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発明の名称 ガス選択透過板の製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−4588(P2001−4588A)
公開日 平成13年1月12日(2001.1.12)
出願番号 特願平11−172039
出願日 平成11年6月18日(1999.6.18)
代理人 【識別番号】100097445
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 文雄 (外2名)
【テーマコード(参考)】
2G004
【Fターム(参考)】
2G004 BB04 BE22 BF02 BF05 
発明者 鶴田 邦弘 / 牧 正雄 / 丹羽 孝 / 梅田 孝裕
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】組成が2〜9モル%の酸化イットリウムが含有されるジルコニアであり平均粒径が0.3〜0.5μmである原料粉末を所定形状に成形した後に1000〜1350℃の温度で焼成した多孔質基板を、ジルコニアが主成分のゾルゲル液を用いたコーテング材で被覆し300〜1200℃の温度で焼成して、複数のガス通過孔を有するガス選択透過板を製造するガス選択透過板の製造方法。
【請求項2】多孔質基板の組成が、酸化イットリウムが2〜4モル%含有されるジルコニアである請求項1記載のガス選択透過板の製造方法。
【請求項3】コーテング材が、ジルコニアが70〜90wt%含有され残部がシリカである請求項1記載のガス選択透過板の製造方法。
【請求項4】コーテング材が、塩基性である請求項1記載のガス選択透過板の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、大気中や燃焼排ガス中の一酸化炭素を検出する一酸化炭素センサなどに使用するガス選択透過板の製造方法に関し、特にこの種のガスセンサへの被毒影響を持つ二酸化イオウガスの通過をブロックするガス選択透過板を得る製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】大気中や各種燃焼機器の排ガス中の一酸化炭素を検出する一酸化炭素センサは種々のタイプがあるが、酸素イオン導電性固体電解質を利用した固体電解質型一酸化炭素センサが最近注目を集めている。このセンサは、平板状の酸素イオン導電性固体電解質に対となる白金電極を設け、酸素が酸素イオンとなって片側の白金電極から酸素イオン導電性固体電解質を経由して他方の白金電極に移動する性質を利用したセンサである。しかしながら、白金電極が二酸化イオウガスで被毒されるため耐久性の確保が重要課題であり、この対策のため二酸化イオウの通過を規制するガス選択透過板が提案されている。
【0003】特開平10−288593号公報には、一酸化炭素センサにおける二酸化イオウ被毒対策のためのガス選択透過板として、二酸化イオウの通過を規制するセラミック多孔体が記載されており、その構成は図2の通りである。このセラミック多孔体1は、平均細孔径を0.1μm以下の通気孔を有し、一酸化炭素や酸素などのセンサの検出に必要な低分子量ガスは通過させ、亜硫酸ガスなどの白金電極膜に悪影響を与える高分子量ガスは通過させにくいようにしている。そして、具体的手段として、0.1〜1μm程度の平均細孔径を有するアルミナもしくはジルコニアの多孔体基板2に、シリカ化合物またはジルコニア化合物の少なくとも1種以上の被膜3をゾルゲル法もしくはCVD法で形成し、平均細孔径が0.1μm以下のセラミック多孔体1になる様に細孔制御している。また特に、セラミック多孔体1の平均細孔径を0.001μm以下にすると、被膜3として用いるシリカ化合物またはジルコニア化合物が疎水性であるため、細孔が凝縮水で閉塞されることがなく、しかも親水性の亜硫酸ガスも完全に侵入を阻止できるとしている。
