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発明の名称 部分配向ポリエステル繊維
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−254226(P2001−254226A)
公開日 平成13年9月21日(2001.9.21)
出願番号 特願2000−62882(P2000−62882)
出願日 平成12年3月8日(2000.3.8)
代理人 【識別番号】100103436
【弁理士】
【氏名又は名称】武井 英夫 (外3名)
【テーマコード(参考)】
4L035
4L036
【Fターム(参考)】
4L035 BB33 BB53 BB56 BB60 CC13 DD20 EE01 FF08 
4L036 MA05 MA26 MA33 PA05 PA14 RA04
発明者 藤本 克宏 / 加藤 仁一郎
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 90モル%以上がトリメチレンテレフタレート繰返単位から構成されるポリトリメチレンテレフタレートからなり、下記(A)〜(F)の要件を満足することを特徴とするポリエステル繊維。
(A)密度 : 1.300〜1.325 (B)複屈折率 : 0.015〜0.06 (C)熱応力のピーク値 : 0〜0.1cN/dtex (D)沸水収縮率 : 20〜60% (E)破断伸度 : 60〜210% (F)U%が0〜2%で、かつ糸径変動が5%以上のムラが繊維1000 m当たり1個以下であること【請求項2】 請求項1記載のポリエステル繊維が巻き付けられ、バルジ率が20%以下であることを特徴とするチーズ状パッケージ。
【請求項3】 巻き付けられている繊維の放縮率が0〜4%であることを特徴とする請求項2記載のチーズ状パッケージ。
【請求項4】 90モル%以上がトリメチレンテレフタレート繰返単位から構成されるポリトリメチレンテレフタレートを溶融紡糸してなるポリエステル繊維の製造方法において、紡口より押出した溶融マルチフィラメントを急冷して固体マルチフィラメントに変えた後、該繊維に対して仕上げ剤を付与し、その後0.02〜0.20cN/dtexの巻取張力にて、チーズ状パッケージの表面温度を0〜50℃に保って1000〜4000m/minの速度で巻き取ることを特徴とするポリエステル繊維の製造方法。
【請求項5】 3〜6°の綾角、かつチーズパッケージ一つ当たり1〜5kgの接圧にて巻取ることを特徴とする請求項4記載のポリエステル繊維の製造方法。
【請求項6】 スピンドルとタッチロールの双方が駆動している方式の巻取機を用いて巻取ることを特徴とする請求項4または5記載のポリエステル繊維の製造方法。
【請求項7】 請求項1記載のポリエステル繊維を用いて製造した仮撚加工糸。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、仮撚加工に適したポリトリメチレンテレフタレート繊維及びそのチーズ状パッケージに関する。更に詳しくは、工業的に製造可能で、安定してムラの少ない高品位の仮撚加糸を得ることのできる部分配向ポリトリメチレンテレフタレート繊維およびそのチーズ状パッケージに関する。
【0002】
【従来の技術】テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチルに代表されるテレフタル酸の低級アルコールエステルと、トリメチレングリコール(1,3−プロパンジオール)を重縮合させて得られるポリトリメチレンテレフタレート(以下「PTT」と略す)は、それを用いた繊維が、低弾性率(ソフトな風合い)、優れた弾性回復性、易染性といったポリアミドに類似した性質と、耐光性、熱セット性、寸法安定性、低吸水率といったポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略す)繊維に類似した性能を併せ持つ画期的なポリマーであり、その特徴を生かしてBCFカーペット、ブラシ、テニスガット等に応用されている(米国特許第3584108号明細書、米国特許第3681188号明細書、「J.Polymer Science」Polymer Physics 編、14巻、263〜274頁、1976年発行、「Chemical Fibers International」45巻、1995年4月発行、110〜111頁、特開平9−3724号公報、特開平8−173244号公報、特開平5−262862号公報)。
【0003】PTT繊維の上記の特性を最大限に生かせる繊維形態の一つとして仮撚加工糸がある。PTT繊維の仮撚加工糸は、特開平9−78373号公報、特開平11−093026号公報に開示されているように、PTTと類似の構造を有する繊維、例えばPET繊維等のポリエステル繊維に比較して、弾性回復性、ソフト性に富むので、ストレッチ用原糸として極めて優れたものとなるからである。しかしながら、上記公報で用いている仮撚加工に用いる供給原糸は、紡糸、延伸といった2段階の工程により製造する延伸糸であるため、生産性を上げることが困難であり、繊維製造コストが高くなってしまう。また延伸糸であるため、生産性の高い高速での延伸仮撚加工を行うことはできない。PET繊維と同様に、1段階の工程で製造したPTTの部分配向繊維(以下「POY」と略す)を用いて仮撚加工を行うことも考えられる。
【0004】仮撚加工に用いるPTT−POYに関する先行技術は、「ChemicalFibers International」47巻、1997年2月発行、72〜74頁に開示がある。この技術文献には、ポリマーを押出して冷却固化した後、仕上げ剤を付与し、ゴデットロールを用いず、あるいは冷たいゴデットロールを介した後、3〜6000m/分で巻き取った繊維が開示されている。また、特開平11−229276号公報には、特定の仕上げ剤を付与し、3300m/分で巻き取った複屈折率が0.059、伸度71%のPTT−POYが、大韓民国公開特許98049300号公報には、固有粘度0.75〜1.1のポリマーを用いて2500〜5500m/分の紡糸速度で紡糸したPTT−POYが、WO99−39041号公開パンフレットには、特定の仕上げ剤を付与し、3500m/分で巻き取った複屈折率が0.062、伸度74%のPTT−POYが開示されている。
