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発明の名称 光電変換素子および光電池
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−85076(P2001−85076A)
公開日 平成13年3月30日(2001.3.30)
出願番号 特願平11−257424
出願日 平成11年9月10日(1999.9.10)
代理人 【識別番号】100073874
【弁理士】
【氏名又は名称】萩野 平 (外4名)
【テーマコード(参考)】
5F051
5H032
【Fターム(参考)】
5F051 AA14 
5H032 AA06 AS16 EE02 EE03 EE16 EE17 HH01 HH04
発明者 三宅 清照 / 杉本 忠夫
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 親水性溶媒中に存在する金属水酸化物ゲルまたはその前駆体より得られる半導体微粒子を感光層に用いた光電変換素子。
【請求項2】 前記金属水酸化物ゲルまたはその前駆体が、安定な金属錯体の加水分解により生成したものであることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】 前記金属錯体の配位子が、ヒドロキシル基、カルボニル基、エステル基またはカルボキシル基を有する化合物、あるいはアミン化合物であることを特徴とする請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項4】 前記金属錯体の配位子が、多座配位子であることを特徴とする請求項2または3に記載の光電変換素子。
【請求項5】 前記半導体が、金属カルコゲナイドである請求項1〜4のいづれかに記載の光電変換素子。
【請求項6】 前記半導体が、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブおよびタンタルから選ばれる金属のカルコゲナイド化合物を少なくとも一種含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項7】 前記半導体が二酸化チタンであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項8】 前記半導体微粒子の粒子サイズ分布の変動係数が30%以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項9】 前記半導体微粒子の粒子サイズ分布の変動係数が20%以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項10】 前記半導体微粒子が色素により増感されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項11】 請求項1〜10のいずれかに記載の光電変換素子を用いて構成したことを特徴とする光電池。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光電変換素子およびこれを用いた光電池に関し、詳しくは色素で増感された半導体微粒子を用いた光電変換素子および光電池に関する。
【0002】
【従来の技術】太陽光発電は単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池、テルル化カドミウムやセレン化インジウム銅等の化合物太陽電池が実用化もしくは主な研究開発の対象となっているが、普及させる上で製造コスト、原材料確保、エネルギーペイバックタイムが長い等の問題点を克服する必要がある。一方、大面積化や低価格化を指向した有機材料を用いた太陽電池もこれまでにも多く提案されているが、変換効率が低く、耐久性も悪いという問題があった。こうした状況の中で、Nature(第353巻、第737〜740頁、1991年)および米国特許4927721号等に、色素によって増感された半導体微粒子を用いた光電変換素子および太陽電池、ならびにこれを作成するための材料および製造技術が開示された。提案された電池は、ルテニウム錯体によって分光増感された二酸化チタン多孔質薄膜を作用電極とする湿式太陽電池である。この方式の第一の利点は二酸化チタン等の安価な酸化物半導体を高純度に精製することなく用いることができるため、安価な光電変換素子を提供できる点である。第二の利点は用いられる色素の吸収がブロードなため、可視光線のほぼ全ての波長領域の光を電気に変換できることである。しかしながら太陽電池として実用化するには、二酸化チタンのような半導体粒子の多孔質薄膜は、比表面積を大きくする要請から、ラフネスファクター1000程度にする必要があり、ナノメートルオーダーの細孔(ナノポーラース構造)を形成しなければならなかった。二酸化チタンの多孔質薄膜の形成法は、たとえば、金子正夫編「光エネルギー変換−基礎と応用−」(株式会社アイピーシー)の3章2節に記載されている。
【0003】ナノポーラスな多孔質薄膜を形成するには、真空蒸着法のような乾式法では、大量生産に向かず、高コストなので、湿式の半導体微粒子の分散液またはコロイド溶液を導電性支持体上に塗布する方法が好ましい。具体的には、ゾル-ゲル法、乳鉢ですり潰す方法、ミルを使って粉砕しながら分散する方法、あるいは半導体を合成する際に溶媒中で微粒子として析出させそのまま使用する方法等が挙げられる。しかしながら、ゾル-ゲル法では、加水分解で生じた水酸化金属化合物を酸化物にするために、高温を必要とする難点があった。さらに、従来のゾルーゲル法では、単分散な粒子サイズ分布を得るのが難しく、このため均一なナノポーラスの膜を得るのが困難であった。また、乳鉢ですりつぶしたり、ミルを使って粉砕しながら分散する方法は、粒子が凝集しやすく、ナノポーラスな多孔質膜を得る条件を見い出すのが困難であった。このように、光電変換素子および光電池に適したナノポーラスな多孔質の半導体膜をつくるのが困難であり、短絡電流が低く、光電効率が低いという問題点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、短絡電流値が大きく、光電変換効率の高い色素増感光電変換素子および光電池を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の課題は、本発明を特定する下記の事項およびその好ましい態様により達成された。
(1)親水性溶媒中に存在する金属水酸化物ゲルまたはその前駆体より得られる半導体微粒子を感光層に用いた光電変換素子。
(2)前記金属水酸化物ゲルまたはその前駆体が、安定な金属錯体の加水分解により生成したものであることを特徴とする(1)に記載の光電変換素子。
(3)前記金属錯体の配位子が、ヒドロキシル基、カルボニル基、エステル基またはカルボキシル基を有する化合物、あるいはアミン化合物であることを特徴とする(2)に記載の光電変換素子。
(4)前記金属錯体の配位子が、多座配位子であることを特徴とする(2)または(3)に記載の光電変換素子。
(5)前記半導体が、金属カルコゲナイドである(1)〜(4)のいづれかに記載の光電変換素子。
(6)前記半導体が、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブおよびタンタルから選ばれる金属のカルコゲナイド化合物を少なくとも一種含むことを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の光電変換素子。
(7)前記半導体が、金属酸化物であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の光電変換素子。
(8)前記半導体が、二酸化チタンであることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の光電変換素子。
(9)前記半導体微粒子の粒子サイズ分布の変動係数が30%以下であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の光電変換素子。
(10)前記半導体微粒子の粒子サイズ分布の変動係数が20%以下であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の光電変換素子。
(11)前記半導体微粒子が色素により増感されていることを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載の光電変換素子。
(12)前記色素がルテニウム錯体色素および/またはポリメチン色素であることを特徴とする(11)記載の光電変換素子。
(13)光電変換素子が電荷移動層を有し、該電荷移動層が溶融塩電解質を含んでいることを特徴とする(1)〜(12)のいずれかに記載の光電変換素子。
(14)光電変換素子が電荷移動層を有し、該電荷移動層が正孔輸送材料を含んでいることを特徴とする(1)〜(12)のいずれかに記載の光電変換素子。
(15)上記(1)〜(14)のいずれかに記載の光電変換素子を用いて構成したことを特徴とする光電池。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。まず、本発明の光電変換素子および光電池の構成と材料について詳述する。本発明の光電変換素子は、導電性支持体、導電性支持体上に設置される色素等により増感した半導体膜(感光層)、電荷移動層および対極からなる。この光電変換素子を外部回路で仕事をさせる電池用途に使用できるようにしたものが光電池である。感光層は目的に応じて設計され、単層構成でも多層構成でもよい。感光層に入射した光は色素等を励起する。励起された色素等はエネルギーの高い電子を有しており、この電子が色素等から半導体微粒子の伝導帯に渡され、さらに拡散によって導電性支持体に到達する。電子移動によって生じた色素等の分子の酸化体は、対極および電荷移動層から供給される電子により再生する。半導体膜はこの電池の負極として働く。なお、本発明ではそれぞれの層の境界において(例えば、導電性支持体の導電層と感光層の境界、感光層と電荷移動層の境界、電荷移動層と対極の境界など)、各層の構成成分同士が相互に拡散して混合していてもよい。
【0007】本発明においては、半導体膜に鋭意改良を加えた。その半導体膜について、詳説する。本発明においては、上記の半導体膜(感光層)を金属水酸化物ゲルもしくはその前駆体より得られる半導体微粒子を用いて形成する。半導体としては金属のカルコゲニド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物等)に代表されるいわゆる化合物半導体またはペロブスカイト構造を有する化合物等を使用することができる。金属のカルコゲニドとして好ましくはチタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブもしくはタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモンもしくはビスマスの硫化物、カドミウムもしくは鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウムヒ素、銅−インジウム−セレン化物、銅−インジウム−硫化物等が挙げられる。また、ペロブスカイト構造を有する化合物として好ましくはチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウムが挙げられる。
