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発明の名称 容量可変型圧縮機の制御弁
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−132632(P2001−132632A)
公開日 平成13年5月18日(2001.5.18)
出願番号 特願平11−319466
出願日 平成11年11月10日(1999.11.10)
代理人 【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣 (外1名)
【テーマコード(参考)】
3H045
3H076
3H106
【Fターム(参考)】
3H045 AA04 AA27 BA12 BA37 CA05 CA07 CA24 CA26 DA15 DA42 DA47 EA13 EA16 EA22 EA33 EA38 EA42 
3H076 AA06 BB10 BB33 BB38 BB43 BB50 CC44 CC84 CC85 CC92 CC93 CC99
3H106 DA02 DA12 DA23 DB02 DB12 DB23 DB32 DC02 DC17 DD09 EE07 KK23
発明者 水藤 健 / 川口 真広 / 太田 雅樹 / 松原 亮 / 渡辺 孝樹
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 バルブハウジングと、容量可変型圧縮機のクランク室と吸入室とを繋ぐべく前記バルブハウジング内を経由して設定された抽気通路の開度を調節可能な抜き側弁部と、前記圧縮機の吐出室とクランク室とを繋ぐべく前記バルブハウジング内を経由して設定された給気通路の開度を調節可能な入れ側弁部と、前記バルブハウジング内で軸方向に移動可能な作動ロッドとを備え、前記作動ロッドを介しての抜き側弁部及び入れ側弁部の連係した開度調節動作に基づきクランク室の内圧を制御して圧縮機の吐出容量を調節する容量可変型圧縮機の制御弁において、前記抜き側弁部は、前記抽気通路の一部を構成する通路室と、前記通路室をクランク室側領域と吸入室側領域とに区分する境界位置に設けられた弁座と、前記通路室のクランク室側領域に配設されて前記弁座に接離可能な抜き側弁体と、前記通路室のクランク室側領域に配設されて前記抜き側弁体を弁座に着座させる方向に付勢可能であり且つクランク室内圧に感応して変位可能な感圧部材とを備えており、前記抜き側弁体が前記弁座に着座するときの当該弁体によるシール面積と、前記感圧部材の有効面積とが近似又は一致するように設定されていることを特徴とする容量可変型圧縮機の制御弁。
【請求項2】 前記作動ロッドの先端部は、前記通路室の吸入室側領域に配置されており、前記制御弁は更に、外部からの電気制御によって調節可能な付勢力でもって前記抜き側弁体を弁座から離す方向に作動ロッドを付勢可能なソレノイド部を備えることを特徴とする請求項1に記載の容量可変型圧縮機の制御弁。
【請求項3】 前記入れ側弁部によって給気通路が開放されると共に前記抜き側弁部においては前記抜き側弁体が弁座に着座することで該弁体と弁座との間を経由する抽気通路が閉塞状態にあるときに、前記抜き側弁部には、抜き側弁体内に形成された内部通路を経由してクランク室から吸入室へのガス流通を許容する内部循環経路が確保されることを特徴とする請求項2に記載の容量可変型圧縮機の制御弁。
【請求項4】 前記バルブハウジングには、前記通路室の吸入室側領域において前記作動ロッドの先端部が進入離脱可能な中間ポートが形成されており、前記内部循環経路は、前記抜き側弁体の内部通路と、前記作動ロッド先端部の前記中間ポートへの進入により作動ロッド先端部の外周面と中間ポートの内周面との間に作り出されるサイドクリアランスとによって構成されることを特徴とする請求項3に記載の容量可変型圧縮機の制御弁。
【請求項5】 前記抜き側弁部内に作動ロッドの先端部が配置され、前記ソレノイド部内に作動ロッドの基端部が配置され、更に前記抜き側弁部と前記ソレノイド部との間に入れ側弁部が配置されており、前記入れ側弁部には、入れ側弁部内を軸方向に縦断する作動ロッドを収容すると共に前記給気通路の一部を構成するロッド挿通路が設けられ、前記作動ロッドには、その軸方向変位に応じて前記ロッド挿通路を開放又は閉塞可能な入れ側弁体が設けられ、前記ソレノイド部への電気制御に基づく作動ロッドの軸方向変位に起因して前記ロッド挿通路が実質的に開閉制御されることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の容量可変型圧縮機の制御弁。
【請求項6】 前記ソレノイド部への通電時には、作動ロッドの入れ側弁体がロッド挿通路を実質的に閉状態にすると共に作動ロッドが抜き側弁部に作動連結され、当該抜き側弁部が、前記ソレノイド部への通電量に応じて変化する作動ロッドの付勢力に基づいて設定吸入圧を変更可能な設定吸入圧可変型の抜き側制御弁として機能することを特徴とする請求項5に記載の容量可変型圧縮機の制御弁。
【請求項7】 前記ソレノイド部への非通電時には、前記作動ロッドを初期位置に戻すことで前記入れ側弁部のロッド挿通路を開状態に導くと共に、作動ロッドと抜き側弁部との作動連結を解除することで前記抜き側弁体と弁座との間を経由する抽気通路を閉状態に導くための初期化手段を更に備えていることを特徴とする請求項6に記載の容量可変型圧縮機の制御弁。
【請求項8】 前記作動ロッドの先端部とは反対側の端部を収容する領域には前記クランク室の内圧が導かれ、更に前記抜き側弁体によるシール面積(B)は、前記感圧部材の有効面積(A)と前記作動ロッドの反対側端部における有効受圧面積(S1)との和に一致するように設定されていることを特徴とする請求項2〜7のいずれか一項に記載の容量可変型圧縮機の制御弁。
【請求項9】 前記作動ロッドの先端部とは反対側の端部を収容する領域には前記吸入室の圧力が導かれ、且つ前記抜き側弁体によるシール面積(B)は、前記感圧部材の有効面積(A)に一致するように設定されていることを特徴とする請求項2〜7のいずれか一項に記載の容量可変型圧縮機の制御弁。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、容量可変型圧縮機の制御弁に関する。特に、作動ロッドを介しての抜き側弁部と入れ側弁部との連係した開度調節動作に基づきクランク室の内圧を制御して圧縮機の吐出容量を調節する容量可変型圧縮機の制御弁に関する。
【0002】
【従来の技術】車輌用空調装置に用いられる容量可変型斜板式圧縮機では一般に、圧縮機に組み込まれた容量制御弁の自律的又は他律的な弁開度調節動作に基づいてクランク室へのガス導入量とクランク室からのガス放出量とのバランスを制御し、もってクランク室の内圧(クランク圧Pc)を適宜変更することにより斜板の傾角を制御して吐出容量を調節している。従来の制御弁の多くは、圧縮機と共に冷凍サイクルを構成する蒸発器(エバポレータ)の出口圧力、つまり圧縮機が吸入する冷媒ガスの圧力(吸入圧Ps)が、熱負荷の変動にもかかわらず目標圧(設定吸入圧Pset)をほぼ維持する結果となるように圧縮機の吐出容量をフィードバック制御すべく構成されている。
【0003】例えば特開平6−26454号公報は、圧縮機のクランク室と吸入圧領域とを結ぶ抽気通路の途中に設けられた設定吸入圧可変型の抜き側制御弁を開示する。この抜き側制御弁のバルブハウジング内には、ハウジング内抽気通路を構成する感圧室兼用の弁室が区画され、その弁室内には、ベローズ(感圧部材)とその可動端に取着された弁体とが配設されている。弁室には吸入圧Psが導かれ、吸入圧Psの変化に応じたベローズの変位動作に基づいて弁体が弁座に対し位置決めされる。つまり当該制御弁は、外部制御によって設定圧を変更されない限り、検知吸入圧Psを指標として内部自律的に弁開度を調節する。更にその制御弁は、連結棒及び前記弁体を介して前記ベローズに作動連結可能な電磁アクチュエータを備えている。検知吸入圧Psとの関係で自律的な弁開度調節動作の基準となる設定吸入圧Psetは、電磁アクチュエータが発生する電磁付勢力(ベローズの弾力に対抗する向き)の大きさを制御することで変更可能である。
