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発明の名称 摩耗性が改善されたポリケトン繊維
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−207384(P2001−207384A)
公開日 平成13年8月3日(2001.8.3)
出願番号 特願2000−19995(P2000−19995)
出願日 平成12年1月28日(2000.1.28)
代理人 【識別番号】100108693
【弁理士】
【氏名又は名称】鳴井 義夫 (外3名)
【テーマコード(参考)】
4L033
4L035
【Fターム(参考)】
4L033 AA06 AB01 AC06 AC08 AC09 BA14 BA28 CA18 CA48 
4L035 BB03 BB60 BB61 BB89 BB91 DD20 EE08 EE13 EE20
発明者 加藤 仁一郎 / 藤田 敏也
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 繰り返し単位の90モル%以上が下記式(1)で示される単位であるポリケトンから構成されたポリケトン繊維において、該繊維の結晶化度が30%以上であり、かつ該繊維表面に繊維重量に対して0.2〜5重量%の仕上げ剤が付着してあって、繊維―繊維間動摩擦係数が0.01〜0.7であることを特徴とするポリケトン繊維。

【請求項2】 繊維―繊維間動摩擦係数が0.01〜0.35であることを特徴とする請求項1記載のポリケトン繊維。
【請求項3】 仕上げ剤の構成成分として下記化合物(1)〜(3)から選ばれた少なくとも1種を必須成分とし、その合計量が仕上げ剤中に30〜100重量%含有されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のポリケトン繊維。
(1)分子量300〜2000のエステル化合物(2)鉱物油(3)R1 −O−(CH2 CH2 O)n−(CH(CH3 )CH2 O)m−R2(ここで、R1 、R2 は、水素原子、炭素数1〜50までの有機基であり、n、mは1〜500の数である。)
【請求項4】 更に、乳化剤が仕上げ剤中に5〜40重量%含有されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリケトン繊維。
【請求項5】 更に、制電剤が仕上げ剤中に0.2〜10重量%含有されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリケトン繊維。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、摩耗性が改善されたポリケトン繊維に関する。更に詳しくは、繊維表面に仕上げ剤を付与して特定範囲の繊維−繊維間動摩擦係数を持たせることにより、タイヤコードやロープ製造時等の撚り工程時に繊維のねじれや繊維−繊維間のこすれによる毛羽や単糸切れが起こりにくい、摩耗性が改善されたポリケトン繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、一酸化炭素とエチレン、プロピレンのようなオレフィンとをパラジウムやニッケルといった遷移金属錯体を触媒として用いて重合させることにより、一酸化炭素と該オレフィンが実質完全に交互共重合したポリケトンが得られていることが知られている(工業材料、12月号、第5ページ、1997年)。ポリケトン繊維は高強度、高弾性率の他、高温での寸法安定性、接着性、耐クリープ特性といった優れた特性を有しているので、これらの特性を生かしてタイヤコード、ベルト等の補強繊維、ロープ、コンクリート補強用繊維といった産業資材用繊維への応用が期待されている(特開平2―112413号公報、特開平9−324377号公報、特開平9―328342号公報等)。
