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発明の名称 多層パルプモールド成形体
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−193000(P2001−193000A)
公開日 平成13年7月17日(2001.7.17)
出願番号 特願平11−373746
出願日 平成11年12月28日(1999.12.28)
代理人 【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修 (外1名)
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055 AF16 AG48 AG59 AG72 AG96 AH37 AH50 AJ01 BF07 BF08 FA13 
発明者 津浦 徳雄 / 熊本 吉晃
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 第1のパルプ層と、該第1のパルプ層と配合成分が異なる第2のパルプ層とを有し、少なくとも何れか一方のパルプ層が接着成分を含有していることにより第1のパルプ層と第2のパルプ層とが密着接合している多層パルプモールド成形体。
【請求項2】 第1のパルプ層と、該第1のパルプ層の配合組成の異なる第2のパルプ層とを有し、少なくとも何れか一方のパルプ層が接着成分を含有しており、該接着成分はパルプ層の厚み方向に関して両パルプ層の界面側により多く含有されており、該接着成分により第1のパルプ層と第2のパルプ層とが密着接合している多層パルプモールド成形体。
【請求項3】 第1のパルプ層と、該第1のパルプ層と配合成分が異なる第2のパルプ層とを有し、少なくとも何れか一方のパルプ層が熱融着成分を含有しており、第1のパルプ層及び/又は第2のパルプ層に含まれる該熱融着成分が両パルプ層の界面において溶融・固化していることにより第1のパルプ層と第2のパルプ層とが密着接合している多層パルプモールド成形体。
【請求項4】 一組の割型からなり且つ各割型を組み合わせることにより所定形状のキャビティが形成される前記抄紙型の該キャビティ内に第1のパルプスラリーを供給して、該キャビティの内面に第1のパルプ層を形成した後、前記キャビティ内に第1のパルプスラリーと配合組成の異なる第2のパルプスラリーを供給して第1のパルプ層上に第2のパルプ層を形成する多層パルプモールド成形体の製造方法であって、前記第1のパルプスラリー及び前記第2のパルプスラリーの少なくとも何れか一方に接着成分を含有させた多層パルプモールド成形体の製造方法。
【請求項5】 一組の割型からなり且つ各割型を組み合わせることにより所定形状のキャビティが形成される前記抄紙型の該キャビティ内に第1のパルプスラリーを供給して、該キャビティの内面に第1のパルプ層を形成した後、前記キャビティ内に第1のパルプスラリーと配合組成の異なる第2のパルプスラリーを供給して第2のパルプ層上に第2のパルプ層を形成する多層パルプモールド成形体の製造方法であって、前記第1のパルプスラリーの供給の終期及び/又は前記第2のパルプスラリーの供給の初期に、パルプスラリーの供給経路内に接着成分を添加する多層パルプモールド成形体の製造方法。
【請求項6】 一組の割型からなり且つ各割型を組み合わせることにより所定形状のキャビティが形成される前記抄紙型の該キャビティ内に第1のパルプスラリーを供給して、該キャビティの内面に第1のパルプ層を形成した後、前記キャビティ内に第1のパルプスラリーと配合組成の異なる第2のパルプスラリーを供給して第1のパルプ層上に第2のパルプ層を形成する多層パルプモールド成形体の製造方法であって、該第1のパルプスラリー及び該第2のパルプスラリーの少なくとも何れか一方に熱融着成分を含有させておき、第2のパルプ層の形成後、加熱により第1のパルプ層及び/又は第2のパルプ層に含まれる前記熱融着成分を溶融・固化させて、両パルプ層を密着接合する多層パルプモールド成形体の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、層間剥離強度の向上した多層パルプモールド成形体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】多層パルプモールド成形体に関する従来の技術としては、例えば特公昭51−34002号公報及び特開平8−232200号公報に記載のもの等が知られている。