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ゴム物品の補強に供するスチールフィラメントおよびその矯正方法 - 株式会社ブリヂストン
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発明の名称 ゴム物品の補強に供するスチールフィラメントおよびその矯正方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−40590(P2001−40590A)
公開日 平成13年2月13日(2001.2.13)
出願番号 特願2000−151013(P2000−151013)
出願日 平成12年5月23日(2000.5.23)
代理人 【識別番号】100059258
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 暁秀 (外2名)
発明者 若尾 泰通
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 表面残留応力が圧縮側にあり、かつ該圧縮残留応力の分布が周方向および長手方向に一様であることを特徴とするスチールフィラメント。
【請求項2】 請求項1において、スチールフィラメントの周上等分少なくとも8か所で測定した残留応力の平均値をAとしたときに、各測定点の残留応力値がA±0.15×Aの範囲にあることを特徴とするスチールフィラメント。
【請求項3】 請求項1または2において、長さ10cmのスチールフィラメントの半周部分をその長手方向にラッカーで被覆してから、硝酸水溶液中でエッチングを施し、このエッチング後にフィラメントの曲がりが最大となった状態の曲がり量を、エッチングされた側にフィラメントが曲がった場合を負およびラッカー被覆側に曲がった場合を正の値としたときの、該曲がり量にて定義される、圧縮残留応力値が、−10mm以下であることを特徴とするスチールフィラメント。
【請求項4】 請求項1、2または3において、スチールフィラメントはバンチャー撚線機を用いたコード製造の部材に供することを特徴とするスチールフィラメント。
【請求項5】 請求項1ないし4のいずれかにおいて、フィラメント径が0.05〜0.80mmであることを特徴とするスチールフィラメント。
【請求項6】 千鳥足状に配置したローラー群にスチールフィラメントを通して各ローラーにスチールフィラメントを順に接触させ、スチールフィラメントの表面に圧縮残留応力を付与するに当り、上記ローラー群にはスチールフィラメントの径dに対しd/2R<0.015 の関係を満足する径Rのローラーを用い、各ローラーにおけるスチールフィラメントの接触域がなす弧に対する中心角を、スチールフィラメントの入側から少なくとも2個の前段ローラー群では50°以上とし、この前段ローラー群に続く少なくとも5個の後段ローラー群では前段ローラー群での角度から3°以下まで順に漸減した、ローラー群に、スチールフィラメントを通す処理を、該スチールフィラメントの相異なる面に対して、少なくとも4回は施すことを特徴とするスチールフィラメントの矯正方法。
【請求項7】 請求項6において、スチールフィラメントをローラー群に通す、各回毎に スチールフィラメントに加える張力を、該スチールフィラメントの引張強さの1/6以上の範囲で制御することを特徴とするスチールフィラメントの矯正方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ゴム物品の補強に供する耐疲労性に優れるスチールフィラメントと、その表面残留応力の矯正方法に関する。
【0002】
【従来の技術】車両用タイヤ、コンベアベルトおよびホース等のゴム物品の補強には、スチールフィラメントが撚り合わされたスチールコードを使用するのが、一般的である。このスチールフィラメントをゴム物品に適用するには、フィラメントとゴムとを確実に接着するために、フィラメント周面に真鍮や亜鉛等のめっきを施し、その後ダイスを用いた引き抜き法により、目的の線径まで伸線加工されるが、この引き抜きによりスチールフィラメントの表面に引張り側の残留応力が生じる。
【0003】一方、車両用タイヤを典型例とするゴム物品は、その使用時に繰り返しの曲げ変形を受けるために、長期の使用による疲労破壊を誘発し易いために、ここに使用される補強材であるスチールフィラメントには、優れた耐疲労性が求められる。しかし、上記のように、伸線後のスチールフィラメントには引張り応力が残留しているために、曲げ変形が繰り返し付与されると、早期に疲労破壊に到る不利があった。
