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発明の名称 不活性ガス充填タイヤ用スチールコードおよび不活性ガス充填タイヤ
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−192987(P2001−192987A)
公開日 平成13年7月17日(2001.7.17)
出願番号 特願2000−1399(P2000−1399)
出願日 平成12年1月7日(2000.1.7)
代理人 【識別番号】100059258
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 暁秀 (外2名)
【テーマコード(参考)】
3B153
【Fターム(参考)】
3B153 AA06 AA12 AA50 BB01 CC52 FF16 GG05 GG13 
発明者 大沢 隆蔵
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 ブラスめっきを施したフィラメントの複数本を撚り合わせた、不活性ガス充填タイヤに用いるスチールコードであって、該フィラメントのブラスめっきの平均厚さが130〜180nmの範囲にあることを特徴とする不活性ガス充填タイヤ用スチールコード。
【請求項2】 請求項1において、フィラメントのブラスめっき表面における銅濃度が30〜45mass%であることを特徴とする不活性ガス充填タイヤ用スチールコード。
【請求項3】 請求項1または2において、フィラメントの直径が0.25mm以下であることを特徴とする不活性ガス充填タイヤ用スチールコード。
【請求項4】 請求項1ないし3のいずれかにおいて、不活性ガスの充填圧力が0.980665MPa以上のタイヤに供することを特徴とする不活性ガス充填タイヤ用スチールコード。
【請求項5】 請求項1ないし4のいずれかにおいて、コードの直径が1.1mm以下であることを特徴とする不活性ガス充填タイヤ用スチールコード。
【請求項6】 請求項1ないし5のいずれかにおいて、コードの切断荷重が1700〜2300Nの範囲であることを特徴とする不活性ガス充填タイヤ用スチールコード。
【請求項7】 1対のビード部間でトロイド状に延びるカーカスを骨格とし、このカーカスの径方向外側に複数層のベルトをそなえる、不活性ガス充填タイヤにおいて、該カーカスおよびベルトのいずれか少なくとも一方に、請求項1ないし6のいずれかに記載のスチールコードを適用したことを特徴とする不活性ガス充填タイヤ。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、いわゆる新交通向けのトラックおよびバス用タイヤに代表されるタイヤ、すなわちより安全で快適な社会環境に対応すべく窒素などの不活性ガスを高圧充填して使用されるタイヤの補強材として好適のスチールコードおよびこのスチールコードを適用した不活性ガス充填タイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、トラックおよびバス用タイヤに代表される、大型のスチールラジアルタイヤにおいて、その骨格をなすカーカスは、ブラスめっきを施したスチールフィラメントの複数本を撚り合わせたスチールコードを多数本並列させてゴム引きして成るプライによって構成されている。このカーカスにおけるスチールコードの補強効果を発揮させるには、スチールコードとゴムとが強固に接着していることが肝要である。そして、このコードとゴムとの接着性を維持するために、コードを構成するフィラメントとゴムとの接着を司る、ブラスめっきについて、その銅と亜鉛との割合やめっき厚さを調整することが行われている。
【0003】すなわち、フィラメントとゴムとの接着を確保するには、ブラスめっきの厚みに大きなばらつきがなければ、平均で50nm程度のめっき層にて十分であるといわれているが、実際には、完全に均一なめっきの製造が極めて困難であり、かつ空気中の酸素と水分とが共存する腐食環境下で使用される機会が多いため、めっきが薄い部分で容易にコード表面が露出して鉄の溶出を招くことから、平均200nmから350nmの厚さのめっき層を設けて、めっき中の亜鉛による犠牲防食機能を付与する必要がある。
