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発明の名称 炭素鋼部材の化学除染方法及びその装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2003−90897(P2003−90897A)
公開日 平成15年3月28日(2003.3.28)
出願番号 特願2001−282563(P2001−282563)
出願日 平成13年9月18日(2001.9.18)
代理人 【識別番号】100087332
【弁理士】
【氏名又は名称】猪股 祥晃 (外2名)
【テーマコード(参考)】
4D050
4D061
【Fターム(参考)】
4D050 AA13 AB14 AB16 BB02 BB09 BC07 BC10 BD02 BD03 BD06 
4D061 DA08 DB18 DC09 DC10 DC22 EA03 EA04 EB04 ED02 ED03 FA08
発明者 閏間 裕 / 矢板 由美 / 稲見 一郎
要約 課題
シュウ酸処理により放射性核種を除染する方法において、炭素鋼部材に残留するシュウ酸鉄を除去し、放射能の付着加速現象を抑制する。

解決手段
シュウ酸を用いて炭素鋼部材から放射性核種を除去する化学除染方法において、シュウ酸により炭素鋼部材の放射性核種を除去した後、ギ酸処理してシュウ酸鉄を除去する。これにより炭素鋼部材の健全性を維持しながらシュウ酸鉄を短時間で効果的に除去できる。
特許請求の範囲
【請求項1】 放射性核種に汚染された炭素鋼部材からシュウ酸を含む還元除染剤を用いて前記放射性核種を除去する炭素鋼部材の化学除染方法において、前記炭素鋼部材から前記放射性核種を除去した後、前記炭素鋼部材に酸溶液を接触させる酸処理を施すことにより前記炭素鋼部材に生成した前記シュウ酸鉄を除去することを特徴とする炭素鋼部材の化学除染方法。
【請求項2】 前記酸処理の酸溶液にギ酸溶液を用いることを特徴とする請求項1記載の炭素鋼部材の化学除染方法。
【請求項3】 前記酸処理の助剤として、過酸化水素、またはオゾンを各々単独あるいは併用することを特徴とする請求項2記載の炭素鋼部材の化学除染方法。
【請求項4】 前記ギ酸溶液を電気分解により陽極酸化するか、または前記電気分解に過酸化水素またはオゾンを単独あるいは併用する酸化分解する分解工程を付加することを特徴とする請求項2記載の炭素鋼部材の化学除染方法。
【請求項5】 前記ギ酸溶液の鉄成分を電気分解による陰極還元で2価鉄イオンとし、前記2価鉄イオンと過酸化水素とにより前記ギ酸溶液を分解する分解工程を付加することを特徴とする請求項2記載の炭素鋼部材の化学除染方法。
【請求項6】 前記ギ酸溶液を電気分解により陽極酸化する分解工程と、陰極還元により生成した二価鉄イオンと過酸化水素との反応による分解工程とを併用することを特徴とする請求項4記載の炭素鋼部材の化学除染方法。
【請求項7】 前記ギ酸溶液の電気分解による分解工程に、過酸化水素またはオゾンによる酸化分解を併用する分解工程を付加することを特徴とする請求項5記載の炭素鋼部材の化学除染方法。
【請求項8】 前記過酸化水素またはオゾンによる酸化分解を併用する分解工程に助剤としてリン酸またはリン酸塩を添加することを特徴とする請求項7記載の炭素鋼部材の化学除染方法。
【請求項9】 放射性核種に汚染された炭素鋼部材からシュウ酸を含む還元除染剤を用いて放射性核種を除去する炭素鋼部材の化学除染方法において、前記炭素鋼部材から前記放射性核種を除去する工程と、放射性核種除去後の炭素鋼部材に酸溶液を接触させる酸処理を施すことにより前記炭素鋼部材に生成したシュウ酸鉄を除去する工程と、前記シュウ酸鉄除去後の炭素鋼部材に放射能付着を抑制する保護皮膜を形成する皮膜処理工程を設けることを特徴とする炭素鋼部材の化学除染方法。
【請求項10】 前記放射能付着を抑制する保護皮膜はニッケルの無電解メッキ処理で生成するニッケル金属層、またはニッケル金属層をフッ素ガスと接触させることにより生成される弗化ニッケルの不働態皮膜であることを特徴とする請求項9記載の炭素鋼部材の化学除染方法。
【請求項11】 前記放射能付着を抑制する保護皮膜は前記炭素鋼部材に対し300〜600℃の酸素またはオゾンを含む気相中で加熱処理することにより生成される酸化皮膜であることを特徴とする請求項9記載の炭素鋼部材の化学除染方法。
【請求項12】 前記無電解メッキ処理の還元剤として次亜りん酸塩、水素化ホウ素化合物、ヒドラジンのいずれかを用い、錯化剤としてクエン酸または酒石酸を用いることを特徴とする請求項10記載の炭素鋼部材の化学除染方法。
【請求項13】 前記無電解メッキは厚さ20ミクロン以下、不働態皮膜は3ミクロン以下に規定することを特徴とする請求項10記載の炭素鋼部材の化学除染方法。
【請求項14】 前記酸素を含む気相中の加熱処理の酸素濃度は1体積%以上に保持することを特徴とする請求項11記載の炭素鋼部材の化学除染方法。
【請求項15】 バッファタンクと、このバッファタンクから流出する水と除染剤を注入して混合した除染液を除染対象炭素鋼部材に接液し、接液後の除染液を前記バッファタンクに流入させる除染液循環ラインと、前記バッファタンクの水流出側から前記除染対象炭素鋼部材までの間の除染液循環ラインに接続されたシュウ酸溶液注入装置、過酸化水素注入装置及びギ酸注入装置と、このギ酸注入装置と前記除染対象炭素鋼部材の流入側との間に接続した酸素ガス供給源と、前記除染対象炭素鋼部材を加熱する加熱装置とを具備したことを特徴とする炭素鋼部材の化学除染装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は原子力発電プラントや再処理プラントのように放射能を含む溶液を取り扱う施設において、放射能を含む溶液と接して放射性核種に汚染された炭素鋼部材から放射性核種を化学的に除去する炭素鋼部材の化学除染方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】原子力発電プラントや再処理プラントのように放射能を含む溶液を取り扱う施設において放射能を含む溶液と接する部位には一般的に耐薬品性、高温における耐食性や機械的強度に優れているといった観点からステンレス鋼やニッケル基合金などの高価な材料が用いられている。
【0003】しかしながら、沸騰水型原子力発電プラントにおいて、放射能を含む高温の一次冷却水が流れる水溶液環境では、ステンレス鋼に応力腐食割れ(以降SCCと称する)と呼ばれる腐食形態が存在し、ステンレス鋼の使用には注意を要するという特殊事情がある。
【0004】SCCは最終的には脆性破壊に至る腐食モードであり構造材としては致命的な欠点と広く認識されていることは言うまでもない。SCCは材料要因、応力要因、環境要因が重畳した時に発生する事象であり、要因の一つでも取り除くことができれば発生しないと言われている。
【0005】沸騰水型原子力発電プラントではSCCを防止するために、「材料要因に対しては従来材であったステンレス304鋼の代替材としてステンレス316L鋼を採用する。応力要因に対しては溶接時に残留した応力を緩和する熱処理を付加的に行う。環境要因に対しては起動時の復水器脱気運転、運転中の水素注入などにより環境中の酸素や過酸化水素濃度を低下させる。」などの対策が立案され、順次実プラントへの適用が図られ、それら有効性が実証されている。
【0006】従来の沸騰水型原子力発電プラントにおいて放射能を含む高温の一次冷却水が流れる原子炉再循環系配管には材料対策や残留応力緩和処理の適用によってSCCの発生を十分に抑制できるとして材質的には依然としてステンレス鋼が用いられているが、原子炉水浄化系や残留熱除去系にはいっそうの安全化を図る観点からステンレス鋼に代わって同じ環境ではSCCを起こさないとされている炭素鋼部材が配管材として多く用いられている。
【0007】一般的に沸騰水型原子力発電プラントで用いられる炭素鋼部材は例えばJIS(G3455)で規定されるような高圧配管用炭素鋼鋼管である。このJISは350℃以下で使用圧力が高い炭素鋼鋼管を対象に規定されたものである。高圧配管用炭素鋼鋼管はステンレス鋼と比較して引張り強さ、降伏点(または耐力)、伸びといった値で示される機械的性質は特に劣るものではないが、両者には水溶液環境における腐食特性に大きな違いがある。
【0008】炭素鋼とは一般に炭素を主成分とする鉄炭素合金のうち炭素を0.04〜1.7%含む可鍛性の鋼を指し、実用的な炭素鋼は炭素のほかにケイ素、マンガン、リン、イオウ、更に酸素、水素、窒素、その他の微量元素を含み、これらが機械的性質に影響を及ぼすことが知られている。
【0009】沸騰水型原子力発電プラントで用いられる高圧配管用炭素鋼鋼管は高温高圧における使用環境を勘案し、合金成分を調整、加えて「焼なまし」または「焼ならし」を施すことによって十分な機械的強度を担保しているが、広義には炭素鋼の一種であることから水溶液環境における腐食を抑制するようなクロムやニッケル等を合金成分として含んでおらず、例えば室温で大気飽和させた静止水中に浸漬させるだけで容易に腐食し、表面に鉄酸化物である錆を発生させる。
【0010】このように炭素鋼は腐食を抑制するような合金成分を含まないためステンレス鋼と比較して極めて安価であるものの、その使用される環境を十分に考慮し使用することが重要である。
【0011】一般産業界において炭素鋼は腐食を起こしやすいので、表面塗装、腐食抑制剤、電気防食など適当な防食法の助けをかりて使用される場合が多いが、希な例ではあるが反応生成物が鋼面を覆うことによって腐食環境を遮断するとか、反応速度を遅めるなどの自発的な防食効果を生じ、他の防食法の助けなしに実用に堪える場合がある。
【0012】例えばボイラー蒸発管のような弱アルカリ性高温水中で鋼面に生じた緻密なマグネタイト層の保護性は十分に実用に堪えるとの報告がある。また、常温の淡水を移送する配管に生じたさび層もある程度保護性を有する。更に、常温の濃硫酸中で生成する硫酸第一鉄は難溶性のため保護皮膜となり不働態化をもたらすので炭素鋼は濃硫酸タンクや配管に使われている。
