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発明の名称 電子透かしの埋め込みおよび検出
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2002−244685(P2002−244685A)
公開日 平成14年8月30日(2002.8.30)
出願番号 特願2001−46524(P2001−46524)
出願日 平成13年2月22日(2001.2.22)
代理人 【識別番号】100096817
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 孝雄 (外3名)
【テーマコード(参考)】
5C063
5J064
【Fターム(参考)】
5C063 AC10 CA40 DA07 DB09 
5J064 AA00 BA16 BC08 BC25 BD04
発明者 松井 甲子雄
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 デジタルデータに電子透かしの埋め込みを行う電子透かし埋め込み方法であって、(a)前記電子透かしの埋め込みの対象となる対象データと、前記電子透かしの埋め込みのために用いる鍵乱数列と、を準備する工程と、(b)前記対象データに所定の直交変換を施すことによって、複数の変換係数を求める工程と、(c)前記鍵乱数列から順次抽出される乱数値に応じて、前記複数の変換係数の中から、n(nは2以上の整数)個を1組とする変換係数の組を選択する工程と、(d)選択した組毎に、n個の変換係数のうち、少なくとも1つの変換係数に、別に得られる制御乱数値で所定の演算を施す工程と、(e)前記演算の施された変換係数を含む前記複数の変換係数に、前記直交変換とは逆の変換を施すことによって、対象データに戻す工程と、を備えることを特徴とする電子透かし埋め込み方法。
【請求項2】 請求項1に記載の電子透かし埋め込み方法において、前記工程(b)は、前記所定の直交変換として、変形離散コサイン変換を施す工程を含むことを特徴とする電子透かし埋め込み方法。
【請求項3】 請求項1に記載の電子透かし埋め込み方法において、前記工程(c)は、前記複数の変換係数の中から、2つを1組とする変換係数の組を選択する工程を含み、前記工程(d)は、選択した組毎に、前記2つの変換係数に、別に得られる2つの制御乱数値をそれぞれ加算または減算する工程を含むことを特徴とする電子透かし埋め込み方法。
【請求項4】 請求項1に記載の電子透かし埋め込み方法において、前記工程(a)は、前記鍵乱数列を複数準備する工程を含み、前記工程(c)は、各鍵乱数列毎に、それぞれ、その鍵乱数列から順次抽出される乱数値に応じて、前記複数の変換係数の中から、n(nは2以上の整数)個を1組とする変換係数の組を選択する工程を含むことを特徴とする電子透かし埋め込み方法。
【請求項5】 電子透かしの埋め込まれたデジタルデータから前記電子透かしを検出する電子透かし検出方法であって、(a)前記電子透かしの検出の対象となる対象データと、前記電子透かしの検出のために用いる鍵乱数列と、を準備する工程と、(b)前記対象データに所定の直交変換を施すことによって、複数の変換係数を求める工程と、(c)前記鍵乱数列から順次抽出される乱数値に応じて、前記複数の変換係数の中から、n(nは2以上の整数)個を1組とする変換係数の組を選択する工程と、(d)選択した組毎に、n個の変換係数の間で所定の演算を行う工程と、(e)得られた演算値の出現頻度から、前記電子透かしの存在を検出する工程と、を備えることを特徴とする電子透かし検出方法。
【請求項6】 請求項5に記載の電子透かし検出方法において、前記工程(b)は、前記所定の直交変換として、変形離散コサイン変換を施す工程を含むことを特徴とする電子透かし検出方法。
【請求項7】 請求項5に記載の電子透かし埋め込み方法において、前記工程(c)は、前記複数の変換係数の中から、2つを1組とする変換係数の組を選択する工程を含み、前記工程(d)は、選択した組毎に、前記2つの変換係数同士を加算または減算する工程を含むことを特徴とする電子透かし埋め込み方法。
【請求項8】 デジタルデータに電子透かしの埋め込みを行う電子透かし装置であって、前記電子透かしの埋め込みの対象となる対象データに所定の直交変換を施すことによって、複数の変換係数を求める直交変換部と、予め準備した鍵乱数列から順次抽出される乱数値に応じて、前記複数の変換係数の中から、n(nは2以上の整数)個を1組とする変換係数の組を選択する選択部と、選択した組毎に、n個の変換係数のうち、少なくとも1つの変換係数に、別に得られる制御乱数値で所定の演算を施す演算部と、前記演算の施された変換係数を含む前記複数の変換係数に、前記直交変換とは逆の変換を施すことによって、対象データに戻す逆直交変換部と、を備えることを特徴とする電子透かし装置。
【請求項9】 電子透かしの埋め込まれたデジタルデータから前記電子透かしを検出する電子透かし装置であって、前記電子透かしの検出の対象となる対象データに所定の直交変換を施すことによって、複数の変換係数を求める直交変換部と、予め準備した鍵乱数列から順次抽出される乱数値に応じて、前記複数の変換係数の中から、n(nは2以上の整数)個を1組とする変換係数の組を選択する選択部と、選択した組毎に、n個の変換係数の間で所定の演算を行う演算部と、得られた演算値の出現頻度から、前記電子透かしの存在を検出する検出部と、を備えることを特徴とする電子透かし装置。
【請求項10】 デジタルデータに電子透かしの埋め込みを行うためのコンピュータプログラムであって、前記電子透かしの埋め込みの対象となる対象データに所定の直交変換を施すことによって、複数の変換係数を求める機能と、予め準備した鍵乱数列から順次抽出される乱数値に応じて、前記複数の変換係数の中から、n(nは2以上の整数)個を1組とする変換係数の組を選択する機能と、選択した組毎に、n個の変換係数のうち、少なくとも1つの変換係数に、別に得られる制御乱数値で所定の演算を施す機能と、前記演算の施された変換係数を含む前記複数の変換係数に、前記直交変換とは逆の変換を施すことによって、対象データに戻す機能と、をコンピュータに実現させるためのコンピュータプログラム。
【請求項11】 電子透かしの埋め込まれたデジタルデータから前記電子透かしを検出するためのコンピュータプログラムであって、前記電子透かしの検出の対象となる対象データに所定の直交変換を施すことによって、複数の変換係数を求める機能と、予め準備した鍵乱数列から順次抽出される乱数値に応じて、前記複数の変換係数の中から、n(nは2以上の整数)個を1組とする変換係数の組を選択する機能と、選択した組毎に、n個の変換係数の間で所定の演算を行う機能と、得られた演算値の出現頻度から、前記電子透かしの存在を検出する機能と、を前記コンピュータに実現させるためのコンピュータプログラム。
【請求項12】 請求項10または請求項11に記載のコンピュータプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、音声データや画像データなどのデジタルデータに電子透かしの埋め込みを行う電子透かしの技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】インターネットなどのコンピュータネットワークの発展に伴って、情報のデジタル化が進み、多くのユーザが簡単に必要とする情報にアクセスできるようになっている。その反面、そのデジタル情報に著作権が発生しているデジタルコンテンツについて、その著者に断わりなく容易にデータが複製できるような環境になりつつあり、不正コピーにともなう著作権侵害の問題が注目されてきている。そこで、デジタルコンテンツの主たる情報である音声や画像に関しての著作権侵害を防止すること等を目的として、著作権情報などの透かし情報を音声データや画像データに埋め込む電子透かし技術が注目されている。
