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発明の名称 シールリング
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−165322(P2001−165322A)
公開日 平成13年6月22日(2001.6.22)
出願番号 特願平11−351968
出願日 平成11年12月10日(1999.12.10)
代理人 【識別番号】100085006
【弁理士】
【氏名又は名称】世良 和信 (外1名)
【テーマコード(参考)】
3J043
【Fターム(参考)】
3J043 AA12 BA08 CB13 DA20 
発明者 中岡 真哉 / 江口 信行
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】同心的に相対回転自在に組付けられる2部材の一方の部材に設けられた環状溝に装着されて、該環状溝の非密封流体側の側壁面に摺接されると共に他方の部材に圧接して、これら2部材間の環状隙間をシールするシールリングであって、リング本体には周方向の一ヶ所にて切断された切断部が設けられたシールリングにおいて、前記切断部の一方の切断端部と他方の切断端部とを合わせた際の対向面間に、密封流体側から前記環状溝の非密封流体側の側壁面に向けて密封流体の漏れを許容する流路を備えると共に、該流路は、前記環状溝の側壁面に対する摺接面における環状溝深さ方向全域にわたって開放端を有することを特徴とするシールリング。
【請求項2】前記一方の切断端部には凸部が設けられ、かつ他方の切断端部には該凸部に係合される凹部が設けられると共に、前記凸部の外壁面のうち隣接する2つの外壁面の交わりの角に面取り部を設け、該面取り部と前記凹部の対応する角との間にできる隙間によって前記流路の一部を形成することを特徴とする請求項1に記載のシールリング。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、互いに相対回転自在に設けられた2部材間の環状隙間をシールするためのシールリングに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、この種のシールリングは、たとえば、自動車の自動変速機等の油圧装置に用いられている。
【0003】以下、図6〜図9を参照して、従来技術に係るシールリングについて説明する。図6は従来技術に係るシールリングの平面的模式図であり、図7は従来技術に係るシールリングの装着した状態を示す模式的断面図である。
【0004】また、図8は従来技術に係るシールリングの模式図であり、(a)は模式的一部平面図、(b)は(a)のbb断面図、(c)は(a)のc方向から見た側面図である。図9は従来技術に係るシールリングの切断部(特殊ステップカット)の様子を示す斜視図である。
【0005】図示のシールリング100は、軸孔が設けられたハウジング200と、この軸孔に挿入された軸300との間の環状隙間をシールするためのものであり、軸300に設けられた環状溝301に装着されて使用されるものである。
【0006】シールリング100は樹脂材料から形成されるもので、軸300に設けられた環状溝301の側壁面をシールするための第1シール面101と、ハウジング200に設けられた軸孔の内周面をシールするための第2シール面102と、を備えている。
【0007】そして、密封流体側Oから非密封流体側Aに向けて、図7中矢印P方向に圧力がかかると、シールリング1は非密封流体側Aに押圧されるため、第1シール面101は環状溝301の側壁面を押圧し、また、第2シール面102は環状溝301に対向するハウジング200に設けられた軸孔の内周面を押圧し、それぞれの位置でシールする。
【0008】このようにして、密封流体の非密封流体側Aへの漏れを防止していた。
【0009】ここで、密封流体は、例えば潤滑油であり、特に自動車の変速機に利用される場合にはATFを指している。
【0010】また、シールリング100のリング本体には、図6に示すように、周方向の一ヶ所に組み込み性の向上等を目的として切断部S0が設けられている。
【0011】このような切断部S0の形態として様々なものが知られているが、周囲温度の変化によっても好適に対応することのできるものとして、図9に示したように、2段ステップ状にカットされた、特殊ステップカットが知られている。
【0012】この特殊ステップカットによれば、円周方向に垂直な面同士が円周方向に対して隙間T0を有しつつ、密封流体側と非密封流体側とを遮断する構成であるために、リング本体が熱によって膨張したとしても、密封状態を維持しつつ隙間T0の分だけ寸法の変化量を吸収できるため、周囲の温度変化に対しても密封性能を維持することができる。
