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発明の名称 無線受信装置、受信応答ベクトル推定方法および受信応答ベクトル推定プログラム
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2003−273838(P2003−273838A)
公開日 平成15年9月26日(2003.9.26)
出願番号 特願2002−74218(P2002−74218)
出願日 平成14年3月18日(2002.3.18)
代理人 【識別番号】100064746
【弁理士】
【氏名又は名称】深見 久郎 (外3名)
【テーマコード(参考)】
5J021
5K022
5K059
5K067
【Fターム(参考)】
5J021 AA04 DB01 EA07 FA13 FA29 GA02 HA10 
5K022 FF00
5K059 AA12 CC03 CC04 CC09 DD31
5K067 AA21 BB04 BB21 CC24 EE02 EE10 EE56 HH22 JJ11 JJ51 KK03
発明者 宮田 健雄 / 土居 義晴 / 中尾 正悟 / 伊藤 忠芳
要約 課題
少ない演算量で受信応答ベクトルを高精度に推定することができる無線受信装置、受信応答ベクトル推定方法および受信応答ベクトル推定プログラムを提供する。

解決手段
アダプティブアレイ処理によりシンボルごとに抽出された複数ユーザの変調信号相互相関値のうち、組合せて時間平均したときにゼロとなる組合せを選択する。選択された組合せに対応するシンボルで受信応答ベクトルが演算される。これらの処理はDSP14で実行される。
特許請求の範囲
【請求項1】 複数のアンテナを用いて複数の移動端末装置からの信号を受信する無線受信装置であって、前記複数の移動端末装置からの信号の受信タイミング差はシンボル期間の整数倍であり、前記複数のアンテナで受信した前記複数の移動端末装置からの信号にアダプティブアレイ処理を施して、前記複数のの移動端末装置からの信号をシンボルごとに複数の所定の基準信号点のいずれかにおいて抽出する信号抽出手段と、前記信号抽出手段によってシンボルごとに抽出された前記複数の移動端末装置からの信号の相互相関値を、シンボルごとに前記複数の所定の基準信号点のいずれかとして特定する相関値算出手段と、前記相関値算出手段によりそれぞれのシンボルに対応して算出された複数の前記相互相関値のうち、組合せて平均化したときに(0+0j)となる前記相互相関値の組合せを選択する相関値選択手段と、前記選択された相互相関値の組合せにそれぞれ対応するシンボルにおいて前記受信応答ベクトルを推定する演算手段とを備える、無線受信装置。
【請求項2】 前記組合せて平均化したときに(0+0j)となる前記相互相関値の組合せの個数が所定数以上あるか否かを判定する組合せ数判定手段と、前記組合せて平均化したときに(0+0j)となる前記相互相関値の組合せの個数が前記所定数以上あるときに、前記演算手段による受信応答ベクトルの推定を許可する推定許可手段とをさらに備える、請求項1に記載の無線受信装置。
【請求項3】 前記複数の移動端末装置からの信号の受信タイミング差がシンボル期間の整数倍であるか否かを判定するタイミング差判定手段と、前記複数の移動端末装置からの信号の受信タイミング差がシンボル期間の整数倍でなければ、前記複数の移動端末装置からの信号の受信タイミング差がシンボル期間の整数倍となるように前記複数の移動端末装置に対する送信タイミングを制御する送信タイミング制御手段とをさらに備える、請求項1または2に記載の無線受信装置。
【請求項4】 前記送信タイミング制御手段は、前記複数の移動端末装置がそれぞれ固有の既知参照信号に対応している場合には、前記複数の移動端末装置からの信号の受信タイミング差がゼロとなるように送信タイミングを制御する、請求項3に記載の無線受信装置。
【請求項5】 前記相関値選択手段は、前記相関値算出手段によりあるシンボルに対応して算出された前記相互相関値に対して(−1+0j)を乗算する乗算手段と、前記乗算手段の乗算結果と同じ値の前記相互相関値が算出された他のシンボルを特定するシンボル特定手段と、前記あるシンボルおよび前記他のシンボルのそれぞれにおける前記相互相関値を前記相互相関値の組合せとして選択する選択手段とを含む、請求項1から4のいずれかに記載の無線受信装置。
【請求項6】 前記相関値選択手段は、選択した前記相互相関値の組合せの個数が受信応答ベクトルの推定に十分な所定数に達すると選択動作を終了させる、請求項1から5のいずれかに記載の無線受信装置。
【請求項7】 複数のアンテナを用いて複数の移動端末装置からの信号を受信する無線受信装置における受信応答ベクトル推定方法であって、前記複数の移動端末装置からの信号の受信タイミング差はシンボル期間の整数倍であり、前記複数のアンテナで受信した前記複数の移動端末装置からの信号にアダプティブアレイ処理を施して、前記複数の移動端末装置からの信号をシンボルごとに複数の所定の基準信号点のいずれかにおいて抽出するステップと、前記シンボルごとに抽出された前記複数の移動端末装置からの信号の相互相関値を、シンボルごとに前記複数の所定の基準信号点のいずれかとして特定するステップと、それぞれのシンボルに対応して算出された複数の前記相互相関値のうち、組合せて平均化したときに(0+0j)となる前記相互相関値の組合せを選択するステップと、前記選択された相互相関値の組合せにそれぞれ対応するシンボルにおいて前記受信応答ベクトルを演算するステップとを備える、受信応答ベクトル推定方法。
【請求項8】 前記組合せて平均化したときに(0+0j)となる前記相互相関値の組合せの個数が所定数以上あるか否かを判定するステップと、前記組合せて平均化したときに(0+0j)となる前記相互相関値の組合せの個数が前記所定数以上あるときに、前記受信応答ベクトルの推定を許可するステップとをさらに備える、請求項7に記載の受信応答ベクトル推定方法。
【請求項9】 前記複数の移動端末装置からの信号の受信タイミング差がシンボル期間の整数倍であるか否かを判定するステップと、前記複数の移動端末装置からの信号の受信タイミング差がシンボル期間の整数倍でなければ、前記複数の移動端末装置からの信号の受信タイミング差がシンボル期間の整数倍となるように前記複数の移動端末装置に対する送信タイミングを制御するステップとをさらに備える、請求項7または8に記載の受信応答ベクトル推定方法。
【請求項10】 前記送信タイミングを制御するステップは、前記複数の移動端末装置がそれぞれ固有の既知参照信号に対応している場合には、前記複数の移動端末装置からの信号の受信タイミング差がゼロとなるように送信タイミングを制御する、請求項9に記載の受信応答ベクトル推定方法。
【請求項11】 前記相互相関値の組合せを選択するステップは、あるシンボルに対応して算出された前記相互相関値に対して(−1+0j)を乗算するステップと、前記乗算結果と同じ値の前記相互相関値が算出された他のシンボルを特定するステップと、前記あるシンボルおよび前記他のシンボルのそれぞれにおける前記相互相関値を前記相互相関値の組合せとして選択するステップとを含む、請求項7から10のいずれかに記載の受信応答ベクトル推定方法。