【0005】しかしながら、本発明者らの検討によると、上記の技術文献や公開公報などに示されているPTT−POYは糸管上で糸が大きく収縮して糸管を締め付けるために、通常工業生産している糸量を巻取ると糸管が変形し、チーズ状パッケージを巻取機のスピンドルより取り外すことができなくなる。このような状況では、たとえ強度の大きい糸管を使って糸管の変形を抑えたとしても、バルジと呼ばれるパッケージ側面が膨れる現象が見られたり、チーズの内層で糸が堅く締まったりする。このためチーズ状パッケージの運搬が困難になったり、糸を解舒する時の張力が高くなると共に、張力変動も大きくなり、延伸仮撚加工時に毛羽、糸切れが多発したり、倦縮むらや染色むらが発生したりする。
【0006】上記のように繊維が収縮する理由としては次の2つが考えられる。
■ PETと異なり、PTTはジグザグ状の分子構造をしてるのでガラス転移点(以下「Tg」と略す)が50℃程度と低いので室温でも分子が運動して収縮してしまうからである。
■ 弾性回復率が高いために巻き取った際の応力が緩和されずに残るためである。また本発明者らによると、上記技術文献や公開公報などに示されているPTT−POYでは、チーズパッケージ端面に巻かれている糸の太さ、形、構造が異なり、ムラの大きい繊維となってしまう。このようなムラの大きい繊維を用いて仮撚加工を行うと、加工時に毛羽や糸切れが発生したり、染めムラや倦縮ムラの大きい仮撚加工糸しか得られなくなったりしてしまう。
【0007】上記のようなムラが発生する原因としては次のように考えられる。
■ PTTは巻き取った後に繊維が収縮するため、端部の径が大きくなるいわゆる耳高という現象が発生する。このため端部のみが巻取機のタッチロールと接触し、繊維に過度に力が加わって変形する。
■ PTTはTgが低いため、巻取り時にチーズ状パッケージと巻取機のタッチロールとの摩擦発熱により、繊維が不均一に熱処理されて結晶化したり変形したりする。このように巻締まり、バルジ、糸ムラが発生せず、安定してムラの少ない高品位の仮撚加糸を得ることのできるPTT−POYについて記載している先行技術は全くない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らの検討の結果、仮撚加工に適したPTT−POY及びその製造において、従来技術では以下の問題があることが判明した。
(1)巻糸が収縮して、糸管を締め付け、チーズ状パッケージを巻取り機のスピンドルより取り外すことができなくなったり、バルジが発生したりする。このため、工業的に製造されているPET並みの糸量のチーズ状パッケージを巻き取ることができない。
(2)Tgが低く、収縮率が大きいので、チーズパッケージ端面に巻かれている糸の太さ、形、構造が異なり、ムラの大きい繊維となってしまう。このようなムラの大きい繊維を用いて仮撚加工を行うと、加工時に毛羽や糸切れが発生したり、染めムラや倦縮ムラの大きい仮撚加工糸しか得られなくなったりしてしまう。
【0009】本発明の目的は、工業的に製造可能で、かつ染めムラ等のない高品位の仮撚加工糸を、毛羽や糸切れの発生なく安定して工業的に製造可能なPTT−POYおよびその製造方法の提供である。本発明の目的を達成するために解決すべき課題は、上記(1)問題に対応して工業的な製造を可能とするために巻締まりおよびバルジの発生を抑制し、上記(2)問題に対応して工業的に染めムラ等のない高品位の仮撚加工糸を毛羽や糸切れの発生なく得るために、糸の太さ、形、構造のムラがないPTT−POYとすることである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意研究した結果、驚くべきことに、巻取り速度、接圧、綾角、巻張力を適正化して巻取時のチーズパッケージ表面温度を下げ、巻糸にダメージを与えずに巻き取る特殊な紡糸方法を用いて製造した、高伸度、低放縮率のPTT−POYでは、巻締まりおよびバルジの発生を抑制できることを見出した。また、本発明の繊維は、糸の太さ、形、構造にムラがないため、染めムラ等のない高品位の仮撚加工糸を毛羽、糸切れの発生なく安定して得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0011】即ち本発明は以下のとおりのものである。
1.ポリエステル繊維(I)90モル%以上がトリメチレンテレフタレート繰返単位から構成されるポリトリメチレンテレフタレートからなり、下記(A)〜(F)の要件を満足することを特徴とするポリエステル繊維。
(A)密度 : 1.300〜1.325 (B)複屈折率 : 0.015〜0.06 (C)熱応力のピーク値 : 0〜0.1cN/dtex (D)沸水収縮率 : 20〜60% (E)破断伸度 : 60〜210% (F)U%が0〜2%で、かつ糸径変動が5%以上のムラが繊維1000 m当たり1個以下であること【0012】2.チーズ状パッケージ(I)90モル%以上がトリメチレンテレフタレート繰返単位から構成されるポリトリメチレンテレフタレートからなり、下記(A)〜(F)の要件を満足することを特徴とするポリエステル繊維が巻き付けられ、バルジ率が20%以下であることを特徴とするチーズ状パッケージ。
(A)密度 : 1.300〜1.325 (B)複屈折率 : 0.015〜0.06 (C)熱応力のピーク値 : 0〜0.1cN/dtex (D)沸水収縮率 : 20〜60% (E)破断伸度 : 60〜210% (F)U%が0〜2%で、かつ糸径変動が5%以上のムラが繊維1000 m当たり1個以下であること(II)(I)において巻き付けられている繊維の放縮率が0〜4%であることを特徴とするチーズ状パッケージ。
【0013】3.ポリエステル繊維の製造方法(I)90モル%以上がトリメチレンテレフタレート繰返単位から構成されるポリトリメチレンテレフタレートを溶融紡糸してなるポリエステル繊維の製造方法において、紡口より押出した溶融マルチフィラメントを急冷して固体マルチフィラメントに変えた後、該繊維に対して仕上げ剤を付与し、その後0.02〜0.20cN/dtexの巻取張力にて、チーズ状パッケージの表面温度を0〜50℃に保って1000〜4000m/minの速度で巻き取ることを特徴とするポリエステル繊維の製造方法。
(II)(I)において、3〜6°の綾角、かつチーズパッケージ一つ当たり1〜5kgの接圧にて巻取ることを特徴とするポリエステル繊維の製造方法。
