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発明の名称 送受器
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2003−264889(P2003−264889A)
公開日 平成15年9月19日(2003.9.19)
出願番号 特願2002−66713(P2002−66713)
出願日 平成14年3月12日(2002.3.12)
代理人 【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫 (外3名)
【テーマコード(参考)】
5D011
5D020
【Fターム(参考)】
5D011 AC02 
5D020 CC06
発明者 稲田 孝
要約 課題
イヤホンやヘッドホンの装着なしに、両耳での良好な通話を行うことができる送受器を提供する。

解決手段
使用者が一方の手で持つことのできる筐体1と、筐体1に設けられ、受話音声または音響信号を音波として使用者のそれぞれの耳に供給する、指向性スピーカ20およびスピーカ30と、スピーカ20からの音波が使用者の左耳に到達するまでの間の第1の空間伝達関数と指向性スピーカ20からの音波が使用者の右耳に到達するまでの間の第2の空間伝達関数との差を打ち消すフィルタ手段とを有する。スピーカ30は、使用者の右耳に当接される。
特許請求の範囲
【請求項1】 使用者が一方の手で持つことのできる筐体と、前記筐体に設けられ、受話音声または音響信号を音波として前記使用者のそれぞれの耳に供給する第1および第2のスピーカと、前記第1のスピーカからの音波が前記使用者の一方の耳に到達するまでの間の第1の空間伝達関数と前記第2のスピーカからの音波が前記使用者の他方の耳に到達するまでの間の第2の空間伝達関数との差を打ち消すフィルタ手段とを有することを特徴とする送受器。
【請求項2】 第1および第2のスピーカは、少なくとも一方が指向性スピーカであることを特徴とする請求項1に記載の送受器。
【請求項3】 第1のスピーカは、筐体の一端の、使用者の一方の耳に当接される部分に設けられ、第2のスピーカは、指向性スピーカよりなり、前記筐体の他端に、前記使用者の他方の耳の方向に向けられて設けられていることを特徴とする請求項2に記載の送受器。
【請求項4】 フィルタ手段は、第1のスピーカの入力ラインに設けられた第1のデジタルフィルタと、第2のスピーカの入力ラインに設けられた第2のデジタルフィルタとを有し、前記第1のデジタルフィルタの伝達関数が、第1、第2の空間伝達関数をそれぞれHL、HRとし、前記第1、第2のスピーカの伝達関数をそれぞれLS1、LS2とするとき、HR・LS2/HL/LS1で与えられ、前記第2のデジタルフィルタが、前記第2のスピーカに入力される信号に対して所定の大きさの遅延を与えるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の送受器。
【請求項5】 第1のスピーカは、第1の音響信号を出力し、第2のスピーカは、第2の音響信号を出力し、該第1および第2の音響信号によりステレオ再生が行われることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の送受器。
【請求項6】 ステレオ再生が可能な第1および第2のチャンネル信号を入力とし、該入力信号を、フィルタ手段を介して第1および第2のスピーカに供給する左右反転回路と、前記第1のスピーカを使用者の左耳に当接する第1のモードと前記第1のスピーカを前記使用者の右耳に当接する第2のモードとの設定入力が前記使用者によって行われる設定部とを有し、前記左右反転回路は、前記設定部の設定モードが前記第1のモードの場合は、前記第1のチャンネル信号を前記第1のスピーカに供給し、前記第2のチャンネル信号を前記第2のスピーカに供給し、前記設定部の設定モードが前記第2のモードの場合は、前記第2のチャンネル信号を前記第1のスピーカに供給し、前記第1のチャンネル信号を前記第2のスピーカに供給することを特徴とする請求項5に記載の送受器。
【請求項7】 使用者が発生した音声を集音するためのマイクロホンと、前記マイクロホンで集音された、第1および第2のスピーカもしくは第2のスピーカからの受話音声または音響信号を、前記マイクロホンの出力から取り除くエコー除去手段とをさらに有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の送受器。