【0003】ポリケトン繊維をタイヤコードに用いる場合には、繊維に撚りを掛けて得られたコードに使用時における耐久性を付与する必要がある。繊維に撚りを与える時には、繊維にねじれや繊維−繊維間の強いこすれが生じる。10g/d以上の高強度、120g/d、好ましくは200g/dを越える弾性率を有するポリケトン繊維は、繊維を構成するフィブリルが高度に繊維軸方向に配向しているが、本発明者らの検討によれば、撚りによってねじれやこすれが働くとこのフィブリルがはがれ、コードが毛羽だったりひどい場合には単糸切れが起こり、得られたコードの強度、弾性率が低下するといった問題が生じることがわかった。しかしながら、ポリケトン繊維においては、撚り工程におけるこのような問題認識やそれを解決する手段については、一切提言されていない。たとえば、特開平9−324377号公報には、溶融紡糸で得られたポリケトン繊維を用いたタイヤコードが開示されている。しかしながら、上記の問題の認識は全くなく、単に得られたポリケトン繊維に撚りを掛けているだけであり、この問題を解決する一切の示唆はない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする課題は、タイヤコードを製造する時の撚り工程におけるねじりやこすれによって生じる毛羽や単糸切れを低減することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の課題を解決するために、種々の検討を重ねた結果、特定の繊維構造を有するポリケトン繊維の繊維表面に仕上げ剤を付与し、繊維−繊維間静摩擦係数を特定の限られた範囲にすると、単糸間に入った仕上げ剤の油膜が撚り段階で単糸同士を適度に滑らせ、繊維のフィブリル化を著しく低下せしめ、繊維の耐摩耗性を著しく向上せしめる可能性を見いだし、更に検討を進めた結果、本発明に到達した。
【0006】すなわち、本発明は、繰り返し単位の90モル%以上が下記式(1)で示される単位であるポリケトンから構成されたポリケトン繊維において、該繊維の結晶化度が30%以上であり、かつ該繊維表面に繊維重量に対して0.2〜5重量%の仕上げ剤が付着してあって、繊維―繊維間動摩擦係数が0.01〜0.7であることを特徴とするポリケトン繊維である。

【0007】本発明のポリケトン繊維は、繰り返し単位の90モル%以上が上記の式(1)で示される単位であるポリケトンから構成された繊維である。10モル%未満、好ましくは3モル%未満、更に好ましくは1モル%未満の範囲で上記の式(1)以外の繰り返し単位、例えば下記の式(2)に示したもの等を含有していてもよい。

【0008】Rはエチレン以外の1〜30の有機基であり、例えばプロピレン、ブチレン、1−フェニルエチレン等が例示される。これらの水素原子の一部または全部が、ハロゲン基、エステル基、アミド基、水酸基、エーテル基で置換されていてもよい。もちろん、Rは2種以上であってもよく、例えば、プロピレンと1−フェニルエチレンが混在していてもよい。高強度、高弾性率が達成可能で、高温での安定性が優れるという観点で繰り返し単位の98モル%以上が上記の式(1)で示される単位であるポリケトンであることが好ましく、最も好ましくは100モル%である。また、これらのポリケトンには必要に応じて、酸化防止剤、ラジカル抑制剤、他のポリマー、艶消し剤、紫外線吸収剤、難燃剤、金属石鹸等の添加剤を含んでいてもよい。
【0009】本発明のポリケトン繊維は、結晶化度が30%以上であることが必要である。結晶化度をこの範囲にすることと仕上げ剤の効果が相まって、本発明のポリケトン繊維は、優れた耐摩耗性を発現する。該繊維の結晶化度が30%未満では非晶部分の量が多くなって、仕上げ剤が繊維中にしみ込み仕上げ剤の効果を下げるばかりか、しみ込んだ仕上げ剤が繊維表面を可塑化するので、むしろねじれやこすれに弱くなる傾向を示す。好ましくは、50%以上であり、更に好ましくは60%以上である。本発明のポリケトン繊維は、該繊維表面に繊維重量に対して0.2〜5重量%の仕上げ剤が付着してあって、仕上げ剤の効果によって繊維−繊維動摩擦係数(以下、μと略記する)が0.01〜0.7であることが必要である。ここで仕上げ剤とは、繊維表面又は、繊維表面及び繊維の表層部に付着した液状又は固体状の繊維表面状態を改質する剤である。
【0010】仕上げ剤の繊維上への付着量としては、繊維重量に対して0.2〜5重量%であることが必要である。0.2重量%未満では、耐摩耗性向上の効果が小さくなる。また、5重量%を越えると、繊維の走行時の抵抗が大きくなりすぎたり、仕上げ剤がロール、熱板、ガイド等に付着しそれらを汚すこととなる。好ましくは0.5〜3.5重量%、更に好ましくは、0.7〜1.5重量%である。もちろん、仕上げ剤の一部が繊維内部へ浸透していてもよい。μは、0.01〜0.7であることが必要である。0.01未満では繊維−繊維間の動摩擦が小さすぎて撚り工程ですべりが起こり、十分な撚り数を繊維に付与することはできない。また、μが0.7を越えると、仕上げ剤を付与していても繊維−繊維間の摩擦が大きすぎて撚り工程において毛羽や単糸切れが発生する。好ましくは0.1〜0.5であり、更に好ましくは0.1〜0.35、最も好ましくは0.1〜0.25である。