これらの公報に記載の技術は、すき網型を第1の繊維懸濁液中に浸漬させて該型の表面に第1の層を形成させた後、該型を一旦引き上げ、次いで該型を第2の繊維懸濁液中に浸漬させて第1の層上に第2の層を形成することにより、多層の成形体を製造し、各層にそれぞれ異なる機能を付与しようとするものである。
【0003】しかし、前記公報に記載の技術によれば、第1の層を形成させた後、型を一旦引き上げてから第2の層を形成するので、第2の層を形成する時点で既に第1の層の繊維間空隙率が小さくなっており(即ち、繊維が密に交絡・水素結合しており)、第2の層の構成繊維が第1の層中に入り込む余地が少なく、第1の層の構成繊維と第2の層の構成繊維との間での繊維交絡・水素結合が十分でなくなり、両層間で層間剥離が起こり易い。
【0004】従って、本発明は、層間剥離強度の向上した多層パルプモールド成形体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、第1のパルプ層と、該第1のパルプ層と配合成分が異なる第2のパルプ層とを有し、少なくとも何れか一方のパルプ層が接着成分を含有していることにより第1のパルプ層と第2のパルプ層とが密着接合している多層パルプモールド成形体(以下、第1発明というときには、この発明をいう)を提供することにより前記目的を達成したものである。
【0006】また本発明は、第1のパルプ層と、該第1のパルプ層の配合組成の異なる第2のパルプ層とを有し、少なくとも何れか一方のパルプ層が接着成分を含有しており、該接着成分はパルプ層の厚み方向に関して両パルプ層の界面側により多く含有されており、該接着成分により第1のパルプ層と第2のパルプ層とが密着接合している多層パルプモールド成形体(以下、第2発明というときには、この発明をいう)を提供することにより前記目的を達成したものである。
【0007】また本発明は、第1のパルプ層と、該第1のパルプ層と配合成分が異なる第2のパルプ層とを有し、少なくとも何れか一方のパルプ層が熱融着成分を含有しており、第1のパルプ層及び/又は第2のパルプ層に含まれる該熱融着成分が両パルプ層の界面において溶融・固化していることにより第1のパルプ層と第2のパルプ層とが密着接合している多層パルプモールド成形体(以下、第3発明というときには、この発明をいう)を提供することにより前記目的を達成したものである。
【0008】また本発明は、第1発明の多層パルプモールド成形体の好ましい製造方法として、一組の割型からなり且つ各割型を組み合わせることにより所定形状のキャビティが形成される前記抄紙型の該キャビティ内に第1のパルプスラリーを供給して、該キャビティの内面に第1のパルプ層を形成した後、前記キャビティ内に第1のパルプスラリーと配合組成の異なる第2のパルプスラリーを供給して第1のパルプ層上に第2のパルプ層を形成する多層パルプモールド成形体の製造方法であって、前記第1のパルプスラリー及び前記第2のパルプスラリーの少なくとも何れか一方に接着成分を含有させた多層パルプモールド成形体の製造方法を提供するものである。
【0009】また本発明は、第2発明の多層パルプモールド成形体の好ましい製造方法として、一組の割型からなり且つ各割型を組み合わせることにより所定形状のキャビティが形成される前記抄紙型の該キャビティ内に第1のパルプスラリーを供給して、該キャビティの内面に第1のパルプ層を形成した後、前記キャビティ内に第1のパルプスラリーと配合組成の異なる第2のパルプスラリーを供給して第2のパルプ層上に第2のパルプ層を形成する多層パルプモールド成形体の製造方法であって、前記第1のパルプスラリーの供給の終期及び/又は前記第2のパルプスラリーの供給の初期に、パルプスラリーの供給経路内に接着成分を添加する多層パルプモールド成形体の製造方法を提供するものである。