【請求項8】 使用者が発生した音声を集音するための指向性マイクロホンをさらに有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の送受器。
【請求項9】 フィルタ手段は、筐体が使用者に対して所定の位置に配置された状態において、第1の空間伝達関数と第2の空間伝達関数との差を打ち消すように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の送受器。
【請求項10】 使用者が片方の手で筐体を持つ第1の使用形態および前記筐体を前記使用者に対して所定の位置におく第2の使用形態のいずれかの使用形態が、前記使用者によって選択的に設定入力される使用形態設定手段を更に有し、フィルタ手段は、前記第1の使用形態において第1の空間伝達関数と第2の空間伝達関数との差を打ち消すように設定された第1のフィルタ部と、前記第2の使用形態において前記第1の空間伝達関数と前記第2の空間伝達関数との差を打ち消すように設定された第2のフィルタ部と、前記使用形態設定手段における設定が、前記第1の使用形態の場合は、前記第1のフィルタ部を選択し、前記第2の使用形態の場合は、前記第2のフィルタ部を選択する切替手段とを有することを特徴とする請求項1に記載の送受器。
【請求項11】 筐体の所定の面を基準にして、該基準面からの使用者の位置を検出する位置検出手段をさらに有し、フィルタ手段は、前記位置検出手段にて検出された前記使用者の位置における第1の空間伝達関数と第2の空間伝達関数との差を打ち消すように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の送受器。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電話機用の送受器に関し、特に、使用者が受話器からの音声・音響信号を両耳で聞くことができる送受器に関する。
【0002】
【従来の技術】電話機は、受話器を一方の耳に当てて電話をするのが一般的であるが、このような片耳による通話は、通話音声を聞き取り難い。一般に、両耳受聴では、片耳受聴時の1.5倍の音の大きさとなる(音の大きさの両耳加算)。このことから、より良好な通話を実現するには、受話器からの音声・音響信号を両耳で聞けるようにすることが望ましい。
【0003】両耳での通話が可能なものとしては、ヘッドホンや両耳イヤホンを用いたものがある。ヘッドホンを適用した例として、実開平3−22454号公報に記載された電話受話器がある。この電話受話器は、ヘッドホンと同様な構造の耳当て装置を受話器に取り付けたものである。使用者の一方の耳に宛がう受話器の耳当て部にパッドが設けられ、これが耳当て装置の一方の耳当て部を構成する。受話器の耳当て部から使用者の頭越しにもう一方の耳まで伸びた支持部材の端部に、耳当て装置のもう一方の耳当て部が設けられている。使用者は、この耳当て装置を頭にセットすることで、受話器を手に持つことなく、電話を行うことができる。
【0004】最近では、携帯電話機用として、ヘッドホンとマイクロホンを組み合わせた小型で簡易なシステムも提供されており、上記の耳当て装置と同様な効果を得られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述したような、ヘッドホンや両耳イヤホンなどを用いる従来のシステムにおいては、通話時に、イヤホンやヘッドホン等を装着する必要があり、非常に煩わしいものであった。
【0006】なお、イヤホンやヘッドホンの装着なし、両耳での通話が可能なものとしては、これまでに、ハンズフリー電話機が提供されている。しかし、このハンズフリー電話機の場合は、1つのスピーカから出力された受話音声または音響信号が単に使用者の両耳に供給される構成であるため、場合によっては、スピーカからの音波が両耳に到達するまでの間の両経路における空間伝達関数の違いなどのために、両耳に供給される音波に遅延などのずれが生じて、これが良好な通話の妨げとなる、という問題を生じる。
【0007】本発明の目的は、上記問題を解決し、イヤホンやヘッドホンの装着なしに、両耳での良好な通話を行うことができる送受器を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明の送受器は、使用者が一方の手で持つことのできる筐体と、前記筐体に設けられ、受話音声または音響信号を音波として前記使用者のそれぞれの耳に供給する第1および第2のスピーカと、前記第1のスピーカからの音波が前記使用者の一方の耳に到達するまでの間の第1の空間伝達関数と前記第2のスピーカからの音波が前記使用者の他方の耳に到達するまでの間の第2の空間伝達関数との差を打ち消すフィルタ手段とを有することを特徴とする。
