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発明の名称 同調スロッシングダンパ
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−32878(P2001−32878A)
公開日 平成13年2月6日(2001.2.6)
出願番号 特願平11−203897
出願日 平成11年7月16日(1999.7.16)
代理人 【識別番号】100080034
【弁理士】
【氏名又は名称】原 謙三
【テーマコード(参考)】
3J048
3J069
【Fターム(参考)】
3J048 AA07 AB08 BE03 BE20 CB22 EA38 
3J069 AA34 BB03 DD25 EE63
発明者 福田 武人 / 大島 信生 / 阪本 大介
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】電界の変化に応じて見かけの粘性が変化する電気粘性流体が内部に収容された容器と、上記容器内の電気粘性流体に、制振すべき構造物の固有振動数に応じた電界を印加する電界印加手段とを備えていることを特徴とする同調スロッシングダンパ。
【請求項2】上記電界印加手段は、上記電気粘性流体に、上記容器内において動揺する電気粘性流体の体積を変更するように電界を印加することを特徴とする請求項1記載の同調スロッシングダンパ。
【請求項3】上記電界印加手段は、上記容器の振動方向端部の電気粘性流体に電界を印加するように設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の同調スロッシングダンパ。
【請求項4】上記電気粘性流体が分散系の電気粘性流体であり、上記電界印加手段は、上記電気粘性流体に、該電気粘性流体が固体としての挙動を示す上記電気粘性流体のせん断応力以上の降伏せん断応力を生じさせる強さの電界を印加することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の同調スロッシングダンパ。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高層ビル等、小さな固有振動数を有する構造物に対して、その固有振動数と同調スロッシングダンパの固有振動数とを同調させることにより、該構造物の制振に用いられる、電気粘性流体を用いた同調スロッシングダンパに関するものであり、特に、固有振動数が変化する構造物に対しても効果的な制振が可能である同調スロッシングダンパに関するものである。
【0002】
【従来の技術】自由表面を有する流体が流体貯蔵槽内で動揺する現象をスロッシング(Sloshing:液面動揺)といい、構造物の制振を行う動吸振器ダンパの1つに、このスロッシングを利用する同調スロッシングダンパ(TSD:Tuned Sloshing Damper)が知られている。
【0003】TSDとは、構造物の固有振動数とスロッシング固有振動数とを同調させることにより制振効果を得るものであり、より詳しくは、ある主振動系構造物に設置したタンク(流体貯蔵槽)内の液体のスロッシング周期を主振動系構造物の基本周期に同調させることにより、タンク側壁に働く流体力によって主振動系に対し制振効果を得ることができるものである。
【0004】タンク内の液体のスロッシングと主振動系構造物の基本周期とが同調するとスロッシング振幅が増加し、位相のずれが生じ、タンク内壁面に振動を抑制する方向の流体力が作用し、制振効果が得られる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来、TSDの液体(作動流体)としては、その安全性、安定性から、一般的に水が用いられている。このようなTSDのスロッシング固有振動数は、一般に、タンク長と液位により決定される。このため、構造物の固有振動数が不変であればその同調設計は容易であるが、クレーンやゴンドラ等、構造物の振動特性、即ち、固有振動数が変化する構造物に対しては、十分な制振効果を得ることはできない。
【0006】また、従来、減衰および周期の調節のために、摩擦のための棒や減衰ネット等を設置したり、液体に高粘性流体や磁性流体を使用する等の種々の試みもなされてはいるが、何れにしても、従来のTSDは、タンク内の液体のスロッシングと主振動系構造物の基本周期とが同調するように、その液量や、棒・減衰ネット等の数およびそれらの配置等が予め設定されており、主振動系構造物の基本周期に対し、一定のスロッシング周期を有している。このため、固有振動数が変化する構造物に対しては、その固有振動数が、初期の固有振動数から変化すると、該構造物の基本周期に対するスロッシング周期のずれが生じ、十分な制振効果を得ることができない。また、固有振動数が変化する度にその減衰同調のための微調整を行ってその同調を図ることは非常に困難である。このため、上記従来のTSDは、その使用範囲が制限されるものであった。
【0007】そこで、クレーンやゴンドラ等のように固有振動数の変化する構造物に対しても効果的である使用範囲の広い同調スロッシングダンパが求められている。本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、主振動系の周期に応じてスロッシングの周期を変更して同調させることで、スロッシング固有振動数を変化させ、固有振動数の変化する構造物に対しても最適な制振を得ることができる使用範囲の広い同調スロッシングダンパを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本願発明者等は、上記従来の課題を解決すべく、鋭意検討した結果、同調スロッシングダンパの流体に電気粘性流体を用い、電界を印加し、粘度を変化させて主振動系の周期にスロッシングの周期を同調させることで、固有振動数の変化する構造物に対しても最適な制振を得ることができることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0009】即ち、本発明の同調スロッシングダンパは、上記の課題を解決するために、電界の変化に応じて見かけの粘性が変化する電気粘性流体が内部に収容された容器(例えば矩形タンク等の流体貯蔵槽)と、上記容器内の電気粘性流体に、制振すべき構造物の固有振動数に応じた電界を印加する電界印加手段(電極)とを備えていることを特徴としている。
【0010】上記の構成によれば、上記電気粘性流体に電界を印加することにより、上記電界印加手段により電界が印加された電気粘性流体の見かけの粘性を変化させることができる。これにより、スロッシング周期が変わり、同調スロッシングダンパの固有振動数を変化させることができることから、電気粘性流体に電界を印加させてスロッシング固有振動数を制御し、該スロッシング固有振動数を構造物の固有振動数と一致させることにより、固有振動数の変化する構造物に対しても効果的な制振効果を得ることができる。
【0011】また、本発明の同調スロッシングダンパは、上記の課題を解決するために、上記電界印加手段は、上記電気粘性流体に、上記容器内において動揺する電気粘性流体の体積を変更するように電界を印加することを特徴としている。
【0012】さらに、本発明の同調スロッシングダンパは、上記の課題を解決するために、上記電界印加手段は、上記容器の振動方向端部の電気粘性流体に電界を印加するように設けられていることを特徴としている。
【0013】同調スロッシングダンパのスロッシング固有振動数は、上記容器内において動揺する電気粘性流体の体積を変更することで変更することができる。上記容器内において動揺する電気粘性流体の体積は、上記電気粘性流体に電界を印加し、容器の見かけの長さ(ストローク長)や、上記容器内の電気粘性流体の見かけの液位を変更することにより変更することができる。例えば上記電界印加手段が、上記容器の振動方向端部の電気粘性流体に電界を印加するように設けられていることで、上記容器の見かけの長さ(ストローク長)を変更することができる。このように、上記容器の見かけの長さ(ストローク長)を変更したり、上記容器内の電気粘性流体の液位を変更し、上記容器内において動揺する電気粘性流体の体積を変更することで、単に容器内全体の電気粘性流体の見かけの粘性、即ち、容器内において揺動する電気粘性流体の見かけの粘性を変化させる場合と比較して、容易かつ大幅にスロッシング固有振動数を変更することができ、特に効果的な制振効果を得ることができる。