【請求項12】 前記相互相関値の組合せを選択するステップは、選択した前記相互相関値の組合せの個数が受信応答ベクトルの推定に十分な所定数に達すると選択動作を終了させる、請求項7から11のいずれかに記載の受信応答ベクトル推定方法。
【請求項13】 複数のアンテナを用いて複数の移動端末装置からの信号を受信する無線受信装置における受信応答ベクトル推定プログラムであって、前記複数の移動端末装置からの信号の受信タイミング差はシンボル期間の整数倍であり、コンピュータに、前記複数のアンテナで受信した前記複数の移動端末装置からの信号にアダプティブアレイ処理を施して、前記複数の移動端末装置からの信号をシンボルごとに複数の所定の基準信号点のいずれかにおいて抽出するステップと、前記シンボルごとに抽出された前記複数の移動端末装置からの信号の相互相関値を、シンボルごとに前記複数の所定の基準信号点のいずれかとして特定するステップと、それぞれのシンボルに対応して算出された複数の前記相互相関値のうち、組合せて平均化したときに(0+0j)となる前記相互相関値の組合せを選択するステップと、前記選択された相互相関値の組合せにそれぞれ対応するシンボルにおいて前記受信応答ベクトルを演算するステップとを実行させる、受信応答ベクトル推定プログラム。
【請求項14】 前記組合せて平均化したときに(0+0j)となる前記相互相関値の組合せの個数が所定数以上あるか否かを判定するステップと、前記組合せて平均化したときに(0+0j)となる前記相互相関値の組合せの個数が前記所定数以上あるときに、前記受信応答ベクトルの推定を許可するステップとをさらにコンピュータに実行させる、請求項13に記載の受信応答ベクトル推定プログラム。
【請求項15】 前記複数の移動端末装置からの信号の受信タイミング差がシンボル期間の整数倍であるか否かを判定するステップと、前記複数の移動端末装置からの信号の受信タイミング差がシンボル期間の整数倍でなければ、前記複数の移動端末装置からの信号の受信タイミング差がシンボル期間の整数倍となるように前記複数の移動端末装置に対する送信タイミングを制御するステップとをさらにコンピュータに実行させる、請求項13または14に記載の受信応答ベクトル推定プログラム。
【請求項16】 前記送信タイミングを制御するステップは、前記複数の移動端末装置がそれぞれ固有の既知参照信号に対応している場合には、前記複数の移動端末装置からの信号の受信タイミング差がゼロとなるように送信タイミングを制御する、請求項15に記載の受信応答ベクトル推定プログラム。
【請求項17】 前記相互相関値の組合せを選択するステップは、あるシンボルに対応して算出された前記相互相関値に対して(−1+0j)を乗算するステップと、前記乗算結果と同じ値の前記相互相関値が算出された他のシンボルを特定するステップと、前記あるシンボルおよび前記他のシンボルのそれぞれにおける前記相互相関値を前記相互相関値の組合せとして選択するステップとを含む、請求項13から16のいずれかに記載の受信応答ベクトル推定プログラム。
【請求項18】 前記相互相関値の組合せを選択するステップは、選択した前記相互相関値の組合せの個数が受信応答ベクトルの推定に十分な所定数に達すると選択動作を終了させる、請求項13から17のいずれかに記載の受信応答ベクトル推定プログラム。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、無線受信装置、受信応答ベクトル推定方法および受信応答ベクトル推定プログラムに関し、特に移動体通信システムの基地局において、移動端末装置から受信した信号の受信応答ベクトルを推定するための無線受信装置、受信応答ベクトル推定方法および受信応答ベクトル推定プログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、急速に発達しつつある移動体通信システム(たとえば、Personal Handyphone System:以下、PHS)では、基地局の無線受信装置は、各ユーザの移動端末装置の応答ベクトルの推定を行なう。
【0003】ここで、応答ベクトル(Steering Vector)とは、基地局の無線受信装置で受信した移動端末装置からの信号成分のうち、各移動端末装置からの信号の振幅および位相に関する情報を表わすものである。無線受信装置において、このような各移動端末装置ごとの応答ベクトルを推定することにより、各移動端末装置から基地局の無線受信装置までの無線区間の伝搬路特性、信号受信時における電力値などを検出することが可能となる。
【0004】特に、基地局の複数のアンテナで送受信される信号の振幅および位相の成分を調整することによって、信号電波の送受信の指向性を制御するアダプティブアレイ方式の無線受信装置においては、各アンテナごとの振幅および位相の成分の調節は、本質的に、推定された応答ベクトルに基づいてウェイトベクトルを計算することによって行なわれる。
【0005】従来、各移動端末装置から基地局で受信した信号の応答ベクトル(受信応答ベクトル)の推定方法としては、基地局の各アンテナごとに受信した受信信号(IQ信号)と、当該移動端末装置からの復調ビットデータの再変調信号とを複素乗算してその結果をアンサンブル平均(時間平均)することによって推定する手法が提案されている。この手法については後で詳述する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来の受信応答ベクトル推定方法では、複数ユーザの移動端末装置が当該基地局にパス多重接続(Path Division Multiple Access:以下、PDMA)している場合、各アンテナの受信信号(IQ信号)と所望の移動端末装置からの再変調信号との複素乗算結果は、当該所望の移動端末装置からの再変調信号と、多重接続している他の移動端末装置からの受信信号との相関値の項を含むことになる。
【0007】このような相関値の項は、複素乗算する信号成分同士が時系列で完全にランダムであったり、または上述のアンサンブル平均を十分に時間を取って行なえば、ゼロになることが期待される。
【0008】しかしながら、実際には、複素乗算する信号成分同士が時系列でランダムであるという保証はなく、また移動体通信システムにおける信号処理上の種々の制限により、長期間のアンサンブル平均を取ることは困難である(通常はせいぜい20シンボル期間程度)。
【0009】このため、所望ユーザの再変調信号と他のユーザの受信信号との相関値の項がアンサンブル平均処理の後も消去されずに残存し、余剰成分として受信応答ベクトルの推定結果に含まれることになる。
【0010】したがって、従来の受信応答ベクトル推定方法では、アンサンブル平均処理後にこのような余剰成分が残存することにより、受信応答ベクトルの高精度の推定が困難になるという問題があった。