【0010】また本発明は、第3発明の多層パルプモールド成形体の好ましい製造方法として、一組の割型からなり且つ各割型を組み合わせることにより所定形状のキャビティが形成される前記抄紙型の該キャビティ内に第1のパルプスラリーを供給して、該キャビティの内面に第1のパルプ層を形成した後、前記キャビティ内に第1のパルプスラリーと配合組成の異なる第2のパルプスラリーを供給して第1のパルプ層上に第2のパルプ層を形成する多層パルプモールド成形体の製造方法であって、該第1のパルプスラリー及び該第2のパルプスラリーの少なくとも何れか一方に熱融着成分を含有させておき、第2のパルプ層の形成後、加熱により第1のパルプ層及び/又は第2のパルプ層に含まれる前記熱融着成分を溶融・固化させて、両パルプ層を密着接合する多層パルプモールド成形体の製造方法を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。先ず第1発明の多層パルプモールド成形体(以下、単に成形体ともいう)について説明する。
【0012】図1には第1発明の成形体の一実施形態における多層構造の模式図が示されている。この成形体は、第1のパルプ層1と、これに隣接する第2のパルプ層2とを有している。第2のパルプ層2は第1のパルプ層と異なる配合組成を有している。第1のパルプ層1には接着成分が含有されているが、第2のパルプ層2には接着成分が含有されていない。そして両層は、第1のパルプ層1に含まれる接着成分、特に両層の界面付近に存在する接着成分によって密着接合されている。これにより、第1のパルプ層1と第2のパルプ層2との間での層間剥離強度が向上し、両層間の層間剥離が効果的に防止される。尚、本実施形態においては、第1のパルプ層1が成形体の外層を構成しており、第2のパルプ層2が成形体の内層を構成しているが、この配置は成形体の用途等に応じて逆でもよい。また、第1のパルプ層1及び第2のパルプ層2にそれぞれ接着成分を含有させると層間剥離強度が更に向上するので好ましい。この場合、各パルプ層に含有させる接着成分は同種のものでもよく、或いは異種のものでもよい。
【0013】第1のパルプ層1及び/又は第2のパルプ層2に含まれる接着成分としては、天然高分子系接着剤及び合成系接着剤が挙げられる。天然高分子系接着剤としては、例えば、デンプン系、カルボキシルメチルセルロース系、グアーガム系の接着剤が挙げられる。合成系接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリアミドエポキシ系樹脂等が挙げられる。天然高分子系接着剤を用いることは、リサイクル性の点から好ましく、合成系接着剤を用いることは、成形性と密着強度の点から好ましい。接着成分は、第1のパルプ層1に含まれるパルプに対して0.01〜20重量%、特に0.1〜10重量%含まれることが、層間剥離強度を十分に高め得る点から好ましい。
【0014】第1のパルプ層1及び第2のパルプ層2それぞれの厚みは、成形体の用途等に応じて適宜決定することができる。特に、外層である第1のパルプ層1の厚みは、成形体全体の厚みの5〜70%、特に10〜50%であることが、内層である第2のパルプ層2に白色度の低いパルプを用いた場合に、外部からみて十分な隠蔽性が発現し得る点から好ましい。各層の厚みは、成形体製造時のパルプスラリーの注入量及び濃度によって決定される。また外層である第1のパルプ層1の厚みは、内層である第2のパルプ層2の厚みより厚いことが、外観の良好な成形体が得られる点で好ましい。
【0015】本実施形態の成形体は多層構造となっているので、各層に個別に機能を付与することが可能である。例えば、第1のパルプ層1にのみ顔料又は染料等の着色剤や有色の和紙又は合成繊維を配合することで、外層としての第1のパルプ層1のみを着色層とすることができる。第1のパルプ層1にのみ着色剤を配合することは、同層に白色度の比較的低いパルプ、例えば脱墨パルプ等の古紙を原料とするパルプを配合する場合(例えば白色度が60%以上、特に70%以上)に、その色調を容易に調整し得ることから有効である。着色剤の配合量は、パルプに対して0.1〜15重量%であることが好ましい。