【0014】また、本発明の同調スロッシングダンパは、上記の課題を解決するために、上記電気粘性流体が分散系の電気粘性流体であり、上記電界印加手段は、上記電気粘性流体に、該電気粘性流体が固体としての挙動を示す上記電気粘性流体のせん断応力以上の降伏せん断応力を生じさせる強さの電界を印加することを特徴としている。
【0015】上記電気粘性流体が分散系の電気粘性流体であり、上記電気粘性流体に、該電気粘性流体が固体としての挙動を示す上記電気粘性流体のせん断応力以上の降伏せん断応力を生じさせる強さの電界を印加すると、該電気粘性流体は、固体としての挙動を示し、上記容器内において動揺する電気粘性流体の体積制御、特に、上述したように、上記容器の見かけの長さ(ストローク長)の変更や上記容器内の電気粘性流体の見かけの液位の変更を、容易かつ確実に行うことができる。
【0016】
【発明の実施の形態】〔実施の形態1〕本発明の実施の形態について図1ないし図23に基づいて説明すれば、以下の通りである。本発明は、同調スロッシングダンパ(Tuned Sloshing Damper :以下、TSDと記す)の液体(作動流体)に電気粘性流体(Electro Rheological fluid :以下、ER流体と記す)を使用し、該ER流体に電界を印加し、見かけの粘性を変化させることにより、主振動系の周期にスロッシングの周期を同調させることで、最適な制振を図るものである。以後、このTSDをER−TSDと記す。
【0017】ここで、TSDの液体にER流体を用いた場合のタンク(容器)内のER流体の液位並びにタンクのストローク長によるスロッシング固有振動数の変化について以下に説明する。
【0018】タンク内の液体のスロッシング固有振動数は、通常、同じ外力を与えた場合においても、その容器の形状や液位によって変化する。一般に、矩形タンクにおいて液体のスロッシングが定在波であるとするならば、その固有振動数はホスナー(Housner) の理論式により、次式【0019】
【数1】

【0020】で表される。
【0021】本実施の形態では、1次モードのみを考えればよいので、上記矩形タンク内の液体の固有振動数は、【0022】
【数2】

【0023】となる。但し、lはストローク長、hは液位、nはモードである。
【0024】しかしながら、ホスナーの理論式は一般的に液体として水を用いたものであるため、液体の粘性はほとんど無いものとして扱われている。そのため、液体と矩形タンク壁面との摩擦は無いものとして考えられている。
【0025】そこで、TSDの液体にER流体を用いた場合のER流体のスロッシング固有振動数の依存性を、図3に示すスロッシング振幅測定装置を用いて調べた。
【0026】図3は、液位の変化による振動数応答の測定に用いたスロッシング振幅測定装置の概略構成図である。該スロッシング振幅測定装置は、内部にER流体2が収容された矩形タンク1(容器)を、構造物に見立てた加振台11上に、該矩形タンク1の長手方向が、図中、矢印で示す振動方向と一致するように設置し、該加振台11によって矩形タンク1内のER流体2に振動を与えたときの該ER流体2のスロッシングの振幅を、上記加振台11上に設置された、非接触型のレーザ変位ピックアップを備えたレーザ変位計12並びに該レーザ変位計12に接続されたFFT(Fast Fourier Transform)分析器13で計測するようになっている。上記加振台11は、図示しないアクチュエータにより、任意の周波数・振幅の水平振動を与えることができる。
【0027】本測定では、上記矩形タンク1として、タンク長(ストローク長:l)120mm、幅10mm、高さ50mmの矩形タンクを用いて、ER流体2の液位が10mm、15mm、20mmの場合について、周波数(加振台11による加振周波数)を0.2Hzから2.5Hzまで変化させたときのスロッシングの振幅を、上記レーザ変位計12並びにFFT分析器13により測定した。
【0028】但し、矩形タンク1の側面、即ち、ER流体2の波動方向である矩形タンク1の長手方向の壁面1a・1bでは表面張力によるスロッシング乱れが生じるため、レーザ変位計12の測定位置は、矩形タンク1の長手方向の壁面1a・1bから3mmのところとし、短手方向の壁面1c・1dに対しては、その中間位置とした。また、上記ER流体2には、「TX−ER2128」(商品名;株式会社日本触媒製、分散粒子密度(ρp )=1.6g/cm3 、分散媒密度(ρ1 )=1.6g/cm3 )を使用した。この結果を図4に示す。図4は、各液位において、周波数(加振台11による加振周波数)を0.2Hzから2.5Hzまで、0.1Hzずつ変化させたときの振幅応答を示すグラフである。
【0029】図4から、スロッシングの振幅は、液位が増えるに従って大きくなっていく傾向があり、また、そのスロッシングの振幅のピークが、液位が増えるに従って、高周波数側に移動していく傾向があることが判る。
【0030】このとき、液体の変位が最大となるときの振動数をスロッシング固有振動数とし、この液位の変化によるスロッシング固有振動数を、ホスナーの理論式による値と比較したものを図5に示す。つまり、図5では、ER流体2の液位が10mm、15mm、20mm、矩形タンク1のストローク長:lが120mmのときのスロッシング固有振動数測定値を、TSDの矩形タンクのストローク長:lを120mmとしたときにホスナーの理論式に基づいて得られる固有振動数理論値と比較したものである。
【0031】図5から判るように、ER流体2の液位が、ストローク長と液位との比(アスペクト比)から見て比較的浅い場合、測定値は理論値を下回る傾向にはあるが、これはER流体2と矩形タンク1壁面1c・1dとの接触の割合が多く、矩形タンク1壁面1c・1dに対する抵抗が大きくなったためである。また、上記の測定では、スロッシング液面の液位の変化を測定し、その液位が最大となったときの振動数をスロッシング固有振動数とするが、上述したように、各液位に対する振幅応答は、周波数0.1Hz毎に測定しているため、その測定誤差を考慮すれば、液位が深いか浅いかに拘らず、ER流体2のスロッシング固有振動数測定値とホスナーの理論式による固有振動数とはほぼ一致している。
【0032】従って、TSDの液体としてER流体2を使用した場合、矩形タンク1におけるER流体2のスロッシング固有振動数は、ホスナーの理論式に従い、液位とストローク長(矩形タンク1のタンク長)にのみ大きく依存することが判る。即ち、TSDの液体としてER流体2を使用した場合、矩形タンク1におけるER流体2のスロッシング固有振動数は、上記矩形タンク1内において動揺するER流体2の体積に大きく依存する。
【0033】よって、本実施の形態において、上記の矩形タンク1を構造物の制振のためのER−TSDとして使用する場合、予め制振の対象となる構造物の固有振動数に矩形タンク1の固有振動数が同調するように矩形タンク1を設計すればよい。
【0034】以下、先ず、上記ER流体2を用いてストローク長を変更することによりスロッシング固有振動数を変化させるER−TSDおよびそれを用いた制振方法について説明する。
【0035】本実施の形態にかかるER−TSDは、図1に示すように、ストローク制御型タンクとして、内部にER流体2が収容された矩形タンク1(容器)と、該矩形タンク1を挟んで、該矩形タンク1の短手方向壁面1c・1dにおける振動方向(ER流体2の波動方向)端部に、互いに対面して設けられ、上記矩形タンク1内のER流体2に電界を印加する対の電極板3a・3b(電界印加手段(電極))とを備えている。これにより、上記ER流体2への電界の印加は、上記矩形タンク1の振動方向に対して、垂直方向に印加される。上記電極板3a・3b間への電界の印加は、該電極3a・3b間に電界を印加するための電源を備えた高速電圧増幅器14(電界印加手段(電圧供給手段))により行われる。