【0003】このような電子透かし技術のうち、例えば、スペクトル拡散を利用する方法では、拡散符号列を鍵とすることで、高い秘匿性を実現できる。また、パッチワークと呼ばれる手法では、ランダムに選択した2つの時系列標本値を制御し、それらの値から得られる分布のピーク位置をずらすことで、標本値の選択性をランダムにできるため、スペクトル拡散法と同様の高い秘匿性を実現できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、スペクトル拡散法やパッチワーク法などのように、時系列標本値をランダムに制御する手法は、透かしを検出する際の乱数同期が正確でなければならない。これは、高い秘匿性を実現できる反面、電子透かしに対する攻撃手法として知られるJitter攻撃のような信号同期を崩す攻撃に対して、脆弱であるという問題があった。
【0005】そこで、本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を解決し、高い秘匿性を実現でき、且つ、Jitter攻撃のような信号同期を崩す攻撃に対しても、十分耐え得る電子透かし技術を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】上記した目的の少なくとも一部を達成するために、本発明の電子透かし埋め込み方法は、デジタルデータに電子透かしの埋め込みを行う電子透かし埋め込み方法であって、(a)前記電子透かしの埋め込みの対象となる対象データと、前記電子透かしの埋め込みのために用いる鍵乱数列と、を準備する工程と、(b)前記対象データに所定の直交変換を施すことによって、複数の変換係数を求める工程と、(c)前記鍵乱数列から順次抽出される乱数値に応じて、前記複数の変換係数の中から、n(nは2以上の整数)個を1組とする変換係数の組を選択する工程と、(d)選択した組毎に、n個の変換係数のうち、少なくとも1つの変換係数に、別に得られる制御乱数値で所定の演算を施す工程と、(e)前記演算の施された変換係数を含む前記複数の変換係数に、前記直交変換とは逆の変換を施すことによって、対象データに戻す工程と、を備えることを要旨とする。
【0007】このように、本発明の電子透かし埋め込み方法では、対象データに所定の直交変換を施して、複数の変換係数を求め、予め準備した鍵乱数列から抽出される乱数値に応じて、それら変換係数の中から、n個を1組とする変換係数の組を選択する。そして、その選択した組毎に、n個の変換係数のうち、少なくとも1つの変換係数に、別に得られる制御乱数値で所定の演算を施す。さらに、その演算の施された変換係数を含む複数の変換係数に、直交変換とは逆の変換を施すことによって、対象データに戻すようにしている。
【0008】本発明の電子透かし埋め込み方法によれば、電子透かしの埋め込みに用いた鍵乱数列と同じ鍵乱数列を用いる場合に限り、電子透かしを検出することができるので、埋め込みに用いた鍵乱数列を知らない第三者が、電子透かしの存在を不正な手段で特定して、音質をほとんど劣化させることなく埋め込まれた電子透かしを除去することは、極めて難しい。従って、高い秘匿性を実現することができる。
【0009】また、本発明の電子透かし埋め込み方法によれば、時系列上での微少な変調による影響を受けにくい周波数領域に、電子透かしを埋め込むことになるので、Jitter攻撃のような信号同期を崩す攻撃に対しても、十分耐えることができる。また、その他、レベル変調や、帯域通過フィルタや、高能率圧縮符号化などに対しても十分な耐性を有している。
【0010】本発明の電子透かし埋め込み方法において、前記工程(b)は、前記所定の直交変換として、変形離散コサイン変換を施す工程を含むことが好ましい。
【0011】このように直交変換として、変形離散コサイン変換を用いることにより、対象データを複数のフレームに分割して直交変換を施した場合でも、フレーム間に生じやすいスパイク雑音や歪を低減することができる。
【0012】本発明の電子透かし埋め込み方法において、前記工程(c)は、前記複数の変換係数の中から、2つを1組とする変換係数の組を選択する工程を含み、前記工程(d)は、選択した組毎に、前記2つの変換係数に、別に得られる2つの制御乱数値をそれぞれ加算または減算する工程を含むことが好ましい。
【0013】このように構成することによって、より簡単な演算にて確実に電子透かしを埋め込むことができる。
【0014】本発明の電子透かし埋め込み方法において、前記工程(a)は、前記鍵乱数列を複数準備する工程を含み、前記工程(c)は、各鍵乱数列毎に、それぞれ、その鍵乱数列から順次抽出される乱数値に応じて、前記複数の変換係数の中から、n(nは2以上の整数)個を1組とする変換係数の組を選択する工程を含むことが好ましい。
【0015】このように、複数の鍵乱数列を用いて電子透かしを埋め込むことにより、同一のコンテンツに対して、多重に電子透かしを埋め込むことが可能となる。
【0016】本発明の電子透かし検出方法は、電子透かしの埋め込まれたデジタルデータから前記電子透かしを検出する電子透かし検出方法であって、(a)前記電子透かしの検出の対象となる対象データと、前記電子透かしの検出のために用いる鍵乱数列と、を準備する工程と、(b)前記対象データに所定の直交変換を施すことによって、複数の変換係数を求める工程と、(c)前記鍵乱数列から順次抽出される乱数値に応じて、前記複数の変換係数の中から、n(nは2以上の整数)個を1組とする変換係数の組を選択する工程と、(d)選択した組毎に、n個の変換係数の間で所定の演算を行う工程と、(e)得られた演算値の出現頻度から、前記電子透かしの存在を検出する工程と、を備えること要旨とする。
【0017】このように、本発明の電子透かし検出方法では、対象データに所定の直交変換を施して、複数の変換係数を求め、予め準備した鍵乱数列から抽出される乱数値に応じて、それら変換係数の中から、n個を1組とする変換係数の組を選択する。そして、その選択した組毎に、n個の変換係数の間で所定の演算を行い、得られた演算値の出現頻度から、電子透かしの存在を検出するようにしている。
【0018】本発明の電子透かし検出方法によれば、電子透かしの埋め込みに用いた鍵乱数列と同じ鍵乱数列さえ準備すれば、前述した本発明の電子透かし埋め込み方法によって埋め込まれた電子透かしを、容易に検出することができる。
【0019】本発明の電子透かし検出方法は、前記工程(b)は、前記所定の直交変換として、変形離散コサイン変換を施す工程を含むことが好ましい。また、前記工程(c)は、前記複数の変換係数の中から、2つを1組とする変換係数の組を選択する工程を含み、前記工程(d)は、選択した組毎に、前記2つの変換係数同士を加算または減算する工程を含むことが好ましい。
【0020】電子透かしを埋め込んだ際に用いた直交変換や演算方法に対応させるためである。
【0021】なお、本発明は、上記した電子透かし埋め込み方法や電子透かし検出方法などの方法発明の態様に限ることなく、電子透かし装置などの装置の発明としての態様や、それら方法や装置を構築するためのコンピュータプログラムを記録した記録媒体としての態様で実現することも可能である。また、さらには、上記コンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号や、上記コンピュータプログラム自体など、種々の態様で実現することも可能である。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.電子透かし埋め込みの原理:B.電子透かし埋め込み処理:C.電子透かし検出処理:D.具体例:D−1.音質への影響:D−2.電子透かしの検出:D−3.レベル変調に対する耐性:D−4.帯域通過フィルタに対する耐性:D−5.高能率圧縮符号化に対する影響:D−6.Jitter攻撃に対する耐性:E.装置全体の構成及び処理手順:F.変形例:F−1.変形例1:F−2.変形例2:F−3.変形例3:F−4.変形例4:F−5.変形例5:【0023】A.電子透かし埋め込みの原理:本発明に係る電子透かしの埋め込みでは、まず、対象となるデータに、所定の直交変換を施すことによって、例えば、M個の変換係数である周波数係数Xi(k),0≦k≦M−1を得る。次に、そのM個の周波数係数Xi(k)から、ランダムに2つの係数Xi(ai)およびXi(bi)を選び、その差分値diを式(1)に従って算出する。
【0024】
【数1】