【0004】図7のグラフは、この種の抜き側制御弁を用いて圧縮機の吐出容量制御を行った場合における吸入圧Psとクランク圧Pcとの相関関係(又はPc/Psの変化特性)をコンピュータシミュレーションした結果を示す。図7には7つのケースの特性線φ1〜φ7が描かれているが、これらは、弁座の中心に設けられた弁孔の口径のみを異ならせて他の条件を同じにした場合を示す。即ち、特性線φ1のケースが七つの中で最も弁孔口径が小さく、特性線φ7のケースが七つの中で最も弁孔口径が大きい。又、φ付き数字が大きくなるにつれて弁孔口径が大きくなっている。いずれの特性線も、グラフ枠の対角線(Pc=Psの一次直線)を漸近線とする右上がりの曲線部分と、その右上がり部分と連続する右下がりの曲線部分とからなり、両曲線部分のつなぎ目に底(極小点)を持つ。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、圧縮機用制御弁の応答特性を評価する一つの指標として、Pc/Psゲインというものが提唱されている。Pc/Psゲインとは、制御入力値(即ち制御原因)たるPsの変化量ΔPsに対する制御出力値(即ち制御結果)たるPcの変化量ΔPcの比(ΔPc/ΔPs)の絶対値として定義されるスカラー量である。図7に基づいて解析学的に説明すれば、特性線φ1〜φ7の各々の右下がり曲線部分での微分値(dPc/dPs)つまり接線の傾きが、このゲイン(ΔPc/ΔPs)に相当する。
【0006】一般にゲインが高いほど制御弁は応答性に優れ、そのような制御弁を組み込んだ圧縮機は熱負荷の変化に対応した容量調節の迅速性及び的確性に優れたものとなる。ゲインの高い制御システムを採用すれば、実際の空調制御において、吸入圧Psが設定吸入圧Pset付近に迅速に収束し且つ吸入圧Psの経時的揺らぎが極めて小さいという理想状態が実現される。これに対し、制御システムのゲインが低いと、吸入圧Psはいつまでも設定吸入圧Psetを中心として上下に大きく揺らぎ、いわゆるハンチング状態に陥ってしまう。この点を具体的に説明すると、例えば熱負荷の低下に起因して吸入圧Psが低下しつつある場合でも、低ゲインだとなかなかクランク圧Pcが上昇してこないという事態に陥る。Pc昇圧が遅いということは圧縮機の容量低下が迅速に進まないということであり、吐出容量を下げたいにもかかわらず大容量での運転が維持される結果、吸入圧Psの低下傾向に即座に歯止めがかからず一種のオーバーシュートを招いてしまう。熱負荷の増大に起因して吸入圧Psが上昇しつつある場合も同様に、Psのオーバーシュートは避け難い。故にゲインが低いと、吸入圧Psがハンチングを起こしてしまうのである。特に、圧縮機の斜板の回転速度が比較的低いときに、吸入圧Psのハンチングが起き易い。
【0007】制御弁のゲインを高くするための基本的な考え方は、吸入圧変化ΔPsに呼応して弁体が変位する際に、変位前後で弁孔を通過するガス流量の差ΔQを大きくすることである。端的に言えば、弁体が弁座から離れたときにガス流量が一挙に増大するような弁構造を採用することである。それを実現するのに二つの考え方がある。
【0008】第1の考え方は、吸入圧変化ΔPsに対する弁体のリフト量(移動量)の増大を図ること、つまりは僅かなPsの変化でも大きなストロークで伸縮するようなベローズを採用することである。弁体のリフト量が大きければ、弁体と弁座との離間長の増大程度に応じてガスの通過断面積が増し、弁体の変位前後でのガス流量差ΔQも拡大する。しかしながら、僅かなPsの変化で伸縮量の大きいベローズは一般に大型であり、制御弁に組み込むのが困難になる。又、設定圧可変型の容量制御弁では、ベローズの大型化に伴って電磁アクチュエータも大型のものを採用せざるを得なくなり、商品化に際して不利である。このため、特段の事情がない限り、第1の考え方は採用し得ない。
【0009】第2の考え方は、弁体と接離する弁座の周縁長を大きくすること、つまりは弁座が区画している弁孔の口径面積(即ち弁体によるシール面積)の拡大を図ることである。弁孔の口径面積が大きければ、吸入圧変化ΔPsに呼応した弁体の移動量又はリフト量が僅かであっても、弁体の周囲でのガス通過面積の増大が著しく、弁体の変位前後でのガス流量差ΔQも拡大する。
【0010】しかしながら、図7のグラフから分かるように物事はさほど単純ではなく、現実はむしろ弁孔口径が大きいほど、特性線の右下がり部分の傾きが小さい、つまりゲインが低くなる傾向にある。他方、弁孔口径が非常に小さいもの(例えばケースφ1)は確かに急峻な右下がり部分を有するが、その分、極小点付近の一部Ps範囲では曲線の傾きが緩やかでゲインが低くなってしまっている。グラフを見る限り、弁孔口径を極度に大きくすることも極度に小さくすることも、広いPs範囲での安定的なゲイン向上にはつながらない。結局のところ、可能な限り広範な想定Ps範囲および想定Pc範囲において安定的にゲインを高く保つためには、ケースφ3又はφ4あたりの弁孔口径を妥協的に選択せざるを得ないのが実状である。
【0011】従来の抜き側制御弁において、弁孔口径を大きくすることで却ってゲインを低下させることになった主たる原因は、弁体の前後に作用するクランク圧Pcと吸入圧Psとの差圧に基づく力が働く向きにあるものと考えられる。つまり、弁室内に設けられた弁体は、主として吸入圧Psに感応するベローズの伸縮動作に追従する形で位置決めされるが、その他に弁室内での弁体の配置に影響を与える要因として弁体の前後差圧がある。弁孔の口径面積(つまり弁体の実質的な受圧面積)をSとすると、その前後差圧に基づく力は(Pc−Ps)×Sで表され、その力の向きは弁体を弁座から離間させる向きである。即ち前記弁孔の口径面積が大きくなるほど、弁体の位置決めに関与する力学的要因に占める(Pc−Ps)差圧の影響が相対的に増すばかりか、その差圧の影響で弁体は益々弁座に着座し難くなる。故に、吸入圧Psが低下傾向にあって本来ならば弁体が弁座に即座に着座すべき場合でも、弁孔の口径面積が大きく設定されていると(Pc−Ps)差圧の影響が少なからず及んで抜き側制御弁の全閉状態がなかなか実現しない。その結果クランク圧Pcの昇圧が遅くなり、Pc/Psゲインが低下する。本発明はかかる事情に鑑みてなされたものである。
【0012】本発明の目的は、抜き側弁部を構成する抜き側弁体に作用する(Pc−Ps)差圧が前記Pc/Psゲインの低下要因となることを根本的に解消することができると共に、抜き側弁部と入れ側弁部との連係を可能とする構成の採用とも相俟って、クランク圧Pcの可変制御性が格段に優れた容量可変型圧縮機の制御弁を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、バルブハウジングと、容量可変型圧縮機のクランク室と吸入室とを繋ぐべく前記バルブハウジング内を経由して設定された抽気通路の開度を調節可能な抜き側弁部と、前記圧縮機の吐出室とクランク室とを繋ぐべく前記バルブハウジング内を経由して設定された給気通路の開度を調節可能な入れ側弁部と、前記バルブハウジング内で軸方向に移動可能な作動ロッドとを備え、前記作動ロッドを介しての抜き側弁部及び入れ側弁部の連係した開度調節動作に基づきクランク室の内圧を制御して圧縮機の吐出容量を調節する容量可変型圧縮機の制御弁において、前記抜き側弁部は、前記抽気通路の一部を構成する通路室と、前記通路室をクランク室側領域と吸入室側領域とに区分する境界位置に設けられた弁座と、前記通路室のクランク室側領域に配設されて前記弁座に接離可能な抜き側弁体と、前記通路室のクランク室側領域に配設されて前記抜き側弁体を弁座に着座させる方向に付勢可能であり且つクランク室内圧に感応して変位可能な感圧部材とを備えており、前記抜き側弁体が前記弁座に着座するときの当該弁体によるシール面積と、前記感圧部材の有効面積とが近似又は一致するように設定されていることを特徴とする。
【0014】この構成によれば、バルブハウジング内での作動ロッドの軸方向配置に応じて抜き側弁部と入れ側弁部との連係を図りながらクランク室の内圧(クランク圧Pc)を最適化して圧縮機の吐出容量を調節することができる。更に、抜き側弁部における通路室内での抜き側弁体の配置は少なくとも、クランク圧Pcに感応する感圧部材に影響される。感圧部材はそれ自体が持つ付勢力(f1とする)によって抜き側弁体を弁座に着座させる方向に付勢する一方、感圧部材に作用するクランク圧Pcは抜き側弁体を弁座から離間させる方向に感圧部材を変位させるべく働く。その力は感圧部材の有効面積をAとするとPc・Aで表される。他方、抜き側弁体は、クランク室側領域のクランク圧Pcによって着座方向に押圧される一方で、吸入室側領域の吸入圧Psによって弁座から離間させる方向に押圧される。抜き側弁体が弁座に着座するときの当該弁体によるシール面積をBとし、弁体を弁座に着座させる方向を正方向として抜き側弁体に働く力を式にまとめると、f1−Pc・A+Pc・B−Ps・B=0となり、これを整理すると、f1=Ps・B+Pc(A−B)となる。本発明では、弁体によるシール面積Bと、感圧部材の有効面積Aとが近似又は一致するように設定されるため、前記式のPc(A−B)項はゼロ又は無視できるほどに小さいと考えてよい。すると結局、抜き側弁体に作用する力の関係式は、f1=Ps・Bとなり、Pcは全く含まれない。即ちこの構成によれば、一見クランク圧Pcが抜き側弁体に作用しているようで、実際にはクランク圧Pcは抜き側弁体の位置決めに一切関与しない。そして上記の計算結果からこの制御弁が抜き側制御弁として機能したときの弁開度調節動作によって最終的に実現される吸入圧(設定吸入圧)は、Ps=f1/Bとなる。このように本発明によれば、クランク圧Pcの影響を弁開度決定の力学関係から完全に排除できると共に吸入圧Psのみで弁開度を決定できる、つまり(Pc−Ps)差圧が抜き側弁体の位置決めに影響を及ぼす余地がない。このため、抜き側弁体による弁座でのシール面積を拡大するような設計を採用したとしても、抜き側弁体の前後差圧に起因してPc/Psゲインが低下することはあり得ず、制御弁によるクランク圧Pcの制御性が格段に向上する。