【0036】上記ER流体2は、上記電極板3a・3b間に印加された電界の変化に応じて見かけの粘性が変化し、いわゆるビンガム(Bingham) 流体の挙動を示す分散系のER流体であり、電界が印加されている状態においては、電気粘性効果を示し、ニュートン粘性からビンガム塑性となる物性を有している。上記電気粘性効果とは、電界の印加により、流体の粘度が上昇する性質である。このように電界の印加により粘性(粘度)が変化することを見かけの粘性(見かけの粘度)が変化するといい、このように電界印加により変化する電界印加時のER流体の粘性(粘度)を見かけの粘性(粘度)と記す。また、ビンガム塑性とは、所定のせん断応力値(降伏せん断応力値)に達するまでは、流体が固体と同様の挙動(以下、この現象を固化と記す場合もある)を示し、上記降伏せん断応力値を超えたせん断応力値が加わると、流体は流動して、加わったせん断応力値の増加に比例してせん断速度が上昇する物性を有するものである。分散系ER流体2の降伏せん断応力とは、上記電極板3a・3b間に電界を印加することにより、電場下で、分極した粒子(分散粒子)がつくるクラスターと呼ばれる鎖状構造を切断するのに必要な応力であり、上記の矩形タンク1においては、上記電極板3a・3b間に電界を印加することにより、これら電極板3a・3bに挟まれた部分のER流体2の粘度を上昇させることができる。
【0037】上記ER流体2は、上記各電極板3a・3b間に印加された電界の変化に応じて見かけの粘性が変化するER流体であれば、特に限定されるものではない。上記ER流体2としては、例えば、シリコン油等の電気絶縁性油を分散媒として、例えば平均粒径1〜50μmの誘電体粒子を分散相として有しているものを使用することができる。
【0038】ここで、上記ER−TSDの見かけのストローク長減少によるスロッシング固有振動数変化の概念について以下に詳細に説明する。上記ER−TSDでは、上記ER流体2は、上記電極板3a・3b間に電界が印加されていない状態、即ち、図2(a)に示すように、ER流体2に電界が印加されていない状態では流体として作動し、上記矩形タンク1の振動方向である矩形タンク1の長手方向における両壁面1a・1b間において流動(波動)する。即ち、上記矩形タンク1内のER流体2の波動方向の長さ(即ち、矩形タンク1の長手方向の長さ)をlとすると、ER流体2に電界が印加されていない状態では、上記矩形タンク1の見かけのストローク長もlである。
【0039】この状態から、上記矩形タンク1を挟んで矩形タンク1の一端に設けられた電極板3a・3b間に、電界、特に、上記ER流体2が固体としての挙動を示す上記ER流体2のせん断応力以上の降伏せん断応力を生じさせる強さの電界を印加すると、各電極3a・3b間のER流体2(図中、斜線部のER流体2)が固体としての挙動を示す。これにより、上記矩形タンク1内でスロッシングを起こすER流体2の体積が減少し、上記矩形タンク1の見かけのストローク長が、lからl' (この場合、電極板3a・3b間のER流体2が完全に固化したとすると、l' =l−電極板3a・3bの幅)に減少することにより、ER流体2のスロッシング固有振動数が、fs からfs ' に変更される。このようにER流体に電界を印加することによりER流体の見かけの粘性が変化し、これによりER流体の流動(波動)距離が変化することを、矩形タンク1の見かけのストローク長(見かけのタンク長)が変化するといい、電界印加時におけるER流体の流動(波動)距離をER−TSDの容器(矩形タンク1)のストローク長(タンク長)として見たときのこのストローク長(タンク長)を特に見かけのストローク長(見かけのタンク長)と記す。
【0040】本実施の形態では、意図的に見かけのストローク長を変更し、スロッシング固有振動数を変化させるために、上記矩形タンク1として、アクリル板からなる、長さ120mm、幅10mm、高さ50mmの矩形タンクを使用し、該矩形タンク1の一方の長手方向端部(側面)から30mmの間の部分に電界が印加できるように、電極板3a・3b(電極)として、各々厚さ2mm、幅(電極幅)30mmの銅板を、該矩形タンク1の短手方向の壁面1c・1dにおける振動方向(ER流体2の波動方向)端部に設けた。
【0041】また、上記ER−TSDは、電極板3a・3bとして用いた厚さ2mmの銅板とER流体2との間に抵抗が生じないように、電極板3a・3bと矩形タンク1とに段差が生じない構造となっている。以下の測定では、上記ER流体2には、前記「TX−ER2128」(商品名;株式会社日本触媒製)を使用した。
【0042】尚、本実施の形態で上記矩形タンク1の幅を10mmと狭くした理由は、電界の印加により形成されるクラスターが電極板3a・3b形成部以外に与える影響を抑えるためである。
【0043】つまり、本実施の形態にかかるER−TSDにおいて、上記矩形タンク1のタンク幅は、該ER−TSDのスロッシング固有振動数には影響しない。しかしながら、タンク幅は、電界の印加によって、電場下で粒子(分散粒子)が形成する数珠状のクラスターに大きな影響を与える。
【0044】図20(a)に示すように、上記ER粒子2のクラスター2aは、印加する電界が弱いと凝集する傾向にあり、印加する電界が強いと、図20(b)に示すように、拡がって電極板3a・3b間以外の部分にも影響を与える。そのため、タンク幅が広ければクラスター2aが電極板3a・3b間以外の部分に与える影響は大きくなる。従って、このクラスター2aの影響を抑えるためには電極板3a・3b間の幅が狭ければよい。本実施の形態において上記矩形タンク1のタンク幅を10mmとした場合、該タンク幅で、例えば400V/mmの電界を印加しても、クラスター2aが電極板3a・3b間以外の部分に形成されることはなかった。
【0045】次に、上記のER−TSDを用いた場合の電界の印加によるスロッシングの振幅の変化について説明する。
【0046】上記スロッシング振幅の測定装置は、図1に示すように、例えば、上記ER−TSDを、構造物に見立てた加振台11上に、該ER−TSDの矩形タンク1の長手方向が、図中、矢印で示す振動方向と一致するように設置し、該加振台11によって矩形タンク1内のER流体2に振動を与えたときの振幅、即ち、該ER流体2のスロッシング振幅を、上記加振台11上に設置された、非接触型のレーザ変位ピックアップを備えたレーザ変位計12並びに該レーザ変位計12に接続されたFFT分析器13で計測するようになっている。
【0047】上記スロッシング振幅の測定は、上記のER−TSDを用いて、電極板3a・3b間に、各々、0V/mm、100V/mm、200V/mm、300V/mm、400V/mmの電界を印加した場合について、各々、周波数(加振台11による加振周波数)を0.2Hzから2.7Hz前後まで変化させたときのスロッシング振幅応答を、上記レーザ変位計12並びにFFT分析器13により測定することで行った。該レーザ変位計12の測定位置は、ER流体2の波動方向である矩形タンク1の長手方向の壁面1a・1bでは表面張力によるスロッシングの乱れが起こるので、該壁面1a・1bから3mmのところとした。また、短手方向の壁面1c・1dに対しては、その中間位置とした。
【0048】上記スロッシング振幅の測定を、ER流体2の液位が10mm、15mm、20mmの各々の場合について行った。ER流体2の液位が10mmの場合における電界の印加並びに周波数変化によるスロッシング振幅応答を図6に、ER流体2の液位が15mmの場合における電界の印加並びに周波数変化によるスロッシング振幅応答を図7に、ER流体2の液位が20mmの場合における電界の印加並びに周波数変化によるスロッシング振幅応答を図8に示す。
【0049】上記の測定の結果、図7に示すように、ER流体2の液位が15mmの場合、電界の印加によるスロッシング振幅の減少が観察された。また、上記の測定の結果、図6〜図8に示すように、ER流体2の液位が、10mm、15mm、20mmの何れの場合であっても、電界の印加によりスロッシング振幅のピークは高周波数側に移動していく傾向があることが判った。このことから、ER流体2の液位に拘らず、電界の印加により、スロッシング固有振動数が変化することが判る。つまり、スロッシング固有振動数とは、スロッシング振幅が最大となるときの固有振動数を言い、図6〜図8の何れの場合にも、電界を印加することにより見かけのタンク長(矩形タンク1の見かけのストローク長)減少によるスロッシング固有振動数の増加が見られた。