(III )(I)または(II)において、スピンドルとタッチロールの双方が駆動している方式の巻取機を用いて巻取ることを特徴とするポリエステル繊維の製造方法。
【0014】4.仮撚加工糸(I)90モル%以上がトリメチレンテレフタレート繰返単位から構成されるポリトリメチレンテレフタレートからなり、下記(A)〜(F)の要件を満足することを特徴とするポリエステル繊維を用いて製造した仮撚加工糸。
(A)密度 : 1.300〜1.325 (B)複屈折率 : 0.015〜0.06 (C)熱応力のピーク値 : 0〜0.1cN/dtex (D)沸水収縮率 : 20〜60% (E)破断伸度 : 60〜210% (F)U%が0〜2%で、かつ糸径変動が5%以上のムラが繊維1000 m当たり1個以下であること【0015】以下、本発明を詳細に説明する、(1)ポリマー原料等本発明に用いるポリマーは、90モル%以上がトリメチレンテレフタレート繰返し単位から構成されるポリトリメチレンテレフタレートである。ここでPTTとは、テレフタル酸を酸成分としトリメチレングリコール(1,3−プロパンジオールともいう)をジオール成分としたポリエステルである。該PTTには、10モル%以下で他の共重合成分を含有していてもよい。そのような共重合成分としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、3,5−ジカルボン酸ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5−ジカルボン酸ベンゼンスルホン酸トリブチルメチルホスホニウム塩、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、アジピン酸、ドデカン二酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等のエステル形成性モノマーが挙げられる。
【0016】また、必要に応じて、各種の添加剤、例えば、艶消し剤、熱安定剤、消泡剤、整色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、蛍光増白剤などを共重合、または混合してもよい。本発明に用いるポリマーの極限粘度[η]は0.5〜1.4が好ましく、更に好ましくは0.75〜1.2である。この範囲で強度、紡糸性に優れた繊維を得ることができる。極限粘度が0.5未満の場合は、ポリマーの分子量が低すぎるため紡糸時や加工時の糸切れや毛羽が発生しやすくなるとともに、仮撚加工糸に要求される強度の発現が困難となる。逆に極限粘度が1.4を越える場合は、溶融粘度が高すぎるために紡糸時にメルトフラクチャーや紡糸不良が生じるので好ましくない。なお、極限粘度[η]は、発明の実施の形態の項で後述する測定値である。
【0017】本発明に用いるポリマーの製法として、公知の方法をそのまま用いることができる。即ち、テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチルとトリメチレングリコールとを原料とし、チタンテトラブトキシド、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸コバルト、酢酸マンガン、二酸化チタンと二酸化ケイ素の混合物といった金属塩の1種あるいは2種以上を加え、常圧下あるいは加圧下で反応させ、次にチタンテトラブトキシド、酢酸アンチモンといった触媒を添加し、250〜270℃で減圧下反応させる。重合の任意の段階で、好ましくは重縮合反応の前に、安定剤を入れることが白度の向上、溶融安定性の向上、PTTオリゴマーやアクロレイン、アリルアルコールといった分子量が300以下の有機物の生成を制御できる観点で好ましい。この場合の安定剤としては、5価または/および3価のリン化合物やヒンダードフェノール系化合物が好ましい。
【0018】(2)ポリエステル繊維(I)本発明のポリエステル繊維としては、下記(A)〜(F)の要件を満足する必要がある。
(A)密度 : 1.300〜1.325 (B)複屈折率 : 0.015〜0.06 (C)熱応力のピーク値 : 0〜0.1cN/dtex (D)沸水収縮率 : 20〜60% (E)破断伸度 : 60〜210% (F)U%が0〜2%で、かつ糸径変動が5%以上のムラが繊維1000 m当たり1個以下であること本発明の課題の一つである繊維の巻締まりを解消するためには、糸管上で糸が大きく収縮しないように、分子が過度に配向して緊張した状態になっていないことが重要である。また、本発明の他の課題である高品質の仮撚加工糸を毛羽、糸切れの発生なく安定して生産することを可能とするには、破断伸度、熱応力のピーク値が一定の範囲内であるとともに、糸のU%が一定の範囲内でありかつ一定以上の糸径ムラが存在しないことが必要である。
【0019】このためには分子が過度に配向して緊張した状態になっていないことが必要である。従ってこれらの課題を達成するためには、ある特定の範囲内の結晶性、配向性をもつ特殊な構造とする必要がある。結晶性の指標としては、一般的に知られているように、繊維の密度測定が適している。非晶部に比べ結晶部の密度が大きいので、密度が大きいほど配向、結晶化していると言える。配向性の指標としては、繊維の複屈折率が適している。また、巻締まりや延伸仮撚加工性に大きく関与する分子の配向状態、緊張状態を表すことのできる値としては、熱応力のピーク値、沸水収縮率及び破断伸度が適している。従って、繊維の密度、複屈折率、熱応力のピーク値、沸水収縮率、破断伸度および繊維のU%が前記の範囲を満足することで、はじめて巻締まりやバルジの発生がなく工業的に製造可能で、安定して品質の高い仮撚加工糸を得ることができるPTT−POYとなる。
【0020】(i)密度(A)
密度は1.300〜1.325g/cm3 の範囲である必要がある。密度が1.325g/cm3 を越えると仮撚加工の際に毛羽や糸切れが発生しやすくなり、工業的に安定して仮撚加工を行うことが困難となる。また、PTTの密度の下限は1.300g/cm3 であり、これ以下の値をとることはない。密度は好ましくは1.310〜1.320g/cm3 の範囲である。
(ii)複屈折率(B)と熱応力のピーク値(C)との関係繊維の複屈折率は0.015〜0.06、熱応力のピーク値は0〜0.1cN/dtexである必要がある。繊維の複屈折率が0.06を越えるか、あるいは熱応力のピーク値が0.1cN/dtexを越えると繊維の収縮する力が強く、巻き取った後に大きく収縮し、巻締まりが発生してしまう。