【0013】以上のようなシールリング100においては、特に軸300がアルミニウム合金等の軟質材であるような場合に、第1シール面101と環状溝301の側壁面との間の摩擦によって、両者がそれぞれ摩耗してしまっていた。
【0014】これは、第1シール面101と環状溝301の側壁面との間には、潤滑油による潤滑膜が形成されにくいためであり、特に、潤滑油中に存在する異物がこれらの間にかみ込まれた場合には摩耗が激しくなっていた。
【0015】このような摩耗を低減させるための技術として、密封流体である潤滑油を第1シール面101と環状溝301の側壁面との間に供給させるための溝を設けることによって、潤滑膜を形成させて耐摩耗性を向上させる技術が知られている(例えば、特開平9−96363号公開公報)。
【0016】すなわち、図8に示すように、第1シール面101に密封流体側Oと非密封流体側Aとを連通するための連通溝101aを設けることによって、密封流体側Oの潤滑油を連通溝101aに漏れさせるようにして、第1シール面101が環状溝301の側壁面に対して摺接した際に、これらの間に潤滑膜を形成させてシール面の潤滑状態を改善して耐摩耗性の向上を図ったものである。
【0017】また、上記連通溝101aを設けることにより、潤滑膜の形成だけでなく、潤滑油中に存在する異物や摩耗により生じた摩耗粉が、第1シール面101と環状溝301の側壁面との間にかみ込まれないように非密封流体側Aに排出させる機能を持たせることで、より一層耐摩耗性の向上を図ったものである。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のような従来技術の場合には、下記のような問題が生じる場合がある。
【0019】上述した従来技術に係るシールリングにおいては、シール性能を維持するためには、連通溝101aからの潤滑油のリーク量をある程度に抑える必要があり、そのためには、溝幅や溝の深さをできるだけ小さくしなければならない。
【0020】従って、連通溝101aを設けることによって耐摩耗性が向上するとはいうものの、完全に摩耗を防止するものではないため、経時的に摩耗が進行することによって連通溝101aの深さは徐々に小さくなり、異物等の排出能力(コンタミ排出能力)や潤滑膜の形成能力は経時的に低下する。
【0021】そして、さらに摩耗が進行すると、連通溝101aへの経路が遮断されて、連通溝101aへの潤滑油の供給がなされなくなって、異常摩耗が生じてしまうという不具合が発生する可能性がある。
【0022】この点について、図10を参照して、さらに詳しく説明する。図10は従来技術に係るシールリングについて、長期使用により摩耗が進行した状態を示す模式的断面図である。
【0023】図10に示すように、環状溝301の側壁面は、第1シール面101が摺接される部分のみが摩耗するため、摩耗した分だけ、シールリング100は、環状溝301の側壁面の元の位置よりも内部側へと押し込まれていくことになる。
【0024】従って、連通溝101aの底面が、環状溝301の側壁面の摩耗されていない面まで達すると、図10中矢印Xに示すように、連通溝101aへの経路が遮断されることになり、潤滑油の供給がなされなくなるのである。
【0025】本発明は上記の従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、長期にわたり安定したシール性能を維持する品質性に優れたシールリングを提供することにある。
【0026】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明にあっては、同心的に相対回転自在に組付けられる2部材の一方の部材に設けられた環状溝に装着されて、該環状溝の非密封流体側の側壁面に摺接されると共に他方の部材に圧接して、これら2部材間の環状隙間をシールするシールリングであって、リング本体には周方向の一ヶ所にて切断された切断部が設けられたシールリングにおいて、前記切断部の一方の切断端部と他方の切断端部とを合わせた際の対向面間に、密封流体側から前記環状溝の非密封流体側の側壁面に向けて密封流体の漏れを許容する流路を備えると共に、該流路は、前記環状溝の側壁面に対する摺接面における環状溝深さ方向全域にわたって開放端を有することを特徴とする。