【0016】また、第1のパルプ層1に耐水剤、撥水剤、防湿剤、定着剤、防黴剤、帯電防止剤等の添加剤を配合させておくことで、第1のパルプ層1に各添加剤の機能に応じた機能を付与することができる。これらの添加剤が配合された外層としての第1のパルプ層1は、その表面張力が10dyn/cm以下であることが好ましく、また撥水度(JIS P 8137)がR10であることが好ましい。
【0017】このように、本実施形態の成形体では、所定の添加剤又はパルプを用いて所望の特性を発現させたい場合に、当該特性が最も効率的に発現する特定の層にのみ当該添加剤等を配合させればよいので、単層のパルプモールド成形体に比して添加剤等の配合量を低減し得るという利点がある。
【0018】次に、第1発明の成形体の好ましい製造方法について図2を参照しながら説明する。図2は、第1発明の成形体を製造する工程のうちの抄紙・脱水工程を順次示す工程図であり、(a)は第1のパルプスラリーの注入・脱水工程、(b)は第2のパルプスラリーの注入・脱水工程、(c)は中子挿入工程、(d)は加圧・脱水工程、(e)は抄紙型を開く工程である。
【0019】先ず、図2(a)に示すように、一組の割型11,12からなり且つ各割型11,12を組み合わせることにより所定形状のキャビティ13が形成される抄紙型10のキャビティ13内に、接着成分を含有する第1のパルプスラリーIを、予め計量された量で供給する。各割型11,12には、その外側面よりキャビティ13に連通する複数の連通孔14がそれぞれ設けられている。また、各割型11,12の内面は、所定の大きさの網目を有するネット(図示せず)によってそれぞれ被覆されている。第1のパルプスラリーIの供給と共に連通孔14を通じてキャビティ13内を抄紙型10の外側に向けて減圧吸引して、第1のパルプスラリーI中の水分を吸引すると共にキャビティ13の内面を被覆するネット上にパルプを堆積させる。その結果、ネット上には、パルプが堆積されてなる第1のパルプ層1が形成される。この第1のパルプ層1には前記接着成分が含有されている。
【0020】所定量の第1のパルプスラリーIの供給が完了し、所定厚みの第1のパルプ層1が形成されたら、図2(b)に示すように、第1のパルプスラリーIと配合組成の異なる第2のパルプスラリーIIを、予め計量された量でキャビティ14内に供給すると共に、連通孔14を通じてキャビティ13内を抄紙型10の外側に向けて減圧吸引して、第1のパルプ層1上に第2のパルプ層2を形成する。このようにしてキャビティ13の内面に外層としての第1のパルプ層1と内層としての第2のパルプ層2とを有する湿潤状態の成形体3が形成される。
【0021】第1のパルプスラリー及び第2のパルプスラリーは、両者の配合組成が互いに異なればその種類に特に制限はない。ここでいう配合組成が互いに異なるとは、接着成分を含有しているか否かのみならず、その他の成分についても配合組成が異なることを意味する。これらのパルプスラリーは、パルプと水に加えて、例えばタルクやカオリナイト等の無機物、ガラス繊維やカーボン繊維等の無機繊維、非木材又は植物質繊維等の成分を含有していてもよい。これらの成分の配合量は、パルプ及び該成分の合計量に対して1〜70重量%、特に5〜50重量%であることが好ましい。
【0022】所定量の第2のパルプスラリーIIの供給が完了し、所定厚みの第2のパルプ層2が形成されたら、図2(c)に示すように、キャビティ13内を吸引・減圧すると共に、拡縮可能な中空状の中子15を、その収縮状態下に成形体3内に挿入する。本発明において拡縮とは、中子15が伸縮してその体積が変化する場合と、中子15自体は伸縮しないが、その内部へ流体を供給又はその内部から流体を除去することにより、その体積が変化する場合の双方を包含する。前者の例としてはウレタン、フッ素系ゴム、シリコーン系ゴム又はエラストマー等の弾性材から構成された中子が挙げられ、後者の例としてはポリエチレンやポリプロピレン等のプラスチック材料、これらのプラスチック材料のフィルムにアルミニウムやシリカが蒸着されたフィルム、これらのプラスチック材料のフィルムにアルミニウム箔がラミネートされたフィルム、紙類、布類等の可撓性材料から構成された中子が挙げられる。本実施形態では、中子15として伸縮可能な弾性材から構成された袋状(風船状)のものを用いている。