【0004】一方、交通環境の多様化に伴い、新交通向けタイヤや地下鉄用タイヤ等を対象にして、通常の産業用タイヤ以上に高度な安全性や運行トラブル回避が可能である、大型スチールラジアルタイヤが要求されてきている。この種用途のタイヤでは、充填ガスとして不活性ガス、例えば窒素を充填して使用することによって、火災問題を回避している。かようなタイヤでは、そのカーカスやベルトにおけるコードとゴムとの接着に関する環境、さらにはコード疲労環境は、従来のタイヤに比べてかなり異なった様相を呈する。
【0005】すなわち、タイヤに不活性ガスが充填されかつ使用環境も整備されているため、コードとゴムとの接着性に悪影響を与える活性な充填空気(酸素)と外部からの水分は低減するが、ブレーキドラム周りのタイヤサイドの熱環境は厳しくなることに特徴がある。また、重荷重となることから、タイヤのサイド部の撓みを抑制し熱の発生を緩和する必要上、充填ガスを0.980665MPa(10kgf/cm2 )以上の高圧で充填すること、並びにタイヤのトレッド摩耗が少ないために極めて長期間および長距離にわたって使用されることも、新交通向け大型タイヤに特有の事情である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このように不活性ガスが高圧充填される重荷重用の大型タイヤにおいて、カーカスプライまたはベルト用のスチールコードに要求される性能は、一般産業用重荷重用大型タイヤとは異なり、特にコードおよびゴムの接着に関しては、従来のスチールラジアルタイヤに要求される性能とは異なり、めっきとゴムとの接着機構も異なることが予測される。すなわち、環境的にはマイルドな水分環境下での接着劣化が、主に問題となる。
【0007】そこで、この発明の目的は、不活性ガスが高圧充填されるタイヤにおいて、その使用環境に対応したブラスめっき層を与えることによって、長期または高い使用頻度の下でもゴムとの接着を保証し得るスチールコードを、耐久性に優れた不活性ガス充填タイヤに併せて提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、発明者らは、新交通システムの運行車両にて長期間、長時間または長距離走行したタイヤについて、カーカスプライコードと被覆ゴムとの接着状態を詳細に解析した。すなわち、高圧空気が充填されたタイヤでは、タイヤ内周面のインナーライナーゴム層を透過した酸素がゴムとプライコード表面のめっきとが作る接着層を劣化させる過程を経て接着構造が破壊されるが、窒素充填されたタイヤでは空気充填されたタイヤとは異なるメカニズムを経て劣化が進行していることが新たに判明した。具体的には、タイヤ外部から侵入する微少な水分がコードフィラメントの主成分である鉄を徐々に溶出させ、結果として接着層を脆弱なものにする結果、接着構造が破壊されることが新たに解明できた。このような現象は、ゴム接着性を阻害するラップフィラメントが存在しないコードでも発生し、コード最外層のフィラメント表面が先行的に破壊してコード破断に至ることを見出したのである。さらに、かかる鉄の溶出は、めっきが薄くてコードの地鉄の露出度が高いほど激しく、接着層の破壊も進行するものと推測されたが、現実のタイヤでは全く異なる事実が存在することも見出した。
【0009】かかる知見を前提に窒素充填された大型重荷重用スチールラジアルタイヤのスチールコードを構成するフィラメントにおけるめっき特性が如何に有るべきかを鋭意検討した結果、この発明を導くに至つた。
【0010】すなわち、この発明の要旨構成は、次のとおりである。
(1) ブラスめっきを施したフィラメントの複数本を撚り合わせた、不活性ガス充填タイヤに用いるスチールコードであって、該フィラメントのブラスめっきの平均厚さが130〜180nmの範囲にあることを特徴とする不活性ガス充填タイヤ用スチールコード。
【0011】(2) 上記(1) において、フィラメントのブラスめっき表面における銅濃度が30〜45mass%であることを特徴とする不活性ガス充填タイヤ用スチールコード。