【0021】繊維の複屈折率が0.015未満では、配向性が低いために室温で保存した場合、繊維が脆くなり仮撚加工時に糸切れや毛羽が多発し、仮撚加工を工業的に行うことはできない。繊維の複屈折率は好ましくは0.02〜0.055、更に好ましくは0.03〜0.05である。また熱応力のピーク値は好ましくは0.01〜0.05cN/dtexである。このような熱応力のピーク値を示す温度は40〜70℃であることが好ましい。熱応力のピーク値温度が40℃以下では繊維を室温付近で保管した場合、沸水収縮率等が変化してしまったり、糸が脆くなってしまったりする。また、熱応力のピーク値温度が70℃を越える場合は変形しにくくなっているため仮撚加工の際に毛羽や糸切れが発生しやすくなってしまう。熱応力のピーク値温度は好ましくは45〜65℃、更に好ましくは50〜60℃である。
【0022】(iii )沸水収縮率(D)
繊維の沸水収縮率は20〜60%である必要がある。沸水収縮率が60%を越える場合は、配向が進んでいないため構造が固定されず、室温で保存していても繊維が脆くなり毛羽、糸切れの発生なく安定して仮撚加工糸を生産することができなくなる。また20%未満では、結晶化が進行しているために繊維が脆くなったり、変形しにくくなったりするため、毛羽、糸切れが多発し仮撚加工が困難となる。沸水収縮率は好ましくは30〜55%である。
【0023】(iv)破断伸度(E)
破断伸度は60〜210%であることが必要である。破断伸度が60%未満では伸度が低すぎるために、紡糸時や仮撚加工時に毛羽や糸切れが発生しやすくなる。破断伸度が210%を越える場合は、繊維の配向度が低すぎるために経時変化しやすく、また室温で保管していても繊維が非常に脆くなってしまう。このため工業的に品質の一定した仮撚加工糸を安定して得ることができない。破断伸度の好ましい範囲は70〜180%、より好ましい範囲は80〜160%である。
【0024】(v)U%及び糸径変動U%が0〜2%で、かつ糸径変動が5%以上のムラが繊維1000m当たり1個以下であることが必要である。U%及び糸径変動は、ツェルベガーウスター株式会社製USTERTESTER3により繊維試料の質量の変動より求めた値である。該装置では電極間に繊維試料を通した際の誘電率の変化により質量の変動を測定することができる。一定速度にて該装置を通すと図1に示すようなむら曲線が得られる。この結果より図1中の式(1)に従ってU%を求めることができる。
【0025】また、糸径変動は繊維10mの平均に対して5%以上質量が変動しているムラの個数を図1のようなむら曲線より数えて求めた。U%が2%を越えるか、あるいは糸径変動が5%以上のムラが繊維1000m当たり1個を越える場合は、仮撚加工時に毛羽や糸切れが多発したり、染めムラや倦縮ムラの大きい仮撚加工糸しか得られなくなってしまう。U%は1.5%以下であることが好ましく、更に好ましくは1.0%以下である。もちろんU%は低ければ低いほど良い。また、糸径変動は4%以上のムラが繊維1000m当たり1個以下であることが好ましく、3%以上のムラが繊維1000m当たり1個以下であることが更に好ましい。
【0026】(III )ポリエステル繊維の物性等(i)強度本発明のポリエステル繊維の強度は、1.0cN/dtex以上であることが好ましい。1.0cN/dtex未満では強度が低いために、糸を解舒する際や仮撚加工を行う際に毛羽や糸切れが多発してしまう。好ましくは1.3cN/dtex以上、更に好ましくは1.5cN/dtex以上である。
(ii)広角X線回折による結晶由来の回折ピークの観察本発明においては、繊維が結晶化していないこと、すなわち広角X線回折にて結晶由来の回折ピークが観察されないことが好ましい。
【0027】以下、広角X線回折について図面を用いて詳述する。X線を繊維に対して垂直方向より照射した際の繊維軸に対して直行方向の回折パターンの代表的な例として、図2の(イ)に結晶に由来する回折ピークが観察される場合のパターンを、図2の(ロ)に結晶に由来する回折ピークが観察されない場合のパターンを示す。ここでX線はCuKα線を用いている。PTTは三斜晶形に属した結晶形をとることが知られており、(Polym.Prepr.Jpn.,Vol.26,p427(1997))このため繊維が結晶化している場合は、繊維軸に対して直行方向の2θ=15.5°付近に(010)面に由来する回折ピークが観察される。
【0028】本発明においては、図2の(ロ)で示したように非晶に由来するブロードな回折が観察されるだけであり、繊維軸に対して直行方向の広角X線回折強度が下記の式を満足するかどうかで、回折像が観察されたかどうかを判定した。
1 /I2 ≦1.1ただし式中、I1 :2θ=15.5〜16.5°の最大回折強度I2 :2θ=18〜19°の平均回折強度一方、図2の(イ)のような結晶に由来するピークが観察される場合は上記式を満足しない。広角X線回折にて結晶に由来する回折ピークが観察されないことで、繊維が明らかに結晶化していないことが分かる。結晶に由来する回折像が観察される場合は繊維が結晶化しているため、仮撚時に毛羽や糸切れが発生しやすい。I1 /I2 の値は好ましくは1.0以下である。
【0029】(iii )繊維のSSカーブ本発明のポリエステル繊維は、図3に示した引張り試験より得られるSSカーブにおいてSmax /Smin が1.1〜2.0あること好ましい。Smax /Smin が1.1未満の場合は、繊維が巻取り時のチーズ状パッケージと巻取機のタッチロールとの摩擦発熱などにより熱処理を受けたことを示す。このように熱処理を受けた場合すなわち、Smax /Smin が1.1未満の場合は加工時に毛羽や糸切れが発生したり、染めムラや倦縮ムラの大きい仮撚加工糸しか得られなくなったりしてしまう。Smax /Smin が2.0を越える場合は仮撚時に糸切れが発生しやすくなる。PTT−POYの場合、特にチーズ状パッケージの端部に巻かれている繊維が熱処理を受けやすいため、端部のSmax /Smin が上記の範囲を満足していることが重要である。Smax /Smin は好ましくは1.15〜1.9の範囲である。