【0004】一方、酸素イオン導電性固体電解質に対となる白金電極を設けた同種の構成として限界電流電流式酸素センサがある。このセンサの拡散律速部材に、平均細孔径を0.1μm以下としたガス選択透過板を使用することが、特開昭62−179653号公報に記載されている。この拡散律速部材は、気孔率8〜16%で厚み3〜30μmの部材と、部材の上に形成されたセラミックのプラズマ溶射を用いた平均細孔径0.002〜0.1μmの多孔質層とで構成されている。多孔質層は、平均細孔径が0.002〜0.1μm、気孔率が4〜7%、厚みが2〜50μmとしており、全開口面積の制御で限界電流電流式酸素センサの拡散律速部材として作用させるととともに、細孔径も狭めて二酸化イオウの通過が阻害されるようにしている。なお、これと類似の記載は、特開昭59−166854号公報や特開昭61−45962号公報にも見られる。
【0005】また、特開平10−158074号公報にも、限界電流電流式酸素センサの拡散律速部材として、ガス選択透過板を使用した多孔質セラミック膜とその製造方法が記載されている。この多孔質セラミック膜は、空孔率5〜15%で空孔径の80%以上が0.05〜0.09μmに分布したセラミック膜であり、平均粒径が0.1〜1μmのセラミック粉末を使用した成形品をその緻密化温度の92〜97%の温度で焼成して製造している。これも、拡散律速部材として作用させるととともに、空孔径を狭めて二酸化イオウの通過が阻害されるようにしたものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のガス選択透過板は、下記の2つの問題点がある。第1の問題点は、平均細孔径が0.1μm以下の微細孔を安定して製造するために、精度の高い品質管理と高度で複雑な製造技術を必要とする問題点である。第2の問題点は、この微細孔を有するガス選択透過板をそのまま固体電解質型一酸化炭素センサに応用すると応答性が遅くなる問題点である。
【0007】まず、精度の高い品質管理と高度で複雑な製造技術を必要とする問題点について説明する。この問題点は、多孔体基板の製造に関する問題点と、被膜の製造に関する問題点がある。図2記載のセラミック多孔体1は、具体例として、0.1〜1μm程度の平均細孔径を有するアルミナもしくはジルコニアの多孔体基板2に、シリカ化合物またはジルコニア化合物の少なくとも1種以上の被膜3をゾルゲル法もしくはCVD法で形成して、平均細孔径が0.1μm以下になる様に細孔制御している。0.1〜1μm程度の微細な貫通孔が開けられた多孔体基板2を安定して製造するためには、原料粉末の材質や粒径そして焼成温度に関する精度の高い品質管理と高度な製造技術が必要である。また、表面処理で被膜3を形成して貫通孔を狭めて0.1μm以下に細孔制御することは、表面処理1回で狭められる量が僅かであるため表面処理を何回も繰り返す必要があり、この細孔制御は複雑な製造工程を有する表面処理技術となっていた。
【0008】このことは、セラミックのプラズマ溶射で細孔径が0.002〜0.1μmの多孔質層を形成して、拡散律速部を製造する場合でも同じであり、セラミックをプラズマ溶射してこの微小な孔を形成することは高度な技術を必要とし、精度の高い品質管理と複雑な製造工程を有するプラズマ溶射技術となっていた。また、粉末成形品をその緻密化温度の92〜97%の温度で焼成して多孔質セラミック膜を得る場合でも同じであり、焼成温度が予め決めた規格値よりも僅かでも高くなると成形品が緻密化するため、炉内の温度管理に高度な技術を必要とし、精度の高い品質管理と高度な製造工程を有する焼成技術となっていた。
【0009】次に、固体電解質型一酸化炭素センサに応用すると応答性が遅くなる問題点について説明する。ガス選択透過板の平均細孔径を0.1μm以下にしたからとして例えば0.001μmといった超微細孔にすると、この超微細孔を通過しての一酸化炭素ガスと酸素ガスの流入が円滑に行われず、応答性が遅くなる。この超微細孔にすることで応答性が遅くなる問題は、空孔径を狭めて二酸化イオウの通過が阻害される様にすることで起る問題であり、多孔体基板が超微細孔を有し、しかもこれにともない気孔率が小さくなる要因と、被膜の膜厚が厚い要因に起因する。
【0010】本発明は、前記する従来の課題を解決し、簡単な製法で、二酸化イオウガスの通過をブロックし、一酸化炭素や酸素などのガスは良好に通過させ、平均細孔径と気孔率が大きいガス選択透過体を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決するために、組成が2〜9モル%の酸化イットリウムが含有されるジルコニアであり平均粒径が0.3〜0.5μmである原料粉末を所定形状に成形した後に1000〜1350℃の温度で焼成した多孔質基板を、ジルコニアが主成分のゾルゲル液を用いたコーテング材で被覆し300〜1200℃の温度で焼成して、複数のガス通過孔を有するガス選択透過板を製造する方法とした。