【0004】ここで、スチールフィラメントの耐疲労性を改良する手段として、スチールフィラメント表面に圧縮側の残留応力を付与することが、提案されている。例えば 特開平3−113085号公報には、平滑な表面を持ち、且つ長手方向の残留圧縮応力が均一に分散された状態にある全面区域を有し、高張力と組み合わせ大荷重に耐えることが可能な車両用タイヤに関する技術が公開されている また、特開平5−104181号公報には、千鳥足状に配置したローラ群に金属線材を通して、伸線された金属線材に圧縮残留応力及び良好な真直性を同時に付与する方法が提案されている。
【0005】なお、スチールフィラメント表面をショットブラストする方法や、熱処理によって応力を緩和する方法等も提案されている。しかし、ショットブラスト法は、細粒子をスチールフィラメント表面に衝突させるために、細かい砂粒子がフィラメント周面に食い込み残留したり、砂粒によってめっき層に傷がつくことによってゴムとの接着性が損なわれる問題がある。また、熱処理により残留応力を緩和する方法は、表面に施されているめっきが加熱によって酸化し、ゴムとの接着が阻害される問題が有る。従って、従来は、圧縮残留応力を付与するのに、上記の特開平3−113085号公報や特開平5−104181号公報に記載されている、多数の小径ロールを用いて引張り応力下で交互に曲げ加工を施す手法が、一般に用いられていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】かように、スチールフィラメントの表面に圧縮残留応力を付与することにより耐疲労性が向上することは知られているが、このフィラメントの複数本を撚り合わせてスチールコードとして使用する場合に、その撚り工程においてフィラメント表面の残留応力が変化することが、新たに問題となっている。すなわち、スチールコードの撚り方法には、主にチューブラー型およびバンチャー型(ダブルツイスター)の2種類があり、スチールコードに撚られた後のスチールフィラメントの表面残留応力は撚り方法によって異なる形態、つまり圧縮から引張りに転じる場合がある。特に、バンチャー撚りでは、撚りの過程でフィラメントが捻じられながら撚られるために、フィラメントの表面に導入した圧縮側の残留応力が引張り側に変化する傾向は、チューブラー撚りに比べて顕著である その結果、スチールフィラメントが本来持っている耐疲労性よりもスチールコード中のスチールフィラメントの耐疲労性は低下することになる。
【0007】そこで、この発明は、スチールコードに撚り合わせた段階においても優れた耐疲労性を消失することのないスチールフィラメントおよびこのスチールフィラメントを得るためのフィラメントの矯正方法について、提案することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】発明者らは、種々の表面残留応力を付与したフィラメントの試作を重ねて検討を加えた結果、フィラメント表面の残留応力の分布を抑制することが、上記問題点の解消に有効であるのを見出し、この発明を完成するに至った。
【0009】この発明の要旨構成は、次の通りである。
(1)表面残留応力が圧縮側にあり、かつ該圧縮残留応力の分布が周方向および長手方向に一様であることを特徴とするスチールフィラメント。
【0010】(2)上記(1)において、スチールフィラメントの周上等分少なくとも8か所で測定した残留応力の平均値をAとしたときに、各測定点の残留応力値がA±0.15×Aの範囲にあることを特徴とするスチールフィラメント。
【0011】(3)上記(1)または(2) において、長さ10cmのスチールフィラメントの半周部分をその長手方向にラッカーで被覆してから、硝酸水溶液中でエッチングを施し、このエッチング後にフィラメントの曲がりが最大となった状態の曲がり量を、エッチングされた側にフィラメントが曲がった場合を負およびラッカー被覆側に曲がった場合を正の値としたときの、該曲がり量にて定義される、圧縮残留応力値が、−10mm以下であることを特徴とするスチールフィラメント。
【0012】(4)上記(1) 、(2) または(3) において、スチールフィラメントはバンチャー撚線機を用いたコード製造の部材に供することを特徴とするスチールフィラメント。
【0013】(5)上記(1) ないし(4) のいずれかにおいて、フィラメント径が0.05〜0.80mmであることを特徴とするスチールフィラメント。
【0014】(6)千鳥足状に配置したローラー群にスチールフィラメントを通して各ローラーにスチールフィラメントを順に接触させ、スチールフィラメントの表面に圧縮残留応力を付与するに当り、上記ローラー群にはスチールフィラメントの径dに対しd/2R<0.015 の関係を満足する径Rのローラーを用い、各ローラーにおけるスチールフィラメントの接触域がなす弧に対する中心角を、スチールフィラメントの入側から少なくとも2個の前段ローラー群では50°以上とし、この前段ローラー群に続く少なくとも5個の後段ローラー群では前段ローラー群での角度から3°以下まで漸減した、ローラー群に、スチールフィラメントを通す処理を、該スチールフィラメントの相異なる面に対して、少なくとも4回は施すことを特徴とするスチールフィラメントの矯正方法。