【0013】これらの例は炭素鋼を防食法なしに用いて成功している典型例であるが、これとて防食効果は限定された環境条件下で保持されているだけであり、条件が満たされなくなると速やかに効力を失って腐食が急速に進むと言われている。
【0014】また、炭素鋼は弱酸性の環境に対しても一般には鉄イオンの溶解度は大きく、腐食生成物の保護層を生じないので実用的には使用されない。中性環境でもさび層の下では局部的にpHが低下し腐食が促進されると言われている。
【0015】ところで、高温水における腐食は使用されている金属材料と腐食環境を構成する腐食物質との反応により、反応生成物が生じることによって金属材料の肉厚が減少したり、機械的性質の劣化をもたらす。従って、反応生成物の組成、構造、性質が高温腐食の進行に影響するところが大きい。
【0016】反応生成物は金属と腐食環境の界面において生成し、成長するものであるが、高温では金属内の拡散が速くなるため、内部酸化、浸炭、窒化、水素腐食に見られるごとく、金属内部においても表面から変化を生じていることが多い。
【0017】反応生成物が金属−腐食環境界面、すなわち、金属表面に生成する場合、その反応生成物の状態及び性質が腐食速度に大きく影響する。反応生成物がその腐食条件において固相である場合、これをスケールと称するが、酸化あるいは硫化の場合のごとく反応の進行とともに金属−腐食環境界面でスケールが発生し、成長すると金属と腐食環境を隔離する働きをする。
【0018】スケールが緻密な反応生成物の結晶層からなり、細孔や細隙がなければ以降のスケール中のイオン拡散を反応過程として進行することになる。固相中の拡散は結晶粒内の格子欠陥または結晶粒界を通して起こるので一般に遅い。
【0019】また、スケール層の成長とともに拡散経路がより長くなるので、腐食速度は時間の経過とともに遅くなる。すなわち、固相スケールは多かれ少なかれ腐食速度を抑制し、材料の期待される寿命から見て十分でない場合もあるが保護性を有しているといえる。
【0020】沸騰水型原子力発電プラントで炭素鋼部材が使用されている原子炉水浄化系や残留熱除去系には高温高圧水が流れており、その水質は不純物をほとんど含まないため、pHはほぼ中性である。図13は沸騰水型原子力発電プラントの原子炉周りの配管系統図を模式的に記載したものであるが、図13により、原子炉周りの一次冷却水の流れと炭素鋼部材が使用されている部位を説明する。
【0021】原子炉圧力容器1内の原子炉水は原子炉圧力容器1に接続された原子炉再循環配管2と再循環ポンプ3からなる原子炉再循環系により強制循環されている。なお、沸騰水型原子力発電プラントは原子炉再循環系を複数系統付帯しているが、図13では2系統の例を示している。
【0022】また、古い炉型では再循環系を付帯しない自然循環式の沸騰水型原子力発電プラントも現存する。一方、最近の改良型沸騰水型原子力発電プラントでは原子炉再循環系を持たず、インターナルポンプを複数機用いて原子炉水の強制循環を行う炉型も製造されている。
【0023】原子炉再循環系再循環ポンプ3の吸込側に原子炉水浄化系が接続されている。原子炉水浄化系は前記吸込側から炭素鋼配管4を通し原子炉圧力容器1内からの原子炉水を取水して、循環ポンプ5で送水、再生熱交換器6、非再生熱交換器7でろ過脱塩塔8内の樹脂に適した温度(40℃以下)まで冷却し、ろ過脱塩塔8により原子炉冷却材中の不純物を除去し、再生熱交換器6により熱回収後、給水系配管9を経て原子炉圧力容器1に戻る構成となっている。
【0024】図13では各構成機器を1ユニットで示しているが、通常は2ないし3ユニット有している。炭素鋼配管4は図示したような部位で原子炉水浄化系の構成機器同士を接続させるために使用されており、温度条件としては最高で原子炉水温度の288℃、最低で約40℃と温度幅がある。また、圧力条件は最高で原子炉水圧力の6.9MPaである。なお、原子炉水浄化系はプラントの通常運転中のみならず、停止時でも通常は運転されていることが多い。
【0025】一方、残留熱除去系は主に原子炉の停止時に炉心の崩壊熱を除去するために具備されているものであり、原子炉水を原子炉再循環ポンプ3の吸込配管から分岐した炭素鋼配管10で取水し、ポンプ11で送水し、熱交換器12で冷却後、原子炉再循環吐出配管を経て原子炉圧力容器1に戻す。冷却された一部の原子炉水は原子炉圧力容器1の頂部13に設けられたヘッドスプレーノズルからスプレイされ原子炉圧力容器1内のヘッド部の冷却を行うこともできる。
【0026】熱交換器12にはバイパスライン14が接続されており、バイパス流量を調節することにより熱交換量の調節も可能である。残留熱除去設備はプラント運転中は非常用炉心冷却設備の1系統(低圧注水系)として圧力制御室プール水で満水待機状態にあるため、運転に先立って系統の洗浄及び暖機操作が必要である。
【0027】設計上は原子炉圧力容器1内の圧力が9.5kg/cm2まで低下すると非常用炉心冷却設備としての機能が要求されなくなるので系統の洗浄を開始することができ、原子炉圧力容器1内の圧力が7.7kg/cm2から運転することができる。
【0028】残留熱除去系での炭素鋼配管10は図13に示したような部位でポンプや熱交換器等の構成機器を接続するために用いられている。温度条件は停止時における残留熱除去設備の投入時期によって異なるが、約150℃程度が一般的であり、炭素鋼配管が接液する温度としてはこの値が上限となる。
【0029】沸騰水型原子力プラントの原子炉水浄化系や残留熱除去系といった高温高圧水環境でステンレス鋼と比較して明らかに耐食性の劣る炭素鋼が使用できるのは高温で生成する反応生成物の自発的な防食効果に期待するものであり、反応生成物が多少なりとも腐食を抑制する働きをするためである。
【0030】ただし、炭素鋼配管の設計にあたっては腐食反応による減肉を想定して「腐れしろ」と呼ばれる厚みを加え十分な機械的強度に対する裕度をもって配管肉厚が決定されている。
【0031】ところで、原子力発電プラントにおいて、接液している構造部材の腐食と放射能の発生には次のような強い因果関係がある。つまり、放射能の発生は以下のように考えられている。まず、給水系や復水系の各種の接液材料表面において腐食生成物が発生し、その一部が水中に放出される。放出された腐食生成物は水の流れに沿って移行し、最終的には原子炉内に持ち込まれる。
【0032】例えば、沸騰水型原子力発電プラントにおいて原子炉内に持ち込まれる腐食生成物にはステンレス304鋼で製作されている給水ヒータ伝熱管から発生する溶解性のニッケルイオンやクロム酸イオンが、また、復水系の構成機器からは不溶解性の鉄粒子などがある。これらの溶解性や不溶解性の腐食生成物が原子炉圧力容器1内に持ち込まれると、その一部は蒸発乾固現象や共析反応などによって燃料被覆管表面に一旦付着する。
【0033】これらの反応は沸騰を伴う系で特に顕著であり、実際、沸騰水型原子力発電プラントにおいては約4mの燃料被覆管の下部を除いてほぼ全長で沸騰現象が生じていることから腐食生成物の付着現象が著しい。また、加圧水型原子力発電プラントでも燃料被覆管の上部で沸騰が生じており、沸騰水型原子力発電プラントほど激しくないものの付着現象は同様に生じている。
【0034】燃料被覆管に付着した腐食生成物は中性子の照射を受け強度に放射化される。一旦燃料に付着して放射化された腐食生成物は放射性腐食生成物、もしくは燃料クラッドなどと呼称される。放射性腐食生成物の大部分は燃料被覆管上に固定化されてプラント停止時に行われる燃料交換の際に系外に持ち出されるが、そのごく一部は運転中や停止時において剥離や溶解現象で粒子状やイオン状の形態で原子炉水中に再放出される。
【0035】放出された放射性腐食生成物のうち粒子状のものは原子炉底部などの一次冷却水が滞留する部位や水平配管などに重力沈降現象などによって付着する。一方、イオン性の腐食生成物は高温の一次系冷却水が流れるステンレス鋼や炭素鋼が腐食する際にその腐食皮膜中に次式で示される共析や同位体交換等のメカニズムで取り込まれる。
60Co2++Fe23+H2O=60CoFe24+2H+60Co2++CoFe2460CoFe24+Co2+【0036】なお、放射能の発生源としては炉心構造材が直接その場で中性子の照射を受けて放射し、その一部が溶解や脱離して原子炉水中の濃度を高める場合がある。これには制御棒のピンまたはローラ材に用いられているコバルト基合金であるステライト材から発生する58Coや60Coがある。
【0037】また、燃料被覆管をチャンネル内に固定するために用いられる燃料バネはニッケル基合金のインコネル材から製作されるがこれからも同種の核種が生成し、炉水中へ放出され原子炉水中の放射能濃度を高めている。
【0038】現在の原子力発電プラントにおいて原子炉水中に含まれる放射能はウランやプルトニウム等の原子燃料が核反応によって生成された核分裂性生成物によるものではなく、上記のような放射性腐食生成物が再放出された放射能と、放射化された炉心構造材から発生した放射能であり、主要な核種は58Co、60Co、51Cr、54Mn、59Feである。
【0039】放射能を含む溶液と接している一次系配管では高温高圧水との接触により腐食し、腐食皮膜を生成するがこの際皮膜中にイオン性の放射能を取り込む。皮膜中に蓄積する放射能量は平衡状態では次式のようにその腐食皮膜量に比例しており、材料の腐食皮膜量が重要となっている。
【0040】A=k×C×MA:放射能付着量(Bq/cm2
C:放射能濃度(Bq/ml)
M:腐食皮膜量(g/cm2
k:定数(−)
【0041】特にステンレス鋼と炭素鋼を比較した場合明らかに炭素鋼の腐食速度が早く腐食皮膜量も多いことから蓄積する放射能量も多くなることは自明の理である。これらは原子炉一次系の高温高圧水環境を模擬することができる装置(高温高圧ループと称されることが多い)を用いた実験室規模の腐食試験で多数報告されているばかりでなく、実際の原子力発電プラントでも確認されている。