【0008】本発明に用いられる半導体としてより好ましくは、具体的にはTiO2、SnO2、Fe2O3、WO3、ZnO、Nb2O5、CdS、ZnS、PbS、Bi2S3、CdSe、CdTe、CuInS2、CuInSe2が挙げられる。さらに好ましくはTiO2、ZnO、SnO2、Fe2O3、WO3、Nb2O5、CdS、PbS、CdSe、InP、CuInS2、CuInSe2であり、特に好ましくは、TiO2、WO3またはNb2O5であり、最も好ましくはTiO2である。TiO2の結晶構造は、ルチル型でも、アナターゼ型でも、ブルッカイト型のいずれでもよいが、アナターゼ型が特に好ましい。
【0009】本発明において、金属カルコゲニドあるいはペロブスカイト構造の微粒子を形成するには、親水性溶媒中に金属水酸化物ゲルもしくは、その前駆体を形成し、その加水分解により半導体微粒子を得る必要がある。金属水酸化物ゲルもしくはその前駆体を形成するには、安定な金属錯体を加水分解することが好ましい。金属塩化物を加水分解して、親水性溶媒中に金属水酸化物ゲルもしくは、その前駆体を形成してもよい。金属水酸化物は、一般には金属化合物の加水分解で合成することが可能であるが、その際の加水分解反応が速すぎると、金属水酸化物の形成が不均一に生じ、その結果、多分散なサイズ分布を有する金属カルコゲニドあるいはペロブスカイト構造の微粒子が得られてしまうという問題点があった。たとえば、チタンテトライソプロポキシドや四塩化チタンを水に添加すると、瞬時に加水分解反応が進行し、各種サイズの水酸化チタン凝集物に変化してしまい、これより、単分散の酸化チタン微粒子分散物を得ることは、困難だった。
【0010】本発明においては、金属水酸化物形成時の加水分解速度の制御が、単分散な微粒子を得るために、重要であることを見い出し、加水分解時のpH条件および/または配位子を選ぶことにより、均一な金属水酸化物ゲルもしくはその前駆体を形成し、これから単分散な金属カルコゲニドあるいはペロブスカイト構造の微粒子を得た。そして、このようにして得られた単分散な半導体微粒子を用いて感光層を形成することにより、素子の短絡電流および光電変換効率を改良できることを見いだした。
【0011】本発明においては、安定な金属錯体を親水性溶媒中に形成し、これを加水分解することで金属水酸化物ゲルもしくはその前駆体を調製することが好ましい。本発明でいう安定な錯体とは、常温において水との反応が遅いことを意味し、25℃において50%が水酸化物に変換するのに要する時間が10分以上であることを意味する。また、この時間は好ましくは1時間以上、さらに好ましくは1日以上ある。このような条件の錯体を親水性溶媒中に一旦形成し、しかる後に溶液のpH条件の変更や、加熱することにより加水分解反応を制御して進行させることが好ましい。
【0012】本発明において、親水性溶媒は水や親水性のある有機溶媒あるいはこれらの混合物を用いることができるが、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなど)またはアルカノールアミン類(例えば、トリエタノールアミンなど)あるいはこれらの混合物が好ましい。
【0013】本発明では、さらに、加水分解で生成した金属水酸化物を3次元のネットワークを形成しているゲル状態にすることで、粒子が隔離されて成長し、凝集が防止される。しかも、ゲルである金属水酸化物より金属イオンが粒子の供給源として提供されるので、単分散な粒子成長が可能となる。
【0014】本発明の微粒子形成法の例としては、金属錯体と水を混合した後、第一段階のエイジング(反応液をある条件で保持すること)を施すことで水酸化物のゲルを形成し、その後第二段階のエイジングを施すことで、脱水反応により金属酸化物に変換する方法を挙げることができる。例えば、杉本忠夫「新合成法ゲルーゾル法による単分散粒子の合成とサイズ形態制御」、まてりあ、第35巻、第9号1012頁から1018頁(1996)記載の方法によれば、二酸化チタン微粒子合成の場合、例えば錯体としてトリエタノールアミンとの付加物を用いたときには、上記第一段階のエイジングを約100℃で24時間、第二段階のエイジングを140℃で72時間とすることでナノメートルサイズのアナターゼ型二酸化チタン微粒子を調製することができる。前記の方法で、第一段階のエイジング終了段階でゲル状態を形成していることが好ましいが、この段階でゲル状態にならずに、次の第二段階のエイジングの加熱段階の初期において、ゲル状になってもよい。本発明のゲルの前駆体とは、このような場合の第一段階のエイジング後の状態をさす。ゲルの前駆体の特徴としては、常温において、ゲル状でなくても、たとえば、5℃のような低温、あるいは80℃のような高温におくことによって、ゲル状態を取ることである。
【0015】本発明の金属錯体を構成するための配位子としては、配位しうる酸素原子や窒素原子を有する化合物が好ましく、具体的には、ヒドロキシル基、カルボニル基、エステル基またはカルボキシル基を有する化合物、あるいはアミン化合物が好ましい。配位子は、単座配位子、二座配位子、三座配位子であってもよい。多座配位子は、安定な錯体を形成するので好ましい。また、多核の配位化合物であってもよい。
【0016】ヒドロキシル基を有する化合物には、アルカノールアミン化合物、ポリオール化合物、グリコール化合物、オキシカルボン酸、多価フェノール等が挙げられる。カルボニル基を有する化合物には、βジケトン化合物、βケトエステル化合物オキシム化合物、ジオキシム化合物、尿素化合物等が挙げられる。エステル基を有する化合物には、βケトエステル化合物等が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物には、多価カルボン酸、オキシカルボン酸、アミノ酸、窒素原子を含むカルボン酸が挙げられる。アミン化合物には、アルカノールアミン、ジアミン、尿素化合物が挙げられる。これらのうち、好ましくは、アルカノールアミン化合物、グリコール化合物、オキシカルボン酸、βジケトン化合物、βケトエステル化合物、ジアミン化合物である。具体的には、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリメチロールアミン、ペンタエリトリオット、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミンビスアセチルアセトナト、アセチルアセトン、尿素、コハク酸、フタル酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、エチレングリコール、へキシレングリコール、ジメチルグリオキシム、ピコリン酸の等が好ましく用いられる。特に好ましくは、トリエタノールアミン、エチレンジアミン四酢酸である。
【0017】金属イオンと配位子のモル比は、0.5から5が好ましく、さらに、好ましくは、1から4である。
【0018】安定な金属錯体のモル濃度は、好ましくは0.1mol/Lから10mol/Lでより好ましくは、0.5mol/Lから5mol/Lである。
【0019】本発明において、ゲルまたはその前駆体を生成させる条件としては、60℃から180℃までのエイジング処理(第一段階のエイジング)のほか、酸、塩基によるpHの制御が主として用いられる。エイジング処理の温度は、80℃から120℃の範囲が好ましく、より好ましくは、90℃から110℃である。エイジングの時間は、100℃では、8時間から36時間の範囲が好ましく、より好ましくは、12時間から24時間の範囲である。
【0020】ゲルおよびその前駆体である金属水酸化物を金属カルコゲニドに変換させる方法としては、つぎのような方法がある。金属酸化物にする方法は、加熱による脱水反応が好ましい。脱水反応で金属酸化物を形成させる第二段階のエイジング条件は、ゲル化のエイジング温度より高温にする必要がある。少なくとも、10℃以上の温度差が必要である。
【0021】金属硫化物にする方法は、チオアセトアミド、チオ尿素、チオ硫酸塩、シスチン、ローダニン類、アリルイソチアシアネート、メルカプト類、チオスルホン酸塩、ジスルフィド類のような不安定硫黄化合物を金属水酸化物に添加させる方法が好ましい。金属セレン化物にする方法は、セレノ尿素、コロイド状金属セレニウム、セレノケトン類、セレノアミド類、脂肪族イソセレノシアネート類、セレノカルボン酸及びエステル類、セレノホスフェート類、セレナイド類のような不安定セレン化合物を金属水酸化物に添加させる方法が好ましい。金属テルル化物にする方法は、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイアティ・ケミカル・コミュニケーション(J.Chem.Soc.Chem.Commu.)635頁(1980)、同1102頁(1979)、同645頁(1979)、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイアティ・パーキン・トランザクション・コミュニケーション(J.Chem.Soc.Perkin.Trans.)1巻2191頁(1980)、S.パタイ編、ザ・ケミストリー・オブ・オーガニック・セレニウム・アンド・テルリウム・カンパウンズ(The Chemistry of Organic Selenium and TelluriumCompounds)第1巻(1986)、同第2巻(1987)記載の不安定テルル化合物を金属水酸化物に添加させる方法が好ましい。
【0022】ゲル化した金属水酸化物を金属カルコゲニドに変換する工程において、ゼラチン、ポリエチレングリコール、カルボキシルメチルセルロース、ヘキシルエチルセルロース、ポリビニルアルコ−ル、ポリビニルピロリドン、でんぷん、カラギーナン、アラビアゴムのような天然あるいは人工バインダーが存在していてもよい。
【0023】本発明に用いられる微粒子は、非晶質でも、単結晶でも、多結晶でもよいが、特にナノメートルからマイクロメートルサイズの微粒子が好ましい。これらの半導体微粒子の粒径は、投影面積を円に換算したときの直径で表すことができる。正確には、透過型電子顕微鏡の写真の投影面積より求められる。簡易には、粒子が結晶の場合、一次粒子のサイズの平均値は、X線回折の線幅よりScherrerの式を用いて求めることができる。平均粒径は、5〜200nmであることが好ましく、特に8〜100nmであることが好ましい。変動係数とは、粒径の標準偏差を平均粒径で割った比率で、通常、単位は%で表される。変動係数は、好ましくは、50%以下で、さらに、好ましくは、30%以下、より好ましくは、20%以下である。また、分散物中の半導体微粒子(二次粒子)の平均粒径としては0.01〜100μmであることが好ましい。また、2種類以上の粒径分布の異なる微粒子を混合して用いてもよく、この場合、小さい粒子の平均粒径は10nm以下であることが好ましい。また、入射光を散乱させて光捕獲率を向上させる目的で、粒径の大きな、例えば300nm以上の半導体粒子を混合してもよい。