【0012】酸化イットリウムが2〜9モル%含有されるジルコニウム系原料を使用して、平均粒径0.3〜0.5μmの原料粉末の成形板を1000〜1350℃の温度で焼成すると、平均細孔径が0.1μmで気孔率が大きい高強度の多孔質基板を、簡単な製法で得ることができる。一方、ジルコニアは、塩基性化合物であり酸性ガスである二酸化イオウとの親和性に非常に優れている。そのため、ジルコニアのゾルゲル液を用いたコーテング材で多孔質基板を被覆し300〜1200℃の温度で焼成すると、コーテング材は多孔質で活性な膜となり二酸化イオウとの親和性に非常に優れた膜が得られる。このため、ゾルゲル液の少ないコーテング処理回数で、二酸化イオウの通過を効果的に阻害するコーテング材が簡単に得られる。
【0013】以上のことより、平均細孔径が0.1μmで気孔率が大きい多孔質基板を、少ない処理回数のジルコニア系コーテング材で被覆することにより、平均細孔径が0.1μm弱と大きくしかも気孔率も大きいガス選択透過板が簡単に得られ、このガス選択透過板は二酸化イオウガスの通過をブロックし一酸化炭素や酸素などのガスは良好に通過させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明は、各請求項に記載した発明の形態で実施することができる。
【0015】すなわち、請求項1記載の発明は、組成が2〜9モル%の酸化イットリウムが含有されるジルコニアであり平均粒径が0.3〜0.5μmである原料粉末を所定形状に成形した後に1000〜1350℃の温度で焼成した多孔質基板を、ジルコニアが主成分のゾルゲル液を用いたコーテング材で被覆し300〜1200℃の温度で焼成して、複数のガス通過孔を有するガス選択透過板を製造することで実施できる。
【0016】この製造方法により、平均細孔径が0.1μmで気孔率が大きい多孔質基板を、少ない処理回数のジルコニア系コーテング材で被覆することにより、平均細孔径が0.1μm弱と大きくしかも気孔率も大きいガス選択透過板が簡単に得られ、このガス選択透過板は二酸化イオウガスの通過をブロックし一酸化炭素や酸素などのガスは良好に通過させることができる。
【0017】また、請求項2記載の発明は、ジルコニウム系多孔質基板が、酸化イットリウムが2〜4モル%含有されるとすることで実施することができる。この組成のジルコニウム系多孔質基板は、強度に優れしかもジルコニアのコーテング材との密着性に優れている。そのため、二酸化イオウ通過阻害性と耐久性の優れたガス選択透過板を得ることができる。
【0018】また、請求項3記載の発明は、コーテング材は、ジルコニアが70〜90wt%含有され残部がシリカであるとすることで実施することができる。ジルコニアの70〜90wt%に、塩基性であり基板への付着力の強いシリカが混合されたコーテング材であるため、二酸化イオウとの親和性に優れしかも1回処理で狭められる量が大きいコーテング材が得られる。そのため、一層簡単な製法で、二酸化イオウを通過させにくくしたガス選択透過板を得ることができる。
【0019】また、請求項4記載の発明は、コーテング材が塩基性であることで実施することができる。塩基性のジルコニア系コーテング材であるため、二酸化イオウとの親和性が一層優れたコーテング材が得られる。そのため、二酸化イオウを一層通過させにくくなり、一層簡単な製法で耐久性の優れたガス選択透過板を得ることができる。
【0020】
【実施例】以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
【0021】(実施例1)図1は本発明の実施例であるガス選択透過板の構造図である。ガス選択透過板4は、ガス通過孔5を多数有する。このガス通過孔5は、複数の貫通孔6を有するセラミック製の多孔質基板7を、ジルコニアを主成分とするゾルゲル液を用いたコーテング材8で被覆し、貫通孔6の孔径を狭めたものである。