【0011】本発明で使用する仕上げ剤の種類については特に制限はないが、ポリケトン繊維仕上げ剤の構成成分として下記化合物(1)〜(3)から選ばれた少なくとも1種を必須成分とし、その合計量が仕上げ剤中に30〜100重量%含有されている仕上げ剤が好ましい。このような仕上げ剤を付与することにより、ポリケトン繊維の表面に強固な油膜が形成し、この油膜によって繊維表面が滑るので、撚りを掛けても繊維が短期間に摩耗することがない。
(1)分子量300〜2000のエステル化合物(2)鉱物油(3)R1 −O−(CH2 CH2 O)n−(CH(CH3 )CH2 O)m−R2(ここで、R1 、R2 は、水素原子、炭素数1〜50までの有機基であり、n、mは1〜500の数である。)
以下、仕上げ剤の好ましい構成成分について説明する。
【0012】上記化合物(1)のエステル化合物は、ポリケトン繊維表面の平滑性を向上させ、そのすべりにより摩耗性を向上させる成分である。エステル化合物としては各種合成品及び天然油脂が使用され、構造としては、脂肪族エステル、芳香族エステルが挙げられる。脂肪族エステル、芳香族エステルとしては、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル、ペンタエステル、ヘキサエステル等があるが、平滑性の観点からモノエステル、ジエステル、トリエステルが好ましい。分子量300未満の場合には、油膜の強度が低くなりすぎてカイドやロールで容易に繊維表面から離脱し、その結果繊維の平滑性を低下させてしまったり、蒸気圧が低すぎて工程中で飛散し作業環境を悪くするといった問題がある。分子量が2000を越えると仕上げ剤の粘性が高くなりすぎるために、平滑性とサイジング性が低下するので好ましくない。特に、300〜1500の分子量のポリエステル化合物が、特に優れた平滑性を示すので最も好ましい。好ましいエステル化合物の具体例としては、ステアリン酸イソオクチルステアレート、ステアリン酸オクチル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸イソオクチル、ステアリン酸2−エチルヘキシル、ラウリン酸オレイル、ステアリン酸イソトリデシル、オレイン酸オレイル、アジピン酸ジオレイル、トリラウリン酸グリセリンエステル、ビスフェノールAジラウリレート、ビスオキシエチルビスフェノールAのジラウリレート、ビスオキシエチルビスフェノールAのジオクタネート、分子量が500を超えるか又は常温で固体状になる脂肪族アルコールエステル、ヤシ油、ナタネ油等の多価数アルコールエステル等が挙げられ、特に好ましくは、ステアリン酸オクチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸ラウリル、オレイン酸オレイルである。もちろん、2種以上のエステル化合物を組み合わせてもよい。これらのエステル化合物の内、平滑性が優れているという観点から、分子構造的には1価のカルボン酸と1価のアルコールからなるエステル化合物が特に好ましい。また、耐熱性を高めたい場合は、分子内に硫黄原子等のヘテロ原子を導入してもよい。
【0013】上記化合物(2)の鉱物油もまた、ポリケトン繊維表面の平滑性を向上させ、そのすべりによって摩耗性を向上させる成分である。鉱物油としてはパラフィン系、ナフテン系、芳香族系等のものがあるが、平滑性向上の観点からはパラフィン系又はナフテン系のものが好ましい。もちろん、2種以上の鉱物油を組み合わせてもよい。好ましくは30℃におけるレッドウッド粘度が40〜800秒である。40秒未満のものは飛散しやすく効果が小さくなる場合があり、800秒以上では粘度が高すぎて平滑性向上の効果が小さくなる。好ましくは、50〜500秒である。
【0014】上記化合物(3)は下記式のポリエーテルであり、仕上げ剤が繊維表面に形成する油膜の強度を高める働きがあり、これを添加することでポリケトン繊維の問題である摩耗性を飛躍的に向上できる。