【0011】それゆえに、この発明の目的は、少ない演算量で高精度の受信応答ベクトルの推定が可能な無線受信装置、受信応答ベクトル推定方法および受信応答ベクトル推定プログラムを提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】この発明の1つの局面によれば、複数のアンテナを用いて複数の移動端末装置からの信号を受信する無線受信装置であって、複数の移動端末装置からの信号の受信タイミング差はシンボル期間の整数倍である。無線受信装置は、信号抽出手段と、相関値算出手段と、相関値選択手段と、演算手段とを備える。信号抽出手段は、複数のアンテナで受信した複数の移動端末装置からの信号にアダプティブアレイ処理を施して、複数の移動端末装置からの信号をシンボルごとに複数の所定の基準信号点のいずれかにおいて抽出する。相関値算出手段は、信号抽出手段によってシンボルごとに抽出された複数の移動端末装置からの信号の相互相関値を、シンボルごとに複数の所定の基準信号点のいずれかとして特定する。相関値選択手段は、相関値算出手段によりそれぞれのシンボルに対応して算出された複数の相互相関値のうち、組合せて平均化したときに(0+0j)となる相互相関値の組合せを選択する。演算手段は、選択された相互相関値の組合せにそれぞれ対応するシンボルにおいて受信応答ベクトルを推定する。
【0013】好ましくは、無線受信装置は、組合せて平均化したときに(0+0j)となる相互相関値の組合せの個数が所定数以上あるか否かを判定する組合せ数判定手段と、組合せて平均化したときに(0+0j)となる相互相関値の組合せの個数が所定数以上あるときに、演算手段による受信応答ベクトルの推定を許可する推定許可手段とをさらに備える。
【0014】好ましくは、無線受信装置は、複数の移動端末装置からの信号の受信タイミング差がシンボル期間の整数倍であるか否かを判定するタイミング差判定手段と、複数の移動端末装置からの信号の受信タイミング差がシンボル期間の整数倍でなければ、複数の移動端末装置からの信号の受信タイミング差がシンボル期間の整数倍となるように複数の移動端末装置に対する送信タイミングを制御する送信タイミング制御手段とをさらに備える。
【0015】好ましくは、送信タイミング制御手段は、複数の移動端末装置がそれぞれ固有の既知参照信号に対応している場合には、複数の移動端末装置からの信号の受信タイミング差がゼロとなるように送信タイミングを制御する。
【0016】好ましくは、相関値選択手段は、相関値算出手段によりあるシンボルに対応して算出された相互相関値に対して(−1+0j)を乗算する乗算手段と、乗算手段の乗算結果と同じ値の相互相関値が算出された他のシンボルを特定するシンボル特定手段と、あるシンボルおよび他のシンボルのそれぞれにおける相互相関値を相互相関値の組合せとして選択する選択手段とを含む。
【0017】好ましくは、相関値選択手段は、選択した相互相関値の組合せの個数が受信応答ベクトルの推定に十分な所定数に達すると選択動作を終了させる。
【0018】この発明の他の局面によれば、複数のアンテナを用いて複数の移動端末装置からの信号を受信する無線受信装置における受信応答ベクトル推定方法であって、前記複数の移動端末装置からの信号の受信タイミング差はシンボル期間の整数倍である。受信応答ベクトル推定方法は、複数のアンテナで受信した複数の移動端末装置からの信号にアダプティブアレイ処理を施して、複数の移動端末装置からの信号をシンボルごとに複数の所定の基準信号点のいずれかにおいて抽出するステップと、シンボルごとに抽出された複数の移動端末装置からの信号の相互相関値を、シンボルごとに複数の所定の基準信号点のいずれかとして特定するステップと、それぞれのシンボルに対応して算出された複数の相互相関値のうち、組合せて平均化したときに(0+0j)となる相互相関値の組合せを選択するステップと、選択された相互相関値の組合せにそれぞれ対応するシンボルにおいて受信応答ベクトルを演算するステップとを備える。
【0019】好ましくは、受信応答ベクトル推定方法は、組合せて平均化したときに(0+0j)となる相互相関値の組合せの個数が所定数以上あるか否かを判定するステップと、組合せて平均化したときに(0+0j)となる相互相関値の組合せの個数が所定数以上あるときに、受信応答ベクトルの推定を許可するステップとをさらに備える。
【0020】好ましくは、受信応答ベクトル推定方法は、複数の移動端末装置からの信号の受信タイミング差がシンボル期間の整数倍であるか否かを判定するステップと、複数の移動端末装置からの信号の受信タイミング差がシンボル期間の整数倍でなければ、複数の移動端末装置からの信号の受信タイミング差がシンボル期間の整数倍となるように複数の移動端末装置に対する送信タイミングを制御するステップとをさらに備える。
【0021】好ましくは、送信タイミングを制御するステップは、複数の移動端末装置がそれぞれ固有の既知参照信号に対応している場合には、複数の移動端末装置からの信号の受信タイミング差がゼロとなるように送信タイミングを制御する。
【0022】好ましくは、相互相関値の組合せを選択するステップは、あるシンボルに対応して算出された相互相関値に対して(−1+0j)を乗算するステップと、乗算結果と同じ値の相互相関値が算出された他のシンボルを特定するステップと、あるシンボルおよび他のシンボルのそれぞれにおける相互相関値を相互相関値の組合せとして選択するステップとを含む。
【0023】好ましくは、相互相関値の組合せを選択するステップは、選択した相互相関値の組合せの個数が受信応答ベクトルの推定に十分な所定数に達すると選択動作を終了させる。
【0024】この発明のさらに他の局面によれば、複数のアンテナを用いて複数の移動端末装置からの信号を受信する無線受信装置における受信応答ベクトル推定プログラムであって、複数の移動端末装置からの信号の受信タイミング差はシンボル期間の整数倍である。受信応答ベクトル推定プログラムは、コンピュータに、複数のアンテナで受信した複数の移動端末装置からの信号にアダプティブアレイ処理を施して、複数の移動端末装置からの信号をシンボルごとに複数の所定の基準信号点のいずれかにおいて抽出するステップと、シンボルごとに抽出された複数の移動端末装置からの信号の相互相関値を、シンボルごとに複数の所定の基準信号点のいずれかとして特定するステップと、それぞれのシンボルに対応して算出された複数の相互相関値のうち、組合せて平均化したときに(0+0j)となる相互相関値の組合せを選択するステップと、選択された相互相関値の組合せにそれぞれ対応するシンボルにおいて受信応答ベクトルを演算するステップとを実行させる。
【0025】好ましくは、受信応答ベクトル推定プログラムは、組合せて平均化したときに(0+0j)となる相互相関値の組合せの個数が所定数以上あるか否かを判定するステップと、組合せて平均化したときに(0+0j)となる相互相関値の組合せの個数が所定数以上あるときに、受信応答ベクトルの推定を許可するステップとをさらにコンピュータに実行させる。
【0026】好ましくは、受信応答ベクトル推定プログラムは、複数の移動端末装置からの信号の受信タイミング差がシンボル期間の整数倍であるか否かを判定するステップと、複数の移動端末装置からの信号の受信タイミング差がシンボル期間の整数倍でなければ、複数の移動端末装置からの信号の受信タイミング差がシンボル期間の整数倍となるように複数の移動端末装置に対する送信タイミングを制御するステップとをさらにコンピュータに実行させる。
【0027】好ましくは、送信タイミングを制御するステップは、複数の移動端末装置がそれぞれ固有の既知参照信号に対応している場合には、複数の移動端末装置からの信号の受信タイミング差がゼロとなるように送信タイミングを制御する。