【0022】ガス選択透過板4の製造方法を述べる。多孔質基板7は、酸化イットリウム2〜9モル%と酸化ジルコニウム98〜91モル%の溶融焼成物の粉末(平均粒径0.3〜0.5μm)を板状に成形して乾燥した後、1000〜1350℃の温度で焼成して得た。この製造方法により多孔質基板7は、0.1μmの貫通孔6を多数有する様になり、その熱膨張係数は約10×10-6(deg-1)であった。コーテング材8は、ジルコニアのゾルゲル液に前述の多孔質基板7を浸した後に乾燥させ、300〜1200℃で焼成して形成した物である。この製造方法により多孔質基板7の貫通孔6は、その孔径が狭められたガス通過孔5を多数有するガス選択透過板4が得られた。
【0023】ガス選択透過板を固体電解質型一酸化炭素センサの構成部品として使用する事例を述べる。まず、酸化イットリウム8モル%と酸化ジルコニウム92モル%からなる酸素イオン導電性固体電解質焼結板の片側表面に、白金をスパッタして対となる白金スパッタ電極膜を形成した。その後、この酸素イオン導電性固体電解質焼結板にガラス膜を2個の白金スパッタ電極膜の周囲を囲むようにして印刷し、この上にガス選択透過板を積層して焼成し、両方の板を固定した。そして、白金とパラジウムを担持させたアルミナ粒子の触媒をペーストにしてガス選択透過板の片側表面に塗布し、酸化触媒層を形成した。最後に、白金スパッタ電極膜に白金リード線を接合して完成である。以後、この構成でセンサ応用特性を評価した。
【0024】本発明品を試作し、その効果を確認した結果を表1に示す。ガス選択透過板は、粉末の平均粒径と焼成の温度時間を異ならせて試作した貫通孔孔径が異なる多孔質基板を、コーテング材で処理して製造したものである。そして、このガス選択透過板を固体電解質型一酸化炭素センサの構成部品として使用した際の、センサの90%応答時間(応答性と記す)と二酸化イオウに対する感受性(S感受性と記す)を測定した。
【0025】試作番号1は、本発明品であり、平均粒径0.3〜0.5μmの原料粉末を板状に成形して乾燥した後に1200℃で焼成して得た貫通孔孔径0.1μmの多孔質基板(気孔率50%)を、コーテング2回の処理で製造した物である。
【0026】試作番号2および3は、従来品であり、粉末の平均粒径と焼成の温度時間を異ならせて試作した貫通孔孔径が異なる多孔質基板を、コーテング材の処理を多数行って製造した物である。試作番号2の多孔質基板は気孔率60%であるが、試作番号3の多孔質基板は気孔率8%でありこれ以上の気孔率の多孔質基板は緻密化のため技術上困難であった。
【0027】試作番号4および5は、参考品であり、粉末の平均粒径と焼成の温度時間を異ならせて試作した貫通孔孔径が異なる多孔質基板だけであり、コーテング材の処理を行っていない製造履歴品である。試作番号4の多孔質基板は気孔率8%でありこれ以上の気孔率の多孔質基板は緻密化のため技術上困難である。試作番号5の多孔質基板は気孔率45%である。
【0028】試作番号6は比較品であり、ガス選択透過板を使用しないセンサの特性である。
【0029】多孔質基板は、酸化イットリウム3モル%と酸化ジルコニウム97モル%の溶融焼成物の粉末を板状に成形した後に焼成したものであり、特に定義しな限り以後はこの材料を用いた。多孔質基板およびガス選択透過板は、貫通孔およびガス通過孔の孔径分布を測定し、最も多く存在する孔径値を孔径の代表値(平均細孔径と称す)として活用した。この孔径値は、体積表示の孔径分布においてその孔径値が50%以上存在する値であり、±0.02μmの測定誤差を含んでいる。
【0030】コーテング材は、ジルコニアが80wt%含有され残部がシリカであるゾルゲル液を、前述の多孔質基板に浸した後に乾燥させ400℃で焼成して形成した物である。コーテング回数は、前述のゾルゲル液浸漬後に乾燥焼成する処理工程を1回とした際の繰り返し処理回数であるが、前述の様にガス選択透過板を固体電解質型一酸化炭素センサの構成部品として使用した際に、センサが二酸化イオウに対する感受性がなくなる特性が得られるまでのコーテング回数で現わしている。
【0031】また、センサの応答性は、センサを450℃で酸素濃度20%(窒素バランス)のガス雰囲気中に放置し、一酸化炭素1000ppmを流入した際の応答時間を測定して求めた。センサ応答性が早いことは、ガス選択透過板のガス通過孔を介して、検出に必要な一酸化炭素ガスと酸素ガスが円滑に流入出していることを意味する。一方、二酸化イオウに対する感受性は、センサを450℃で酸素濃度20%(窒素バランス)で二酸化イオウ濃度1000ppmの混合ガス雰囲気中に放置して、センサ出力を測定したものである。二酸化イオウが存在するとこれを感受してセンサ出力が得られるが、通過が阻害されとセンサ出力が得られなくなるので、センサ出力の大小で二酸化イオウに対する感受性を評価している。二酸化イオウに対する感受性がないことは、ガス選択透過板が二酸化イオウの通過を規制していることを意味する。