【0009】上記のとおりの本発明においては、受話音声または音響信号が第1、第2のスピーカから使用者の左耳、右耳に対してそれぞれ供給されるとともに、フィルタ手段が、第1および第2のスピーカからそれぞれの耳までの間の両経路における空間伝達関数の差を打ち消す。この構造によれば、使用者の両耳には各スピーカから同一の音波が供給され、従来のように、一方の耳に供給される音波が遅延する、といった問題は生じない。よって、両耳による良好な通話が可能となる。また、筐体を一方の耳に宛がう、といった通常の動作で、両耳による通話が可能であり、従来のようなヘッドホンや両耳イヤホンを装着する、といった煩わしさもない。
【0010】上述の構成を有する本発明の送受器において、第1および第2のスピーカは、少なくとも一方が指向性スピーカであってもよい。この場合は、第1のスピーカは、筐体の一端の、使用者の一方の耳に当接される部分に設けられ、第2のスピーカは、指向性スピーカよりなり、前記筐体の他端に、前記使用者の他方の耳の方向に向けられて設けられていてもよい。
【0011】上記の構成によれば、使用者の耳に当接されない方のスピーカ、例えば、第2のスピーカは指向性スピーカより構成されているので、受話音声または音響信号が回りに居る人に漏れてしまうことを防止することが可能である。使用者の耳に当接されない方のスピーカからの受話音声または音響信号が回りに居る人に漏れてしまう場合は、その受話音声または音響信号は、回りに居る人にとって雑音となる。
【0012】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】(実施形態1)図1は、本発明の第1の実施形態である送受器の概略構成図である。この送受器は、固定電話機(公衆電話など)の他、移動通信の可能な携帯機(PHS(Personal Handy-Phone System)や携帯電話機)や移動電話機(自動車電話)などに適用可能なものであって、使用者が一方の手で持って一方の耳に宛がうことのできる所定の形状の筐体1を有する。筐体1は、固定電話機や移動電話機などであれば、ハンドセットと呼ばれる装置の筐体であり、携帯機であれば、当該機の筐体である。
【0014】筐体1には、使用者が筐体1を一方の耳に宛がった状態で、その一方の耳に当接される部分にスピーカ30が配置され、使用者の口に近接する部分にマイクロホン10が配置されている。さらに、筐体1には、使用者の他方の耳への音声・音響信号(音波)の供給が可能な位置に指向性スピーカ20が配置されている。図1の例では、指向性スピーカ20は、筐体1の、スピーカ30とは反対側の位置に、マイクロホン10に隣接して配置されており、その向きは使用者の他方の耳に向いている。指向性スピーカ20およびスピーカ30は、一般に言うところの受話器であり、マイクロホン10は一般に言うところの送話器である。
【0015】図1に示した送受器では、音声・音響信号(音波)が指向性スピーカ20およびスピーカ30のそれぞれから出力される。スピーカ30から出力された音波は、直接、使用者の一方の耳(ここでは、左耳)に到達する。一方、指向性スピーカ20から出力された音波は、使用者の顔の一部(縁)で回折されて使用者の他方の耳(ここでは右耳)に到達する。
【0016】図2は、図1に示した受話器の各スピーカに関する伝達関数を説明するための図である。図2中、HRは、指向性スピーカ20からの音波が使用者の右耳に到達するまでの区間の空間伝達関数であり、HLは、スピーカ30からの音波が使用者の左耳に到達するでの区間の空間伝達関数である。LS1、LS2はそれぞれスピーカ30、指向性スピーカ20の伝達関数である。図1に示した送受器を使用する場合、空間伝達関数HLとHRが異なると、使用者の両耳に聞こえて来る音声・音響信号は、左右で音量などが相違し、不自然なものとなる。この問題を解決するために、本形態の送受器は以下のようなフィルタ回路を備えている。
【0017】図3は、図1に示した送受器のフィルタ回路の概略構成を示すブロック図である。図3中、100は図1に示した送受器で、フィルタ回路40を備えている。フィルタ回路40は、デジタルフィルタ41、42、適用フィルタ43および加算器44からなる。