【0050】図9に、各液位における電界の印加による固有振動数変化を示す。図9、並びに、図6、図8から判るように、ER流体2の液位が10mm、20mmの場合には、印加電界を0V/mmから100V/mmに上げたときにスロッシング固有振動数は大幅に増加し、それ以降、印加電界を100V/mmから200V/mm、300V/mm、400V/mmに上げても、スロッシング固有振動数の大幅な増加は見られなかった。
【0051】一方、図9および図7から判るように、ER流体2の液位が15mmの場合には、印加電界を0V/mmから100V/mmに上げたときのスロッシング固有振動数の増加は極僅かであったが、それ以降、印加電界を100V/mmから200V/mm、300V/mm、400V/mmに上げることで、スロッシング固有振動数の大幅な増加が見られた。これは、ER流体2の固化の程度に起因する。ER流体2が完全に固化することで、スロッシング固有振動数は大幅に増加する。
【0052】そこで、電界の強弱に関係なく、電界の印加時におけるスロッシング固有振動数を、印加電界値200V/mm、300V/mm、400V/mmのときのスロッシング固有振動数の平均とすると、電界の印加により、スロッシング固有振動数が、ER流体2の液位が10mmの場合には1.15Hzから1.78Hzに増加し、ER流体2の液位が15mmの場合には1.5Hzから2.03Hzに増加し、ER流体2の液位が20mmの場合には1.7Hzから2.28Hzに増加したことになる。
【0053】この電界の印加による変化は、矩形タンク1内に収容されたER流体2における幅30mmの電極板3a・3b間部分が完全に固化したとすると、タンク長が120mmから90mmに変わった変化と同等である。
【0054】そこで、タンク長変化を考慮し、ホスナーの理論式を用いて求めた理論値(計算値)と上記の測定値との比較を行った。この結果を図10に示す。該図において、「▲」は、上記ER−TSDを用いた、液位20mm、印加電界値0V/mm(電界印加なし)のときのスロッシング固有振動数(1.7Hz)を示し、印加電界値0V/mmにおいては、ER流体2は流体として作動するため、矩形タンク1のタンク長(ストローク長)は、120mmのままである。また、「△」は、上記ER−TSDを用いた、液位20mm、電界印加時のスロッシング固有振動数の平均値(2.28Hz)であり、上記ER−TSDにおける電極板3a・3b間部分のER流体2が完全に固化したものと考え、見かけのタンク長を90mmとしてプロットしたものである。同様に、「■」は、上記ER−TSDを用いた、液位15mm、印加電界値0V/mmのときのスロッシング固有振動数(1.5Hz)、「□」は、上記ER−TSDを用いた、液位15mm、電界印加時のスロッシング固有振動数の平均値(2.03Hz)、「●」は、上記ER−TSDを用いた、液位10mm、印加電界値0V/mmのときのスロッシング固有振動数(1.15Hz)、「○」は、上記ER−TSDを用いた、液位10mm、電界印加時のスロッシング固有振動数の平均値(1.78Hz)を、各々、タンク長を考慮してプロットしたものである。また、「・」は、各々、ホスナーの理論式を用いて求めた、液位20mm、15mm、10mmにおけるタンク長(ストローク長)変化によるスロッシング固有振動数の理論値の変化を示す。
【0055】この結果、液位が10mmと、ストローク長と液位との比(アスペクト比)から見て浅い場合については、前記図5に示す結果と同様、多少のずれがあるが、液位が15mm、20mmの場合に関しては、理論値と測定値とはほぼ一致した。以上のことから、本実施の形態にかかるER−TSDを用いれば、電界の印加によりスロッシング固有振動数を変化させることが可能となり、また、そのスロッシング固有振動数値は、見かけのタンク長(ストローク長)を考慮した上で、ホスナーの理論式により求めることができることが判る。これにより得られる、液位(h)変化によるスロッシング固有振動数応答の一例と、タンク長(ストローク長:l)変化によるスロッシング固有振動数応答の一例とを図21(a)・(b)に示す。上記ER−TSDを設計する際には、該図21(a)・(b)に示すタンク長(ストローク長:l)と液位(h)との関係を考慮して設計すればよい。
【0056】次に、上記ER−TSDによる制振効果について以下に説明する。構造物がER−TSDの効果によって最適な制振を得るためには、該ER−TSDのスロッシング固有振動数と構造物の固有振動数とを一致させる必要がある。本実施の形態によれば、先に検証した上記ER−TSDへの電界の印加によるスロッシング固有振動数の制御方法により、ER−TSDのスロッシング固有振動数と構造物の固有振動数との間に差がある場合においても、最適な制振効果を得ることができる。
【0057】上述したように、上記ER−TSDのスロッシング固有振動数は、タンク長、即ち、上記矩形タンク1の見かけのストローク長と、液位とによって決定され、上記ER−TSDのスロッシング固有振動数は、液位一定の場合、矩形タンク1の一端に配した電極板3a・3bにより、該矩形タンク1内に収容されたER流体2に電界を印加し、電極板3a・3b間のER流体2を固化させることにより、変更することができる。
【0058】そこで、両サイドがばねで繋がれた台車からなる構造物を用いて、自由振動による振動波形と、定常加振による振幅応答とをレーザ変位計により測定し、加振振幅との比を観察することにより、構造物の固有振動数が変化したときの電界の印加の有無による制振効果を測定した。
【0059】この測定において制振装置として用いたER−TSDの概略構成を図11に示す。本測定で用いたER−TSDは、該図に示すように、図1に示すER−TSD、即ち、内部にER流体2を収容し、電極板3a・3bが設けられた矩形タンク1・1を、スロッシングが起きた際の、ER流体2の、電極板3a・3b非形成側の壁面1aへの衝突と電極板3a・3b形成面側の壁面1bとの衝突の対称性を考慮して、電極板3a・3b形成部が左右対象になるように平行に2槽並べたものである。
【0060】本測定では、上記矩形タンク1としては、アクリル板からなる、長さ120mm、幅10mm、高さ50mmの矩形タンクを使用し、該矩形タンク1の一方の側面(長手方向端部)から30mmの間の部分に電界が印加できるように、電極板3a・3bとして、各々厚さ2mm、幅(電極幅)30mmの銅板を設けた。また、各矩形タンク1は、電極板3a・3bとして用いた厚さ2mmの銅板とER流体2との間に抵抗が生じないように、電極板3a・3bと矩形タンク1とに段差が生じない構造となっており、該電極板3a・3b間に400V/mmの電界を印加することにより、見かけのストローク長(タンク長)は120mmから90mmに変化するものとする。さらに、上記ER流体2には、前記「TX−ER2128」(商品名;株式会社日本触媒製)を使用した。
【0061】尚、液位は、制振すべき構造物の固有振動数、質量により、ストローク長と液位の比(アスペクト比)により必然的に決定される。本測定においては、スロッシング固有振動数が1.4Hzとなるように上記ER流体2の液位を設定した。このときのER流体2の液位はほぼ15mmであった。
【0062】また、上記電極板3a・3bが設けられた矩形タンク1の質量は367gであり、ER流体2の質量は33gである。ここで上記ER流体2の質量(33g)は、図12に示す構造物21の質量の約1%である。上記ER−TSDにおけるスロッシング固有振動数は、電界を印加していない状態で1.4Hzであり、400V/mmの電界の印加により、2.1Hzに変化させることができる。
【0063】また、本測定に用いた、制振の対象となる構造物の概略構成を図12に示す。図12は、上記制振効果の測定に用いた測定装置の概略構成図であり、本測定では、制振の対象となる構造物21として、両サイドがばね23…で加振台24と接続され、該構造物21を載置した台車22および上記加振台24に設けられたシリンダ25・25により振動可能に設けられた質量−ばねモデルの質量を用いた。尚、上記加振台24は、図示しないアクチュエータにより、任意の周波数・振幅の水平振動を与えることができる。