【0012】(3) 上記(1) または(2) において、フィラメントの直径が0.25mm以下であることを特徴とする不活性ガス充填タイヤ用スチールコード。
【0013】(4) 上記(1) ないし(3) のいずれかにおいて、不活性ガスの充填圧力が0.980665MPa以上のタイヤに供することを特徴とする不活性ガス充填タイヤ用スチールコード。
【0014】(5) 上記(1) ないし(4) のいずれかにおいて、コードの直径が1.1mm以下であることを特徴とする不活性ガス充填タイヤ用スチールコード。
【0015】(6) 上記(1) ないし(5) のいずれかにおいて、コードの切断荷重が1700〜2300Nの範囲であることを特徴とする不活性ガス充填タイヤ用スチールコード。
【0016】(7) 1対のビード部間でトロイド状に延びるカーカスを骨格とし、このカーカスの径方向外側に複数層のベルトをそなえる、不活性ガス充填タイヤにおいて、該カーカスおよびベルトのいずれか少なくとも一方に、上記(1) ないし(6) のいずれかに記載のスチールコードを適用したことを特徴とする不活性ガス充填タイヤ。
【0017】
【発明の実施の形態】発明者らは、窒素環境下でのゴムとめっきとの接着層の劣化過程を詳細に知るため、酸素環境下での同接着層の劣化過程と比較検討した。すなわち、下記に実験A〜Dとして示すように、酸素または窒素雰囲気において、当該雰囲気での経過時間、または経過時間および雰囲気ガス濃度を種々に変化したときの、スチールコードのゴム接着層の状態について調査した。具体的には、実験A〜Dに示す条件に従う雰囲気で走行させたタイヤを解剖し、一定のコード長および幅で切り出した部分について、ゴムとコードとを強制的に剥離したときの、剥離面を観察した。
【0018】記実験A:相対湿度50%および温度80℃の酸素含有雰囲気下において、酸素濃度および時間を種々に変化。
実験B:相対湿度50%および温度80℃の窒素雰囲気(酸素濃度は実質ゼロ)下において、時間を種々に変化。
実験C:相対湿度95%および温度80℃の酸素含有雰囲気下において、酸素濃度および時間を種々に変化。
実験D:相対湿度75%および温度80℃の窒素雰囲気(酸素濃度は実質ゼロ)下において、時間を種々に変化。
【0019】なお、上記の条件AおよびBでは、酸素雰囲気と窒素雰囲気との比較を行うために、湿度を同じ50%に設定した。また、条件CおよびDは、それぞれ一般タイヤの使用雰囲気および新交通向けタイヤの使用雰囲気を再現したものである。
【0020】上記の実験Aでは、剥離面にブラス色が認められ、このブラス色の剥離面は、時間の経過並びに酸素濃度の増加に伴って増大した。すなわち、酸素環境下における、剥離面のブラス色はめっき層が露出していること、つまりめっき層とゴムとの剥離が容易に生じることを示している。一方、実験Bでは、剥離面がゴムで覆われていて、時間が経過しても剥離面の状態に変化はなかった。すなわち、窒素環境下ではコードとゴムとの接着が、酸素環境下に比較して、十分に維持されることがわかった。
【0021】次に、上記の実験Aにおける湿度を増加した、実験Cでは、実験Aと同様、剥離面にブラス色が認められ、このブラス色の剥離面は、時間の経過並びに酸素濃度の増加に伴って増大するが、その増大割合は実験Aよりも更に大きい。すなわち、酸素環境下においては、湿度の増減によって接着力に変化はあるものの、同じメカニズムの下に接着層の劣化が生じていることがわかる。
【0022】一方、上記の実験Bにおける湿度を増加した、実験Dでは、剥離面が全てゴムで覆われるわけではなく、部分的に銀色を呈し、この銀色の部分は時間の経過とどもにやや増加する傾向にあった。すなわち、銀色部分はめっき層ではなく地のスチールが露出したものであり、窒素雰囲気下では湿度の増加によって、この露出度合いが増加することが判明した。その剥離程度の違いに加えて、露出部分が酸素環境下ではブラス色を呈するのに比し、窒素環境下では銀色を示すことから明らかなように、接着層の劣化のメカニズムは、酸素雰囲気下での場合と異なることが新たに判った。
【0023】以上の実験結果から、一般タイヤが使用される酸素+高水分の雰囲気での接着劣化と新交通向けタイヤが使用される無酸素+低水分の雰囲気での接着劣化とは異なっており、自ずからコードに要求されるめっき特性も異なることが予測された。
