実施する方法およびZrO2などの絶縁皮膜を材料表面に形成させる方法にかわる光触媒法を特開2001−4789号として特許出願し、公開された。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】光触媒を原子炉構造材料に塗布,噴霧する,または原子炉水中に注入して原子炉構造材料に光触媒の皮膜を形成させる場合、形成した皮膜の厚みにより腐食電位がどのように影響するかが課題となる。
【0012】本発明は上記課題を解決するためになされたもので、光触媒を原子炉に十分な効果を期待できるように光触媒の皮膜形成を行う方法として、光触媒を担保しながら原子炉健全性の観点から設定されている水質基準を満足させる不純物濃度を制御して、光触媒皮膜を原子炉構造材料面に均一に形成させることができる原子炉構造材料への光触媒皮膜形成方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、原子炉構造材料に光触媒を構成する成分を注入して前記原子炉構造材料に前記光触媒の皮膜を形成する方法において、前記注入する光触媒の粒径、前記光触媒の薬剤に含まれる分散剤、バインダーおよび不純物の割合を規定し、原子炉水への注入の場合には前記原子炉水中での光触媒の濃度を制御するか、または塗布、噴霧法により注入の場合には塗布、噴霧溶液中での光触媒の濃度を制御することを特徴とする。
【0014】請求項1の発明によれば、原子炉健全性の観点から設定されている原子炉水、つまり原子炉冷却水の水質基準および管理目標値に影響することなく、原子炉構造材料面に原子炉内に存在する光や放射線の照射により電流が流れる光励起特性を有する高性能光触媒の皮膜を均一に形成することができる。
【0015】この光触媒皮膜によって原子炉構造材料の応力腐食割れ等の腐食を防止することができ、もって、原子炉プラントの長寿命化、安定運転などをはかることができる。
【0016】請求項2に係る発明は、請求項1において、前記光触媒はTiO2(酸化チタン)であり、このTiO2の皮膜厚みは、0.1μmから10μmに制御されることを特徴とする。
【0017】請求項2の発明において、光触媒としてのTiO2の皮膜厚さを0.1μmから10μmに選択することにより、粒界応力腐食割れ防止を抑制するための材料の電位−230mV以下を十分満足できる。皮膜厚さが0.1μm未満では粒界応力腐食割れ防止を抑制するための材料の電位−230mVを満足できなくなり、一方、皮膜厚さが10μmを超えると同様に材料の電位を満足できなくなり、好ましくない。なお、好ましくは0.3μmから2μmに制御する。
【0018】請求項3に係る発明は、請求項1または2において、前記光触媒の粒径は20nm以下(ただし、0を含まず)に制御されていることを特徴とする。請求項3の発明において、光触媒としてのTiO2粒径を50nm以下に限定した理由は粒径が50nmを超えると、粒界応力腐食割れ防止を抑制するための材料の電位−230mV以下を満足しなくなるので、好ましくない。なお、好ましくは5nmから30nmに選択すると、光触媒性能を満足する結果が得られる。
【0019】請求項4に係る発明は、請求項1において、前記光触媒の表面にPt、Rh、RuまたはPdの少なくとも一種の光触媒助剤が0.05%〜3%付着されていることを特徴とする。
【0020】請求項4の発明によれば、光触媒としてのTiO2の表面にPtやRh等の光触媒助剤を0.05%から3%は付着させるが、0.05%未満では光触媒助剤としての効果が薄れ、3%を超えると酸化チタンへ照射される紫外線量の減少により光触媒反応が減少し粒界応力腐食割れを抑制する効果が薄れ、期待できない。
【0021】請求項5に係る発明は、請求項1において、前記光触媒の濃度は10%以下(ただし、0を含まず)に制御されることを特徴とする。請求項5の発明において、光触媒としてのTiO2濃度を10%以下に限定した理由は、濃度が10%を超えると、粒界応力腐食割れ防止を抑制するための材料の電位−230mV以下を満足しなくなる。なお、好ましくは5%以下に制御すると安定した電位が得られる。
【0022】請求項6に係る発明は、請求項1において、前記原子炉水中に光触媒含有溶液を注入するにあたり、原子炉の定常運転時に連続注入する場合には500ppb以下に、起動時および停止時のトランジェント時に注入する場合には10ppb以下に前記光触媒を濃度制御することを特徴とする。
【0023】請求項6の発明において、原子炉水中に光触媒としてのTiO2を構成する成分を注入するにあたり、定常運転時に連続注入する場合には500ppb以下に、起動時、停止時のトランジェント時には10ppm以下に制御する。定常運転注入時のTiO2濃度を500ppb以下に限定した理由はつぎのとおりである。
【0024】水質基準によって制限を受け、市販されているTiO2溶液中の塩素や硫酸イオン不純物はTiO2に対して1/100程度である。このため、原子炉水中へのTiO2の濃度は最大で500ppbである。
【0025】500ppbを超えると、TiO2皮膜形成の効果は期待できない。一方、10ppm以下に制御する理由は、トランジェント注入時には不純物イオンの基準が20倍になり、導電率は10倍になるため、それぞれTiO2の基準への影響は10ppmとなることに基いている。TiO2の濃度が10ppmを超えると最適な皮膜を形成することが困難となる。