【0028】好ましくは、相互相関値の組合せを選択するステップは、あるシンボルに対応して算出された相互相関値に対して(−1+0j)を乗算するステップと、乗算結果と同じ値の相互相関値が算出された他のシンボルを特定するステップと、あるシンボルおよび他のシンボルのそれぞれにおける相互相関値を相互相関値の組合せとして選択するステップとを含む。
【0029】好ましくは、相互相関値の組合せを選択するステップは、選択した相互相関値の組合せの個数が受信応答ベクトルの推定に十分な所定数に達すると選択動作を終了させる。
【0030】したがって、この発明によれば、組合せて時間平均したときにゼロとなる相互相関値の組合せを選択して、その組合せに対応するシンボルにおいて受信応答ベクトルを演算することにより、ユーザ同士の受信信号の余剰相関値が残存することを防ぎ、少ない演算量で高精度の受信応答ベクトルの推定を実現することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0032】この発明の背景となる移動体通信システム(PHS)では、電波の周波数利用効率を高めるために、同一周波数の同一タイムスロットを空間的に分割することにより複数ユーザの移動端末装置を基地局にパス多重接続させることができるPDMA方式が採用されているものとする。
【0033】このPDMA方式では、各ユーザの移動端末装置からの信号は、周知のアダプティブアレイ処理により分離抽出される。
【0034】以下に、この発明の背景について説明する。まず、一般的な受信応答ベクトルの推定方法について説明する。
【0035】たとえば、後述する図5の例のように、基地局は4本のアンテナを有し、ユーザ1およびユーザ2がパス多重接続している場合を想定する。
【0036】この場合、ユーザ1の受信応答ベクトルH1およびユーザ2の受信応答ベクトルH2は下記の式で表わされる。
【0037】H1=[h11,h21,h31,h41]
H2=[h12,h22,h32,h42]
ここで、ユーザ1を抽出したい所望ユーザとし、ユーザ2を干渉ユーザとする。たとえば、アンテナ1の受信応答ベクトルh11,h12のうち、h11が所望ユーザの受信応答ベクトルであり、h12が干渉ユーザの受信応答ベクトルである。
【0038】一方、4本のアンテナでそれぞれ受信された信号を、X1(t),X2(t),X3(t),X4(t)とし、ユーザ1およびユーザ2のそれぞれの受信信号をS1(t),S2(t)とすると、それぞれのアンテナの受信信号は下記の式で表わされる。
【0039】
X1(t)=h11・S1(t)+h12・S2(t)+N1(t)X2(t)=h21・S1(t)+h22・S2(t)+N2(t)X3(t)=h31・S1(t)+h32・S2(t)+N3(t)X4(t)=h41・S1(t)+h42・S2(t)+N4(t)ここで、N1(t),N2(t),N3(t),N4(t)は、ノイズ成分である。
【0040】所望ユーザ1の受信応答ベクトルは、4本のアンテナの受信信号X1(t),X2(t),X3(t),X4(t)の各々と、一旦受信に成功してアダプティブアレイ処理により得られた所望ユーザ1の受信信号を再変調した信号S1(t)の複素共役S1*(t)との積を一定時間平均することによって、すなわちアンサンブル平均Eを取ることによって、次式のように得られる。
【0041】
E[X1(t)・S1*(t)]=E[h11・S1(t)・S1*(t)+h12・S2(t)・S1*(t)+N1(t)・S1*(t)]・・・(1)
E[X2(t)・S1*(t)]=E[h21・S1(t)・S1*(t)+h22・S2(t)・S1*(t)+N2(t)・S1*(t)]・・・(2)
E[X3(t)・S1*(t)]=E[h31・S1(t)・S1*(t)+h32・S2(t)・S1*(t)+N3(t)・S1*(t)]・・・(3)
E[X4(t)・S1*(t)]=E[h41・S1(t)・S1*(t)+h42・S2(t)・S1*(t)+N4(t)・S1*(t)]・・・(4)
ここで、受信信号S1(t)とその複素共役であるS1*(t)とのアンサンブル平均は、E[S1(t)・S1*(t)]=1となる。また、時系列にランダムなノイズ成分Nn(t)と受信信号S1(t)の複素共役であるS1*(t)とのアンサンブル平均は、E[Nn(t)・S1*(t)]=0となる。
【0042】したがって、上述の(1)〜(4)式はそれぞれ下記の(5)〜(8)式のように表わされる。
【0043】
E[X1(t)・S1*(t)]=h11+h12・E[S2(t)・S1*(t)]・・・(5)
E[X2(t)・S1*(t)]=h21+h22・E[S2(t)・S1*(t)]・・・(6)
E[X3(t)・S1*(t)]=h31+h32・E[S2(t)・S1*(t)]・・・(7)
E[X4(t)・S1*(t)]=h41+h42・E[S2(t)・S1*(t)]・・・(8)
ここで、他のユーザ2の受信信号S2(t)と所望ユーザ1の変調信号の複素共役S1*(t)とのアンサンブル平均E[S2(t)・S1*(t)]がゼロとなれば、ユーザ1の受信応答ベクトルH1=[h11,h21,h31,h41]は、下記の(9)〜(12)式のように求められる。
【0044】
h11=E[X1(t)・S1*(t)]・・・(9)
h21=E[X2(t)・S1*(t)]・・・(10)
h31=E[X3(t)・S1*(t)]・・・(11)
h41=E[X4(t)・S1*(t)]・・・(12)
しかしながら、(5)〜(8)式における項E[S2(t)・S1*(t)]は必ずしも完全にはゼロにならない。なぜなら、信号S1(t)と信号S2(t)とが時系列に相関のない信号であるという保証はないからである。したがって、この項を完全にゼロにするには、長期間の(多くのデータシンボル数にわたる)時間平均が必要である。
【0045】しかしながら、先に述べたように、システムの信号処理上の時間的制約から、十分な長さの(シンボル数の)時間平均を取ることはできない(前述のようにせいぜい20シンボル程度のデータ期間である)。
【0046】実際には、短期間の時間平均でも項E[S2(t)・S1*(t)]の大きさをかなり小さくすることはできるが、そもそも干渉成分S2(t)が大きい場合には、E[S2(t)・S1*(t)]は相対的に大きな値の項として残ることになる。
【0047】したがって、このような余剰項E[S2(t)・S1*(t)]が(5)〜(8)式に残存するため、推定される受信応答ベクトルは、上記の(9)〜(12)式のようにはならず、受信応答ベクトルの推定精度が劣化することになる。
【0048】従来の方法では、アンサンブル平均の期間として、任意の複数シンボル期間を用いていたため、限られた期間内で余剰項E[S2(t)・S1*(t)]をゼロにすることは難しかった。
【0049】これに対し、この発明では、S2(t)・S1*(t)の時間平均を取ったときにその結果がゼロとなるようなデータシンボルの組合せを予め見出し、そのようなシンボルに対して受信応答ベクトルの演算(平均化処理)を行なうように構成したものである。これにより、ユーザ同士(所望ユーザおよび干渉ユーザ)の信号の相互相関値(E[S2(t)・S1*(t)])の残存(受信応答ベクトルに対する影響)を抑制することが可能となり、少ない演算量で高精度の受信応答ベクトルの推定が可能となる。