【0024】粒子作製法としては、前述のまてりあ、第35巻、第9号「新合成法ゲルーゾル法による単分散粒子の合成とサイズ形態制御」記載のゲルーゾル法記載の方法が好ましく用いられる。結晶粒子サイズは、粒子成長時の温度、時間、pH、予め存在している粒径既知の結晶粒子(種晶)量と水酸化物の比率で制御できる。二酸化チタン粒子において、投影面積相当円の直径で10〜30nmの粒子を得るには、pH7以上が好ましい。
【0025】粒子の形状は、pH、アンモニウムイオン、酢酸イオン等で制御可能である。二酸化チタンの場合、アンモニア使用で、アナターゼ型で外表面(100)面と(110)面である棒状の粒子を調製できる。棒状粒子の場合、粒子の長軸と短軸の長さの比(アスペクト比)が3以上が好ましく、より好ましくは10以上である。
【0026】板状粒子の場合、粒子の主平面の投影面積の等しい円の直径と高さの比(アスペクト比)が3以上が好ましく、より好ましくは10以上である。
【0027】棒状や板状の粒子は、同一体積の球形の粒子に比べてアスペクト比が大きく、このため比表面積が大きく色素吸着量を稼ぐことができ、短絡電流が高くて有利である。
【0028】粒子形成したのち、遠心分離、自然沈降等で液相中に存在する不用な反応物や未反応物を除去したり、濃縮化を行ってもよい。
【0029】次に、導電性支持体は、金属のように支持体そのものに導電性があるものか、または表面に導電剤を含む導電層(導電剤層)を有するガラスもしくはプラスチックの支持体を使用することができる。後者の場合好ましい導電剤としては金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)、炭素、もしくは導電性の金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)が挙げられる。上記導電剤層の厚さは、0.02〜10μm程度であることが好ましい。
【0030】導電性支持体は表面抵抗が低い程よい。好ましい表面抵抗の範囲としては100Ω/□以下であり、さらに好ましくは40Ω/□以下である。この下限には特に制限はないが、通常0.1Ω/□程度である。
【0031】導電性支持体は実質的に透明であることが好ましい。実質的に透明であるとは光の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であることが好ましく、70%以上が特に好ましい。透明導電性支持体としてはガラスもしくはプラスチックに導電性の金属酸化物を塗設したものが好ましい。この中でもフッ素をドーピングした二酸化スズからなる導電層を低コストのソーダ石灰フロートガラスでできた透明基板上に堆積した導電性ガラスが特に好ましい。また、低コストでフレキシブルな光電変換素子または太陽電池には、透明ポリマーフィルムに上記導電層を設けたものを用いるのがよい。透明ポリマーフィルムには、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオクタチックポリステレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエステルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ等がある。透明導電性支持体を用いる場合、光はその支持体側から入射させることが好ましい。この場合、導電性金属酸化物の塗布量はガラスもしくはプラスチックの支持体1m2当たり0.01〜100gが好ましい。
【0032】透明導電性基板の抵抗を下げる目的で金属リードを用いることが好ましい。金属リードの材質はアルミニウム、銅、銀、金、白金、ニッケル等の金属が好ましく、特にアルミニウム、銀が好ましい。金属リードは透明基板に蒸着、スッパタリング等で設置し、その上にフッ素をドープした酸化スズ、またはITO膜からなる透明導電層を設けることが好ましい。また上記の透明導電層を透明基板に設けたあと、透明導電層上に金属リードを設置することも好ましい。金属リード設置による入射光量の低下は1〜10%、より好ましくは1〜5%である。
【0033】半導体微粒子を導電性支持体上に塗設する方法としては、半導体微粒子の分散液またはコロイド溶液を導電性支持体上に塗布する方法などが挙げられる。光電変換素子の量産化、液物性や支持体の融通性を考えた場合、湿式の膜付与方式が比較的有利である。湿式の膜付与方式としては、塗布法、印刷法が代表的である。
【0034】分散媒としては水または各種の有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル等)が挙げられる。分散の際、必要に応じてポリエチレングリコールのようなポリマー、界面活性剤、酸、もしくはキレート剤などを分散助剤として用いてもよい。ポリエチレングリコールの分子量を変えることで、剥がれにくい膜を形成したり、分散液の粘度が調整可能で、ポリエチレングリコールを使用するのは、好ましい。
【0035】塗布方法としては、アプリケーション系としてローラ法、ディップ法、メータリング系としてエアーナイフ法、ブレード法等、またアプリケーションとメータリングを同一部分でできるものとして、特公昭58−4589号公報に開示されているワイヤーバー法、米国特許2681294号、同2761419号、同2761791号等に記載のスライドホッパ法、エクストルージョン法、カーテン法等が好ましい。また汎用機としてスピン法やスプレー法も好ましく用いられる。
【0036】湿式印刷方法としては、従来から凸版、オフセット、グラビアの3大印刷法をはじめ、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等が好ましい。
【0037】前記方法の中から、液粘度やウェット厚みにより好ましい膜付与方式を選択する。
【0038】液粘度は半導体微粒子の種類や分散性、使用溶媒種、界面活性剤やバインダー等の添加剤により大きく左右される。高粘度液(例えば0.01〜500Poise)ではエクストルージョン法やキャスト法が好ましく、低粘度液(例えば0.1Poise以下)ではスライドホッパー法もしくはワイヤーバー法もしくはスピン法が好ましく、均一な膜にすることが可能である。
【0039】なお、エクストルージョン法による低粘度液の塗布の場合でも塗布量がある程度の量あれば塗布は可能である。
【0040】また半導体微粒子の高粘度ペーストの塗設にはしばしばスクリーン印刷が用いられており、この手法を使うこともできる。
【0041】このように塗布液の液粘度、塗布量、支持体、塗布速度等のパラメータに対応して、適宜ウェット膜の付与方式を選択すればよい。
【0042】さらに、半導体微粒子含有層は単層と限定する必要はない。微粒子の粒径の違った分散液を多層塗布することも可能であり、また半導体の種類が異なる、あるいはバインダー、添加剤の組成が異なる塗布層を多層塗布することもでき、また一度の塗布で膜厚が不足の場合にも多層塗布は有効である。多層塗布には、エクストルージョン法またはスライドホッパー法が適している。また多層塗布をする場合は同時に多層を塗布してもよく、数回から十数回順次重ね塗りしてもよい。さらに順次重ね塗りであればスクリーン印刷法も好ましく使用できる。
【0043】一般に、半導体微粒子含有層の厚みが増大するほど単位投影面積当たりの担持色素量が増えるため光の捕獲率が高くなるが、生成した電子の拡散距離が増すため電荷再結合によるロスも大きくなる。したがって、半導体微粒子含有層には好ましい厚さが存在するが、典型的には0.1〜100μmである。光電気化学電池として用いる場合は1〜30μmであることが好ましく、2〜25μmであることがより好ましい。半導体微粒子の支持体1m2当たりの塗布量は0.5〜400g、さらには5〜100gが好ましい。
【0044】半導体微粒子は導電性支持体に塗布した後に粒子同士を電子的にコンタクトさせるため、および塗膜強度の向上や支持体との密着性を向上させるために加熱処理することが好ましい。好ましい加熱処理温度の範囲は40℃以上700℃未満であり、より好ましくは100℃以上600℃以下である。また加熱処理時間は10分〜10時間程度である。ポリマーフィルムなど融点や軟化点の低い支持体を用いる場合は、高温処理は支持体の劣化を招くため、好ましくない。また、コストの観点からもできる限り低温であることが好ましい。低温化は、先に述べた5nm以下の小さい半導体微粒子の併用や鉱酸の存在下での加熱処理等により可能である。
【0045】また、加熱処理後、半導体粒子の表面積を増大させたり、半導体粒子近傍の純度を高め、色素から半導体粒子への電子注入効率を高める目的で、例えば四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行ってもよい。
【0046】半導体微粒子は多くの色素を吸着することができるように表面積の大きいものが好ましい。このため半導体微粒子層を支持体上に塗設した状態での表面積は、投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、さらに100倍以上であることが好ましい。この上限には特に制限はないが、通常1000倍程度である。
【0047】本発明に使用する色素は金属錯体色素またはメチン色素が好ましい。本発明では、光電変換の波長域をできるだけ広くし、かつ変換効率を上げるため、二種類以上の色素を混合することができる。そして、目的とする光源の波長域と強度分布に合わせるように混合する色素とその割合を選ぶことができる。こうした色素は半導体微粒子の表面に対する適当な結合基(interlocking group)を有していることが好ましい。好ましい結合基としては、COOH基、SO3H基、シアノ基、-P(O)(OH)2基、-OP(O)(OH)2基、または、オキシム、ジオキシム、ヒドロキシキノリン、サリチレートおよびα−ケトエノレートのようなπ伝導性を有するキレート化基が挙げられる。この中でもCOOH基、-P(O)(OH)2基、-OP(O)(OH)2基が特に好ましい。これらの基はアルカリ金属等と塩を形成していてもよく、また分子内塩を形成していてもよい。また、ポリメチン色素の場合、メチン鎖がスクアリリウム環やクロコニウム環を形成する場合のように酸性基を含有するなら、この部分を結合基としてもよい。
【0048】以下に本発明で好ましく用いられる色素を具体的に説明する。本発明に使用する色素が金属錯体色素の場合、ルテニウム錯体色素が好ましく、さらに下記式(I)で表される色素が好ましい。
式(I) (A1)pRuBabc式(I)中、pは0〜2であり、好ましくは2である。Ruはルテニウムを表す。A1はCl、SCN、H2O、Br、I、CN、NCO、およびSeCNから選択される配位子である。Ba、Bb、Bcはそれぞれ独立に以下のB-1〜B-8から選択される有機配位子である。
【0049】
【化1】