【0026】請求項7に係る発明は、請求項1において、前記光触媒の凝集を抑制する分散剤はアンモニアおよびカルボン酸からなり、前記分散剤の濃度を前記光触媒に対して3.4%以下(ただし、0を含まず)に制御することを特徴とする。
【0027】請求項7の発明において、光触媒のTiO2の凝集を抑制する分散剤としてアンモニアまたはカルボン酸を使用した場合の分散剤の濃度をTiO2に対して3.4%以下に限定した理由は原子炉一次系における不純物を除去するためのイオン交換樹脂によるクリンナップ浄化効果を考慮すると、応力腐食割れを起こすことはなく良好な状態を保つことができるが、3.4%を超えた場合には良好な状態を保つ効果が期待できないのでより好ましくない。好ましくは1%以下に制御する。
【0028】請求項8に係る発明は、請求項1において、前記光触媒の皮膜を機械的に形成させ、その皮膜形成を促進するためのバインダーを前記光触媒に対して2.5%から0.02%に制御することを特徴とする。
【0029】請求項8の発明において、光触媒のTiO2皮膜形成を促進するためのバインダーをTiO2に対して2.5%から0.01%に制御する理由は、0.01%未満では皮膜を形成するための密着性が乏しくなり、均一な皮膜形成を困難にし、粒界応力腐食割れ防止を抑制するための材料の電位−230mV以下を満足しなくなる。一方、2.5%を超えると導電率が上昇して粒界応力腐食割れ防止を抑制するための材料の電位を満足しなくなる。なお、好ましくは0.02%以上に制御する。
【0030】請求項9に係る発明は、請求項6記載の皮膜形成方法において、請求項8記載のバインダーを1ppm以下に制御することを特徴とする。請求項9の発明において、請求項8のバインダーが原子炉水中で1ppm以下に制御する理由は、バインダーの濃度が増加するにつれてTiO2の付着量は増加するが、腐食電位が低下することに基いている。原子炉水中のTiO2濃度とバインダー濃度を制御することによって最適な皮膜を効率よく形成することはできるが、1ppmを超えると材料の電位が上昇するので好ましくない。
【0031】請求項10に係る発明は、請求項1において、前記光触媒、前記分散剤および前記バインダーを原子炉運転時の原子炉水中で有害不純物のCl-またはSO42-を0.05ppb以下にして前記原子炉通常運転時の基準値以下に制御することを特徴とする。
【0032】請求項10の発明において、光触媒のTiO2,TiOの凝集を抑制する分散剤、TiO2の皮膜形成を促進するためのバインダ、不純濃度を、原子炉運転時の原子炉水中で代表的な有害不純物であるCl-またはSO42-を0.05ppb以下にし、原子炉通常運転時の基準以下となるように制御する理由は原子炉水の水質に影響する課題を解決することにある。すなわち、TiO2に対する塩素、硫酸割合が0.022%を超えると原子炉水の水質管理目標値の5ppbを上回る。そこで、原子炉構造材料にTiO2皮膜を施す際のTiO2溶液中の塩素、硫酸濃度をTiO2に対して0.5ppbいかに制御することにより上記課題を解決できる。
【0033】請求項11に係る発明は、請求項2から10において、原子炉運転時の原子炉水の導電率が前記原子炉通常運転時の基準値である0.1μS/cmとなるように制御することを特徴とする。
【0034】請求項11の発明によれば、原子炉の健全性を損うことなく、原子炉構造材料にTiO2の皮膜を形成することができる。また、原子炉運転中の原子炉水中の導電率を原子炉通常運転時の基準である0.1μS/cmとなる制御する理由は原子炉構造材料にTiO2皮膜を形成する際の原子炉水質の基準を上回らないようにすることによる。
【0035】請求項12に係る発明は、請求項6において、原子炉の水質が通常運転時として定められた基準から除外される起動時、中間停止時、最終停止時の期間に前記光触媒を付着させることを特徴とする。
【0036】請求項12の発明によれば、短い期間中に導電率10μS/cm,塩素、硫酸濃度をそれぞれ100ppb以下以下の基準に合わせて注入することができる。すなわち、原子炉の水質が通常運転時として定められた基準から除外される起動時、中間停止時、停止時等の期間に注入すれば、基準が適用されることとなる。また、合計の期間が規定の時間以下ならば注入することもできる。注入する場合には注入濃度や運転モードを制御する。また注入中の水質をモニターしてその値を制御する。
【0037】請求項13に係る発明は、請求項12において、前記原子炉運転時の原子炉水中不純物であるCl-、SO42-の濃度を5ppb以下、導電率を1μS/cm以下に制御することを特徴とする。
【0038】原子炉の材料健全性の観点で定められている原子炉水の水質基準は概ね導電率1μS/cm,塩素、硫酸濃度は100ppb以下であるが、運転期間中は導電率1μS/cm,塩素、硫酸濃度をそれぞれ5ppb以下とする。請求項13の発明によれば、これに合わせて注入することができる。
【0039】請求項14に係る発明は、請求項6において、原子炉水中の光触媒および不純物の濃度、導電率、pHを測定する計測系を備え、その計測系のデータを注入システム、温度、流量、流路、浄化系流量の制御系にフィードバックすることを特徴とする。