1 −O−(CH2 CH2 O)n−(CH(CH3 )CH2 O)m−R2ここで、R1 、R2 は、水素原子、炭素数1〜50までの有機基であり、n、mは1〜500の数である。ここで、有機基としては、炭化水素基であっても、炭化水素基の一部または、全部がエステル基、水酸基、アミド基、カルボキシル基、ハロゲン原子、スルホン酸基等のヘテロ原子を持つ基または元素で置換されていてよい。好ましくは、水素原子、R1、R2は、脂肪族アルコール、脂肪族カルボン酸、脂肪族アミン、脂肪族アミド残基であることが好ましく、炭素数として5〜18が好ましい。
【0015】上記化合物(3)において、プロピレンオキシド単位とエチレンオキシド単位は、ランダム共重合であっても、ブロック共重合であってもよいが、特にプロピレンオキシド単位/エチレンオキシド単位が重量比20/80〜50/50である場合、摩耗抑制効果が高く、更に好ましくは、プロピレンオキシド単位/エチレンオキシド単位の重量比が20/80〜50/50であって、上記化合物(3)の分子量が1500〜20000が好ましい。特にこの分子量は重要であり、分子量が1500未満では摩耗性向上効果が小さく、分子量が20000を越えると、繊維の静摩擦係数が下がりすぎて巻きフォームが悪くなってしまう傾向がある。好ましくは、1500〜15000である。本発明で用いる仕上げ剤は、以上の化合物(1)〜(3)から選ばれた少なくとも1種を必須成分とし、その合計量が仕上げ剤中に30〜100重量%含有されていることが好ましい。30重量%未満では繊維の耐摩耗性が低下してしまう。好ましくは、40〜90重量%である。
【0016】また、本発明で用いる仕上げ剤には、仕上げ剤の各成分を適切に乳化するための乳化性、繊維の集束性、仕上げ剤の付着性、耐摩耗性を付与するために、仕上げ剤重量の5〜40重量%に相当する乳化剤を用いることが好ましい。乳化剤としては、特に制限はないが、好ましくは、炭素数5〜30のアルコール、カルボン酸、アミン、アミドから選ばれた少なくとも1種に、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドが付加した化合物であって、該オキシドの付加モル数が1〜100である非イオン性界面活性剤である。この非イオン性界面活性剤は、分子構造的に線状であっても分岐していてもよく、複数の官能基を有していてもよい。用いるアルコール、カルボン酸、アミン、アミドの炭素数としては5〜30であり、好ましくは乳化性、集束性の観点から8〜18である。エチレンオキシド、プロピレンオキシドの付加モル数としては1〜100であり、好ましくは平滑性の高さから5〜15が好ましい。エチレンオキシド単位やプロピレンオキシド単位は、ランダム共重合しても、ブロック共重合してもいずれでもよい。
【0017】乳化剤の具体例としては、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、プロピレンオキシド/エチレンオキシドが共重合したモノブチルエーテル、ポリオキシエチレンビスフェノールAジラウリレート、ポリオキシエチレンビスフェノールAラウリレート、ポリオキシエチレンビスフェノールAジステアレート、ポリオキシエチレンビスフェノールAステアレート、ポリオキシエチレンビスフェノールAジオレート、ポリオキシエチレンビスフェノールAオレート、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンオレイン酸アミド、ポリオキシエチレンラウリン酸アミド、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド、ポリオキシエチレンラウリン酸エタノールアミド、ポリオキシエチレンオレイン酸エタノールアミド、ポリオキシエチレンオレイン酸ジエタノールアミド、ジエチレントリアミンオレイン酸アミド等が挙げられる。
【0018】乳化剤の含有量は仕上げ剤重量に対し5〜40重量%であることが乳化性、繊維の集束性、仕上げ剤の付着性、耐摩耗性を高める観点から好ましい。5重量%未満では上記性能が不足する。一方、30重量%を越えると摩擦が高くなりすぎ、毛羽が発生しやすくなる。好ましくは5〜30重量%である。更に、本発明の仕上げ剤には、繊維に制電性、耐摩耗性、乳化性、防錆性を付与するために、仕上げ剤重量の0.2〜10重量%に相当する制電剤を用いることが好ましい。