【0050】ここで、Raは水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数(以下C数という)1〜12個で置換もしくは無置換のアルキル基、C数7〜12個で置換もしくは無置換のアラルキル基、またはC数6〜12個で置換もしくは無置換のアリール基を表す。上記のアルキル基、アラルキル基のアルキル部分は直鎖状であっても分岐状であってもよく、アリール基、アラルキル基のアリール部分は単環であっても多環(縮合環、環集合)であってもよい。
【0051】本発明に用いられるルテニウム錯体色素としては、例えば、米国特許4927721号、同4684537号、同5084365号、同5350644号、同5463057号、同5525440号および特開平7-249790号明細書に記載の錯体色素が挙げられる。
【0052】以下に本発明に使用する金属錯体色素の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
【化2】

【0054】
【化3】

【0055】
【化4】

【0056】本発明に使用する色素がメチン色素である場合、以下で説明する式(II)、式(III)、式(IV)または式(V)で表される色素が好ましい。
【0057】
【化5】

【0058】式中、RbおよびRfは各々水素原子、アルキル基、アリール基、または複素環基を表し、Rc〜Reは各々水素原子または置換基を表す。Rb〜Rfは互いに結合して環を形成してもよい。X11およびX12は各々窒素、酸素、硫黄、セレン、テルルを表す。n11およびn13は各々0〜2の整数を表し、n12は1〜6の整数を表す。式(II)で表される化合物は分子全体の電荷に応じて対イオンを有してもよい。
【0059】上記におけるアルキル基、アリール基、複素環基は、置換基を有していてもよい。アルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよく、アリール基、複素環基は、単環でも、多環(縮合環、環集合)であってもよい。またRb〜Rfによって形成される環は、置換基を有していてもよく、単環であっても縮合環であってもよい。
【0060】
【化6】

【0061】式中、Zaは含窒素複素環を形成するに必要な非金属原子群を表す。Rgはアルキル基またはアリール基である。Qaは式(III)で表される化合物がメチン色素を形成するのに必要なメチン基またはポリメチン基を表す。X13は電荷均衡対イオンを表し、n14は分子の電荷を中和するのに必要な0以上10以下の数を表す。
【0062】上記のZaで形成される含窒素複素環は置換基を有していてもよく、単環であっても縮合環であってもよい。また、アルキル基、アリール基は置換基を有していてもよく、アルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよく、アリール基は単環であっても多環(縮合環、環集合)であってもよい。
【0063】式(III)で表される色素は、下記式(III−a)〜(III−d)で表される色素であることが好ましい。
【0064】
【化7】

【0065】式(III−a)〜(III−d)中、R11〜R15、R21〜R24、R31〜R33、およびR41〜R43はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、または複素環基を表し、Y11、Y12、Y21、Y22、Y31〜Y35、およびY41〜Y46はそれぞれ独立に酸素、硫黄、セレン、テルル、−CR1617−、または−NR18−を表す。R16〜R18はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、または複素環基を表す。Y23はO-、S-、Se-、Te-、または−NR18-を表す。
【0066】V11、V12、V21、V22、V31、およびV41はそれぞれ独立に置換基を表し、n15、n31およびn41はそれぞれ独立に1〜6の整数を表す。式(III−a)〜(III−d)で表される化合物は、分子全体の電荷に応じて対イオンを有していてもよい。
【0067】上記におけるアルキル基、アリール基、複素環基は置換基を有していてもよく、アルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよく、アリール基、複素環基は単環であっても多環(縮合環、環集合)であってもよい。
【0068】以上のようなポリメチン色素の具体例はM.Okawara,T. Kitao,T.Hirasima, M.Matuoka著Organic Colorants(Elsevier)等に詳しく記載されている。
【0069】
【化8】

【0070】式(IV)中、Qbは5員または6員の含窒素ヘテロ環を完成するために必要な原子団を表し、Qbは縮環していてもよく、また置換基を有していてもよい。Qbで完成されるヘテロ環の好ましい例としては、ベンゾチアゾール核、ベンゾオキサゾール核、ベンゾセレナゾール核、ベンゾテルラゾール核、2−キノリン核、4−キノリン核、ベンゾイミダゾール核、チアゾリン核、インドレニン核、オキサジアゾール核、チアゾール核、イミダゾール核が挙げられるが、さらに好ましくはベンゾチアゾール核、ベンゾオキサゾール核、ベンズイミダゾール核、ベンゾセレナゾール核、2−キノリン核、4-キノリン核、インドレニン核であり、特に好ましくはベンゾチアゾール核、ベンゾオキサゾール核、2−キノリン核、4-キノリン核、インドレニン核である。環上の置換基としては、カルボン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、ハロゲン原子(F,Cl,Br,I)、シアノ基、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、メトキシエトキシなど)、アリーロキシ基(フェノキシなど)、アルキル基(メチル、エチル、シクロプロピル、シクロへキシル、トリフルオロメチル、メトキシエチル、アリル、ベンジルなど)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオなど)、アルケニル基(ビニル、1−プロペニルなど)、アリール基ないし複素環基(フェニル、チエニル、トルイル、クロロフェニルなど)などが挙げられる。
【0071】Zbは炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子および水素原子から選ばれる原子により構成された、3ないし9員環を完成するために必要な原子団を表す。Zbによって完成される環として好ましくは4ないし6個の炭素によって骨格が形成される環であり、より好ましくは以下の(ア)〜(オ)で表されるものであり、最も好ましくは(ア)である。
【0072】
【化9】

【0073】L1、L2、L3、L4およびL5はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいメチン基を表す。置換基としては、置換または無置換のアルキル基(好ましくは炭素原子数1ないし12、さらに好ましくは1ないし7のものであり、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、2−カルボキシエチル、ベンジルなど)、置換または無置換のアリール基(好ましくは炭素原子数6ないし10、さらに好ましくは6ないし8のものであり、例えば、フェニル、トルイル、クロロフェニル、o−カルボキシフェニル)、複素環基(例えば、ピリジル、チエニル、フラニル、ピリジル、バルビツール酸)、ハロゲン原子(例えば、塩素、臭素)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ)、アミノ基(好ましくは炭素原子数1ないし12、さらに好ましくは6ないし12のものであり、例えば、ジフェニルアミノ、メチルフェニルアミノ、4−アセチルピペラジン−1−イル)、オキソ基などが挙げられる。これらのメチン基上の置換基は互いに連結してシクロペンテン環、シクロヘキセン環、スクアリリウム環などの環を形成してもよく、あるいは助色団と環を形成することもできる。
【0074】n51は0から4までの整数を表し、好ましくは0から3である。n52は0または1である。
【0075】R5は置換基を表す。置換基として好ましくは置換基を有してもよい芳香族基または置換基を有していてもよい脂肪族基であり、芳香族基の炭素原子数は好ましくは1ないし16、さらに好ましくは5ないし6である。脂肪族基の炭素原子数は好ましくは1ないし10、さらに好ましくは1ないし6である。無置換の脂肪族基および芳香族基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0076】W1は電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。ある色素が陽イオン、陰イオンであるか、あるいは正味のイオン電荷を持つかどうかは、その助色団および置換基に依存する。置換基が解離性基を有する場合、解離して負電荷を持っても良く、この場合にも分子全体の電荷はW1によって中和される。典型的な陽イオンは無機または有機のアンモニウムイオン(例えばテトラアルキルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン)およびアルカリ金属イオンであり、一方、陰イオンは具体的に無機陰イオンあるいは有機陰イオンのいずれであってもよく、例えば、ハロゲン陰イオン、(例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、置換アリールスルホン酸イオン(例えば、p−トルエンスルホン酸イオン、p−クロロベンゼンスルホン酸イオン)、アリールジスルホン酸イオン(例えば、1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオン)、アルキル硫酸イオン(例えば、メチル硫酸イオン)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオンが挙げられる。
【0077】さらに電荷均衡対イオンとしてイオン性ポリマーあるいは、色素と逆電荷を有する他の色素を用いてもよいし、金属錯イオン(例えば、ビスベンゼン−1,2−ジチオラトニッケル(III))も可能である。
【0078】
【化10】

【0079】式(V)においてDは少なくとも4官能以上の芳香族基を示し、X1、X2はそれぞれ独立に硫黄原子、セレン原子、CR6364またはCR65=CR66を表す。ここでR63〜R66はそれぞれ水素原子またはアルキル基である。R61、R62はそれぞれアルキル基または芳香族基であり、P1、P2はそれぞれ独立にポリメチン色素を形成するのに必要な非金属原子群を表す。W2は電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを示す。
【0080】式(V)について更に詳しく説明する。式(V)中、Dは少なくとも四官能以上の芳香族基を示す。このような芳香族基の例としては、これらの基が誘導される芳香族炭化水素としてベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレンなどが挙げられ、芳香族へテロ環としてはアントラキノン、カルバゾール、ピリジン、キノリン、チオフェン、フラン、キサンテン、チアントレンなどが挙げられ、これらは連結部分以外に置換基を有していてもよい。Dで表される芳香族基として好ましくは芳香族炭化水素の誘導基であり、さらに好ましくはベンゼンまたはナフタレンの誘導基である。
【0081】X1、X2は、好ましくは硫黄原子またはCR6364であり、最も好ましくはCR6364である。
【0082】P1、P2はそれぞれ独立にポリメチン色素を形成するのに必要な非金属原子群を表す。P1、P2により、いかなるメチン色素を形成することも可能であるが、好ましくはシアニン色素、メロシアニン色素、ロダシアニン色素、3核メロシアニン色素、アロポーラー色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素などが挙げられる。この際、シアニン色素には色素を形成するメチン鎖上の置換基がスクアリウム環やクロコニウム環を形成したものも含んでいる。これらの色素の詳細については、エフ・エム・ハーマー(F.M.Harmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズ−シアニンダイズ・アンド・リレィティド・コンパウンズ(Heterocyclic Compounds-Cyanine Dyes and Related Compounds)」、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社ーニューヨーク、ロンドン、1964年刊、デー・エム・スターマー(D.M.Sturme r)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズースペシャル・トピックス・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリー(Heterocyclic Compounds-Special topics in heterocyclic chemistry)」、第18章、第14節、第482から515貢などに記載されている。 シアニン色素、メロシアニン色素、ロダシアニン色素の式は、米国特許第5、340、694号第21、22貢の(XI)、(XII)、(XIII)に示されているものが好ましい。また、P1およびP2によって形成されるポリメチン色素の少なくともいずれか一方のメチン鎖部分にスクアリリウム環を有するものが好ましく、両方に有するものがさらに好ましい。
【0083】R61、R62は芳香族基または脂肪族基であり、これらは置換基を有していてもよい。芳香族基の炭素原子数は好ましくは5ないし16、さらに好ましくは5ないし6である。脂肪族基の炭素原子数は好ましくは1ないし10、さらに好ましくは1ないし6である。無置換の脂肪族基、芳香族基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0084】式(V)はR61、R62、P1、P2のうち少なくともひとつに酸性基を有することが好ましい。ここで酸性基とは、解離性のプロトンを有する置換基であり、例としてはカルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸、ホウ酸などが挙げられ、好ましくはカルボン酸である。またこのような酸性基はプロトンを放出して解離した形を採っていてもよい。W2は式(IV)のW1と同義である。
【0085】以下に式(II)〜(V)で表されるポリメチン色素の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0086】
【化11】