【0064】本測定に用いられる測定装置は、この構造物21上に、図11に示すER−TSDを、該ER−TSDの矩形タンク1・1の長手方向が、図中、矢印で示す構造物21の振動方向と一致するように設置したものであり、上記構造物21並びに加振台24の振幅を、非接触型のレーザ変位ピックアップS1 ・S2 を備えたレーザ変位計15・16並びにこれらレーザ変位計15・16に接続されたFFT分析器13で計測することにより、上記構造物21の固有振動数変化を調べるようになっている。
【0065】この構造物21は、該構造物21の両サイドに繋がれたばね23…の本数を変えることでばね定数を変化させることで、その固有振動数を自由に設定することができるようになっている。また、質量−ばねモデルの質量として用いた構造物21の質量は4kgである。尚、台車22は、構造物21の質量と比較して極めて小さく、その質量は無視することができる。このときのばね23の本数と構造物21の固有振動数との関係を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】このように、上記の構造物21は、そのばね23の本数により、固有振動数を1.4Hzから2.1Hzに変化させることができるようになっている。
【0068】以下に、本測定の測定条件並びに測定結果について示す。先ず、上記の測定装置を用いた自由振動波形の測定について説明する。以下の測定では、前述の構造物21を使用し、構造物21の固有振動数が1.4Hzのときと2.1Hzのときの各々の場合について、一定の初期変位(15mm)を与えたときの構造物21の自由振動波形を、以下の(a)〜(c)、即ち、(a)ER−TSDを設置せず、上記ER−TSDと同質量のおもり(Mass)を載せる、(b)上記のER−TSDを設置するが、電界は印加しない、(c)上記のER−TSDを設置し、400V/mmの電界を印加する、の3パターンについて測定した。
【0069】構造物21の固有振動数をfa とすると、fa =1.4Hzのときの自由振動波形図を図13(a)〜(c)に示す。また、fa =2.1Hzのときの自由振動波形図を、図14(a)〜(c)に示す。これら各分図は、上記の(a)〜(c)に各々対応している。
【0070】図13(a)〜(c)および図14(a)〜(c)より、構造物21の固有振動数が1.4Hzの場合にも2.1Hzの場合にも、上記ER−TSDの設置により収束が速くなっていることがわかる。このことから、上記ER−TSDの構造物21に対する制振装置としての制振効果が確認できる。
【0071】また、電界の印加が及ぼす影響として、図13(a)〜(c)より、fa =1.4Hzのとき、同じER−TSDを設置した場合でも、電界を印加しないとき(図13(b))の方が電界を印加したとき(図13(c))より効果的に振動が減衰しており、電界を印加しないとき(図13(b))、最も速く収束することが判る。これは、構造物21の固有振動数(1.4Hz)と電界を印加していない状態での上記ER−TSDのER流体2のスロッシング固有振動数(1.4Hz)とが一致していることから、上記構造物21上に設置した矩形タンク1内のER流体2のスロッシング周期を構造物21の基本周期に同調させることができたためである。
【0072】一方、図14(a)〜(c)より、fa =2.1Hzのときには、400V/mmの電界を印加したときに最も効果的に振動が減衰することが判る。これは、上記(b)の場合、即ち、上記のER−TSDを設置するが、電界を印加していない状態では、構造物21の固有振動数(2.1Hz)と上記ER流体2のスロッシング固有振動数(1.4Hz)との間にずれが生じているため、同調が図れていないのに対し、上記ER−TSDに400V/mmの電界を印加することで、該ER−TSDのER流体2の固有振動数を2.1Hzに変化させ、fa =1.4Hzの場合とは逆に、上記ER−TSDに電界を印加することで、構造物21の固有振動数(2.1Hz)と上記ER−TSDのER流体2のスロッシング固有振動数(2.1Hz)とを一致させることができるためである。
【0073】次に、上記の測定装置を用いた、定常加振による振幅応答の測定について説明する。以下の測定では、前述の構造物21を使用し、加振力を一定としたときの周波数変化による構造物21の振幅応答と加振台24の振幅応答との振幅比(振幅応答比)を求めた。周波数(加振台24による加振周波数)は、0.2Hzから2.7Hzまで変化させるものとし、このときの構造物21の振幅応答を、該構造物21の固有振動数が1.4Hzのときと2.1Hzのときの各々の場合について、以下の(a)〜(c)、即ち、(a)ER−TSDを設置せず、上記ER−TSDと同質量のおもり(Mass)を載せる、(b)上記のER−TSDを設置するが、電界は印加しない、(c)上記のER−TSDを設置し、400V/mmの電界を印加する、の3パターンについて、非接触型のレーザ変位ピックアップS1 を備えたレーザ変位計15により測定する一方、このときの加振台24の振幅応答を、非接触型のレーザ変位ピックアップS2 を備えたレーザ変位計16により測定し、その振幅応答比を観察した。
【0074】構造物21の固有振動数をfa とすると、fa =1.4Hzのときの周波数変化による上記振幅比(振幅応答比)曲線を図15(a)に示す。また、fa =2.1Hzのときの周波数変化による上記振幅比(振幅応答比)曲線を、図15(b)に示す。
【0075】図15(a)・(b)より、構造物21の固有振動数が1.4Hzの場合にも2.1Hzの場合にも、上記ER−TSDの設置(付加)により、ER−TSDを設置していないときよりも上記振幅比が50%ほど減少している。このことから、上記ER−TSDの構造物21に対する制振装置としての制振効果が確認できる。
【0076】また、電界の印加が及ぼす影響として、図15(a)より、fa =1.4Hzのときには、同じER−TSDを設置した場合でも、電界を印加していない状態(スロッシングの固有振動数が1.4Hz)の方が電界を印加したときよりも制振効果が高いことが判る。一方、図15(b)より、fa =2.1Hzのときには、400V/mmの電界を印加した状態(スロッシングの固有振動数が2.1Hz)の方が、電界を印加しない場合よりも制振効果が高いことが判る。これは、fa =1.4Hzの場合には、電界を印加しないことでER−TSDのスロッシング固有振動数が、構造物21の固有振動数と同調し、fa =2.1Hzのときには、電界を印加することにより、ER−TSDのスロッシング固有振動数と構造物21の固有振動数とを同調させることができたため、よりよい制振効果が得られたものである。
【0077】次に、図16に示す測定装置を用いて、自由振動による振動波形と、定常加振による振幅応答との測定を行った結果について説明する。
【0078】図16に示す測定装置は、構造物21が、その両サイドにおいて、ばね23・23で加振台24と接続され、該構造物21を載置した台車22および加振台24に設けられたシリンダ25により振動可能に設けられた構造物21上に、図11に示すER−TSDが、該ER−TSDの矩形タンク1・1の長手方向が、図中、矢印で示す構造物21の振動方向と一致するように設置したものであり、上記構造物21並びに加振台24の振幅を、レーザ変位計15・16並びにFFT分析器13で計測することにより、上記構造物21の固有振動数変化を調べるようになっている。
【0079】つまり、図12に示す質量−ばねモデルでは、構造物21の両サイドにおいてばね23を複数使用し、その使用本数を変えることで構造物21の固有振動数を変化させていた。このような測定装置を使用した場合、構造物21の固有振動数が1.4Hzのときにはバネ定数の値が小さくなり、そのためバネによる復元力が減少し、ER−TSDの設置による減衰力の影響を受けることが考えられる。そこで、本測定では、ER−TSDの設置による減衰力の影響を抑制するため、シリンダ25を1つとし、ばね23の本数を構造物21の両サイドで1本ずつとして該ばね23・23のばね定数を変えることで構造物21の固有振動数を変更する。図16に示す測定装置では、2種類のばね定数の異なったばね23・23を使用することで、構造物21の固有振動数を1.4Hzから2.1Hzに変化させることができる。