【0040】請求項14の発明によれば、原子炉の健全性を損うことなくTiO2の皮膜を原子炉構造材に形成することができる。また、TiO2濃度、電導度を監視しながら注入ポンプ、原子炉冷却材浄化系ポンプを制御することによって、水質規制を逸脱することなくTiO2を原子炉へ注入することができる。
【0041】請求項15に係る発明は、請求項6において、原子炉水中に浸漬された構造材料への光触媒の付着量を注入システム、温度、流量、流路を有する制御系にフィードバックすることを特徴とする。
【0042】請求項15の発明によれば、試験片のTiO2付着量と付着時間を考慮しながら、注入ポンプの流量を制御して原子炉構造材料面に最適なTiO2皮膜を形成することができる。また、試験片に付着したTiO2の付着厚さを監視しながら原子炉構造材料にTiO2を付着させることによって、付着厚さを目標値に制御することができる。
【0043】
【発明の実施の形態】原子炉健全性の観点から設定されている水質基準値は、様々な運転条件で定められているが、概ね導電率1μS/cmであり、塩素、硫酸、酸化シリカ濃度に対しては基準値および管理目標値が表1のように設定されている。
【0044】これに対して、酸化チタンを製造する方法としては、鉱物からチタンを抽出する際、大きくは塩酸による塩化チタン法と、硫酸による硫酸チタン法があり、これらから水酸化チタンなどの水和物に変化させ、その後酸化チタンを得ている。一般産業用に製作されている酸化チタンゾルは、塩素、硫酸などに対しての規制がなく溶液中に数%のオーダーで混入しており、塩素なり、硫酸は不純物として混入するのが一般的な現状である。
【0045】従って、酸化チタン皮膜量の増加は塩素、硫酸の量の増加を招く原因になるとともに、原子炉水質基準値を上回ることは原子炉を停止させる要因となる。同様に、酸化チタンを材料表面に化学的および機械的に安定化させるため、水に溶解しにくい酸化チタンを小さな粒子にして懸濁して使用する必要がある。このため、使用する以前には液体に安定的に分散させる必要がある。
【0046】一般産業用に製作されている酸化チタンゾル中の分散剤はおおよそ2%〜10%程度は混入しており、この分散に携わる薬剤も種類および濃度により原子炉水質基準である導電率を上昇させる。これらの薬剤としてはアンモニア、カルボン酸などがあり、これらにより導電率1μS/cmを担保するためには炉水中濃度として80ppb以下に制御しないと基準導電率を上昇させ原子炉を停止させる可能性がある。
【0047】さらに、酸化チタン皮膜の密着性を向上させる目的でバインダーを使用する必要がある。一般産業用に製作されている酸化チタンゾル中のバインダーは酸化チタンに対して20%程度は混入しており、上記分散剤同様にバインダー種類および濃度、溶液中のバインダーの安定を図る薬剤などにより、原子炉水質基準である導電率を上昇させる。
【0048】これらの薬剤としてはバインダーとしては無機の酸化シリカ、ポリオルガノシロキサンなどがある。酸化シリカについてはイオンとして炉水中に溶け出さないため導電率を上昇させることはないが、バインダーを安定させるためにエタノールなどを用いており、その濃度は40%にも及ぶものもある。
【0049】これらのアルコール類が分解して炭酸イオンとして炉水中に溶解した場合には、導電率1μS/cmを担保するためには炉水中濃度として1000ppb以下に制御しないと基準導電率の上昇により原子炉を停止させる要因となるうる可能性がある。
【0050】以上までに示した原子炉の材料健全性の観点から設定されている基準値(原子炉構造材面積と原子炉水量はプラント設計パラメータ)および管理目標値を表1に示し、市販されている光触媒の一つである酸化チタンの性状を表2に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】原子炉の構造材料表面に光触媒被膜を形成する方法としては、塗布や噴霧などによって機械的に行う方法と、原子炉の炉水中に光触媒を注入して化学的に皮膜形成させる方法とがある。機械的に行う方法では、必要な部位に塗布あるいは噴霧することから、プラントに影響を与えずに行うことが可能である。
【0054】しかし、広範囲に行う場合や手や機械が届きにくい所に適応する場合には、炉水中に光触媒を注入する方法をとれば一度に接液部全てに皮膜形成させることが可能である。このため、既設プラントに対して原子炉全体に光触媒の皮膜形成する方法としては注入方法を、溶接部など限られた部位に適応するのは機械的な皮膜形成方法をとるのが最も適当である。
【0055】本発明では、酸化チタン、分散剤、バインダーなどから混入する不純物の除去、分散剤あるいはバインダーを最適化させることにある。まず、酸化チタン、分散剤、バインダーなどから混入する不純物の除去については、一般産業で市販されている光触媒用酸化チタン溶液中の塩素(Cl-)、硫酸(SO42-)濃度が1〜10%あるものの、酸化チタンの製法上鉱物からチタンを抽出する塩化チタン法または硫酸チタン法において使用する薬剤の不純物制御を行う。
【0056】その後、水酸化チタンなどの水和物に変化させる際、使用する水を極力不純物のない純水を使用する。その後、酸化チタンに酸化させる場合にも環境雰囲気の制御を行った結果、酸化チタン溶液中の塩素、硫酸濃度を1ppm程度まで低減できる。