【0032】
【表1】

【0033】本発明品の試作番号1は、コーテング回数が2回と少なく製造が簡単である利点と、優れたセンサ応答性と二酸化イオウに対する感受性がない利点がある。優れたセンサ応答性を示す理由は、多孔質基板の貫通孔孔径が0.1μmと大きくしかも気孔率も50%と大きいことと、コーテング回数が2回と少ないためガス選択透過板は0.09μmと大きい孔径のガス通過孔が得られるためである。また、二酸化イオウに対する感受性がない理由は、コーテング材が二酸化イオウを捕捉しその通過を規制しているためである。
【0034】一方、従来品の試作番号2は、優れたセンサ応答性と二酸化イオウに対する感受性なしの利点があるが、コーテング処理が20回と複雑な製造工程となる課題があった。また、従来品の試作番号3は、コーテング回数が2回と少なく製造が簡単である利点と、二酸化イオウに対する感受性がない利点があるが、ガス通過孔の孔径が小さくしかも気孔率も小さいためセンサ応答性が遅いという課題があった。
【0035】また、参考品の試作番号4および5は、多孔質基板にコーテング処理していないため、二酸化イオウに対する感受性が有り、不適格であった。比較品の試作番号6は、ガス選択透過板がないため、二酸化イオウに対する感受性が有り、不適格であった。
【0036】次に、コーテング材として用いるゾルゲル液材料について検討した。各種のゾルゲル液を用いてコーテング処理した場合の処理回数と、センサ応用性(応答性、二酸化イオウに対する感受性、耐湿性)を評価した結果を表2に示す。
【0037】ガス選択透過板は、平均粒径0.3〜0.5μmの原料粉末を板状に成形して乾燥した後に1200℃で焼成して得た貫通孔孔径0.1μmの多孔質基板(気孔率50%)を、各種のゾルゲル液に浸した後に乾燥させ400℃で焼成して工程を多数行って製造した物である。コーテング回数は、ゾルゲル液浸漬後に乾燥焼成する処理工程を1回とした際の繰り返し処理回数であるが、前述の様にガス選択透過板を固体電解質型一酸化炭素センサの構成部品として使用した際に、センサが二酸化イオウに対する感受性がなくなる特性が得られるまでのコーテング回数で現わしている。センサ応用特性における耐湿性は、ガス選択透過板を使用した固体電解質型一酸化炭素センサを、水蒸気中に200時間放置した際のコーテング材の密着性をテープ剥離法で評価した特性である。
【0038】
【表2】

【0039】本発明品であるジルコニア、ジルコニア80wt%ーシリカ20wt%(ジルコニアーシリカと記す)は、コーテング回数が4回〜2回であり製造が簡単である利点と、優れたセンサ応答性と二酸化イオウに対する感受性と耐湿性に優れる利点がある。優れたセンサ応答性を示す理由は、コーテング回数が4回〜2回と少ないためガス選択透過板は大きい孔径のガス通過孔が得られるためである。また、二酸化イオウに対する感受性がない理由は、コーテング材が二酸化イオウを捕捉しその通過を規制しているためである。耐湿性に優れる理由は、ジルコニアが主成分のコーテング材であるため不溶性となるためである。
【0040】一方、アルミナは15回処理、シリカは7回処理を必要とし製造工程が複雑となる課題と、これにともないガス選択透過板は小さい孔径のガス通過孔が得られるためセンサ応答性が遅い課題があった。また、塩基性材料である酸化カルシウムや酸化マグネシウムは、6回処理が必要であり製造工程が複雑になる課題と、これにともない小さい孔径のガス通過孔が得られるためセンサ応答性が遅い課題と、コーテング材が溶解性であるため耐湿性に劣る課題があった。
【0041】ジルコニアをゾルゲル液でコーテング処理したガス選択透過板を、応用した一酸化炭素センサの特性を評価した。試作したセンサを、酸素濃度20%(窒素バランス)で一酸化炭素センサ濃度1000ppmの混合ガス雰囲気中に放置し、センサの動作温度を450℃に保持したところ、20mvのセンサ出力が得られた。また、一酸化炭素センサは、前述の混合ガスに二酸化イオウ100ppmをさらに混合した雰囲気中に100時間放置してもセンサ出力の低下はなく、優れた耐久性を示した。