【0050】以下に、図1〜図4を参照して、この発明による受信応答ベクトルの推定方法の基本原理について説明する。
【0051】上述のように、この発明の基本原理は、ユーザ同士の信号の相互相関値の時間平均である余剰項E[S2(t)・S1*(t)]をゼロ(すなわち0+0j)とするような相殺成分の組合せを見出して当該データ期間において平均化処理を行なうものである。
【0052】このような手法について、PHS等で採用されているπ/4シフトQPSK(Quaternary Phase Sift Keying)変調方式の下に、2ユーザがパス多重接続している場合を例に取って説明する。
【0053】図1は、π/4シフトQPSK変調方式における基準信号点A〜Hの配置を示す図であり、図2はこれらの基準信号点A〜Hのパターニング(I,Q座標)を示すテーブルである。π/4シフトQPSK変調方式では、各シンボル点で、常に(I,Q)座標上の8個の基準信号点A〜Hのいずれかに真の信号点を有している。実際に、各ユーザからのアダプティブアレイ処理後の信号は、(I,Q)座標上の基準信号点A〜Hのいすれかの近傍に分布している。
【0054】ここで、前述の(1)〜(4)式を用いて受信応答ベクトルの推定を行なう場合、所望ユーザ同士の相互相関E[S1(t)・S1*(t)]が1となるためには、信号S1(t)のサンプリングは、図1の基準信号点A〜Hに正確に対応するタイミングtで行なう。すなわち、ユーザ1の信号が基準信号点A〜Hのいずれかに正確に到来している場合のデータシンボルを用いて、E[S1(t)・S1*(t)]を算出すれば、E[S1(t)・S1*(t)]=1が得られる。
【0055】このような所望ユーザ1と、干渉ユーザ2との基地局到来タイミングがシンボル期間の整数倍の場合、信号S1(t)のサンプリングタイミングtにおいて、ユーザ2の信号も基準信号点A〜Hのいずれかに到来していることになる。
【0056】図3は、ユーザ1の信号S1(t)およびユーザ2の信号S2(t)が取り得る信号点、およびそれらの組合せに応じて相互相関値S2(t)・S1*(t)が取り得る信号点の対応関係を示すテーブルである。図3に示すように、ユーザ1の信号S1(t)が現れる信号点は、8個の基準信号点A〜Hのいずれかであり、ユーザ2の信号S2(t)が現れる信号点も、8個の基準信号点A〜Hのいずれかである。
【0057】そして、これらの相互相関値であるS2(t)・S1*(t)の出力結果も結局は、図3のテーブルに示すように、図1の8個の基準信号点A〜Hのいずれかとなる。
【0058】ここで、図1および図2に着目し、基準信号点A(1,0)とE(−1,0)とを平均化すると、0+0jとなる。同様に、基準信号点B(0.71,0.71)とF(−0.71,−0.71)とを平均化すると0+0jとなり、基準信号点C(0,1)とG(0,−1)とを平均化すると0+0jとなり、基準信号点D(−0.71,0.71)とH(0.71,−0.71)とを平均化すると0+0jとなる。
【0059】したがって、余剰項であるE[S2(t)・S1*(t)]をゼロとするには、ユーザ1およびユーザ2の信号点の相関値が相殺して0+0jとなるような信号点の組合せ(上述の(A,E)、(B,F)、(C,D)、(D,H))を選択して平均化処理を行なうことにより達成することができる。
【0060】実際の処理としては、ユーザ1およびユーザ2のアダプティブアレイ処理により抽出されたそれぞれの復調データ(ビット列)を再変調した変調信号S1(t)およびS2(t)を算出し、それぞれの取る基準信号点に対応する相互相関値S2(t)・S1*(t)を図3のテーブルから求める。図3のテーブルから求められる相互相関値S2(t)・S1*(t)は、A〜Hのいずれかの信号点にあるので、上述の組合せ(A,E)、(B,F)、(C,D)、(D,H)から、相互相関値S2(t)・S1*(t)を相殺するための対となる信号点が判明する。
【0061】そのような組合せて平均化することにより相殺される相互相関値の信号点のデータを求めて平均化処理をすることにより、余剰項であるE[S2(t)・S1*(t)]をゼロとすることができ(9)〜(12)式に示すような受信応答ベクトルの推定が可能となる。
【0062】次に、図4を参照して、相互相関値を相殺するための組合せの選出方法について、説明する。図4において、時間tは、1〜120の120シンボルからなるデータ区間を示しており、各シンボルに対応して、算出された変調信号S1(t),S2(t)と、その相互相関値S2(t)・S1*(t)とが例示されている。
【0063】なお、この発明の推定原理は、多重ユーザ数が2ユーザの場合に限られず、ユーザ数が、3ユーザ、4ユーザに増えた場合にも同様に適用可能である。図4の例では、シンボルごとに、3ユーザ目のユーザ3の変調信号S3(t)と、ユーザ1およびユーザ3の相互相関値S3(t)・S1*(t)とがさらに例示されている。
【0064】図5を参照して、たとえば、時刻(シンボル)t=1およびt=119に対応する相互相関値を組合せて平均化する。
【0065】ユーザ1およびユーザ2の相互相関値S2(t)・S1*(t)について見れば、時刻t=1においては信号点Aの値であり、時刻t=119においては信号点Eの値である。したがって、時刻t=1,119において相互相関値S2(t)・S1*(t)の平均を取った場合、相互相関値S2(t)・S1*(t)は0+0jとなる。
【0066】また、ユーザ1およびユーザ3の相互相関値S3(t)・S1*(t)について見れば、時刻t=1においては信号点Hの値であり、時刻t=119においては信号点Dの値である。したがって、時刻t=1,119において相互相関値S3(t)・S1*(t)の平均を取った場合、相互相関値S3(t)・S1*(t)は0+0jとなる。
【0067】たとえば、図4の例により、実際に、アンテナ番号1に対応するユーザ1の受信応答ベクトルh11を求める手順について説明する。アンテナ番号1に対応する受信応答ベクトルをRV1(t)とし、アンテナ番号1での受信信号をRX1(t)とする。
【0068】時刻t=1における受信応答ベクトルRV1(1)は、時刻t=1におけるRX1(1)・S1*(1)と、これと対となる時刻t=119におけるRX1(119)・S1*(119)との平均を取ることによって求められる。すなわち、次式のように表される。
【0069】
RV1(1)=[RX1(1)・S1*(1)+RX1(119)・S1*(119)]/2・・・(13)
=[h11(1)・S1(1)・S1*(1)+h12(1)・S2(1)・S1*(1)+h13(1)・S3(1)・S1*(1)+N1(1)・S1*(1)+h11(119)・S1(119)・S1*(119)+h12(119)・S2(119)・S1*(119)+h13(119)・S3(119)・S1*(119)+N1(119)・S1*(119)]/2=[h11{S1(1)・S1*(1)+S1(119)・S1*(119)}]/2+[h12{S2(1)・S1*(1)+S2(119)・S1*(119)}]/2+[h13{S3(1)・S1*(1)+S3(119)・S1*(119)}]/2+[N1(1)・S1*(1)+N1(119)・S1*(119)]/2ここで、上述のように、時刻t=1,119において、相互相関値S2(t)・S1*(t)の平均を取った場合、相互相関値S2(t)・S1*(t)は0+0jとなり、相互相関値S3(t)・S1*(t)の平均を取った場合、相互相関値S3(t)・S1*(t)は0+0jとなる。したがって、受信応答ベクトルRV1(1)は、下記のとおりになる。