【0018】デジタルフィルタ41はスピーカ30の入力ラインに挿入されており、デジタルフィルタ42は指向性スピーカ20の入力ラインに挿入されている。指向性スピーカ20の入力ライン(デジタルフィルタ42の出力ライン)は分岐されており、該分岐ラインは適用フィルタ43を介して加算器44の一方の入力に接続されている。加算器44の他方の入力には、マイクロホン10の出力ラインが接続されており、加算器44の出力ラインは送受器100の出力ラインへと繋がっている。加算器44の出力ラインは分岐されており、該分岐ラインは適用フィルタ43の帰還入力に接続されている。各デジタルフィルタ41、42の入力ラインは、送受器100の入力ラインに共通に接続されている。送受器100の入出力ラインは、それぞれ電話回線101と接続されている。なお、送受器100における発着信などの電話機能の構成は、良く知られたものであり、本発明の特徴に直接関連するものではないので、図3では省略してある。
【0019】デジタルフィルタ41は、使用者の両耳に同一の音声・音響信号(音波)が供給されるように、空間伝達関数HLおよびHRの差を打ち消す働きをするもので、以下のように設定されている。
【0020】使用者の両耳に同一の音声・音響信号(音波)が供給されるためには、デジタルフィルタ41の伝達関数を「HR・LS2/HL/LS1」にする必要がある。一般に、伝達関数はインパルス応答を用いて計算することができ、その求めた伝達関数のインパルス応答をデジタルフィルタの定数として代入すればよい。しかしながら、デジタルフィルタ41の場合は、その伝達関数を導出するには、HL、LS1の逆伝達関数が必要となる。このような逆伝達関数を含むデジタルフィルタ41のインパルス応答は負の時間に値を持つため、デジタルフィルタ41は物理的に作成することはできない。
【0021】そこで、本実施形態では、指向性スピーカ20の入力ラインにデジタルフィルタ42を挿入している。このデジタルフィルタ42は音声・音響信号に遅延を与える働きをする。これにより、結果的にデジタルフィルタ41の負の時間の値に遅延を与え、正の時間の値に移行することが可能となり、デジタルフィルタ41の定数を決定することができる。
【0022】上記のようなデジタルフィルタ42を用いた遅延によるデジタルフィルタ41の定数の決定は、例えば特開平10−257599号公報に記載されている逆伝達関数導出方法により実現することができる。以下、その逆伝達関数導出方法を簡単に説明する。
【0023】上記公報に記載されている通り、一般にスピーカなどの伝達関数は最小位相系ではないために、単位インパルスに遅延時間を付加した形で求め、因果性を持った逆インパルス応答を求めることが多いが、この方法では、帯域外に急峻な利得が発生して良好な音像定位を行うことができない。これを解決するために、上記公報では、逆インパルス応答を作成したい伝達関数と同様な帯域外特性を持つ帯域フィルタの伝達関数のインパルス応答を目標伝達関数のインパルス応答とすることで、最適な音像定位を得る逆伝達関数のインパルス応答を求めている。
【0024】本実施形態においても、上記公報に記載された逆伝達関数導出方法を利用してHL、LS1の逆伝達関数を求める。すなわち、HL、LS1の逆伝達関数を導出するために必要な目標伝達関数として帯域フィルタを使用する。そして、因果性を満足させるために、HL、LS1の逆インパルス応答を導出する際に帯域フィルタのインパルス応答に遅延を与える。結果として、HL、LS1の逆インパルス応答には、帯域フィルタのインパルス応答に与えた遅延分だけの遅延を生じる。求めたHL、LS1の逆インパルス応答、HR、LS2のインパルス応答の合計4種類のインパルス応答を畳み込み演算することで、デジタルフィルタ41のインパルス応答を算出することができる。このようにして求めたインパルス応答をデジタルフィルタ41の定数として代入する。
【0025】上記の状態では、デジタルフィルタ41には、逆インパルス応答を算出する際に使用した遅延が生じているために、使用者の両耳に提示される音声・音響信号に時間差が生じることになる。これは、デジタルフィルタ41のインパルス応答が、(1)空間伝達関数HLの逆インパルス応答を計算する際に使用した帯域フィルタのインパルス応答に与えた遅延A;