【0080】本測定で用いた構造物21の質量は4kgであり、ER−TSDには、図12と同じ条件のER−TSD、即ち、図11に示すER−TSDを使用した。上記ER−TSDにおけるスロッシング固有振動数は、電界を印加していない状態で1.4Hzであり、400V/mmの電界の印加により、2.1Hzに変化させることができる。
【0081】上記の測定装置を用いて、構造物21の固有振動数が1.4Hzのときと2.1Hzのときの各々の場合について、一定の初期変位(15mm)を与えたときの構造物21の自由振動波形を、前記した(a)〜(c)の3パターンについて測定した。
【0082】fa =1.4Hzのときの自由振動波形図を図17(a)〜(c)に示す。また、fa =2.1Hzのときの自由振動波形図を、図18(a)〜(c)に示す。これら各分図は、上記の(a)〜(c)に各々対応している。
【0083】上記の測定においても、図13(a)〜(c)および図14(a)〜(c)と同様、構造物21の固有振動数が1.4Hzの場合にも2.1Hzの場合にも、上記ER−TSDの設置により収束が速くなっていることがわかる。このことから、上記ER−TSDの構造物21に対する制振装置としての制振効果が確認できる。
【0084】また、電界の印加が及ぼす影響として、本測定においても、図17(a)〜(c)に示すように、fa =1.4Hzのとき、電界を印加しないときが最も速く収束している。これは、構造物21の固有振動数と電界を印加していない状態での上記ER−TSDのER流体2のスロッシング固有振動数とが同調しているためである。
【0085】さらに、本測定においても、図18(a)〜(c)に示すように、fa =2.1Hzのときには、上記ER−TSDに400V/mmの電界を印加したときの方が、電界を印加していないときより効果的な減衰が得られた。この結果、上記のER−TSDを設置するが、電界を印加していない状態では、構造物21の固有振動数(2.1Hz)と上記ER流体2のスロッシング固有振動数(1.4Hz)との間にずれが生じているため、同調が図れていないのに対し、上記ER−TSDに400V/mmの電界を印加することで、該ER−TSDのER流体2の固有振動数を2.1Hzに変化させることができ、構造物21の固有振動数と上記ER−TSDのER流体2のスロッシング固有振動数とを同調させることができることが確認できた。
【0086】また、図16に示す測定装置を用いて定常加振による振幅応答の測定を行った結果について以下に説明する。本測定でも、前記定常加振による振幅応答の測定と同様の測定を行った。上記の測定装置を用いて測定した、fa =1.4Hzのときの周波数変化による構造物21と加振台24との上記振幅比(振幅応答比)曲線を図19(a)に示す。また、上記の測定装置を用いて測定した、fa =2.1Hzのときの周波数変化による上記振幅比(振幅応答比)曲線を、図19(b)に示す。
【0087】本測定でも、構造物21の固有振動数が1.4Hzの場合にも2.1Hzの場合にも、上記ER−TSDの設置(付加)により、ER−TSDを設置していないときよりも上記振幅比が50%ほど減少している。このことから、本測定でも、自由振動波形の測定と同様、上記ER−TSDの設置(付加)による制振効果が確認できる。
【0088】また、電界の印加が及ぼす影響として、図19(a)より、fa =1.4Hzのとき、共振点付近での振幅最大値は、電界を印加していない場合、約10mm/mm、電界を印加した場合、約20mm/mmとなり、電界を印加していない状態(スロッシングの固有振動数が1.4Hz)で高い制振効果が得られることが判る。
【0089】一方、fa =2.1Hzのときには、共振点付近での振幅最大値は、電界を印加していない場合28mm/mm、電界を印加した場合20mm/mmとなり、400V/mmの電界を印加した状態(スロッシングの固有振動数が2.1Hz)の方が、電界を印加しない場合よりも高い制振効果が得られた。
【0090】これらのことから、構造物21の固有振動数が1.4Hzから2.1Hzに変化したと考えると、変化前の状態では、ER−TSDそのもののスロッシング固有振動数により同調を図り、固有振動数変化後の状態では、電界の印加によって見かけのタンク長(ストローク長)が変化し、スロッシング固有振動数が変化することによって、構造物21上に設置した矩形タンク1内のER流体2のスロッシング周期を構造物21の基本周期に同調させることができ、該構造物21の制振を図ることができる。
【0091】以上のことから、次のことが判った。つまり、(1)ER流体に電界を印加することによってスロッシング時のER−TSDの見かけのタンク長(ストローク長)を変化させることができ、スロッシング固有振動数の制御が可能である。また、(2)ER流体に電界を印加したときに形成されるクラスターの影響は、電極の間隔を狭めることによって減少させることができ、ER−TSDの見かけのタンク長のより正確な制御が可能となる。(3)ER流体に電界を印加してスロッシング固有振動数を制御し、該スロッシング固有振動数を構造物の固有振動数と一致させることにより、固有振動数が変化する構造物をより効果的に制振することが可能である。
【0092】尚、本実施の形態では、上記矩形タンク1として、アクリル板からなる矩形タンクを用いたが、矩形タンク1の材質が上記ER−TSDの固有振動数に影響を与えることはなく、上記矩形タンク1の材質は、これに限定されるものではない。但し、ER−TSDの役割を考えると、制振しようとする構造物に対してER−TSDの質量が大きくなるとそれだけ構造物自体が重くなり、制振以外の面で無駄が生じるため、ER−TSD自体はできるだけ軽い方がよい。従って、上記矩形タンク1としては、できるだけ軽い材質のものを選択することが望ましい。
【0093】また、本実施の形態では、上記矩形タンク1として、タンク長120mm、幅10mm、高さ50mmの矩形タンクを用いたが、該矩形タンク1を構造物の制振のためのER−TSDとして使用する場合、予め制振の対象となる構造物の固有振動数に矩形タンク1の固有振動数が同調するように上記矩形タンク1を設計すればよく、上記ER−TSDは、これら具体的な数値のみに限定されるものではない。
【0094】また、本実施の形態では、上記ER−TSDの容器として、矩形タンクを用いたが、該容器の形状はこれに限定されるものではなく、内部に充填されたER流体が動揺(波動)可能な形状であればよい。
【0095】また、本実施の形態では、上記電極板3a・3bの幅を、制振すべき構造物の固有振動数にスロッシング固有振動数が一致するように予め設定したが、例えば、電極幅が狭い電極板3a・3bを、複数、重ねて配置し、図23に示すように、例えばレーザ変位計等の、制振すべき構造物の固有振動数の測定が可能な振動検知手段31により、制振すべき構造物の振動を検知し、該振動検知手段31からの検知信号を、コンピュータ等の制御装置32(印加電界制御装置)に取り込み、該検知信号に基づいて、前記ホスナーの理論式に基づいた所定の演算を行うことで、上記構造物の固有振動数とER−TSDのスロッシング固有振動数とが一致する液位またはストローク長となるように、上記演算で得られた本数(幅)の電圧入力側の電極板3b…に、前記した各電極3a・3b間に電界を印加するための電源を備えた前記高速高圧増幅器14等の電界印加手段(電圧供給手段)を制御するための信号を、該高速高圧増幅器14に出力するようにしてもよい。
【0096】但し、予め、定められた固有振動数変化を生じる構造物に対しては、前記したように、上記電極板3a・3bの幅を、制振すべき構造物の固有振動数にスロッシング固有振動数が一致するように予め設定し、例えば振動検知センサ等の振動検知手段31により、振動の有無、即ち、構造物の固有振動数変化を検知し、該検知信号に基づいて、高速高圧増幅器14等の電界印加手段(電圧供給手段)がON/OFFされるようにすることで、上記ER−TSDを用いた制振装置の構成を簡略化することができる。
【0097】また、本実施の形態では、上記ER流体2として、分散系のER流体を使用したが、例えば上記ER−TSDにストローク制御型タンクを用いてストローク長制御を行う場合、ストローク長が変化するものであれば、これに限定されるものではない。即ち、電界印加時における電極板3a・3b間におけるER流体2の粘度が、スロッシングによる流体力に耐え得る粘度を有するものであれば、特に限定されない。