【0030】(iv)本発明のポリエステル繊維は、マルチフィラメントが好ましい。総繊度は限定はされないが、通常5〜400dtex、好ましくは、10〜300dtex、単糸繊度は限定はされないが0.1〜20dtex、好ましくは0.5〜10dtex、更に好ましくは1〜5dtexである。繊維の断面形状は丸、三角、その他の多角形、扁平、L型、W型、十字型、井型、ドッグボーン型等、制限はなく、中実繊維であっても中空繊維であってもよい。
【0031】(3)チーズ状パッケージ本発明の繊維はチーズ状パッケージに巻かれていることが好ましい。近年の仮撚加工工程の近代化・合理化に追随するには、パッケージのラージ化、即ち大量巻きの可能なチーズ状パッケージで巻かれていることが好ましい。またチーズ状パッケージとすることで、仮撚加工時に糸を解舒する際、解舒張力の変動が小さくなり、安定した加工が可能となる。
(i)バルジ率本発明の繊維が巻かれたチーズ状パッケージはバルジ率が20%以下であることが好ましい。図4の(イ)は糸が望ましい形状に巻かれたチーズ状パッケージ(100)を示し、糸が糸管等の巻芯(103)上に平らな端面(102)を形成した円筒状糸層(104)に巻かれている。
【0032】バルジは、図4の(ロ)に示すように、巻締まりによってパッケージ糸の収縮による締め付け力が強く働いた時に起こるチーズ状パッケージ(100)の膨らみのある端面(102a)である。バルジ率とは、図4の(イ)または図4の(ロ)に示す最内層の巻幅Q及び最も膨らんでいる部分の巻幅Rを測定して、下記式を用いて算出した値である。
バルジ率={(R−Q)/Q}×100%バルジ率は巻締まりの程度を示すパラメーターとなる。チーズ状パッケージのバルジ率が20%を越えるものは巻締まりが大きく、巻取機のスピンドルからはずれなくなる場合が多い他、解舒張力の斑による糸切れ、毛羽、染色斑等が起こりやすい。バルジ率は好ましくは15%以下であり、更に好ましくは10%以下である。もちろん0%が最も好ましい。
【0033】(ii)糸管工業的に製造する上では紡糸の際に糸管を交換する頻度を減らすことが作業効率の向上、コストダウンの観点より極めて重要である。また、延伸仮撚工程においては、チーズ状パッケージを使用した後、次のチーズ状パッケージにつなぎ込んで使用するが、このつなぎ込みの頻度を減らすことも作業効率の向上、コストダウンの観点から極めて重要である。従って、該チーズ状パッケージには1kg以上の本発明の繊維が巻かれていることが好ましく、更に好ましくは2kg以上であり、一層好ましくは4kg以上である。1kg未満では糸管交換の頻度やつなぎ込みの頻度が高過ぎ、工業的に製造するのは困難となってしまう。本発明に用いる糸管は、フェノール樹脂などの樹脂、金属、紙のいずれでできていても良い。紙の場合は5mm以上の厚みであることが好ましい。糸管のサイズとしては、直径が50〜250mmであることが好ましく、より好ましくは80〜150mmである。また、糸管上の繊維の巻幅は40〜300mmであることが好ましく、より好ましくは60〜200mmである。この範囲内の糸管、巻幅とすることで、巻姿が良好で、かつ解舒性の良好なチーズ状パッケージを得ることが容易になる。
【0034】(iii )放縮率チーズ状パッケージに巻き付けられている繊維の放縮率は0〜4.0%であることが好ましい。ここで放縮率とは下記式で表される値である。
放縮率=(L0 −L1 )/L0 ×100(%)
ここで、L0 :チーズ状パッケージ上での繊維の長さ(cm)
1 :チーズ状パッケージより解舒して、7日間放置後の繊維の長さ(cm)
この放縮率の値は、糸管上で繊維がどれだけ縮もうとしているかを示す値なので巻締まりの指標となる。放縮率が4.0%を越えると繊維が大きく収縮して巻締まりが発生し、チーズ状パッケージが巻取機のスピンドルより抜けなくなったり、バルジ率が大きくなったりしてしまう。また放縮率が負の値を示す時は、繊維がゆるんでしまうために、巻崩れが発生してしまう。放縮率は0.1〜3.5%が好ましく、0.2〜3.0%が更に好ましい。
【0035】(4)ポリエステル繊維の製造方法次に本発明のポリエステル繊維およびチーズ状パッケージを得る方法を例示する。本発明のポリエステル繊維は、基本的に、紡口より押出した溶融マルチフィラメントを急冷して固体マルチフィラメントに変えた後、該繊維に対して仕上げ剤を付与し、その後0.02〜0.20cN/dtexの巻取張力にて、チーズ状パッケージの表面温度を0〜50℃に保って1000〜4000m/minの速度で巻き取ることにより得られる。
【0036】以下に本発明のポリエステル繊維の好ましい製造方法を図5を用いて詳述する。まず、乾燥機1で100ppm以下の水分率まで乾燥されたPTTペレットを250〜290℃に設定された押出機2に供給し溶融する。溶融PTTは押出機の後の250〜290℃に設定されたスピンヘッド4に送液され、ギヤポンプで計量される。その後パック5に装着された複数の孔を有する紡口口金6を経て溶融マルチフィラメントとして紡糸チャンバー14内に押出される。押出機に供給するPTTペレットの水分率は、ポリマーの重合度低下を抑制するという観点から50ppm以下が好ましく、更に好ましくは30ppm以下である。
【0037】押出機およびスピンヘッドの温度はPTTペレットの極限粘度や形状によって上記範囲内より最適なものを選ぶ必要があるが、好ましくは255〜280℃の範囲である。紡糸温度が250℃未満では、糸切れや毛羽が多発したり、糸径むらが発生したりしてしまう。また、紡糸温度が290℃を越えると熱分解が激しくなり、得られた糸は着色し、また満足し得る強度を示さなくなる。紡糸チャンバー内に押し出された溶融マルチフィラメントは冷却風9によって室温まで冷却されて固体マルチフィラメント8に変えられる。
【0038】この際、紡口直下に設けた30〜250℃の雰囲気温度に保持した長さ2〜80cmの保温領域7を通過させて急激な冷却を抑制した後、この溶融マルチフィラメントを急冷して固体マルチフィラメントに変えて続く工程に供することが好ましい。この保温領域を通過させることで固化むらを抑制し、高い巻取速度あるいは第一ロール速度まで固化むら(太さむらや配向度むら)を生じること無く固体マルチフィラメントに変えることができる。保温領域の温度が30℃未満では急冷となり固体マルチフィラメントの固化むらが大きくなる。また、200℃以上では糸切れが起こりやすくなる。このような保温領域の温度は40〜200℃が好ましく、更に好ましくは50〜150℃である。また、この保温領域の長さは5〜30cmが更に好ましい。
