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発明の名称 歯車装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−132823(P2001−132823A)
公開日 平成13年5月18日(2001.5.18)
出願番号 特願平11−314859
出願日 平成11年11月5日(1999.11.5)
代理人 【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
【テーマコード(参考)】
3J030
【Fターム(参考)】
3J030 AB04 AB05 AB06 AC10 BA03 BA05 BB03 BB17 
発明者 関 一成
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 相対変位可能に組み合わされた複数の歯車(2)(4)を位相がずれた状態となるように弾性復帰させる弾性手段を備えた歯車装置(1)において、前記弾性手段が、一の歯車(4)と他の歯車(2)との間に介装されて一の歯車(4)を軸方向に弾性付勢する弾性体(5)よりなり、一の歯車(4)の他の歯車(2)に対する相対変位を規制する相対変位案内機構(6)が設けられ、前記相対変位案内機構(6)が、一の歯車(4)に相手歯車(21)からトルクが伝達されて一の歯車(4)が他の歯車(2)に対して相対変位を開始したときに、一の歯車(4)を前記弾性体(5)の弾性に抗して歯(2a)(4a)の角度と異なる方向に相対移動させるとともに、両歯車(2)(4)の歯(2a)(4a)の中心(2b)(4b)が一致する位置まで相対移動させるものであることを特徴とする歯車装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、伝動装置の一種である歯車装置に係り、特にバックラッシュの低減機能ないし解消機能を備えた歯車装置の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、図9および図10に示す歯車装置51が知られており、以下のように構成されている。
【0003】すなわち先ず、内周にボス部52aを一体成形した第一歯車52が設けられており、この第一歯車52のボス部52aの外周側に第二歯車53が歯52b,53aの位相をずらした状態で周方向相対変位可能に組み合わされており、この第二歯車53が第一歯車52から外れることがないように、皿バネ54が第二歯車53を第一歯車52に押し付けており、皿バネ54が同じく第一歯車52から外れることがないように、第一歯車52のボス部52aの内周側に圧入されたブッシュ55がそのフランジ部55aにおいて皿バネ54を支持しており、またはボス部52aの外周側にC形止め輪溝を設けてC形止め輪が皿バネ54を支持している(図示せず)。第一歯車52と第二歯車53は、その外径、ピッチ円直径および歯底円直径を互いに同じに設定され、モジュールを同じに設定され、また歯数も同じに設定されている。
【0004】また、両歯車52,53の間に、これらの歯車52,53によって囲まれるようにして弾性体装着空間である装着溝56が所要数等配状に設けられており(図では四等配)、この装着溝56にそれぞれコイル状を呈する金属製のスプリング57が各歯車52,53における周方向に向けて装着されている。
【0005】上記構成の歯車装置51は、その第一および第二歯車52,53に対して相手歯車(図示せず)を噛み合わせたときに、両歯車52,53の歯52b,53aがスプリング57の弾性により相手歯車の歯を挟み込むことによってバックラッシュを低減ないし解消するように構成されているが、以下のような不都合を有している。
【0006】すなわち先ず第一に、相手歯車の歯を挟み込むべく第一および第二歯車52,53を周方向に弾性復帰させる弾性手段がコイル状を呈する金属製のスプリング57によって構成され、このスプリング57が歯車52,53の装着溝56に装着されているために、装着溝56におけるスプリング57との干渉部56aや座部56bが剛材接触により摩耗することがあり、このように干渉部56aや座部56bが摩耗すると、スプリング57のバネ特性が変わってしまうことになる。また、スプリング57が装着溝56内でガタつくことになり、摩耗の進行過程ではスプリング57と座部56bとが擦れて大きな異音が発生することもある。