(2)スピーカ30の伝達関数LS1の逆インパルス応答を計算する際に使用した帯域フィルタのインパルス応答に与えた遅延B;の和の遅延(遅延A+遅延B)を含むことによる。この遅延の問題を解決するために、デジタルフィルタ42が使用される。デジタルフィルタ42は遅延を与えるフィルタであり、帯域フィルタのインパルス応答にデジタルフィルタ41の遅延と等しい遅延(遅延A+遅延B)を与えたものである。このデジタルフィルタ42の伝達関数は、遅延(遅延A+遅延B)を加えた帯域フィルタのインパルス応答をフーリエ変換したものとなる。
【0026】上述のように構成されたデジタルフィルタ41、42により、空間伝達関数HLおよびHRの差が打ち消され、使用者の左耳に到達するスピーカ30からの音波と右耳に到達する指向性スピーカ20からの音波はほぼ同一のものになる。この結果、使用者の両耳への良好な音声・音響信号の提示が可能になる。
【0027】図3に示したフィルタ回路40には、上述のデジタルフィルタ41、42の他に、適用フィルタ43および加算器44が設けられているが、これらはエコーキャンセラを構成するものである。図1に示した送受器では、指向性スピーカ20はマイクロホン10に近接して配置されているため、指向性スピーカ20から出力された音声・音響信号がマイクロホン10に回り込み、電話回線101側にエコーやハウリングを送信することになる。この回り込みを適用フィルタ43および加算器44によりキャンセルする。具体的には、適用フィルタ43が、エコーが回り込んでくる経路の伝送特性を推定することにより擬似エコーを生成し、この生成した擬似エコーを加算器44にてマイクロホン10の出力に逆相で加えることでエコーを打ち消す。
【0028】なお、マイクロホン10に指向性のものを用いれば、指向性スピーカ20からの音声の回りこみ(エコーの回り込み)をある程度軽減できる。この場合は、適用フィルタ43および加算器44などを取り除くことが可能である。
【0029】以上説明した本実施形態の送受器によれば、各スピーカに関する空間伝達関数の差を打ち消すことで、両耳での良好な通話が実現されることに加えて、以下のような効果もある。
【0030】使用者の耳に当接されない方のスピーカ20は指向性スピーカより構成されているので、受話音声または音響信号が回りに居る人に漏れてしまうことを防止することが可能である。使用者の耳に当接されない方のスピーカからの受話音声または音響信号が回りに居る人に漏れてしまう場合は、その受話音声または音響信号は、回りに居る人にとって雑音となる。
【0031】また、最近急速に普及した携帯電話や自動車電話などは、屋外で電話をするケースが多く、外部騒音が激しい場所では通話音声を聞き取り難い、という問題が生じていた。また、固定電話においても、同様な問題を生じていた。例えば、公衆電話などは、道路沿いに設置されるため、車などの走行による騒音が良好な通話の妨げとなる。このような外部騒音による良好な通話の妨げは、従来の片耳による通話やハンズフリー電話機において重要な問題の1つとなっていた。本実施形態の送受器によれば、受話器が宛がわれていない方の耳に対しても指向性スピーカ20により受話音声または音響信号が提示される形態となっているので、音の大きさの両耳加算(両耳受聴では、片耳受聴時の1.5倍の音の大きさとなる。)による効果によって、外部騒音による良好な通話の妨げが抑制される。これにより、より良好な通話が実現される。
【0032】(実施形態2)上述した第1の実施形態の送受器は、指向性スピーカ20およびスピーカ30が同じ音声・音響信号を送出するモノラル再生になっているが、立体音場の再生(ステレオ再生)を行うようにすることも可能である。
【0033】図4は、本発明の第2の実施形態である送受器の構成を示すブロック図である。この送受器は、音声・音響信号をステレオ2チャンネルで受信する構造で、左右反転回路50および設定部51が設けられた以外は、図3に示した構成とほぼ同様のものである。
【0034】ステレオ再生を行う場合、使用者の左の耳には左耳用の音響信号が供給され、右の耳には右耳用の音響信号が供給される必要がある。例えば、図2に示したように、受話器を左耳に宛がった場合には、スピーカ30から左耳用の音響信号が供給され、指向性スピーカ20から右耳用の音響信号が供給される必要がある。一方、図2示した場合とは反対に、受話器を右耳に宛がった場合には、スピーカ30から右耳用の音響信号が供給され、指向性スピーカ20から左耳用の音響信号が供給される必要がある。受話器をどちらの耳に宛がうかは使用者の自由であるため、受話器をどちらの耳に宛がったかを何らかの手段で検出して、各スピーカから出力される音響信号を右耳用、左耳用に切替える必要がある。本実施形態では、このような切り替えを行うために左右反転回路50および設定部51が設けられている。