【0015】請求項2の発明は、請求項1に記載の容量可変型圧縮機の制御弁において、前記作動ロッドの先端部は、前記通路室の吸入室側領域に配置されており、前記制御弁は更に、外部からの電気制御によって調節可能な付勢力でもって前記抜き側弁体を弁座から離す方向に作動ロッドを付勢可能なソレノイド部を備えることを特徴とする。
【0016】この構成によれば、ソレノイド部が発生するところの電気制御により調節可能な付勢力(F)は前記感圧部材の付勢力(f1)と真っ向から対抗し、その付勢力f1を見掛け上減殺する。つまり、構成上制御弁にソレノイド部が加わることで抜き側弁体の位置決めに関する力学関係式がPs=(f1−F)/Bとなり、ソレノイド部の付勢力Fの調節次第で最終的に実現される吸入圧(設定吸入圧)を変更することが可能となる。故に、この構成によれば、抜き側弁部における設定吸入圧を外部から変更可能な設定吸入圧可変型の制御弁が実現される。
【0017】請求項3の発明は、請求項2に記載の容量可変型圧縮機の制御弁において、前記入れ側弁部によって給気通路が開放されると共に前記抜き側弁部においては前記抜き側弁体が弁座に着座することで該弁体と弁座との間を経由する抽気通路が閉塞状態にあるときに、前記抜き側弁部には、抜き側弁体内に形成された内部通路を経由してクランク室から吸入室へのガス流通を許容する内部循環経路が確保されることを特徴とする。
【0018】この構成によれば、抜き側弁体が弁座に着座することで該弁体と弁座との間を経由する抽気通路が閉塞状態にあるとき、即ち抜き側弁部が実質的に抽気通路を開度ゼロの状態に制御しているときでも、抜き側弁部の抜き側弁体内に形成された内部通路を経由して、圧縮機内でのガスの内部循環を許容する経路が確保される。このため、抽気通路の閉塞によりクランク圧が上昇し圧縮機の吐出容量が最小化したときでも、内部循環するガスによって潤滑オイルのミスト化及び搬送が維持され圧縮機の焼付き等が回避され得る。
【0019】請求項4の発明は、請求項3に記載の容量可変型圧縮機の制御弁において、前記バルブハウジングには、前記通路室の吸入室側領域において前記作動ロッドの先端部が進入離脱可能な中間ポートが形成されており、前記内部循環経路は、前記抜き側弁体の内部通路と、前記作動ロッド先端部の前記中間ポートへの進入により作動ロッド先端部の外周面と中間ポートの内周面との間に作り出されるサイドクリアランスとによって構成されることを特徴とする。
【0020】これは、抜き側弁部が実質的に抽気通路を開度ゼロの状態にする際の内部循環経路の好ましい態様を限定したものである。この構成によれば、何らかの理由で抜き側弁体が作動ロッド先端部から大きく離れたとしても、作動ロッド先端部が中間ポート内に常駐する限り、作動ロッド先端部の外周面と中間ポートの内周面との間に作り出されるサイドクリアランスが維持される。従って、このサイドクリアランスによって内部循環時におけるガス流量をほぼ一定に規制することが可能となる。なお、前記サイドクリアランスが内部循環経路を流れるガス流量を規定するための絞りとして機能することは好ましい。
【0021】請求項5の発明は、請求項2〜4のいずれか一項に記載の容量可変型圧縮機の制御弁において、前記抜き側弁部内に作動ロッドの先端部が配置され、前記ソレノイド部内に作動ロッドの基端部が配置され、更に前記抜き側弁部と前記ソレノイド部との間に入れ側弁部が配置されており、前記入れ側弁部には、入れ側弁部内を軸方向に縦断する作動ロッドを収容すると共に前記給気通路の一部を構成するロッド挿通路が設けられ、前記作動ロッドには、その軸方向変位に応じて前記ロッド挿通路を開放又は閉塞可能な入れ側弁体が設けられ、前記ソレノイド部への電気制御に基づく作動ロッドの軸方向変位に起因して前記ロッド挿通路が実質的に開閉制御されることを特徴とする。
【0022】これは、作動ロッドを介して抜き側弁部と入れ側弁部とを連係させる際の入れ側弁部及び作動ロッドの好ましい態様を限定したものである。本構成によれば、抜き側弁部と入れ側弁部のいずれか一方を選択的に弁開度調節状態(実質的な作動状態)におき、他方を実質的な休止状態とするような連係を図ることが容易になる。
【0023】請求項6の発明は、請求項5に記載の容量可変型圧縮機の制御弁において、前記ソレノイド部への通電時には、作動ロッドの入れ側弁体がロッド挿通路を実質的に閉状態にすると共に作動ロッドが抜き側弁部に作動連結され、当該抜き側弁部が、前記ソレノイド部への通電量に応じて変化する作動ロッドの付勢力に基づいて設定吸入圧を変更可能な設定吸入圧可変型の抜き側制御弁として機能することを特徴とする。
【0024】請求項6及び7は、外部から電気制御されるソレノイド部と、抜き側弁部及び入れ側弁部との好ましい関係について言及したものである。請求項6で言及するソレノイド部への通電時には、当該制御弁は設定吸入圧可変型の抜き側制御弁として機能する。
【0025】請求項7の発明は、請求項6に記載の容量可変型圧縮機の制御弁において、前記ソレノイド部への非通電時には、前記作動ロッドを初期位置に戻すことで前記入れ側弁部のロッド挿通路を開状態に導くと共に、作動ロッドと抜き側弁部との作動連結を解除することで前記抜き側弁体と弁座との間を経由する抽気通路を閉状態に導くための初期化手段を更に備えていることを特徴とする。
【0026】この構成によれば、ソレノイド部への非通電状況下では初期化手段の自発的作用によって、給気通路(ロッド挿通路)が開状態となり抽気通路(抜き側弁体と弁座との間)が閉状態となってクランク圧が上昇する状況が作られる。つまり圧縮機の吐出容量が最小化される結果、圧縮機の負荷トルクをゼロ又は最小にする状況が、ソレノイド部への通電停止に同期して出現する。従って、容量可変型圧縮機の安全性(非常事態に対する安全化対応能力)が高まる等のメリットが生ずる。
【0027】請求項8の発明は請求項2〜7のいずれか一項に記載の容量可変型圧縮機の制御弁において、前記作動ロッドの先端部とは反対側の端部を収容する領域には前記クランク室の内圧が導かれ、更に前記抜き側弁体によるシール面積(B)は、前記感圧部材の有効面積(A)と前記作動ロッドの反対側端部における有効受圧面積(S1)との和に一致するように設定されていることを特徴とする。又、請求項9の発明は、請求項2〜7のいずれか一項に記載の容量可変型圧縮機の制御弁において、前記作動ロッドの先端部とは反対側の端部を収容する領域には前記吸入室の圧力が導かれ、且つ前記抜き側弁体によるシール面積(B)は前記感圧部材の有効面積(A)に一致するように設定されていることを特徴とする。
【0028】請求項8及び9は本発明の最も好ましい態様を限定したものであり、その技術的意義は後記「発明の実施の形態」の説明で明らかとなる。尚、請求項8は、請求項1における「抜き側弁体によるシール面積と感圧部材の有効面積とを近似させる」の一文における近似幅の一例を示すものである。
【0029】
【発明の実施の形態】本発明をクラッチレスタイプの容量可変型斜板式圧縮機に組み込まれる容量制御弁に具体化した一実施形態を図面を参照して説明する。
【0030】(圧縮機本体の概要):図1に示すように、斜板式圧縮機は、シリンダブロック1と、その前端に接合されたフロントハウジング2と、シリンダブロック1の後端に弁形成体3を介して接合されたリヤハウジング4とを備えている。これら1,2,3及び4は、複数の通しボルト(図示略)により相互に接合固定され、圧縮機のハウジングを構成する。シリンダブロック1とフロントハウジング2とに囲まれた領域にはクランク室5が区画されている。クランク室5内には駆動軸6が、ハウジング内に設けられた複数のラジアル軸受け6a,6bによって回転可能に支持されている。シリンダブロック1の中央に確保された凹部内にはコイルバネ7及び後側スラスト軸受け8が配設されている。他方、クランク室5において駆動軸6上には回転支持体11が一体回転可能に固定され、この回転支持体11とフロントハウジング2の内壁面との間には前側スラスト軸受け9が配設されている。駆動軸6は、バネ7で前方付勢された後側軸受け8と前側軸受け9とによってスラスト方向に支持されている。
