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発明の名称 パケット通信方法及び提案ノード
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2003−158558(P2003−158558A)
公開日 平成15年5月30日(2003.5.30)
出願番号 特願2001−356498(P2001−356498)
出願日 平成13年11月21日(2001.11.21)
代理人 【識別番号】100090893
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 敏
【テーマコード(参考)】
5K030
5K033
5K034
【Fターム(参考)】
5K030 HA08 JL01 LA02 LC03 MB13 
5K033 AA06 CB03 CC01 DA17 EB00
5K034 AA02 AA03 AA10 EE11 HH09 HH11 LL01 MM03
発明者 村上 誉 / ウー 剛 / 井上 真杉
要約 課題
通信遮断による連続したパケットロスに対して、遮断の回復後、すみやかに通信が再開できると共に、簡易な構成で低コストなパケット通信方法及び提案ノードを提供すること。

解決手段
通信遮断の後に通信が回復すると、通信遮断回復検知部27で検知し、演算部28において算出した最適な回数、擬似的に重複した確認応答をACK送信部25から送信する。同時に、通常は広告受信ウィンドウサイズを過小に広告すると共に、回復時にそのサイズを増加させて広告する。
特許請求の範囲
【請求項1】少なくとも一部に無線通信区間を有するネットワークにおけるパケット通信方法であって、TCPを用いて無線通信を行う提案ノードと、ネットワーク上に存在する標準的なTCP通信が可能な機器である一般ノードとの間で通信中に通信遮断によるパケットロスが生じた後、該提案ノードが通信遮断の回復を検出する回復検出ステップ、該提案ノードが通信遮断の終了の検出を該一般ノードに通知する通知ステップ、通知を受けた該一般ノードが、直ちにデータの送信を再開する送信再開ステップの各ステップを含むことを特徴とするパケット通信方法。
【請求項2】前記パケット通信方法が、前記提案ノードと、前記一般ノードとの間でTCPを用いた通信中に通信遮断によるパケットロスが生じた後、通信遮断から回復したときに、提案ノードが、擬似的に重複した確認応答を送信する通知ステップと、一般ノードが重複した確認応答を複数受信した場合に、該確認応答に基づいてパケットを再送するステップ、提案ノードが、一般ノードに広告する広告受信ウィンドウサイズを増加させて一般ノードに送信するステップ、一般ノードが提案ノードに向けて該増加分に対応する新パケットを送信するステップの各ステップを含む通信再開ステップとから構成されることを特徴とする請求項1に記載のパケット通信方法。
【請求項3】前記パケット通信方法において、正常通信時には、広告受信ウィンドウサイズを過小に広告する一方、通信遮断から回復した時に広告受信ウィンドウサイズとして実際の受信バッファ値を広告する請求項1又は2に記載のパケット通信方法。
【請求項4】前記パケット通信方法において、前記提案ノードが、前記一般ノードに広告する広告受信ウィンドウサイズを増加させた後の広告受信ウィンドウサイズをawnd、最大セグメントサイズをMSSとしたとき、該提案ノードが擬似的にD=ceil(awnd/MSS)
によって計算されるD回重複した確認応答送信する請求項1ないし3に記載のパケット通信方法。
【請求項5】前記パケット通信方法において、正常通信時に広告受信ウィンドウサイズを過小に広告する際、前記一般ノードに広告する広告受信ウィンドウサイズを増加させた後の広告受信ウィンドウサイズをawnd、過小に広告する広告受信ウィンドウサイズをawnd’、最大セグメントサイズをMSSとしたとき、2>awnd/MSS+(6−n(n+1)/2)と、n=(awnd−awnd’)/MSSとの2式を共に満たすawnd’を算出し、その最大値を広告する請求項1ないし4に記載のパケット通信方法。
【請求項6】TCPを用いて無線通信を行う提案ノードであって、下り信号の信号電力を検知し所定の閾値を超えたのを確認することで通信遮断から回復したことを検知する通信回復検知手段と、擬似的に重複した確認応答を送信する疑似重複信号送信手段と、一般ノードに広告する広告受信ウィンドウサイズを変化させ、一般ノードに送信するサイズ適応広告手段とを備えたことを特徴とする提案ノード。