【0024】次に、発明者はめっき組成およびめっき厚さを種々に変更したコードを試作し、新交通向けタイヤが使用される環境と条件の下に、コードとゴムとの接着劣化を評価したところ、接着劣化の抑制に著しく有効なめっき厚さが存在することを見出した。
【0025】さて、通常の空気入りタイヤに適用されるスチールコードのめっき厚さは平均200nmから350nm程度であるが、これは、酸素と水分が共存する非常に激しい腐食環境では、この程度以上のめっき厚さがないと容易に剥離面にコードが露出するからである。すなわち、酸素と水分の共存下においては、めっきが一定の厚さ以上存在することによって、めっき中の亜鉛が犠牲電極となって鉄の溶出が抑制されるものと考えられる。
【0026】一方、酸素が供給されない環境、それもタイヤ外皮を通じて徐々にしか水分が増加しない環境においては、めっき中の亜鉛を犠牲電極とする必要がないから、めっき層はゴムとコードとの接着に寄与すればよく、基本的にはめっき厚みが関係することはない。ところが、めっき厚によっては、めっき層とゴムとの間に両者の架橋となるCux Sが形成された後にブラスが点在して残存する結果、僅かな水分を有する雰囲気下において、Cux S/ブラス/鉄の3極による局部電池が形成され、この局部電池の数が多いと鉄の溶出が進むことになる。
【0027】とりわけ、めっき線材からウェット伸線過程で製作されたフィラメントにおけるめっき分布は、図1(a) に示すように、地鉄1との界面が複雑に入り込んだ凹凸状であり、表面のブラスめっき2中の銅が被覆ゴムと反応しCux Sを形成すると、図1(b) に示すように、部分的にめっき2が存在しない部分が多数の領域で生成する結果、めっき部分Pが島状に点在して残されることになる。そして、この残存するブラスPを中心として、Cux S/ブラス/鉄の3極による局部電池が形成される。かように形成される局部電池の数は、めっき層厚とCux S層厚との関係によって決定され、従来のような200nmをこえる厚めっきでは残存するめっきが多くなるから、基本的には局部電池の数を増加することになり、不活性ガス雰囲気においては却ってコードの腐食が促進されることになる。
【0028】そこで、ウェット伸線で作られるフィラメントのめっき厚さを種々に調整し、めっきの厚さによる効果を鋭意研究した結果、窒素および微少水分が存在する雰囲気での接着劣化の抑制には、平均めっき厚さの上限を180nmの範囲に制御することが極めて有効であることを見出し、この発明を完成するに至ったのである。
【0029】一方、めっき厚さが130nm未満になると、ゴムとの初期接着性が阻害され、窒素および低水分雰囲気下での接着も急激に悪化する。すなわち、図2に示すように、コード単体の鉄の溶出量がめっき厚さ130nmを境に急激に増加することがわかる。この結果は、ウェット処理を経ためっきが130nm未満の厚さになると、初期接着してない部分が増大してくるためと考えられる。なお、図2に示した結果は、希塩酸にコードを一定時間浸漬した際に溶出する、鉄の量を調査した結果によるものである。
【0030】また、めっき組成については、安定した初期接着を確保するには、ブラスめっき表面における銅濃度を30〜45mass%に制御することが好ましい。なぜなら、銅濃度が30mass%未満では、ゴムとの接着反応が遅く初期接着性が得られず、一方45mass%をこえると、コードとゴムとの密着が完全でない状態すなわちタイヤの加硫以前に、反応が進行し、結果的に初期接着性が阻害されるからである。ここで、ブラスめっき表面とは、最表面からの深さが10nm以下の領域、つまり金属表面における電子の平均自由行程厚さ内の領域を示す。
【0031】さらに、コードの直径を1.1mm以下にすることによって、耐接着劣化性を大幅に改良できる。すなわち、コードの直径が1.1mmをこえると、タイヤ転動時に生じる動的入力によって、コードとゴムとの間の剪断応力が大きくなり、コードおよびゴム間の界面の破壊が早期に進行するため、1.1mm以下にすることが好ましい。