【0031】フロントハウジング2の前端円筒部上には、ベアリング31を介してプーリ32が回転可能に支持されている。プーリ32はボルト33によって駆動軸6の前端部に固着され、駆動軸6に一体化されている。プーリ32は動力伝達ベルト34を介して外部駆動源としての車輌エンジンEに作動連結されている。従って、エンジンEの駆動中は常時、プーリ32及び駆動軸6は一体回転される。
【0032】クランク室5内にはカムプレートたる斜板12が収容されている。斜板12の中央部には挿通孔が貫設され、この挿通孔に駆動軸6が挿通されている。この斜板12は、連結案内機構としてのヒンジ機構13を介して回転支持体11及び駆動軸6に作動連結されている。ヒンジ機構13は、回転支持体11のリヤ面から突設されたガイド孔付きの支持アーム14と、斜板12のフロント面から突設された球状頭部付きのガイドピン15とで構成されている。そして、ヒンジ機構13を構成する支持アーム14とガイドピン15との連係および斜板12の中央挿通孔内での駆動軸6との接触により、斜板12は駆動軸6と同期回転可能であると共に、駆動軸6の軸方向へのスライド移動を伴いながら駆動軸6に対して傾動可能となっている。
【0033】回転支持体11と斜板12との間には傾角減少バネ16(好ましくは駆動軸6に巻装されたコイルバネ)が設けられている。この傾角減少バネ16は斜板12をシリンダブロック1に接近する方向(即ち傾角減少方向)に付勢する。斜板12よりも後方の駆動軸6上には後退規制部17(好ましくはサークリップ)が設けられている。この後退規制部17はそれ以上の斜板12の後退を規制することで斜板12の最小傾角θmin(例えば3〜5°)を規制する。他方、斜板12の最大傾角θmaxは、斜板12のカウンタウェイト部12aが回転支持体11の規制部11aに当接することで規制される。
【0034】シリンダブロック1には、駆動軸6を取り囲むように複数のシリンダボア1a(一つのみ図示)が形成され、各シリンダボア1aには片頭型のピストン18が往復動可能に収容されている。各ピストン18の端部は一対のシュー19を介して斜板12の外周部に係留され、これによりピストン18と斜板12とは作動連結されている。更に、弁形成体3とリヤハウジング4との間には、圧縮機の中心域に位置する吸入室21と、それを取り囲む吐出室22とが区画されている。弁形成体3には各シリンダボア1aに対応して、吸入ポート23及び同ポート23を開閉する吸入弁24並びに吐出ポート25及び同ポート25を開閉する吐出弁26が設けられている。吸入ポート23を介して吸入室21と各シリンダボア1aとが連通され、吐出ポート25を介して各シリンダボア1aと吐出室22とが連通される。
【0035】図1の斜板式圧縮機では、エンジンEからの動力供給により駆動軸6が回転されると、それに伴い所定角度θに傾斜した斜板12が回転する。すると、各ピストン18が斜板の傾角θに対応したストロークで往復動され、各シリンダボア1aでは、吸入室21(吸入圧Psの領域)からの冷媒ガスの吸入、圧縮、吐出室22(吐出圧Pdの領域)への圧縮冷媒ガスの吐出が順次繰り返される。
【0036】斜板12の傾角θは、斜板回転時の遠心力に起因する回転運動のモーメント、傾角減少バネ16の付勢作用に起因するバネ力によるモーメント、ピストン18の往復慣性力によるモーメント、ガス圧によるモーメント等の各種モーメントの相互バランスに基づいて決定される。ガス圧によるモーメントとは、シリンダボア内圧と、ピストン背圧にあたるクランク室5の内圧(クランク圧Pc)との相互関係に基づいて発生するモーメントであり、クランク圧Pcに応じて傾角減少方向にも傾角増大方向にも作用する。図1の圧縮機では、後述する容量制御弁50を用いてクランク圧Pcを調節し前記ガス圧によるモーメントを適宜変更することにより、斜板12の傾角θを前記最小傾角θminと最大傾角θmaxとの間の任意の角度に設定することができるようになっている。なお、斜板の傾角θとは、駆動軸6に直交する仮想平面と斜板12とがなす角度をいう。このようにクランク圧Pcの制御に基づいて斜板12の傾角が決定され、その傾角に応じて各ピストン18のストローク即ち圧縮機の吐出容量が可変調節される。
【0037】斜板の傾角制御に関与するクランク圧Pcを制御するためのクランク圧制御機構は、圧縮機ハウジング内に設けられた各種の通路27,28と、抜き側弁部V1、入れ側弁部V2及びソレノイド部V3からなる容量制御弁50とによって構成される。即ち、圧縮機ハウジングには、クランク室5と吸入室21とを接続する抽気通路27およびクランク室5と吐出室22とを接続する給気通路28が設けられている(但し、抽気通路27及び給気通路28は制御弁50近傍とクランク室5との間において共通化可能)。抽気通路27の途中には制御弁50の抜き側弁部V1が設けられ、給気通路28の途中には制御弁50の入れ側弁部V2が設けられている。
【0038】圧縮機の吐出室22と吸入室21とは外部冷媒回路40を介して接続されている。この外部冷媒回路40は該圧縮機とともに車輌用空調装置の冷房回路を構成する。外部冷媒回路40には例えば、凝縮器(コンデンサ)41、温度式の膨張弁42及び蒸発器(エバポレータ)43が設けられている。膨張弁42の開度は蒸発器43の出口側に設けられた感温筒42aの検知温度および蒸発圧力に基づいてフィードバック制御され、膨張弁42は熱負荷に見合った液冷媒を蒸発器43に供給して外部冷媒回路40における冷媒流量を調節する。なお、図1に示すように、圧縮機ハウジングにおいて吐出室22と凝縮器41との間には、逆止弁機構35が設けられている。逆止弁機構35は、第一義的には凝縮器41から吐出室22への高圧冷媒の逆流を阻止するためのものであるが、吐出圧Pdが最小傾角θminでの吐出容量に対応する程度の比較的低めの圧力の場合には、閉状態を維持して吐出冷媒ガスが圧縮機の内部を循環するように仕向ける働きもする。
【0039】(圧縮機の電子制御構成):図2に示すように、蒸発器43の近傍には温度センサ44が設置されている。この温度センサ44は蒸発器43の温度を検出し、その蒸発器温度情報を制御コンピュータCに提供する。この制御コンピュータCは車輌用空調装置の冷暖房に関する一切の制御を司る。制御コンピュータCの入力側には、温度センサ44の他に、車輌の室内温度を検出する室温センサ45、車輌の室内温度を設定するための室温設定器46、空調装置作動スイッチ47およびエンジンEの電子制御装置(ECU)が接続されている。他方、制御コンピュータCの出力側には、制御弁50のソレノイド部V3への通電を制御する駆動回路48が接続されている。制御コンピュータCは、温度センサ44から得られる蒸発器温度、室温センサ45から得られる車室内温度、室温設定器46によって設定された所望室温、空調装置作動スイッチ47のON/OFF設定状況およびECUからのエンジンEの起動・停止やエンジン回転数に関する情報等の外部情報に基づいて、ソレノイド部V3への適切な通電量を演算する。そして、その演算した電流値の電流を駆動回路38からソレノイド部V3に供給し、入れ側弁部V2の開度や抜き側弁部V1での設定吸入圧Psetを外部制御する。
【0040】(容量制御弁):図2に示すように容量制御弁50は、その上部を占める抜き側弁部V1と、中間部を占める入れ側弁部V2と、下部を占めるソレノイド部V3とを備えている。抜き側弁部V1は、クランク室5と吸入室21とを繋ぐ抽気通路27の開度(絞り量)を任意調整可能である。入れ側弁部V2は、吐出室22とクランク室5とを繋ぐ給気通路28を主として開閉制御する。ソレノイド部V3は、制御弁50内に配設された作動ロッド80を外部からの通電制御に基づいて変位制御するための電磁アクチュエータである。ソレノイド部V3によって制御される作動ロッド80を介して、抜き側弁部V1と入れ側弁部V2とは、一方が実質的に閉じた状態にあるときに他方が全開状態又は任意開度に調節されるという具合に連係する。このため、かかる連係関係を有する抜き側弁部V1と入れ側弁部V2とを併設した制御弁は、「三方弁型制御弁」と呼ばれる。
【0041】容量制御弁50のバルブハウジング51は、抜き側弁部V1及び入れ側弁部V2の主な外郭を構成する上半部本体51aと、ソレノイド部V3の主な外郭を構成する下半部本体51bとから構成されている。バルブハウジングの上半部本体51aの中心にはその軸方向(図2の垂直方向)に延びるロッド挿通路52が形成され、そのロッド挿通路52内には作動ロッド80が軸方向に移動可能に配設されている。