【0023】次に、図2(d)に示すように、中子15内に所定の流体を供給して中子15を拡張させ、拡張した中子15により湿潤状態の成形体3をキャビティ13の内面に向けて押圧する。これにより、成形体3の加圧脱水が進行すると共に成形体3にキャビティ4の内面形状が転写される。更に、第1のパルプ層1と第2のパルプ層2とが密着する。その上、第1のパルプ層1に含まれている前記接着成分が、押圧によって第1のパルプ層1と第2のパルプ層2との界面に移行し、該接着成分によって両層が一層緊密に密着接合する。中子15を拡張させるために用いられる加圧流体としては、例えば圧縮空気(加熱空気)、油(加熱油)、その他各種の液が使用される。また、加圧流体を供給する圧力は、0.01〜5MPa、特に0.1〜3MPaであることが好ましい。
【0024】成形体3を所定の含水率まで脱水でき且つ第1のパルプ層1と第2のパルプ層2とを緊密に密着接合できたら、図2(e)に示すように、中子15内の流体を抜き、中子15を縮小させる。次いで、縮小した中子15を成形体3内より取り出し、更に抄紙型10を開いて所定の含水率まで脱水された湿潤状態の成形体3を取り出す。
【0025】取り出された成形体は次に加熱乾燥工程に付される。加熱乾燥工程では、抄紙・脱水を行わず、加熱された状態の加熱型を用いること以外は、図2に示す抄紙・脱水工程とほぼ同様の操作が行われる。即ち、先ず、一組の割型を組み合わせることにより成形すべき成形体の外形に対応した形状のキャビティが形成される加熱型を別途用意し、該加熱型を所定温度に加熱しておく。本実施形態においては、加熱型のキャビティ形状と抄紙型のキャビティ形状とは同じになされている。加熱された状態の加熱型のキャビティ内に、所定の含水率まで脱水された湿潤状態の成形体を装填する。
【0026】次に、図2(c)及び(d)に示す加圧脱水工程で用いた中子15と同様の中子を成形体内に挿入し、該中子内に加圧流体を供給して該中子を拡張させ、拡張した該中子により成形体をキャビティの内面に向けて押圧する。この操作によっても、第1のパルプ層1と第2のパルプ層2とが緊密に密着接合する。中子の材質及び流体の供給圧力は、加圧脱水工程と同様とすることができる。この状態下に、成形体を加熱乾燥する。成形体が十分に乾燥したら、中子内の流体を抜き、該中子を縮小させて取り出す。更に加熱型を開いて、成形体を取り出す。
【0027】尚、前述の製造方法においては、第1のパルプスラリー中に接着成分を含有させたので、第1のパルプ層1中に該接着成分が存在していたが、これに代えて第2のパルプスラリー中に接着成分を含有させれば、第2のパルプ層2中に該接着成分を存在させることができる。
【0028】次に第2及び第3発明の成形体について説明する。第2及び第3発明については、第1発明と異なる点についてのみ説明し、特に説明しない点については第1発明に関して詳述した説明が適宜適用される。
【0029】図3に示すように第2発明の成形体は、第1のパルプ層1と、第1のパルプ層1と配合組成の異なる第2のパルプ層2とを有し、両パルプ層1,2が接着成分を含有しており、該接着成分は、両パルプ層1,2の厚み方向に関して両パルプ層1,2の界面側により多く含有された状態となっている(図3中、符号1’及び2’で示す領域)。そして第1のパルプ層1と第2のパルプ層2とが該接着成分により密着接合している。これにより、第1のパルプ層1と第2のパルプ層2との間での層間剥離強度が向上し、両層間の層間剥離が効果的に防止される。
【0030】接着成分の量は、第1のパルプ層1と第2のパルプ層2とを十分に接合し得る程度であればよく、乾燥状態の成形体の表面積に基づき1〜100g/m2 、特に5〜50g/m2 程度あれば十分である。接着成分を構成する接着剤としては、第1発明に用いられる接着剤と同様のものを用いることができる。