【0057】次に、分散剤の最適化については、前述したように一般的には酸化チタンに対して1%程度が最適とされているが、使用目的に応じて分散剤を制御する必要がある。これは、長い期間酸化チタンの凝集を防ぐ場合には上述した量が必要かと考えるが、保存期間および使用期間を限定した場合にはこのような多量の分散剤は必要ない。
【0058】そこで、酸化チタンに対する分散剤の割合と酸化チタンの分散状態を実験したところ、一ヶ月以上酸化チタンの凝集を防ぐ場合には、酸化チタンに対して分散剤の割合は1%程度必要であるが、2週間程度酸化チタンの凝集を防ぐ目的であれば、分散剤は酸化チタンに対して0.4%存在すればよいことが認められた。
【0059】また、酸化チタンの密着性を増加させるバインダーの最適化については、一般産業用で製作されている酸化チタンゾル中のバインダーは酸化チタンに対して20%程度は混入しているが、この濃度も使用目的に応じて制御されるべきである。
【0060】このため、酸化チタンに対するバインダー割合を変化させ皮膜を形成し、原子炉温度および圧力条件で皮膜強度の実験を行ったところ、バインダーの種類により多少の違いがあるものの、一般産業で使用されるバインダー量に対して1/200から1/20000まで原子炉温度および圧力条件で皮膜が剥離するような傾向がないことが認められた。
【0061】原子炉構造材料に塗布,噴霧するまたは原子炉水中に注入して光触媒皮膜を形成させる際、以下に示す手段をトータルで制御することにより均一な光触媒皮膜を原子炉水質に悪影響なく形成することができる。
【0062】原子炉構造材料へ形成する酸化チタン皮膜の厚みに対する粒界応力腐食割れ防止を抑制するための材料の電位を求め、光触媒性能が十分に発揮される酸化チタン皮膜の厚みを制御する。
【0063】酸化チタン皮膜を形成させる際の酸化チタン自身の粒径に対する腐食電位を求め、光触媒性能が十分に発揮される酸化チタンの粒径を制御する。酸化チタン皮膜を形成する際の酸化チタン濃度に対する腐食電位を求め、光触媒性能が十分に発揮される酸化チタン濃度を制御する。
【0064】酸化チタン皮膜を形成する際の酸化チタンの凝集を抑制する分散剤の割合に対する腐食電位を求め、また、酸化チタンと分散剤の割合に対する原子炉水導電率の影響から、光触媒性能が十分に発揮され、かつ材料健全性の観点から設定されている水質基準以下に保つことを目的として酸化チタンの凝集を防ぐ分散剤を制御する。
【0065】酸化チタン皮膜を形成する際の皮膜形成を促進するためのバインダーの割合に対する腐食電位を求め、また、酸化チタンとバインダーの割合およびバインダーに使用される安定化剤などを加味した原子炉水導電率の影響から、光触媒性能が十分に発揮され、かつ材料健全性の観点から設定されている水質基準以下に保つことを目的としてバインダーを制御する。
【0066】酸化チタン皮膜を形成する際、酸化チタン自身、酸化チタンの凝集を抑制する分散剤、皮膜形成を促進するためのバインダーおよびバインダーの安定化剤などにおいては、これら全てが材料健全性の観点から設定されている水質基準に影響を及ぼすため、これら不純物混入濃度を制御する。
【0067】原子炉の材料健全性の観点で定められている水質基準は,上記の通り概ね導電率10μS/cm、塩素、硫酸濃度をそれぞれ100ppb以下にする必要がある。ただし、運転期間中である場合はさらに厳しい水質基準が推奨されており、その値は導電率1μS/cm、塩素、硫酸濃度をそれぞれ5ppb以下である。
【0068】原子炉内に常時酸化チタンを注入しようとすると、この基準をクリアする必要があり、酸化チタンの濃度や分散剤やバインダーの濃度,不純物濃度を低減する必要がある。それに対して、短い期間であれば、導電率10μS/cm、塩素,硫酸濃度をそれぞれ100ppb以下の基準にあわせて注入することが可能である。
【0069】これらの基準が現在適用されているのは起動時,中間停止時,停止時であり、これらの期間に注入すればこの基準が適用されることになる。また、これらの期間でなくとも、合計の期間が規定の時間以下であれば注入することも可能である。
【0070】注入する場合には、上記の条件を満たすように注入濃度や運転モードを制御する必要がある。ほとんどの原子炉には導電率計やpH計が装備されており、またイオンクロマトグラフィー等の水質測定器によって各種イオンの炉水中濃度が測定できる。これらの他に酸化チタン濃度を測定できる装置などを追設して、注入中の水質をモニターし、その値を注入システムや原子炉運転システムにフィードバックして制御する。
【0071】本実施の形態によれば、光が照射されると防食効果を有する光触媒の皮膜厚み、粒径、濃度、分散剤、バインダー、不純物を制御することで、原子炉の水質基準に対応した高性能光触媒層を原子炉構造材料表面において均一な皮膜を形成させ、運転中の腐食を低減することが可能となる。
【0072】つぎに図1から図13により本発明に係る原子炉構造材料の光触媒形成方法の具体的な実施例を説明する。