【請求項7】前記提案ノードにおいて、正常通信時には、広告受信ウィンドウサイズを過小に広告する一方、前記疑似重複信号送信手段による確認応答の送信後、前記サイズ増加広告手段が、広告受信ウィンドウサイズを実際の受信バッファ値に増加して一般ノードに送信する請求項6に記載の提案ノード。
【請求項8】前記提案ノードが、一般ノードに広告する広告受信ウィンドウサイズを増加させた後の広告受信ウィンドウサイズをawnd、最大セグメントサイズをMSSとしたとき、D=ceil(awnd/MSS)
によって計算されるD回重複した確認応答を、擬似的に重複して送信する請求項6又は7に記載の提案ノード。
【請求項9】前記提案ノードが、正常通信時に広告受信ウィンドウサイズを過小に広告する際、一般ノードに広告する広告受信ウィンドウサイズを増加させた後の広告受信ウィンドウサイズをawnd、過小に広告する広告受信ウィンドウサイズをawnd’、最大セグメントサイズをMSSとしたとき、2>awnd/MSS+6−n(n+1)/2と、n=(awnd−awnd’)/MSSとの2式を共に満たすawnd’を算出し、その最大値を広告する請求項6ないし8に記載の提案ノード。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、TCPを用いた無線通信におけるパケット通信方法に関する。特に、通信遮断が生じた際に、高速に正常通信状態に回復できる手法を提案するものである。
【0002】
【従来の技術】近年の携帯電話やインターネットの普及に伴い、高速な無線通信技術の開発が急がれている。本件出願人らによっても、構内系や屋外系のシステムとして高速な無線アクセスシステムが開発されており、すでに156Mbpsの伝送速度が実現されている。
【0003】しかし、無線通信では通信遮断により伝送速度が低下する場合があり、特にこれからの周波数資源として注目されるミリ波帯によるシステムでは、人体等によっても容易に遮蔽されてしまうため、遮蔽による切断を防ぐ技術だけではなく、切断した場合にその影響を最小限にとどめることが必要である。インターネットでも用いられるTCPは、完璧な誤り制御とフロー制御を行うため、遮断によるパケットロスが発生した場合、遮断からの回復後に再送を行う。
【0004】従来のTCPの再送では、パケットロスが輻輳により発生するという前提であるために、遮断時に起こりやすい複数の連続したパケットロスに対しては、再送に長い時間を要することが多い。この結果、遮断時間に比べて著しく長い時間、TCPによる通信が不能になってしまう問題があった。
【0005】この対処としては、無線環境に対応したTCPに関する研究があり、例えば参考文献1に挙げるsnoopプロトコルでは、基地局にエージェントを配してコネクションを監視し、無線端末が再送要求を出したときにエージェントが吸収・代理応答することで、再送動作による伝送速度低下を防ぐ方法が提案されている。
【0006】
【参考文献1】H.Balakrishnan, S.Seehan, and R.H.Katz,"Improving Reliable Transport and Handoff Performance in Cellular Wireless Networks", ACM Wireless Networks 1(4), 1995年12月【0007】しかし、このような従来の方法では、通信遮断における一定時間以上継続しておこるエラーに対して有効に対応できていない。また、エージェントを設けたり、サーバー側とクライアント側とを共に変更したりする構成は、汎用性に乏しく、コスト高を招くことになる。従来の技術では、これらの問題点を解決する有効な方法が提供されておらず、上述した高速な無線通信技術における障害となっていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技術の有する問題点に鑑みて創出されたものであり、その目的は、通信遮断による連続したパケットロスに対して、遮断からの回復後、すみやかに通信が再開できると共に、既存のシステムに大きな変更を加えず、簡易な構成で低コスト化に寄与するパケット通信方法及び提案ノードを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題の解決を図るため、本発明では次のようなパケット通信方法を提供する。本パケット通信方法は、少なくとも一部に無線通信区間を有するネットワークにおいて用いられるものである。本発明におけるパケット通信方法は、一般ノードと、提案ノードとの間でTCPを用いた通信中に通信遮断によるパケットロスが生じた後、通信遮断から回復したときに、提案ノードが、擬似的に重複した確認応答を複数送信する。このとき、プロトコルスタックにおけるTCP層では、疑似重複確認応答を送るために、各コネクションが最後に送信した確認応答を記憶しておく。