【0042】図2〜図5に示すように、作動ロッド80は、先端部81、第1連結部82、隔絶部83、第2連結部84、入れ側弁体としての弁体部85および第3連結部(又は基端部)86からなる棒状部材である。いずれの部位81〜86も横断面円形状であるが、部位によって径が異なる。即ち、作動ロッドの先端部81、隔絶部83、弁体部85及び第3連結部86はいずれも外径d1(軸直交断面積S1)で等しい。先端部81と隔絶部83とを連結する第1連結部82及び隔絶部83と弁体部85とを連結する第2連結部84は共に、前記d1よりも小さい外径d2(軸直交断面積S2)を有する。なお、弁体部85の外径については、前記d1よりもごく僅か(Δd1)だけ意図的に小さくする設計(つまり弁体部85の外径がd1−Δd1)も採り得る。作動ロッド80の各部の技術的意義については後述の説明で明らかとなる。
【0043】前記ロッド挿通路52は、作動ロッドの第1連結部82、隔絶部83、第2連結部84及び弁体部85が配置され得る領域にわたって延びており、その内径は前記隔絶部83の外径d1に等しい。つまり、ロッド挿通路52内に配置された隔絶部83により、ロッド挿通路52は抜き側弁部V1側に位置する上部領域と、入れ側弁部V2側に位置する下部領域とに区分される。そして、隔絶部83は前記上下両領域を圧力的に隔絶しており、ロッド挿通路52の上部領域と下部領域とが隔絶部83に沿って連通することはない。
【0044】図3は図2の抜き側弁部V1を拡大して示す。バルブハウジングの上半部本体51aの上部には調節体(アジャスタ)54が螺着され、その結果、上半部本体51a内には、通路室としての感圧室兼用の抜き側弁室53が区画形成されている。弁室53内には抜き側弁体61が配設されている。弁室53の下部を区画するバルブハウジングの内周壁はすり鉢形状をなし、そのすり鉢の傾斜面は、抜き側弁体61が着座する弁座55を提供する。図3に示すように弁体61が弁座55に着座するとき、両者の線接触部LCは環状周縁をなす。そして、弁体61と弁座55との環状線接触部LCを境界として、抜き側弁室53は、上部領域(クランク室側領域)53aと下部領域(吸入室側領域)53bとに区分することができる。
【0045】図3及び図4に示すように、弁室53の底部中央には、弁室53とロッド挿通路52の上部領域とを連通させる中間ポート56が形成されている。この中間ポート56は、ロッド挿通路52の上端とみなすこともできるが、作動ロッドの先端部81と協働して絞り(通過断面積の小さい通路)を構成するという特別な役目をも担うポートである。即ち、中間ポート56の内径は、前記作動ロッドの先端部81の外径d1(=ロッド挿通路52の内径)よりも僅か(Δd2)に大きく設定されている(即ちd1+Δd2)。このため、主として弁室53内に常駐する作動ロッドの先端部81は、作動ロッド80の垂直移動に応じて中間ポート56に進入離脱可能となっている。そして、図3に示すように先端部81が中間ポート56に進入しているときには、両者間に僅かな隙間(Δd2、図示せず、サイドクリアランスと呼ぶ)が確保され、これが後ほど説明するような絞りとして機能する。
【0046】図2及び図3に示すように、抜き側弁室53を区画するバルブハウジングの周壁には、複数の導入ポート57が設けられている。各導入ポート57及び抽気通路の上流部27aを介して、抜き側弁室53はクランク室5に連通されている。抽気通路の上流部27a及び導入ポート57は、クランク圧Pcを弁室の上部領域53aに導くための検圧通路でもある。又、ロッド挿通路52の上部領域を取り囲むバルブハウジングの周壁には、半径方向に延びる複数の導出ポート58が設けられている。各導出ポート58及び抽気通路の下流部27bを介して、吸入室21はロッド挿通路52の上部領域及び中間ポート56に連通されている。故に、中間ポート56が全開状態にあるとき(図4参照)には明らかに、弁室の下部領域53bには吸入圧Psが及ぶ。このように、導入ポート57、抜き側弁室53(上部領域及び下部領域)、中間ポート56、ロッド挿通路52の上部領域並びに導出ポート58は、抜き側弁部V1内においてクランク室5と吸入室21とを結ぶ抽気通路27の一部を構成している。
【0047】図3に示すように、弁室の上部領域53aには、クランク圧Pcに感応して伸縮変位可能な感圧部材としてのベローズ60が配設されている。ベローズ60の上端部は調節体54に固定され、当該上端部が固定端となり下端部が可動端となっている。ベローズ60の内部空間は真空又は減圧状態にされると共に、その内部には伸張バネ60aが配設されている。伸張バネ60aは、調節体54を支座としてベローズ60の下端部(可動端)を伸張方向(下方向)に付勢する。そして、ベローズ60の可動端は前記抜き側弁体61に一体化されている。当該可動端が抜き側弁体61となっていると理解してもよい。抜き側弁体61が弁座55に着座することで前記抽気通路27の連通が遮断される。
【0048】抜き側弁体61には、中間ポート56に向かって開口する凹部63が形成されており、該凹部63には、作動ロッドの先端部81が相対摺動自在に遊嵌されている。凹部63は、作動ロッド先端部81の先端面(天頂面)と対向する底面64と、作動ロッド先端部81の外周面と対向する内周側面65とを有している。凹部の底面64は、作動ロッド80の配置に応じてその先端部81の先端面による面接触を受ける。凹部の内周側面65は、作動ロッド先端部81の外周面と部分的に摺接して相互にガイドし合う関係にあるが、凹部63の内径は、作動ロッド先端部81の外径d1よりも少し(Δd3)だけ大きく設定されている(即ちd1+Δd3)。つまり、作動ロッド先端部81の外周面と凹部の内側周面との間には隙間(Δd3)が確保されている。但し、その隙間(Δd3)は、作動ロッド先端部81が中間ポート56に進入してできる前記隙間(Δd2)よりも明らかに大きい(Δd2<Δd3)。
【0049】更に抜き側弁体61には、内部通路66が形成されている。この内部通路66は、弁体61内を主に径方向に貫通して弁体61の側面に開口すると共に、弁体61の中心域で垂直方向にも延びて前記凹部の底面64に開口している。この内部通路66は、抜き側弁室の上部領域53aと凹部63内とを連通させるものであるが、凹部の底面64が作動ロッド先端部81の先端面による当接を受けている場合には前記連通が遮断される構造となっている。即ち、抜き側弁体61が弁座55に着座することで弁体と弁座との隙間を経由しての弁室の上部領域53aと下部領域53bとの連通が遮断された場合でも、作動ロッド先端部81によって内部通路66の前記底面側開口が閉塞されない限り、弁体内経路(即ち内部通路66並びに凹部の底面64及び内周側面65に沿った経路)を経由して、弁室の上部領域53aと下部領域53bとの連通が確保される。後ほど説明するように、この弁体内経路は、弁体と弁座との間を経由する本来の抽気通路と併存するものではなく、両者は選択的に開放される。
【0050】図2及び図4に示すように、入れ側弁部V2は、ロッド挿通路52の下部領域の他に、バルブハウジングの上半部本体51a内に区画形成された入れ側弁室70を備えている。入れ側弁室70はロッド挿通路52の直下に配置されて該ロッド挿通路の下部領域と連通可能となっている。入れ側弁室70の内径はロッド挿通路52の内径d1よりも明らかに大きい。入れ側弁室70の底壁は後記固定鉄心72の上端面によって提供される。ロッド挿通路52の下部領域を取り囲むバルブハウジングの周壁には、半径方向に延びる複数の導入ポート67が設けられている。ロッド挿通路52の下部領域は、各導入ポート67及び給気通路の上流部28aを介して吐出室22と連通する。又、入れ側弁室70を取り囲むバルブハウジングの周壁には、半径方向に延びる複数の導出ポート68が設けられている。各導出ポート68は、抽気通路の下流部28bを介して入れ側弁室70をクランク室5に連通させる。即ち、導入ポート67、ロッド挿通路52の下部領域、入れ側弁室70及び導出ポート68は、入れ側弁部V2内において吐出室22とクランク室5とを連通させる給気通路28の一部を構成する。又、入れ側弁室70には、導出ポート68を介してクランク圧Pcが及んでいる。
【0051】図2に示すように、入れ側弁室70内には作動ロッド80の弁体部85が配置される。作動ロッド80が図2の状態から上動されると、図4に示すように弁体部85がロッド挿通路52の下部領域に進入し該挿通路52を塞ぐ。故に、作動ロッドの弁体部85は、ロッド挿通路52の下部領域を選択的に開放・閉塞することで給気通路28を実質的に開閉可能な入れ側弁体として機能する。この入れ側弁部V2では明確に弁座となるべきものは特段必要なく、ロッド挿通路52の下部領域が弁体部85によって閉塞される弁孔の役目を果たす。