(実施例1)実施例1は光触媒を原子炉構造材料に塗布,噴霧、または原子炉水中に注入して構造材料に皮膜を形成させ、形成した皮膜の厚みにより腐食電位がどのように影響するかを調べた実験例である。図1から明らかなように、酸化チタン皮膜の厚みが0.1μm〜10μmの範囲では、粒界応力腐食割れ防止を抑制するための材料の電位−230mV以下を十分満足していることがわかる。
【0073】また、0.3μm〜2μmの範囲では、材料の電位−300mVに維持されている。ただし、酸化チタン皮膜の厚みが2μm以上になると、酸化チタンにおいて光触媒反応で励起した電子と正孔が再結合を起こす反応により、粒界応力腐食割れ防止を抑制するための材料の電位は徐々に上昇している。
【0074】また、酸化チタン皮膜の厚みが0.1μmを下回ると粒界応力腐食割れ防止を抑制するための材料の電位−230mVを満足できなくなる。従って、原子炉構造材料に酸化チタン皮膜の厚みを0.1μm〜10μmにおいて光触媒性能を満足するが、好ましくは0.3μm〜2μmに制御することが肝要となる。
【0075】(実施例2)図2により本発明の実施例2を説明する。実施例2は原子炉構造材料への酸化チタン皮膜を形成する際、酸化チタン自身の粒径により腐食電位がどのように影響するのかを調べた実験例である。図2は酸化チタンの皮膜の厚みを0.3μmにした場合であるが、酸化チタン粒径が50nm以下では、粒界応力腐食割れ防止を抑制するための材料の電位−230mV以下を十分満足していることがわかる。
【0076】ただし、酸化チタン粒径が30nm以上になると、酸化チタンにおいて光触媒反応で励起した電子と正孔が再結合を起こす反応により、粒界応力腐食割れ防止を抑制するための材料の電位は徐々に上昇している。
【0077】また、酸化チタン皮膜の厚みを減少させた場合には、単位体積当たりの比表面積が粒径と反比例する如く減少し、粒界応力腐食割れ防止を抑制するための材料の電位−230mV以下を満足しなくなる。従って、原子炉構造材料に酸化チタン皮膜を施す際の酸化チタン粒径は50nm以下において光触媒性能を満足するが、好ましくは5nm〜30nm に制御することが肝要となる。
【0078】(実施例3)図3により本発明の実施例3を説明する。実施例3は原子炉構造材料への酸化チタン皮膜を形成する際、電位の移動を速やかに進行させるための光触媒助剤としてある白金ないしはロジウムの濃度により腐食電位がどのように影響するのかを調べた実験例である。図3に示すように、酸化チタン皮膜の厚みを0.3μmとした場合、酸化チタンに対する白金の割合が0.05〜3%の範囲においては、粒界応力腐食割れ防止を抑制するための材料の電位が、酸化チタンのみの電位−300mVより向上していることがわかる。
【0079】また、酸化チタンに対する白金の割合が0.1%程度であると、材料の電位−330mVと非常に向上している。ただし、光触媒助剤の割合が3%以上になると酸化チタンへ照射される紫外線量の減少により光触媒反応が減少し、粒界応力腐食割れ防止を抑制するための材料の電位は徐々に上昇し、酸化チタンのみの電位−300mVを下回る。
【0080】また、光触媒助剤の割合が0.05%以下になると光触媒助剤としての効果が薄れ、粒界応力腐食割れ防止を抑制するための材料の電位は酸化チタンのみの−300mVを満足できなくなる。従って、原子炉構造材料に酸化チタン皮膜を形成する場合の皮膜中に白金ないしはロジウムが0.05〜3%の範囲において光触媒の助剤としての性能を満足するが、好ましくは0.1%程度に制御することが肝要となる。
【0081】(実施例4)図4により本発明の実施例4を説明する。実施例4は原子炉構造材料へ酸化チタン皮膜を形成する際の酸化チタン濃度により腐食電位がどのように影響するのかを調べた実験例である。酸化チタンを対象材料に塗布・噴霧する方法においては、図4に示すように酸化チタン濃度が10%以下の範囲では、粒界応力腐食割れ防止を抑制するための材料の電位−230mV以下を十分満足していることがわかる。
【0082】ただし、同図に示すごとく酸化チタン濃度が5%を超えると、塗布,噴霧による皮膜形成が悪くなり、均一な皮膜の欠如あるいは密着性の欠如による脱離などが生じ、このような状態の皮膜における粒界応力腐食割れ防止を抑制するための材料の電位は徐々に上昇し、酸化チタン濃度が10%を超えると−230mV以下を満足しなくなる。
【0083】従って、原子炉構造材料に酸化チタン皮膜を塗布,噴霧により施す際の酸化チタン濃度は、10%以下において光触媒性能を満足するが、好ましくは5%以下に制御することが肝要となる。
【0084】(実施例5)図5により本発明の実施例5を説明する。原子炉中に酸化チタンを注入することによって原子炉構造材へ被膜を形成させる方法を用いる場合、原子炉の定常運転時に長時間注入するか、起動時/停止時などのトランジェントに短期間注入するか、あるいは両方の組み合わせを行うことができる。
【0085】定常運転時での注入では炉水の温度は280〜288℃であり、約10000時間の注入時間となる。トランジェント時には温度は100〜288℃まで任意に選べ、注入時間は最大48時間と考えられる。
【0086】定常運転注入時の酸化チタン濃度は表1に示された水質基準によって制限を受ける。現在市販されている酸化チタン溶液の塩素や硫酸イオン不純物は少ないもので酸化チタンに対して、1/100程度である。このため、炉水中酸化チタンの濃度は最大500ppbである。