【0025】次に、それら2つの周波数係数Xi(ai),Xi(bi)に、それぞれ、乱数値ui,viを加算して、電子透かしを埋め込むことにより、埋め込み後の周波数係数はXi’(ai),Xi’(bi)となり、これらの差分値di’は式(2)に示す如くになる。
【0026】
【数2】

【0027】式(2)から明らかなように、差分値di’は、差分値diが乱数値ui,viの加減による影響を受けたものであると見なせる。よって、このような電子透かしの埋め込みの行われた状態における差分値di’の統計的分布は、電子透かしの埋め込みの行われていない状態における差分値diの統計的分布に比べて、よりランダム性が増したものになるはずである。即ち、乱数値の加減算が行われた2つの係数を抽出して、差分統計を調べた場合に限り、特徴的な分布が得られることになる。
【0028】本実施例では、このような原理を利用して、周波数係数の差分値の統計的分布を拡散することにより、電子透かしの埋め込みを行うものである。以下、本実施例における電子透かし埋め込み処理とその検出処理について詳細に説明する。
【0029】B.電子透かし埋め込み処理:図1は本発明の一実施例としての電子透かし埋め込み処理の概要を示す説明図である。ここでは、音声データを対象とした電子透かしの埋め込み処理を説明する。まず、原音声データと、検出鍵となる乱数列(以下、鍵乱数列という)とを準備する。ここで、サンプリング時刻tにおける原音声データをs(t)とし、鍵乱数列をRとする。
【0030】次に、その原音声データs(t)を複数の一定長の音声フレームに分割する。ここで、i番目の音声フレームをSiとする。そして、その音声フレームSiに対して変形離散コサイン変換(MDCT)を施して、M個の周波数係数(変換係数)であるMDCT係数Xiを得る。
【0031】MDCTは、図2に示すように、M個のMDCT係数を得るために、音声フレームSiとして、2M個の時系列サンプルを用いる。これは、周波数分離度を高くし、且つ、隣接するフレームを互いに重複させることで、フレーム間歪を抑制できる手法である。
【0032】従って、原音声データs(t)におけるi番目の音声フレームSiについて、各MDCT係数Xi(k)は、式(3)によって求めることができる。
【0033】
【数3】

【0034】なお、ここで、窓関数w(n)およびMDCT基底c(k,n)は、それぞれ、式(4),(5)に示す如くである。
【0035】
【数4】

【0036】
【数5】

【0037】次に、鍵乱数列Rから、音声フレームSi毎に、異なる乱数値ai(0≦ai≦M−1)を抽出して、式(6)に示すようなM個の要素Ai(k)を有する系列Aiを生成する。
【0038】
【数6】