【0070】RV1(1)=h11+0+0+(ノイズ成分)
ノイズ成分は、平均化数を増大すればゼロになるので、結局、受信応答ベクトルRV1(1)=h11が求まることになる。
【0071】図5は、この発明による移動体通信システム(たとえばPHS)の基地局の全体構成を示す機能ブロック図である。
【0072】図5を参照して、基地局の複数本、たとえば4本のアンテナ1,2,3,4で受信された複数ユーザの移動端末装置からの信号は、対応する送受信回路5,6,7,8のそれぞれのRF回路5a,6a,7a,8aで受信処理が施され、さらにA/DおよびD/A変換機9,10,11,12でデジタル信号に変換される。
【0073】デジタル信号に変換されたそれぞれのアンテナからの4系統の受信信号は、サーキュレータ13を介してデジタルシグナルプロセッサ(DSP)14に与えられる。破線14で表わされたDSPの内部は、DSPによってソフトウェア的に実行される処理を機能ブロック図で示したものである。
【0074】サーキュレータ13を介してDSP14に与えられた4系統の受信信号は、受信処理部15の同期処理部15aに与えられる。
【0075】同期処理部15aは、周知の同期位置推定方法により、当該基地局にパス多重接続している複数ユーザ(この例ではユーザ1およびユーザ2)からのそれぞれの受信信号の受信タイミングを高精度に推定し、推定した受信タイミングを、受信応答ベクトル推定処理部17に与える。
【0076】同期窓制御部15bは、受信信号に対し、所定の同期窓制御を施す。次に、受信信号に対してアダプティブアレイ処理部15cにより周知のアダプティブアレイ処理が施され、ユーザ1および2用の算出されたウェイトを用いて、ユーザ1および2の受信信号が分離抽出される。
【0077】分離抽出されたユーザごとの信号は、検波部15dで復調され、ユーザ1および2の復調データ(ビット列)として、受信応答ベクトル推定処理部17に与えられるとともに、DSP14から出力される。
【0078】受信応答ベクトル推定処理部17は、検波部15dからのユーザ1および2の復調ビット列に基づいて、図1〜図4を参照して説明した推定原理に則って受信応答ベクトルを推定する。
【0079】また、その推定過程において、ユーザ1および2の受信タイミングに基づいてユーザ1および2に対する送信タイミングを制御する信号を発生する。
【0080】一方、ユーザ1および2の送信すべきデータ(音声データなど)は、DSP14の送信処理部16の変調処理部16aに与えられる。変調処理部16aで変調されたユーザ1および2のデータは、それぞれ乗算器16b,16cの一方入力に与えられる。
【0081】また、乗算器16b,16cの他方入力には、アダプティブアレイ処理部15cで算出されたユーザ1および2用のウェイトが与えられ、ユーザ1および2のデータの送信指向性が決定される。
【0082】乗算器16b,16cのそれぞれの出力は、送信タイミング制御部16dに与えられる。送信タイミング制御部16dは、受信応答ベクトル推定処理部17から与えられるユーザ1および2用の送信タイミングの制御信号に基づいて、ユーザ1および2のデータ送信のタイミングを調整する。
【0083】送信信号合成処理部16eは、ユーザ1および2の送信信号を合成し、図中1本の矢印で示す4系統の送信信号に変換し、サーキュレータ13を介してA/DおよびD/A変換機9,10,11,12に配分する。
【0084】A/DおよびD/A変換機9,10,11,12でアナログ信号に変換された4系統の送信信号は、対応する送受信回路5,6,7,8のそれぞれのRF回路5a,6a,7a,8aで送信処理が施され、対応するアンテナ1,2,3,4を介して移動端末装置に向かって送出される。
【0085】[実施の形態1]図6は、上述の基本原理に基づいて図5のDSP14で実現されるこの発明の実施の形態1による受信応答ベクトル推定方法を説明するフロー図である。
【0086】図6を参照して、処理の開始時には、複数のパス多重ユーザのアダプティブアレイ処理による受信・復調処理は終了しているものとする。
【0087】まず、ステップS1において、多重ユーザ全員の復調データ(ビット列)に受信エラーがないか否か判定される。もしも1ユーザにでも受信エラーがあれば受信応答ベクトルの正確な推定はできなくなるので、ステップS2において受信応答ベクトル推定処理は終了し、受信エラーのなかった一番最近のフレーム(たとえば前フレーム)で算出された受信応答ベクトルを現フレームの受信応答ベクトルとして使用する。
【0088】一方、ステップS1において、全多重ユーザの復調データに受信エラーがないことが判定されると、ステップS3において、全多重ユーザ間の受信タイミング差がシンボル期間の整数倍であるか否かが判定される。
【0089】もしもこの条件が満たされていないと判定されると、前述のようにこの発明の動作原理を実現できなくなるので、ステップS4において、全多重ユーザ間の受信タイミング差がシンボル期間の整数倍になるよう基地局からユーザ端末に対する送信タイミング制御を実行する。ステップS4の処理の詳細については後述する。
【0090】そして、このような基地局送信タイミング制御により、ステップS5において現タイムスロットの多重度X(多重ユーザ数Xによるパス多重接続)が実現され、ステップS6においては、この発明ではなく、先に説明した従来の処理により受信応答ベクトルの推定がなされる。
【0091】一方、ステップS3において、全多重ユーザ間の受信タイミング差がシンボル期間の整数倍であると判定されると、ステップS7において、X人の多重ユーザの1人目のユーザ(X=1)に関する処理(ユーザループ)が設定される。
【0092】次に、ステップS8において、当該ユーザX(=1)および他の全ユーザの復調信号により、たとえば図3に示すテーブルからユーザ同士の相互相関値をそれぞれ8個の基準信号点のいずれかに特定して求める。そのような処理を、たとえば図4に示すように、当該フレーム(120シンボル)の全区間(各シンボル時刻をtで表わすとt=1〜120)内のそれぞれのシンボルにおいて行ない、時刻t=1〜120のそれぞれに対応するテーブルを作成する。
【0093】そして、ステップS9において、図4のテーブルを参照して先に説明したように、相互相関値を相殺する(0+0jにする)ための組合わせを検索する。ステップS9の処理の詳細については後述する。
【0094】ステップS10において、ステップS9における検索の結果、相互相関値を相殺する組合せが存在するか否かが判定される。そのような組合せが存在しなければ、ステップS6に進み、この発明ではなく、先に説明した従来の処理により受信応答ベクトルの推定がなされる。
【0095】一方、ステップS10において、相互相関値を相殺する組合せが存在すると判定されると、ステップS11において、アンテナ番号1〜4のそれぞれに対応する受信応答ベクトルRV1(X)〜RV4(X)が、前述の(13)式の展開式に基づいて算出される。