【0042】原子炉一次系配管や構成機器表面に放射能が付着すると、その周りの放射線線量率が上昇し、それ自体の点検時に作業員が被ばくするのは言うまでもなく、まったく別の作業であるもののただその付近にいただけで作業員が被ばくする事態も多々発生する。このため、放射線線量率の上昇は作業コストや点検日数の増加を招き、結果的に発電コストの上昇になるばかりでなく、作業員の被ばく量が高まれば衛生管理上大きな社会問題ともなりうる。
【0043】以上のように発電コストの上昇や被ばく問題を回避するために一次系配管や構成機器表面への放射能の付着に起因する放射線線量率上昇の抑制を図ることは放射能を取り扱う原子力発電プラントや再処理プラントにおいては重要なテーマである。
【0044】一次系配管や構成機器表面における線量率の上昇を抑制するには前述した放射能の発生と移行、及び蓄積の過程を考えると以下のような方策があることが分かる。
【0045】(1)放射性腐食生成物となる腐食生成物を発生させない。
(2)放射性腐食生成物となる腐食生成物を原子炉内に持ち込ませない。
(3)炉心構造材からの放射能の発生を抑制する。
(4)一次冷却水中の放射能濃度を低く保つ。
(5)原子炉一次系配管や構成機器表面に放射能を付着させない。
(6)原子炉一次系配管や構成機器表面に付着した放射能を除去する。
【0046】本発明では、このうち(6)原子炉一次系配管や構成機器表面に付着した放射能を除去する技術と、(5)原子炉一次系配管や構成機器表面に放射能を付着させない技術に関するものである。具体的には原子炉一次系配管や構成機器のうち、特に炭素鋼部材で製作されている部位を対象に、除染後において放射能の再付着しにくい化学除染方法を提供し、それによってこのテーマの達成に貢献しようとするものである。
【0047】ところで、原子炉一次系配管や構成機器表面に付着した放射能を除去する技術に関しては、現在まで種々の特許公報に開示されており、ステンレス鋼に対しては、酸化皮膜中の主要成分である鉄系酸化物をシュウ酸により還元溶解する工程と、クロム酸化物を酸化剤により酸化溶解する工程とを組み合わせた方法等が知られている。
【0048】例えば特開平3−10919号公報においては、酸化剤として過マンガン酸、還元剤としてジカルボン酸を用いる方法が、特開2000−81298号公報には、酸化剤としてオゾン水、還元剤としてシュウ酸を用いる方法がそれぞれ開示されている。
【0049】また、クロムを含有せず酸化工程が不要である炭素鋼部材の除染については、特開平10−123293号公報においてシュウ酸とシュウ酸塩を用いる除染方法が開示されている。一般的にシュウ酸は金属母材に対して溶解力が穏やかであり、取扱いや後処理が容易でかつ、安価である等から、現在の化学除染法では、多くの場合このシュウ酸を含む還元除染剤が広く用いられている。
【0050】一方、原子炉一次系配管や構成機器表面への放射能付着を抑制する対策はかなり以前から検討されており、技術別に分類すると、■酸化皮膜付与・プレフィルミング、■表面処理・表面改質、■水質制御、■鉄注入・鉄濃度コントロール、■放射能濃度低減技術、■プラントの運転・運用・設備などがある。
【0051】ただし、実際に沸騰水型原子力発電プラントで採用された技術としては、■表面処理・表面改質技術で原子炉再循環配管の電解研磨処理、■水質制御技術で亜鉛イオン注入、■鉄注入・鉄濃度コントロールで復水ろ過フィルタを意図的にバイパスしたことによる鉄注入等のわずかな事例があるだけである。
【0052】更に、これらの対策は主にステンレス鋼を対象にして立案されたものであり、本発明の意図する炭素鋼部材の放射能付着抑制とは異なっている。なお近年、炭素鋼を対象とした提案も散見されるが、これらの対策が実際のプラントにおいて採用されたとの報告もないことから、それらの有効性と実現性は疑問視されているのが現状である。
【0053】
【発明が解決しようとする課題】還元除染剤として広く用いられているシュウ酸ではあるが、シュウ酸による還元除染工程で炭素鋼部材を化学除染した場合、その過程で除染対象である炭素鋼部材から溶出した多量の鉄イオンと、シュウ酸との反応により、炭素鋼部材表面にはシュウ酸鉄が生成する。このシュウ酸鉄は化学式でFe224と表記され通常は2水和物と推定されている。
【0054】また、シュウ酸鉄は酸には容易に溶けるが、水に溶けにくい性質を有する。更に、シュウ酸鉄は高温では不安定であり、水溶液中で加熱すると形態変化を起こして一般的にはヘマタイト(αFe23)へと変化する。その際、環境中にニッケル等の遷移金属イオンが共存するとこれらを容易に取り込み以下の反応式でフェライト化を起こす。
Ni2++Fe23+H2O=NiFe24+2H+【0055】コバルトイオン(Co2+)やコバルト60イオン(60Co2+)はニッケルイオンと化学的な性質が酷似しておりまったく同様な反応式でフェライト中に取り込まれる。
【0056】以上の現象を実機においてシュウ酸を含む還元除染剤を用い、化学除染を行った後の炭素鋼部位でシミュレーションする。まず、シュウ酸を含む還元除染剤を用いた化学除染処理によって炭素鋼部材表面からは放射能が除去されるもののその副産物としてシュウ酸鉄が生成、残留している。プラントの起動工程が進み、シュウ酸鉄が生成している炭素鋼部材と接液する循環水の温度が上昇するとシュウ酸鉄は次第にヘマタイト粒子へと形態移行する。
【0057】また、その際にコバルト60イオンなどのイオン性の放射能が共存するとヘマタイト粒子自体が、もくしはその粒子の一部がフェライト化して放射能を取り込む。放射能を取り込んだ粒子は炭素鋼部位に残留した場合は炭素鋼への放射能付着量を増大させ、他の部位へ移行した場合は不溶解性の鉄酸化物粒子となって低流速部や滞留部に移行する。
【0058】シュウ酸鉄から形態変化したヘマタイトは高温焼成して製造された試薬のヘマタイトとは異なり炉水温度以上の熱履歴を受けていないので、結晶化度が低く、遷移金属等との反応性を持ち続ける等、反応活性が高い。
【0059】そのため、炭素部材表面に残留してヘマタイト化した粒子も、低流速部や滞留部に移行したヘマタイト粒子もプラントの運転中は継続的に放射能の付着サイトとして機能し、飽和付着量に至るまで放射能を付着し続けることとなる。
【0060】本発明者らは以下のような試験を行い炭素鋼部材に対してシュウ酸を用いた除染処理を施すと炭素鋼部材表面にシュウ酸鉄が生成すること、シュウ酸鉄が生成した炭素鋼部材を高温水に浸漬させるとシュウ酸鉄がヘマタイトへ形態移行すること、更に移行する際には高温水中の放射能を確かに取り込むこと、更に形態移行したヘマタイトは炭素鋼部材表面に残留しやすいことを確認している。
【0061】まず、外径6mmの炭素鋼丸棒材(S20C)から外径4mm、長さ70mmの丸棒状の試験体を製作した。また、両端面は深さ約10mmでM2のメネジ構造とした。試験体は除染前の表面状態を模擬させるために予め高温高圧水溶液中で酸化皮膜を付与した。温度条件は炭素鋼部材が最も高温で使用されている原子炉水浄化系の288℃とし、処理時間は500時間とした。この処理により金属光沢を呈していた試験体は黒色の酸化皮膜に覆われた状態へと変化した。
【0062】次に、この酸化皮膜を付与した試験体にシュウ酸による除染処理を施した。除染条件と除染手順は以下の通りである。まず、ビーカー中に試薬のシュウ酸・2水和物を溶解させシュウ酸2000ppm溶液を作成した。これにマグネタイト(Fe34)を加え、鉄イオン濃度で150ppmに調整した。この溶液に試験体を投入し、80℃で5時間保持した。加熱中はスターラーで攪拌して濃度の均一化を図った。シュウ酸による除染後の試験体外観は黄色味を帯びており、シュウ酸鉄が生成していることが推定された。
【0063】次に、シュウ酸鉄を除去するため予備的な手段として2Nの塩酸溶液中に試験体を浸漬した。この塩酸濃度では炭素鋼母材も容易に溶解するので注意を要するがわずか数秒でシュウ酸鉄が溶解除去されたことを外観変化から確認した。
【0064】シュウ酸鉄が残留している試験体と、予備的な手段でシュウ酸鉄を除去した試験体、さらには受入材(酸化皮膜付与も行っていない未処理材)の3種類の試験体で放射能の付着試験を実施した。
【0065】試験体の組立方法は図14に示したように長さ70mm、直径4mmからなる試験体46を外径8mm、肉厚1mmからなる外筒管47に挿入し、外筒管47の両端に止めねじ47a及び孔明きリング47bからなる固定具を取り付けて試験体組立46aとした。この試験体組立46aをステンレス鋼製継手を用いて直列に接続させ試験セクションを構成した。
【0066】放射能付着試験に用いた装置は沸騰水型原子力発電プラントの高温高圧水条件を模擬可能な高温高圧ループであり、テストセクション部の運転条件は温度280℃、圧力 7.8MPa、流速32cm/秒であった。水質条件は溶存酸素濃度230ppb、溶存水素濃度20ppbとし1000時間の連続通水試験を行った。
【0067】装置の運転中は放射能トレーサとして60Co溶液を注入し、ループ水中で0.02Bq/mlの濃度になるように調整した。ループ運転終了後、取出した試験体の付着放射能量を測定した結果が図15である。
【0068】図15から明確なようにシュウ酸鉄が残留していた試験体の放射能付着量はその他の試験体の約5倍にも達していた。また、予備的な手段でシュウ酸鉄を除去した試験体の放射能量は受入材とほぼ同等であった。更に図15では試験体に超音波洗浄処理を施し、この処理によって脱離した放射能をルース、残留した放射能をタイトとして分別している。シュウ酸が残留した試験体ではルース放射能の比率が極端に高いことが分かる。
【0069】シュウ酸鉄が残留した試験体表面の各段階を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果が図16(a)〜(c)である。図16中、(a)は酸化皮膜を付与した後、(b)はシュウ酸で化学除染処理をした後、(c)は放射能付着試験後の観察結果である。図16(a)に示した酸化皮膜付与後(a)の表面には多面体結晶が表面を覆うような状態であった。