【0087】導電率に影響を与えるものは分散剤であり、分散するためには注入液に対して0.4%が必要である。炉水1μS/cmは分散剤濃度では80ppbに相当する。酸化チタンの注入液中の濃度は注入ポンプの健全性から5 %程度であることを考えると、炉水中の酸化チタン濃度は1ppmが限度となる。
【0088】これらは注入時の酸化チタンと不純物の割合であり、実機では酸化チタンは構造材や燃料集合体に付着し、酸化チタンと不純物ともに浄化系によって除去される。このため、連続注入を行った場合には炉水中の酸化チタンの制限値は上記よりも低くなると考えられる。
【0089】トランジェント注入時には、不純物イオンの基準が20倍に導電率は10倍になるため、それぞれ酸化チタンの基準への影響は10ppmとなる。図5はステンレス鋼を285℃および150℃に保持した酸化チタンの溶液中に24時間浸漬した場合の、光照射時の腐食電位の酸化チタン濃度依存性を示したものである。285℃では10ppmで0.69μm、150℃では0.21μmの酸化チタンの膜が形成される。
【0090】図5に示すように24時間の浸漬の条件下では、太線で示した285℃の線の粒界応力腐食割れが発生しなくなるのは,炉水中で1.5ppmの濃度であり、150℃では5ppmの濃度が必要となっている。このように炉水温度,注入時間によって炉水中の酸化チタンの濃度を制御することによって、最適な被膜を形成することが可能である。
【0091】(実施例6)図6および図7により本発明の実施例6を説明する。実施例6は原子炉構造材料へ酸化チタン皮膜を形成する際の酸化チタンの凝集を抑制する分散剤による腐食電位の影響、または混入する分散剤の量による原子炉健全性の観点から設定されている水質基準にどのように影響するのかを調べた実験例である。
【0092】図6に示すように、酸化チタンに対する分散剤の割合が0.4%以上の範囲では、粒界応力腐食割れ防止を抑制するための材料の電位−230mV以下を十分満足していることがわかる。
【0093】酸化チタンに対する分散剤の割合を0.4%以下にした場合には、皮膜形成前に凝集して均一な皮膜形成を困難にし、粒界応力腐食割れ防止を抑制するための材料の電位が上昇し、酸化チタンに対する分散剤の割合が0.3%を下回ると材料の電位−230mV以下を満足しなくなる。
【0094】ただし、分散剤としてアンモニアおよびカルボン酸を1%添加した試験片により材料の応力腐食割れを確認したところ、長期間において試験片材料の応力腐食割れは観察されない。このため、分散剤としてアンモニアないしはカルボン酸を酸化チタンに対して1%程度添加する場合においては応力腐食割れを起こすことがないことを確認している。
【0095】また、図7に示す如く分散剤にアンモニアを使用した場合には、酸化チタンに対する分散剤の割合を増加させると原子炉水の導電率も増加し、酸化チタンに対する分散剤の割合が0.34%を超えると原子炉水質基準の導電率1μS/cmを上回ってしまう。
【0096】従って、原子炉構造材料に酸化チタン皮膜を施す際の酸化チタンに対する分散剤の割合は、粒界応力腐食割れ防止を抑制するための材料の電位から酸化チタンに対して0.4%以上必要となるが、原子炉水質基準の導電率1μS/cmを担保することを考慮すると、酸化チタンに対する分散剤の割合は0.34%以下に制御する必要が生じる。
【0097】ただし、原子炉水質基準値としての導電率1μS/cmは、この値を超えると直ちに原子炉が停止される訳ではなく、基準値を超えられる期間として14日/12ヶ月を持たせており、分散剤などによる導電率上昇があった場合でも、以下に示すクリンナップ系で不純物除去が短時間で可能であれば問題ない。
【0098】すなわち、原子炉一次系においては、不純物除去の観点から、陽イオン、陰イオン成分を除去するためのクリンナップ系を設置しており、上記分散剤成分に対しての除去性能は1/10程度以上の性能を有しているため、酸化チタンに対する分散剤の割合が0.34%を超えてもクリンナップ系により短時間で浄化されるため炉水導電率は1μS/cmを担保することが可能である。
【0099】また、上述したように、分散剤としてアンモニアないしはカルボン酸を酸化チタンに対して1%程度添加する場合においては、応力腐食割れを起こすことがないことを確認している。従って、酸化チタンに対する分散剤の割合はクリンナップ浄化効率を換算すれば3.4%程度が混入可能であるが、材料の応力腐食割れを起こさない分散剤の濃度として、1%以下に制御することが肝要となる。
【0100】ただし、上記分散剤濃度については原子炉構造材5000m2全てについて皮膜を形成させるのに必要な濃度を求めた結果であり、材料の応力腐食が生じやすい溶接部などを限定した皮膜形成を行う場合には、皮膜形成面積が減少するため使用する酸化チタン量なども減少できることから、原子炉水質基準および管理目標を考慮した分散剤濃度は増加することが可能となる。上記において酸化チタンに対する分散剤の割合を原子炉水に換算する場合には表3を用いる。
【0101】
【表3】

【0102】(実施例7)図8により本発明の実施例7を説明する。原子炉構造材料へ酸化チタン皮膜を形成する際の皮膜形成を促進するためのバインダーによる腐食電位の影響、混入するバインダーの量による原子炉水水質基準への影響を調べた実験例である。