【0010】提案ノードが、重複した確認応答にて、一般ノードに広告する広告受信ウィンドウサイズを増加させて一般ノードに送信する。一般ノードは、重複した確認応答を複数受信した場合に、該確認応答に基づいて、一般ノードが提案ノードに向けて該増加分に対応する新パケットを送信する。
【0011】正常通信時には、広告受信ウィンドウサイズを過小に広告する一方、通信遮断から回復した時に広告受信ウィンドウサイズとして実際の受信バッファ値を広告する構成でもよい。
【0012】本発明においては、上述のように擬似的に重複して確認応答を送信するが、その送信回数は次の式によって求めることもできる。
D=ceil(awnd/MSS)
ここで、一般ノードに広告する広告受信ウィンドウサイズを増加させた後の広告受信ウィンドウサイズをawnd、最大セグメントサイズをMSSとしている。確認応答は重複数を大きくすることで新しいデータの送信を促すことができるが、一定数を超えると意味をなさない。上記はすみやかなデータの再送を促し、かつ有効に作用する確認応答の送信回数である。
【0013】前記パケット通信方法において、正常通信時に広告受信ウィンドウサイズを過小に広告する際、サイズを増加させた後の広告受信ウィンドウサイズをawnd、過小に広告する広告受信ウィンドウサイズをawnd’、最大セグメントサイズをMSSとしたとき、2>awnd/MSS+(6−n(n+1)/2)と、n=(awnd−awnd’)/MSSとの2式を共に満たすawnd’を算出し、その最大値を広告することにより、正常通信時に最適な広告受信ウィンドウサイズを得ることもできる。
【0014】また、本発明は次のような提案ノードを提供することも出来る。すなわち、TCPを用いて無線通信を行う提案ノードであって、下り信号の信号電力を検知し所定の閾値を超えたのを確認することで通信遮断から回復したことを検知する通信回復検知手段と、擬似的に重複した確認応答を送信する疑似重複信号送信手段と、一般ノードに広告する広告受信ウィンドウサイズを変化させ、一般ノードに送信するサイズ適応広告手段とを備える。
【0015】正常通信時には、広告受信ウィンドウサイズを過小に広告する一方、前記疑似重複信号送信手段による確認応答の送信後、前記サイズ増加広告手段が、広告受信ウィンドウサイズを実際の受信バッファ値に増加して一般ノードに送信する構成でもよい。
【0016】前記提案ノードが、一般ノードに広告する広告受信ウィンドウサイズを増加させた後の広告受信ウィンドウサイズをawnd、最大セグメントサイズをMSSとしたとき、D=ceil(awnd/MSS)
によって計算されるD回重複した確認応答を、擬似的に重複して送信する構成でもよい。
【0017】正常通信時に広告受信ウィンドウサイズを過小に広告する際、一般ノードに広告する広告受信ウィンドウサイズを増加させた後の広告受信ウィンドウサイズをawnd、過小に広告する広告受信ウィンドウサイズをawnd’、最大セグメントサイズをMSSとしたとき、次の2式を共に満たすawnd’を求めてもよい。
2>awnd/MSS+(6−n(n+1)/2)
n=(awnd−awnd’)/MSSそして、awnd’の最大値を広告することにより、正常通信時に最適な広告受信ウィンドウサイズを得ることもできる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施方法を図面に示した実施例に基づいて説明する。なお、本発明の実施形態は以下に限定されず、適宜変更可能である。無線通信チャネルの状態は常に変動し、場合によっては一時的な切断(以下、通信遮断)も発生する。通信の高速化に伴い、一瞬の通信遮断が通信パフォーマンスに与える影響も大きくなっている。特に上位層がTCPの場合には、通信遮断によって大きくパフォーマンスが低下することが問題となっている。本発明は、このような通信遮断後に、速やかに通信性能が回復するパケット通信方法を提供するものである。