【0019】制電剤としては、公知のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれを用いてもよいが、特にアニオン性界面活性剤を用いることが制電性、耐摩耗性、乳化性、防錆性を付与できる観点から好ましく、特にスルホン酸塩化合物、高級アルコール、エチレンオキシドを付加させた高級アルコール、もしくはアルキルフェノール類のリン酸エステル塩、高級脂肪酸塩が好ましい。もちろん、2種以上の各アニオン性界面活性剤を組み合わせてもよい。好ましいイオン性界面活性剤の具体例としては、下記化合物(4)〜(7)が挙げられ、これらは制電性、耐摩耗性、乳化性、防錆性が特に優れている。
(4)R3 −SO3 −X(5)(R4 −O−)P(=O)(OX)2(6)(R5 −O−)(R6 −O−)P(=O)(OX)
(7)R7 −COO−X【0020】ここで、R3 〜R7 は、水素原子、炭素数4〜40までの有機基である。ここで、有機基としては、炭化水素基であっても、炭化水素基の一部または、全部がエステル基、水酸基、アミド基、カルボキシル基、ハロゲン原子、スルホン酸基等のヘテロ原子を持つ基または元素で置換されていてよい。好ましくは炭素数8〜18の炭化水素基である。Xは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。これらの制電剤の含有量は、仕上げ剤重量の0.2〜10重量%であることが制電性を高める観点から必要である。0.2重量%未満では制電性、耐摩耗性、乳化性、防錆性が不足する他、繊維−繊維動摩擦係数や繊維−繊維静摩擦係数が低くなりすぎて巻きフォームが悪くなる。また、10重量%を越えると、摩擦が高くなりすぎ、毛羽が発生しやすくなる。好ましくは0.5〜5重量%である。
【0021】本発明に用いる仕上げ剤には、本発明の目的を阻害しない範囲、すなわち通常は仕上げ剤重量の30重量%未満で、以上述べた以外の仕上げ剤成分を存在させてもよい。そのような仕上げ剤成分としては特に制限はないが、平滑性、仕上げ剤の繊維上への広がり性を向上させるために、シリコン化合物、例えば、ジメチルシリコン、ジメチルシリコンのメチル基の一部のメチル基をアルキル基を介してエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを3〜100モル程度付加させた化合物、ゴムとの接着性を向上させるアミノエーテル、エポキシ化合物、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体等を含有してもよく、また本発明で規定した以外のエステル化合物、鉱物油等を含有していてもよい。また、公知の防腐剤、防錆剤、酸化防止剤等を含有してもよい。含有量としては、好ましくは、10重量%以下、更に好ましくは7重量%以下である。
【0022】以上のような構成成分からなる仕上げ剤はそのままストレート仕上げ剤を付与して、あるいは、水に例えば2〜60重量%、好ましくは5〜35重量%分散させてエマルジョン仕上げ剤として繊維に付着させることができる。本発明のポリケトン繊維の製造方法は特に限定はないが、一般的には湿式紡糸又は溶融紡糸が採用される。好ましくは、得られる繊維の力学物性が優れているという観点から湿式紡糸が好ましい。
【0023】溶液紡糸を採用する場合、例えば、特開平2−112413号公報、特開平4−228613号公報、特願平10−236595号などに記載の方法に従って、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノール、m−クレゾール、レゾルシン、亜鉛塩水溶液等を用い、例えば、0.25%から30%、好ましくは0.5から20%のポリマー濃度で繊維化し、ついでトルエン、エタノール、イソプロパノール、n−ヘキサン、イソオクタン、アセトン、メチルエチルケトン、水などの非溶剤浴で溶剤を除去、洗浄して紡糸原糸を得ることができる。中でも特願平10−236595号に記載の方法、つまり溶剤として亜鉛塩水溶液、非溶剤浴として水系溶剤が溶剤の低毒性、不燃性、経済性、溶剤回収性、紡糸安定性の面から最も好ましい。使用する紡口については特に制限はないが、紡口径は0.01〜2mmなど、穴数は1ホールから3000ホールのものを使用することができる。また吐出溶液量についても特に制限は無いが、1つの紡口当たりの吐出溶液量は1〜500g/minの範囲が実用上好ましい。得られた紡糸原糸は痕跡の不純物を除去するために、希薄硫酸水、希薄アルカリ水等で数分間から1昼夜洗浄することが好ましい。