【0039】例えば、M=10のとき、抽出した乱数値ai=3であるならば、Ai={0,0,0,1,0,0,0,0,0,0}
が生成される。
【0040】次に、生成した系列Aiの各要素Ai(k)に、別に発生した制御乱数値ui(|ui|≦p)を乗じることで、系列Ciを生成する。但し、pは、電子透かし埋め込みの強度を制御するためのパラメータである。
【0041】例えば、前述の系列Aiに対して、発生した制御乱数値ui=5であるならば、Ci={0,0,0,5,0,0,0,0,0,0}
が生成される。
【0042】次に、上記したのと同様の手順を用いて、鍵乱数列Rから乱数値bi(0≦bi≦M−1)を抽出して、M個の要素Bi(k)を有する系列Biを生成し、この系列Biの各要素Bi(k)に、別に発生した制御乱数値vi(|ui|≦p)を乗じることで、系列Diを生成する。
【0043】例えば、M=10のとき、抽出した乱数値bi=7で、発生した制御乱数値vi=3であるならば、Di={0,0,0,0,0,0,0,−3,0,0}
が生成される。
【0044】次に、系列Ciと系列Diの各要素同士を加算して、埋め込み制御系列Wiを生成する。
【0045】例えば、上記した系列Ci,Diの場合、Wi={0,0,0,5,0,0,0,−3,0,0}
が生成される。
【0046】次に、i番目の音声フレームSiについて、先に求めたM個のMDCT係数Xi(k)に対して、この埋め込み制御系列Wiの各要素Wi(k)をそれぞれ加算することにより、電子透かしの埋め込みを行い、式(7)に示すような、M個の埋め込み済みMDCT係数Xi’(k)を得る。
【0047】
【数7】

【0048】このような系列Ai,Biの生成から埋め込み制御系列Wiの加算までの処理を図3に示す。図3において、各ブロック内のグラフは、それぞれ、周波数スペクトルを表している。
【0049】以上説明した系列Ai,Biの生成から埋め込み制御系列Wiの加算までの処理によって、M個のMDCT係数Xi(k),0≦k≦M−1の中から、鍵乱数列Rに応じてランダムに2つのMDCT係数Xi(ai),Xi(bi)が選ばれ、その1組のMDCT係数Xi(ai),Xi(bi)に対して、それぞれに、制御乱数値ui,viが加算されることにより、式(8)に示すような、1組の埋め込み済みMDCT係数Xi(ai),Xi’(bi)が得られることになる。
【0050】
【数8】

【0051】こうして、1組のMDCT係数Xi(ai),Xi(bi)に対して、電子透かしの埋め込みが行われる。
【0052】次に、上記したのと同様の手順にて、鍵乱数列Rを使って、系列Ai,Biの生成から埋め込み制御系列Wiの加算までの処理を、f回反復して、M個のMDCT係数Xi(k)のうち、合計f組のMDCT係数に対して、電子透かしの埋め込みをそれぞれ行う。
【0053】こうして得られたM個の埋め込み済みMDCT係数Xi’(k)に対して、次に、逆変形離散コサイン変換(IMDCT)変換を施して、第i番目の埋め込み済み音声フレームSi’を生成する。
【0054】以上のような電子透かしの埋め込みを、他の複数の音声フレームSiに対しても同様に行い、複数の埋め込み済み音声フレームSi’を得た後、それら埋め込み済み音声フレームSi’を合成して、埋め込み済み音声データs’(t)を生成する。
【0055】C.電子透かし検出処理:図4は本発明の一実施例としての電子透かし検出処理の概要を示す説明図である。まず、図1の電子透かし埋め込み処理によって生成した埋め込み済み音声データs’(t)と、図1の電子透かし埋め込み処理で用いた鍵乱数列Rと同じ鍵乱数列Rを準備する。
【0056】次に、その埋め込み済み音声データs’(t)を複数の一定長の埋め込み済み音声フレームに分割し、i番目の埋め込み済み音声フレームSi’に対してMDCT変換を施して、M個の埋め込み済みMDCT係数Xi’(k),0≦k≦M−1を得る。
【0057】次に、鍵乱数列Rから、乱数値ai(0≦ai≦M−1)を抽出して、前述の式(6)に従って、M個の要素Ai(k)を有する系列Aiを生成する。
【0058】次に、得られたM個の埋め込み済みMDCT係数Xi’(k)と、生成した系列Aiの各要素Ai(k)とを、式(9)に示すように、畳み込み積分すると、電子透かしの埋め込まれた1組のMDCT係数のうち、一方のMDCT係数Xi’(ai)が得られる。
【0059】
【数9】

【0060】次に、上記したのと同様の手順を用いて、鍵乱数列Rから乱数値bi(0≦bi≦M−1)を抽出して、M個の要素Bi(k)を有する系列Biを生成し、得られたM個の埋め込み済みMDCT係数Xi’(k)と、生成した系列Biの各要素Bi(k)とを、式(10)に示すように、畳み込み積分すると、電子透かしの埋め込まれた1組のMDCT係数のうち、他方のMDCT係数Xi’(bi)が得られる。
【0061】
【数10】

【0062】次に、得られた1組のMDCT係数Xi’(ai),Xi’(bi)の差分値di’を、式(11)に従って求める。
【0063】
【数11】

【0064】このような系列Ai,Biの生成から差分値di’の算出までの処理を図5に示す。図5において、各ブロック内のグラフは、それぞれ、周波数スペクトルを表している。
【0065】次に、上記したのと同様の手順にて、鍵乱数列Rを使って、系列Ai,Biの生成から差分値di’の算出までの処理を、f回反復して、電子透かしの埋め込まれたf組のMDCT係数について、それぞれ、差分値di’を求める。
【0066】以上のような差分値di’の算出を、他の複数の音声フレームSiに対しても同様に行い、差分値di’の統計的な分布を得る。
【0067】次に、図1の電子透かし埋め込み処理で用いた鍵乱数列Rとは異なる乱数列Rz(z=1,2,…)を複数準備する。
【0068】そして、これら乱数列Rzを用いて、上記したのと同様の手順にて、各乱数列Rz毎に、差分値diの統計的分布を求める。
【0069】図6は鍵乱数列Rを用いた場合と鍵乱数列Rとは異なる乱数列Rzを用いた場合の差分値diの統計的分布をそれぞれ示すグラフである。図6において、(a)は鍵乱数列Rを用いた場合における差分値diの統計的分布を示し、(b)は乱数列Rzを用いた場合における差分値diの統計的分布を示す。また、横軸は差分値di’のそれぞれの値であり、縦軸は各差分値di’の出現頻度y(di’)である。
【0070】鍵乱数列Rを用いた場合、差分値di’は、式(11)から、式(12)に示す如く表すことができる。
【0071】
【数12】