【0087】
【化12】

【0088】
【化13】

【0089】
【化14】

【0090】
【化15】

【0091】
【化16】

【0092】
【化17】

【0093】
【化18】

【0094】
【化19】

【0095】
【化20】

【0096】
【化21】

【0097】
【化22】

【0098】
【化23】

【0099】
【化24】

【0100】
【化25】

【0101】
【化26】

【0102】
【化27】

【0103】
【化28】

【0104】
【化29】

【0105】
【化30】

【0106】
【化31】

【0107】式(II)および式(III)で表される化合物は、エフ・エム・ハーマー(F.M.Harmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズ−シアニンダイズ・アンド・リレィティド・コンパウンズ( Heterocyclic Compounds-Cyanine Dyes and RelatedCompounds)」、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社−ニューヨーク、ロンドン、1964年刊、デー・エム・スターマー(D.M.Sturmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズースペシャル・トピックス・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリー(Heterocyclic Compounds-Special topics in heterocyclic chemistry)」、第18章、第14節、第482から515項、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社−ニューヨーク、ロンドン、1977年刊、「ロッズ・ケミストリー・オブ・カーボン・コンパウンズ(Rodd's Chemistry of Carbon Compounds)」2nd.Ed.vol.IV,partB,1977刊、第15章、第369から422項、エルセビア・サイエンス・パブリック・カンパニー・インク(Elsevier Science Publishing Company Inc.)社刊、ニューヨーク、英国特許第1,077,611号などに記載の方法に基づいて合成することができる。
【0108】本発明に用いられる式(IV)で表される化合物の合成は、Dyes and Pigments第21巻227〜234頁などの文献の記載を参考にして行える。また、式(V)で表される化合物の合成は、Ukrainskii Khimicheskii Zhurnal 第40巻3号253〜258頁、Dyes and Pigments 第21巻227〜234頁およびこれらの文献中に引用された文献の記載等を参考にして行える。
【0109】半導体微粒子に色素を吸着させる方法は色素溶液中によく乾燥した半導体微粒子を含有する作用電極を浸漬するか、もしくは色素溶液を半導体微粒子層に塗布して吸着させる方法を用いることができる。前者の場合、浸漬法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法などが使える。浸漬法の場合、色素の吸着は室温で行ってもよいし、特開平7-249790号に記載されているように加熱還流して行ってもよい。後者の塗布方法としては、ワイヤーバー法、スライドホッパ法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法があり、印刷方法としては、凸版、オフセット、グラビア、スクリーン印刷等がある。
【0110】溶媒は、色素の溶解性に応じて適宜選択できる。例えば、水、アルコール類(メタノール、エタノール、t−ブタノール、ベンジルアルコール等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、3−メトキシプロピオニトリル等)、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、ジメチルスルホキシド、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド等)、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭酸エステル類(炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等)、ケトン類(アセトン、2−ブタノン、シクロヘキサノン等)、炭化水素(ヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン等)やこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0111】液粘度も半導体微粒子層の形成時と同様に、高粘度液(例えば0.01〜500Poise)ではエクストルージョン法の他、各種印刷法が、低粘度液(例えば0.1Poise以下)ではスライドホッパー法もしくはワイヤーバー法もしくはスピン法が適していて、均一な膜にすることが可能である。
【0112】このように色素塗布液の液粘度、塗布量、支持体、塗布速度等のパラメータに対応して、適宜付与方式を選択すればよい。塗布後の色素吸着に要する時間は、量産化を考えた場合、なるべく短い方がよい。
【0113】色素の使用量は、全体で、支持体1m2当たり0.01〜100mモルが好ましい。また、色素の半導体微粒子に対する吸着量は半導体微粒子1gに対して0.01〜1mモルが好ましい。このような色素量とすることによって、半導体における増感効果が十分に得られる。これに対し、色素量が少ないと増感効果が不十分となり、色素量が多すぎると、半導体に付着していない色素が浮遊し増感効果を低減させる原因となる。
【0114】未吸着の色素の存在は素子性能の外乱になるため、吸着後速やかに洗浄によって除去することが好ましい。湿式洗浄槽を使い、アセトニトリル等の極性溶剤、アルコール系溶剤のような有機溶媒で洗浄を行うのがよい。また、吸着色素量を増大させるため、加熱処理を吸着前に行うことが好ましい。加熱処理後、半導体微粒子表面に水が吸着するのを避けるため、常温に戻さず40〜80℃の間で素早く色素を吸着させることも好ましい。
【0115】会合など色素同士の相互作用を低減する目的で無色の化合物を共吸着させてもよい。共吸着させる疎水性化合物としてはカルボキシル基を有するステロイド化合物(例えばケノデオキシコール酸)等が挙げられる。また、余分な色素の除去を促進する目的で、色素を吸着した後にアミン類を用いて半導体微粒子の表面を処理してもよい。好ましいアミン類としてはピリジン、4−tert−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げられる。これらが液体の場合はそのまま用いてもよいし有機溶媒に溶解して用いてもよい。また、紫外線による光劣化を防止する目的で紫外線吸収剤を共吸着させることもできる。
【0116】以下、電荷移動層と対極について詳しく説明する。電荷移動層は色素の酸化体に電子を補充する機能を有する電荷輸送材料を含有する層である。本発明で用いることのできる代表的な電荷輸送材料の例としては、■イオン輸送材料として、酸化還元対のイオンが溶解した溶液(電解液)、酸化還元対の溶液をポリマーマトリクスのゲルに含浸したいわゆるゲル電解質、酸化還元対イオンを含有する溶融塩電解質、さらには固体電解質が挙げられる。また、イオンがかかわる電荷輸送材料のほかに、■固体中のキャリアー移動が電気伝導にかかわる材料として、電子輸送材料や正孔(ホール)輸送材料、を用いることもできる。
【0117】本発明の光電変換素子に溶融塩電解質を用いる場合は、例えばWO95/18456号、特開平8-259543号、電気化学,第65巻,11号,923頁(1997年)等に記載されているピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等の既知のヨウ素塩を用いることができる。
【0118】好ましく用いることのできる溶融塩としては、下記一般式(Y-a)、(Y-b)及び(Y-c)のいずれかにより表されるものが挙げられる。
【0119】
【化32】

【0120】一般式(Y-a)中、Qy1は窒素原子と共に5又は6員環の芳香族カチオンを形成しうる原子団を表す。Qy1は炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれる1種以上の原子により構成されるのが好ましい。
【0121】Qy1により形成される5員環は、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環又はトリアゾール環であるのが好ましく、オキサゾール環、チアゾール環又はイミダゾール環であるのがより好ましく、オキサゾール環又はイミダゾール環であるのが特に好ましい。Qy1により形成される6員環は、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環又はトリアジン環であるのが好ましく、ピリジン環であるのがより好ましい。
【0122】一般式(Y-b)中、Ay1は窒素原子又はリン原子を表す。
【0123】一般式(Y-a)、(Y-b)及び(Y-c)中のRy1〜Ry6はそれぞれ独立に置換又は無置換のアルキル基(好ましくは炭素原子数1〜24、直鎖状であっても分岐状であっても、また環式であってもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、t-オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、2-ヘキシルデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等)、或いは置換又は無置換のアルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜24、直鎖状であっても分岐状であってもよく、例えばビニル基、アリル基等)を表し、より好ましくは炭素原子数2〜18のアルキル基又は炭素原子数2〜18のアルケニル基であり、特に好ましくは炭素原子数2〜6のアルキル基である。
【0124】また、一般式(Y-b)中のRy1〜Ry4のうち2つ以上が互いに連結してAy1を含む非芳香族環を形成してもよく、一般式(Y-c)中のRy1〜Ry6のうち2つ以上が互いに連結して環構造を形成してもよい。
【0125】一般式(Y-a)、(Y-b)及び(Y-c)中のQy1及びRy1〜Ry6は置換基を有していてもよく、好ましい置換基の例としては、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I等)、シアノ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基等)、アリーロキシ基(フェノキシ基等)、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(エトキシカルボニル基等)、炭酸エステル基(エトキシカルボニルオキシ基等)、アシル基(アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等)、スルホニル基(メタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基等)、アシルオキシ基(アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、スルホニルオキシ基(メタンスルホニルオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基等)、ホスホニル基(ジエチルホスホニル基等)、アミド基(アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、カルバモイル基(N,N-ジメチルカルバモイル基等)、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、2-カルボキシエチル基、ベンジル基等)、アリール基(フェニル基、トルイル基等)、複素環基(ピリジル基、イミダゾリル基、フラニル基等)、アルケニル基(ビニル基、1-プロペニル基等)等が挙げられる。
【0126】一般式(Y-a)、(Y-b)又は(Y-c)により表される化合物は、Qy1又はRy1〜Ry6を介して多量体を形成してもよい。
【0127】これらの溶融塩は、単独で使用しても、2種以上混合して使用してもよく、また、ヨウ素アニオンを他のアニオンで置き換えた溶融塩と併用することもできる。ヨウ素アニオンと置き換えるアニオンとしては、ハロゲン化物イオン(Cl-、Br-等)、NSC-、BF4-、PF6-、ClO4-、(CF3SO2)2N-、(CF3CF2SO2)2N-、CF3SO3-、CF3COO-、Ph4B-、(CF3SO2)3C-等が好ましい例として挙げられ、(CF3SO2)2N-又はBF4-であるのがより好ましい。また、LiIなど他のヨウ素塩を添加することもできる。
【0128】上記溶融塩は、溶媒を用いなくても使用できるが、後述する溶媒を添加しても構わないが、溶融塩の含有量は電解質組成物全体に対して50重量%以上であるのが好ましい。また、塩のうち、50重量%以上がヨウ素塩であることが好ましい。
【0129】電解質組成物にヨウ素を添加するのが好ましく、この場合、ヨウ素の含有量は、電解質組成物全体に対して0.1〜20重量%であるのが好ましく、0.5〜5重量%であるのがより好ましい。
【0130】以下に、本発明において好ましく用いられる溶融塩の具体例を挙げるが、これらに限定されるわけではない。
【0131】
【化33】