【0007】また、上記したように弾性手段がコイル状を呈する金属製のスプリング57によって構成されている場合には、周方向に作用する弾性負荷により装着溝56の内壁角部56cに応力集中が発生し易く、このように応力集中が発生すると、その発生部分において歯車52,53が破損することがある。
【0008】また、上記従来技術においては、第一歯車52に対してスプリング57を介して周方向に連結された第二歯車53がバックラッシュを低減ないし解消させる機能を果たすのみで、トルク伝達機能すなわち駆動機能を全く果たさない。したがって、唯一の駆動歯車である第一歯車52の歯面に作用する面圧が比較的大きいために、歯52bの強度が低下したり摩耗量が増えたりすることがある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は以上の点に鑑み、歯車がスプリングとの干渉や擦れ合い等によって摩耗したり破損したりすることがなく、もってその耐久性を向上させることが可能な歯車装置を提供することを目的とし、またこれに加えて、バックラッシュを低減ないし解消させるための歯車がトルク伝達機能ないし駆動機能をも果たすことができ、もって各歯車に作用する面圧を分散低減させることが可能な歯車装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明の歯車装置は、相対変位可能に組み合わされた複数の歯車を位相がずれた状態となるように弾性復帰させる弾性手段を備えた歯車装置において、前記弾性手段が、一の歯車と他の歯車との間に介装されて一の歯車を軸方向に弾性付勢する弾性体よりなり、一の歯車の他の歯車に対する相対変位を規制する相対変位案内機構が設けられ、前記相対変位案内機構が、一の歯車に相手歯車からトルクが伝達されて一の歯車が他の歯車に対して相対変位を開始したときに、一の歯車を前記弾性体の弾性に抗して歯の角度と異なる方向に相対移動させるとともに、両歯車の歯の中心が一致する位置まで相対移動させるものであることを特徴とするものである。
【0011】上記構成を備えた本発明の歯車装置において、複数の歯車を相手歯車に噛み合わせてトルクの伝達を開始すると、先ず、トルクが相手歯車から一の歯車に伝達されて一の歯車が他の歯車に対して相対変位を開始する。この一の歯車の他の歯車に対する相対変位は相対変位案内機構にしたがって行なわれ、すなわち一の歯車が弾性体の弾性に抗して歯の角度と異なる方向に相対移動するとともに、両歯車の歯の中心が一致する位置まで相対移動する。したがって、両歯車の歯の中心が一致してからは、両歯車が同時に共同で駆動機能を果たすことになる。またバックラッシュについては、相手歯車の動きに対して一の歯車が弾性体の弾性によって追従することになる。本発明において、並設される歯車の設置数は複数であって、二枚の場合が含まれ、また三枚以上の場合が含まれる。また歯車装置には平歯、ハス歯またはウオームホイル等の各種の歯車が含まれ、弾性体にはゴム状弾性体またはスプリング等の各種の弾性体が含まれる。
【0012】
【発明の実施の形態】つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0013】図1は、本発明の実施例に係る歯車装置1の半裁断面を示しており、その第一および第二歯車2,4の歯2a,4aの位相状態が図2(A)に示されている。
【0014】当該実施例に係る歯車装置1は、各種のトルク伝達部にハス歯歯車として用いられるものであって、以下のように構成されている。
【0015】すなわち先ず、第一駆動力伝達歯車として、内周に円筒状のボス部3を備えた第一歯車2が設けられており、このボス部3の外周側に、第二駆動力伝達歯車およびバックラッシュ緩和用歯車として第二歯車4が同心的に配置されている。ボス部3は第一歯車2に対して別体に成形されて固定されているが、両者2,3を一体に成形するようにしても良い。両歯車2,4は、その外径、ピッチ円直径および歯底円直径を互いに同じに設定され、歯2a,4aのモジュールを同じに設定され、また歯数も同じに設定されている。また、両歯車2,4の対向面に環状溝状の装着部2c,4cが互いに対応して設けられており、この装着部2c,4cに環状を呈するゴム状弾性材製の弾性体5が装着されて両歯車2,4の間に介装されている。
【0016】第二歯車4は、ボス部3および第一歯車2に対して相対変位可能に組み合わされており、その相対変位が、相対変位案内機構6によって以下のように規制ないし特定されている。