【0032】ちなみに、特開平8−260368号公報には、特に潤滑剤中で伸線を行うウェット伸線工程によっても、薄くて均一なブラスめっき層を得るための技術が開示されているが、めっき厚さ分布の標準偏差を10〜30nmに制限する必要があり、現実のコード製造プロセスを大幅に変更しなければならず、その生産性は低く、汎用性に乏しい。
【0033】この点、この発明では、銅および亜鉛の電気めっきに加えて行う、熱拡散、そしてウェット伸線の工程は通常の条件でよく、またウェット伸線において特別な潤滑条件を考慮する必要もない。
【0034】次に、発明者は、上記しためっき層を有するスチールコードを、不活性ガス充填タイヤ、中でも重荷重用タイヤに適用する際の、より有利な態様について検討した。
【0035】さて、この発明が主に対象とする重荷重用タイヤのカーカスには、従来、図3に示すような、多層撚り構造のコードが用いられてきた。該コードは、大曲げ入力などに対して優れた性能を発揮するが、コードの周面に沿ってスパイラル状に巻き付けるラップフィラメントLを有するため、長期の走行に伴ってラップフィラメントLとコード最外層フィラメントとの相対ずれにより、該ラップフィラメントL付近における最外層フィラメントとゴムとの間で接着破壊が生じ易いことから、近年ではラップフィラメントを省略することによって、接着耐久性の低下を回避する傾向にある。
【0036】一方、カーカスプライは圧力容器としての内圧保持が第1義的に要求されることから、疲労性との両立を念頭に置く必要があり、例えば特開平9−228269号公報には、1+6+11構造のコードが提案されている。しかし、この1+6+11構造コードでは、特にコード軸心付近のコアフィラメントの飛び出しを抑制するために、フィラメントに型付けなどが必要となり、コード製造工程における制御が厳しくなる結果、生産性が低下してコスト増を招く不利がある。
【0037】すなわち、不活性ガス充填タイヤは高圧充填されることから、まず圧力容器として用いるコードは強力が大きく、かつこの強力を長期にわたり保持できること、つまり耐疲労性に優れることが必要である。とりわけ、フレッティング磨耗(損傷)に起因したコード強力の低下を抑制できることが有利である。さらに、コード性状の制御が比較的緩やかな低コストのコードであることも、併せて必要になる。
【0038】そこで、コードに負荷される張力と安全率とを考慮しながら、コードの持つべき切断荷重とコードおよび被覆ゴム間の相対ずれ量との関係を検討したところ、コードの切断荷重を1700N以上にすれば、高内圧充填による重荷重への対応が有利に実現することが判明した。
【0039】また、フィラメントの直径は0.25mm以下であることが好ましい。なぜなら、コードを構成する各フィラメントの表面歪はフィラメント径に比例して大きくなるため、フィラメント直径は小さいほど耐久性に有利である。しかし、所定のコード強力を確保できる太さが必要であり、このコード強力の確保とフィラメント表面歪みの低下とを両立させるために、フィラメントの直径を0.25mm以下とする。
【0040】一方、低コスト化の視点からは、フィラメントが細くなると、コード伸線時の断線率が上昇し、また伸線ダイスの交換頻度が増加し、さらに細径フィラメントにて所定のコード強力を確保するには多層撚り構造を採用する必要があり、さらに高コストになる。
【0041】そこで、フィラメントの直径あるいはコードの直径を小さくし、かつコード強力を確保しながら低コスト化するには、引張強さの高いフィラメントを活用しながらコード構造の簡素化、つまり3層構造から2層構造化を進めること、同時に撚り行程を少なくすることが決め手になる。特に、この2層化構造を1回で撚り合わせることが望ましい。このような構造としては、例えば図4に示す2層構造のコンパクト撚り構造、もしくは図5に示す実質2層構造のコンパクト撚り構造等、束より可能な構造がより有利に適合する。
【0042】上記したコードは、その多数本を互いに並行に揃えてゴムシートに埋設してなるプライを、タイヤのカーカスまたはベルトに適用して、タイヤの補強に供する。ここで、タイヤは、例えば図6に示す、トラックおよびバス用タイヤが有利に適合する。このタイヤは、1対のビードコア10間でラジアル方向にトロイド状に延びる有機繊維コードのプライからなるカーカス11、このカーカス11のクラウン部のタイヤ径方向外側に配置した、少なくとも4層、図示例で6層のベルト12およびこのベルト12のタイヤ径方向外側に配置したトレッド13から成る。