【0072】即ち、前述したとおり、埋め込み済みMDCT係数Xi’(ai),Xi’(bi)の差分値di’は、埋め込み前のMDCT係数Xi(ai),Xi(bi)の差分値diが、制御乱数値ui,viの加減による影響を受けたものであると見なせる。このため、このような電子透かしの埋め込みの行われた状態における差分値di’の統計的分布は、図6(a)に示すように、よりランダム性が増したものになる。即ち、ランダム性が増したことによって、差分値di’=0近くの値の出現頻度が大幅に低減する。
【0073】これに対し、乱数列Rz(z=1,2,…)を用いた場合は、その乱数列から抽出される乱数値が鍵乱数列Rの場合と異なるので、得られる1組のMDCT係数も、電子透かしの埋め込まれていないMDCT係数Xi(k)となる。従って、このような電子透かしの埋め込まれていないMDCT係数の差分値は、制御乱数値の加減による影響を受けていないので、その差分値diの統計的分布は、図6(b)に示すように、原音声データs(t)から得られた各MDCT係数の差分値の統計的分布とほぼ同じものとなる。
【0074】そこで、鍵乱数列Rを用いた場合の差分値di’の統計的分布と、各乱数列Rzを用いた場合の差分値diの統計的分布の中から、差分値di’,diが0の場合の出現頻度y(0)のみを抽出して、グラフ化すると、図7に示す如くになる。図7において、横軸は、乱数列Rzのの番号(種類)zであり、縦軸は、その乱数列Rzによる差分値が0の場合の出現頻度yz(0)である。なお、図7では、z=128の乱数列R128を、鍵乱数列Rとして用いている。
【0075】前述したとおり、鍵乱数列Rを用いた場合、差分値di’=0近くの値の出現頻度が大幅に低減するので、図7に示すように、鍵乱数列Rを用いた場合の差分値0の出現頻度は、他の乱数列Rzを用いた場合の差分値0の出現頻度よりも著しく低くなり、この事実によって、埋め込み済み音声データs’(t)に鍵乱数列Rに基づく電子透かしが埋め込まれていたことを、証明することができる。
【0076】D.具体例:音声データとしてCDなどの高音質の音楽データに電子透かしを埋め込む場合、音質の劣化が少なく、さらに、データ量を高能率圧縮しても、埋め込まれた電子透かしが消失しにくいことが望まれる。そこで、以下に述べる具体例では、高品質な音楽データに電子透かしを埋め込んだ場合に、音質に与える影響や、いわゆるMP3(MPEG Audio LayerIII)による高能率圧縮などのデジタル信号処理を施した場合に、電子透かしの受ける影響などについて検討する。
【0077】この具体例では、対象となる音声データは、音楽データ(Classic,Jazz,Danceの3種類)の再生音を44,1kHz,16ビットでデジタル化して得られるデータを用いた。なお、通常、音楽データはステレオ音であるが、議論を簡単にするために、この具体例では片側成分のみを用いた。また、乱数列Rzとしては、予め、256種類の疑似乱数列(R1〜R256)を用意した。これら乱数列は、通常、疑似乱数発生器に秘密鍵を設定することによって生成される。
【0078】また、音質の評価方法としては、音質の客観的な評価尺度して最も基本的な信号対量子化雑音比SNR(Signal to quantization Noise Ratio)が知られている。このSNRの評価式は、入力音声So(m)とその量子化誤差Er(m)を用いて、式(13)のように定義される。
【0079】
【数13】

【0080】この具体例では、SNRを改良して主観評価との対応関係を向上したSNRseg(Segmental SNR)を用いた。SNRsegは、式(14)に示すようにして求められる。
【0081】
【数14】