【0039】次に固体マルチフィラメントは、仕上げ剤付与装置10によって仕上げ剤を付与することが好ましい。仕上げ剤を付与することにより、繊維の集束性、制電性、滑り性などが良好となり、巻取時や後加工時に毛羽や糸切れが発生することを抑制したり、巻き取ったパッケージのフォームを良好に保つことができる。ここで仕上げ剤とは、乳化剤を用いて油剤を乳化した水エマルジョン液、油剤を溶剤に溶かした溶液、あるいは油剤そのものであり、繊維の集束性、制電性、滑り性など向上させるものである。付与される仕上げ剤としてはこれらのいずれでもよい。ここで油剤とは、滑り性を向上させるために脂肪酸エステル及び/又は鉱物油及び/又は分子量1000〜20000のポリエーテルを10〜80重量%含み、制電性や保存時の安定性を向上させるためにイオン性界面活性剤及び/又は非イオン性界面活性剤を1〜50重量%含む混合物が好ましく、必要に応じて成分を選択することが好ましい。
【0040】油剤は水エマルジョンに希釈した場合が好ましく、この場合、油剤が仕上げ剤に対して1〜30重量%含まれていることが好ましく、2〜20重量%であることが更に好ましいく、3〜10重量%であることが特に好ましい。油剤が上記割合の水エマルジョンに希釈されていることにより、繊維に均一に付着しやすくなるとともに巻姿を良好にすることが容易になる。油剤の割合が1重量%未満では、仕上げ剤の量が多くなりすぎるために、一定量油剤を繊維に付与することができなくなる。油剤の割合が30重量%を越えると、仕上げ剤の粘度が高く、付与する仕上げ剤の量が少なくなるため、繊維に均一に油剤を付与することが困難となってしまう。
【0041】また付与する仕上げ剤は、繊維に対して油剤が0.1〜3重量%付着するように付与するのが好ましく、0.2〜2重量%付着するように付与するのが更に好ましい。油剤の付着率が0.1重量%以下では、仕上げ剤を付与する目的である繊維の集束性、制電性、滑り性などが悪化してしまい、巻取時や、後加工時に毛羽や糸切れが多発してしまう。油剤の付着率が3重量%を越えると、繊維がべとついて取扱性が悪化したり、紡糸、巻取りの際に用いるガイド類、ロール類に油剤が付着して汚れてしまい、毛羽や糸切れの原因となってしまったりする。
【0042】仕上げ剤を付与する方法としては、公知のオイリングロールを用いる方法や例えば特開昭59−116404号公報などに開示されるガイドノズルを用いる方法などを用いることができるが、仕上げ剤付与装置自体の摩擦による糸切れ、毛羽の発生を抑制するためにはガイドノズルを用いる方法が好ましい。より繊維に均一に仕上げ剤を付与するために、これらの方法を併用したり、あるいは同じ方法にて複数の場所で仕上げ剤を付与してもよい。仕上げ剤を繊維に付与する位置は、溶融マルチフィラメントが冷却風9によって室温まで冷却されて固体マルチフィラメント8に変えられた直後で最も紡口口金に近い位置が好ましい。繊維は仕上げ剤を付与すると同時に集束されるので、この位置が紡口口金に近いほど空気抵抗を下げることができ、糸切れ、毛羽の発生を抑えることができるからである。
【0043】固体マルチフィラメント8は仕上げ剤を付与した後に巻き取られるが、この際直接巻取機にて巻き取っても良いが、好ましくは回転しているロールに一度巻き付けた後に、巻取機で巻き取ることが好ましい。ロールと巻取機の速度を調節することで巻き取り張力を制御することが容易になるからである。本発明では、紡糸過程で必要に応じて、交絡処理を行ってもよい。交絡処理は、仕上げ剤付与前、仕上げ剤付与後、巻取前のいずれか、あるいは複数の場所で行っても良い。
【0044】仕上げ剤を付与した固体マルチフィラメントは、巻取機13を用いて巻き取られる。巻取速度は1000〜4000m/minであることが必要である。巻取速度が1000m/min未満では、繊維の配向が低いために、繊維を室温付近で保存しておくと、繊維が脆くなり、繊維の取扱や延伸仮撚加工が困難となる。また、4000m/minを越えると、繊維の配向や結晶化が進みすぎ、本発明の目的である熱応力のピーク値、密度を兼ね備えた部分配向繊維を得ることができず、糸管上で繊維が大きく収縮し、巻締まりが発生してしまう。好ましくは1500〜3200m/minであり、更に好ましくは2000〜2800m/minである。
【0045】本発明においては、巻き取る時の張力が0.02〜0.20cN/dtexであることが必要である。従来行われてきたPETやナイロンの溶融紡糸でこのように低い張力で巻き取ろうとすると、糸の走行が安定せず、糸が巻取機のトラバースから外れたりして糸切れが発生したり、巻糸を次の糸管に自動で切り替える時に切替ミスが発生したりする。しかしながら驚くべきことにPTT−POYでは本発明のように極低い張力で巻き取ってもこのような問題が発生せず、しかも低い張力とすることで初めて巻締まりなく良好な巻姿のチーズ状パッケージを得ることができる。
【0046】張力が0.02cN/dtex未満では張力が弱すぎるために巻取機の綾振りガイドでの綾振りが良好にできず、巻フォームが悪くなってしまったり、トラバースより糸が外れ、糸切れが起こったりしてしまう。0.20cN/dtexを越えると巻締まりが発生してしまう。巻き取るときの張力は好ましくは0.025〜0.15cN/dtex、更に好ましくは0.03〜0.10cN/dtexである。ロールに巻き付けた後に巻き取る場合は、巻取張力が上記の範囲内になるようにロールの周速度を調整することが好ましい。ロールの速度は巻取速度に対して0.80〜1.1倍の速度であることが好ましい。ロールを用いる以外に、繊維を加速空気中に通したりして巻取り張力を制御しても良い。もちろんこれらの方法を併用してもかまわない。
【0047】本発明では巻取時のチーズ状パッケージの表面温度を0〜50℃に保つことが必要である。部分的にでも表面温度が50℃を越えると、Tgを越えるために繊維が変形したり、結晶化したりする。このようなPTT−POYを用いた場合、高品位の仮撚加工糸を糸切れ、毛羽の発生なく得ることが困難となってしまう。表面温度は5〜45℃が好ましく、10〜40℃が更に好ましい。このようにチーズ状パッケージの表面温度を0〜50℃に保つためには、巻取機中のチーズ状パッケージに冷却風等を当てて冷却しても良いが、綾角、接圧を適正な条件として巻き取ることで表面温度を0〜50℃に保つことがパッケージのフォームを良好に保つためにより好ましい。