【0070】これらの結晶はニッケルフェライトやコバルトフェライト等のフェライト系酸化物が主要成分である。図16(b)に示すようにシュウ酸処理後の試験体表面には丸みを帯びた粒子が生成し、さらにそれら粒子が凝集しており、最大長さが約5ミクロンにも及ぶ大きな粒子が観察された。これらの結晶がシュウ酸鉄の粒子である。
【0071】一方、図16(c)に示すように放射能付着試験後には1ミクロン以下の微細粒子が生成していた。微細粒子は超音波洗浄処理で一部は脱落するが、これを回収し粉末X線回折法によって分析したところ、主要結晶成分としてはヘマタイト(αFe2)であることを確認した。ところで放射能分析によれば超音波洗浄処理によって脱落したフラクション中に放射能が多量に含まれていた。
【0072】ヘマタイトには2価イオンの付着サイトがないことから付着している放射能はヘマタイト表層に吸着反応で付着しているか、もしくは表層のみがフェライト化しているなどと推定される。いずれの機構による付着であるにしろシュウ酸鉄から形態移行したヘマタイト粒子に放射能が多量に含まれていたのは紛れもない事実である。
【0073】一連の放射能付着試験、及びSEM観察結果から炭素鋼部材に対してシュウ酸を用いた除染処理を行うと、放射能は除去されるもののその副産物としてシュウ酸鉄が生成すること、更にシュウ酸鉄はその後の接液する溶液の温度が上昇することによってヘマタイトに形態移行し、更に形態移行する際に溶液中の放射能を取り込むことが分かった。
【0074】放射能付着試験では表面流速が32cm/secと実機炉水浄化系配管における平均的な流速(2〜3m/sec)と比較して約一桁遅いものの流動条件を示すレイノルズ数は5000を超えており優に乱流領域にある。このため、流れによる脱落性を比較すると実機と極端な差はないと評価される。この結果から実機におけるシュウ酸除染後においても炭素鋼部材表面にはルースな放射能が残留する傾向は大きいと判断した。
【0075】以上のことから実機において生成したシュウ酸鉄は除染処理後に強制的に除去しない限りはそのまま残留し、炭素鋼部材の放射能付着量を著しく加速させる危険性を有していることが推定されることが分かった。もちろん、シュウ酸鉄は生成部位に残留せず、一次冷却水中に放出されれば放射能の付着サイトとなり局所的に放射能の付着量が多いホットスポットを形成する危険性がある。
【0076】シュウ酸除染後に、材料健全性を維持しながらシュウ酸鉄を溶解・除去するため、鉄濃度を制御しながらシュウ酸を分解し浄化するシュウ酸分解・浄化工程を行うとシュウ酸鉄の残留は防止できるとの提案がある。
【0077】また、過酸化水素などの酸化剤を注入してシュウ酸鉄の分解を図る方法が提案されているがいずれもシュウ酸鉄が完全に除去されるには長時間を要する課題がある。また、シュウ酸除染後に残留するシュウ酸鉄は放射能付着抑制を目的とした各種処理の妨げになりそれらの抑制効果を相殺してしまう問題点も指摘されている。
【0078】本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、本発明の第1の目的は据え付けられた機器、配管等の炭素鋼部材から、シュウ酸を含む還元除染剤を用いた化学除染後に存在するシュウ酸鉄を材料の健全性を維持しながら、極めて短時間で効果的にこれを除去し、炭素鋼部材を清浄とすることで、放射能の付着加速現象を抑制し、さらにはホットスポットの発生を防止することができる炭素鋼部材の化学除染方法を提供することにある。
【0079】また、本発明の第2の目的は、シュウ酸鉄の除去によって清浄となった炭素鋼部材に放射能付着を抑制できる保護皮膜を形成する皮膜処理工程を加えることによって積極的に放射能付着抑制を図ることができる炭素鋼部材の化学除染方法を提供することにある。
【0080】更に、本発明の第3の目的は、定期検査、工事の際の作業員の放射線被ばくが低減されるとともに、検査及び工事期間のコストの低減ができる炭素鋼部材の化学除染装置を提供することにある。
【0081】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、放射性核種に汚染された炭素鋼部材からシュウ酸を含む還元除染剤を用いて前記放射性核種を除去する炭素鋼部材の化学除染方法において、前記炭素鋼部材から前記放射性核種を除去した後、前記炭素鋼部材に酸溶液を接触させる酸処理を施すことにより前記炭素鋼部材に生成した前記シュウ酸鉄を除去することを特徴とする。
【0082】本発明では、炭素鋼部材の金属表面を酸溶解することで、表面上に生成したシュウ酸鉄を短時間に除去することが可能である。これによりシュウ酸鉄残留に起因する炭素鋼部材の供用再開後における放射能の付着加速現象を抑制することが可能である。シュウ酸鉄はあらゆる酸を用いた酸処理で容易に溶解する。
【0083】ここで言うあらゆる酸とは塩素(Cl)、イオウ(S)、窒素(N)、リン(P)などの非金属を含む酸基が水素と結合してできた塩酸(HCl)、硫酸(H2SO4)、硝酸(HNO)、リン酸(H3PO4)などを総称する無機酸は優に及ばず、有機化合物のうち酸性をもつ有機酸が全て対象となる。
【0084】有機酸の例としては天然で存在する酢酸、シュウ酸、酒石酸、安息香酸などのカルボン酸があるが、最も分子量が少ない酸として請求項2の発明に示すギ酸がある。また、例えばクエン酸アンモニウムなどの様に水溶液中で酸性を示す無機、有機酸の塩類も含め、これらはその条件(濃度や温度)さえ整えば全て実機での適用が可能であることは言うまでもない。
【0085】ただし、実機での施工を想定した場合、使用する酸種の選定、およびその濃度や温度などの条件設定にあたってはシュウ酸鉄の溶解速度や溶解効率も重要であるが、対象とする炭素鋼部材自体の溶解を考慮することがより重要となる。つまり、母材の溶解を抑制しながらシュウ酸鉄を効率的に溶解できる条件が最も好ましい訳である。
【0086】実機においては材質的には炭素鋼と総称するもののその合金成分が異なる様々な鋼種が使われており母材の溶解特性は微妙に異なる事情がある。また、条件によっては母材の溶解抑制のためにインヒビタと称する溶解抑制剤を併用する手段もある。
【0087】更に、施工コストも重要な因子である。酸処理するための設備、処理後の酸溶液の処理設備等はコストに直接影響する。例えば、酸溶液に無機酸を用いた場合は溶解処理後の酸溶液の処理はイオン交換樹脂等で回収するのが一般的であり、設備的には簡便であるメリットがある。
【0088】また、無機酸は有機酸と比較して一般的に解離度が高く酸としての効力が桁違いに高い。従って同等のシュウ酸鉄除去効果をもたらす酸濃度は、無機酸の場合、有機酸よりはるかに低く、無機酸を回収するために必要なイオン交換樹脂量も少なくてすむ。
【0089】しかしながら、この場合には酸溶液が残留した際のプラント起動後への影響を十分に見極める必要がある。一方、有機酸を用いた場合は酸溶液の処理が不完全でもプラントの起動によって残留した酸が分解するため影響は少なく無機酸より有利である。
【0090】また、有機酸は酸化分解することで炭酸ガスと水に無機化することが可能であるためプラント起動前に分解操作を行うことで、成分の残留を防止することもできる。そこで、実際の施工にあたっては対象とする炭素鋼部材に最適な条件を比較検討し、その結果として最も材料健全性に影響を及ぼさず、さらには低コストで実施できる方法を探る必要がある。
【0091】請求項2に係る発明では以上のような検討を踏まえ実機において実施可能な具体例を提起するものである。ただし、いずれの手段によるにしろ、シュウ酸を用いた化学除染後に生成したシュウ酸鉄を強制的に除去することによりシュウ酸鉄残留に起因する炭素鋼部材の供用再開後における放射能の付着加速現象を抑制することが可能であることは前述の通りである。請求項2に係る発明は、前記酸処理の酸溶液にギ酸溶液を用いることを特徴とする。
【0092】ギ酸と同等程度の酸解離定数を持つ有機酸は他にも酢酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸等のカルボン酸、その他にも芳香族カルボン酸等数種あり、これらは同様のシュウ酸鉄除去効果を有すると考えられるが、その中でも最も低分子量かつ単純構造のギ酸は分解が容易である。
【0093】従って、炭酸ガスと水に分解可能な有機酸の中でも、無機化しやすいギ酸を用いることで、二次廃棄物発生量の増大を抑制するとともに、分解操作の工期及び分解のために投入するエネルギーを最少とすることが可能である。
【0094】請求項3に係る発明は、ギ酸処理の助剤として、過酸化水素、またはオゾンを各々単独あるいは併用することを特徴とする。図17は、ギ酸を用いさらにこれら酸処理助剤を併用した場合のシュウ酸鉄の除去効果を比較して説明するものである。炭素鋼試験片を95℃、2000ppmのシュウ酸溶液に2時間浸漬し十分に黄色のシュウ酸鉄を生成させた後、過酸化水素単独処理、ギ酸単独処理、ギ酸+過酸化水素併用処理、ギ酸+オゾン併用処理を10分間行い、除去されたシュウ酸鉄量を求めた。
【0095】温度条件は全て80℃、ギ酸濃度は0.02mol/L、過酸化水素濃度は0.03mol/L、オゾン注入量は2g/L/hの条件で行った。シュウ酸鉄の除去法として従来例にある過酸化水素処理では、試験片表面での反応が緩やかであり10分間の処理後もシュウ酸鉄が多量に残留していた。
【0096】一方、ギ酸処理では10分間で表面のシュウ酸鉄はほとんど除去され、過酸化水素処理と比較して約5倍のシュウ酸鉄が除去された。また、ギ酸+過酸化水素、ギ酸+オゾン処理でも同様に10分間の処理でほぼシュウ酸鉄が除去され、ギ酸単独処理よりも更に優れたシュウ酸鉄除去効果を示した。これは、ギ酸による炭素鋼の酸溶解の効果(次式)M(金属母材) + nH+ → Mn+ + (n/2)Hに加えて、炭素鋼から溶出したFe2+イオンと、助剤である過酸化水素またはオゾンとの次式の反応により酸化力の強いヒドロキシルラジカル(・OH)が生じ、溶解が促進されるためである。