【0035】設定部51は、受話器を右耳に宛がうか、左耳に宛がうかを設定する部分で、受話器を左耳に宛がう場合には左モードに設定され、右耳に宛がう場合には右モードに設定される。この左モードおよび右モードの設定は、使用者自身により行われる。例えば、設定部51は、それぞれのモードに対応するスイッチ(ボタン)を有し、使用者が、いずれかのスイッチを押すことでモード設定を行う。また、別の例としては、設定部51は、左モードおよび右モードのそれぞれの設定が可能な選択ボタンが表示される表示パネルと、その表示された選択ボタンのいずれかを選択入力するための操作キーとを有し、使用者が、表示パネル上に表示された選択ボタンのいずれかを選択入力することでモード設定を行う。
【0036】左右反転回路50は、電話回線101を介して受信した右チャンネル音響信号および左チャンネル音響信号を、設定部51の設定モードに応じて、指向性スピーカ20およびスピーカ30に振り分けて供給する。具体的には、設定部51の設定モードが左モードの場合は、左右反転回路50は、右チャンネル音響信号を指向性スピーカ20に供給し、左チャンネル音響信号をスピーカ30に供給する。反対に、設定部51の設定モードが右モードの場合は、左右反転回路50は、右チャンネル音響信号をスピーカ30に供給し、左チャンネル音響信号を指向性スピーカ20に供給する。この動作により、良好なステレオ再生が可能となる。
【0037】携帯電話においては、近年、インターネットを利用した音楽配信などのサービスが開始されており、本実施形態の送受器によるステレオ再生は、そのようなサービスに対して特に有効である。
【0038】(実施形態3)上述した第1および第2の実施形態の送受器は、使用者が片方の手で筐体1を持つような構成になっているが、筐体1を使用者に対して所定の位置におく、周知のハンズフリー電話機のような形態をとることも可能である。この場合は、第1および第2の実施形態の送受器の構成において、スピーカ30も指向性スピーカとする。そして、使用者に対して所定の位置に送受器を置いた状態で、フィルタ回路40の各デジタルフィルタ41、42により、空間伝達関数HLおよびHRの差が打ち消されるように構成される。
【0039】本実施形態の送受器では、従来のハンズフリー電話機の場合と異なり、使用者に対して所定の位置に送受器を置いた状態で、各デジタルフィルタ41、42により、空間伝達関数HLおよびHRの差が打ち消されるようになっているので、良好な音場再生が可能である。
【0040】また、各スピーカ20、30はいずれも指向性スピーカより構成されているので、受話音声または音響信号が回りに居る人に漏れてしまうことを防止することができる。これに対して、従来のハンズフリー電話機の場合は、スピーカからの受話音声または音響信号が回りに居る人に漏れてしまい、その漏れた受話音声または音響信号が回りに居る人にとって雑音となっていた。
【0041】(実施形態4)使用者が片方の手で筐体1を持つ第1の使用形態と、筐体1を使用者に対して所定の位置におく第2の使用形態の両使用形態において、空間伝達関数HLおよびHRの差が打ち消されるように構成することもできる。以下、そのような動作を実現する具体的な構成について説明する。
【0042】図5は、本発明の第4の実施形態の送受器の概略構成を示すブロック図である。本実施形態の送受器は、第1の実施形態の構成において、第1の使用形態と第2の使用形態を選択的に設定入力可能な使用形態設定部61(設定入力は使用者により行われる)を設け、さらにフィルタ回路40を、第1の使用形態に対応した定数が設定されたデジタルフィルタ41a、42aと第2の使用形態に対応した定数が設定されたデジタルフィルタ41b、42bとの計4つのフィルタで構成するとともに、使用形態設定部61にて設定されるそれぞれの使用形態に応じて、デジタルフィルタ41a、42aのラインとデジタルフィルタ41b、42bのラインとの切り替えを行う切替部60a、60bを設けた構成である。
【0043】デジタルフィルタ41a、42aは、第1の使用形態において、空間伝達関数HLおよびHRの差を打ち消す働きをする。一方、デジタルフィルタ41a、42aは、第2の使用形態において、空間伝達関数HLおよびHRの差を打ち消す働きをする。各スピーカ20、30は、いずれも指向性スピーカである。なお、図5に示す例では、特徴部のみを示しており、適応フィルタなど、本実施形態の特徴とあまり関係しない部分は省略してある。