【0052】弁体部85の外径とロッド挿通路52の内径とを一致させる設計の場合には、この入れ側弁部V2は完全な開閉弁として機能する。他方、前述のように弁体部85の外径をロッド挿通路52の内径よりも若干小さくし、(d1−Δd1)とする設計もあり得る。この場合には、図4のように弁体部85がロッド挿通路52の下部領域に進入しても、厳密に言えばロッド挿通路52は完全には閉じていない。しかし、進入前のロッド挿通路52の連通断面積に比して進入後の連通断面積は大きく絞られるため、その進入動作によって入れ側弁部V2が実質的に閉じられると理解してよい。そして、その進入時には、ロッド挿通路52の内径と弁体部85の外径との差Δd1に相当する絞りがロッド挿通路52の下部領域(つまり給気通路28の途中)に出現することになる。この入れ側弁部V2に出現した絞りは、抜き側弁部V1が実質的な作動状態にあるときにおいて、いわゆるブローバイガスの不足を補うための補助給気通路として機能し得る。ちなみに、ブローバイガスとは、ピストン18の圧縮動作に伴いピストン18の周囲からクランク室5に漏洩してくる冷媒ガスを指し、旧来より抜き側制御におけるクランク圧Pcの昇圧要素として有効利用されている。一般的にブローバイガスの供給は不安定なため、抜き側弁部V1の作動時(即ち入れ側弁部V2の実質的な閉弁時)に、入れ側弁部V2がブローバイガスの不足を補うための補助給気通路として働くことは極めて好ましい。
【0053】図2に示すように、ソレノイド部V3は、有底円筒状の収容筒71を備えている。収容筒71の上部には固定鉄心72が嵌合され、この嵌合により収容筒71内にはソレノイド室73が区画されている。ソレノイド室73には、プランジャとしての可動鉄心74が垂直方向に移動可能に収容されている。固定鉄心72の中心には、作動ロッド80の第3連結部86が垂直方向に移動可能に配置されている。第3連結部86の上端は弁体部85となっている。第3連結部86の下端は、ソレノイド室73内にあって可動鉄心74の中心に貫設された孔に嵌合されると共にかしめにより嵌着固定されている。従って、可動鉄心74と作動ロッド80とは一体となって上下動する。なお、固定鉄心72の中心に形成されたロッド挿通路の内周面と、作動ロッドの第3連結部86の外周面との間には僅かに隙間(図示略)が確保されており、この隙間を介して入れ側弁室70とソレノイド室73とは連通している。従って、本実施形態では、ソレノイド室73にもクランク圧Pcが及んでいる。
【0054】固定鉄心72と可動鉄心74との間には、戻しバネ75が配設されている。戻しバネ75は、可動鉄心74を固定鉄心72から離間させる方向に作用して可動鉄心74及び作動ロッド80を下方に付勢するため、可動鉄心74及び作動ロッド80を図2に示す最下動位置(非通電時の初期位置)に戻すための初期化手段として機能する。
【0055】固定鉄心72及び可動鉄心74の周囲には、これら鉄心72,74を跨ぐ範囲においてコイル76が巻回されている。このコイル76には制御コンピュータCの指令に基づき駆動回路48から所定の電流が供給され、コイル76はその供給電流量Iに応じた大きさの電磁力を発生する。その電磁力によって可動鉄心74が固定鉄心72に向かって吸引され作動ロッド80が上動する。それ故、制御弁50内での作動ロッド80の相対配置はコイル76への通電量Iに影響される。コイル76への通電がない場合には、戻しバネ75の作用により作動ロッド80は図2の最下動位置(初期位置)に配置される。このとき作動ロッド80は、その先端部81が抜き側弁体凹部の底面64から離れて抜き側弁体61との作動連結関係を解除すると共に、弁体部85がロッド挿通路52の下部領域から離脱した状態となる(図2及び図3参照)。つまり、抜き側弁部V1は抜き側弁体61が弁座55に着座した閉状態に陥る一方、入れ側弁部V2は全開状態となる。
【0056】他方、コイル76に対して通電制御範囲の最小電流値の通電があれば、それに基づいて発生する電磁付勢力(上向き)が戻しバネ75の下向き付勢力を凌駕し、作動ロッド80は、その弁体部85がロッド挿通路52の下部領域に進入すると共に、先端部81が抜き側弁体凹部の底面64に当接して抜き側弁体61を今まさに押し上げんとする位置まで上動される。このとき、入れ側弁部V2は完全閉状態(又は実質的な閉状態)に陥る。又、作動ロッドの先端部81が抜き側弁体61に当接することで、ベローズ60(バネ60aを含む)、抜き側弁体61、作動ロッド80及びソレノイド部V3間に作動連結関係が構築される。そして、その作動連結機構を構成している各要素の力学的相互関係に基づいて、抜き側弁室53内での抜き側弁体61の配置(つまり弁体61と弁座55との離間長)が決まり、それに応じて抜き側弁部V1の開度が決定される。つまり、ソレノイド部V3によって調節される電磁付勢力は、感圧室兼用の弁室53内に設けられた感圧機構全体(60,60a)のバネ力に対向して抜き側弁部V1の設定吸入圧Psetを変化させる。換言すれば、コイル76への通電時には、抜き側弁部V1は、外部からの通電量制御に基づいて設定吸入圧Psetを変更可能な設定圧可変型の抜き側制御弁として機能する。
【0057】(制御弁の力学モデルと各部位の好ましい寸法関係):本件の容量制御弁50が、従来公知の制御弁と異なり抜き側弁部V1での感圧室兼用の弁室53にクランク圧Pcを導入する構成にもかかわらず各部位の寸法関係を工夫することにより、吸入圧Psに感応して弁開度調節動作が可能な設定吸入圧可変型の制御弁となり得ることを、図5を参照して説明する。図5は、コイル76への通電により抜き側弁体61と作動ロッド80とが作動連結状態となり本件の制御弁50が主として抜き側制御弁として機能するときの状況を示す。この図には、作動ロッド80及び二つの弁体(61,85)に作用するガス圧並びに機械的及び電気的付勢力が模式的に示されている。
【0058】図5では、ベローズ60と伸張バネ60aとを併せたベローズ全体の下向き付勢力をf1、戻しバネ75の下向き付勢力をf2、コイル通電時における作動ロッド80の上向き電磁付勢力をFで表している。又、ベローズ60の有効面積をAとし、抜き側弁体61が弁座55に着座するときの弁体による実質的なシール面積をBとしている。更に、作動ロッド80の下端部に固着された可動鉄心74の上下面に作用する圧力Pcの相殺状況を勘案すると、圧力Pcに関する限り、ソレノイド室73内にある作動ロッド下端部の有効受圧面積は、作動ロッドの第3連結部(基端部)86の軸直交断面積S1に等しいと考えてよい。
【0059】すると図5に示すように、抜き側弁体61にはベローズの機械的な付勢力f1が下向きに作用する。ベローズ60の可動端が弁体61の上面に固着されているため、クランク圧Pcに関する抜き側弁体61の実質的な受圧面積は、シール面積Bからベローズ有効面積Aを控除した分となる。故に、抜き側弁体61には、クランク圧Pcが抜き側弁体61を閉弁方向に押す力Pc(B−A)と、吸入圧Psが抜き側弁体61を開弁方向に押す力Ps(B−S2)とが作用する。作動ロッドの隔絶部83には、その上下差圧に基づいて作動ロッド80を押し上げようとする力(Pd−Ps)×(S1−S2)が作用する。作動ロッドの弁体部85には、その上面に作用する吐出圧に基づいて作動ロッド80を押し下げようとする力Pd(S1−S2)が作用する。作動ロッド80の下端部には、ソレノイド室73に及んでいるクランク圧に基づいて作動ロッドを押し上げようとする力Pc・S1が作用する。更に作動ロッド80には、バネ力f2によって減殺された上向きの電磁付勢力Fが作用する。図5に示した各種の力のバランスに基づいて作動ロッド80の配置(つまりは抜き側弁部V1の開度)が決定される。下向きをプラス方向、上向きをマイナス方向としてこれらの力を等式にまとめると、次の数1式に示す関係が成立し、更にそれを整理すると数2式が得られる。
【0060】
【数1】

【0061】
【数2】

前記数1式から数2式に整理する過程で、+Ps・S2項と、−Ps・S2項とが相殺された。このことは、第1連結部82の周囲に及んでいる吸入圧Psが作動ロッド80に及ぼす影響は、第1連結部82の断面積S2に依存しないことを意味する。又、前記整理過程で、−Pd(S1−S2)項と、+Pd(S1−S2)項とが相殺された。このことは、第2連結部84の周囲に及んでいる吐出圧Pdが作動ロッドに及ぼす影響は、隔絶部及び弁体部の断面積S1並びに第2連結部84の断面積S2にかかわらず常にキャンセルされることを意味する。かかる次第で数2式には、断面積S2及び吐出圧Pdは含まれていない。
【0062】この制御弁50において、A≒B、且つ、S1<B(最も好ましくはA+S1=B)の面積条件を満たすように、ベローズ60の有効面積Aと、弁体61によるシール面積Bと、作動ロッド下端部の有効受圧面積S1とを設定することで、数2式中のPc(B−A−S1)項は、ゼロ又は無視してよい程度に小さなものとなる。故にこの面積条件に従えば数2式から数3式が導かれる。
【0063】
【数3】