【0097】
22 + Fe2+ → Fe3+ +OH-OHO3 + H2O + Fe2+ → Fe3+ + OH-OH + O2従って、請求項3の本発明によれば、シュウ酸鉄をより短時間で効果的に除去することが可能である。
【0098】請求項4に係る発明は、前記ギ酸溶液を電気分解により陽極酸化するか、または前記電気分解に過酸化水素またはオゾンを単独あるいは併用する酸化分解する分解工程を付加することを特徴とする。
【0099】ギ酸中で電気分解を行うと、陽極表面でギ酸は酸化分解し炭酸ガスと水になる。電気分解では、薬剤を添加することなく分解可能であり、薬剤費用及び薬剤添加に係わる装置等費用の低減と、二次廃棄物発生量の増大を抑制することが可能である。また、酸化剤によってもギ酸は炭酸ガスと水に分解する。表1に示す様に、オゾン及び過酸化水素は酸化力を有する。
【0100】
【表1】

【0101】従って、これら酸化剤の直接的酸化によりギ酸は分解する。更に、炭素鋼から溶出したFe2+イオンとこれら酸化剤が反応し生じるヒドロキシルラジカル(OH)は表1に示す様に非常に強い酸化力を持ち、効果的にギ酸を分解する。
HCOOH + 2OH → CO2 + 2H2O【0102】また、過酸化水素とオゾンは、ギ酸の分解により消費されると酸素と水になるためこれらも廃棄物源とならず、放射性の二次廃棄物発生量の増大を抑制することが可能である。上記の電気分解による陽極酸化と、過酸化水素またはオゾンによる酸化分解を併用すると分解効率は更に向上する。従って、請求項4の発明によれば、酸処理に用いたギ酸は二次廃棄物を生じずに、効率的に分解ことが可能である。
【0103】請求項5に係る発明は、前記ギ酸溶液の鉄成分を電気分解による陰極還元で2価鉄イオンとし、前記2価鉄イオンと過酸化水素とにより前記ギ酸溶液を分解する分解工程を付加することを特徴とする。
【0104】鉄イオンを含んだ溶液中で電気分解を行うと、陰極表面で鉄イオンは二価に還元される。Fe2+と過酸化水素との反応により前述の通り酸化力の強いヒドロキシルラジカルが生じ、ギ酸は分解する。従って、請求項5の発明によれば、ギ酸を効率的に分解し、かつ二次廃棄物発生量の増大を抑制することが可能である。
【0105】請求項6に係る発明は、前記ギ酸溶液を電気分解により陽極酸化する分解工程と、陰極還元により生成した二価鉄イオンと過酸化水素との反応による分解工程とを併用することを特徴とする。請求項6の発明によれば、上記分解工程を併用することでギ酸を更に効率的に分解し、かつ二次廃棄物発生量の増大を抑制することが可能である。
【0106】請求項7に係る発明は、請求項5において、前記ギ酸溶液の電気分解による分解工程に、過酸化水素またはオゾンによる酸化分解を併用する分解工程を付加することを特徴とする。請求項7の発明によれば、上記分解手法を併用することでギ酸を更に効率的に分解し、かつ二次廃棄物発生量の増大を抑制することが可能である。
【0107】請求項8に係る発明は、前記過酸化水素またはオゾンによる酸化分解を併用する分解工程に助剤としてリン酸またはリン酸塩を添加することを特徴とする。酸処理により溶液中に溶出したFe2+イオンと過酸化水素またはオゾンとの反応により生じるヒドロキシルラジカルによる金属母材の腐食が抑制できる。リン酸イオン等の陰イオンは、ヒドロキシルラジカルを除去する効果があり金属表面の腐食を抑制する働きがあると考えられる。
【0108】また、リン酸、リン酸塩は金属表面と反応し難溶性の第三リン酸塩(Fe3(PO4)など)の保護皮膜を生成するため、更に腐食抑制効果が高い。従って本発明によれば、過酸化水素やオゾンを用いるギ酸の分解工程において、ラジカルによる金属母材への過度のアタックを抑制することが可能である。
【0109】請求項9に係る発明は放射性核種に汚染された炭素鋼部材からシュウ酸を含む還元除染剤を用いて放射性核種を除去する炭素鋼部材の化学除染方法において、前記炭素鋼部材から前記放射性核種を除去する工程と、放射性核種除去後の炭素鋼部材に酸溶液を接触させる酸処理を施すことにより前記炭素鋼部材に生成したシュウ酸鉄を除去する工程と、前記シュウ酸鉄除去後の炭素鋼部材に放射能付着を抑制する保護皮膜を形成する皮膜処理工程を設けることを特徴とする。
【0110】シュウ酸鉄を除去した清浄な炭素鋼部材に対して保護皮膜を形成させることによりシュウ酸鉄の残留に起因する各種の弊害を取り除くことができ、保護皮膜本来の効果を最大源に発揮することができる大きなメリットがある。
【0111】請求項10に係る発明は、請求項9において、放射能付着を抑制する保護皮膜はニッケルの無電解メッキ処理で生成するニッケル金属層、またはニッケル金属層をフッ素ガスと接触させることにより生成される弗化ニッケルの不働態皮膜であることを特徴とする。
【0112】無電解メッキ処理はメッキ液を当該内に充填し、還元剤の働きで金属イオンを還元させて当該部位に金属ニッケル層を生成させるものである。この金属ニッケル層を付与した炭素鋼表面を再浸漬すると初期的には放射能を含む一次冷却材との接触が絶たれ、腐食は進行しない。ただし、この状態は長続きせず、金属ニッケル層は極めて緩慢に溶解する。
【0113】また、金属ニッケル層には熱影響によって微小欠陥部や亀裂が発生する。その結果、金属ニッケル層と母材との境界や亀裂内部で母材が徐々に接液する。この時、母材中の鉄原子が酸化物を生成することになるが、周囲に過剰のニッケルイオンが存在するためニッケルとの複合酸化物(ニッケルフェライト)を形成することになる。
【0114】その後も母材から鉄原子の供給は続くがいずれもニッケルフェライトとして結晶化し、最終的には表面や亀裂部が全てニッケルフェライトで覆われる状況となる。ニッケルフェライトは熱力学的に安定な酸化物でありこの状態に至れば腐食量が大きい炭素鋼と言えども腐食は進行しない。また、このニッケルフェライト結晶中にはコバルト60などの放射能がほとんど含まれない利点もある。
【0115】これはニッケルフェライト中に放射能が取り込まれるのは2価イオンの格子位置であるが、この量は2価イオンであるコバルト60イオンとその他の2価イオンの濃度比で決定されていることによる。つまり、本事象でニッケルフェライトが生成される際には過剰なニッケルイオンが存在し、その濃度比では取り込まれるコバルト60イオンが極端に少なくなるからである。
【0116】また、ニッケルの無電解メッキ処理で生成するニッケル金属層をフッ素ガスと接触させることにより生成される弗化ニッケルの不働態皮膜である方法によれば、金属ニッケル層はほとんど溶解せず、供用再開後も保護皮膜として存在するため炭素鋼の腐食を防止することその結果、放射能の付着を抑制できる。
【0117】請求項11に係る発明は放射能付着を抑制する保護皮膜は当該炭素鋼部材に対し300〜600℃の酸素またはオゾンを含む気相中で加熱処理することにより生成される酸化皮膜であることを特徴とする。
【0118】一般的に鉄鋼材料においては供用温度、ないしはそれ以上の温度で酸化処理を行うと強固な酸化皮膜が形成され、供用後における腐食進行が抑制できることが知られている。これは前述した原子炉一次系配管や構成機器表面への放射能付着を抑制する技術のうち■酸化皮膜付与・プレフィルミングに分類される技術である。
【0119】この技術は主にステンレス鋼を対象とした技術であると述べたが本発明者らは炭素鋼にも有効であろうと期待し、空気中で酸化処理させた試験体を作成し放射能付着試験を実施し、放射能付着量を比較した。
【0120】酸化処理の条件は300℃、400℃、500℃、600℃の4条件とし、空気中で各5時間の熱処理を行い、ループ試験に供した。その結果、400℃の条件が最も抑制効果が大きかったが、その他のいずれの温度条件でも放射能付着量は酸化処理を行わない試験体より少なく、空気中酸化処理は放射能の付着を抑制することができることが確認された。
【0121】請求項12に係る発明は無電解メッキ処理の還元剤として次亜りん酸塩、水素化ホウ素化合物、ヒドラジンのいずれかを用い、無電解メッキ処理の錯化剤としてクエン酸または酒石酸を用いることを特徴とする。
【0122】これらの還元剤と錯化剤を使用することにより本発明の無電解メッキ処理ではアルカリ性溶液における水酸化物沈殿の防止、メッキ速度の調整、メッキ液の分解防止が可能となる。また、このメッキ処理で生成される金属層はニッケルを90〜92%、リンを8〜10%含有するアモルファス合金であり、膜厚が増大しても皮膜中の結晶の成長が進まず、均一な表面が得られる効果がある。
【0123】請求項13に係る発明は無電解メッキを厚さ20ミクロン以下、不働態皮膜は3ミクロン以下に規定することを特徴とする。無電解メッキでは著しく厚みを増すと、溶解するニッケル量が増大するばかりでなく熱応力によって亀裂を発生しやすくなるため、原子力発電プラントでの適用を考慮した場合20ミクロン以下が妥当な厚みである。一方、弗化ニッケルの不働態膜の厚みは3ミクロン以下で十分である。
【0124】請求項14に係る発明は酸素を含む気相中の加熱処理の酸素濃度は1体積%以上であることを特徴とする。ここで、気相中の酸素の濃度を1体積%以上としたのは以下のような実験結果に基づく理由である。つまり、本発明者らは前述の酸化皮膜の処理温度を変えた試験体の製作時に酸素濃度を変えた試験体を同時に製作し、放射能付着試験に供している。サーベイした酸素濃度は1、5、21体積%の3条件である。しかしながら、いずれの酸素濃度においても製作された試験体への放射能付着量は同等であった。そこで、本発明者らは酸素濃度が1体積%以上あれば同等の効果が得られるものと推定して本発明提案に至っている。