【0027】従って、流路は環状溝深さ方向全域にわたって開放端を有することから、環状溝の側壁面に対する摺接面の全域に密封流体の膜が形成されるため耐摩耗性に優れ、かつ、流路は摺動のない位置にあることから経時的に変化することはなく、安定した密封流体の供給を可能とする。
【0028】前記一方の切断端部には凸部が設けられ、かつ他方の切断端部には該凸部に係合される凹部が設けられると共に、前記凸部の外壁面のうち隣接する2つの外壁面の交わりの角に面取り部を設け、該面取り部と前記凹部の対応する角との間にできる隙間によって前記流路の一部を形成するとよい。
【0029】従って、面取りを設けるという、容易な製造方法によって、流路を形成することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0031】図1〜図5を参照して、本発明の実施の形態に係るシールリングについて説明する。
【0032】まず、図1および図2を参照して、本発明の実施の形態に係るシールリングの全体構成等について説明する。
【0033】図1は本発明の実施の形態に係るシールリングの模式的平面図であり、図2は本発明の実施の形態に係るシールリングの装着した状態を示す模式的断面図である。
【0034】本実施の形態に係るシールリング1は、図2に示すように、同心的に相対回転自在に組付けられた2部材間の環状隙間、すなわち、軸孔が設けられたハウジング90と、この軸孔に挿入された軸80との間の環状隙間をシールするためのものであり、軸80に設けられた環状溝81に装着されて使用されるものである。
【0035】シールリング1は、概略、一方の部材としての軸80に設けられた環状溝81の側壁面81aをシールするための第1シール面2と、他方の部材としてのハウジング90に設けられた軸孔の内周面90aをシールするための第2シール面3と、を備えている。
【0036】このような構成によって、密封流体側Oから非密封流体側Aに向けて、図2中矢印P方向に圧力がかかると、シールリング1は非密封流体側Aに押圧されるため、第1シール面2は環状溝81の(非密封流体側Aの)側壁面81aを押圧し、また、第2シール面3はハウジング90に設けられた軸孔の内周表面であって、環状溝81に対向する部分を押圧し、それぞれの位置でシールする。
【0037】以上のように、密封流体の非密封流体側Aへの漏れを防止するものである。
【0038】なお、本実施の形態における密封流体は、潤滑性を有する流体を意味し、以下の説明では、その一例として潤滑油として説明する。
【0039】本実施の形態に係るシールリング1のリング本体には、図1に示すように、周方向の一ヶ所に組み込み性の向上等を目的として切断部Sが設けられている。
【0040】この切断部Sの形態は、周囲温度の変化によっても好適に対応することができるように、2段ステップ状にカットされた、特殊ステップカット構造をなしている。
【0041】以下、この切断部Sについて、図3〜図5を参照して詳しく説明する。図3は本実施の形態に係るシールリングの切断部の様子を示す模式的斜視図であり、図4は切断部をそれぞれ引き離した状態を示す模式的斜視図であり、図5は切断部における各部の断面の様子を示す説明図である。なお、実際には切断部における各切断端部では上記図1にも示した通り、曲率を有しているが、説明の便宜上各図においては曲率をなくして模式的に示している。
【0042】切断部Sにおいては、リング本体が切断されることにより、互いに係合し合う、一方の切断端部(以下、第1切断端部4と称する)と他方の切断端部(以下、第2切断端部5と称する)とに分けられる。
【0043】そして、第1切断端部4には、互いに隣接した凸部41と凹部42が設けられており、一方、第2切断端部5には、上記凸部41に係合される凹部51と、上記凹部42に係合される凸部52とがそれぞれ隣接して設けられている。
【0044】ここで、説明の便宜のために、図4に示すように、凸部41を形成する壁面(外壁面)のうち、最も先端の面を第1面41a,第1シール面2に平行かつ内部側の密着面を第2面41b,第2シール面3と同心的かつ内部側の密着面を第3面41cと称する。
【0045】また、凹部42を形成する壁面のうち、周方向に垂直な面を第4面42a,第1シール面2に平行かつ内部側の密着面を第5面42b,第2シール面3と同心的かつ内部側の密着面を第6面42cと称する。
【0046】なお、第2面41bと第5面42bは、同一面上にあるが、説明の便宜のため、別々の名称として説明する。また、第1切断端部4の基準となる面を基準面43と称する。
【0047】また、第2切断端部5側についても同様に、凸部52を形成する壁面(外壁面)のうち、最も先端の面を第11面52a,第1シール面2に平行かつ内部側の密着面を第12面52b,第2シール面3と同心的かつ内部側の密着面を第13面52cと称する。