【0048】好ましい綾角の範囲は3〜6°である。綾角が3°未満では糸同士があまり交差していないためにチーズ状パッケージ端部の糸が滑りやすく、綾落ちやバルジの発生が起こりやすい。綾角が6°を越えると糸管の端部に巻かれる糸の量が多くなるために中央部に比べ端部の径が大きくなるいわゆる耳高現象が発生してしまう。このため巻き取っている際は端部のみが巻取機のタッチロールに接触してしまい端部の温度が高くなってしまうとともに、端部の繊維が変形してしまい糸径ムラなどの糸品質が悪化してしまう。また、巻き取った糸を解舒する際の張力変動が大きくなり、毛羽や糸切れが多発したりしてしまう。綾角は3.5°〜5.5°が更に好ましい。
【0049】接圧の好ましい範囲はチーズ状パッケージ一つあたり1〜5kgである。接圧とは、巻取時にチーズ状パッケージに巻取機のタッチロールによって加わる荷重のことである。接圧がチーズ状パッケージ一つあたり5kgを越えるとチーズ状パッケージの温度が高くなるとともに、繊維に加わる力が大きくなるために、繊維がダメージを受け変形したり、結晶化してしまう。接圧がチーズ状パッケージ一つあたり1kg未満では巻取機の振動が激しくなり、巻取機が破損してしまう恐れがある。接圧はチーズ状パッケージ一つあたり1.2〜4kgが好ましく、1.5〜3kgが更に好ましい。
【0050】本発明に用いる巻取機としては、スピンドル駆動方式、タッチロール駆動方式、スピンドルとタッチロールの双方が駆動している方式のいずれの巻取機でもかまわないが、スピンドルとタッチロールの双方が駆動している方式の巻取機が糸を多量に巻き取るためには好ましい。タッチロールあるいはスピンドルどちらか一方のみが駆動する場合、他方は駆動軸からの摩擦により回転する。このためスピンドルに取り付けられている糸管とタッチロールの間で滑りが発生し、表面速度が異なってしまう。この結果タッチロールを介してスピンドルに糸が巻き付けられる際に、糸が伸ばされたり、ゆるんだりしてしまい張力が変わって巻姿が悪化したり、糸がこすられてダメージを受けたりしする。スピンドルとタッチロールの双方が駆動することによりタッチロールと糸管の表面速度の差を制御することが可能となって滑りを減らすことができ、糸の品質や、巻姿を良好にすることができる。
【0051】本発明のPTT−POYは、延伸仮撚加工を行うことにより非常にソフトで良好な弾性回復性、およびその持続性を有した仮撚加工糸とすることができる。延伸仮撚加工の方法としては、一般に用いられているピンタイプ、フリクションタイプ、ニップベルトタイプ、エアー加撚タイプ等いかなる方法でも良いが、本発明のPTT−POYの特徴を生かすためには、生産性の高い高速での延伸仮撚加工ができるフリクションタイプ、ニップベルトタイプが好ましい。仮撚加工条件は特に限定されるものではなく、以下に例示する公知の条件範囲より適宜選択して行うことができる。
フリクションタイプでの仮撚加工条件の一例 仮撚速度 : 300〜1000m/min 仮撚温度 : 100〜200℃ ドロー比(延伸倍率) : 伸度40%となるように調整 (通常1.05〜2.0倍)
加撚ディスク : セラミック、ウレタン等 ディスク速度/糸速度の比(D/Y比) : 1.7〜3【0052】
【発明の実施の形態】以下、実施例などを挙げて本発明をより詳細に説明するが、言うまでもなく本発明は実施例などにより何ら限定されるものでない。尚、実施例中の主な測定値は以下の方法で測定した。
(1)極限粘度[η]
極限粘度[η]は、オストワルド粘度計を用い、35℃、o−クロロフェノール中での比粘度ηspと濃度C(g/100ミリリットル)の比ηsp/Cを濃度ゼロに外挿し、以下の式(1)に従って求めた。
[η]=lim(ηsp/C) ・・・(1)
C→0(2)密度JIS−L−1013に基づいて四塩化炭素およびn−ヘプタンにより作成した密度勾配管を用いて密度勾配管法にて測定を行った。
【0053】(3)複屈折率繊維便覧−原料編、p.969(第5刷、1978年丸善株式会社発行)に準じ、光学顕微鏡とコンペンセーターを用いて、繊維の表面に観察される偏光のリターデーションから求めた。
(4)熱応力のピーク値鐘紡エンジニアリング社製のKE−2を用いた。初過重0.044cN/dtex、昇温速度100℃/分で測定した。得られたデーターは横軸に温度、縦軸に熱応力をプロットし温度−熱応力曲線を描く。熱応力の最大点の値を熱応力のピーク値とした。
【0054】(5)沸水収縮率沸JIS−L−1013に基づき、かせ収縮率として求めた。
(6)強度(繊維破断強度)、破断伸度(繊維破断伸度)、SSカーブJIS−L−1013に基づいて定速伸長形引張試験機であるオリエンテック(株)社製テンシロンを用いて、つかみ間隔20cm、引張速度20cm/分にて測定した。Smax /Smin は、チーズ状パッケージ端部の繊維を10ヶ所サンプリングして引張り試験を行い、最も大きいSmax /Smin の値を用いた。
【0055】(7)U%及び糸径変動U%及び糸径変動はツェルベガーウスター株式会社製USTER TESTER3により下記の条件にて測定して求めた。
測定速度 : 100m/min 測定時間 : 1分(U%) (糸長=100m)
10分(糸径変動) (糸長=1000m)
測定回数 : 2回 撚り種類 : S撚り【0056】(8)広角X線回折(カウンター法)
理学電機株式会社(現、株式会社リガク)製広角X線回折装置ロータフレックスRU−200を用いて下記の条件にて観察を行った。
X線種 : CuKa線出力 : 40KV 120mAゴニオメーター : 理学電機株式会社(現株式会社リガク)製検出器 : シンチレーションカウンター計数記録装置 : RINT2000、オンラインデータ処理システムスキャン範囲 : 2θ=5〜40°サンプリング間隔 : 0.03°積算時間 : 1秒回折強度は、サンプルを測定して得た回折強度と空気散乱強度より次の式に従って求めた真の回折強度を用いた。
真の回折強度 = サンプルの回折強度 − 空気散乱強度【0057】(9)油剤付着率JIS−L−1013に基づき、繊維をジエチルエーテルで洗浄し、ジエチルエーテルを留去して繊維表面に付着した純油剤量を繊維重量で割って求めた比率を油剤付着率とした。
(10)バルジ率図4の(イ)または図4の(ロ)に示す糸層(104)の最内層の巻幅Q及び、最も膨らんでいる部分の巻幅Rを測定して、次の式に従って算出した。