数3式において、f1,f2,A,B及びS1は機械設計の段階で予め定められる定数値とみなし得る一方で、電磁付勢力Fはコイル76への通電量Iの関数である。そして、数3式から吸入圧Psはこれらパラメータのみによって一義的に規定でき、クランク圧Pcには一切依存しない物理量となる。つまり、該制御弁が抜き側制御弁として機能するときの設定吸入圧Psetはコイルへの通電量Iに応じて可変設定でき、該制御弁を外部制御による設定吸入圧可変型の吸入圧感応の制御弁として機能させることができる。なお、数3式から分かるように、この制御弁では、コイルへの通電を停止した場合(つまりF=0)に、設定吸入圧が最大となり、コイルへの通電量を増すに連れて設定吸入圧が低下する。この意味で、制御弁のソレノイド部V3と制御コンピュータCは制御弁の設定吸入圧Psetを外部的に設定変更する手段と位置づけられる。
【0064】(作用):容量可変型圧縮機の制御時の基本動作について説明する。まず、車輌エンジンEが停止された状況では、制御弁50のコイル76への通電はない。そのとき、図2及び図3に示すように、抜き側弁体61と作動ロッド80とは作動連結状態になく、抜き側弁体61は、主としてベローズの付勢力f1によって弁座55に着座させられ抜き側弁部V1は全閉状態とされる。又、戻しバネ75の下向き付勢力f2によって作動ロッド80は最下動位置(初期位置)に配置され、入れ側弁部V2は全開状態とされる。圧縮機の運転停止状態が長時間続いた場合には、圧縮機の各室5,21,22の圧力が均一化し、斜板12は傾角減少バネ16の付勢作用によって最小傾角に保持される。
【0065】エンジンEが駆動されると、クラッチレス圧縮機は必然的に運転を開始する。但し、空調装置作動スイッチ47がOFFされたままではコイル76への通電はなく、制御弁はV1全閉且つV2全開の状態を維持し、斜板12の傾角もほぼ最小に維持されて圧縮機は最小容量での吐出動作を行う。起動後に圧縮機が最小吐出容量で運転されてもしばらくの間は、吐出室22での吐出圧Pdは逆止弁機構35を押し開くまでに高まらない。このため、各シリンダボア1aから吐出室22に吐き出された冷媒ガスは逃げ場を求めて、給気通路の上流部28a、全開状態の入れ側弁部V2および給気通路の下流部28bを経由してクランク室5に流れ込む。この制御弁50では、クランク室5に流れ込んだガスは、抽気通路の上流部27a、抜き側弁部V1および抽気通路の下流部27bを経由して吸入室21に戻されるのであるが、このときの抜き側弁部V1内でのガス流通経路に特徴がみられる。
【0066】つまり、コイル76の非通電時には、ベローズの付勢力f1によって抜き側弁体61が弁座55に着座させられ、弁体61と弁座55との間の本来の抽気通路は閉ざされる。その代わりに、作動ロッド先端部81の先端面が弁内凹部の底面64から離間し、抜き側弁室の上部領域53aと下部領域53bとの間には、弁体61の内部通路66、底面64及び内周側面65に沿った隙間(Δd3)を経由する別の連通経路が確保される。又、コイル76の非通電時には、作動ロッド先端部81が中間ポート56に進入して両者間にサイドクリアランス(Δd2)が確保され、このサイドクリアランスを介して抜き側弁室の下部領域53bと導出ポート58との連通が確保される。即ち、コイル76の非通電時(抜き側弁部V1が自律的な開度調節動作を行わないとき)には少なくとも、抜き側弁体の内部通路66〜サイドクリアランスを経由する新たなガス流通経路が確保される。このため、空調装置作動スイッチ47のOFF状況下、圧縮機が最小吐出容量で常時運転される場合でも、圧縮機内には、吸入室21→シリンダボア1a→吐出室22→28a→入れ側弁部V2(全開)→28b→クランク室5→27a→抜き側弁部V1(内部通路66〜サイドクリアランス経由)→27b→吸入室21という冷媒ガスの内部循環経路が確保され、この経路に沿って冷媒ガスが内部循環する。
【0067】なお、隙間Δd3よりもサイドクリアランスΔd2の方が小さいため、内部通路66〜サイドクリアランスを経由する連通経路は、前記Δd2に相当する固定絞り付きの通路とみなし得る。故に前記内部循環経路の冷媒ガス流量は、固定絞り的なサイドクリアランスΔd2によって規制される。このため、何かの理由でクランク圧Pcが上昇し弁体61が不意に上動することが仮にあったとしても、コイル76への非通電が維持される限り作動ロッドの先端部81は中間ポート56内に保持され、サイドクリアランスΔd2が固定絞りとして維持される。
【0068】クラッチレス圧縮機において、上述のような冷媒ガスの内部循環は極めて重要な意義を持つ。というのも、圧縮機のクランク室等には摺動部材間の潤滑を図るための潤滑オイルを入れているが、その潤滑オイルを常に摺動部位に供給するためには、ガスの流れを利用してオイルをミスト化すると共にガス流に乗せてオイルを搬送する必要があるからである。かかるガス流が圧縮機内に存在しない場合には、摺動部位からオイルが流れ落ちて部材の焼付き等の不具合を生ずるおそれがある。この点、本実施形態の圧縮機ではそのような不具合は生じない。
【0069】さて、エンジンEの駆動中に空調装置作動スイッチ47がONされると、制御コンピュータCは、制御弁のコイル76への通電を開始する。コイル76への電力供給によって電磁付勢力Fが発生すると、作動ロッド80が戻しバネ75の下向き付勢力f2に抗して上動し、入れ側弁部V2が実質閉状態に陥ると共に、抜き側弁部V1がソレノイド部V3に作動連結された状態で弁開度調節可能になる(図4参照)。抜き側弁部V1の開度(つまり弁室53内での抜き側弁体61の配置)は、前記数3式にあらわれた種々のパラメータの相互バランスによって決まる。そして、抜き側弁部V1は、作動ロッド80の電磁付勢力Fが外部からの通電制御によって可変である点を除けば、吸入圧Psに感応して自律的に開度調節を行う通常の内部制御弁として機能する。
【0070】冷房負荷が大きい場合:冷房負荷が大きくなるにつれ、蒸発器43の出口側圧力(即ち吸入圧Ps)が次第に大きくなり、例えば室温センサ45の検出室温と室温設定器46の設定温度との差が大きくなる。このとき、増大傾向の冷房負荷に見合う圧縮機の吐出能力を確保するため、制御コンピュータCは、検出室温と設定室温とに基づいて設定圧Psetを変更すべくコイル76への供給電流値を制御する。具体的には、検出室温が高いほど供給電流値を大きくし、電磁付勢力Fを増大させる。このことは制御弁50の設定吸入圧Psetを低めに誘導(又は再設定)することを意味する。従って、コイル76への供給電流値の増大により、抜き側弁部V1は現状よりも更に低い吸入圧Psを実現すべく弁開度が大きくなる。すると、クランク室5から放出される冷媒ガス量が多くなる。他方、入れ側弁部V2は実質閉状態にあるため、クランク室5からのガス放出量が超過となりクランク圧Pcが低下する。加えて、冷房負荷が大きい状態ではシリンダボア1aに吸入されるガス圧つまり吸入圧Psも相対的に高く、シリンダボア1aの内圧とクランク圧Pcとの差が小さくなる。故に、斜板12の傾角が大きくなって吐出容量が増大する。
【0071】冷房負荷が小さい場合:冷房負荷が小さくなるにつれ、蒸発器43の出口側圧力(即ちPs)が次第に小さくなり、例えば室温センサ45の検出温度と室温設定器46の設定温度との差も小さくなる。このとき、圧縮機の吐出能力を減少傾向の冷房負荷に見合ったものとするため、制御コンピュータCは設定吸入圧Psetを変更すべくコイル76への供給電流値を制御する。具体的には、検出室温が低いほど供給電流値を小さくし、電磁付勢力Fを減少させる。このことは制御弁50の設定吸入圧Psetを高めに誘導(又は再設定)することを意味する。すると、抜き側弁部V1は設定吸入圧Pset相当の吸入圧Psを実現すべく弁開度が小さくなる。すると、クランク室5からのガス放出量が、シリンダボア1aからのブローバイガス量(又はそのブローバイガス量と前記補助給気通路を経由してのクランク室5への補助供給量との和)を下回り、クランク圧Pcが上昇傾向となる。加えて、冷房負荷が小さい状態ではシリンダボア1aに吸入されるガス圧(吸入圧Ps)も相対的に低く、シリンダボア1aの内圧とクランク圧Pcとの差が大きくなる。故に、斜板12の傾角が小さくなって吐出容量が低下する。
【0072】ちなみに、コイル76への通電時においても、圧縮機内での冷媒ガスの内部循環は確保される。但しその場合には、圧縮機の吐出容量がある程度大きくなっていること、及び、入れ側弁部V2が実質閉状態にあることから、ブローバイガスが重要な役目を果たし、主として次のような内部循環経路となる。即ち、吸入室21→シリンダボア1a→クランク室5(ブローバイ)→27a→抜き側弁部V1(弁体61と弁座55間経由)→27b→吸入室21という経路である。又、圧縮動作に伴ってシリンダボア1aから吐出室22に吐き出された冷媒ガスは、外部冷媒回路40を経由して吸入室21に戻ってくる。従って、圧縮機内部の全領域においてガス流が存在し、潤滑オイルのミスト化及び搬送が確保される。