【0019】通信遮断の要因としては、ハンドオーバやシャドウイングなどが考えられる。特に5GHz帯無線LAN、22/26/38GHz帯の加入者系無線アクセス(FWA)、60GHz帯等の各種無線通信システムなどのような高周波利用システムでは、通常はスポットサービスが中心となるが、将来は既存セルラーのように複数セルによる移動通信をサポートしたいという要求もある。その場合にはハンドオーバが必要となるが、従来のような計画的なセル配置は困難であり、ハンドオーバ時に瞬間的な遮断が生じることが考えられる。一方のシャドウイングは、主に高周波帯の電波伝播の直進性に起因する問題である。特にミリ波帯では顕著であり、オフィス環境での実験によると、平均遮断継続時間は0.3秒、平均遮蔽発生間隔は10分程度との結果が得られている。
【0020】このように、無線通信において物理層レベルの遮断が問題となるが、この遮断が上位のTCP層に大きな影響を与えることが明らかになってきた。TCPはインターネットでもっともよく使われているトランスポートプロトコルであり、ネットワーク帯域を公平に共有するためのスロースタート・輻輳制御と、輻輳時のルータでのバッファ溢れによるパケットロスを補償するための再送制御に特徴がある。伝送エラーの少ない有線ネットワークを前提に設計されているTCPは、パケットロス=輻輳と判断し、パケット送出レートを低下させて輻輳回避を試みる。
【0021】しかしながら、無線伝送エラーによるパケットロスが発生するネットワーク上でTCPを利用すると、この輻輳回避アルゴリズムがスループットを大きく低下させてしまう。すなわち、いくつかのパケットロスが発生した直後に回線が元の良好な状態に回復したにも拘らず、輻輳と認識したTCPが輻輳回避のためにしばらくの間パケット送出レートを下げてしまうことにより、スループットが低下してしまう。これが高周波無線通信時に起こるTCPの問題点である。
【0022】特に、送信側のバッファが一杯になるような通信遮断が発生したときには、fast recovery(以下、FRCと呼ぶ。)やSelective Acknowledgement(以下、SACKと呼ぶ。)といった現状の再送対策の手法は機能しない。これらの機能は、受信側からの確認応答(本実施例では、ACKとする。)が引き金としてアクションを起こすため、通信遮断時にはそのACKも到達しないために再送ができず、かつ新たなデータも送れないという、2つの問題が生じる。
【0023】TCPは送受両方で協調動作することで信頼性の高いデータ転送を実現しているために、一定時間接続が途切れたりバースト的なエラーが発生した場合、どちらかが何らかの送信を行わない限りタイムアウトを待つしかないというところに大きな問題がある。従来の対策としては、有線サーバー側も含めて、TCPプロトコルを全て無線対応型に改めるという試みもあるが、インターネット上の全てのサーバーに変更を強いるのは現実性がなく、限られたネットワークで実施するとしてもコスト高、汎用性の乏しさが問題である。そこで、本発明は、無線区間はいわゆるファーストホップ/ラストホップとして使用され、有線で構成された基幹部分(インターネットなど)を介し、他ノードと通信する図1に示すネットワーク環境を例に、上記問題点の解決を図るものである。
【0024】通信遮断が発生した場合、提案ノード(1)がデータの受信を行っている場合は通信遮断が終わると同時に受信を再開できるのが望ましいが、図示のような環境では一般ノード(2)は無線区間(3)の通信遮断を知るすべが無いため、即座に再送のデータが送ることはない。これに対する有効な方法として、通信遮断から回復した時に、下位層がTCP層に信号を送るという手法を導入する。通信遮断終了時に早期の伝送速度の回復を図るためには、TCP層が通信遮断に関する情報を知る必要がある。提案ノード側は、下位層にて下り信号の受信状況を検知することで通信遮断の検出が可能である。すなわち、受信信号電力が一定時間所定の閾値以下であるときに通信遮断と認識し、その後受信信号電力が所定の閾値を超えて大きくなったときに、通信遮断から回復したと検出する。例えば、提案ノード(1)に、下位層からTCP層に信号を伝えられるようなドライバ、もしくはミドルウェア等を導入し、レイヤ間(下位層・TCP層間)通信を行う。
【0025】この仕組みによって知り得た通信遮断の終了は、提案ノード(1)で持っているだけでは役に立たない。そこで、通信相手先のTCPにもそれを伝える必要があるので、提案ノード(1)側で、擬似的に重複したACK(以下、重複ACKと呼ぶ。)を送信する機構を導入する。本実施例で用いる、一般ノード(2)が再送を行うためには、タイムアウトが発生するか、重複ACKを3つ以上受けてFast retransmit(以下、FRTと呼ぶ。)状態になる必要がある。この実装により、通信遮断回復と同時に再送を開始させることができるようになる。