【0031】接着成分の使用量は、その種類にもよるが、両パルプ層1,2におけるパルプの合計量に対して0.01〜20重量%、特に0.1〜10重量%であることが、両パルプ層1,2間の剥離強度を十分に高め得る点から好ましい。
【0032】尚、本実施形態においては、両パルプ層1,2に接着成分が含有されているが、両パルプ層1,2の剥離強度が十分に確保されれば、何れか一方のパルプ層にのみ接着成分を含有させてもよい。
【0033】第2発明の成形体は第1発明の成形体とほぼ同様の方法で製造することができる。第2発明の成形体の製造方法が、第1発明の成形体の製造方法と異なる点は、第1発明の成形体の製造方法においては接着成分を予め第1のパルプスラリー中に含有させておいたのに対して、第2発明の成形体の製造方法においては、接着成分を含有しない第1のパルプスラリーを抄紙型のキャビティ内に供給して第1のパルプ層を形成すると共に、第1のパルプスラリーの供給の終期に、第1のパルプスラリーの供給経路内に接着成分を添加して、第1のパルプ層内に接着成分の含有量の多い領域を形成した後に、該領域上に第2のパルプ層を形成する点である。従って、該領域は両パルプ層1,2の界面側に位置することになる。更に、第2のパルプ層の形成に際し、第2のパルプ層の供給の初期に、第2のパルプスラリーの供給経路内に接着成分を添加して、第2のパルプ層における両パルプ層1,2の界面側に接着成分の含有量の多い領域を形成する。
【0034】尚、第1のパルプ層1のみに接着成分を含有させるには、第1のパルプスラリーの供給の終期に第1のパルプスラリーの供給経路内に接着成分を添加し、第2のパルプスラリーの供給時には接着成分を添加しなければよい。逆に、第2のパルプ層2にのみ接着成分を含有させるには、第1のパルプスラリーの供給時には接着成分を添加せず、第2のパルプスラリーの供給の初期に、第2のパルプスラリーの供給経路内に接着成分を添加すればよい。
【0035】図4に示す第3発明の成形体においては、第1のパルプ層1及び第2のパルプ層2の何れもが熱融着成分5,5’を含有している。両層に含有される熱融着成分5,5’は同種のものでよく、或いは異種のものでもよい。熱融着成分の溶融・固化による剥離強度向上の点からは、同種の熱融着成分を用いることが好ましい。熱融着成分は、短繊維又は粉体の状態で第1及び第2のパルプ層中にそれぞれ含まれている。そして、本発明の成形体においては、第1及び第2のパルプ層にそれぞれ含まれる各熱融着成分が両パルプ層1,2の界面において溶融・固化していることによって第1のパルプ層と第2のパルプ層とが密着接合している。これにより、第1のパルプ層1と第2のパルプ層2との間での層間剥離強度が向上し、両層間の層間剥離が効果的に防止される。
【0036】熱融着成分としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂粉末が挙げられる。ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリル樹脂等からなるチョップドストランド状のバインダー繊維も使用できる。該バインダー繊維は、これらの樹脂を構成成分とする芯鞘構造の熱融着性複合繊維の形態としても使用できる。更に、ポリプロピレン、ポリエチレン等からなるパルプ状バインダー繊維を用いることもできる。
【0037】各パルプ層に含まれる熱融着成分の量は、各パルプ層におけるパルプに対して0.5〜50重量%、特に1〜30重量%であることが、各パルプ層を堆積させる際の抄紙性及び両パルプ層1,2間の接合性の点から好ましい。
【0038】尚、本実施形態においては、両パルプ層1,2に熱融着成分5,5’が含有されているが、両パルプ層1,2の剥離強度が十分に確保されれば、何れか一方のパルプ層にのみ熱融着成分を含有させてもよい。