【0103】図8に示すように、酸化チタンに対するバインダーの割合が0.01%以上の範囲では、粒界応力腐食割れ防止を抑制するための材料の電位−230mV以下を十分満足していることがわかる。ただし、酸化チタンに対するバインダーの割合を0.01%以下にした場合には、皮膜を形成するための密着性が乏しくなり、均一な皮膜形成を困難にし、粒界応力腐食割れ防止を抑制するための材料の電位−230mV以下を満足しなくなる。
【0104】また、酸化チタン皮膜形成を促進するバインダーは、無機シリカ、ポリオルガノシロキサン等を使用しているが、どちらも酸化シリカをベースにしており、酸化シリカについてはイオンとして炉水中に溶け出さないため導電率を上昇させることはないが、表1に示したように酸化シリカの管理目標値は炉水中において1ppm以下にする必要がある。このため、酸化チタンに対する酸化シリカの割合は2.5%以下に制御することが必要となる。
【0105】従って、酸化チタンに対するバインダーの割合は管理目標値から換算すれば2.5%以下が混入可能であるが、粒界応力腐食割れ防止を抑制するための材料の電位からバインダーの濃度として、0.02%程度かそれ以上に制御することが肝要となる。
【0106】ただし、上記バインダー濃度については原子炉構造材5000m2全てについて皮膜を形成させるのに必要な濃度を求めた結果であり、材料の応力腐食が生じやすい溶接部などを限定した皮膜形成を行う場合には、皮膜形成面積が減少するため使用する酸化チタン量なども減少できることから、原子炉水質基準および管理目標を考慮したバインダー濃度は増加することが可能となる。上記において酸化チタンに対するバインダーの割合を原子炉水に換算する場合には表3を用いる。
【0107】(実施例8)図9により本発明の実施例8を説明する。原子炉中に酸化チタンを注入することによって原子炉構造材料へ被膜を形成させる方法を用いる場合、酸化チタンの付着性をよくするバインダーを加えることによって、より少ない酸化チタンの濃度で皮膜が形成する。
【0108】図9で示したように、285℃で24時間,1ppmの酸化チタンにステンレス鋼をばく露するとバインダーの濃度が増加するに従って酸化チタンの付着量が増加し、腐食電位が低下する。より酸化チタン濃度を増加した場合には、バインダーは少なくすることが可能であり、また反対にバインダー濃度を増加させると酸化チタン濃度を減少させることが可能である。
【0109】このように、炉水中の酸化チタン濃度とバインダーの濃度を制御することによって最適な皮膜を形成することが可能である。酸化ケイ素(SiO2)の目標値は定常運転時では表1にあるように1ppmである。このため、注入時にはバインダーの濃度は1ppm以下でなるべく高く制御することによって、効率よく酸化チタンを付着することができる。
【0110】(実施例9)図10により本発明の実施例9を説明する。実施例9は原子炉構造材料へ酸化チタン皮膜を形成する際、酸化チタン自身、酸化チタンの凝集を抑制する分散剤、皮膜形成を促進するためのバインダーによる不純物混入は原子炉水水質への影響を調べた実験例である。
【0111】原子炉水の導電率1μS/cm以下を担保することは前述したが、導電率と同様に塩素、硫酸濃度を制御する。図10から明かなように、酸化チタンに対する塩素、硫酸濃度割合が0.022%を超えると原子炉水質管理目標値の5ppbを上回ることが認められる。
【0112】そこで、前述の如く、酸化チタンの製法上鉱物からチタンを抽出する塩化チタン法あるいは硫酸チタン法において使用する薬剤の不純物制御、その後の水酸化チタンなどの水和物に変化させる際、使用する水を極力不純物のない純水を使用する。
【0113】さらに酸化チタンに酸化させる場合にも環境雰囲気の制御を行うことで、酸化チタン溶液中の塩素、硫酸濃度を酸化チタンに対して0.002%程度まで低減できる。従って、原子炉構造材料に酸化チタン皮膜を施す際の酸化チタン溶液中の塩素、硫酸濃度は酸化チタンに対して0.02%以下に制御することが肝要となる。
【0114】ただし、上記塩素、硫酸濃度については原子炉構造材5000m2全てについて皮膜を形成させるのに必要な濃度を求めた結果であり、材料の応力腐食が生じやすい溶接部などを限定した皮膜形成を行う場合には、皮膜形成面積が減少するため使用する酸化チタン量なども減少できることから、原子炉水質基準および管理目標を考慮した塩素、硫酸濃度は増加することが可能となる。上記において酸化チタンに対する不純物濃度を原子炉水に換算する場合には表3を用いる。
【0115】(実施例10)図11と図12により本発明の実施例10を説明する。原子炉1中に酸化チタンを注入することによって原子炉構造材料に酸化チタン皮膜を形成させる場合,酸化チタンは注入点2a,2b,2cの中のどれか、あるいは全てから注入され、原子炉1、給水ライン16およびPLR(原子炉再循環系)ライン3,CUW(原子炉冷却材浄化系)ライン5の接液している材料表面に付着する。
【0116】また、注入された酸化チタンおよび分散剤,バインダー,それらに含まれる不純物はほとんどがCUWライン5に設置されている浄化系7のろ過脱塩器によって炉水中から除去される。このため、それらの濃度は材料表面への付着と注入と浄化のバランスによって決定すると考えられ、濃度制御には、注入ポンプ12とCUWポンプ6の流量を制御することによって可能となる。