【0042】この検知メカニズムを説明する。酸化触媒層を配置した側では、酸化触媒層の触媒作用で一酸化炭素ガスは酸素ガスと反応して二酸化炭素ガスとなり消耗して無くなるが、酸素濃度はその濃度が圧倒的に高いため略雰囲気濃度のままである。そして、大きな分子径を有する二酸化イオウなどのガスはガス選択透過板4のガス通過孔5で進入を阻害されるが、小さな分子径を有する酸素ガスはそのまま通過して第1の白金スパッタ電極膜に到達する。一方、他方の第2の白金スパッタ電極膜の側では、一酸化炭素ガスおよび酸素ガスはガス選択透過板4のガス通気孔5をそのまま進入し、第2の白金スパッタ電極膜の触媒作用で一酸化炭素ガスと酸素ガスが反応して二酸化炭素ガスとなり、酸素ガスの濃度が減少する。このため、酸素濃度に着目すると、酸化触媒層を配置した第1の白金スパッタ電極膜の方が、酸化触媒層の無い第2の白金スパッタ電極膜の方より高濃度となり、酸素ガスが第1の白金スパッタ電極膜より第2の白金スパッタ電極膜に向かって酸素イオン導電性固体電解質焼結板の中を酸素イオンとなって移動し、この酸素移動によって起電力が発生する。この起電力がセンサ出力であり、一酸化炭素ガス濃度の対数値に略比例した値が得られる。一方、二酸化イオウガスは、ガス選択透過板4のガス通過孔5で進入を阻害されるため、白金スパッタ電極膜はこのガスで被毒されることなく優れた耐久性をいつまでも維持する。
【0043】さて、(表1)の検討結果より優れたセンサ応答性を得るためには、ガス選択透過板のガス通過孔は0.09μm以上が必要であることがわかる。そこで、これを実現する多孔質基板を得るために、粉末の平均粒径と多孔質基板の特性(貫通孔の孔径、気孔率、ガス通過性、耐久強度)の関係について検討した。その関係を表3に示す。検討は、酸化イットリウム3モル%と酸化ジルコニウム97モル%の溶融焼成物の粉末を板状に成形し、1100℃で1時間焼成して得た多孔質基板で行った。粉末の平均粒径は走査型電子顕微鏡での観察、貫通孔の孔径は水銀圧入法で測定した粒径分布においてその粒径が50%以上存在する範囲を算出、気孔率は嵩比重と真比重の測定から算出、ガス通過性は圧縮空気を通過させた際の通気量の大小から判定、耐久強度は300℃で200時間放置して耐久試験した際の強度を初期値と比較しその変化率の大小で判定、で行っている。
【0044】
【表3】

【0045】平均粒径0.3〜0.5μmの原料粉末を使用すると、貫通孔の孔径や気孔率が大きいので、ガスが良好に通過する高強度の多孔質基板が製造できる。一方、平均粒径0.3μm未満の原料粉末だと、貫通孔の孔径は小さいが焼成に緻密化して気孔率が小さくなってガスの通過が悪くなり、不適格であった。また、平均粒径0.5μmを超えた原料粉末だと、原料粉末の粒子径が大きいため300℃等の低温で長時間さらした際のいわゆる熱エージング劣化現象が現われて、結晶構造の相転移が起って曲げ強度が低下し、不適格であった。
【0046】さて、優れたセンサ応答性を得るためには、ガス選択透過板のガス通過孔は大きいほどよくその値は(表1)より0.09μm以上であり、そのためには多孔質基板の貫通孔孔径は0.09μm以上が必要である。(表3)よりこれを実現するための原料粉末は平均粒径0.3〜0.5μm以上であるが、平均粒径0.5μmを超えた原料粉末だと曲げ強度が低下する問題や、これにともない多孔質基板の貫通孔孔径が大きくなると二酸化イオウガスの通過をブロックするためのコーテング処理が多くなり複雑な製造工程となる問題がある。そこで、ガスが良好に通過できしかも耐久強度が優れる原料粉末として、平均粒径0.3〜0.5μmを選定した。
【0047】次に、貫通孔の0.1μmを製造するための多孔質基板の焼成温度について検討した。その結果を(表4)に示す。検討は、平均粒径0.3〜0.5μmの原料粉末を使用して1時間で焼成したものであり、評価方法は前述と同じである。
【0048】
【表4】

【0049】1350〜1000℃で焼成した多孔質基板は、貫通孔の孔径が0.1μmでありガスが良好に通過する成形品が製造でき、良好な焼成温度であった。一方、1350℃を超える焼成は緻密化が起ってガスが通過しにくくなり、1000℃未満の焼成は焼成不充分のため脆くて成形できない、の理由で不適格な焼成温度であった。