【0096】すなわち、ステップS9で決定した相殺される相互相関値の組合せに対応する時刻の組合せ(t=1〜120のうちの複数の時刻)をzで表わすと、アンテナ番号1〜4のそれぞれの受信信号はRX1(z)〜RX4(z)で表わされる。
【0097】同様に、当該ユーザループのユーザ番号Xの復調信号をSX(z)とすると、各アンテナ番号の受信応答ベクトルは、各アンテナの受信信号と当該ユーザの復調信号との乗算結果の時刻zの組合せについての総和となる。すなわち、下記のように表わされる。
【0098】
RV1(X)=Σ(RX1(z)・SX*(Z))・・・(14)
RV2(X)=Σ(RX2(z)・SX*(Z))・・・(15)
RV3(X)=Σ(RX3(z)・SX*(Z))・・・(16)
RV4(X)=Σ(RX4(z)・SX*(Z))・・・(17)
これらの式の各々を(13)式の展開式のように相互相関値の平均化処理によって演算することにより、ユーザX=1に対応する受信応答ベクトルベクトルが算出される。
【0099】ステップS12において、ユーザループXが現スロットにおける多重数に達したか否かが判定され、達していなければ、Xを1だけインクリメントしてステップS8に戻り、ステップS8からステップS11の処理を繰返す。
【0100】ステップS12において、Xが多重数に達したことが判定されるまで、ステップS8〜11の処理が繰返されてステップS11において各ユーザごとの受信応答ベクトルが得られ、ステップS12においてXが現スロットの多重数に達したことが判定されると、受信応答ベクトル推定処理を終了する。
【0101】次に、図7は、図6のステップS9における相互相関値を相殺する組合せの検索処理を示すフロー図である。
【0102】まず、ステップS21において、当該フレームの120シンボルの最初のシンボル(t=1)に関する処理(シンボルループ)が設定される。
【0103】ステップS22において、たとえば図4のテーブルのうち、時刻t(=1)における当該ユーザXと他のユーザのそれぞれとの相互相関値がセットされる。
【0104】次に、ステップS23において、時刻t(=1)における相互相関値のそれぞれに、(−1+0j)を乗算する。
【0105】そして、ステップS24において、当該フレーム(t=1〜120)内で、ステップS23の乗算結果に一致する相互相関値が存在する他の時刻t1を検索する。
【0106】ステップS24でそのような時刻t1が存在しなければステップS26に進む。一方、ステップS24でそのような時刻t1が存在すれば、ステップS25で、当該シンボルループのt(=1)および見出された時刻t1(図4の例ではt=1および119)を相互相関値の平均化(アンサンブル平均)に使用するデータとして記憶する。
【0107】ステップS26では、シンボルループtがt=120に達したか、すなわち時刻t=1〜120のすべてについて検索が終了したか否かが判定され、達していなければ、tを1だけインクリメントしてステップS22に戻り、ステップS22からステップS25の処理を繰返す。
【0108】ステップS26において、tが全シンボル数である120に達したことが判定されるまで、ステップS22〜26の処理が繰返されてステップS25において相互相関値を相殺するための時刻データが記憶される。そしてステップS26においてtが全シンボル数である120に達してすべての時刻t=1〜120について検索が終了したことが判定されると、検索処理を終了する。
【0109】次に、図8は、図6のステップS4における送信タイミング制御を示すフロー図である。先に説明したように、たとえばπ/4シフトQPSK変調方式の場合、各ユーザの変調信号を8点の基準信号点のいずれかのタイミング(基準タイミング)で信号をサンプリングできるという前提の下に、この発明の原理が実現されている。
【0110】一方、このような基準タイミングから少しでもずれたタイミングでサンプリングした信号は、8点の基準信号点に収束することはなく、この発明の原理を適用することができない。
【0111】すなわち、パス多重接続しているそれぞれのユーザの基地局到来タイミング差が整数シンボル倍の場合にのみこの発明の原理を適用できるが、それ以外の場合にはこの発明の原理を適用することはできない。
【0112】一般に、パス多重接続しているそれぞれのユーザの基地局到来タイミング差が整数シンボル倍になることは偶発的であり、確率的には低いものと考えられる。
【0113】すなわち、移動体通信システムにおいては、多重接続している複数の移動端末装置のそれぞれと、当該基地局との距離差が互いに大きくことなることは通常起こり得ることであり、このようなユーザごとの距離差に起因する遅延時間により基地局における多重ユーザ同士の受信タイミングは通常変化しやすい。
【0114】また、このような、距離差に起因する時間遅延以外に、各移動端末装置の特性差により、受信タイミングの時間差が基地局受信時に変化することがある。すなわち、移動端末装置は、基地局から信号を受信してから所定時間後に、基地局に向けて信号を送信することが規格で決められているが、各移動端末装置の特性差により、端末が基地局からの送信信号を受信してから上記所定時間よりも早く送信信号を基地局に送信するような端末や、逆に上記所定時間よりも遅く送信信号を基地局に送信するような端末が存在する。
【0115】そこで、この発明を実現するためには、パス多重接続しているすべてのユーザの受信タイミング差がシンボル期間の整数倍となるようにする必要がある。
【0116】基地局において、移動端末装置からの受信タイミングを制御する方法としては、基地局から移動端末装置への送信タイミングを制御することが有効である。
【0117】ユーザごとの送信タイミングの制御により、ユーザごとの受信タイミングを制御することができる理由について説明する。
【0118】たとえばPHSのような移動体通信システムにおいて基地局と移動端末装置との間の信号の送受信のタイミングについては、移動端末装置は、基地局から信号を受信してから所定時間後に、基地局に向けて信号を送信することが規格で決められている。
【0119】すなわち、基地局において各ユーザごとに信号送信のタイミングをずらせば、対応する各移動端末装置ごとに信号受信のタイミングがずれることになる。したがって、各移動端末装置から基地局に信号を送信するタイミングも移動端末装置ごとにずれることになる。
【0120】結果として、基地局における各移動端末装置からの信号受信のタイミングは移動端末装置ごとにずれることになる。
【0121】このように、基地局において、各移動端末装置ごとに信号送信のタイミングを制御することにより、間接的に基地局における各移動端末装置からの受信タイミングを制御することができ、ひいては受信タイミング同士が離れるように受信タイミングを制御することも可能である。
【0122】なお、一般には、基地局において、同一タイムスロットにパス多重接続している複数のユーザに対する送信タイミングの時間差を最大化することにより、これらのユーザからの受信タイミング同士が近接することを防止し、パス多重接続時における通信品質の安定化を図ることが提案されている。
【0123】図8を参照して、ステップS31において、通常の基地局送信タイミング制御(たとえば上述の送信タイミング差の最大化)により、送信タイミングの移動位置を算出する。