【0082】ここで、Nhは測定区間のフレーム数を表し、SNRhはhフレームにおけるSNRである。なお、この具体例では、1フレームの長さを32msとした。また、誤差のない音声フレーム、即ち、SNRh=∞の音声フレームを除外して測定した。
【0083】D−1.音質への影響:対象となる音声データに電子透かしを埋め込んだ場合の音質を調べると、次のような結果が得られた。
【0084】まず、p=5,f=1として、フレーム長Mを変化させた場合、SNRsegは、図8に示すように変化した。この結果から、フレーム長Mを大きな値にすることで、埋め込み頻度が減少するにも関わらず、音質があまり向上しないことがわかる。これは、埋め込み制御の影響がフレーム全体に分散されるためと考えられる。
【0085】次に、M=1024,f=1として、埋め込み強度パラメータpを変化させた場合、SNRsegは、図9に示すように変化した。この結果から、埋め込み強度パラメータpが小さいほど、音質に与える影響を少なくできることがわかる。これは、埋め込み強度パラメータpが小さいほど、埋め込みに用いる制御乱数値(ui,vi)が一般に小さくなることに起因する。
【0086】さらに、M=1024,p=5として、音声フレームへの埋め込み頻度fを変化させた場合、SNRsegは、図10に示すように変化した。この結果から、埋め込み頻度fが大きくなるに連れて、音質は低下するものの、その低下率は徐々に少なくなることがわかる。
【0087】本実施例の電子透かし埋め込み方法では、音声フレーム毎に、異なる周波数成分を操作することになるため、音声フレーム間に予測できない歪が生じることが予測される。そこで、原音声データによる音声波形とM=1024,f=1として電子透かしを埋め込んだ音声データによる音声波形とを比較して、埋め込みによる音声波形への影響を調べると、図11に示すような結果が得られた。図11において、(a)は、Classicのバイオリン演奏者の一部(8000サンプル)を抽出した音声波形、(b)は電子透かしの埋め込まれた音声波形、(c)はそれらの差分波形である。この結果から、音声フレー間に不自然な波形歪は生じないことがわかる。これは、埋め込みのための周波数変換に、MDCTを用いることで、隣接する音声フレーム同士を干渉させたためと考えられる。また、実際に人が聴取しても、電子透かしの埋め込まれた再生音声から不自然な歪を感じることはできなかった。
【0088】D−2.電子透かしの検出:次に、対象となる音声データとして、Classicを用い、鍵乱数列として、z=128の乱数列R128を用い、M=1024,p=5,f=5として電子透かしの埋め込みを行い、その音声データから電子透かしが正しく検出できるかどうかを調べると、図12および図13に示すような結果が得られた。
【0089】図12において、(a)は、電子透かしの埋め込まれていない音声データから得られる差分値diの統計的分布を示し、(b)は、電子透かしの埋め込まれた音声データから得られる差分値diの統計的分布を示す。この結果から、電子透かしの埋め込まれている図12(b)の分布は、図12(a)の分布に比べて、明らかにランダム性が増していることがわかる。
【0090】また、図13は乱数列R1〜R256について得られた差分値diが0の場合の出現頻度yz(0)を示すグラフである。図13において、横軸は、乱数列Rzのの番号(種類)zであり、縦軸は、その乱数列Rzによる差分値が0の場合の出現頻度yz(0)である。この結果から、鍵乱数列R(即ち、乱数列R128)以外の乱数列Rzによる、差分値が0の出現頻度yz(0)は、約800程度になることがわかる。これは、電子透かしの埋め込まれていないMDCT係数の組から得られる差分値の統計的分布が0に偏ることを示している。一方、正しい鍵乱数列R(即ち、乱数列R128)を用いて、電子透かしの検出を行った場合、差分値が0の出現頻度yz(0)は、約250程度まで低下していることがわかる。このように、鍵乱数列Rの位置(即ち、z=128の位置)と、差分値が0の出現頻度yz(0)が低下している位置と、が一致することによって、電子透かしが存在することを証明することができる。
【0091】本実施例の電子透かし埋め込み方法は、各音声フレーム毎に、異なるf組のMDCT係数(周波数係数)に対して電子透かしの埋め込みを行うものである。従って、このように埋め込まれた電子透かしを不正に抽出するには、それらMDCT係数の組を導き出すために、乱数値(ai,bi)の組み合わせを確実に特定できなければならない。本実施例の場合、1つの音声フレームからM個のMDCT係数が生成されるため、埋め込み可能なMDCT係数の組み合わせはM2通りある。よって、音声フレームがI個あるとして、各音声フレーム毎に、それぞれ、1組のMDCT係数に電子透かしが埋め込まれている場合、電子透かしを抽出するために必要な乱数値(ai,bi)の組み合わせは、M2I通りである。例えば、M=1024,I=50の場合、その組み合わせ総数は、約10300になる。従って、第三者にとって、電子透かしが埋め込まれているMDCT係数を正確に特定するのは困難である。
【0092】即ち、本実施例の電子透かし埋め込み方法によれば、埋め込みに用いた鍵乱数列が一致した場合に限り、電子透かしを検出することができるので、埋め込みに用いた鍵乱数列を知らない第三者が、電子透かしの存在を不正な手段で特定して、音質をほとんど劣化させることなく、電子透かしの情報を除去することは、極めて難しい。よって、本実施例の電子透かし技術を用いれば、高い秘匿性を実現することができる。
【0093】D−3.レベル変調に対する耐性:次に、対象となる音声データとして、Classicを用い、鍵乱数列として、z=128の乱数列R128を用い、M=1024,p=5,f=5として電子透かしの埋め込みを行い、その音声データの波形スペクトルを定数γ=0.5,1.5で、増幅または減衰して、電子透かしが消失しないかを調べると、図14に示すような結果が得られた。この結果から、γ=0.5のときは周波数スペクトルの値が小さくなるため、差分値が0の出現頻度yz(0)が全般に増加して、グラフ全体が上に上がることがわかる。一方、γ=1.5のときは周波数スペクトルの値が大きくなり、出現頻度yz(0)が減少するため、グラフ全体が下に下がることがわかる。しかし、何れの場合も、グラフ全体が影響を受けるため、電子透かしの存在は判別できた。よって、本実施例の電子透かし埋め込み方法によれば、MDCT係数の組から得られる差分値のランダム性が保持される程度のレベル変調であれば、電子透かしが消失することはなく、音声波形の振幅レベルの変調に対する耐性を有している。
【0094】D−4.帯域通過フィルタに対する耐性:本実施例では、電子透かしの情報は、MDCT係数の組として、帯域全体に分散して存在することになる。帯域通過フィルタによる攻撃を受けても、原理的には、制限帯域外に埋め込まれた情報は、そのフィルタによる影響を受けない。一般に、帯域通過フィルタの通過帯域幅は、音質を高く維持するために、制限帯域に比べて広く設定される。よって、電子透かしの情報の大部分は、帯域通過フィルタによる影響を受けずに済む。