バルジ率={(R−Q)/Q}×100%【0058】(11)繊維の放縮率繊維を10分間糸管に巻き取ったチーズ状パッケージを用いて、下記の式に従って求めた。
放縮率=(L0 −L1 )/L0 ×100(%)
ここで、L0 :チーズ状パッケージ上での繊維の長さ(cm)
1 :チーズ状パッケージより解舒して、7日間放置後の繊維の長さ(cm)
0 はチーズ状パッケージ上の巻糸の径と綾角より計算で求めた。また、L1は巻き取り後30分以内に繊維をチーズ状パッケージより解舒し、無荷重で7日間放置した後、1/34cN/dtexの荷重をかけた時の長さを測定して求めた。
【0059】
【実施例1】テレフタル酸ジメチルと1,3−プロパンジオールを1:2のモル比で仕込み、テレフタル酸ジメチルの0.1重量%に相当するチタンテトラブトキシドを加え、常圧下ヒーター温度240℃でエステル交換反応を完結させた。次にチタンテトラブトキシドを更に理論ポリマー量の0.1重量%、二酸化チタンを理論ポリマー量の0.5重量%添加し、270℃で3時間反応させた。得られたポリマーの極限粘度は0.9であった。得られたポリマーを図5に示した装置を用いて、定法により乾燥し、水分を50ppmにした後、265℃で溶融させ、直径0.35mmの36個の孔の開いた一重配列の紡口を通して押出した。
【0060】押出した溶融マルチフィラメントを、長さ5cm、温度100℃の保温領域を通過後、風速0.4m/分の風を当てて急冷し固体マルチフィラメントに変えた後、ガイドノズルを用いてステアリル酸オクチル60重量%、ポリオキシエチレンアルキルエーテル15重量%、リン酸カリウム3重量%を含んだ油剤を濃度10重量%の水エマルジョン仕上げ剤として繊維に対して油剤付着量が0.6重量%となるように付着させた。次いで、固体マルチフィラメントを加熱していない周速度2510m/分のロールに6回巻き付けた後、スピンドルとタッチロールの双方を駆動する方式の巻取機を用いて、巻取速度2500m/分、巻取張力0.03cN/dtex、綾角4.5°、チーズ状パッケージ一つ当たり2kgの接圧にて直径124mm、厚み7mmの紙製の糸管に巻幅90mmにて3kg巻き取って100dtex/36fの繊維の巻かれたチーズ状パッケージを得た。巻取中のチーズ状パッケージ表面温度を赤外線温度計にて測定したところ、最高で35℃であった。
【0061】得られた繊維物性を表1に記す。得られた繊維は本発明の範囲に相当するものであり、紡糸過程で糸切れ、毛羽の発生は認められなかった。また、巻き取ったチーズ状パッケージは巻取機のスピンドルより容易に抜け、バルジ率も良好な範囲であった。実施例1で得た繊維を用いて、帝人製機(株)SDS1200仮撚加工機にてセラミック製の加撚ディスクを4枚用いて、加工速度400m/分、ヒーター温度170℃、ディスク速度/糸速度の比(D/Y比)2.3、ドロー比(延伸倍率)1.4で延伸仮撚加工を行った。仮撚加工の際に毛羽や糸切れは見られず、またPET並みの倦縮形態を有し、しかもPTT特有のソフトさ、弾性回復性を持った優れた仮撚加工糸を得ることができた。また、3ヶ月後でも得られたPTT−POYの物性に経時変化はほとんど見られず、仮撚加工を行ったところ同品質の仮撚加工糸を得ることができた。
【0062】
【実施例2〜5】実施例1と同様にして、表1に示した条件で36fの繊維を得た。紡糸状態及び得られた繊維物性を表1に記す。いずれの繊維も本発明の範囲に相当するものであり、紡糸過程で糸切れ、毛羽は認められなかった。また巻き取ったチーズ状パッケージは巻取機のスピンドルより容易に抜け、バルジ率も良好な範囲であった。
【比較例1】実施例1と同様にして、表1に示した条件で36fの繊維を得た。得られた繊維物性を表1に記す。比較例1では巻取り速度が早すぎるために巻締まりが発生し、巻取機のスピンドルよりチーズ状パッケージを取り出すことができなかった。この繊維を少量サンプリングして物性を測定したところ、伸度や熱応力のピーク値等が本発明より外れており、配向が高すぎる繊維であった。
【0063】
【比較例2】実施例1と同様にして、表1に示した条件で36fの繊維を得た。得られた繊維物性を表1に記す。比較例2では巻取速度が低すぎ、得られた繊維は伸度、複屈折率等が本発明の範囲を外れており、ほとんど配向していない繊維であった。この繊維を用いて、ドロー比以外は実施例1と同様にして仮撚を行ったが、糸切れが多発し仮撚加工糸を得ることができなかった。
【比較例3】実施例1と同様にして、表1に示した条件で36fの繊維を得た。得られた繊維物性を表1に記す。比較例3では巻取り張力が高すぎるために巻締まりが発生し、巻取機のスピンドルよりチーズ状パッケージを取り出すことができなかった。この繊維を少量サンプリングして物性を測定したところ、糸径変動が5%以上のムラが5個と多く、本発明の範囲を外れていた。
【0064】
【比較例4、5】実施例1と同様にして、表1に示した条件で36fの繊維を得た。得られた繊維物性を表1に記す。比較例4では綾角が大きすぎ、比較例5では接圧が高すぎるために巻取時のチーズ状パッケージ端部の径が大きくなり、端部の表面温度が50℃を越えてしまった。得られた繊維はいずれの場合もU%が2%を越え、糸径変動が5%以上のムラも10個以上あり、本発明の範囲を外れていた。この繊維を用いて、実施例1と同様にして仮撚を行ったところ、毛羽、糸切れが多発した。また得られた仮撚加工糸を筒編み後に染色したところ、非常に染めムラの多いものであった。
【0065】
【表1】

【0066】
【発明の効果】本発明のポリエステル繊維は、適度な結晶性と配向性を兼ね備えたPTT−POYである。このため巻取の際に巻締まりが起こりにくく良好な巻姿のチーズ状パッケージを得ることができ、工業的に製造することができる。また糸の太さ、形、構造のムラがないため、工業的に染めムラ等のない高品位の仮撚加工糸を毛羽や糸切れの発生なく得ることができる。本発明のPTT−POYを用いて製造した仮撚加工糸は、ソフトな風合いと高い伸縮伸長率、伸縮弾性率を持った極めて優れたストレッチ素材として好適な仮撚加工糸となる。このためいわゆるゾッキや交編タイプのパンティストッキング、タイツ、ソックス(裏糸、口ゴム)、ジャージー、弾性糸のカバリング糸、交編パンティストッキング等交編品の伴糸等に有用である。




 

 


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