【0098】本願で用いることができるER流体の具体的な組成は、特に限定されるものではないが、例えば上述したストローク制御型タンクにおいては電極板3a・3b間におけるER流体2が固体としての挙動を示すことが望ましく、小さい電界でよく固体としての挙動を示すものが好ましい。
【0099】また、本実施の形態では、主に、ER流体に電界を印加することによってスロッシング時のER−TSDの見かけのタンク長(ストローク長)を変化させることによってスロッシング固有振動数の制御を行う方法について記載したが、上記ER−TSDの固有振動数は、前記説明、並びに、図4、図5、図10等から判るように、ER流体に電界を印加することによってスロッシング時のER−TSDの見かけの液位を変化させることによっても制御することができる。このようにER流体に電界を印加することによってER−TSDの見かけの粘性を変化させ、これにより流動(波動)するER−TSDの液位を実質的に変化させることを見かけの液位を変化させるといい、このときのER−TSDの液位、即ち、電界印加時において流動(波動)するER−TSDの液位を特に見かけの液位と記す。
【0100】液位を変更することでスロッシング固有振動数を制御する際に用いられるER−TSDの一例を図22に示す。該図に示すように、例えば矩形タンク1の短手方向の壁面1c・1dの下端部(底壁側)に電極板3a・3bを形成し、制振すべき構造物の固有振動数の変化に応じて上記電極板3a・3b間に電界を印加し、該矩形タンク1の底壁側のER流体2を固化させ、その液位を変化させることで、固有振動数が変化する構造物を効果的に制振することができる。
【0101】本発明のER流体を用いた上記ER−TSDは、以上のように、TSDの固有振動数を自在に変化させることができる。従って、上記ER−TSDは、一次モードのスロッシングの振動モードに関し、固有振動数が変化する構造物の制振に好適に用いることができる。上記ER−TSDは、例えば、クレーンや、乗る人の数によって固有振動数が変化するスキーのゴンドラ、積んでいる荷の重さにより固有振動数が変化する船、建設中の建築物等の制振に好適である。
【0102】以上のように、本実施の形態によれば、ER流体に電界を印加させてスロッシング固有振動数を制御し、該スロッシング固有振動数を構造物の固有振動数と一致させることにより、固有振動数の変化する構造物に対しても効果的な制振効果を得ることができる。
【0103】ER−TSDのスロッシング固有振動数は、例えば容器の見かけの長さ(ストローク長)を変更することにより変更することができる。従って、本実施の形態によれば、例えば、上記容器の振動方向端部のER流体に電界を印加する電界印加手段を設け、該電界印加手段に、電界、好適には、上記ER流体が固体としての挙動を示す上記ER流体のせん断応力以上の降伏せん断応力を生じさせる強さの電界を印加することで、該電界印加手段により電界が印加されたER流体の見かけの粘性を変化させることができる。これにより、容器の見かけの長さ、即ち、電界印加により、上記容器内において動揺するER流体の体積を容易に変更することができ、ER−TSDの固有振動数を容易に変化させることができる。
【0104】このように、ER流体に電界を印加することにより、制振すべき構造物(制振対象物)の振動周期における時間的な変動に対応し、ER−TSDのスロッシング固有振動数をそれに同調するよう変化させることが可能になる。即ち、ER流体の特性を利用し、制御することで、従来よりも、TSDによる制振の適用範囲をより広範囲なものとすることができる。
【0105】〔実施の形態2〕本発明の実施の形態について図24および図25に基づいて説明すれば、以下の通りである。尚、説明の便宜上、前記実施の形態1と同様の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。本実施の形態では、前記実施の形態1との相違点について説明する。
【0106】前記実施の形態1では、矩形タンク1の一部に電界を印加し、ストローク長あるいは液位を変化させることにより矩形タンク1内において動揺するER流体2の体積を変更してスロッシング固有振動を変化させ、これにより、固有振動数が変化する構造物の制振を行うER−TSDについて説明した。本実施の形態では、ER流体2全体に電界を印加することで、ER流体2の剪断を利用して矩形タンク1内のER流体2全体の見かけの粘性、即ち、矩形タンク1内において動揺するER流体2の見かけの粘性を変化させることによりスロッシング固有振動を変化させるER−TSDについて説明する。
【0107】本実施の形態にかかるER−TSDは、図24に示すように、矩形タンク1の短手方向の壁面1c・1dにおける長手方向端部のみならず、上記矩形タンク1の短手方向の壁面1c・1d全面にわたって電極板3a・3bが形成されている。
【0108】このER−TSDの周波数変化による振幅応答を測定した。該測定には、前記図1と同様の測定装置を使用し、加振振幅を一定として周波数(加振台11による加振周波数)を1.0Hzから2.0Hzまで0.1Hzずつ変化させて水平振動させたときのER−TSDのスロッシング振幅応答をレーザ変位計12並びにFFT分析器13により測定した。本実施の形態では、矩形タンク1として、タンク長140mm、タンク幅60mm、高さ60mmの透明アクリル板製の矩形容器を使用し、電極板3a・3bには、矩形タンク1内部のER流体2全体に電界を印加すべく、幅140mm、厚さ0.2mm、高さ50mmの銅板を使用した。さらに、上記ER流体2としては「TX−ER2128」を使用し、その液位は15mmとした。上記の測定を、上記電極板3bに高速電圧増幅器14より、0V、1000V、2000V、3000V、4000Vの電圧を印加した場合各々について行った。
【0109】図25に、上記ER−TSDの周波数変化による振幅応答を示す。該ER−TSDはER流体2全体に電界を印加しており、1000Vの電圧を印加した時点でスロッシング振幅は急激に減少している。
【0110】また、各電圧値で最大振幅を示す振動数をその条件下でのER−TSDのスロッシング固有振動数とする。該図より判るように、印加電圧値が2000Vまではスロッシング固有振動数にはほとんど変化がないが、3000V、4000Vではスロッシング固有振動数は高周波数側へと変化する。
【0111】このように、本実施の形態によれば、TSDの流体にER流体2を使用し、該ER流体2全体に電界を印加し、その見かけの粘性を変化させることにより、僅かではあるが、スロッシング固有振動数を変化させることができる。また、上記の測定により、各条件下での上記ER−TSDのスロッシング固有振動数が判る。従って、予め、印加電界とスロッシング固有振動数との関係を測定により求め、該関係に基づいて、構造物の固有振動数に応じたスロッシング固有振動数となるように上記ER流体2に電界を印加することにより、固有振動数が変化する構造物に対して、その制振を図ることができる。
【0112】〔実施の形態3〕本発明の実施の形態について図26および図27に基づいて説明すれば、以下の通りである。尚、説明の便宜上、前記実施の形態1と同様の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。本実施の形態では、前記実施の形態1および2との相違点について説明する。
【0113】本実施の形態では、複数対の電極板3a・3bにより、矩形タンク1内のER流体2に部分的に電界を印加し、これによりER液体2の流動に抵抗を持たすことによりスロッシング固有振動を変化させるER−TSDについて説明する。
【0114】本実施の形態にかかるER−TSDは、図26に示すように、矩形タンク1の短手方向壁面1c・1dに、該壁面1c・1dに沿って、矩形タンク1の長手方向に、複数(本実施の形態では、上記各壁面1c・1dに5本ずつ)の電極板3a・3bが所定の間隔を有して設けられている。