【0095】そこで、対象となる音声データとして、Classicを用い、鍵乱数列として、z=128の乱数列R128を用い、M=1024,p=5,f=5として電子透かしの埋め込みを行い、一般的に利用されている離散フーリエ変換による帯域通過フィルタを用いて、その再生音声の帯域幅を5kHzから17kHzの間に制限して、電子透かしが消失しないかどうかを調べると、図15に示すような結果が得られた。この結果から、本実施例の電子透かし埋め込み方法は、帯域通過フィルタ処理に対して耐性を有していることがわかる。
【0096】但し、組となる2つのMDCT係数が共に制限帯域に含まれると、その差分値は0に近い値となるため、鍵乱数列Rを用いて得られた差分値0の出現頻度と、鍵乱数列R以外の乱数列を用いて得られた差分値0の出現頻度と、の差が少なくなると予想される。従って、音質の劣化と引き換えに、帯域通過フィルタの通過帯域を狭く設定して攻撃されると、電子透かしの検出が難しくなる。しかしながら、周波数成分の強さから、帯域通過フィルタによって通過制限された帯域を判別することができれば、そのような攻撃に対しても対処することができる。
【0097】D−5.高能率圧縮符号化に対する影響:次に、周波数変換やサブバンド符号化などを原理とした高能率圧縮符号化方式であるMP3(MPEG Audio LayerIII)のアルゴリズムを用いて、高度なデジタル信号処理への耐性を調べた。MP3による符号圧縮は、インターネットを利用した高音質な音楽の配信ツールとして普及している。
【0098】具体的には、対象となる音声データとして、Classicを用い、鍵乱数列として、z=128の乱数列R128を用い、M=1024,p=5,f=5として電子透かしの埋め込みを行い、その音声データをMP3で圧縮伸張し、その再生音声から電子透かしを検出した場合、図16に示すような結果が得られた。なお、MP3としては、インターネットで標準的に利用されている圧縮率が約1/10のビットレートのMP3を用いた。この結果から、MP3の圧縮符号化による冗長成分の除去によって、電子透かしの検出率はやや低下するものの、鍵乱数列による差分値が0の出現頻度yz(0)が、一般に低い値を示すことが確認できた。従って、本実施例の電子透かし埋め込み方法は、ある程度の情報圧縮にも耐性を有すると考えられる。
【0099】D−6.Jitter攻撃に対する耐性:次に、音声データに埋め込まれた電子透かしを破壊する攻撃として知られるJitter攻撃によって、電子透かしが消失しないかどうか調べた。Jitter攻撃は、音楽の周波数帯域を不特定に0.1%程度増減する攻撃法であって、人間の聴覚が微少なピッチの変動を知覚できない特徴を利用したもので、スペクトル拡散法や画像で用いられるパッチワーク法などによる電子透かしを攻撃するために有効であると考えられる。
【0100】具体的には、対象となる音声データとして、Classicを用い、鍵乱数列として、z=128の乱数列R128を用い、M=1024,p=5,f=5として電子透かしの埋め込みを行い、その音声データにJitter攻撃を施し、その音声データから電子透かしを検出した場合、図17に示すような結果が得られた。この結果から、本実施例の電子透かし埋め込み方法は、Jitter攻撃にも耐えることがわかる。
【0101】E.装置全体の構成及び処理手順:上述した電子透かし埋め込み処理及び電子透かし検出処理を実行する電子透かし装置10の構成について図18を用いて説明する。図18は本発明の一実施例としての電子透かし装置10の構成を示すブロック図である。この電子透かし装置10は、CPU22と、RAM24と、ROM26と、キーボード30と、マウス32と、CRTなどから成る表示装置34と、ハードディスク装置36と、ネットワークカードやモデムなどから成る通信装置38と、これらの各要素を接続するバス40と、を備えるコンピュータである。なお、図1では各種のインターフェイス回路は省略されている。通信装置38は、図示しない通信回線を介してコンピュータネットワークに接続されている。コンピュータネットワークの図示しないサーバは、通信回線を介してコンピュータプログラムを電子透かし装置10に供給するプログラム供給装置としての機能を有する。
【0102】RAM24には、MDCT変換部42と、選択・演算部44と、IMDCT変換部46と、検出部48の、各機能を実現するためのコンピュータプログラムが格納されている。これらの各部42,44,46,48の機能については既に詳しく説明した通りである。即ち、MDCT変換部42は、音声データにMDCT変換を施してMDCT係数を求める。選択・演算部44は、鍵乱数列から抽出した乱数値に応じて、MDCT係数の中から、2つを1組とするMDCT係数の組を選択すると共に、選択した組毎に、2つのMDCT係数に2つの制御乱数値をそれぞれ加算して、埋め込み済みMDCT係数を得る。IMDCT変換部46は、埋め込み済みMDCT係数に、IMDCT変換を施すことによって、音声データに戻す。また、電子透かし検出時には、MDCT変換部42は、音声データにMDCT変換を施してMDCT係数を求め、選択・演算部44は、鍵乱数列から抽出した乱数値に応じて、MDCT係数の中から、2つを1組とするMDCT係数の組を選択すると共に、選択した組毎に、2つのMDCT係数同士をそれぞれ減算して、差分値を得る。検出部48は、得られた差分値の出現頻度から、電子透かしの存在を検出する。
【0103】このような各部42,44,46,48の機能を実現するコンピュータプログラムは、フレキシブルディスクやCD−ROM等の、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された形態で提供される。コンピュータは、その記録媒体からコンピュータプログラムを読み取って内部記憶装置または外部記憶装置に転送する。あるいは、通信経路を介してコンピュータにコンピュータプログラムを供給するようにしてもよい。コンピュータプログラムの機能を実現する時には、内部記憶装置に格納されたコンピュータプログラムがコンピュータのマイクロプロセッサによって実行される。また、記録媒体に記録されたコンピュータプログラムをコンピュータが読み取って直接実行するようにしてもよい。
【0104】この明細書において、コンピュータとは、ハードウェア装置とオペレーションシステムとを含む概念であり、オペレーションシステムの制御の下で動作するハードウェア装置を意味している。また、オペレーションシステムが不要でアプリケーションプログラム単独またはファームウェア単独でハードウェア装置を動作させるような場合には、そのハードウェア装置自体がコンピュータに相当する。ハードウェア装置は、CPU等のマイクロプロセッサと、記録媒体に記録されたコンピュータプログラムを読み取るための手段とを少なくとも備えている。例えば、CD−RAMドライブやDVD−RAMドライブなどの電子機器に、CPUやROMなどが組み込まれていて、これら電子機器がコンピュータとしての機能を有する場合も、これら電子機器はコンピュータの概念に当然に含まれる。コンピュータプログラムは、このようなコンピュータに、上述の各手段の機能を実現させるプログラムコードを含んでいる。なお、上述の機能の一部は、アプリケーションプログラムでなく、オペレーションシステムによって実現されていても良い。更に、電子透かしの埋め込み処理や検出処理を行うプログラムは、音声処理を行うプログラムに対して、プラグインの形式で付加されるものとしてもよい。また、上記した乱数列や制御乱数値を生成する疑似乱数発生器なども、ハードウェアで構成するようにしても良いし、ソフトウェアによって構成するようにしても良い。