【0017】すなわち先ず、伝達トルク入力前の初動位置においては、図1および図2(A)に示すように、両歯車2,4の間に所定の大きさの軸方向間隙cが設けられており、第二歯車4が第一歯車2に対してこの間隙c分、軸方向に離間している。また、図2(A)に示すように、両歯車2,4の歯2a,4aに所定の角度に亙って位相差(ピッチのずれ)が設けられており、第二歯車4が第一歯車2に対してこの位相差分、回転方向後方に変位している。
【0018】そして、この初動位置から両歯車2,4が相手歯車9(図3参照)に噛み合わされてトルクが伝達されると、このトルクが先ず、後方変位している第二歯車4に伝達され、第二歯車4が第一歯車2に対して相対変位を開始し、この相対変位によって、第二歯車4が弾性体3の弾性に抗して弾性体3を圧縮させながら第一歯車2に近付く方向に相対移動するとともに、両歯車2,4の歯2a,4aの中心(歯先の中心)2b,4bが一致する位置まで相対移動し、最終的に図2(B)に示すように、第二歯車4が第一歯車2に当接して停止する。
【0019】この初動位置から停止位置までの相対移動は、所定の捻れ角度をもってスパイラル状に行なわれる。したがって、第二歯車4にこのような動きをさせる相対変位案内機構6は、所定の捩れ角度をもったスプラインまたはキー状の凹凸ガイド部等によって構成されており、このような構造の案内機構6が第二歯車4内周とボス部3外周の対向部に設けられている(詳細は図示していない)。案内機構6の結合部(係合部)は隙間嵌めされており、第二歯車4が容易にスライドできるようになっている。
【0020】また、この案内機構6の捻れ角度が歯2a,4aの捻れ角度と異なる大きさに設定されているために、両歯車2,4の歯2a,4aに相対変位中、位相差(ピッチのずれ)が発生する。したがって、バックラッシュについては、第二歯車4が弾性体3に弾性付勢され、案内機構6に沿って復帰動しながら相手歯車9に追従する。この復帰方向の相対変位は、ボス部3に一体にまたは別体で設けられたストッパ7に第二歯車4が当接することによって停止し、ストッパ7と第二歯車4の間にスペーサ8を配置すると、その大きさ(軸方向長さ)に応じて第二歯車4の初動位置を調整することが可能である。
【0021】上記構成の歯車装置1は、二枚の同一形状の歯車2,4を組み合わせて、その重ね合わせた間に弾性体5を挟み込んだもので、双方の歯車2,4が軸方向に離れる方向に力が作用し、また歯2a,4aの捻れ角と内径側の案内機構6の捩れ角が異なる角度に設定されているために、その結果として、二枚の歯車2,4の間にピッチのずれが発生し、相手歯車9との間でバックラッシュを無くすことが可能となる。
【0022】また、第二歯車4の歯4aにトルクが加わったときに、この第二歯車4の歯4aは第一歯車2方向に作用する力の分力によってスライドし、両歯車2,4の歯部またはウエブ部が互いに接触したときにスライドが止まり、その結果、歯2aと歯4aの歯先の中心2b,4bが合致する。したがって駆動力は、合致した両歯2a,4aを介して伝達される。したがって、両歯車2,4が双方の歯面で同時にトルク荷重を受けることになるために、トルク荷重が分散低減され、よって歯2a,4aの強度を相対的に向上させることができ、歯2a,4aの摩耗量を減らすことができる。
【0023】尚、上記したように両歯車2,4の歯面において同時に荷重を受けるには、歯車2,4がハス歯またはウォームギヤである場合、図3(A)(B)に示すように、歯車2,4の捻れ方向と逆の歯をスライドさせる必要がある。これに対して同図(A’)(B’)に示すように、歯車2,4の捻れ方向と同じ歯で荷重を受けると、力の分力が逆に働くために、スライドしなくなる(この場合には、弾性体5を圧縮戻しで利用するのではなく、引張り戻しで利用する必要がある)。
【0024】また、二枚の歯車2,4をスライドさせるための案内機構6には、上記したように捩れ角度をもたせたスプラインまたはキー形状のものを用い、軸方向のスライドがスムーズに行くようにする。尚、この案内機構6の捩れ角を歯車2,4の捻れ角と同じ角度に設定するとシザース機構とならないために、案内機構6の捩れ角はこれを歯車2,4の捻れ角と異なる角度に設定する必要がある(平歯歯車の場合には、歯の捩れ角が零度であるために、案内機構6の捩れ角を零度以外に設定する)。
【0025】上記構成の歯車装置1によれば、以下の作用効果を奏することが可能である。