【0039】第3発明の成形体は第1発明の成形体とほぼ同様の方法で製造することができる。第3発明の成形体の製造方法が、第1発明の成形体の製造方法と異なる点は、第1発明の成形体の製造方法においては、接着成分を第1のパルプスラリー中に含有させておいたのに対して、第3発明の成形体の製造方法においては、接着成分に代えて熱融着成分を第1のパルプスラリー中に含有させ、且つ第2のパルプスラリー中にも熱融着成分を含有させる点、及び成形体の加熱乾燥時に、第1及び第2のパルプ層にそれぞれ含まれる各熱融着成分を、両層の界面において溶融・固化させて密着接合する点である。この場合、第1のパルプスラリーの供給の終期に、第1のパルプスラリーの供給経路内に熱融着成分を別途添加すると共に、第2パルプスラリーの供給の初期に、第2パルプスラリーの供給経路内に熱融着成分を別途添加して、第1のパルプ層と第2のパルプ層との界面付近に存在する熱融着成分の量を、その他の領域よりも増加させると、両パルプ層1,2が一層緊密に密着接合して、両パルプ層1,2間の剥離強度が一層高まる。
【0040】本発明は前述の実施形態に制限されない。例えば、第1〜第3発明の成形体の製造方法では、キャビティ内に供給するパルプスラリーの量は予め計量されており、各パルプスラリーの供給・脱水により各パルプ層を形成したが(つまり、各パルプスラリーを不連続に供給したが)、これに代えてパルプスラリーの供給経路に流量計を設置しておきインラインでパルプスラリーの供給量を計量しながらキャビティ内にパルプスラリーを供給すると共に各パルプスラリーを連続的にキャビティ内に供給してもよい。
【0041】また、前述した第1〜第3発明の成形体の製造方法に代えて、いわゆるプール方式の製造方法を用いることもできる。詳細には、第1発明の成形体の製造においては、図2に示す抄紙型を倒立させた状態で、接着剤を含有する第1のパルプスラリー中に浸漬して、抄紙型のキャビティ内面に第1のパルプ層を形成した後、抄紙型を第1のパルプスラリー中から引き上げて第1のパルプ層を吸引脱水し、次いで抄紙型を第2のパルプスラリー中に浸漬して、同様の方法により第1のパルプ層上に第2のパルプ層を形成する。その後は前述の方法と同様の方法により成形体が得られる。
【0042】また、プール方式による第2発明の成形体の製造においては、図2に示す抄紙型を倒立させた状態で、接着剤を含有する第1のパルプスラリー中に浸漬して、抄紙型のキャビティ内面に第1のパルプ層を形成した後、抄紙型を第1のパルプスラリー中から引き上げて第1のパルプ層を吸引脱水し、次いで第1のパルプ層上に接着剤を噴霧、塗布する等して接着剤層を形成し、更に該接着剤層の上に第2のパルプスラリーを噴霧するか、又は抄紙型を第2のパルプスラリー中に浸漬して、該接着剤層の上に第2のパルプ層を形成する。その後は前述の方法と同様の方法により成形体が得られる。
【0043】また、プール方式による第3発明の成形体の製造においては、図2に示す抄紙型を倒立させた状態で、熱融着性樹脂を含有する第1のパルプスラリー中に浸漬して、抄紙型のキャビティ内面に第1のパルプ層を形成した後、抄紙型を第1のパルプスラリー中から引き上げて第1のパルプ層を吸引脱水する。次いで抄紙型を、熱融着性樹脂を含有する第2のパルプスラリー中に浸漬して、同様の方法により第1のパルプ層上に第2のパルプ層を形成する。その後は前述の方法と同様の方法により成形体が得られる。
【0044】また、図1、図3及び図4に示す成形体は何れも二層構造のものであったが、これに代えて三層以上の多層構造の成形体となしてもよい。
【0045】
【実施例】以下の実施例及び比較例において、特に詳述しない限り「%」は「重量%」を意味する。