さらに、純水、イオン交換水、温水などで酸やアルカリ成分を徹底的に除去したあと、延伸工程に供することができる。延伸速度は特に制限はないが、1〜3000m/min、好ましくは、生産性及び延伸性の面から10〜2000m/minである。延伸方法についても特に制限は無いが、例えば、加熱ロールを用いても良いし、非加熱ロール間にホットプレートにより繊維に熱を与えても構わない。あるいは加熱ロールとホットプレートを組み合わせても良い。ロールの数、ホットプレートの数についても特に制限はないが、ロールの数は2から10、好ましくは作業性の面から3〜5個である。ホットプレートの数も1から9、好ましくは2から4個である。加熱ロール及びホットプレートの温度は(T−100)℃から(T+30)℃、好ましくは(T−50)℃から(T+20)℃で延伸して最終的に所望の繊維を得ることができる。(但し、Tは上記ポリマーの結晶融点である。)
湿式紡糸において、ポリケトン繊維に本発明の仕上げ剤を付与する方法は特に制限はないが、乾燥の前後、延伸の前後、乾燥や延伸の途中に、1回又は数回に分けて、繊維を仕上げ剤の入った浴に通したり、公知の仕上げ剤付与ノズルを用いて付与することができる。
【0024】また、溶融紡糸を採用する場合、例えば、ポリマーの水分率を100ppm以下に乾燥し、窒素パージした押出機の中にポリマーを供給し、押出温度及びブロック温度を最低(T+20)℃、好ましくは少なくとも(T+40)℃の温度で吐出量5〜100g/minの範囲にて溶融紡糸する。また紡口から冷却ゾーンまでの距離は好ましくは10〜500mmとし、0℃から30℃である冷風の速度は0.1〜1m/min、紡口は、穴径0.1〜0.5mmのものを用いることができる。紡糸速度は100〜10000m/minで巻き取ることができる。次いで巻き取ったチーズを2つのロールの間にホットプレートをもつ延伸機にてポリマーの結晶を解きほぐしながら延伸することができる。ロールの温度はガラス転移点以上であればよい。またホットプレート温度は最高(T−10)℃、好ましくは(T−40)℃以下の温度で好ましくは3倍以上、より好ましくは7倍以上の延伸比で延伸することにより容易に所望する繊維が製造可能である。(但し、Tは上記ポリマーの結晶融点である。)。溶融紡糸において、ポリケトン繊維に本発明の仕上げ剤を付与する方法は特に制限はないが、通常は巻き取りが行われる前で繊維に付与することが好ましい。
【0025】
【実施例】本発明を以下の実施例等により更に詳しく説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。実施例の説明中に用いられる各測定値の測定方法は、次の通りである。
(1)極限粘度極限粘度[η]は、次の定義式に基づいて求めた。

定義式中のt及びTは、純度98%以上のヘキサフルオロイソプロパノール及び該ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解したポリケトンの希釈溶液の25℃での粘度管の流過時間である。また、Cは上記100ml中のグラム単位による溶質重量値である。
【0026】(2)結晶化度DSC(示差走査型熱分析装置)を用いた融点測定で200〜300℃の範囲で得られる最大の吸熱ピーク面積から計算される熱量△H(J/g)より、下記式を用いて算出した。ここで、225J/gは、完全結晶の融解熱である。
結晶化度=(△H/225)×100(%)
(3)繊維の強度、伸度、弾性率繊維の強伸度は、JIS−L−1013に準じて測定した。
(4)レッドウッド粘度の測定JIS−K2283−1956に準じて測定した。
(5)油付率(仕上げ剤の付着量)
繊維をエチルエーテルで洗浄し、エチルエーテルを留去して繊維表面に付着した純仕上げ剤量を繊維重量で割って求めた比率を油付率とした。
【0027】(6)繊維−繊維間動摩擦係数(μ)
約690mの繊維を円筒の周りに、綾角15°で約10gの張力を掛けて繊維同志を密接させて巻き付け、更に上述と同じ繊維30.5cmをこの円筒に掛けた。この時、この繊維は円筒の上にあり、円筒の巻き付け方向と平行にする。グラム数で表した荷重の値が円筒上に掛けた繊維のデニールの0.1倍になる重りを円筒に掛けた繊維の片方の端に結び、他方の端にはストレインゲージを連結させた。次に円筒を重り方向に18m/minの周速で回転させ、張力をストレインゲージで測定する。こうして測定した張力から繊維−繊維間動摩擦係数を以下の式に従って求めた。