【0043】
【実施例】図6に示した、サイズE13.50/85R16の新交通向けのトラックおよびバス用タイヤのカーカスに、表1および2に示す仕様のコードを、表1および2に示す条件にて適用した。かくして得られた各タイヤについて、新品タイヤでのコードの初期接着性と、標準リムに組み込み窒素ガスを1.0787MPaで充填してから、25万km〜30万km走行させた後、該タイヤにおけるコードの接着性およびコード強力の保持性を調査した。その調査結果を、スチールコードの構造、めっき特性、フィラメント引張強さおよびコードの切断荷重、コードの製造コストに併せて、表1および2に示す。
【0044】ここで、表1には(3+9+1)のスパイラル付き2層撚り構造、つまり現実の市場走行品を比較例にして実施例の効果を明らかにし、また表2にはスパイラル近傍から発生する接着破壊をなくすために既に改良が実施されている(1+6+11)でラップフィラメントなしの実質2層撚り構造と対比して示してある。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】表1において、比較例1は、市場で25万km走行させたタイヤの(3層+ラッピングフィラメント)スチールコードの結果であり、比較例2はめっきの仕様は変更をせずに単純にフィラメントの高張力化によって2層構造とし、さらにラップフィラメントを省略した例である。比較例1では、コードの初期接着性はセパレーションの発生がないにも関わらず、ゴム付着量がゼロであり、中には新品タイヤのサイド部においてセパレーションが発生している場合もあった。また、比較例2では、コード径を0.94mmまで減少し、かつラップフィラメントを省略したにも関わらず、走行後の剥離試験でのコードの接着性を100%まで改良するに至っていない。これに比して、実施例1,2および3では、めっき付着量を160nmまで滅少させることによってセパレーシヨンはもちろんのこと、剥離テストにおいてもコードが露出することはなく、タイヤサイド部の接着劣化を起因とする故障を皆無に抑えることが可能になった。新交通システムは高度な安全性と快適性を求める性格上、タイヤのトラブルに起因する故障の可能性は100%排除されることが望ましく、この発明によってこれを実現できる見通しがえられた。また、コストの観点からは、より廉価な製造を可能にすることも重要な要件であり、実施例2および3のコンパクト構造品は更に好ましく、より低コストのコード、ひいてはタイヤを供給できることを意味している。
【0048】また、表2の比較例3は、特開平9−228269号公報に開示されている、実質2層構造のコードを市場で30万km走行させた結果であり、極めて大幅に接着劣化性が改良され、コード露出がほとんどなくなっている。しかし、この場合でもコード露出がゼロに至っていない。この構造をそのままにして、めっきについてこの発明に従って規制したのが実施例4であり、この実施例4によれば、接着劣化によるトラブルの可能性をゼロにできることがわかる。実施例5は実施例4のフィラメント撚り方向を同一にすることによって、さらに走行後の強力保持性が改良でき、高内圧充填タイヤの安全性向上の点でメリットを生み出せることを示したものである。実施例6と実施例7とは、いわゆる典型的な束撚りコードである19本のコンパクト撚り構造コードを例にコード直径の影響について比較検討した事例で、コード直径を1.1mm以下に制限すると、接着性をより改善できることがわかる。
【0049】
【発明の効果】この発明によれば、不活性ガスが高圧充填されるタイヤに使用するスチールコードに対して、その使用環境に対応したブラスめっき層が与えられるから、長期または高い使用頻度の下でもゴムとの接着を保証することができる。従って、このスチールコードを用いることによって、耐久性に優れた不活性ガス充填タイヤの提供が可能になる。




 

 


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