【0026】そこで、本発明では、再送を開始させるために提案ノード(1)側のTCP層では重複ACKを送信できるように変更するとともに、送信する重複ACKの元データとなる最新の送信したACKを各コネクションが保持しておくよう変更を加えることを特徴とする。これらの変更を加えることで、速やかなデータの再送を受け取れないという上記問題を解決できるようになる。
【0027】もう1つの改善点として、SACK再送の仕組みが有効に働くようにしなくてはならない。提案ノードがSACKブロックを送信するためには、通信遮断終了後に再送ではない新しいパケットを受信し、到着パケットのシーケンス番号に欠けを生じさせなくてはならない。しかし、SACKを用いた従来の手法では、一般ノードのTCPのバッファが一杯になり、新しいパケットを送出できなくなる問題がある。
【0028】本発明は、この点の解決方法として、通常状態時は、awnd(advertised receive window : 広告受信ウインドウ)を実際のバッファサイズより小さく広告すると共に、通信遮断からの回復時のみに、実バッファサイズに基づいたawnd値を広告するように変更する。TCPでは送信が可能かどうかの判断を2種のウインドウの大きさに基づいて行う。1つはcwnd(congestion window : 輻輳ウインドウ)である。cwndは、自分の送信の様子を反映し、正常にACKが返ってきた時に大きく、再送が発生したときに値が小さく更新される。もう1つがこのawndであり、通常は受信側の空きバッファ量を示すことで送信側に過剰な送信を行わないように伝える役割を持つ。
【0029】送信側TCPは、この2つのウィンドウサイズのうちより条件の厳しい、すなわち値の小さいほうの条件に従って送信制御を行う。よって、送信側がバッファを一杯にしないためには、通常時にこのcwndかawndのいずれかを小さく設定しておき、通信遮断からの回復時に新しいパケットを送信できる余裕を残しておけばよい。本発明では、既存のネットワークになるべく改変を加えずに済む構成をとるため、提案ノードで制御できるawndサイズを小さく設定することで問題の解決を図る。以下、実バッファサイズに基づく従来の広告受信ウィンドウサイズをawnd、本発明で小さく設定した時のサイズをawnd’とする。
【0030】以上の3点の特徴を実現する、提案ノードの構成図を図2に示す。提案ノード(1)は、無線通信のアンテナ・送受信機能を有する無線通信アダプタ(20)と、CPU(21)と、メモリ(22)と、外部記憶装置(23)とから構成され、CPU(21)によって、諸機能を実現する。本提案ノードは、一般に用いられるパーソナルコンピュータ等にプログラムすることでも実現可能である。
【0031】CPU(21)は、無線通信アダプタ(20)から受信されたデータを処理するデータ受信部(24)、正常に受信された場合にACKを送信するACK送信部(25)を備え、正常通信時は、データ受信部(24)で受信されたデータはアプリケーション層(インターネットにおけるftpやtelnetなど)によって処理され、メモリ(22)や、外部記憶装置(23)、図示しない表示装置などに蓄積・表示される。
【0032】本提案ノード(1)は、同時に受信信号電力検知部(26)を備え、受信中の信号電力を検知する。そして、データ受信部(24)と連携或いは一体的に、信号電力が小さく、データが受信出来ない状態(信号遮断時)から、一定の閾値を超えてデータ受信が可能な状態に回復したときに、通信遮断回復検知部(27)がこれを検知し、本発明による速やかな通信の回復を図る。
【0033】演算部(28)では、上記に示した重複ACKの送信回数や、awnd・awnd’の適正な値を演算し、ACK送信部(25)から送信する。演算部(28)の演算処理については、後述する。以上の処理は、本発明の実施において最低限必要な処理であって、実施時に他の機能を設けることを妨げるものではない。また、データ受信部(24)と受信信号電力測定部(26)の構成は、機能的に分離して表示したものであり、同一の回路・プログラムによって実現することも可能である。
【0034】以上に示した通信方法における、提案ノード(1)と一般ノード(2)とのデータ送信の様子を図3に示す。図中、正常通信時(30)、通信遮断時(31)、通信回復時(32)である。正常通信時(30)のACK(33)は、awnd’を広告する。そして、通信遮断(31)が発生して、データの送受信が出来ない状態を経て、通信が回復した瞬間(32a)に、通信遮断回復検知部(27)によって回復を検知し、重複ACK(34)(35)を送信する。ここでは、重複ACK(34)は4パケット必要であり、重複ACK(35)は演算部(28)で必要と判断した数だけ数送信する。(図中では4パケットとして示す。)