【0015】(7)上記(6) において、スチールフィラメントをローラー群に通す、各回毎に スチールフィラメントに加える張力を、該スチールフィラメントの引張強さの1/6以上の範囲で制御することを特徴とするスチールフィラメントの矯正方法。
【0016】
【発明の実施の形態】さて、スチールフィラメントの耐疲労性は、伸線加工後のフィラメント表面に残留する引張り応力を圧縮側に変化させることによって向上するが、このフィラメントを、コードに撚り合わせた際の加工に起因して、該フィラメントの耐疲労性が再び劣化する。この現象を回避するには、スチールフィラメントの表面残留応力を圧縮側にし、かつ該圧縮残留応力の分布を周方向および長手方向に一様とすることが、肝要である。
【0017】すなわち、スチールフィラメントの表面に圧縮残留応力を付与するに当り、その圧縮残留応力の分布を長手方向は勿論、周方向で一様にすることが、コード製造時の撚り加工による耐疲労性の劣化を回避するのに、極めて有効である。なぜなら、撚り加工において各フィラメントは任意の方向に曲げられるが、かような外力が加わった際にも、全てのフィラメントが引張り側の残留応力を持たないことが肝要であるからである。つまり、フィラメント表面の圧縮残留応力を周方向で一様にすることによって、どの向きからの外力に対しても、表面残留応力を圧縮側に維持することができるからである。とりわけ、バンチャー撚りでは、捩じりが加わるため、フィラメントにかかる外力の方向は複雑であり、圧縮残留応力を周方向で一様にすることは、極めて重要である。
【0018】とりわけ、スチールフィラメントの表面の圧縮残留応力の周方向の分布幅を、周上等分少なくとも8か所で測定した残留応力の平均値をAとしたときに、各測定点の残留応力値をA±0.15×A、すなわち0.85A〜1.15Aの範囲にすることが、有利である。すなわち、圧縮残留応力の周方向の分布幅を±0.15×Aの範囲にすることによって、撚り工程において発生する残留応力の変化を、有利に抑制することができる。
【0019】また、スチールフィラメントには、次の手法によって定量化した表面残留応力を与えることが、好ましい。すなわち、伸線加工後のスチールフィラメントを長さ10cmで切り取り、その表面のめっきを過硫酸アンモニウム水溶液により除去し、次いで、図1に示すように、各フィラメントの半周部分をその長手方向にラッカーで被覆してから、50℃の硝酸水溶液(濃度:50vol %)中でエッチングを施し、このエッチング後にフィラメントの曲がりが最大となったときの曲がり量を表面残留応力値とする。なお、エッチング前にフィラメントが曲がっている場合は、エッチング前後の曲がり量の差を求めて表面残留応力値とする。また、表面残留応力が引張りか圧縮かの判定は、図2に示すように、エッチングされた側にフィラメントが曲がった場合を圧縮、ラッカー被覆側に曲がった場合を引張りとする。そして、以上に従って求めた曲がり量をスチールコードを構成する全フィラメントについて曲がり量を測定し、その測定値を平均したものを、表面残留応力値とする。
【0020】かように求められるフィラメントの表面残留応力値を−10mm以下にすることが有利である。なぜなら、撚り工程、特にバンチャー撚り工程における、スチールフィラメントの捩じり加工にて、表面残留応力が変化した場合にも、撚り加工前の表面残留応力値を−10mm以下にすることによって上記した分布幅を満足する限り、加工後の表面残留応力は圧縮側にあるから、耐疲労性の改善効果を期待できる。
【0021】次に、スチールフィラメントの表面残留応力を、引張り側から圧縮側へ移行するとともに、その残留応力分布を一様にするための手段となる、スチールフィラメントの矯正方法について、詳しく述べる。すなわち、図3に、この発明の方法で直接用いる矯正装置Aを示す。この矯正装置Aは伸線装置の最終ダイスと巻取り装置の間に設置し、スチールフィラメントの矯正に供する。矯正装置Aは、千鳥足状に配置したローラー1a〜1cからなる前段ローラー群1と、この前段ローラー群1に連続し同様に千鳥足状に配置したローラー2a〜2gからなる後段ローラー群2とで構成し、前段ローラー群1で圧縮応力を付加した後、後段ローラー群2で真直性を付加するものである。スチールフィラメント3は、まず入側のガイドローラー4を介して前段ローラー群1、次いで後段ローラー群2へ導入され、前段ローラー群1及び後段ローラー群2の各ローラーの周面に形成した断面V字状の溝に案内されて、各ローラーとの接触下に前段ローラー群1及び後段ローラー群2を通り、矯正がなされる。