【0124】次に、ステップS32において、パス多重接続しているすべてのユーザの受信タイミング差がシンボル期間の整数倍であるか否かが判定される。そして、整数倍であると判定されると、ステップS33に進んで、通常の基地局送信タイミング制御(この例では上述のように送信タイミング差の最大化)を実行する。
【0125】一方、ステップS32において、整数倍でないと判定されると、ステップS34で、パス多重接続しているユーザがそれぞれ異なるユニークワード(UW)に対応しているか否かが判定される。
【0126】一般に、PHSでは、UWは全ユーザに共通の既知の信号系列である。このため、UWでは複数の多重ユーザを分離することができず、これらのユーザからの受信タイミングの近接を防止するため、送信タイミング差の最大化が必要となる。
【0127】これに対し、UWを複数化し、ユーザごとに異なるUWを持たせることが考えられる。その場合には、UWによって多重ユーザの分離が可能となるため、基地局において送信タイミング差を設ける必要はなくなる。
【0128】ステップS34では、多重ユーザがそのような複数UWに対応しているか否かが判定される。複数UWに対応している場合には、全多重ユーザの受信タイミングが近接しても分離可能なため、ステップS35において、全多重ユーザの受信タイミングが同一となる(受信タイミング差が0となる)ような送信タイミング制御を行なう。
【0129】一方、ステップS34で複数UWに対応していないことが判定されると、ステップS36に進み、パス多重接続しているすべてのユーザの受信タイミング差がシンボル期間の整数倍(0以外)となるような送信タイミング制御を行なう。
【0130】以上のように、この発明の実施の形態1によれば、複数のユーザからの信号のシンボルごとの相互相関値のうち、組合せて平均化したときにゼロとなる相互相関値の組合せを選択して、その組合せに対応するそれぞれのシンボルにおいて受信応答ベクトルを演算するように構成しているので、少ない演算量で高精度の受信応答ベクトルの推定を実現することができる。
【0131】[実施の形態2]図4に示したようなユーザ同士の相互相関値のテーブルにおいて、多重ユーザ数が、3ユーザ、4ユーザと増大していくと、シンボルtごとのユーザ同士の組合せである相互相関値の種類も増えていくことになる。
【0132】一方で、各フレームのシンボル数は、たとえばPHSでは120シンボルと限定されており、多重ユーザ数が増えた場合、120シンボルの全区間内で、相殺することができる相互相関値の組合せを見出すことが困難になる。たとえば図4の例のように、2つのシンボル(t=1、119)でしか相殺できない場合、ノイズを含む場合があり、平均化処理のためのサンプル数としては少なすぎるとも考えられ、受信応答ベクトルの推定精度の劣化のおそれがある。
【0133】一方、組合せの個数が多すぎても余分な計算量の増大をもたらすという問題がる。
【0134】そこで、この発明の実施の形態2では、平均化処理(アンサンブル平均)の対象となる相互相関値組合せの個数の最小値を予め定め、その値に満たない場合はこの発明による制御を行なわず、受信応答ベクトルの推定精度の劣化を防止しようとするものである。また、組合せの個数が推定に十分な一定数に達すればその時点で検索を終了し、計算量の増大を防止しようとするものである。
【0135】図9は、上述の原理に基づいて、図5のDSP14で実現されるこの発明の実施の形態2による受信応答ベクトル推定方法を説明するフロー図である。図9に示す実施の形態2のフロー図は、図6に示す実施の形態1のフロー図と、以下の点を除いて同じであり、共通する部分の処理については説明を省略する。
【0136】すなわち、図6のステップS9における検索に代えて図9のステップS40の検索処理が実行され、さらに図6のステップS10における組合せの有無の判定に変えて図9のステップS41の組合せ数の判定処理が実行される。
【0137】まず、ステップS40においては、基本的には、図6のステップS9と同様に、相互相関値を相殺する(0+0jにする)ための組合せを検索する。ただし、この図9のステップS40では、相互相関値の組合せの個数が所定数に達した場合には、その時点で検索処理を終了し、計算量の増大を防止している。
【0138】図10は、このステップS40における検索処理を示すフロー図である。図10に示すフロー図は、図7に示す実施の形態1のフロー図と、以下の点を除いて同じであり、共通する部分については説明を省略する。
【0139】まず、ステップS51において、図7のステップS21におけるシンボルループの設定に加えて、アンサンブル平均の対象となる相互相関値(対応するシンボルt)の個数Zが0に設定される。
【0140】そして、ステップS52において、図7のステップS25におけるアンサンブル平均にしようするデータ(シンボルtの対)の記憶に加えて、平均化数Zをシンボルtの対に対応して2だけインクリメントする。
【0141】そして、ステップS53において、図7のステップS26における時刻t=1〜120のすべてについて検索が終了したか否かの判定に加えて、平均化数Zが所定値β以上か否かが判定される。所定値βは、一定の精度で受信応答ベクトルの推定が可能な平均化数に設定されている。
【0142】ステップS53において、シンボルループtが120に達していなくても、平均化数Zが所定値β以上となれば、その時点で処理を終了し、計算量の増大を防いでいる。
【0143】次に、図9に戻って、ステップS41において、ステップS40において検索された相互相関値を相殺する組合せの個数が所定値α以上か否かが判定される。所定値αは、精度劣化をもたらさずに受信応答ベクトルの推定が可能な最低限の個数に設定されている。
【0144】ステップS41において、所定値α以上でないと判定されれば、ステップS6に進み、この発明ではなく、先に説明した従来の処理により受信応答ベクトルの推定がなされる。
【0145】一方、ステップS41において、所定値α以上であると判定されると、ステップS11において、アンテナ番号1〜4のそれぞれに対応する受信応答ベクトルRV1(X)〜RV4(X)が、前述のように算出される。
【0146】以上のように、この発明の実施の形態2によれば、平均化処理のための相互相関値の組合せ個数が十分でない場合にはこの発明による受信応答ベクトル推定方法を終了して推定精度の劣化を防止するとともに、個数が一定数に達した場合には、組合せの検索を終了して余分な計算量の増大を防止することができる。
【0147】今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0148】
【発明の効果】以上のように、この発明によれば、複数の移動端末装置からの信号のシンボルごとの相互相関値のうち、組合せて時間平均したときにゼロとなる相互相関値の組合せを選択して、その組合せに対応するそれぞれのシンボルにおいて受信応答ベクトルを演算するように構成しているので、少ない演算量で高精度の受信応答ベクトルの推定を実現することができる。




 

 


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