【0035】そして、前者の重複ACK(34)ではawnd’を広告し、後者(35)では本来のサイズであるawndを広告する。これによって、前者(34)によってFRT状態になり、最初の1パケット(36)の再送が行われる。そして、合計8パケットの重複ACKを受信したために一般ノードのcwndのサイズも大きくなって、新パケットが送信するのに十分な大きさであるが、cwndが大きくなってもawndに変化がないと、ACKを受信せずに送信出来るデータの最大量がawndの制限によって増えず、新パケットが送信できなかった。
【0036】これを回避するために、上記のように通常は過小にawnd’と設定し、後者(35)でawndに一時的に増加させて広告する。これにより、新たに送信できるデータの最大量が増し、新パケット(37)が送信できるようになる。新パケット(37)の受信後、提案ノード(1)側では正常に受信できなかったパケット(の番号)が判明するため、この情報をオプションフィールドに付加して送信(38)する。一般ノード(2)においてもこれで正常に受信できていないパケットを確定でき、以降、SACK再送(39)が可能となる。
【0037】以上に示したように、本発明によれば、提案ノードだけの変更で、FRTによる再送、FRCによる新しいパケットの送信、それを受けてのSACK再送が正しく機能していることが確認できる。次に、上記重複ACKで送信する回数と、最適なawnd’の設定について説述し、さらに好適な伝送効率の実現を図る。
【0038】まず、重複ACKの個数について検討する。通信遮断終了と同時に、提案ノード(1)側TCP層(の各コネクション)は擬似ACKを複数送信する。この時、少なくとも4つの重複ACKを送ることで、送信側にFRTによる再送を行わせることができた。4個よりさらに増やした場合、例えばTCP RenoではFRC状態になり、重複ACKが到着するごとにcwndが1 MSS(maximum segment size : 最大セグメントサイズ)分だけ大きくなる。よって、送信する重複ACKを増やすことで新しいデータの送信を促すことが期待できる。通信遮断中にタイムアウトが発生した場合は、cwndが最小値(1MSS)に設定更新されているため特に有効である。
【0039】しかし、上述のように、重複ACKが一定数(Dmaxとする)を超えると【式1】cwnd>awndとなったところで送信できるデータの最大量はawndの大きさに制限され、それ以上の重複ACKの送信は意味がない。次に、Dmaxの求め方を示す。それには、cwndとssthresh(slow-start threshold : スロースタートと輻輳回避の閾値)の大きさの変化について考える必要がある。重複ACKを3つ受信し、FRT / FRC状態に入るとき、ssthreshは2MSSにセットされ、cwndはssthreshサイズに受信した重複ACK数分のMSSを足した値となる。つまり、受信した重複ACK数をDとすると、【式2】cwnd=(D+2)MSSとなる。ここで、【式1】より、【式3】(D+2)MSS>awnd【式4】

となる。このDのうち取りうる最小の整数値が、有効な重複ACKの最大値D0となる。
【式5】

【0040】ただし、通信遮断回復時に重複ACKを送信した場合、はじめの一つが重複とはならない場合も考えられる。(例えば、コピーされていたACKが、本来の送信時に通信遮断され届かなかった場合などに起こる。) また、5個目の擬似ACKにて広告受信ウインドウサイズをawnd’ からawndに更新するが、これはウインドウサイズの更新が起こった場合はそのACKは重複ACKには数えないからである。よって、送信が有効である擬似ACKの送信数の最大値Dmaxは、有効な重複ACKの最大値+2となるので、【式6】

となる。例えば、MSSが1,460 Bytesであり、awndサイズが65,536 Bytesとした場合、Dmaxは上式より45と求めることができる。
【0041】次に、awnd’の最適値を求める。すべてのパケットを再送するためには、図3中のSACK再送を起こす必要がある。SACK再送では、cwndとpipeというパラメータの比較し、SACK再送が可能になったとき、【式7】cwnd>pipeであれば、その差分だけデータを再送する。よって、この条件を満たすようにawnd’ 値を決めればよい。あらゆる条件で機能させるために、cwndが最小となる最も厳しい条件でも成立するawnd’ 値でなくてはならない。