【0115】このER−TSDの周波数変化による振幅応答を測定した。該測定には、前記図1と同様の測定装置を使用し、加振振幅を一定として周波数(加振台11による加振周波数)を1.0Hzから2.0Hzまで0.1Hzずつ変化させて水平振動させたときのER−TSDのスロッシング振幅応答をレーザ変位計12並びにFFT分析器13により測定した。本実施の形態では、矩形タンク1として、タンク長140mm、タンク幅60mm、高さ60mmの透明アクリル板製の矩形容器を使用し、電極板3a・3bには、幅6mm、厚さ0.2mmの銅板を使用した。これら電極板3a…・3b…の両端の電極板3a・3a並びに電極板3b・3bは、該矩形タンク1の短手方向の壁面1c・1dにおける各長手方向端部から43mmの位置に設けられ、該矩形タンク1の長手方向に沿って隣り合うこれら各電極板3a・3a間並びに各電極板3b・3b間の距離は6mmとした。さらに、上記ER流体2としては「TX−ER2128」を使用し、その液位は15mmとした。また、本実施の形態では、矩形タンク1内のER流体2に部分的に電界を印加し、これによりER液体2の流動に抵抗を持たすべく、上記矩形タンク1を挟んで互いに対面する対の電極板3a・3bを、図中、左側から順に、■、■、■、■、■とすると、(i) ■のみ、(ii)■と■のみの電極板3a・3b間に電界を印加するものとし、上記の測定を、上記電極板3bに高速電圧増幅器14より、0V、1000V、2000V、3000V、4000Vの電圧を印加した場合各々について行った。
【0116】図27(a)に、上記(i) ■の電極板3a・3b間に電界を印加したときの上記ER−TSDの周波数変化による振幅応答を示す。また、図27(b)に、上記(ii)■と■の電極板3a・3b間に電界を印加したときの上記ER−TSDの周波数変化による振幅応答を示す。
【0117】この結果、何れの場合にも、前記実施の形態2と比較して、電圧値の増加と共に徐々に振幅が減少していることが判った。また、何れの場合も、そのスロッシング固有振動数は、印加電圧値が2000Vまでは0.05Hz程度減少し、3000V、4000Vではさらに低周波数側へと推移している。
【0118】このように、本実施の形態によれば、TSDの流体にER流体2を使用し、該ER流体2に部分的に電界を印加し、これによりER液体2の流動に抵抗を持たすことにより、僅かではあるが、スロッシング固有振動数を変化させることができる。また、上記の測定により、各条件下での上記ER−TSDのスロッシング固有振動数が判る。従って、予め、印加電界とスロッシング固有振動数との関係を測定により求め、該関係に基づいて、構造物の固有振動数に応じたスロッシング固有振動数となるように上記ER流体2に電界を印加することにより、固有振動数が変化する構造物に対して、その制振を図ることができる。
【0119】〔実施の形態4〕本発明の実施の形態について図28および図29に基づいて説明すれば、以下の通りである。尚、説明の便宜上、前記実施の形態1と同様の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。本実施の形態では、前記実施の形態1〜3との相違点について説明する。
【0120】本実施の形態では、複数対の電極板3a・3bにより、矩形タンク1内のER流体2に部分的に電界を印加し、これによりER液体2の流動に抵抗を持たすことによりスロッシング固有振動を変化させるER−TSDに関し、電極板3a・3bの電極幅を細く、電極板3a・3a間並びに電極板3b・3b間の間隔を広くとり、矩形タンク1の短手方向壁面1c・1dに沿って形成された多数対の電極板3a・3に電界を印加する場合について説明する。
【0121】本実施の形態にかかるER−TSDは、図28に示すように、図26に示すER−TSDよりも、電極板3a・3bの電極幅を細く、間隔を広くとってある。本実施の形態では、電極板3a・3bとして、幅1mm、厚さ0.2mmの銅板を使用し、該矩形タンク1の長手方向に沿って隣り合うこれら各電極板3a・3a間並びに各電極板3b・3b間の距離を15mmとし、これら電極板3a…・3b…の両端の電極板3a・3a並びに電極板3b・3bを、該矩形タンク1の短手方向壁面1c・1dにおける各長手方向端部から6.5mmの位置に設け、矩形タンク1に形成したこれら電極板3a…・3b…間に一様に電界を印加すると共に、周波数(加振台11による加振周波数)を1.0Hzから1.5Hzまで0.05Hzずつ変化させた以外は、前記実施の形態3と同様の方法並びに測定装置を用いて、該ER−TSDの周波数変化による振幅応答を測定した。
【0122】図29に、上記ER−TSDの周波数変化による振幅応答を示す。該ER−TSDでも、前記実施の形態2と比較して、電圧値の増加と共に徐々に振幅が減少する傾向にあり、その固有振動数は、印加電圧値が2000Vまで0.05Hzほど減少する。
【0123】このように、本実施の形態によれば、TSDの流体にER流体2を使用し、該ER流体2に部分的に電界を印加し、これによりER液体2の流動に抵抗を持たすことにより、僅かではあるが、スロッシング固有振動数を変化させることができる。また、上記の測定により、各条件下での上記ER−TSDのスロッシング固有振動数が判る。従って、予め、印加電界とスロッシング固有振動数との関係を測定により求め、該関係に基づいて、構造物の固有振動数に応じたスロッシング固有振動数となるように上記ER流体2に電界を印加することにより、固有振動数が変化する構造物に対して、その制振を図ることができる。
【0124】以上、上記実施の形態1〜4から明らかなように、本発明によれば、TSDの流体にER流体を使用し、制振すべき構造物の固有振動数に応じて上記ER流体に電界を印加し、該ER流体を用いたER−TSDのスロッシング固有振動数を、制振すべき構造物の固有振動数に同調するように変化させることで、固有振動数が変化する構造物に対してもその振動を抑制することができる。
【0125】この場合、スロッシング固有振動数は、上述したように液位とストローク長のみに大きく依存することから、矩形タンク1の一部に電界を印加し、見かけのストローク長あるいは液位を変化させる方法は、他の方法、即ち、ER流体に電界を印加し、見かけの粘性を変化させるが、見かけの液位あるいはストローク長を変化させるに至らない場合と比較して、最もスロッシング固有振動数に変化が見られる。従って、上述した方法のなかでも、特に、実施の形態1に示すように、矩形タンク1の一部に電界を印加し、見かけのストローク長あるいは液位を変化させることにより、容易に、しかも、スロッシング固有振動を大幅に変化させることができ、固有振動数が変化する構造物の振動をより効果的に減衰することができる。
【0126】
【発明の効果】本発明の同調スロッシングダンパは、以上のように、電界の変化に応じて見かけの粘性が変化する電気粘性流体が内部に収容された容器と、上記容器内の電気粘性流体に、制振すべき構造物の固有振動数に応じた電界を印加する電界印加手段とを備えている構成である。
【0127】また、本発明の同調スロッシングダンパは、以上のように、上記電界印加手段は、上記電気粘性流体に、上記容器内において動揺する電気粘性流体の体積を変更するように電界を印加する構成である。
【0128】さらに、本発明の同調スロッシングダンパは、以上のように、上記電界印加手段は、上記容器の振動方向端部の電気粘性流体に電界を印加するように設けられている構成である。
【0129】また、本発明の同調スロッシングダンパは、以上のように、上記電気粘性流体が分散系の電気粘性流体であり、上記電界印加手段は、上記電気粘性流体に、該電気粘性流体が固体としての挙動を示す上記電気粘性流体のせん断応力以上の降伏せん断応力を生じさせる強さの電界を印加する構成である。
【0130】上記の構成によれば、上記電気粘性流体に電界を印加することにより、上記電界印加手段により電界が印加された電気粘性流体の見かけの粘性を変化させることができる。これにより、同調スロッシングダンパの固有振動数を変化させることができることから、電気粘性流体に電界を印加させてスロッシング固有振動数を制御し、該スロッシング固有振動数を構造物の固有振動数と一致させることにより、固有振動数の変化する構造物に対しても効果的な制振効果を得ることができるという効果を奏する。




 

 


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