【0022】ここで、ローラーの径Rは、スチールフィラメントの径dに対しd/2R<0.015 ----(1)の関係を満足することが肝要である。さらに、千鳥足状をなすローラー群の配置を、図4に示す、各ローラーにおけるスチールフィラメントの接触域がなす弧に対する中心角(以下巻付け角という)αに基づいて設定することが肝要である。すなわち前段ローラー群1では巻付け角αが50°以上になるように各ローラーの配置を設定する一方、後段ローラー群2では線材の出側に向かうに従って巻付け角αが漸減する設定とする。後段ローラー群2のローラー2a〜2gにおける巻付け角αは、該ローラー群2の出側に向かって3°以下に漸減させるが、減少幅は等間隔であってもよいし任意の間隔であってもよい。
【0023】伸線加工後のスチールフィラメントの主に表層に残留した引張り応力は、該スチールフィラメントを上記した式(1) に従う径のローラーからなる前段ローラー群に巻付け角α:50°以上で通して圧縮応力を付与することで解消し得る。すなわちスチールフィラメントを、上記した式(1) に従う径のローラーに巻付け角α:50°以上で接触させることによって、スチールフィラメントの表面に引張りの塑性領域までの曲げ歪を与え、その後自然状態に開放することで圧縮歪を与え得る。ここで巻付け角を50゜以上に限定するのは、スチールフィラメントの有する剛性及びスチールフィラメントの通過速度が非常に速い場合は、その慣性力のため、50゜未満の巻付け角では、ローラー径に比例した曲げ歪を与えることができないからである。
【0024】この巻付け角αを50°以上、より好ましくは60°以上とすることで大きな圧縮応力を付与できるが、巻付け角αが70°をこえても圧縮応力の増加はない。また上記の作用を期待するには少なくとも2個のローラーが必要であるが、5個をこえても効果の増加を望めない上、大きな設備を必要としコスト面で不利をまねくため、5個以下とすることが好ましい。さらにローラー径を小さくすることによって大きな圧縮応力を付与し得るが、ローラー径が極端に小さくなるとローラーの回転速度が速くなってローラー寿命が低下するため、径が0.10〜0.80mmのスチールフィラメントを処理する場合はローラー径を 6.7〜53.3mmの範囲とすることが好ましい。
【0025】次に、スチールフィラメントを後段ローラー群に通すに当り、各ローラーでの巻付け角αを出側に向かって3°以下まで漸減することによって、高い真直性を付与する。すなわち真直性の異なるスチールフィラメントに対し前段ローラー群1及び後段ローラー群2の入側ローラーにおいて大きな曲率での曲げ加工を施した後、後段ローラー群2の複数のローラーへの巻付け角を漸減して曲げ加工歪を漸減させることで、高い真直性を与える矯正を分割して徐々に行うことができる。
【0026】上記の作用を期待するには少なくとも5個、より好ましくは7個以上のローラーが必要であるが、10個程度とすることが真直性の付与とローラーの耐久性とを両立する上で有利である。また最終ローラーでの巻付け角αが3°をこえると、最終の曲げ加工によって所期する真直性が得られないため、3°以下とする。
【0027】また、巻付け角αは隣合うローラー同士の位置関係で調節することができ、具体的には図5に示すように、スチールフィラメント通過方向における隣り合うローラーの中心軸間距離Pと上記通過方向に直交する方向における隣り合うローラーの中心軸間距離Hとを調節すればよい。
【0028】なお、図示例では前段ローラー群1のローラー個数を3個及び後段ローラー群2のローラー個数を7個としたが、スチールフィラメントの種類、さらには目的とする残留応力値や真直性等に応じて増加又は減少することができる。
【0029】以上の矯正装置Aを少なくとも4組用いて、図6に示すように、スチールフィラメント3を矯正装置Aに通す処理を、該スチールフィラメントの相異なる面に対して、少なくとも4回は施すことによって、周方向分布の均一な圧縮応力をフィラメントに付与できる とくに矯正を4回施す場合は、図7に示すように、互いに45°離間した位置、つまりフィラメント周上の等分8か所でローラー群と接触させることが、好ましい。
【0030】ここに、スチールフィラメント3をローラー群に4回以上通す際、スチールフィラメント3における各ローラー群と接触する面の順序付けを行うことが、有利である。例えば、図7において、スチールフィラメント3をローラー群に4回通す場合には、I→II→III →IVの順序とし、接触面Iと同IIとの間の離間角度θ1 を90°、接触面IおよびIIのそれぞれと同III との間の離間角度θ2 を45°、そして接触面IおよびIIのそれぞれと同IVとの間の離間角度θ3 を45°とする。つまり、接触面を選定する際、既に矯正した全ての接触面との間で離間角度が最大となる面を選択すればよい。