【0050】最後に、コーテング材の焼成温度について検討した。その結果を表5に示す。検討は、1100℃で焼成した多孔質基板(気孔率50%)を、ジルコニアのゾルゲル液に浸漬して乾燥させたものを、焼成温度を変えて1時間焼成したガス選択透過板を試作して行ったものである。密着性は、多孔質基板とコーテング材との密着性をテープ剥離法で評価したものであり、コーテング材がテープに付着したら剥離と判定し、付着しなかったら良好と判定している。他の評価は前述と同じである。
【0051】
【表5】

【0052】300〜1200℃で焼成した多孔質基板は、多孔質基板とコーテング材との密着性が優れる、一酸化炭素ガスを良好に通過させてセンサ出力が得られる、二酸化イオウの通過が阻害されてその感受性がない、の利点が有り焼成温度として良好であった。一方、1200℃を超える焼成は、ジルコニアの持つ二酸化イオウ補足効果が低下するため、二酸化イオウガスが進入して二酸化イオウ感受性を示して不適格な焼成温度であった。また、300℃未満の焼成は、多孔質基板とコーテング材との密着性が無いので剥離し、不適格な焼成温度であった。
【0053】なお、上記検討は、多孔質基板として、酸化イットリウム2〜3モル%系の部分安定化ジルコニアを使用したが、酸化イットリウム3〜9モル%系の他ジルコニア系でも同様の効果が有ることは言うまでもない。これは、これら材料は、ジルコニウム系酸素イオン導電性固体電解質と同じ熱膨張係数を有すること、1100℃前後での体積膨張が起らないようにしているためである。そのため、この材料のガス選択透過板をこれらセンサの部品用として使用しても、熱膨張係数が同じであるため割れやクラック発生が生じない。また、効果判定は、固体電解質型一酸化炭素センサに応用して行ったが、限界電流式酸素センサに応用しても同様な効果が有ることは言うまでもない。
【0054】(実施例2)多孔質基板に用いるジルコニア系原料の材料組成について検討した。
【0055】検討はまず、酸化イットリウムの混合量を変化させたジルコニア系原料粉末(平均粒径0.3〜0.5μm)を1300℃で1時間焼成して多孔質基板を試作した。その後、ジルコニアのゾルゲル液に浸し乾燥後に400℃30分焼成してコーテング材を形成して、ガス選択透過板を得た。その特性を表6に示す。特性は、多孔質基板の外観と初期強度、ジルコニアのコーテング材との密着性で、判定した。なお、これら多孔質基板の平均細孔径は0.1μmである。
【0056】
【表6】

【0057】酸化イットリウムが2〜4モル%混合した多孔質基板は、強度に優れて亀裂等のない優れた特性を示し、しかもジルコニアのコーテング材との密着性に優れていた。そのため、最適な多孔質基板となっていた。また、酸化イットリウムが4〜9モル%混合した多孔質基板は、強度が良好で亀裂等のない特性を示し、しかもジルコニアのコーテング材との密着性は良好であった。
【0058】一方、酸化イットリウムを2モル%未満混合した多孔質基板は、1300℃焼成で結晶形が変化して亀裂が入り強度が弱くなるとともに、ジルコニアのもつ非粘着の作用でコーテング材との密着性がなくテープ剥離を生じて、不適格な材料組成であった。さらに、酸化イットリウムが9モル%以上混合した多孔質基板は、初期強度が弱くて実用性に乏しいため検討より除外した。
【0059】(実施例3)ガス選択透過板のコーテング材について検討した。
【0060】検討は、酸化イットリウム3モル%と酸化ジルコニウム97モル%の溶融焼成物の粉末を1100℃で1時間焼成した多孔質基板(気孔率50%)を試作した後、各種のゾルゲル液に浸して乾燥後に400℃30分焼成してコーテング材を形成したガス選択透過板で行った。その結果を表7に示す。評価方法は前述の実施例1と同じであり、処理回数は二酸化イオウに対する感受性が無くなる処理回数を表示している。
【0061】
【表7】

【0062】ジルコニアが70〜90wt%含有され残部がシリカであるゾルゲル液を用いたコーテング材は、2回処理で二酸化イオウに感受しなくなり、優れたコーテング材であった。これは、塩基性であり基板への付着力の強いシリカを、ジルコニアに混合したコーテング材であるため、1回処理で狭められる量が一層大きいためである。そのため、二酸化イオウを一層通過させにくくしたガス選択透過板を簡単な製法で製造でき、これをセンサに応用すると一層耐久性の優れたセンサを得ることができる。