【0048】さらに、凹部51を形成する壁面のうち、周方向に垂直な面を第14面51a,第1シール面2に平行かつ内部側の密着面を第15面51b,第2シール面3と同心的かつ内部側の密着面を第16面51cと称する。
【0049】なお、第12面52bと第15面51bは、同一面上にあるが、説明の便宜のため、別々の名称として説明する。また、第2切断端部5の基準となる面を基準面53と称する。
【0050】そして、シールリング1を装着した状態においては、円周方向の壁面同士、すなわち、第2面41bと第15面51b,第5面42bと第12面52b,第3面41cと第16面51c、および第6面42cと第13面52cは、それぞれ密着する状態となる。
【0051】一方、円周方向に垂直な方向の壁面であって対向する壁面同士、すなわち、第4面42aと第11面52a,第1面41aと第14面51a、および基準面43と基準面53は、それぞれ隙間T1,T2,T3を有するように対向して配置される。
【0052】このように特殊ステップカットにおける装着時においては、円周方向の壁面同士がそれぞれ密着するため、密封流体の漏れを防止することができる。
【0053】また、円周方向に垂直な方向の壁面同士は、対向して隙間を設けているので、シールリング1とハウジング90の材質の違いによる線膨張係数の差異によって、シールリング1が収縮したとしても、隙間を設けた分だけ変化量を吸収できるため、周囲の温度変化に対しても好適に密封性能を維持することができる。
【0054】なお、一般的に、シールリング1の素材は樹脂であり、ハウジング90の素材は金属であり、これらの線膨張係数の違いから高温になるとシールリング1の熱膨張量の方が大きくなって、隙間T1,T2,T3は小さくなる。
【0055】また、これらの隙間T1,T2,T3は、原則として、隙間がなくならないように設定される。また、T1およびT2は、T3よりも小さくなるように設定される(T1=T2<T3)。これは、仮に、T1およびT2の隙間がなくなってしまったとしても、確実にT3の隙間を確保するためである。
【0056】そして、本発明の実施の形態の特徴的な構成として、装着状態において、切断部Sで完全に密封流体の漏れを防止するのではなく、各切断端部を合わせた際に、これら切断端部の対向面間に、密封流体側Oから環状溝81の非密封流体側の側壁面81aに向けて密封流体の漏れを許容する流路が備えられるようにしている。
【0057】以下、この流路を形成する構成等について、詳しく説明する。
【0058】図4に示すように、第1切断端部4に設けられた凸部41において、各々互いに隣接する、第1面41aと第2シール面3,第1面41aと第1シール面2,第1面41aと第3面41c,第2面41bと第3面41cの各交わりの角には、面取り部C1,面取り部C2,面取り部C3,面取り部C4がそれぞれ設けられている。
【0059】同様に、第2切断端部5に設けられた凸部52において、各々互いに隣接する、第11面52aと第2シール面3,第11面52aと第1シール面2,第11面52aと第13面52c,第12面52bと第13面52cの各交わりの角には、面取り部C5,面取り部C6,面取り部C7,面取り部C8がそれぞれ設けられている。
【0060】このように、面取り部を設けたことによって、各面取り部に対応する凹部の角との間に隙間が形成され、この隙間が流路を形成することになる。
【0061】この点について、図5を参照して、さらに詳しく説明する。なお、図5では、凸部41と凹部51との係合部における3方向からの断面の様子を示しているが、凸部52と凹部42との係合部においても同様であるので、その説明は省略する。
【0062】ここで、図5(a),(b),(c)においては、それぞれ上部に切断面の位置を示し、下部に断面の様子をそれぞれ模式的に示している。
【0063】まず、図5(a)には、凸部41と凹部51の係合部における、円周方向に垂直な断面の様子が示されている。
【0064】図示のように、面取り部C4と、これに対応する、第15面51bと第16面51cとの交わりの角との間に隙間が形成され、これにより第1流路R1を形成している。
【0065】また、図5(b)には、凸部41と凹部51の係合部における、第1シール面2に平行な断面の様子が示されている。
【0066】図示のように、面取り部C3と、これに対応する、第14面51aと第16面51cとの交わりの角との間に隙間が形成され、これにより第2流路R2を形成している。