【0042】まず、取りうる最小のcwnd値を求める。通信遮断中に2回以上のTCPのタイムアウトが発生した場合、slow startの発生によりcwndは1MSS、ssthreshは2MSSに設定される。その後ssthresh値は変化せず、SACK再送可能時、すなわち図3における2回目のFRT時(40)にSACK - TCPの定義により、【式8】cwnd=ssthreshとされ、最小のcwndは2MSSとなる。
【0043】同様に、pipeの取りうる最大値についても検討する。pipeとは、送信データのうち、ACKまたはSACKにより受信確認されていない量を示す変数であり、【式9】pipe=HighData-HighAck-AmountSackedと定義されている。HighDataとHighAckはそれぞれ、送信した最大シーケンス番号と、ACKを受け取った最大シーケンス番号であり、AmountSackedはSACK確認されたオクテット数である。以下、簡単のためセグメント数を元に概算する。
【0044】このpipe値は、SACKオプションを受け取っていて、FRT状態に入ったときに計算される。よって、送信側は前述の重複ACKによって送信ウインドウサイズ最大までパケットを送信しているので、【式10】

である。ここで、FRTに入るために4つのSACKオプションつきのACKを受け取るため、最大で、AmountSackedは4となり、pipeの初期値pipeINITは【式11】

となる。その後、SACKブロックが届くたびにpipeは減算されていき、SACKがn個届いたとき、【式12】

となる。
【0045】以上より得たcwndとpipenから、【式13】

とおける。また、n個のSACKは、その前に重複ACKによって同じ個数の新しいパケットを送信することで得られる。新しいパケットは、awndとawnd’ の差により送信数が決まるので、結局、【式14】

とできる。ここで、awndとMSSは環境によって既知なので、それを代入することでawnd’ を変数とする不等式になり、これを満たすようなawnd’ のうち最大サイズが最適値となる。
【0046】以上の諸式によって、本発明では、最適なawnd’のサイズを決定することができるので、好適な通信方法を提供することができる。本発明の効果を示す実験として、通信遮断からの早期回復が図れることを確認し、かつ通常時のawndの過小広告によってどれだけ伝送能力が悪化するかを評価する評価実験を行った。0.5秒間の通信遮断を行った場合の伝送の様子を図4に示す。ここで、上記の算出方法に基づき、通常時のawndを50,000Bytes、回復時のawnd’を実際のバッファサイズである、65,536Bytesとし、重複ACKは45回とした。
【0047】結果から明らかなように、本発明の手法を用いた場合は長時間通信遮断(50)が発生した場合にも、通信遮断終了と同時にパケットの送信が始まり(51)、0.5秒程度で再送を終える(52)とほぼ通信遮断前の伝送速度を取り戻せる(53)ことが確認できる。
【0048】本発明が対象とする実施形態は、以上に限定されず、無線通信区間を含む様々なネットワークにおいて実施することができる。例えば、図1に示されるような提案ノードと、無線通信を実現するアンテナとの間にLAN等のネットワークが存在する場合に限らず、提案ノードとアンテナが一体化した構成でもよい。同様に、一般ノードとインターネット等の基幹ネットワークとの関係も任意に変更可能である。
【0049】
【発明の効果】本発明は、以上の構成を備えるので、次の効果を奏する。すなわち、通信遮断による連続したパケットロスに対して、ごく短時間の遮断の場合と匹敵する速やかな通信の回復が可能であり、従来からの問題であった回復の遅延を解消することができる。とくに、ミリ波帯を用いた通信において本発明によるパケット通信方法や提案ノードを用いると、高品質な回線で高速通信に途を開くとともに、ミリ波帯で問題となる通信遮断に対しても有効な対処法として提供することができる。
【0050】さらに、本発明の方法は、提案ノードの改良によって従来からの問題を解決することができるので、ネットワークの構成を変更することなく、高性能で低コストな通信方法を実現できる。




 

 


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