【0073】更に制御コンピュータCは、例えば、空調装置作動スイッチ47がOFFされた場合、ECUからの情報及び指令に基づいて加速カットモードに入る場合、蒸発器43の温度がフロスト発生温度に近づいた場合等に、コイル76への通電を停止する。通電停止によってソレノイド部V3の電磁付勢力Fが消失すると、作動ロッド80が戻しバネ75の作用により即座に最下動位置(初期位置)に配置され、抜き側弁部V1が実質閉状態になると共に入れ側弁部V2が全開状態となる。その結果、吐出室22から多量の高圧冷媒ガスが給気通路28を介してクランク室5に導入されてクランク圧Pcが高くなり、即座に斜板12が最小傾角状態となって圧縮機の吐出能力が最小化される。尚、不意にエンジンEがストールして空調装置への電力供給が遮断された場合も、これと同様の動作となる。
【0074】次の表1は、以上説明した制御弁50の動作特性をまとめたものである。
【0075】
【表1】

(効果):本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0076】〇 単一の制御弁50に抜き側弁部V1と入れ側弁部V2とを併設すると共に作動ロッド80を介して両弁部V1,V2の連係を図ることにより、状況に応じて当該制御弁を抜き側制御弁又は入れ側制御弁として選択的に機能させることができる。従って、単独の抜き側制御弁又は単独の入れ側制御弁が有する欠点を補って、それぞれの長所のみを効果的に発揮することができる。
【0077】〇 抜き側弁部V1における感圧室兼用の弁室53内に感圧部材としてのベローズ60を配設し且つその配設領域にクランク圧Pcを導入すると共に、ベローズ60の有効面積Aと抜き側弁体61によるシール面積Bとを近似設定することにより、制御弁50を、前記数3式に従う制御特性を有する設定吸入圧可変型の吸入圧感応の制御弁とすることができる。即ち、作動ロッド80には吐出圧Pdやクランク圧Pcが見掛け上作用するにもかかわらず、作動ロッド80と抜き側弁体61との作動連結時には、抜き側弁体61は、PdやPcの影響を受けることなくPsに基づいて自律的に位置制御されて適切な弁開度を実現する。また、外部からの通電制御により電磁付勢力Fを適宜調節することで、抜き側弁体61による自律的な弁開度調節動作の最終目標値となる設定吸入圧Psetを高精度に設定及び変更することができる。
【0078】かかる制御弁により容量制御される圧縮機を車輌用空調装置の冷房回路に組み込めば、蒸発器43での冷房負荷の変動に応じて圧縮機の吐出容量が適宜最適化され、吸入室21の内圧(吸入圧Ps)にほぼ等しい蒸発器43の出口圧力を所望の圧力値(即ち設定吸入圧Pset)付近に安定維持して、車室内温度を常に所望温度付近に維持することが可能となる。
【0079】〇 抜き側弁部V1におけるベローズ60の配設領域にクランク圧Pcを導入すると共に、ベローズ60の有効面積Aと抜き側弁体61によるシール面積Bとを近似設定することにより、抜き側弁体61がその上下差圧(Pc−Ps)やクランク圧Pcの絶対値に影響されることなく、吸入圧Psのみに感応して動作する構造となる(前記数3式参照)。このため、抜き側弁体61によるシール面積Bを拡大する設計を採用しても何の支障も生じない。つまり抜き側弁体61は、(Pc−Ps)差圧やクランク圧Pcの大小にかかわりなく吸入圧Psに感応して動作するため、吸入圧変化ΔPsに抜き側弁体61が敏感に反応し僅かに垂直変位するだけで、弁体61と弁座55との間を通過するガス流量が大きく変化するようになる。このような特性のため、制御弁50の抜き側弁部V1は、Pc/Psゲインが格段に高まる。それ故、この制御弁50を組み込んだ圧縮機は、熱負荷(又は冷房負荷)の変化に対応した容量調節の迅速性及び的確性に優れたものとなり、従来技術にみられたような吸入圧Psのハンチング現象を抑制又は回避することが可能となる。
【0080】〇 ソレノイド部V3の不活性時(コイル76への非通電時)において、抜き側弁部V1が実質的な閉状態にある結果、圧縮機が最小吐出容量で運転される場合でも、抜き側弁体61の内部を経由する冷媒ガスの内部循環経路が確立され、圧縮機内でのガス流通による各摺動部位のオイル潤滑が確保される。このため、本件の制御弁50は、外部駆動源が停止しない限り必然的に連続運転を強いられるクラッチレス圧縮機用として極めて優れた適性を持つ。
【0081】〇 制御弁50の入れ側弁部V2において、前述のように作動ロッドの弁体部85の外径をロッド挿通路52の内径よりも小さくし(d1−Δd1)とする設計を採用した場合には、コイル76の通電時において、弁体部85の外周面とロッド挿通路52の内周面との間の間隙(周面クリアランス)を補助給気通路として機能させることができる。従って、圧縮機の吐出容量が比較的小さくブローバイガスが不足がちになるときでも、前記補助給気通路を経由してクランク室5に供給されるガスによってブローバイガスの不足分を補い、抜き側制御時におけるクランク圧Pcの昇圧性を向上させることができる(一般的な抜き側制御方式の欠点を克服)。
【0082】(別例)上記実施形態を以下のように変更してもよい。
〇 図2〜図5の制御弁では、ソレノイド室73に入れ側弁室70と同じクランク圧Pcを導いていたことから前記数1式および数2式のような関係が成立すると共に、数2式から数3式を導く過程で、A≒B、且つ、S1<B(又はA+S1=B)の面積条件を必要とした。これに対し、前記制御弁においてソレノイド室73に導入する圧力をクランク圧Pcではなく吸入圧Psとすることで、より簡素で且つ制約の少ない面積条件でもって、Pcに依拠しない設定吸入圧可変型の制御弁を構成することができる。図6はそのような制御弁の概要を示す。図6の制御弁の構成から、次の数4式(前記数1式に対応する)が成立し、更にそれを整理すると数5式(前記数2式に対応する)が得られる。
【0083】
【数4】

【0084】
【数5】

前記数4式から数5式に整理する過程で、Pd,S1及びS2が好都合にも完全消去された。つまり図6の制御弁の動作は、吐出圧Pdやロッド各部の断面積S1及びS2に全く左右されない。更にこの制御弁において、A=Bの面積条件を満たすように、ベローズ60の有効面積Aと、弁体61によるシール面積Bとを設定することで、数5式中のPc(B−A)項はゼロとなる。故にこの面積条件に従えば数5式から数6式(前記数3式に対応する)が導かれる。
【0085】
【数6】

数6式において、f1,f2及びBは機械設計の段階で予め定められる定数値とみなし得る一方、電磁付勢力Fはコイルへの通電量Iの関数である。従って、図6の制御弁についても、図5の制御弁と同様、外部制御による設定吸入圧可変型の吸入圧感応の制御弁として機能する。尚、図6のようにソレノイド室73に吸入圧Psをもたらして作動ロッド80の下端部にPsを作用させる構成にすれば、面積条件がA=Bという簡素なものとなるのみならず、シール面積Bとロッド端部の有効受圧面積S1との大小関係に関する付帯条件が必要なくなるという点で制約が少ない。この別例において、BとS1との大小関係に関する付帯条件が存在しないのは、数6式の右辺の分母がBのみで表現され、Bは必ず正の値をとることによる。なお、図6の制御弁が図2〜図5の制御弁と同様の作用及び効果を奏することは言うまでもない。
【0086】○ 図2〜図5及び図6に示す各制御弁の抜き側弁部V1において、ベローズ60に代えてダイアフラムを感圧部材として採用してもよい。
〇 本発明をワッブル形式の斜板式圧縮機に適用してもよい。
【0087】(前記請求項に記載した以外の技術的思想の要点)
(イ)請求項1〜9において、前記感圧部材はベローズ又はダイヤフラムであること、又は、(ロ)請求項1〜9において、前記容量可変型圧縮機はクラッチレス圧縮機であること。
【0088】なお、「クラッチレス圧縮機」とは、電磁クラッチのような他律的クラッチ手段を介在させることなく外部駆動源(例えば車輌エンジン)からの動力を駆動軸に直接伝達する方式の圧縮機をいう。
【0089】
【発明の効果】以上詳述したように各請求項に記載の制御弁によれば、抜き側弁部を構成する抜き側弁体に作用する差圧(クランク圧Pcと吸入圧Psとの差圧)が、Pc/Psゲインの低下要因となることを根本的に解消することができるのみならず、抜き側弁部と入れ側弁部との連係を可能とする構成の採用とも相俟ってクランク圧Pcの制御性を向上させて圧縮機の吐出容量の可変制御性を格段に向上させることができる。




 

 


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