【0067】さらに、図5(c)には、凸部41と凹部51の係合部における、第2シール面3に同心的な断面の様子が示されている。
【0068】図示のように、面取り部C2と、これに対応する、第14面51aと環状溝81の側壁面81a(図5では不図示)との交わりの角との間に隙間が形成され、これにより第3流路R3を形成している。
【0069】そして、上述の第1流路R1,第2流路R2,第3流路R3は、それぞれ接続されており、また、凸部52と凹部42との係合部においても同様の流路が形成されており、これらの各流路によって、第0流路R0が形成されている。
【0070】なお、凸部52と凹部42との係合部においても、上述の第1流路R1,第2流路R2,第3流路R3に対応する流路がそれぞれ設けられるが、基準面43と基準面53との間に隙間T3を有することから、図3に示すように、隙間T3から直接第1流路R1に流入することになる。
【0071】また、基準面43と基準面53との間に設けられた隙間T3によっても、第4流路R4が形成される。
【0072】ここで、第0流路R0は第1シール面2に対して開放端K1を有し、第4流路R4は第1シール面2に対して開放端K2を有している。
【0073】そして、開放端K1の環状溝深さ方向の領域は図3,5中L1であり、開放端K2の環状溝深さ方向の領域は図3,5中L2であり、結局、第1シール面2の環状溝深さ方向全域にわたって、流路の開放端が設けられている。
【0074】従って、第1シール面2の環状溝81の側壁面81aに対する摺接面における環状溝深さ方向全域(図2中L0)にわたって、流路の開放端が設けられることになる。
【0075】以上の構成により、第0流路R0および第4流路R4によって、密封流体側Oから密封流体としての潤滑油が漏れ、この際、流路の開放端は環状溝81の側壁面81aに対する摺接面における環状溝深さ方向全域にわたって設けられていることから、第1シール面2と側壁面81aとの摺接によって、摺接面全体に潤滑油の膜が形成されることになる。
【0076】従って、摺動性能が向上すると共に、これらの流路を介して異物や摩耗粉を排出できるので、耐摩耗性が向上する。
【0077】また、従来技術の場合には、上述のように摺動する位置に密封流体の漏れを生じさせるための経路を設けたのに対して、本実施の形態においては、摺動することのない切断部Sに密封流体の漏れを許容する流路を設けたことから、経時的に流路の形状(断面形状や寸法など)が変化してしまうというようなことはなく、長期にわたり、安定して密封流体を供給することが可能となる。
【0078】従って、長期にわたり安定したシール性能を維持することができ、品質性が向上する。
【0079】また、本実施の形態においては、面取り部C3を設けたことによって第2流路R2を形成したことから、シールリング1が熱により膨張して、仮に、凸部41の先端の面である第1面41aが第14面51aに当接して、隙間T2が0になってしまった場合でも、第2流路R2が確保され、安定して密封流体を供給できる。
【0080】同様に、面取り部C2を設けたことによって第3流路R3を形成したことから、シールリング1が熱により膨張して、仮に、凸部41の先端の面である第1面41aが第14面51aに当接して、隙間T2が0になってしまった場合でも、第3流路R3が確保される。
【0081】また、第2流路R2および第3流路R3の部分においては、隙間T2の大きさの変動により、流量を安定することはできないので、本実施の形態では、第1流路R1によって流量を設定している。
【0082】すなわち、必要な流量は、面取り部C1の大きさによって設定する。なお、第2流路R2および第3流路R3の流量に影響を受けないように、面取り部C2および面取り部C3は、面取り部C1よりも大きく設定する。これにより、流量は面取り部C1の大きさのみによって決定されることになる。
【0083】ここで、面取り部C1の大きさは、切断部Sの寸法や使用条件などに対して要求される漏れ量などの制約を受けるが、望ましくは、図示のようにC面の面取りの場合にはC0.2〜C1程度である。
【0084】なお、図示の例では面取り部をC面とした場合を示したが、勿論これに限ることはなく、R面取りとしても良いし、寸法上の制約がある場合などは、任意の角度で面取りを形成しても良い。
【0085】また、シールリング1を構成する材料としては、耐熱性樹脂と充填材からなる樹脂組成物を適用することができる。
【0086】ここで、耐熱樹脂としては、例えば、ポリシアノアリールエーテル系樹脂(PEN),ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等の芳香族ポリエーテルケトン樹脂,芳香族系熱可塑性ポリイミド樹脂,ポリアミド4−6系樹脂,ポリフェニレンサルファイド系樹脂,ポリテトラフロロエチレン系樹脂などの耐熱性,耐燃性,耐薬品性に優れ、優れた機械的性質を示す樹脂が挙げられる。