【0044】本実施形態の送受器では、使用者が、使用形態設定部61にて第1の使用形態を設定した場合は、切替部60a、60bにより、デジタルフィルタ41a、42aのラインが選択される。これにより、第1または第2の実施形態と同様な効果を奏する。また、使用者が、使用形態設定部61にて第2の使用形態を設定した場合は、切替部60a、60bにより、デジタルフィルタ41b、42bのラインが選択される。これにより、第3の実施形態と同様な効果する。
【0045】(実施形態5)上述した第3および第4の実施形態は、筐体1を使用者に対して所定の位置に配置する状態での使用を前提としているため、空間伝達関数HLおよびHRを予め与えることができる。しかし、筐体1を任意の場所に配置したり、通話中に使用者が移動したりする場合には、空間伝達関数HLおよびHRが変化することになるため、第3および第4の実施形態のような構成を採用することはできない。ここでは、ハンズフリー電話機のような使用形態で、筐体1を任意の場所の配置したり、通話中に使用者が移動したりする場合でも、良好な通話を行うことができる構成について説明する。
【0046】図6は、本発明の第5の実施形態の送受器の概略構成を示すブロック図である。本実施形態の送受器は、第1の実施形態の構成(図3)において、使用位置検出部71を新たに設け、フィルタ回路40のデジタルフィルタ41、42に代えてフィルタ係数の更新が可能なデジタルフィルタ41c、42cを設けた構成である。
【0047】各スピーカ20、30は、ほぼ同じ方向を向いており、出力された音波がそれぞれある程度広がりながら伝搬するように構成されている。この音波の広がりの範囲であれば、使用者は移動しても各各スピーカ20、30からの受話音声または音響信号を聴くことができる。
【0048】使用位置検出部71は、筐体1の各スピーカ20、30が設けられた面を基準とし、この基準面からの使用者の位置を検出する。具体的には、基準面から、使用者がどの方向に、どれだけ離れた位置に居るかが検出される。この検出結果には、スピーカ20からの音波が使用者の一方に耳に到達するまでの区間の距離と、スピーカ30からの音波が使用者の他方の耳に到達するまでの区間の距離とが含まれている。
【0049】フィルタ回路40の各デジタルフィルタ41c、42cには、使用位置検出部71にて検出された位置情報が入力される。フィルタ回路40は、入力された位置情報(距離情報)に応じて、適切な伝達関数(空間伝達関数HLおよびHRの差を打ち消すことができる)を求め、そのインパルス応答がフィルタ係数として各デジタルフィルタ41c、42cに代入される。
【0050】上記の構成によれば、例えば、使用者が通話中に移動して空間伝達関数HLおよびHRが変化しても、その移動に伴ってデジタルフィルタ41c、42cのフィルタ係数が更新されて、空間伝達関数HLおよびHRの差を打ち消すように働くので、利用者に対して、常に良好な両耳通話を提供することができる。
【0051】なお、使用位置検出部71は、筐体1に直接設けられても良いし、筐体1とは別体であってもよい。この使用位置検出部71としては、筐体1の基準面からの使用者の位置(少なくとも基準面から使用者までの距離)を特定することができるのであれば、どのようなものであってもよい。例えば、電波を放射して測定対象物からの反射電波を受信することでその測定対象物の位置を特定することができることが一般に知られており、この方式を用いて使用位置検出部61を構成することができる。電波を用いる方式以外には、光や赤外線などを用いるものも知られている。
【0052】また、上記の電波、光、赤外線などを用いて位置を特定する方式の他には、例えば、ダミーマイクを使用者に持たせ、筐体1から送出した特定の音波をそのダミーマイクで受信することで使用者の位置を特定する方法もある。この場合は、ダミーマイクによる受信信号から空間伝達関数を想定し、その想定した空間伝達関数から、筐体1の基準面から使用者までの距離情報を取得することになる。
【0053】さらに、撮像カメラなどを用いて撮像した画像データを画像処理することで使用者の位置を検出する方式も適用可能である。
【0054】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、イヤホンやヘッドホンを装着する、といった煩わしさがなく、従来にない、両耳での良好な通話が可能になる、という効果がある。




 

 


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