【0063】また、この検討結果と、ジルコニアと他材料との混合ゾルゲル液との同様の検討結果より、ジルコニアが60%以上含有されたコーテング材は、二酸化イオウで被毒されないガス選択透過板を得ることができ、優れたコーテング材であった。
【0064】(実施例4)コーテング材の酸塩基性度について検討した。
【0065】検討は、酸化イットリウム3モル%と酸化ジルコニウム97モル%の溶融焼成物の粉末を1100℃で1時間焼成した多孔質基板(気孔率50%)を試作した後、その液性が異なるゾルゲル液(ジルコニア100%液)に浸して乾燥後に400℃30分焼成してコーテング材を形成したガス選択透過板で行った。その結果を表8に示す。評価方法は前述の実施例1と同じであり、処理回数は二酸化イオウに対する感受性が無くなる処理回数を表示している。
【0066】なお、コーテング材の酸塩基性度は、コーテング材を純水に浸漬して得た水のPHより求めており、ゾルゲル液に硝酸を多量混入させることで酸性、硝酸の少量混入で中性、ナトリウムイオンの少量混入で塩基性になるように制御した。
【0067】
【表8】

【0068】塩基性のコーテング材は、2回処理で二酸化イオウに感受しなくなり、優れたコーテング材であった。これは、塩基性にしたことにより酸性ガスの二酸化イオウとの親和力が高まり、二酸化イオウを一層通過させにくくしたガス選択透過板が得られたためである。そのため、これをセンサに応用すると一層耐久性の優れたセンサを得ることができた。
【0069】以上の様に、本発明は、固体電解質型一酸化炭素センサに応用すると、二酸化イオウガスの通過をブロックし一酸化炭素や酸素などのガスは良好に通過させることができるため、早いセンサ応答性と優れた耐二酸化イオウ被毒性を有することができる。また、本発明は、固体電解質型一酸化炭素センサ以外に、酸素イオン導電性固体電解質に対となる白金電極を設けた同種構成の限界電流電流式酸素センサの拡散律速部材用や、白金を用いた他方式のガスセンサ(具体的には、接触燃焼方式、酸化スズに白金を担持させた半導体方式)の耐二酸化イオン被毒対策用にも応用できることは言うまでもない。
【0070】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明のガス選択透過板の製造方法によれば、次の効果が得られる。
【0071】請求項1記載の発明によれば、気孔率が大きく平均細孔径が0.1μmと大きい多孔質基板を、少ない処理回数のジルコニア系コーテング材で被覆している。そのため、気孔率が大きく平均細孔径が0.1μm弱と大きいガス選択透過板が簡単に得られ、このガス選択透過板は二酸化イオウガスの通過をブロックし一酸化炭素や酸素などのガスは良好に通過させることができる。しかも、多孔質基板は、固体電解質型一酸化炭素センサで用いられるジルコニウム系酸素イオン導電性固体電解質と同じ熱膨張係数を有し、1100℃前後で起る相転移を防止し相転移に伴う体積膨張が起らないようにしている。そのため、このガス選択透過板をこれらセンサの部品に使用しても、熱膨張係数が同じであるため割れやクラック発生が生じることがなく、簡単な製法で早いセンサ応答性と優れた耐二酸化イオウ被毒性のセンサを得ることができる。しかも、ジルコニアを主成分とするコーテング材は、耐湿性に優れるため、燃焼排ガス中などの高湿度雰囲気でも長期間使用できる。
【0072】請求項2記載の発明によれば、ジルコニウム系多孔質基板は酸化イットリウムが2〜4モル%含有されることで、強度が優れる特性を示し、しかもジルコニアのコーテング材との密着性に優れている。そのため、一層耐久性の優れたガス選択透過板を得ることができる。
【0073】請求項3記載の発明によれば、コーテング材は基板への付着力の強いシリカが残部に混合されているため、二酸化イオウとの親和性が一層優れしかも狭められる量が一層大きいコーテング材が得られ、二酸化イオウをさらに通過させにくくして、より簡単な製法で耐久性がさらに優れたガス選択透過板を得ることができる。
【0074】請求項4記載の発明によれば、コーテング材が塩基性であるため二酸化イオウとの親和性が一層優れて通過させにくくして、一層簡単な製法で耐久性の優れたガス選択透過板を得ることができる。




 

 


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