【0031】さらに、スチールフィラメントの周方向に均一な圧縮応力を付与するために、該フィラメントに曲げ加工を施す際の張力を制御することが重要である。この発明では、1本のフィラメントに対して少なくとも4回の曲げ加工を施す必要があるが、その際、フィラメントに加える張力は各回の間でばらつきを極力少なくする必要がある。そこで、例えば図8に示すように、最終ダイス5を通過したスチールフィラメント3を直ちに矯正装置Aに導いて通過させた後にキャプスタン6に巻き付け、キャプスタン6によってダイス5からの引抜き力を与えることで、この引抜き力をそのまま矯正装置Aでのスチールフィラメントの張力とすることができる。この引抜き力は最終ダイスにおける加工減面率を調整することで0からフィラメントの引張り強さまでの制御が可能である。なお、図8における符号7はガイドローラーである。そして、この図8に示したキャプスタン6からガイドローラー7までの工程を、引き続く3組の矯正装置においても同様に再現することによって、4回の曲げ加工を同じ張力下で行うことができる。
【0032】なお、スチールフィラメントに付与する張力は、該フィラメントの引張り強さの1/6以上であることが好ましい。なぜなら、張力が1/6未満になると、フィラメント表面に加わる塑性変形量が小さくなって、所期する表面圧縮残留応力を付与することが困難になる、おそれがあるからである。
【0033】
【実施例】図3に示した矯正装置を用いて、熱処理後に複数のダイスを通して0.24mm径に伸線加工したスチールフィラメント(C: 0.8wt%)に圧縮応力を付与する処理を行った。なお、3つのローラーによる前段ローラー群1および7つのローラーによる後段ローラー群2のローラー径は15mm、前段ローラー群1における巻付け角αは60°、後段ローラー群2における巻付け角αは60°から漸減し最終巻き付け角が1°となるように設定した。また、フィラメントの付加張力は35Nおよびフィラメント通過速度は550mm /min とした。
【0034】上記の処理を、表1に示す3種の条件に従ってフィラメントの表面に付与する残留応力を調整した。表1における残留応力値は、上述した図1および2に示したところに則って測定した値である。なお、表1に示す条件1〜3の残留応力値を得るための具体的処理は、次の通りである。すなわち、〔条件1〕:圧縮残留応力の付与処理を行わない。従って、フィラメントの全周に引張り応力が残留(比較例)。
〔条件2〕:2組の矯正装置を用いて、図7における接触面IおよびIIをローラー群に通して、圧縮応力付与処理を2方向のみで行った。また、フィラメントの張力制御は前段の矯正装置に図8の装置を適用し、前段の矯正装置のみで行った。従って、残留応力は不均一(比較例)。
〔条件3〕:4組の矯正装置を用いて、図7における接触面I〜IVをローラー群に通して、圧縮応力付与処理を4方向で行った。また、フィラメントの張力制御は、全ての矯正装置に図8の装置を適用して行った。従って、フィラメントの周方向に均一に圧縮応力が付与された。
【0035】なお、図7に示した、ローラーを対向配置したローラー群を用いて圧縮残留応力を付与する場合、残留応力値はフィラメント周上180 °離間した位置で対称となる。従って、条件3では、フィラメント周上180 °離間した位置間でほぼ同じ残留応力値を示すから、フィラメント周上4か所(I,II,III およびIV)の測定でフィラメント周上の8か所での残留応力値が測定されることになる。
【0036】
【表1】

【0037】次いで、フィラメントに15Nの張力下で図9に示すようにピッチが15mmになる捻りを導入した。その後、捻じり回転曲げ疲労試験機により疲労牲の比較試験を行った。その試験結果を、表2に示す。
【0038】ここで、捩じり回転曲げ疲労試験は、15mmのピッチで捻られたスチールフィラメントを曲げ半径25mmの下に回転速度3000RPM で回転させてスチールフィラメントが切断するまでの回転数を測定した。この測定は、表1に示した各条件宛5本のフィラメントを用意して行い、その5本の平均値を求めて、条件1の平均値を1としたときの指数にて、表2に表示した。該指数が大きいほど、耐疲労性に優れていることを示す。
【0039】
【表2】

【0040】表2から、周方向に均一な表面残留応力処理を行ったスチールフィラメントは、周方向に均一な圧縮残留応力分布が得られ、比較例よりも格段に疲労寿命が伸びることがわかる。
【0041】
【発明の効果】この発明のスチールフィラメントは、撚り加工を経たコードにおいても疲労性の低下が極めて少ないため、この発明によってゴム物品の補強材に最適の素材を提供することができる。




 

 


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