【0046】〔実施例1〕一組の割型を突き合わせることにより、成形すべき成形体の外形に対応した形状のキャビティが内部に形成される抄紙型の上部開口部からキャビティ内に、1.0%濃度のLBKP及びこのLBKPの乾燥重量に対して2%のポリアクリルアミドを含む第1のパルプスラリーを供給した。キャビティ内を脱水してキャビティ内面に、第1のパルプスラリーによる第1のパルプ層を形成させた。次に、1.0%の新聞古紙パルプを含む第2のパルプスラリーをキャビティ内に供給した。このようにして得られた二層構造の成形体内に弾性体からなる中子を挿入し、中子内に空気を圧力1.5MPaで圧入して成形体をキャビティ内面に押しつけて更に脱水を行った。次いで、抄紙型を開き成形体を取り出し、これを加熱型内に装填した。加熱型は抄紙型と同様の形状のキャビティを有するものである。加熱型内に装填された成形体内に弾性体からなる中子を挿入し、中子内に空気を圧力1.5MPaで圧入して成形体をキャビティ内面に押しつけた状態下に加熱型を200℃に加熱して成形体を乾燥させた。成形体が十分に乾燥したところで加熱型を開き、ボトル状の成形体を取り出した。この成形体においては、接着剤を含有する第1のパルプ層(厚み400μm)と接着剤を含有しない第2のパルプ層(厚み400μm)とが、第1のパルプ層に含まれる前記接着剤によって密着接合されていた。
【0047】〔実施例2〕第1のパルプスラリーとして1.0%のLBKPを含むものを用いた(接着成分は含有されていない)。第1のパルプスラリーをキャビティ内に供給してキャビティの内面に第1のパルプ層を形成すると共に、第1のパルプスラリーの供給の終期に、第1のパルプスラリーの供給経路内に接着成分としてカチオンデンプンを添加し、第1のパルプ層内に接着成分の含有量の多い領域を形成した。その後は実施例1と同様にして成形体を得た。この成形体においては、第1のパルプ層と、第2のパルプ層とが、接着成分により密着接合されていた。また、接着成分の量は、両パルプ層におけるパルプの合計量に対して2%であった。
【0048】〔実施例3〕第1のパルプスラリーとして、1.0%のLBKP及び10%のポリエチレン粉末を含むものを供給した。キャビティ内を脱水してキャビティ内面に、第1のパルプスラリーによる第1のパルプ層を形成させた。第2のパルプスラリーとして、1.0%の新聞古紙パルプ及び10%のポリエチレン粉末を含むものを供給した。その後は実施例1と同様にして成形体を得た。但し、加熱型による成形体の加熱乾燥温度を200℃に設定して各パルプ層にそれぞれ含まれるポリエチレン粉末を溶融・固化させ、両パルプ層を密着接合させた。
【0049】〔実施例4〕第1のパルプスラリーとして、1.0%のLBKPを供給し、その供給終期に第1のパルプスラリーの供給経路内に熱融着性ポリエチレン繊維をLBKPの乾燥重量に対して5%添加した。次いで、1.0%のLBKPを含む第2のパルプスラリーの供給開始と共に第2のパルプスラリー供給経路内に熱融着性ポリエチレン繊維をLBKPの乾燥重量に対して5%添加した。その後は実施例1と同様にして成形体を得た。但し、加熱型による成形体の加熱乾燥温度を200℃に設定して各パルプ層にそれぞれ含まれるポリエチレン繊維を溶融・固化させ両パルプ層を密着接合させた。このようにして得られた成形体の各パルプ層においては、何れも両パルプ層の界面側にポリエチレン繊維がより多く含有されていた。
【0050】〔比較例1〕実施例1において第1のパルプスラリーに接着剤を含有させない以外は実施例1と同様にして多層積層体を得た。
【0051】〔性能評価〕各実施例及び比較例で得られた成形体から長さ70mm×幅20mmの切片を切り出し、この切片を両層の界面の部分で剥離させて、Y字型の試料片を作成した。この試料片を引張試験器にチャック間距離20mmで装着し、引張速度30mm/minにて180°剥離試験を行い、両層の界面に沿った剥離の有無を観察した。この際、該試験片全部が界面に沿って剥離した場合を層間剥離有りと判定し、該界面に沿わずに剥離した場合を層間剥離無しと判定して評価した。その結果を表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】表1に示す結果から明らかなように、第1のパルプ層と第2のパルプ層とが密着接合している各実施例の成形体(本発明品)は、比較例の成形体に比して層間の剥離強度が極めて高いことが判る。
【発明の効果】本発明によれば、層間剥離強度の向上した多層パルプモールド成形体及びその製造方法が提供される。




 

 


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