【0125】請求項15に係る発明は、バッファタンクと、このバッファタンクから流出する水と除染剤を注入して混合した除染液を除染対象炭素鋼部材に接液し、接液後の除染液を前記バッファタンクに流入させる除染液循環ラインと、前記バッファタンクの水流出側から前記除染対象炭素鋼部材までの間の除染液循環ラインに接続されたシュウ酸溶液注入装置、過酸化水素注入装置及びギ酸注入装置と、このギ酸注入装置と前記除染対象炭素鋼部材の流入側との間に接続した酸素ガス供給源と、前記除染対象炭素鋼部材を加熱する加熱装置とを具備したことを特徴とする。
【0126】原子力発電プラント等においてすでに据え付けられた大口径の配管や大型機器に対して加熱処理を施し、接液面に酸化皮膜を付与することは技術的に困難な課題であったが、板状またはリボン状のバンド型ヒータを除染対象炭素鋼部材に被覆するか、もしくは高周波誘導加熱装置などを配置することにより達成できる。特に高周波誘導加熱装置を用いると、処理温度が高温になっても対応できるばかりでなく、高周波の周波数を変えることによって任意の深さまで容易に加熱することができ、効率的に除染対象炭素鋼部材を加熱して酸化皮膜を形成することができる。
【0127】
【発明の実施の形態】図1により本発明に係る炭素鋼部材の化学除染方法の第1の実施の形態を説明する。図1は本実施の形態を図13に示した原子炉冷却材浄化系の配管等に相当する炭素鋼で構成される除染対象物に適用する化学除染装置の基本系統構成の一例を示している。
【0128】図1において、符号15は除染対象炭素鋼部材で、例えば配管の内面を除染する例で示している。除染対象炭素鋼部材15の両端側に循環ライン16の一端が接続され、循環ライン16の他端はタンクともなるバッファ17に接続している。バッファタンク17から除染液が流出する側の循環ライン16には流出した除染液を加熱するためのヒータ19を有する循環ポンプ18が分岐接続し、ヒータ19で加熱された除染液がバッファタンク17内に流入するようになっている。
【0129】また、バッファタンク17から除染液が流出して除染対象炭素鋼部材15に流入する側の循環ライン16には、下流側に沿ってシュウ酸溶液調整タンク20に接続した注入ポンプ21、過酸化水素注入装置33、ギ酸調整タンク31に接続した注入ポンプ32、除染液注入ポンプ22、陽極34及び陰極35を有する電解装置24にバイパス接続するバイパスライン43が順次接続されている。
【0130】一方、除染対象炭素鋼部材15から除染液が流出してバッファタンク17に流入する循環ライン16には下流側に沿って除染水質を監視するための水質計測器30、除染液を回収する液送ポンプ23、除染液の浄化を行うポンプ45、陽イオン交換樹脂塔25及び混床樹脂塔26を備えたバイパスライン44が順次接続されている。また、バッファタンク17の頂部には湿分分離器27、フィルタ28及び排気ブロア29が順次接続されて、排ガス処理が行われる。
【0131】つぎに、上記除染装置による除染操作を以下に説明する。図1に示した化学除染装置系統内に水を張り循環させ、バッファタンク17に付設したヒータ19で昇温した後、シュウ酸調整タンク20により、除染対象炭素鋼部材15内に注入した際に所定の濃度となる様に濃度調整したシュウ酸を、注入ポンプ21を通して循環ライン16に注入する。除染対象炭素鋼部材15にシュウ酸除染液を循環させ、除染対象炭素鋼部材15内面に付着した放射性核種を含んだ酸化皮膜を溶解する。
【0132】水質計測器30では、除染対象炭素鋼部材15出口から流出する除染液の水質を常時監視して測定する。計測項目は除染液の温度、pH、導電率、酸化還元電位であり、これらの計測値により除染液温度、シュウ酸濃度、酸化還元電位を監視する。除染液は定期的にサンプリングし、放射性核種濃度、溶出金属濃度を分析する。
【0133】除染液中の放射性核種濃度が高い場合および酸化還元電位制御や鉄イオン価数制御のためFe2+イオンの除去が必要な場合は、陽イオン交換樹脂25に通水し、放射性核種及び溶出金属を捕集して、除去する。除染液中の鉄イオンの価数調整は、電解装置24内の陽極34と陰極35に直流電圧を印加することによる陰極35でのFe3+のFe2+への還元反応と、陽極34でのFe2+のFe3+への酸化反応により行う。
【0134】これらの反応は電解装置24内で同時に生ずるが、陽極34対陰極35の面積比を1より大とするとFe2+生成が優位となり、電解の極性を反転するとFe3+生成が優位となり、必要に応じて酸化、還元の各方向に反応を制御することが可能である。放射性核種の溶出が飽和する傾向を示すまでシュウ酸工程を継続し、その後、シュウ酸分解工程に入る。
【0135】電解装置24の陽極34と陰極35にシュウ酸分解に適切な電圧を印加し電解すると、陽極34の表面でシュウ酸は酸化分解する。この時、過酸化水素またはオゾン等の酸化剤を併用すると、シュウ酸分解は更に促進する。
【0136】電解及びこれら酸化剤の併用法は、シュウ酸鉄除去工程後のギ酸溶液分解にも用いることが可能であるため、電解装置と、オゾン発生器あるいは過酸化水素注入装置を、シュウ酸分解及びギ酸溶液分解の両目的に用いれば、除染装置をより合理的に利用できる。
【0137】シュウ酸除染中及びシュウ酸分解中に系内から発生するガス(シュウ酸の消費・分解により発生するCO2、電解時に発生するH2、O2)は、バッファタンク17から排気ブロア29に吸引され、湿分分離器27、フィルタ28により処理し、排気系に排出される。シュウ酸濃度が所定濃度まで低下した後、混床樹脂塔26に通水し、除染液の浄化を行う。
【0138】除染対象炭素鋼部材15の線量の低下度合いに応じて、シュウ酸除染工程からシュウ酸分解工程および浄化工程、の一連の工程を複数サイクル繰り返す。シュウ酸鉄除去のための酸処理は、最終除染サイクルの浄化工程前に実施する。シュウ酸分解工程によりシュウ酸濃度が十分低下した時点で、ギ酸調整タンク31により所定濃度に調整したギ酸溶液を注入ポンプ32により注入する。
【0139】ギ酸調整タンク31及び注入ポンプ32は、シュウ酸の注入系統と別途設けても良いが、シュウ酸注入時にギ酸調整タンク31内及び注入ポンプ32を水洗浄し、ギ酸使用時の残留シュウ酸の混入を防止すれば、シュウ酸注入系統と共用として問題なく、除染装置の合理化が可能である。
【0140】ギ酸溶液を除染対象炭素鋼部位15に供給し、循環して、除染対象炭素鋼部材15内面に残留したシュウ酸鉄を除去する。図17に示したように、ギ酸による酸処理と、助剤として過酸化水素またはオゾンを併用すると更にシュウ酸鉄の除去効果が向上する。
【0141】また、図2によりギ酸溶液濃度によるシュウ酸鉄除去量への影響を説明する。図2はシュウ酸鉄除去量のギ酸濃度依存性を示している。炭素鋼部材の試験片を95℃、2000ppmのシュウ酸溶液に2時間浸漬し十分に黄色のシュウ酸鉄を生成させた後、80℃の100〜2000 ppmのギ酸溶液に10分間浸漬し、除去されたシュウ酸鉄量を求めた。
【0142】ギ酸濃度が1000ppmより低い条件では、浸漬中に試験片の状態に大きな変化は見られなかった。ギ酸濃度1000ppm以上では、試験片表面からのガス発生があり、試験片の炭素鋼部材母材が溶解していた。図2から明らかなように、シュウ酸鉄除去量はギ酸濃度が1000ppm前後から大きく上昇している。
【0143】従って、酸処理時のギ酸濃度は1000ppm以上の条件で実施するとより短時間でシュウ酸鉄を除去することが可能である。水質計測器30及びギ酸溶液のサンプリング分析により、シュウ酸鉄の除去が定常状態になったと判断できた時点で、ギ酸分解工程に移行する。過酸化水素注入装置33からギ酸と当量の過酸化水素を循環ライン16に注入する。
【0144】過酸化水素による直接酸化、及び炭素鋼から溶出したFe2+と過酸化水素との反応により生じるヒドロキシルラジカルによりギ酸は酸化分解する。この時、シュウ酸分解用の電解装置24により電気分解を行うと、陽極酸化によりギ酸が分解されるため、更に効率的に分解処理を行うことが可能である。
【0145】ギ酸の分解生成物であるCO2、また電解を併用する場合に発生するH2、O2の排ガスは、シュウ酸分解時と同様に、バッファタンク17から排気ブロア29に吸引され、湿分分離器27、フィルタ28を通過し、既設の排気系に排出される。ギ酸分解後、除去されたシュウ酸鉄及び溶出した金属成分を、混床樹脂26により捕集、除去し、排水可能な水質条件まで浄化する。以上の化学除染操作により除染対象炭素鋼部材15の炭素鋼に対しシュウ酸鉄の残留なく除染を実施することが可能である。
【0146】つぎに図3により本発明に係る第2の実施の形態を説明する。図3に示した除染装置は、第1の実施の形態と同様に炭素鋼で構成される機器・配管等を対象とした除染装置の構成例である。図3中、図1と同一部分には同一符号を付して重複する部分の説明は省略する。
【0147】本実施の形態は第1の実施の形態の場合と基本的な除染機器構成はほぼ同様であるが、異なる点は、オゾン注入系としてオゾン発生器36及びミキサー37を除染液流入側の循環ライン16に取り付け、排ガス処理系にオゾン分解装置38を取り付けたことにある。オゾンは、シュウ酸分解、ギ酸処理助剤、ギ酸分解に利用できる。
【0148】各工程において、オゾン発生器36から発生したオゾンガスは、ミキサー37を介して流入側循環ライン16を流れる系統溶液中に注入し、溶解する。シュウ酸分解工程においては、電解装置24での陽極酸化分解と、オゾン及びオゾンと溶出Fe2+とから生成するヒドロキシルラジカルによる酸化分解とを併用することにより、シュウ酸分解に要する時間を大幅に短縮できる。
【0149】ギ酸処理工程では、酸処理助剤として上記と同様に生成するヒドロキシルラジカルにより、炭素鋼母材の溶解が促進され、シュウ酸鉄除去に要する時間を短縮できる。ギ酸分解工程では、オゾン及び上記ヒドロキシルラジカルによる酸化分解によりギ酸を分解でき、この時更にシュウ酸分解用の電解装置24により電気分解を行うと陽極酸化により、ギ酸が分解されるため、更に効率的に分解処理を行うことが可能である。