【0026】すなわち先ず第一に、上記したようにバックラッシュを低減ないし解消すべく第一および第二の両歯車2,4を弾性体5を介して連結してなる歯車装置1において、両歯車2,4が同時に駆動機能を果たすように構成されているために、各歯車2,4の歯2a,4aにかかる荷重を分散低減させることが可能である。したがって、歯2a,4aの強度を相対的に向上させるとともに歯2a,4aの摩耗量を低減させることができ、これにより優れた耐久性を発揮する歯車装置1を提供することができる。
【0027】また、第一および第二歯車2,4を相対変位可能に連結する弾性手段が、従来のように歯車の装着溝に装着されるコイル状の金属スプリングではなく、両歯車2,4間に軸方向に介装された環状のゴム状弾性体よりなる弾性体5によって構成されているために、この弾性体5の比較的柔らかな材質特性によって、金属または樹脂製の各歯車2,4が摩耗もしくは破損したり、大きな異音が発生したりするのを防止することができる。したがって、各歯車2,4の耐久性を向上させることができ、また、異音の発生を抑えて静粛性に優れた歯車装置1を提供することができる。
【0028】また、第一および第二の両歯車2,4が作動時に互いに擦れ合うことがなく擦れ合うものでないために、この点からも作動音を小さくすることができる。
【0029】上記実施例に係る歯車装置1は、その構成を以下のように付加または変更することが可能である。
【0030】■ 第一歯車2側に第二歯車4側と同じ構成の案内機構6およびストッパ7等を設け、第一歯車2を第二歯車4と同様に案内機構6に沿ってスライド可能にすると、正逆何れの回転に対しても同じ作動をし、同じ作用効果を得ることが可能となる。この場合、案内機構6には、所定の捩れ角を備えたスプラインまたはキー形状等がボス部3の軸方向一端近傍から他端近傍まで一連に設けられ、軸方向一対のストッパ7の間に第一歯車2および第二歯車4がそれぞれ案内機構6に沿ってスライド可能に挟み込まれることになる。
【0031】■ 図4に示すように、弾性体5にスプリングを用いる。スプリングはコイル状を呈する金属製のスプリング(コイルスプリング)であって、このスプリングを凹部状の装着部2c,4cに軸方向に向けて所要数等配状に配置する。
【0032】■ 図5に示すように、弾性体5に皿バネを用い、この皿バネの径方向変位を一方の歯車(図では第二歯車4)の端面に設けた環状の段部4dで規制する。
【0033】■ 図6に示すように、ボス部3に設けるストッパ7をボス部3に対してネジ込み構造とし、そのネジ込み位置によってスペーサ8なしでもバックラッシュを調整可能とする。
【0034】■ 図7および図8に示すように、弾性体5に、弾性変形可能な突起を用いる。この突起は一方の歯車(図では第二歯車4)に所要数が等配状に一体にまたは別体で成形されており、また、弾性変形し易いように図7の方向から見て円弧状に形成されている。
【0035】
【発明の効果】本発明は、以下の効果を奏する。
【0036】すなわち先ず、上記構成を備えた本発明の歯車装置においては、バックラッシュを低減ないし解消すべく複数の歯車を弾性体を介して連結してなる歯車装置において、複数の歯車が同時にトルク伝達機能ないし駆動機能を果たすように構成されているために、歯車の歯面に作用する荷重を分散低減させることが可能である。したがって、各歯の強度を相対的に向上させるとともに各歯の摩耗量を低減させることができ、よって優れた耐久性を発揮することが可能な歯車装置を提供することができる。
【0037】また、一の歯車と他の歯車を相対変位可能に連結する弾性手段が、従来のように歯車の装着溝に装着されるコイル状の金属スプリングではなく、両歯車間に介装される弾性体によって構成されるために、この弾性体の比較的柔らかな材質特性や装着溝に装着されるのではない配置構成によって、金属または樹脂製の各歯車が摩耗もしくは破損したり、大きな異音が発生したりするのを防止することができる。したがって、各歯車の耐久性を向上させることができ、また、異音の発生を抑えて静粛性に優れた歯車装置を提供することができる。
【0038】また、一の歯車と他の歯車が作動時に互いに擦れ合うことがなく擦れ合うものでないために、この点からも作動音を小さくすることができる。




 

 


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