【0132】
【化34】

【0133】
【化35】

【0134】
【化36】

【0135】
【化37】

【0136】
【化38】

【0137】
【化39】

【0138】電荷移動層に電解液を使用する場合、電解液は電解質、溶媒、および添加物から構成されることが好ましい。本発明の電解質はI2とヨウ化物の組み合わせ(ヨウ化物としてはLiI、NaI、KI、CsI、CaI2などの金属ヨウ化物、あるいはテトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイドなど4級アンモニウム化合物のヨウ素塩など)、Br2と臭化物の組み合わせ(臭化物としてはLiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBr2などの金属臭化物、あるいはテトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイドなど4級アンモニウム化合物の臭素塩など)のほか、フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩やフェロセン−フェリシニウムイオンなどの金属錯体、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール−アルキルジスルフィドなどのイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン−キノンなどを用いることができる。この中でもI2とLiIやピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイドなど4級アンモニウム化合物のヨウ素塩を組み合わせた電解質が本発明では好ましい。上述した電解質は混合して用いてもよい。
【0139】好ましい電解質濃度は0.1M以上15M以下であり、さらに好ましくは0.2 M以上10M以下である。また、電解質にヨウ素を添加する場合の好ましいヨウ素の添加濃度は0.01M以上0.5M以下である。
【0140】本発明で電解質に使用する溶媒は、粘度が低くイオン易動度を向上したり、もしくは誘電率が高く有効キャリアー濃度を向上したりして、優れたイオン伝導性を発現できる化合物であることが望ましい。このような溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物、3−メチル−2−オキサゾリジノンなどの複素環化合物、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテルなどの鎖状エーテル類、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル化合物、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、スルフォランなど非プロトン極性物質、水などを用いることができる。
【0141】また、本発明では、J. Am. Ceram. Soc .,80 (12)3157-3171(1997)に記載されているようなter-ブチルピリジンや、2−ピコリン、2,6−ルチジン等の塩基性化合物を添加することもできる。塩基性化合物を添加する場合の好ましい濃度範囲は0.05M以上2M以下である。
【0142】本発明では、電解質はポリマー添加、オイルゲル化剤添加、多官能モノマー類を含む重合、ポリマーの架橋反応等の手法によりゲル化(固体化)させて使用することもできる。ポリマー添加によりゲル化させる場合は、¨Polymer Electrolyte Reviews-1および2¨(J.R.MacCallumとC.A. Vincentの共編、ELSEVIER APPLIED SCIENCE)に記載された化合物を使用することができるが、特にポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデンを好ましく使用することができる。オイルゲル化剤添加によりゲル化させる場合はJ. Chem Soc. Japan, Ind. Chem.Sec., 46,779(1943), J. Am. Chem. Soc., 111,5542(1989), J. Chem. Soc., Chem. Com mun., 1993, 390, Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 35,1949(1996), Chem. Lett.,1996, 885, J. Chm. Soc., Chem. Commun., 1997,545に記載されている化合物を使用することができるが、好ましい化合物は分子構造中にアミド構造を有する化合物である。
【0143】ゲル電解質を多官能モノマー類の重合によって形成する場合、多官能モノマー類、重合開始剤、電解質、溶媒から溶液を調製し、キャスト法,塗布法,浸漬法、含浸法などの方法により色素を担持した電極上にゾル状の電解質層を形成し、その後ラジカル重合することによってゲル化させる方法が好ましい。多官能性モノマーはエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物であることが好ましく、例えばジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートが好ましい例として挙げられる。ゲル電解質を構成するモノマー類はこの他に単官能モノマーを含んでいてもよく、アクリル酸またはα−アルキルアクリル酸(例えばメタクリル酸など)類から誘導されるエステル類もしくはアミド類(例えばN−iso−プロピルアクリルアミド、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、メチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートなど)、ビニルエステル類(例えば酢酸ビニル)、マレイン酸またはフマル酸から誘導されるエステル類(例えばマレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチルなど)、マレイン酸、フマル酸、p−スチレンスルホン酸のナトリウム塩、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジエン類(例えばブタジエン、シクロペンタジエン、イソプレン)、芳香族ビニル化合物(例えばスチレン、p−クロルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム)、含窒素複素環を有するビニル化合物、4級アンモニウム塩を有するビニル化合物、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、ビニリデンフルオライド、ビニリデンクロライド、ビニルアルキルエーテル類(例えばメチルビニルエーテル)、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、N−フェニルマレイミド等を好ましく使用することができる。モノマー全量に占める多官能性モノマーの好ましい重量組成範囲は0.5重量%以上70重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.0重量%以上50重量%以下である。
【0144】上述のモノマーは、大津隆行・木下雅悦共著:高分子合成の実験法(化学同人)や大津隆行:講座重合反応論1ラジカル重合(I)(化学同人)に記載された一般的な高分子合成法であるラジカル重合によって重合することができる。本発明で使用できるゲル電解質用モノマーは、加熱、光、電子線、また電気化学的にラジカル重合することができるが、特に加熱によってラジカル重合させることが好ましい。架橋高分子が加熱により形成される場合に好ましく使用される重合開始剤は、例えば、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキシドなどの過酸化物系開始剤等である。重合開始剤の好ましい添加量はモノマー総量に対し0.01重量%以上20重量%以下であり、さらに好ましくは0.1重量%以上10重量%以下である。
【0145】ゲル電解質に占めるモノマー類の重量組成範囲は0.5重量%以上70重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.0重量%以上50重量%以下である。
【0146】また、ポリマーの架橋反応により電解質をゲル化させる場合、架橋可能な反応性基を含有するポリマーおよび架橋剤を併用することが望ましい。この場合、好ましい架橋可能な反応性基は、含窒素複素環(例えば、ピリジン環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、トリアゾール環、モルホリン環、ピペリジン環、ピペラジン環など)であり、好ましい架橋剤は、窒素原子に対して求電子反応可能な2官能以上の試薬(例えば、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アラルキル、スルホン酸エステル、酸無水物、酸クロライド、イソシアネートなど)である。
【0147】本発明では、電解質の替わりに有機または無機あるいはこの両者を組み合わせた正孔輸送材料を使用することができる。本発明に適用可能な有機正孔輸送材料としては、N,N'-ジフエニル-N、N'-ビス(4-メトキシフェニル)-(1,1'-ビフェニル)-4,4'-ジアミン(J.Hagen et al.,Synthetic Metal 89(1997)215-220)、2,2',7,7'-テトラキス(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)9,9'-スピロビフルオレン(Nature,Vol.395, 8 Oct. 1998,p583-585およびWO97/10617)、1,1-ビス{4-(ジ-p-トリルアミノ)フェニル}シクロヘキサンの3級芳香族アミンユニットを連結した芳香族ジアミン化合物(特開昭59−194393号公報)、4,4,‐ビス[(N-1-ナフチル)‐N-フェニルアミノ]ビフェニルで代表される2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族アミン(特開平5−234681号公報)、トリフェニルベンゼンの誘導体でスターバースト構造を有する芳香族トリアミン(米国特許第4,923,774号、特開平4−308688号公報)、N,N'-ジフエニル-N、N'-ビス(3-メチルフェニル)-(1,1'-ビフェニル)-4,4'-ジアミン等の芳香族ジアミン(米国特許第4,764,625号)、α,α,α',α'-テトラメチル-α,α'-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-p-キシレン(特開平3−269084号公報)、p-フェニレンジアミン誘導体、分子全体として立体的に非対称なトリフェニルアミン誘導体(特開平4−129271号公報)、ピレニル基に芳香族ジアミノ基が複数個置換した化合物(特開平4−175395号公報)、エチレン基で3級芳香族アミンユニツトを連結した芳香族ジアミン(特開平4−264189号公報)、スチリル構造を有する芳香族ジアミン(特開平4−290851号公報)、ベンジルフェニル化合物(特開平4−364153号公報)、フルオレン基で3級アミンを連結したもの(特開平5−25473号公報)、トリアミン化合物(特開平5−239455号公報)、ピスジピリジルアミノビフェニル(特開平5−320634号公報)、N,N,N−トリフェニルアミン誘導体(特開平6−1972号公報)、フェノキザジン構造を有する芳香族ジアミン(特開平7-138562号)、ジアミノフエニルフエナントリジン誘導体(特開平7-252474号)等に示される芳香族アミン類、α-オクチルチオフェンおよびα,ω-ジヘキシル-α-オクチルチオフェン(Adv.Mater. 