【0150】また、これらの各工程には過酸化水素を単独、あるいはオゾンと併用しても良い。過酸化水素あるいはオゾンを用いる分解工程では、助剤としてリン酸またはリン酸塩を添加すると金属表面の腐食を抑制する効果がある。オゾンガスを除染系内に注入すると、消費されなかった余剰のオゾンが排ガスに混入する。
【0151】日本の作業環境における排オゾン濃度の規制は0.1ppmであるため、排ガス中のオゾンをオゾン分解装置38により0.1ppm以下とする必要がある。オゾン分解装置38としては、活性炭や金属触媒が有効である。数百ppm以下程度の低濃度オゾンガスの場合は活性炭が適する。オゾンは活性炭と下式の様に反応し、酸素と二酸化炭素に分解する。
2O3 + C → CO2 + 2O2【0152】ハニカム型活性炭フィルタによる低濃度オゾンガスの分解試験では、20ppmのオゾンガスを5mmtの活性炭フィルタに約0.1秒接触させることで99%以上の分解効率が得られた。処理対象のオゾンガス濃度と使用期間に応じて活性炭量及び接触時間を調整し、排出オゾン濃度基準を満足することが可能である。
【0153】シュウ酸分解、ギ酸分解等にオゾンを使用する場合、反応する有機物濃度が高いため大半のオゾンが分解反応に消費される。従って、排ガス中のオゾン濃度は低く、活性炭を利用した分解装置が適用可能である。また、活性炭は安価であるため、一般にオゾン分解剤として用いられている。
【0154】しかし、排ガス中のオゾン濃度が1000ppm以上の高濃度、あるいは多量のオゾン処理を必要とする場合は、オゾンの分解により活性炭が消耗されるため、必要活性炭量が多くなり分解装置の規模が大きくなる。その様な高濃度オゾンの処理には、マンガン、鉄等の金属酸化物触媒による分解が有効である。金属触媒(M)との反応により、オゾンは酸素に分解される。
3 + M → O2 + MOMO + O3 → 2O2 + M【0155】酸化マンガン等の金属酸化物からなる触媒フィルタによるオゾン分解試験では、極めて高い分解効率が得られ、入口オゾンガス濃度38000ppmを6000時間以上通気しても、排出オゾンガス濃度は0.01ppm以下であった。触媒は反応熱により粉体化する等の機械的強度の劣化以外は、触媒毒となる成分が含まれない限り消耗しない。
【0156】金属触媒に対する触媒毒は、金属化合物、ハロゲン化合物、窒素酸化物、硫黄酸化物等であり、いずれも化学除染時の排ガス中に多量に含まれることはない。従って、触媒を用いるとコンパクトな分解装置で、高濃度かつ多量のオゾンガスを処理することが可能である。
【0157】また、オゾンと反応する薬液中に排ガスを通気する薬剤処理も利用可能である。特に、シュウ酸等の分解が可能な有機系薬剤を使用すれば、二次廃棄物を発生せずに排オゾン処理を行うことが可能である。
【0158】図4により本発明に係る第3の実施の形態を説明する。本実施の形態は除染対象物に炭素鋼とステンレス鋼が混在する系統を除染対象とし、炭素鋼とステンレス鋼が隔離可能な場合の除染装置の構成例である。除染対象にステンレス鋼が存在する場合は、除染効果を高めるためシュウ酸工程に加えて、酸化工程が必要となる。図4に示す装置は、第2の実施の形態で説明した図3に示す除染装置機器に、酸化剤としてオゾンを用いるためのオゾン注入系機器類を付加した構成である。除染対象炭素鋼部材15と除染対象ステンレス鋼部材44は隔離弁39により接続されている。なお、図4中、図3と同一部分には同一符号を付して重複する部分の説明は省略する。
【0159】オゾン酸化工程を実施する際は、隔離弁39を閉じ、除染対象ステンレス鋼部材40と除染対象炭素鋼部材15を隔離する。循環ライン16及びステンレス鋼除染ライン41により、除染対象ステンレス鋼部材40のみに除染液を循環させる。水質計測器30により、除染液温度、pH、酸化還元電位、導電率の他、溶存オゾン濃度を常時計測し、除染に適切な溶存オゾン濃度範囲を維持するよう、オゾン発生器36からのオゾンガス注入量を調整する。
【0160】なお、炭酸、炭酸塩、炭酸水素塩、硼酸、硼酸塩、硫酸、硫酸塩、リン酸、リン酸塩、リン酸水素塩を上記オゾン除染液に添加するとステンレス鋼の腐食を抑制する効果がある。これらを除染液中に溶解することで生じる陰イオンは、オゾンが水中で分解して生じる反応活性の高い化学種を除去する効果があり、金属表面の腐食を抑制する働きがあると考えられる。
【0161】また、リン酸、リン酸塩の場合は金属表面と反応し難溶性の第三リン酸塩(Fe3(PO4)など)の保護皮膜を生成するため、更に腐食抑制効果が高い。オゾン工程では除染液を定期的にサンプリングし、放射性核種濃度、溶出金属濃度を分析し、放射性核種、あるいはクロムの溶出が飽和傾向を示すまでオゾン工程を継続する。
【0162】オゾン工程後は、シュウ酸溶液をシュウ酸調整タンク17から注入をすることで残留したオゾンが短時間に分解し、連続的にシュウ酸工程に移行する。シュウ酸工程では、両部材とも十分な除染効果を得られるように、除染対象炭素鋼部材15と除染対象ステンレス鋼部材40を必要に応じ隔離あるいは同時通水し、除染する。
【0163】最終サイクルのシュウ酸分解工程後にギ酸処理を実施する際、ギ酸処理により剥離したシュウ酸鉄がステンレス鋼表面に沈積しない様、予め隔離弁39を閉じ、除染対象ステンレス鋼部材40には通水しない。ギ酸処理工程では助剤として過酸化水素を併用することもできる。シュウ酸鉄除去後ギ酸廃液を過酸化水素あるいは電気分解で分解し、混床樹脂26により浄化する。
【0164】浄化工程の下流側に、隔離弁39を開き除染対象ステンレス鋼部材40と除染対象炭素鋼部材15とを同時通水しながら混床樹脂26により、排出可能水質まで浄化する。以上の操作により、炭素鋼とステンレス鋼が混在する除染対象物に対しても、シュウ酸鉄の残留することなく、除染を実施することが可能である。
【0165】つぎに、図5により本発明の第4の実施の形態を説明する。本実施の形態は第3の実施の形態と同様に、除染対象炭素鋼部材15と除染対象ステンレス鋼部材40が混在する系統を除染対象とし、炭素鋼とステンレス鋼が隔離可能な場合の除染装置の構成例である。第3の実施の形態と基本的に同様の除染装置構成において、オゾン発生器36から発生したオゾンガスを、除染対象ステンレス鋼部材40と除染対象炭素鋼部材15に各々注入可能なようにミキサー37、42を設置したことにある。
【0166】オゾンは酸化除染剤、シュウ酸分解、ギ酸処理助剤、ギ酸分解に利用可能できる。オゾンを多工程で有効利用することにより、過酸化水素を用いずに除染及びシュウ酸鉄除去の全ての操作を行うことが可能である。
【0167】また、炭素鋼とステンレス鋼が混在しこれらを隔離できない場合は、炭素鋼系統にも酸化除染液が通水される。炭素鋼系統に酸化剤溶液を通水すると、炭素鋼表面との反応により酸化剤は消費される。炭素鋼系統で酸化剤が消費されると、ステンレス鋼部位に十分な酸化剤が供給されず除染効果が低くなる問題がある。
【0168】図6(a)は、従来の化学除染に用いられる過マンガン酸イオンを含む酸化剤を炭素鋼系統に通水した際の過マンガン酸イオン濃度を、溶液中の実濃度とステンレス鋼除染に必要な除染目標濃度に対する比で示す図である。図6(b)は、ステンレス鋼と炭素鋼系統中に、同一の溶液条件、オゾン注入条件でオゾンを注入した場合の溶存オゾン濃度を、溶液中の実濃度とステンレス鋼除染に必要な除染目標濃度に対する比で示す図である。
【0169】図6(a)、(b)ともに接液部の金属表面積と除染液量の比は10cm2/cm3である。図6(a)から明らかなように、過マンガン酸イオンは除染目標濃度相当量を添加しても目標濃度の半分程度しか得られない。その後、酸化剤を追加したが、一時的に濃度が上昇しても30分以内で減少し、目標濃度相当の添加量の約2.5倍量を添加しても、除染目標濃度は得られない。除染目標濃度を達成するためには更に多量の薬剤添加が必要となり、それに伴い二次廃棄物量が増大する。
【0170】一方、図6(b)に示すオゾンの場合、ステンレス鋼系統と比較すると炭素鋼系統中では溶存オゾン濃度は低下しているものの、約2割程度の低下である。オゾンは除染液中にオゾンガスを連続注入するため、消費されても常時追加供給され濃度低下が少ないと考えられる。2割程度の減少であれば、オゾンガス注入量を増加させることで目標オゾン濃度を得ることが可能であり、オゾン注入量を増加させても二次廃棄物は増大しない。
【0171】また、シュウ酸工程、シュウ酸分解工程及びシュウ酸鉄除去工程は、ステンレス鋼部位に炭素鋼部位から生じる不溶解成分が沈積しない様、適宜フラッシングや浄化を行うなど留意すれば、炭素鋼とステンレス鋼の両材料の健全性を同時に確保する条件で、これらの工程を実施することは可能である。
【0172】従って、炭素鋼とステンレス鋼が混在し隔離不可能な除染対象物に対しても、オゾンを酸化除染剤として使用することにより、シュウ酸鉄が残留することなく、除染を実施することが可能である。
【0173】つぎに図7(a)、(b)によりステンレス鋼、炭素鋼混在系統を除染対象とする場合の、除染の主要工程例を説明する。図7(a)に示すように、除染主要工程は、第1サイクルにおいて、シュウ酸処理、シュウ酸分解、浄化工程からなり、第2、第3サイクルにおいて、オゾン処理、シュウ酸処理、シュウ酸分解、浄化工程を組み合わせた工程からなる。以後、工程時間を比較して示している。本発明のシュウ酸鉄除去工程は最終サイクルのシュウ酸分解工程後期に実施する。
【0174】シュウ酸鉄(II)は、水には難溶であり、熱水中でのシュウ酸鉄(II)の溶解度は0.026g/100gである。積極的にシュウ酸鉄を除去する方法を用いない場合、液中のシュウ酸鉄濃度がこの溶解度以下となる様にシュウ酸及び鉄を除去し、炭素鋼表面に析出しているシュウ酸鉄を溶解する。
【0175】しかし、溶解した成分が液中から除去されないと更なる溶解は進行しない。そのため、このような方法ではシュウ酸鉄の溶解除去に時間を要し、同時に排水基準まで浄化する時間が長くなる。これまでの除染実績から、除染後の金属表面にシュウ酸鉄が残留していると、シュウ酸鉄が残留していない場合と比較して、シュウ酸分解と浄化時間に10時間以上長く要すると推測される。