【0117】ほとんどの原子炉は健全性確認のために導電率やpHおよび不純物イオン濃度を測定できる水質の測定システム11を持っている。この通常の測定システム11に酸化チタンの濃度を測定できるシステムを加えて、そのデータを注入制御システム14と原子炉の運転システムにフィードバックをかける。
【0118】導電率と不純物濃度の制限値よりも低い値、例えば90%の値を目標値として設定する。酸化チタン濃度と不純物濃度が目標値を超えた場合には、注入ポンプ12の流量を低下させ、CUWポンプ6の流量を増加させる。酸化チタン濃度のみが目標値を超えた場合には、注入ポンプ12の流量のみを低下させる。
【0119】酸化チタン濃度が低いにもかかわらず増加傾向になく、不純物濃度が目標値よりも小さい場合には注入ポンプ6の流量を増加させ、目標値よりも高い場合には注入ポンプ12、CUWポンプ6ともに流量を増加させる。このような操作を行うことによって、原子炉の健全性を損なわずに酸化チタンの皮膜を形成することが可能である。
【0120】注入開始時のTiO2濃度と電導度の時間変化の例を図12に示す。注入を開始するとTiO2濃度と電導度はともに増加する。TiO2濃度は注入した量と構造材料や燃料棒表面に付着する分と浄化系によって除去される分とで差し引きしながら増加する。
【0121】これに対し、不純物量を代表すると考えられる電導度は注入した量と浄化系に除去される分とでやはり濃度が増加する。TiO2が目標濃度に達すると注入ポンプの流量を減少させて、目標濃度になるように注入する。電導度が制限濃度の例えば90%に達するとCUWポンプの流量を増加させ、浄化力を向上させる。
【0122】すると電導度も低下し、かつTiO2濃度も低下する。電導度が低下し,例えば85%を下回った時点で注入ポンプの流量を増加してTiO2濃度を増加させる。このようにしてTiO2濃度,電導度を監視しながら注入ポンプ,CUWポンプを制御することによって、水質規制を逸脱せずに注入が行うことができる。
【0123】(実施例11)図13および図14により本発明の実施例11を説明する。図13においては図11と同一部分には同一符号を付している。原子炉1中に酸化チタンを注入することによって原子炉構造材料へ皮膜を形成させる方法を用いる場合、酸化チタンは注入点2の中のどれかあるいはすべてから注入され、原子炉1およびPLRライン3,CUWライン5の接液している材料表面に付着する。
【0124】材料表面への付着は原子炉水の温度と酸化チタンの濃度およびバインダー濃度に依存する。これらの濃度の制御は注入ポンプ12の流量を増加することによって増加し、逆にCUWポンプ6の流量を増加することによって減少する。炉水の温度は原子炉定常時にはほぼ変化がないが、起動時/停止時のトランジェント時には変化し、制御することが可能である。
【0125】例えば、停止時には、残留熱除去系の流量を上げること、あるいは主蒸気系の隔離弁を開けることによって温度を下げることが可能である。酸化チタンの付着量を最適化するためにサンプリングした原子炉水中に試験片18を浸漬し,適宜付着量を付着量測定システム17によって測定する。この付着量のデータを注入制御システム14および原子炉運転システムにフィードバックをかける。
【0126】試験片18の付着量がそれまでの付着時間を考慮した目標値よりも下回っている場合には、注入ポンプ12の流量を増加し、水質が制限値に近い場合には温度を上昇させる。目標値よりも上回っている場合には注入ポンプ12の流量を低下し、CUWポンプ6の流量を上げる。注入ポンプ12の流量を制御し、原子炉材料表面に最適な酸化チタンの皮膜を形成することが可能である。
【0127】注入開始時のTiO2濃度とTiO2皮膜厚さの時間変化の例を図14に示す。24時間で目標厚さまで注入する場合の例である。注入を開始してからは2時間おきに付着試験片を取り出して分析するものとする。注入開始時には濃度の暫定目標値の1/3で注入を行う。
【0128】2時間後の付着厚さが目標の2%だったとすると,36倍(濃度で1/3,時間で1/12)しても目標に達しないことから、暫定値でも過剰な付着は起こらないと判断して,暫定値の濃度で注入を開始する。その後、さらに2時間後に付着試験片を取り出して付着厚さを分析する。2時間の間の付着厚さ増加量が目標の8%だったとすると、残り時間では付着厚さに達しないために暫定値の120%で注入を行う。
【0129】その後、2時間おきに付着量を測定し、付着厚さが目標の90%に達したところで注入を暫定値の1/3にして微調整を行う。このように、付着試験片において付着厚さを監視しながら付着させることによって、付着厚さを目標値に制御することが可能となる。
【0130】
【発明の効果】本発明によれば、光が照射されると防食効果を有する光触媒の皮膜厚み,粒径,濃度,分散剤,バインダー,不純物を制御することにより、原子炉冷却水水質基準に対応した高性能光触媒層を原子炉構造材料の表面に均一な皮膜を形成させ、原子炉運転中の腐食を低減することができる。




 

 


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