1997,9,N0.7,p557)、ヘキサドデシルドデシチオフェン(Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1995, 34, No.3,p303-307)、2,8-ジヘキシルアンスラ[2,3-b:6,7-b']ジチオフェン(JACS,Vol120, N0.4,1998,p664-672)等のオリゴチオフェン化合物、ポリピロール(K. Murakoshi et al.,;Chem. Lett. 1997, p471)、¨ Handbook of Organic Conductive Molecules and Polymers Vol.1,2,3,4¨(NALWA著、WILEY出版)に記載されているポリアセチレンおよびその誘導体、ポリ(p-フェニレン) およびその誘導体、ポリ( p-フェニレンビニレン) およびその誘導体、ポリチエニレンビニレンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリトルイジンおよびその誘導体等の導電性高分子を好ましく使用することができる。また、有機正孔(ホール)輸送材料にはNature,Vol.395, 8 Oct. 1998,p583-585に記載されているようにドーパントレベルをコントロールするためにトリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートのようなカチオンラジカルを含有する化合物を添加したり、酸化物半導体表面のポテンシャル制御(空間電荷層の補償)を行うためにLi[(CF3SO2)2N]のような塩を添加しても構わない。
【0148】有機正孔輸送材料は真空蒸着法,キャスト法,塗布法,スピンコート法、浸漬法、電解重合法、光電解重合法等の手法により電極内部に導入することができる。また、正孔輸送材料を電解液の替わりに使用するときは短絡防止のためElectorochim. Acta 40, 643-652(1995)に記載されているスプレーパイロリシス等の手法を用いて二酸化チタン薄層を下塗り層として塗設することが好ましい。
【0149】無機固体化合物を電解質の替わりに使用する場合、ヨウ化銅(p-CuI)(J. Phys. D:Appl. Phys. 31(1998)1492-1496)、チオシアン化銅(Thin Solid Films 261(1995)307-310、J. Appl. Phys. 80(8),15 October 1996, p4749-4754、Chem.Mater. 1998, 10, 1501-1509、Semicond. Sci. Technol. 10, 1689-1693)等をキャスト法,塗布法,スピンコート法、浸漬法、電解メッキ法等の手法により電極内部に導入することができる。
【0150】電荷移動層の形成方法に関しては2通りの方法が考えられる。1つは増感色素を担持させた半導体微粒子含有層の上に先に対極を貼り合わせておき、その間隙に液状の電荷移動層を挟み込む方法である。もう1つは半導体微粒子含有層上に直接電荷移動層を付与する方法で、対極はその後付与することになる。
【0151】前者の場合の電荷移動層の挟み込み方法として、浸漬等による毛管現象を利用する常圧プロセスと常圧より低い圧力にして気相を液相に置換する真空プロセスが利用できる。
【0152】後者の場合、湿式の電荷移動層においては未乾燥のまま対極を付与し、エッジ部の液漏洩防止措置も施すことになる。またゲル電解質の場合には湿式で塗布して重合等の方法により固体化する方法もあり、その場合には乾燥、固定化した後に対極を付与することもできる。電解液のほか湿式有機正孔輸送材料やゲル電解質を付与する方法としては、半導体微粒子含有層や色素の付与と同様に、浸漬法、ローラ法、ディップ法、エアーナイフ法、エクストルージョン法、スライドホッパー法、ワーヤーバー法、スピン法、スプレー法、キャスト法、各種印刷法等が考えられる。固体電解質や固体の正孔(ホール)輸送材料の場合には真空蒸着法やCVD法等のドライ成膜処理で電荷移動層を形成し、その後対極を付与することもできる。
【0153】量産化を考える場合、固体化できない電解液や湿式の正孔輸送材料の場合には、塗設後速やかにエッジ部分を封止することで対応も可能であるが、固体化可能な正孔輸送材料の場合は湿式付与により正孔輸送層を膜形成した後、例えば光重合や熱ラジカル重合等の方法により固体化することがより好ましい。このように膜付与方式は液物性や工程条件により適宜選択すればよい。
【0154】なお、電荷移動層中の水分としては10,000ppm以下が好ましく、さらに好ましくは2,000ppm以下であり、特に好ましくは100ppm以下である。
【0155】対極は、光電変換素子を光電気化学電池としたとき、光電気化学電池の正極として働くものである。対極は通常前述の導電性支持体と同様に導電性層を有する支持体を用いることもできるが、強度や密封性が十分に保たれるような構成では支持体は必ずしも必要でない。具体的に対極に用いる導電性の材料としては金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、マグネシウム、ロジウム、インジウム等)、炭素、または導電性の金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)が挙げられる。対極の厚さは、特に制限はないが、3nm以上10μm以下であることが好ましい。金属材料である場合は、その膜厚は好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは5nm以上3μm以下の範囲である。
【0156】感光層に光が到達するためには、前述の導電性支持体と対極の少なくとも一方は実質的に透明でなければならない。本発明の光電気化学電池においては、導電性支持体が透明であって太陽光を支持体側から入射させるのが好ましい。この場合対極は光を反射する性質を有することがさらに好ましい。本発明において対極としては金属または導電性の酸化物を蒸着したガラスまたはプラスチック、あるいは金属薄膜を使用できる。
【0157】対極の塗設については電荷移動層の付与で記したように、電荷移動層の上に付与する場合と先に半導体微粒子含有層上に付与する場合の2通りある。いずれの場合も、対極材の種類や電荷移動層の種類により、適宜、電荷移動層上または半導体微粒子含有層上に対極材を塗布、ラミネート、蒸着、貼り合わせなどの方法により形成可能である。例えば、対極を貼り合わせる場合は、上記の導電性材料を塗布、蒸着、CVD等の手法により導電層として設けられた基板を貼り合わせることができる。また、電荷移動層が固体の場合には、その上に直接、前述の導電性材料を塗布、メッキ、PVD、CVD等の手法で対極を形成することができる。
【0158】さらに、作用電極の導電性支持体または対極に保護層、反射防止膜など、必要な他の機能の層を設けることも可能である。このような層を多層にて機能分離させる場合、同時多層塗布や逐次で塗布することが可能であるが、生産性を優先させると同時多層塗布がより好ましい。同時多層塗布では、生産性および膜付与均一性を考えた場合、スライドホッパー法やエクストルージョン法が適している。また、これらの機能層はその材料により、蒸着や貼り付けなどの手法を用いて設けることもできる。
【0159】本発明の光電気化学電池では構成物の劣化や内容物の揮散を防止するために電池の側面をポリマーや接着剤等で密封するのが好ましい。
【0160】次に本発明の光電変換素子をいわゆる太陽電池に適用する場合のセル構造およびモジュール構造について説明する。
【0161】色素増感型太陽電池のセル内部の構造は、基本的には上述した光電変換素子や光電気化学電池と同じであるが、図2または図3に示すように目的に合わせ様々な形態が可能である。大きく二つに分ければ、両面から光の入射が可能な構造[図2(a)(d)、図3(g)]と、片面からのみ可能なタイプ[図2(b)(c)、図3(e)(f)(h)]である。
【0162】図2(a)は、透明導電層12間に、色素吸着半導体微粒子含有層である色素吸着TiO2層10と、電荷移動層11とを介在させた構造である。図2(b)は、透明基板13上に一部金属リード9を設け、さらに透明導電層12を設け、下塗り層14、色素吸着TiO2層10、電荷移動層11および金属層8をこの順で設け、さらに支持基板15を配置した構造である。図2(c)は、支持基板15上にさらに金属層8を有し、下塗り層14を介して色素吸着TiO2層10を設け、さらに電荷移動層11と透明導電層12とを設け、一部に金属リード9を設けた透明基板13を、金属リード9側を内側にして配置した構造である。図2(d)は、透明基板13上に一部金属リード9を設け、さらに透明導電層12を設けたものの間に下塗り層14と色素吸着TiO2層10と電荷移動層11とを介在させた構造である。図3(e)は、透明基板13上に透明導電層12を有し、下塗り層14を介して色素吸着TiO2層10を設け、さらに電荷移動層11および金属層8を設け、この上に支持基板15を配置した構造である。図3(f)は、支持基板15上に金属層8を有し、下塗り層14を介して色素吸着TiO2層10を設け、さらに電荷移動層11および透明導電層12を設け、この上に透明基板13を配置した構造である。図3(g)は、透明導電層12を有する透明基板13間に、透明導電性層12を内側にして、下塗り層14、色素吸着TiO2層10および電荷移動層11を介在させた構造である。図3(h)は、支持基板15上に金属層8を設け、下塗り層14を介して色素吸着TiO2層10を設け、さらに固体の電荷移動層16を設け、この上に一部金属層8または金属リード9を有する構造である。
【0163】本発明の色素増感型太陽電池のモジュール構造は、従来の太陽電池モジュールと基本的には同様の構造をとりうる。一般的には、金属・セラミック等の支持基板の上にセルが構成され、その上を充填樹脂や保護ガラス等で覆い、支持基板の反対側から光を取り込む構造とすることができるが、支持基板に強化ガラス等の透明材料を用い、その上にセルを構成してその透明の支持基板側から光を取り込むことも可能である。具体的には、スーパーストレートタイプ、サブストレートタイプ、ポッティングタイプと呼ばれるモジュール構造あるいはアモルファスシリコン太陽電池などで用いられる基板一体型などのモジュール構造が可能である。これらのモジュール構造は使用目的や使用場所(環境)により適宜選択できる。本発明の素子を基板一体型でモジュール化した例を図4に示す。