μ=1/π×ln(T2/T1)
ここで、T1は繊維に掛けた重りの重さ、T2は測定開始2分後の張力(ここで2分後とはT2が安定した状態を指す。)、lnは自然対数、πは円周率を示す。
(7)糸摩擦切断数の測定糸摩擦切断数は、繊維同士をこすり合わせ切断が起きるまでのこすり合わせた回数を示したものであり、繊維側面の摩耗しやすさの一つ目安になるものである。すなわち、回数が大きい程、摩耗性がよいことを示す。
【0028】糸摩擦切断数は東洋精機製作所(株)製の糸摩擦抱合力試験機(No890)を用いて測定した。糸の両端を滑車を通して並んだ2つの留め金で糸の両端を結びつけた。この留め金は20mmストローク長で往復運動することができる。滑車を回転させ2回撚りを掛けて、50gの荷重を掛けて、150ストローク/分で留め金を往復運動させた。往復運動の回数はカウンターで計測することができ、糸の切断までの回数を糸摩擦切断数として求めた。
【0029】
【実施例1】エチレン/一酸化炭素の交互共重合ポリマー([η]=5.3dl/g)を8重量%、塩化亜鉛60重量%、塩化ナトリウム10重量%、純水22重量%の組成のドープを調整し、80℃に保ちながら、直径0.1mmのノズル50穴からドープ吐出量20g/min、エアギャップ長10mmで押し出し、ポリマーに対し非溶媒である水に凝固させることにより繊維化した。ついで2%硫酸水浴にて繊維を通し、塩化亜鉛を完全に除去し、水洗ロールにて硫酸を除去して巻き取った。巻き取り速度は6m/minで行った。次いで、200℃で乾燥後、表1に記載した仕上げ剤を水で希釈し5%乳化液として付着させた後、非加熱ロールの間にあるホットプレート上で延伸温度240℃、6倍延伸後、更に268℃、2倍延伸して75d/50fのポリケトン繊維を得た。得られた繊維の強度は15.2g/d、伸度は5%、弾性率は340g/dであった。また、結晶化度は75%であった。得られた繊維の物性は表1に示す。得られた繊維の耐摩耗性は良好であった。
【0030】
【実施例2】実施例1と同様に紡糸を行い合糸して、1500d/1000fのポリケトン繊維を得た。得られた繊維の物性は表1に示す。得られた繊維の耐摩耗性は良好であった。
【実施例3】表1に示す仕上げ剤に代えて実施例1を繰り返した。得られた繊維の物性は表1に示す。得られた繊維の耐摩耗性は良好であった。
【0031】
【比較例1】表1に示す仕上げ剤に代えて実施例1を繰り返した。得られた繊維の物性は表1に示す。μは本発明の範囲からはずれるので、耐摩耗性は低下した。
【比較例2】仕上げ剤を用いずに、実施例1を繰り返した。糸摩擦切断数は、わずか20回であった。
【0032】
【表1】

【0033】
【実施例4】プロピレンを5%共重合したエチレン/プロピレン/一酸化炭素共重合ポリマー([η]=1.8dl/g)を押出温度とブロック温度を245℃として、紡口穴径0.25mm、穴数50個で紡糸した。また紡糸吐出後、紡口から100mmの位置から0.4m/minの温度15℃の冷風で冷却して固化し、実施例1で用いた仕上げ剤を付与した後、紡糸速度1500m/minにてチーズ形態で巻き取った。ついで非加熱ロール間にホットプレートを有する延伸機にてホットプレート温度210℃で延伸し、75d/36fのポリケトン繊維を得た。得られたポリケトン繊維は、強度13g/d、伸度7%、弾性率142g/dであった。また、結晶化度は62%、油付率は1.4%、μは0.18であった。糸摩擦切断数は321回であり、良好な耐摩耗性を示した。
【比較例3】実施例4において、延伸する前の糸の物性を測定した。この繊維の結晶化度は25%であり、μは0.48であった。しかしながら、この繊維の糸摩擦切断数は、57回しかなかった。
【0034】
【発明の効果】本発明は、繊維表面に仕上げ剤を付与して特定範囲の繊維−繊維間動摩擦係数を持たせることにより、タイヤコードやロープ製造時等の撚り工程時に繊維のねじれや繊維−繊維間のこすれによる毛羽や単糸切れが起こりにくい、摩耗性が改善されたポリケトン繊維を提供することができる。得られた繊維は、タイヤコード、ロープ、ベルト、耐震補強材等の複合材料に特に有用である。




 

 


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