【0176】前述の通り、ギ酸あるいはギ酸と助剤併用によるシュウ酸鉄の除去は短時間で効果があるため、実機でのギ酸処理工程は1時間以内で終了すると考えられる。また、図8に過酸化水素とFe2+によるギ酸溶液の分解効果を示す。50000ppmのギ酸溶液にFe2+存在条件下で1.5倍当量の過酸化水素を添加したところ、温度条件が80℃では30分以内、50℃では90分以内で分解した。最終浄化前の除染液温度は60℃前後と予想されるため、50℃条件の結果と同等の分解効率である。
【0177】また、シュウ酸鉄除去のためのギ酸処理は、前述した様に、本分解試験時の50分の1の濃度である1000ppm程度から効果的である。ギ酸濃度を1000ppm程度の条件で用いれば、分解所要時間は50℃条件の90分から大幅に短縮され1時間以内で十分分解可能と考えられる。
【0178】図7(b)に示したように、従来のシュウ酸分解・浄化工程と比較して、本発明ではシュウ酸鉄除去工程が付加されるため工程数自体は増加する。しかし、ギ酸処理及びギ酸分解処理工程は合計しても1〜2時間程度の短時間で実施可能であり、前述のようにシュウ酸鉄の積極的な除去手法を実施しない場合のシュウ酸分解・浄化工程はシュウ酸鉄が除去されている場合より10時間以上長く要することから、工程数は増加しても本発明により従来手法より工期を短縮することが可能である。
【0179】図9により本発明の第5の実施の形態を説明する。図9は本実施の形態に係る化学除染方法を、図13の原子炉冷却材浄化系の配管等に相当する炭素鋼で構成される除染対象物に適用する化学除染装置の基本系統構成の一例で示す。なお、図9中、図1と同一部分には同一符号を付して重複する部分は省略する。本実施の形態は図1に示した第1の実施の形態において、循環ライン16にバルブV1〜V3を取り付け、除染対象炭素鋼部材15の除染液出口側から分岐してバルブV4とV5を設け、バルブV4とバルブV3との間にメッキ液循環ライン48を設け、メッキ液循環ライン48にポンプ50、メッキ液再生タンク53、ヒータ52を有するメッキ液タンク51及びポンプ49を順次接続したことにある。
【0180】本実施の形態では、まず第1の実施の形態に示す一連の化学除染操作により除染対象炭素鋼部材15に対しシュウ酸鉄が残留することなく除染を実施する。その後、最終工程で炭素鋼部材内面に放射能付着を抑制する保護皮膜をメッキにより形成する皮膜処理工程が行われる。
【0181】具体的な皮膜処理工程は以下に示す通りである。一連の化学除染処理終了後、バルブV1、V2を閉めて除染対象炭素鋼部材15を除染系統から隔離する。次にバルブV5を開放し、隔離された除染系統の浄化水を系外に排出する。その後、バルブV3、V4を開放し、メッキ液循環ライン48を接続する。ポンプ49、50を起動させ、メッキ液タンク51に貯留されているメッキ液を除染対象炭素鋼部材15に流入させる。
【0182】なお、メッキ液タンク51にはヒータ52が設けられており、メッキ液を所定の温度に保持している。除染対象炭素鋼部材15を通過したメッキ液はメッキ液再生タンク53に送られ、メッキ液濃度の調整や不純物の除去を行った後、メッキ液タンク51に戻る。除染対象炭素鋼部材15が所定濃度と所定温度のメッキ液に接液するとメッキ層が生成される。
【0183】所望のメッキ層が積層する時間が経過した後、バルブV3、V4を閉じ、除染対象炭素鋼部材15をメッキ液循環ライン48から隔離する。その後バルブV5を開放して除染対象炭素鋼部材15に溜まっているメッキ液を排出させる。更に、バルブV5を閉め、バルブV1、V2を開放し、除染ラインの循環ライン16と接続、循環ライン16のポンプや浄化設備を使用してメッキ液の洗浄を行う。
【0184】つぎに図10により、本発明の第6の実施の形態を説明する。本実施の形態では第5の実施の形態における構成機器にフッ素ガスボンベ54を設置したことにあり、その他の部分は図9と同様である。本実施の形態では無電解メッキ終了後のメッキ液排出にフッ素ガスを用いている。つまり、所望のメッキ層が積層する時間が経過した後、バルブV3、V4を閉じ、除染対象炭素鋼部材15をメッキ液循環ラインから隔離する。
【0185】その後、バルブV5を開放して除染対象炭素鋼部材15に溜まっているメッキ液を排出させるがこの際にフッ素ガスボンベ54からフッ素ガスを系統に送り込み、ガス圧によってメッキ液の排出を図るとともに除染対象炭素鋼部材15表面に生成しているメッキ層の不働態皮膜化を同時に行う。
【0186】つぎに図11により本発明の第7の実施の形態を説明する。図11は本発明に係る化学除染方法を、図13に示した原子炉冷却材浄化系の配管等に相当する炭素鋼で構成される除染対象物に適用する化学除染装置の基本系統構成の一例で示す。
【0187】本実施の形態は図11に示したように除染対象炭素鋼部材15の除染液流入側循環ライン16のバルブV2の下流側に分岐してバルブV3を介して混合ガスボンベ58を設置するとともに、除染対象炭素鋼部材15の表面に加熱ヒータ55を取り付けたことにある。加熱ヒータ55には温度計56と温度調節器57が取り付けられている。また、混合ガスボンベ58には酸素を1体積%以上含む窒素ガスとの混合ガスが充填されている。
【0188】本実施の形態では、まず第1の実施の形態における一連の化学除染操作により除染対象炭素鋼部材15に対しシュウ酸鉄の残留なく除染を実施する。その後、最終工程で除染対象炭素鋼部材15の内面に放射能付着を抑制する保護皮膜を形成する皮膜処理工程が行われる。
【0189】具体的な皮膜処理工程は以下に示す通りである。一連の化学除染処理終了後、バルブV1、V2を閉めて除染対象炭素鋼部材15を除染系統から隔離する。次にバルブV1に直列接続したバルブV5を開放し、隔離された除染系統の浄化水を系外に排出する。その後、バルブV3を開放して、混合ガスボンベ58から1体積%以上の酸素を含む混合ガスを除染対象炭素鋼部材15に流入する。系統の気相部が十分注入したガスと置換されたところで、バルブV5を閉じる。
【0190】除染対象炭素鋼部材15には加熱ヒータ55が巻き付けてあり、除染対象炭素鋼部材15の表面温度を温度計56で計測しながら温度調節器57による電流値の調整により皮膜処理工程が行われる。ここで、設定される温度は300〜600℃の温度範囲とし、加熱時間は最長でも5時間で十分である。この熱処理によって配管表面には放射能付着抑制に有効な保護皮膜が形成される。
【0191】また、除染対象炭素鋼部位が広い面積を占める場合、初期に充填した混合ガス中の酸素濃度が酸化皮膜生成に伴う消費によって1体積%を下回る可能性もあるので、予め酸素濃度を高めに設定したり、もしくは適宜濃度を測定し、状況によっては酸素成分を追加するなどの配慮が必要となる。ただし、このような作業は空気ガス(酸素21体積%、残り窒素ガス)を予め充填しておくことによって大部分の場合回避できる。
【0192】つぎに図12により本発明に係る第8の実施の形態を説明する。図12は本実施の形態に係る化学除染方法を、図1の原子炉冷却材浄化系の配管等に相当する炭素鋼で構成される除染対象物に適用する化学除染装置の基本系統構成の一例で示す。
【0193】本実施の形態は図11に示した第7の実施の形態において、除染対象炭素鋼部材15の加熱ヒータ55の代りに移動自在の高周波誘導炉59を設け、高周波誘導炉59を制御装置60に接続したことにある。
【0194】本実施の形態では、まず第1の実施の形態に示す一連の化学除染操作により除染対象炭素鋼部材15に対しシュウ酸鉄の残留なく除染を実施する。その後、最終工程で除染対象炭素鋼部材15の内面に放射能付着を抑制する保護皮膜を形成する皮膜処理工程が行われる。
【0195】具体的な皮膜処理工程は以下に示す通りである。一連の化学除染処理終了後、バルブV1、V2を閉めて除染対象炭素鋼部材15を除染系統から隔離する。次にバルブV5を開放し、隔離された除染系統の浄化水を系外に排出する。
【0196】その後、バルブV3を開放して、混合ガスボンベ58から1体積%以上の酸素を含む混合ガスを除染対象炭素鋼部材15に流入する。系統の気相部が十分注入したガスと置換されたところで、バルブV5を閉じる。除染対象炭素鋼部材15には高周波誘導炉59が設置されており配管の表面温度を温度計56で計測しながら制御装置60によって皮膜処理工程が行われる。
【0197】ここで、設定される温度は300〜600℃の温度範囲とし、加熱時間は最長でも5時間で十分である。この熱処理によって配管表面には放射能付着抑制に有効な保護皮膜が形成される。本実施の形態で用いる高周波誘導炉59は移動が容易のハンディ型であり、除染対象炭素鋼部材15を取り囲むようにして皮膜処理を施すことができる。
【0198】
【発明の効果】本発明によれば、放射性核種に汚染された炭素鋼部材からシュウ酸を含む還元除染剤を用いて放射性核種を除去する化学除染方法において、化学除染後に存在するシュウ酸鉄を材料の健全性を維持しつつ、極めて短時間で効果的にこれを除去し、除染対象炭素鋼部材の内面を清浄とすることで、放射能の付着加速現象を抑制し、さらにはホットスポットの発生を防止することができる。
【0199】また、本発明によれば化学除染後の最終工程においてシュウ酸鉄の除去によって清浄となった炭素鋼部材に放射能付着を抑制できる保護皮膜を形成するので、その有効性を最大限発揮させることができる。
【0200】更に、本発明に係る化学除染装置によれば、定期検査、工事等の際の作業員の放射線被ばくが低減されるとともに、検査及び工事期間、コストの低減が可能となる。また、従来のシュウ酸鉄の残留を防止するシュウ酸分解・浄化工程と比較して短時間でシュウ酸鉄除去が可能であることから、除染工程自体も短縮可能となる。




 

 


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