【0087】なお、充填材は、材料の機械的強度の向上、耐摩耗性の向上、低摩擦特性の付与等を目的に配合されるものであり、特に限定するものではない。
【0088】
【実施例】以下、上記実施の形態に基づく、より具体的な実施例について説明する。
【0089】(実施例1)まず、シールリング1の成形材料として、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(住友化学製品ビクトレックスPEEK 150G、熱変形温度152℃),アミノシラン処理をして使用されたガラスビーズ(ユニオン硝子製品UB−47L,平均粒径75μm)をそれぞれ85重量%,15重量%の混合割合として、各成分をヘンシェルミキサを用いて均一に混合し、更に押出機を用いて400℃で融解混合した後に、ペレタイザで造粒したものを用いた。
【0090】そして、上記材料を用いて、射出成形により、上記実施の形態で説明した特殊ステップカット構造を有するシールリングを得た。
【0091】また、シールリングの高さを2.01mm,肉厚を1.91mm,外径を47.5mmとした。
【0092】また、面取り部C4をC0.25のC面取り、面取り部C3をC0.5のC面取り、面取り部C2をC0.5のC面取りとした。
【0093】以上のように形成したシールリングと、本実施例のシールリングとは面取り部が設けられていない点でのみ異なるシールリング(比較例)について、次のような耐久試験を行って、摩耗量や耐久試験前後のリーク量を比較した。
【0094】耐久試験は、温度120℃の環境の下、潤滑剤としてオートマチック・トランスミッション用オイルを使用して、油圧1.3MPaとし、軸の回転数を4000rpmで144hの耐久試験を行った。
【0095】なお、ハウジングとなるシリンダの材質はS45C、軸の材質はADC12を使用した。
【0096】以上の耐久試験により得られた結果を図11に示す。図11ではシールリング側面(第1シール面)の摩耗量,軸溝側面(環状溝の側壁面)の摩耗量,耐久試験中のリーク量について、それぞれ本実施例と比較例の試験結果について表に示している。
【0097】試験結果から分かるように、本実施例のものは比較例と比べて、摩耗量が少なく、リーク量も安定している。
【0098】(実施例2)上記実施例1と同一の材料を用いて、射出成形により、上記実施の形態で説明した特殊ステップカット構造を有するシールリングを得た。
【0099】また、シールリングの高さを2.01mm,肉厚を1.91mm,外径を47.5mmとした。
【0100】また、面取り部C4をC0.5のC面取り、面取り部C3をC0.7のC面取り、面取り部C2をC0.7のC面取りとした。
【0101】以上のように形成したシールリングと、本実施例のシールリングとは面取り部が設けられていない点でのみ異なるシールリング(比較例)について、次のような耐久試験を行って、摩耗量や耐久試験前後のリーク量を比較した。
【0102】耐久試験は、温度は自然昇温の環境の下、潤滑剤としてオートマチック・トランスミッション用オイルを使用して、油圧3MPaとし、軸の回転数を6000rpmで50hの耐久試験を行った。
【0103】なお、ハウジングとなるシリンダの材質はS45C、軸の材質はS45Cを使用した。
【0104】以上の耐久試験により得られた結果を図12に示す。図12ではシールリング側面(第1シール面)の摩耗量,軸溝側面(環状溝の側壁面)の摩耗量,耐久試験中のリーク量について、それぞれ本実施例と比較例の試験結果について表に示している。
【0105】試験結果から分かるように、本実施例のものはPV=45MPa・m/sというような高PVの条件においても、摩耗量を少なくすることができた。
【0106】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、摺接面の全域に密封流体の膜を形成できるため耐摩耗性に優れ、密封流体を漏らす流路は経時的に変化しないため、安定して密封流体を供給できるので、長期にわたり安定したシール性能を維持することができ、品質性が向上する。
【0107】隣接する2つの外壁面の交わりの角に面取り部を設けるという、容易な製造方法によって、流路を形成することができる。




 

 


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