【0164】図4の構造は、透明基板13の一方の面上に透明導電層12を有し、この上にさらに色素吸着TiO2層10、固体の電荷移動層16および金属層8を設けたセルをモジュール化したものであり、透明基板13の他方の面には反射防止層17が設けられている。この場合、入射光の利用効率を高めるために、感光部である色素吸着TiO2層10の面積比率(光の入射面である透明基板13側から見たときの面積比率)を大きくした方が好ましい。
【0165】スーパーストレートタイプやサブストレートタイプの代表的な構造は、片側または両側が透明で反射防止処理を施された支持基板の間に、一定間隔にセルが配置され、隣り合うセル間が金属リードまたはフレキシブル配線等によって接続されており、外縁部に集電電極を配置して、発生した電力を外部に取り出す構造になっている。基板とセルの間には、セルの保護や集電効率アップのため、目的に応じ、エチレンビニルアセテート(EVA)等様々な種類のプラスチック材料をフイルムまたは充填樹脂の形で用いることができる。また、外部からの衝撃が少ないところなど表面を硬い素材で覆う必要のない場所に使う場合には、表面保護層を透明プラスチックフイルムで構成したり、または、上記充填・封止材料を硬化させることによって保護機能を付与し、片側の支持基板をなくすことも可能である。支持基板の周囲は、内部の密封およびモジュールの剛性確保のため、金属製のフレームでサンドイッチ状に固定し、支持基板とフレームの間は封止材で密封シールする。
【0166】また、セルそのものや支持基板、充填材および封止部材に可撓性の素材を用いれば、曲面の上に太陽電池を構成することもできる。このように、使用目的や使用環境に合わせて様々な形状・機能を持つ太陽電池を製作することができる。
【0167】スーパーストレートタイプの太陽電池モジュールは、例えば、基板供給装置から送り出されたフロント基板をベルトコンベヤ等で搬送しながら、その上にセルを封止材・セル間接続用リード線・背面封止材等と共に順次積層した後、背面基板または背面カバーを乗せ、外縁部にフレームをセットして作ることができる。
【0168】一方、サブストレートタイプの場合、基板供給装置から送り出された支持基板をベルトコンベヤ等で搬送しながら、その上にセルをセル間接続用リード線・封止材等と共に順次積層した後、フロントカバーを乗せ、周縁部にフレームをセットして作製することができる。
【0169】図4に示した構造のモジュールは、支持基板上に透明電極・感光層・電荷移動層・裏面電極等が立体的かつ一定間隔で配列されるように、選択メッキ・選択エッチング・CVD・PVDといった半導体プロセス技術、あるいはパターン塗布または広幅で塗布した後にレーザースクライビングやプラズマCVM(Solar Energy Materials and Solar Cells, 48, p373-381等に記載)または研削等の機械的手法などの方法でパターニングすることができ、これらにより所望のモジュール構造を得ることができる。
【0170】以下にその他の部材や工程について詳述する。封止材料としては、液状のEVA(エチレンビニルアセテート)やフッ化ビニリデン共重合体とアクリル樹脂混合物フイルム状のEVA等、耐候性付与電気絶縁性付与集光効率向上セル保護性(耐衝撃性)向上等の目的に応じ様々な素材が使用可能である。
【0171】これらを、セル上に固定する方法としては、封止材の物性に合わせ、フイルム状の素材ではロール加圧後加熱密着や真空加圧後加熱密着、液またはペースト状の材料ではロールコート、バーコート、スプレーコート、スクリーン印刷等の様々な方法がある。
【0172】また、透明フィラーを封止材に混入して強度を上げたり、光透過率を上げることができる。
【0173】モジュール外縁と周縁を囲むフレームとの間は、耐候性防湿性が高い樹脂を使って封止するとよい。
【0174】支持基板としてPET・PEN等の可撓性素材を用いる場合は、ロール状の支持体を繰り出してその上にセルを構成した後、上記の方法で連続して封止層を積層することができ、生産性の高い工程を造ることができる。
【0175】発電効率を上げるため、モジュールの光取り込み側の基板(一般的には強化ガラス)の表面には反射防止処理が施される。これには、反射防止膜をラミネートする方法、反射防止層をコーティングする方法がある。
【0176】また、セルの表面をグルービングまたはテクスチャリング等の方法で処理することによって入射した光の利用効率を高めることが可能である。
【0177】発電効率を上げるためには、光を損失なくモジュール内に取り込むことが最重要だが、光電変換層を透過してその内側まで到達した光を反射させて光電変換層側に効率良く戻すことも重要である。このためには、支持基板面を鏡面研磨した後、AgやAl等を蒸着またはメッキする方法、セルの最下層にAl−MgまたはAl−Tiなどの合金層を反射層として設ける方法、あるいは、アニール処理によって最下層にテクスチャー構造を作り反射率を高める方法等がある。
【0178】発電効率を上げるためには、セル間接続抵抗を小さくすることが、内部電圧降下を抑える意味で重要である。
【0179】ワイヤーボンディングや導電性のフレキシブルシートで接続するのが一般的だが、導電性粘着テープや導電性接着剤を使ってセルの固定機能と電気的な接続機能を兼ねる方法、導電性ホットメルトを所望の位置にパターン塗布する方法等が有る。
【0180】ポリマーフィルムなどのフレキシブル支持体を使った太陽電池では、ロール状の支持体を送り出しながら半導体の塗設の説明で示した方法によって、順次、セルを形成・所望のサイズに切断した後、周縁部をフレキシブルで防湿性のある素材でシールして、電池本体を作製できる。また、Solar Energy Materials andSolar Cells, 48, p383-391記載の「SCAF」とよばれるモジュール構造とすることもできる。
【0181】フレキシブル支持体の太陽電池では、更にこれを曲面ガラス等に接着固定して使用することもできる。
【0182】
【実施例】以下、本発明を実施例および比較例によって具体的に説明する。
1.二酸化チタン粒子含有塗布液の作製[比較例の分散物の作成]オートクレーブ温度を250℃16時間にした以外はバルベらのジャーナル・オブ・アメリカン・セラミック・ソサイエティ 80巻3157頁記載の硝酸を用いた方法と同様の方法で二酸化チタン濃度8重量%の二酸化チタン分散物を得た。得られた二酸化チタン粒子の平均粒径は約15nmであった。変動係数は43%であった。ここでの平均粒径は、X線回折の(101)反射の回折線幅より求めたものを用いた。この分散物に二酸化チタンに対し30重量%のポリエチレングリコール(分子量500,000、和光純薬製)を添加し、混合して塗布液1を得た。
【0183】[本発明の分散物の作成]ジャーナル オブ コロイド アンド インターフェイス サイエンス(J. Colloid Interface. Sci.).,193 巻140〜141頁(1997)記載の方法において、アンモニアを除去し、硝酸を0.1Mになるように添加した以外は同様にして、100℃24時間エイジングを行い、水酸化チタンを形成した後、140℃72時間エイジングを施して、二酸化チタン濃度2重量%で平均粒径15nmの粒子の分散物を得た。変動係数は26%であった。遠心分離で上澄みを捨て、二酸化チタン濃度を8重量%に濃縮し、この分散物に二酸化チタンに対し30重量%のポリエチレングリコール(分子量500,000、和光純薬製)を添加し、混合して塗布液2を得た。なお、前記文献において、親水性溶媒としては水とイソプロパノールが使用されている。
【0184】塗布液2の作製において硝酸を0.35Mになるように添加した以外は、塗布液2と同様にして塗布液3を得た。この二酸化チタン微粒子の平均粒径は12nmであり、変動係数は29%であった。塗布液2の作製において、硝酸を除去した以外は塗布液2と同様にして塗布液4を得た。この二酸化チタン微粒子の平均粒径は18nmの粒子であり、変動係数は23%であった。塗布液2の作製において、硝酸を酢酸に替えて0.25Mになるように添加した以外は塗布液2と同様にして塗布液5を得た。この二酸化チタン微粒子の平均粒径は15nmであり、変動係数は18%であった。上記5種の塗布液の調製において、硝酸または酢酸を用いた塗布液は、100℃24時間のエイジング処理の段階で、白色のゲルが得られたが、硝酸を添加しなかった塗布液4は、100℃24時間のエイジング処理の段階でゲルの前駆体が得られた。
【0185】2.色素を吸着した二酸化チタン電極の作成フッ素をドープした酸化スズをコーティングした透明導電性ガラス(日本板硝子製、表面抵抗は約10Ω/□)の導電面側に上記の各塗布液をドクターブレードで100μmの厚みでそれぞれ塗布し、25℃で30分間乾燥した後、電気炉(ヤマト科学製マッフル炉FP−32型)で450℃にて30分間焼成して、各塗布液の電極を得た。二酸化チタンの塗布量はいずれも9g/m2であり、膜厚は6μmであった。二酸化チタンの塗布されたガラスを取り出し冷却した後、R−1色素の溶液(色素3×10-4モル/リットル、溶媒:エタノール)に60℃2時間浸漬した。色素の染着された二酸化チタン塗膜をアセト二トリルで洗浄し暗所にて自然乾燥させた。色素の吸着量は、二酸化チタンの塗布面積1m2あたりおよそ0.7〜1.1×10-3モルの範囲であった。
【0186】3.光電池の作成上述のようにして作成した色増感されたTiO2電極基板(2cm×2cm)をこれと同じ大きさの白金蒸着ガラスと重ね合わせた(図1参照)。次に、両ガラスの隙間に毛細管現象を利用して溶融塩の電解質(ヨウ素:0.02g、Y8−1:0.7g、Y7−2:0.3gの混合物)0.3mgをしみこませてTiO2電極中に導入することにより、光電池C1からC5(上記塗布液1〜5が、それぞれ光電池C1〜C5に対応する。)を得た。
【0187】本実施例により、図1に示したとおり、導電性ガラス1(ガラス上に導電剤層2が設層されたもの)、TiO2電極3、色素層4、電解液5、白金層6およびガラス7が順に積層された光電池C1からC5が作成された(C1は比較例である。)。
【0188】4.光電変換効率の測定500Wのキセノンランプ(ウシオ製)の光を分光フィルター(Oriel社製AM1.5)を通すことにより模擬太陽光を発生させた。この光の強度は100mW/cm2であった。前述の光電池の導電性ガラスと白金蒸着ガラスにそれぞれ、ワニ口クリップを接続し、模擬太陽光を照射し、発生した電気を40℃の一定温度で電流電圧測定装置(ケースレーSMU238型)にて測定した。これにより求められた光電池の開放電圧(Voc)、短絡電流密度(Jsc)、形状因子(FF)、光電変換効率(η)を一括して表1に記載した。
【0189】
【表1】

【0190】上記実施例の結果から、本発明の作製法で得た単分散の二酸化チタン微粒子を用いた光電変換材料は、短絡電流Jscが高く、変換効率が高かった。なかでも、酢酸を用いて形成された二酸化チタンは、単分散性が優れ、短絡電流Jscが高く、変換効率が高かった。
【0191】
【発明の効果】本発明によって、短絡電流高く、効率の優れた色素増感光電変換素子および光電池が得られる。




 

 


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