【0105】なお、この発明における「記録媒体」としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置等の、コンピュータが読取り可能な種々の媒体を利用することができる。
【0106】図19はMDCT変換部42,選択・演算部44およびIMDCT変換部46が行う電子透かし埋め込み処理の手順を示すフローチャートである。
【0107】ステップS102では、MDCT変換部42が、原音声データと鍵乱数列を準備する。ステップS104では、MDCT変換部42が、原音声データにMDCT変換を施して、複数のMDCT係数を求める。ステップS106では、選択・演算部44が、鍵乱数列から抽出した乱数値に応じて、複数のMDCT係数の中から、2つを1組とするMDCT係数の組を選択すると共に、選択した組毎に、2つのMDCT係数に、別に発生した2つの制御乱数値をそれぞれ加算して、埋め込み済みMDCT係数を得る。ステップS108では、IMDCT変換部46が、複数の埋め込み済みMDCT係数に、IMDCT変換を施して、音声データに戻すことにより、埋め込み済み音声データを得る。
【0108】図20はMDCT変換部42,選択・演算部44および検出部48が行う電子透かし検出処理の手順を示すフローチャートである。
【0109】ステップS202では、MDCT変換部42が、埋め込み済み音声データと埋め込み時と同じ鍵乱数列を準備する。ステップS204では、MDCT変換部42が、埋め込み済み音声データにMDCT変換を施して、複数のMDCT係数を求める。ステップS206では、選択・演算部44が、鍵乱数列から抽出した乱数値に応じて、複数のMDCT係数の中から、2つを1組とするMDCT係数の組を選択すると共に、選択した組毎に、2つのMDCT係数同士をそれぞれ減算して、差分値を得る。ステップS208では、検出部48が、得られた差分値の出現頻度から、電子透かしの存在を検出する。
【0110】F.変形例:なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0111】F−1.変形例1:上記した実施例では、電子透かしを埋め込む際に用いる鍵乱数列は、1種類であったが、同一のコンテンツ、即ち、同一の音声データに対して、2種類以上の鍵乱数列を用いて、電子透かしを多重に埋め込むようにしても良い。本発明の電子透かし埋め込み方法は、2つを1組とする変換係数の組をランダムに選び、その2つの変換係数の差分値について、分布の偏りを拡散するものである。従って、同一のコンテンツに対して、電子透かしを多重に埋め込んだとしても、変換係数の組(即ち、乱数値(ai,bi)の組み合わせ)が異なれば、互いに影響を及ぼすことはない。例え、偶然に同じ変換係数の組に電子透かしを埋め込んだとしても、それらの差分値に加えられた値はランダムであるため、完全に消失することは少ない。従って、埋め込んだ電子透かしが一部重複したとしても、電子透かしの検出結果に与える影響はほとんどないと考えられる。
【0112】図21は同一のコンテンツ(即ち、同一の音声データ)に2種類の鍵乱数列R1,R2を用いて電子透かしを多重に埋め込む場合の一例を示す説明図である。図21において、(a)は電子透かしの埋め込まれる音声データを示し、(b)は鍵乱数列R1に用いて電子透かしを埋め込んだ場合におけるフレーム毎の差分値の統計的分布を示し、(c)は鍵乱数列R2を用いて電子透かしを埋め込んだ場合におけるフレーム毎の差分値の統計的分布を示す。(b),(c)において、フレーム毎の横軸は差分値のそれぞれの値であり、縦軸は各差分値の出現頻度である。
【0113】図21に示す例では、同一のコンテンツに2種類の鍵乱数列R1,R2を用いて電子透かしを埋め込む際に、フレーム毎に、埋め込みの有無を制御するようにしている。このようにして、複数のビット情報を矩形波として埋め込んでいる。
【0114】但し、このように電子透かしを多重に埋め込むと、その分、音質に与える影響も増大するので注意する必要がある。
【0115】このような電子透かしを多重に埋め込んだ具体例として、例えば、対象となる音声データとして、Classicを用い、鍵乱数列として、z=64の乱数列R64とz=192の乱数列R192の2種類を用い、M=1024,p=5,f=5として、電子透かしを多重に埋め込み、その音声データから、鍵乱数列R64,R192を用いて電子透かしの検出を行うと、図22に示すような結果が得られた。この結果から、電子透かしの埋め込みにこと照る鍵乱数列を用いれば、電子透かしを多重化できることがわかる。
【0116】F−2.変形例2:上記した実施例では、直交変換として、MDCT変換を用いたが、DCT、FFTやウェーブレット変換などの他の種類の直交変換を採用することが可能である。
【0117】F−3.変形例3:上記した実施例では、電子透かしを埋め込む際、2つの変換係数を1組として選択するようにしていたが、3つ以上の変換係数を1組として選択して、電子透かしを埋め込むようにしても良い。
【0118】また、この場合において、電子透かしを検出する際、3つ以上の変数係数の間で所望の演算を行って、その演算値の出現頻度に基づいて、電子透かしの存在を検出するようにしても良い。
【0119】F−4.変形例4:上記した実施例では、電子透かしを埋め込む際、変換係数に制御乱数値を加算するようにしていたが、減算するようにしても良い。また、制御乱数値で、乗算、除算、その他種々の演算を施すようにしても良い。
【0120】F−5.変形例5:上記した実施例では、電子透かしを埋め込む際、組となった2つの変換係数の各々に制御乱数値を加算するようにしていたが、1つの変換係数だけに制御乱数値を加算するようにしても良い。式(12)から明らかなように、例えば、MDCT係数Xi(ai)に、制御乱数値として(ui−vi)の値を加算し、MDCT係数Xi(bi)には制御乱数値を何も加算しなくても、埋め込み済みXi’(ai),Xi’(bi)の差分値di’は、di+ui−viとなり、式(12)と同じ値が得られるからである。以上のことは、3つ以上の変換係数を1組とする場合も同様である。
【0121】F−6.変形例6:上記した実施例では、音声データに対して電子透かしを埋め込んでいたが、本発明は、これに限るものではなく、画像データに電子透かしを埋め込む場合にも適用可能である。即ち、本発明は、一般に、デジタルデータに電子透かしを埋め込む場合に適用可能である。なお、電子透かしが埋め込まれる原音声データや原画像データを、単に「対象データ」と呼ぶことができる。




 

 


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